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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-01
(45)【発行日】2023-02-09
(54)【発明の名称】被覆層を有する口腔内崩壊錠
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4245 20060101AFI20230202BHJP
   A61K 9/32 20060101ALI20230202BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20230202BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20230202BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20230202BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
A61K31/4245
A61K9/32
A61K47/22
A61K47/18
A61K47/32
A61K47/02
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021026875
(22)【出願日】2021-02-23
(65)【公開番号】P2021134217
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2022-06-29
(31)【優先権主張番号】P 2020030678
(32)【優先日】2020-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】398058382
【氏名又は名称】日新製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100183069
【弁理士】
【氏名又は名称】辻 茉莉子
(74)【代理人】
【識別番号】100148541
【弁理士】
【氏名又は名称】大串 寿人
(74)【代理人】
【識別番号】100172018
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】野口 正裕
(72)【発明者】
【氏名】工藤 竜平
【審査官】福山 則明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/122477(WO,A1)
【文献】特開2017-190340(JP,A)
【文献】特表2006-524650(JP,A)
【文献】国際公開第2010/113841(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/157264(WO,A1)
【文献】特開2010-053043(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0003785(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アジルサルタンを含有する口腔内崩壊錠が、サッカリンナトリウム、アセスルファムカリウムおよびアスパルテームから選択される少なくとも一種である高甘味度甘味剤、ポリビニルアルコール系樹脂ならびに着色剤を含有する被覆層により被覆されたことを特徴とする、被覆層を有する口腔内崩壊錠。
【請求項2】
前記高甘味度甘味剤の含有量が被覆層質量に対して5%以下である、請求項1に記載の被覆層を有する口腔内崩壊錠。
【請求項3】
前記ポリビニルアルコール系樹脂がポリビニルアルコールである、請求項1または2に記載の被覆層を有する口腔内崩壊錠。
【請求項4】
前記着色剤が酸化チタン、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄および黒酸化鉄から選択される少なくとも一種である、請求項1~いずれか一項に記載の被覆層を有する口腔内崩壊錠。
【請求項5】
前記着色剤の含有量が被覆層質量に対して30~70%である、請求項1~4いずれか一項に記載の被覆層を有する口腔内崩壊錠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆層を有する口腔内崩壊錠に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、高齢者や小児など嚥下力の弱い患者や水分摂取を制限されている患者、更には多忙で水を持ち合わせていない患者のために、口腔内の唾液のみで錠剤を崩壊させ飲み易くすることを特徴とした口腔内崩壊錠の重要性が増してきている。しかし、口腔内崩壊錠は、少量の唾液で崩壊するように設計されているため、錠剤硬度が低く、1回服用分ずつ分包する(一包化)際に分包機中で割れやすい。更に、光に対して不安定な薬物を含有する口腔内崩壊錠では、保存環境の影響を受けやすい。
【0003】
光に対して不安定な薬物を錠剤化する場合、一般的に、薬物を含む錠剤に着色剤(遮光剤)を配合した被覆層を施す方法や、薬物と着色剤を混合する方法等により遮光することで安定化を図る方法が知られている。
【0004】
しかし、光に対して不安定な薬物を口腔内崩壊錠にする場合、光安定化を図るために、素錠に着色剤を配合した被覆層を施すと、被覆層による崩壊遅延が懸念される。被覆層を有する口腔内崩壊錠は、口腔内において被覆層がすみやかに溶解し、錠剤本体も速やかに崩壊しなければならない。また、被覆層の溶解に際し、口腔内崩壊錠としてのその味や触感等のマウスフィールも考慮されなければならない。
【0005】
特許文献1には、マルトース、マルチトール、ソルビトール、キシリトール、フルクトース、ブドウ糖、ラクチトール、イソマルトース、乳糖、エリスリトール、マンニトール、トレハロースおよびショ糖の少なくとも1 種である20℃において10mL未満の水に1g以上溶け、かつ分子内にヒドロキシ基を有し単位ヒドロキシ基当たりの分子量が200以下の水溶性物質と、ポリビニルアルコール系樹脂とを含有し、被覆層中のポリビニルアルコール系樹脂と、水溶性物質の重量比が1:0.1~1:9である被覆層により被覆された、ナルフラフィン又はその薬理学的に許容される塩を除く薬物を含有する安定な口腔内崩壊性被覆錠剤が、優れた速崩壊性を有しながら、高湿度下においても亀裂を生じないことが記載されている。また、被覆層に遮光剤を配合することで、薬物の分解を改善できることも記載されている。しかしながら、そのマウスフィールについては全く不明である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-177438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、光に対して不安定な薬物、着色剤およびその他の添加剤の混合物を打錠した口腔内崩壊錠を試作したが、光による薬物の分解を十分に抑制する効果は得られなかった。一方、光に対して不安定な薬物を含有する口腔内崩壊錠を、着色剤とポリビニルアルコール系樹脂を含有する被覆層で被覆した口腔内崩壊錠を試作したところ、光による薬物の分解は抑制できた。しかし、被覆層を施したことにより若干の崩壊遅延が起き、口に含んだ時に「口腔内崩壊錠ではない」という違和感が生じてマウスフィールが悪くなるという口腔内崩壊錠に特有の課題を初めて見出した。
【0008】
本発明は、口腔内での速崩壊性と硬度という口腔内崩壊錠に必要とされる特性を満たしつつ、光に対して不安定な薬物の光による分解が抑制され、マウスフィールに優れた、被覆層を有する口腔内崩壊錠を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、光に対して不安定な薬物を含有する口腔内崩壊錠を、高甘味度甘味剤、ポリビニルアルコール系樹脂および着色剤を含む被覆層で被覆することにより、速崩壊性と硬度を両立しつつ、光による薬物の分解を抑制でき、マウスフィールに優れた、被覆層を有する口腔内崩壊錠を提供できることを見出し、本発明を完成した。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、口腔内での速崩壊性と硬度という口腔内崩壊錠に必要とされる特性を満たしつつ、光安定性およびマウスフィールに優れた、被覆層を有する口腔内崩壊錠を提供することができる。より詳細には、光に対して不安定な薬物を含有する口腔内崩壊錠を、水への溶解度が高い高甘味度甘味剤、ポリビニルアルコール系樹脂および遮光効果を有する着色剤を含有する被覆層で被覆することにより、光による薬物の分解を抑制することができる。また、被覆層の溶解時間が短く、かつ、医薬品としての取扱いに十分な錠剤強度を両立するとともに、マウスフィールの優れた、被覆層を有する口腔内崩壊錠を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明について、以下に詳述する。
本明細書において、特に断らない限り、%は質量%である。
本明細書において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値および最大値として含む範囲を意味する。
【0012】
本発明に係る「口腔内崩壊錠」は、被覆層を有しない素錠である。
本発明に係る「被覆層を有する口腔内崩壊錠」は、口腔内崩壊錠の表面を被覆用組成物で被覆を施した口腔内崩壊錠である。
【0013】
本発明に係る「被覆層」は、高甘味度甘味剤、ポリビニルアルコール系樹脂および着色剤を含有する。前記被覆層の量は、錠剤の形状や大きさによって異なるが、口腔内崩壊錠の表面積あたり10μg/mm以上であればよく、15~30μg/mmであることが好ましい。
【0014】
本明細書において「高甘味度甘味剤」とは、ショ糖の甘味度を1とした場合に100倍以上の甘味度を有する甘味剤を意味する。「甘味度」とは、甘味の強さを示す尺度であり、ショ糖1質量%(20℃)の甘味の強さを1とした場合の相対比である。本発明に係る高甘味度甘味剤としては、例えば、サッカリンナトリウム、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、スクラロース、ステビア、グリチルリチン酸二カリウム、タウマチンおよびネオテーム等が挙げられ、サッカリンナトリウム、アセスルファムカリウムおよびアスパルテームが好ましく、サッカリンナトリウムがより好ましい。前記高甘味度甘味剤は一種または二種以上を組み合わせて用いることができる。
前記高甘味度甘味剤の量は、被覆層質量に対して、5%以下が好ましく、0.1~5%がより好ましく、1~3.5%がさらに好ましい。高甘味度甘味剤は極少量で甘みを感じることができるからである。
【0015】
本発明に係る「ポリビニルアルコール系樹脂」は、ポリビニルアルコール(PVA)およびその誘導体もしくは共重合体を意味する。ポリビニルアルコール系樹脂は、ポリビニルアルコールを用いることが好ましい。
ポリビニルアルコールは、通常、ポリ酢酸ビニルを完全または部分的にけん化することにより製造される。けん化度が97mol%以上のものは完全けん化物、けん化度が78~96mol%のものは部分けん化物と呼ばれる。ポリビニルアルコールのけん化度としては、特に制限されないが、部分けん化物を用いることが好ましい。
本発明に係る「ポリビニルアルコール系樹脂」は、市販品を用いることができる。ポリビニルアルコールの市販品としては、例えば、ゴーセノール(登録商標)(三菱ケミカル株式会社)、J-ポバール(日本酢ビ・ポバール株式会社)、クラレポバール(株式会社クラレ)、ポリビニルアルコール4-88、5-88、8-88、18-88、26-88、28-99、40-88(メルク株式会社)等が挙げられる。ポリビニルアルコールの誘導体としては、例えば、ポリビニルアルコールコポリマー等が挙げられ、市販品としては、例えば、POVACOAT(登録商標)Type F、Type R、Type L(大同化成工業株式会社)等が挙げられる。ポリビニルアルコールの共重合体としては、例えば、ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマー等が挙げられ、市販品としては、例えば、コリコートIR(BASFジャパン株式会社)等が挙げられる。
前記ポリビニルアルコール系樹脂は、一種または二種以上を組み合わせて用いることができる。
前記ポリビニルアルコール系樹脂の量は、被覆層質量に対して、30%以上であることが好ましく、30~69%がより好ましく、30~59%がさらに好ましい。ポリビニルアルコール系樹脂の量が被覆層質量に対して30%以上である場合、良好な被覆層を形成することができる。
【0016】
本発明に係る「着色剤」は、遮光効果を有する着色剤であればよく、例えば、酸化チタン、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄、黒酸化鉄およびタルク等が挙げられる。遮光効果の点で、酸化チタン、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄が好ましく、酸化チタンがより好ましい。前記着色剤は一種または二種以上を組み合わせて用いることができる。
前記着色剤の量は、光に不安定な薬物の量や光感受性によっても異なるが、被覆層質量に対して、30~70%が好ましく、40~70%がより好ましい。
【0017】
本発明に係る被覆層には、上述の成分のほか、必要に応じて薬学的に許容される添加剤を本発明の効果を損なわない範囲内で加えることができる。当該添加剤としては、例えば、コーティング剤、光沢化剤および着香剤等が挙げられる。コーティング剤としては、例えば、クエン酸トリエチル、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、タルク、トリアセチン、ヒマシ油;プロピレングリコール、マクロゴール400、マクロゴール600、マクロゴール1500、マクロゴール1540、マクロゴール4000、マクロゴール6000、マクロゴール20000およびマクロゴール35000等のマクロゴール;コーンスターチ、デンプングリコール酸ナトリウムおよび部分アルファー化デンプン等のデンプン類;微結晶セルロース、軽質無水ケイ酸、、カルメロースカルシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、アラビアゴム末、ゼラチン、プルラン、カルメロースナトリウム、エチルセルロースおよびアミノアルキルメタルリレートコポリマー等が挙げられる。光沢化剤としては、例えば、タルク、軽質無水ケイ酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、カルナウバロウおよび精製セラック等が挙げられる。着香剤としては、例えば、メントールおよびペパーミント等のハッカ類、レモン、オレンジ、グレープフルーツ、ストロベリー、チョコレート並びにコーヒー等が挙げられる。
【0018】
本発明に用いられる被覆層用組成物を調製する方法としては、特に制限されないが、例えば、精製水に前記高甘味度甘味剤、前記ポリビニルアルコール系樹脂、前記着色剤および必要に応じて前記添加剤を溶解または分散させることにより調製することができる。
口腔内崩壊錠に被覆層を形成する方法としては、特に制限されないが、例えば、パン型コーティング装置、流動層コーティング装置または通気式乾燥パン型コーティング装置等を用いて形成することができる。
被覆層を有する口腔内崩壊錠の硬度は、低いと輸送や保管中に錠剤が破損してしまう可能性があるため、10N以上であることが好ましく、25N以上がより好ましい。
【0019】
本願発明において、「マウスフィール」とは、錠剤を口に含んだ際の味や触感、質感等を意味する。口腔内崩壊錠が崩壊し始めるまでの時間(被覆層が溶解する間)に感じる「口腔内崩壊錠ではない」という違和感がない味や舌触りであることを、マウスフィールが優れているという。
被覆層が溶解する間に無味であると被覆層の口腔内溶解時間を実際よりも長く感じ、上記違和感は大きく、マウスフィールは悪い。被覆層の口腔内溶解時間が短いほど上記違和感は小さく、マウスフィールは良好となる。そのため、本発明に係る被覆層の口腔内溶解時間は、15秒以内が好ましく、10秒以内がより好ましく、8秒以内がさらに好ましい。
【0020】
一般的に、口腔内崩壊錠は、口腔内で水なしで60秒以内に崩壊するように設計される。そのため、本発明に用いられる口腔内崩壊錠は、通常、口腔内に存在する唾液のみによって崩壊および嚥下が可能な錠剤として使用されている範囲内のもの、好ましくは、口腔内での崩壊時間が45秒以内、より好ましくは40秒以内、さらに好ましくは30秒以内であれば、組成および製法に関して特に制限されない。本発明に用いられる口腔内崩壊錠は、例えば、直接打錠法、間接打錠法、鋳型成形法等の製剤分野における慣用の方法により製造することができる。なお、本発明の被覆層を有する口腔内崩壊錠は水なしで服用することを限定した物ではなく、水とともに服用してもよい。
【0021】
本発明に用いられる口腔内崩壊錠は、光に対して不安定な薬物および必要に応じて薬学的に許容される添加剤を含有する。
「光に対して不安定な薬物」としては、例えば、ニソルジピン、アゼルニジピン、メコバラミン、シメチジン、メキタジン、オランザピン、ドネペジル、セレギリン、イルソグラジン、ベポタスチン、ラモセトロン、ナフトピジル、ポラプレジンク、リザトリプタン、ミドドリン、リスペリドン、オンダンセトロン、ロラタジン、モンテルカスト、アズレンスルホン酸、エチゾラム、エナラプリル、カプトプリル、グリベンクラミド、クロルマジノン酢酸エステル、ドキサゾシン、トリアゾラム、ドンペリドン、ケトチフェン、ブロムペリドール、プラバスタチン、シンバスタチン、ピタバスタチン、ロスバスタチン、アトルバスタチン、ロペラミド、リシノプリル、リルマザホン、アルファカルシドール、ブロモクリプチン、プラミペキソール、ロサルタン、バルサルタン、カンデサルタンシレキセチル、テルミサルタン、アジルサルタン、ラメルテオンおよびリナグリプチンならびにその薬理学的に許容される塩および溶媒和物等が挙げられる。
当該添加剤としては、例えば、賦形剤、崩壊剤、結合剤、可塑剤、矯味剤、香料、着色剤または滑沢剤等が挙げられる。
【0022】
本発明の被覆層を有する口腔内崩壊錠の有用性を以下の試験例および実施例で説明するが、本発明はこれらにより、限定されるものではない。
【実施例
【0023】
(参考例1)
アジルサルタン(以下、「化合物A」と略記する。)40質量部(以下、「部」と略記する。)、乳糖水和物14部およびトウモロコシデンプン6部を混合し、これにヒドロキシプロピルセルロースおよびマクロゴール6000各1部を精製水に溶解した液を添加して造粒し、乾燥し、整粒して化合物A含有顆粒を得た。D-マンニトール70.8部、クロスポビドン13部および軽質無水ケイ酸2.7部を混合し、これにヒドロキシプロピルセルロース0.2部を精製水に溶解した液を添加して造粒し、乾燥し、整粒して賦形顆粒を得た。前記化合物A含有顆粒62部、前記賦形顆粒86.7部、結晶セルロース28.6部およびステアリン酸マグネシウム2.7部を混合し、打錠して1錠質量180mg、直径8mmの碁石型錠剤(未被覆の口腔内崩壊錠)を得た。
【0024】
(実施例1)
ポリビニルアルコール1.6部、サッカリンナトリウム0.1部、酸化チタン1.4部および黄色三二酸化鉄0.075部を精製水にそれぞれ溶解または分散し、固形分10%の被覆用液を調製した。スプレー式パン型コーティング機(HCT-60型)を用いて、設定温度75~80℃で、参考例1により製造した未被覆の口腔内崩壊錠に前記被覆用液を噴霧し、180mgの錠剤に対して3mgの被覆層を有する口腔内崩壊錠を得た。
【0025】
(実施例2)
ポリビニルアルコール1.6部、アセスルファムカリウム0.1部、酸化チタン1.4部および黄色三二酸化鉄0.075部をそれぞれ精製水に溶解または分散し、固形分10%の被覆用液を調製した。実施例1と同じ条件で、参考例1により製造した未被覆の口腔内崩壊錠に前記被覆用液を噴霧し、180mgの錠剤に対して3mgの被覆層を有する口腔内崩壊錠を得た。
【0026】
(実施例3)
ポリビニルアルコール1.6部、アスパルテーム0.1部、酸化チタン1.4部および黄色三二酸化鉄0.075部をそれぞれ精製水に溶解または分散し、固形分7%の被覆用液を調製した。実施例1と同じ条件で、参考例1により製造した未被覆の口腔内崩壊錠に前記被覆用液を噴霧し、180mgの錠剤に対して3mgの被覆層を有する口腔内崩壊錠を得た。
【0027】
(比較例1)
ポリビニルアルコール1.6部、酸化チタン1.4部および黄色三二酸化鉄0.075部をそれぞれ精製水に溶解または分散し、被覆用液を調製した。実施例1と同じ条件で、参考例1により製造した未被覆の口腔内崩壊錠に前記被覆用液を噴霧し、180mgの錠剤に対して3mgの被覆層を有する口腔内崩壊錠を得た。
【0028】
(比較例2)
ポリビニルアルコール1.6部、マルチトール0.1部、酸化チタン1.4部および黄色三二酸化鉄0.075部をそれぞれ精製水に溶解または分散し、被覆用液を調製した。実施例1と同じ条件で、参考例1により製造した未被覆の口腔内崩壊錠に前記被覆用液を噴霧し、180mgの錠剤に対して3mgの被覆層を有する口腔内崩壊錠を得た。
【0029】
(試験例1)錠剤硬度の測定
参考例1の未被覆の口腔内崩壊錠ならびに実施例1~3および比較例1~2の被覆層を有する口腔内崩壊錠について、デジタル硬度計を用いて錠剤の硬度を測定し、各3錠の平均硬度を算出した。結果を表1に示す。
【0030】
(試験例2)被覆層の溶解時間の測定およびマウスフィールの評価
参考例1の未被覆の口腔内崩壊錠ならびに実施例1~3および比較例1~2の被覆層を有する口腔内崩壊錠について、健康な成人4名により口腔内崩壊時間を測定した。被覆層を有する口腔内崩壊錠の口腔内崩壊時間から、未被覆の口腔内崩壊錠の口腔内崩壊時間を差し引いた時間を被覆層の溶解時間として算出した。また、被覆層の溶解過程におけるマウスフィールについて、口腔内崩壊錠として違和感を感じない場合は「良好」、違和感を感じる場合は「不快」と評価した。結果を表1に示す。
【0031】
(試験例3)光安定性試験
参考例1の未被覆の口腔内崩壊錠ならびに実施例1~3および比較例1~2の被覆層を有する口腔内崩壊錠をシャーレ上に均一に広げ、白色蛍光灯1000LXの光照射下で1週間保管した。保管後、下記条件のHPLC法により化合物Aおよびその類縁物質を測定した。化合物Aおよびその類縁物質に由来する総ピーク面積に対する光分解物(相対保持時間0.49)の面積百分率(%)を算出し、光安定性を評価した。結果を表1に示す。
カラム:液体クロマトグラフィー用オクタデシルシリル化シリカゲル
移動相:水/酢酸(100)混液(1000:1)とアセトニトリルの混合比を変えて濃度勾配制御
流量:約0.7mL/min
測定波長:250nm
【0032】
【表1】
【0033】
実施例1~3および比較例1~2において、医薬品として取扱いに十分な錠剤強度と、被覆層の速やかな溶解性を示した。なお、参考例の未被覆の口腔内崩壊錠の口腔内崩壊時間は25秒だった。
実施例1~3においては、被覆層が溶解する間に甘味を感じるため、口腔内崩壊錠として違和感なく、マウスフィールが良好であった。一方、被覆層に甘味剤を含有しない比較例1および被覆層にマルチトール(ショ糖の甘味度を1とした場合に0.8~0.9倍の甘味度を有する)を含有する比較例2においては、被覆層が溶解する間は無味であり、口腔内崩壊錠として違和感があり、不快であった。
着色剤を含有する被覆層を設けた実施例1~3および比較例1~2では、光に不安定な薬物の光安定化効果を示した。
【0034】
(参考例2)
化合物A40部、乳糖水和物14部およびトウモロコシデンプン6部を混合し、これにヒドロキシプロピルセルロースおよびマクロゴール6000各1部を精製水に溶解した液を添加して造粒し、乾燥し、整粒して化合物A含有顆粒を得た。D-マンニトール70.18部、クロスポビドン14.3部および軽質無水ケイ酸3.3部を混合し、これにヒドロキシプロピルセルロース0.22部を精製水に溶解した液を添加して造粒し、乾燥し、整粒して賦形顆粒を得た。前記化合物A含有顆粒62部、前記賦形顆粒88部、結晶セルロース27.3部およびステアリン酸マグネシウム2.7部を混合し、打錠して1錠質量180mg、直径8mmの碁石型錠剤(未被覆の口腔内崩壊錠)を得た。
参考例2の未被覆の口腔内崩壊錠について上記試験例1~3と同様に試験を行ったところ、硬度は42.7N、口腔内崩壊時間は25秒、マウスフィールは良好、光分解物は0.206%であった。
【0035】
(実施例4)
ポリビニルアルコール1.3部、サッカリンナトリウム0.05部、マクロゴール6000 0.08部、酸化チタン2.7部および黄色三二酸化鉄0.1部を精製水にそれぞれ溶解または分散し、固形分10%の被覆用液を調製した。スプレー式パン型コーティング機(HCT-60型)を用いて、設定温度75~80℃で、参考例2により製造した未被覆の口腔内崩壊錠に前記被覆用液を噴霧し、180mgの錠剤に対して4.23mgの被覆層を有する口腔内崩壊錠を得た。
実施例4の被覆層を有する口腔内崩壊錠について上記試験例1~3と同様に試験を行ったところ、硬度は39.2N、被覆層溶解時間は8秒、マウスフィールは良好、光分解物は0.000%であった。
【0036】
(参考例3)
ラメルテオン(以下、「化合物B」と略記する。)8部、部分アルファー化デンプン30部および軽質無水ケイ酸0.5部を混合し、これにヒドロキシプロピルセルロース0.5部を水/エタノールに溶解した液を添加して造粒し、乾燥し、整粒して核顆粒を得た。得られた核顆粒に、ヒプロメロース1部およびタルク0.1部を精製水にそれぞれ溶解または分散した液を噴霧し、乾燥し、さらにアミノアルキルメタクリレートコポリマーE3.5部、エチルセルロース3.5部およびタルク3.5部を水/エタノールにそれぞれ溶解または分散した液を噴霧し、乾燥して化合物B含有顆粒を得た。乳糖水和物50部、軽質無水ケイ酸2.5部、クロスポビドン10.7部および黄色三二酸化鉄0.08部を混合し、これにヒドロキシプロピルセルロース0.8部を精製水に溶解した液を添加して造粒し、乾燥し、整粒して賦形顆粒を得た。前記化合物B含有顆粒50.6部、前記賦形顆粒64.08部、結晶セルロース34.5部、乳糖水和物10部、香料0.22部、スクラロース0.16部およびステアリン酸マグネシウム1部を混合し、打錠して1錠質量160.56mg、直径7.5mmの碁石型錠剤(未被覆の口腔内崩壊錠)を得た。
参考例3の未被覆の口腔内崩壊錠について上記試験例1および2と同様に試験を行ったところ、硬度は53.6N、口腔内崩壊時間は30秒以下であった。
【0037】
(実施例5)
ポリビニルアルコール1.3部、タウマチン0.05部、ヒプロメロース0.1部、酸化チタン1.7部および黄色三二酸化鉄0.01部を精製水にそれぞれ溶解または分散し、固形分10%の被覆用液を調製した。スプレー式パン型コーティング機(HCT-60型)を用いて、設定温度75~80℃で、参考例3により製造した未被覆の口腔内崩壊錠に前記被覆用液を噴霧し、160.56mgの錠剤に対して3.16mgの被覆層を有する口腔内崩壊錠を得た。
実施例5の被覆層を有する口腔内崩壊錠について上記試験例1~3と同様に試験を行ったところ、硬度は57.1N、被覆層溶解時間は10秒未満、マウスフィールは良好であった。
【0038】
(試験例4)光安定性試験
参考例3の未被覆の口腔内崩壊錠ならびに実施例5の被覆層を有する口腔内崩壊錠をシャーレ上に均一に広げ、白色蛍光灯1000LXの光照射下で1週間保管した。保管後、下記条件のHPLC法により化合物Bおよびその類縁物質を測定した。化合物Bおよびその類縁物質に由来する総ピーク面積に対する光分解物(相対保持時間0.43)の面積百分率(%)を算出し、光安定性を評価した。
カラム:液体クロマトグラフィー用フェニルヘキシルシリル化シリカゲル
移動相:過塩素酸溶液(1→1000)とメタノール/アセトニトリル混液(17:3)の混合比を変えて濃度勾配制御
流量:約1.2mL/min
測定波長:288nm
【0039】
参考例3の未被覆の口腔内崩壊錠の光分解物は0.088%(総照度120万lx・hr)であったのに対し、実施例5の被覆層を有する口腔内崩壊錠の光分解物は0.028%(総照度120万lx・hr)であった。着色剤を含有する被覆層を設けた実施例5では、光に不安定な薬物の光安定化効果を示した。