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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-01
(45)【発行日】2023-02-09
(54)【発明の名称】共役カム装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 53/06 20060101AFI20230202BHJP
【FI】
F16H53/06
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021116910
(22)【出願日】2021-07-15
【審査請求日】2021-07-16
【審判番号】
【審判請求日】2022-03-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521313924
【氏名又は名称】秋山 俊行
(74)【代理人】
【識別番号】100185270
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 貴史
(72)【発明者】
【氏名】秋山 俊行
【合議体】
【審判長】平田 信勝
【審判官】岡本 健太郎
【審判官】内田 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-337469(JP,A)
【文献】特表2009-519418(JP,A)
【文献】英国特許出願公告第829519(GB,A)
【文献】特開平4-370409(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 53/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能に設けられる回転部材と、
前記回転部材に設けられ、かつ、前記回転部材の回転中心である第1中心線を囲むように非円形に設けられた環状のカム溝と、
前記カム溝内に設けられ、かつ、前記回転部材に対して前記回転部材の回転方向に移動可能であり、かつ、前記回転部材から荷重を受けるカムフォロアと、
前記カムフォロアを支持し、かつ、前記カムフォロアと共に前記回転部材の回転方向に移動可能な作動対象部材と、
を有する共役カム装置において、
前記カムフォロアは、第2中心線を中心としてそれぞれ回転可能であり、かつ、前記第2中心線に沿った方向に並べて設けられた第1カムフォロア及び第2カムフォロアを含み、
前記カム溝は、前記回転部材の全周に亘って設けられた壁面を有し、
前記第1カムフォロアは、前記壁面に接触されて前記回転部材から荷重を受ける第1外周面を有し、
前記第2カムフォロアは、前記壁面に接触されて前記回転部材から荷重を受ける第2外周面を有し、
前記第1中心線に沿った方向の平面内で、前記壁面は前記第1中心線と平行であり、かつ、前記第1外周面及び前記第2外周面は前記第1中心線と平行であり、
前記カム溝は、前記第1中心線に沿った方向で異なる範囲に設けられた第1溝及び第2溝を有し、
前記第1溝と前記第2溝とがつながっており、
前記第1溝の幅と前記第2溝の幅とが異なり、
前記第1溝に設けられる前記第1カムフォロアの直径と、前記第2溝に設けられる前記第2カムフォロアの直径とが異なり、
前記回転部材は、前記第1中心線に対して垂直な表面を有し、
前記カム溝は、前記表面に設けられ、
前記作動対象部材、前記第1カムフォロア及び前記第2カムフォロアは、前記第1中心線に対して交差する方向に作動可能である、共役カム装置。
【請求項2】
請求項記載の共役カム装置において、
前記第1中心線に沿った方向で前記第1外周面が前記壁面に接触する幅と、前記第1中心線に沿った方向で前記第2外周面が前記壁面に接触する幅とが同じである、共役カム装置。
【請求項3】
請求項記載の共役カム装置において、
前記第1中心線に沿った方向で前記第1外周面が前記壁面に接触する幅と、前記第1中心線に沿った方向で前記第2外周面が前記壁面に接触する幅とが異なる、共役カム装置。
【請求項4】
請求項1乃至の何れか1項記載の共役カム装置において、
前記回転部材は、前記第1中心線を中心とする第1回転方向及び第2回転方向に回転可能である、共役カム装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複数のカムフォロアを有する共役カム装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のカムフォロアを有する共役カム装置の一例が特許文献1に記載されている。特許文献1に記載された共役カム装置は、カム溝を有する回転部材と、カム溝に対応し、かつ、重ねて配置される2つのカムフォロアと、2つのカムフォロアを支持する1本の支持軸(作動対象部材)と、を有する。2つのカムフォロアの外周に、それぞれテーパーが設けられている。カム溝には、2つのカムフォロアに対応してテーパーが2段に設けられている。回転部材が回転すると、カム溝とカムフォロアとの接触箇所で生じる荷重の分力により、支持軸が回転部材の半径方向に変位される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平3-199748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明者は、特許文献1に記載されている共役カム装置は、カム溝とカムフォロアとが接触するため、作動対象部材には、2つのカムフォロアの回転中心である中心線に沿った方向の荷重が加わるため、荷重受け機構を設ける必要があり、装置の部品点数が増加する、という課題を認識した。
【0005】
本開示の目的は、部品点数の増加を抑制可能な共役カム装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の共役カム装置は、回転可能に設けられる回転部材と、前記回転部材に設けられ、かつ、前記回転部材の回転中心である第1中心線を囲むように非円形に設けられた環状のカム溝と、前記カム溝内に設けられ、かつ、前記回転部材に対して前記回転部材の回転方向に移動可能であり、かつ、前記回転部材から荷重を受けるカムフォロアと、前記カムフォロアを支持し、かつ、前記カムフォロアと共に前記回転部材の回転方向に移動可能な作動対象部材と、を有する共役カム装置において、前記カムフォロアは、第2中心線を中心としてそれぞれ回転可能であり、かつ、前記第2中心線に沿った方向に並べて設けられた第1カムフォロア及び第2カムフォロアを含み、前記カム溝は、前記回転部材の全周に亘って設けられた壁面を有し、前記第1カムフォロアは、前記壁面に接触されて前記回転部材から荷重を受ける第1外周面を有し、前記第2カムフォロアは、前記壁面に接触されて前記回転部材から荷重を受ける第2外周面を有し、前記第1中心線に沿った方向の平面内で、前記壁面は前記第1中心線と平行であり、かつ、前記第1外周面及び前記第2外周面は前記第1中心線と平行である。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、作動対象部材が、2つのカムフォロアの中心線に沿った方向の荷重を受けることを抑制できる。したがって、荷重受け機構を設けずに済み、部品点数の増加を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】(A)は、共役カム装置の具体例1を示す正面図、(B)は、図1(A)のII-II線における側面断面図である。
図2図1(B)の要部を拡大した側面断面図である。
図3】共役カム装置の作動状態を示す部分的な正面図である。
図4】共役カム装置の作動状態を示す部分的な正面図である。
図5】共役カム装置の作動状態を示す部分的な正面図である。
図6】共役カム装置の具体例2を示す側面断面図である。
図7】(A)は、共役カム装置の具体例3を示す模式的な平面図、(B)は、共役カム装置の具体例3を示す模式的な正面図である。
図8】(A),(B)は、共役カム装置の具体例3,4に対応する正面図である。
図9】(A),(B)は、共役カム装置の具体例3,4に対応する正面図である。
図10】(A)は、共役カム装置の具体例3に対応する拡大図、(B)は、共役カム装置の具体例4に対応する拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面に基づいて、本開示の実施形態を説明する。以下の実施形態の構成は例示であり、本開示は実施形態の内容に限定されない。共役カム装置は、工場で物品を移動させるための機構、例えば、アーム、チャック等を作動させるために設けられる。なお、共役カム装置を車両または民生品に設けることにより、作動対象部材を作動させることも可能である。
【0010】
(具体例1)
図1(A),(B)及び図2に示す共役カム装置10は、回転部材11、2個のカムフォロア13,14及び支持軸15を有する。回転部材11は、駆動軸16に取り付けられたカムプレートである。回転部材11に取付穴17が設けられ、駆動軸16の一部が取付穴17内に設けられている。駆動軸16と回転部材11とは一体回転する。
【0011】
駆動軸16は、一例として金属製、例えば、機械構造用鋼製である。駆動軸16は、動力源、例えば、電動モータ、内燃機関等の回転力によって、中心線A1を中心として回転される。電動モータは正回転及び逆回転が可能である。内燃機関は1方向にのみ回転可能である。動力源として内燃機関を用いる場合は、内燃機関の回転方向に対して駆動軸の回転方向を正逆に切り替え可能な、回転方向切り替え装置が設けられる。なお、動力源から駆動軸16に至る動力伝達経路には、動力源の回転速度と駆動軸の回転速度との比を変更する変速機が設けられていてもよい。
【0012】
回転部材11は、金属製、例えば、機械構造用鋼製、ステンレス製である。中心線A1は、回転部材11の回転中心を示す仮想線である。中心線A1に対して垂直な平面内で、回転部材11の外周形状は円形である。回転部材11は、中心線A1に対して垂直な第1表面18及び第2表面19を有し、回転部材11の外周縁の厚さは、回転部材11の回転方向で一定である。中心線A1に沿った方向における第1表面18と第2表面19との幅L1が、回転部材11の厚さに相当する。図1(B)に示す第1表面18及び第2表面19は、共に平坦であり、かつ、第1表面18と第2表面19とが平行である。
【0013】
回転部材11には、回転方向の全周に亘ってカム溝20が設けられている。カム溝20は、中心線A1を囲むように環状に設けられている。かつ、中心線A1を中心とする平面内で、カム溝20の形状は非円形である。カム溝20は、回転部材11の回転方向に沿って滑らかに湾曲、つまり、変位している。カム溝20は、第1溝21と、第1溝21につながった第2溝22と、を有し、第1溝21が、第1表面18に開口されている。第1溝21及び第2溝22は、中心線A1に沿った方向に並べて、かつ、中心線A1に沿った方向で異なる範囲に設けられている。第2溝22は、中心線A1に沿った方向で、第1溝21と第2表面19との間に位置する。図1(A)のように中心線A1に対して垂直な平面内において、第2溝22の配置領域の全部は、第1溝21の配置領域内に位置する。
【0014】
第1溝21は、内側壁面(内側カム面)23及び外側壁面(外側カム面)24を有する。回転部材11を図1(A)のように正面視すると、内側壁面23及び外側壁面24は、共に環状に設けられている。回転部材11を正面視すると、内側壁面23は、外側壁面24より内側に設けられている。図2のように、内側壁面23及び外側壁面24は、共に中心線A1と平行である。内側壁面23と外側壁面24との間隔、つまり、第1溝21の幅L2は、回転部材11の全周に亘って一定である。幅L2は、第1溝21の内側壁面23と外側壁面24との距離(間隔)の最小値である。
【0015】
第2溝22は、内側壁面(内側カム面)25及び外側壁面(外側カム面)26を有する。回転部材11を正面視すると、内側壁面25及び外側壁面26は、共に環状に設けられている。回転部材11を正面視すると、内側壁面25は、内側壁面23より外側に設けられ、かつ、外側壁面24より内側に設けられている。外側壁面26は、内側壁面25より外側に設けられ、かつ、外側壁面24より内側に設けられている。図2のように、内側壁面25及び外側壁面26は、共に中心線A1と平行である。内側壁面25と外側壁面26との間隔、つまり、第2溝22の幅L3は、回転部材11の全周に亘って一定である。幅L3は、第2溝22の内側壁面25と外側壁面26との距離(間隔)の最小値である。幅L3は、幅L2より大きい。
【0016】
中心線A1を中心とする平面内で、カム溝20の幅方向の中心を通る中心線B1は非円形である。ここで、中心線B1は、第1溝21の幅方向の中心を通る中心線、または、第2溝22の幅方向の中心を通る中心線、第1溝21の幅方向の中心と第2溝22の幅方向の中心との間を通る中心線の何れでもよい。
【0017】
支持軸15は、一例として金属製、例えば、機械構造用鋼製である。支持軸15には、例えば、アームが取り付けられている、チャック等を含む。作動対象部材は、中心線A1に対して垂直な平面内で、予め定められた方向に沿って往復作動することが可能となるように、ガイド部材等によって作動方向が規制されている。
【0018】
本実施形態では、便宜上、作動対象部材及び支持軸15が、直線状の軌跡で往復作動する例を説明する。具体的には、支持軸15が図1(A)に示す線分A2に沿った方向に往復作動することが可能である。つまり、中心線A3は、図1(A)において、線分A2上を移動する。線分A2は、中心線A1に対して垂直な平面内で、中心線A1と交差する方向に沿って延ばされた直線、即ち、仮想線である。支持軸15は、円柱形状である。
【0019】
図2のように、中心線A1を含む側面断面内で、支持軸15の中心線A3と中心線A1とが平行に設けられている。支持軸15は、中心線A3に沿った方向に移動しないように設けられている。作動対象部材が支持軸15に固定されていると、作動対象部材は、支持軸15に対して中心線A3に沿った方向に移動することは無い。
【0020】
カムフォロア13は、支持軸15の外周面に軸受28を介して回転可能に取り付けられた円筒部材である。カムフォロア13の直径φ1は、幅L2未満であり、かつ、幅L3より大きい。カムフォロア13は、第1溝21内に設けられており、回転部材11が回転すると、カムフォロア13は、第1溝21内で中心線B1に沿った方向に移動可能である。
【0021】
カムフォロア14は、支持軸15の外周面に軸受29を介して回転可能に取り付けられた円筒部材である。カムフォロア14の直径φ2は、直径φ1未満であり、かつ、幅L3未満である。カムフォロア14は、第2溝22内に設けられており、回転部材11が回転すると、カムフォロア14は、第2溝22内で中心線B1に沿った方向に移動可能である。カムフォロア13は、中心線A3に沿った方向で、カムフォロア14と作動対象部材との間に設けられている。
【0022】
カムフォロア13,14は、共に中心線A3を中心として回転可能であり、中心線A3に沿った方向で異なる位置に設けられている。カムフォロア13の外周面40は、外側壁面24に接触及び離間可能であり、かつ、常に、内側壁面23から離間されている。すなわち、カムフォロア13の外周面40と内側壁面23との間にクリアランスがある。カムフォロア13の外周面40と外側壁面24とは、幅L4で接触する。カムフォロア14の外周面41は、内側壁面25に接触及び離間が可能であり、かつ、常に、外側壁面26から離間されている。
【0023】
すなわち、カムフォロア14の外周面41と外側壁面26との間にクリアランスがある。カムフォロア14の外周面41と内側壁面25とは、幅L5で接触する。具体例1では、幅L4と幅L5とが同一である。幅L4,L5は、中心線A3に沿った方向の長さである。カムフォロア13,14は、共に金属製、例えば、ステンレス製である。
【0024】
次に、共役カム装置10の作動例を説明する。駆動源の回転力が駆動軸16に伝達されると、回転部材11は、便宜上、図1において第1方向(時計回り)D1で回転するものとする。回転部材11の回転に伴い、中心線B1と中心線A3とが交差する交点Q1が中心線A1に沿った方向に移動可能である。
【0025】
まず、回転部材11の回転に伴い、図3のように、交点Q1が中心線A1から離間するように、カム溝20の中心線B1が湾曲されている領域に支持軸15が位置すると、内側壁面25とカムフォロア14との接触点E1から、支持軸15の中心線A3に向けて押し付け荷重が生じる。この押し付け荷重によって線分A2に沿った方向の分力が生じ、その分力で支持軸15が第1方向F1で付勢される。第1方向F1は、支持軸15が、中心線A1から離間する向きである。ここで、カムフォロア14は、反時計回りで回転され、外側壁面24に接触点E2で接触するカムフォロア13は、時計回りに回転される。接触点E1,E2は、共に線分A2から外れた位置にある。
【0026】
また、回転部材11の回転中、図4のように、交点Q1と中心線A1との距離が一定、つまり、変化しないように、カム溝20の中心線B1が湾曲されている領域に支持軸15が位置すると、接触点E1から、支持軸15の中心線A3に向かう押し付け荷重は生じない。さらに、外側壁面24とカムフォロア13との接触点E2から、支持軸15の中心線A3に向かう押し付け荷重も生じない。このため、支持軸15は、線分A2に沿った方向に移動しない。なお、カムフォロア14は、反時計回りで回転され、カムフォロア13は、時計回りに回転される。接触点E1,E2は、共に線分A2上に位置する。
【0027】
さらに、回転部材11の回転中、図5のように、交点Q1が中心線A1へ接近するように、カム溝20の中心線B1が湾曲されている領域に支持軸15が位置すると、外側壁面24とカムフォロア13との接触点E2から、支持軸15の中心線A3に向けて押し付け荷重が生じる。この押し付け荷重によって線分A2に沿った方向の分力が生じ、その分力で支持軸15が第2方向F2で作動する。第2方向F2は、支持軸15が、中心線A1に接近する向きである。なお、カムフォロア13は、時計回りで回転され、内側壁面25に接触するカムフォロア14は、反時計回りに回転される。接触点E1,E2は、共に線分A2から外れた位置にある。
【0028】
次に、回転部材11が図3で第2方向(反時計回り)D2で回転する例を説明する。この場合、外側壁面24とカムフォロア13との接触点E2から、支持軸15の中心線A3に向けて押し付け荷重が生じ、支持軸15が第2方向F2で作動する。なお、カムフォロア13は、反時計回りで回転され、内側壁面25に接触するカムフォロア14は、時計回りに回転される。接触点E1,E2は、共に線分A2から外れた位置にある。
【0029】
また、回転部材11が図4で第2方向D2で回転すると、接触点E2から、支持軸15の中心線A3に向かう押し付け荷重は生じない。さらに、接触点E1から、支持軸15の中心線A3に向かう押し付け荷重も生じない。このため、支持軸15は、線分A2に沿った方向に移動しない。なお、外側壁面24に接触するカムフォロア13は、反時計回りで回転され、内側壁面25に接触するカムフォロア14は、時計回りで回転される。接触点E1,E2は、共に線分A2上に位置する。
【0030】
さらに、回転部材11が図5で第2方向D2で回転すると、接触点E1から支持軸15の中心線A3に向けて押し付け荷重が生じ、支持軸15が第1方向F1で付勢される。なお、カムフォロア13は、時計回りで回転され、外側壁面24に接触するカムフォロア14は、反時計回りに回転される。接触点E1,E2は、共に線分A2から外れた位置にある。
【0031】
このように、共役カム装置10は、カムフォロア13の直径φ1と、カムフォロア14の直径φ2とが異なり、かつ、第1溝21の幅L2と、第2溝22の幅L3とが異なる。このため、回転部材11の回転方向、カム溝20の中心線B1の変位に関わりなく、カムフォロア13が回転部材11から荷重を受けるタイミングと、カムフォロア14が回転部材11から荷重を受けるタイミングとが異なる。つまり、回転部材11が1回転、つまり、360度回転する間に、回転部材11から荷重を受けるカムフォロアが切り替わる。したがって、カムフォロア13,14の摩耗、変形等を抑制でき、カムフォロア13,14の耐久性の低下を抑制できる。また、カムフォロア13,14が別々に支持軸15に作動力を伝達している状態で、それぞれ回転方向が切り替わることを防止できる。
【0032】
また、回転部材11の回転方向における位相が何れの位置であっても、カムフォロア13の外周面40は外側壁面24に接触され、かつ、カムフォロア14の外周面41は、内側壁面25に接触されている。このため、図1(A)のように、中心線A1に対して垂直な平面内において、カムフォロア13,14及び支持軸15が、第1方向F1の付勢力を受け、かつ、回転部材11の回転に伴うイナーシャを受けた場合に、回転部材11から支持軸15に伝達される作動力が遮断されることを防止できる。
【0033】
さらに、第1溝21及び第2溝22が、単数の回転部材11に設けられているため、部品点数の増加を抑制でき、かつ、部品の配置スペースの拡大を抑制できる。さらに、共役カム装置10は、幅L4,L5が同一である。このため、カムフォロア13が回転部材11から受ける荷重と、カムフォロア14が回転部材11から受ける荷重とが同じである。
【0034】
また、内側壁面25、外側壁面24、カムフォロア13の外周面40、及びカムフォロア14の外周面41は、共に中心線A1,A3と平行である。このため、支持軸15が第1方向F1、第2方向F2の何れに付勢される場合でも、支持軸15が中心線A3に沿った方向の荷重、もしくは分力を受けることを抑制できる。したがって、中心線A3に沿った方向の荷重を受けるために荷重受け機構を設けずに済み、部品点数の増加を抑制でき、かつ、部品の配置スぺースの増加を抑制できる。
【0035】
なお、カムフォロア13,14が回転部材11から受ける荷重は、支持軸15に取り付けられる作動対象部材を、第1方向F1及び第2方向F2にそれぞれ付勢するために必要な作動力と定義することも可能である。カムフォロア13が荷重を受ける回転部材11の回転角度の合計は、360度未満であり、カムフォロア14が荷重を受ける回転部材11の回転角度の合計は、360度未満である。また、カムフォロア13が荷重を受ける回転部材11の回転角度の合計と、カムフォロア14が荷重を受ける回転部材11の回転角度の合計とを加算すると、360度以下である。
【0036】
(具体例2)
図6に示す共役カム装置10の具体例2では、カムフォロア13の外周面40と外側壁面24とが幅L6で接触され、カムフォロア14の外周面41と内側壁面25とが幅L5で接触される。幅L6は、幅L5を超えている。共役カム装置10の具体例2における他の構成は、共役カム装置10の具体例1における他の構成と同じである。共役カム装置10の具体例2において、回転部材11が図3図4及び図5で第1方向D1で回転した場合の作用効果、回転部材11が第2方向D2で回転した場合の作用効果は、共役カム装置10の具体例1の作用効果と同様である。
【0037】
さらに、共役カム装置10の具体例2では、幅L6が幅L5を超えており、カムフォロア13が受ける荷重(負荷)が、カムフォロア14が受ける荷重より大きい環境で使用可能である。
【0038】
(具体例3)
共役カム装置の具体例を、図7(A),(B)、図8(A),(B)、図9(A),(B)、図10(A)を参照して説明する。共役カム装置50は、回転部材51、カムフォロア13,14、支持軸15を有する。回転部材51は、軸孔52を有する円筒部材であり、軸孔52に駆動軸16が嵌合して固定されている。回転部材51は、駆動軸16から回転力が伝達されると、中心線A1を中心として、第1方向D1及び第2方向D2の何れにも回転可能である。中心線A1は、回転部材51の回転中心を示す仮想線である。回転部材51の外周面には、全周に亘ってカム溝53が設けられている。カム溝53は、回転部材51の半径方向の深さを有する。回転部材51は、中心線A1に対して垂直な第1表面(端面)54及び第2表面(端面)55を有する。第1表面54と第2表面55とは、中心線A1に沿った方向で異なる位置に設けられている。
【0039】
カム溝53は、中心線A1に沿った方向で第1表面54と第2表面55との間に設けられている。また、カム溝53は、壁面56,57を有する。壁面56と壁面57とは、回転部材51の全周に亘って設けられている。壁面56と壁面57との間の間隔、つまり、カム溝53の幅L1は、回転部材51の全周に亘って均一である。幅L7は、壁面56と壁面57との間の最短距離である。図8(A),(B)のように、カム溝53の中心線B1は、中心線A1に沿った方向に変位している。具体的には、回転部材51の全周において、中心線B1が中心線A1で略同じ箇所に位置する領域と、中心線B1の位置が中心線A1に沿った方向に変位した領域とがある。
【0040】
カムフォロア13,14は、カム溝53に配置されている。中心線A1を中心とする回転部材51の半径方向で、カムフォロア13はカムフォロア14より外側に配置されている。カム溝53の幅L7は、カムフォロア13,14の直径φ3より大きい。便宜上、カムフォロア13,14及び支持軸15は、ガイド部材等によって中心線A1に沿った方向に作動可能に支持されている。支持軸15には、図示しないアーム等が連結されている。また、中心線A1に対して垂直な平面視である図7(A)において、中心線A1と中心線A3とが交差する位置に設けられている例を説明する。また、中心線A1を含む側面視である図7(B)において、中心線A1と中心線A3とが、略90度の角度で配置されている例を説明する。
【0041】
共役カム装置10の具体例3の作用を、図8(A),(B)、図9(A),(B)を参照して説明する。図8(A),(B)、図9(A),(B)は、中心線A1を含む共役カム装置50の正面図である。図8(A),(B)では、中心線A1と中心線A3とが交差する位置が、交点Q3として示されている。まず、図7(A)において、回転部材51が第1方向D1で回転するものとする。ここで、図8(A)に示す中心線B1が第1表面54に近づくように、カム溝53の中心線B1が湾曲されている領域に支持軸15が位置すると、壁面57と、カムフォロア13,14とが接触点E3で接触し、支持軸15は第1方向F4で付勢される。第1方向F4は、中心線A1に沿った方向である。カムフォロア13,14は、共に時計回りに回転する。なお、壁面56とカムフォロア13,14との間にクリアランスがある。
【0042】
さらに、中心線B1が中心線A1に沿った方向に変位しない領域に支持軸15が位置すると、回転部材51が第1方向D1で回転しても、支持軸15は、中心線A1に沿った方向に移動しない。
【0043】
さらに、図8(B)に示す中心線B1が第2表面55に近づくように、カム溝53の中心線B1が湾曲されている領域に支持軸15が位置すると、壁面56と、カムフォロア13,14とが接触点E4で接触し、支持軸15は第2方向F5で付勢される。カムフォロア13,14は、共に反時計回りに回転する。なお、壁面57とカムフォロア13,14との間にクリアランスがある。
【0044】
これに対して、図7(A)のように、回転部材51が第1方向D1で回転するものとす。ここで、図9(A)に示す中心線B1が第1表面54に近づくように、カム溝53の中心線B1が湾曲されている領域に支持軸15が位置すると、壁面56と、カムフォロア13,14とが接触点E4で接触し、支持軸15は第2方向F5で付勢される。カムフォロア13,14は、共に時計回りに回転する。なお、壁面57とカムフォロア13,14との間にクリアランスがある。
【0045】
さらに、中心線B1が中心線A1に沿った方向に変位しない領域に支持軸15が位置すると、回転部材51が第2方向D2で回転しても、支持軸15は、中心線A1に沿った方向に移動しない。
【0046】
さらに、図9(B)に示す中心線B1が第2表面55に近づくように、カム溝53の中心線B1が湾曲されている領域に支持軸15が位置すると、壁面57と、カムフォロア13,14とが接触点E3で接触し、支持軸15は第1方向F4で付勢される。カムフォロア13,14は、共に反時計回りに回転する。なお、壁面56とカムフォロア13,14との間にクリアランスがある。
【0047】
なお、回転部材51が第1方向D1で回転する場合、または回転部材51が第2方向D2で回転する場合の何れにおいても、カムフォロア13は、図10(A)に示す幅L4で壁面56,57に接触される。回転部材51が第1方向D1で回転する場合、または回転部材51が第2方向D2で回転する場合の何れにおいても、カムフォロア14は、図10(A)に示す幅L5で壁面56,57に接触される。幅L4と幅L5とは同じである。
【0048】
このように、共役カム装置50の具体例3では、回転部材51の回転方向に関わりなく、カムフォロア13,14が回転部材51に接触される。このため、カムフォロア13,14が、それぞれ単独で受ける荷重を低減可能である。また、壁面56,57、外周面40,41は、共に中心線A1,A3と平行である。したがって、支持軸15が中心線A1,A3に沿った方向の荷重、もしくは分力を受けることを抑制でき、部品点数の増加を抑制できる。
【0049】
さらに、カムフォロア13が、中心線A1を中心として壁面56,57に接触する円の半径は、カムフォロア14が、中心線A1を中心として壁面56,57に接触する円の半径より大きい。このため、カムフォロア13が中心線A1を中心として公転する周速度は、カムフォロア14が中心線A1を中心として公転する周速度を超える。また、カムフォロア13が中心線A3を中心として回転する速度は、カムフォロア14が中心線A3を中心として回転する速度を超える。つまり、カムフォロア13が壁面56,57と接触して摩耗する量は、カムフォロア14が壁面56,57と接触して摩耗する量を超える。本実施形態では、カムフォロア13とカムフォロア14とが、支持軸15に別々に取り付けられているため、摩耗量が多いカムフォロア13を単独で交換可能である。
【0050】
(具体例4)
共役カム装置の具体例4が、図10(B)に示されている。図10(B)に示す共役カム装置50においては、カムフォロア13の外周面40と壁面56,57とが幅L4で接触され、カムフォロア14の外周面41と壁面56,57とが幅L8で接触される。幅L4は、幅L8を超えている。共役カム装置50の具体例4における他の構成は、共役カム装置50の具体例3における他の構成と同じである。共役カム装置50の具体例4において、回転部材51が図7(A)で第1方向D1で回転した場合の作用効果、回転部材51が第2方向D2で回転した場合の作用効果は、共役カム装置50の具体例3の作用効果と同様である。
【0051】
さらに、カムフォロア13が中心線A1を中心として公転する周速度は、カムフォロア14が中心線A1を中心として公転する周速度を超える。また、カムフォロア13が中心線A3を中心として回転する速度は、カムフォロア14が中心線A3を中心として回転する速度を超える。しかし、共役カム装置50の具体例4では、幅L4が幅L8を超えている。つまり、カムフォロア13の外周面40の外周面に加わる単位面積あたりの荷重を、カムフォロア14の外周面40の外周面に加わる単位面積あたりの荷重よりも低減可能である。したがって、カムフォロア13の摩耗量の増加を抑制可能である。
【0052】
(補足説明)
図1乃至図6において、カムフォロア13の外周面40と内側壁面23とのクリアランス量、カムフォロア13の外周面40と外側壁面24,31とのクリアランス量は、カムフォロア13の直径φ1と、第1溝21の幅L2との差に応じて定まる。カムフォロア14の外周面41と内側壁面25とのクリアランス量、カムフォロア14の外周面41と外側壁面26,31とのクリアランス量は、カムフォロア14の直径φ2と、第2溝22の幅L3との差に応じて定まる。
【0053】
図1乃至図6では、第1構造及び第2構造の何れかを選択可能である。第1構造は、回転部材11の回転方向の位相に関わりなく、カムフォロア13の外周面40と外側壁面24とが常に接触し、かつ、カムフォロア14の外周面41と内側壁面25とが常に接触する構造である。第2構造は、回転部材11の回転方向の位相の変化に伴い、カムフォロア13の外周面40と外側壁面24との接触点、カムフォロア14の外周面41と内側壁面25との接触点の何れか一方が、が常に接触する構造である。
【0054】
図7乃至図10において、カムフォロア13の外周面40と壁面56,57とのクリアランス量は、カムフォロア13の直径φ3と、カム溝53の幅L7との差に応じて定まる。カムフォロア14の外周面41と壁面56,57とのクリアランス量は、カムフォロア14の直径φ3と、カム溝53の幅L7との差に応じて定まる。
【0055】
また、カムフォロア13,14、支持軸15は、図8及び図9で中心線A1に沿った方向に直線状に移動可能であるものの他、中心線A1に対して交差する方向に直線状に移動可能なもの、円弧状に移動可能であってもよい。
【0056】
本実施形態で開示された事項の技術的意味の一例は、次の通りである。共役カム装置10は、共役カム装置の一例である。回転部材11は、回転部材の一例である。カム溝20,53は、カム溝の一例である。カムフォロア13,14は、カムフォロアの一例である。カムフォロア13は、第1カムフォロアの一例である。カムフォロア14は、第2カムフォロアの一例である。内側壁面23,25、外側壁面24,26、壁面56,57は、壁面の一例である。第1溝21は、第1溝の一例であり、第2溝22は、第2溝の一例である。外周面40は、第1外周面の一例である。外周面41は、第2外周面の一例である。第1方向D1は、第1回転方向の一例であり、第2方向D2は、第2回転方向の一例である。中心線A1は、第1中心線の一例である。中心線A3は、第2中心線の一例である。第1表面18は、表面の一例である。
【0057】
本実施形態で説明した装置は、図面を用いて説明したものに限定されない。例えば、作動対象部材は、支持軸とアームとが別部材であってもよいし、支持軸とアームとが単数の要素であってもよい。また、作動対象部は、アームの他、チャック、リンク、レバー等であってもよい。さらに、中心線に対して垂直な平面内で作動対象部材が作動する方向は、中心線に対して交差する方向、または、中心線に対して交差しない方向の何れでもよい。さらに、中心線に対して垂直な平面内で作動対象部材が作動する軌跡(軌道)は、直線状、円弧状、曲線状等のうちの何れでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本開示の装置は、回転部材の回転力を、カムフォロアを利用して作動対象部材の作動力に変換することに利用可能である。
【符号の説明】
【0059】
10…共役カム装置、11…回転部材、13,14…カムフォロア、18…第1表面、20,53…カム溝、21…第1溝、22…第2溝、23,25,30…内側壁面、24,26,31…外側壁面、40,41…外周面、56,57…壁面、A1,A3…中心線、L2,L3,L4,L5,L6,L8…幅、φ1,φ2,φ3…直径
【要約】
【課題】部品点数の増加を抑制可能な共役カム装置を提供する。
【解決手段】回転部材11と、回転部材11に設けられた環状のカム溝20と、カム溝20内に設けられたカムフォロア13,14と、カムフォロア13,14を支持する支持軸15と、を有する共役カム装置10において、カムフォロア13,13は、回転部材11の中心線A1に沿った方向に並べて配置され、カム溝20は、内側壁面25及び外側壁面24を有し、カムフォロア13は、外側壁面24に接触する外周面40を有し、カムフォロア14は、内側壁面25に接触する外周面41を有し、中心線A1に沿った方向の平面内で、内側壁面25及び外側壁面24は中心線A1と平行であり、かつ、外周面40,41は中心線A1と平行である。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10