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特許7220016複数の繊維束を備えた担体部材を製造するための装置及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-01
(45)【発行日】2023-02-09
(54)【発明の名称】複数の繊維束を備えた担体部材を製造するための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   D05C 15/18 20060101AFI20230202BHJP
【FI】
D05C15/18
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020520544
(86)(22)【出願日】2018-10-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-17
(86)【国際出願番号】 EP2018076810
(87)【国際公開番号】W WO2019072641
(87)【国際公開日】2019-04-18
【審査請求日】2021-09-15
(31)【優先権主張番号】17195790.5
(32)【優先日】2017-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】598132646
【氏名又は名称】グロツ・ベッケルト コマンディートゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100123342
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 承平
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス ブルスケ
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ヴィンターホーラー
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-504148(JP,A)
【文献】国際公開第2016/092194(WO,A1)
【文献】特開昭61-041356(JP,A)
【文献】国際公開第2008/111997(WO,A1)
【文献】特表2008-545551(JP,A)
【文献】特表平05-508362(JP,A)
【文献】特許第2863318(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 70/00 - 70/88
D04H 1/00 - 18/04
D05C 15/16 - 15/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の繊維束(22)を備えた担体部材(21)を製造するための装置(20)であって、
ストック(25)から少なくとも1つの繊維束かせ(26)を取出し、それをそれぞれ割り当てられた対応する供給チャネル(28)に搬送するよう構成された繊維束搬送部(27)と、
初期位置(I)と作業位置(II)との間で移動が可能な少なくとも1つの吸引チャネル(37)であって、各前記吸引チャネル(37)は作業領域(31)内に配置されて前記初期位置(I)にある前記供給チャネル(28)にそれぞれ流体的に接続され、前記供給チャネル(28)から離れて、作業位置(II)にあって前記作業領域(31)の外側に配置される、少なくとも1つの前記吸引チャネル(37)と、
少なくとも1つの前記吸引チャネル(37)に流体的に接続され、少なくとも1つの前記吸引チャネル(37)に気流(L)を生成するように構成され、前記気流(L)の支持により割り当てられた前記供給チャネル(28)から少なくとも1つの前記繊維束かせ(26)の端部(26a)を挿入するとともに、前記作業位置(II)の前記吸引チャネル(37)に存在する少なくとも1つの前記繊維束かせ(26)の前記端部(26a)に吸引力を加える、吸引部(40)と、
針保持部(52)に配置され、それぞれ針フック(54)を備えた少なくとも1つの針(53)であって、前記針保持部(52)は少なくとも1つの前記針(53)を引き込み位置(III)と引き出し位置(IV)との間で移動させ、前記作業領域(31)における前記吸引チャネル(37)の前記作業位置(II)に露出し、長手方向(R)に延びる、少なくとも1つの前記繊維束かせ(26)を、それぞれ割り当てられた各前記針(53)の前記針フック(54)に係合し、前記針(53)により前記担体部材(21)を通してそれを移動させるように構成された、前記少なくとも1つの針(53)と、
を備える装置。
【請求項2】
位置決め部(45)が設けられ、搬送方向(T)に前記担体部材(21)を移動及び/又は位置決めするように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記位置決め部(45)は前記作業領域(31)と前記針保持部(52)との間に配置される、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記繊維束搬送部(27)は、少なくとも1つの前記繊維束かせ(26)の所定の長さ分を、前記供給チャネル(28)を通して、前記供給チャネル(28)と流体的に接続された前記各吸引チャネル(37)内における、前記少なくとも1つの吸引管(37)の前記初期位置(I)に、搬送するように構成される、請求項1乃至3の何れか1つに記載の装置。
【請求項5】
少なくとも1つの前記繊維束かせ(26)の少なくとも1つの前記端部(26a)を案内するために前記作業領域(31)に配置された案内装置(59)を備えた案内部(58)が存在し、前記案内装置(59)は少なくとも1つの前記繊維束かせ(26)の各端部(26a)用の個別の案内通路(60)を備える、請求項1乃至4の何れか1つに記載の装置。
【請求項6】
少なくとも1つの前記吸引チャネル(37)は、その初期位置(I)において、前記案内装置(59)の前記案内通路(60)を通じて延びている、請求項に記載の装置。
【請求項7】
前記案内装置(59)は、長手方向(R)に、互いに間隔をおいて配置され、隙間(62)が形成された2つの案内体(61)を備え、少なくとも1つの前記案内通路(60)は2つの整列した案内孔(63)によって形成され、共通の前記案内通路(60)の各前記案内孔(63)は前記2つの案内体(61)の1つに配置されている、ことを特徴とする請求項又はに記載の装置。
【請求項8】
前記案内部(58)は、前記案内装置(59)の前記案内通路(60)を、前記長手方向(R)に直交する平面に平行な、所定の経路(B)に沿って移動させるように構成されている、請求項乃至の何れか1つに記載の装置。
【請求項9】
前記経路(B)は閉じた、少なくとも部分的に曲線である経路(B)である、請求項に記載の装置。
【請求項10】
少なくとも1つの前記針(53)が、経路(B)で画定され且つ長手方向(R)に延びるその引き出し位置(IV)又はその引き込み位置(III)において、通路と交差するように、前記針保持部(52)が構成されている、請求項1乃至9の何れか1つに記載の装置。
【請求項11】
前記作業領域(31)に配置された支持部品(68)を休止位置(V)と支持位置(VI)との間で移動させるよう構成された支持部(67)が存在し、前記支持部品(68)はそれぞれ前記繊維束かせ(26)の各前記端部(26a)用の支持開口部(69)を有する、請求項1乃至10の何れか1つに記載の装置。
【請求項12】
少なくとも1つの前記吸引チャネル(37)は、その初期位置(I)において、それぞれ1つの前記支持開口部(69)を通じて延びる、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記支持部(68)の少なくとも1つの前記支持開口部(69)は、前記支持位置(VI)において前記針保持部(52)が各割り当てられた前記針(53)を移動させる平面までの距離と、前記作業位置(II)にある各割り当てられた前記吸引チャネル(37)までの距離とが実質的に同じである、ことを特徴とする請求項11又は12に記載の装置。
【請求項14】
第1の切断部(73)は、前記供給チャネル(28)に隣接して設けられ、少なくとも1つの前記繊維束かせ(26)の前記端部(26a)を切断するように構成されている、請求項1乃至13の何れか1つに記載の装置。
【請求項15】
第2の切断部(76)は、少なくとも1つの前記針(53)によって、前記担体部材(21)を通って移動する前記繊維束かせ(26)の前記端部(26a)のループを切断するように配置及び構成される、請求項1乃至14の何れか1つに記載の装置。
【請求項16】
少なくとも1つの繊維束かせ(26)を有するストック(25)と、少なくとも1つの前記繊維束かせ(26)のための繊維束搬送部(27)と、少なくとも1つの供給チャネル(28)と、少なくとも1つの吸引チャネル(37)と、少なくとも1つの前記吸引チャネル(37)に流体接続された吸引部(40)と、針保持部(52)に配置され且つそれぞれ針フック(54)を備える少なくとも1つの針(53)とを備えた装置(20)を用いて、複数の繊維束(22)を備えた担体部材(21)を製造する方法であって、
各前記吸引チャネル(37)がそれぞれの前記供給チャネル(28)に流体的に接続されるように、作業領域(31)の初期位置(I)に少なくとも1つの前記吸引チャネル(37)を移動させる工程と、
気流(L)の支持により割り当てられた前記供給チャネル(28)に存在する前記繊維束かせ(26)の端部(26a)を吸引するために、前記吸引部(40)によって少なくとも1つの前記吸引チャネル(37)に前記気流(L)を生成する工程と、
前記繊維束かせ(26)の少なくとも1つの前記端部(26a)の所定の長さ分を、少なくとも1つの前記供給チャネル(28)と流体的に接続された前記吸引チャネル(37)に、少なくとも1つの前記供給チャネル(28)を通じて前記繊維束搬送部(27)により搬送する工程と、
少なくとも1つの前記吸引チャネル(37)を、前記供給チャネル(28)から離れた作業位置(II)にある前記作業領域(31)から移動させ、前記吸引チャネル(37)の前記気流(L)を前記作業位置(II)で維持する工程と、
前記作業領域(31)において前記吸引チャネル(37)の前記作業位置(II)で露出し、長手方向(R)に延びる前記繊維束かせ(26)の端部(26a)を各針の前記針フック(54)に係合させ、前記針(53)によって前記担体部材(21)を通して移動させるために、少なくとも1つの前記針(53)を引き込み位置(III)と引き出し位置(IV)との間で移動させる工程と、
を備える方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の繊維束を備えた担体部材(基材)(Traegerteil)を製造するための装置及び方法に関する。特に、この担体部材は、軽量構造の部材、例えば、発泡材料で作られた担体部材でよい。備えられた繊維束をプラスチック材料、例えば、樹脂に浸漬させ、それにより複合材料が得られる。
【背景技術】
【0002】
繊維束を備えたかかる担体部材は、特許文献1により知られている。製造のために、最初に担体部材に穴が形成され、続いて形成された穴を通して繊維束を引き出す。このためには針が使用される。このような方法は、特許文献2及び特許文献3によっても知られている。
【0003】
特許文献4は、担体部材にそのような繊維束を引き込むための縫製装置を記載している。この縫製装置は、特に、可動針部により一箇所でそれぞれ開閉できるアイを有する針を備えている。
【0004】
特許文献5は、担体部材を通して引くことができる補強かせループを設けるための装置及び方法に関する。このために、繊維かせを固定するためのクランプを備えたプロファイル本体が提供される。プロファイル本体のその自由端に固定され、そこから離れて解放される繊維かせは、スライドによってループに形成され、そのループの形成後に切断装置によって所望の長さに切断される。そしてそのループは針で担体部材を通して引き込み得る。
【0005】
担体部材を通してループを引くための装置及び方法は、特許文献6に記載されている。そこでは、繊維かせが受入装置のローラによって供給される。続いて、受入装置がスライドにより直線的且つ繊維かせの長手方向に平行に移動され、その自由端と切断装置との間の繊維かせ部の中央に配置された受入装置の間隙にまで至る。針は、担体部材を通して間隙へと動き、繊維かせを捕らえ、担体部材を通して引き込む。
【0006】
繊維かせが回転可能な装置によって担体部材を通して穿刺された針の周りに配置される装置は、特許文献7に記載されている。その後、この針を引き込み、ループが形成された状態で担体部材を通して引き込むことができる。繊維束かせを針の針フックに挿入するための類似の装置は、例えば、特許文献8及び特許文献9により知られている。
【0007】
特許文献10は、プラスチック部品の製造中にガラス繊維の形態の強化材料を分散するための方法を記載している。その場合、粗紡17が加圧空気の気流で運ばれ、その個々の端部が溶解され、溶解された個々の繊維が穿孔板金に吹き付けられる。穿孔板金の反対側では、空気が吸い込まれ、穿孔板金に繊維が固着する。その後、プラスチック被覆を施すことができる。類似の方法は特許文献11にも記載されている。
【0008】
特許文献12は、繊維帯を処理する繊維加工機のカレンダーディスクの把持列への繊維帯の供給を記載している。空気を案内することにより、繊維帯をカレンダーギャップに通し、続いてカレンダーディスクに供給されて、糸繊維帯を把持することができる。特許文献13で知られている方法では、粗紡は搬送ベルト上に運ばれ、搬送ベルトに負圧で保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】独国特許出願公開第102005024408号明細書
【文献】国際公開第2014/086786号
【文献】独国特許出願公開第102014015976号明細書
【文献】独国特許第102006056570号明細書
【文献】国際公開第2016/059110号
【文献】独国特許出願公開第102007055684号明細書
【文献】独国特許出願公開第102009050904号明細書
【文献】独国特許出願公開第102007033869号明細書
【文献】独国特許出願公開第102013111794号明細書
【文献】独国特許出願公開第2025915号明細書
【文献】独国特許出願公開第2307490号明細書
【文献】欧州特許第0736618号明細書
【文献】独国特許出願公開第102015110855号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
引用された先行技術に鑑み、本発明の目的は複数の繊維束を備えた担体部材の製造をより効率的にするための装置及び方法を提供することと考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、請求項1の構成要件を備えた装置と、請求項17の構成要件を備えた方法によって解決される。
【0012】
本願発明に係る装置は、ストックから少なくとも1つの繊維束かせを取り出し、移動するように構成された繊維束搬送部を備える。少なくとも1つの供給チャネルが存在し、そこではそれぞれ繊維束搬送部により1つの繊維束かせの搬送が可能である。この装置は、吸引部と流体接続された少なくとも1つの吸引チャネルをさらに備える。吸引部によって、吸引部とは反対側にある吸引チャネルの端部から特に離れた場所に向けられた、少なくとも1つのその吸引チャネルで気流を作り出すことができる。
【0013】
この少なくとも1つの吸引チャネルは、初期位置と作業位置との間で、長手方向に直線的に移動可能であるのが好ましい。初期位置では、少なくとも1つの吸引チャネルが装置の作業領域に配置される。初期位置において、各吸引チャネルは、それぞれ1つの対応する割り当てられた供給チャネルと流体的に接続されている。初期位置で気流が生成されると、供給チャネルに負圧が発生し、供給チャネルに存在する繊維束かせの端部を吸い込む。この初期位置において、繊維束かせの所定の長さ分が、吸引チャネルへと延びる繊維束搬送部によって、搬送されることができる。
【0014】
この少なくとも1つの吸引チャネルは、作業領域から作業位置へと移動することができる。作業位置では、それぞれに割り当てられた供給チャネルまで、距離をおいて配置される。この作業位置では気流は維持される。そうすることで、作業位置に存在する繊維束かせの端部は吸引力を受け、吸引チャネル及び供給チャネルの外側に、作業領域にわたる少なくとも自由にアクセス可能な区分に延びる。
【0015】
この装置は、少なくとも1つの針が配置された針保持部をさらに備える。各針は針フックを有する。針保持部によって、少なくとも1つのその針を引き込み位置と引き出し位置の間で動かすことができる。この動きにより、各針は割り当てられた繊維束かせに作業領域で係合でき、針の動きにより繊維束かせはループが形成された状態で担体部材を通して動かされ得る。各針は、その長手方向軸に沿って引き込み位置と引き出し位置との間を移動する。複数の針が存在し、全ての長手方向軸が同じ共通平面に配置されることが好ましい。
【0016】
この装置により、複数の針を短い距離で針保持部に配置することができる。対応する距離で、繊維束かせを作業領域内で互いに隣接させて配置することができる。各繊維束かせの配置及び供給又は運搬には、長手方向を横切る低いスペースが必要である。担体部材のサイズ及び担体部材に導入される繊維束の所望の長さに応じて、非常に高い繊維束密度が担体部材に非常に効率的に形成される。
【0017】
長手方向とは、少なくとも1つの供給チャネル及びそれぞれに対応して割り当てられた吸引チャネルの、互いに面する開口部を結ぶ、作業領域を通る直線が延びる方向を意味する。少なくとも1つの繊維かせは、長手方向を横断する針又は案内装置によって係合されない限り、少なくとも1つの供給チャネルとそれぞれに割り当てられた吸引チャネルとの間の作業領域で、長手方向に方向付けられる。
【0018】
この装置は、装置の個々の駆動部又は個々の部品、特に針保持部、吸引部、少なくとも1つの吸引チャネルを移動させるための駆動部、搬送部、及びオプションとしての追加の駆動部又は部品を制御するための制御装置を備えてよい。この制御装置は、記載された方法を実施するように特に構成される。
【0019】
この装置は位置決め部を備えることが好ましい。この位置決め部は、担体部材を特に段階的に搬送方向に動かすか、又はこの方向に位置決めするように構成されている。搬送方向は、長手方向に平行に向いている。
【0020】
そのようにすると、位置決め部が作業領域と針保持部との間に配置されるので便利である。従って、針保持部は作業領域の外側に配置することができ、位置決め部から見て作業領域とは反対側にある。この構成において、繊維かせは、それぞれの針によって担体部材を通して引き抜かれる。これに代えて、作業領域に針保持部を配置し、担体部材を通してそれぞれの針で少なくとも1つの繊維かせを押し入れることも可能である。
【0021】
好ましい態様において、繊維束搬送部は、例えば、少なくとも2つのローラを備えたローラ装置を有する。一方又は両方のローラを駆動することにより、少なくとも1つの繊維束かせを規定された長さ分だけを搬送することができる。繊維束搬送部は、例えば、ローラ又はそれと回転可能に連結された部分の回転位置を検出し、そこから繊維束かせのそれぞれの搬送長さを判定することができる。
【0022】
案内装置を有する案内部が備えられていると都合がよい。案内装置は作業領域に配置される。案内装置は、提供された繊維束かせごとに個別の案内通路を備える。そうすることで、それぞれ1つの繊維束かせを、案内のために割り当てられた案内通路を通して案内することができる。
【0023】
少なくとも1つの吸引チャネルは、案内部の1つの案内通路を通じてそれぞれその初期位置に延びることが好ましい。繊維束かせの端部が吸引チャネルに供給され、吸引チャネルの作業位置への引き込み移動の後、繊維束かせの各部分が案内通路に通される。この案内装置により、作業領域内で繊維束かせをその長手方向に対して横断方向に移動又は位置決めすることができる。
【0024】
案内装置が2つの案内体を備えていると都合がよい。2つの案内体は、案内通路の範囲内に、隙間が形成された状態で、互いに距離を置いて配置される。この隙間は、互いに整列した2つの案内孔内の案内通路を分離する。各案内孔は、2つの案内体の1つを通って長手方向に延びている。隙間は、針フックにそれぞれの繊維束かせを捉えるために、対応して割り当てられた針の自由端を受け入れるように、配置され及び構成され得る。例えば、案内体は一体的に形成され、それぞれ板状の部分を形成することができる。好ましい態様において、少なくとも1つの案内通路は周方向に常に完全に閉じられ、そこでの繊維束かせの供給は少なくとも1つの吸引チャネルによって実行される。
【0025】
この案内部が所定の経路に沿って案内装置を移動させるように構成されていると都合がよい。この経路は、長手方向に直交するよう方向付けられた平面に平行に延びている。経路は、特に閉じられた、少なくとも部分的に曲線状の経路として構成されている。例えば、この経路は、円形及び/又は楕円形及び/又は別の少なくとも部分的に曲線形状の、任意のものとすることができる。この案内装置が経路に沿って移動することにより、少なくとも1つの繊維束かせも長手方向に対して横断方向に移動し、繊維束かせにおける各針の係合、特に、割り当てられた各針の針フックによる少なくとも1つの繊維束かせを捉えることを容易にすることができる。
【0026】
好ましい態様において、針は、その引き出し位置又は引き込み位置で、案内装置のそれぞれ割り当てられた所定の案内通路が移動する経路によって画定される、長手方向に延びる通路と交差することとなる。針は通路を貫通し、その断面は経路によって画定される。この通路内において、繊維束かせでの針の確実な係合が行われ得る。経路沿いの案内装置の、その後の針に対する相対移動によって、繊維束かせは、針又は針フックの周りにキンク又は湾曲が形成された状態で導かれる。
【0027】
好ましい態様において、装置はさらに支持部を備える。この支持部は、作業領域に配置された支持部品を有し、支持部品を休止位置と支持位置との間で移動させるように構成される。支持部品は少なくとも1つの支持開口部を有し、支持開口部の数は供給チャネルの数及び吸引チャネルの数又は繊維束かせの数に対応する。初期位置において、少なくとも1つの吸引チャネルは、それぞれ割り当てられた1つの支持開口部を通じて延びていることが好ましい。これにより、吸引チャネルが作業領域の外側のその作業位置に移動すれば、案内通路と同様に、それぞれの支持開口部を通じて繊維束かせの糸通しを行うことができる。
【0028】
繊維束かせにそれぞれ割り当てられた針の長手方向軸が存在する平面が、作業位置にある吸引チャネルの自由端と支持位置にある支持部の支持開口部との間の略中心に配置されていると都合がよい。このようにすることにより、実質的に等しい長さの脚を有する繊維束ループを形成することができる。
【0029】
さらに、針が繊維束かせとともに担体部材を通して動く間、案内通路の位置は、案内通路が針の長手方向軸の延長部に実質的に配置される経路にあることが好ましい。このような構成によれば、担体部材を通して動く際に、担体部材の材料に繊維束かせが食い込み、よって担体部材を通る孔や開口部が拡大することを回避することができる。
【0030】
その他の好ましい態様では、第1の切断部が供給チャネルに隣接して設けられる。この第1の切断部によって、少なくとも1つの繊維束かせを供給チャネルの開口部に隣接して切断することができる。第2の切断部が存在する場合も好ましい。第2の切断部は、担体部材を通って延び、担体部材の一方の側に形成された繊維束のループを切断するように構成される。
【0031】
担体部材を貫通する複数の繊維束を備えた担体部材の製造方法は以下の通り進められる。
【0032】
最初に、少なくとも1つの吸引チャネルを作業領域内に移動させ、割り当てられた供給チャネルとそれぞれ流体的に接続する。続いて、少なくとも1つの吸引チャネル及びそれに流体的に接続された供給チャネルの吸引部によって気流が生成される。繊維束搬送部によって、規定の長さを有する少なくとも1つの繊維束かせの一部がストックから取り出され、各供給チャネル内にそしてさらに各吸引チャネル内に搬送される。少なくとも1つのその繊維束かせは、吸引力による気流によって繊維束搬送部から離れて維持され、いわゆる緊張状態になる。
【0033】
続いて、少なくとも1つの吸引チャネルは作業領域外の作業位置に移動させられる。そのため少なくとも1つの繊維束かせは、作業領域で少なくとも部分的にアクセス可能となる。吸引チャネルの作業位置において、気流は少なくとも1つの繊維束かせを伸張させるために維持される。
【0034】
針保持部によって、少なくとも1つの針を引き込み位置と引き出し位置との間で移動させる。この移動の間、針は担体部材を通して2回移動する。これら2つの動作の間に、針は作業領域の1つの位置で予め割り当てられた繊維束かせを捉え、その繊維束かせを担体部材を通して移動させ、よってループが形成される。供給チャネルに隣接する繊維束かせの切断は、繊維束かせが担体部材を通って移動する前に行われることが好ましい。
【0035】
装置及び方法の優位性のある実施例は、従属項、発明の詳細な説明、及び図面に記載されている。以下では、好ましい実施例を、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。図は以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】複数の繊維束を備えた担体部材を製造中における、装置の実施例の概略構成図である。
図2】複数の繊維束を備えた担体部材を製造中における、装置の実施例の概略構成図である。
図3】複数の繊維束を備えた担体部材を製造中における、装置の実施例の概略構成図である。
図4】複数の繊維束を備えた担体部材を製造中における、装置の実施例の概略構成図である。
図5】複数の繊維束を備えた担体部材を製造中における、装置の実施例の概略構成図である。
図6】複数の繊維束を備えた担体部材を製造中における、装置の実施例の概略構成図である。
図7図1乃至図6に示された装置によって担体部材を通して繊維束が引かれた後のループ形成の概略図である。
図8図7に形成されたループの切断の概略図である。
図9】装置の少なくとも1つの針に対する経路に沿って移動中の、図1乃至図6にそれぞれ示された装置の案内装置の位置を示す模範図である。
図10】装置の少なくとも1つの針に対する経路に沿って移動中の、図1乃至図6にそれぞれ示された装置の案内装置の位置を示す模範図である。
図11】上面から見た、複数の繊維束を備えた担体部材の概略的な部分図である。
図12】矢印XIIが示す側面から見た、図11の担体部材の図である。
図13】装置の案内装置及び支持装置の実施例の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1乃至図6において、複数の繊維束22を備えた担体部材21を製造するための装置20の実施例が、構成図の様式で概略的に示されている。繊維束22は、その両端部が担体部材21から突出してよいことから、担体部材21の上側及び下側を越えて延びている。繊維束22が担体部材21を通して延びる方向は、担体部材の上側及び/又は下側に対して直交及び/又は傾斜するように向けられ得る。そうすることで、繊維束22は、互いに平行に向くか、又は異なる方向に延ばし得る。例えば、複数の繊維束22を有する群を形成することができ、異なる群の繊維束22は異なる方向に延び、同じ群内の繊維束は平行に向く。
【0038】
実施例において、担体部材21は板状に形成され、それらは図11及び図12に概略的に示されている。この繊維束22が備えられた担体部材21は、複合材料を製造する際の半製品として供給される。繊維束22は粗紡の断片から作られることが好ましく、例えば、担体部材21を通る繊維束22はプラスチック又は樹脂で浸漬又は浸透させ得る。担体部材21の上側及び/又は下側には、繊維強化複合材料を得るために、追加の繊維束又は繊維マットを設けて樹脂又はプラスチックで浸漬してよい。図11及び図12から明らかなように、担体部材21を通る繊維束22の2つの端領域は担体部材から延びており、担体部材21の上側又は下側にそれぞれ設けられ得る繊維束又は繊維マットと部材同士の結合により接続可能である。
【0039】
実施例によれば、繊維束は、担体部材にマトリクス状に配置され、1つの空間方向には距離xを有し、別の空間方向にはそれと直交する距離yを有する。距離xとyの値は等しくても、異なっていてもよい。
【0040】
担体部材21は、特に軽量の建築用板材、例えば、発泡材料の板材である。
【0041】
図1に基づいて、装置20の主な構成群を説明する。装置20は、少なくとも1つの繊維束かせ26のためのストック25を備える。各繊維束かせ26は、例えば、複数のフィラメントで粗紡することにより形成される。この少なくとも1つの繊維束かせ26から、装置20によって繊維束22が分離され、担体部材21に押し通されるか又は引き込まれる。
【0042】
繊維束搬送部27は、少なくとも1つの繊維束かせ26をストック25から取り出し、各繊維束かせ26を個別の供給チャネル28で搬送するように構成されている。各供給チャネル28は管によって形成され得る。この供給チャネル28の第1の端29は繊維束搬送部27に割り当てられる一方、供給チャネル28の反対側である第2の端30は装置20の作業領域31に割り当てられる。実施例において、繊維束搬送部27は、制御可能な第1の駆動部32を有する。第1の駆動部32は、少なくとも2つのローラ33を有するローラ装置を駆動する。少なくとも1つの繊維束かせ26は、2つのローラの間に圧力又は摩擦による係合状態で保持され、第1の端29を通して供給チャネル28に搬送される。実施例において、繊維束搬送部27は、配置された全ての繊維束かせ26を搬送するように構成されている。
【0043】
装置20は、少なくとも1つの吸引チャネル37を備える。供給チャネル28の数と吸引チャネル37の数は等しく、搬送される繊維束かせ26の数に対応する。少なくとも1つの吸引チャネル37は、それぞれの供給チャネル28に割り当てられた第1の端38と、反対側の第2の端39とを有する。この少なくとも1つの吸引チャネル37の第2の端39は、吸引部40にそれぞれ流体的に接続されている。吸引部40は、少なくとも1つの吸引チャネル37内に、第1の端38から第2の端39へそれぞれ流れる気流Lを生成するように構成される。
【0044】
第2の駆動部41によって、少なくとも1つの吸引チャネル37を初期位置I(図1に示す)と作業位置II(図2-6に示す)との間で移動させることができ、実施例によれば、長手方向Rに直線的に移動させることができる。初期位置Iにおいて、少なくとも1つの吸引チャネル37はそれぞれ割り当てられた供給チャネル28と流体的に結合され、吸引部40は供給チャネル28内に負圧を発生させる。換言すると、初期位置Iにおいて、気流Lは、少なくとも1つの供給チャネル28及びそれと流体的に結合された少なくとも1つの吸引チャネル37を通じて生成され得る。図1に示す通り、少なくとも1つの吸引チャネル37は、初期位置Iにおいて作業領域31へと延びている。これにより、各吸引チャネル37の第1の端38は、割り当てられた供給チャネル28の第2の端30に当接するか、又は僅かな距離をおいて対向するように配置される。
【0045】
作業位置IIでは、この少なくとも1つの吸引チャネル37が作業領域31の外側に配置される。少なくとも1つの供給チャネル28の第2の端30と吸引チャネル37のそれぞれ割り当てられた第1の端38は、作業領域31の両側で長手方向Rに距離を置いて互いに対向して配置されている(図2乃至6を比較のこと)。少なくとも1つの吸引チャネル37が初期位置Iに移動された場合、繊維束搬送部27により少なくとも1つの供給チャネル28を通して、少なくとも1つの吸引チャネル37に少なくとも1つの繊維束かせ26の端部26aの規定の長さ分を搬送することができる。この端部26aは図1に破線で示されている。各吸引チャネル37への繊維束かせ26の端部26aの搬送は、吸引部40によって生成される気流Lによって支持される。繊維束搬送部27が規定の長さ分を吸引チャネル37内に搬送するとすぐに、繊維束搬送部27は停止され、少なくとも1つの繊維束かせ26の更なる供給は停止される。気流Lを持続させたまま、少なくとも1つの吸引チャネル37を作業位置IIに移動させることができ、各供給チャネル28とその時点では作業領域31を通じて長手方向Rに延びる各吸引チャネル37との間で、繊維束かせ26の端部26aが少なくとも部分的に自由にアクセスできるようになる。その際、気流Lは、各繊維束かせ26の端部26aを十分且つ良好に引き伸ばす。作業位置IIにおいて、端部26aの一部は、それぞれ割り当てられた吸引チャネル37内に延びる(図2)。進行を加速するため、繊維束搬送部27の搬送中に、作業位置IIにおける吸引チャネル37の移動を既に開始してもよい。この手法では、十分な長さの繊維束かせ26が吸引チャネル37内に確実に配置されさえすれば、必ず気流が繊維束かせ26aの端部を延伸位置に搬送することができる。
【0046】
作業領域31の近くに位置決め部45が設けられている。この位置決め部45は、長手方向Rと平行に延びる搬送方向Tに担体部材21を段階的に移動させて、担体部材21を位置決めするよう構成されている。位置決め部45の詳細な構成は、例えば、担体部材21が耐屈曲板であるか、又は2次元織物、マット又はウェブのように、可撓性の曲げ可能な担体部材21であるかに応じて適宜変更され得る。
【0047】
担体部材21の、作業領域31と反対側には、針保持部52が設けられている。この針保持部52は、少なくとも1つの針53を備える。針53の数は、配置される繊維束かせ26の数に一致する。各繊維束かせ26に1つの針53が割り当てられる。実施例において、各針53はその長手方向軸Aに沿って延びるとともに針フック54を備え、その針フック54は各繊維束かせ26の割り当てられた端部26aと係合し、針53でその端部26aを保持して、担体部材21を通して引き込むことができる。各針53の長手方向軸Aは作業領域31を通って延びており、実施例によれば、搬送方向T又は長手方向Rと直交する面に配置されている。
【0048】
針保持部52によって、少なくとも1つの針53は、その長手方向軸Aに沿って引き込み位置III(図1)と引き出し位置IV(図3)との間で移動可能である。引き出し位置IVにおいて、針53の針フック54は作業領域31に位置する。引き込み位置IIIにおいて、針は作業領域31の完全に外側に位置し、担体部材21を通って延びることも、又は担体部材21内に延びることもない。引き込み位置IIIから引き出し位置IVへの移動の間、針53の先端は担体部材21中を貫き、作業領域31の引き出し位置IVに到達するまで前進する。引き出し位置IVから引き込み位置IIIへ戻る移動の間に、繊維束かせ26の端部26aは、針53が貫通したことによって形成された担体部材21の孔を通して引き込まれる。
【0049】
図9及び図10において、各針53の長手方向軸Aが横断方向Qに対して傾斜角度αだけ、長手方向Rと直交する平面内で傾斜していることが明らかである。傾斜角度αは、例えば、15度から90度の範囲とすることができる。それは30度から60度の範囲内であることが好ましい。
【0050】
装置20は、作業領域31に配置された、案内装置59を有する案内部58をさらに備える。案内装置59は案内通路60を有し、その中を端部26aが作業領域31で延びる。案内装置59は、長手方向Rに直交するように向けられた平面に平行な経路B(図9図10図13)に沿って移動可能である。そうすることで、端部26aは、長手方向R(図3)に略直線状に延びるその当初の方向に対しそれを横断するように、作業領域31内で偏向される(反らす)ことができる。
【0051】
ここで記載する実施例において、案内装置59は2つの案内体61によって形成されている。この案内体61は長手方向Rで互いに離れており、そうすることで隙間62を形成する。隙間62は、2つの案内孔63内の少なくとも1つの案内通路60を分け離す。共通案内通路60の2つの案内孔63の1つが各案内体61に設けられている。案内通路60の案内孔63は、長手方向Rに整列している。2つの案内体61は、互いに相対移動しないように配置される。経路Bに沿った移動の間、案内体61は互いに同期して移動する。案内装置59の案内体61の構成の実施例を図13に示す。案内体61は、長手方向Rに板のように薄くすることができる。この実施例において、各案内体61は中脚とそれに対して斜めに延びる2つの側脚とを有するブラケット状の板で形成され、少なくとも1つの案内孔63がその中脚に存在する。各案内体61は側脚により、経路Bに沿った移動のために支持され得る。
【0052】
隙間62の長手方向Rの寸法は、少なくとも1つの針53が隙間62に導き入れられるようにするために十分な大きさがある。よって、各針53の長手方向軸Aは、隙間62(図1乃至6)を中心として延びる平面で延びることが好ましい。
【0053】
ここに記載する好ましい実施例においては、装置20は支持部67を備える。支持部67は、作業領域31に配置された支持部品68を有する。少なくとも1つの支持開口部69が支持部品68を通じて延びている。支持開口部69の数は、設けられた繊維束かせ26の数に対応する。支持部67は、休止位置Vと支持位置VIとの間で支持部品68を移動させ、実施例によれば、ピボット軸Sを中心として回動させるように構成されている。ピボット軸Sは、長手方向Rに直交して横断方向Qに延びている。図1乃至図6において、横断方向Qは図の平面に直交して延びている。仮に複数の繊維束かせ26及びそれ故に複数の供給チャネル28、吸引チャネル37、針53、案内通路60及び支持開口部69がある場合、これらは横断方向Qに互いに隣接して配置されている(図13)。この装置20の構成により、繊維束かせ26と針53との横断方向Qの距離を小さくすることができる。そうすることで、担体部材21における繊維束22の高密度化を図ることができる。少なくとも1つの針53の横断方向Q及び少なくとも1つの長手方向軸Aは、案内装置59の経路Bに沿った移動に平行で、長手方向Rに直交する平面で延びている。
【0054】
支持部品68は、休止位置V(図1、6、及び13)と支持位置VI(図2乃至5及び図13)との間を動くことができる。支持部品68は、実施例においては、作業領域31で案内装置59と少なくとも1つの供給チャネル28との間に配置される。休止位置Vにおいて、支持部品68は、支持位置VIにあるときに比べ、少なくとも1つの供給チャネル28のより近くに配置される。支持位置VIでは、少なくとも1つの針53の少なくとも1つの長手方向軸Aが延び、長手方向Rに直交して延びる平面が、支持部品68と少なくとも1つの吸引チャネル37との間の略中央に配置される。そうすることで、少なくとも1つの針53により端部26aが捕捉される際の対称ループの形成が改善され、担体部材21を通って引き込まれる繊維束22の2つの脚の長さが実質的に等しくなる。休止位置Vでは、少なくとも1つの支持開口部69が、少なくとも1つの割り当てられた供給チャネル28及び少なくとも1つの割り当てられた吸引チャネル37の開口部と整列されている(図1及び6)。支持部品68は、回動することにより、支持位置VIにおいて長手方向Rに対して斜めの向きに配置される。少なくとも1つの支持開口部69は、割り当てられた繊維束かせ26の端部26aを、供給チャネル28から支持開口部69を通じて吸引チャネル37に直線的に延ばすことができるような寸法であることが好ましい。
【0055】
少なくとも1つの供給チャネル28の第2の端30に隣接して、第1の切断部73が配置される。第1の切断部73は、少なくとも1つの繊維束かせ26を切断するために長手方向Rに直交するよう移動可能な少なくとも1つの刃74を有する。供給チャネル28の刃74と反対の側には、少なくとも1つの切断部73のカウンタ工具75が刃74と協働するように配置される。
【0056】
さらに、装置20は第2の切断部76を備える。第2の切断部76は、位置決め部45の領域に配置される。それは位置決め部45の、作業領域31とは反対の側に位置する。この第2の切断部76は、第1の切断部73と同様に、可動の刃74と、その可動の刃74と協働するカウンタ工具75とを備える。実施例によれば、第2の切断部76の刃74は長手方向Rに動くことができる。第2の切断部76の少なくとも1つの刃74とカウンタ工具75とは、付随する針53の長手方向軸Aに対して互いに反対側に配置される。
【0057】
図1には、装置20の制御装置80も示されている。この制御装置80は、方法を実施する装置20を操作するために、装置20の異なる部品及び駆動部を互いに協調して制御するように構成される。このために、各制御信号が部品及び駆動部に送信される。実施例によれば、制御装置80は、以下の制御信号を送信する。
-繊維束搬送部27の第1の駆動部32のための第1の制御信号S1
-吸引部40のための第2の制御信号S2
-少なくとも1つの吸引チャネル39を移動させるための第2の駆動部41のための第3の制御信号S3
-位置決め部45を通じて担体部材21を位置決めするための第4の制御信号S4及び/又は第5の制御信号S5
-少なくとも1つの針53をその長手方向軸Aに沿って引き込み位置IIIと引き出し位置IVとの間で移動させるための針保持部52のための第6の制御信号S6
-案内装置59を経路Bに沿って移動させるための案内部58のための第7の制御信号S7
-休止位置Vと支持位置VIとの間で少なくとも1つの支持部品68を移動させるための支持部67のための第8の制御信号S8
-第1の切断部73を作動させるための第9の制御信号S9
-第2の切断部76を作動させるための第10の制御信号S10
【0058】
制御装置80及び各制御部は、明確にするために、図1にのみ示されており、図2乃至図6には示されていない。
【0059】
複数の繊維束22を備える担体部材21の製造方法を実施するために、上述の装置20は次のように動作する。
【0060】
送り込み装置45により、担体部材21が少なくとも1つの針53に対して所望の位置に配置され、針53がその所望の位置で担体部材21を貫通する。少なくとも1つの吸引チャネル37はその初期位置Iに置かれ、吸引部40を通じて気流Lが生成される。繊維束搬送部27は、少なくとも1つの繊維束かせ26の端部26aの規定の長さ分を、各供給チャネル28と流体的に接続された吸引チャネル37に、各供給チャネル28を通して搬送するように動作する。この搬送は、初期位置Iに配置された供給チャネル28及び吸引チャネル37を通して、端部26aが略長手方向Rに延びるように、気流Lによって支持される。
【0061】
続いて、気流Lの生成を維持した状態で、少なくとも1つの吸引チャネル37を作業領域31外に、少なくとも1つの供給チャネル28から離れるように、作業位置IIに達するまで移動させる(図2)。そうすることで、端部26aの少なくとも一部が作業領域31に露出する。端部26aの一部は、吸引管37の中にあって、少なくとも1つの吸引管37の作業位置II内にも延びており、気流Lの生成が維持される。少なくとも1つの繊維束かせ26の更なる搬送は、繊維束搬送部27を停止させることにより妨げられる。吸引力すなわち気流Lによって端部26aの自由端が吸引され、この端部26aはさらなる処理中にある程度の引張応力下で維持される。
【0062】
針保持部52は、少なくとも1つの針53を引き込み位置IIIから動かされ、少なくとも1つの針53が担体部材21を貫通して作業領域31に到達するようにする(図2)。少なくとも1つの針53がそのそれぞれの長手方向軸Aに沿って完全に延び、それ故に引き出し位置IVに到達した後又はその前に、案内装置59は経路Bに沿って移動させられる。経路に沿った移動は、2つの案内体61の1つに基づいて、図9及び図10に概略的に示されている。
【0063】
経路Bは閉経路であり、例えば、楕円形、卵形、円形又は少なくとも部分的に湾曲して延びていてもよい。少なくとも1つの針53は、2つの案内体61の間の隙間62に針フック54を備える。経路Bの移乗位置Uにおいて、針フック54は長手方向Rに延びる通路内の位置に配置され、その断面は案内孔63の経路Bによって画定される。隙間62を通じて案内孔63の間に延びる端部26aの部分は、経路Bに沿って移動し、移乗位置Uで割り当てられた対応する針53と接触する。この時点で、針フック54は、通路内すなわち移乗位置Uに位置する(図9の点線)。移乗位置Uを始点に、経路Bは、各針53の長手方向軸Aから離れて斜め又は横断方向に延びる。そうすることで、隙間62を通じて延びる端部26aの部分は、具体的には針53の周囲に案内され、針53から案内孔の1つにそれぞれ延びる2つの脚26bを形成する(図4及び5)。脚26bは、針53の周囲にU字状又はV字状に配列されると言うこともでき、鋭角を形成する。そうすることで、端部26aを針フック54で確実に捕らえる、すなわち保持することができる。針保持部52は、引き出し位置IVからの引き込み移動を、経路Bに沿った案内装置又は案内体61の位置に合わせて行う(図9)。少なくとも1つの針53の引き出し位置IVからの引き込み移動の前又は開始時に、支持部品68はその支持位置VIに移動する(図3)。
【0064】
少なくとも1つの針53の引き込み移動は継続され、同時に案内装置59は経路Bに沿ってさらに移動する。針フック54が担体部材21に到達して、繊維束かせ26の端部26aを担体部材21に引き入れる時には、案内通路60すなわち案内孔63は、長手方向Rから見て、経路Bの略長手方向軸Aの延長上の位置に位置される(図10)。案内孔63に当接する脚26bの端部を結ぶ直線は、針フック54又は繊維束かせ26の端部26aが担体部材21に貫通した時点における交差位置K周りの公差又は角度範囲W内に位置する(図10)。交差位置Kは経路Bによって規定される通路の位置で、この位置で長手方向軸Aが通路と交差し、この交差点は担体部材21又は針53からさらに離れた交差位置Kとして用いられることが好ましい。理想的には、針フック54又は繊維束かせ26の端部26aが担体部材21に貫通したときに、案内通路60すなわち案内孔63が交差位置Kに位置する。そして、端部26aの2つの脚26bは、針53の長手方向軸Aに略平行な、横断方向Qに直交する平面に対して延びている(図10)。そうすることで、端部26aの脚が切れ、そしてそのために針53により担体部材21に形成された穴を拡張することが回避される。案内通路60すなわち案内孔63が経路Bの公差又は角度範囲W内にある限り、針53の長手方向軸Aに対する端部26aの脚26bの延伸の偏差が十分に小さくなり、繊維束かせ26の端部26aの脚の引っ張りが容易になる。公差又は角度範囲Wは、長手方向Rに直角な平面で、担体部材21から針53が出る位置を起点に、最大値を10度、15度又は20度としてよい。この公差又は角度範囲Wは、交差位置Kの周りで長手方向軸Aに対して対称又は非対称に延ばすことができる。
【0065】
少なくとも1つの針53の引き出し位置IVから引き込み位置IIIへの引き込み動作の開始時又は引き込み動作の間に、第1の切断部73が作動し、少なくとも1つの供給チャネル28の第2の端30に隣接する繊維束かせ26の端部部分26aを切断する。切断は図5に概略的に示されていて、針フック54が担体部材21を貫通した後である。この位置に達すると、針53の引き込み動作を停止することができ、針53は最初に中間位置であるこの位置に留まる。そうすることで、特に等しい長さの繊維束かせ26の脚26bが、確実に担体部材に保持又は固定される。1つの実施例において、第1の切断部73による繊維束かせ26の切断は、針が中間位置に到達した後にのみ行われる。そして、針53が中間位置から引き込み位置IIIへ連続的に移動する間、脚26bの長さが維持される。これに代えて、切断を、少なくとも1つの針53の引き込み移動のより早い時点で行うこともできる。
【0066】
中間位置にある引き出し位置IVからの針53の移動の間に、繊維束かせ26の端部26aの針フック54に対するその延長方向における相対移動が発生する。そうすることで、繊維束かせ26の端部26aと針フック54の間の端部26aに沿った接触位置がずれる。1つの実施例において、この相対移動は、繊維束かせ26の保護のために回避することができる。これは、第1の駆動部32が第1の制御信号S1によって作動され、中間位置の引き出し位置IVからの針53の移動中にループ形成に必要なだけの端部26aの追加の長さ分が搬送されるようにすることによって達成が可能である。必要な追加の長さは、針フック54が中間位置において引き出し位置IVから移動する部分と等しくすることができる。
【0067】
図6は、切断された端部26a又は2つの脚26bが、ループが形成された状態で、担体部材21を通してどのように引き込まれるかを示す。ループ形成後、第2の切断部76を作動させてループを切断し、端部26aの2つの脚26bが担体部材21を通して互いに引き込まれて繊維束22を形成する。この状況は、第2の切断部76の刃74の矢印によって図6に概略的に示されている。
【0068】
図7及び図8に基づいて、第2の切断部76によって脚26b間に形成されたループを切断中の好ましい進捗状況を説明する。針保持部52が少なくとも1つの針53を担体部材21を通して完全に引き抜いた後、脚26bは切断される。第2の切断部76の作動中、刃74が最初に端部26aの2つの脚26bをカウンタ工具75に向かって横断方向に押圧し、2つの脚26bが刃74とカウンタ工具75との間で切断される(図8)。
【0069】
図6乃至図8に概略的に示すように、第2の切断部76の領域には、吸引装置81を設けてもよい。第2の切断部76によって切断されたループは、吸引装置81で吸引して取り除かれる。
【0070】
本発明は、複数の繊維束22を備えた担体部材21を製造するための装置20及び方法に関する。少なくとも1つの繊維束かせ26は、繊維束搬送部27によってストック25から取り出され、それぞれ割り当てられた対応する供給チャネル28へと搬送される。吸引チャネル37は、初期位置Iにおいて、それぞれ流体的に接続された供給チャネル28に割り当てられている。吸引部40によって、気流Lが供給チャネル28から離れた吸引チャネル37内に生成され、少なくとも1つの繊維束かせ26の端部26aが吸引力により支持されて吸引チャネル内で搬送される。少なくとも1つの吸引チャネル37が作業位置IIで移動することにより、少なくとも1つの繊維束かせ26の端部26aの少なくとも一部が、装置20の作業領域31で露出される。少なくとも1つの針53を備えた針保持部52は、作業領域31で少なくとも1つの端部26aを捉えることができ、少なくとも1つの針53が担体部材21を通して移動する間、担体部材21を通してその端部26aを引くか又は押すことができる。
【符号の説明】
【0071】
20 装置
21 担体部材
22 繊維束複合材料
25 ストック
26 繊維束かせ
26a 繊維束かせの端部
26b 繊維束かせの端部の脚
27 繊維束搬送部
28 供給チャネル
29 供給チャネルの第1の端
30 供給チャネルの第2の端
31 作業領域
32 第1の駆動部
33 ローラ
37 吸引チャネル
38 吸引チャネルの第1の端
39 吸引チャネルの第2の端
40 吸引部
41 第2の駆動部
45 位置決め部
52 針保持具
53 針
54 針フック
58 案内部
59 案内装置
60 案内通路
61 案内体
62 隙間
63 案内孔
67 支持部
68 支持部品
69 支持開口部
73 第1の切断部
74 刃
75 カウンタ工具
76 第2の切断部
80 制御装置
81 吸引装置
I 初期位置
II 作業位置
III 引き込み位置
IV 引き出し位置
V 休止位置
VI 支持位置
α 傾斜角
A 針の長手方向軸
B 経路
K 交差位置
L 気流
Q 横断方向
R 長手方向
S ピボット軸
S1 第1の制御信号
S2 第2の制御信号
S3 第3の制御信号
S4 第4の制御信号
S5 第5の制御信号
S6 第6の制御信号
S7 第7の制御信号
S8 第8の制御信号
S9 第9の制御信号
S10 第10の制御信号
T 搬送方向
U 移乗位置
W 公差又は角度範囲
x 空間方向における繊維束の距離
y 他の空間方向における繊維束の距離

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13