(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-01
(45)【発行日】2023-02-09
(54)【発明の名称】混綿中綿
(51)【国際特許分類】
D04H 1/435 20120101AFI20230202BHJP
A41D 3/00 20060101ALI20230202BHJP
A41D 31/00 20190101ALI20230202BHJP
A41D 31/02 20190101ALI20230202BHJP
A47C 27/12 20060101ALI20230202BHJP
A47G 9/02 20060101ALI20230202BHJP
A47G 9/10 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
D04H1/435
A41D3/00 C
A41D31/00 504B
A41D31/02 E
A47C27/12 E
A47C27/12 F
A47G9/02 E
A47G9/10 B
(21)【出願番号】P 2017245143
(22)【出願日】2017-12-21
【審査請求日】2019-02-14
【審判番号】
【審判請求日】2021-11-29
(31)【優先権主張番号】P 2017001398
(32)【優先日】2017-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】593069897
【氏名又は名称】モリリン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104318
【氏名又は名称】深井 敏和
(72)【発明者】
【氏名】高橋 英治
(72)【発明者】
【氏名】富永 浩二
(72)【発明者】
【氏名】加藤 浩二
(72)【発明者】
【氏名】成光 智史
【合議体】
【審判長】久保 克彦
【審判官】藤原 直欣
【審判官】藤井 眞吾
(56)【参考文献】
【文献】再公表特許第2013/002367(JP,A1)
【文献】特開平2-251617(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H 1/00-18/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開繊した主繊維と機能繊維とを送風機により撹拌混合して得られる混綿中綿であって
、前記主繊維の比重に対して前記機能繊維の比重が±10%の範囲内であり、
任意に前記混綿中綿の6箇所から2gをそれぞれ採取し、解じょ法(JIS L 1030)にて混率を調べたとき、式:最大混率値―最小混率値から求められる前記2種以上の繊維の混率のばらつきが
5質量%以内である混綿中綿。
【請求項2】
前記機能繊維が、抗菌、消臭、制電、吸湿、透湿、断熱、発熱、蓄熱、光発熱および保温のいずれかの機能を有する1種または2種以上の繊維である請求項1に記載の混綿中綿。
【請求項3】
前記主繊維が、ポリエステル繊維である請求項1または2に記載の混綿中綿。
【請求項4】
粒綿、不織布シートおよびウェブ状のシートから選ばれた形態を有する請求項1~3のいずれかに記載の混綿中綿。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の混綿中綿を含む衣料品用または寝装品用の中綿素材。
【請求項6】
請求項1~4のいずれかに記載の混綿中綿を内部に充填した衣料品。
【請求項7】
請求項1~4のいずれかに記載の混綿中綿を内部に充填した寝装品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダウンジャケット、ダウンコート、布団、枕等の中綿素材として使用可能な混綿中綿に関する。
【背景技術】
【0002】
ダウンは軽く、保温性に優れていることから、ダウンジャケットやダウンコートなどの防寒用衣料や、羽毛布団などの防寒用寝装品の中綿素材として広く使用されている。しかし、ダウンはガチョウの羽からとれる天然物であるため、大量生産には限界がある。また、動物愛護の観点から、近年はダウンの入手が困難になりつつある。
【0003】
一方、ダウンの代替品として、化学繊維を原料とし、ダウンのような風合いを有する粒綿(ファイバボール)が開発されている(特許文献1、2)。また、このような粒綿を使用した布団も提案されている(特許文献3)。使用する原料繊維には、主にポリエステル繊維が使用される。
しかし、従来の粒綿は、単一繊維からなるため、様々な機能、例えば抗菌、消臭、制電、発熱などの機能を付与することは困難であった。
また、粒綿以外にも、スパンボンド・シート、ニードルパンチ・シート、ケミカルボンド・シート、サーマルボンド・シート等の不織布シートや、ウェブ状のシート(ちぎり綿)も衣類や布団に使用されているが、上記粒綿と同様に、単一繊維からなるため、様々な機能を均一に付与することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表平8-505908号公報
【文献】特開平8-2655号公報
【文献】特開2016-144559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、2種以上の繊維からなる均質な混綿中綿を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するべく鋭意検討を行った結果、以下の構成からなる解決手段を見出し、本発明を完成するに至った。
(1)2種以上の繊維からなる混綿中綿であって、式:最大混率値―最小混率値から求められる前記2種以上の繊維の混率のばらつきが10質量%以内である混綿中綿。
(2)前記2種以上の繊維が、ポリエチレンテレフタレート繊維またはポリトリメチレンテレフタレート繊維からなる主繊維と、機能繊維とを含む(1)に記載の混綿中綿。
(3)前記機能繊維が、抗菌、消臭、制電、吸湿、透湿、断熱、発熱、蓄熱、光発熱および保温のいずれかの機能を有する1種または2種以上の繊維である(1)または(2)に記載の混綿中綿。
(4)前記主繊維が、ポリエステル繊維である(2)に記載の混綿中綿。
(5)粒綿、不織布シートおよびウェブ状のシートから選ばれた形態を有する(1)~(4)のいずれかに記載の混綿中綿。
(6)上記(1)~(5)のいずれかに記載の混綿中綿を含む衣料品用または寝装品用の中綿素材。
(7)上記(1)~(5)のいずれかに記載の混綿中綿を内部に充填した衣料品。
(8)上記(1)~(5)のいずれかに記載の混綿中綿を内部に充填した寝装品。
【発明の効果】
【0007】
本発明の混綿中綿は、2種以上の繊維が各粒綿、シートにおいて殆どばらつきなく混ざり合っているもので、均質な性能を発揮させることができ、衣料品や寝装品の中綿素材として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】(a)~(c)は本発明の一実施形態に係る混綿粒綿の製造方法を示す説明図である。
【
図2】(a)~(c)は本発明の他の実施形態に係る不織布シートの製造方法を示す説明図である。
【
図3】比較例2の不織布シートの製造方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態に係る混綿中綿は、主繊維と機能繊維とを含む粒綿(ファイバボール)、不織布シートまたはウェブ状のシートである。
【0010】
主繊維としては、例えばポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維、レーヨン繊維、ポリアミド繊維、アクリロニトリル繊維などが挙げられ、中でも弾性に富み、羽毛に似た柔らかさを有するポリエステル繊維を用いるのが好ましく、具体的にはポリエチレンテレフタレート繊維、ポリトリメチレンテレフタレート繊維などを用いるのが好ましい。
主繊維は、繊維径が2~10dtex、繊維長が15~60mmであるのがよい。
【0011】
機能繊維としては、特に制限はなく、市販の各種機能繊維が使用可能であり、例えば、
抗菌、消臭、防ダニ、制電、吸湿、透湿、断熱、発熱、蓄熱、光発熱、保温などの機能を
有する化学繊維が挙げられる。これらの機能繊維は、1種または2種以上を混合して用い
ることができる。また、吸湿発熱繊維のように、2種以上の機能を有する繊維であっても
よい。
発熱繊維としては、例えば、吸湿発熱綿のアクリレート繊維として東洋紡(株)製の「
エクス」(登録商標)、帝人(株)製の「サンバーナー」(登録商標)。その他の化合繊
としては、旭化成(株)製のキュプラ/ポリエステル混紡の「Topthermo」,レンチング社
製の「テンセル」、「モダール」(いずれも登録商標である)等のリヨセル等の発熱繊維も使用可能である。
吸放湿性、調湿性、抗菌性、防かび性を有する繊維としては、例えば東洋紡(株)製の
「モスファイン」、「セルファインS」(いずれも登録商標である)(いずれもアクリレ
ート系)等が挙げられる。
消臭繊維としては、例えば東洋紡(株)製の「セルファインN」(登録商標)(アクリ
レート系)が挙げられる。抗菌性および消臭性を有する繊維としては、例えば東洋紡(株)製の「エアクリア」(登録商標)等が挙げられる。
発熱蓄熱繊維としては、例えばオオミケンシ(株)製の「ソーラータッチ」(登録商標
)(レーヨン系)が挙げられる。
殺菌性、消臭性、静電除去性を有する繊維としては、例えば日本新素材(株)製の「シ
ルベルンZAG」(登録商標)(銀イオン繊維)等が挙げられる。
保温性を有する繊維としては、例えば、日本エクスラン(株)製の「セラム」(登録商
標)(赤外線放射系アクリル繊維)、帝人(株)製の「ウォーマル」(登録商標)(セラ
ミックブレンド綿)等が挙げられる。
抗菌防臭性を有する繊維としては、例えば、帝人(株)製の「エコピュアー」(登録商
標)(弱酸性ポリエステル素材)、東洋紡(株)製の「フィールフレッシュ」(登録商標
)(アクリレート系)等が挙げられる。
断熱繊維としては、帝人フロンティア(株)製の「エアロ」(登録商標)等が挙げられ
る。
使用する機能繊維は、繊維径が1.1~11dtex(1~10d)、繊維長が10~
60mmであるのがよい。
【0012】
主繊維と機能繊維とは、比重がほぼ同じであるのがよく、主繊維の比重に対して機能繊
維の比重が±10%の範囲内であるのが好ましい。また、繊維径および繊維長もほぼ同じで
あるのがよく、主繊維の繊維径および繊維長に対して機能繊維のそれらが±10%の範囲
内であるのが好ましい。これにより、両繊維が均一に混ざり合い、混率のばらつきが小さい中綿を得ることができる。
【0013】
また、主繊維と機能繊維とは、同種の繊維であってもよく、異種の繊維であってもよいが、同種の繊維であるのが好ましい。同種の繊維とは、例えば両繊維がいずれもポリエステル繊維である場合などをいう。
【0014】
主繊維と機能繊維との混合割合、すなわち混率(混用率)は、主繊維が50質量%以上、好ましくは60質量%以上であるのがよく、95質量%以下であるのが適当である。そのため、機能繊維の混率は50質量%以下、好ましくは40質量%以下となり、5質量%以上であるのが適当である。
【0015】
主繊維と機能繊維とは、それぞれ1種類の繊維のみに限定されるものではなく、前記し
た主繊維と機能繊維との混合割合の範囲内で2種以上の繊維を使用してもよい。例えば、
機能繊維として、抗菌繊維と吸湿発熱繊維とを併用してもよく、さらにこれに制電繊維を
組み合わせてもよい。これにより、用途に応じて、中綿に各種の機能を付与することができる。
【0016】
本発明の混綿中綿の形態としては、粒綿、不織布シート、またはウェブ状のシート(ちぎり綿)が挙げられる。不織布シートとしては、例えば樹脂で繊維同士を接合するケミカルボンド法で得られるケミカルボンド・シート、低融点繊維を混紡して熱で溶かして接合するサーマルボンド・シート、繊維同士を針で絡み合わせるニードルパンチング法で得られるニードルパンチ・シート等が挙げられる。針に代えて水流で繊維同士を絡み合わせるスパンレース法で得られる不織布シートもニードルパンチ・シートの範疇に含まれる。
【0017】
次に、本発明の混綿中綿の一実施形態に係る混綿粒綿の製造方法の一例を
図1(a)~(c)に示す。
図1(a)~(c)は混綿粒綿の製造工程を示している。以下、順に説明する。
(ア)開繊工程(
図1(a))
原料繊維は、フィードラチス10によってカード機2に送られ、繊維を平行に並べるよう開繊し、ウェブ(長さと幅をもった繊維層)を作製する。ウェブは、送綿手段30(ブロワー等)によって開繊綿保管庫4に貯留される。この工程は、主繊維と機能繊維とについて、それぞれ別々に行う。
【0018】
(イ)混綿工程(
図1(b))
まず、予め開繊し計量した所定量の主繊維と機能繊維とをそれぞれフィードラチス11から送綿手段31(ブロワー等)にて貯綿庫5に送る。貯綿庫5内では、図示しない送風機により主繊維と機能繊維とは撹拌混合される。これにより主繊維と機能繊維とは均一に混ざり合った混綿が得られ、混率のばらつきが低減される。混綿は、貯綿庫5から横方向に吸引排出される。すなわち、貯綿庫5の側面には、吸引口8が設けられており、吸引口8は貯綿庫5の底部から上部にかけて広がった開口を有している。そのため、貯綿庫5の側面から均一に繊維綿を吸引することができる。
貯綿庫5からの吸引された綿は、図示しない送綿手段により混綿保管庫9に送られ、一時的に保管される。
【0019】
(ウ)粒綿作製工程(
図1(c))
混綿保管庫9から取り出した綿をフィードラチス12上に敷き、送綿手段32(ブロワ
ー等)にてボール機20に送り、ボール機20にて粒綿を作製し、得られた混綿
粒綿を保管庫21に送り収容する。使用するボール機20としては、例えばHAI JIN MACHINERY社、Changsh HITEC Machinery社等が製造するボール機が挙げられるが、粒綿を作製するのに適したものであればよく、これらに制限されるものではない。
なお、混綿保管庫9を設けずに、貯綿庫5からの吸引された綿をボール機20に直接供
給してもよい。
【0020】
得られる混綿粒綿は、直径が1~10mm、好ましくは5~8mm程度であるのがよい。また、混綿粒綿を構成する主繊維と機能繊維との混率(混用率)のばらつきは、10質量%以内、好ましくは5質量%以内である。混率のばらつきは、式:最大混率値―最小混率値から求めることができる。
これに対して、主繊維と機能繊維との混率のばらつきが10質量%を超える場合は、機能繊維の機能を十分に発現できなくなる。また、多くの機能繊維は高価であるので、少ない混率で十分な効果を出すために、ばらつきの少ない均一な混率とするのが好ましい。
最大混率値および最小混率値は、任意にサンプリングした複数の混綿中綿について、それぞれの混率を求め、そのうちの最大値と最小値を求めることによって決定される。
ここで、混率は、例えば、後述する実施例に記載の解じょ法または溶解法(JIS L 1030)にて求めることができる。
混率のばらつきが10質量%の範囲内に収まるのは、主として前記した製造工程に起因する。これに対して、数種類の繊維からなる開繊綿を混ぜ合わせて混綿し、これを粒綿とするだけでは、均一な混率の粒綿を得ることができない。
なお、原料繊維が2種ではなく、3種以上の繊維を用いる場合も、同様にして、得られた混綿中綿における各繊維の最大混率値と最小混率値を求め、その差から混率のばらつきを決定すればよい。
【0021】
次に、本発明の混綿中綿の他の実施形態に係る不織布シートの製造方法の例を
図2(a)~(c)に示す。
図2(a)はケミカルボンド法による混綿中綿の製造工程を示している。
図2(b)は、開繊したウェブの積層方法を示している。
図2(c)はニードルパンチング法による混綿中綿の製造工程の一部を示している。以下説明する。
【0022】
図2(a)に示すように、開繊機(図示せず)にて開繊した主繊維と機能繊維とをそれぞれ計量機40に送り、所定量に計量し、貯綿庫51に送られる。貯綿庫51は、前記した貯綿庫5とほぼ同様の構造および機能を有するものであり、別々に送られた主繊維と機能繊維とを送風手段にて均一に撹拌混合する。
【0023】
しかる後、貯綿庫51から送綿機の吸引口18を経て送綿ブロアー41に送られ、送綿ブロアー41から3つのローラーカード機42、43、44にそれぞれ所定量の混綿を供給する。ローラーカード機42、43、44において、混綿は、繊維を平行に並べるよう開繊され、ウェブW1、W2、W3を作製する。各ウェブW1、W2、W3はフィードラチス45上に重ね合わされる。
図2(b)は、ウェブW1、W2、W3の重ね合わせ状態を側面視したものである。同図に示すように、真ん中のウェブW2は、フィードラチス45の幅方向(すなわち、ウェブの送り出し方向に対して直角の方向)に送られ、ラチス45の側端部で折り返しながら、部分的に重ね合わされている。そのため、ウェブW2の繊維方向はシートの幅方向に揃えられる。これにより、シート幅方向のシート強力を高めている。ウェブW1、W3は、シートの長手方向(ラチス45の送り方向)に揃えられる。
なお、必要に応じて、ウェブW1、W2、W3は、同方向(例えば長手方向または長手方向に直交する幅方向)に重ね合わせてもよい。
【0024】
上記のようにして、フィードラチス45上にシート状に重ね合わされた混綿は、連続的に樹脂噴霧機46に送られ、噴霧機46から樹脂が噴霧され、ついで乾燥機47にて乾燥し、巻き取られてケミカルボンド不職布シート48が得られる。噴霧機46に代えて、浸漬装置を用いて、混綿を樹脂液に浸漬し、乾燥させてもよい。
使用される樹脂としては、主にウレタン樹脂系接着剤が用いられ、樹脂の噴霧量は混綿100質量部あたり0.1~2.0質量部、好ましくは0.5~1.0質量部であるのが良い。
【0025】
ニードルパンチング法による混綿中綿の製造工程は、ウェブW1、W2、W3をシート状に重ね合わせる工程までは、
図2(a)、(b)に示すケミカルボンド法による混綿中綿の製造工程と同じであるので、詳細な説明は省略する。
図2(c)に示すように、フィードラチス45上にシート状に重ね合わされた混綿は、連続的にニードルパンチ機49に送られ、シートを貫通するように上下する針によって繊維同士を機械的に絡ませて不織布シート48´が得られる。
【0026】
不織布シート48、48´を構成する主繊維と機能繊維との混率のばらつきは、10質量%以内、好ましくは5質量%以内である。混率は、前記した粒綿と同様にして求めることができる。混率を求めるためのサンプリングは、1枚のシート内および複数のシート間のいずれでもよい。
【0027】
一方、
図2(a)~(c)に示す方法に代えて、
図3に示すように、主繊維と機能繊維とを別々にローラーカード機42、43、44に供給し、得られたウェブW1´、W2´、W3´をフィードラチス45上に重ね合わせて、ニードルパンチ機49で不織布シート50を作製する場合は、得られた不織布シート50を構成する主繊維と機能繊維との混率のばらつきを10質量%以内にするのは困難である。ニードルパンチ法だけでなく、ケミカルボンド法でも同様である。
【0028】
また、本発明の混綿中綿は、粒綿や不織布シートだけでなく、ウェブ状のシートの形態であってもよい。このウェブ状のシートは、
図2(a)において、貯綿庫51で均一に撹拌混合された主繊維と機能繊維とを、ローラーカード機42、43、44によって開繊したウェブW1、W2、W3をフィードラチス45上に重ね合わせて得られるものである。ウェブW1、W2、W3の重ね合わせは、
図2(b)に示す構造であってもよいが、これに限定されない。また、ローラーカード機は3台に限定されず、2台以上の複数であってもよい。
【0029】
本発明の実施形態で得られる混綿中綿は、性能が均質であるので、ダウンの代替として防寒用ジャケットやコートなどの衣料品用、フトン、枕などの寝装品用、さらに座布団やクッションなどの中綿素材として好適である。
その際、混綿中綿は、主繊維の他に機能繊維を含むので、抗菌、消臭、制電、吸湿、透湿、断熱、発熱、蓄熱、光発熱、保温等の機能を付加することができるので、様々な用途や目的に応じた中綿素材を提供することができる。
【実施例】
【0030】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0031】
[実施例1]
主繊維として、繊維径が2.2dtex、繊維長が32mmのポリエステル繊維(ポリエチレンテレフタレート繊維)を用いた。一方、副繊維として、繊維径が2.2dtex、繊維長が32mmの黒染ポリエステル繊維(ポリエチレンテレフタレート繊維)を用いた。副繊維は、前記した機能繊維の代替として用いた。それぞれの繊維を個別にカード機(Trutzschler社製のDK-903)に通し開繊した。なお、黒染ポリエステル繊維を使用したのは、ポリエステル繊維の混ざり具合を容易に視認できるようにするためである。
開繊したポリエステル繊維250gをフィードラチス上に均一に敷いた。次に、開繊した黒染ポリエステル繊維250gを上記ポリエステル繊維の層上に置いた。ついで、ブロワーにより
図1(b)に示すような貯綿庫5(内容積:5m
3)に上部から投入した。以下、この操作を繰り返して、貯綿庫5内にポリエステル繊維と黒染ポリエステル繊維の混綿された繊維を収容し、撹拌混合した。
ついで、貯綿庫5から横方向に繊維を吸引して、ポリエステル繊維50質量%、開繊した黒染ポリエステル繊維50質量%からなる混綿を得た。この混綿をボール機20に供給し、直径が5mmの混綿粒綿を得た。
次に、任意に6箇所(n=6)から混綿粒綿2gをそれぞれ採取し、解じょ法(JIS L 1030)にて混率を調べた。その結果、最大混率値が50.5%で、最小混率値が49.5%であったので、混率のばらつきは1%の範囲内であった。また、得られた混綿粒綿の拡大写真を
図4に示す。
【0032】
[比較例1]
開繊せず、かつ貯綿庫5を使用せずに、ポリエステル繊維50質量%と黒染ポリエステル繊維50質量%とを混ぜ合わせて混綿を得た他は、実施例1と同様にして混綿粒綿を得た。実施例1と同様にして混率のばらつきを求めたところ、60%であった。得られた混綿粒綿の拡大写真を
図5に示す。
図5に示すように、比較例1で得た混綿粒綿は、粒綿全体に黒染ポリエステル繊維の塊が散在し、均一性が劣るのに対して、
図4に示す実施例1で得た混綿粒綿は、黒染ポリエステル繊維が主繊維であるポリエステル繊維と均一に混ざり合っていることがわかる。
【0033】
[実施例2]
開繊したポリエステル繊維425gをフィードラチス上に均一に敷き、次に開繊した吸湿発熱繊維(アクリレート系繊維)75gを均等に9つ以上に分け、等間隔に上記ポリエステル繊維の層上に置き、ブロワーにより貯綿庫5(内容積:5m
3)に上部から投入したほかは、実施例1と同様にして、ポリエステル繊維85質量%、吸湿発熱繊維15質量%からなる、直径が5mmの混綿粒綿を得た。なお、吸湿発熱繊維75gを均等に9つ以上に分けたのは、繊維の偏りを防ぐためである。
混率のばらつきは、任意に6箇所(n=6)からそれぞれ粒綿2gを採取し、実施例1と同様にして混率を求めた。その結果を表1に示す。
【表1】
表1から、実施例2で得た混綿中綿の混率のばらつきは1%の範囲内であった。
【0034】
[実施例3]
図2(c)に示す製造工程を利用して、ニードルパンチ不織布シートからなる混綿中綿を作製した。
主繊維として、繊維径が2.2dtex、繊維長が32mmのポリエステル繊維(ポリエチレンテレフタレート繊維)を用いた。一方、機能繊維として、繊維径が2.2dtex、繊維長が32mmの「テンセル」(レンチング社製)を用いた。
まず、開繊した主繊維と機能繊維とを、主繊維:機能繊維=80:20(質量比)でシートの目付け量が60g/m
2となるように計量した後、貯綿庫51(内容積:5m
3)に投入し、撹拌混合した。これを3つのローラーカード機42、43、44にて開繊し、ウェブW1、W2、W3を得、
図2(b)に示すように重ね合わせ、連続的にニードルパンチ機49に送り、幅1.5mの不織布シート48´を得た。
【0035】
[比較例2]
図3に示すように、主繊維と機能繊維とを別々にローラーカード機42、43、44に供給し、得られたウェブW1´、W2´、W3´をフィードラチス45上に重ね合わせた他は、実施例3と同様にして、ニードルパンチ機49で不織布シート50を作製した。
【0036】
実施例3および比較例2で得た不織布シートの混綿中綿について、混率を測定した。すなわち、不織布シートの長手方向に1m離れた位置において、それぞれ幅方向に3ヶ所(すなわち、両側端からそれぞれ10cmの位置および中央位置)、合計で6箇所サンプリングし、実施例1と同様にして混率を測定した。その結果を表2に示す。
【表2】
【0037】
本発明は以上の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の範囲内で種々の変更や改良が可能である。例えば、以上の実施形態では、主繊維(ポリエステル繊維等)と機能繊維との混綿中綿について説明したが、本発明は主繊維と機能繊維との組み合わせに限定されるものではなく、異種繊維同士を組み合わせた混綿中綿であってもよい。例えば、機能繊維の分類には入らない繊維同士の組み合わせや、機能繊維同士の組み合わせなどが挙げられる。これによって、それぞれの繊維が持つ機能を具備した混綿中綿が得られる。また、組み合わせは、2種に限定されず、3種またはそれ以上であってもよい。さらに、使用する繊維の種類はとくに制限されるものではない。
【符号の説明】
【0038】
2 カード機
4 開繊綿保管庫
5、51 貯綿庫
6 主繊維層
7 機能繊維層
8 吸引口
9 混綿保管庫
10、11、12 フィードラチス
20 ボール機
21 保管庫
30、31,32 送綿手段
42、43、44 ローラーカード機
W1、W2、W3 ウェブ