(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-01
(45)【発行日】2023-02-09
(54)【発明の名称】洗浄液組成物
(51)【国際特許分類】
C11D 7/08 20060101AFI20230202BHJP
C11D 17/08 20060101ALI20230202BHJP
C11D 7/22 20060101ALI20230202BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
C11D7/08
C11D17/08
C11D7/22
H01L21/304 647B
H01L21/304 622Q
(21)【出願番号】P 2018176376
(22)【出願日】2018-09-20
【審査請求日】2021-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】591045677
【氏名又は名称】関東化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】高中 亞鈴治
【審査官】加藤 芳健
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/043440(WO,A1)
【文献】特開2018-026461(JP,A)
【文献】特表2008-543060(JP,A)
【文献】特開2017-005050(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 7/08
C11D 17/08
C11D 7/22
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Coのコンタクトプラグおよび/またはCo配線を有する基板を洗浄するための洗浄液組成物であって、
還元剤を1種または2種以上と、
水と
、
界面活性剤と、
を含
み、
界面活性剤が、ポリスルホン酸化合物の1種または2種以上であり、
pHが、3以上9以下である、前記洗浄液組成物。
【請求項2】
Coを有し、かつ、Cuを有さない基板を洗浄するための洗浄液組成物であって、
還元剤を1種または2種以上と、
水と
、
界面活性剤と、
を含み、
界面活性剤が、ポリスルホン酸化合物の1種または2種以上であり、
pHが、3以上
9以下である、前記洗浄液組成物。
【請求項3】
基板が、Coのコンタクトプラグおよび/またはCo配線を有する、請求項2に記載の洗浄液組成物。
【請求項4】
還元剤が、2以上のヒドロキシル基が環に直接結合する五員環または六員環化合物からなる群から選択される1種または2種以上を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の洗浄液組成物。
【請求項5】
還元剤が、アスコルビン酸、ピロガロールおよびメチル没食子酸からなる群より選択される1種または2種以上である、請求項4に記載の洗浄
液組成物。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか一項に記載の洗浄液組成物用の原液組成物であって、10倍~1000倍に希釈することにより前記洗浄液組成物を得るために用いられる、前記原液組成物。
【請求項7】
請求項1~
5のいずれか一項に記載の洗浄液組成物を、Coのコンタクトプラグおよび/またはCo配線を有する基板に接触させる工程を含む、半導体基板の製造方法。
【請求項8】
Coのコンタクトプラグおよび/またはCo配線を有する基板に接触させる工程の前に、Coのコンタクトプラグおよび/またはCo配線を有する基板を、化学的機械研磨(CMP)する工程を含む、請求項
7に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項9】
Coのコンタクトプラグおよび/またはCo配線を有する基板に接触させる工程が、Coのコンタクトプラグおよび/またはCo配線を有する基板を洗浄する工程である、請求項
7または
8に記載の半導体基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Coを有する基板の洗浄に使用する洗浄液組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デバイスの微細化および多層配線構造化が進むに伴い、各工程において基板表面のより緻密な平坦化が求められ、半導体基板製造工程に新たな技術として研磨粒子と化学薬品の混合物スラリーを供給しながらウェハをバフと呼ばれる研磨布に圧着し、回転させることにより化学的作用と物理的作用を併用させ、絶縁膜や金属材料を研磨、平坦化を行う化学的機械研磨(CMP)技術が導入されてきた。
【0003】
従来、トランジスタのゲート、ソース、ドレインなどの電極を絶縁膜上に引き上げるためのコンタクトプラグにはタングステン(W)が用いられてきたが、微細化に伴い先端デバイスではWよりも電気抵抗が低い材料としてコバルト(Co)が用いられるようになってきた。
さらに、これらのコンタクトプラグと上層部の配線を電気的に接続する配線(Middle of Line:MOL)も微細化に伴い、銅(Cu)からCoへと移行しつつある。
【0004】
このデバイスを形成するプロセスでは従来と同様に、アルミナや酸化シリコンなどのシリコン化合物や酸化セリウムなどのセリウム化合物を砥粒としたスラリーを用いCMPが行われる。
【0005】
CMP後の基板表面は、スラリーに含まれるアルミナ、シリカまたは酸化セリウム粒子に代表される粒子や、研磨される表面の構成物質やスラリーに含まれる薬品由来の金属不純物により汚染される。これらの汚染物は、パターン欠陥や密着性不良、電気特性の不良などを引き起こすことから、次工程に入る前に完全に除去する必要がある。これらの汚染物を除去するための一般的なCMP後洗浄としては、洗浄液の化学作用とポリビニルアルコール製のスポンジブラシなどによる物理的作用を併用したブラシ洗浄が行われる。
【0006】
これまでCoは半導体製造プロセスにおいて、Cu配線における金属拡散を防止するバリアメタルとして用いられており、CuとCoに対する洗浄液は提案されているが(特許文献1~4)、これらの洗浄液を、Coを用いたコンタクトプラグやMOLに用いることは困難であると思われる。
【0007】
なぜならばバリアメタルやライナーとして用いられるCoは非常に薄く、Co上にスラリーに由来する有機残渣と呼ばれる異物や砥粒は残存しにくいと思われるのに対し、コンタクトプラグやMOLではCoの面積がライナーに比べ大きく、有機残渣や砥粒が残存しやすいため、バリアメタルやライナーにCoを用いたものに使えた洗浄液は適切とはいい難いと考えられるからであり、実際にそうであると今般判明したのである。そのため、CoのコンタクトプラグやCoを使用した配線(以下、Co配線という)に対応した洗浄液が必要であると思われるが、そのような洗浄液は提案されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特表2008-528762号公報
【文献】特表2008-543060号公報
【文献】特表2015-519723号公報
【文献】特表2015-524165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の課題は、CoのコンタクトプラグやCo配線が存在する半導体基板において、スラリー由来の有機残渣や砥粒を効果的に短時間で除去する洗浄液を提供することにある。とくに有機残渣を効果的に除去する洗浄液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決すべく鋭意研究する中で、本発明者らは、還元剤を1種または2種以上と、水とを含む洗浄液組成物が、CMPによって発生するCoイオンとスラリーに含まれる防食剤が複合的に結合したポリマーである有機残渣に作用し、Coイオンの価数を変化させることで、ポリマーを形成している化学結合を弱めることができ、Coを含有するスラリー由来の有機残渣や砥粒を効果的に短時間で除去することができることを見出し、さらに研究を進めた結果、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、以下に関する。
[1] Coのコンタクトプラグおよび/またはCo配線を有する基板を洗浄するための洗浄液組成物であって、還元剤を1種または2種以上と、水とを含む、前記洗浄液組成物。
[2] Coを有し、かつ、Cuを有さない基板を洗浄するための洗浄液組成物であって、還元剤を1種または2種以上と、水とを含み、pHが、3以上12未満である、前記洗浄液組成物。
[3] 基板が、Coのコンタクトプラグおよび/またはCo配線を有する、前記[2]に記載の洗浄液組成物。
[4] 還元剤が、2以上のヒドロキシル基が環に直接結合する五員環または六員環化合物からなる群から選択される1種または2種以上を含む、前記[1]~[3]のいずれか一つに記載の洗浄液組成物。
[5] 還元剤が、アスコルビン酸、ピロガロールおよびメチル没食子酸からなる群より選択される1種または2種以上である、前記[4]に記載の洗浄用組成物。
【0012】
[6] さらに界面活性剤として、ポリスルホン酸化合物を1種または2種以上含む、前記[1]~[5]のいずれか一つに記載の洗浄液組成物。
[7] 前記[1]~[6]のいずれか一つに記載の洗浄液組成物用の原液組成物であって、10倍~1000倍に希釈することにより前記洗浄液組成物を得るために用いられる、前記原液組成物。
[8] 前記[1]~[6]のいずれか一つに記載の洗浄液組成物を、Coのコンタクトプラグおよび/またはCo配線を有する基板に接触させる工程を含む、半導体基板の製造方法。
[9] Coのコンタクトプラグおよび/またはCo配線を有する基板に接触させる工程の前に、Coのコンタクトプラグおよび/またはCo配線を有する基板を、化学的機械研磨(CMP)する工程を含む、前記[8]に記載の半導体基板の製造方法。
[10] Coのコンタクトプラグおよび/またはCo配線を有する基板に接触させる工程が、Coのコンタクトプラグおよび/またはCo配線を有する基板を洗浄する工程である、前記[8]または[9]に記載の半導体基板の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の洗浄液組成物は、半導体素子などの電子デバイスの製造工程において、研磨処理、エッチング処理、化学的機械研磨(CMP)処理などを施された基板の金属材料表面の洗浄において、金属不純物、微粒子、中でもCoと有機防食剤との反応生成物であるCoを含む有機残渣や砥粒を効果的に短時間で除去することができる。また、本発明の洗浄液組成物は、基板の洗浄用のみならず、あらゆる用途において、Coを含む有機残渣の溶解に用いることができる。
とくに、Coコンタクトプラグおよび/またはCo配線を有する基板において、Coを含む有機残渣や砥粒を除去することに適している。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、洗浄液組成物が含有する還元剤の種類およびpHと洗浄性との関係を示す図である。
【
図2】
図2は、洗浄液組成物が含有する還元剤の有無、界面活性剤の有無およびその他の成分の種類と洗浄性との関係を示す図である。
【
図3】
図3は、洗浄液組成物が含有する還元剤の有無およびその他の成分の種類とXPSスペクトルとの関係を示す図である。
【
図4】
図4は、洗浄液組成物が含有する還元剤の有無、界面活性剤の有無およびpHとCo、SiO
2およびSiNの各粒子に対するゼータ電位との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について、本発明の好適な実施態様に基づき、詳細に説明する。
まず、本発明の洗浄液組成物および原液組成物について説明する。
本発明の洗浄液組成物は、Coのコンタクトプラグおよび/またはCo配線を有する基板を洗浄するための洗浄液組成物であって、還元剤を1種または2種以上と、水とを含む、洗浄液組成物である。
【0016】
本発明に用いられる還元剤は、Coイオンの価数を変化させることができるものであればとくに限定されないが、2以上のヒドロキシル基が環に直接結合する五員環または六員環化合物などが挙げられる。これらの還元剤は、1種で使用してもよく、2種以上で使用してもよい。
【0017】
2以上のヒドロキシル基が環に直接結合する五員環または六員環は、飽和または不飽和の五員環または六員環であってもよく、また、芳香族五員環または六員環であってもよい。2以上のヒドロキシル基が環に直接結合した芳香族五員環または芳香族六員環が、本発明において好ましく用いられ、これに限定されないが、例えば、γラクトン基およびフェニル基などが挙げられる。また、2以上のヒドロキシル基が環に直接結合していれば、ヒドロキシル基以外の置換基が環に直接結合していてもよい。
【0018】
本発明に用いられる還元剤は、アスコルビン酸、ピロガロール、メチル没食子酸であることが好ましく、洗浄液中における安定性の観点から、ピロガロール、メチル没食子酸であることがとくに好ましい。
【0019】
本発明において、洗浄液組成物のpHは、12未満であることが好ましく、3以上12未満であることがさらに好ましい。Coを含む有機残渣および砥粒の洗浄性の観点からは、pHは4~9であればさらに高い洗浄性が得られ、pHが6~9であることがとくに好ましい。
【0020】
また、本発明の洗浄液組成物は、微粒子の除去性を向上させるために、界面活性剤を含んでもよい。界面活性剤の種類は、除去する微粒子や基板によって適宜選択され、これに限定されないが、ポリスルホン酸化合物が好ましい。ポリスルホン酸化合物としては、例えば、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、ポリスチレンスルホン酸、リグニンスルホン酸およびそれらの塩などが挙げられる。
【0021】
有機残渣としては、これに限定されないが、Coとベンゾトリアゾール(BTA)などの有機系防食剤とが、CMPプロセス中に反応して生成したCoにより架橋された有機金属錯体のダイマーやオリゴマーである、Coを含む有機残渣が挙げられ、難溶性である。本発明に係る洗浄液組成物の対象となる基板の有機残渣は、Coを高濃度で含み得る。このCoを含む有機残渣を洗浄液中に溶解させるためには、洗浄液のpHの変更によりCoと有機系防食剤との配位結合を切断し、低分子化させる方法がある。
【0022】
Coを含む有機残渣のうち、Coとベンゾトリアゾール(BTA)などの有機系防食剤とが、CMPプロセス中に反応して生成したCoにより架橋された有機金属錯体のダイマーやオリゴマーとしては、これに限定されないが、例えばCo-ベンゾトリアゾール(BTA)複合体が挙げられる。
【0023】
Co-BTA複合体とは、Coおよびベンゾトリアゾール(BTA)が架橋などにより複合体化したものをいい、これに限定されないが、Co-BTA錯体、Cu-BTA錯体にSiO2等のスラリー由来の無機物が混合された化合物などが挙げられる。
【0024】
本発明におけるCoのコンタクトプラグおよび/またはCo配線を有する基板としては、化学的機械研磨(CMP)後に得られる基板であれば、これに限定されないが、例えば、CMP直後の基板およびCoのコンタクトプラグおよび/またはCo配線が形成された後、上層の絶縁膜をドライエッチングにより加工した直後の基板などが挙げられる。このうち、好ましくは、CMP直後の基板である。
【0025】
本発明における化学的機械研磨(CMP)は、公知の化学的機械研磨に準じて行うことができ、これに限定されないが、例えば、SiO2やAl2O3等の砥粒を用いた研磨方法および電解水を用いた砥粒レス研磨方法などが挙げられる。このうち、好ましくは、SiO2やAl2O3等の砥粒を用いた研磨方法である。
【0026】
本発明の原液組成物は、希釈することにより本発明の洗浄液組成物を得られるものであり、該原液組成物を、これに限定されないが、例えば10倍以上、好ましくは10~1000倍、より好ましくは50~200倍に希釈することにより本発明の洗浄液組成物を得ることができるが、構成される組成により適宜決められるものである。
【0027】
本発明の洗浄液組成物は、大部分が水で構成されているため、電子デバイスの製造ラインに希釈混合装置が設置されている場合、原液組成物として供給し、使用直前に水を含む希釈液(該希釈液は、超純水のみからなるものを含む)により希釈して使用することができるため、運送コストの低減、運送時の二酸化炭素ガスの低減および電子デバイスメーカーにおける製造コストの低減に寄与できるという利点も有する。
【0028】
本発明の洗浄液組成物は、例えば、Coのコンタクトプラグおよび/またはCo配線を有する基板に用いることができ、とくに、Coのコンタクトプラグおよび/またはCo配線を有し、Cuを有さない基板に用いることが適している。また化学的機械研磨(CMP)後の基板に用いることが適しており、ここでCMP後の基板表面には、基板表面の各種配線ならびにバリアメタル材料(Co、Ti系化合物、Ta系化合物、Ruなど)および絶縁膜材料(SiO2、low-k)に加えて、スラリーに含まれる微粒子や金属不純物が存在し得る。微粒子は、例えば主にアルミナ、シリカおよび酸化セリウムなどであり、金属不純物は、研磨中にスラリー中に溶解して再付着したCu、スラリー中の酸化剤由来のFe、またスラリー中に含まれるCo防食剤とCoが反応したCo有機金属錯体などが挙げられる。
【0029】
本発明において、バリアメタルとは、コンタクトプラグまたは配線中の金属が絶縁膜に拡散することを防止するために、半導体基板のコンタクトプラグまたは配線と絶縁膜との間に形成される層(バリアメタル層)に用いられる、Co、Ti系化合物、Ta系化合物、Ruなどである。
【0030】
また、low-k材料とは、層間絶縁膜などに用いられる、低誘電率を有する材料であり、これに限定するものではないが、例えば多孔質シリコン、シリコン含有有機ポリマー、TEOS(テトラエトキシシラン)などが挙げられる。具体的には、Black Diamond(Applied Materials,Inc.製)、Aurora(ASM International製)などが挙げられる。
【0031】
次に、本発明による半導体基板の製造方法について説明する。
本発明による半導体基板の製造方法は、本発明の洗浄液組成物を、Coのコンタクトプラグおよび/またはCo配線を有する基板に接触させる工程を含む、半導体基板の製造方法である。
また、本発明による半導体基板の製造方法は、本発明の洗浄液組成物を、Coのコンタクトプラグおよび/またはCo配線を有する基板に接触させる工程の前に、Coのコンタクトプラグおよび/またはCo配線を有する基板を、化学的機械研磨(CMP)する工程を含む、半導体基板の製造方法である。
【0032】
接触させる工程としては、これに限定されないが、例えば、CMP後の洗浄工程およびドライエッチングによりCoのコンタクトプラグ上層の絶縁膜加工後の洗浄工程などが挙げられる。接触させるための方法としては、これに限定されないが、例えば、ブラシスクラブを併用した枚葉洗浄法、スプレーやノズルより洗浄液が噴霧される枚葉洗浄法、バッチ式スプレー洗浄法、バッチ式浸漬洗浄法などが挙げられる。このうち、好ましくは、ブラシスクラブを併用した枚葉洗浄法およびスプレーやノズルより洗浄液が噴霧される枚葉洗浄法であり、とくに好ましくは、ブラシスクラブを併用した枚葉洗浄法である。
【0033】
接触させる雰囲気としては、これに限定されないが、例えば、空気中、窒素雰囲気中および真空中などが挙げられる。このうち、好ましくは、空気中および窒素雰囲気中である。
接触時間は、目的に応じて適宜選択されるため、これに限定されないが、ブラシスクラブを併用した枚葉洗浄法およびスプレーやノズルより洗浄液が噴霧される枚葉洗浄法の場合には、0.5~5分間であり、バッチ式スプレー洗浄法およびバッチ式浸漬洗浄法の場合には、0.5~30分間である。
温度は、目的に応じて適宜選択されるため、とくに限定されないが、ブラシスクラブを併用した枚葉洗浄法およびスプレーやノズルより洗浄液が噴霧される枚葉洗浄法の場合には、20℃~50℃であり、バッチ式スプレー洗浄法およびバッチ式浸漬洗浄法の場合には、20℃~100℃である。
上述の接触条件は、目的に応じて適宜組み合わせることができる。
【0034】
半導体基板としては、これに限定されないが、例えば、シリコン、炭化シリコン、窒化シリコン、ガリウム砒素、窒化ガリウム、ガリウムリン、インジウムリンなどが挙げられる。このうち、好ましくは、シリコン、炭化シリコン、ガリウム砒素、窒化ガリウムであり、とくに好ましくは、シリコン、炭化シリコンである。
【0035】
次に、本発明によるCoを含む有機残渣を溶解する方法について説明する。
本発明のCoを含む有機残渣を溶解する方法は、還元剤を1種または2種以上と、水とを含み、pHが4~9である洗浄液組成物を、Coを含む有機残渣に接触させる工程を含む。
洗浄液組成物としては、上述したものであればとくに限定されないが、詳述した本発明の洗浄液組成物を用いることができる。
接触させる方法としては、上述したものであればとくに限定されない。
【実施例】
【0036】
次に、本発明の洗浄液組成物について、以下に記載する例によって、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0037】
<評価A:洗浄液組成物の洗浄性(Coウェハ洗浄後の欠陥数)>
(CMP研磨液の調製)
平均粒径70nmの酸化シリコンを用いたスラリー(型番:HS‐CB915‐B、日立化成株式会社製)を超純水(DIW)で3倍希釈し、過酸化水素水と混合し、CMP研磨液を得た。
(研磨対象ウェハの準備)
以下構成のCo基板を準備した(PVD-Co 2kÅ/Ti/Th-SiO2/Si、アドバンスマテリアルズテクノロジー株式会社製)。
【0038】
(ウェハの研磨)
上記CMP研磨液を用いて、研磨装置(マット社製のCMP研磨装置、型番:ARW-681MSII)により30秒間、上記研磨対象ウェハを研磨した。研磨終了後、ウェハを回転させながら超純水(DIW)100mLを用いて10秒間リンスした。表1および表2の洗浄液組成物(例11および12を除き、塩酸およびTMAHを用いて所定のpHとなるように調整した。また、例11および12は関東化学製の還元剤を含まないCMP後洗浄液であり、それぞれCoバリアメタル用のアルカリ性CuCMP後洗浄液、Taバリアメタル用の酸性CuCMP後洗浄液である。)を用いて、リンスしたウェハを回転させながらポリビニルアルコール製のブラシ(アイオン社製)を転がすことにより、ウェハの洗浄を60秒間行った。洗浄されたウェハを回転させながら超純水(DIW)300mLを用いて30秒間リンスし、さらに回転させながら25℃で30秒間乾燥することによって、測定用のウェハを得た。
【0039】
(ウェハ表面の欠陥数測定)
上記測定用のウェハ表面の欠陥数を表面検査装置(トプコン社製、型番:WM-10)により測定し、洗浄液組成物の洗浄性を評価した。評価結果を
図1および
図2に示す。
【0040】
(結果)
表1、表2、
図1および
図2に示すとおり、同じpH12の場合に還元剤を含む洗浄液組成物で洗浄したウェハ表面の欠陥数は、還元剤を含まない洗浄液組成物で洗浄したウェハ表面の欠陥数より少ないことが確認された(例10、11および13)。すなわち、還元剤を含む洗浄液組成物の洗浄性は、還元剤を含まない洗浄液組成物の洗浄性よりも高いことが確認された。また、還元剤を含む洗浄液組成物同士でも、pH4、6、9の洗浄液組成物の洗浄性は、pH12の洗浄液組成物の洗浄性よりも高いことが確認された。一般的にCuに対する洗浄に用いられる洗浄液(例11および例12)はCoに対する洗浄液としては適しておらず、本発明の洗浄液組成物に対する洗浄液と比べても良好な洗浄性能を有していた。
【0041】
【0042】
【0043】
<評価B:洗浄液組成物の有機残渣除去性(Co-BTA除去性)>
(Co-BTA基板の準備)
以下構成のCo基板(PVD-Co 2kÅ/Ti/Th-SiO2/Si、アドバンスマテリアルズテクノロジー株式会社製)を1.0×1.0cm2に割断し、これらの基板を1%のシュウ酸水溶液に10秒間浸漬させた後、超純水(DIW)で1分間リンスを行い、その後、BTA水溶液(濃度10mM、pH8)に2分間浸漬させ、その後再びDIWで1分間リンスを行い、窒素ブローにより乾燥させCo-BTA基板を得た。
【0044】
(評価用基板の準備)
以下構成のCo基板(PVD-Co 2kÅ/Ti/Th-SiO2/Si、アドバンスマテリアルズテクノロジー株式会社製)を1.0×1.0cm2に割断し、これらの基板を1%のシュウ酸水溶液に10秒間浸漬させた後、超純水(DIW)で1分間リンスを行い、その後、BTA水溶液(濃度10mM、pH8)に2分間浸漬させ、さらにその後、DIWで1分間リンスを行い、表3および表4の各洗浄液組成物(塩酸およびTMAHを用いて所定のpHとなるように調整した。)に1分間浸漬させ、その後再びDIWで1分間リンスを行い、窒素ブローにより乾燥させ評価用基板を得た。
【0045】
(Co-BTA除去性評価)
上記各基板をXPS(X線光電子分光、日本電子製、型番:JPS-9200)を用いてN1sスペクトルを測定した。得られたCo-BTA基板のスペクトルを基準とした際の評価用基板のスペクトルの強度を比較し、その強度の減少の程度からCo-BTA除去性の評価を実施した。
【0046】
(結果)
図3に示すpH4からpH9の例18~20のXPSスペクトルは、Co-BTAのスペクトルに比べ、スペクトルの強度が減少していることが確認された。還元剤を含まない例14~16のXPSスペクトルは、Co-BTAのスペクトルに比べ、スペクトルの強度が減少しているものの、例18~20にくらべ減少の程度が少ない事が確認される。この結果から還元剤がCo-BTA(スラリー由来の有機残渣)の除去に有効だということが確認できる。
【0047】
【0048】
【0049】
<評価C:洗浄液組成物中でのCo、SiO
2およびSiNの各粒子のゼータ電位の測定>
平均粒径50nmのコバルト(SIGMA-ALDRICH社製)0.05gを超純水(DIW)20mlと混合し、超音波装置を用いて10分間撹拌させ均一に分散させた後、この溶液20μLを採取し表5の組成を有する洗浄液組成物50mL(塩酸およびTMAHを用いて所定のpHとなるように調整した。)に加えた。これらの溶液をさらに撹拌、均一にし、ゼータ電位測定装置(大塚電子社製、型番:ELS-Z)を用いてコバルトのゼータ電位を測定した。
酸化ケイ素および窒化ケイ素の各粒子についても、コバルトと同様の方法でゼータ電位(mV)を測定した。
表5および
図4に結果を示す。
【0050】
(結果)
表5および
図4より、コバルトについては、還元剤および/または界面活性剤を含む洗浄液組成物におけるゼータ電位が、還元剤および界面活性剤のいずれも含まない洗浄液組成物におけるゼータ電位よりも低いことが確認された。酸化ケイ素については、洗浄液組成物の組成によっては大きなゼータ電位の差は見られなかった。窒化ケイ素については、還元剤および/または界面活性剤を含む洗浄液組成物におけるゼータ電位が、還元剤および界面活性剤のいずれも含まない洗浄液組成物におけるゼータ電位よりも低いことが確認された。
また、特にコバルトおよび窒化ケイ素の場合は、酸性域で還元剤を含む洗浄液組成物のゼータ電位が0を超えてしまうのに対し、還元剤および/または界面活性剤を含む洗浄液組成物のゼータ電位は、pH6~12の幅広いpH域において、大きなマイナスのゼータ電位を示した。従ってコバルト配線や窒化ケイ素を含む洗浄対象物においても同様にマイナスのゼータ電位を示す。コバルト研磨スラリーに含まれるシリカ砥粒は一般的にマイナスのゼータ電位を有しているため、還元剤および/または界面活性剤を含む本洗浄液組成物を用いる事により、シリカ砥粒と洗浄対象物との間でマイナスのゼータ電位による反発作用によるシリカ砥粒のリフトオフ効果を高めると同時に、洗浄対象物への再付着を防止する効果が期待され、洗浄性能の向上に寄与していると考えられる。
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