(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-01
(45)【発行日】2023-02-09
(54)【発明の名称】射出成形機およびその制御方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/78 20060101AFI20230202BHJP
【FI】
B29C45/78
(21)【出願番号】P 2019017253
(22)【出願日】2019-02-01
【審査請求日】2022-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000222587
【氏名又は名称】東洋機械金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002608
【氏名又は名称】弁理士法人オーパス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮本 志郎
(72)【発明者】
【氏名】延近 暢祐
【審査官】田中 則充
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-070865(JP,A)
【文献】特開2007-090665(JP,A)
【文献】特開平10-086203(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C45/00-45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型に対して進退可能な射出シリンダと、前記射出シリンダに設けられ、当該射出シリンダの進退に応じて前記金型に接離されるノズルと、前記射出シリンダに収容されたスクリューと、を有する熱硬化性樹脂材料用の射出成形機であって、
前記ノズルの温度を検出する温度検出部と、
射出動作および保圧動作を含む成形サイクルを繰り返しているときに、前記温度検出部によって検出された前記ノズルの温度に応じて、
一の成形サイクルの次の成形サイクルにおける前記射出動作開始時の前記ノズルの温度が目標温度となるように、
前記一の成形サイクルにおける前記保圧動作終了時から
前記次の成形サイクルにおける前記射出動作開始時までの期間に前記射出シリンダを進退させて前記ノズルと前記金型との接触状態を調節する接触状態調節部と、を有することを特徴とする射出成形機。
【請求項2】
前記接触状態調節部が、前記ノズルと前記金型とを接離させることにより前記接触状態を調節する、請求項1に記載の射出成形機。
【請求項3】
前記接触状態調節部が、前記ノズルを前記金型に押し付ける押付力を変えることにより前記接触状態を調節する、請求項1に記載の射出成形機。
【請求項4】
前記接触状態調節部が、
前記一の成形サイクルにおける前記保圧動作終了時に前記温度検出部により検出された前記ノズルの温度と前記目標温度との温度差に基づいて前記接触状態を調節する、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の射出成形機。
【請求項5】
金型に対して進退可能な射出シリンダと、前記射出シリンダに設けられ、当該射出シリンダの進退に応じて前記金型に接離されるノズルと、前記射出シリンダに収容されたスクリューと、を有する熱硬化性樹脂材料用の射出成形機であって、
前記ノズルの温度を検出する温度検出部と、
前記温度検出部によって検出された前記ノズルの温度に応じて、射出動作開始時の前記ノズルの温度が目標温度となるように、保圧動作終了時から射出動作開始時までの期間に前記射出シリンダを進退させて前記ノズルと前記金型との接触状態を調節する接触状態調節部と、を有し、
前記接触状態調節部が、前記
保圧動作終了時に前記温度検出部により検出された前記ノズルの温度と前記目標温度との温度差と、前記ノズルが前記金型と接している状態における当該ノズルの温度上昇に関する情報と、前記ノズルが前記金型から離れている状態における当該ノズルの温度低下に関する情報と、を用いて前記ノズルと前記金型とが接しているべき接触時間および離れているべき離間時間を算出し、前記接触時間および前記離間時間に応じて前記ノズルと前記金型とを接離させる
、射出成形機。
【請求項6】
金型に対して進退可能な射出シリンダと、前記射出シリンダに設けられ、当該射出シリンダの進退に応じて前記金型に接離されるノズルと、前記射出シリンダに収容されたスクリューと、を有する熱硬化性樹脂材料用の射出成形機の制御方法であって、
前記ノズルの温度を検出し、
射出動作および保圧動作を含む成形サイクルを繰り返しているときに、検出した前記ノズルの温度に応じて、
一の成形サイクルの次の成形サイクルにおける前記射出動作開始時の前記ノズルの温度が目標温度となるように、
前記一の成形サイクルにおける前記保圧動作終了時から
前記次の成形サイクルにおける前記射出動作開始時までの期間に前記射出シリンダを進退させて前記ノズルと前記金型との接触状態を調節することを特徴とする射出成形機の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性樹脂材料用の射出成形機、および、熱硬化性樹脂材料の射出成形機の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱硬化性樹脂材料を用いた射出成形において良好な製品を得るためには、熱硬化性樹脂材料に適切な熱量を加えることが重要である。熱硬化性樹脂材料に必要以上の熱量が加わると硬化反応が進んでしまう。また、熱硬化性樹脂材料に必要な熱量が加わらないと、熱硬化性樹脂材料の粘度が十分に下がらず、成形性が悪化したり、ガラスやカーボンなどからなる長繊維材料を混入した場合に折損が生じたりする。
【0003】
熱硬化性樹脂材料用の射出成形機は、射出シリンダの温度より金型の温度が高くなるように設定されている。そのため、射出シリンダに設けられたノズルは、金型からの熱によって温度が上昇する。また、射出時に熱硬化性樹脂材料が樹脂流路を流れることにより剪断熱が生じる。そのため、この剪断熱によってもノズルの温度が上昇する。このようにノズルの温度が上昇すると、ノズルから熱硬化性樹脂材料に必要以上の熱量が加わるおそれがある。そして、特許文献1~3にノズルの温度を調節する構成が開示されている。
【0004】
特許文献1の熱硬化性樹脂材料用の射出成形機は、金型内に挿入されるノズル(ロングノズル)を有している。この射出成形機は、ノズルの先端部が金型内に入るので、金型からの熱によりノズルの温度が高くなり、熱硬化性樹脂材料が硬化するおそれがある。そのため、熱電対によりノズルの温度を検出して、射出保持工程の終了後、ノズル先端部が設定温度以上になるとノズルを自動的に後退できるようになっている。
【0005】
特許文献2の熱硬化性樹脂材料用の射出成形機は、シリンダヘッドとノズルとを覆うカバーが設けられている。この射出成形機は、カバー内の空間に冷却水または熱媒体を流通してノズルの温度調節をする。
【0006】
特許文献3の射出成形機は、ノズルに巻装されたバンドヒーターを有している。この射出成形機は、成形サイクルごとにバンドヒーターからノズルに加える熱量が常に一定となるように制御する。また、この射出成形機は、ノズルを金型に押し付ける押付力を変えることで、ノズルから金型に受け渡される熱量を調節している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平9-239798号公報
【文献】実開平7-27825号公報
【文献】特開2006-192646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の射出成形機は、ノズル先端部が設定温度以上になるとノズルを自動的に後退できるようになっているが、後退した後のノズルの温度については考慮されておらず、ノズルの温度を適切に調節するものではない。
【0009】
特許文献2の射出成形機は、熱硬化性樹脂材料用の射出成形機であるところ、このような射出成形機では熱硬化性樹脂材料を取り除くためにノズルの着脱が比較的頻繁に行われる。しかしながら、特許文献2の射出成形機は、ノズルを覆うカバーを有しているのでノズル着脱の作業性が良くない。
【0010】
特許文献3の射出成形機は、バンドヒーターによりノズルに加えられた熱量を金型に受け渡す(逃がす)ものであるので、熱硬化性樹脂材料用の射出成形機のようにノズルの温度より金型の温度が高い構成には採用できない。また、特許文献3の射出成形機は、バンドヒーターがノズルに巻装されているので、ノズル着脱の作業性が良くない。
【0011】
そこで、本発明は、ノズルの温度を適切に調節可能でかつノズル着脱の作業性が良好な熱硬化性樹脂材料用の射出成形機およびその射出成形機の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る射出成形機は、金型に対して進退可能な射出シリンダと、前記射出シリンダに設けられ、当該射出シリンダの進退に応じて前記金型に接離されるノズルと、前記射出シリンダに収容されたスクリューと、を有する熱硬化性樹脂材料用の射出成形機であって、前記ノズルの温度を検出する温度検出部と、射出動作および保圧動作を含む成形サイクルを繰り返しているときに、前記温度検出部によって検出された前記ノズルの温度に応じて、一の成形サイクルの次の成形サイクルにおける前記射出動作開始時の前記ノズルの温度が目標温度となるように、前記一の成形サイクルにおける前記保圧動作終了時から前記次の成形サイクルにおける前記射出動作開始時までの期間に前記射出シリンダを進退させて前記ノズルと前記金型との接触状態を調節する接触状態調節部と、を有することを特徴とする。
【0013】
本発明において、前記接触状態調節部が、前記ノズルと前記金型とを接離させることにより前記接触状態を調節することが好ましい。
【0014】
本発明において、前記接触状態調節部が、前記ノズルを前記金型に押し付ける押付力を変えることにより前記接触状態を調節することが好ましい。
【0015】
本発明において、前記接触状態調節部が、前記一の成形サイクルにおける前記保圧動作終了時に前記温度検出部により検出された前記ノズルの温度と前記目標温度との温度差に基づいて前記接触状態を調節することが好ましい。
【0016】
上記目的を達成するために、本発明の他の一態様に係る射出成形機は、金型に対して進退可能な射出シリンダと、前記射出シリンダに設けられ、当該射出シリンダの進退に応じて前記金型に接離されるノズルと、前記射出シリンダに収容されたスクリューと、を有する熱硬化性樹脂材料用の射出成形機であって、前記ノズルの温度を検出する温度検出部と、前記温度検出部によって検出された前記ノズルの温度に応じて、射出動作開始時の前記ノズルの温度が目標温度となるように、保圧動作終了時から射出動作開始時までの期間に前記射出シリンダを進退させて前記ノズルと前記金型との接触状態を調節する接触状態調節部と、を有し、前記接触状態調節部が、前記保圧動作終了時に前記温度検出部により検出された前記ノズルの温度と前記目標温度との温度差と、前記ノズルが前記金型と接している状態における当該ノズルの温度上昇に関する情報と、前記ノズルが前記金型から離れている状態における当該ノズルの温度低下に関する情報と、を用いて前記ノズルと前記金型とが接しているべき接触時間および離れているべき離間時間を算出し、前記接触時間および前記離間時間に応じて前記ノズルと前記金型とを接離させる。
【0017】
上記目的を達成するために、本発明の他の一態様に係る射出成形機の制御方法は、金型に対して進退可能な射出シリンダと、前記射出シリンダに設けられ、当該射出シリンダの進退に応じて前記金型に接離されるノズルと、前記射出シリンダに収容されたスクリューと、を有する熱硬化性樹脂材料用の射出成形機の制御方法であって、前記ノズルの温度を検出し、射出動作および保圧動作を含む成形サイクルを繰り返しているときに、検出した前記ノズルの温度に応じて、一の成形サイクルの次の成形サイクルにおける前記射出動作開始時の前記ノズルの温度が目標温度となるように、前記一の成形サイクルにおける前記保圧動作終了時から前記次の成形サイクルにおける前記射出動作開始時までの期間に前記射出シリンダを進退させて前記ノズルと前記金型との接触状態を調節することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ノズルの温度を検出し、検出したノズルの温度に応じて、射出動作開始時のノズルの温度が目標温度となるように、保圧動作終了時から射出動作開始時までの期間に射出シリンダを進退させてノズルと金型との接触状態を調節する。このようにしたことから、金型からノズルに適切な熱量を伝達させることができる。そのため、ヒーターやカバーなどの温度調節手段をノズルに設けることなく、射出動作時のノズルの温度を適切に調節できる。したがって、ノズルの温度を適切に調節可能でかつノズル着脱の作業性を良好なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係る射出成形機の正面図である。
【
図3】
図1の射出成形機の要部を拡大した断面図である。
【
図4】
図1の射出成形機における動作の一例を示すフローチャートである。
【
図5】
図1の射出成形機における成形サイクルを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態に係る熱硬化性樹脂材料用の射出成形機について、
図1~
図5を参照して説明する。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態に係る射出成形機の正面図である。
図2は、
図1の射出成形機の機能ブロック図である。
図3は、
図1の射出成形機の要部(ノズル近傍)を拡大した断面図である。
図3(a)はノズルが固定金型に接している状態を示し、
図3(b)はノズルが固定金型から離れている状態を示す。
図3において可動ダイプレートの記載を省略している。
図4は、
図1の射出成形機における動作の一例を示すフローチャートである。
図5は、
図1の射出成形機における成形サイクルを説明する図である。
【0022】
本実施形態に係る射出成形機1は、水平方向に対向する金型である固定金型81および可動金型82を型締する。そして、射出成形機1は、固定金型81および可動金型82のキャビティ83に熱硬化性樹脂材料(以下、単に「樹脂材料」という。)を射出充填して、加熱固化することで成形品としての製品を得る。
【0023】
図1~
図3に示すように、射出成形機1は、型締ユニット10と、射出ユニット20と、制御部30と、を有している。
【0024】
型締ユニット10は、基台5上に設けられている。型締ユニット10は、トグルリンク機構11と、固定金型81が取り付けられる固定ダイプレート12と、可動金型82が取り付けられる可動ダイプレート13と、型締駆動部14と、を有している。トグルリンク機構11は、型締駆動部14により曲げ伸ばしされることにより、固定ダイプレート12に対して可動ダイプレート13を進退させる。これにより、固定金型81に可動金型82を押し付けてこれら金型を閉じたり(型閉)、固定金型81から可動金型82を離してこれら金型を開いたり(型開)する。型締駆動部14は、制御部30からの制御信号により制御される。
【0025】
射出ユニット20は、基台5上の図示しないレールに移動可能に載せられている。このレールは、
図1の左右方向に延在しており、レールの一端が固定ダイプレート12と対向して配置されている。射出ユニット20は、射出シリンダ21と、ノズル22と、加熱装置23と、スクリュー24と、射出シリンダ温度センサー25と、温度検出部としてのノズル温度センサー26と、を有している。また、射出ユニット20は、射出ユニット駆動部27と、スクリュー駆動部28と、を有している。
【0026】
射出シリンダ21は、円筒状に形成されている。射出シリンダ21は、射出ユニット20が上記レール上を移動可能であることから、固定金型81に対して進退可能である。すなわち、射出ユニット20の進退と射出シリンダ21の進退とは同義である。射出シリンダ21が固定金型81側に移動することを前進といい、固定金型81側と反対側に移動することを後退という。
【0027】
ノズル22は、射出シリンダ21の先端(
図1において左端)に設けられている。ノズル22は、射出シリンダ21の進退に応じて、固定金型81に接離され、または、固定金型81に押し付ける押付力が変化(増減)される。
【0028】
加熱装置23は、例えば、バンドヒーターや誘導加熱式ヒーターからなり、射出シリンダ21の外周面に設けられている。加熱装置23は、射出シリンダ21を加熱する。加熱シリンダ21が加熱されることでノズル22も加熱される。加熱装置23は、制御部30からの制御信号により制御される。
【0029】
スクリュー24は、射出シリンダ21に回転及び進退可能に収容されている。スクリュー24がノズル22側に移動することを前進といい、ノズル22側と反対側に移動することを後退という。
【0030】
射出シリンダ温度センサー25は、温度を検出する検温部が射出シリンダ21に埋め込まれており、射出シリンダ21の温度に応じた信号を制御部30に出力する。ノズル温度センサー26は、検温部がノズル22に埋め込まれており、ノズル22の温度Tに応じた信号を制御部30に出力する。本実施形態において、射出シリンダ温度センサー25およびノズル温度センサー26は、熱電対で構成されている。
【0031】
射出ユニット駆動部27は、例えば、電動モーターなどで構成されている。射出ユニット駆動部27は、射出ユニット20を上記レール上で移動させる。これにより、射出ユニット20の射出シリンダ21が固定金型81に対して進退され、ノズル22が固定金型81に接したり(タッチしたり)、ノズル22が固定金型81から離れたりする。また、射出ユニット駆動部27は、ノズル22が固定金型81に接しているときの当該ノズル22を固定金型81に押し付ける押付力を変えることができる。射出ユニット駆動部27は、制御部30からの制御信号により制御される。
【0032】
スクリュー駆動部28は、例えば、電動モーターなどで構成されており、射出シリンダ21内でスクリュー24を回転および進退させる。スクリュー駆動部28は、制御部30からの制御信号により制御される。
【0033】
制御部30は、射出成形機1全体の動作を司る。制御部30は、例えば、中央処理装置(CPU)、メモリ、各種入出力インタフェースなどを有する組み込み機器用のマイクロコンピュータを有して構成されている。制御部30は、型締駆動部14、加熱装置23、射出シリンダ温度センサー25、ノズル温度センサー26、射出ユニット駆動部27およびスクリュー駆動部28と信号を送受可能に接続されている。制御部30は、型閉動作、射出動作、保圧動作、計量動作(可塑化動作)、硬化待ち動作、型開動作、製品取り出し動作、接触状態調節動作などの各種動作において、射出成形機1の各駆動部等を制御する。制御部30のメモリには、各種動作に関する情報が記憶されており、これら情報の1つとして、射出動作開始時のノズル22の目標温度Tmが記憶されている。
【0034】
次に、上述した本実施形態の射出成形機1の制御部30において実行される、成形品としての製品を成形する成形サイクルに係る動作の一例について、
図4、
図5を参照して説明する。
【0035】
射出成形機1の制御部30は、事前にパージ動作および初回射出分の樹脂材料の計量などを実行する。成形サイクルにおいて、固定金型81および可動金型82は、所定の樹脂硬化温度(例えば、150℃)となるように、各金型の内部に設けられた棒状ヒーター85によって加熱されている。射出成形機1は、射出シリンダ21の温度より固定金型81および可動金型82の温度が高くなるように設定されている。
【0036】
成形サイクルにおいて、制御部30は型締駆動部14を制御して、固定金型81に可動金型82を押し付けて型締めする(型閉動作、S110)。次に、制御部30はスクリュー駆動部28を制御して、スクリュー24を高速で前進させる(射出動作、S120)。これにより、射出シリンダ21の先端部の樹脂材料が樹脂流路84を通じてキャビティ83に充填される。次に、制御部30はスクリュー駆動部28を制御して、キャビティ83内の樹脂材料に所定の圧力(保圧)が加わるようにスクリュー24を進退させる(保圧動作、S130)。
【0037】
次に、制御部30は加熱装置23を制御して、射出シリンダ21が所定の計量時温度となるように加熱する。さらに、制御部30はスクリュー駆動部28を制御して、スクリュー24を回転させながら後退させ、樹脂材料を可塑化しつつ1回の射出に必要となる量の樹脂材料を射出シリンダ21の先端部に供給(計量)する(計量動作、S140)。計量動作が終わると、制御部30は加熱装置23を制御して、射出シリンダ21の加熱を停止する。また、計量動作と並行して、制御部30はキャビティ83内の樹脂材料が硬化するまで待つ(硬化待ち動作、S150)。
【0038】
そして、硬化待ち動作が終わると、制御部30は型締駆動部14を制御して、固定金型81および可動金型82を開き(型開動作、S160)、図示しないエジェクトピンによりキャビティ83から製品を取り出す(製品取り出し動作、S170)。
【0039】
以降、上記型閉動作~上記製品取り出し動作からなる成形サイクルを繰り返して製品の成形を行う。
【0040】
また、
図5に示すように、一の成形サイクル(K番目)における保圧動作終了後から次の成形サイクル(K+1番目)の射出動作開始前までの期間(以下、「接触状態調節期間」という。)において、制御部30は、接触状態調節動作を実行する。制御部30は、接触状態調節動作を実行する接触状態調節部として機能する。接触状態調節動作について以下に説明する。
【0041】
射出成形機1において、ノズル22が固定金型81にタッチしていると、固定金型81からノズル22に熱量が伝達されて、ノズル22の温度Tが上昇する。また、ノズル22が固定金型81から離れていると、ノズル22の熱量が射出シリンダ21や空気中に逃げて、ノズル22の温度Tが低下する。この作用を利用し、制御部30は、ノズル温度センサー26によって検出されたノズル22の温度Tが目標温度Tmより高いとき、射出ユニット駆動部27を制御して射出ユニット20を後退させ、ノズル22を固定金型81から離す。また、制御部30は、ノズル温度センサー26によって検出されたノズル22の温度Tが目標温度Tmより低いとき、射出ユニット駆動部27を制御して射出ユニット20を前進させ、ノズル22を固定金型81にタッチさせる。このようにして、制御部30は、ノズル22の温度Tに応じてノズル22と固定金型81とを接離させることにより接触状態を調節して、ノズル22の温度Tを調節する。
【0042】
または、ノズル22が固定金型81にタッチしている状態において、ノズル22を固定金型81に押し付ける押付力を変えると、固定金型81からノズル22に伝達される熱量が増減する。この作用を利用し、制御部30は、ノズル温度センサー26によって検出されたノズル22の温度Tが目標温度Tmとなるように、射出ユニット駆動部27を制御して射出ユニット20を前進または後退させ、ノズル22を固定金型81に押し付ける押付力を変えるようにしてもよい。なお、この押付力を変える動作には、ノズル22を固定金型81から離す動作(押付力=0)を含んでいてもよい。このようにして、制御部30は、ノズル22の温度Tに応じて押付力を変えることにより接触状態を調節して、ノズル22の温度Tを調節するようにしてもよい。
【0043】
このように、接触状態調節部としての制御部30は、ノズル温度センサー26によって検出されたノズル22の温度Tに応じて、射出動作開始時のノズル22の温度Tが目標温度Tmとなるように、保圧動作終了時から射出動作開始時までの期間に射出ユニット20(すなわち射出シリンダ21)を進退させてノズル22と固定金型81との接触状態を調節する。
【0044】
以上説明したように、本実施形態の射出成形機1によれば、ノズル温度センサー26によってノズル22の温度Tを検出する。そして、検出したノズル22の温度Tに応じて、射出動作開始時のノズル22の温度Tが目標温度Tmとなるように、保圧動作終了時から射出動作開始時までの期間に射出シリンダ21を進退させてノズル22と固定金型81との接触状態を調節する。このようにしたことから、固定金型81からノズル22に適切な熱量を伝達させることができる。そのため、ヒーターやカバーなどの温度調節手段をノズル22に設けることなく、射出動作時のノズル22の温度Tを適切に調節できる。したがって、ノズル22の温度Tを適切に調節可能でかつノズル22の着脱の作業性を良好なものとすることができる。
【0045】
上述した実施形態は、接触状態調節期間中にノズル22の温度Tを検出し、温度Tが目標温度Tmより高ければノズル22を固定金型81から離し、低ければノズル22を固定金型81にタッチさせる構成であったが、本発明はこの構成に限定されない。
【0046】
例えば、上述した実施形態の射出成形機1において、制御部30のメモリに、ノズル22が固定金型81と接している状態における単位時間当たりのノズル22の温度上昇に関する情報(温度上昇係数α)を記憶する。また、制御部30のメモリに、ノズル22が固定金型81から離れている状態における単位時間当たりノズル22の温度低下(温度低下係数β)に関する情報を記憶する。そして、制御部30は、保圧動作終了時に温度検出部により検出されたノズル22の温度Tと目標温度Tmとの温度差Td(Td=Tm-T)を算出する。制御部30は、この温度差Tdと上記温度上昇係数αおよび温度低下係数βとを用いて、接触状態調節期間中にノズル22と固定金型81とが接しているべき時間(接触時間)および離れているべき時間(離間時間)を算出する。
【0047】
一例として、接触時間をT1、離間時間をT2とし、温度上昇係数αが0.2℃/秒であり、温度低下係数βが-0.3℃/秒であり、温度差Tdが-10℃であり、接触状態調節期間の長さが45秒だったとすると、以下の式(1)、(2)が成立する。
【0048】
Td=0.2×T1+(-0.3)×T2 ・・・(1)
T2=45-T1 ・・・(2)
【0049】
上記式より、接触時間T1が7秒、離間時間T2が38秒が得られる。そのため、例えば、保圧動作終了時から7秒経過した後に、制御部30は、射出ユニット駆動部27を制御して射出ユニット20を後退させ、ノズル22を固定金型81から離す。それから38秒経過した後に、制御部30は、射出ユニット駆動部27を制御して射出ユニット20を前進させ、ノズル22を固定金型81にタッチさせて射出動作を実行する。なお、上記数値は一例であって、射出成形機1の構成等に応じて適宜設定される。
【0050】
このように、制御部30が、保圧動作終了時にノズル温度センサー26により検出されたノズル22の温度Tと目標温度Tmとの温度差Tdに基づいてノズル22と固定金型81との接触状態を調節することで、射出ユニット20の進退回数を効果的に減少させ、射出ユニット20を何度も進退させることを抑制することができる。
【0051】
上記例では温度上昇係数αおよび温度低下係数βが常に一定であるものとして接触時間T1および離間時間T2を算出している。これ以外にも、例えば、ノズル22の温度変化の特性(例えば、ノズル22の温度が変化するにしたがって温度上昇係数α、温度低下係数βが徐々に変化するなど)や射出成形機1が設置される空間の気温などを考慮して温度上昇係数αおよび温度低下係数βを設定することで、ノズル22の温度Tをより精度良く調節できる。
【0052】
上記に本発明の実施形態を説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。前述の実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、実施形態の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0053】
1…射出成形機、5…基台、10…型締ユニット、11…トグルリンク機構、12…固定ダイプレート、13…可動ダイプレート、14…型締駆動部、20…射出ユニット、21…射出シリンダ、22…ノズル、23…加熱装置、24…スクリュー、25…射出シリンダ温度センサー、26…ノズル温度センサー、27…射出ユニット駆動部、28…スクリュー駆動部、30…制御部、81…固定金型、82…可動金型、83…キャビティ、84…樹脂流路、85…棒状ヒーター、α…温度上昇係数、β…温度低下係数、T…ノズルの温度、T1…接触時間、T2…離間時間、Td…温度差、Tm…目標温度