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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-01
(45)【発行日】2023-02-09
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
   E06B 3/58 20060101AFI20230202BHJP
【FI】
E06B3/58 B
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019104867
(22)【出願日】2019-06-04
(65)【公開番号】P2020197092
(43)【公開日】2020-12-10
【審査請求日】2021-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000175560
【氏名又は名称】三協立山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】七山 貴志
(72)【発明者】
【氏名】竹内 晴奈
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-082066(JP,A)
【文献】実開平05-000889(JP,U)
【文献】特開平11-280347(JP,A)
【文献】特開平09-279948(JP,A)
【文献】特開2010-084423(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 1/00-1/70
E06B 3/54-3/88
E06B 3/96-3/99
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠と、押縁と、パネルと、コーナーカバーとを備え、押縁は、枠に支持されたパネルの屋外側の見付面と対面するように枠の屋外側に嵌合され、コーナーカバーは、枠のコーナー部の見付面に配されていると共に、竪押縁のコーナー側端部および横押縁のコーナー側端部を覆っていることを特徴とする建具。
【請求項2】
框と、押縁と、パネルと、コーナーカバーとを備え、押縁は、框に支持されたパネルの屋外側の見付面と対面するようにの屋外側に嵌合され、コーナーカバーは、框のコーナー部の見付面に配されていると共に、竪押縁のコーナー側端部および横押縁のコーナー側端部を覆っていることを特徴とする建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、躯体の開口に設けられる各種窓やドア等の建具に関する。
【背景技術】
【0002】
躯体の開口に設けられる建具は、FIX窓、サッシ、ドアが知られている。このような建具は、断熱や結露の防止等の観点から、下記非特許文献1に記載されているように、樹脂製の枠又は框、押縁を用いたものが提案されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】三協立山株式会社のWEBカタログ。[平成31年4月19日検索]、インターネット<URL:http://apps.st-grp.co.jp/iportal/CatalogViewInterfaceStartUpAction.do?method=startUp&mode=PAGE&catalogCategoryId=&catalogId=12881340000&pageGroupId=1&volumeID=STAWC001&keyword=%E3%82%B9%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%82%B8%E3%83%A5&categoryID=&sortKey=&sortOrder=&designID=WCAT001&designConfirmFlg=>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
樹脂製の枠又は框、押縁を用いた建具は、断熱や結露の防止について高い効果を有する一方、直射日光や外気温の上昇によって熱変形が生じ、この熱変形により外観デザインを損なう等の問題が生じていた。特に、押縁は、枠や框に比べて構造的に熱変形しやすく、この熱変形により、建具のコーナー部で突き合わされる押縁の端部同士の間に隙間やずれが発生するという問題が生じていた。このことから、断熱や結露の防止機能を保持した上で、直射日光や外気温による熱変形を抑制でき、良好なデザイン性を長期に保持できる建具が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前述の課題を解決するために請求項1記載による建具は、枠と、押縁と、パネルと、コーナーカバーとを備え、押縁は、枠に支持されたパネルの屋外側の見付面と対面するように枠の屋外側に嵌合され、コーナーカバーは、枠のコーナー部の見付面に配されていると共に、竪押縁のコーナー側端部および横押縁のコーナー側端部を覆っていることを特徴とする。
【0006】
また、請求項2記載による建具は、框と、押縁と、パネルと、コーナーカバーとを備え、押縁は、框に支持されたパネルの屋外側の見付面と対面するようにの屋外側に嵌合され、コーナーカバーは、框のコーナー部の見付面に配されていると共に、竪押縁のコーナー側端部および横押縁のコーナー側端部を覆っていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、以上の構成により、断熱や結露の防止機能を保持した上で、良好なデザインを長期にわたって維持できる建具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に係る実施形態の建具の正面図である。
図2図1の要部拡大図である。
図3図2の(3) -(3)線断面図である。
図4図2の要部切欠図である。
図5】(a)~(d)は、コーナーカバーの形態を説明する斜視図である。
図6】(a)~(c)は、コーナーカバーを用いた建具の構築工程における既存の押縁を取り外す工程を示す工程図である。
図7】(a)~(c)は、コーナーカバーを用いた建具の構築工程における新たな押縁を取付ける工程を示す工程図である。
図8】(a)は、コーナーカバーを用いた建具の構築工程コーナーカバーの取付け作業工程を示す工程図であり、(b)は、コーナーカバーの取付け後の状態を示す正面図である。
図9】第1の変形例のコーナーカバーを実施した建具の要部拡大正面図である。
図10図9の(10) -(10)線断面図である。
図11図9の要部切欠図である。
図12】第1の変形例のコーナーカバーの形態を説明する図であり、(a)は側面図、(b)は背面図、(c)は斜視図である。
図13】(a)~(c)は、第1の変形例のコーナーカバーを用いた建具の構築工程における新たな押縁を取付ける工程を示す工程図である。
図14】(a)は、第1の変形例のコーナーカバーを用いた建具の構築工程におけるコーナーカバーの取付け作業工程を示す工程図であり、(b)は、コーナーカバーの取付け後の状態を示す正面図である。
図15】第2の変形例のコーナーカバーを実施した建具の要部拡大正面図である。
図16図15の(16)-(16)線断面図である。
図17図15の要部切欠図である。
図18】第2の変形例のコーナーカバーの形態を説明する図であり、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は斜視図である。
図19】(a)は、第2の変形例のコーナーカバーを用いた建具の構築工程におけるコーナーカバーの取付け作業工程を示す工程図であり、(b)は、コーナーカバーの取付け後の状態を示す正面図である。
図20図19(b)の要部拡大図である。
図21図20の(21)-(21)線断面図である。
図22】(a)~(d)は、第2の変形例のコーナーカバーを用いた建具の構築工程における新たな押縁を取付ける工程を示す工程図である。
図23】第3の変形例のコーナーカバーを実施した建具の要部拡大正面図である。
図24図23の(24)-(24)線断面図である。
図25図23の要部切欠図である。
図26】第3の変形例のコーナーカバーの形態を説明する図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。
図27】第1の変形例のコーナーカバーを先付けする構成を示す図であり、(a)は、第1の変形例のコーナーカバーを取付ける工程図であり、(b)は第1の変形例のコーナーカバーが取付けられた状態を示す。
図28】建具の変形例を示す要部拡大正面図である。
図29図28の(29)-(29)線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態の建具Aを説明する。以下の説明で、異なる図における同一符号は同一機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。本発明でいう「枠」とは、躯体の開口に対して直接固定される部材を意味する。
【0010】
この「枠」を用いた建具として、例えば、FIX窓やサッシ、更にはドア等が挙げられる。また、「框」とは、サッシのように「枠」に対して開閉自在に配される障子を構成する部材を意味する。
【0011】
本明細書では、建具について「枠」を用いたFIX窓として説明するが、「枠」を用いた建具と「框」を用いた障子等の建具とは、「枠(竪枠、横枠)」と「押縁(竪押縁、横押縁)」とで「パネル」を支持する構造および「框(竪框、横框)」と「押縁(竪押縁、横押縁)」とで「パネル」を支持する構造という、基本的な構造について共通するものであるので、「框」を用いた建具の説明については省略する。
【0012】
[建具の構成]
本実施形態で示す建具Aは、図1図3に示すように躯体Bの開口B1に設けられるFIX窓であり、ガラス製のパネルPの見付面P1、P3を、樹脂製の枠1および押縁2で囲むように支持したものである。建具Aは、屋外側に押縁2を装着した外押縁タイプのものであり、この押縁2をコーナー部A1で覆う金属製のコーナーカバー3が取付けられている。
【0013】
[枠の構成]
枠1は、図1図4に示すように、パネルPの左右を支持する竪枠1aと、パネルPの上下を支持する横枠1bとを連結して構成されており、屋外側に水切り部1cを有すると共に、屋外側から嵌め込まれるパネルPの屋内側の見付面P1を、ビード100を介して支持する支持面部1dと、パネルPの見込面P2を、セッティングブロック101を介して支持する支持縁部1eを備えている。竪枠1aと横枠1bとは、同じ構成として形成されたものであり、それぞれに、水切り部1cおよび支持面部1d並びに支持縁部1eを有し、両端がコーナー部A1において留切り形状として突き合わさるように斜めに切断して形成されている。
【0014】
[押縁の構成]
押縁2は、図1図4に示すように、可撓性を有する樹脂材を用いて、同じ断面構造として形成された竪押縁2aと横押縁2bとで構成されており、竪押縁2aを竪枠1aに嵌め込むと共に、横押縁2bを横枠1bに嵌め込むことで、パネルPの屋外側の見付面P3を支持するように装着されている。
【0015】
竪押縁2aと横押縁2bは、図2および図3に示すように、竪枠1aおよび横枠1bに形成された嵌合凹部1fに嵌合される嵌合凸部2cを備えていると共に、パネルPの屋外側の見付面P3に密着するように設けられたヒレ部2dを備えている。また、竪押縁2aおよび横押縁2bは、左右のコーナー側端部20a、20bを直角に切断して形成されている。また、竪押縁2aおよび横押縁2bを枠1に取付けたときに、コーナー部A1における竪押縁2aのコーナー側端部20aと横押縁2bのコーナー側端部20bとの間に、コーナーカバー3が嵌合される嵌合空間A10を確保できる長さとして形成されている。
【0016】
嵌合空間A10は、図4に示すように、押縁2の見付面20側が開放されており、この見付面20側から見込方向にコーナーカバー3を嵌合できるようにされている。ヒレ部2dは、図3に示すように、竪押縁2aおよび横押縁2bよりも軟質な樹脂材を用いて形成されており、見付面P3に接触したときに弾性変形し、変形から復帰するときの反発力が作用することによって、見付面P3への密着力を高めるようにされている。
【0017】
[コーナーカバーの構成]
コーナーカバー3は、図5に示すように、覆い板3aと、支持部3bと、弾性体3cとを一体に備えて形成されている。覆い板3aは、図1および図2に示すように、嵌合空間A10を塞ぐように覆うと共に、竪押縁2aのコーナー側端部20aと横押縁2bのコーナー側端部20bを見付面20側から覆うことができる形状として形成されている。コーナーカバー3の取付け状態では、図2および図3に示すように、覆い板3aと枠1の見付面10および押縁2の見付面20との間に、防水用のシール材102が充填されている。
【0018】
支持部3bは、図2図5に示すように、竪枠1aと横枠1bの支持縁部1eに接触して支持される接触部30bと接触部31bとを有してL型状に形成されていると共に、見込方向に突設されており、嵌合空間A10内において支持縁部1eとパネルPの見込面P2の間に位置するようにされている。また、接触部30bと接触部31bには、コーナー部A1において枠1の嵌合凹部1fに嵌合する嵌合突起30が形成されている。
【0019】
弾性体3cは、図2図5に示すように、竪枠1a側の接触部30bの先端に設けられた板バネ30cと、横枠1b側の接触部31bの先端に設けられた板バネ31cとから構成されている。板バネ30cおよび板バネ31cは、一端側が接触部30bおよび接触部31bの先端側に固定された片持ち構造のものであり、パネルPの見込面P2と対向して接触すると共に、見込面P2に対して押し付ける方向へ付勢力が作用するようにされている。
【0020】
弾性体3cは、板バネ構造に限らず、スポンジ材やゴム材等の弾性を有する樹脂を用いて構成してもよい。これは、後述する各変形例のコーナーカバー3における弾性体3cにも適用できる。
【0021】
枠1に対するコーナーカバー3の取付け状態では、図1および図2に示すように、覆い板3aが、嵌合空間A10を覆うと共に、竪押縁2aと横押縁2bのコーナー側端部20a、20bを覆い、これにより、コーナー部A1において嵌合空間A10およびコーナー側端部20a、20bを隠すことができる。
【0022】
また、支持部3bが押し込まれたときには、図2および図3に示すように、嵌合突起30が嵌合凹部1fに嵌合し、しかも、板バネ30cおよび板バネ31cが、付勢力によってパネルPの見込面P2に対して押し付られると共に、この付勢力の反力が接触部30bおよび接触部31bを、それぞれ対応する支持縁部1eに押し付ける力として作用することになる。すなわち、嵌合凹部1fに対する嵌合突起30の嵌合と、板バネ30cおよび板バネ31cの付勢力および付勢力の反力とによって、支持部3bの嵌合状態を保持することができるため、ビス等の固着手段を用いることなくコーナーカバー3を取付けることができる。
【0023】
したがって、竪押縁2aと横押縁2bが熱変形してコーナー側端部20a、20bが位置ずれしても、この位置ずれをコーナーカバー3の覆い板3aで隠すことができるため、建具Aのデザイン性を損ねることを防止し、これによって、良好なデザインを長期にわたって維持できる建具Aを構築することができる。
【0024】
[コーナーカバーを用いた建具の構築工程]
次に、本実施形態のコーナーカバー3を用いた建具Aの構築工程を図6図8を参照して説明する。本構築工程では、建具Aの補修(押縁の交換)時に行われる工程として説明するが、本構築工程は、建具Aの補修時に限らず、新規な建具Aの構築時にも行うことができるものである。
【0025】
1.既存の押縁を取り外す工程(図6参照):最初に、図6(a)に示すように、枠1に取付けられている既存の押縁300における竪押縁200および横押縁201を、図6(b)に示すようにすべて取外し、図6(c)に示すように、枠1にパネルPのみが残った状態とする。既存の押縁300の竪押縁200および横押縁201は、図6(a)に示すように、竪押縁200および横押縁201のコーナー側端部200a、201aが留切り形状となるように斜めに切断されていると共に、コーナー部A1において両端部が接触するように突き合わさることで留切り構造の押縁300を構成している。なお、本工程は、後述する各変形例のコーナーカバー3を用いた建具の構築工程における既存の竪押縁200および横押縁201を取り外す工程と共通するものである。
【0026】
2.新たな押縁の装着工程(図7参照):次に、図7(a)~(c)に示すように、枠1に対して本実施形態における新たな竪押縁2aおよび横押縁2bを装着する。竪押縁2aおよび横押縁2bは、図7(c)に示すように、それぞれのコーナー側端部20a、20bが直角に切断されたものである。この竪押縁2aおよび横押縁2bが竪枠1aおよび横枠1bに装着されると、図7(c)に示すように、コーナー部A1に正面四角形状の嵌合空間A10が形成される。竪押縁2aおよび横押縁2bを装着するときには、嵌合空間A10が、取付けられるコーナーカバー3の覆い板3aから竪押縁2aのコーナー側端部20aおよび横押縁2bのコーナー側端部20bが露出せず、かつコーナーカバー3の支持部3bおよび弾性体3cが見込方向に沿って押し込める形状となるように、竪押縁2aおよび横押縁2bの装着位置を調節する。
【0027】
3.コーナーカバー3を取付ける工程(図8参照):最後に、枠1に対して本実施形態におけるコーナーカバー3を取付ける。具体的には、図8(a)に示すように、支持部3bを、接触部30bが竪枠1a側の支持縁部1eと対面すると共に、接触部31bを横枠1b側の支持縁部1eと対面するように位置させて、見込方向に沿って嵌合空間A10に押し込むことで取付けられる。これを、すべてのコーナー部A1における嵌合空間A10に対して行うと共に、前述したようにシール材102を充填(図2および図3参照)することで、図8(b)に示すように建具Aの補修を行うことができると共に、良好なデザインを長期にわたって維持できる建具Aを構築することができる。
【0028】
[コーナーカバーの第1の変形例]
次に、コーナーカバー3の第1の変形例について、図9図12を参照して説明する。本変形例のコーナーカバー3は、図9および図11に示すように、留切り形状の竪押縁2aおよび横押縁2bが装着された枠1に取付けるようにしたものである。
【0029】
竪押縁2aおよび横押縁2bは、図9および図11に示すように、竪押縁2aおよび横押縁2bのコーナー側端部20a、20bが、コーナー部A1において留切り形状となるように斜めに切断されていると共に、竪押縁2aのコーナー側端部20aと横押縁2bのコーナー側端部20bとの間に留切り形状の開口を有する嵌合空間A10を確保できるように形成されたものである。
【0030】
嵌合空間A10は、竪押縁2aおよび横押縁2bの熱変形を吸収すると共に、コーナーカバー3を嵌合するものであり、図10に示すように、嵌合されたコーナーカバー3によって塞がれる。コーナーカバー3の取付け状態では、図9および図10に示すように、覆い板3aと枠1の見付面10および押縁2の見付面20との間に、防水用のシール材102が充填されている。
【0031】
コーナーカバー3は、図12(a)~(c)に示すように、覆い板3aと、コーナー接触板3dと、弾性体3cとを一体に備えて形成されている。覆い板3aは、図9に示すように、コーナー側端部20aとコーナー側端部20bの傾斜に沿って、コーナー側端部20aおよびコーナー側端部20bを見付面20側から覆うことができると共に、嵌合空間A10を塞ぐように覆うことができる形状として形成されている。
【0032】
コーナー接触板3dは、図9および図11に示すように、覆い板3aの長手方向(嵌合空間A10の傾斜方向)に沿うと共に、嵌合空間A10の幅よりも狭い幅として形成されていると共に、枠1のコーナー部10eと対向する部位に係合する。コーナー接触板3dは、嵌合時において、竪枠1aの支持縁部1eからコーナー部10eを経て横枠1bの支持縁部1eに沿って接触して係合する角形状に形成されている。
【0033】
弾性体3cは、図10および図11に示すように、一端側がコーナー接触板3dに固定されて見込方向に突設された片持ち構造の板バネであり、コーナーカバー3の取付け状態において、弾性体3cがパネルPのコーナー部P4と対向して接触すると共に、コーナー部P4に対して押し付ける方向へ付勢力が作用するようにされている。
【0034】
枠1に対するコーナーカバー3の取付け状態では、図9および図11に示すように、覆い板3aが、嵌合空間A10を覆うと共に、竪押縁2aと横押縁2bのコーナー側端部20a、20bを覆い、これにより、コーナー部A1において嵌合空間A10およびコーナー側端部20a、20bを隠すことができる。
【0035】
また、コーナー接触板3dおよび弾性体3cが押し込まれたときには、図11に示すように、弾性体3cが付勢力によってパネルPのコーナー部P4に対して押し付けられると共に、この付勢力の反力がコーナー接触板3dを支持縁部1eおよびコーナー部10eに押し付ける力として作用することになる。すなわち、弾性体3cの付勢力および付勢力の反力によって、コーナー接触板3dの嵌合状態を保持することができるため、ビス等の固着手段を用いることなくコーナーカバー3を取付けることができる。
【0036】
したがって、第1の変形例のコーナーカバー3によって、留切り形状の竪押縁2aと横押縁2bが熱変形してコーナー側端部20a、20bが位置ずれしても、この位置ずれをコーナーカバー3の覆い板3aで隠すことができるため、建具Aのデザイン性を損ねることを防止し、これによって、良好なデザインを長期にわたって維持できる建具Aを構築することができる。
【0037】
[第1の変形例のコーナーカバーを用いた建具の構築工程]
次に、第1の変形例のコーナーカバー3を用いた建具Aの構築工程を図13および図14を参照して説明する。本取付け工程では、建具Aの補修時に行われる工程として説明するが、本取付け工程は、建具Aの補修時に限らず、新規な建具Aの構築時にも行うことができるものである。
【0038】
1.新たな押縁の装着工程(図13参照):図6に示すように既存の竪押縁200および横押縁201をすべて取外した状態で、枠1に対して新たな竪押縁2aおよび横押縁2bを装着する。竪押縁2aおよび横押縁2bは、図13(a)~(c)に示すように、それぞれのコーナー側端部20a、20bが留切り形状となるように斜めに切断したものである。この竪押縁2aおよび横押縁2bが竪枠1aおよび横枠1bに装着されると、図13(c)に示すように、コーナー部A1においてコーナー側端部20a、20bが離間した状態で対向することで、コーナー部A1に正面留切り形状の嵌合空間A10が形成される。竪押縁2aおよび横押縁2bを装着するときには、竪押縁2aおよび横押縁2bの装着後において形成される嵌合空間A10の開口の形状が、コーナーカバー3の覆い板3aからはみ出さず、かつコーナーカバー3のコーナー接触板3dおよび弾性体3cが見込方向に沿って押し込める形状となるように、竪押縁2aおよび横押縁2bの装着位置を設定する。
【0039】
2.コーナーカバー3を取付ける工程(図14参照):最後に、枠1に対して本変形例におけるコーナーカバー3を取付ける。具体的には、図14(a)に示すように、覆い板3aを嵌合空間A10の開口の傾斜に沿うように嵌合空間A10に対面させた状態で、コーナー接触板3dおよび弾性体3cを見込方向に沿って嵌合空間A10に押し込むことで取付けられる。これを、すべてのコーナー部A1における嵌合空間A10に対して行うと共に、前述したようにシール材102を充填(図9および図10参照)することで、図14(b)に示すように建具Aの補修を行うことができると共に、良好なデザインを長期にわたって維持できる建具Aを構築することができる。
【0040】
[コーナーカバーの第2の変形例]
次に、コーナーカバー3の第2の変形例について、図15図18を参照して説明する。前述の第1の変形例におけるコーナーカバー3は、押縁2の装着後に枠1に取付ける後付けタイプのものであるのに対して、第2の変形例におけるコーナーカバー3は、押縁2の装着前に枠1に取付ける先付けタイプのものである。本変形例のコーナーカバー3が実施される建具Aにおける枠1および押縁2は、第1の変形例で例示した枠1および押縁2の構成と同じである。
【0041】
コーナーカバー3は、図18(a)~(c)に示すように、覆い板3aと、弾性体3cと、コーナー接触板3dとを一体に備えて形成されている。覆い板3aおよびコーナー接触板3dは、前述の第1の変形例のコーナーカバー3における覆い板3aおよびコーナー接触板3dと同じ構成のものである。
【0042】
弾性体3cは、図15図16図18(a)~(c)に示すように、コーナー接触板3dの一方側から枠1の支持縁部1eに沿って延設された支持板32cに設けられた片持ち構造の板バネである。弾性体3cおよび支持板32cは、コーナーカバー3の取付時において、支持縁部1eとパネルPの見込面P2との間に介在され、弾性体3cがパネルPの見込面P2と対向して接触すると共に、見込面P2に対して押し付ける方向へ付勢力が作用するようにされている。
【0043】
このコーナーカバー3は、図18(c)において上下方向で対称形となるものが用いられており、図18(c)において左側のコーナー部A1に取付けられるコーナーカバー3においては、弾性体3cがパネルの見込面P2を上下方向から挟むように配置され、コーナー部A1に取付けられるコーナーカバー3においては、弾性体3cがパネルの見込面P2に対して左方向から押し付けるように配置されている。このコーナーカバー3の配置関係等は、図示例に限らない。
【0044】
枠1に対するコーナーカバー3の取付け状態では、図15に示すように、覆い板3aが、嵌合空間A10を覆うと共に、竪押縁2aと横押縁2bのコーナー側端部20a、20bを覆い、これにより、コーナー部A1において嵌合空間A10およびコーナー側端部20a、20bを隠すことができる。
【0045】
コーナー接触板3dおよび弾性体3が押し込まれたときには、図15図17に示すように、弾性体3cが付勢力によってパネルPの見込面P2に対して押し付られると共に、この付勢力の反力がコーナー接触板3dを支持縁部1eに押し付ける力として作用することになる。すなわち、弾性体3cの付勢力および付勢力の反力によって、コーナー接触板3dの嵌合状態を保持することができるため、ビス等の固着手段を用いることなくコーナーカバー3を取付けることができる。
【0046】
したがって、第2の変形例のコーナーカバー3によっても、第1の変形例のコーナーカバー3と同様に、留切り形状の竪押縁2aと横押縁2bが熱変形してコーナー側端部20a、20bが位置ずれしても、この位置ずれをコーナーカバー3の覆い板3aで隠すことができるため、建具Aのデザイン性を損ねることを防止し、これによって、良好なデザインを長期にわたって維持できる建具Aを構築することができる。
【0047】
[第2の変形例のコーナーカバーを用いた建具の構築工程]
次に、第2の変形例のコーナーカバー3を用いた建具Aの構築工程を図19図22を参照して説明する。本取付け工程では、建具Aの補修時に行われる工程として説明するが、本取付け工程は、建具Aの補修時に限らず、新規な建具Aの構築時にも行うことができるものである。
【0048】
1.コーナーカバー3を取付ける工程(図19図21参照):図6に示すように既存の竪押縁200および横押縁201をすべて取外した状態で、枠1に対して本変形例におけるコーナーカバー3を取付ける。具体的には、図19(a)に示すように、覆い板3aをコーナー部A1に対して留切り形状による傾斜に沿うように対面させた状態で、弾性体3cおよびコーナー接触板3d並びに支持板32cを見込方向に沿って押し込む。これを、すべてのコーナー部A1において行って、枠1の四角にコーナーカバー3を取付ける(図19(b)参照)。
【0049】
弾性体3cおよびコーナー接触板3d並びに支持板32cが押し込まれると、図20および図21に示すように弾性体3cと支持板32cとが、パネルPの見込面P2と枠1の支持縁部1eとの間に弾性体3cの反発力が作用した状態で嵌合されているため、コーナーカバー3の取付け状態が保持される。
【0050】
コーナーカバー3が枠1に取付けられた状態では、図21に示すように、コーナーカバー3とパネルPの見付面P1との間に、竪押縁2aおよび横押縁2bの取付け時において、コーナー側端部20aおよびコーナー側端部20bを挿し込む挿込み空間S1が形成される。挿込み空間S1は、図20および図21に示すように、枠1の各コーナー部A1において、竪押縁2a側の挿込み空間S1は上下方向に開口され、横押縁2b側の挿込み空間S1は左右方向に開口されている。
【0051】
2.新たな押縁を取付ける工程(図22参照):最後に、枠1に対して本変形例における新たな押縁2を装着する。図示例においては、枠1の下側の横枠1bに横押縁2bを装着する工程を説明し、残りの竪押縁2aおよび横押縁2bの装着工程についての説明は省略する。
【0052】
まず、図22(a)に示すように、左側のコーナーカバー3の挿込み空間S1に、横押縁2bの左側のコーナー側端部20bを挿込むと共に、樹脂製のハンマーH等を用いて横押縁2bの見込面21を叩きながら、横押縁2bの嵌合凸部2cの左側の一部を嵌合凹部1fに嵌合する。
【0053】
次に、図22(b)に示すように、右側のコーナーカバー3の挿込み空間S1に、横押縁2bを撓らせながら、横押縁2bの右側のコーナー側端部20bを挿込む。
【0054】
次に、図22(c)に示すように、ハンマーH等を用いて横押縁2bの見込面21を左右方向から中央に向かって、左右順番に少しずつ叩きながら、横押縁2bの嵌合凸部2cを嵌合凹部1fに嵌合する。
【0055】
最後に、図22(d)に示すように、ハンマーH等を用いて横押縁2bの見込面21の中央部分を少しずつ叩きながら、横押縁2bの嵌合凸部2cを嵌合凹部1fに嵌合することで、横押縁2bを横枠1bに装着することができる。残りの竪押縁2aおよび横押縁2bについても、図22(a)~(d)の工程により装着することができる。
【0056】
[コーナーカバーの第3の変形例]
次に、コーナーカバー3の第3の変形例について、図23図26を参照して説明する。本変形例のコーナーカバー3も、第2の変形例のコーナーカバー3と同様に、押縁2の装着前に枠1に取付ける先付けタイプのものである。本変形例のコーナーカバー3が実施される建具Aにおける枠1および押縁2は、第1の変形例および第2の変形例のコーナーカバー3を実施した枠1および押縁2の構成と同じである。
【0057】
コーナーカバー3は、図26に示すように、覆い板3aと支持体3eとを一体に備えて形成されている。覆い板3aは、前述の第1の変形例および第2の変形例のコーナーカバー3の覆い板3aと同じ構成のものである。
【0058】
支持体3eは、図23図25に示すように、竪枠1aと横枠1bの支持縁部1eに接触して支持される接触部30eと接触部31eとを有してL型状に形成されていると共に、見込方向に突設されており、嵌合空間A10内において支持縁部1eとパネルPの見込面P2の間に介在するようにされている。支持体3eは、セッティングブロック101と同じ幅にされており、支持縁部1eとパネルPの見込面P2の間に圧入状に嵌合するようにされている。これにより、枠1に対するコーナーカバー3の取付け状態を保持することができる。
【0059】
第3の変形例のコーナーカバー3は、前述の「第2の変形例のコーナーカバーを用いた建具Aの構築工程」における「1.コーナーカバーの取付け工程」と同じ取付け工程により取付けることができると共に、「2.新たな押縁を取付ける工程」と同じ装着工程により押縁2を装着することができる。
【0060】
[第1の変形例のコーナーカバーを先付けする構成]
コーナーカバー3を先付けする構成では、第1の変形例のコーナーカバー3によっても実施することができる。具体的には、図27(a)(b)に示すように、押縁2の装着前に、弾性体3cがパネルPのコーナー部P4と対向して接触するように、コーナーカバー3を枠1に押し込んで取付ける。このとき、弾性体3が付勢力によってパネルPのコーナー部P4に対して押し付けられると共に、この付勢力の反力がコーナー接触板3dを支持縁部1eおよびコーナー部10eに押し付ける力として作用することになる。すなわち、弾性体3cの付勢力および付勢力の反力によって、コーナー接触板3dの嵌合状態を保持することができるため、ビス等の固着手段を用いることなくコーナーカバー3を取付けることができる。そして、第1の変形例のコーナーカバー3を先付けした後に、前述の第2の変形例のコーナーカバーを用いた建具Aの構築工程における新たな押縁を取付ける工程と同じように押縁2を装着することで、建具Aを構築することができる。
【0061】
[建具の変形例]
次に、建具Aの変形例について図28および図29を参照して説明する。本変形例の建具Aは、図1に示す建具Aにおける押縁2の見付面20にカバー材4を備えたものである。カバー材4は、押縁2の竪押縁2aに配される竪カバー材4aおよび横押縁2bに配される横カバー材4bとで構成されている。
【0062】
竪カバー材4aおよび横カバー材4bは、軽量、且つ錆びにくいアルミニウム材を用いて、竪押縁2aおよび横押縁2bの屋外側の見付面20の全域およびパネルP側の見込面21の全域にわたる範囲、並びに横枠1bの見付面10の中途に至る範囲を覆う同じ断面L型に形成されている。このような、竪カバー材4aおよび横カバー材4bは、それぞれ対応する竪押縁2aおよび横押縁2bの見付面20と正対させて、この見付面20に対して複数のビス2eによって固定されている。竪カバー材4aおよび横カバー材4bのコーナー側端部40a、40bは、竪押縁2aおよび横押縁2bのコーナー側端部20a、20bとともに、コーナーカバー3によって覆われている。
【0063】
すなわち、アルミニウム製のカバー材4で押縁2の見付面20の全域および見込面21の全域を覆っているので、熱変形しようとする押縁2をカバー材4で抑えることによって、押縁2の熱変形を抑制することができる。更に、カバー材4が高い放熱性を有するアルミニウム製であるので、その放熱性による押縁2自体の温度上昇を抑制することができ、これによって押縁2の熱変形を抑制することができる。しかも、コーナーカバー3とカバー材4とを用いることによって、押縁2全体の外観品質を向上させることができる。
【0064】
したがって、本変形例による建具Aは、断熱や結露の防止機能を保持した上で、直射日光や外気温によって熱変形しやすい押縁2の熱変形を抑制できる。そして、押縁2の熱変形を抑制することによって、建具Aの構造的な不具合を防止することができると共に、良好なデザインを長期にわたって維持できる。カバー材4については、第1の変形例~第3の変形例のコーナーカバー3を用いた建具Aにも適用が可能である(図示せず)。
【0065】
前述のように後付けタイプおよび先付タイプのコーナーカバー3の構成および取付け工程を説明したが、これら各タイプのコーナーカバー3については、それぞれ下記の特有の作用効果が期待できる。
【0066】
後付けタイプのコーナーカバー3の場合、コーナーカバー3の取付け前に押縁2を装着することで嵌合空間A10を形成していることから、コーナーカバー3の取付け位置をわかりやすくでき、これによって、コーナーカバー3の取付け作業の容易性および確実性を向上させることができる。
【0067】
先付タイプのコーナーカバー3の場合、コーナーカバー3の取付け後に押縁2を装着するため、コーナーカバー3が竪押縁2aおよび横押縁2bの装着時における目印となり、これによって、竪押縁2aおよび横押縁2bを正確な位置への装着が容易にできる。また、押縁2の装着前にコーナーカバー3を取付けるため、装着される押縁2の形状に係わらず、弾性体3あるいは支持体3eの形状や位置を設定することができると共に、枠1やパネルPに対する弾性体3あるいは支持体3eの接触面積を大きくすることができる。したがって、コーナーカバー3の設計自由度を高めることができると共に、取付けた状態のコーナーカバー3の姿勢を安定よく保持することができる。
【0068】
以上、本発明に係る実施形態の建具について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成は、これらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【0069】
また、前述の各実施形態は、その目的および構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0070】
A:建具
A1:コーナー部
A10:嵌合空間
B:躯体
B1:開口
P:パネル
P1:見付面
P2:見込面
P3:見付面
P4:コーナー部
S:隙間
S1:挿込み空間
1:枠
1a:竪枠
1b:横枠
1c:水切り部
1d:支持面部
1e:支持縁部
1f:嵌合凹部
10e:コーナー部
100:ビード
101:セッティングブロック
2:押縁
2c:嵌合凸部
2d:ヒレ部
20a:コーナー側端部
20b:コーナー側端部
20:見付面
21:見込面
3:コーナーカバー
3a:覆い板
3b:支持部
3c:弾性体
30b:接触部
31b:接触部
30c:板バネ
31c:板バネ
3d:コーナー接触板
3e:支持体
30e:接触部
31e:接触部
30:嵌合突起
4:カバー材
4a:竪カバー材
4b:横カバー材
40a:コーナー側端部
40b:コーナー側端部
H:ハンマー
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