(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-01
(45)【発行日】2023-02-09
(54)【発明の名称】トランスファ
(51)【国際特許分類】
F16H 57/04 20100101AFI20230202BHJP
B60K 17/344 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
F16H57/04 J
F16H57/04 C
B60K17/344 B
F16H57/04 P
(21)【出願番号】P 2019108037
(22)【出願日】2019-06-10
【審査請求日】2021-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】若林 耕司
(72)【発明者】
【氏名】井戸 健斗
(72)【発明者】
【氏名】杉本 隆幸
【審査官】長清 吉範
(56)【参考文献】
【文献】実開平2-146259(JP,U)
【文献】実開昭63-166757(JP,U)
【文献】特開昭61-153063(JP,A)
【文献】特開2008-32095(JP,A)
【文献】特開平4-181055(JP,A)
【文献】特開2008-32164(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0208866(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102007057984(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/04
B60K 17/344
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部に潤滑油を貯留するケースと、
前記ケースに収容され、前記ケースに回転可能に支持された第1シャフトと、
前記ケースに収容され、前記第1シャフトの径方向に前記第1シャフトと間隔を空けて並べられ、前記ケースに回転可能に支持された第2シャフトと、
前記第1シャフトと一体に回転する第1スプロケットと、
前記第2シャフトと一体に回転する第2スプロケットと、
前記ケースに収容され、前記第1スプロケットと前記第2スプロケットとに巻き掛けられ、前記第1シャフトの回転に伴い前記第2シャフトを回転させるチェーンと、
前記ケースの下部を、潤滑油を貯留し前記チェーンが位置する第1室と、前記潤滑油を貯留し前記チェーンが位置しない第2室と、に仕切り、前記チェーンに対して前記第1シャフトの軸方向の一方側に位置した仕切壁部、を有した仕切部材と、
前記第2室の潤滑油を前記ケース内における前記仕切壁部よりも前記軸方向の前記一方側に供給するポンプと、
前記仕切壁部と接続された第1壁部を有し、内部に前記第2室の上方で前記ケース内に位置し前記第2室と連通した第3室が設けられ、前記第3室に前記潤滑油を貯留する貯留部と、
前記第3室に、前記ケース内における前記第1室および前記第2室の外側の前記潤滑油を案内する案内部と、
を備えたトランスファ。
【請求項2】
前記第1壁部に設けられた前記案内部を備えた、請求項1に記載のトランスファ。
【請求項3】
前記ケースの内面には、前記案内部に前記潤滑油を案内する案内面が設けられた、請求項2に記載のトランスファ。
【請求項4】
前記ケースの内部に設けられたリブと、
前記リブに設けられた前記案内部と、
を備えた、請求項1~3のうちいずれか一つに記載のトランスファ。
【請求項5】
前記ケースに対する前記仕切部材の位置決めを行なう位置決め部材を備えた、請求項1~4のうちいずれか一つに記載のトランスファ。
【請求項6】
前記ケースの内面には、凹部が設けられ、
前記仕切部材には、開口部が設けられ、
前記位置決め部材は、前記凹部に入れられベース部と、前記ベース部に接続され前記凹部から突出し前記開口部に入れられた凸部と、を有し、
前記ベース部は、前記ケースにおける前記凹部を形成する部分と前記仕切部材との間に位置した、請求項5に記載のトランスファ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランスファに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、第1シャフトと、第2シャフトと、第1シャフトの回転を第2シャフトに伝達するチェーンとがケースに収容されたトランスファが知られている。この種のトランスファとして、ケースの下部が、仕切壁部によって、潤滑油を貯留しチェーンが位置する第1室と、潤滑油を貯留しチェーンが位置しない第2室とに仕切られたものがある。第1室の潤滑油は、チェーンによって掻き上げられる。第2室の潤滑油は、オイルポンプがストレーナを介して吸引して吐出することで、チェーンの掻き上げによっては潤滑油が供給されない部位に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-32095号公報
【文献】特開平10-184861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種のトランスファでは、例えば、第1室では、チェーンにおける潤滑油に浸かる部分を小さくすることによりチェーンに対する潤滑油の抵抗を小さくすることができるので、第1室の潤滑油の上面である油面の高さは、比較的低く設定される。一方、第2室では、ストレーナを介してオイルポンプが潤滑油を吸引するときにエアの吸込みをしないように、潤滑油の液面高さは高く設定される。
【0005】
しなしながら、従来技術では、例えば、第2室の潤滑油の量が増えると、第2室の潤滑油が仕切壁部を越えて第1室に流入する虞がある。
【0006】
そこで、本発明の課題の一つは、チェーンが位置する第1室の潤滑油の量が多くなりすぎるのを抑制しやすいトランスファを得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のトランスファは、例えば、下部に潤滑油を貯留するケースと、前記ケースに収容され、前記ケースに回転可能に支持された第1シャフトと、前記ケースに収容され、前記第1シャフトの径方向に前記第1シャフトと間隔を空けて並べられ、前記ケースに回転可能に支持された第2シャフトと、前記第1シャフトと一体に回転する第1スプロケットと、前記第2シャフトと一体に回転する第2スプロケットと、前記ケースに収容され、前記第1スプロケットと前記第2スプロケットとに巻き掛けられ、前記第1シャフトの回転に伴い前記第2シャフトを回転させるチェーンと、前記ケースの下部を、潤滑油を貯留し前記チェーンが位置する第1室と、前記潤滑油を貯留し前記チェーンが位置しない第2室と、に仕切り、前記チェーンに対して前記第1シャフトの軸方向の一方側に位置した仕切壁部、を有した仕切部材と、前記第2室の潤滑油を前記ケース内における前記仕切壁部よりも前記軸方向の前記一方側に供給するポンプと、前記仕切壁部と接続された第1壁部を有し、内部に前記第2室の上方で前記ケース内に位置し前記第2室と連通した第3室が設けられ、前記第3室に前記潤滑油を貯留する貯留部と、前記第3室に、前記ケース内における前記第1室および前記第2室の外側の前記潤滑油を案内する案内部と、を備えている。
【0008】
このような構成によれば、例えば、第3室に潤滑油が一時的に貯留された後に、当該第3室の潤滑油が第2室に供給される。よって、第1室へ流入する潤滑油の量を抑制することができる。したがって、第1室の潤滑油の量が多くなりすぎるのを抑制することができる。
【0009】
前記トランスファは、例えば、前記第1壁部に設けられた前記案内部を備えている。
【0010】
このような構成によれば、例えば、チェーンによって掻き上げられた潤滑油を貯留部により多く回収することができる。
【0011】
前記トランスファでは、例えば、前記ケースの内面には、前記案内部に前記潤滑油を案内する案内面が設けられている。
【0012】
このような構成によれば、案内部に流入する潤滑油の量が多くなりやすいので、案内部から第3室に流入する潤滑油の量が多くなりやすい。
【0013】
前記トランスファは、例えば、前記ケースの内部に設けられたリブと、前記リブに設けられた前記案内部と、を備えている。
【0014】
このよう構成によれば、例えば、第1シャフトを含む回転部品から飛散した潤滑油を貯留部により多く回収することができる。
【0015】
前記トランスファは、例えば、前記ケースに対する前記仕切部材の位置決めを行なう位置決め部材を備えている。
【0016】
このような構成によれば、位置決め部材が設けられていることにより、案内部の位置精度を保ちながら仕切部材をケースに固定することができる。
【0017】
前記トランスファでは、例えば、前記ケースの内面には、凹部が設けられ、前記仕切部材には、開口部が設けられ、前記位置決め部材は、前記凹部に入れられベース部と、前記ベース部に接続され前記凹部から突出し前記開口部に入れられた凸部と、を有し、前記ベース部は、前記ケースにおける前記凹部を形成する部分と前記仕切部材との間に位置している。
【0018】
このような構成によれば、位置決め部材が凹部から脱落することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、実施形態のトランスファの例示的な断面図である。
【
図2】
図2は、実施形態のトランスファにおけるケースの第1ケース部材の例示的な背面図である。
【
図3】
図3は、実施形態のトランスファにおけるケースの第1ケース部材の例示的な斜視図である。
【
図4】
図4は、実施形態のトランスファにおけるケースの例示的な斜視図であって、
図3とは異なる視線での斜視図である。
【
図5】
図5は、実施形態のトランスファにおけるケースおよび仕切部材の例示的な背面図であって、ケースの第2ケース部材が取り外された状態の図である。
【
図6】
図6は、実施形態のトランスファにおけるケースおよび仕切部材の例示的な斜視図であって、ケースの第2ケース部材が取り外された状態の図である。
【
図7】
図7は、実施形態のトランスファにおけるケースおよび仕切部材の例示的な斜視図であって、ケースの第2ケース部材が取り外された状態かつ
図6とは異なる視線での斜視図である。
【
図8】
図8は、実施形態のトランスファにおける下部の一部の例示的な断面図である。
【
図9】
図9は、実施形態のトランスファの仕切部材の例示的な背面図である。
【
図10】
図10は、実施形態のトランスファの仕切部材の例示的な底面図である。
【
図11】
図11は、実施形態のトランスファの仕切部材の例示的な側面図である。
【
図12】
図12は、実施形態のトランスファにおける上側案内部を含む部分の例示的な断面図である。
【
図13】
図13は、実施形態のトランスファにおける下側案内部を含む部分の例示的な断面図である。
【
図14】
図14は、実施形態のトランスファにおける位置決め部材を含む部分の例示的な断面図である。
【
図15】
図15は、実施形態の変形例のトランスファにおける上側案内部を含む部分の例示的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の例示的な実施形態が開示される。以下に示される実施形態の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用、結果、および効果は、あくまで一例である。本発明は、以下の実施形態に開示される構成以外によっても実現可能である。また、本発明によれば、構成によって得られる種々の効果のうち少なくとも一つを得ることが可能である。なお、本明細書において、序数は、部品や部位等を区別するために便宜上付与されており、優先順位や順番を示すものではない。
【0021】
図1は、実施形態のトランスファ10の例示的な断面図である。
図1に示されるように、トランスファ10は、ケース11と、第1シャフト12と、第2シャフト13と、伝達部14と、ポンプ15と、ストレーナ16と、仕切部材17と、貯留部18(
図2)と、を備えている。トランスファ10は、例えば、四輪の車両に搭載され、当該車両のエンジンの動力(トルク)を前輪と後輪とに分配する。なお、以下の説明では、便宜上、方向が規定されている。X方向は、トランスファ10および車両の前後方向の前方と同じであり、Y方向は、トランスファ10および車両の幅方向に沿い、Z方向は、トランスファ10および車両の上下方向の上方と同じである。X方向、Y方向、およびZ方向は、互いに直交している。以下、特に言及しない限り、前後方向は、トランスファ10および車両の前後方向、上下方向は、トランスファ10および車両の上下(高さ)方向である。
【0022】
ケース11は、第1シャフト12、第2シャフト13、伝達部14、ポンプ15、およびストレーナ16を収容している。ケース11は、外面11aと内面11bとを有している。ケース11は、当該ケース11の下部11fに潤滑油を貯留する。ケース11は、例えば、金属材料によって構成されている。ケース11は、車両の車体に支持されている。
【0023】
第1シャフト12は、前後方向に沿って延びて、ケース11に回転可能に支持されている。具体的には、第1シャフト12は、ベアリング24,25を介してケース11に回転可能に支持されている。第1シャフト12の前端部は、例えば、変速機(不図示)を介してエンジンと接続されており、第1シャフト12には、エンジンの動力が入力される。一方、第1シャフト12の後端部は、例えば、プロペラシャフト(不図示)等を介して後輪と接続されている。
【0024】
第2シャフト13は、第1シャフト12の径方向に第1シャフト12と間隔を空けて並べられ、ケース11に回転可能に支持されている。具体的には、第2シャフト13は、第1シャフト12の斜め下方の位置で第1シャフト12と平行に設けられ、ベアリング26を介してケース11に回転可能に支持されている。
【0025】
伝達部14は、第1スプロケット21と、第2スプロケット22と、チェーン23と、を有している。
図1において、チェーン23は、二点鎖線で示されている。第1スプロケット21は、第1シャフト12に固定され、第1シャフト12と一体に回転する。第2スプロケット22は、第2シャフト13と一体に形成され、第2シャフト13と一体に回転する。チェーン23は、無端状(環状)に構成され、第1スプロケット21と第2スプロケット22とに巻き掛けられている。チェーン23は、第1シャフト12(第1スプロケット21)の回転に伴い第2シャフト13(第2スプロケット22)を回転させる。
【0026】
上記構成では、第1シャフト12の回転により第1スプロケット21が回転すると、チェーン23が回転し、第2スプロケット22および第2シャフト13が回転する。このとき、チェーン23は、ケース11の下部11fの潤滑油を掻き上げる。これにより、潤滑油がベアリング25等に供給される。
【0027】
仕切部材17は、チェーン23に対して第1シャフト12の軸方向の一方側に位置している。具体的には、仕切部材17は、チェーン23の前方側(X方向側)に位置している。仕切部材17は、ケース11の下部11fを、第1室11cと、第2室11dと、に仕切っている。換言すると、仕切部材17は、ケース11の下部11fを、第1室11cと、第2室11dと、に分割している。第1室11cおよび第2室11dは、それぞれ潤滑油を貯留する。第1室11cには、チェーン23が位置し、第2室11dには、チェーン23が位置しない。第2室11dには、ストレーナ16が位置している。第1室11cは、貯留室やチェーン側貯留室とも称され、第2室11dは、貯留室やストレーナ側貯留室とも称される。仕切部材17は、セパレータとも称される。
【0028】
ポンプ15は、ケース11内においてチェーン23よりも第1シャフト12の軸方向の一方側、具体的には前方に位置している。ポンプ15の吸込口はストレーナ16と通路(不図示)を介して接続されている。ポンプ15は、第1シャフト12に連結機構(不図示)を介して連結されおり、第1シャフト12の回転に伴い動作する。ポンプ15は、第2室11dの潤滑油を、ケース11内における、仕切部材17の仕切壁部17aよりも第1シャフト12の軸方向の一方側(前側)、に供給する。具体的には、ポンプ15は、ベアリング24等に潤滑油を供給する。
【0029】
次に、ケース11、仕切部材17、および貯留部18を詳細に説明する。
【0030】
図1に示されるように、ケース11は、第1ケース部材31と、第2ケース部材32と、を有している。第1ケース部材31と第2ケース部材32とは、互いに重ねられてねじ等の結合具によって結合されている。第1ケース部材31の後方に第2ケース部材32が位置している。
【0031】
図2は、実施形態のトランスファ10におけるケース11の第1ケース部材31の例示的な背面図である。
図3は、実施形態のトランスファ10におけるケース11の第1ケース部材31の例示的な斜視図である。
図4は、実施形態のトランスファ10におけるケース11例示的な斜視図であって、
図3とは異なる視線での斜視図である。
【0032】
図1~
図4に示されるように、第1ケース部材31は、第1筒壁部31a、第2筒壁部31b、接続壁部31c、および壁部31d等の複数の壁部を有している。第1筒壁部31aの後端部には、第2ケース部材32が重ねられている。第2筒壁部31bの径は、第1筒壁部31aの径よりも小さい。第2筒壁部31bの後端部の一部は、第1筒壁部31aの前端部に連続しており、第2筒壁部31bの後端部の一部は、接続壁部31cを介して第1筒壁部31aの前端部に接続されている。壁部31dは、第2筒壁部31bの前端部に設けられている。
【0033】
また、第1ケース部材31には、第1支持部31e1と第2支持部31e2とが設けられている。第1支持部31e1は、壁部31dに設けられ、ベアリング24を介して第1シャフト12を回転可能に支持している。第2支持部31e2は、接続壁部31cに設けられ、ベアリング26を介して第2シャフト13を回転可能に支持している。
【0034】
また、第1ケース部材31には、第1~第3リブ31f1~31f3が設けられている。第1~第3リブ31f1~31f3は、少なくとも接続壁部31cの内面11b1からケース11の内部(後方)に突出している。また、
図2に示されるように、第1リブ31f1は、第2支持部31e2から第1支持部31e1に向かって斜め上方に延びている。
第1リブ32f1は、第2支持部31e2の中心点と第1支持部31e1の中心点とを結ぶ直線上に形成されている。換言すると、第1リブ32f1は、第1シャフト12の回転軸と第2シャフト13の回転軸とを結ぶ直線上に形成されている。また、第2リブ31f2は、第1リブ31f1から上方に延びている。また、第3リブ31f3は、第2リブ31f2の上端部から上方に延びている。
【0035】
また、
図2~
図4に示されるように、第1筒壁部31aの内周面には、支持面31g1が設けられている。支持面31g1は、後方を向いている。
【0036】
また、第1筒壁部31aの内面11bの上部には、凹部31hが設けられている。第1筒壁部31aの内面11bには、凹部31hに面した支持面31g2が設けられている。支持面31g2は、支持面31g1の上端部から斜め上方かつ斜め後方に延びている。また、支持面31g2は、チェーン23の直上に延びている。
【0037】
図5は、実施形態のトランスファ10におけるケース11および仕切部材17の例示的な背面図であって、ケース11の第2ケース部材32が取り外された状態の図である。
図6は、実施形態のトランスファ10におけるケース11および仕切部材17の例示的な斜視図であって、ケース11の第2ケース部材32が取り外された状態の図である。
図7は、実施形態のトランスファ10におけるケース11および仕切部材17の例示的な斜視図であって、ケース11の第2ケース部材32が取り外された状態かつ
図6とは異なる視線での斜視図である。
図8は、実施形態のトランスファ10における下部の一部の例示的な断面図である。
【0038】
図1,
図5~7に示されるように、仕切部材17は、ケース11に収容されている。具体的には、仕切部材17は、第1ケース部材31の第1筒壁部31aに収容されている。仕切部材17は、複数の位置決め部材35によって位置決めされた状態で、結合具である複数のボルト36(
図5~7)によって第1ケース部材31に固定されている。なお、結合具は、ねじ等であってもよい。複数のボルト36は、ケース11に設けられた複数の雌ねじ11i(ナット部)と結合されている。複数の雌ねじ11iは、接続壁部31cの内面11b1から突出した複数のボス部11j1~11j3に設けられている。ボス部11j1,11j2は、第2支持部31e2に隣接している。ボス部11j2は、第2リブ31f2に隣接している。ボス部11j3は、第2リブ31fおよび3第3リブ31f3に隣接している。
【0039】
また、複数の位置決め部材35は、ケース11の接続壁部31cの内面11b1に設けられた複数の凹部11gに入れられている。凹部11gは、ケース11の接続壁部31cの内面11b1から突出した複数のボス部11j4,11j5に設けられている。ボス部11j4は、第2支持部31e2およびボス部11j1に隣接している。ボス部11j5は、第1リブ31f1に設けられている。換言すると、ボス部11j5は、第1リブ31f1の一部を構成している。すなわち、ボス部11j5の凹部11gは、第1リブ31f1上に設けられている。
【0040】
また、
図1,8に示されるように、仕切部材17は、支持面31g1と第2支持部31e2とに後方から重ねられた状態で、第1ケース部材31に固定されている。なお、
図8では、各部が示されており、各部の段差等の詳細形状は省略されている。仕切部材17は、例えば金属材料によって構成されている。
【0041】
図9は、実施形態のトランスファ10の仕切部材17の例示的な背面図である。
図10は、実施形態のトランスファ10の仕切部材17の例示的な底面図である。
図11は、実施形態のトランスファ10の仕切部材17の例示的な側面図である。
図12は、実施形態のトランスファ10における上側案内部を含む部分の例示的な断面図である。
【0042】
図9~11に示されるように、仕切部材17は、仕切壁部17aと、第1壁部17bと、上側案内部17cと、を有している。仕切部材17は、例えば、一枚の板金板材によって構成されている。上側案内部17cは、案内部の一例である。
【0043】
また、仕切部材17には、複数のボルト36が挿入された複数の貫通孔17hと、複数の位置決め部材35が挿入された複数の貫通孔17gと、第2シャフト13が挿入された貫通孔17lと、が設けられている。貫通孔17gは、開口部の一例である。また、
図6,9に示されるように、仕切部材17は、ベース面部17jと、取付平面部17kと、を有している。ベース面部17jと取付平面部17kとは、それぞれ、仕切壁部17aと第1壁部17bとに亘って設けられている。ベース面部17jと取付平面部17kとは、それぞれ、X方向を向いている。取付平面部17kに、貫通孔17h,17g,17lが設けられている。取付平面部17kは、ベース面部17jよりもX方向に位置している。すなわち、取付平面部17kは、ベース面部17jに対してX方向にオフセットしている。ベース面部17jに対する取付平面部17kのオフセット量は、ボルト36のヘッドの前後方向高さ、および、位置決め部材35の組み付け状態における、当該位置決め部材35の取付平面部17kからの前後方向の飛び出した高さ以上に設定される。
【0044】
仕切壁部17aは、チェーン23に対して第1シャフト12および第2シャフト13の軸方向の一方側(前方、X方向)に位置し、ケース11の下部11fを、第1室11cと、第2室11dと、に仕切っている。仕切壁部17aの上端部17dには、ケース11の幅方向(水平方向)に延びる端面17d1が設けられている。
【0045】
第1壁部17bは、仕切壁部17aの上端部17dから上方に延びている。第1壁部17bは、仕切壁部17aと連続している。
【0046】
上側案内部17cは、第1壁部17bの上端部から突出している。具体的には、上側案内部17cは、第1壁部17bの上端部から斜め上方かつ斜め後方に延びている。すなわち、上側案内部17cは、第1壁部17bの上端部から第1室11cの上方に延びて、第1室11cの上方に位置している。また、上側案内部17cは、チェーン23の直上に延びている。
【0047】
図9,12に示されるように、上側案内部17cは、二つの壁部17e,17fを有している。二つの壁部17e,17fは、それぞれの下端部が接続されており、上方に向かうにつれて互いに離れる形状に形成されている。壁部17eは、ケース11の支持面31g2に重ねられている。壁部17fは、ケース11の内面11bから離間している。壁部17fは、ケース11に設けられた案内面31iと離間し、当該案内面31iの一部と対向している。案内面31iは、ケース11の内面11bにおける凹部31hの周囲の上側部分を含み支持面31g2と接続されている。
【0048】
図3,8に示されるように、貯留部18は、第2室11dの上方に位置している。貯留部18は、構成部材として、ケース11の第1筒壁部31a、接続壁部31c、第2支持部31e2、第1~第3リブ31f1~31f3、および仕切部材17の第1壁部17bを含む。貯留部18の内部には、潤滑油を貯留する第3室11eが設けられている。すなわち、第3室11eは、第1筒壁部31a、接続壁部31c、第2支持部31e2、第1~第3リブ31f1~31f3、および仕切部材17の第1壁部17bに囲まれている。第3室11eは、第1室11cの上方でケース11内に位置している。
【0049】
また、
図5~7に示されるように、貯留部18には、上側開口部18aと、下側開口部18b(
図5)と、が設けられている。上側開口部18aは、第3リブ31f3および仕切部材17の第1壁部17b等に囲まれている。下側開口部18bは、第1筒壁部31a、接続壁部31c、第2支持部31e2、および仕切部材17によって囲まれている。下側開口部18bは、上側開口部18aよりも下方に位置している。下側開口部18bは、第3室11eと第2室11dとを連通している。上側開口部18aには、上側案内部17cによって潤滑油が案内される。すなわち、上側開口部18aには、上側案内部17cから潤滑油が流入する。第3室11e内の潤滑油は、下側開口部18bから第2室11dに流出する。上側開口部18aは、入口とも称され、下側開口部18bは、出口とも称される。
【0050】
図13は、実施形態のトランスファ10における下側案内部33を含む部分の例示的な断面図である。
【0051】
図4,6,13に示されるように、貯留部18には、下側案内部33が設けられている。下側案内部33は、第2リブ31f2と第3リブ31f3との境界部に設けられ、上側案内部17cよりも下方に位置している。下側案内部33は、二つの壁部33a,33bを有している。壁部33aは、第2リブ31f2と第3リブ31f3からトランスファ10の幅方向であって、第3室11eから離れる方向に延びている。また、壁部33bは、壁部33aにおける第3室11eとは反対側の端部から上方に延びている。下側案内部33は、前端部から後端部に向かうにつれて斜め後方に向かう。下側案内部33の後端部は、上側開口部18aに接続されている。下側案内部33は、潤滑油を上側開口部18aに案内する。すなわち、下側案内部33は、潤滑油を第3室11eに案内する。
【0052】
図14は、実施形態のトランスファ10における位置決め部材35を含む部分の例示的な断面図である。
図14に示されるように、位置決め部材35は、ベース部35aと、ベースに接続された凸部35bと、を有している。ベース部35aは、ケース11のボス部11j4,11j5(
図14は、ボス部11j4の例)に設けられた凹部11gに入れられている。凸部35bは、凹部11gから突出し、仕切部材17に設けられた貫通孔17gに入れられている。ベース部35aは、ケース11における凹部11gを形成する部分11hと仕切部材17との間に位置している。すなわち、ベース部35aは、ケース11における凹部11gを形成する部分11hと仕切部材17とに挟まれている。位置決め部材35は、位置決めピンとも称される。
【0053】
上記構成においては、第1シャフト12の回転によりチェーン23が回転すると、チェーン23が第1室11c内の潤滑油を掻き上げる。掻き上げられた潤滑油は、ケース11の内面11bに沿って移動して、ベアリング25等に供給される。また、掻き上げられた潤滑油の一部は、ケース11の内面11bに沿って上側案内部17cへ移動し、上側案内部17cから第3室11eに流入し、第3室11eに一時的に貯留される。また、第3室11e内の潤滑油は、下側開口部18bから第2室11dに流出する。なお、
図5中には、潤滑油の移動方向の一例が矢印50で示されている。
【0054】
また、ポンプ15は、第1シャフト12の回転に伴い、第2室11dの潤滑油を、ケース11内における、仕切部材17の仕切壁部17aよりも第1シャフト12の軸方向の一方側(前側)、に供給する。このようにしてポンプ15から吐出された潤滑油の一部は、ケース11の内面11bおよびリブ31f3に沿って移動して、下側案内部33cへ移動し、下側案内部33から第3室11eに流入し、第3室11eに一時的に貯留される。
【0055】
以上のように、本実施形態では、トランスファ10の貯留部18は、仕切壁部17aと接続された第1壁部17bを有し、内部に第1室11cの上方でケース11内に位置し第1室11cと連通した第3室11eが設けられ、第3室11eに潤滑油を貯留する。また、上側案内部17c(案内部)および下側案内部33(案内部)は、第3室11eに、ケース11内における第1室11cおよび第2室11dの外側の潤滑油を案内する。
【0056】
このような構成によれば、例えば、第3室11eに潤滑油が一時的に貯留された後に、当該第3室11eの潤滑油が第2室11dに供給される。よって、第1室11cへ流入する潤滑油の量を抑制することができる。したがって、第1室11cの潤滑油の量が多くなりすぎるのを抑制することができる。また、第2室11dに潤滑油を供給することができる。よって、第1室11cおよび第2室11dの潤滑油の量を適量にしやすい。
【0057】
また、本実施形態では、トランスファ10は、例えば、第1壁部17bに設けられた上側案内部17cを備えている。
【0058】
このような構成によれば、例えば、チェーン23によって掻き上げられた潤滑油を貯留部18により多く回収することができる。
【0059】
また、本実施形態では、例えば、ケース11の内面11bには、上側案内部17cに潤滑油を案内する案内面31iが設けられている。
【0060】
このような構成によれば、上側案内部17cに流入する潤滑油の量が多くなりやすいので、上側案内部17cから第3室11eに流入する潤滑油の量が多くなりやすい。
【0061】
また、本実施形態では、トランスファ10は、例えば、ケース11の内部に設けられた第2および第3リブ31f2,31f3と、第2およびリブ31f2,31f3に設けられた下側案内部33と、を備えている。
【0062】
このよう構成によれば、例えば、第1シャフト12を含む回転部品から飛散した潤滑油を貯留部18により多く回収することができる。
【0063】
また、本実施形態では、トランスファ10は、例えば、ケース11に対する仕切部材17の位置決めを行なう位置決め部材35を備えている。
【0064】
このような構成によれば、位置決め部材35が設けられていることにより、上側案内部17cおよび下側案内部33の位置精度を保ちながら仕切部材17をケース11に固定することができる。
【0065】
また、本実施形態では、トランスファ10は、例えば、ケース11の内面11bには、位置決め部材35が挿入される凹部11gが第1リブ31f1上に設けられている。
【0066】
このような構成によれば、凹部11gと第1リブ31f1とが一体的に形成されるので、鋳造型の設計工数を低減することができる。
【0067】
また、本実施形態では、例えば、ケース11の内面11bには、凹部11gが設けられ、仕切部材17には、貫通孔17gが設けられている。位置決め部材35は、凹部11gに入れられベース部35aと、ベース部35aに接続され凹部11gから突出し貫通孔17gに入れられた凸部35bと、を有している。ベース部35aは、ケース11における凹部11gを形成する部分11hと仕切部材17との間に位置している。
【0068】
このような構成によれば、位置決め部材35が凹部11gから脱落することを抑制することができる。
【0069】
また、本実施形態では、例えば、第1リブ32f1は、第2支持部31e2の中心点と第1支持部31e1の中心点とを結ぶ直線上に形成されている。
【0070】
このような構成によれば、駆動力伝達時において、チェーン23の張力による第2支持部31e2の第1支持部31e1方向への倒れ込み(第2シャフト13の倒れ込み)を防止することができる。
【0071】
また、本実施形態では、例えば、上側案内部17cは、チェーン23の直上に延びている。
【0072】
このような構成によれば、支持面31g2および上側案内部17cがチェーン23の直上に延びていることで、チェーン23により掻き上げられた潤滑油をより多く回収することができる。
【0073】
次に、変形例を説明する。
図15は、実施形態の変形例のトランスファ10における上側案内部17cを含む部分の例示的な断面図である。
【0074】
本変形例では、支持面31g2および案内面31iが、ケース11の内面11bに設けられた凸部17mに設けられている。
【0075】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上述した実施形態はあくまで一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上述した新規な実施形態は、様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、または変更を行うことができる。また、上述した実施形態およびその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0076】
10…トランスファ、11…ケース、11b…内面、11c…第1室、11d…第2室、11e…第3室、11f…下部、11g…凹部、12…第1シャフト、13…第2シャフト、15…ポンプ、17…仕切部材、17a…仕切壁部、17b…第1壁部、17c…上側案内部(案内部)、17g…貫通孔(開口部)、18…貯留部、21…第1スプロケット、22…第2スプロケット、23…チェーン、31f2…第2リブ(リブ)、31f3…第3リブ(リブ)、31i…案内面、33…下側案内部(案内部)、35…位置決め部材、35a…ベース部、35b…凸部。