(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-01
(45)【発行日】2023-02-09
(54)【発明の名称】洗浄装置及び洗浄方法
(51)【国際特許分類】
B01D 41/04 20060101AFI20230202BHJP
B08B 3/08 20060101ALI20230202BHJP
F01N 3/023 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
B01D41/04
B08B3/08 Z
F01N3/023 Z
(21)【出願番号】P 2019110510
(22)【出願日】2019-06-13
【審査請求日】2021-12-14
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 刊行物名:日野自動車株式会社 社内報 フロントランナー, 号:第702号, 頁:第24頁, 発行年月日:平成30年6月20日, 発行者:日野自動車株式会社(東京都日野市日野台3丁目1番地1)
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北原 一也
(72)【発明者】
【氏名】三好 一生
【審査官】谷本 怜美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/092799(WO,A1)
【文献】実開昭59-166887(JP,U)
【文献】特開2019-048278(JP,A)
【文献】特開2015-020100(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 41/04
B08B 3/08
F01N 3/023
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディーゼルエンジン側の第1開口及び排気口側の第2開口を有した外筒と、その外筒に収容されたDPFとを有した排気浄化器を洗浄する洗浄装置であって、
アッシュ成分を水に可溶化させる可溶化成分を水に溶解してなる洗浄液が注入された洗浄槽と、
前記排気浄化器が前記洗浄槽内にて前記洗浄液に浸漬された状態にて前記洗浄液を前記第2開口から前記DPFに通過させて前記第1開口に向かうように循環させる循環機構と、
を備える洗浄装置。
【請求項2】
前記循環機構が、
前記洗浄槽の内側に設置され、前記第2開口を包囲して、前記洗浄槽内の空間を前記第2開口が存する内側領域と前記第1開口が存する外側領域とに区画する仕切りと、
前記外側領域内の前記洗浄液を吸引して、その洗浄液を内側領域に供給する循環ポンプと、を有する
請求項1に記載の洗浄装置。
【請求項3】
前記仕切りは開口を有した筒状に設けられて、前記仕切りは前記開口が上に向けられた状態で前記洗浄槽の内底に設置され、
前記第2開口が前記内底に向けられた状態で前記外筒が前記仕切りの前記開口に嵌め込まれて、前記外筒が前記内底から離間している
請求項2に記載の洗浄装置。
【請求項4】
前記第1開口が前記洗浄液の液面よりも上に位置する
請求項3に記載の洗浄装置。
【請求項5】
前記外側領域にて前記洗浄液に投入され、前記循環ポンプの吸引側に設けられ、前記洗浄液中の前記アッシュ成分を捕集するストレーナを更に備える請求項2から4の何れか一項に記載の洗浄装置。
【請求項6】
前記可溶化成分がクエン酸、クエン酸塩、エチレンジアミン四酢酸及び酒石酸の中から選択された1種以上の化合物である請求項1から5の何れか一項に記載の洗浄装置。
【請求項7】
ディーゼルエンジン側の第1開口及び排気口側の第2開口を有した外筒と、その外筒に収容されたDPFとを有した排気浄化器を洗浄する洗浄方法であって、
前記第2開口を先にして、前記排気浄化器を仕切りに嵌め込み、
アッシュ成分を水に可溶化させる可溶化成分を水に溶解してなる洗浄液が注入された洗浄槽内にて
前記第2開口を前記洗浄槽の内底に向け、且つ、前記第1開口が前記洗浄液の液面よりも上に位置するように、前記排気浄化器
及び前記仕切りの一部を前記洗浄液に浸漬
させ、
前記排気浄化器及び前記仕切りの一部を前記洗浄液に浸漬させた状態で、前記洗浄液を
、前記第2開口から前記DPFに通過させて前記第1開口に向かうように循環させる洗浄方法。
【請求項8】
前記洗浄液の循環後、水を前記第2開口に散布することによって、前記水を前記第2開口から前記DPFに通過させて前記第1開口に流す請求項7に記載の洗浄方法。
【請求項9】
前記可溶化成分がクエン酸、クエン酸塩、エチレンジアミン四酢酸及び酒石酸の中から選択された1種以上の化合物である請求項7又は8に記載の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DPFを有する排気浄化器を洗浄する洗浄装置及び洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のディーゼルエンジンから排出される排気ガス中には、主として固体炭素から形成される粒子状物質の他に、硫酸カルシウム(CaSO4)等のアッシュ成分が含まれている。アッシュ成分は、粒子状物質と共にDPFに捕集されて、DPFのセル内に堆積される。堆積されたアッシュ成分によるDPF(Diesel Particulate Filter)の目詰まりを解消すべく、アッシュ成分を除去することが必要となる。
【0003】
従来、アッシュ成分が堆積したDPFに対して石鹸水或いは水等の洗浄液を高圧で噴霧することで、物理的にアッシュ成分を除去する方法によって洗浄していた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、従来の方法では、DPFの性能が十分に回復する程度に、アッシュ成分を除去することができない。また、アッシュ成分がDPFに残留すると、アッシュ成分が乾燥により石灰化し、DPFの機能不良が発生してしまう。更に、洗浄時間が長くなると、石鹸水或いは水等の洗浄液を無駄に消費してしまう。
【0006】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、DPFに堆積したアッシュ成分を効率よく除去するとともに洗浄液の無駄な消費を抑えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するために、ディーゼルエンジン側の第1開口及び排気口側の第2開口を有した外筒と、その外筒に収容されたDPFとを有した排気浄化器を洗浄する洗浄装置が、アッシュ成分を水に可溶化させる可溶化成分を水に溶解してなる洗浄液が注入された洗浄槽と、前記排気浄化器が前記洗浄槽内にて前記洗浄液に浸漬された状態にて前記洗浄液を前記第2開口から前記DPFに通過させて前記第1開口に向かうように循環させる循環機構と、を備える。
【0008】
また、ディーゼルエンジン側の第1開口及び排気口側の第2開口を有した外筒と、その外筒に収容されたDPFとを有した排気浄化器を洗浄する洗浄方法であって、アッシュ成分を水に可溶化させる可溶化成分を水に溶解してなる洗浄液が注入された洗浄槽内にて前記排気浄化器を前記洗浄液に浸漬した状態で、前記洗浄液を前記第2開口から前記DPFに通過させて前記第1開口に向かうように循環させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施の形態によれば、可溶化成分を含有した洗浄液でDPFを洗浄することによって、DPFに捕集されたアッシュ成分を簡便に且つ効率的に除去することができる。また、循環による洗浄液の流動によってアッシュ成分の溶解及び剥離が促進されため、アッシュ成分の除去効率が高い上、DPFにアッシュ成分が残留しにくい。また、洗浄液を循環させるため、洗浄液の無駄な消費を抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0012】
<<<1. 排気浄化器の洗浄装置>>>
図1は、排気浄化器1を洗浄する洗浄装置10の断面図である。
【0013】
排気浄化器1は、自動車等のディーゼルエンジンからの排気管の中途部に設けられるものである。この排気浄化器1は、排気管から取り外されて、洗浄装置10にセッティングされる。排気浄化器1は、外筒2、前段フィルター3及びディーゼル・パティキュレート・フィルター(以下、DPFと称する)4を有する。外筒2は、中空を有するとともに、その中空に通じる上流側の第1開口2a及び下流側の第2開口2bを有する。外筒2の外周面には、フランジ2aが設けられている。この外筒2が排気管の中途部に取り付けられる場合、その第1開口2aがディーゼルエンジン側になり、外筒2の第2開口2bが排気口側になる。前段フィルター3がディーゼルエンジン側の第1開口2a寄りにおいて外筒2内に収容され、DPF4が排気口側の第2開口2b寄りにおいて外筒2内に収容されている。
【0014】
前段フィルター3は、その外形が柱状を呈したハニカム型のDOC(Diesel Oxidation Catalyst)フィルターである。前段フィルター3は、その一端面から他端面にまで延在するとともにハニカム状に配置された複数の流路3aと、これら流路3aを仕切る多孔質隔壁3bと、多孔質隔壁3bに担持されたディーゼル用酸化触媒とを有する。
【0015】
DPF4は、その外形が柱状を呈したハニカム型のフローフィルターである。DPF4は、その一端面から他端面にまで延在するとともにハニカム状に配置された複数の流路4aと、これら流路4aを仕切る多孔質隔壁4bと、複数の流路4aのうち互い違いに配置される流路4aの一端(入口)を閉塞した目封じ4cと、残りの流路4aの他端(出口)を閉塞した目封じ4dとを有する。
【0016】
ディーゼルエンジンから排出されるガス中には、主として固体炭素から形成される粒子状物質(PM:particulate matter)の他に、アッシュ成分(灰成分)も含まれている。アッシュ成分は、Ca、Zn、P及びSの中から選択された1種以上の元素を含む塩であって、例えば硫酸カルシウム(CaSO4)、リン酸亜鉛カルシウム(Ca19Zn2(PO4)14)である。なお、Ca、Zn及びPは機関潤滑油に由来し、Sは燃料や機関潤滑油に由来すると考えられる。例えばCaSO4は石こうの主成分であり、水に対して難溶性である。
【0017】
排気浄化器1の使用時には、アッシュ成分は粒子状物質と共にDPF4の流路4a内に捕集されて、流路4a内に堆積される。DPF4の流路4a内に堆積されたアッシュ成分は物理的に除去し難い上、水のみの洗浄では除去することが困難である。この洗浄装置10を用いて、洗浄液19でDPF4を洗浄すると、流路4a内に堆積されたアッシュ成分を簡便に且つ効率的に除去することができる。
【0018】
洗浄装置10は、洗浄槽11、シール板12、仕切り13、循環ポンプ14、吸引管15、供給管16及びストレーナ17を備える。ここで、仕切り13、循環ポンプ14、吸引管15及び供給管16を有する機構が循環機構である。
【0019】
洗浄槽11はその上面が開口した箱型に設けられている。この洗浄槽11内に洗浄液19が注入される。
【0020】
洗浄液19は、アッシュ成分を水に可溶化する成分(以下、可溶化成分という)を水に溶解してなる水溶液である。可溶化成分は、アッシュ成分を水に可溶化する役割を果たすものであれば限定されるものではないが、例えばクエン酸、クエン酸塩(例えばクエン酸ナトリウム)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)又は酒石酸である。クエン酸、クエン酸塩、エチレンジアミン四酢酸及び酒石酸のうち2種以上が可溶化成分として洗浄液19に含まれていてもよく、洗浄液19がクエン酸水溶液、クエン酸塩水溶液、エチレンジアミン四酢酸水溶液及び酒石酸水溶液の中から選択された2種以上の混合液であってもよい。これら溶質の一部の官能基がCa原子又はZn原子をキャプチャーして錯体化合物を形成することにより、この錯体化合物が水に可溶な構造となる。その中でも毒性が少なく、かつ除去効果の高いものという観点から、可溶化成分としては、クエン酸若しくはクエン酸ナトリウム又はこれら両方を含むものが好ましい。可溶化成分の濃度としては、可溶化成分の官能基数、アッシュ成分中の金属の価数等によって若干の差異はあるものの、0.1mol/l以上であれば十分な洗浄力を有する。洗浄液19には、洗浄性能を損ねない範囲で、他の任意成分を添加してもよい。以下の説明では、洗浄液19がクエン酸水溶液であるものとする。
【0021】
仕切り13は洗浄槽11内においてシール板12上に載置されている。仕切り13は上面及び下面が開口した筒状に設けられており、仕切り13の下部開口がシール板12によって閉塞されている。仕切り13の下端が仕切り13及び排気浄化器1の重量によってシール板12に押し付けられることによってシール板12が弾性変形し、これにより仕切り13の下端とシール板12との間の液密性が向上する。この仕切り13は、洗浄槽11内の空間を仕切り13の内側の領域11aと仕切り13の外側の領域11bとに区画する。
【0022】
排気浄化器1の外筒2は、その第2開口2bが洗浄槽11内の底に向けられた状態で仕切り13の上部開口に嵌め込まれている。外筒2の外周面が仕切り13の内周面に密接しており、これらの間にシール部材が設けられていてもよい。外筒2のフランジ2aが仕切り13の上端に当接することによって、その外筒2が仕切り13に支持され、外筒2の下端が洗浄槽11内の底から上に離間している。従って、DPF4と洗浄槽11の内底との間には、仕切り13によって囲繞されたスペースが形成されている。そのスペースにも洗浄液19が存在する。
【0023】
以上のように外筒2が仕切り13に嵌め込まれることによって、外筒2の第1開口2aが仕切り13の外側の領域11bに存し、第2開口2bが仕切り13の内側の領域11aに存する。
【0024】
排気浄化器1は洗浄液19に浸漬されている。排気浄化器1の一部が洗浄液19の液面19aから出没しており、第1開口2aが液面19aよりも上に位置する。
【0025】
循環ポンプ14は洗浄槽11の外に設置されている。吸引管15は循環ポンプ14から洗浄槽11内の仕切り13の外側にまで配管されている。吸引管15の先端が洗浄液19に浸漬されており、その先端にはストレーナ17が取り付けられている。供給管16が循環ポンプ14から仕切り13を貫通してスペース13a内にまで配管されている。そのため、仕切り13の内側の領域11aには、ストレーナ17を通過することで煤及びアッシュ成分等が除去された洗浄液19が供給される。
【0026】
循環ポンプ14は吸引管15を通じて仕切り13の外側の洗浄液19を吸い込んで、吸い込んだ洗浄液19を供給管16を通じて仕切り13の内側に供給する。仕切り13の内側に供給された洗浄液19は、循環ポンプ14による供給圧によって排気浄化器1の外筒2の第2開口2bに流入し、外筒2内のDPF4及び前段フィルター3を通過して、外筒2の第1開口2aから湧出する。第1開口2aから湧出した洗浄液19は、洗浄槽11内の仕切り13の外側へ流れる。以上により洗浄液19が循環される。
【0027】
続いて、洗浄装置10を用いて排気浄化器1を洗浄する方法について説明する。
まず、洗浄槽11内に水を注入して、その水に可溶化成分(例えば、クエン酸)を添加して、その水を攪拌することでその水に可溶化成分を溶解する。
【0028】
次に、外筒2の第2開口2bを先にして、排気浄化器1を仕切り13に嵌め込み、外筒2のフランジ2aを仕切り13に当接させる。
次に、吸引管15の一端を循環ポンプ14に接続し、吸引管15の他端にストレーナ17を取り付ける。また、供給管16の一端を循環ポンプ14に接続し、供給管16の他端を仕切り13に接続する。
次に、洗浄槽11の内底にシール板12を敷く。
次に、外筒2の第2開口2bを洗浄槽11の内底に向けて排気浄化器1及び仕切り13を洗浄槽11内の洗浄液19に浸漬する。そして、仕切り13をシール板12上に載置する。この際、洗浄槽11内の洗浄液19の量を調整することによって、排気浄化器1の一部を洗浄液19に浸漬せず、外筒2の第2開口2bを洗浄液19の液面19aよりも上に位置させる。
次に、吸引管15及びストレーナ17を仕切り13の外側の洗浄液19に投入する。
【0029】
次に、循環ポンプ14を始動させる。そうすると、洗浄液19が洗浄槽11、ストレーナ17、循環ポンプ14,仕切り13、DPF4、前段フィルター3、洗浄槽11の順に循環する。これにより、DPF4及び前段フィルター3を洗浄液19により逆洗する。
【0030】
DPF4に堆積されたアッシュ成分が洗浄液19中の可溶化成分によって可溶化する。例えば、洗浄液19に溶けた可溶化成分は、アッシュ成分中の化合物と十分に反応したり錯体を形成したりすることによってアッシュ成分を水に可溶化させることを助ける。アッシュ成分が可溶化することによって、アッシュ成分が洗浄液19中の溶媒(水)に溶解したり、DPF4から剥離したりする。特に、洗浄液19の流れはアッシュ成分の溶解及び剥離を促進させる。
【0031】
溶解・剥離したアッシュ成分は、前段フィルター3中の煤とともに流れて、外筒2の第1開口2aから湧出して、洗浄槽11内に流れる。洗浄液19に溶けきれなかったアッシュ成分や煤はストレーナ17に捕集される。従って、洗浄液19の循環時間が進行するにつれて、外筒2の第1開口2aから湧出する洗浄液19中のアッシュ成分及び煤が減少して、洗浄液19の濁りが薄くなる。
【0032】
洗浄液19の循環中、外筒2の第1開口2aから湧出する洗浄液19を観察する。そして、湧出した洗浄液19の濁りが目標の濃度にまで薄くなったら、循環ポンプ14を停止することによって洗浄液19の循環を終了する。
【0033】
次に、排気浄化器1を洗浄液19から取り出し、排気浄化器1に付着した洗浄液19を切る。
【0034】
次に、
図2に示すリンス装置30を用いて、排気浄化器1のDPF4及び前段フィルター3を水により逆洗する。以下、リンス装置30について具体的に説明する。
【0035】
<<<2. 排気浄化器のリンス装置>>>
図2は、排気浄化器1をすすぐリンス装置30の断面図である。
リンス装置30は、廃液槽31、シンク32、キャスター33、反転台34、ガイド35、ノズルスタンド36、スプレーノズル37及びカバー38を備える。
【0036】
廃液槽31はその上面が開口した箱型に設けられている。
廃液槽31の内側であって廃液槽31の内底の上方にはシンク32が設けられており、廃液槽31の内側の空間がシンク32によってシンク32の上側の領域31aと下側の領域31bに仕切られている。シンク32の底には、ドレイン孔32aが設けられている。
【0037】
廃液槽31の内壁の上部には、ガイド35が水平に直線状に設けられている。このガイド35には反転台34が取り付けられている。反転台34はガイド35に沿って水平に直線状に案内される。反転台34は、ガイド35に対して直交する水平な軸回りに回転可能に設けられている。反転台34には、排気浄化器1が装着される。この排気浄化器1には、カバー38が外筒2を囲繞するように外装される。
【0038】
廃液槽31の上部には、ノズルスタンド36が取り付けられている。ノズルスタンド36は、ガイド35の一端35a側の位置において起立して、廃液槽31の上部開口の縁の上方からシンク32の中央の上方に向けて延びている。ノズルスタンド36の上端には、スプレーノズル37が下に向けて設けられている。スプレーノズル37は、シンク32の中央の上方よりもややガイド35の一端35a寄りに配置されている。スプレーノズル37は、水を下方に向けて均一に散布する。
【0039】
続いて、リンス装置30の使用方法について説明する。
まず、反転台34をガイド35の他端35bにまで移動する。
次に、排気浄化器1をシンク32の上方に持ち上げて、外筒2の第2開口2bを下方のシンク32の底に向けた状態で排気浄化器1を反転台34に取り付ける。
次に、排気浄化器1ごと反転台34を回転させることによって、排気浄化器1の上下を反転させる。これにより、外筒2の第2開口2bを上方に向ける。
次に、カバー38を排気浄化器1の上から降ろして、外筒2をカバー38に嵌め込み、カバー38を外筒2のフランジ2aに当接させる。カバー38は外筒2よりも上方に突き出ており、外筒2の第2開口2bの上方の空間がカバー38によって囲繞されている。
次に、排気浄化器1ごと反転台をガイド35の一端35aにまで移動する。そうすると、外筒2の第2開口2bの中心がスプレーノズル37の真下に位置する。
【0040】
次に、スプレーノズル37に水を供給して、スプレーノズル37から下方のDPF4に水を散布する。スプレーノズル37から噴出した水はカバー38の外側に飛び散らず、その水の全量がカバー38の内側に散布される。散布された水は、重力によって排気浄化器1の外筒2の第2開口2bに流入して、外筒2内のDPF4及び前段フィルター3を通過して、外筒2の第1開口2aからシンク32へ流下する。その水はドレイン孔32aを通って廃液槽31の下部領域31bに貯留される。
【0041】
DPF4中の可溶化したアッシュ成分が水に溶けたり、剥離したりする。溶解・剥離したアッシュ成分は、前段フィルター3中の煤とともに流れて、外筒2の第1開口2aからシンク32へ流下する。従って、水洗時間が進行するにつれて、外筒2の第1開口2aから流れ出る水中のアッシュ成分及び煤が減少して、その水の濁りが薄くなる。水洗中、外筒2の第1開口2aから流れる水を観察して、その水がほぼ透明になったら、水の散布を終了する。
【0042】
次に、反転台34をガイド35の他端35bにまで移動して、反転台34から排気浄化器1を取り外す。そして、排気浄化器1に付着した水を切って、排気浄化器1を乾燥する。
【0043】
<<<3. 有利な効果>>>
(1) 洗浄液19でDPF4を洗浄することによって、DPF4の流路4a内に堆積されたアッシュ成分を簡便に且つ効率的に除去することができる。特に、洗浄液19の流動によってアッシュ成分の溶解及び剥離が促進されため、アッシュ成分の除去効率が高い上、DPF4にアッシュ成分が残留しにくい。
【0044】
(2) 洗浄液19を循環させるため、洗浄液19、特に可溶化成分の無駄な消費を抑えられる。洗浄液19を循環させたものとしても、洗浄液19に可溶化成分が含まれているため、アッシュ成分の除去効率の低下を抑えることができる。
【0045】
(3) 洗浄液19に分散したアッシュ成分及び煤がストレーナ17に捕集されるため、洗浄液19を循環させたものとしても、仕切り13内に供給される洗浄液19にはアッシュ成分及び煤が殆ど存在しない。そのため、剥離したアッシュ成分及び煤がDPF4及び前段フィルター3に再堆積されることを防止できる。
【0046】
(4) 洗浄の際の洗浄液及びリンスの際の水をDPF4から前段フィルター3に向かう方向に流したので、前段フィルター3内の煤がDPF4に浸入することを防止できる。
【0047】
(5) 第1開口2aが液面19aから上に出ているため、第1開口2aから湧出する洗浄液19の懸濁状態を容易に観察することができる。
【0048】
(6) リンス装置30によってDPF4及び前段フィルター3を水洗することによって、アッシュ成分及び煤がDPF4及び前段フィルター3に残留しない。また、排気浄化器1を乾燥させた時に、可溶化成分及びアッシュ成分等がDPF4及び前段フィルター3に析出しない。
【符号の説明】
【0049】
1…排気浄化器
2…外筒
2a…第1開口
2b…第2開口
3…前段フィルター
4…DPF
10…洗浄装置
11…洗浄槽
12…シール板
13…仕切り
14…循環ポンプ
17…ストレーナ
19…洗浄水
30…リンス装置
37…スプレーノズル