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特許7220128ガラスびんの検査方法及びガラスびんの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-01
(45)【発行日】2023-02-09
(54)【発明の名称】ガラスびんの検査方法及びガラスびんの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/90 20060101AFI20230202BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20230202BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20230202BHJP
【FI】
G01N21/90 A
G06T1/00 300
G06T7/00 610Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019115236
(22)【出願日】2019-06-21
(65)【公開番号】P2021001793
(43)【公開日】2021-01-07
【審査請求日】2022-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000222222
【氏名又は名称】東洋ガラス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(72)【発明者】
【氏名】原田 崇
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 岳
【審査官】嶋田 行志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/158824(WO,A1)
【文献】特開2004-219399(JP,A)
【文献】特開2017-076341(JP,A)
【文献】特開平07-092100(JP,A)
【文献】国際公開第2018/198248(WO,A1)
【文献】特開2018-095501(JP,A)
【文献】特開2013-134101(JP,A)
【文献】特開2010-060312(JP,A)
【文献】特開2004-251662(JP,A)
【文献】特開2002-318202(JP,A)
【文献】特開2002-140695(JP,A)
【文献】特開平09-161056(JP,A)
【文献】特開平07-160887(JP,A)
【文献】特開2006-138693(JP,A)
【文献】Detection algorithm for glass bottle mouth defect by continuous wavelet transform based on machine v,PROCEEDINGS OF SPIE,米国,SPIE,2014年11月24日,vol. 9301,93010W,doi: 10.1117/12.2070674
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84-G01N 21/958
G06T 1/00-G06T 1/60
G06T 7/00-G06T 7/90
G06V 30/00-G06V 30/424
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴部の表面に彫刻を有するガラスびんの検査方法であって、
回転する前記ガラスびんを撮像して前記胴部の全周が撮像された画像を取得する画像取得工程と、
前記画像の中から前記彫刻に由来する模様を含む彫刻領域をマスクするマスク工程と、
前記画像についてマスクされた前記彫刻領域を除いて欠点の有無を判定する判定工程と、
を含み、
前記画像取得工程で取得した前記画像に対し、あらかじめ前記彫刻の外形に基づいて作成されたパターン登録画像を用いてパターンサーチして前記模様を検出する模様位置検出工程をさらに含み、
前記マスク工程は、前記模様位置検出工程によって検出された前記模様を含む前記彫刻領域をマスクすると共に、パターンサーチによって検出した前記模様の位置に基づいて、あらかじめ設定した形状の複数の検査領域を前記画像に配置し、
前記複数の検査領域は、前記彫刻領域の周囲を囲む第1検査領域と、前記第1検査領域の周囲を囲む第2検査領域と、第2検査領域を挟むように配置された2つの第3検査領域と、を含み、
前記第3検査領域は、前記画像において合わせ目線が現れる部分にそれぞれ配置され、
前記判定工程は、前記第1検査領域、前記第2検査領域及び前記第3検査領域に対してそれぞれ所定の検査アルゴリズムを実行して欠点の有無を判定し、
前記第3検査領域に対する検査アルゴリズムは、検出体と合わせ目線とを区別して欠点であるか否かを判定することを特徴とする、ガラスびんの検査方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記欠点は、少なくとも表面欠点を含み、
前記画像取得工程は、前記胴部を透過した透過光をラインセンサで撮像することを特徴とする、ガラスびんの検査方法。
【請求項3】
請求項において、
前記模様位置検出工程は、前記画像における所定高さ範囲に対してパターンサーチすることを特徴とする、ガラスびんの検査方法。
【請求項4】
粗型でゴブからパリソンを成形し、前記パリソンを仕上型で前記ガラスびんに成形し、前記ガラスびんに対して請求項1~請求項のいずれか一項に記載のガラスびんの検査方法を行って前記欠点がないと判定されたガラスびんを得ることを特徴とする、ガラスびんの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、胴部の表面に彫刻を有するガラスびんの検査方法及び当該ガラスびんの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表面に凹凸のある彫刻を施したガラスびんが知られている。彫刻を有するガラスびんは、独創性や高級感があり、消費者に好ましい印象を与える。
【0003】
このような表面に凹凸のあるガラスびんの検査方法として、例えば特許文献1が提案されている。特許文献1の発明では、凹凸による彫刻面と凹凸の無い平滑面とを光学的に判定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭58-216906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の発明では、単に凹凸のある面と無い面とを判定するだけであり、ガラスびんの欠点を検査できていない。凹凸の彫刻があるガラスびんを光学的に検査しようとすると、凹凸による影であるのか、傷や泡等の欠点による影であるのかを判定しにくい。現在も、凹凸のあるガラスびんの傷や泡等の欠点の有無は、もっぱら目視検査に頼っている。
【0006】
そこで、本発明は、表面に彫刻を有するガラスびんにおける欠点の有無を画像から自動的に判定する検査方法及びガラスびんの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することができる。
【0008】
なお、以下の説明において、「彫刻」は、ガラスびんの表面の凹凸による意匠であり、「模様」は、ガラスびんを撮像して得られた画像に現れる「彫刻」に起因する明暗濃度の変化である。
【0009】
[1]本発明に係るガラスびんの検査方法の一態様は、
胴部の表面に彫刻を有するガラスびんの検査方法であって、
回転する前記ガラスびんを撮像して前記胴部の全周が撮像された画像を取得する画像取得工程と、
前記画像の中から前記彫刻に由来する模様を含む彫刻領域をマスクするマスク工程と、
前記画像についてマスクされた前記彫刻領域を除いて欠点の有無を判定する判定工程と、
を含み、
前記画像取得工程で取得した前記画像に対し、あらかじめ前記彫刻の外形に基づいて作成されたパターン登録画像を用いてパターンサーチして前記模様を検出する模様位置検出工程をさらに含み、
前記マスク工程は、前記模様位置検出工程によって検出された前記模様を含む前記彫刻領域をマスクすると共に、パターンサーチによって検出した前記模様の位置に基づいて、あらかじめ設定した形状の複数の検査領域を前記画像に配置し、
前記複数の検査領域は、前記彫刻領域の周囲を囲む第1検査領域と、前記第1検査領域の周囲を囲む第2検査領域と、第2検査領域を挟むように配置された2つの第3検査領域と、を含み、
前記第3検査領域は、前記画像において合わせ目線が現れる部分にそれぞれ配置され、
前記判定工程は、前記第1検査領域、前記第2検査領域及び前記第3検査領域に対してそれぞれ所定の検査アルゴリズムを実行して欠点の有無を判定し、
前記第3検査領域に対する検査アルゴリズムは、検出体と合わせ目線とを区別して欠点であるか否かを判定することを特徴とする。
【0010】
上記ガラスびんの検査方法の一態様によれば、彫刻領域を除いて欠点の有無を判定するため、表面に彫刻を有するガラスびんにおける欠点の有無を画像から自動的に判定することができる。上記ガラスびんの検査方法の一態様によれば、彫刻の外形に基づいて作成されたパターン登録画像を用いて模様を検出するので、模様の濃淡が薄くても安定して模様の位置を検出することができる。
【0011】
[2]上記ガラスびんの検査方法の一態様において、
前記欠点は、少なくとも表面欠点を含み、
前記画像取得工程は、前記胴部を透過した透過光をラインセンサで撮像することができる。
【0012】
上記ガラスびんの検査方法の一態様によれば、透過光をラインセンサで撮像することにより、表面泡のような陰影の出にくい欠点であっても画像から自動的に判定することができる。
【0015】
]上記ガラスびんの検査方法の一態様において、
前記模様位置検出工程は、前記画像における所定高さ範囲に対してパターンサーチすることができる。
【0016】
上記ガラスびんの検査方法の一態様によれば、画像における模様の出現する高さはほぼ一定であるため、所定高さ範囲に対してパターンサーチすることで、検査装置の負荷を低減できる。
【0017】
]本発明に係るガラスびんの製造方法の一態様は、
粗型でゴブからパリソンを成形し、前記パリソンを仕上型で前記ガラスびんに成形し、前記ガラスびんに対して上記ガラスびんの検査方法の一態様を行って前記欠点がないと判定されたガラスびんを得ることを特徴とする。
【0018】
上記ガラスびんの製造方法の一態様によれば、彫刻を有するガラスびんであっても、欠点を自動で判定することができるので、欠点のないガラスびんを製造することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るガラスびんの検査方法の一態様によれば、表面に彫刻を有するガラスびんにおける欠点の有無を画像から自動的に判定することができる。本発明に係るガラスびんの製造方法の一態様によれば、彫刻を有するガラスびんであっても、欠点のないガラスびんを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】検査装置を模式的に示す側面図である。
図2】検査装置を模式的に示す平面図である。
図3】本実施形態に係る検査方法のフローチャートである。
図4】画像の一例である。
図5】画像処理、検出工程及びマスク工程を説明する図である。
図6】画像処理及びマスク工程を説明する図である。
図7】判定工程を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0022】
本実施形態に係るガラスびんの検査方法は、胴部の表面に彫刻を有するガラスびんの検査方法であって、回転する前記ガラスびんを撮像して前記胴部の全周が撮像された画像を取得する取得工程と、前記画像の中から前記彫刻に由来する模様を含む彫刻領域をマスクするマスク工程と、前記画像についてマスクされた前記彫刻領域を除いて欠点の有無を判定する判定工程と、を含むことを特徴とする。
【0023】
本実施形態に係るガラスびんの製造方法は、粗型でゴブからパリソンを成形し、前記パリソンを仕上型でガラスびんに成形し、前記ガラスびんに対して上記ガラスびんの検査方法の一態様を行って前記欠点がないと判定されたガラスびんを得ることを特徴とする。
【0024】
1.検査装置
図1及び図2を用いて、ガラスびん10の検査装置1について詳細に説明する。図1は本実施形態に係る検査方法に用いる検査装置1を模式的に示す側面図であり、図2は該検査装置1を模式的に示す平面図である。
【0025】
図1及び図2に示す検査装置1は、表面に彫刻15を有するガラスびん10の検査装置1である。検査装置1は、図示しないガラスびん10の製造ラインの一部として組み込まれ、成形後、徐冷されたガラスびん10を検査装置1に搬送し、検査後のガラスびん10を次工程へ搬送する。
【0026】
検査装置1は、ガラスびん10に対し光を照射する発光面22を有する発光部20と、ガラスびん10を挟んで発光部20と対向して配置された撮像部40と、撮像部40で撮像したガラスびん10の画像80(図4)に基づいて欠点の有無を判定する判定部52を含む制御部50と、を含む。
【0027】
ここで、図1に示すように、ガラスびん10は正立状態、すなわち中心軸12が鉛直方向に沿った状態で検査を受ける。鉛直方向は、重力の方向であり、水平方向は、鉛直方向に直交する方向である。
【0028】
検査装置1は、ガラスびん10を中心軸12の周りに回転させながら支持する載置台30と、ガラスびん10の側面に接触しながらガラスびん10を回転させるサイドローラ32と、を含む。図1ではサイドローラ32がガラスびん10と撮像部40との間にあるように示したが、サイドローラ32を説明するための便宜的なものであり、サイドローラ32は撮像部40におけるガラスびん10の撮像の障害とならない位置に配置される。
【0029】
ガラスびん10は、透明または半透明である。半透明とは、ガラスびん10を透過した発光部20からの光によってガラスびん10の胴部13の欠点例えば表面泡18を判定可能な程度の透明度である。ガラスびん10は、例えば横断面円形の首部11及び胴部13と、底部14とを有する広口びんである。ガラスびん10の横断面形状は、多角形であってもよい。ガラスびん10は、表面に彫刻15を有する。彫刻15は、ガラスびん10の表面に形成された凹凸であり、例えば、成形時の金型の表面に刻まれた凹凸により成形される。
【0030】
サイドローラ32は、胴部13に接触し、ガラスびん10を中心軸12の周りに回転させる。中心軸12は、ガラスびん10が回転する回転中心軸となる仮想線である。サイドローラ32は、回転制御部62の指令によりモータ60の駆動力をベルト35などを介してガラスびん10に伝達し、ガラスびん10を回転する。サイドローラ32は、ガラスびん10を所定速度で所定量回転させる。所定量の回転は、ガラスびん10の全周が撮像されるのに十分な量である。所定量の回転は、1つの画像データで検出体の全体を把握できるように、例えば1.5回転以上に設定される。回転検出部54は、モータ60に直接または間接に取り付けられたロータリエンコーダであることができる。回転検出部54のパルス出力に従って撮像部40がガラスびん10の所定回数分の画像を撮像する。
【0031】
発光部20は、ガラスびん10を照らす光源である。発光部20は、ガラスびん10側に発光面22を有し、ガラスびん10を撮像部40の反対側から照らすことができる面光源である。発光部20は、検査装置1で検査することを予定している最大のガラスびん10の全体を照らすことができる高さに設定されている。図2に示すように、発光面22の全幅W2は、ガラスびん10の全幅W1よりも狭い。全幅W2を全幅W1よりも狭くすることで、表面泡18の影をくっきりと撮像することが可能となる。全幅W1,W2は、検査装置1を平面視した場合のガラスびん10及び発光面22の全幅である。
【0032】
図2に示すように、発光面22は、例えば長方形の形状であり、そのほぼ全面が発光する。発光面22は、ガラスびん10及び撮像部40に対し正対し、ガラスびん10を透過した光が撮像部40に届くように配置される。
【0033】
発光部20の光源としては、例えばLEDや有機EL等の公知の光源を用いることができる。発光部20は拡散照明であり、LEDを用いる場合には発光面22に拡散板を利用して均一な光をガラスびん10に対して照射することができる。拡散板は、LED等の光源からの光を拡散させて外部に出射させる公知のものを用いることができる。拡散板によって光が拡散されることで、多数の光源を用いた場合に光源が存在しない部分とのムラを減少することができる。
【0034】
撮像部40は、ガラスびん10を挟んで発光部20と対向して配置される。撮像部40は、中心軸12の延長線上のガラスびん10の表面を撮像するように配置される。撮像部40は、ガラスびん10の少なくとも検査対象部分を撮像でき、ここではガラスびん10の胴部13の鉛直方向の全体が撮像部40の視野内に入るように配置される。
【0035】
撮像部40は、ガラスびん10を透過した発光部20の光によって検出体(例えば表面泡18を含む)を含む画像を撮像することができる。撮像部40は、例えば、公知のラインセンサカメラを用いることができる。撮像部40は、回転検出部54の出力によりサイドローラ32の回転に合わせて撮像することで、回転速度が何らかの原因で変化しても画像80に影響がない。
【0036】
撮像部40は、胴部13の全周を撮像し、そのデータを制御部50の画像処理部53に送信する。
【0037】
制御部50は、判定部52と、画像処理部53と、を含む。制御部50は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics
Processing Unit)等のプロセッサ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、ROM(Read-Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の記憶装置、キーボード、マウス、タッチパッド等の入力装置、液晶ディスプレイ、有機EL(
Electro Luminescence)ディスプレイ等の表示装置、I/Oボード等のデジタル入出力ボード等で構成される。制御部50は、ガラスびん10を検査する処理を実行する。検査装置1がガラスびん10を所定速度で間欠搬送する処理は、制御部50とは別の制御部で実行されるが、制御部50で実行するように構成してもよい。
【0038】
判定部52は、撮像部40から取得した画像に基づいて欠点の有無を判定する。判定部52で判定される欠点としては、例えば、表面欠点である。表面欠点とは、ガラスびん10の内表面または外表面に存在する、表面泡18、汚れ、異物である。判定部52は、表面欠点に加えて例えばガラスびん10の内部にある欠点を判定してもよい。判定部52は、例えば縦の長さが3.0mm以上、横の長さが1.0mm以上、深さが0.05mm以上の表面泡18を欠点として判定することが好ましい。また、判定部52は、彫刻15に由来する画像中の模様を欠点として誤判定しないことが望ましい。
【0039】
制御部50は、判定部52の判定結果をガラスびん10ごとに外部へ出力し、例えば、検査装置1の排出部以降のラインで欠点有りと判定したガラスびん10を排除する。制御部50における具体的な処理については、下記「3.検査方法」で説明する。
【0040】
2.製造方法
本実施形態に係るガラスびん10の製造方法について説明する。ガラスびん10は、まず粗型でゴブからパリソンを成形する。パリソンは、粗型内に配置した高温のゴブ内に圧縮空気を吹き込んで有底筒状に成形される。圧縮空気と合わせてプランジャを用いてもよい。次に、パリソンを仕上型に移し、仕上型内でパリソンに圧縮空気を吹き込んで製品であるガラスびん10を成形する。成形直後のガラスびん10は高温であるので、徐冷炉に移してゆっくりと冷やされる。徐冷炉から出たガラスびん10に対して下記検査方法を実行する。そして、下記検査方法を実行して欠点がないと判定されたガラスびん10を良品の製品として得る。
【0041】
このように、本実施形態に係るガラスびん10の製造方法によれば、彫刻15を有するガラスびん10であっても、欠点を自動で判定することができるので、欠点のないガラスびん10を製造することができる。
【0042】
3.検査方法
図1及び図2における検査装置1を用いた本実施形態に係るガラスびん10の検査方法について、図3図7を用いて説明する。図3は本実施形態に係る検査方法のフローチャートであり、図4は画像80の一例であり、図5は画像前処理S14、模様位置検出工程S16及びマスク工程S18を説明する図であり、図6は画像前処理S14及びマスク工程S18を説明する図であり、図7は判定工程S20を説明する図である。
【0043】
図3に示すように、本実施形態に係る検査方法は、胴部13の表面に彫刻15を有するガラスびん10の検査方法であって、少なくとも画像取得工程S12と、マスク工程S18と、判定工程S20と、を含む。本実施形態に係る検査方法は、S12の前に撮像を開始する工程S10をさらに含んでもよく、S12の後に画像に対して所定の処理を施す画像前処理S14を含んでもよく、S14の後に模様位置検出工程S16をさらに含んでもよい。各工程について図1及び図2を参照しながら以下順番に説明する。
【0044】
S10:制御部50は、撮像部40に撮像開始を指令する。撮像部40は、制御部50の指令に従って、中心軸12の周りに回転するガラスびん10の胴部13を透過した透過光をラインセンサで撮像する。その際、制御部50は、回転検出部54からの出力に基づいてガラスびん10の回転角度を演算し、1.5周(例えば360°×1.5=540°)を連続で撮像する。図1に示す欠点は、例えば表面泡18である。透過光をラインセン
サで撮像することにより、表面泡18のような陰影の出にくい欠点であっても画像から自動的に判定することができる。撮像された画像データは、撮像部40から制御部50に送信される。
【0045】
S12:制御部50は、撮像部40から送信される胴部13の全周が撮像された画像80(図4)を取得する画像取得工程S12を実行する。画像80は、制御部50の図示しない記憶装置に記憶される。画像80には、少なくとも胴部13の1.5周分の画像が撮像されており、さらに首部11の1.5周分の画像が撮像されていてもよい。画像80が胴部13の1.5周分以上あることで、制御部50は、胴部13の1周分に相当する複数の検査領域(82~84,88,89)を途切れることなく画像80に配置することができる。
【0046】
図4に示す画像80は、彫刻15に由来する模様15aと、縦方向に延びる合わせ目線16と、表面泡影18aとが暗い影として撮像された状態を示す。合わせ目線16は、ガラスびん10を成形する際に用いる金型によって形成される段差によって生じる影である。画像80において欠点として判定される影は、表面泡18に由来する表面泡影18a以外にも内部にある泡、白石・異物などに由来する影を含むことができる。これらの影を模様15aや合わせ目線16と明確に区別して欠点と判定するために、画像80における胴部13が撮像された部分には、複数の矩形の検査領域(82~84,88,89)が設けられ、検査領域ごとにあらかじめ設定された検査アルゴリズムが実行される。図4では各検査領域(82~84,88,89)が破線で示される。
【0047】
S14:画像処理部53は、模様位置検出工程S16をより確実に実行するために、模様15aに対し画像前処理S14を実行する。画像前処理S14は、模様15aを抽象的な形状でパターンサーチを行うために例えば「ぼかし処理」を行うことができる。「ぼかし処理」は、例えば平均化フィルタにより行うことができ、平均化フィルタは注目画素の画素値を、フィルタサイズ範囲内の全画素値の平均値で置き換えて出力する二次元フィルタである。
【0048】
また、画像前処理S14としては、「ぼかし処理」以外に、例えば影の黒を膨張するような「膨張処理」を採用してもよい。
【0049】
S16:図5に示すように、判定部52は、模様位置検出工程S16を実行する。模様位置検出工程S16を実行する前に、図5の(a)に示すように、オペレータはあらかじめ彫刻15の外形に基づいて作成されたパターン登録画像86を準備する。パターン登録画像86は彫刻15に由来する模様15aの外形に基づいて作成されてもよい。パターン登録画像86は、彫刻15よりも少し大きな枠であり、矩形の第1検査領域82と同じ大きさに設定してもよい。パターン登録画像86は、制御部50の図示しない記憶装置に記憶される。
【0050】
次に、判定部52は、模様位置検出工程S16を実行する。図5の(b)及び(c)に示すように、模様位置検出工程S16は、画像取得工程S12で取得した画像80に対し、あらかじめ彫刻15の外形に基づいて作成されたパターン登録画像86を用いてパターンサーチして模様15aを検出する。パターンサーチは、パターン登録画像86に適合する検出体を画像80内でサーチして、パターン登録画像86が一定程度模様15aの外形に一致することで検出体を模様15aとして検出する。彫刻15の外形に基づいて作成されたパターン登録画像86を用いて模様15aを検出するので、模様15aの濃淡が薄くても安定して模様15aの位置を検出することができる。
【0051】
模様位置検出工程S16は、画像80における所定高さ範囲に対してパターンサーチす
ることができる。図1に示すようにガラスびん10は載置台30上にあり、撮像された画像80における模様15aの出現する高さはほぼ一定である。そこで、図4に示すように、画像80の下端からの第1高さH1を下限として、第2高さH2の水平方向の範囲をパターンサーチ領域85(一点鎖線で囲む矩形領域)に設定し、パターンサーチ領域85内でパターンサーチする。このように所定高さ範囲に対してパターンサーチすることで、検査装置1の処理の負荷を低減できる。
【0052】
S18:画像処理部53は、マスク工程S18を実行する。図5の(d)及び(e)に示すように、マスク工程S18は、画像80の中から彫刻15に由来する模様15aを含む彫刻領域81をマスク87によってマスクする。彫刻領域81は、模様15aの全体を含む広さである。彫刻領域81は、パターン登録画像86によって囲まれた領域としてもよいし、パターン登録画像86よりも若干狭く模様15aにより近い範囲を彫刻領域81としてもよい。マスク87は、彫刻領域81と等しい。マスク87は、パターン登録画像86とセットであらかじめ作成される。マスク87とパターン登録画像86との配置もあらかじめ設定することができる。これにより、パターンサーチによってパターン登録画像86が画像80に対して適切な位置に配置されると、彫刻領域81が画像80に設定されると同時にマスク87によってマスクされる。また、画像処理部53は、パターンサーチによって検出した模様15aの位置に基づいて、あらかじめ設定した形状の複数の検査領域(82~84,88,89)を画像80に配置する。模様15aの位置と各検査領域(82~84,88,89)の位置との相対位置をあらかじめ設定しておくことで、模様15aの位置が定まれば、複数の検査領域(82~84,88,89)の位置を画像80上に自動的にレイアウトすることができる。
【0053】
上述のS14~S18の他、例えば、S14として他の画像処理を採用することもできる。例えば、画像処理部53は、図6の(a)の画像取得工程S12で取得した画像80を(b)のように膨張処理を複数回行うことで模様15aを太くし、その画像80を(c)のように二値化処理し、判定部52が模様位置検出工程S16を実行して検出した模様15aに彫刻領域81を設定し、画像処理部53が(d)のようにマスク工程S18を実行してもよい。この場合、模様位置検出工程S16は、二値化処理で得られた模様15aの重心と面積により模様15aを検出することができる。
【0054】
S20:判定部52は、判定工程S20を実行する。判定工程S20は、画像80についてマスクされた彫刻領域81を除いて欠点の有無を判定する。彫刻領域81を除いて欠点の有無を判定するため、表面に彫刻15を有するガラスびん10における欠点の有無を画像80から自動的に判定することができる。判定工程S20は、画像80に設定された第1検査領域82、第2検査領域83、第3検査領域84、第4検査領域88及び第5検査領域89に対してそれぞれ所定の検査アルゴリズムを実行し、欠点の有無を判定する。各検査領域は、例えば所定の大きさの矩形状としてあらかじめ設定される。
【0055】
第1検査領域82は、彫刻領域81の周囲を囲む領域であり、第2検査領域83よりも狭い。第1検査領域82では、マスク87で覆われた領域を除いて、図7の(a)のように影の線が細い(または薄い)表面泡18に対して、画像処理部53が例えば縦横方向強調処理を行った後、二値化処理を行うと(b)に示すように影の線が途切れない連続体となる。判定部52は、二値化処理後、検出体の面積と最大長さとにより検出体が欠点であるか否かを判定し、検出体が欠点でない場合には「欠点なし」と判定して制御部50が当該ガラスびん10を良品として処理(S22)する。また、検出体が欠点である場合には「欠点あり」と判定して制御部50が当該ガラスびん10を不良品として処理する(S24)。
【0056】
第2検査領域83は、第1検査領域82の周囲を囲み、画像80の下端から首部11の
下端まで延びる。第2検査領域83は、第1検査領域82を除いた部分である。画像処理部53は、第2検査領域83に対して第1検査領域82と同様の画像処理を行い、判定部52が検出体に対して欠点であるか否かを判定する(S20)。第2検査領域83は模様15aを欠点と誤判定する可能性が低いので、判定部52は、第1検査領域82よりも高い精度で第2検査領域83の検出体を判定することができる。
【0057】
2つの第3検査領域84は、第2検査領域83の左右の外側に配置され、画像80の下端から首部11の下端まで延びる。第3検査領域84は、画像80における合わせ目線16が現れる部分に配置される。第3検査領域84における検査アルゴリズムは、検出体を合わせ目線16と区別する必要がある。例えば、図7の(c)と(d)のように、検出体を縦方向に複数分割して分割した枠内の横方向の二線間距離D1、D2を計測する。判定部52は、二線間距離D1が所定の幅よりも広くかつ上下の枠内の検出体が例えば3つ以上連続している場合に表面泡18と判定し、二線間距離D2が所定の幅より狭ければ合わせ目線16であると判定する。また、画像処理部53は、図7の(e)の画像から縦方向の影(合わせ目線16)を消去しさらに二値化処理して(f)のようにした後、判定部52は、検出体の面積により欠点であるか否かを判定する。この際の画像処理で縦方向の輝度変化を強調することにより縦方向の影を消去できるので、縦方向の輝度変化がある横長の部分を有する表面泡が残る。このように異なる二つの検査アルゴリズムを併せて適用することにより、合わせ目線16を欠点と間違えることなく、より正確な検査が可能となる。
【0058】
第4検査領域88は、第2検査領域83と第3検査領域84との間にあって、画像80の下端から首部11の下端まで延びる。第4検査領域88は、胴部13における第2検査領域83と対向する部分である。画像処理部53及び判定部52は、第4検査領域88に対して、第2検査領域83と同様の処理を行うことができる。
【0059】
第5検査領域89は、第2検査領域83~第4検査領域88の上に延びる首部11に対応する部分である。第5検査領域89は、合わせ目線16が撮像される位置を除いて2つに分けて画像80上に配置される。2つの第5検査領域89に挟まれた位置には合わせ目線16と直交する外乱影が発生することがあるからである。画像処理部53及び判定部52は、第5検査領域89に対して、例えば、第3検査領域84と同様の処理を行うことができる。
【0060】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能であり、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成を含む。ここで、「同一の構成」とは、機能、方法、及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成である。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0061】
1…検査装置、10…ガラスびん、11…首部、12…中心軸、13…胴部、14…底部、15…彫刻、15a…模様、16…合わせ目線、18…表面泡、18a…表面泡影、19…口部、20…発光部、22…発光面、30…載置台、32…サイドローラ、35…ベルト、40…撮像部、50…制御部、52…判定部、53…画像処理部、54…回転検出部、60…モータ、62…回転制御部、80…画像、81…彫刻領域、82…第1検査領域、83…第2検査領域、84…第3検査領域、85…パターンサーチ領域、86…パターン登録画像、87…マスク、88…第4検査領域、D1,D2…二線間距離、H1…第1高さ、H2…第2高さ、W1,W2…全幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7