(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-01
(45)【発行日】2023-02-09
(54)【発明の名称】線材巻き取り装置及び線材処理システム
(51)【国際特許分類】
B65H 75/24 20060101AFI20230202BHJP
B65H 75/14 20060101ALI20230202BHJP
B65H 54/56 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
B65H75/24 A
B65H75/14
B65H54/56 A
(21)【出願番号】P 2019237969
(22)【出願日】2019-12-27
【審査請求日】2022-02-04
(73)【特許権者】
【識別番号】390029089
【氏名又は名称】高周波熱錬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】上本 敏史
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-166984(JP,A)
【文献】特開2007-168806(JP,A)
【文献】実開昭54-008504(JP,U)
【文献】特開2010-233457(JP,A)
【文献】実開平06-053571(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 75/00- 75/32
B65H 54/56- 54/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転により線材を巻き取る回転体と、
前記回転体に設けられ、前記回転体における第1の位置及び第2の位置に変位可能なスペーサと、
を備え、
前記スペーサが前記第1の位置にあるときは、前記スペーサを介さずに前記線材が前記回転体に巻き取られることにより、前記線材が第1の径で巻き取られ、
前記スペーサが前記第2の位置にあるときは、前記スペーサを介して前記線材が前記回転体に巻き取られることにより、前記線材が前記第1の径より大きい第2の径で巻き取られる線材巻き取り装置。
【請求項2】
請求項1記載の線材巻き取り装置であって、
前記スペーサは、前記回転体の回転軸を中心とする周方向に沿って複数設けられている線材巻き取り装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の線材巻き取り装置であって、
前記スペーサは、前記回転体に固定された、前記回転体の回転軸を中心とする円の接線と平行な方向の軸を中心に回転することにより、前記第1の位置又は前記第2の位置に変位する線材巻き取り装置。
【請求項4】
請求項3記載の線材巻き取り装置であって、
前記スペーサには、レバーを取り付け可能であり、
前記スペーサに取り付けた前記レバーの操作により前記スペーサが回転する線材巻き取り装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項記載の線材巻き取り装置であって、
前記回転体は、巻き取った前記線材を、前記回転体の回転軸と平行な方向に挟んで支持するU字形状を含む支持部材を備え、
前記スペーサが前記第1の位置にあるときは、前記線材が前記スペーサを介さず前記支持部材の内側に巻き取られ、
前記スペーサが前記第2の位置にあるときは、前記線材が前記スペーサを介して前記支持部材の内側に巻き取られる線材巻き取り装置。
【請求項6】
請求項5記載の線材巻き取り装置であって、
前記U字形状を含む支持部材は、前記回転体の回転軸と平行な方向に前記線材を挟む一対の壁部と、前記回転体の回転軸の側から前記線材を支持する底部と、を含み、
前記一対の壁部の少なくともいずれかは、前記線材を挟む第3の位置から、前記第3の位置と異なる第4の位置へ変位可能であり、
前記一対の壁部の少なくともいずれかが前記第4の位置にあるときは、前記回転体に巻き取られた前記線材を、前記回転体の回転軸と平行な方向に移動させて前記回転体から抜き取ることが可能な線材巻き取り装置。
【請求項7】
請求項5又は6記載の線材巻き取り装置であって、
前記スペーサは、前記回転体の回転軸を中心とする周方向に沿って複数設けられ、隣り合う一対の前記スペーサは、前記回転体の回転軸を中心とする周方向において前記支持部材を挟む位置に設けられている線材巻き取り装置。
【請求項8】
請求項7記載の線材巻き取り装置であって、
前記一対のスペーサは、互いに固定されている線材巻き取り装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項記載の線材巻き取り装置と、
線材に、熱処理及び成形の少なくともいずれかを含む線材処理を行う線材処理部と、
を含み、前記回転体は、前記線材処理部によって前記線材処理が行われた前記線材を巻き取る線材処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線材を巻き取る線材巻き取り装置及び線材処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、長尺の鋼材である線材を線材処理装置に通すことで線材の線材処理を行う線材処理システムが知られている。この線材処理には、例えば、焼入れ等の熱処理や、伸線などの成形などがある。
【0003】
また、線材処理システムにおいて、ドラム等に巻かれたコイル状の線材を順次解きながら繰り出して線材処理を行い、線材処理を行った線材を回転ドラム等で巻き取って再度コイル状の線材とする方法が知られている。この方法に関連する技術として、例えば特許文献1には、長尺ワークをドラムに複数回巻回して長尺ワークの束を形成する際に、結束用線材を挿入することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば線材をドラムによって巻き取る場合、巻き取られた線材の巻き径は、ドラムの大きさによって決まる。しかしながら、巻き取られた線材を用いた製造ラインや、巻き取られた線材の運搬や保管などの条件に応じて、求められる巻き径が異なる場合がある。
【0006】
これに対して、例えば、求められる巻き径に応じてドラムを交換する方法が考えられるが、ドラムを交換するための大掛かりな設備が必要になったり、ドラムの交換に時間がかかったりするという問題がある。また、交換用のドラムの置き場も用意する必要があるため、周辺のスペースを圧迫するという問題がある。
【0007】
また、一個のドラムに対して、線材の巻き径を調整するためのスペーサを着脱可能に構成する方法も考えられるが、この場合も、スペーサの交換に時間がかかるという問題や、外したスペーサの置き場のために周辺のスペースを圧迫するという問題がある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、線材を巻き取る際の巻き径を簡単に切り替えることができる線材巻き取り装置及び線材処理システムを提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様の線材巻き取り装置は、回転により線材を巻き取る回転体と、前記回転体に設けられ、前記回転体における第1の位置及び第2の位置に変位可能なスペーサと、を備え、前記スペーサが前記第1の位置にあるときは、前記スペーサを介さずに前記線材が前記回転体に巻き取られることにより、前記線材が第1の径で巻き取られ、前記スペーサが前記第2の位置にあるときは、前記スペーサを介して前記線材が前記回転体に巻き取られることにより、前記線材が前記第1の径より大きい第2の径で巻き取られる。
【0010】
また、本発明の一態様の線材処理システムは、前記線材巻き取り装置と、線材に、熱処理及び成形の少なくともいずれかを含む線材処理を行う線材処理部と、を含み、前記回転体が、前記線材処理部によって前記線材処理が行われた前記線材を巻き取る。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、線材を巻き取る際の巻き径を簡単に切り替えることができる線材巻き取り装置及び線材処理システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の線材巻き取り装置の一実施例である線材巻き取り装置100の一例を示す図である。
【
図2】線材巻き取り装置100が備える線材支持部材121及びスペーサ240の一例を示す側面図(その1)である。
【
図3】線材巻き取り装置100が備える線材支持部材121及びスペーサ240の一例を示す側面図(その2)である。
【
図4】
図3に示した線材支持部材121及びスペーサ240の一例を示す上面図である。
【
図5】可動側壁部220の変位の一例を示す図である。
【
図6】線材巻き取り装置100を適用した線材処理システムの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0014】
(本発明の線材巻き取り装置の一実施例)
図1は、本発明の線材巻き取り装置の一実施例である線材巻き取り装置100の一例を示す図である。線材巻き取り装置100は、線材巻き取り装置100へ挿入される線材10を巻き取ることにより、コイル状に巻かれた線材10を形成する装置である。
【0015】
線材10は、金属材料からなる長尺材である。金属材料は、例えば鋼である。線材10は、断面が円形、矩形、三角形など各種の形状の長尺材とすることができる。また、線材10は、断面の形状が一定でない異形断面の長尺材であってもよい。
【0016】
図1に示すように、線材巻き取り装置100は、回転軸110と、回転ドラム120と、線材支持部材121~128と、を備える。また、線材巻き取り装置100は、後述するようにスペーサ240を備える(例えば
図2~
図4参照)。線材巻き取り装置100の各部品は、例えば金属等の剛性部材によって構成される。回転ドラム120及び線材支持部材121~128は、回転により線材10を巻き取る回転体を構成する。
【0017】
回転ドラム120は、回転軸110を中心として回転する。回転ドラム120の回転は、例えば不図示のアクチュエータによって行われる。
図1に示す例では、回転ドラム120の外形は円柱形である。
【0018】
ここで、回転軸110の方向(
図1の奥行方向)をZ方向とし、Z方向と直交する一方向(
図1の横方向)をX方向とし、Z方向及びX方向と直交する方向(
図1の縦方向)をY方向とする。線材10は、方向Xとほぼ平行な方向で線材巻き取り装置100に挿入される。
【0019】
線材支持部材121~128は、回転ドラム120に対して、回転軸110を中心とする周方向に沿って等間隔に固定されている。線材支持部材121~128のそれぞれは、回転軸110の側から線材10を支持する。したがって、線材10は、回転ドラム120には直接触れずに線材支持部材121~128に巻き取られる。
【0020】
線材支持部材121~128のいずれかに、線材10の先端を固定可能な先端固定部(不図示)が設けられる。この先端固定部に線材10の先端を固定した状態で回転ドラム120を回転させることにより、線材10を線材支持部材121~128に巻き取ることができる。
【0021】
回転軸131は、線材支持部材121の側壁部(後述の可動側壁部220)を変位させるための回転軸である。
図1において符号を省略しているが、線材支持部材122~128も、線材支持部材121の回転軸131と同様の回転軸を有する。線材支持部材121~128の回転軸による側壁部の変位については後述する(例えば
図5参照)。
【0022】
(線材巻き取り装置100が備える線材支持部材121及びスペーサ240)
図2及び
図3は、線材巻き取り装置100が備える線材支持部材121及びスペーサ240の一例を示す側面図である。線材支持部材121の構成について説明するが、線材支持部材122~128の構成についても線材支持部材121の構成と同様である。
図2及び
図3は、線材支持部材121及びスペーサ240を、
図1に示したX方向(回転軸110を中心とする周方向)から見た様子を示している。
【0023】
線材支持部材121は、底部210と、可動側壁部220と、固定側壁部230と、を備える。底部210、可動側壁部220及び固定側壁部230は、X方向から見たときにU字形状となる部分を含む支持部材を構成している。このU字形状の内側は、巻き取られた線材10が収まる収容空間201となる。
【0024】
底部210は、回転軸110の側から線材10を支持する、収容空間201の底面を構成する。具体的には、底部210は、
図2のY方向とほぼ直交するように回転ドラム120に固定された平板部材である。底部210は、回転軸110を中心とする周方向に沿って湾曲していてもよい。
【0025】
可動側壁部220及び固定側壁部230は、線材10(収容空間201)を挟む一対の壁部を構成する。具体的には、可動側壁部220は、回転軸110を中心とする円と平行に設けられた平板部材である。また、可動側壁部220は、
図2のX方向の回転軸131を中心として回転可能である。可動側壁部220の回転による変位については後述する(例えば
図5参照)。
【0026】
固定側壁部230は、回転軸110を中心とする円と平行に、可動側壁部220とともに収容空間201を挟むように設けられた平板部材である。
【0027】
幅L1は、可動側壁部220と固定側壁部230の間の間隔、すなわち
図2のZ方向における収容空間201の幅である。一例としては幅L1を200mmとすることができるが、幅L1はこれに限らず任意に設定することができる。
【0028】
可動側壁部220と固定側壁部230により、
図2のZ方向に線材10の束を挟むことで、線材巻き取り装置100に巻き取られた線材10が方向に移動して線材支持部材121から外れることを抑制することができる。
【0029】
図2に示す例では、底部210は、Z方向において、固定側壁部230の位置から、可動側壁部220とは反対側に突出しており、その底部210の突出した部分にはスタンド部250が設けられている。
【0030】
スペーサ240は、スタンド部250に対して、回転軸251を中心として回転可能に設けられている。回転軸251は、
図2のX方向の軸、すなわち、回転軸110を中心とする円の、スペーサ240の位置における接線と平行な方向の軸である。
【0031】
図2に示す状態においては、スペーサ240は、回転ドラム120及び線材支持部材121~128からなる回転体の外周上の第1の位置にある。この状態から、回転軸251を中心としてスペーサ240を回転させると、スペーサ240は、
図3に示すように、回転ドラム120及び線材支持部材121~128からなる回転体の外周上から外れた第2の位置に変位する。
【0032】
例えば、スペーサ240は、スタンド部250に対して回転軸251の位置でボルトにより固定されている。そして、このボルトにはレバーを取り付け可能であり、レバーを用いた操作でボルトを回転させることにより、回転軸251を中心としてスペーサ240を回転させることができる。ただし、スペーサ240の回転は、レバー等を用いた手形ではなく、図示しないアクチュエータにより得られる動力により行われてもよい。
【0033】
スペーサ240は、
図3に示す第2の位置にあるときに底部210に当接する底面241と、
図3に示す第2の位置にあるときに線材10を支持するための上面242と、を有する。また、底面241及び上面242は、スペーサ240が
図3に示す第2の位置にあるときに、底面241に対して平行となるように形成されている。一例としては幅L2を100mmとすることができるが、幅L2はこれに限らず任意に設定することができる。
【0034】
スペーサ240が
図2に示す第1の位置にある状態で回転ドラム120を回転させると、線材10は、スペーサ240を介さずに、すなわち底部210によって支持されながら巻き取られるため、線材10の巻き径が比較的小さくなる。
【0035】
スペーサ240が
図3に示す第2の位置にあるときに、上面242は、底部210よりも幅L2だけ回転軸110から遠い位置で、Y方向とほぼ直交する面となる。
【0036】
そして、この状態(
図3の状態)で回転ドラム120を回転させると、線材10は、スペーサ240を介して、すなわち底部210よりも幅L2だけ回転軸110から遠い上面242によって支持されながら巻き取られるため、線材10の巻き径が
図2に示した状態よりも大きくなる。
【0037】
このように、スペーサ240が
図2に示す第1の位置にあるときは、スペーサ240を介さずに線材10が巻き取られることにより、線材10が第1の径で巻き取られる。一方、スペーサ240が
図3に示す第2の位置にあるときは、スペーサ240を介して線材10が巻き取られることにより、線材10が第1の径より大きい第2の径で巻き取られる。
【0038】
このため、線材10を巻き取る前にスペーサ240の位置を第1の位置及び第2の位置のいずれにしておくかによって、巻き取られた線材10の巻き径を、第1の径及び第2の径のいずれかに切り替えることができる。また、スペーサ240の位置は、例えば上記のようにレバー等を用いることによって容易に切り替えることができる。
【0039】
(
図3に示した線材支持部材121及びスペーサ240の上面図)
図4は、
図3に示した線材支持部材121及びスペーサ240の一例を示す上面図である。
図4においては、
図3に示した線材支持部材121及びスペーサ240を、
図3のY方向からみた様子を示している。
【0040】
図4に示すように、線材支持部材121には、
図2,
図3に示したスペーサ240に加えてスペーサ240aが設けられてもよい。スペーサ240aは、スペーサ240と同様の形状であり、
図4のX方向において、固定側壁部230からみてスペーサ240とは反対側の位置に設けられている。
【0041】
また、スペーサ240aは、スペーサ240と同様に、スタンド部250の回転軸251を中心に回転可能である。また、スペーサ240aにおける回転軸251とは反対側の端部と、スペーサ240における回転軸251とは反対側の端部とは、棒状部材401によって互いに固定されている。したがって、スペーサ240aは、スペーサ240の回転にともなって回転する。
【0042】
そして、スペーサ240が
図2に示した第1の位置に変位すると、スペーサ240aも線材支持部材121から離れた位置に変位し、線材10はスペーサ240,240aを介さずに巻き取られる。スペーサ240が
図3に示した第2の位置に変位すると、スペーサ240aも変位し、スペーサ240,240aによって固定側壁部230を挟む状態になり、線材10はスペーサ240,240aを介して巻き取られる。
【0043】
図3に示したように、線材支持部材121に対して一対のスペーサ240,240aを設けることにより、スペーサ240,240aを介して線材10を巻き取る際に、線材支持部材121の位置で、スペーサ240,240aの2箇所で線材10を支持することができるため、線材10をより円に近い形状で巻き取ることができる。
【0044】
また、線材支持部材(例えば線材支持部材121~128)やスペーサ(例えばスペーサ240,240a)は、回転ドラム120の外周に沿って設けられるため、設けられる線材支持部材及びスペーサを設けるスペースは限られている。
【0045】
これに対して、隣り合う一対のスペーサ(例えばスペーサ240,240a)が、回転軸110を中心とする周方向において線材支持部材(例えば線材支持部材121~128)を挟む位置に設けられていることにより、限られたスペースに多くの線材支持部材及びスペーサを設けることが可能になる。このため、線材10をより円に近い形状で巻き取ることができるとともに、巻き取り中に線材10が線材巻き取り装置100から外れないように線材10を確実に支持することができる。
【0046】
また、スペーサ240,240aを、棒状部材401によって互いに固定することで、スペーサ240を変位させる操作(例えば上記のレバーによる操作)によってスペーサ240aも変位させることができるため、線材巻き取り装置100による線材10の巻き径の切り替えに要する操作量を低減することができる。
【0047】
(各線材支持部材へのスペーサの取り付け)
線材支持部材121に設けられるスペーサ240,240aについて説明したが、線材支持部材122~128のそれぞれにも、スペーサ240,240aと同様のスペーサが設けられる。
【0048】
一例として、各スペーサの位置を第1の位置にした場合、すなわちスペーサを介さずに線材10を巻き取る場合の、巻き取られた線材10の束の内径が1600mmであるとする。また、上記の幅L2が100mmであるとする。
【0049】
この場合に、各スペーサの位置を第2の位置にすると、線材10は各スペーサを介して巻き取られ、巻き取られた線材10の束の内径は1600+100×2=1800mmとなる。したがって、各スペーサの位置を第1の位置にした状態と、各スペーサの位置を第2の位置にした状態と、を切り替えることで、巻き取られた線材10の束の内径を1600mm及び1800mmに切り替えることができる。
【0050】
ただし、線材支持部材121~128の全てにスペーサ240,240aと同様のスペーサを設けなくてもよい。例えば、線材支持部材128に上記の先端固定部を設けた結果、スペーサ240,240aと同様のスペーサを線材支持部材128に設けることが困難な場合は、線材支持部材128にはスペーサを設けなくてもよい。
【0051】
この場合においても、大きな巻き径で線材10を巻く場合、線材支持部材121~127のスペーサによって線材10を支持することにより、線材支持部材128においては線材10を支持しなくても、線材10を円に近い形状で巻き取ることができる。
【0052】
(可動側壁部220の変位)
図5は、可動側壁部220の変位の一例を示す図である。例えば
図2に示した状態において、線材10を巻き取り終わった後に、可動側壁部220を、回転軸131を中心に回転させる。具体的には、可動側壁部220が、固定側壁部230とともに線材10を挟む第3の位置(
図2に示した位置)から、線材10を挟まない第4の位置(
図5に示す位置)へ変位するように可動側壁部220を回転させる。可動側壁部220の回転は、スペーサ240の回転と同様にレバーを取り付けて行ってもよいし、図示しないアクチュエータにより得られる動力により行われてもよい。
【0053】
可動側壁部220が
図5に示す第4の位置にあるときは、回転ドラム120に巻き取られた線材10を、回転軸110と平行な方向(
図5の左方向)に移動させて回転ドラム120から抜き取ることが可能である。これにより、コイル状に巻かれた線材10が、線材巻き取り装置100から分離した状態で得られるとともに、線材巻き取り装置100は新たな線材の巻き取りを開始することができる。
【0054】
図2に示した状態において可動側壁部220を第4の位置に変位させて線材10を抜き取る場合について説明したが、
図3に示した状態においても同様に、可動側壁部220を第4の位置に変位させることにより、線材10を抜き取ることができる。
【0055】
(線材巻き取り装置100を適用した線材処理システム)
図6は、線材巻き取り装置100を適用した線材処理システムの一例を示す図である。
図6に示す線材処理システム600は、線材10に対して線材処理を行う処理ラインである。線材10に対する線材処理には、熱処理及び成形の少なくともいずれかが含まれる。
【0056】
熱処理は、例えば、焼入れや焼戻しなどの熱処理である。この熱処理は、例えば、線材10に高周波の電磁波による電磁誘導を起こし、線材10の表面を加熱させて焼入れを行う高周波焼入れ等の熱処理である。ただし、熱処理は、これに限らず、電磁誘導以外の方法による熱処理であってもよい。
【0057】
成形は、例えば線材10を伸ばして線材10の径を小さくする伸線である。ただし、成形は、これに限らず、例えば、線材10上でインデントロールを転動させることにより異形断面を形成するインデント加工や、他の各種の線材10に対する加工であってもよい。
【0058】
図6に示すように、線材処理システム600は、ドラム611と、繰り出し装置612と、線材処理部620と、線材巻き取り装置100と、を含む。ドラム611には、線材処理部620による線材処理を行う前の線材10がコイル状に巻かれている。
【0059】
繰り出し装置612は、ドラム611に巻かれた線材10を、線材10の先端から順次解きながら繰り出す。繰り出し装置612から繰り出された線材10は、図示しない送り装置により、線材巻き取り装置100の方(
図6の右方向)へ一定の速度で送られる。この送り装置は、少なくとも、線材処理部620と線材巻き取り装置100との間に設けられ、線材10を引っ張ることにより線材10を送る。
【0060】
線材処理部620は、繰り出し装置612によって繰り出されて線材処理部620を通る線材10に対して、上記の線材処理を行う。線材巻き取り装置100は、線材処理部620によって線材処理が行われた線材10を巻き取る。これにより、線材処理部620による線材処理を行った線材10を、再度コイル状に巻くことができる。
【0061】
図6においてはドラム611に巻かれた線材10を繰り出し装置612が順次解きながら繰り出す構成について説明したが、線材処理システム600はこのような構成に限らず、線材処理部620により線材処理される前の線材はドラム611に巻かれていなくてもよい。
【0062】
このように、線材巻き取り装置100は、回転体(例えば回転ドラム120及び線材支持部材121~128からなる回転体)に、その回転体における第1の位置及び第2の位置に変位可能なスペーサ(例えばスペーサ240)が設けられている。
【0063】
そして、スペーサが第1の位置にあるときは、スペーサを介さずに線材が回転体に巻き取られることにより、線材が第1の径で巻き取られる(例えば
図2参照)。また、スペーサが第2の位置にあるときは、スペーサを介して線材が回転体に巻き取られることにより、線材が第1の径より大きい第2の径で巻き取られる(例えば
図3参照)。
【0064】
これにより、線材を巻き取る前に、スペーサを第1の位置及び第2の位置のいずれかに変位させることにより、線材を巻き取る際の巻き径を簡単に切り替えることができる。
【0065】
例えば、回転体に対してスペーサを着脱することによって巻き径を切り替える構成と比べて、線材巻き取り装置100によれば、巻き径の切り替えに要する時間を短縮することができる。
【0066】
また、回転体に対してスペーサを着脱することによって巻き径を切り替える方法では、外したスペーサの置き場を確保する必要があるが、線材巻き取り装置100によればそのような置き場を確保する必要がないため、作業に要する場所を縮小することができる。
【0067】
(線材巻き取り装置100の変形例)
回転ドラム120の形状が円柱形である構成について説明したが、回転ドラム120の形状は、回転軸110を中心として回転し、線材支持部材121~128を
図1に示す位置で支持可能な形状であれば、円柱形には限らない。
【0068】
また、回転ドラム120に線材支持部材121~128を設ける構成について説明したが、このような構成に限らない。例えば、回転ドラム120に対して、線材支持部材121~128のうち線材支持部材121,123,125,127のみを設ける構成としてもよい。すなわち、複数の線材支持部材が、回転軸110を中心として点対称の関係になるように設けられればよい。
【0069】
以上、説明したとおり、本明細書に開示された線材巻き取り装置は、回転により線材を巻き取る回転体と、前記回転体に設けられ、前記回転体における第1の位置及び第2の位置に変位可能なスペーサと、を備え、前記スペーサが前記第1の位置にあるときが、前記スペーサを介さずに前記線材が前記回転体に巻き取られることにより、前記線材が第1の径で巻き取られ、前記スペーサが前記第2の位置にあるときが、前記スペーサを介して前記線材が前記回転体に巻き取られることにより、前記線材が前記第1の径より大きい第2の径で巻き取られる。
【0070】
また、本明細書に開示された線材巻き取り装置は、前記スペーサが、前記回転体の回転軸を中心とする周方向に沿って複数設けられている。
【0071】
また、本明細書に開示された線材巻き取り装置は、前記スペーサが、前記回転体に固定された、前記回転体の回転軸を中心とする円の接線と平行な方向の軸を中心に回転することにより、前記第1の位置又は前記第2の位置に変位する。
【0072】
また、本明細書に開示された線材巻き取り装置は、前記スペーサに、レバーを取り付け可能であり、前記スペーサに取り付けた前記レバーの操作により前記スペーサが回転する。
【0073】
また、本明細書に開示された線材巻き取り装置は、前記回転体が、巻き取った前記線材を、前記回転体の回転軸と平行な方向に挟んで支持するU字形状を含む支持部材を備え、前記スペーサが前記第1の位置にあるときが、前記線材が前記スペーサを介さず前記支持部材の内側に巻き取られ、前記スペーサが前記第2の位置にあるときが、前記線材が前記スペーサを介して前記支持部材の内側に巻き取られる。
【0074】
また、本明細書に開示されたことが可能な線材巻き取り装置は、前記U字形状を含む支持部材が、前記回転体の回転軸と平行な方向に前記線材を挟む一対の壁部と、前記回転体の回転軸の側から前記線材を支持する底部と、を含み、前記一対の壁部の少なくともいずれかが、前記線材を挟む第3の位置から、前記第3の位置と異なる第4の位置へ変位可能であり、前記一対の壁部の少なくともいずれかが前記第4の位置にあるときが、前記回転体に巻き取られた前記線材を、前記回転体の回転軸と平行な方向に移動させて前記回転体から抜き取る。
【0075】
また、本明細書に開示された線材巻き取り装置は、前記スペーサが、前記回転体の回転軸を中心とする周方向に沿って複数設けられ、隣り合う一対の前記スペーサは、前記回転体の回転軸を中心とする周方向において前記支持部材を挟む位置に設けられている。
【0076】
また、本明細書に開示された線材巻き取り装置は、前記一対のスペーサが、互いに固定されている。
【0077】
また、本明細書に開示された線材処理システムは、請求項1から8のいずれか1項記載の線材巻き取り装置と、線材に、熱処理及び成形の少なくともいずれかを含む線材処理を行う線材処理部と、を含み、前記回転体が、前記線材処理部によって前記線材処理が行われた前記線材を巻き取る。
【符号の説明】
【0078】
10 線材
100 線材巻き取り装置
110,131,251 回転軸
120 回転ドラム
121~128 線材支持部材
201 収容空間
210 底部
220 可動側壁部
230 固定側壁部
240,240a スペーサ
241 底面
242 上面
250 スタンド部
401 棒状部材
600 線材処理システム
611 ドラム
612 繰り出し装置
620 線材処理部