(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-01
(45)【発行日】2023-02-09
(54)【発明の名称】ろう付け材、ろう付け部材、および、熱交換器
(51)【国際特許分類】
B23K 35/363 20060101AFI20230202BHJP
【FI】
B23K35/363 H
(21)【出願番号】P 2019525689
(86)(22)【出願日】2018-06-21
(86)【国際出願番号】 JP2018023654
(87)【国際公開番号】W WO2018235906
(87)【国際公開日】2018-12-27
【審査請求日】2021-03-03
(31)【優先権主張番号】P 2017122572
(32)【優先日】2017-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】312016056
【氏名又は名称】ハリマ化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】木賀 大悟
(72)【発明者】
【氏名】津村 登紀
【審査官】川口 由紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-083570(JP,A)
【文献】特開2014-237145(JP,A)
【文献】特開2014-097514(JP,A)
【文献】特開2009-274087(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104607826(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 35/363
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウムまたはアルミニウム合金を、ろう付けするためのろう付け材であって、
フッ化物系フラックスと、
バインダと、
ゲル化剤と、
溶剤とを含むろう付け成分を含み、
前記バインダは、(メタ)アクリル樹脂および/またはブチルゴムを含み、
前記ろう付け材が、25℃で固形であり、
前記溶剤は、前記バインダの種類の種類によって、選択され、
前記(メタ)アクリル樹脂である場合には、前記溶剤は、1価アルコール、多価アルコール、ポリアルキレングリコールアルキルエーテルアセテートからなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記ブチルゴムである場合には、前記溶剤は、炭化水素系溶剤を含み、
前記バインダの配合割合は、前記ろう付け成分の総量に対して、1質量%以上30質量%以下であることを特徴とする、ろう付け材。
【請求項2】
前記バインダが、(メタ)アクリル樹脂であることを特徴とする、請求項1に記載のろう付け材。
【請求項3】
前記ポリアルキレングリコールアルキルエーテルアセテートのアルキル基の炭素数が、
2つ以上であることを特徴とする、請求項1に記載のろう付け材。
【請求項4】
前記溶剤が、多価アルコールを含むことを特徴とする、請求項1に記載のろう付け材。
【請求項5】
前記多価アルコールは、25℃で固形であることを特徴とする、請求項3に記載のろう付け材。
【請求項6】
前記バインダが、ブチルゴムであることを特徴とする、請求項1に記載のろう付け材。
【請求項7】
前記炭化水素系溶剤は、ノルマルパラフィン系溶剤、イソパラフィン系溶剤、および、ナフテン系溶剤からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1に記載のろう付け材。
【請求項8】
前記ろう付け成分は、さらに、ワックスを含むことを特徴とする、請求項1に記載のろう付け材。
【請求項9】
さらに、ろう材粉末を含むことを特徴とする、請求項1に記載のろう付け材。
【請求項10】
アルミニウムまたはアルミニウム合金と、
請求項1に記載のろう付け材を、前記アルミニウムまたは前記アルミニウム合金に塗布してなる塗布膜とを備えることを特徴とする、ろう付け部材。
【請求項11】
請求項10に記載のろう付け部材がろう付けされてなることを特徴とする、熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ろう付け材、ろう付け部材、および、熱交換器に関し、詳しくは、アルミニウムまたはアルミニウム合金を、ろう付けするためのろう付け材、それを塗布してなる塗布膜を備えるろう付け部材、そのろう付け部材を備える熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属部材を溶接する場合において、溶接される金属部材の酸化物を除去するために、フラックスが用いられる。
【0003】
通常、フラックスは液状であるため、フラックスを溶接部位に塗布すると、フラックスが流動する場合がある。そのため、フラックスを、固形またはペースト状にすることで、溶接部位に確実に塗布することが検討されている。
【0004】
このようなフラックスとしては、フッ化アルミン酸化合物と、ブチラール樹脂と溶剤とゲル化剤とを含む固形フラックスが提案されている(例えば、下記特許文献1参照。)
また、フッ化アルミン酸とポリビニルブチラール樹脂と有機溶媒とゲル化剤とを含むペースト状フラックスが提案されている(例えば、下記特許文献2参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-313535号公報
【文献】特開2011-011254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかるに、特許文献1の固形フラックス、および、特許文献2のペースト状フラックスを、ろう付け、とりわけ、アルミニウムまたはアルミニウム合金のろう付けに用いると、ろう付け性および密着性に劣るという不具合がある。
【0007】
本発明は、アルミニウムまたはアルミニウム合金のろう付けにおいて、ろう付け性および密着性に優れ、さらに、連続的かつ安定的に塗布(描画)ができるろう付け材、そのろう付け材を塗布してなる塗布膜を備えるろう付け部材、および、そのろう付け部材を備える熱交換器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明[1]は、アルミニウムまたはアルミニウム合金を、ろう付けするためのろう付け材であって、フッ化物系フラックスと、バインダと、ゲル化剤と、溶剤とを含み、前記バインダは、(メタ)アクリル樹脂および/またはブチルゴムを含み、25℃で固形である、ろう付け材である。
【0009】
本発明[2]は、前記溶剤は、1価アルコール、多価アルコール、ポリアルキレングリコールアルキルエーテルアセテート、および、炭化水素系溶剤からなる群から選択される少なくとも1種である、上記[1]に記載のろう付け材を含んでいる。
【0010】
本発明[3]は、前記バインダが、(メタ)アクリル樹脂であり、前記溶剤は、1価アルコール、多価アルコール、ポリアルキレングリコールアルキルエーテルアセテートからなる群から選択される少なくとも1種である、上記[1]または[2]に記載のろう付け材を含んでいる。
【0011】
本発明[4]は、前記ポリアルキレングリコールアルキルエーテルアセテートのアルキル基の炭素数が、2つ以上である、上記[3]に記載のろう付け材を含んでいる。
【0012】
本発明[5]は、前記溶剤が、多価アルコールを含む、上記[3]~[4]のいずれか一項に記載のろう付け材を含んでいる。
【0013】
本発明[6]は、前記多価アルコールは、25℃で固形である、上記[5]に記載のろう付け材を含んでいる。
【0014】
本発明[7]は、前記バインダが、ブチルゴムであり、前記溶剤が、炭化水素系溶剤を含む、上記[1]または[2]に記載のろう付け材を含んでいる。
【0015】
本発明[8]は、前記炭化水素系溶剤は、ノルマルパラフィン系溶剤、イソパラフィン系溶剤、および、ナフテン系溶剤からなる群から選択される少なくとも1種である、上記[7]に記載のろう付け材を含んでいる。
【0016】
本発明[9]は、さらに、ワックスを含む、上記[1]~[8]のいずれか一項に記載のろう付け材を含んでいる。
【0017】
本発明[10]は、さらに、ろう材粉末を含む、上記[1]~[9]のいずれか一項に記載のろう付け材を含んでいる。
【0018】
本発明[11]は、アルミニウムまたはアルミニウム合金と、上記[1]~[10]のいずれか一項に記載のろう付け材を、前記アルミニウムまたは前記アルミニウム合金に塗布してなる塗布膜とを備える、ろう付け部材である。
【0019】
本発明[12]は、上記[11]に記載のろう付け部材を備える、熱交換器である。
【発明の効果】
【0020】
本発明のろう付け材は、バインダとして、(メタ)アクリル樹脂および/またはブチルゴムを含むため、アルミニウムまたはアルミニウム合金のろう付けにおいて、ろう付け性および密着性に優れる。
【0021】
また、本発明のろう付け材は、25℃で固形であるため、アルミニウムまたはアルミニウム合金のろう付けにおいて、連続的かつ安定的に塗布(描画)できる。
【0022】
本発明のろう付け部材は、本発明のろう付け材を塗布してなる塗布膜を備えるため、優れたろう付け性および密着性を備えることができる。
【0023】
本発明の熱交換器は、本発明のろう付け部材を備えるので、優れたろう付け性および密着性を備えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、本発明のろう付け材を、アルミニウムまたはアルミニウム合金に、連続的に塗布する方法の一実施形態を示す工程図であり、
図1(A)が、アルミニウム部材に、ろう付け材を塗布する工程、
図1(B)が、アルミニウム部材に、ろう付け材を、連続的に塗布する工程を示す。
【
図2】
図2は、本発明のろう付け部材の一例としての熱交換器用チューブの一実施形態を示す概略斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2に示す熱交換器用チューブを備える熱交換器の一実施形態を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明のろう付け材は、アルミニウムまたはアルミニウム合金を、ろう付けするためのろう付け材であって、フッ化物系フラックスと、バインダと、ゲル化剤と、溶剤とを含む。
【0026】
フッ化物系フラックスとしては、例えば、Cs-Al-F系フラックス、K-Al-F系フラックスなどが挙げられる。
【0027】
Cs-Al-F系フラックスは、セシウム(Cs)、アルミニウム(Al)およびフッ素(F)を含有するフッ化物系フラックスであって、例えば、フルオロアルミン酸セシウム(非反応性セシウム系フラックス)が挙げられる。具体的には、CsAlF4、Cs2AlF5、Cs3AlF6などが挙げられる。
【0028】
K-Al-F系フラックスは、カリウム(K)、アルミニウム(Al)およびフッ素(F)を含有するフッ化物系フラックスであって、例えば、フルオロアルミン酸カリウムなどが挙げられる。具体的には、KAlF4、K2AlF5、K3AlF6などが挙げられる。
【0029】
フッ化物系フラックスとしては、好ましくは、K-Al-F系フラックスが挙げられる。
【0030】
これらフッ化物系フラックスは、単独使用または2種以上併用することができる。
【0031】
フッ化物系フラックスの配合割合は、フッ化物系フラックス、バインダ、ゲル化剤、溶剤、および、必要により配合されるワックス(後述)(以下、フッ化物系フラックス、バインダ、ゲル化剤、溶剤、および、必要により配合されるワックス(後述)をまとめて、「ろう付け成分」とする。)の総量に対して、例えば、20質量%以上、好ましくは、40質量%以上であり、また、例えば、60質量%以下である。
【0032】
バインダは、ろう付け材を、塗布面に均一に付着させるための成分であって、(メタ)アクリル樹脂および/またはブチルゴムを含む。
【0033】
(メタ)アクリル樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステルのホモポリマー、(メタ)アクリル酸エステルのコポリマー、(メタ)アクリル酸エステル類と疎水性モノマーおよび/または親水性モノマーとのコポリマーなどが挙げられる。なお、(メタ)アクリルとは、「アクリルおよび/またはメタクリル」と定義される。
【0034】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリルなどの(メタ)アクリル酸C1~C18アルキルエステルなどが挙げられ、好ましくは、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸イソブチルなどの(メタ)アクリル酸C1~C4アルキルエステル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルなどの(メタ)アクリル酸C6~C18アルキルエステル、より好ましくは、メタクリル酸メチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシルが挙げられる。
【0035】
これら(メタ)アクリル酸エステルは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0036】
疎水性モノマーとしては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、p-クロルスチレンなどのスチレン類などが挙げられる。
【0037】
これら疎水性モノマーは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0038】
親水性モノマーとしては、例えば、カルボキシル基含有モノマー、スルホン酸基含有モノマー、水酸基含有モノマーなどが挙げられる。
【0039】
カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、(無水)マレイン酸、フマル酸、(無水)シトラコン酸、あるいは、これらの塩などの不飽和カルボン酸類などが挙げられ、好ましくは、(メタ)アクリル酸、より好ましくは、メタクリル酸が挙げられる。
【0040】
スルホン酸基含有モノマーとしては、例えば、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、イソプレンスルホン酸、あるいは、これらの塩などの不飽和スルホン酸類などが挙げられる。
【0041】
水酸基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコールエステル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールエステル、エステル部分にアルキレンオキシドが付加した(メタ)アクリル酸エステル(例えば、CH2=C(CH3)COO(C2H4O)nH(nは、例えば2~12の整数)など)などの水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられ、好ましくは、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、より好ましくは、メタクリル酸2-ヒドロキシエチルが挙げられる。
【0042】
親水性モノマーとしては、好ましくは、カルボキシル基含有モノマー、水酸基含有モノマーが挙げられる。
【0043】
これら親水性モノマーは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0044】
(メタ)アクリル樹脂として、好ましくは、(メタ)アクリル酸エステルと親水性モノマーとのコポリマーが挙げられ、より好ましくは、(メタ)アクリル酸C1~C4アルキルエステルとカルボキシル基含有モノマーとのコポリマー、(メタ)アクリル酸C6~C18アルキルエステルと水酸基含有モノマーとのコポリマー、さらに好ましくは、メタクリル酸メチルと、メタクリル酸イソブチルと、メタクリル酸とのコポリマー、メタクリル酸2-エチルヘキシルと、メタクリル酸2-ヒドロキシエチルとのコポリマーが挙げられる。
【0045】
(メタ)アクリル酸エステルと親水性モノマーとのコポリマーが用いられる場合において、(メタ)アクリル樹脂を構成する全モノマーに占める親水性モノマーの含有率は、例えば、モノマー総量に対して、20質量%以下である。
【0046】
このような(メタ)アクリル樹脂は、特に制限されないが、例えば、塊状重合、溶液重合、懸濁重合などの公知の重合法により、上記のモノマーをラジカル重合させることにより得られる。好ましくは、(メタ)アクリル樹脂は、溶液重合により得られる。
【0047】
溶液重合では、上記したモノマー成分とともに、過酸化ベンゾイル、t-ブチルパーオキシネオデカノエートなどの重合開始剤などを、溶媒(後述する溶剤と同じ。)中に配合して重合する。なお、上記したモノマー成分は、一括、あるいは、分割して配合することができる。
【0048】
(メタ)アクリル樹脂の、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算の重量平均分子量は、例えば、1万以上、好ましくは、5万以上であり、例えば、60万以下、好ましくは、50万以下である。
【0049】
なお、(メタ)アクリル樹脂の重量平均分子量は、重合開始剤の配合量などを調整することにより、適宜、設定することができる。
【0050】
ブチルゴムとしては、公知のブチルゴム、具体的には、イソブチレンとイソプレンとのコポリマーが挙げられる。
【0051】
このようなブチルゴムは、特に制限されず、公知の方法により得ることができる。
【0052】
ブチルゴムの、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算の重量平均分子量は、例えば、10万以上、好ましくは,100万以上であり、例えば、500万以下、好ましくは、300万以下である。
【0053】
ブチルゴムの重量平均分子量が上記下限以上であれば、ろう付け材のアルミニウムまたはアルミニウム合金に対する優れた密着性を確保することができる。
【0054】
また、ブチルゴムの重量平均分子量が上記上限以下であれば、アルミニウムまたはアルミニウム合金のろう付けにおいて、優れたろう付け性を確保することができる。
【0055】
また、このようなブチルゴムは、市販品を用いることができ、具体的には、オパノールN50(BASF社製、重量平均分子量565,000)、オパノールN80(BASF社製、重量平均分子量1,050,000)、オパノールN100(BASF社製、重量平均分子量1,550,000)、オパノールN150(BASF社製、重量平均分子量3,050,000)などが挙げられる。
【0056】
これらブチルゴムは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0057】
バインダの配合割合は、フッ化物系フラックス100質量部に対して、例えば、3質量部以上であり、また、例えば、20質量部以下である。
【0058】
バインダの配合割合は、ろう付け成分の総量に対して、例えば、1質量%以上、好ましくは、3質量%以上であり、また、例えば、30質量%以下、好ましくは、10質量%以下である。
【0059】
より具体的には、バインダが(メタ)アクリル樹脂である場合には、(メタ)アクリル樹脂の配合割合は、フッ化物系フラックス100質量部に対して、例えば、3質量部以上、好ましくは、5質量部以上であり、また、例えば、20質量部以下である。
【0060】
また、(メタ)アクリル樹脂の配合割合は、ろう付け成分の総量に対して、例えば、1質量%以上、好ましくは、3質量%以上であり、また、例えば、30質量%以下、好ましくは、10質量%以下である。
【0061】
(メタ)アクリル樹脂の配合割合が上記範囲であれば、ろう付け材のアルミニウムまたはアルミニウム合金に対する優れた密着性を確保することができ、優れたろう付け性を確保することができる。
【0062】
また、バインダがブチルゴムである場合には、ブチルゴムの配合割合は、フッ化物系フラックス100質量部に対して、例えば、3質量部以上、好ましくは、5質量部以上であり、また、例えば、20質量部以下である。
【0063】
また、ブチルゴムの配合割合は、ろう付け成分の総量に対して、例えば、1質量%以上、好ましくは、3質量%以上であり、また、例えば、30質量%以下、好ましくは、10質量%以下である。
【0064】
ブチルゴムの配合割合が上記範囲であれば、ろう付け材のアルミニウムまたはアルミニウム合金に対する優れた密着性を得ることができ、優れたろう付け性を確保することができる。
【0065】
バインダは、好ましくは、(メタ)アクリル樹脂またはブチルゴムのうちのいずれか一方のみを含む。
【0066】
ゲル化剤は、溶剤を固めることにより、ろう付け材を固形化するための成分であって、特に制限されず、例えば、12-ヒドロキシステアリン酸などのヒドロキシル基含有脂肪酸、例えば、モノベンジリデンソルビトール、ジベンジリデンソルビトール、トリベンジリデンソルビトールなどのソルビトールのベンジリデン誘導体、例えば、ジブチルラウリルグルタミドなどのアミノ酸系油などが挙げられる。
【0067】
ゲル化剤として、バインダが(メタ)アクリル樹脂である場合には、好ましくは、ソルビトールのベンジリデン誘導体、より好ましくは、ジベンジリデンソルビトールが挙げられる。
【0068】
また、バインダがブチルゴムである場合には、ゲル化剤として、好ましくは、ヒドロキシル基含有脂肪酸、アミノ酸系油、より好ましくは、12-ヒドロキシステアリン酸、ジブチルラウリルグルタミド、さらに好ましくは、12-ヒドロキシステアリン酸およびジブチルラウリルグルタミドの併用が挙げられる。
【0069】
これらゲル化剤は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0070】
ゲル化剤の配合割合は、フッ化物系フラックス100質量部に対して、例えば、1質量部以上、好ましくは、5質量部以上であり、また、例えば、30質量部以下である。
【0071】
より具体的には、ゲル化剤の配合割合は、バインダが(メタ)アクリル樹脂である場合には、フッ化物系フラックス100質量部に対して、例えば、1質量部以上、好ましくは、5質量部以上であり、また、例えば、15質量部以下、好ましくは、8質量部以下であり、バインダがブチルゴムである場合には、フッ化物系フラックス100質量部に対して、例えば、2質量部以上、好ましくは、10質量部以上であり、また、例えば、30質量部以下、好ましくは、16質量部以下である。
【0072】
ゲル化剤の配合割合は、ろう付け成分の総量に対して、例えば、1質量%以上であり、また、例えば、20質量%以下である。
【0073】
より具体的には、ゲル化剤の配合割合は、バインダが(メタ)アクリル樹脂である場合には、ろう付け成分の総量に対して、例えば、1質量%以上、好ましくは、3質量%以上であり、また、例えば、10質量%以下、好ましくは、5質量%以下であり、バインダがブチルゴムである場合には、ろう付け成分の総量に対して、例えば、2質量%以上、好ましくは、6質量%以上であり、また、例えば、20質量%以下、好ましくは、10質量%以下である。
【0074】
ゲル化剤の配合割合が、上記下限以上であれば、ろう付け材を、固形化することができる。
【0075】
ゲル化剤の配合割合が、上記上限以下であれば、ろう付け材が、変色することを抑制できる。
【0076】
溶剤としては、例えば、1価アルコール、多価アルコール、ポリアルキレングリコールアルキルエーテルアセテート、炭化水素系溶剤などが挙げられる。
【0077】
1価アルコールとして、例えば、アルキルアルコール、モノエーテルアルコール、ポリエーテルアルコールなどが挙げられる。
【0078】
アルキルアルコールとして、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコールなどの炭素数1以上4以下のアルキルアルコール、例えば、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、s-ブチルアルコール、t-ブチルアルコール、n-ペンタノール、n-ヘキサノール、n-ヘプタノール、n-オクタノール、n-ノナノール、n-デカノール、n-ウンデカノール、n-ドデカノール、n-トリデカノール、n-テトラデカノール、n-ペンタデカノールなどの炭素数5以上15以下のアルキルアルコール、例えば、n-ヘキサデカノール、n-ヘプタデカノール、n-オクタデカノール、n-ノナデカノール、n-イコサノール、2―オクチルドデカン-1-オールなどの炭素数16以上のアルキルアルコールなどが挙げられる。
【0079】
モノエーテルアルコールとして、例えば、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールメチルエーテル(メチルカルビトール)、ジエチレングリコールエチルエーテル(エチルカルビトール)、ジエチレングリコールブチルエーテル(ブチルカルビトール)、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルなどが挙げられる。
【0080】
ポリエーテルアルコールは、下記式(1)で示される。
【0081】
R1O-(CnH2nO)m-H (1)
(上記式(1)中、R1は、アルキル基を示し、nは、2~8の整数を示し、mは、1~4の整数を示す)
上記式(1)中、R1で示されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、イソブチル基などの炭素数1~4のアルキル基などが挙げられる。
【0082】
上記式(1)中、nで示される整数としては、2~8、好ましくは、2~4である。
【0083】
上記式(1)中、mで示される整数としては、1~4、好ましくは、2~3である。
【0084】
ポリエーテルアルコールとして、具体的には、例えば、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノエチルエーテル、ポリエチレングリコールモノプロピルエーテル、ポリエチレングリコールモノブチルエーテルなどのポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、例えば、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコールモノエチルエーテル、ポリプロピレングリコールモノプロピルエーテルなどのポリプロピレングリコールモノアルキルエーテルなどのポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルなどが挙げられる。
【0085】
1価アルコールとして、好ましくは、アルキルアルコール、モノエーテルアルコール、より好ましくは、n-ドデカノール、n-ヘキサデカノール、2―オクチルドデカン-1-オール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノールが挙げられる。
【0086】
なお、詳しくは後述するが、1価アルコールは、好ましくは、バインダの種類によって、選択される。
【0087】
多価アルコールは、水酸基を2つ以上含有するアルコールであって、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール(ヘキシレングリコール)、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、グリセリルモノアセテート、グリセリルモノブチレートなどの2価アルコール、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリエチロールエタン、トリメチロールプロパンなどの3価アルコール、例えば、ペンタエリスリトール、ジグリセリンなどの4価アルコール、例えば、トリグリセリンなどの5価アルコール、例えば、ジペンタエリスリトールなどの6価アルコールなどが挙げられる。
【0088】
このような多価アルコールのうち、好ましくは、25℃で固形(固形の定義は後述)である多価アルコールが挙げられる。具体的には、ネオペンチルグリコール、グリセリルモノアセテート、トリメチロールエタン、トリエチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどが挙げられ、好ましくは、ネオペンチルグリコール、ペンタエリスリトールが挙げられる。
【0089】
多価アルコールが、25℃で固形であれば、アルミニウムまたはアルミニウム合金のろう付けにおいて、連続的かつ安定的に塗布(描画)でき、とりわけ、連続塗布性(後述)に優れる。
【0090】
ポリアルキレングリコールアルキルエーテルアセテートは、下記式(2)で示される。
【0091】
【0092】
(上記式(2)中、R1、nおよびmは、上記式(1)のR1、nおよびmと同意義を示す。)
上記式(2)中、R1で示されるアルキル基は、ポリアルキレングリコールアルキルエーテルアセテートのアルキル基であって、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、iso-ペンチル基、sec-ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基などの炭素数1~8のアルキル基が挙げられる。
【0093】
ポリアルキレングリコールアルキルエーテルアセテートのアルキル基の炭素数は、好ましくは、1つ以上、より好ましくは、2つ以上であり、また、例えば、8以下、好ましくは、6以下である。
【0094】
ポリアルキレングリコールアルキルエーテルアセテートのアルキル基の炭素数が、上記の下限以上であれば、アルミニウムまたはアルミニウム合金のろう付けにおいて、連続的かつ安定的に塗布(描画)でき、とりわけ、初期塗布性(後述)に優れる。
【0095】
上記式(2)中、nで示される整数としては、2~8、好ましくは、2~4である。
【0096】
上記式(2)中、mで示される整数としては、1~4、好ましくは、2~3である。
【0097】
ポリアルキレングリコールアルキルエーテルアセテートとして、具体的には、例えば、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ポリエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ポリエチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ポリエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ポリエチレングリコールモノペンチルエーテルアセテート、ポリエチレングリコールモノヘキシルエーテルアセテートなどのポリエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、例えば、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ポリプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ポリプロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテートなどのポリプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテートなどが挙げられる。
【0098】
炭化水素系溶剤としては、例えば、ノルマルパラフィン系溶剤、イソパラフィン系溶剤、および、ナフテン系溶剤などが挙げられる。
【0099】
ノルマルパラフィン系溶剤としては、例えば、n-テトラデカン、n-ヘプタデカン、n-ヘキサデカン、n-ヘプタデカン、n―オクタデカン、n-ノナデカン、n-イコサン、ノルパー13(エクソンモービル社製)、ノルパー15(エクソンモービル社製)などが挙げられる。
【0100】
イソパラフィン系溶剤としては、例えば、アイソパーG(エクソンモービル社製)、アイソパーH(エクソンモービル社製)、アイソパーL(エクソンモービル社製)、アイソパーM(エクソンモービル社製)などが挙げられる。
【0101】
ナフテン系溶剤としては、例えば、エクソールD40(エクソンモービル社製)、エクソールD80(エクソンモービル社製)、エクソールD110(エクソンモービル社製)、エクソールD130(エクソンモービル社製)などが挙げられる。
【0102】
溶剤としては、好ましくは、1価アルコール、多価アルコール、ポリアルキレングリコールアルキルエーテルアセテート、炭化水素系溶剤からなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。
【0103】
溶剤が、1価アルコール、多価アルコール、ポリアルキレングリコールアルキルエーテルアセテート、炭化水素系溶剤からなる群から選択される少なくとも1種であれば、アルミニウムまたはアルミニウム合金のろう付けにおいて、連続的かつ安定的に塗布(描画)できる。
【0104】
1価アルコールは、溶剤の総量に対して、例えば、10質量%以上、好ましくは、20質量%以上であり、また、例えば、100質量%以下、好ましくは、90質量%以下である。
【0105】
多価アルコールは、溶剤の総量に対して、例えば、1質量%以上、好ましくは、3質量%以上であり、また、例えば、100質量%以下、好ましくは、80質量%以下である。
【0106】
ポリアルキレングリコールアルキルエーテルアセテートは、溶剤の総量に対して、例えば、50質量%以上、好ましくは、65質量%以上であり、また、例えば、100質量%以下、好ましくは、90質量%以下である。
【0107】
炭化水素系溶剤は、溶剤の総量に対して、例えば、40質量%以上であり、また、例えば、100質量%以下、好ましくは、90質量%以下である。
【0108】
溶剤の配合割合は、フッ化物系フラックス100質量部に対して、例えば、20質量部以上、好ましくは、40質量部以上、より好ましくは、50質量部以上であり、また、例えば、80質量部以下、好ましくは、70質量部以下である。
【0109】
溶剤の配合割合は、ゲル化剤および溶剤の総量に対して、例えば、5質量%以上であり、また、例えば、95質量%以下である。
【0110】
また、溶剤の配合割合は、ろう付け成分の総量に対して、例えば、10質量%以上であり、また、例えば、60質量%以下、好ましくは、50質量%以下、より好ましくは、40質量%以下である。
【0111】
また、より好ましくは、溶剤は、バインダの種類によって、選択される。
【0112】
以下、バインダが、(メタ)アクリル樹脂である場合について詳述する。
【0113】
バインダが、(メタ)アクリル樹脂である場合には、溶剤としては、好ましくは、1価アルコール、多価アルコール、ポリアルキレングリコールアルキルエーテルアセテートからなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。
【0114】
溶剤が、1価アルコール、多価アルコール、ポリアルキレングリコールアルキルエーテルアセテートからなる群から選択される少なくとも1種であれば、アルミニウムまたはアルミニウム合金のろう付けにおいて、連続的かつ安定的に塗布(描画)できる。
【0115】
溶剤として、より好ましくは、1価アルコールおよびポリアルキレングリコールアルキルエーテルアセテートの併用、多価アルコールおよびポリアルキレングリコールアルキルエーテルアセテートの併用、1価アルコール、多価アルコールおよびポリアルキレングリコールアルキルエーテルアセテートの併用が挙げられる。
【0116】
そして、溶剤は、さらに好ましくは、少なくとも、多価アルコールを含み、上記の併用のうち、具体的には、多価アルコールおよびポリアルキレングリコールアルキルエーテルアセテートの併用、1価アルコール、多価アルコールおよびポリアルキレングリコールアルキルエーテルアセテートの併用が挙げられ、とりわけ好ましくは、1価アルコール、多価アルコールおよびポリアルキレングリコールアルキルエーテルアセテートの併用が挙げられる。
【0117】
溶剤が多価アルコールを含めば、アルミニウムまたはアルミニウム合金のろう付けにおいて、連続的かつ安定的に塗布(描画)でき、とりわけ、連続塗布性(後述)に優れる。
【0118】
また、この場合において、1価アルコールとして、好ましくは、モノエーテルアルコール、より好ましくは、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノールが挙げられる。
【0119】
1価アルコールは、溶剤の総量に対して、例えば、10質量%以上、好ましくは、20質量%以上、より好ましくは、30質量%以上であり、また、例えば、100質量%以下、好ましくは、90質量%以下である。
【0120】
多価アルコールは、溶剤の総量に対して、例えば、1質量%以上、好ましくは、3質量%以上であり、また、例えば、100質量%以下、好ましくは、80質量%以下である。
【0121】
ポリアルキレングリコールアルキルエーテルアセテートは、溶剤の総量に対して、例えば、50質量%以上、好ましくは、65質量%以上であり、また、例えば、100質量%以下、好ましくは、90質量%以下である。
【0122】
1価アルコールおよびポリアルキレングリコールアルキルエーテルアセテートを併用する場合には、1価アルコールおよびポリアルキレングリコールアルキルエーテルアセテートの総量に対して、1価アルコールの配合割合は、例えば、20質量%以上、より好ましくは、30質量%以上であり、また、例えば、40質量%以下であり、また、ポリアルキレングリコールアルキルエーテルアセテートの配合割合は、例えば、60%質量以上であり、また、例えば、80%質量以下、好ましくは、70%質量以下である。
【0123】
多価アルコールおよびポリアルキレングリコールアルキルエーテルアセテートを併用する場合には、多価アルコールおよびポリアルキレングリコールアルキルエーテルアセテートの総量に対して、多価アルコールの配合割合は、例えば、1質量%以上、より好ましくは、3質量%以上であり、また、例えば、10質量%以下、好ましくは、5質量%以下であり、また、ポリアルキレングリコールアルキルエーテルアセテートの配合割合は、例えば、90%質量以上、好ましくは、95%質量以上であり、また、例えば、99質量%以下、好ましくは、97質量%以下である。
【0124】
1価アルコール、多価アルコールおよびポリアルキレングリコールアルキルエーテルアセテートを併用する場合には、1価アルコール、多価アルコールおよびポリアルキレングリコールアルキルエーテルアセテートの総量に対して、1価アルコールの配合割合は、例えば、20質量%以上であり、また、例えば、40質量%以下であり、多価アルコールの配合割合は、例えば、1質量%以上であり、また、例えば、10質量%以下であり、また、ポリアルキレングリコールアルキルエーテルアセテートの配合割合は、例えば、50%質量以上であり、また、例えば、79質量%以下、好ましくは、70質量%以下である。
【0125】
溶剤の配合割合は、フッ化物系フラックス100質量部に対して、例えば、40質量部以上、好ましくは、50質量部以上であり、また、例えば、80質量部以下、好ましくは、70質量部以下である。
【0126】
溶剤の配合割合は、ゲル化剤および溶剤の総量に対して、例えば、5質量%以上、好ましくは、7質量%以上、好ましsくは、30質量%以上であり、また、例えば、95質量%以下である。
【0127】
また、溶剤の配合割合は、ろう付け成分の総量に対して、例えば、10質量%以上、好ましくは、20質量%以上、より好ましくは、30質量%以上であり、また、例えば、50質量%以下、好ましくは、40質量%以下である。
【0128】
次いで、バインダが、ブチルゴムである場合について詳述する。
【0129】
バインダが、ブチルゴムである場合には、溶剤は、好ましくは、少なくとも、炭化水素系溶剤を含む。
【0130】
バインダが、ブチルゴムを含み、かつ、溶剤が炭化水素系溶剤を含めば、アルミニウムまたはアルミニウム合金のろう付けにおいて、連続的かつ安定的に塗布(描画)できる。
【0131】
また、より好ましくは、溶剤として、1価アルコールおよび炭化水素系溶剤の併用が挙げられる。
【0132】
溶剤として、1価アルコールおよび炭化水素系溶剤を併用すれば、アルミニウムまたはアルミニウム合金のろう付けにおいて、ろう付け性に優れる。
【0133】
また、この場合において、1価アルコールとして、好ましくは、アルキルアルコール、より好ましくは、炭素数16以上の1価アルコール、さらに好ましくは、n-ヘキサデカノール、2―オクチルドデカン-1-オールが挙げられる。
【0134】
1価アルコールが、炭素数16以上の1価アルコールであれば、ろう付け材の保形性を向上させることができる。
【0135】
また、この場合において、炭化水素系溶剤は、好ましくは、ノルマルパラフィン系溶剤、イソパラフィン系溶剤、および、ナフテン系溶剤からなる群から選択される少なくとも1種である。
【0136】
炭化水素系溶剤が、ノルマルパラフィン系溶剤、イソパラフィン系溶剤、および、ナフテン系溶剤からなる群から選択される少なくとも1種であれば、アルミニウムまたはアルミニウム合金のろう付けにおいて、連続的かつ安定的に塗布(描画)できる。
【0137】
また、炭化水素系溶剤として、より好ましくは、ナフテン系溶剤、エクソールD130が挙げられる。
【0138】
炭化水素系溶剤として、エクソールD130を用いれば、アルミニウムまたはアルミニウム合金のろう付けにおいて、連続的かつ安定的に塗布(描画)できる。
【0139】
1価アルコールおよび炭化水素系溶剤を併用する場合には、1価アルコールおよび炭化水素系溶剤の総量に対して、1価アルコールの配合割合は、例えば、10質量%以上、好ましくは、20質量%以上、より好ましくは、30質量%以上であり、また、例えば、40質量%以下であり、また、炭化水素系溶剤の配合割合は、例えば、60%質量以上であり、また、例えば、90質量%以下、好ましくは、80質量%以下、より好ましくは、70質量%以下である。
【0140】
溶剤の配合割合は、フッ化物系フラックス100質量部に対して、例えば、20質量部以上、好ましくは、40質量部以上、より好ましくは、50質量部以上であり、また、例えば、80質量部以下、好ましくは、70質量部以下である。
【0141】
溶剤の配合割合は、ゲル化剤および溶剤の総量に対して、例えば、5質量%以上、好ましくは、30質量%以上であり、また、例えば、90質量%以下、好ましくは、85質量%以下である。
【0142】
また、溶剤の配合割合は、ろう付け成分の総量に対して、例えば、10質量%以上、好ましくは、25質量%以上であり、また、例えば、60質量%以下、好ましくは、50質量%以下、より好ましくは、40質量%以下である。
【0143】
ろう付け材は、好ましくは、さらに、ワックスを含む。
【0144】
ワックスは、ろう付け材の保形性を向上させるための成分であって、特に制限されず、例えば、天然ワックス、合成ワックスなどが挙げられる。
【0145】
天然ワックスとしては、例えば、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどの石油ワックス、例えば、カルナバワックス、キャンデリラワックスなどの植物系ワックスなどの天然ワックスなどが挙げられる。
【0146】
合成ワックスとしては、例えば、ポリエチレンワックス、フィッシャートロプシュワックスなどが挙げられる。
【0147】
ワックスとしては、好ましくは、天然ワックス、より好ましくは、パラフィンワックスが挙げられる。
【0148】
これらワックスは、単独使用または2種以上併用することができる。
【0149】
ワックスの配合割合は、フッ化物系フラックス100質量部に対して、例えば、1質量部以上、好ましくは、5質量部以上であり、また、例えば、20質量部以下である。
【0150】
ワックスの配合割合は、ろう付け成分の総量に対して、例えば、1質量%以上、好ましくは、3質量%以上であり、また、例えば、10質量%以下、好ましくは、5質量%以下である。
【0151】
ろう付け材は、上記したゲル化剤を含むため、ろう付け材を固形化することができる一方、ろう付け材が、ゲル化剤を過度に含む場合には、ろう付け材が変色する場合がある。このような場合において、ろう付け材が、ワックスを含めば、ろう付け材の保形性を向上させることができる。
【0152】
ろう付け材は、さらに、ろう材を含むこともできる。
【0153】
ろう材としては、例えば、金属ケイ素粉末、ケイ素-アルミニウム合金、これらに少量のマグネシウム、銅、ゲルマニウムなどを含む合金などが挙げられる。
【0154】
ろう付け材が、ろう材を含めば、アルミニウムまたはアルミニウム合金のろう付けにおいて、作業効率に優れる。
【0155】
ろう材の配合割合は、ろう付け成分100質量部に対して、例えば、5質量部以上、好ましくは、10質量部以上であり、また、例えば、50質量部以下、好ましくは、30質量部以下である。
【0156】
そして、ろう付け材は、上記の各成分を、上記の配合割合で、公知の方法により混合および撹拌することにより得ることができる。このとき、ゲル化剤によって、溶剤が固められ、ろう付け材は固形化する。
【0157】
なお、溶剤は、(メタ)アクリル樹脂を重合したときに用いた溶媒をそのまま(またはその一部として)用いることもできる。
【0158】
また、ろう付け材には、必要に応じて、例えば、酸化防止剤(例えば、ジブチルヒドロキシトルエンなど)、腐食防止剤(例えば、ベンゾトリアゾールなど)、消泡剤(例えば、シリコンオイルなど)、増粘剤(例えば、脂肪酸アミド、ポリアミドなど)、着色剤などの各種添加剤を、5質量%以下の範囲で、含有させることができる。
【0159】
得られるろう付け材における、フッ化物系フラックスおよびバインダの総量は、ろう付け成分に対して、例えば、15質量%以上、好ましくは、30質量%以上であり、また、例えば、70質量%以下である。
【0160】
得られるろう付け材は、固形であり、詳しくは、25℃において固形である。
【0161】
25℃において固形とは、流動性がなく、ペースト状、ゼリー状(ゲル状)および液状は含まない。詳しくは、後述する保形性試験において、ろう付け材に、150g重の荷重を加えても、変形しないことと定義される。
【0162】
ろう付け材は、25℃において固形であるため、詳しくは後述するが、アルミニウムまたはアルミニウム合金のろう付けにおいて、連続的かつ安定的に塗布(描画)できる。
【0163】
また、例えば、金属部材に、液状またはペースト状のろう付け材を塗布する場合には、溶剤によって、塗布設備およびその周辺を汚染する場合があり、設備保全に手間がかかるという不具合がある。
【0164】
また、金属部材の形状や配置位置によっては、塗布方法の変更が必要な場合がある。このような場合には、塗布方法の変更に応じて、塗布設備を変更する必要があり、作業が煩雑になるという不具合がある。
【0165】
一方、このろう付け材は、25℃において固形である。つまり、溶剤はゲル化剤によって固形化されているため、上記した汚染を解消できる。
【0166】
また、後述するように、このろう付け材は、金属部材に、ろう付け材を接触させる(押しつける)ことで、塗布される。そのため、このろう付け材は、液状またはペースト状のろう付け材に比べて、塗布方法に変更がある場合でも、簡便に塗布することができる。
【0167】
そして、このようなろう付け材は、バインダとして、(メタ)アクリル樹脂および/またはブチルゴムを含むため、アルミニウムまたはアルミニウム合金のろう付けにおいて、ろう付け性および密着性に優れ、しかも、25℃において固形であるため、連続的かつ安定的に塗布(描画)できる。
【0168】
そのため、本発明のろう付け材は、アルミニウムまたはアルミニウム合金製品、例えば、ろう付け部材および熱交換器の製造において、好適に用いられる。
【0169】
以下において、上記のろう付け材をアルミニウムまたはアルミニウム合金に、連続的に塗布する方法について、詳述する。
【0170】
図1は、上記のろう付け材をアルミニウムまたはアルミニウム合金に、連続的に塗布する方法を示す工程図である。
【0171】
図1(A)に示すように、塗布装置1は、塗布台2と、この塗布台2と鉛直方向に対向する供給部3と、塗布台2におけるアルミニウム部材9の搬送方向両端部に配置される搬送部4とを備える。
【0172】
塗布装置1は、工場に設置される大型の装置であり、長尺のアルミニウム部材9に連続的に、ろう付け材5を塗布できるように設備されている。
【0173】
塗布台2は、平板形状を有し、アルミニウム部材9の搬送方向に沿って延びている。
【0174】
供給部3は、塗布台2におけるアルミニウム部材9の搬送方向途中に配置され、鉛直方向下側に配置されたろう付け材5と、鉛直方向上側に配置され、ろう付け材5を支持するための支持部6とを備える。
【0175】
支持部6は、ろう付け材5を支持し、かつ、ろう付け材5が塗布とともに、減っていっても、ろう付け材5を、常に一定荷重でアルミニウム部材9に、押圧している。
【0176】
搬送部4は、アルミニウム部材9を、搬送方向上流側から搬送方向下流側に搬送するための部材であって、塗布台2の搬送方向上流側に配置された送出ロール7と、塗布台2の搬送方向下流側に配置された巻取ロール8とを備える。
【0177】
送出ロール7には、長尺のアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる部材(以下、アルミニウム部材9とする。)が、巻回されている。
【0178】
アルミニウム部材9の長さ(長手方向の長さ)は、通常、数千メートルである。
【0179】
図1(A)に示すように、送出ロール7に巻回されたアルミニウム部材9は、送出ロール7によって、搬送方向上流側から搬送方向下流側に送り出される。
【0180】
そして、
図1(B)に示すように、搬送途中において、アルミニウム部材9とろう付け材5とが接触する。
【0181】
これにより、固形のろう付け材5が削れ、削れたろう付け材5が、アルミニウム部材9に付着(塗布)する。
【0182】
ろう付け材5の塗布量は、特に制限されず、適宜設定される。
【0183】
次いで、ろう付け材5が塗布されたアルミニウム部材9は、巻取ロール8によって、巻き取られる。
【0184】
そして、この方法では、上記の操作が連続的に実施される。
【0185】
すなわち、
図1に示すように、送出ロール7から巻取ロール8に、アルミニウム部材9が連続的に受け渡されると、アルミニウム部材9にろう付け材5が、連続的に接触する。これにより、アルミニウム部材9にろう付け材5を連続的に塗布できる。
【0186】
次いで、アルミニウム部材9に塗布されたろう付け材5は、例えば、供給部3の搬送方向下流側の配置された乾燥器(図示せず)によって、加熱および乾燥され、アルミニウム部材9に、ろう付け材5の塗布膜が形成される。
【0187】
塗布膜の厚みは、例えば、5μm以上、好ましくは、10μm以上であり、例えば、25μm以下、好ましくは、20μm以下である。
【0188】
このような塗布膜を備えるアルミニウム部材は、アルミニウムまたはアルミニウム合金製品、例えば、ろう付け部材および熱交換器の製造において、好適に用いられる。
【0189】
このような方法においては、通常、数千メートルの長さを有するアルミニウム部材9に、固形のろう付け材5を連続的に、塗布するため、所望の塗布量を長時間、連続的かつ安定的に塗布(描画)できることが要求される。
【0190】
詳しくは、例えば、熱交換機を製造する場合には、ろう付け材は長時間、かつ、連続的に使用される。その際、塗布し始めた時の塗布量が十分であり(初期塗布性)、かつ、塗布し始めた時の塗布量と、塗布し終える時の塗布量と差が、小さくなる(連続塗布性)ことが要求される。
【0191】
本発明のろう付け材は、バインダとして、(メタ)アクリル樹脂および/またはブチルゴムを含むため、連続的かつ安定的に塗布(描画)できる。
【0192】
また、本発明のろう付け材は、25℃において固形であるため、液状またはペースト状のろう付け材に比べて、上記の塗布量を調節しやすい。その結果、本発明のろう付け材は連続的かつ安定的に塗布(描画)できる。
【0193】
次に、本発明のろう付け部材の一例としての、熱交換器用チューブを挙げ、詳述する。
【0194】
図2は、熱交換器用チューブの一実施形態を示す概略斜視図である。
【0195】
図2において、熱交換器用チューブ10は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなり、偏平管11と、偏平管11の外表面に形成される塗布膜12とを備えている。
【0196】
偏平管11は、アルミニウムまたはアルミニウム合金、好ましくは、アルミニウム合金JIS 1050から、断面偏平状に押し出し加工または引き抜き加工されている。
【0197】
また、偏平管11は、偏平管11の延びる方向と直交する方向(幅方向)に間隔を隔てて複数の熱媒体通路穴13を備えている。
【0198】
各熱媒体通路穴13は、幅方向に長い断面長穴形状をなし、偏平管11の延びる方向に沿って貫通形成されている。
【0199】
塗布膜12は、上記のろう付け材を塗布および乾燥させることによって形成される塗膜であって、偏平管11の一方面および他方面、すなわち、断面偏平状の偏平管11の両面に形成されている。
【0200】
塗布膜12の厚みは、例えば、5μm以上、好ましくは、10μm以上であり、例えば、25μm以下、好ましくは、20μm以下である。
【0201】
そして、このような熱交換器用チューブ10は、例えば、自動車などに実装される熱交換器の製造において、好適に用いられる。
【0202】
図3は、
図2に示す熱交換器用チューブを備える熱交換器の一実施形態を示す概略構成図である。
【0203】
図3において、熱交換器14は、互いに間隔を隔てて対向配置される1対のヘッダーパイプ15と、1対のヘッダーパイプ15が延びる方向に互いに間隔を隔てて、1対のヘッダーパイプ15の間において、架設される複数の偏平管11と、互いに隣接する偏平管11の間に設けられるフィン16とを備えている。
【0204】
ヘッダーパイプ15は、熱媒体が供給および排出される管であって、一方のヘッダーパイプ15には熱媒体を流入させる流入管(図示せず)が接続され、他方のヘッダーパイプ15には熱媒体を排出させる排出管(図示せず)が接続されている。
【0205】
また、各ヘッダーパイプ15には、それらが対向する面において、開口(図示せず)が形成されている。
【0206】
偏平管11は、上記した熱交換器用チューブ10を構成する偏平管11であって、1対のヘッダーパイプ15の対向方向に沿って架設されている。
【0207】
具体的には、偏平管11は、熱媒体通路穴13とヘッダーパイプ15の内部空間とが、ヘッダーパイプ15に形成された開口を介して互いに連通されるように、ヘッダーパイプ15に架設されている。これにより、熱媒体が、流入管(図示せず)から一方のヘッダーパイプ15に流入した後、偏平管11の熱媒体通路穴13を通過して、他方のヘッダーパイプ15に流入され、排出管(図示せず)から排出可能とされている。
【0208】
フィン16は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる板材を屈曲することによって、連続する波形状に形成されている。このようなフィン16は、互いに隣接する1対の偏平管11の間において、波形の上下の頂点が1対の偏平管11にそれぞれろう付けされている。
【0209】
なお、フィン16は、最も外側に設けられた偏平管11の外側面にもろう付けされており、そのフィン16のさらに外側には、フィン16を保護するための保護プレート17がろう付けされている。
【0210】
次いで、熱交換器14を製造する方法について、詳述する。
【0211】
この方法では、まず、互いに平行に間隔を隔てて1対のヘッダーパイプ15を配置する。次いで、複数の熱交換器用チューブ10の両端部を、1対のヘッダーパイプ15の内側面に設けられた開口(図示せず)に挿入し、1対のヘッダーパイプ15に熱交換器用チューブ10を架設する。その後、熱交換器用チューブ10の間にフィン16を配置し、フィン16と塗布膜12とを当接させることにより、組立体を得る。そして、得られた組立体を加熱炉において加熱する。
【0212】
これにより、熱交換器14が得られる。
【0213】
そして、このような熱交換器用チューブ10および熱交換器14は、上記のろう付け材が用いられているので、優れたろう付け性および密着性を備えることができる。
【実施例】
【0214】
以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。また、以下の記載において特に言及がない限り、「部」および「%」は質量基準である。
【0215】
なお、以下の実施例および比較例に用いる有効成分の詳細を下記に示す。
オパノールN50:ブチルゴム、重量平均分子量565,000、BASF社製
オパノールN100:ブチルゴム、重量平均分子量1,550,000)、BASF社製
エクソールD80:ナフテン系溶剤、引火点81℃、エクソンモービル社製
エクソールD130:ナフテン系溶剤、引火点140℃、エクソンモービル社製
1.(メタ)アクリル樹脂の製造
合成例1(メタクリル樹脂Aの重合)
撹拌装置、冷却管、滴下ロートおよび窒素導入管を備えた反応装置に、600部の3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノールを仕込んだ後、窒素気流下において、反応装置内温度が80℃となるまで昇温した。
【0216】
次いで、メタクリル酸メチル100部、メタクリル酸イソブチル275部、メタクリル酸25部および過酸化ベンゾイル4部の混合溶液を、約3時間かけて反応装置内に滴下し、さらに10時間同温度に保って重合を完結させ、メタクリル樹脂Aの溶液を得た。得られたメタクリル樹脂Aの溶液は、固形分濃度が40質量%であった。
【0217】
合成例2(メタクリル樹脂Bの重合)
拌装置、冷却管、滴下ロートおよび窒素導入管を備えた反応装置に、450部の3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノールを仕込んだ後、窒素気流下において、反応装置内温度が80℃となるまで昇温した。
【0218】
次いで、メタクリル酸2-エチルヘキシル240部、メタクリル酸2ヒドロキシエチル60部および過酸化ベンゾイル4部の混合溶液を、約3時間かけて反応装置内に滴下し、さらに10時間同温度に保って重合を完結させ、メタクリル樹脂Bの溶液を得た。得られたメタクリル樹脂Bの溶液は、固形分濃度が40質量%であった。
【0219】
合成例3(メタクリル樹脂Cの重合)
撹拌装置、冷却管、滴下ロートおよび窒素導入管を備えた反応装置に、600部のポリエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートを仕込んだ後、窒素気流下において、反応装置内温度が80℃となるまで昇温した。
【0220】
次いで、メタクリル酸メチル100部、メタクリル酸イソブチル275部、メタクリル酸25部および過酸化ベンゾイル4部の混合溶液を、約3時間かけて反応装置内に滴下し、さらに10時間同温度に保って重合を完結させ、メタクリル樹脂Cの溶液を得た。得られたメタクリル樹脂Cの溶液は、固形分濃度が40質量%であった。
【0221】
合成例4(メタクリル樹脂Dの重合)
撹拌装置、冷却管、滴下ロートおよび窒素導入管を備えた反応装置に、600部のヘキシレングリコールを仕込んだ後、窒素気流下において、反応装置内温度が80℃となるまで昇温した。
【0222】
次いで、メタクリル酸メチル100部、メタクリル酸イソブチル275部、メタクリル酸25部および過酸化ベンゾイル4部の混合溶液を、約3時間かけて反応装置内に滴下し、さらに10時間同温度に保って重合を完結させ、メタクリル樹脂Dの溶液を得た。得られたメタクリル樹脂Dの溶液は、固形分濃度が40質量%であった。
2.ろう付け材の製造
実施例1
表1に示すように、合成例1で得られたメタクリル酸樹脂Aの溶液を11.25部(つまり、メタクリル酸樹脂A 4.5部、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール 6.75 部)とゲル化剤3.3部と溶剤25.45部(つまり、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール3.85部、ポリエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート21.6部)とワックス5部およびフッ化アルミン酸カリウム系フラックス55部を加熱混合し、型に流し入れ冷却、成形することでろう付け材を得た。
【0223】
実施例2~実施例26、比較例1~比較例5
各成分の配合処方を、表1~表3の記載に従って変更した以外は、実施例1と同様に処理して、ろう付け材を得た。
【0224】
なお、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテルの重合度(上記式(1)のm)は、1であり、ポリエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートの重合度(上記式(2)のm)は、1であり、ポリエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートの重合度(上記式(2)のm)は、1であり、ポリエチレングリコールモノヘキシルエーテルアセテートの重合度(上記式(2)のm)は、1であり、ポリプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートの重合度(上記式(2)のm)は、1であり、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートの重合度(上記式(2)のm)は、1であった。
3.評価
(保形性)
各実施例および各比較例のろう付け材を、直径12mm、長さ50mmにして、次いで、これをアルミニウム部材の上に置き、ろう付け材の上から荷重をかけた。
【0225】
保形性に関して次の基準で優劣を評価した。その結果を表1~表3に示す。
○:ろう付け材に、250g重の荷重を加えても崩れない。
△:ろう付け材に、250g重の力を加えると崩れるが、150g重の荷重を加えても崩れない。
×:固化せず、ペースト状のようになり、形を保つことができない。
(ろう付け性)
各実施例および各比較例のろう付け材をアルミニウム部材(150mm×70mm×0.8mm)に、70mm×7mmで塗布し、試験片を作成した。
【0226】
その後、上記試験片をろう付け炉(箱形電気炉、ノリタケTGF社製、A(V)-DC-M)を用いて、窒素ガス雰囲気下(酸素濃度100ppm以下)にて600℃で加熱してろう付けした。
【0227】
そして、以下の試験での性能の優劣を評価した。その結果を表1~表3に示す。
(1)ろう付け後の外観
ろう付け試験後の外観を次の基準で目視にて評価した。
○:バインダの残渣に由来する黒変が全く見られなかった。
△:バインダの残渣に由来する黒変が試験片の一部に見られた。
×:バインダの残渣に由来する黒変が試験片全体に明らかに見られた。
(2)フッ化物系フラックスのぬれ広がり性
ろう付け試験後のフラックスのぬれ広がりを、初め塗布した7mm幅から広がった長さを計測し目視観察により次の基準で評価した。
○:外観上の問題なく、幅10mm以上ぬれ広がっていた。
△:外観上の問題に拘わらず、幅10mm以上7mm未満のぬれ広がりであった。
×:外観上変色が見られ、幅7mmのままで全くぬれ広がっていなかった。
(密着性)
各実施例および各比較例のろう付け材をアルミニウム部材(150mm×70mm×0.8mm)に70mm×7mmで塗布し、試験片とした。
【0228】
その後、上記試験片を200℃で1分間加熱した後、次の基準で優劣を評価した。その結果を表1~表3に示す。
○:指で擦っても塗膜がはがれず、良好な密着性を示した。
△:指で擦ると多少指に塗膜が付着するが、アルミニウム素地は見えない程度の密着性であった。
×:指で擦ると指に塗膜が付着し、アルミニウム素地が見え、非常に弱い密着力であった。
(描画性)
(1)初期塗布性
各実施例および各比較例のろう付け材を150g重の荷重でアルミニウム部材に塗布した時のフッ化物系フラックスの塗布量について、次の基準で優劣を評価した。その結果を表1~表3に示す。
○:10g/m2以上塗布することができる。
△:5g/m2以上塗布することができる。
×:5g/m2以下しか塗布できない。
(2)8時間後の塗布性
各実施例および各比較例のろう付け材を8時間室温、大気中に放置した後、150g重の荷重でアルミニウム部材に塗布した時のフッ化物系フラックスの塗布量について、次の基準で優劣を評価した。その結果を表1~表3に示す。
○:10g/m2以上塗布することができる。
△:5g/m2以上塗布することができる。
×:5g/m2以下しか塗布できない。
(3)連続塗布性
初期塗布性と、8時間後の塗布性とを比較し、次の基準で優劣を評価した。その結果を表1~表3に示す。
◎:初期塗布量および8時間後の塗布量がともに、10g/m2以上である。
○:初期塗布量が、10g/m2以上であり、8時間後の塗布量が5g/m2以上10g/m2未満である。
△:初期塗布量および8時間後の塗布量がともに、5g/m2以上10g/m2未満である。
×:初期塗布量および8時間後の塗布量のいずれかが、5g/m2以下である。
【0229】
【0230】
【0231】
【0232】
なお、上記発明は、本発明の例示の実施形態として提供したが、これは単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。当該技術分野の当業者によって明らかな本発明の変形例は、後記請求の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0233】
本発明のろう付け材は、アルミニウム熱交換器などの熱交換器に用いられるろう付け部材の製造において、好適に用いられる。
【0234】
また、本発明のろう付け部材は、アルミニウム熱交換器などの熱交換器の製造において、好適に用いられる。
【0235】
また、本発明の熱交換器は、自動車用の熱交換器などとして、好適に用いられる。