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特許7220160ポリオールまたはポリチオール化合物、その製造方法、前記化合物により製造される透明なポリウレタン系樹脂及び光学体
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  • 特許-ポリオールまたはポリチオール化合物、その製造方法、前記化合物により製造される透明なポリウレタン系樹脂及び光学体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-01
(45)【発行日】2023-02-09
(54)【発明の名称】ポリオールまたはポリチオール化合物、その製造方法、前記化合物により製造される透明なポリウレタン系樹脂及び光学体
(51)【国際特許分類】
   C07C 319/20 20060101AFI20230202BHJP
   C07C 321/14 20060101ALI20230202BHJP
   C07C 323/11 20060101ALI20230202BHJP
   C08G 18/38 20060101ALN20230202BHJP
   G02B 1/04 20060101ALN20230202BHJP
   G02C 7/00 20060101ALN20230202BHJP
【FI】
C07C319/20
C07C321/14 CSP
C07C323/11
C08G18/38 055
G02B1/04
G02C7/00
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2019565143
(86)(22)【出願日】2018-02-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-03-19
(86)【国際出願番号】 KR2018001884
(87)【国際公開番号】W WO2018151501
(87)【国際公開日】2018-08-23
【審査請求日】2021-02-08
(31)【優先権主張番号】10-2017-0020263
(32)【優先日】2017-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】517011629
【氏名又は名称】ケーエス ラボラトリーズ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】KS LABORATORIES CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】303,13,Yulchonsandan 4-ro,Haeryong-myeon,Suncheon-si,Jeollanam-do 58034 Republic of Korea
(73)【特許権者】
【識別番号】518013361
【氏名又は名称】キム,クンシク
【氏名又は名称原語表記】KIM,Keun Sik
【住所又は居所原語表記】205-1503,50,Dojang-gil,Suncheon-si,Jeollanam-do 58004 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】キム,クンシク
【審査官】高橋 直子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第03824259(US,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0134050(KR,A)
【文献】特開昭62-273946(JP,A)
【文献】特開平07-207195(JP,A)
【文献】特開平05-208950(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0021371(KR,A)
【文献】特開2015-086204(JP,A)
【文献】国際公開第2014/027427(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/027428(WO,A1)
【文献】特開平07-252207(JP,A)
【文献】REGISTRY(STN)[online],2016年5月7日(検索日:2021年11月30日)CAS登録番号:1880875-80-8, 2015年5月6日(検索日:2021年11月30日)CAS登録番号:1699070-45-5, 2014年1月15日(検索日:2021年11月30日)CAS登録番号:1520646-10-9, 2016年2月4日(検索日:2021年11月30日)CAS登録番号:1859826-02-0, 2014年3月11日(検索日:2021年11月30日)CAS登録番号:1566309-05-4
【文献】Ukrainskii Khimicheskii Zhurnal(Russian Edition),1966年,32(2),194-201
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 319/20
C07C 321/14
C07C 323/11
C08G 18/38
G02B 1/04
G02C 7/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)下記化学式(2)の1-メルカプトプロパン-2-オールと下記化学式(4)のエピハロヒドリン化合物とを反応させて下記化学式(5)の中間体を得るステップであって、化学式(2)および化学式(4)の反応物の当量比を1:1で反応させるステップ;
(2)得られた前記化学式(5)の中間体に硫化ナトリウム水溶液を加えて反応させ、化学式(6)のポリオール化合物を得るステップ;および
(3)得られた前記化学式(6)のポリオール化合物に無機酸とチオ尿素を加えて加熱攪拌した後に室温で冷却し、塩基性水溶液を加えて加水分解し、下記化学式(1)のポリチオールを得るステップを含み、かつ、
前記化学式(6)のポリオール化合物を得るステップが、10~50℃の範囲で実施される、下記化学式(1)のポリチオールの製造方法:
【化1】
(前記式中、Xは、F、Cl、Br、及びIからなる群より選ばれるいずれか一つであり、
R1’は、-CHCH(OH)CHF、-CHCH(OH)CHCl、-CHCH(OH)CHBr、及び-CHCH(OH)CHIからなる群より選ばれるいずれか一つであり、
R1”は、-CHCH(OH)CHSCHCH(OH)CHSCHCH(OH)CH、または、-CHCH(OH)CHSCHCH(OH)CHSCH(CH)CHOHであり、
R3は、
-CH(CHSH)CHSCHCH(CHSH)SCH(CH)CHSH、
-CH(CHSH)CHSCHCH(CHSH)SCHCH(CH)SH、
-CH(CHSH)CHSCH(CHSH)CHSCH(CH)CHSH、
-CH(CHSH)CHSCH(CHSH)CHSCHCH(CH)SH、
-CHCH(CHSH)SCHCH(CHSH)SCH(CH)CHSH、
-CHCH(CHSH)SCHCH(CHSH)SCHCH(CH)SH、
-CHCH(CHSH)SCH(CHSH)CHSCH(CH)CHSH、及び
-CHCH(CHSH)SCH(CHSH)CHSCHCH(CH)SHからなる群より選ばれるいずれか一つである。)
【請求項2】
(1)下記化学式(3)の2-メルカプトプロパノールと下記化学式(4)のエピハロヒドリン化合物とを反応させて下記化学式(7)の中間体を得るステップであって、化学式(3)および化学式(4)の反応物をそれぞれ1当量ずつ反応させるステップ;
(2)得られた前記化学式(7)の中間体に硫化ナトリウム水溶液を加えて反応させ、化学式(8)のポリオール化合物を得るステップ;および
(3)得られた前記化学式(8)のポリオール化合物に無機酸とチオ尿素を加えて加熱攪拌した後に室温で冷却し、塩基性水溶液を加えて加水分解し、下記化学式(1)のポリチオールを得るステップを含み、かつ、
前記化学式(8)のポリオール化合物を得るステップが、10~50℃の範囲で実施される、下記化学式(1)のポリチオールの製造方法:
【化2】
(前記式中、Xは、F、Cl、Br、およびIからなる群より選ばれるいずれか一つであり、
R2’は、-CHCH(OH)CHF、-CHCH(OH)CHCl、-CHCH(OH)CHBr、および-CHCH(OH)CHIからなる群より選ばれるいずれか一つであり、
R2”は、-CHCH(OH)CHSCHCH(OH)CHSCHCH(OH)CH、または-CHCH(OH)CHSCHCH(OH)CHSCH(CH)CHOHであり、
R3は、
-CH(CHSH)CHSCHCH(CHSH)SCH(CH)CHSH、
-CH(CHSH)CHSCHCH(CHSH)SCHCH(CH)SH、
-CH(CHSH)CHSCH(CHSH)CHSCH(CH)CHSH、
-CH(CHSH)CHSCH(CHSH)CHSCHCH(CH)SH、
-CHCH(CHSH)SCHCH(CHSH)SCH(CH)CHSH、
-CHCH(CHSH)SCHCH(CHSH)SCHCH(CH)SH、
-CHCH(CHSH)SCH(CHSH)CHSCH(CH)CHSH、及び-CHCH(CHSH)SCH(CHSH)CHSCHCH(CH)SHからなる群より選ばれるいずれか一つである。)
【請求項3】
(1)下記化学式(2)の1-メルカプトプロパン-2-オールまたは下記化学式(3)の2-メルカプトプロパノールとグリシドール化合物とを反応させて下記化学式(5)または下記化学式(7)のポリオール化合物を得るステップであって、化学式(2)または化学式(3)とグリシドールの反応物の当量比を1:1で反応させるステップ;
(2)得られた前記化学式(5)または式(7)のポリオール化合物に無機酸とチオ尿素を加えて加熱攪拌した後に室温で冷却し、塩基性水溶液を加えて加水分解し、下記化学式(1)のポリチオールを得るステップを含み、かつ、
前記化学式(5)または(7)のポリオール化合物を得るステップが、10~50℃の範囲で実施される、下記化学式(1)のポリチオールの製造方法:
【化3】
(前記式中、R1’とR2’は各々、-CHCH(OH)CHOHであり、
R3は、-CH(CHSH)CHSH、または、-CHCH(CHSH)SHである。)
【請求項4】
(1)下記化学式(2)の1-メルカプトプロパン-2-オールまたは下記化学式(3)の2-メルカプトプロパノールと下記化学式(4)のエピハロヒドリン化合物とを反応させて下記化学式(5)または下記化学式(7)のポリオール化合物を得るステップであって、化学式(2)または(3)と化学式(4)の反応物の当量比を2:1で反応させるステップ;および
(2)得られた前記化学式(5)または化学式(7)のポリオール化合物に無機酸とチオ尿素を加えて加熱攪拌した後に室温で冷却し、塩基性水溶液を加えて加水分解し、下記化学式(1)のポリチオールを得るステップを含み、かつ、
前記化学式(5)または前記化学式(7)のポリオール化合物を得るステップが、10~50℃の範囲で実施される、下記化学式(1)のポリチオールの製造方法:
【化4】
(前記式中、Xは、F、Cl、Br及びIからなる群より選ばれ、
R1’とR2’は各々、
-CHCH(OH)CHSCHCH(OH)CH、または、
-CHCH(OH)CHSCH(CH)CHOHであり、
R3は、-CHCH(CHSH)SCHCH(CH)SH、
-CHCH(CHSH)SCH(CH)CHSH、
-CH(CHSH)CHSCHCH(CH)SH、または、
-CH(CHSH)CHSCH(CH)CHSHである。)
【請求項5】
(1)下記化学式(12)のメルカプトブタノールと下記化学式(4)のエピハロヒドリン化合物とを反応させて下記化学式(15)の中間体を得るステップであって、化学式(12)と化学式(4)の反応物の当量比を1:1で反応させるステップ;
(2)得られた前記化学式(15)の中間体に硫化ナトリウム水溶液を加えて反応させ、化学式(16)のポリオール化合物を得るステップ;および
(3)得られた前記化学式(16)のポリオール化合物に無機酸とチオ尿素を加えて加熱攪拌した後に室温で冷却し、塩基性水溶液を加えて加水分解し、下記化学式(11)のポリチオールを得るステップを含み、かつ、
前記化学式(16)のポリオール化合物を得るステップが、10~50℃の範囲で実施される、下記化学式(11)のポリチオールの製造方法:
【化5】
(前記式中、Xは、F、Cl、Br、及びIからなる群より選ばれるいずれか一つであり、
R1’は、-CHCH(OH)CHF、-CHCH(OH)CHCl、-CHCH(OH)CHBr、及び-CHCH(OH)CHIからなる群より選ばれるいずれか一つであり、
R1”は、
-CHCH(OH)CHSCHCH(OH)CHSCHCH(OH)CHCHであり、
R3は、
-CH(CHSH)CHSCHCH(CHSH)SCH(CHCH)CHSH、
-CH(CHSH)CHSCHCH(CHSH)SCHCH(CHCH)SH、
-CH(CHSH)CHSCH(CHSH)CHSCH(CHCH)CHSH、
-CH(CHSH)CHSCH(CHSH)CHSCHCH(CHCH)SH、
-CHCH(CHSH)SCHCH(CHSH)SCH(CHCH)CHSH、
-CHCH(CHSH)SCHCH(CHSH)SCHCH(CHCH)SH、
-CHCH(CHSH)SCH(CHSH)CHSCH(CHCH)CHSH、及び
-CHCH(CHSH)SCH(CHSH)CHSCHCH(CHCH)SHからなる群より選ばれるいずれか一つである。)
【請求項6】
(1)下記化学式(12)のメルカプトブタノールと下記化学式(4)のエピハロヒドリン化合物とを反応させて下記化学式(15)のポリオール化合物を得るステップであって、化学式(12)と化学式(4)の反応物の当量比を2:1で反応させるステップ;および
(2)得られた前記化学式(15)のポリオール化合物に無機酸とチオ尿素を加えて加熱攪拌した後に室温で冷却し、塩基性水溶液を加えて加水分解し、下記化学式(11)のポリチオールを得るステップを含み、かつ、
前記化学式(15)のポリオール化合物を得るステップが、10~50℃の範囲で実施される、下記化学式(11)のポリチオールの製造方法:
【化6】
(前記式中、Xは、F、Cl、Br、及びIからなる群より選ばれ、
R1’は、CHCH(OH)CHSCHCH(OH)CHCHであり、
R3は、
-CHCH(CHSH)SCH(CHCH)CHSH、
-CHCH(CHSH)SCHCH(CHCH)SH、
-CH(CHSH)CHSCH(CHCH)CHSH、または、
-CH(CHSH)CHSCHCH(CHCH)SHである。)
【請求項7】
触媒として、TEA、またはNaOHが使用されることを特徴とする、請求項1ないし6のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記無機酸は、塩酸、硝酸、硫酸、または臭化水素酸であることを特徴とする、請求項1ないし6のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記塩基性水溶液は、アンモニア水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液、またはヒドラジンであることを特徴とする、請求項1ないし6のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項10】
下記化学式(a)または(b)で表される3個以上の官能基を有するポリチオール化合物:
【化7】
または
【化8】
(前記式中、Yは硫黄原子であり、
Raは、メチル又はエチルであり、
Rbは、-CHCH(CHSH)SCH(CH)CHSH、
-CHCH(CHSH)SCHCH(CH)SH、
-CH(CHSH)CHSCH(CH)CHSH、
-CH(CHSH)CHSCHCH(CH)SH、
-CHCH(CHSH)SCH(CHCH)CHSH、
-CHCH(CHSH)SCHCH(CHCH)SH、
-CH(CHSH)CHSCH(CHCH)CHSH、
-CH(CHSH)CHSCHCH(CHCH)SH、
-CH(CHSH)CHSCHCH(CHSH)SCH(CH)CHSH、
-CH(CHSH)CHSCHCH(CHSH)SCHCH(CH)SH、
-CH(CHSH)CHSCH(CHSH)CHSCH(CH)CHSH、
-CH(CHSH)CHSCH(CHSH)CHSCHCH(CH)SH、
-CHCH(CHSH)SCHCH(CHSH)SCH(CH)CHSH、
-CHCH(CHSH)SCHCH(CHSH)SCHCH(CH)SH、
-CHCH(CHSH)SCH(CHSH)CHSCH(CH)CHSH、
-CHCH(CHSH)SCH(CHSH)CHSCHCH(CH)SH、
-CH(CHSH)CHSCHCH(CHSH)SCH(CHCH)CHSH、
-CH(CHSH)CHSCHCH(CHSH)SCHCH(CHCH)SH、
-CH(CHSH)CHSCH(CHSH)CHSCH(CHCH)CHSH、
-CH(CHSH)CHSCH(CHSH)CHSCHCH(CHCH)SH、
-CHCH(CHSH)SCHCH(CHSH)SCH(CHCH)CHSH、
-CHCH(CHSH)SCHCH(CHSH)SCHCH(CHCH)SH、
-CHCH(CHSH)SCH(CHSH)CHSCH(CHCH)CHSH、または
-CHCH(CHSH)SCH(CHSH)CHSCHCH(CHCH)SHである)。
【請求項11】
Rbが下記の置換基からなる群より選ばれるいずれか一つであることを特徴とする、請求項10に記載の化学式(a)のポリチオール化合物:
-CHCH(CHSH)SCHCH(CH)SH、
-CHCH(CHSH)SCHCH(CHCH)SH、
-CH(CHSH)CHSCHCH(CHSH)SCHCH(CH)SH、
-CH(CHSH)CHSCH(CHSH)CHSCHCH(CH)SH、
-CHCH(CHSH)SCHCH(CHSH)SCHCH(CH)SH、
-CHCH(CHSH)SCH(CHSH)CHSCHCH(CH)SH、
-CH(CHSH)CHSCHCH(CHSH)SCHCH(CHCH)SH、
-CH(CHSH)CHSCH(CHSH)CHSCHCH(CHCH)SH、
-CHCH(CHSH)SCHCH(CHSH)SCHCH(CHCH)SH、および
-CHCH(CHSH)SCH(CHSH)CHSCHCH(CHCH)SH。
【請求項12】
請求項10または請求項11に記載の3個以上の官能基を有するポリチオール化合物とポリイソシアネートとを含むポリ(チオ)ウレタン系の樹脂組成物。
【請求項13】
請求項12に記載の組成物を加熱硬化させて得られるポリ(チオ)ウレタン系樹脂。
【請求項14】
ポリ(チオ)ウレタン系樹脂が、光学ガラスまたは光学レンズに使用される、請求項13に記載のポリ(チオ)ウレタン系樹脂。
【請求項15】
(1)下記化学式(2)の1-メルカプトプロパン-2-オールと下記化学式(4)のエピハロヒドリン化合物を反応させ、下記化学式(5)の中間体を得るステップであって、化学式(2)および化学式(4)の反応物の当量比を1:1で反応させるステップ;および
(2)得られた前記化学式(5)の中間体に硫化ナトリウム水溶液を加えて化学式(6)のポリオール化合物を得るステップを含み、かつ、
前記反応ステップが、10~50℃の範囲で実施される、下記化学式(6)のポリオール化合物の製造方法:
【化9】
(前記式中、Xは、F、Cl、Br、及びIからなる群より選ばれるいずれか一つであり、
R1’は、-CHCH(OH)CHF、-CHCH(OH)CHCl、-CHCH(OH)CHBr、及び-CHCH(OH)CHIからなる群より選ばれるいずれか一つであり、
R1”は、-CHCH(OH)CHSCHCH(OH)CHSCHCH(OH)CHである。)
【請求項16】
(1)下記化学式(3)の2-メルカプトプロパノールと下記化学式(4)のエピハロヒドリン化合物とを反応させて下記化学式(7)の中間体を得るステップであって、化学式(3)および化学式(4)の反応物の当量比を1:1で反応させるステップ;および
(2)得られた前記化学式(7)の中間体に硫化ナトリウム水溶液を加えて化学式(8)のポリオール化合物を得るステップを含み、かつ、
前記反応ステップが、10~50℃の範囲で実施される、下記化学式(8)のポリオール化合物の製造方法:
【化10】
(前記式中、Xは、F、Cl、Br、及びIからなる群より選ばれるいずれか一つであり、
R2’は、-CHCH(OH)CHF、-CHCH(OH)CHCl、-CHCH(OH)CHBr、及び-CHCH(OH)CHIからなる群より選ばれるいずれか一つであり、
R2”は、-CHCH(OH)CHSCHCH(OH)CHSCH(CH)CHOHである。)
【請求項17】
(1)下記化学式(12)のメルカプトブタノールと下記化学式(4)のエピハロヒドリン化合物とを反応させて下記化学式(15)の中間体を得るステップであって、化学式(12)と化学式(4)の反応物の当量比を1:1で反応させるステップ;および
(2)得られた前記化学式(15)の中間体に硫化ナトリウム水溶液を加えて下記化学式(16)のポリオール化合物を得るステップを含み、かつ、
前記反応ステップが、10~50℃の範囲で実施される、下記化学式(16)のポリオール化合物の製造方法:
【化11】
(前記式中、Xは、F、Cl、Br、及びIからなる群より選ばれ、
R1’は、-CHCH(OH)CHF、-CHCH(OH)CHCl、-CHCH(OH)CHBr、及び-CHCH(OH)CHIからなる群より選ばれるいずれか一つであり、
R1”は、-CHCH(OH)CHSCHCH(OH)CHSCHCH(OH)CHである。)
【請求項18】
下記化学式(12)のメルカプトブタノールと下記化学式(4)のエピハロヒドリン化合物とを反応させて下記化学式(15)のポリオール化合物を得るステップであって、化学式(12)と化学式(4)の反応物の当量比を2:1で反応させるステップを含み、かつ、
前記反応ステップが、10~50℃の範囲で実施される、下記化学式(15)のポリオール化合物の製造方法:
【化12】
(前記式中、Xは、F、Cl、Br、及びIからなる群より選ばれ、
R1’は、CHCH(OH)CHSCHCH(OH)CHCHである。)
【請求項19】
下記化学式(a)または(b)で表される3個以上の官能基を有するポリオール化合物:
【化13】
または
【化14】
(前記式中、Yは酸素原子であり、
Raは、メチルまたはエチルであり、
Rbは、
-CHCH(OH)CHSCHCH(OH)CHSCHCH(OH)CH
-CHCH(OH)CHSCHCH(OH)CHSCH(CH)CHOH、
-CHCH(OH)CHSCHCH(OH)CHCH
-CHCH(OH)CHSCH(CHCH)CHOH、
-CHCH(OH)CHSCHCH(OH)CHSCHCH(OH)CHCH、または、-CHCH(OH)CHSCHCH(OH)CHSCH(CHCH)CHOHである)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規ポリオールまたはポリチオール化合物、前記化合物により製造されるポリウレタン系樹脂に関する。特に本発明は、新規に製造したポリチオールをポリイソ(チオ)シアネートと結合して製造されるポリ(チオ)ウレタン系樹脂からなる光学体などに関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックレンズ用樹脂は、最近更なる高性能化が求められ、高屈折率化、高アッベ数化、低比重化、高耐熱性化などが要求されている。今まで様々なプラスチックレンズ用樹脂の素材が開発されて使用されている。特に、プラスチックレンズとしてよく用いられるポリ(チオ)ウレタン系樹脂は光学体であって、最近では、眼鏡レンズ、カメラレンズ等の光学素子に急速に普及されている。
【0003】
ポリ(チオ)ウレタン系樹脂は、ポリチオールとポリイソ(チオ)シアネート化合物などを反応させて得られる。使用されるポリチオールまたはその中間体であるポリオールは、光学体またはポリ(チオ)ウレタン系樹脂の原料、合成樹脂原料、架橋剤、エポキシ樹脂硬化剤、加硫剤、重合調整剤、金属錯体、生化学的潤滑油添加剤としての幅広い用途で多様に使用されている。
【0004】
現在のレンズと光学体として商品化されたポリ(チオ)ウレタン樹脂に様々な機能性を付与するために、構成成分であるポリイソ(チオ)シアネートを変更させることができるが、その種類は限られている。したがって、他の構成成分であるポリチオールの変更することで、様々な機能性を高めることが可能であるため、様々なポリチオールが要求されている。
【0005】
前記ポリチオールの製造方法は様々な先行文献で公知されたが、その中で下記の特許文献1~3が代表的である。特許文献1には、ポリチオール化合物の製造方法において、2-メルカプトエタノールに含まれる特定の不純物の量を、所定範囲に調整する方法が記載されている。
【0006】
特許文献2には、チオ尿素に含まれたカルシウム含有量を、所定の範囲に調整する方法が記載されている。特許文献3は、ポリチオール組成物およびその用途に関するものであり、3個以上のメルカプト基を有するポリチオール化合物と共に、ポリチオール化合物のメルカプト基の他の一つが水酸基で置換された窒素含有化合物が微量含まれているポリチオール組成物が記載されている。特許文献1、2、3はすべて2-メルカプトエタノールを用いて、ポリチオール化合物を製造する方法を提示し、特許文献2は、2-メルカプトエタノールとエピハロヒドリン化合物を反応させてポリチオール化合物を製造する一般的な方法を開示する。2-メルカプトエタノールの製造は、エチレンオキサイドから出発して製造する方法に限られている。
【0007】
一方、特許文献4は、本出願の優先権主張の基礎となった韓国出願第10-2017-0020263号(出願日:2017.2.15)が出願された後、2017年7月7日に公開された出願である。ここにおいて、ポリチオール化合物がプロピレンオキサイドから1-メルカプト-2-プロパノールを得た後、エピクロロヒドリンと反応させて製造することが開示される。しかし、この先行技術文献の発明は、ポリオール中間体からポリチオール中間体を生成する実施例では、目的のポリチオールを得ることが不可能であるように見えるいくつかの問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際特許公開第WO2007/129449号公報
【文献】国際特許公開第WO2007/129450号公報
【文献】国際特許公開第WO2014/027665号公報
【文献】韓国公開特許公報第10-2017-0078139号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
先行技術に報告されたポリ(チオ)ウレタン系樹脂は、高耐熱性を維持しながら染色性を同時に満足する光学レンズを製造することが難しい。染色性は、ポリチオールとポリイソ(チオ)シアネート化合物が反応して形成された透明樹脂自体の物理的特性である。これは可視光線の遮断を目的として染色する方法で得られる。一般的に製造された樹脂の耐熱性が向上すれば染色性が低下し、染色性を向上させると耐熱性が低下する傾向がある。したがって、ポリ(チオ)ウレタンの組成物で製造された透明樹脂の高耐熱性と染色性を同時に満たすポリチオールが要求される。
【0010】
本発明者らは、これらの要求を満たすために綿密に様々な研究を行った。その結果、透明樹脂の耐熱性は、これと関連するガラス転移温度(Tg)を予測できる要素の中で、分子内で同じ構造を維持させながら側鎖の体積と長さを調節して向上することを明らかにした。これにより、透明樹脂の耐熱性を向上させながらも、従来の染色性も維持することができる着想に基づいて、ポリチオールの分子構造を変形させて本発明の新しいポリチオールを発明した。
【0011】
本出願の目的は、従来の2メルカプトエタノールの代わりに使用できる新しい出発物質を利用して、透明レンズの耐熱性を向上させながら、着色が容易であり、染色性に優れたポリオールまたはポリチオール化合物及びその製造方法を提供することである。また、本発明の目的は、新規に製造したポリチオールをポリイソ(チオ)シアネートと結合して製造したポリ(チオ)ウレタン系樹脂からなる光学体などを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記本発明の目的を達成するため、本発明の一実施形態は、下記化学式(a)または(b)で表す3個以上の官能基を有するポリオールまたはポリチオール化合物、またはその異性体に関するものである:
【化1】
または
【化2】
(前記式中、Yは酸素原子または硫黄原子であり、
Raは、低級アルキル基であり、
Rbは、i)ポリオールの場合、-CHCH(OH)CHF、-CHCH(OH)CHCl、-CHCH(OH)CHBr、-CHCH(OH)CHI、-CHCH(OH)CHSCHCH(OH)CHSCHCH(OH)CH、-CHCH(OH)CHSCHCH(OH)CHSCH(CH)CHOH、-CHCH(OH)CHOH、-CHCH(OH)CHSCHCH(OH)CH、-CHCH(OH)CHSCH(CH)CHOH、-CHCH(OH)CHSCHCH(OH)CHCH、-CHCH(OH)CHSCH(CHCH)CHOH、-CHCH(OH)CHSCHCH(OH)CHSCHCH(OH)CHCH、または、-CHCH(OH)CHSCHCH(OH)CHSCH(CHCH)CHOHであり;
ii)ポリチオールの場合、-CH(CHSH)CHSH、
-CHCH(CHSH)SH、
-CHCH(CHSH)SCH(CH)CHSH、-CHCH(CHSH)SCHCH(CH)SH、
-CH(CHSH)CHSCH(CH)CHSH、-CH(CHSH)CHSCHCH(CH)SH、
-CHCH(CHSH)SCH(CHCH)CHSH、
-CHCH(CHSH)SCHCH(CHCH)SH、
-CH(CHSH)CHSCH(CHCH)CHSH、
-CH(CHSH)CHSCHCH(CHCH)SH、
または、-CH(CHSH)CHSCHCH(CHSH)SCH(CH)CHSH、
-CH(CHSH)CHSCHCH(CHSH)SCHCH(CH)SH、
-CH(CHSH)CHSCH(CHSH)CHSCH(CH)CHSH、
-CH(CHSH)CHSCH(CHSH)CHSCHCH(CH)SH、
-CHCH(CHSH)SCHCH(CHSH)SCH(CH)CHSH、
-CHCH(CHSH)SCHCH(CHSH)SCHCH(CH)SH、
-CHCH(CHSH)SCH(CHSH)CHSCH(CH)CHSH、
-CHCH(CHSH)SCH(CHSH)CHSCHCH(CH)SH、
または、-CH(CHSH)CHSCHCH(CHSH)SCH(CHCH)CHSH、
-CH(CHSH)CHSCHCH(CHSH)SCHCH(CHCH)SH、
-CH(CHSH)CHSCH(CHSH)CHSCH(CHCH)CHSH、
-CH(CHSH)CHSCH(CHSH)CHSCHCH(CHCH)SH、
-CHCH(CHSH)SCHCH(CHSH)SCH(CHCH)CHSH、
-CHCH(CHSH)SCHCH(CHSH)SCHCH(CHCH)SH、
-CHCH(CHSH)SCH(CHSH)CHSCH(CHCH)CHSH、または、
-CHCH(CHSH)SCH(CHSH)CHSCHCH(CHCH)SHである)。
【0013】
前記化学式(a)または(b)において、Yは酸素原子、Raはメチル又はエチルであり、Rbは下記の置換基からなる群より選ばれる:
-CHCH(OH)CHF、-CHCH(OH)CHCl、-CHCH(OH)CHBr、-CHCH(OH)CHI、
-CHCH(OH)CHSCHCH(OH)CHSCHCH(OH)CH
-CHCH(OH)CHSCHCH(OH)CHSCH(CH)CHOH、
-CHCH(OH)CHOH、
-CHCH(OH)CHSCHCH(OH)CH
-CHCH(OH)CHSCH(CH)CHOH、
-CHCH(OH)CHSCHCH(OH)CHCH
-CHCH(OH)CHSCH(CHCH)CHOH、
-CHCH(OH)CHSCHCH(OH)CHSCHCH(OH)CHCH、及び
-CHCH(OH)CHSCHCH(OH)CHSCH(CHCH)CHOH。
【0014】
また、前記化学式(a)または(b)において、Yは硫黄原子、Raはメチルまたはエチルであり、Rbは下記の置換基からなる群より選ばれる:
-CH(CHSH)CHSH、-CHCH(CHSH)SH、-CHCH(CHSH)SCH(CH)CHSH、
-CHCH(CHSH)SCHCH(CH)SH、
-CH(CHSH)CHSCH(CH)CHSH、
-CH(CHSH)CHSCHCH(CH)SH、
-CHCH(CHSH)SCH(CHCH)CHSH、
-CHCH(CHSH)SCHCH(CHCH)SH、
-CH(CHSH)CHSCH(CHCH)CHSH、
-CH(CHSH)CHSCHCH(CHCH)SH、
-CH(CHSH)CHSCHCH(CHSH)SCH(CH)CHSH、
-CH(CHSH)CHSCHCH(CHSH)SCHCH(CH)SH、
-CH(CHSH)CHSCH(CHSH)CHSCH(CH)CHSH、
-CH(CHSH)CHSCH(CHSH)CHSCHCH(CH)SH、
-CHCH(CHSH)SCHCH(CHSH)SCH(CH)CHSH、
-CHCH(CHSH)SCHCH(CHSH)SCHCH(CH)SH、
-CHCH(CHSH)SCH(CHSH)CHSCH(CH)CHSH、
-CHCH(CHSH)SCH(CHSH)CHSCHCH(CH)SH、
-CH(CHSH)CHSCHCH(CHSH)SCH(CHCH)CHSH、
-CH(CHSH)CHSCHCH(CHSH)SCHCH(CHCH)SH、
-CH(CHSH)CHSCH(CHSH)CHSCH(CHCH)CHSH、
-CH(CHSH)CHSCH(CHSH)CHSCHCH(CHCH)SH、
-CHCH(CHSH)SCHCH(CHSH)SCH(CHCH)CHSH、
-CHCH(CHSH)SCHCH(CHSH)SCHCH(CHCH)SH、
-CHCH(CHSH)SCH(CHSH)CHSCH(CHCH)CHSH、及び
-CHCH(CHSH)SCH(CHSH)CHSCHCH(CHCH)SH。
【0015】
他の実施形態において、本発明は、下記の反応図式1に従って、下記のステップを備え、下記化学式(1)のポリチオールまたはその異性体の製造方法に関する:
(1)下記化学式(2)のメルカプト化合物と化学式(4)のエピハロヒドリン化合物を反応させて下記化学式(5)の中間体を得るステップであって、化学式(2)および化学式(4)の反応物の当量比を1:1で反応させるステップ;
(2)得られた前記化学式(5)の中間体に硫化ナトリウム水溶液を加え反応させ、化学式(6)のポリオール化合物を得るステップ;と
(3)得られた前記化学式(6)のポリオール化合物の無機酸とチオ尿素を加えて加熱攪拌した後に室温で冷却し、塩基性水溶液を加えて加水分解するステップ:
【数1】
【0016】
(前記式中、
Xは、F、Cl、Br、及びIからなる群より選ばれるいずれか一つであり、
R1’は、-CHCH(OH)CHF、-CHCH(OH)CHCl、-CHCH(OH)CHBr、-CHCH(OH)CHIからなる群より選ばれるいずれか一つであり、
R1”は、-CHCH(OH)CHSCHCH(OH)CHSCHCH(OH)CH、または、-CHCH(OH)CHSCHCH(OH)CHSCH(CH)CHOHであり、
R3は、-CH(CHSH)CHSCHCH(CHSH)SCH(CH)CHSH、
-CH(CHSH)CHSCHCH(CHSH)SCHCH(CH)SH、
-CH(CHSH)CHSCH(CHSH)CHSCH(CH)CHSH、
-CH(CHSH)CHSCH(CHSH)CHSCHCH(CH)SH、
-CHCH(CHSH)SCHCH(CHSH)SCH(CH)CHSH、
-CHCH(CHSH)SCHCH(CHSH)SCHCH(CH)SH、
-CHCH(CHSH)SCH(CHSH)CHSCH(CH)CHSH、及び、-CHCH(CHSH)SCH(CHSH)CHSCHCH(CH)SHからなる群より選ばれるいずれか一つである。)
【0017】
他の実施形態において、本発明は、下記の反応図式2に従って、下記のステップを備え、下記化学式(1)のポリチオールまたはその異性体の製造方法に関する:
(1)下記化学式(3)のメルカプト化合物と化学式(4)のエピハロヒドリン化合物を反応させて下記化学式(7)の中間体を得るステップであって、化学式(3)および化学式(4)の反応物をそれぞれ1当量ずつ反応させるステップ;
(2)得られた前記化学式(7)の中間体に硫化ナトリウム水溶液を加え反応させ、化学式(8)のポリオール化合物を得るステップ;と
(3)得られた前記化学式(8)のポリオール化合物の無機酸とチオ尿素を加えて加熱攪拌した後に室温で冷却し、塩基性水溶液を加えて加水分解するステップ:
【数2】
【0018】
(前記式中、
Xは、F、Cl、Br、及びIからなる群より選ばれるいずれか一つであり、
R2’は、-CHCH(OH)CHF、-CHCH(OH)CHCl、-CHCH(OH)CHBr、-CHCH(OH)CHIからなる群より選ばれるいずれか一つであり、
R2”は、-CHCH(OH)CHSCHCH(OH)CHSCHCH(OH)CH、または、-CHCH(OH)CHSCHCH(OH)CHSCH(CH)CHOHであり、
R3は-CH(CHSH)CHSCHCH(CHSH)SCH(CH)CHSH、
-CH(CHSH)CHSCHCH(CHSH)SCHCH(CH)SH、
-CH(CHSH)CHSCH(CHSH)CHSCH(CH)CHSH、
-CH(CHSH)CHSCH(CHSH)CHSCHCH(CH)SH、
-CHCH(CHSH)SCHCH(CHSH)SCH(CH)CHSH、
-CHCH(CHSH)SCHCH(CHSH)SCHCH(CH)SH、
-CHCH(CHSH)SCH(CHSH)CHSCH(CH)CHSH、及び、
-CHCH(CHSH)SCH(CHSH)CHSCHCH(CH)SHからなる群より選ばれるいずれか一つである。)
【0019】
他の実施形態において、本発明は、下記の反応図式3に従って、下記のステップを備え、下記化学式(1)のポリチオールまたはその異性体の製造方法に関する:
(1)下記化学式(2)または化学式(3)のメルカプト化合物とグリシドール化合物を反応させて下記化学式(5)または式(7)のポリオールを得るステップであって、化学式(2)または(3)の化合物とグリシドールの反応物の当量比を1:1で反応させるステップ;
(2)得られた前記化学式(5)または式(7)のポリオールの無機酸とチオ尿素を加えて加熱攪拌した後に室温で冷却し、塩基性水溶液を加えて加水分解するステップ:
【数3】
【0020】
(前記式中、R1’及びR2’は各々、-CHCH(OH)CHOHであり、R3は、-CH(CHSH)CHSH、または、-CHCH(CHSH)SHである。)
他の実施形態において、本発明は、下記の反応図式4に従って、下記のステップを備え、下記化学式(1)のポリチオールまたはその異性体の製造方法に関する:
(1)下記化学式(2)または化学式(3)のメルカプト化合物と化学式(4)のエピハロヒドリン化合物を反応させて下記化学式(5)または化学式(7)のポリオールを得るステップであって、化学式(2)または(3)の化合物と化学式(4)のエピハロヒドリンの反応物の当量比を2:1で反応させるステップ;と
(2)得られた前記化学式(5)または式(7)のポリオール化合物の無機酸とチオ尿素を加えて加熱攪拌した後に室温で冷却して塩基性水溶液を加えて加水分解するステップ:
【数4】
【0021】
(前記式中、Xは、F、Cl、Br、及びIからなる群より選ばれ、
R1’及びR2’は各々、-CHCH(OH)CHSCHCH(OH)CH、または、-CHCH(OH)CHSCH(CH)CHOHであり、
R3は、-CHCH(CHSH)SCHCH(CH)SH、-CHCH(CHSH)SCH(CH)CHSH、-CH(CHSH)CHSCHCH(CH)SH、または、-CH(CHSH)CHSCH(CH)CHSHである。)
他の実施形態において、本発明は、下記の反応図式5に従って、下記のステップを備え、下記化学式(11)のポリチオールの製造方法に関する:
(1)下記化学式(12)のメルカプト化合物と化学式(4)のエピハロヒドリン化合物を反応させて下記化学式(15)の中間体を得るステップであって、化学式(12)と化学式(4)の反応物の当量比を1:1で反応させるステップ;
(2)得られた前記化学式(15)の中間体に硫化ナトリウム水溶液を加え反応させ、化学式(16)のポリオール化合物を得るステップ;と
(3)得られた前記化学式(16)のポリオール化合物の無機酸とチオ尿素を加えて加熱攪拌した後に室温で冷却し、塩基性水溶液を加えて加水分解するステップ:
【数5】
【0022】
(前記式中、X及びR1’は反応図式1の各置換基と同一であり、
R1”は、-CHCH(OH)CHSCHCH(OH)CHSCHCH(OH)CHCHであり、
R3は、-CH(CHSH)CHSCHCH(CHSH)SCH(CHCH)CHSH、-CH(CHSH)CHSCHCH(CHSH)SCHCH(CHCH)SH、-CH(CHSH)CHSCH(CHSH)CHSCH(CHCH)CHSH、-CH(CHSH)CHSCH(CHSH)CHSCHCH(CHCH)SH、-CHCH(CHSH)SCHCH(CHSH)SCH(CHCH)CHSH、-CHCH(CHSH)SCHCH(CHSH)SCHCH(CHCH)SH、-CHCH(CHSH)SCH(CHSH)CHSCH(CHCH)CHSH、及び、-CHCH(CHSH)SCH(CHSH)CHSCHCH(CHCH)SHからなる群より選ばれるいずれか一つである。)
【0023】
他の実施形態において、本発明は、下記の反応図式6に従って、下記のステップを備え、下記化学式(11)のポリチオールの製造方法に関する:
(1)下記化学式(12)のメルカプト化合物と化学式(4)のエピハロヒドリン化合物を反応させて下記化学式(15)のポリオールを得るステップであって、化学式(12)の化合物と化学式(4)のエピハロヒドリンの反応物の当量比を2:1で反応させるステップ;と
(2)得られた前記化学式(15)のポリオール化合物の無機酸とチオ尿素を加えて加熱攪拌した後に室温で冷却し、塩基性水溶液を加えて加水分解するステップ:
【数6】
【0024】
(前記式中、Xは、F、Cl、Br、及びIからなる群より選ばれ、
R1’は、CHCH(OH)CHSCHCH(OH)CHCHであり、
R3は、-CHCH(CHSH)SCH(CHCH)CHSH、-CHCH(CHSH)SCHCH(CHCH)SH、-CH(CHSH)CHSCH(CHCH)CHSH、または、-CH(CHSH)CHSCHCH(CHCH)SHである。)
化学式(1)のポリチオールの製造方法において、TEA、またはNaOHの触媒を使用することができる。また、化学式(1)のポリチオールの製造方法では、無機酸として塩酸、硝酸、硫酸、または臭化水素酸を使用することができる。さらに、塩基性水溶液として、アンモニア水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液、またはヒドラジンを使用することができる。
【0025】
化合物の式(5)、式(7)、式(15)などのアルコール中間体は、前記反応図式4に記載の化合物である式(2)または式(3)、反応図式6に記載の式(12)などの低級アルキルが置換されたメルカプトエチルアルコールを出発物質として約2当量以上を使用し、化合物式(4)などのエピクロロヒドリンを1当量使用して、これらを反応させて生成され、すべて対称構造を有する。
【0026】
または、化合物の式(5)、式(7)、式(15)などのハロアルコール中間体は、前記反応図式1に記載の化合物式(2)、反応図式2に記載の式(3)、反応図式5に記載の式(12)などの低級アルキルが置換されたメルカプトエチルアルコールを出発物質として約1当量を使用し、化合物式(4)のようなエピクロロヒドリンを1当量使用して、これらを反応させて生成される。
【0027】
化合物の式(6)、式(8)、式(16)などのポリオール中間体は、前記反応図式1に記載の化合物である式(5)、反応図式2に記載の化合物である式(7)、反応図式5に記載の化合物である式(15)を約1当量ずつ使用し、0.5当量のNaSを使用して、これらを反応させて生成され、すべて対称構造を有する。
【0028】
背景技術で述べた通り、先行技術文献4(公開特許公報10-2017-0078139)の製造例(1)と比較例(1)には、エピクロヒドリン又はエポキシにハロアルキル基が置換された物質と低級アルキルが置換されたメルカプトエチルアルコール又はメルカプトエチルアルコールを使用して反応させる。しかし、このように生成されたポリオールの中間体は非対称の構造を有し、前記本出願の反応図式1~6から考えてみると、このようなポリオール中間体からポリチオールを生成することは不可能であり、このような非対称ポリオールを経由してポリチオールを生成することは不可能である。
【0029】
また、他の実施形態において、ポリチオール化合物の中間体であるポリオール化合物は、前記反応図式1または2で、ステップ(1)およびステップ(2)を備え、前記化学式(6)または化学式(8)のポリオールの製造方法によって製造する。また、追加のポリオール化合物は前記反応図式3または4で、ステップ(1)を備え、前記化学式(7)のポリオールの製造方法によって製造する。前記ポリチオールの製造方法と同様に、中間体である前記ポリオールの製造方法でも、TEA、またはNaOHの触媒を使用することができる。
【0030】
他の実施形態において、本発明は、製造された3個以上の官能基を有する前記ポリチオールと共に、ポリイソシアネートを含むポリ(チオ)ウレタン系樹脂組成物に関する。ここで、ポリチオールの官能基(-SH)に対するポリイソシアネートの官能基(-NCO)のモル比(=NCO/SH)は0.6~2.0の範囲であり、好ましくは0.8~1.3、より好ましくは0.9~1.1の範囲内である。使用割合が前記範囲内であれば、プラスチックレンズなどの光学材料と投影材料として要求される屈折率、耐熱性などの様々な性能のバランスが維持される。
【0031】
他の実施形態において、本発明は、前記のポリ(チオ)ウレタン系樹脂組成物を加熱硬化させて形成されるポリ(チオ)ウレタン系樹脂に関する。さらに、他の実施形態において、本発明は、前記のポリ(チオ)ウレタン系樹脂組成物を鋳型内で重合させるステップと、鋳型から成形物を離型させるステップを備える、ポリ(チオ)ウレタン系プラスチックレンズの製造方法で製造したポリ(チオ)ウレタン系プラスチック光学体に関する。ここで、ポリチオールの官能基(-SH)に対するポリイソシアネートの官能基(-NCO)のモル比(=NCO/SH)は0.6~2.0の範囲、好ましくは0.8~1.3、より好ましくは0.9~1.1の範囲内である。
【0032】
本発明は、前記プラスチック光学体を光学レンズの他に、建物などに使用される引き違い窓(sliding)、上げ下げ窓(double or single hung)、開き窓などの大面積窓(large-area window)にも適用することができるが、本発明ではプラスチック光学体としてプラスチック光学レンズを中心に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明で製造した合成例1(化合物1)の H-NMRスペクトル。
図2】本発明で製造した合成例3(化合物3)のH-NMRスペクトル。
図3】本発明で製造した合成例4(化合物4)のH-NMRスペクトル。
図4】本発明で製造した合成例5(化合物5)のH-NMRスペクトル。
図5】本発明で製造した合成例7(化合物7)のH-NMRスペクトル。
図6】本発明で製造した合成例8(化合物8)のH-NMRスペクトル。
図7】本発明で製造した合成例9(化合物9)のH-NMRスペクトル。
図8】本発明で製造した合成例10(化合物10-1ないし4の混合物;GPT)のH-NMRスペクトル。
図9】本発明で製造した合成例11(化合物11-1ないし11-4の混合物;MPT)のH-NMRスペクトル。
図10】本発明で製造した合成例12(化合物12-1ないし12-10の混合物;BPT)のH-NMRスペクトル。
図11】本発明で製造した合成例13(化合物13-1ないし13-10の混合物;BBT)のH-NMRスペクトル。
図12】本発明で製造した合成例14(化合物14-1ないし14-4の混合物;MBT)のH-NMRスペクトル。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明を様々な実施例と共に図面を参照して詳しく説明する。
ポリウレタン樹脂で製造されたレンズの機械的物性の中で、耐熱性と関連があるガラス転移温度(Tg)は、均一な色相と関連がある染色性と相関関係がある。したがって、Tgが上昇すれば染色性は低下する傾向がある。一般的に、高分子化合物のTg温度に影響を与える化学構造は、主鎖の柔軟性と側鎖の柔軟性の観点から考えることができる。主鎖の柔軟性を比較すると、主鎖内にベンゼン環を含む場合はベンゼン環がない場合よりも柔軟性が低下し、Tg温度が上昇する。側鎖の柔軟性を比較すると、側鎖の官能基が嵩高い(bulk)ため立体障害の効果があれば回転性が低下して柔軟性が低くなり、これによりTgが増加する場合がある。ポリエチレンとポリプロピレンの例がその一つである。これにより、ポリエチレングリコールが導入された高分子よりポリプロピレングリコールが導入された高分子のTg温度が高いことを確認することができる。
【0035】
前述した事実に着目して、本発明者らは、2-メルカプトエタノールを製造するために出発物質として従来使用されたエチレンオキサイドの代わりに、プロピレンオキシドまたはブチレンオキシドに変更して新規ポリチオールの合成を試みることにした。この場合、分子内で同じ構造を有しながら、単位分子をエチレンオキサイド(C-2)からプロピレンオキサイド(C-3)、ブチレンオキシド(C-4)などに増加させることを考慮した。このとき、エチル基の水素原子がメチルの分子に増加した場合、側鎖の影響でTg温度が上昇することを予想して本発明を完成した。
【0036】
本発明において、下記化学式(a)または(b)で表示される3個以上の官能基を有するポリオールまたはポリチオール化合物は、後述する反応図式1~6によるステップによって製造する。
【化3】
または
【化4】
【0037】
本発明において、「X」で表示される「ハロゲン」は、特に記載がない限り、フルオロ、塩素、臭素またはヨウ素であり、好ましくは塩素である。
【0038】
本発明で使用される「低級アルキル基」とは、炭素原子数が1~8個、好ましくは1~6個、特に好ましくは1~4個である直鎖または分岐鎖のアルキル基を表す。具体例として、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、イソペンチル基などがあり、好ましくは、メチル、またはエチルである。
【0039】
前記式(a)または式(b)において、Yを酸素原子に限定し、Raはメチルまたはエチルであり、Rbが前記の置換基からなる群より選択される代表的なポリオール化合物1~9は下記の構造式で表し、一般的な名称は下記の通りである。

【表1】
【0040】
また、前記式(a)または式(b)において、Yを硫黄原子に限定して、Raはメチルまたはエチルであり、Rbが前記の置換基からなる群より選択される化合物のうち、ポリチオール化合物は下記構造式の化合物10~14が得られ、各々の化合物は下記の異性体を有する。
【0041】
前記ポリチオールの製造過程において、前記各ポリオール化合物の中間体とチオ尿素/塩酸条件で反応して得られた硫化物の中間体化合物を製造する際に、立体障害による転位反応(rearrangement reaction)の結果から中間体が生成されることを確認した。これを加水分解すると、分子内のポリチオールの位置は一級チオールとして得ることになる。本発明では、発明しようとするポリチオールの構造解析の結果、一級チオール化合物が主生成物であることを確認したが、二級ポリチオールが同時に生成されることを確認した。これにより、発明しようとするポリチオール組成物が異性体の混合物で構成されることを確認した。理論的に生成可能な異性体は下表の通りである。
(1)化合物10(GPT)と化合物11(MPT)の異性体
【表2】
【0042】
(2)化合物12(BPT)の異性体
【表3】
【0043】
代表的な化合物12-1ないし12-3の一般的な名称は下記の通りであり、その他は省略する:
-化合物12-1:3,3’-チオビス(2-(1-メルカプトプロパン-2-イル)チオ)-1-プロパンチオール
-化合物12-2:2-((3-メルカプト-2-((1-メルカプトプロパン-2-イル)チオ)プロピル)チオ)-3-((1-メルカプトプロパン-2-イル)チオ)プロパン-1-チオール
-化合物12-3:2,2’-チオビス(3-(1-メルカプトプロパン-2-イル)チオ)-1-プロパンチオール
【0044】
(3)化合物13(BBT)と化合物14(MBT)の異性体
化合物13(BBT)も10個の異性体が予想されるが、代表的な異性体として化合物13-1と13-2、13-3のみを以下に例示し、化合物14(MBT)も4つの異性体が予想されるが、代表的な異性体として化合物14-1と14-2のみを以下に例示する。
【表4】
【0045】
以下、前記ポリオール化合物1~9の製造方法を示し、得られたポリオールから前記ポリチオール化合物10~16の製造方法を示す。
【0046】
(ポリオールの製造方法)
本発明のポリオール化合物はポリチオールの中間体であり、上述した反応図式1~6に記載したように、メルカプト化合物に、エピハロヒドリン化合物またはグリシドール化合物を、それぞれ1当量ずつ反応させるか、またはそれぞれの反応物の当量比を2:1で反応させて製造する。
【0047】
本発明の使用されるエピハロヒドリン化合物は、下記化学式(4)(ここで、Xはハロゲンである)で表し、市販品を使用することができる:
【化5】
また、本発明の使用されるグリシドール(グリシド、glycide;ヒドロキシメチルエチレンオキサイド)は下記の構造式で表し、市販品を使用することができる:
【化6】
前記グリシドールは公知の方法に従って、アリルアルコールの過酸化安息香酸を加えて製造するか、エピクロロヒドリンを無水酢酸カリウムと加熱して得られた酢酸をエーテル中で水酸化ナトリウムを処理して製造する。
【0048】
前記ポリオールの合成反応は10~50℃、好ましくは20~30℃の範囲で実施する。反応温度が10℃より低ければ反応速度が低下して反応転化率が低くなる。また、反応温度が50℃よりも高ければエピハロヒドリンに、各反応図式の式(2)、式(3)、式(12)の化合物が不純物または二量体(dimer)などと一緒に生成される。また、メルカプト出発物質である式(2)、式(3)、式(12)の化合物の投入時間は、0.5~10時間、好ましくは1~2時間である。しかし、0.5時間以下で投入する場合には反応速度の制御が困難であり、式(2)、式(3)、式(12)の化合物が不純物または二量体(dimer)などと一緒に生成される。適切な反応温度と反応時間は、各反応物の特性と使用する溶媒に応じて前記範囲内で適切に調整する。
【0049】
式(2)、式(3)、式(12)の化合物の使用量は、化合物1、2、3、および7では、エピハロヒドリン1モルに対して1モルが理想的であり、0.9モル以上から1.1モル以下が好ましい。もし、0.9モル以下で使用すれば未反応エピハロヒドリンが残留して次の反応で不純物として存在する。また、もし1.1モル以上で使用すれば未反応2-メルカプトプロパノールが生成物と反応してエピハロヒドリンを中心に2-メルカプトプロパノールが両側に連結して対称構造の不純物で存在する。しかし、化合物4および9は、エピハロヒドリン1モルに対して2モルが理想的であるが、2モル以上から3モル以下が好ましい。もし2モル以下を使用すれば2-メルカプトプロパノールとエピハロヒドリンがそれぞれ1モルずつ反応した非対称構造の不純物が存在して次の反応に関連して不純物になる。3モル以上を使用すれば、式(2)、式(3)、式(12)の未反応化合物が残留して次の反応に関連して不純物として存在する。他の化合物5、6、および8も前記の方法で製造するが、反応物は前述した同じ範囲の当量で使用して不純物の生成を減らすことができる。
【0050】
(ポリチオールの製造方法)
前記で得られたポリオール化合物に、ハロゲン化ナトリウムをさらに添加した後、無機酸とチオ尿素を加えて加熱攪拌した後に室温で冷却する。続いて、反応混合物に塩基性水溶液を加えて加水分解してポリチオール化合物を得る。得られたポリチオール化合物を必要に応じて溶媒除去し、ろ過、蒸発、または精製などの後処理(work-up)工程を実施する。
【0051】
この過程で使用される無機酸は、塩酸、硝酸、硫酸、臭化水素酸の中から選択するが、臭化水素酸が好ましい。使用される無機酸の臭化水素酸の量は、ポリオール化合物1モルに対して3~5モルが好ましい。この時の反応温度は100℃~105℃が好ましい。反応温度が100℃以下であれば、反応転化率が著しく低下する。反応時間は3時間~8時間程度であり、反応終了時点ではポリオール化合物がすべて消費されて転換することから確認する。使用される無機酸が塩酸の場合には、ポリオール化合物1モルに対して3~5モルが好ましい。この時の反応温度は105℃~110℃が好ましい。反応時間は12時間~24時間程度であり、反応終了時点ではポリオール化合物がすべて消費されて転化することで確認する。
【0052】
加水分解反応のステップで添加される塩基性水溶液は、アンモニア水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液、ヒドラジンの中から選択し、アンモニア水溶液が好ましい。水酸化ナトリウム、水酸化リチウムの場合は溶解性の低い粘性の不純物が析出する現象が発生し、収率が低下する現象があるが、純度には影響がない。使用される塩基性水溶液は、ポリオール化合物1モルに対して3~10モルが好ましい。反応温度は20℃~100℃の間であり、40℃~70℃が好ましい。溶媒を使用しなくても反応は行われるが、トルエン、メチレンクロライド、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンを使用することができ、トルエンが好ましい。
【0053】
一般的に、ポリウレタン系の眼鏡レンズは、ポリウレタン成分である液状(I)のポリイソシアネートと液状(II)のポリオール又はポリチオールを混合し脱泡(degassing)して均一な光学組成物を得た後、目的のガラスモールドで熱硬化させた後に離型して製造する。
本発明では、液状(I)の化合物として使用されるポリイソ(チオ)シアネート化合物は特に限定されず、少なくとも1つ以上のイソ(チオ)シアネート基を有する化合物であれば良い。ポリイソ(チオ)シアネート化合物は、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、および芳香族ポリイソシアネートで細分され、具体的な例は先行技術文献に例示されているので、ここでは特に言及しないことにする。
【0054】
ただし、前記ポリイソシアネートの中で、メタ-キシリレンジイソシアネート(XDI)、2,5(6)-ビス(イソシアネートメチル)-ビシクロ[2,2,1]ヘプタン(NBDI)、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(HMDI)などが好ましく、さらにイソシアネートのBiuret誘導体、三量体(trimer;例えばポリイソシアヌレート)誘導体も使用が可能である。
【0055】
前記ビウレット(Biuret)形態のイソシアネート化合物は、1,2-エチレンジイソシアネート、1,3-プロピレンジイソシアネート、1,4-ブチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,7-ヘプタメチレンジイソシアネート、1,8-オクタメチレンジイソシアネート、1,9-ノナメチレンジイソシアネート、1,10-デカメチレンジイソシアネートなどを原料にして容易に製造することができる。また、得られた化合物を精製して使用しても良く、原料モノマー自体が混合されていても良く、市販中の製品であるBayer社のDesmodur N100やPerstop社のTolonate HDB LVを使用することもできる。また、三量体の場合も前記ビウレットのように、前記原料を利用し容易に製造して使用することができ、Vencorex社のTolonate HDT LVなどの市販中の製品を利用することもできる。
【0056】
また、本発明では、液状(II)の化合物として使用されるポリチオールは、前記方法で製造された本発明のポリチオール化合物に加えて、他のポリチオール化合物をさらに含むことができる。更に含まれるポリチオール化合物は、特に限定されず、少なくとも1つ以上のチオール基を有する化合物であれば1種または2種以上を混合して使用する。特に、本発明で混合して使用できるポリチオール化合物は、下記の化合物などがある:
1,2-ビス(2-メルカプトエチルチオ)-3-メルカプトプロパン、トリメチロールプロパントリス(メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(メルカプトプロピオネート)の他に、2,3-ビス(2-メルカプトエチルチオ)プロパン-1-チオール、2-(2-メルカプトエチルチオ)-3-[2-(3-メルカプト-2-(2-メルカプトエチルチオ)-プロピルチオ]エチルチオ-プロパン-1-チオール、2-(2-メルカプトエチルチオ)-3-{2-メルカプト-3-[3-メルカプト-2-(2-メルカプトエチルチオ)-プロピルチオ]プロピルチオ}-プロパン-1-チオール、トリメチロールプロパントリス(メルカプトプロピオネート、トリメチロールエタントリス(メルカプトプロピオネート)、グリセロールトリス(メルカプトプロピオネート)、トリメチロールクロロトリス(メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(メルカプトアセテート)、トリメチロールエタントリス(メルカプトアセテート、ペンタエリスリトールテトラキスメルカプトプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキスメルカプトアセテート、[1,4]ジチアン-2-イル-メタンチオール、2-(2-メルカプト-エチルスルファニル)-プロパン-1,3-ジチオール、2-([1,4]ジチアン-2イルメチルスルファニル)-エタンチオール、3-(3-メルカプト-プロピオニルスルファニル)-プロピオニックアシッド2-ヒドロキシルメチル-3-(3-メルカプト-プロピオニルオキシ)-2-(3-メルカプト-プロピオニルオキシメチル)-プロピルエステル、3-(3-メルカプト-プロピオニルスルファニル)-プロピオニックアシッド3-(3-メルカプト-プロピオニルオキシ)-2,2-ビス-(3-メルカプト-プロピオニルオキシメチル)-プロピルエステル、(5-メルカプトメチル-[1,4]ジチアン-2-イル)-メタンチオール、1,3-ビス(2-メルカプトエチルチオ)プロパン-2-チオール(GST)、3,6,10,13-テトラチアペンタデカン-1,8,15-トリチオール(SET)、2-(2-メルカプトエチルチオ)プロパン-1,3-ジチオール(GMT)、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン(DMDDU)などのポリチオール化合物からなる群より選択される一つまたは二つを利用する。
【0057】
本発明では、前記ポリチオール化合物の中でも、1,3-ビス(2-メルカプトエチルチオ)プロパン-2-チオール(GST)、3,6,10,13-テトラチアペンタデカン-1,8,15-トリチオール(SET)、ペンタエリスリトールテトラキス(メルカプトプロピオネート)(PEMP)が好ましい。さらに、1,3-ビス(2-メルカプトエチルチオ)プロパン-2-チオール(GST)とペンタエリスリトールテトラキス(メルカプトプロピオネート)(PEMP)の混合物がさらに好ましい。
【0058】
一方、本発明で液状(I)として使用されるポリイソシアネートの官能基(-NCO)と、液状(II)として使用されるポリチオールの官能基(-SH)において、NCO/SHの官能基のモル比は0.5~1.5の範囲が好ましい。さらに、光学レンズの物性をさらに高めるため、0.9~1.1モル比の範囲が好ましく、1.0のモル比がもっと好ましい。
【0059】
ポリイソシアネートとしては、HDI BiuretまたはHDIトリマー(HDI誘導体)、HDI、IPDIを同時に使用する場合、これらの割合は30~40:20~30:30~40重量比が好ましい。本発明で製造したポリチオールのみを使用することも可能であるが、必要な屈折率または耐衝撃性に応じて、GST、PEMPなどの公知のポリチオールを混合して適切に調節して使用する。
【0060】
本発明の重合性組成物は必要に応じて、本発明の重合組成物から得られる樹脂の透明度、屈折率、比重、耐衝撃性、耐熱性、重合組成物の粘度などのレンズとして備える必須の光学的物性を得るために、いくつかの添加剤を使用することができる。添加剤としては、紫外線または近赤外線吸収剤、染料、光安定剤、酸化防止剤などの任意の成分をさらに含むことができる。また、ウレタン樹脂組成物と共重合が可能なエポキシ化合物、チオエポキシ化合物、ビニル基あるいは不飽和基を有する化合物、または金属化合物などをさらに含んでも良い。
【0061】
また、目的の反応速度に調整するため、反応触媒を適切に添加することができる。好ましい触媒は、例えば、ウレタン化触媒として、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジクロライド、ジメチル錫ジクロライド、テトラメチルジアセトキシジスタノキサン、テトラエチルジアセトキシジスタノキサン、テトラプロピルジアセトキシジスタノキサン、テトラブチルジアセトキシジスタノキサンなどの錫化合物や3級アミンなどのアミン化合物を使用する。これらは、一つまたは二つ以上を併用する。触媒の添加量は、組成物のモノマーの総重量に対して0.001~1重量%の範囲が好ましい。前記範囲において、重合性はもちろん、作業時の可使時間(pot life)、得られる樹脂の透明性、様々な光学物性、耐光性が良くなる。
【0062】
また、本発明の光学レンズ用樹脂組成物は、レンズの初期色相を補正するための色補正剤をさらに含むことができる。色調補正剤には、有機染料、有機顔料、無機顔料などを使用する。これらの有機染料などを光学レンズ用樹脂組成物に0.1~50,000ppm、好ましくは0.5~10,000ppm添加して、紫外線吸収剤添加、光学樹脂及びモノマーなどによるレンズの色相を補正する。
【0063】
本発明の光学レンズ用樹脂組成物は、通常使用する離型剤や重合開始剤をさらに含むことができる。離型剤は、フッ素系非イオン界面活性剤、シリコン系非イオン界面活性剤、アルキル第4級アンモニウム塩の中で選択された成分を、一つまたは二つ以上を混合して使用する。好ましくは、リン酸エステルを使用する。また、重合開始剤として、アミン系またはスズ系化合物などを一つまたは二つ以上を混合して使用する。
【0064】
本発明によって製作されたポリウレタン系レンズは眼鏡レンズとして適切な物性を有するかを評価する必要がある。それぞれの物性値として、
(2)耐熱性(Tg)、(3)熱分析などは、次の試験法で評価した。
ATAGO社1TモデルであるABBE屈折計を使用して20℃で測定した。
(2)耐熱性:SCINCO社の熱分析器(DSC N-650)を使用して、試験片のガラス転移温度(Tg)を測定して耐熱性と見なした。
(3)熱分析:本発明のレンズの熱分析は、SINCO社のD-1を用いて測定し、プラスチックレンズのサンプルを入れて直接測定した。
【0065】
(代表的な光学レンズの製造方法)
ポリイソシアネートを構成するモノマーとポリチオールを構成するモノマーを特定の割合で、混合して攪拌する。次に、得られた混合物に、それぞれの所定量の内部離型剤、UV吸収剤、有機染料、硬化触媒を添加する。続いて、最終的に得られたポリウレタン光学樹脂組成物を所定時間にわたって脱泡した後、粘着テープで組み立てられたガラスモールドに注入する。
続いて、混合物が注入されたガラスモールドを強制循環式オーブンに装入する。オーブンで常温を維持して徐々に昇温を維持した後、冷却して混合物を重合させる。
【0066】
重合が終了した後、モールドからレンズを分離してウレタン光学レンズを得る。得られたレンズを120℃で1時間40分間アニーリング処理をする。アニーリング後、ガラスモールドで硬化したレンズ生地を離型し、中心厚が1.2mmである光学レンズを得る。得られた前記光学レンズを直径80mmに加工した後、アルカリ水溶液洗浄液に超音波洗浄した後、120℃で2時間アニーリング処理した後、生地レンズをシリコン系ハード液にディッピング法でコーティングして熱乾燥する。
【0067】
本発明の光学レンズは、必要に応じ反射防止、高硬度の付与、耐摩耗性の向上、耐薬品性の向上、防曇性の付与、あるいはファッション性付与等の改良を目的として、表面研磨、帯電防止処理、ハードコート処理、無反射コート処理、染色処理、調光処理等の物理的、化学的処理を施す。
【0068】
(実施例)
以下、具体的な合成例及び実施例によって本発明を詳細に説明する。しかし、これらの合成例及び実施例はひたすら本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明の範囲はこれらの合成例及び実施例によって限定されない。
【0069】
合成の出発物質は、プロピレンオキシドから簡単に製造が可能であり、本実験において、1-メルカプトプロパン-2-オールはアルドリッチ(Aldrich)社から、2-メルカプトプロパン-1-オールはBocsic社から購入して用いた。
【0070】
(ポリオールの合成例1~9)
合成例1:1-クロロ-3-((2-ヒドロキシプロピル)チオ)プロパン-2-オール[化合物1]
反応器に、Aldrich社から購入した1-メルカプトプロパン-2-オール500g(5.43モル)、トリエチルアミン54.9gを添加する。続いて、反応器の温度を15℃に合わせてエピクロロヒドリン502g(5.43モル)を溶液に徐々に滴下して1002gの化合物1を得た。図1のNMR-dataにおいて、この化合物の化学的物性は次の通りである。
H-NMR(DO)、δppm=1.26(3H,d,CH)、2.66~2.90(4H,m,CH-S)、3.70~3.82(2H,m,CH-Cl)。
【0071】
合成例2:2-((3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル)チオ)プロパン-1-オール[化合物2]
反応器に1-メルカプトプロパン-2-オール500g(5.43モル)、トリエチルアミン55.0gを添加する。続いて、反応器の温度を15℃に合わせてエピクロロヒドリン502g(5.43モル)を溶液に徐々に滴下して1002gの化合物2を得た。NMR-dataにおいて、この化合物の化学的物性は次の通りである。
H-NMR(DO)、δppm=1.25(3H,d,CH)、2.66~2.90(4H,m,CH-S)、3.65~3.82(2H,m,CH-Cl)。
【0072】
合成例3:3-((2-ヒドロキシプロピル)チオ)プロパン-1,2-ジオール[化合物3]
反応器に200gのHOを投入した後、トリエチルアミン105g(1.03モル)を投与して撹拌しながら25℃の温度に合わせる。1-メルカプトプロパン-2-オール200g(2.17モル)を投入して撹拌反応器の温度を20℃に合わせて、グリシドール169g(2.28モル)を約一時間かけて滴下した後、約一時間追加撹拌して353.6gの化合物3を得た。図2のNMR-dataにおいて、この化合物の化学的物性は次の通りである。
H-NMR(DO)、δppm=1.22(6H,d,CH)、2.63~2.81(4H,m,CH-S)、3.47~4.1(4H,m,CH-O,CH-O)、4.80(3H,s,OH)。
【0073】
合成例4:1,3-ビス[(2-ヒドロキシプロピル)チオ]-2-プロパン-2-オール[化合物4]
反応器に87.5gのHOを投入した後、水酸化ナトリウム87.3g(1.09モル)を追加投入して撹拌しながら25℃の温度に合わせる。1-メルカプトプロパン-2-オール199.2g(2.16モル)投入して撹拌反応器の温度を20℃に合わせる。続いて、エピクロロヒドリン100g(1.08モル)を約一時間かけて滴下した後、一時間追加撹拌して259.4gの化合物4を得た。図3のNMR-dataにおいて、この化合物の化学的物性は次の通りである。
H-NMR(DO)、δppm=1.24(6H,d,CH)、2.63~2.87(8H,m,CH-S)、3.97(3H,m,CH-O)、4.80(3H,s,OH)。
【0074】
合成例5:ビス[3-((2-ヒドロキシプロピル)チオ)-2-ヒドロキシプロピル]スルフィド[化合物5]
反応器に合成例1で得られた化合物1の全量に硫化ナトリウム水溶液890g(2.71モル)を40℃で維持しながら徐々に滴下した後、1時間追加撹拌して896.6gの化合物5を得た。図4のNMR-dataにおいて、この化合物の化学的物性は次の通りである。
H-NMR(DO)、δppm=1.29(6H,d,CH)、2.67~2.95(8H,m,CH-S)、4.02(4H,m,CH-O)。
【0075】
合成例6:ビス[3-((1-ヒドロキシ-プロパン-2-イル)チオ)-2-ヒドロキシプロピル]スルフィド[化合物6]
反応器に合成例2で得られた化合物2の全量に硫化ナトリウム水溶液890g(2.71モル)を40℃で維持しながら徐々に滴下した後、1時間追加撹拌し892.3gの化合物6を得た。NMR-dataにおいて、この化合物の化学的物性は次の通りである。
H-NMR(DO)、δppm=1.25(6H,d,CH)、2.65~2.95(8H,m,CH-S)、4.07(4H,m,CH-O)。
【0076】
合成例7:1-((3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル)チオ)ブタン-2-オール[化合物7]
反応器に1-メルカプトブタン-2-オール500g(4.71モル)、トリエチルアミン47.6gを添加した。続いて、反応器の温度を15℃に合わせてエピクロロヒドリン435.7g(4.71モル)を溶液に徐々に滴下して935.6gの化合物7を得た。図5のNMR-dataにおいて、この化合物の化学的物性は次の通りである。
H-NMR(MeOD)、δppm=0.94(3H,t,CH)、1.4~1.65(2H,m,CH)、2.58~2.82(4H,m,CH-S-CH)、3.58~3.92(3H,m,CH-O/CH-Cl)、4.82(2H,s,OH)。
【0077】
合成例8:ビス[3-((2-ヒドロキシブチル)チオ)-2-ヒドロキシプロピル]スルフィド[化合物8]
反応器に合成例7で得られた化合物7の全量に硫化ナトリウム水溶液782g(2.35モル)を40℃で維持しながら徐々に滴下する。続いて1時間追加撹拌して844.2gの化合物8を得た。図6のNMR-dataにおいて、この化合物の化学的物性は以下の通りである。
H-NMR(MeOD)、δppm=0.96(6H,t,CH)、1.41~1.68(4H,m,CH)、2.58~2.89(12H,m,CH-S)、3.61(2H,m,CH-O)、3.88(2H,m,CH-O)、4.81(4H,S,OH)。
【0078】
合成例9:1,3-ビス[(2-ヒドロキシブチル)チオ]プロパン-2-オール[化合物9]
反応器に87.5gのHOを投入後、水酸化ナトリウム87.3g(1.09モル)を追加投入して撹拌しながら25℃の温度に合わせる。続いて1-メルカプトブタン-2-オール229.5g(2.16モル)投入して撹拌反応器の温度を20℃に合わせた。エピクロロヒドリン100g(1.08モル)を約一時間かけて滴下した後、時間を追加撹拌して290.1gの化合物9を得た。図7のNMR-dataにおいて、この化合物の化学的物性は次の通りである。
H-NMR(MeOD)、δppm=0.95(6H,t,CH)、1.40~1.68(4H,m,CH)、2.58~2.89(12H,m,CH-S)、3.61(2H,m,CH-O)、3.88(2H,m,CH-O)、4.91(3H,s,OH)。
【0079】
(ポリチオールの実施例10ないし12)
合成例10:(2-((1-メルカプトプロパン-2-イル)チオ)プロパン-1,3-ジチオールの合成)[化合物10-1ないし10-4](GPT)
反応器に合成例3で得られた化合物3の全量に35%のHCl水溶液904g(8.68モル)を投入後、チオ尿素512g(6.72モル)を投入する。昇温と還流、110℃の条件で12~24時間かけて撹拌する。混合物を室温で冷却し、トルエン600mLを加えた後、25%のアンモニア水663.68g(9.76モル)を徐々に加えた後、65℃で3時間かけて加水分解した。得られた有機層の温度を室温まで下げて36%塩酸200mL、水200mL、希釈アンモニア水200mL、水200mLで3回にわたって順次洗浄した。分離して得られた有機層を減圧濃縮して、表題の無色透明なポリチオール化合物300gを得た。
下記合成例11の高速クロマトグラフィー分析法と同じ条件で分析した結果、化合物10-1の主生成物は約60~70%であり、この異性体である化合物10-2ないし10-4の総含有量は40%以内であった。図8のNMR-dataも化合物10-1ないし10-4の混合物に関するものであり、主な化合物10-1ないし10-4の化学的物性は次の通りである。
【0080】
合成例11:(3-((1-メルカプトプロパン-2-イル)チオ)-2-((1-メルカプトプロパン-2-イル)チオ)プロパン-1-チオールの合成)[化合物11-1ないし11-4](MPT)
反応器に合成例4で得られた化合物4の全量に35%のHCl水溶液394g(3.78モル)を投入(30℃以下)した後、チオ尿素250.9g(3.30モル)を投入する。昇温と還流、110℃の条件で12~24時間かけて撹拌する。混合物を室温まで下げて、トルエン550mLを加えた後、25%アンモニア水282.7g(4.32モル)を徐々に加えた後、65℃で3時間かけて加水分解した。得られた有機層の温度を室温まで下げて36%塩酸57mL、水400mLで順次洗浄した。分離して得られた有機層を減圧濃縮して表題の無色透明なポリチオール化合物290gを得た。
【0081】
合成例11で得られた化合物も、4つの異性体が存在するので、後述する高速クロマトグラフィー分析法で分析した結果、化合物11-1(主生成物)は約84~88%であり、残りの異性体である化合物11-2、11-3、および11-4の含有量は、それぞれ8%以内であった。図9のNMR-dataにおいて、この化合物の化学的物性は次の通りである。
【0082】
異性体を確認するための高速液体クロマトグラフ(HLPC)の測定条件は下記の通りである。
‐高速液体クロマトグラフィーの測定条件
‐カラム:Wathers ODS(Φ6mm×250mm)
‐移動相:アセトニトリル/10mmol-酢酸ナトリウム水溶液
90/10(vol/vol)→0/100(vol/vol)(20分間変動)
‐カラム温度:25℃
‐流量:1.0ml/min
‐検出器:UV検出器、波長215nm
‐測定溶液の濃度:試料100mgとアセトニトリル10ml
‐注入量:10μL
【0083】
異性体のピーク面積比
ポリチオール化合物が主生成物である化合物11-1と異性体11-2、11-3、11-4の総面積を基準に、各異性体の積分値の割合で算出した。算出式で計算した結果、化合物11-2は0.03~0.04であり、異性体11-3は0.04~0.05、異性体11-4は0.03~0.08で存在した。
【0084】
合成例12:3,3’-チオビス(2-((1-メルカプトプロパン-2-イル)チオ)-1-プロパンチオール)[化合物12-1ないし12-10](BPT)
反応器に合成例5で得られた化合物5の全量に49%臭化水素酸2239.6g(13.5モル)とチオ尿素836.3g(10.9モル)を添加して、この混合物を攪拌しながら105℃で6時間加熱した。混合物を室温で冷却し、トルエン2000gと水1700gを加えた後、徐々に加熱して70℃で25%アンモニア水1596g(9モル)を徐々に滴下した。得られた混合物の水層を除去し、有機層の温度を室温に下げて36%塩酸100gで洗浄した後、蒸留水1000gで洗浄し、得られた有機層を減圧蒸留して1070gの表題の化合物12-1ないし12-10を得た。
【0085】
前記合成例11の高速クロマトグラフィー分析法と同じ条件で分析した結果、主生成物(化合物12-1)は約63~70%であり、異性体である化合物12-2または12-3の含有量はそれぞれ14%以内であった。その他に発生する異性体の総含有量は2~8%程度である。図10のNMR-dataも化合物12-1ないし12-10の混合物に関し、主な化合物12-1の化学的物性は次の通りである。
【0086】
合成例13:2,2’-((チオビス(1-メルカプトプロパン-3,2-ジイル))ビス(スルファンジイル))ビス(ブタン-1-チオール)[化合物13-1ないし13-10](BBT)
反応器に合成例8で得られた化合物8の全量に35%のHCl水溶液1225.2g(11.8モル)を投入(30℃以下)した後、チオ尿素727.6g(9.56モル)を投入する。昇温と還流、110℃の条件で12~24時間かけて撹拌する。混合物を室温に下げて、トルエン2000mLを加えた後、25%アンモニア水846.6g(12.95モル)を徐々に加えた後、65℃で3時間かけて加水分解した。得られた有機層の温度を室温に下げて36%塩酸100mL、水1000mLで順次洗浄した。分離して得られた有機層を減圧濃縮して表題の化合物15として、無色透明なポリチオール化合物1104gを得た。
【0087】
前記合成例11の高速クロマトグラフィー分析法と同じ条件で分析した結果、主生成物(化合物13-1)は約60~70%であり、この異性体である化合物13-2または13-3の含有量はそれぞれ15%以内であった。その他に発生する異性体の総含有量は2~3%程度である。図11のNMR-dataにおいて、この化合物の化学的物性は次の通りである。
【0088】
合成例14:3-((1-メルカプトブタン-2-イル)チオ)-2-((1-メルカプトブタン-2-イル)チオ)プロパン-1-チオール[化合物14-1ないし14-4](MPT)
反応器に合成例9で得られた化合物9の全量に35%のHCl水溶液394g(3.78モル)を投入(30℃以下)した後チオ尿素250.9g(3.30モル)を投入する。昇温と還流、110℃の条件で12~24時間かけて撹拌する。混合物を室温まで下げて、トルエン550mLを加えた後、25%アンモニア水282.7g(4.32モル)を徐々に加えた後、65℃で3時間かけて加水分解した。得られた有機層の温度を室温に下げて36%塩酸57mL、水400mLで順次洗浄した。分離して得られた有機層を減圧濃縮し、表題の化合物14-1ないし14-4として、無色透明なポリチオール化合物318.2gを得た。
【0089】
前記合成例11の高速クロマトグラフィー分析法と同じ条件で分析した結果、主生成物(化合物14-1)は約80~95%であり、異性体である化合物14-2ないし14-4の含有量はそれぞれの5%以内であった。図12のNMR-dataにおいて、この化合物の化学的物性は次の通りである。
【0090】
上述したように、本発明は、メルカプトメチル基が一級チオールを含有したポリチオール主生成物に加えて、2級チオールを含有したポリチオール異性体の混合物で構成される。従って、本発明の化合物10(GPT)の場合は主生成物を含めて理論的に4つの異性体で構成されており、化合物11(MPT)、化合物14(MBT)のポリチオール場合は主生成物を含めて理論的に各々8個の異性体のうち、同一構造を除けば各4つの異性体で構成される。一方、化合物12(BPT)、化合物13(BBT)のポリチオールは、各16個の異性体のうち、重複した構造を除けば10個の異性体で構成される。
【0091】
背景技術で述べたように、先行技術文献4では、硫黄を含有するポリオール化合物を酸条件下でチオ尿素と反応させてイソチウロニウム塩(isothiouronium salt)の化合物を得る過程で、ヒドロキシ基のある炭素にイソチウロニウム塩が置換されたように開示される。しかし、それよりも、分子内に硫黄原子があるエピスルホニウム塩が生成される活性化ステップで立体障害効果による選択的なチオ尿素の導入の転位反応(rearrangement reaction)も行われると見なすべきである。以後、主鎖構造が変形されたイソチウロニウム塩化合物を加水分解すると、ポリチオール生成物の主鎖構造にメルカプトメチル基が導入された化合物が得られる。
【0092】
まとめると、本出願のポリチオールの一連の製造過程において、立体障害効果に起因する転位反応がなく、先行技術文献4のようにヒドロキシ基のある炭素にイソチウロニウム塩が置換された化合物だけが生成されると考えられない。したがって、先行技術文献の製造例(1)は、ポリオール中間体においてヒドロキシのある炭素にそのままチオール基のある2級チオール生成物を主生成物として得ることは不可能であると考えられる。
【0093】
次に、本発明で製造されたポリチオール化合物を、一般的に多く用いられるポリイソシアネートと共に使用して光学レンズを製造した後、従来公知の比較例1~4と光学レンズの物性を比較した。特に、各ポリチオールによる物性データを確認するため、レンズ製造の実施例1~13を実験した。
【0094】
1)前記の代表的な光学レンズの製造方法に従って、本発明の前記合成例で製造されたポリチオール化合物、ポリイソシアネート化合物と添加剤(離型剤と重合開始剤)を表1~4の組成で混合し、鋳型重合してウレタン系光学レンズを製造し、屈折率、アッベ数、耐熱性などを評価した。
離型剤は Dupont社の製品であるZelec UNを用いた。重合開始剤は、ジブチルチンジクロライドとスズ系化合物を使用した。また、必要に応じて、UV吸収剤、または色調補正剤(有機染料、有機顔料、無機顔料など)を使用する。本実施例で使用された各成分の含有量は、グラム重量(g)を基準にして、それぞれの重量%を示す。
【0095】
2)マルチ膜のひび割れは、レンズを相対湿度75%、内部温度80℃で1日間放置し、ひび割れる現象を観察実験した。ひび割れ現象は3段階で、すなわち、『A:なし、B:一か所以上発生、C:非常によくひび割れる』で評価した。
【0096】
3)染色性は下記の各表に記載されたように、例えばXDI/BPT、XDI/BET、XDI/MPT、XDI/GSTなどを組成物の構成されたプラスチックレンズを、蒸留水500gと染料(ONS Black)17.5gを混合した染色槽に入れて染色浴の温度を85~95℃で5分間かけて浸漬して染色した。続いて、各レンズの染色程度を評価した。
【0097】
4)下記において、レンズの実施例1~13と、表1~4に記載のBPT、MPT、GPT、BBT及びMBTはそれぞれ、合成例10、11、12、14、15で得られた化合物であり、これらの化合物の略称に関しては前述したポリチオールの表に記載されている。また、公知のポリチオールであるGSTとBET(3,3’-チオビス[2-[(2-メルカプトエチル)チオ]-1-プロパンチオール)と共に、これらに使用された代表的なイソシアネート化合物であるXDI、Biuret、HDI、NBDI、IPDI、およびHMDIも前述したので、ここでは省略する。
【0098】
まず、レンズの製造実施例1及び2では、イソシアネートとしてXDIを使用し、本発明の様々なポリチオール化合物としてGSTの代わりにMPT、BETの代わりにBPTを用いてレンズを製造した。その後、製造されたレンズと比較例1および2の市販レンズを比較した。
続いて、レンズ製造の実施例3~4では、イソシアネートとしてBiuretを使用し、GSTの代わりにMPT、BET代わりにBPTを使用して製造した。続いて、製造されたレンズを比較例3、および4の市販レンズと比較した。実施例5~10では、イソシアネートとしてXDI代わりに、様々なイソシアネート(NBDI、IPDI、HMDI)に拡張して新規レンズを製造した。ここで、Tg温度の上昇に起因する耐熱性の向上と染色性などの機能性の拡張を表3でまとめた。また、本発明のポリチオール化合物として、鎖延長型の新規ポリチオール化合物であるGPT、MBT、BBTをXDIと一緒に使用してレンズを製造した。続いて屈折率、アッベ数、耐熱性、染色性の物性と機能性を表4でまとめた。
【0099】
レンズの製造-実施例1、2
本発明のレンズと比較例のレンズの物性である屈折率、アッベ数、耐熱性、マルチ膜のひび割れ等を下記表に示した。
【表5】
【0100】
比較例1のレンズは、主構成原料としてイソシアネートのXDIとポリチオールのGSTを使用し、レンズの機械的物性の中でTg温度が約85℃であって耐熱性が低い欠点があると知られている。このレンズを着用した人が高温のサウナに入ると、レンズのマルチコート膜がひび割れる問題があると知られている。一方、このレンズはUV、日光遮断などの機能性を向上させるための染色性は非常に優秀である。製造会社の三井ケミカルは耐熱性が低いという問題点を改善するため、新製品(比較例2)を発売した。比較例2のレンズは、主構成原料としてイソシアネートのXDIはそのまま使用しながら、ポリチオールであるGSTの代わりにBETを使用した。しかし、このレンズも目的とする耐熱性向上の問題を改善したが、機能性向上に係るレンズ染色性は不満であると知られている。
【0101】
まず、マルチコート膜のひび割れる問題がある比較例1と本発明の実施例1-1ないし1-3と比較するために、結果を表1に示した。ここで、屈折率は同じであり、耐熱性が12.3℃高く観察され、アッベ数の向上、特に染色性が向上した。比較例1の場合、レンズ製造後のマルチコート膜を施した場合、相対湿度75%、80℃でマルチ膜の損傷を発見したが、実施例1で製造したレンズの場合は前記と同じ条件で、マルチ膜の損傷がなく基本形態を維持した。したがって、本発明のポリチオールであるMPTが既存のGSTより優秀であることを確認した。
【0102】
また、実施例2-1ないし2-3は、比較例2の結果と比較したとき、屈折率と耐熱性は若干優秀であり、染色性も良好であった。本発明のポリチオールであるBPTが既存のBETより同等以上であることを確認した。
【0103】
レンズの製造-実施例3、4
前記レンズ製造例に記載された過程と同様に製造したが、イソシアネートはXDI代わりにヘキサメチレンジイソシアネートビウレット(Biuret)を使用し、各成分は表1の化合物を用いた。
【表6】
【0104】
表2において実施例3および4は、比較例3および4と同じイソシアネートであるBiuretを用いた。実施例3は比較例3と比較した場合、屈折率は低下したが、耐熱性が約10℃以上上昇し、染色性も非常に優秀であった。比較例3の場合、レンズの製造後にマルチコート膜を施した場合、相対湿度75%、80℃でマルチ膜の損傷があることを発見した。しかし、実施例3で製造したレンズの場合は前記と同じ条件で、マルチ膜の損傷がなく基本形態を維持した。したがって、本発明のポリチオールであるMPTが既存のGSTより優秀であることを確認した。
【0105】
実施例4は、比較例4と比較した場合、屈折率は低下したが、耐熱性が約10℃以上上昇し、染色性も非常に優れていた(比較例4も染色性が優秀であるので、染色性は同等)。したがって、本発明のポリチオールであるBPTが既存のBETよりも耐熱性の面で優秀であることを確認した。
【0106】
レンズの製造-実施例5~10
前記レンズの製造例に記載した過程と同様に製造したが、イソシアネートはNBDIに変更し、その他の成分は表1の化合物を用いた。
【表7】
【0107】
表3では、透明素材と光学レンズを製造時に利用できる無黄変性イソシアネートの中から、NBDI、IPDI、HMDIを選別した。ここで、前記レンゾ製造例に記載した過程を同様に適用した場合、本発明の成分であるMPTとBPTを利用して物性を比較した。実施例5と6は、イソシアネートのNBDIを使用した時には屈折率が1.604~1.614であり、NBDI-BPT成分の組み合わせでアッベ数が約43程度の非常に高い数値を示した。耐熱性も133.3℃を示し耐熱性が高く維持され、NBDI-MPT成分の組み合わせでも124.7℃の高耐熱性を示し、総合的に耐熱性向上の目的に適していた。その外、染色性、マルチ膜ひび割れ現象の抑制も非常に優秀であった。
【0108】
実施例7および8はIPDIを用いた。実施例7でIPDI-MPT成分の組み合わせは耐熱性が106.1℃程度であり、これに関連した物性である染色性も良好であることを確認した。実施例8は、耐熱性が123.1℃程度であり、耐熱性が非常に上昇した結果を確認した。
実施例9、10はHMDIを使用した。実施例9でHMDI-MPT成分の組み合わせではアッベ数が45程度であって非常に優秀であり、染色性も非常に優秀な物性を示した。
【0109】
レンズの製造-実施例11ないし13
前述したようにイソシアネートを変更しながら透明レンズでの活用可能性を調べるために、物性などを確認した。ここで、高屈折、アッベ数、耐熱性、染色性などに適用が可能であることを確認した。また、イソシアネートをXDIとした場合、ポリチオールの種類をプロピレンオキシド誘導体であるMPT、BPTに加えて、ブチレンオキシドなどの鎖構造が延長したGPT、MBT、BBTの活用可能性を確認するため、下記のようにレンズを製造して整理した。
【表8】
【0110】
表4において実施例11、12、および13を表1の比較例1、2と比較した場合、本発明のレンズの屈折率は比較的に低下したが、屈折率は1.63以上であって、本発明の化合物は非常に高屈折、超高屈折の素材として活用できると予想される。また、場合によっては、耐熱性と染色性、マルチ膜のひび割れ現象が改善された結果を得た。
【0111】
実施例11における効果の差は、表1の比較例1のレンズを製造するために使用したGSTの代わりに、本発明はプロピレンオキサイドから誘導された1-メルカプトプロパン-2-オールと、エピクロロヒドリンの代わりにグリシドールを利用して製造した化合物3のポリオールで製造したポリチオールのGPTを使用したことに原因がある。本発明において、ポリチオールの側鎖にメチル基、エチル基が置換されて体積が増加した場合、分子が大きくなって物性であるTgが110℃に維持されて耐熱性が向上し、同時に機能性を向上させる染色性も良好であることを確認した。
【0112】
また、実施例12と13では、プロピレンオキサイドの代わりにブチレンオキシドを用いて製造されたポリオールとポリチオールを使用して製造した結果である。実施例12はGSTの代わりにMBTを使用した場合であって、予想に反してTgは高くなかったが、屈折率と染色性は優秀であった。実施例13はBETの代わりにBBTを使用した場合であって、1.638の高い屈折率を示し、Tgが94.2℃であって着色に適した耐熱性を示した。そして、本発明のポリオールとポリチオール化合物が有用な新規ポリチオールまたはウレタン用光学素材として活用できることが分かった。
【0113】
本発明で製造された様々なポリチオール化合物を用いた実施例1~13の光学レンズの物性を、比較例1~4の様々な物性と比較した。比較の結果、本発明のレンズは全般的に耐熱性が向上し、サウナなどの高温環境でマルチ膜がひび割れる現象も改善されたことを確認した。また、本発明のレンズは着色に最適な耐熱性を有することを確認した。また、染色性の向上とアッベ数の上昇により、長時間眼鏡を着用しても目の疲労感が軽減されることを確認した。したがって、本発明の新規ポリチオールを用いて、従来に比べて高い耐熱性、染色性、アッベ数、マルチ膜のひび割れ現象を改善したレンズを製造することができる。
【0114】
これらの結果は、本発明のポリチオール化合物をウレタン系の光学材料用重合性組成物の主成分として使用する場合、耐熱性に優れた光学レンズの製造ができることを示す。特に、従来のポリチオール化合物は「2-メルカプトエタノール」から出発して製造されたが、本発明のポリチオール化合物は「2-メルカプトプロパノール」、「1-メルカプトプロパン-2-オール」、「1-メルカプトブタン-2-オール」から出発して製造する。たとえ同じポリチオールであっても、本発明のポリチオールは低価のウレタン系光学材料用樹脂を製造することが可能になり、光学レンズ用素材として広く応用できることを示唆する。
【0115】
従来のポリチオールは、出発物質である2-メルカプトエタノールがエチレンオキサイドと硫化水素から製造される一方、本発明のポリチオールでは、1-メルカプトプロパン-2-オールはプロピレンオキシドと硫化水素から製造される。従来に使用されたエチレンオキサイドは室温で気体であるため取り扱いが難しく、爆発性も高くなるが、本発明で用いるプロピレンオキサイドは、室温で液体であるため取り扱いが容易であり、安全である。したがって、本発明のポリチオールは、経済的に低費用で1-メルカプトプロパン-2-オールを製造することができ、経済的な面でも従来のポリチオールより優秀な化合物である。
【0116】
本発明の光学材料用ポリウレタン樹脂の用途は、前記実施形態のレンズに限定されない。例えば、本発明のポリウレタン樹脂の基材には、偏光機能(polarizing functions;特定の角度でのみ光を透過させる非金属性物体の表面における反射光を最小化する機能)の他に、調光機能(dimming functions;周辺環境と空間利用率を考慮して、自動的に照度制御が可能な機能)を与えることが可能である。さらに、特に眼鏡レンズの場合には、視力矯正機能を与えることも可能である。
【0117】
本発明のポリウレタン樹脂基材は光学体であって、眼鏡レンズに限定して説明した。しかし、本発明の光学体は建築資材として、建物などに使用される引き違い窓(sliding)、上げ下げ窓(double or single hung)と開き窓の大面積窓にも必要に応じて適用することができる。本発明のポリウレタン樹脂組成物を前記大面積窓まで拡大適用するためには、追加機能に合わせて他の添加剤を混合して適切に製造する必要がある。例えば、樹脂組成物を窓枠に合わせて成形し、様々な形態のガラスモールドで硬化させた後、離型して使用することが考えられる。
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