(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-01
(45)【発行日】2023-02-09
(54)【発明の名称】マルチ-ロックカウンタコネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/639 20060101AFI20230202BHJP
H01R 13/627 20060101ALN20230202BHJP
【FI】
H01R13/639 Z
H01R13/627
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020127749
(22)【出願日】2020-07-28
【審査請求日】2020-12-21
(32)【優先日】2019-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515120213
【氏名又は名称】オーデーウー ゲーエムベーハー ウント コー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100122275
【氏名又は名称】竹居 信利
(72)【発明者】
【氏名】クリスチャン ホブマイアー
(72)【発明者】
【氏名】ヨーゼフ ヴァイガンド
(72)【発明者】
【氏名】ギュンター ロアール
【審査官】高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-110990(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第108336548(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0340805(US,A1)
【文献】米国特許第5752847(US,A)
【文献】米国特許第8585424(US,B2)
【文献】特開2013-97878(JP,A)
【文献】特開2014-241265(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R13/56-13/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コネクタと連結させるための、中空筒状
のハウジングを有するカウンタコネクタであって、前記カウンタコネクタを前記コネクタにロックするための、a)前記ハウジングの筒状表面に周方向に、または前記ハウジングの内側に配されたスリーブの筒状表面に周方向に形成される溝、つば、または半径方向に延びる一連の開口、凹部または凸部の形状の相手方係合部であって、前記コネクタの少なくとも1つの係合部または少なくとも1つのラッチ部と係合するように形成された相手方係合部と、b)前記カウンタコネクタの半径方向に弾性的に撓ませることが可能に、かつ、前記コネクタのラッチ部と係合するように形成された、半径方向に延びる溝、つば、開口、凹部または凸部のうちの少なくとも1つを備える相手方ラッチ部と、c)前記コネクタのねじ山と係合するように適合される相手方ねじ山と、の3つのタイプのロック手段を少なくとも備えることを特徴とするカウンタコネクタ。
【請求項2】
前記カウンタコネクタが円形のカウンタコネクタであることを特徴とする請求項1に記載のカウンタコネクタ。
【請求項3】
前記カウンタコネクタが、ロック手段として、前記ハウジングの前記筒状表面に、周方向に形成される溝、つば、または一連の開口、凹部または凸部を備えることを特徴とする請求項1または2に記載のカウンタコネクタ。
【請求項4】
前記溝、つば、または一連の開口、凹部または凸部が、前記ハウジングの筒状外周面に、周方向に形成されることを特徴とする請求項3に記載のカウンタコネクタ。
【請求項5】
前記溝、つば、または一連の開口、凹部または凸部が、前記ハウジングの筒状内周面に、周方向に形成されることを特徴とする請求項3に記載のカウンタコネクタ。
【請求項6】
前記カウンタコネクタが、ロック手段として、前記コネクタの半径方向に弾性的に撓ませることが可能な舌片の形状を有する相手方ラッチ部を備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のカウンタコネクタ。
【請求項7】
前記舌片の形状を有する部材が前記カウンタコネクタの遠位方向に延びていることを特徴とする請求項6に記載のカウンタコネクタ。
【請求項8】
前記カウンタコネクタがロック手段として相手方ラッチ部を備え、前記相手方ラッチ部がつる巻ばねを備えることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のカウンタコネクタ。
【請求項9】
前記相手方係合部または前記相手方ラッチ部には、前記カウンタコネクタの長手方向にテーパまたは面取りが施されていることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載のカウンタコネクタ。
【請求項10】
前記相手方ねじ山が多条ねじのねじ山であることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載のカウンタコネクタ。
【請求項11】
前記相手方ねじ山が前記ハウジングの筒状表面に配されることを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載のカウンタコネクタ。
【請求項12】
前記相手方係合部および前記相手方ねじ山が前記カウンタコネクタ
のハウジングの同じ筒状表面に形成されていることを特徴とする請求項11に記載のカウンタコネクタ。
【請求項13】
前記相手方係合部が前記ねじ山の遠位側に置かれることを特徴とする請求項12に記載のカウンタコネクタ。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載のカウンタコネクタと、前記カウンタコネクタと連結させることができる少なくとも1つのコネクタとを備えるシステムであって、前記コネクタが、a)プッシュ-プル・コネクタ、b)ブレーク-アウェイ・コネクタ、およびc)ねじ山付きコネクタの3つのタイプのうちの1つのタイプのコネクタである、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタと連結(mating)させるためのカウンタコネクタに関する。本発明は、カウンタコネクタおよび少なくとも1つのコネクタを備えるシステムにも関する。
【背景技術】
【0002】
電源またはデータ伝送のための接続など、不用意に遮断されないことが必要であるような、多くの応用分野がある。そのような例として、状態監視のために患者に接続される医療監視デバイス、またはデータ交換のために主コンピュータに接続される携帯型コンピュータがある。電源またはデータ・フローの遮断は、問題の発生や何らかの損傷の原因になり得る。したがって重要な用途の場合、例えば電気ケーブルまたはデータ・ケーブルのための接続が、例えばケーブルの重量またはケーブルの引張りによって解除されてしまう防止するのに適したロック・システムを有する接続を使用することが適切である。
【0003】
一方で、例えば過度に強くケーブルが引っ張られると、そのケーブルに接続されている、地面に落下し得るデバイスの損傷を回避するために、接続に特定の力が加えられると、その接続を自ら解除することが同じく望ましく、あるいは必要であり得る。このような例としては、キャスター付き折畳みベッドに横たわっている患者に接続される医療デバイスである。キャスター付き折畳みベッドを移動させる場合、接続がたまたま解除されないと、接続されているデバイスが地面に落下し、損傷する可能性が存在している。
【0004】
当技術分野では、ロック機構を有する接続のための多くの解決法が知られている。しばしば使用されているいくつかのロック機構は、いわゆるプッシュ-プル・ロック機構、ブレーク-アウェイ・ロック機構およびねじ山を利用した(thread-based)ロック機構である。
【0005】
知られている機構の各々は、所望のタイプのロック機構をもたらす方法で協働するように設計される一対のコネクタおよび整合するカウンタコネクタを利用している。
【0006】
例えばプッシュ-プル機構では、コネクタは、オペレータが握ってコネクタをカウンタコネクタと連結させ、かつ、カウンタコネクタにロックすることができる外部ハウジングを有している。ロックすることにより、プッシュ-プル・コネクタを備えたケーブルまたは装置を引っ張っても、コネクタがカウンタコネクタに確実に結合された状態が維持される。また、オペレータが外部ハウジングを引っ張ると、コネクタがアンロックされ、コネクタを分離することができる。この機能を達成するために、外部ハウジングは、通常、コネクタの内部ハウジングに対して長手方向(longitudinal direction)に移動することができ、また、ロック機構を動作させる。このようなロック機構の一例は、以下ではLP-タイプ・ロック機構と呼ばれており、また、この機構を使用しているコネクタはLP-タイプ・コネクタと呼ばれている。LP-タイプ・コネクタは、係合部として、コネクタの弾性ロック・フィンガーとして適用されたつめを備えている。ロック・フィンガーは、カウンタコネクタの相手方係合部と係合することができる。この相手方係合部は、例えば溝であってもよい。コネクタは、外部ハウジングが移動することにより、コネクタの締付部に対して長手方向に相対移動可能なスリーブをさらに備えており、したがってスリーブは、フィンガーをロック溝から離れる方向に湾曲させてアンロックする。LP-タイプ・コネクタの例は、欧州特許第1755197(B1)号明細書に開示されている。
【0007】
別のプッシュ-プル機構は、以下ではFP-タイプ・ロック機構と呼ばれており、また、この機構を使用しているコネクタはFP-タイプ・コネクタと呼ばれている。FP-タイプ・コネクタは、係合部として、カウンタコネクタの相手方係合部と係合可能なつめを備えている。この相手方係合部は例えば溝であってもよい。ロックするために、つめは、カウンタコネクタの相手方係合部とコネクタの円錐形スリーブの間に押し込まれ、この円錐形スリーブはコネクタの締付部に取り付けられ固定されている。つめは、外部ハウジングが移動することにより、コネクタの締付部に対して長手方向に相対移動できるよう構成されている。アンロックするために、外部ハウジングによって操作されるロック・フィンガーが円錐形スリーブを、それらの移動軌跡上から移動させ、それによりロック溝から自らを自由にする。FP-タイプ・コネクタの例はCH364543で知られている。
【0008】
第3のタイプのプッシュ-プル機構は、例えば米国特許第8764473(B2)号明細書に開示されているボール-ロック機構を使用している。この場合、ロックするために、コネクタの係合ボールは、カウンタコネクタの溝と係合する弾性部材によって保持される。アンロックするために、外部ハウジングは弾性部材を係合ボールから遠ざけて、それによりロック・ボールをロック溝から係合解除することができる。
【0009】
ティア-オフ機構とも呼ばれるブレーク-アウェイ機構は、必要に応じてケーブルを同じく引っ張ることによって接続を解放することができることを意味する緊急アンロック機能を提供している。あるブレーク-アウェイ・ロック機構では、コネクタのロック・フィンガーがカウンタコネクタに備えられた溝と係合し、コネクタとカウンタコネクタの間の信頼性の高い接続を形成している。テーパが施された、あるいは面取りされたロック・フィンガーの幾何構造のため、コネクタまたはケーブルに加えられる予め定められた引張り力が超過すると、直ちにコネクタの離脱または引抜きが保証される。
【0010】
スナップ-リング設計を有する別のブレーク-アウェイ・ロック機構は、衣料物品に用いられるスナップ-オン・ファスナーと概ね同様に動作し、コネクタが、カチッと入り、しっかりと保持され、適切な力が加えられた場合にのみコネクタ上を滑り出る。他のブレーク-アウェイ・ロック・システムは、コネクタの中に1つまたは複数のO-リングを使用して、摩擦に基づく所望の範囲のブレーク-アウェイ力を達成している。O-リングは、通常、コネクタのハウジング中に機械加工された溝にはめ込まれている。傾斜コイルばねが同様に、所望のブレーク-アウェイ力を提供するためにコネクタのハウジング中に配されている。ブレーク-アウェイ・ロック・システムの例は、欧州特許第2476167(B1)号明細書、欧州特許第2548272(B1)号明細書、欧州特許出願公開第2779322(A1)号明細書および米国特許出願公開第20080032533(A1)号明細書に開示されている。
【0011】
ねじ山を利用した(thread-based)ロック機構は、その名前が示唆しているように、カウンタコネクタの相手方ねじ山と係合するように適合されたねじ山を有するコネクタを使用している。また別の態様としては、ねじ山は、コネクタまたはカウンタコネクタが備えるカップリング・ナットの相手方ねじ山に篏合するように適合させることも可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】欧州特許第1755197(B1)号明細書
【文献】CH364543
【文献】米国特許第8764473(B2)号明細書
【文献】欧州特許第2476167(B1)号明細書
【文献】欧州特許第2548272(B1)号明細書
【文献】欧州特許出願公開第2779322(A1)号明細書
【文献】米国特許出願公開第20080032533(A1)号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、コネクタと連結させるための改良型カウンタコネクタを提供することである。詳細には、本発明は、プッシュ-プル、ブレーク-アウェイおよびねじ山に基づくロック・システムなどの複数のタイプのロック・システムを有するコネクタに対応する(compatible)カウンタコネクタを提供することを目的としている。本発明の別の目的は、カウンタコネクタおよび少なくとも1つのコネクタを備える改良型システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
特許請求の範囲における符号は、特許請求の範囲を限定することを意味しているのではなく、単に特許請求の範囲の可読性を改善する役割を果たしているにすぎない。本発明の文脈においては、1つ、2つまたは別の数の対象に対するあらゆる参照は、特に明確に言及されていない限り、それ以外の本発明におけるこのような対象の存在を排除しないものとして理解されるべきであることを意味している。
【0015】
本発明の一態様によれば、コネクタと連結させるためのカウンタコネクタによって課題が解決され、カウンタコネクタは請求項1に記載の特徴を備える。カウンタコネクタは中空筒状ハウジングを有し、また、カウンタコネクタをコネクタにロックするために、
a)カウンタコネクタのハウジングの筒状表面の周方向に、またはハウジングの内側に置かれるスリーブの筒状表面の周方向に配置され、溝、つば、または半径方向に延びる一連の開口、凹部または凸部の形態を有する相手方係合部であって、コネクタの少なくとも1つの係合部または少なくとも1つのラッチ部と係合するように適合される、相手方係合部、
b)カウンタコネクタの半径方向に弾性的に撓ませることができ、また、コネクタのラッチ部と係合するように適合される、半径方向に延びる溝、つば、開口、凹部または凸部のうちの少なくとも1つを備える相手方ラッチ部、および
c)コネクタのねじ山と係合するように適合される相手方ねじ山
の3つのタイプのロック手段のうちの少なくとも2つ、好ましくは3つを備える。
【0016】
このコネクタにより達成可能な利点は、複数のタイプのロック手段のため、複数のタイプのロック・システム、例えばプッシュ-プル、ブレーク-アウェイおよびねじ山に基づくロック・システムを含むグループのうちの2つ以上と共に使用することができることである。これは、カウンタコネクタの適切な利用範囲を広くすることができる。それは、標準化に貢献し、便利性を改善し、また、必然的にコスト節約をもたらすことができる。
【0017】
本発明の文脈においては、「筒状」という用語は、一般的な筒の形を意味している。一般的な筒の断面は必ずしも円形である必要はなく、任意の閉じた平面曲線の形、例えば楕円形を含む卵形、あるいは正方形を含む長方形の形を有することができる。しかしながら好ましいハウジングは円形の断面を有しており、したがって好ましいカウンタコネクタは円形のカウンタコネクタである。ハウジングの筒状内周面および筒状外周面は、本発明の意味の範囲内においてはいずれも「円筒状表面」である。したがって例えばハウジングの筒状表面の周上に配置される溝は、ハウジングの筒状内周面または筒状外周面のいずれかに周方向に配置することができる。
【0018】
ラッチ部は弾性的にたわませることができる、すなわち、ラッチ部は弾性を有するか、あるいは、ラッチ部に弾性的性質を有する他の部材が作用する。カウンタコネクタまたはコネクタに関して「半径方向」という場合、それは、カウンタコネクタまたはコネクタの長手方向の軸に対するものである。この語は、長手方向の軸から遠ざかる方向を示す、軸から外側に向かう半径方向、および、長手方向軸に向かう方向を示す、内側に向かう半径方向の両方を含む。
【0019】
本発明の別の態様によれば、カウンタコネクタと、カウンタコネクタと連結させることができる少なくとも1つのコネクタとを備えるシステムによって課題が解決される。この例のコネクタは、a)プッシュ-プル・コネクタ、b)ブレーク-アウェイ・コネクタ、およびc)ねじ山付きコネクタの3つのタイプのうちの1つのタイプのコネクタである。
【0020】
本発明の文脈においては、プッシュ-プル・コネクタは、(i)ケーブルまたは装置をカウンタコネクタに固定して取り付けるための締付部、(ii)カウンタコネクタの相手方係合部と係合し、それによりカウンタコネクタをコネクタにロックするための係合部、および(iii)締付部に対して相対移動することができ、また、カウンタコネクタをコネクタからアンロックするために、コネクタの外部ハウジングを締付部に対して相対移動させなければならないよう、係合部に機能的に接続される外部ハウジングを備えるコネクタである。締付部は、例えばケーブル・コレットであってもよい。ケーブル・コレットは、典型的には、コネクタの内部ハウジングの部分であるか、あるいはコネクタの内部ハウジングに剛直に取り付けられる。
【0021】
本発明の文脈においては、ブレーク-アウェイ・コネクタは、カウンタコネクタの相手方ラッチ部または相手方係合部の開口、凹部または凸部と係合し、それによりカウンタコネクタをコネクタにロックするための少なくとも1つのラッチ部を備える。係合は、コネクタおよびカウンタコネクタが、ラッチ部に固有の、またはラッチ部に作用する弾性によって定められる値より大きい力によって互いに引き離されると、コネクタをカウンタコネクタからアンロックするようになっている。
【0022】
本発明の文脈においては、ねじ山付きコネクタは、カウンタコネクタの相手方ねじ山と係合してカウンタコネクタをコネクタにロックするためのねじ山を備える。この例ではロックするためには、コネクタの相手方ねじ山がカウンタコネクタのねじ山にねじ込まれる。
【0023】
本発明の一態様によるカウンタコネクタは、装置に取り付けて、例えば装置のフロント・パネル上に配置することができるものである。本発明の一態様によるコネクタは、ケーブルを装置に接続する働きをする。この目的のために、コネクタにはケーブルに取り付けられてもよい。さらに、本発明の一態様では、コネクタが装置の上に配置される実施形態を同じく含み、このような実施形態では、カウンタコネクタにケーブルに取り付けられてもよい。他の実施態様では、カウンタコネクタおよびコネクタの両方がケーブルに取り付けられ、あるいは両方が装置の上に配置される。本発明は、任意の雌雄、雄および雌のカウンタコネクタおよびコネクタを包含している。好ましいカウンタコネクタおよびコネクタの一例は電気コネクタである。
【0024】
以下では、例によって本発明の種々の好ましい実施形態が示される。しかしながら本発明はこれらの例に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の実施形態によるカウンタコネクタの切断図である。図の上側の部分がハウジングの外側を示し、一方、図面の下側の部分では、ハウジングの頂部部分が切断されている。
【
図2】本発明の実施形態によるカウンタコネクタと係合しているボール-ロック・コネクタの切断断面図である。
【
図3】本発明の実施形態によるカウンタコネクタと係合しているブレーク-アウェイ・コネクタの切断断面図である。
【
図4】本発明の実施形態によるカウンタコネクタと係合しているねじ山付きコネクタの切断断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
単独で、あるいは組み合わせて適用することができる本発明の実施形態の好ましい特徴について、以下で、また、従属請求項に係る実施形態とともに説明する。
【0027】
本発明の好ましい実施形態では、カウンタコネクタおよび/またはコネクタは円形をなす。本実施形態の意味の範囲内では、ハウジングの遠位部分、すなわち対応する部分と連結することが予定されているハウジングの部分が円形の筒状断面を有している場合に、カウンタコネクタまたはコネクタが円形をなすという。このような(カウンター)コネクタによれば、(相手方)ロック手段として(相手方)ねじ山を容易に備えることができる。相手方係合部または相手方ラッチ部の好ましい溝またはつばは、全周溝および全周つば、すなわち筒状をなす表面の周方向全周に沿って設けられた溝およびつばである。したがって溝またはつばは、環状溝または環状つばである。円形の筒状表面の場合、溝またはつばは、円形の環状溝または円形の環状つばである。
【0028】
好ましくは、カウンタコネクタは、ロック手段として、コネクタ・ハウジングの筒状表面、好ましくはコネクタ・ハウジングの筒状外周面の周方向に形成された溝、つば、または一連の開口、凹部または凸部を備える。筒状外周面のロック手段は、ボール-ロック・タイプのコネクタの係合ボールとの係合のために適しており、この例では、係合ボールは、外側からカウンタコネクタのロック手段と係合する。
【0029】
代替的な実施形態では、溝、つば、または一連の開口、凹部または凸部は、ハウジングの筒状内周面に周方向に形成される。このような実施形態は、LP-タイプおよびFP-タイプのプッシュ-プル・コネクタと連結させるために適している。
【0030】
ロック手段がハウジングの内側に配されるスリーブ上に設けられる場合、スリーブは、カウンタコネクタのハウジングに取り付けられ、固定されていることが好ましい。カウンタコネクタがケーブルに取り付けられる場合、好ましくは、このスリーブは、ケーブルのシールドおよび/または接地線に電気的に接続されてもよい。
【0031】
カウンタコネクタは、カウンタコネクタの半径方向に弾性的にたわませることができる相手方ラッチ部を備え、また、コネクタのラッチ部と係合するように適合された、半径方向に延びる溝、つば、開口、凹部または凸部のうちの少なくとも1つを備えていることが好ましい。
【0032】
好ましいカウンタコネクタは、ロック手段として、コネクタの半径方向に弾性的に撓ませることのできる舌片状の相手方ラッチ部を備えている。このラッチのための舌状体は、好ましくは、カウンタコネクタ・ハウジングの内側に置かれたスリーブに取り付けられる。好ましいスリーブは、カウンタコネクタのハウジングに取り付けられて固定される。カウンタコネクタがケーブルに接続される場合、好ましくは、スリーブは、ケーブルのシールドおよび/または接地線に電気的に接続されてもよい。
【0033】
この舌状体は、カウンタコネクタの遠位方向に延びるものであることが好ましい。カウンタコネクタでは、遠位方向は、カウンタコネクタの長手方向に沿って、カウンタコネクタの遠位端に向かって延びる方向である。カウンタコネクタの遠位端は、コネクタと対向して、コネクタとのカウンタコネクタの連結が予定される端部である。したがってカウンタコネクタの近位端は、その遠位端の反対側の端部であり、また、カウンタコネクタの近位方向は、カウンタコネクタの長手方向に沿って延びる方向であり、カウンタコネクタの近位端を指している。
【0034】
相手方ラッチ部は、2個以上の舌状体、例えば3個、4個、5個、6個、7個または8個の舌状体を備えていることが好ましい。これらの舌状体は、スリーブ内に配され、スリーブの遠位端から長手方向に延びるスリットによって形成されることが好ましい。
【0035】
本発明の好ましい実施形態の一例では、相手方ラッチ部は、弾性を提供するためのつる巻ばねを備える。好ましいばねは、例えばBal Seal Engineering Inc., 19650 Pauling Foothill Ranch, CA 92610-2610, USAから入手できるBal Spring(登録商標)など、曲げられて閉じたリングを形成したものである。このばねは、例えばカウンタコネクタのハウジングまたはスリーブの筒状内周面または筒状外周面に、周方向に形成された環状溝の中に配されてもよい。このばねは、環状溝の形態を有するコネクタのラッチ部と好適に係合する。コネクタおよびカウンタコネクタが、ばねの弾性によって定められる値より大きい力によって互いに引き離されると、ばねが撓んでコネクタをカウンタコネクタからアンロックする。ばねの代わりに他のリング形弾性要素、例えばゴム・リング、または同じくBal Seal Engineering, Inc.,から入手可能なBal Seal(登録商標)が使用されてもよい。
【0036】
好ましいカウンタコネクタでは、相手方係合部または相手方ラッチ部は、カウンタコネクタの長手方向にテーパまたは面取りが施されている。これによると、相手方係合部または相手方ラッチ部と、コネクタにおけるその対応する係合部またはラッチ部との係合、およびコネクタにおけるその対応する係合部またはラッチ部からの、相手方係合部または相手方ラッチ部の係合解除を円滑にすることができる。
【0037】
カウンタコネクタの好ましい相手方ねじ山および/またはコネクタに対応するねじ山は、多条ねじ山(multi-start thread)である。本発明のこの実施形態により達成される利点は、カウンタコネクタとコネクタをロックし、また、アンロックするための角度間隔を小さくすることができ、例えば一回転未満にすることができることである。相手方ねじ山は、例えば2条ねじ山(2-start thread)、3条ねじ山(3-start thread)、4条ねじ山(4-start thread)、5条ねじ山(5-start thread)または6条ねじ山(6-start thread)であってもよい。同様に、カウンタコネクタの相手方ねじ山も、多条ねじ山、例えば2条ねじ山、3条ねじ山、4条ねじ山、5条ねじ山または6条ねじ山であることが好ましい。
【0038】
本発明の別の実施形態では、カウンタコネクタの相手方ねじ山および/またはコネクタの対応するねじ山は、レギュラーすなわち1条ねじ山(single-start thread)である。本発明のこの実施形態は、小さいカウンタコネクタおよびコネクタに有利な実施形態であり得る。
【0039】
カウンタコネクタの好ましい相手方ねじ山および/またはコネクタの整合するねじ山は、台形であっても、あるいは尖っていてもよい。カウンタコネクタの相手方ねじ山およびコネクタの対応するねじ山は、右ねじのねじ山であっても、左ねじのねじ山であってもよい。一般的には右利きの人が多いため、したがって反時計回りよりも時計回りのトルクを印加しやすいので、右ねじとすることが有利であり得る。
【0040】
相手方ねじ山は、カウンタコネクタのハウジングの筒状表面、好ましくはハウジングの筒状外周面に形成されることが好ましい。この方法によれば、コネクタの対応するねじ山に容易に係合させることができる。カウンタコネクタに係る代替的な実施形態では、相手方ねじ山は、カウンタコネクタに回転可能に取り付けられるカウンタコネクタのカップリング・ナットの筒状内周面に配される。この例では、ロックするためには、ナットがカウンタコネクタに対して回転される。
【0041】
カウンタコネクタに対応するねじ山は、ハウジング、好ましくはコネクタの内部ハウジング上に配されてもよいし、あるいはコネクタに回転可能に取り付けられるコネクタのカップリング・ナットの筒状内周面に配されてもよい。この例では、ロックするために、ナットがコネクタに対して回転される。
【0042】
好ましいカウンタコネクタは、ロック手段として少なくとも相手方係合部および相手方ねじ山部分を備えており、また、相手方係合部およびねじ山は、カウンタコネクタ・ハウジングの同じ筒状表面に配され、好ましくは筒状外周面に配される。
【0043】
相手方係合部は、ねじ山より遠位側に配されることが好ましい。相手方係合部がカウンタコネクタ・ハウジングの筒状外周面に配される場合、相手方係合部は、ねじ山の小径を越えて半径方向に外側に突出しないものであることが好ましい。同様に、相手方係合部がカウンタコネクタ・ハウジングの筒状内周面に配される場合、相手方係合部は、ねじ山の小径を越えて半径方向に内側に突出しないものであることが好ましい。この態様によれば、カウンタコネクタおよびコネクタが連結される際に、カウンタコネクタの相手方係合部がコネクタのねじ山の邪魔になるのを回避することができる。
【0044】
カウンタコネクタおよびコネクタのシステムは、カウンタコネクタおよび該カウンタコネクタと連結することができる2つ、より好ましくは3つのコネクタを備えていることが好ましく、個々のコネクタは、a)プッシュ-プル・コネクタ、b)ブレーク-アウェイ・コネクタ、およびc)ねじ山付きコネクタの3つのタイプのうちの少なくとも2つのタイプ、好ましくは3つのすべてのタイプのコネクタである。本発明のこの実施形態によれば、同じカウンタコネクタを複数のコネクタと連結させることができる。これは、カウンタコネクタの適切な用途の範囲を広くし、標準化に貢献し、便利性を改善し、また、結果としてコスト節約をもたらすことができる。
【0045】
好ましいプッシュ-プル・コネクタの一つは、例えば欧州特許第1755197(B1)号明細書に開示されているLP-タイプ・コネクタである。本発明の実施形態の文脈においては、LP-タイプ・コネクタは、係合部として、コネクタの弾性ロック・フィンガー上に係るつめを備えるコネクタである。これらのつめは、カウンタコネクタの相手方係合部と係合可能となっている。ここで相手方係合部は例えば溝であってもよい。コネクタは、外部ハウジングを移動することにより、コネクタの締付部に対して長手方向に移動することができるスリーブをさらに備えており、この例ではスリーブは、フィンガーをロック溝から離れる方向に湾曲させてアンロックする。
【0046】
別の好ましいプッシュ-プル・コネクタの一つは、例えばCH364543に開示されているFP-タイプ・コネクタである。本発明の実施の形態の文脈においては、FP-タイプ・コネクタは、係合部として、カウンタコネクタの相手方係合部と係合することができるつめを備えるコネクタである。ここで相手方係合部は、例えば溝であってもよい。ロックするために、つめは、カウンタコネクタの相手方係合部とコネクタの円錐スリーブの間に押し込まれ、この円錐スリーブはコネクタの締付部に取り付けられて固定されている。つめは、外部ハウジングを移動させることにより、コネクタの締付部に対して長手方向に相対移動可能となっている。アンロックするために、外部ハウジングによって操作されるロック・フィンガーが円錐スリーブをそれらの移動軌跡上から移動させ、それによりロック溝から自らを自由にする。
【0047】
さらに別の好ましいプッシュ-プル・コネクタは、例えば米国特許第8764473(B2)号明細書に開示されているボール-ロック・コネクタである。本発明の実施形態の文脈においては、ボール-ロック・コネクタは、ロックするために、コネクタの係合ボールがカウンタコネクタの溝と係合するコネクタである。アンロックするために、係合ボールは、外部ハウジングの移動によって係合から動的に解放され、すなわち相手方係合部からの係合解除が許容される。
【0048】
好ましいブレーク-アウェイ・コネクタの一つは、ラッチ部として、カウンタコネクタの半径方向に弾性的にたわませることができるラッチ・フィンガーを備えるものである。このラッチ部は、カウンタコネクタの相手方ラッチ部の開口、凹部または凸部と係合するように、あるいはカウンタコネクタの相手方係合部の溝、つば、または一連の開口、凹部または凸部と係合するように適合された開口、凹部または凸部のうちの少なくとも1つを備えるものでよい。
【0049】
本発明の好ましい実施形態についての以下の説明では、同一の符号は、同一の構成要素または同様の構成要素を表している。
【0050】
図1に示されているカウンタコネクタ1は、カウンタコネクタ1をコネクタ3にロックするために、a)カウンタコネクタ1のハウジング2の筒状外周面5に、周方向に形成された、溝の形状を有する相手方係合部4と、b)カウンタコネクタ1の半径方向に弾性的に撓ませることの可能な舌片状の形状を有する相手方ラッチ部6と、c)相手方ねじ山7と、の3つのタイプのロック手段を有する中空円形筒状ハウジング2を備えている。
【0051】
このカウンタコネクタ1は例えば電気コネクタであり、したがってケーブル(図示せず)のリード線をカウンタコネクタに取り付けるためのはんだ付けラグ8を備えている。取付けねじ山10と係合するナット9、およびカウンタコネクタ1のシール16を使用して、カウンタコネクタ1を装置のハウジング(図示せず)に取り付けることができ、例えば種々の装置ハウジングのコネクタ・パネルに取り付けることができる。
【0052】
図2は、カウンタコネクタ1の相手方係合部4が、ボール-ロック・コネクタ3の係合ボール11と係合している状態を示すものである。相手方係合部4は全周に亘る環状溝であり、面取りされた面を有している。係合ボール11は、相手方係合部4の溝とコネクタ3の円錐状支持部12の間にクランプされている。この溝は、同じく
図2に示されている相手方ねじ山7の遠位側に存在しているため、カウンタコネクタ1とコネクタ3が互いに連結し、あるいは互いに取り外される際に、ねじ山が係合ボール12を邪魔することはない。コネクタ3のゴム・シール・リング13はカウンタコネクタ1の封止面14と係合し、流体やほこりがコネクタ3とカウンタコネクタ1の間の領域に入るのを防止する。
【0053】
図3は、カウンタコネクタ1の相手方ラッチ部6が、ブレーク-アウェイ・コネクタ3のラッチ部15と係合している状態を示すものである。相手方ラッチ部6は、カウンタコネクタ1の半径方向に弾性的に撓ませることが可能な、複数の舌片状の形状の部材を有するものとして示される。
【0054】
この舌片状の形状を有する舌状体は、カウンタコネクタのハウジング2の内側に配され、また、このハウジング2に取り付けて固定されたスリーブ17に取り付けられている。スリーブ17は、遮蔽のためのはんだ付けラグ8またはケーブルの接地線に電気的に接続されている(図示せず)。この舌状体は、カウンタコネクタの遠位方向に延び、また、スリーブ17内に、長手方向に延びるスリット18を設けることによって形成されており、スリット18はスリーブ17の遠位端から延びている。カウンタコネクタ1のゴム・シール・リング19はコネクタ3の封止面20と係合し、流体やほこりがコネクタ3とカウンタコネクタ1の間の領域に入るのを防止している。
【0055】
図1に最も良好に示されているように、舌状体の端部は、半径方向に外側に突出している突起21を備えている。突起21は、コネクタ3のハウジングの筒状内周面23の、平たく面取りされた溝22と係合している。突起21にも、同様に、詳細にはそれらの遠位側に面取りが施され、カウンタコネクタ1がコネクタ3にロックされる際の係合を円滑にしている。カウンタコネクタ1の近位側の別の面取り、およびコネクタ3の溝の近位側の対応する面取りは、舌状体およびシール・リング19の弾性と相俟って、カウンタコネクタ1およびコネクタ3を互いに引き離すことによってカウンタコネクタ1をコネクタ3からアンロックするために必要な力を提供する。
【0056】
図4には、ねじ付きコネクタ3のねじ山24と係合している相手方ねじ山7が示される。コネクタ3およびカウンタコネクタ1の両方のねじ山24,7は3条ねじ山である。カウンタコネクタ1の相手方ねじ山7は、相手方係合部4の環状溝が形成された表面と同じ表面である、カウンタコネクタ1のハウジング2の筒状外周面に形成されている。
【0057】
このコネクタ3のねじ山24は、コネクタ3のハウジングに回転可能に取り付けられたナット25の筒状内周面に形成されている。コネクタ3のゴム・シール13はカウンタコネクタ1の封止面14と係合し、流体やほこりがコネクタ3とカウンタコネクタ1の間の領域に入るのを防止している。
【0058】
図面に示されているカウンタコネクタ1内に設けられた3つのタイプのロック手段により、カウンタコネクタ1は、3つのタイプのコネクタ3、すなわちプッシュ-プル・コネクタ、ブレーク-アウェイ・コネクタおよびねじ付きコネクタと共に使用可能となる。ロック手段は、それらが互いに、あるいは3つのタイプのコネクタ3の対応するロック手段と干渉しない態様でカウンタコネクタ1の上に配されている。それによりカウンタコネクタ1は、カウンタコネクタ1を使用することができる用途の範囲を拡大できる。カウンタコネクタ1は、異なるタイプのコネクタ3のための標準カウンタコネクタ1として、標準化に寄与し、便利性を改善し、また、結果としてコスト節約をもたらすことができる。