(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-01
(45)【発行日】2023-02-09
(54)【発明の名称】熱交換器
(51)【国際特許分類】
F28F 1/06 20060101AFI20230202BHJP
F28D 7/16 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
F28F1/06
F28D7/16 A
(21)【出願番号】P 2020505172
(86)(22)【出願日】2018-08-01
(86)【国際出願番号】 GB2018052194
(87)【国際公開番号】W WO2019025793
(87)【国際公開日】2019-02-07
【審査請求日】2021-06-10
(32)【優先日】2017-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】515137174
【氏名又は名称】ハイエタ・テクノロジーズ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フセイン、アーメド
(72)【発明者】
【氏名】ビヌアレス ナバロ、ハビエル
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0099453(US,A1)
【文献】国際公開第2005/036086(WO,A1)
【文献】実開昭54-079048(JP,U)
【文献】国際公開第2017/033306(WO,A1)
【文献】特開昭46-003389(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 7/00-7/16
F28F 1/00-1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換器であって、
複数の流体流れチャネル
を有し、
前記流体流れチャネルのうちのうちの少なくとも1つが、該チャネルの長さの少なくとも一部に沿って延びる少なくとも1つの波状面部を有する少なくとも1つの熱交換面を有し、前記少なくとも1つの熱交換面は、前記熱交換器の補助面を有し、
各波状面部に関して、
所定の方向に一直線になされた前記波状面部の第1の縁部に沿って、前記熱交換面のプロファイルが、前記所定の方向に対応する進行方向を有する第1の横波にしたがって変化し、
前記所定の方向に一直線になされた前記波状面部の第2の縁部に沿って、前記熱交換面のプロファイルが、前記所定の方向に対応する進行方向を有する第2の横波にしたがって変化し、また
前記第1の縁部と前記第2の縁部との間にある前記波状面部の中間部分において、前記熱交換面のプロファイルが、前記所定の方向に対応する進行方向を有する第3の横波にしたがって変化し、
前記第3の横波は、前記第1の横波及び前記第2の横波のうちの少なくとも一方とは異なる位相、異なる振幅、及び異なる周波数のうちのうちの少なくとも1つを有し、それにより前記波状面部に1つ又は複数の山型の隆起部又は谷間部を提供する、熱交換器。
【請求項2】
前記所定の方向は、前記流体流れチャネルを通る流体の流体流れ方向に一致する、請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記第1の横波、前記第2の横波、及び前記第3の横波のうち少なくとも1つの周波数、振幅、及び位相のうちの1つ又は複数が、前記所定の方向において変化している、請求項1又は請求項2に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記第1の横波は、前記第2の横波と同じ位相、振幅、及び周波数を有する、請求項1から3までのいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項5】
前記第3の横波は、前記第1の横波及び第2の横波のうちの少なくとも一方と位相がずれている、請求項1から4までのいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項6】
前記第3の横波は、前記第1の横波及び前記第2の横波のうちの少なくとも一方と周波数が異なる、請求項1から4までのいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項7】
前記第3の横波は、前記第1の横波及び前記第2の横波のうちの少なくとも一方と振幅が異なる、請求項1から6までのいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項8】
前記第3の横波は、前記第1の横波及び前記第2の横波のうちの少なくとも一方と波形が異なる、請求項1から7までのいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項9】
前記山型の隆起部又は谷間部の頂点が、前記第1の縁部と第2の縁部との中間にある、請求項1から8までのいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項10】
前記山型の隆起部又は谷間部のうちの少なくとも一方は、前記第1の縁部及び前記第2の縁部の一方の近くに、したがって他方より近くにある頂点を有する、請求項1から8までのいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項11】
前記少なくとも1つの熱交換面は、1つの波状面部の前記第1の縁部が別の波状面部の前記第2の縁部と隣接する状態で並んで配置される複数の前記波状面部を有する、請求項1から10までのいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項12】
前記少なくとも1つの熱交換面は、前記少なくとも1つの波状面部において、ほぼ一定の厚さを有する、請求項1から11までのいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項13】
前記少なくとも1つの熱交換面は、前記少なくとも1つの流体流れチャネルの壁を有する、請求項1から12までのいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項14】
前記少なくとも1つの熱交換面は、前記少なくとも1つの流体流れチャネル内に内部フィンを有する、請求項1から13までのいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項15】
前記内部フィンは、前記所定の方向に、前記熱交換
面の全長より短い長さに沿って延びている、請求項
14に記載の熱交換器。
【請求項16】
前記熱交換器は、固結材料の一体塊を有する、請求項1から15までのいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項17】
少なくとも2つの熱交換面を有し、前記少なくとも2つの熱交換面の第1の面上の前記波状面
部は、前記少なくとも2つの熱交換面の第2の面上の波状面
部と異なる、請求項1から16までのいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項18】
システムであって、
燃料を燃焼させることによって熱を発生させる燃焼器と、
前記燃焼器によって排出される排気ガスから熱を回収する復熱器と
を有し、
前記復熱器は、請求項1から17までのいずれか一項に記載の熱交換器を有する、システム。
【請求項19】
熱交換器を製造する方法であって、
複数の流体流れチャネルを形成するステップ
を含み、
前記流体流れチャネルのうちの少なくとも1つは、前記チャネルの長さの少なくとも一部に沿って延びる少なくとも1つの波状面部を有する少なくとも1つの熱交換面を有し、前記少なくとも1つの熱交換面は、前記熱交換器の補助面を有し、
各波状面部に関して、
所定の方向に一直線になされた前記波状面部の第1の縁部に沿って、前記熱交換面のプロファイルが、前記所定の方向に対応する進行方向を有する第1の横波にしたがって変化し、
前記所定の方向に一直線になされた前記波状面部の第2の縁部に沿って、前記熱交換面のプロファイルが、前記所定の方向に対応する進行方向を有する第2の横波にしたがって変化し、また
前記第1の縁部と前記第2の縁部との間にある前記波状面部の中間部分において、前記熱交換面のプロファイルが、前記所定の方向に対応する進行方向を有する第3の横波にしたがって変化し、
前記第3の横波は、前記第1の横波及び前記第2の横波のうちの少なくとも一方とは異なる位相、異なる振幅、及び異なる周波数のうちのうちの少なくとも1つを有し、それにより前記波状面部に1つ又は複数の山型の隆起部又は谷間部を提供する、方法。
【請求項20】
前記熱交換器は、付加製造を用いて作られる、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、熱交換器の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
熱交換器は、流体が流れることのできるいくつかの流体流れチャネルを備えることができ、その結果、熱交換器のそれぞれのチャネル内の流体によって熱を交換することができる。熱交換器は、例えば、内燃機関又はガス・タービンの排気ガスから熱を回収する復熱器(レキュペレータ)としての様々な用途で、又は発電システム又は換気システムなどの他の用途において、有用となり得る。
【発明の概要】
【0003】
少なくとも実例は、熱交換器であって、複数の流体流れチャネルを備え、流体流れチャネルのうちの少なくとも1つは、チャネルの長さの少なくとも一部に沿って延在する少なくとも1つの波状面部を有する、少なくとも1つの熱交換面を有し、少なくとも1つの熱交換面は、熱交換器の補助面(裏面)を有し、波状面部ごとに、所定の方向に揃えられた(すなわち一直線になされた)波状面部の第1の縁部に沿って、熱交換面のプロファイルは、所定の方向に対応する進行方向を有する第1の横波に応じて変化し、所定の方向に揃えられた波状面部の第2の縁部に沿って、熱交換面のプロファイルは、所定の方向に対応する進行方向を有する第2の横波に応じて変化し、第1の縁部と第2の縁部との間にある波状面部の中間部分で、熱交換面のプロファイルは、所定の方向に対応する進行方向を有する第3の横波に応じて変化し、前記第3の横波は、前記第1の横波及び前記第2の横波のうちの少なくとも一方とは異なる位相、異なる振幅、及び異なる周波数のうちの少なくとも1つを持って、波状面部に1つ又は複数の山型の隆起部又は谷間部を備える熱交換器を提供する。
【0004】
少なくともいくつかの実例は、熱交換器を製造する方法であって、複数の流体流れチャネルを形成するステップを含み、流体流れチャネルのうちの少なくとも1つは、チャネルの長さの少なくとも一部に沿って延在する少なくとも1つの波状面部を有する、少なくとも1つの熱交換面を有し、少なくとも1つの熱交換面は、熱交換器の補助面を有し、波状面部ごとに、所定の方向に整列した(すなわち一直線になされた)波状面部の第1の縁部に沿って、熱交換面のプロファイルは、所定の方向に対応する進行方向を有する第1の横波に応じて変化し、所定の方向に整列した波状面部の第2の縁部に沿って、熱交換面のプロファイルは、所定の方向に対応する進行方向を有する第2の横波に応じて変化し、第1の縁部と第2の縁部との間にある波状面部の中間部分で、熱交換面のプロファイルは、所定の方向に対応する進行方向を有する第3の横波に応じて変化し、前記第3の横波は、前記第1の横波及び前記第2の横波のうちの少なくとも一方とは異なる位相、異なる振幅、及び異なる周波数のうちの少なくとも1つを持って、波状面部に1つ又は複数の山型の隆起部又は谷間部を備える方法を提供する。
【0005】
少なくとも実例は、システムであって、燃料を燃焼させることによって熱を発生させる燃焼器と、燃焼器によって排出される排気ガスから熱を回収する復熱器とを備え、復熱器が、上記で論じた熱交換で構成される、システムを提供する。
【0006】
少なくともいくつかの実例は、上記で論じた熱交換器の設計を表すコンピュータ可読データ構造を提供する。このデータ構造は、記憶媒体に格納され得る。記憶媒体は、非一時的な記憶媒体であり得る。
【0007】
本技法のさらなる態様、特徴、及び利点は、以下の添付図面と併せて読まれるべき、実例の以下の説明から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】熱電併給(CHP:combined heat and power)システムにおいて復熱器として使用される熱交換器の実例を概略的に示す図である。
【
図2】流体流れチャネルを備える熱交換器の実例を示す図である。
【
図3】波状面部を含む、熱交換器の流体流れチャネルのうちの1つの熱交換面の実例を示す図である。
【
図5】熱交換チャネルを内部的に細分する内部フィンが波状面部を含む実例を示す図である。
【
図6】波状面部が、縁部での波状面部の部分に対応する波とは異なる振幅を持つ横波で変化するプロファイルを持つ中間部分を有する実例を示す図である。
【
図7】波状面部の山型の隆起部及び谷間部の頂点が、一方の縁部の近くに、他方の縁部よりも近くにある実例を示す図である。
【
図8】波状面部の中間点での第3の横波が、波状面部の縁部での第1及び第2の横波と異なる周波数を有する実例を示す図である。
【
図9】熱交換面が、並んで配置された複数の波状面部を有する実例を示す図である。
【
図10】付加製造を用いて熱交換器を製造するための、製造設備の一実例を示す図である。
【
図12】
図3に示す熱交換面を持つチャネルを通る流体の流れの数値流体力学(CFD:computational fluid dynamics)シミュレーションによって得られた速度流線図の上面図及び正面図である。
【
図13】
図3に示す熱交換面を持つチャネルを通る流体の流れの数値流体力学(CFD)シミュレーションによって得られた速度流線図の側面図である。
【
図14】比較のために、流体が、
図12及び
図13に示す方向と反対の方向にチャネルを通って流れる場合における、CFDによって得られた速度流線図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
熱交換器は、いくつかの流体流れチャネルを備える。流体はチャネルを通って流れ、隣接するチャネルを通って流れる流体と熱を交換できる。いくつかの実例では、熱交換器は、第1及び第2の流体が熱交換できるように、第1及び第2の流体が流れるための交互のチャネルを有することができる。しかし、所与のチャネルを通って流れる流体は、チャネルの壁にくっつきがちになる可能性があり、それによってチャネルの壁に隣接する流体と、壁からさらにチャネルの中心にある流体との間で、混合する量がかなり少ない場合がある。これにより、チャネルの中心にある流体が、チャネルの境界を介して隣にあるチャネル内の流体と熱交換する機会がより少なくなるので、熱交換器の有効性が低下する恐れがある。
【0010】
下記の熱交換器では、流体流れチャネルのうちの少なくとも1つは、チャネルの長さの少なくとも一部に沿って延在する少なくとも1つの波状面部を有する、少なくとも1つの熱交換面を備える。波状面部ごとに、所定の方向に揃えられた波状面部の第1の縁部に沿って、熱交換面のプロファイルは、所定の方向に対応する進行方向を有する第1の横波に応じて変化し、所定の方向に揃えられた波状面部の第2の縁部に沿って、熱交換面のプロファイルは、所定の方向に対応する進行方向を有する第2の横波に応じて変化し、第1の縁部と第2の縁部との間にある波状面部の中間部分において、熱交換面のプロファイルは、所定の方向に対応する進行方向を有する第3の横波に応じて変化する。第3の横波は、第1の横波及び第2の横波のうちの少なくとも一方とは異なる位相、異なる振幅、及び異なる周波数のうちのうちの少なくとも1つを有し、波状面部に1つ又は複数の山型の隆起部又は谷間部を設ける。
【0011】
したがって、波状面部は、波の形の面プロファイルを有し、波状面部の中間部分の波は、波状面部の縁部の第1及び第2の横波のうちの少なくとも一方とは異なる位相、異なる振幅、及び異なる周波数のうちのうちの少なくとも1つを有する。これは、波状面部に1つ又は複数の山型の隆起部又は谷間部が設けられることを意味する。こうした山型の隆起部及び谷間部は、流体が熱交換面から離れるよう流れを導き、流体流れチャネル内の流体の混合を促す助けとなり、その結果、チャネルの長手方向に沿ってずっと、いくらかの量の流体がチャネルの中心に留まる可能性はより低くなる。流れが谷間部の凹面の上を通過して山型の頂点のそれぞれの側に逆回転する渦を形成し、それが流れの分離及び再付着の局所的なゾーンを生成するので、熱の伝達性が向上する。面のプロファイルが、所定の方向に垂直な方向に、面を横切ってずっと同じ波のプロファイルをたどる面とは異なり、第3の横波を第1及び第3の横波とは異なる形状にして山型の隆起部及び谷間部を形成することにより、より少ない圧力降下を実現し、熱交換の効率を改善することができる。かかる波の形のプロファイルを有する面を作ることは、鋳造又は成形などの従来の手段を使用すると難しい場合があるが、付加製造を使用することにより、複雑にパターン化された面を製造することが可能である。したがって、上記で論じた波状面部を有する少なくとも1つのチャネルを備えた熱交換器は、より良好な熱交換特性を実現し、その製造は現実的である。
【0012】
いくつかの実例では、第1及び第2の横波は、異なる位相、異なる振幅、及び/又は異なる周波数を有してもよい。これにより、波状面部の面プロファイルの制御に、高い自由度が与えられる。
【0013】
しかし、他の実例では、第1の横波は、第2の横波と同じ位相、振幅、及び周波数を有してもよい。したがって、波状面部の縁部での面プロファイルは、所定の方向に沿って同じように変化してもよいが、中間部分に、面プロファイルの変化の異なる横波パターンが存在する。
【0014】
一実例では、第3の横波は、第1の横波及び第2の横波のうちの少なくとも一方と位相がずれていてもよい。したがって、山型の隆起部又は谷間部の頂点は、縁部よりも、波状面部の中間部分での、所定の方向に沿った異なる位置で生じる。これにより、所定の方向又は所定の方向と反対の方向に向いている山型の隆起部が生じ、これは、流体の混合を促すための周期的な再循環パターンを促す、効果的な面プロファイルであることが判明した。
【0015】
別の実例では、第3の横波は、第1及び第2の横波のうちの少なくとも一方とは異なる周波数を有してもよい。したがって、面は、波状面部の中心に、縁部と比較して、より多い又はより少ない数の隆起部又は谷間部を有することができる。
【0016】
別の実例では、第3の横波は、第1及び第2の横波のうちの少なくとも一方とは異なる振幅を有してもよい。したがって、波状面部の中間部分での谷間部の深さと隆起部の高さとの差は、波状面部の縁部での隆起部の高さと谷間部の深さとの差よりも大きく又は小さくすることができる。やはりこれにより、波状面部を横切って延在する山型の隆起部及び谷間部が生じ、これが流体の混合を促すのに役立つ。
【0017】
いくつかの実例では、第1、第2、及び第3の横波のそれぞれは、同じ波形を有してもよい。しかし、第3の横波が、第1及び第2の横波のうちの少なくとも一方とは異なる波形を有することも可能である。いくつかの相異なる波形を使用できるが、特に有用な波形には、正弦波又は三角波が含まれ得る。正弦波又は三角波は、高さの急激な変化を回避するのに有用であり(付加製造は、特定の角度の閾値を超えて、上層のオーバーハングがある場合、材料の下層の上に上層を構築できないという制限を課す可能性があるので)、これにより、付加製造技法によって波状面部をより簡単に製造できる。にもかかわらず、他の波形も使用できる。第1、第2、及び第3の横波の波形は、規則的である必要はなく、例えば、高調波又は信号成分のセットの重ね合わせであってもよい。例えば、場合によっては、第1、第2、又は第3の横波には、あるピークから次の谷までの周期が、ある谷から次のピークまでの周期と異なる波形、又は周期内の不規則な間隔で、周期ごとに複数のピーク/谷を有する波形も含まれ得る。
【0018】
いくつかの実例では、山型の隆起部又は谷間部の頂点は、第1の縁部と第2の縁部との中間にある。したがって、山型は、第1の縁部と第2の縁部との中間点にある頂点の両側に、等しいサイズの山型の部分があるように、対称にすることができる。代替として、山型の隆起部又は谷間部のうちの少なくとも一方は、頂点が、第1の縁部及び第2の縁部の一方の近くに、他方より近くにあってもよい。この場合、頂点の一方の側の部分が他方の側の部分よりも大きくなり得るので、山型は非対称であり得る。
【0019】
いくつかの流体流れチャネルは、上記で論じた、チャネルの幅を横切って配置された単一の波状面部を備えることができる。しかし、1つの波状面部の第1の縁部が別の波状面部の第2の縁部に隣接した状態で、複数のかかる波状面部を熱交換面内に並べて配置することも可能である。この場合、隣接する波状面部の山型の隆起部は結合し、W字型の隆起部又はジグザグ型の隆起部を形成できる。代替として、隣接する波状面部の山型は互いに位相がずれていてもよく、その場合、いくつかの別個の山型は、所定の方向に直交する方向に波状面部を横切って設けられ得るが、山型が、熱交換面内の相異なる波状面部では所定の方向に沿った異なる位置に配置されているので、隣接する波状面部に結合しない。
【0020】
少なくとも1つの熱交換面は、少なくとも1つの波状面部において、ほぼ一定の厚さを有することができる。したがって、波状面部の面プロファイルが上記で論じた波のパターンで変化してもなお、厚さは、面上の所与の箇所に位置する波の箇所にかかわらず、同じままである(製造公差の範囲内)。これは、流体の混合を促すために設けられた熱交換面の波の形の面が、チャネルの壁を介して熱を伝導する能力を損なうことのないように、波状面全体にわたって一貫した熱伝導性を確保するのに役立つことができる。
【0021】
場合によっては、波状の熱交換面は、熱交換面が設けられている流体流れチャネルの壁を有してもよい。代替として、熱交換面は、所与の流体流れチャネルを部分的に細分する内部フィンであってもよい。内部フィンは、熱交換チャネルの全長に沿って通っている必要はない。内部フィンは、そうではなくて、所定の方向に、熱交換チャネルの全長より短い長さに沿って延在し得る。複数のフィンを備えている場合、こうしたフィンは、チャネルの長手方向に沿ってずれた位置に、間に間隙を設けて配置され得る。場合によっては、内部フィンの、チャネル内で所定の方向に直交する方向である横方向位置は、ずれているか、又は互い違いであってもよい。
【0022】
所定の方向は、流体流れチャネルを通る、流体の流体流れ方向に対応する。例えば、流体流れ方向は、流体流れチャネルの長軸に対応し得る。流体流れチャネルは、いくつかの実施例では、まっすぐなチャネルに対応することができるが、曲がるか又は蛇行する経路若しくは旋回して曲がる経路をたどることもでき、したがって場合によっては、流体流れ方向はまっすぐではないかもしれず、湾曲した経路をたどる場合があることに留意されたい。この場合、第1、第2、及び第3の横波も、湾曲した経路をたどり得る。第1、第2、及び第3の横波を、流体流れ方向に対応する進行方向を持つように配向することにより、これは、チャネルを通過する流体が、波状面部の山型の隆起部及び谷間部を交互に横切ることを意味するので、熱交換器により高い効率をもたらし、そしてチャネルの長さに沿って周期的な間隔で流体の再循環を促し、それによって隣接するチャネルの流体に熱を伝導できるいずれの面からも、所与の量の流体が遠ざかったままになる可能性をより低くする。
【0023】
熱交換器は、例えば付加製造を用いて作られる、固結物の集積された塊から構成され得る。これは、それぞれのチャネルがいくつかの別個の部品から製造される場合の熱交換器とは対照的である。したがって、波状面部を有する少なくとも1つの熱交換面を備える流体流れチャネルは、材料の単体から1つの実体として一体に形成され得る。
【0024】
上記の熱交換器は、様々な工学的システムで使用できる。しかし、上記の熱交換器は、燃料を燃焼させることで熱を発生させる燃焼器と、燃焼器によって排出される排気ガスから熱を回収する復熱器とを有するシステムで、特に有用であり得る。復熱器は、上記で論じた熱交換器を有することができる。かかるシステムでは、しばしば、コンパクトさが重要な要件になることがあり得る。熱交換器の効率を改善することにより、所与の量の熱交換を実現するのに、より短いチャネルで十分であり得るので、熱交換器をより小さくできることが多い。
【0025】
例えば、熱交換器は、付加製造を用いて形成することができる。付加製造では、物品全体を生産するために、材料の層を次々と連続的に積み上げることにより、物品を製造することができる。例えば、付加製造は、選択的レーザ溶解、選択的レーザ焼結、電子ビーム溶解などによるものであり得る。熱交換器に使用される材料はいろいろであり得るが、いくつかの実例では、金属、例えばアルミニウム、チタン、若しくは鋼であってもよく、又は合金であってもよい。場合によっては、熱交換器を単一のプロセスで形成することができ、それにより、熱交換器のそれぞれの部分を構成する層を、付加製造を用いて首尾良く敷くことができる。
【0026】
付加製造プロセスは、製造されるべき設計の特性を表す電子設計ファイルを与え、設計ファイルをコンピュータに入力し、コンピュータが設計ファイルを製造装置に与えられる指示に変換することにより制御され得る。例えば、コンピュータは、3次元の設計を連続する2次元の層にスライスし、例えば、対応する層を形成するように、パウダ・ベッドを横切るレーザ走査を制御するために、各層を表す命令を付加製造機に供給することができる。したがって、いくつかの実施例では、物理的に熱交換器を提供するのではなく、本技法は、上記で論じた熱交換器の設計を表すコンピュータ可読データ構造(例えば、コンピュータ自動設計(CAD:computer automated design)ファイル)でも実現され得る。このように、熱交換器を物理的な形で販売するのではなく、付加製造機を制御してかかる熱交換器を形成するデータの形で販売することもできる。データ構造を格納する記憶媒体が提供されてもよい。
【0027】
図1は、熱交換器4を有するシステム2の実例を概略的に示す。本実例では、システム2は、家庭用にエネルギーを供給する熱電併給(CHP)に使用されるマイクロ・タービン・エンジンを有する。燃焼器306は、燃料(例えば、ガス)を燃焼させる。燃焼器が取込む空気は、燃焼器306からの排気ガスによって駆動されるタービン310によって駆動されるコンプレッサ308によって圧縮される。タービン及び圧縮機308は、タービンの回転をベースに電力を生成する発電機312と共に、共通のシャフトに取り付けられている。電力は、家庭用の電力供給の一部として供給できる。
【0028】
タービン310を駆動した燃焼器306からの排気ガスは、第1の流体と第2の流体との間の熱交換のための交互のチャネルを備える熱交換器を有する復熱器4に送られる。排気ガス中の熱は、燃焼器へ取込む圧縮空気を予熱するために使用され、それにより空気は、燃焼器に入る際により高い温度になり、燃焼器306の燃焼効率を改善することができる。復熱器4を通過した後、排気ガスは、例えば、加熱要素314で家庭での給水又は家庭内のセントラル・ヒーティングに加熱するために回収できるいくらかの熱を依然として含み、次いで排気ガスは、通気口316で外部に排気される。復熱器4に入る、燃焼器が取込む空気は、燃焼器306及びタービン310からの排気ガスよりも高圧である。なぜなら、取込む空気は圧縮機308によって圧縮され、排気ガスはタービン310によって膨張されているからである。
【0029】
もちろん、
図1は熱交換器の1つの活用事例を示しているが、上記及び下記の熱交換器は、他の多くの工学的用途にも使用できることが理解されよう。
【0030】
図2は、熱交換器4の実例をより詳細に示す。熱交換器は、
図2の上部に示す流体流れ方向に、いくつかの流体流れチャネル6を備え、それを通って流体が流れることができる。高温流体(第1の流体)及び低温流体(第2の流体)がそれぞれ流れるように、いくつかの高温チャネル及び低温チャネルが交互に設けられる。例えば
図1のシステムでは、高温流体は、タービン310を出た燃焼器306からの排気ガスであってもよく、低温流体は、排気ガス熱を使用して予熱される、圧縮機308からの圧縮された取込み空気(吸気)であってもよい。高温の入口導管又は低温の入口導管からそれぞれ流体を分配し、それぞれの高温又は低温のチャネル間で流体を適宜分けるために、マニホールドが設けられる。熱交換器は、高温及び低温の流体がチャネルを通って対応する方向に流れる並流型熱交換器であってもよく、又は高温の流体が低温の流体と反対方向に流れる向流型熱交換器であってもよい。
【0031】
本実例では、高温チャネル及び低温チャネルは、
図2に示すY軸に沿って延在する、主要チャネル壁8によって分離される。加えて、各高温又は低温チャネル内で、いくつかの領域が、高温チャネルの相異なる部分又は低温チャネルの相異なる部分を互いに分割する補助面10によって内部的に細分される。熱交換の主要機構は、高温チャネルと低温チャネルとの間の主要チャネル壁8を介しているが、補助面10によって高温チャネル内又は低温チャネル内で内部的に細分することで、それを介して主要壁8に熱を伝導できるさらなる面が設けられている。補助面10は、流体流れチャネル6の全長に沿って流体流れ方向に延在するさらなる壁であってもよく、又はチャネルの全長より短い長さに沿って部分的にしか延在しない細分フィンであってもよい(例えば、以下の
図5参照)。
【0032】
図2は、高温チャネルが一列に並べられ、低温チャネルが一列に並べられている実例を示しているが、他の実例では、高温チャネル及び低温チャネルをチェッカーボード・パターンで互い違いにするか、又は交互に配置されてもよく、その結果各高温チャネル(熱交換器の縁部にあるチャネル以外)は、両側を低温チャネルに囲まれ、逆も同様である。
【0033】
上記のように、主要面は、高温チャネルを低温チャネルから分離するなど、2つの相異なる流体を分離するが、一方、補助面は、例えば、2つのチャネルが高温の流体を収めているか、又は2つのチャネルが低温の流体を収めている場合に、同じ流体を収める2つのチャネルを分離する。補助面と比較して、温度及び圧力など、主要面の両側の流体特性の違いにより、主要面は補助面よりも強くて堅牢であることが必要である。例えば、主要面は、補助面よりも厚い壁厚を有することができる。
【0034】
チャネル6の少なくとも一部について
図3に示すように、補助熱交換面10は、その長さの少なくとも一部に沿って設けることができる波状プロファイルであって、流体流れ方向(本実例ではZ軸)に対応する所定の方向に沿った波の形のパターンで変化する面プロファイルを持つ波状プロファイルを有する。この文脈において、熱交換面の面プロファイルとは、面のX平面、Z平面にほぼ垂直なY軸の面の位置に関連している。したがって、チャネル6内の補助仕切り10は、平坦な面ではなく、内外に曲げられた面を有する。
【0035】
より具体的には、補助熱交換面10の波状部ごとに、所定の方向(Z軸)に整列した波状部の第1の縁部E1では、面プロファイルは、所定の方向に対応する進行方向を有する第1の横波20にしたがって変化する。同様に、所定の方向に整列した第2の縁部E2では、プロファイルは、進行方向が所定の方向(本実例では、流体流れ方向に対応するZ軸)に対応する第2の横波22にしたがって変化する。一方、第1の縁部E1と第2の縁部E2との間にある中間点Iにおいて、波状面部の面プロファイルは、所定の方向に対応する進行方向を有する第3の横波24にしたがって変化する。
【0036】
本実例では、第1及び第2の横波20、22は同位相であり、同じ周波数(頻度、振動数)及び振幅を有し、それにより面のY位置(プロファイル)は、波状面部の縁部E1及びE2の両方で同じである。一方、本実例では、第3の横波24は、第1及び第2の横波と同じ周波数及び振幅を有するが、位相関係が異なる。第3の横波24は第1及び第2の横波20、22と位相がずれているので、波の山及び谷は、Z軸(所定の方向)に沿って異なる位置で生じる。2次元の図で第1、第2、及び第3の横波の間の関係を示すために、
図3の右側に示す部分は、第1、第2、及び第3の横波を、E1、I、及びE2が
図3で示す図と同じ態様で左から右に配置された状態で、並べて描いている。ただしY軸は、2次元表現を可能にするために、頁の平面に沿って延在するよう
図3の右側部分に示しているが、実際に見える状態が、E1、I、及びE2が
図3に示すように並んで見える場合、Y軸は、実際に頁に垂直に(頁の内側又は外側に)延在し、それによって隆起部及び谷間部の山及び谷は、頁の内及び外に実際に出入りすることが理解されよう。
【0037】
図3に示すように、縁部での変化と位相がずれた中間部分での面プロファイルの変化を有する効果は、面が、V字型で、流体の流れるZ軸の方向に沿って向いているいくつかの山型の隆起部26及び谷間部28を備えることである。これは、
図3の右側部分に示す、波の隣接する山及び谷を結ぶ線29でも見ることができる。熱交換器4が使用されるとき、これは、流体(気体又は液体)がチャネルを通って流れると、熱交換面10の最も近くにくっつく流体の一部が隆起部を越えて流れなければならなくなるという効果をもたらし、中心に向かって流体の再循環を引き起こしがちになり、壁からさらに離れた流体の他の部分が、以前は隆起部にあった流体と入れ替わり、したがって、流体がチャネルの長手方向に沿って通過すると、流体が混ざり合い、所与の量の流体が熱交換面から遠く離れて、又はチャネルの長手方向に沿って留まる可能性が低減する。
【0038】
図4は、Z-Y平面においてX軸に沿って見たときの、補助熱交換面10の波状面プロファイルの別の図を示す。側面図より、山型の隆起部26のピークが、中間点Iでの山型の中心と比較して、Z軸に沿った山型の縁部での様々な位置でどのように生じ、それによって、所定の流体が流れる方向に沿って向いている山型の形状をもたらしているかが明らかである。
【0039】
図3及び
図4に示すように、補助熱交換面は、一方の端部に、流体をある角度で旋回させることができる屈曲部分30を備えることができる。これは、流体が、入力の流れとは異なる方向に向けられた導管から出る必要がある場合に、熱交換器にとって有用であり得る。したがって、屈曲部分は、例えば隅の周りの流体を出口導管に導くことができる。
図3に示すように、面の一方の端部で、面には、面の端部から内向きに延在するV字型の窪み32が形成され得る。これは、付加製造を用いて面を構築できるため有用であり得る。なぜなら、付加製造プロセスで層ごとに形成されている場合、上層が材料の下層の上に構築されるときに特定の角度を超えるオーバーハングがないことを意味するからである。したがって、面の構築方向は、この特定の実例では、
図3に示すように、流体流れ方向とは反対の方向であり得る。
【0040】
図5に示すように、流体流れチャネル6をYZ平面に沿って見た場合、補助分割面10は、チャネル6の全長に沿って設ける必要はないが、長さの一部のみに沿って延在し、必要に応じて高温チャネル6又は低温チャネル6の領域を細分する内部フィンであってもよい。フィンの位置は、Y軸に沿った様々な部分で、互い違いであり得る。
図5のフィン10-1の実例で示すように、内部フィンはそれぞれ、
図3に示す波状プロファイルを有することができることに留意されたい。代替として、フィンの一部しか波状部を持たなくてもよく、他のフィンは平坦であってもよい。
図5の下部に示すように、複数のフィンがZ軸に沿って様々な位置に、フィン10間に間隙40を有して設けられる場合、各フィンの基部に窪み形状32を持つことにより、フィンがチャネルの隣接する主要壁8から出て懸架されるので、フィンを、付加製造を用いて作ることができる。V字型の窪みがあるので、この場合、配置された材料の上の層は、連続する層ごとに、最終的にそれらが中央で出会うまで、より小さな角度だけ下の層を超えて延在すればよく、その後、山型の隆起部26及び谷間部を有する全面が形成され得る。
【0041】
図3は、第1及び第2の横波20、22が同一の実例を示しているが、これは必須ではなく、他の実例では、第2の横波22は、第1の横波20とは異なる位相、振幅、及び/又は周波数を有することができる。この場合、山型に多少の違い又は非対称性があり得る。
【0042】
図6に示すように、代替形態では、第3の横波24は異なる振幅を有してもよく、それにより第3の横波のピーク及び谷は、第1及び第2の横波のピーク及び谷よりも深いか、又はより浅い。この場合、山型の隆起部26及び谷間部28は、
図6の下の図に示すように、Z軸に沿って向いているのではなく、Y軸方向に向くことができる。したがって、X-Z平面で見た場合、第1、第2、及び第3の横波20、22、24の山及び谷がZ方向に同位相であるため、隆起部26及び谷間部はまっすぐに見え得るが、
図6の下部に示すX-Y平面で上から見た場合、面の中間点I1でのピーク及び谷のサイズが縁部E1、E2でのサイズより大きいので、山型が形成されていることが分かる。やはり、このタイプの面は流体の混合を促し、ひいてはより優れた熱交換を促す。
図6では、第1及び第2の波は第3の波と同位相であるが、他の実例では、第1及び第2の波と比較して第3の波の振幅と位相との両方が異なってもよい。
【0043】
図3及び
図6の実例では、中間点I1は縁部E1とE2との中間にあったが、これは必須ではなく、
図7は、山型の隆起部又は谷間部のそれぞれの頂点が形成される中間点が、一方の縁部E1の近くに、他方の縁部E2よりも近くにある実例を示す。
【0044】
図8は、第3の横波24が第1及び第2の横波20、22と異なる周波数を有する別の実例を示し、したがってこの場合、熱交換面10の波状面部の縁部E1、E2にあるよりも多くの山及び谷が中間点I1にある。この結果、
図8の左側部分に示すように、2つの隣接する山型がつながる菱形の隆起部が生じ得る。やはりこれにより、流体の混合をより大きくすることができる。
【0045】
所与の熱交換面10の面全体が、上記で論じたような波の形の波状部を有することは必須ではない。場合によっては、補助熱交換面10の一部だけに波の形の面を設けてもよく、他の部分は平坦でもよい。
【0046】
また、上記の実例は、波状面が(高温チャネルの様々な部分又は低温チャネルの様々な部分をそれぞれ分割する)熱交換チャネルの補助壁10にある場合を示しているが、かかる波状面部を有する、高温チャネルを低温チャネルから分割する主要壁8を形成することも可能である。
【0047】
また、上記の実例では、補助壁面10は、面の幅を横切る単一の山型を有する、単一の波状部を有する。しかし
図9に示すように、
図9の下部に示すように、複数の山型の隆起部26が面10の幅を横切って形成されるように、複数の波状部50を並べて設けることも可能である。したがって、第1の波状部50-1では、Z軸に沿った面プロファイルの変化は、縁部E1、E2、及び中間点I1それぞれにおける第1、第2、及び第3の横波20、22、24に対応し、第2の波状部では、第1の縁部E1は、本質的に第1の波状部の第2の縁部E2に対応し、したがって、第2の波状部分50-2の第1の横波は、第1の波状部分の第2の横波と同じであり、そしてさらに第2及び第3の横波22-2及び24-2は、第2の波状部50-2の第2の縁部E2及び中間部分I1に形成される。
図9の上部及び左下に示す実例では、第2及び第3の横波22-2、24-2は、第1の波状部50-1の第2及び第3の横波22、24とそれぞれ同位相であり、したがって隣接する波状部の山型がW字型の隆起部を形成するように連なるが、これは必須ではなく、代替形態では、第2の波状部は、その波が第1の波状部の波と位相がずれてもよく、その結果山型の隆起部26は、Z軸に沿って第1及び第2の波状部で相異なる位置にある。2つ以上の波状部を並べて配置できることが、理解されよう。
【0048】
また、上記の実例では、波状面を形成する第1、第2、及び第3の横波は、波状面の長手方向に沿って、所定の方向に、一定の周波数、振幅、及び位相を有するが、波の1種又は複数種類の周波数、振幅、及び位相が、面の長手方向に沿って変化することが可能である。例えば、第1、第2、及び第3の横波のそれぞれの周波数がZ軸に沿って低下してもよく、それにより、Z軸に沿った第1、第2、及び第3の横波のそれぞれの波長が増加する。代替として、又はそれに加えて、第1、第2、及び第3の横波のそれぞれの振幅が、Z軸に沿って増加してもよい。別の実例では、第3の横波の周波数が、Z軸に沿って一定のままであるのに対して、第1及び第2の横波の周波数は、Z軸に沿って増加してもよい。代替として、第1及び第2の横波の周波数は、第3の横波の周波数よりも大きな割合で、Z軸に沿って増加してもよい。どちらの場合も、これにより、Z軸に沿った山型の隆起部又は谷間部の内角が小さくなり、その結果、Z軸に沿った様々な山型の隆起部又は谷間部が生じる。
【0049】
波状面の長手方向に沿った第1、第2、及び/又は第3の横波の周波数、振幅、及び位相のどんな変化も、流体流れチャネル内の流体の特性の変化の原因となり得る。例えば、流体がz軸に沿って流れるときに減速することが予測される場合、波状面の長手方向に沿って確実に同程度の流体の混合が生じるように、第1、第2、及び/又は第3横波の周波数をz軸方向に増加させることができる。このようにして、波状面は、流体流れチャネル内の、流体の予測される流動特性に合わせて調整することができる。波状面に所望の起伏を実現させるために、Z軸に沿った第1、第2、及び/又は第3の横波の周波数、振幅、及び位相の変化の任意の組合せを使用できることが理解されよう。
【0050】
主要面ではなく補助面上に波状面を設けることにより、主要面の構造的剛性に悪影響を与えずに、付加製造を使用した熱交換器の構築がより容易になる。2つの低温流体チャネルを分割する補助面と比較して、2つの高温流体チャネルを分割する補助面上で異なる波状面パターンを使用することも可能になり、それにより、各波状面のパターンを、補助面の両側の特定の流体の、温度、圧力、及び質量流量などの流体特性に合うように調整できる。
【0051】
波状面は、所与の流体チャネルが、チャネルの複数の面上に波状面を有するように配置されてもよい。かかる場合において、各波状面を構成する横波は、流体チャネルの1つの波状面上の波のピーク及び/又は谷が、流体チャネルの別の波状面上の波のピーク及び/又は谷と確実にふれ合わないようにする、周波数、振幅、及び/又は位相を有することができる。
【0052】
図10は、付加製造(AM)の実例を概略的に示す。本実例では、レーザ溶融金属粉末188を使用して、上記の熱交換器などの物品4を形成する。物品4は、降下するパウダ・ベッド180上に層ごとに形成され、パウダ・ベッドの上に、溶融されるべき金属粉末の薄層が、パウダ・スプレッダ182によって広げられ、その後、レーザ184から供給される走査レーザ・ビームによって溶解(溶融)される。レーザ184によるレーザ・ビームの走査、及びベッド180の降下は、制御コンピュータ186によりコンピュータ制御される。制御コンピュータ186はさらに、コンピュータ・プログラム(例えば、製造されるべき物品4を定義するコンピュータ・データ)により制御される。この物品定義データは、コンピュータ可読の非一時的媒体198に格納される。
図10は、付加製造を実行するために使用できる機械の一実例を示す。他の様々な機械及び付加製造プロセスも、本技法にしたがって使用するのに好適であり、それにより、熱交換器は、チャネルが上記で論じた波状部を有する熱交換面を備えた状態に製造される。
図4に示す特定の設計では、一実例での付加製造の構築方向を右側で矢印を使って示している。マニホールド部分を、熱交換器コアの入口/出口に最も近い層から始めて構築することにより、垂直から45度を超える角度で下層を超えて上層を延在させる必要なしに、マニホールド部分の残りを構築することができ、下層による上層の支持がより強固になり、付加製造による部品作りがより実際的になる。
【0053】
図11は、熱交換器の製造方法を示す。ステップ200で、コンピュータ自動設計(CAD)ファイルが取得される。CADファイルは、上記で論じた波状面部を有する熱交換面を備える流体流れチャネルを有する、熱交換器の設計を表すデータ構造を提供する。例えば、ステップ200でCADファイルを取得するステップは、設計者が熱交換器の3次元(3D:three-dimensional)モデルをゼロから生成するステップを有してもよく、又は記録媒体から既存の設計を読み取るステップ、若しくはネットワークを介してCADファイルを取得するステップを有してもよい。設計ファイルは、製造されるべき3D幾何形状を表すことができる。
【0054】
ステップ202で、CADファイルは、付加製造機に供給するための命令に変換される。命令は、熱交換器全体を形成するために層ごとに積み上げられる材料の各層を、置く又は形成するために、付加製造機を制御する。例えば、CADファイルによって表される3D設計は、それぞれが対応する層に形成されるべき材料の2次元表現を提供する層に、スライスされ得る。
【0055】
ステップ204で、変換された命令は、熱交換器を、付加製造を用いて固結物の集積された塊として製造する、付加製造機に供給される。熱交換器は、様々な材料、例えば、チタン若しくはステンレス鋼などの金属若しくは合金、又はポリマーで作ることができる。様々な形態の付加製造を使用できるが、一実例では、付加製造には選択的レーザ溶解を使用する。
【0056】
図12から
図14は、
図3の実例に示す波状面部を有する熱交換面を備えたチャネルを通る流体の流れの数値流体力学(CFD)シミュレーション結果を示す、速度流線図を示す。流線に使用される陰影は、流体の流れの速度を表す。山型の隆起部の頂点に最も近い領域400の最も暗い線は、最も遅い流体の流速を表す。
図12に示す2つの図を見て分かるように、山型の隆起部及び谷間部は、チャネルの縁部からチャネルの中心に向かう流体の周期的な再循環を促す。
図13の側面図に示すように、再循環の効果は、さもなければチャネルの境界に存在するであろう、動きが遅い流体のカーテンを分散させることである。これは、
図13と
図14との比較から明らかである。
図13は、流体の流れる方向が、山型が向いている方向に揃えられている(それにより、山型の隆起部及び谷間部の頂点が、チャネルの流体出口領域の方向へ、流体入口領域から離れた方向に向いている)状態の、チャネルを通って流れる流体のシミュレーションを示す。対照的に、
図14は、山型に対して反対方向に流体が流れる(それにより、山型の頂点が流体入口領域の方向を向いている)場合のシミュレーションを示す。
図14に示す比較シミュレーションでは、動きの遅い流体のカーテン402(チャネルの縁部近くの、より暗い線で示されている)が、
図14に示すチャネルの部分のほぼ全長にわたってチャネルの側壁近くに残っている。同様のカーテンは、チャネル内の平坦な面によって発生することになる。かかるカーテンは、チャネルの熱交換効率を低下させる傾向がある熱境界層として作用する。なぜなら、カーテンが、チャネルの中心にあるより高温の流体を、それを通って熱が隣接チャネルに伝導できるチャネルの壁から絶縁するためである。対照的に、
図13に示すように、各山型の頂点が流体入口領域から離れる方向に向くように、山型が流体の流れと揃えられる場合、境界のカーテン402は、波状面の山型の隆起部で引き起こされる周期的な再循環によって急速に破壊され、チャネル内の流体と隣接チャネル内の流体との間でより大きな熱交換が可能になる。
【0057】
一実例では、熱交換器は、複数の流体流れチャネルを有し、流体流れチャネルのうちの少なくとも1つは、チャネルの長さの少なくとも一部に沿って延在する少なくとも1つの波状面部を有する、少なくとも1つの熱交換面を有し、ここで波状面部ごとに、所定の方向に揃えられた波状面部の第1の縁部に沿って、熱交換面のプロファイルは、所定の方向に対応する進行方向を有する第1の横波に応じて変化し、所定の方向に揃えられた波状面部の第2の縁部に沿って、熱交換面のプロファイルは、所定の方向に対応する進行方向を有する第2の横波に応じて変化し、第1の縁部と第2の縁部との間にある波状面部の中間部分で、熱交換面のプロファイルは、所定の方向に対応する進行方向を有する第3の横波に応じて変化し、ここで前記第3の横波は、前記第1の横波及び前記第2の横波のうちの少なくとも一方とは異なる位相、異なる振幅、及び異なる周波数のうちの少なくとも1つを持って、波状面部に1つ又は複数の山型の隆起部又は谷間部を備える。
【0058】
一実例では、熱交換器を製造する方法は、複数の流体流れチャネルを形成するステップを有して提供され、流体流れチャネルのうちの少なくとも1つは、チャネルの長さの少なくとも一部に沿って延在する少なくとも1つの波状面部を有する、少なくとも1つの熱交換面を有し、ここで波状面部ごとに、所定の方向に揃えられた波状面部の第1の縁部に沿って、熱交換面のプロファイルは、所定の方向に対応する進行方向を有する第1の横波に応じて変化し、所定の方向に揃えられた波状面部の第2の縁部に沿って、熱交換面のプロファイルは、所定の方向に対応する進行方向を有する第2の横波に応じて変化し、第1の縁部と第2の縁部との間にある波状面部の中間部分で、熱交換面のプロファイルは、所定の方向に対応する進行方向を有する第3の横波に応じて変化し、ここで前記第3の横波は、前記第1の横波及び前記第2の横波のうちの少なくとも一方とは異なる位相、異なる振幅、及び異なる周波数のうちの少なくとも1つを持って、波状面部に1つ又は複数の山型の隆起部又は谷間部を備える。
【0059】
本発明の例示的な実施例を、添付図面を参照して本明細書で詳細に説明してきたが、本発明はそれらの正確な実施例に限定されるものではなく、当業者によってその中に、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更及び修正を行うことができることを理解されたい。