(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-01
(45)【発行日】2023-02-09
(54)【発明の名称】組織及び/又はアーチファクト特性を判定するために使用されるシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
A61B 18/04 20060101AFI20230202BHJP
A61B 17/28 20060101ALI20230202BHJP
A61B 17/128 20060101ALI20230202BHJP
A61B 17/068 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
A61B18/04
A61B17/28
A61B17/128
A61B17/068
(21)【出願番号】P 2020513325
(86)(22)【出願日】2018-09-05
(86)【国際出願番号】 US2018049520
(87)【国際公開番号】W WO2019050928
(87)【国際公開日】2019-03-14
【審査請求日】2021-09-03
(32)【優先日】2017-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514226350
【氏名又は名称】ブライトシード・エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】BRITESEED,LLC
【住所又は居所原語表記】4660 N Ravenswood Ave.,Chicago,IL 60640 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】シーサ・シュカイア
(72)【発明者】
【氏名】アマル・チャターベディ
(72)【発明者】
【氏名】ハリハラン・サブラマニアン
【審査官】菊地 康彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-516509(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/04
A61B 17/28
A61B 17/128
A61B 17/068
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
手術器具の作業端に近接する領域内にある
導管が尿管であるかどうかを判定するために使用されるシステムであって、
前記手術器具の作業端に配置された、2つの異なる波長の光を発するように構成された少なくとも1つの発光器と、
前記少なくとも1つの発光器の反対側において、前記手術器具の作業端に配置された少なくとも1つの光センサー
アレイであって、前記2つの異なる波長の光を検出し、
前記少なくとも1つの光センサーアレイが個別の光センサーのアレイを含み、各個別の光センサーが、各波長について
、交流成分である拍動成分と
直流成分である非拍動成分を持つ信号を提供するように構成された
、前記少なくとも1つの光センサー
アレイと、
前記少なくとも1つの光センサー
アレイに連結されるコントローラーを含み、
前記コントローラーは、前記2つの異なる波長の透過光の比率を判定し、前記2つの異なる波長のそれぞれについて、前記少なくとも1つの光センサー
アレイの前記個別の光センサーからの信号の非拍動成分にディップ
、すなわち前記少なくとも1つの光センサーアレイの一端と他端との間の信号の非拍動成分の減少の存否を判定し、ディップが判定された場合に当該ディップの対称性
、すなわち、ある直線を対称軸とする類似性を判定し、前記比率及び前記対称性に基づいて、前記導管が手術器具の作業端に近接する領域内の尿管であるかどうかを示すように構成される
システム。
【請求項2】
前記コントローラーは、各波長について、前記ディップ
が始まる第1端
を検出する光センサーから
、前記直流成分がその最低値となる前記ディップの最小値
を検出する光センサーまでの第1距離と、前記ディップ
が終わる第2端
を検出する光センサーから前記最小値
を検出する光センサーまでの第2距離を判定し、前記第2距離から前記第1距離を減算して差異を定義するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記少なくとも1つの光センサー
アレイは、可視範囲の光を検出するように構成される第1の光センサーと、近赤外範囲の光を検出するように構成される第2の光センサーとを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記第1の光センサーは、660nmの光を検出するように構成され、前記第2の光センサーは、810nmの光を検出するように構成される、請求項
3に記載のシステム。
【請求項5】
前記コントローラーは、プロセッサー及びメモリーを備え、前記プロセッサーは、前
記2つの異なる波長の透過光の比率を判定し、前記少なくとも1つの光センサー
アレイからの信号の非拍動成分のディップを判定し、ディップが判定された場合に当該ディップの対称性を判定し、前記比率及び前記対称性に基づいて、前記導管が手術器具の作業端に近接する領域内の尿管であるかどうかを示すようにプログラムされる、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
作業端を有する手術器具をさらに備える、請求項1~
5のいずれかに記載のシステム。
【請求項7】
手術器具の作業端に近接する領域内にある
導管が尿管であるかどうかを判断するためのシステムの作動方法であって、
少なくとも1つの発光器が、前記手術器具の作業端で2つの異なる波長の光を発し、
前記手術器具の作業端にある少なくとも1つの光センサー
アレイで前記2つの異なる波長の光を検出し、
ここで、前記少なくとも1つの光センサーアレイが個別の光センサーのアレイを含み、各個別の光センサーが、直流成分である非拍動成分を持つ信号を提供するように構成され、
コントローラーが、前
記2つの異なる波長の透過光の比率を判定し、
前記コントローラーが、前記少なくとも1つの光センサー
アレイの前記個別の光センサーからの信号の
前記直流成分のディップ
、すなわち前記少なくとも1つの光センサーアレイの一端と他端との間の信号の前記直流成分の減少を判定し、
前記コントローラーが、ディップが判定された場合に当該ディップの対称性
、すなわち、ある直線を対称軸とする類似性を判定し、
前記コントローラーが、前記比率及び前記対称性に基づいて、
前記導管が手術器具の作業端に近接する領域内の尿管であるかどうかを示すこと
を含む方法。
【請求項8】
前記ディップの対称性を判定することは、
各波長について、前記ディップ
が始まる第1端から
、前記直流成分がその最低値となる前記ディップの最小値までの第1距離と、前記ディップ
が終わる第2端から前記最小値までの第2距離を判定し、
前記第2距離から前記第1距離を減算して差異を定義すること
を含む請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
前記2つの異なる波長の光を検出することは、
可視範囲の第1波長の光及び近赤外範囲の第2波長の光を検出することを含む
請求項
7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この特許は、血管などの組織及び/又はアーチファクトの特性を判定するために使用されるシステム及び方法に関し、特に、少なくとも1つの発光器と少なくとも1つの光センサーを含む、組織及び/又はアーチファクトの特性を判定するために使用されるシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
外科的処置中のアーチファクト、特に血管の識別は、外科医又は外科チームに貴重な情報を提供できる。例えば、血管と、血液以外の流体を運ぶ導管の識別は、非血液運搬導管を回避することを可能にし、非血液運搬導管への侵襲の可能性を最小限にすることができる。あるいは、血管と非血液運搬血管の識別により、非血液運搬導管の回避の代わりに、その隔離を可能にすることができる。
【0003】
損傷を回避するための導管の識別に関して、婦人科、泌尿器科及び他の骨盤領域の手術中の医原性尿管損傷の機会を検討する。このような損傷は、外科的処置の結果として発生する場合がある。さらに、尿管は子宮動脈などの主要な血管に近いため、出血を抑制しようとする結果として尿管損傷が発生する可能性がある。特に、不注意による術中出血が外科医の視野を遮る場合、外科医が血管を焼き、クランプ、又は縫合することで出血を制御しようとすると、尿管損傷につながる可能性がある。
【0004】
主要な血管が尿管に近接しており、出血が起こると外科医の視野が遮られるため、外科医が正常な解剖学的構造を十分に理解している場合でも、怪我が発生する可能性がある。もっとも、異常な尿管の解剖学的構造は、人口の最大8%で発生する。他の要因が組み合わさると、外科医は大きな課題に直面する。
【0005】
婦人科処置の系統的な調査によると、尿管損傷は、腹式子宮摘出術の0.03%~2.0%、膣式子宮摘出術の0.02%~0.5%、及び腹腔鏡補助膣式子宮摘出術の0.2%~6.0%で起こることが判明した。上記の要因を考慮すると、これらの数字は驚異的ではなかろう。腎系の生理学的重要性と腎系への傷害の重大な結果のため、これらの割合は特に深刻である。
【0006】
尿管損傷は、尿管閉塞(例えば、尿管が結紮される場合)又は不連続性(尿管が切除される場合)をもたらし得る。尿管の損傷が発生しも気づかれなかった場合(例えば、尿管がつぶれている場合)、閉塞に加えてろう孔の形成につながる可能性がある。当然に、尿管損傷は患者の重大な罹患率と死亡率につながる可能性がある。いずれにせよ、尿管損傷は入院の可能性を高め(外来患者ベースで処置を行う場合)、入院期間が延びる可能性も高める。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以下により詳細に説明するように、本開示は、導管の回避又は隔離のための改善された識別を提供可能な、既存の方法に対する有利な代替案を実現する、検出器を含むシステム及び血管を検出する方法を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様によれば、導管が手術器具の作業端に近接する領域内にあるかどうかを判定するために使用されるシステムは、前記手術器具の作業端に配置された、2つの異なる波長の光を発するように構成された少なくとも1つの発光器を含む。前記システムは、さらに前記少なくとも1つの発光器の反対側において、前記手術器具の作業端に配置された少なくとも1つの光センサーであって、前記2つの異なる波長の光を検出し、各波長について拍動成分と非拍動成分を持つ信号を提供するように構成された少なくとも1つの光センサーを含む。前記システムは、さらに前記少なくとも1つの光センサーに連結されるコントローラーを含み、前記コントローラーは、2つの異なる波長の透過光の比率を判定し、前記2つの異なる波長のそれぞれについて、前記少なくとも1つの光センサーからの信号の非拍動成分にディップの存否を判定し、ディップが判定された場合に当該ディップの対称性を判定し、前記比率及び前記対称性に基づいて、前記導管が手術器具の作業端に近接する領域内の尿管であるかどうかを示すように構成される。
【0009】
本開示の別の一態様によれば、導管が手術器具の作業端に近接する領域内にあるかどうかを判断する方法は、色素を投与し、前記手術器具の作業端で2つの異なる波長の光を発し、前記手術器具の作業端にある前記少なくとも1つの光センサーで前記2つの異なる波長の光を検出することを含む。前記方法は、さらに前記少なくとも2つの異なる波長の透過光の比率を判定し、前記少なくとも1つの光センサーからの信号の非拍動成分のディップを判定し、ディップが判定された場合に当該ディップの対称性を判定し、前記比率及び前記対称性に基づいて、前記導管が手術器具の作業端に近接する領域内の尿管であるかどうかを示すことを含む。
【0010】
本発明は、添付の図面と併せて以下の説明からより完全に理解される。いくつかの図面は、他の要素をより明確に示すために選択された要素の省略によって簡略化されている場合がある。いくつかの図面における要素のそのような省略は、対応する記載に明示的に表示される場合を除いて、例示的な実施形態のいずれにおいて特定の要素の有無を必ずしも示すものではない。図面は必ずしも縮尺通りではない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態による手術システムの概略図である。
【
図2】発光器と光センサー、及び発光器と光センサーとの間に配置されるように示された導管の薄片を有する、
図1の手術器具の透過率ベースの実施形態の拡大部分図である。
【
図3】
図3は、一実施形態による導管(例えば尿管)を検出する方法のフローチャートであり、この方法は
図1のシステムを使用して実行することができる。
【
図4】
図4は、メチレンブルーの光吸収スペクトルを示すチャートである。
【
図5】
図5は、血液の光吸収スペクトルを示すチャートである。
【
図6】
図6は、2つの波長において尿管の存在下での光センサーからの信号の非拍動成分の信号プロファイルである。
【
図7】
図7は、1つの波長において血管の存在下での光センサーからの信号の非拍動成分の信号プロファイルである。
【
図8】
図8は、インドシアニングリーンの光吸収及び発光スペクトルを示すチャートである。
【
図9】
図9は、パテントブルーVの光吸収スペクトルを示すチャートである。
【
図10】
図10は、ビデオシステムの実施形態と組み合わせた、本開示の一実施形態による手術システムの概略図であり、ビデオシステムで使用中の当該手術システムを示す。
【
図11】
図11は、ビデオシステムの別の実施形態と組み合わせた、本開示の一実施形態による手術システムの概略図であり、ビデオシステムで使用中の当該手術システムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書に記載される実施形態は、手術野における組織及び/又はアーチファクトの特性を判定するために使用されるシステム及び方法を提供する。
【0013】
最初に
図1及び
図2を参照すると、手術システム100の実施形態が示されており、このシステム100は、例えば、手術器具106の作業端104に近接する組織Tの領域102内の導管Vの特性(例えば、存在、直径など)を判定するために使用され得る。導管Vは、組織Tの領域102を有する他の導管に接続され、さらに、血管Vは領域102を超えて延び、患者の体内に見られる他の臓器(腎臓、膀胱、心臓など)と流体連通し得ることが理解される。さらに、
図1及び
図2では、組織Tが(周長と長さの両方に関して)特定の深さまで導管Vを完全に囲むように見えるが、これはシステム100が使用されるすべての場合に当てはまる必要はない。例えば、組織Tは、導管Vの周囲を部分的にのみ及び/又は導管Vの長さの一部のみを囲んでもよく、又は組織Tは非常に薄い層で導管Vを覆ってもよい。さらなる非限定的な例として、導管Vは血管であってもよく、組織Tは結合組織及び/又は脂肪組織であってもよい。
【0014】
図示された実施形態によれば、手術器具106の作業端104は、シャフト108の遠位端でもある。したがって、作業端及び遠位端は、作業端104又は遠位端104と呼ばれる。シャフト108はまた、近位端110を有し、グリップ又はハンドル112(本明細書ではグリップ112と代替可能に呼ばれる)は、シャフト108の近位端110に配置される。グリップ112は、器具106の特質に従って設計される。
図1に示される熱結紮装置に関して、グリップ112は、トリガー114を含むピストルタイプのグリップであり得る。代替として、概ねはさみタイプのグリップに配置されたリングが使用され得る。
【0015】
作業端又は遠位端104及びグリップ112を備えた近位端110は、シャフト108の最も反対側の端部に配置されているように示されているが、特定の手術器具は作業端部においてはシャフトの最も反対側の端に配置される(例えばツールチップが取り付けられている)作業端、及び反対の作業端の中間に配置されるグリップ領域を有する。本明細書で使用される「遠位」及び「近位」という用語に従って、ここでそのような器具の作業端は遠位端と呼ばれ、グリップ領域は近位端と呼ばれる。ただし、図示の実施形態に対して、遠位端及び近位端は、シャフト108の最も反対側の(又は単に反対側の)端部に位置する。
【0016】
上述のように、図示の実施形態によれば、手術システム100は、少なくとも1つの発光体120(又は単に発光体120)及び少なくとも1つの光センサー又は検出器122(又は単に光センサー122)を含む。
図2を参照する。図示されるように、発光器120は手術器具106の作業端104に配置され、光センサー122も手術器具106の作業端104に配置される。光センサー122は、例えば
図2に示されるように外科器具106の対向する顎に、発光器120に対向するように配置され、このように、システム100は透過率ベースのアプローチに従って動作する。
【0017】
発光器120は、少なくとも2つの異なる波長の光を発するように構成され、光センサー122は、少なくとも2つの異なる波長の光を検出するように構成される。一例として、発光器120及び光センサー122は、可視範囲の光、及び近赤外又は赤外範囲の光をそれぞれ放射又は検出することができる。具体的には、発光器120及び光センサー122は660nm及び810nmの光をそれぞれ放射又は検出することができる。
【0018】
図示された実施形態によれば、個々の光センサー122は、第1の拍動成分及び第2の非拍動成分を含む信号を生成するように構成される。第1の拍動成分は信号の交流(AC)成分であり、第2の非拍動成分は直流(DC)成分であり得ることは認識できる。光センサー122がアレイの形態である場合、拍動性及び非拍動性の情報は、アレイの各要素について、又はアレイの少なくとも1つの列を定義するアレイの各要素について生成され得る。
【0019】
このような実施形態によれば、コントローラー124は光センサー122に連結され、スプリッター126は、光センサーアレイ122の各要素について第1の拍動成分を第2の非拍動成分から分離するために使用される。コントローラー124はまた、(少なくとも部分的に)拍動成分に基づいて手術器具106の作業端104に近接する領域102内の導管Vの存在及び/又は特性を判定する分析器128を含み得る。
【0020】
図1~
図3による本開示の実施形態は一般的な事項で次のように説明できる。異なる波長の光は、血液(血管内又は外科医の視野に入る可能性のある血管からの出血)、静的組織(脂肪、結合組織など)、又は尿管にさまざまな程度で吸収される。光の吸収が血液に関して類似しているが尿管内の流体(例えば、色素、又は尿素)に関して有意に異なる一対の波長を選択することにより、システム100及び方法150は、血液又は血管と、尿管を区別することができる。例えば、メチレンブルーなどの(尿管にすばやく集まる)造影剤が患者に投与されると、660nmと810nmの波長で透過する光の比率は、尿管では小さく(例えば、1より小さい)、血液又は血管の場合は大きい(例えば、1.5より大きい)。これらの波長でのメチレンブルーと血液の吸収係数を
図4及び5で比較する。結果として、尿管の形態のアーチファクト120と外科医の視野内の血液との間でより確実な区別を行うことができる。これに関して、米国公開2017/0181701は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0021】
血管、尿管、及び組織の間の識別は、光センサー122からの信号の非拍動(又はDC)成分が血管、尿管、及び尿管に対して同じではないことを認識することによって改善できる。血管又は尿管などの導管が手術器具106の顎の間に存在する場合、DC信号は信号のディップを現すが、血管又は尿管のない組織が存在する場合、ディップは現れない。さらに、尿管のDC信号には、血管のDC信号よりも非対称なディップがあり、尿管の信号には複数のディップがある場合さえある。この情報を使用して、さらに確実な区別を行う方法を提案できる。
【0022】
特に、コントローラー124は、少なくとも2つの異なる波長で発せられる光の比率及び対称性メトリックを判定し、当該比率及び当該対称性メトリックに基づいて、外科用器具106の作業端104に近接する領域102内の導管Vが例えば尿管であるかを示すように構成され得る。尿管の代わりに、アーチファクト(又は構造的アーチファクト)は血管又は組織であり得る。例えば、視覚的インジケーター130(
図1を参照)によって提供され得るこの指図に基づいて、外科医は適切な行動を取り得る。
【0023】
図3のフローチャートに反映されるように、尿管が手術器具106の作業端104に近接する領域102内にあるかどうかを判定する方法200が示されており、
図1及び2に示される手術システム100を使用して実行することができる。方法200はブロック202で開始することができ、ここで、処置を受けている患者に薬剤が投与される。例えば、インディゴカルミンには600nmに特徴的な光吸収があり、メチレンブルーには660nmに特徴的な光吸収がある(
図4参照)。これらの色素は、通常、手術中の尿管及び膀胱の漏出の視覚的識別に使用されるという利点があり、したがって、追加の処置手順又は費用に関して追加の負担をもたらさない。
【0024】
方法はブロック204に続き、例えば発光器120を使用して、少なくとも2つの異なる波長の光が手術器具106の作業端104で放出される。方法200はブロック206に続き、少なくとも2つの異なる波長の光が、例えば光センサー122を使用して、手術器具106の作業端104で検知される。ブロック204及び206の動作は連続的に示されているが、動作は連続の代わりに同時に起こり得る。すなわち、光は、電子多重化を使用して連続的に、又は光学フィルターの使用を介して同時に放出及び検出され得る。
【0025】
方法200は、ブロック208において、少なくとも2つの異なる波長で発せられる光の比率を判定することをさらに含む。この時点で、手術器具106の顎の間に組織、尿管又は血管があるかどうかの判定を行うこともできるが、方法200は、組織、尿管又は血管を表すこれらの信号間のさらなる識別を提供し、より確実な全体的判定を提供することができる追加のステップに続く。したがって、ブロック208で判定された比率は、(個々の光センサーのアレイの形の)光センサー122に沿った非拍動性又はDC信号に関する情報と組み合せて、手術器具106の顎の間の組織、尿管、又は血管の識別に関する判定を行ってもよい。
【0026】
図示の実施形態によれば、ブロック210で、コントローラー124は、光センサー122からのDC信号を分析して、光センサー122の一端と他端との間(例えば、個々の光検出素子の線形配列の一端と他端の間)で信号の減少があるかどうかを判定する。この判定は、2つの波長の両方で実行される。ディップがない場合、方法200はブロック210に進み、ブロック208で判定された比率が方法200の残りで使用される。少なくとも1つの波長においてDC信号に1つ以上の減少(「ディップ」)があった場合、方法はブロック214に進む。
【0027】
ブロック214で、コントローラーは、DC信号のディップに見られる対称性の程度を判定する。この判定は両方の波長で行われる。次に、対称性の判定は、ブロック216で単一の対称性メトリックに結合される。対称性メトリックは、まずブロック218である閾値と比較され、メトリックが閾値を上回るか下回るかによって、ブロック208で判定された比率からメトリックが差し引かれるか(ブロック220)、ブロック208で判定された比率にメトリックが加算される(ブロック222)。
【0028】
ブロック220又は222で判定され得るように修正された比率は、ブロック224では1つ以上の閾値と、ブロック226では判定された組織又はアーチファクトタイプと比較される。例えば、第1の閾値未満の比率は尿管を表し、第2の閾値を超える比率は血管を現し、第1及び第2の閾値間の比率は組織を現す場合がある。
【0029】
一実施形態によれば、アーチファクトが尿管でないとブロック226で判定された場合、方法150はブロック202に戻り、ブロック204~226の動作を繰り返すことができる。別の実施形態によれば、アーチファクトが尿管であり、インジケーター130が一定期間アクティブである場合、その後にブロック202に戻る方法が続き得る。例えば、インジケーターが一定期間医療機器106を無効にするロックアウトデバイスである方法200の実施形態によれば、ロックアウトデバイスが非アクティブ化されると、方法200はブロック202に戻り得る。別の例として、インジケーターが可聴アラームを生成するスピーカーである実施形態によれば、方法200は、一定期間(例えば、1~2秒)インジケーター/スピーカーを作動させ、その後ブロック202~226の動作を繰り返し、ブロック226で尿管が領域102にあると判断された場合、インジケーターを再度アクティブにすることができる。このような実施形態では、ブロック202~226が繰り返され、尿管が領域102にない場合、方法200はインジケーターを再度アクティブにしない。
【0030】
システム100の構造及び動作を一般的な事項で説明してきたが、システム及び方法に関するさらなる詳細を次に提示する。
【0031】
図1及び
図2に戻ると、発光器120は、上記で参照されるように、1つ以上の要素を含み得る。
図2に概略的に示される実施形態によれば、光センサー122は、第1の発光器120-1、第2の発光器120-2、及び第3の発光器120-3などの複数の発光器を含み得る。すべての発光器は、特定の波長(例えば660nm)の光を発するように構成することができ、又は特定の発光器は他の発光器とは異なる波長の光を発することができる。各発光器は、例えば発光ダイオードであってもよい。
【0032】
図2に示されるように、発光体120が1つ以上の発光ダイオードを含むアレイの形態である実施形態に関して、ダイオードは、1次元、2次元、又は3次元のアレイで配置されてもよい。一次元アレイの例は、単一平面の線に沿ってダイオードを配置することを含み、二次元アレイの例は、単一平面の複数の行と列にダイオードを配置することを含む。二次元アレイのさらなる例は、曲面上又は曲面内の線に沿ってダイオードを配置することを含み得る。3次元アレイは、曲面上又は曲面内の複数の行及び列など、複数の平面に配置されたダイオードを含んでもよい。
【0033】
光センサー122はまた、1つ以上の要素を含んでもよい。再び、
図2に示す実施形態によれば、光センサー122は、第1の光センサー122-1、第2の光センサー122-2、第nの光センサー122-nなどを含むことができる。発光器120-1、120-2、120-3の場合のように、光センサー122-1、122-2、122-3、122-nはアレイ状に配置することができ、そして、アレイに関する上記記述も同様に適用される。
【0034】
実際、光センサー122のアレイが光センサーの列(
図2など)を含む場合、アレイ122は、代替として線形アレイと呼ばれることがある。アレイ122の個々の光センサーは、互いに隣接して配置されてもよく、又は光センサーは互いに離間されてもよい。光センサーの列を定義する個々の光センサーを、アレイの異なる行又は列を定義する光センサーによって互いに分離することも可能である。ただし、特定の実施形態によれば、アレイは、電荷結合素子(CCD)、特に複数のピクセルを含む線形CCD画像化装置を含むことができる。さらなる代替として、CMOSセンサーアレイを使用してもよい。
【0035】
システム100は、発光器120、センサー122、及びコントローラー124に加えて、ハードウェア及びソフトウェアを含むことができる。例えば、複数の発光器120が使用される場合、個々の発光器要素のスイッチングを制御するために駆動コントローラーを設けることができる。同様に、複数のセンサー122が含まれるマルチプレクサーが提供されてもよく、このマルチプレクサーは、センサー122及び増幅器に連結されてもよい。さらに、コントローラー124は、必要に応じてフィルター及びアナログデジタル変換を含むことができる。
【0036】
特定の実施形態によれば、スプリッター126及び分析器128は、1つ又は複数の電気回路構成要素によって画定されてもよい。他の実施形態によれば、1つ以上のプロセッサー(又は単にプロセッサー)は、スプリッター126及び分析器128の動作を実行するようにプログラムされてもよい。さらに別の実施形態によれば、スプリッター126及び分析器128は、一部は電気回路部品により、一部はスプリッター126及び分析器128の動作を実行するようにプログラムされたプロセッサーにより定義され得る。
【0037】
例えば、スプリッター126は、第1の拍動成分を第2の非拍動成分から分離するようにプログラムされたプロセッサーを含むか、又はそれによって定義され得る。さらに、分析器128は、この第1の拍動成分に基づいて、手術器具106の作業端104に近接する領域102内の導管Vの存在を判定する(又は、例えば、サイズを定量化する)ようにプログラムされたプロセッサーを含むか、又はそれによって定義され得る。プロセッサーをプログラムする指令は、プロセッサーに関連付けられたメモリーに格納できる。メモリーは、コンピューター実行可能指令が格納された1つ以上の有形の非一時的コンピューター可読メモリーを含むことができ、指令はプロセッサーによって実行されると、1つ又は複数のプロセッサーに1つ又は複数のアクションを実行させる。
【0038】
使用され得る薬剤に関して、上記の薬剤であるインディゴカルミン及びメチレンブルーは、血流に注入され、次いで、腎臓に急速に蓄積し、そこで薬剤及び/又はその誘導体が尿管、膀胱、尿道を介した尿中の腎臓系により尿に排泄される(この点で、特定の薬剤が体内で代謝される可能性が認識され、例えば、メチレンブルーはロイコメチレンブルーとして腎臓から排泄される)。一方、色素が手術中に連続的に静脈内投与される場合、ボーラス注射が単に投与された後の特定の時間枠内ではなく、手術を通して尿管が識別でき、これはこのシステム100及び方法に特に有利である。
【0039】
また、このような実施形態による手術システム100は、血管内の血液だけでなく、手術野内の血液も区別できるという利点を提供することに留意されたい。上記のように、外科医の視野を妨げる血液により、尿管の直接的な可視性が失われることがよくある。この場合、可視スペクトルの光と赤外又は近赤外スペクトルの光の比率を、色素(メチレンブルーなど)による近赤外光の高い吸収率と組み合わせて使用すると、尿管と外科医の視野内の停滞した血液との間の確実な区別を可能とする。結果として、停滞した血液は、本開示によるシステム100及び方法150を使用する外科医にとって特段の障害とはならないと考えられる。
【0040】
色素を使用してもよいが、色素が例えば停滞した血液の形態で手術野に存在する場合、上記の実施形態による手術器具は、依然として尿管中存在する色素を血液中に存在する色素から区別し得ると考えられることにさらに留意されたい。第一に、血管内の、したがって停滞した血液内の色素の濃度は、腎臓で、そして結果として尿管で見られる濃度よりも希薄である。結果として、測定された光の変動及びコントローラーに渡される結果の信号は、ノイズとしてフィルタリングすることができる。第二に、メチレンブルーなどの色素は、酸性度又は塩基性度の異なるレベルで変更された吸収プロファイルを持ち、そのレベルは通常、pHで表される。例えば、血液のpHは約7.3(比較的中性)であるが、尿のpHは4.6(酸性)である。これにより、血液に色素が存在する場合でも、アーチファクトが尿管であるという判定が正確な判定である可能性が高まるように、比率を判定する際に使用される波長を選択することが可能である。
【0041】
光センサー122からの信号の非拍動成分のディップの識別の事項に関しては、2016年2月19日に提出されたPCT出願PCT/US16/18805及び2016年10月7日に提出されたPCT出願PCT/US16/55910は、それぞれその全体が参照により本明細書に組み込まれる。特に、方法200に関連するが、これらの出願及び米国特許出願公開第2017/0181701号から認識されるように、血管や尿管などの導管のない組織では、信号レベルのディップや低下は現れない。これが発生した場合、信号は尿管又は血管ではない組織を表すため、比率を変更する必要はない(
図3の方法200のブロック210、212を参照)。
【0042】
他方、血管又は尿管などの導管は、導管の存在下で光センサー122を横切る非拍動性(又はDC)信号レベルのディップを示す。ただし、尿管の存在下で現れるディップは、血管の存在下で現れるディップとはかなり異なる。光センサー122に沿った、可視及び近赤外波長の両方について、尿管の存在下で信号に現れるディップは、血管よりも尿管の場合のほうが非対称である。
図6(尿管)と
図7(血管)を比較されたい。
【0043】
方法200は、ブロック208で判定された比率と計算的に使用して導管(存在する場合)の特性を判定できるように、ブロック214、216で対称性を算出及び定量化する。一実施形態によれば、対称性は、光センサー122に沿って、ディップのいずれかの端にある光センサーからディップの最小値に関連する光センサーまでの距離を使用することにより定量化される。
図6のプロファイルでは、ディップの右端の光センサーから最小値に関連する光センサーまでの距離、及びディップの左端の光センサーから最小値に関連する光センサーまでの距離は非常に異なっている。一方、
図7のプロファイルでは、右端又は左端のいずれかの光センサーから最小値に関連する光センサーまでの距離が比較的近いことが認識できる。
【0044】
この実施形態によれば、各波長についてディップの端の光センサーと最小値に関連する光センサーを判定した後、端と最小値の間の距離、及びそれらの距離の差異が判定される。信号の非対称性が大きければ大きいほど、差異は大きくなる。そのため、尿管は、右端と左端から最小値までの距離の差異が血管よりも大きくなる。これらの違いは、ブロック214で対称性の判定として使用される。
【0045】
ブロック216で、各波長で判定された差異を加算することにより、メトリックが定義される。繰り返すが、尿管の信号には大きな非対称性が予想されるため、尿管のメトリックは血管よりも大きくなることが予想される。このメトリックは、ブロック218で閾値と比較される。対称性と非対称性の相対的なレベルに基づくメトリックの予想される違いを考慮すると、尿管と血管のメトリックの明確な違いが比較で示されるはずである。
【0046】
最後に、ブロック220、222では、ブロック218でのメトリックと閾値との比較に基づいて、ある数値が比率に加算又は減算される。図示された実施形態によれば、メトリック自体は比率を修正するために使用される。他の実施形態によれば、所定の値を使用して、比率に加算及び/又は減算することができる。
【0047】
さらに、方法200は、組織、尿管及び血管を区別する際に使用する対称性を定量化するための1つのメカニズムを提供するが、これを行うための唯一のメカニズムではない。例えば、尿管DC信号はしばしば複数のディップを示し、この情報を手術の性質及び上記比率と組み合わせて、組織、尿管、及び血管を区別するために使用できる。
【0048】
上記の検討は主として尿管を血管又は他の組織から区別するためのものであったが、この技術を適応させて他の構造も同様に区別することが可能である。例えば、この技術を採用して、胆管又はリンパ管を区別し得る。
【0049】
例えば、胆管の識別に関して、インドシアニングリーン(ICG)フルオロフォア(例えば、インドシアニングリーン/親油性物質VM674、マサチューセッツ州ベッドフォードのVisEn Medicalから入手可能)は、フルオロフォアの吸収特性に参照して、上記の尿管に関連して使用されたインディゴカルミン及びメチレンブルーと同様の要領で使用され得る。インドシアニングリーンフルオロフォアは、肝胆道排泄を促進するために親油性物質と混合させるか、胆嚢に直接注入することができる。
【0050】
図8は、インドシアニングリーンの吸収及び発光スペクトルのチャートであり、左側に吸収スペクトルがあり、右側に発光スペクトルがある。例えば、660nmでの吸収と比較して、780nmの波長で吸収スペクトルに顕著な狭いピークがあることが認識される。780nm及び660nmの波長で検出された透過光は1未満の比率になると考えられるが、血液又は血管の透過光の比率はかなり大きくなるはずである(例えば、1~1.5)。
【0051】
吸収プロファイルに応じて、他のフルオロフォア又は発色団を使用することが可能であり得る。例えば、メチレンブルーが使用されてもよい。メチレンブルーは以前に胆道系の着色に使用されていたことが認識される。インドシアニングリーンに関して上述した導入方法と同様に、メチレンブルーを胆嚢に直接注入してもよい。
【0052】
もちろん、胆嚢に関連する手順で使用するために特定のフルオロフォア又は発色団が確立された場合、本明細書に記載のシステム及び方法でフルオロフォア又は発色団を使用するインセンティブを提供し得る。すなわち、そのようなフルオロフォア又は発色団の使用は、複数の薬剤を注入及び検出する必要性を排除することにより、一般的に手順を簡素化するだろう。さらに、そのようなフルオロフォアは、手術システム内の蛍光イメージングシステム(カナダ、オンタリオ州ミササガのノバダクから入手可能なSPYイメージングシステムなど)で使用できるため、イメージングシステムは、切断領域全体の視野を提供し、本開示の実施形態のシステムは、手術器具の作業端に近接するアーチファクト(特に血管)に関する情報を提供し得る。
【0053】
別の例として、パテントブルーVは、リンパ管の識別に関して使用され得る。他の選択肢には、エバンスブルーとメチレンブルー、インドシアニングリーンが含まれる。パテントブルーV及びこれらの他の代替物は、現時点でリンパ造影に関して使用されるという上記の利点を有し、確立されたフルオロフォア又は発色団に対する上記のインセンティブを提供する。
【0054】
図9は、パテントブルーVの吸収スペクトルのチャートである。例えば、700nmでの吸収に対して、640nmの波長で吸収スペクトルに顕著なピークがあることが認識される。波長640nm及び700nmで検出された透過光の比率は1未満になると考えられるが、血液又は血管の透過光の比率はかなり大きくなるはずである(例えば、1又は1.5以上)。上記の検討から認識されるように、代わりにインドシアニングリーンが使用される場合、比率は代わりに780nmと660nmで判定され得る。
【0055】
図10及び
図11は、例えば、低侵襲手術又は腹腔鏡手術中に従来使用されているようなビデオシステム300の実施形態と組み合わせた手術システム100の実施形態を示している。ビデオシステム300は、ビデオカメラ又は他の画像キャプチャデバイス302、ビデオ又は他の関連するプロセッサー304、及び表示画面308を有するディスプレイ306を含む。
【0056】
図示されるように、ビデオカメラ302は、2つの手術器具106の作業端104に近接する領域102に向けられる。図示されるように、手術器具106の両方は、
図2に示される前述の手術システム100の実施形態の一部である。この場合、器具106はそれぞれ視覚的インジケーター130を含む。ただし、他の実施形態によれば、器具106のうちの1つのみが視覚的インジケーター130を含むことができることが認識される。説明の便宜のため、手術システム100の他の要素は省略されているが、スプリッター126及び分析器128などのシステム100の要素は、ビデオプロセッサー304と同じように、物理的ハウジングに収容され得ることに留意されたい。
【0057】
ビデオカメラ302からの信号は、ビデオプロセッサー304を介してディスプレイ306に送られ、外科医又は外科チームの他のメンバーは、通常は患者の体内にある領域102及び外科器具106の作業端104を見ることができる。視覚的インジケーター130は作業端104、したがって領域102に近接しているため、視覚的インジケーター130も表示画面108上で見ることができる。前述のように、これにより、外科医は、領域102及び作業端104と同じディスプレイ306を介して、同じディスプレイ画面308で、視覚的インジケーター130を介して視覚キュー又はアラームを有利に受け取ることができる。これは、次に、外科医が視覚的インジケーター130を介して伝達される情報を他の場所で見る必要性を減らす。
【0058】
図11は、手術システム100の実施形態と併せて使用することができるビデオシステム300の別の実施形態を示している。この実施形態によれば、ビデオプロセッサー304は、ビデオカメラ302’とは別個のハウジング内に配置されるのではなく、ビデオカメラ302’と同じハウジング内に配置される。さらなる実施形態によれば、代わりに、ビデオプロセッサー304は、ディスプレイスクリーン308’とディスプレイ306’の残りの部分と同じハウジング内に配置されてもよい。そうでない場合、
図10に示されたビデオシステム300の実施形態に関する上記の検討は、
図11に示されたビデオシステム300の実施形態に等しく適用される。
【0059】
ユーザーインターフェース130は、有利には、外科医又は外科チームがコントローラー124からの出力を見ることができるようにするが、
図1及び
図2に示すように、他の出力デバイスをユーザーインターフェース130に含めることが可能である。例えば、アラームは、手術に使用されているビデオモニタ400(例えば、
図10及び11のディスプレイ306、306’)に表示されてもよく、又はモニタ上の画像の色を変え、又は点滅、サイズの変化、又はその他の外観の変化をもたらしても良い。この補助出力はまた、聴覚アラームを提供するスピーカー402の形態であっても、スピーカー402を含む形態でもよい。補助出力はまた、手術器具106の使用を中断する手術器具106に関連する安全ロックアウトの形態であるか、又はそれを組み込むことができる。例えば、ロックアウトは、手術器具106が熱結紮装置である場合には結紮又は焼灼を停止することができる。さらに別の例として、補助出力は、触覚指図又はアラームを提供するために、手術器具106のハンドル又はハンドピースに取り付けられるか、一体に形成され得るバイブレータ404などの触覚フィードバックシステムの形態でもあり得る。手術器具108の作業端104に配置された発光素子に加えて、触覚指図又はアラームを提供するために、グリップ又はハンドル112に配置又は取り付けられるなど、1つ以上の発光素子がシャフト108の近位端110に配置されてもよい。これらの特定の形式の補助出力のさまざまな組み合わせも使用できる。
【0060】
上述のように、手術システム100は、ユーザーインターフェース130及びセンサー(及び好ましい実施形態では発光器120及び光センサー122)が(選択的に、取り外し可能/可逆的又は永久的/不可逆的に)接続される作業端104を備えた手術器具106も含むことができる。代わりに、ユーザーインターフェース130及びセンサーは、外科用器具106と一体に(すなわち、一体として)形成されてもよい。また、前述ように、ユーザーインターフェース130及びセンサーは、手術器具又はツール106と併せて使用される別個の器具又はツールに取り付けられることも可能である。
【0061】
上述のように、一実施形態では、手術器具106は熱結紮装置であってもよい。別の実施形態では、手術器具106は、単に、対向する顎を有する把持器又は把持鉗子であってもよい。さらなる実施形態によれば、手術器具は、例えば、灌注器、外科用ステープラー、クリップアプライヤー、及びロボット手術システムなどの他の手術器具であり得る。さらに他の実施形態によれば、手術器具は、ユーザーインターフェース及びセンサーを運び、それらを手術野内に配置する他の機能を有していなくてもよい。単一の実施形態の図は、他の外科用器具又はツール106とともにシステム100を使用することを妨げることを意図していない。
【0062】
結論として、前述の内容は本発明の異なる実施形態の詳細な説明を示すが、本発明の法的範囲は本明細書の最後に示される特許請求の範囲の用語によって定義されることを理解すべきである。あらゆる可能な実施形態を説明することは不可能ではないにしても非現実的であるため、詳細な説明は単に例示的なものと解釈され、本発明のあらゆる可能な実施形態を説明するものではない。現在の技術又は本願の出願日後に開発された技術のいずれかを使用して、本発明を規定する特許請求の範囲内に依然として含まれるであろう多数の別の実施形態を実施することができるであろう。
【0063】
なお、「本明細書で使用するときに、用語‘ ’とは、...を意味すると定義される」又は同様の文を使用して本明細書において用語が明示的に定義されていない限り、この用語の意味をその明白な又は通常の意味を超えて明示的又は黙示的に限定する意図はなく、このような用語は、本明細書の任意の節でなされた任意の記述(特許請求の範囲の用語以外)に基づいて範囲を限定するものと解釈されるべきではない。本明細書の最後にある特許請求の範囲に記載されている用語は、単一の意味に一致する態様で本明細書において言及されている程度まで、読者を混乱させないようにするためのみに明確化されており、当該特許請求の範囲の用語は、暗示その他によってその単一の意味に限定されることを意図しない。最後に、特許請求の範囲の要素が、用語「手段」及び構造の記載のない機能を記載することによって定義されていない限り、いかなる特許請求の範囲の要素の範囲も米国特許法第35条§112(f)の条項に基づいて解釈されることを意図しない。