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特許7220242パルス電界の焼灼エネルギーを心内膜組織に送出するためのシステム、装置、及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-01
(45)【発行日】2023-02-09
(54)【発明の名称】パルス電界の焼灼エネルギーを心内膜組織に送出するためのシステム、装置、及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/12 20060101AFI20230202BHJP
   A61B 18/14 20060101ALI20230202BHJP
   A61N 1/362 20060101ALN20230202BHJP
【FI】
A61B18/12
A61B18/14
A61N1/362
【請求項の数】 13
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021033231
(22)【出願日】2021-03-03
(62)【分割の表示】P 2018534873の分割
【原出願日】2017-01-04
(65)【公開番号】P2021090832
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2021-04-01
(31)【優先権主張番号】62/274,943
(32)【優先日】2016-01-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516193782
【氏名又は名称】ファラパルス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ヴィスワナータン,ラジュ
(72)【発明者】
【氏名】ロング,ゲイリー エル.
(72)【発明者】
【氏名】パギアード,ジャン-リュック
【審査官】槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0330266(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0351836(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0257069(US,A1)
【文献】米国特許第06115626(US,A)
【文献】国際公開第2014/124231(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0142408(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0183638(US,A1)
【文献】特許第6847960(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/12-18/14
A61N 1/36-1/378
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルス波形を生成するように構成された信号発生器と、
前記信号発生器と連結され、前記パルス波形を受信するように構成されたアブレーション装置であって、スパインのセットを含み、前記スパインのセットの少なくとも2本のスパインを介して前記パルス波形を受信したことに応答してパルス電界を組織に送出するように構成された前記アブレーション装置と
を備え、
前記少なくとも2本のスパインの各々は、表面と、前記表面に配置されるとともに独立してアドレス指定可能な少なくとも1セットの複数の電極とを含み、
前記少なくとも1セットの複数の電極の各電極が、それに関連する絶縁リード線を有し、前記絶縁リード線が前記少なくとも2本のスパインのそれぞれの本体に配置されており、
前記少なくとも2本のスパインは、第1のスパインと、前記第1のスパインに隣接する第2のスパインとを含み、
前記第1のスパインの最遠位端の電極が、前記第2のスパインの最遠位端の電極に対して前記アブレーション装置の遠位端に近接して配置される、システム。
【請求項2】
前記絶縁リード線は、対応する絶縁体の絶縁破壊なしに少なくとも約700Vの電圧電位を維持するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
使用中に心臓を刺激するためにペーシング信号を生成するように構成された心臓刺激装置をさらに備え、前記心臓刺激装置は、前記信号発生器と通信可能に接続されるとともに前記信号発生器にペーシング信号の表示を送信するようにさらに構成されており、
前記信号発生器は、前記ペーシング信号の表示と同期するパルス波形を生成するようにさらに構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記信号発生器は、前記ペーシング信号の表示に対して時間オフセットされたパルス波形を生成するようにさらに構成される、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記アブレーション装置が、前記アブレーション装置の遠位端を形成するように前記スパインのセットを繋留するように構成された遠位キャップをさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記少なくとも1セットの複数の電極の各電極が約0.5mm2~約20mm2の表面積を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記スパインのセットの各スパインは、約0.2mm2~約15mm2の断面積を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記スパインのセットは前記アブレーション装置の遠位部に送出アセンブリを形成し、前記送出アセンブリは、前記スパインのセットが前記アブレーション装置の長手方向軸から半径方向外側に曲がる第1の構成と、前記スパインのセットが前記アブレーション装置の前記長手方向軸に略平行に配置される第2の構成との間で変形するよう構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記アブレーション装置は当該アブレーション装置の近位端にカテーテルシャフトをさらに含み、前記スパインのセットが前記カテーテルシャフトの遠位端に結合するとともに使用中に拡張構造を形成し、
前記拡張構造の第1の平面における断面積は、当該拡張構造の第2の平面における断面積と異なっており、前記第1の平面と前記第2の平面とは、前記カテーテルシャフトの長手方向軸に対して直交する、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記アブレーション装置は当該アブレーション装置の近位端にカテーテルシャフトをさらに含み、前記スパインのセットが前記カテーテルシャフトの遠位端に結合するとともに使用中に拡張構造を形成し、
前記複数の電極のセットの少なくとも1つの電極、または、少なくともその一部は、前記拡張構造の遠位端面に配置され、前記遠位端面は前記カテーテルシャフトの長手方向軸に対して直交する、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記スパインのセットの遠位端は、前記拡張構造の内側の点に収束する、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記スパインのセットが拡張構造を形成している場合に、少なくとも1つの電極が当該少なくとも1つの電極の活性化によって損傷を生成するべく心臓内の壁と係合するように構成される、請求項9に記載のシステム。
【請求項13】
前記スパインのセットは、遠位部が近位部よりも球根状に膨らんで非対称形を有する拡張構造を形成するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年1月5日に出願され、「SYSTEMS, APPARATUSES AND DEVICES FOR DELIVERY OF PULSED ELECTRIC FIELD ABLATIVE ENERGY TO ENDOCARDIAL TISSUE」と題された米国仮出願第62/274,943号に対する優先権を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
組織治療用のパルス電界の生成は、過去20年間にわたり実験室から臨床での応用へと移行してきたが、高電圧及び大きな電界の短パルスが組織へ与える影響は、過去40年間以上にわたり調査されている。組織への短時間の高いDC電圧の印加は、典型的には数百V/cmの範囲にわたり局所的に高い電界を生成でき、細胞膜に細孔を発生することによって細胞膜を破壊する。この電気駆動での細孔の発生または電気穿孔の正確なメカニズムは、続いて研究されているが、比較的短い間に大きな電界を印加すると細胞膜の脂質二重層に不安定性が生じ、細胞膜に局所的な空隙や細孔が配されることになると考えられている。この電気穿孔は、膜に印加された電界が閾値より大きく、細孔が閉じずに開いたままで、それによって膜を越える生体分子物質の交換を可能にし、壊死及び/またはアポトーシス(細胞死)をもたらすような場合、不可逆的となり得る。その後、周囲の組織は自然に治癒することができる。
【0003】
パルスDC電圧は、適切な状況下で電気穿孔を進めることができるが、健常な組織への損傷を最小限に抑えながら、対象領域の心内膜組織に選択的に高DC電圧の電気穿孔式焼灼療法を効果的に送出する、薄く可撓な非外傷性装置には、必要性が依然存在しており、満たされていない。
【発明の概要】
【0004】
ここでは、不可逆的電気穿孔によって組織を焼灼するためのシステム、装置、及び方法が記載されている。一般に、パルス波形を組織に送出するためのシステムは、パルス波形を生成するように構成された信号発生器と、信号発生器と連結され、パルス波形を受信するように構成されたアブレーション装置とを含む。アブレーション装置は、スパインのセットを含み得る。アブレーション装置は、スパインのセットの1本以上のスパインを介して使用中にパルス波形を組織に送出するように構成できる。各スパインは、スパインの表面に形成された独立してアドレス指定可能な電極のセットを含み得る。電極のセットの各電極が、それに関連する絶縁リード線を有してもよい。絶縁リード線をスパインのそれぞれの本体に配置してもよい。
【0005】
いくつかの実施形態では、絶縁リード線は、対応する絶縁体の絶縁破壊なしに少なくとも約700Vの電圧電位を維持するように構成することができる。システムは、使用中に心臓刺激のためのペーシング信号を生成するように構成される心臓刺激装置をさらに含むことができる。心臓刺激装置は、信号発生器に通信可能に連結され、ペーシング信号の表示を信号発生器に送信するようにさらに構成してもよい。信号発生器は、さらに、ペーシング信号の表示に同期してパルス波形を生成するように構成してもよい。信号発生器は、ペーシング信号の表示に対して時間オフセットを備えるパルス波形を生成するようにさらに構成してもよい。アブレーション装置は、アブレーション装置の遠位端を形成するようにスパインのセットを繋留するように構成された遠位キャップをさらに含むことができる。アブレーション装置は、スパインのセットの一対のスパインの間で電極を電気的に連結するように構成されたスパイン電線をさらに含むことができる。一対のスパインは、互いに隣接していてもよい。スパイン電線は、スパイン電線のセットの第1のスパイン電線であってもよい。スパイン電線のセットの各スパイン電線は、スパインのセットの異なる一対のスパインの間で電極を連結することができる。スパイン電線のセットは、それに連結された電極間に連続ループを形成することができる。スパイン電線のセットは、スパインのセットにわたって電極を連結する第1のスパイン電線のセットであってもよい。アブレーション装置は、スパインのセットにわたって電極を連結する第2のスパイン電線のセットをさらに含むことができる。第2のスパイン電線のセットは、スパインのセットにわたって第1のスパイン電線のセットとは異なる電極を連結することができる。第1のスパイン電線のセットは、それと連結された電極の間に第1の連続ループを形成でき、第2のスパイン電線のセットが、それと連結された電極の間に第2の連続ループを形成できる。第1の連続ループが第2の連続ループから電気的に絶縁されていてもよい。スパイン電線のセットの第1のスパイン電線は、スパインのセットの第1のスパインと第2のスパインとの間で電極を連結することができる。スパイン電線のセットの第2のスパイン電線は、スパインのセットの第1のスパインと第3のスパインとの間で電極を連結することができる。スパイン電線のセットの第1のスパイン電線は、電極をスパインのセットの第1のスパインと第2のスパインとの間で連結できる。スパイン電線のセットの第2のスパイン電線は、スパインのセットの第3のスパイン及び第4のスパインの間で電極を連結することができる。
【0006】
いくつかの実施形態では、電極は、装置のシャフトの近位部で、または装置持ち手の中で、電気的に共に接続することができる(それらが同じ電位になるようにする)。これらの実施形態では、電極間の電気的接続は、本明細書に記載の別形と同様であり得る。例えば、同じ電位の電極のループを形成しても、隣接するスパインの隣接する電極を同じ電位にしても、一般に、スパインの電極の第1のセットを、装置のシャフトの近位部または装置持ち手の中のリード線間の適切な電気的接続によって、スパインの第2の電極のセットと同じ電位で維持してもよい。
【0007】
いくつかの実施形態では、スパインのセットは3本のスパインから20本のスパインを含むことができる。電極のセットは、2本の電極から64本の電極を含むことができる。電極のセットの各電極は、約0.5mm~約20mmの表面積を有することができる。スパインのセットの各スパインは、約0.2mm~約15mmの断面積を有することができる。スパインのセットは、アブレーション装置の遠位部に送出アセンブリを形成することができる。送出アセンブリは、スパインのセットがアブレーション装置の長手方向軸から半径方向外側に曲がる第1の構成と、スパインのセットがアブレーション装置の長手方向軸に全体的に略平行に配置される第2の構成との間で変形するように構成できる。送出アセンブリは、約1mm~約25mmの最大断面積を有することができる。システムは、スパインのセットに連結される持ち手をさらに含むことができる。持ち手は、第1の構成と第2の構成との間でのスパインのセットの変形に影響を及ぼすように構成してもよい。スパインのセットは、第1のスパインと、第1のスパインに隣接する第2のスパインとを含むことができる。第1のスパインの電極は、第2のスパインの電極に対して、アブレーション装置の遠位端に、より近接して配置してもよい。スパインのセットは、アブレーション装置の遠位部に存在してもよい。電極のセットの少なくとも2本の電極のリード線は、アブレーション装置の近位部またはその近傍に電気的に連結してもよい。
【0008】
いくつかの実施形態では、スパインのセットは、使用中に拡張構造を形成することができる。拡張構造の第1の平面における断面積は、拡張構造の第2の平面における断面積と異なることができる。電極のセットの少なくとも1本の電極または少なくともその一部は、拡張構造の遠位端面に配置してもよい。スパインのセットは、拡張構造の内側の点でそれらの遠位端に収束することができる。
【0009】
いくつかの実施形態では、パルス波形は、パルスを含むパルス波形の第1のレベルの階層を含むことができる。各パルスは、パルス持続時間、及び連続するパルスを分離する第1の時間間隔を有することができる。パルス波形の第2のレベルの階層は、第2のパルスのセットとしての複数の第1のパルスと、連続する第2のパルスのセットを分離する第2の時間間隔とを含む。第2の時間間隔は、第1の時間間隔の持続時間の少なくとも3倍であってよい。パルス波形の第3のレベルの階層は、第3のパルスのセットとしての複数の第2のパルスのセットと、連続する第3のパルスのセットを分離する第3の時間間隔とを含む。第3の時間間隔は、第2のレベルの時間間隔の持続時間の少なくとも30倍であってよい。
【0010】
また、ここでは、不可逆的電気穿孔による心房細動の治療方法が記載される。一般に、これらの方法は、パルス波形を生成するステップと、アブレーション装置のスパインのセットの1本以上のスパインを介して、患者の心臓の肺静脈口にパルス波形を送出するステップとを含む。各スパインは、スパインの表面に形成された独立してアドレス指定可能な電極のセットを含むことができる。電極のセットの各電極は、それに関連する絶縁リード線を有することができる。絶縁リード線は、スパインの本体に配置してもよい。
【0011】
いくつかの実施形態では、アブレーション装置は、心臓の左心房の心内膜腔に、及び肺静脈口に接触して配置できる。各絶縁リード線は、対応する絶縁体の絶縁破壊なしに、少なくとも約700Vの電圧電位を維持するように構成してもよい。ペーシング信号を、心臓の心臓刺激のために生成してもよい。ペーシング信号は心臓に印加でき、パルス波形はペーシング信号に同期して生成される。パルス波形は、ペーシング信号に対して時間オフセットを含むことができ、そのようなオフセットは、本明細書で使用される「同期」という用語により包含されると理解される。スパインのセットの電極群は、スパインのセットの各スパインの電極のセットを含むことができる。この方法は、電極群の第1の電極をアノードとして構成し、電極群の第2の電極をカソードとして構成し、パルス波形を第1の電極及び第2の電極に送出するステップをさらに含んでもよい。
【0012】
いくつかの実施形態では、本方法は、スパインのセットの第1のスパインの第1の電極のセットをアノードとして構成し、スパインのセットの第2のスパインの電極の第2のセットをカソードとして構成し、パルス波形を第1の電極のセット及び第2の電極のセットに送出するステップをさらに含み得る。アブレーション装置は、第1のスパイン電線のセットと第2のスパイン電線のセットとをさらに含むことができる。各スパイン電線は、スパインのセットの一対のスパインの間で電極を電気的に連結するように構成することができる。第2のスパイン電線のセットは、スパインのセットにわたって第1のスパイン電線のセットと異なる電極を連結することができる。第1のスパイン電線のセットは、連結される電極間で第1の連続ループを形成でき、第2のスパイン電線のセットは、連結される電極間で第2の連続ループを形成する。第1の連続ループが第2の連続ループから電気的に絶縁できる。方法は、第1の連続ループに連結された電極をアノードとして構成し、第2の連続ループに連結された電極をカソードとして構成し、第1の連続ループに連結された電極及び第2の連続ループに連結された電極にパルス波形を送出するステップをさらに含み得る。
【0013】
いくつかの実施形態では、スパイン電線、または第1のスパイン電線のセット及び第2のスパイン電線のセットは、装置のシャフトの近位部、または装置の持ち手の中で、(それらが同じ電位になるように)適切なリード間の電気的接続によって置き換えることができる。これらの実施形態では、電極間の電気的接続は、上記の別形と同様であり得る。例えば、同じ電位の電極のループを形成しても、隣接するスパインの隣接する電極を同じ電位にしても、一般に、スパインの電極の第1のセットを、装置のシャフトの近位部または装置の持ち手の中のリード線間の適切な電気的接続によって、スパインの第2の電極のセットと同じ電位で維持してもよい。
【0014】
いくつかの実施形態では、アブレーション装置は、スパインのセットの第1のスパインと第2のスパインとの間で電極を連結する第1のスパイン電線をさらに含むことができる。第2のスパイン電線は、スパインのセットの第1のスパインと第3のスパインとの間で電極を連結することができる。この方法は、第1のスパイン電線と第2のスパイン電線によって連結された電極をアノードまたはカソードとして構成し、第1のスパイン電線と第2のスパイン電線によって連結された電極にパルス波形を送出するステップをさらに含むことができる。アブレーション装置は、スパインのセットの第1のスパインと第2のスパインとの間で電極を連結する第1のスパイン電線をさらに含むことができる。第2のスパイン電線は、スパインのセットの第3のスパインと第4のスパインとの間で電極を連結することができる。この方法は、第1のスパイン電線によって連結された電極をアノードとして構成し、第2のスパイン電線によって連結された電極をカソードとして構成し、パルス波形をアノード及びカソードに送出するステップをさらに含むことができる。いくつかの実施形態では、スパイン電線、または第1のスパイン電線及び第2のスパイン電線は、装置のシャフトの近位部、または装置の持ち手の中で、(それらが同じ電位になるように)適切なリード間の電気的接続によって置き換えることができる。これらの実施形態では、電極間の電気的接続は、上記の別形と同様であり得、方法は、第1の電気的に連結された電極のセットをアノードとして構成し、第2の電気的に連結された電極のセットをカソードとして構成し、パルス波形をアノード及びカソードに送出するステップをさらに含んでもよい。
【0015】
スパインのセットは、アブレーション装置の遠位部に送出アセンブリを形成することができる。送出アセンブリは、スパインのセットがアブレーション装置の長手方向軸から半径方向外側に曲がる第1の構成の間で変形するよう構成できる。この方法はさらに、肺静脈口と接触して第1の構成に送出アセンブリを配置し、パルス波形を送出する前に送出アセンブリを第2の構成に変形するステップを含むことができる。スパインのセットは、アブレーション装置の遠位部に存在してもよい。電極のセットの少なくとも2本の電極のリード線は、アブレーション装置の近位部またはその近傍に電気的に連結されてもよい。
【0016】
いくつかの実施形態では、パルス波形は、第1のパルスのセットを含むパルス波形の第1のレベルの階層を含むことができる。各パルスは、パルス持続時間、及び連続するパルスを分離する第1の時間間隔を有することができる。パルス波形の第2のレベルの階層は、第2のパルスのセットとして複数の第1のパルスセットを含むことができる。第2の時間間隔が、連続する第1のパルスのセットを分離し得る。第2の時間間隔は、第1の時間間隔の持続時間の少なくとも3倍であってもよい。パルス波形の第3のレベルの階層は、第3のパルスのセットとしての複数の第2のパルスのセットを含むことができる。第3の時間間隔が、連続する第2のパルスセットを分離し得る。第3の時間間隔は、第2のレベル時間間隔の持続時間の少なくとも30倍であってもよい。
【0017】
いくつかの実施形態では、ここに記載する組織を焼灼するためのシステムは、パルス波形を生成するように構成された信号発生器を含むことができる。このシステムはまた、信号発生器と連結され、パルス波形を組織に送出するように構成できるアブレーション装置を含む。アブレーション装置は、スパインのセットを含んでよく、アブレーション装置は、スパインのセットの1本以上のスパインを介して使用中にパルス波形を組織に送出するように構成できる。各スパインは、スパインの表面に形成された独立してアドレス指定可能な電極のセットを含むことができる。電極のセットの各電極は、それに関連する絶縁リード線を有することができる。絶縁リード線は、スパインの本体に配置してもよい。
【0018】
いくつかの実施形態では、システムは、パルス波形を生成するように構成された信号発生器と、信号発生器と連結されたアブレーション装置とを含むことができる。アブレーション装置は、電極のセットを含み、パルス波形を受信するように構成してもよい。アブレーション装置は、使用中に電極のセットを介して組織にパルス波形を送出するように構成することができる。電極のセットの各電極は、それに関連する絶縁リード線を有することができる。各絶縁リード線は、対応する絶縁体の絶縁破壊なしに、少なくとも約700Vの電圧電位を維持するように構成してもよい。いくつかの実施形態では、システムは、使用中に心臓刺激のためのペーシング信号を生成するように構成された心臓刺激装置をさらに含むことができる。心臓刺激装置は、信号発生器に通信可能に連結され、ペーシング信号の表示を信号発生器に送信するようにさらに構成してもよい。信号発生器は、ペーシング信号の表示に同期してパルス波形を生成するようにさらに構成してもよい。
【0019】
いくつかの実施形態では、信号発生器は、ペーシング信号の表示に対して時間オフセットを備えるパルス波形を生成するようにさらに構成してもよい。他の実施形態では、システムは、非線形遠位部を有するガイドワイヤをさらに含むことができる。アブレーション装置は、使用中にガイドワイヤ上に配置されるように構成してもよい。いくつかの他の実施形態では、アブレーション装置は、非線形遠位部を含んでよく、非線形遠位部は、そこに配置される電極セットの1本以上の電極を有する。パルス波形は、パルスを含むパルス波形の第1のレベルの階層を含むことができる。各パルスは、パルス持続時間、及び連続するパルスを分離する第1の時間間隔を有することができる。パルス波形の第2のレベルの階層は、第2のパルスのセットとして複数の第1のパルスセットを含むことができる。第2の時間間隔が、連続する第1のパルスのセットを分離し得る。第2の時間間隔は、第1の時間間隔の持続時間の少なくとも3倍であってもよい。パルス波形の第3のレベルの階層は、第3のパルスのセットとしての複数の第2のパルスのセットを含むことができる。第3の時間間隔が、連続する第2のパルスセットを分離し得る。第3の時間間隔は、第2のレベル時間間隔の持続時間の少なくとも30倍であってもよい
【0020】
いくつかの実施形態では、組織にパルス波形を送出するシステムは、パルス波形を生成するように構成された信号発生器と、信号発生器と連結され、パルス波形を受信するように構成されたガイドワイヤとを含み得る。ガイドワイヤは、近位部及び非線形遠位部を含むことができる。非線形遠位部は、使用中にパルス波形を組織に送出するように構成することができる。近位部は、それと関連する絶縁体を有し、その絶縁体は絶縁破壊なしに少なくとも約700Vの電圧電位を維持するように構成することができる。いくつかの実施形態では、システムは、使用中に心臓刺激のためのペーシング信号を生成するように構成された心臓刺激装置をさらに含むことができる。心臓刺激装置は、信号発生器に通信可能に連結でき、ペーシング信号の表示を信号発生器に送信するようにさらに構成してもよい。信号発生器は、ペーシング信号の表示に同期してパルス波形を生成するようにさらに構成してもよい。パルス波形の第1のレベルの階層は、パルスのセットを含むことができる。各パルスは、パルス持続時間、及び連続するパルスを分離する第1の時間間隔を有することができる。パルス波形の第2のレベルの階層は、第2のパルスのセットとして複数の第1のパルスセットを含むことができる。第2の時間間隔が、連続する第1のパルスのセットを分離し得る。第2の時間間隔は、第1の時間間隔の持続時間の少なくとも3倍であってもよい。パルス波形の第3のレベルの階層は、第3のパルスのセットとしての複数の第2のパルスのセットを含むことができる。第3の時間間隔が、連続する第2のパルスセットを分離し得る。第3の時間間隔は、第2のレベル時間間隔の持続時間の少なくとも30倍であってもよい。
【0021】
いくつかの実施形態では、組織にパルス波形を送出するシステムは、パルス波形を生成するように構成された信号発生器と、信号発生器と連結されたアブレーション装置とを含むことができる。アブレーション装置は、リード線のセットを含み、パルス波形を受信するように構成してもよい。リード線のセットの各リード線は、それと関連する絶縁体を有することができる。リード線のセットの各リード線は、アブレーション装置の遠位部にループを形成するよう構成し、アブレーション装置がループのセットを含むようにすることができる。ループのセットの各ループは、電極として非絶縁部分を有し、アブレーション装置がアブレーション装置の遠位部に電極のセットを含むようにすることができる。アブレーション装置は、使用中に電極のセットを介して組織にパルス波形を送出するように構成することができる。システムは、使用中に心臓刺激のためのペーシング信号を生成するように構成された心臓刺激装置をさらに含むことができる。心臓刺激装置は、信号発生器に通信可能に連結され、ペーシング信号の表示を信号発生器に送信するようにさらに構成してもよい。信号発生器は、ペーシング信号の表示に同期してパルス波形を生成するようにさらに構成してもよい。
【0022】
いくつかの実施形態では、アブレーション装置の遠位部におけるループのセットは、パルス波形を組織に送出するように構成してもよい。他の実施形態では、リード線のセットの各リード線は、対応する絶縁体の絶縁破壊なしに少なくとも約700Vの電圧電位を維持するように構成することができる。さらに別の実施形態では、アブレーション装置は、電極のセットの第1の電極をアノードとして、電極のセットの第2の電極をカソードとして構成することによって、電極のセットを介して使用中に組織にパルス波形を送出するようにさらに構成される。パルス波形の第1のレベルの階層は、第1のパルスのセットを含むことができる。各パルスは、パルス持続時間と、連続するパルスを分離する第1の時間間隔とを有する。パルス波形の第2のレベルの階層は、第2のパルスのセットとして複数の第1のパルスセットを含むことができる。第2の時間間隔が、連続する第1のパルスのセットを分離し得る。第2の時間間隔は、第1の時間間隔の持続時間の少なくとも3倍であってもよい。パルス波形の第3のレベルの階層は、第3のパルスのセットとしての複数の第2のパルスのセットを含むことができる。第3の時間間隔が、連続する第2のパルスセットを分離し得る。第3の時間間隔は、第2のレベル時間間隔の持続時間の少なくとも30倍であってもよい。
【0023】
いくつかの実施形態では、組織にパルス波形を送出するためのシステムは、パルス波形を生成するように構成された信号発生器と、信号発生器に連結され、パルス波形を受信するように構成されるアブレーション装置とを含み得る。アブレーション装置は、スパインのセットを含むことができる。アブレーション装置は、スパインのセットの1本以上のスパインを介して使用中に組織にパルス波形を送出するように構成してもよい。各スパインは、1本以上のスパインの各々の表面に形成された、独立してアドレス指定可能な電極のセットを含むことができる。電極のセットの各電極は、それと関連する絶縁リード線を有することができる。絶縁リード線は、1本以上のスパインのそれぞれの本体に配置してもよい。スパインのセットは、第1のスパインと、第1のスパインに隣接する第2のスパインとを含むことができる。第1のスパインの電極は、第2のスパインの電極に対して、アブレーション装置の遠位端に、より近接して配置してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施形態による電気穿孔システムのブロック図である。
図2】実施形態によるアブレーションカテーテルの斜視図である。
図3】他の実施形態によるアブレーションカテーテルの斜視図である。
図4】他の実施形態によるアブレーションカテーテルの斜視図である。
図5】他の実施形態によるアブレーションカテーテルの遠位部の詳細な斜視図である。
図6】他の実施形態によるアブレーションカテーテルの側面図である。
図7】他の実施形態によるアブレーションカテーテルの側面図である。
図8図8A~8Bは、それぞれ、他の実施形態によるアブレーションカテーテルの側面断面図および正面断面図である。
図9A】他の実施形態によるアブレーションカテーテルの側面図である。
図9B】他の実施形態によるアブレーションカテーテルの側面図である。
図9C】他の実施形態によるアブレーションカテーテルの側面図である。
図9D】他の実施形態によるアブレーションカテーテルの側面図である。
図9E】他の実施形態によるアブレーションカテーテルの側面図である。
図10】他の実施形態による、心臓の左心房に配置されたバルーンアブレーションカテーテルの斜視図である。
図11】他の実施形態による、心臓の左心房に配置されたバルーンアブレーションカテーテルの断面図である。
図12図12A~12Bは、実施形態によるアブレーションシステムのリターン電極の概略図である。
図13】実施形態による、組織の焼灼のための方法を示す。
図14】他の実施形態による、組織の焼灼のための方法を示す。
図15】心臓の左心房に配置されている、図2に示すアブレーションカテーテルの図である。
図16】心臓の左心房に配置されている、図3に示すアブレーションカテーテルの図である。
図17】心臓の左心房に配置されている、図4に示す2つのアブレーションカテーテルの図である。
図18】心臓の左心房に配置されている、図5に示すアブレーションカテーテルの図である。
図19A】他の実施形態による、肺静脈口に配置された電極のセットの概略的な斜視図である。
図19B】他の実施形態による、肺静脈口に配置された電極のセットの概略的な断面図である。
図20A】他の実施形態による、肺静脈口に配置された電極によって生成された電界の概略的な斜視図である。
図20B】他の実施形態による、肺静脈口に配置された電極によって生成された電界の概略的な断面図である。
図21】実施形態による、各パルスについて規定されたパルス幅を備える電圧パルスのシーケンスを示す例示的な波形である。
図22】実施形態による、パルス幅、パルス間の間隔、及びパルス群を示すパルスの階層を概略的に示す。
図23】実施形態による、異なるレベルの入れ子階層を表示する単相パルスの入れ子階層の概略図を提供する。
図24】実施形態による、異なるレベルの入れ子階層を表示する二相パルスの入れ子階層の概略図である。
図25】心房及び心室の不応期期間と共に、心電図及び心臓ペーシング信号の時間のシーケンスを概略的に示し、不可逆的電気穿孔焼灼の時間窓を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本明細書には、不可逆的電気穿孔によって組織を焼灼するためパルス電界を選択的かつ迅速に適用するためのシステム、装置、及び方法を記載する。一般に、本明細書に記載するシステム、装置及び方法は、不要な組織損傷及び電気アーク放電を低減するために、所望の対象領域で大きな電界強度を生成し、他の場所でピーク電界値を低減するために使用できる。本明細書に記載の不可逆的電気穿孔システムは、1つまたは複数の電圧パルス波形をアブレーション装置の選択された電極セットに印加して、対象領域にエネルギー(例えば、肺静脈口の組織のセット用のアブレーションエネルギー)を送出するように構成された信号発生器及びプロセッサを含み得る。本明細書に開示されるパルス波形は、様々な心不整脈(例えば、心房細動)の治療的処置を補助することができる。アブレーション装置の1本以上の電極は、信号発生器によって生成されたパルス波形を送出するために、対応する絶縁体の絶縁破壊なしに少なくとも約700Vの電圧電位を維持するように構成された絶縁リード線を有することができる。電極は、装置の他のいずれの電極とも無関係に各電極を制御する(例えば、エネルギーを送出する)ことができるように、独立してアドレス指定可能であってもよい。このようにして、電極は組織の電気穿孔のために相乗的に異なるタイミングで異なるエネルギー波形を送出することができる。
【0026】
本明細書で使用する「電気穿孔」という用語は、細胞膜への電界の印加を示し、細胞膜の細胞外環境への浸透性を変化させることを示す。本明細書で使用する「可逆的電気穿孔」という用語は、細胞膜の細胞外環境への浸透性を一時的に変化させるために、細胞膜に電界を印加することを示す。例えば、可逆的電気穿孔を受ける細胞には、細胞膜において、電界の除去の際に閉じる1つ以上の孔が一時的及び/または断続的に形成され得る。本明細書で使用される「不可逆的電気穿孔」という用語は、細胞膜への電界の印加を示し、細胞膜の細胞外環境への浸透性を恒久的に変化させる。例えば、不可逆的電気穿孔を受ける細胞には、細胞膜において、電界が除去されても持続する1つ以上の孔が形成され得る。
【0027】
本明細書に開示される電気穿孔エネルギー送出のためのパルス波形は、不可逆的電気穿孔に関連する電界の閾値を低下させて、そのため送出する全エネルギーを低減して、より効果的な損傷の焼灼をすることによって、組織へのエネルギー送出の安全性、効率及び有効性を向上させることができる。いくつかの実施形態では、本明細書で開示される電圧パルス波形は階層的であってよく、入れ子構造を有することができる。例えば、パルス波形は、関連するタイムスケールを有するパルスの階層的な群化を含むことができる。いくつかの実施形態では、本明細書で開示される方法、システム、及び装置は、2016年10月19日に出願された国際出願シリアルナンバーPCT/US2016/057664の「SYSTEMS,APPARATUSES AND METHODS FOR DELIVERY OF ABLATIVE ENERGY TO TISSUE」に記載されている方法、システム、及び装置の1つ以上を含むことができ、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0028】
いくつかの実施形態では、システムは心臓刺激装置をさらに含むことができ、これは、パルス波形の生成を、ペーシングされた心拍と同期させるために使用される。心臓刺激装置は、心臓を心臓刺激装置で電気的にペーシングし、ペーシングを確実に捉えて心周期の周期性及び予測可能性を確立することができる。周期的な心周期の不応期内の時間窓を、電圧パルス波形送出のために選択することができる。したがって、電圧パルス波形は、心臓の洞調律の中断を避けるために、心周期の不応期に送出することができる。いくつかの実施形態では、アブレーション装置は、1つ以上のカテーテル、ガイドワイヤ、バルーン、及び電極を含むことができる。アブレーション装置は、心内膜腔に装置を配置するために、異なる構成(例えば、コンパクト及び拡張)に変形することができる。いくつかの実施形態では、システムは、1本以上のリターン電極を任意に含むことができる。
【0029】
一般に、組織を焼灼するために、1本または複数のカテーテルを、脈管構造を介して標的位置まで最小侵襲様式で進めることができる。心臓での適用において、電圧パルス波形を送出させる電極は、心外膜用装置または心内膜用装置に配置できる。ここで説明される方法は、心臓の左心房の心内膜腔に装置を導入すること、及び装置を肺静脈口に接触させて配置することを含むことができる。パルス波形を生成し、装置の1本以上の電極に送出して、組織を焼灼することができる。いくつかの実施形態では、パルス波形は、心臓の洞調律の中断を回避するために、心臓のペーシング信号と同期して生成されてもよい。いくつかの実施形態では、電極は、アノード-カソードサブセットで構成してもよい。パルス波形は、組織の焼灼を補助し、健常な組織への損傷を減少させるための階層的な波形を含むことができる。
【0030】
I.システム
概要
本明細書では、組織の焼灼を補助するための電圧パルス波形を選択的かつ迅速に適用することによる組織の焼灼のために構成され、不可逆的な電気穿孔をもたらすシステム及び装置が開示される。一般に、本明細書に記載の組織を焼灼するためのシステムは、信号発生器及びアブレーション装置を含むことができ、電気穿孔を進めるためのDC電圧の選択的かつ迅速な印加のための1本以上の電極を有する。本明細書に記載するように、システム及び装置は、心房細動を治療するために心外膜及び/または心内膜に配置してもよい。電圧を、アノード及びカソードの電極を選択するための独立したサブセットの選択により、選択された電極のサブセットに印加してもよい。心臓刺激のためのペーシング信号は、ペーシング信号と同期する信号発生器によるパルス波形を生成するために生成して使用してもよい。
【0031】
一般に、本明細書に記載のシステム及び装置は、心臓の左心房の組織を焼灼するように構成された1本または複数のカテーテルを含む。図1は、電圧パルス波形を送出するように構成されたアブレーションシステム(100)を示す。システム(100)は、信号発生器(122)、プロセッサ(124)、メモリ(126)、及び心臓刺激装置(128)を含む器具(120)を含むことができる。器具(120)は、アブレーション装置(110)、及び任意のペーシング装置(130)及び/または任意のリターン電極(140)(例えば、点線でそこに示されたリターンパッド)に連結されてもよい。
【0032】
信号発生器(122)は、例えば肺静脈口のような組織の不可逆的電気穿孔のためのパルス波形を生成するように構成することができる。例えば、信号発生器(122)は電圧パルス波形発生器であってもよく、パルス波形をアブレーション装置(110)に送出してもよい。リターン電極(140)は、アブレーション装置(110)から患者を通り、次にリターン電極(140)に電流が通ることを可能にするために患者(例えば、患者の背中に配置される)に連結して、患者からの安全な電流のリターン経路(図示せず)を設けるようにし得る。プロセッサ(124)は、信号発生器(122)によって生成されるパルス波形のパラメータ(例えば、振幅、幅、デューティサイクルなど)を決定するために、メモリ(126)、心臓刺激装置(128)、及びペーシング装置(130)から受信したデータを組み込むことができる。メモリ(126)は、パルス波形の生成及び/または心臓ペーシングの同期などのシステム(100)に関連するモジュール、プロセス及び/または機能を信号発生器(122)に実行させる命令をさらに記憶することができる。例えば、メモリ(126)は、パルス波形の生成及び/または心臓ペーシングのためのパルス波形及び/または心臓ペーシングのデータをそれぞれ記憶するように構成してもよい。
【0033】
いくつかの実施形態では、アブレーション装置(110)は、以下でより詳細に説明するパルス波形を受信及び/または送出するように構成されたカテーテルを含むことができる。例えば、アブレーション装置(110)は、左心房の心内膜腔に導入され、1本以上の電極(112)を1つ以上の肺静脈口に位置決めし、次いでパルス波形を送出して組織を焼灼するよう配置できる。アブレーション装置(110)は、1本以上の電極(112)を含むことができ、いくつかの実施形態では、独立してアドレス指定可能な電極のセットであってもよい。各電極は、対応する絶縁体の絶縁破壊なしに少なくとも約700Vの電圧電位を維持するように構成された絶縁リード線を含むことができる。いくつかの実施形態では、各リード線の絶縁体は、絶縁破壊なしにその厚さにわたって約200V~約1,500Vの電位差を維持することができる。例えば、電極(112)は、例えば、1本のアノードと1本のカソードを含むサブセット、2本のアノードと2本のカソードを含むサブセット、2本のアノードと1本のカソードを含むサブセット、1本のアノード及び2本のカソードを含むサブセット、3本のアノード及び1本のカソードを含むサブセット、3本のアノード及び2本のカソードを含むサブセットなどの1つ以上のアノード-カソードサブセットにグループ化できる。
【0034】
ペーシング装置(130)は、患者(図示せず)に適切に連結され、心臓刺激のために器具(120)の心臓刺激装置(128)によって生成された心臓ペーシング信号を受信するように構成される。ペーシング信号の表示は、心臓刺激装置(128)が信号発生器(122)に送信できる。ペーシング信号に基づいて、電圧パルス波形の表示は、プロセッサ(124)によって選択、計算、及び/または他の方法で識別され、信号発生器(122)によって生成され得る。いくつかの実施形態では、信号発生器(122)は、(例えば、共通の不応期窓内の)ペーシング信号の表示と同期してパルス波形を生成するように構成される。例えば、いくつかの実施形態では、共通の不応期窓は実質的に心室ペーシング信号の直後に(またはほんのわずかに遅れて)開始し、その後約130ms以下の持続時間にわたって持続できる。そのような実施形態では、パルス波形全体をこの持続時間内に送出してもよい。
【0035】
プロセッサ(124)は、一組の命令またはコードを作動及び/または実行するように構成された任意の適切な処理装置であってもよい。プロセッサは、例えば、汎用プロセッサ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、特定用途向け集積回路(ASIC)、デジタル信号プロセッサ(DSP)などであってもよい。プロセッサは、システム及び/またはそれに関連するネットワーク(図示せず)に関連するアプリケーションプロセス及び/または他のモジュール、プロセス及び/または機能を作動及び/または実行するように構成することができる。基礎をなす装置の技術は、多様な構成要素のタイプ、例えば相補型金属酸化膜半導体(CMOS)のような金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)の技術、エミッタ結合論理(ECL)のようなバイポーラ技術、ポリマー技術(例えば、シリコン共役ポリマー-金属構造、及び金属共役ポリマー-金属構造)、アナログ及びデジタルの混合などを備えてよい。
【0036】
メモリ(126)は、データベース(図示せず)を含むことができ、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、メモリバッファ、ハードドライブ、消去可能なプログラム可能読出し専用メモリ(EPROM)、電気的消去再書込み可能な読出し専用メモリ(EEPROM)、読出し専用メモリ(ROM)、フラッシュメモリなどであってよい。メモリ(126)は、プロセッサ(124)に、パルス波形の生成及び/または心臓ペーシングなどの、システム(100)と関連するモジュール、プロセス及び/または機能を実行させる命令を記憶することができる。
【0037】
システム(100)は、例えば、1つ以上のネットワークを介して他の装置(図示せず)と通信することができ、その各々は任意のタイプのネットワークであってもよい。無線ネットワークは、いかなる種類のケーブルによっても接続されていない任意のタイプのデジタルネットワークを示すことができる。しかし、無線ネットワークは、インターネット、他のキャリア音声及びデータネットワーク、ビジネスネットワーク、及び個人のネットワークとインターフェースするために有線ネットワークに接続することができる。有線ネットワークは、通常、銅のツイストペアケーブル、同軸ケーブルまたは光ファイバケーブルを介して伝送される。有線ネットワークには多くの種類があり、例として、ワイドエリアネットワーク(WAN)、メトロポリタンエリアネットワーク(MAN)、ローカルエリアネットワーク(LAN)、キャンパスエリアネットワーク(CAN)、インターネットのようなグローバルエリアネットワーク(GAN)、バーチャルプライベートネットワーク(VPN)が挙げられる。以下では、ネットワークは、一般的にインターネットを介して相互接続され、統合されたネットワーキング及び情報アクセスソリューションを提供する、結び付けられた無線、有線、公衆及び私設データネットワークの任意の組み合わせを示す。
【0038】
アブレーション装置
本明細書に記載のシステムは、心房細動を治療するために心臓の左心房の組織を焼灼するように構成された1つ以上の多電極アブレーション装置を含むことができる。図2は、カテーテル(210)、及びカテーテル(210)の腔部内を摺動可能なガイドワイヤ(220)を含む、アブレーション装置(200)(例えば、アブレーション装置(110)と構造的及び/または機能的に類似している)の斜視図である。ガイドワイヤ(220)は、非線形の遠位部(222)を含むことができ、カテーテル(210)は、使用中にガイドワイヤ(220)上に配置されるように構成できる。ガイドワイヤ(220)の遠位部(222)は、患者の腔部内にカテーテル(210)を配置するのを補助するような形状にすることができる。例えば、ガイドワイヤ(220)の遠位部(222)の形状は、図15に関してより詳細に説明するように、肺静脈口及び/またはその近傍に配置するように構成することができる。ガイドワイヤ(220)の遠位部(222)は、組織への外傷を軽減する(例えば、組織穿刺の可能性を防止及び/または低減する)非外傷性の形状を含む及び/または形成することができる。例えば、ガイドワイヤ(220)の遠位部(222)は、円、ループ(図2に示すような)、楕円体、または任意の他の幾何学的形状などの非線形の形状を含むことができる。いくつかの実施形態では、ガイドワイヤ(220)は、非線形の形状を有するガイドワイヤがカテーテル(210)内に配置されたときにカテーテル(210)の腔部に適合でき、非線形の形状が、カテーテル(210)から進むときに再形成できる/さもなければ戻れるよう、弾性のあるように構成できる。他の実施形態では、カテーテル(210)は同様に、シース(図示せず)を通ってカテーテル(210)を前進させるのを補助するような弾性を有するように構成することができる。ガイドワイヤ(220)の成形遠位部(222)は、ガイドワイヤ(220)及びカテーテル(210)の他の部分に対して傾斜していてもよい。カテーテル(210)及びガイドワイヤ(220)は、心内膜腔(例えば、左心房)内へ前進するための大きさにすることができる。ガイドワイヤ(220)の成形遠位部(222)の直径は、カテーテル(230)が配置されるべき腔部の直径とほぼ同じであってもよい。
【0039】
カテーテル(210)は、使用中にガイドワイヤ(220)上に配置されるように、ガイドワイヤ(220)の上を摺動可能に前進させることができる。腔部(例えば、肺静脈口の近く)に配置されたガイドワイヤ(220)の遠位部(222)は、カテーテル(210)の遠位部を前進させるためのバックストップとして役立ち得る。カテーテル(210)の遠位部は、腔部(肺静脈口)の内径面に接触するように構成された電極のセット(212)(例えば、電極(複数可)(112)と構造的及び/または機能的に類似する)を含むことができる。例えば、電極(212)は、肺静脈口に接触するように構成されたほぼ円形の電極配置を含むことができる。図2に示すように、1本以上の電極(212)は、カテーテルシャフトに沿って配置される、一連の金属バンドまたはリングを含むことができ、一緒に電気的に接続できる。例えば、アブレーション装置(200)は、複数のバンドを有する単一の電極、それぞれが独自のバンドを有する1本以上の電極、及びそれらの組み合わせを含むことができる。いくつかの実施形態では、電極(212)は、ガイドワイヤ(220)の遠位部(222)の形状に一致する形状にすることができる。カテーテルシャフトは、可撓性を高めるために電極間に可撓性部分を含むことができる。他の実施形態では、1本以上の電極(212)は、可撓性を高めるためにヘリカル巻きを含むことができる。
【0040】
本明細書で論じられるアブレーション装置の電極の各々は、カテーテルの近位部に連結された持ち手(図示せず)に通じる絶縁リード線(図示せず)に接続させてもよい。各リード線の絶縁体は、絶縁破壊なしにその厚さにわたって少なくとも700Vの電位差を維持することができる。他の実施形態では、各リード線の絶縁体は、絶縁破壊なしに、その厚さにわたって、間のすべての値及び部分的な範囲を含めて約200V~約2000Vの電位差を維持することができる。これにより、電極が効果的に電気エネルギーを送出し、不可逆的電気穿孔によって組織を焼灼することが可能になる。電極は、例えば、図1に関して上述のように、信号発生器(122)によって生成されたパルス波形を受信することができる。他の実施形態では、ガイドワイヤ(220)は、アブレーション装置(200)から分離していてもよい(例えば、アブレーション装置(200)は、カテーテル(210)を含むが、ガイドワイヤ(220)を含まない)。例えば、ガイドワイヤ(220)は、それ自体を心内膜腔に前進させることができ、その後カテーテル(210)をガイドワイヤ(220)上で心内膜腔に前進させることができる。
【0041】
図3は、カテーテル(310)の遠位部(312)に沿って設けられた電極のセット(314)を有するカテーテル(310)を含む、アブレーション装置(300)(例えば、アブレーション装置(110)と構造的及び/または機能的に類似している)の別の実施形態の斜視図である。カテーテル(310)の遠位部(312)は、非線形で、ほぼ円形の形状を形成することができる。電極のセット(314)は、カテーテル(310)の非直線状遠位部(312)に沿って配置され、電極(314)の略円形の配列を形成することができる。使用中、電極(314)は、図16に関してより詳細に説明するように、パルス波形を送出して組織を焼灼するために、肺静脈口に配置してもよい。カテーテル(310)の成形遠位部(312)は、カテーテル(310)の他の部分に対して傾斜していてもよい。例えば、カテーテル(310)の遠位部(312)は、カテーテル(310)の隣接部分にほぼ垂直であってもよい。いくつかの実施形態では、カテーテル(310)の近位部に持ち手(図示せず)を連結することができ、カテーテル(310)の遠位部(312)の形状を変更するように構成された曲げ機構(例えば、1つ以上のプルワイヤ(図示せず))を含むことができる。例えば、持ち手のプルワイヤの操作は、カテーテル(310)の遠位部(312)の円形形状の円周を増減させることができる。カテーテル(310)の遠位部(312)の直径は、電極(314)が肺静脈口の近くに配置され、及び/または接触(例えば、肺静脈の内径面と接触)できるよう修正できる。電極(314)は、一連の金属バンドまたはリングを含み、独立してアドレス指定可能であってもよい。
【0042】
いくつかの実施形態では、パルス波形は、アノード及びカソードセットに構成された電極(314)の間に印加してもよい。例えば、隣接するまたはほぼ直径方向に対向する電極対を、アノード-カソードセットとして一緒に作動させることができる。本明細書で開示されるパルス波形のいずれをも、一連のアノード-カソード電極にわたって漸進的にまたは順次印加してもよいことを理解されたい。
【0043】
図4は、カテーテル(410)、及び整形されて非線形な遠位部(422)を有するガイドワイヤ(420)を含む、アブレーション装置(400)(例えば、アブレーション装置(110)と構造的及び/または機能的に類似している)のさらに別の実施形態の斜視図である。ガイドワイヤ(420)は、カテーテル(410)の腔部内を摺動可能であってもよい。ガイドワイヤ(420)は、カテーテル(410)の腔部を通って前進し、ガイドワイヤ(420)の遠位部(422)は、ほぼ円形であり得る。ガイドワイヤ(420)の遠位部(422)の形状及び/または直径は、図3に関して上述のような曲げ機構を使用して変更することができる。カテーテル(410)は、撓むことができるように、可撓性であってもよい。いくつかの実施形態では、カテーテル(410)及び/またはガイドワイヤ(420)は、これらが配置されている腔部にそれらが適合し、腔部外に進むときに二次形状をとるように弾性のあるように構成することができる。ガイドワイヤ(420)のサイズを変更し、カテーテル(410)の撓みを操作することによって、ガイドワイヤ(420)の遠位部(422)を肺静脈口などの標的組織部位に配置することができる。カテーテル(410)の遠位端(412)は、ガイドワイヤ(420)が延び始める部分を除いて封止して、カテーテル(410)がガイドワイヤ(420)の一部をカテーテル(410)の腔部内で電気的に絶縁することができるようにすることができる。例えば、いくつかの実施形態では、カテーテル(410)の遠位端(412)は、開口部を有するシールを含むことができ、それは、シールとガイドワイヤ(420)との間に圧縮保持(それは液密であり得る)を形成する力を加えたときにガイドワイヤ(420)が通れるようにする。
【0044】
いくつかの実施形態では、ガイドワイヤ(420)の露出した遠位部(422)を電極に連結し、信号発生器からパルス波形を受け取り、使用中にパルス波形を組織に送出するように構成することができる。例えば、ガイドワイヤ(420)の近位端は、適切なリードに連結され、図1の信号発生器(122)に接続してもよい。ガイドワイヤ(420)の遠位部(422)は、肺静脈口に配置することができるようなサイズにすることができる。例えば、ガイドワイヤ(420)の成形遠位部(422)の直径は、肺静脈口の直径とほぼ同じであってもよい。ガイドワイヤ(420)の成形遠位部(422)は、ガイドワイヤ(420)及びカテーテル(410)の他の部分に対して傾斜していてもよい。
【0045】
ガイドワイヤ(420)は、ステンレス鋼、ニチノール、白金、または他の適切な生体適合性材料を含むことができる。いくつかの実施形態では、ガイドワイヤ(420)の遠位部(422)は、ガイドワイヤ(420)に物理的及び電気的に取り付けられた白金コイルを含むことができる。白金コイルは、電圧パルス波形の送出のために構成された電極であってもよい。プラチナは放射線不透過性であり、それを使用すると、可撓性を増加させることができ、心内膜腔内でのアブレーション装置(400)の前進及び位置決めを補助する。
【0046】
図5は、各々が一対の絶縁のリードセグメント(510、512、514、516)から延びている電極のセット(520、522、524、526)を含む、アブレーション装置(500)(例えば、アブレーション装置(110)と構造的及び/または機能的に類似している)の花形遠位部の詳細な斜視図である。絶縁されていない電極(例えばリードセグメント(510、512)及び電極(526))に連結された隣接する絶縁リードセグメントの各対は、ループを形成する(図5は4つのループのセットを示す)。アブレーション装置(500)の遠位部におけるループのセットは、パルス波形を組織に送出するように構成できる。アブレーション装置(500)は、装置(500)の遠位端で分岐して、図5に示しているようなそれぞれの露出した電極(520、522、524、526)に接続する絶縁リードセグメントのセット(510、512、514、516)を含み得る。電極(520、522、524、526)は、導電体の露出部分を含むことができる。いくつかの実施形態では、1本以上の電極(520、522、524、526)は、白金コイルを含むことができる。1つ以上のセグメント(510、512、514、516)は、持ち手(図示せず)から制御される曲げ機構(例えば、ストラット、プルワイヤなど)に連結されて、装置(500)の遠位部のサイズ及び/または形状を制御することができる。
【0047】
電極(520、522、524、526)は、可撓性で、肺静脈口に隣接するなど、心内膜腔へと前進するためのコンパクトな第1の構成を形成することができる。いったん所望の位置に配置されると、電極(520、522、524、526)は、シースなどの腔部から前進するときに拡張された第2の形状に変形させて、図5に示すように、花形の遠位部を形成することができる。他の実施形態では、絶縁されたリードセグメント(510、512、514、516)及び電極(520、522、524、526)は、装置(500)を担持する腔部(例えばシース)から前進するときに第2の構成に外向きに拡張するように(例えばばねで開く)付勢できる。電極(520、522、524、526)は、独立してアドレス指定可能であってよく、それぞれは、対応する絶縁体の絶縁破壊なしに少なくとも約700Vの電圧電位を維持するように構成された絶縁リード線を有する。他の実施形態では、各リード線の絶縁体は、絶縁破壊なしにその厚さにわたって約200V~約2000Vの電位差を維持することができる。
【0048】
いくつかの実施形態では、アブレーション装置(5000)は、電極のセット(520、522、524、526)を介して使用中に組織にパルス波形を送出するように構成することができる。いくつかの実施形態では、パルス波形は、アノード及びカソードセットに構成された電極(520、522、524、526)の間に印加されてもよい。例えば、ほぼ直径方向に対向する電極対(例えば、電極(520、524)及び(522、526))は、アノード-カソード対として共に動作させることができる。他の実施形態では、隣接する電極をアノード-カソード対として構成することができる。例として、電極のセットの第1の電極(520)はアノードとして構成され、第2の電極(522)はカソードとして構成してもよい。
【0049】
図6図9Eは、電極のセットを用いて電圧パルス波形を送出して組織を焼灼し、肺静脈を電気的に分離するように構成できるアブレーション装置(例えば、アブレーション装置(110)と構造的及び/または機能的に類似する)の追加的な実施形態を示す。これらの実施形態のいくつかでは、アブレーション装置は、第1の構成から第2の構成に変形でき、アブレーション装置の電極が外側に拡張して組織の腔部(例えば、肺静脈口)と接触するようにする。
【0050】
図6は、装置(600)の近位端におけるカテーテルシャフト(610)、装置(600)の遠位キャップ(612)、及びそれに連結されたスパインのセット(614)を含むアブレーション装置(600)の実施形態の側面図である。遠位キャップ(612)は、組織への外傷を軽減するための非外傷性の形状を含み得る。スパインのセット(614)の近位端は、カテーテルシャフト(610)の遠位端に連結でき、スパインのセット(614)の遠位端は、装置(600)の遠位キャップ(612)に繋留することができる。アブレーション装置(600)は、使用中にスパインのセット(614)の1本以上のスパインを介して組織にパルス波形を送出するように構成することができる。
【0051】
アブレーション装置(600)の各スパイン(614)は、スパイン(614)の表面に形成された1本以上の、独立してアドレス指定可能な電極(616)を含むことができる。各電極(616)は、対応する絶縁体の絶縁破壊なしに少なくとも約700Vの電圧電位を維持するように構成された絶縁リード線を含むことができる。他の実施形態では、各リード線の絶縁体は、絶縁破壊なしにその厚さにわたって約200V~約2000Vの電位差を維持することができる。各スパイン(614)は、スパイン(614)の本体内に(例えば、スパイン(614)の腔部内に)形成された各電極(616)の絶縁リード線を含むことができる。図6は、各スパイン(614)が隣接するスパイン(614)の電極(616)とほぼ同じ大きさ、形状、及び間隔を有する一対の電極(616)を含むスパインのセット(614)を示す。他の実施形態では、電極(616)のサイズ、形状、及び間隔は異なっていてもよい。
【0052】
本明細書に記載されたアブレーション装置のそれぞれに対して、及び図6図9に記載のアブレーション装置については特に、スパインのセットの各スパインは、可撓な湾曲を含むことができる。スパインの最小曲率半径は、約1cm以上の範囲とすることができる。例えば、スパインのセットは、アブレーション装置の遠位部に送出アセンブリを形成し、スパインのセットがアブレーション装置の長手方向軸から半径方向外側に曲がる第1の構成と、スパインのセットが、アブレーション装置の長手方向軸に略平行に配置されている第2の構成との間で変形するよう構成できる。このようにして、スパインは、心内膜腔の幾何学的形状に、より容易に適合し得る。一般に、スパインの「バスケット」は、バスケットの一端(例えば、遠位端)がバスケットの他端(例えば近位端)よりも球根状になるように、シャフトの全長に沿って非対称的な形状を有することができる。送出アセンブリは、肺静脈口と接触して第1の構成で配置し、パルス波形を送出する前に第2の構成に変形してもよい。これらの実施形態のうちのいくつかでは、持ち手をスパインのセットに連結でき、持ち手は第1の構成と第2の構成との間でスパインのセットの変形に影響を及ぼすように構成される。いくつかの実施形態では、電極のセットの少なくとも2本の電極のリード線は、例えば持ち手の中など、アブレーション装置の近位部またはその近傍に電気的に連結させてもよい。
【0053】
一実施形態では、スパイン(614)の各電極(616)はアノードとして構成でき、隣接するスパイン(614)の各電極(616)は、カソードとして構成してもよい。別の実施形態では、一方のスパインの電極(616)は、アノードとカソードとの間を、逆の構成(例えば、カソード及びアノード)を有する隣接するスパインの電極と、交互にすることができる。アブレーション装置(600)は、任意の数のスパイン、例えば、間の部分的な範囲を含む3本、4本、5本、6本、7本、8本、9本、10本、12本、14本、16本、18本、20本、またはそれより多いスパインを含むことができる。いくつかの実施形態では、アブレーション装置(600)は、3~20本のスパインを含むことができる。例えば、アブレーション装置(600)は、6~12本のスパインを含むことができる。
【0054】
図7は、装置(700)の近位端におけるカテーテルシャフト(710)、装置(700)の遠位キャップ(712)、及びそれに連結されたスパインのセット(714)を含むアブレーション装置(700)の別の実施形態の側面図である。遠位キャップ(712)は、非外傷性の形状を含むことができる。スパインのセット(714)の近位端は、カテーテルシャフト(710)の遠位端に連結でき、スパインのセット(714)の遠位端は、装置(700)の遠位キャップ装置(712)に繋留することができる。アブレーション装置(700)の各スパイン(714)は、スパイン(714)の表面に形成された1本以上の、独立してアドレス指定可能な電極(716)を含むことができる。各電極(716)は、対応する絶縁体の絶縁破壊なしに少なくとも約700Vの電圧電位を維持するように構成された絶縁リード線を含むことができる。他の実施形態では、各リード線の絶縁体は、絶縁破壊なしに、その厚さにわたって約200V~約1500Vの電位差を維持することができる。各スパイン(714)は、スパイン(714)の本体に(例えば、スパイン(714)の腔部内に)形成された各電極(716)の絶縁リード線を含むことができる。スパイン電線のセット(718、719)は導電性であってよく、スパインのセットの一対のスパイン(718、719)間の電極(716)などの、異なるスパイン(714)に配置される隣接する電極(716)と電気的に連結させてよい。例えば、スパイン電線(718、719)は、アブレーション装置(700)の長手方向軸に対して横方向に延びることができる。
【0055】
図7は、各スパイン(714)が、隣接するスパイン(714)の電極(716)とほぼ同じ大きさ、形状、及び間隔を有する一対の電極(716)を含むスパインのセット(714)を示す。他の実施形態では、電極(716)のサイズ、形状、及び間隔は異なってもよい。例えば、第1のスパイン電線(718)に電気的に連結された電極(716)は、第2のスパイン電線(719)に電気的に連結された電極(716)とサイズ及び/または形状が異なっていてもよい。
【0056】
いくつかの実施形態では、第1のスパイン電線(718)は、第1のスパイン電線のセット(720、721、722、723)を含むことができ、スパイン電線のセット(720、721、722、723)の各スパイン電線は、スパインのセット(714)の異なる対のスパインの間に電極(716)を連結することができる。これらの実施形態のいくつかでは、スパイン電線のセット(720、721、722、723)は、それらに連結された電極(716)間に連続ループを形成することができる。同様に、第2のスパイン電線(719)は、第2のスパイン電線のセット(724、725、726)を含むことができ、スパイン電線のセット(724、725、726)の各スパイン電線は、スパインのセット(714)にわたって電極(716)を連結し得る。第2のスパイン電線のセット(724、725、726)は、スパインのセット(714)にわたって第1のスパイン電線のセット(720、721、722、723)とは異なる電極(716)を連結することができる。これらの実施形態のいくつかにおいて、第1のスパイン電線のセット(720、721、722、723)は、それに連結された電極(716)の間に第1の連続ループを形成でき、第2のスパイン電線のセット(724、725、726)は、それに連結された電極(716)の間に第2の連続ループを形成できる。第1の連続ループは、第2の連続ループから電気的に絶縁されていてもよい。これらの実施形態のいくつかでは、第1の連続ループに連結された電極(716)をアノードとして構成でき、第2の連続ループに連結した電極(716)をカソードとして構成することができる。パルス波形を、第1及び第2の連続ループの電極(716)に送達してもよい。いくつかの実施形態では、721、722、723などのスパイン電線は、装置の近位部(例えば、装置の持ち手)における同様の電気的接続によって置き換えることができる。例えば、電極716はすべて、装置の持ち手で共に電気的に配線することができる。
【0057】
別の実施形態では、スパイン電線のセット(720、721、722、723)の第1のスパイン電線(721)は、スパインのセット(714)の第1のスパイン(711)と第2のスパイン(713)の間に電極(716)を連結することができ、スパイン電線のセット(720、721、722、723)の第2のスパイン電線(720)は、スパインのセット(714)の第1のスパイン(711)と第3のスパイン(715)との間に電極(716)を連結することができる。第1のスパイン電線(721)及び第2のスパイン電線(720)によって連結された電極(716)は、アノード及びカソードとして(またはその逆に)構成してもよい。さらに別の実施形態では、スパイン電線のセット(720、721、722、723)の第1のスパイン電線(721)は、スパインのセット(714)の第1のスパイン(711)と第2のスパイン(713)との間で電極(716)を連結でき、スパイン電線のセット(720、721、722、723)の第2のスパイン電線(723)は、スパインのセット(714)の第3のスパイン(715)と第4のスパイン(717)との間で電極(716)を連結できる。パルス波形を、第1のスパイン電線(721)及び第2のスパイン電線(723)によって連結された電極(716)に送出してもよい。いくつかの実施形態では、スパイン電線の代わりに、電極のセットの少なくとも2本の電極のリード線が、例えば持ち手の中などの、アブレーション装置の近位部またはその近傍に、電気的に連結される。
【0058】
他の実施形態では、1本以上のスパイン電線(718、719)が、電気的に連結された電極(716)の間に連続ループを形成することができる。例えば、第1のスパイン電線のセット(718)は、それに連結された電極(716)間に第1の連続ループを形成し、第2のスパイン電線のセット(719)は、それに連結された電極(716)間に第2の連続ループを形成できる。この場合、第1の連続ループは、第2の連続ループから電気的に絶縁されていてもよい。一実施形態では、第1のスパイン電線のセット(718)に連結された電極(716)の各々をアノードとして構成することができる一方で、第2のスパイン電線のセット(719)に連結された電極(716)の各々をカソードとして構成することができる。電気的に連結された電極(716)の各群は、独立してアドレス指定可能であってもよい。いくつかの実施形態では、スパイン電線の代わりに、電極のセットの少なくとも2本の電極のリード線が、例えば持ち手の中などの、アブレーション装置の近位部またはその近傍に電気的に連結される。
【0059】
いくつかの実施形態では、図8A図8Bに関して以下により詳細に説明するように、スパイン電線は、連続ループを形成することなく、電極のセット(例えば、2本、3本、4本、5本など)に電気的に連結することができる。例えば、2本のスパイン電線を使用して不連続ループを形成することができる。他の実施形態では、電極(716)のサイズ、形状、及び間隔は異なってもよい。アブレーション装置(700)は、任意の数のスパイン、例えば3本、4本、5本、6本、7本、8本、9本、10本、12本、14本、16本、18本、20本、またはそれより多いスパインを含み得る。いくつかの実施形態では、アブレーション装置(700)は、3~20本のスパインを含むことができる。例えば、一実施形態では、アブレーション装置(700)は、6~9本のスパインを含むことができる。
【0060】
図8A図8Bは、それぞれ、アブレーションカテーテル(800)の側面断面図及び正面断面図である。図8Aは、装置(800)の近位端にあるカテーテルシャフト(810)、装置(800)の遠位キャップ(812)、及びそれに連結されているスパインのセット(814)を含む、アブレーション装置(800)の実施形態の側面図である。遠位キャップ(812)は、非外傷性の形状を含むことができる。スパインのセット(814)の近位端は、カテーテルシャフト(810)の遠位端に連結でき、スパインのセット(814)の遠位端は、装置(800)の遠位キャップ装置(812)に繋留することができる。アブレーション装置(800)の各スパイン(814)は、スパイン(814)の表面に形成された1本以上の、独立してアドレス指定可能な電極(816、818)を含むことができる。各電極(816、818)は、対応する絶縁体の絶縁破壊なしに少なくとも約700Vの電圧電位を維持するように構成された絶縁リード線を含むことができる。他の実施形態では、各リード線の絶縁体は、絶縁破壊なしに、その厚さにわたって、すべての値及び間の部分的な範囲を含む約200V~約2000Vの電位差を維持することができる。各スパイン(814)は、スパイン(814)の本体に(例えば、スパイン(814)の腔部内に)形成された各電極(816、818)の絶縁リード線を含むことができる。1つまたは複数のスパイン電線(817、819)は、導電性で、異なるスパイン(814)に配置された隣接する電極(816、818)を電気的に連結することができる。例えば、スパイン電線(817、819)は、アブレーション装置(800)の長手方向軸に対して横方向に延びることができる。
【0061】
図8Bは、8B-8B線に沿って得られた図8Aの正面断面図である。各スパイン電線(817、819、821、823)は、異なるスパインの一対の隣接する電極(816、818、820、822)を電気的に連結する。いくつかの実施形態では、連結された各電極対は、互いに電気的に絶縁されていてもよい。いくつかの実施形態では、連結された電極対は、共通の極性で構成してもよい。隣接する対の電極は、反対の極性(例えば、アノードとして構成された第1の電極対及びカソードとして構成された隣接する第2の電極対)で構成することができる。例えば、第1のスパイン電線のセット(817)に連結された電極(816)はアノードとして構成できるのに対し、第2のスパイン電線のセット(819)に連結される電極(818)の各々は、カソードとして構成できる。いくつかの実施形態では、スパイン(814)に形成された各電極は、共通の極性(例えば、アノードまたはカソードとして構成される)を共有することができる。連結された各電極対は、独立してアドレス指定可能であってもよい。いくつかの実施形態では、アブレーション装置(800)は、偶数のスパインを含むことができる。アブレーション装置(800)は、任意の数のスパイン、例えば、4本、6本、8本、10本、またはそれより多いスパインを含み得る。いくつかの実施形態では、アブレーション装置は、4~10本のスパインを含むことができる。例えば、一実施形態では、アブレーション装置は、6~8本のスパインを含むことができる。前述のように、いくつかの実施形態では、817、819などのスパイン電線は、装置の近位部(例えば、装置持ち手)における同様の電気的接続により置き換えることができる。例えば、電極816は、装置の持ち手に共に電気的に配線することができ、これらの電極が焼灼中に同じ電位にあるようにする。
【0062】
図9Aは、装置(900)の近位端のカテーテルシャフト(910)、装置(900)の遠位キャップ(912)、及びそれに連結されたスパインのセット(914)を含むアブレーション装置(900)のさらに別の実施形態の側面図である。遠位キャップ(912)は、非外傷性の形状を含むことができる。スパインのセット(914)の近位端は、カテーテルシャフト(910)の遠位端に連結でき、スパインのセット(914)の遠位端は、装置(900)の遠位キャップ(912)に繋留することができる。アブレーション装置(900)の各スパイン(914)は、スパイン(914)の表面に形成された1本以上の、独立してアドレス指定可能な電極(916、918)を含むことができる。各電極(916、918)は、対応する絶縁体の絶縁破壊なしに少なくとも約700Vの電圧電位を維持するように構成された絶縁リード線を含むことができる。他の実施形態では、各リード線の絶縁体は、絶縁破壊なしにその厚さにわたって約200V~約2000Vの電位差を維持することができる。各スパイン(914)は、スパイン(914)の本体に(例えば、スパイン(914)の腔部内に)形成された各電極(916、918)の絶縁リード線を含むことができる。図9Aはスパインのセット(914)を示しており、このセットでは、各スパイン(914)が電極(916、918)を含み、電極は隣接するスパイン(914)の電極(916、918)から離間している。例えばスパインのセット(914)は、第1のスパイン(920)、及び第1のスパイン(920)に隣接する第2のスパイン(922)を含み、第1のスパイン(920)の電極(916)は、第2のスパイン(922)の電極(918)に対して、アブレーション装置(900)の遠位端(912)に、より近接して配置される。他の実施形態では、電極(916、918)のサイズ及び形状も異なっていてよい。
【0063】
いくつかの実施形態では、隣接する遠位電極(916)と近位電極(918)は、アノード-カソード対を形成することができる。例えば、遠位電極(916)をアノードとして構成でき、近位電極(918)をカソードとして構成することができる。いくつかの実施形態では、アブレーション装置(900)は、6~12本のスパインを含むことができる。図9Aでは、各スパイン(914)が1本の絶縁リード線を含むように、各スパイン(914)の表面に1本の電極(916、918)が形成されている。したがって、スパイン(914)の腔部は、直径を小さくでき、スパイン(914)をより厚く、より機械的に頑丈にすることが可能になる。したがって、絶縁体の絶縁破壊がさらに低減でき、それによって各スパイン(914)及びアブレーション装置(900)の信頼性及び寿命が改善される。アブレーション装置(900)は、任意の数のスパイン、例えば、3本、4本、5本、6本、7本、8本、9本、10本、12本、14本、16本、18本、20本またはそれより多いスパインを含み得る。いくつかの実施形態では、アブレーション装置(900)は、3~20本のスパインを含むことができる。例えば、一実施形態では、アブレーション装置(900)は、6~10本のスパインを含むことができる。さらに、いくつかの実施形態では、拡張されたスパインのセット(914)の球根状の拡張構造体(930)の形状は非対称であってもよく、例えば、その遠位部がその近位部よりも球根状または丸みを帯びていてよい(例えば図9B図9Eを参照されたい)。そのような球根状の遠位部は、装置を肺静脈の小孔に配置するのを促すことができる。
【0064】
図9B図9Eを参照すると、別段の定めがない限り、図9Aと同様の参照番号を有する構成要素(例えば、図9Aの電極(916)及び図9Bの電極(916’))は、構造的及び/または機能的に類似していてもよいことが理解される。図9Bは、配備時などの使用中に拡張構造体(930’)を形成するスパイン電線(914’、920’、922’)を示す。拡張構造体(930’)の第1の平面(924A’)は、主要な平面と称されることもあり、拡張構造体(930’)の第2の平面(924B’)における断面領域とは異なる断面積を有する。図9Bに示すように、いくつかの実施形態では、第2の平面(924B’)における拡張構造体(930’)の断面積は、第1の平面(924A’)における断面積より大きい。図9Bに関して使用している「第1の平面」及び「第2の平面」という用語は、カテーテルシャフト(910’)の遠位端と遠位キャップ(912’)の近位端から各々約1cm、約2cm、及び約3cm以上(間のすべての値及び部分的な範囲を含む)まで各々形成された、カテーテルシャフト(910’)の長手方向軸に直交する平面を示すことができる。図9Aに類似して、第1のスパイン(920’)の電極(916’)は、第2のスパイン(922’)の電極(918’)に対して、アブレーション装置(900’)の遠位キャップ(912’)に、より近接して配置される。
【0065】
図9Cは、配備時などの使用中の拡張構造体(930’’)を形成するスパイン電線(914’’、920’’、922’’)を示す。主要な平面と称されることもある、拡張構造体(930’’)の第1の平面(924A’’)は、拡張構造体(930’’)の第2の平面(924B’’)における断面積とは異なる断面積を有する。図9Cに示すように、いくつかの実施形態では、第2の平面(924B’’)における拡張構造体(930’’)の断面積は、第1の平面(924A’’)における断面積より大きい。図9Cに関して使用している「第1の平面」及び「第2の平面」という用語は、カテーテルシャフト(910’’)の長手方向軸に直交する平面を示すことができ、カテーテルシャフト(910’’)の遠位端及び遠位キャップ(912’’)の近位端から約1cm、約2cm、及び約3cm、またはそれより長く(間のすべての値及び部分的な範囲を含む)まで各々形成される。図9A図9Bと異なり、複数の電極が各スパイン電線上に存在してもよく、また、いくつかの電極は、遠位キャップ(912’’)から等距離にあってもよい。このようにして、肺静脈の周りに小孔周囲の損傷を生成するために、焼灼を送出すべく使用している間に、932’’及び934’’のような比較的遠位の電極を、肺静脈口に近位/洞性に配置することができる。
【0066】
図9Dは、配備時などの使用中の拡張構造体(930’’’)を形成するスパイン電線(914’’’、920’’’、922’’’)を示す。スパイン電線(914’’’、920’’’、922’’’)は、それらの遠位端において、拡張構造体(930’’’)の内側/内部に位置する点(928’’’)に収束する。図9Dに示すように、このような構成では、スパイン電線(914’’’、920’’’、922’’’)の少なくともいくつかの電極(932’’’、934’’’)は、拡張構造体(930’’’)の遠位端面(926’’’)に存在し得る。図9Dに関して使用している「遠位端面」という用語は、拡張構造体(930’’’)の遠位境界を通るカテーテルシャフト(910’’’)の長手方向軸に直交する平面を示すことができる。このようにして、拡張構造体(930’’’)を、例えば左心房の後壁に対して押し付けて、任意の適切な極性の組み合わせを使用して、遠位端面の適切な電極の活性化によって損傷を直接生成することができる。例えば、電極932’’’及び934’’’は、反対の極性で構成してもよい。
【0067】
図9Eは、配備時などの使用中に拡張構造体(950)を形成するスパイン電線(944、940、942)を示す。スパイン電線(944、940、942)は、拡張構造体(950)の内側/内部の遠位キャップ(912’’’’)の近位端における遠位端に収束する。図9Eに示すように、このような構成では、スパイン電線(944、940)の少なくともいくつかの電極(952、954)は、拡張構造体(950)の遠位端面(946)に位置してもよい。図9Eに関して使用している「遠位端面」という用語は、拡張構造体(950)の遠位境界を通るカテーテルシャフト(910’’’’)の長手方向軸に直交する平面を示すことができる。このようにして、拡張構造体(950)は、例えば左心房の後壁に対して押し付けて、任意の適切な極性の組み合わせを使用して、遠位端面(946)の適切な電極の活性化によって損傷を直接生成することができる。例えば、電極952及び954は、反対の極性で構成してもよい。図9Dの拡張構造体(930’’’’)と比較して、図9Eの拡張構造体(950)は、組織を焼灼するために例えば左心房の後壁に押し付けることのできる、直交する(例えば平坦な)形状を有する。換言すれば、遠位端面(926’’’’)における拡張構造体(930’’’’)の断面積は、遠位端面(946)での拡張構造体950の断面積よりも小さい。
【0068】
本明細書に記載のアブレーション装置のそれぞれについて、スパインの各々は、ポリマーを含み、中空管を形成するように腔部を画定することができる。本明細書に記載のアブレーション装置の1本以上の電極は、約0.2mm~約2.0mmの直径、及び約0.2mm~約5.0mmの長さを含むことができる。いくつかの実施形態では、電極は、約1mmの直径及び約1mmの長さを含むことができる。電極は独立してアドレス指定可能であり得るので、電極は、不可逆的電気穿孔によって組織を焼灼するのに十分な任意のパルス波形を使用して、任意の順序で通電できる。例えば、異なる電極のセットが、以下にさらに詳細に説明するように、異なるパルスのセット(例えば、階層的パルス波形)を送出することができる。スパインの上及び間での電極のサイズ、形状、及び間隔は、連続/経壁エネルギーを送出して1つまたは複数の肺静脈を電気的に分離するように構成してもよいことを理解されたい。いくつかの実施形態では、交互の電極(例えばすべての遠位電極)を同じ電位にすることができ、すべての他の電極(例えばすべての近位電極)も同様にすることができる。したがって、焼灼は、同時に活性化されるすべての電極で迅速に送出できる。様々なこのような電極対形成オプションが存在しており、それらの便利さに基づいて実施してもよい。
【0069】
バルーン
いくつかの実施形態では、アブレーション装置は、不可逆的電気穿孔によって組織を焼灼するためにエネルギーを送出するための1つまたは複数のバルーンを含み得る。図10は、心臓の左心房(1000)に配置されたバルーンアブレーション装置(1010)(例えば、アブレーション装置(110)と構造的及び/または機能的に類似する)の実施形態を示す。アブレーション装置(1010)は、肺静脈(1004)の小孔(1002)に配置されるように構成できる第1のバルーン(1012)及び第2のバルーン(1014)を含み得る。拡張(例えば、膨張)構成の第1のバルーン(1012)は、拡張構成の第2のバルーン(1014)よりも大きな直径を有することができる。これにより、第2のバルーン(1014)を前進させて肺静脈(1014)内にさらに配置することができる一方、第1のバルーン(1012)を肺静脈(1004)の小孔(1002)の近傍及び/またはそこに配置することができる。膨張した第2のバルーンは、肺静脈の小孔の第1のバルーンの位置を安定させるのに役立つ。いくつかの実施形態では、第1のバルーン(1012)及び第2のバルーン(1014)は、例えば生理食塩水などの任意の適切な導電性流体で満たしてもよい。第1のバルーン(1012)と第2のバルーン(1014)は、互いに電気的に絶縁されていてもよい。例えば、各バルーン(1012、1014)は、それに関連する絶縁リード線を含み、各リードは、絶縁破壊なしにその厚さにわたって少なくとも700Vの電位差を維持するのに十分な電気的絶縁を有してよい。他の実施形態では、各リード線の絶縁は、絶縁破壊なしに、その厚さにわたって、間のすべての値及び部分的な範囲を含む約200V~約2500Vの電位差を維持することができる。例えば、第2のバルーン(1014)のリード線は、第1のバルーン(1012)を延在するときに絶縁されてもよい。
【0070】
いくつかの実施形態において、第1及び第2のバルーン(1012、1014)は、アノード-カソード対を形成することができる。例えば、第1のバルーン(1012)はカソードとして構成でき、第2のバルーン(1014)はアノードとして構成することができ、逆も可能であり、電気エネルギーはバルーンまたは食塩水で満たされた電極にわたって容量的に連結できる。装置(1010)は、組織に送出されるパルス波形を受信することができる(1002)。例えば、組織が肺静脈(1004)の所望の位置で第1のバルーン(1012)と第2のバルーン(1014)との間で焼灼できるように、二相信号及び単相信号の1つまたは複数を印加することができる。第1及び第2のバルーン(1012、1014)は、第1及び第2のバルーン(1012、1014)の間に電界を実質的に閉じ込めて、電界、及び肺静脈(1004)の小孔(1002)から離れた組織への損傷を低減することができる。いくつかの実施形態では、バルーン(1012、1014)の1つ以上がワイヤーメッシュを含むことができる。
【0071】
図11は、心臓の左心房(1100)及び右心房(1104)に配置されたバルーンアブレーション装置(1110)(例えば、アブレーション装置(110)と構造的及び/または機能的に類似している)の別の実施形態の断面図である。アブレーション装置(1110)は、右心房(1104)に前進して配置されるように構成できるバルーン(1112)を含むことができる。例えば、バルーン(1112)は、心臓の中隔(1106)と接触して配置してもよい。バルーン(1112)に生理食塩水を充填してもよい。装置(1110)は、電極(1120)をさらに含むことができ、この電極は右心房(1104)から、バルーン(1112)及び中隔(1106)を通って、左心房(1100)に進めることができる。例えば、電極(1120)はバルーン(1112)から延び、中隔(1106)を貫通して左心房(1100)内に進めてもよい。いったん電極(1120)が左心房(1100)に進入したら、電極(1120)の遠位部分を、所定の形状を形成するように修正してもよい。例えば、電極(1120)の遠位部分は、円形、楕円形、または任意の他の幾何学的形状などの非線形の形状を含むことができる。図11では、電極(1120)の遠位部分は、左心房(1100)の肺静脈(1102)の単一の小孔または2つ以上の小孔を取り囲み得るループを形成する。他の実施形態では、電極(1120)の遠位部分は、肺静脈の小孔(1102)とほぼ同じ直径を有することができる。
【0072】
バルーン(1112)と電極(1120)は、互いに電気的に絶縁していてもよい。例えば、バルーン(1112)及び電極(1120)はそれぞれ、絶縁リード線(1114、1122)をそれぞれ含むことができ、各リード線(1114、1122)は、絶縁破壊なしにその厚さにわたって少なくとも700Vの電位差を維持するのに十分な電気的絶縁を有する。他の実施形態では、各リード線の絶縁は、絶縁破壊なしに、その厚さにわたって、間のすべての値及び部分的な範囲を含む約200V~約2000Vの電位差を維持することができる。電極(1120)のリード(1122)は、バルーン(1112)を介して絶縁されていてもよい。いくつかの実施形態では、バルーン(1112)及び電極(1120)は、アノード-カソード対を形成することができる。例えば、バルーン(1112)はカソードとして構成でき、電極(1120)はアノードとして構成することができる。装置(1110)は、肺静脈の小孔(1102)に送出されるパルス波形を受信することができる。例えば、二相信号及び単相信号の1つまたは複数を、組織を焼灼するために印加することができる。パルス波形は、回路を完成させるために、印加された電流がバルーン(1112)に容量的に連結されている間に、電極(1120)の周囲に強い電界を生成することができる。いくつかの実施形態では、電極(1120)は細いゲージワイヤを含むことができ、バルーン(1112)はワイヤーメッシュを含むことができる。
【0073】
別の実施形態では、電極(1120)は、バルーン(1112)及び/または中隔(1106)を前進させずに、肺静脈(1102)を前進させて、1つまたは複数の肺静脈口に配置することができる。バルーン(1112)及び電極(1120)は、カソード-アノード対として構成して、上述と同じ方法でパルス波形を受信することができる。
【0074】
リターン電極
本明細書に記載のアブレーションシステムのいくつかの実施形態は、健常な組織への意図しない損傷のリスクを低減するために患者に連結されるリターン電極または分配されたリターン電極のセットをさらに含むことができる。また、図12A図12Bは、患者(1200)に配置されたアブレーションシステムのリターン電極のセット(1230)(例えば、リターンパッド)の概略図である。左心房の肺静脈の4つの小孔のセット(1210)が、図12A図12Bに示されている。アブレーション装置の電極(1220)は、肺静脈の小孔(1210)の1つまたは複数の周囲に配置してもよい。いくつかの実施形態では、患者(1200)の背中にリターン電極のセット(1230)を配置して、電流が、電極(1220)から患者(1200)を経て、次いでリターン電極(1230)へと通るようにし得る 。
【0075】
例えば、1つ以上のリターン電極を患者(1200)の皮膚に配置することができる。一実施形態では、8つのリターン電極(1230)を、肺静脈口(1210)を取り囲むように患者の背中に配置することができる。接触を改善するために、リターン電極(1230)と皮膚との間に導電性ゲルを用いることができる。本明細書に記載のアブレーション装置のいずれも、1つまたは複数のリターン電極(1230)と共に使用することができることを理解されたい。図12A図12Bにおいて、電極(1220)は、4つの小孔(1210)の周りに配置されている。
【0076】
図12Bは、肺静脈の小孔(1210)の周囲に電界(1240)を形成する通電電極(1220)を示す。リターン電極(1230)は、次いで電極(1220)によって送出されるパルス状の単相及び/または二相波形を受け取ることができる。いくつかの実施形態では、リターン電極(1230)の数はリターン電極(1230)の表面積に反比例し得る。
【0077】
本明細書で論じられるアブレーション装置のそれぞれについて、電極(例えば、アブレーション電極、リターン電極)は、チタン、パラジウム、銀、白金または白金合金などの生体適合性金属を含み得る。例えば、電極は好ましくは白金または白金合金を含み得る。各電極は、絶縁破壊なく、その厚さにわたって少なくとも700Vの電位差を維持するのに十分な電気絶縁を有するリード線を含むことができる。他の実施形態では、各リード線の絶縁体は、絶縁破壊なしに、その厚さにわたって、間のすべての値及び部分的な範囲を含む約200V~約2500Vの電位差を維持することができる。絶縁リード線は、適切な電気コネクタに接続され得るカテーテルの近位持ち手部分まで延びることができる。カテーテルシャフトは、テフロン、ナイロン、ペバックスなどの可撓性ポリマー材料から作製してもよい。
【0078】
II 方法
また、ここには、上述のシステム及び装置を用いて心腔内の組織を焼灼する方法が記載される。心室は、左房室であってもよく、その関連する肺静脈を含んでよい。一般に、ここに記載する方法は、1つまたは複数の肺静脈口に接触させて装置を導入及び配置することを含む。パルス波形を、組織の焼灼のために装置の1本以上の電極により送出してもよい。いくつかの実施形態では、心臓ペーシング信号が、送出されたパルス波形を心周期と同期させることができる。追加的または代替的に、パルス波形は、総エネルギー送出を低減するために複数のレベルの階層を含むことができる。このようにして行われた組織の焼灼は、健常な組織への損傷を軽減するために、ペーシングされた心拍と同期して、より少ないエネルギー送出で、送出してもよい。本明細書に記載のアブレーション装置のいずれをも使用して、後述する方法を適切に用いて組織を焼灼できることを理解されたい。
【0079】
図13は、組織焼灼プロセスの一実施形態用の方法(1300)である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載する電圧パルス波形を、心臓の洞調律の中断を回避するように、心周期の不応期中に適用してもよい。方法(1300)は、ステップ(1302)で、装置(例えばアブレーション装置(110)などのアブレーション装置、及び/またはいずれかのアブレーション装置(200、300、400、500、600、700、800、900、1010、1110)を、左心房の心内膜腔へ導入することを含む。装置は、肺静脈口と接触して配置するように前進させることができる(1304)。例えば、アブレーション装置の電極は、肺静脈口の内径面と接触して配置され、ほぼ円形の電極の配置を形成することができる。いくつかの実施形態では、心臓の刺激のためにペーシング信号を生成することができる(1306)。そこで、ペーシング信号を心臓に印加し得る(1308)。例えば、心臓を心臓刺激装置で電気的にペーシングして、ペーシングを確実に捉えて心周期の周期性及び予測可能性を確立することができる。心房ペーシング及び心室ペーシングのうちの1つまたは複数を適用することができる。ペーシング信号の表示を、信号発生器に送信する(1310)ことができる。次いで、心周期の不応期内の時間窓が規定でき、その中では1つ以上の電圧パルス波形が送出できる。いくつかの実施形態で、不応期時間窓がペーシング信号に続いてもよい。例えば、共通の不応期時間窓が、心房の不応期時間窓と心室の不応期時間窓の双方の間に存在することができる。
【0080】
パルス波形を、ペーシング信号に同期して生成することができる(1312)。例えば、電圧パルス波形を共通の不応期時間窓で適用することができる。いくつかの実施形態では、パルス波形は、ペーシング信号の表示に対して時間オフセットで生成してもよい。例えば、不応期時間窓の開始は、時間オフセットによってペーシング信号からオフセットさせてもよい。対応する共通の不応期時間窓にわたる一連の心拍にわたり、電圧パルス波形(複数可)を印加することができる。生成されたパルス波形は、組織に送出できる(1314)。いくつかの実施形態では、パルス波形は、アブレーション装置のスパインのセットの1本以上のスパインを介して、患者の心臓の肺静脈口に送出してもよい。他の実施形態では、本明細書に記載の電圧パルス波形は、肺静脈の焼灼及び隔離のために、アノード-カソードサブセットなどの電極サブセットに選択的に送出することができる。例えば、電極群の第1の電極はアノードとして構成でき、電極群の第2の電極はカソードとして構成することができる。これらのステップは、所望の数の肺静脈口を焼灼する(例えば、1個、2個、3個または4個の小孔)ために繰り返してもよい。
【0081】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の入れ子構造及び時間間隔の階層を有する階層的電圧パルス波形は、不可逆的電気穿孔に有用であり得、異なる組織型で制御及び選択性を提供する。図14は、組織焼灼プロセスの別の実施形態のフローチャート(1400)である。方法(1400)は、装置(例えばアブレーション装置(110)などのアブレーション装置、及び/またはいずれかのアブレーション装置(200、300、400、500、600、700、800、900、1010、1110)を、左心房の心内膜腔へ導入する(1402)ことを含む。装置は、肺静脈口に配置されるように前進することができる(1404)。装置が第1及び第2の構成(例えば、コンパクト及び拡張)を含み得る実施形態では、装置は、第1の構成で導入して、第2の構成に変形し、肺静脈口またはその付近の組織に接触するようにしてもよい(1406)。装置は電極を含むことができ、詳細に上述のように、アノード-カソードサブセットで構成できる(1408)。例えば、装置の電極のサブセットをアノードとして選択でき、一方で装置の電極の別のサブセットをカソードとして選択でき、電圧パルス波形をアノードとカソードとの間に印加することができる。
【0082】
パルス波形は、信号発生器(例えば、信号発生器122)により生成でき、複数のレベルを階層に含むことができる(1410)。様々な階層的な波形が、本明細書で開示されるような信号発生器によって生成できる。例えば、パルス波形は、第1のパルスのセットを含むパルス波形の第1のレベルの階層を含むことができる。各パルスは、パルス持続時間と、連続するパルスを分離する第1の時間間隔とを有する。パルス波形の第2のレベルの階層は、第2のパルスのセットとして複数の第1のパルスのセットを含むことができる。第2の時間間隔が、連続する第1のパルスのセットを分離してもよい。第2の時間間隔は、第1の時間間隔の持続時間の少なくとも3倍であってもよい。パルス波形の第3のレベルの階層は、第3のパルスのセットとして複数の第2のパルスのセットを含むことができる。第3の時間間隔が、連続する第2のパルスのセットを分離してもよい。第3の時間間隔は、第2のレベル時間間隔の持続時間の少なくとも30倍であってもよい。
【0083】
本明細書の例は別々の単相及び二相の波形を特定しているが、波形階層のいくつかの部分が単相性である一方で他の部分が二相性である組み合わされた波形も生成できることを認識すべきである旨が理解される。階層構造を有する電圧パルス波形を、異なるアノード-カソードサブセット(場合により時間の遅れがある)にわたって印加してもよい。上述のように、アノード-カソードサブセットにわたって印加される1つ以上の波形は、心周期の不応期の間に印加してもよい。パルス波形は組織に送出し得る(1412)。図13及び図14で説明したステップは、必要に応じて組み合わせて修正できることを理解されたい。
【0084】
図15図18は、本明細書に記載のアブレーション装置(例えば、図2図5)を使用して、上述のように心臓の左心房の組織を焼灼する方法の実施形態を示す。図15は、図2に示すアブレーション装置(210)に対応するアブレーション装置(1500)を用いて心臓の左心房に配置されている組織を焼灼する方法の実施形態の断面図である。左心房(1502)は4つの肺静脈(1504)を有して示されており、アブレーション装置(1500)は組織を順次焼灼して1つ以上の肺静脈(1504)を電気的に分離するために使用してもよい。図15に示すように、アブレーション装置(1500)は、経中隔アプローチ(例えば、右心房から中隔を通って左心房(1502)に延びる)を使用して左心房(1502)などの心内膜腔に導入することができる。アブレーション装置(1500)は、カテーテル(1510)と、カテーテル(1510)の腔部内を摺動可能なガイドワイヤ(1520)とを含むことができる。カテーテル(1510)の遠位部は、電極のセット(1512)を含むことができる。ガイドワイヤ(1520)の遠位部(1522)は、肺静脈(1504)の小孔の近くに配置されるように、左心房(1502)内に進ませることができる。次に、電極(1512)を肺静脈(1504)の小孔の近くに配置するために、カテーテル(1510)をガイドワイヤ(1520)上に前進させることができる。電極(1512)が肺静脈(1504)の小孔と接触したら、電極(1512)はアノード-カソードサブセットに構成してもよい。信号発生器(図示せず)によって生成された電圧パルス波形が、ペーシングされた心拍と同期して電極(1512)を使用して組織に送出され、及び/または波形階層を含むことができる。肺静脈の1つ(1504)における組織の焼灼の完了後、カテーテル(1510)及びガイドワイヤ(1520)を別の肺静脈(1504)に再配置して、1つまたは複数の残りの肺静脈(1504)の組織を焼灼することができる。
【0085】
図16は、図3に示されたアブレーション装置(310)に対応するアブレーション装置(1600)を使用して、心臓の左心房に配置された組織を焼灼する方法の実施形態の断面図である。左心房(1602)は4つの肺静脈(1604)を有して示されており、アブレーション装置(1600)は組織を順次焼灼して1つ以上の肺静脈(1604)を電気的に分離するために使用してもよい。図16に示すように、アブレーション装置(1600)は、経中隔的アプローチを用いて左心房(1602)などの心内膜腔に導入することができる。アブレーション装置(1600)は、シース(1610)と、シース(1610)の腔部内を摺動可能なカテーテル(1620)とを含むことができる。カテーテル(1620)の遠位部(1622)は、電極のセットを含むことができる。カテーテル(1620)の遠位部(1622)は、肺静脈(1604)の小孔の近傍に電極を配置するために、左心房(1602)内に前進させることができる。電極が肺静脈(1604)の小孔と接触したら、電極は、アノード-カソードサブセットに構成することができる。信号発生器(図示せず)によって生成された電圧パルス波形が、ペーシングされた心拍と同期して電極を使用して組織に送出でき、及び/または波形階層を含むことができる。肺静脈(1604)における組織の焼灼の完了後、カテーテル(1620)を別の肺静脈(1604)に再配置して、1つ以上の残りの肺静脈(1604)における組織を焼灼することができる。
【0086】
図17は、図4に示すアブレーション装置(410)に対応するアブレーション装置を用いて、心臓の左心房に配置されている組織を焼灼する方法の実施形態の断面図である。左心房(1702)は4つの肺静脈(1704)を有して示され、アブレーション装置(1700)は組織を焼灼して1つ以上の肺静脈(1704)を電気的に分離するために使用できる。図17に示すように、アブレーション装置(1700)は、経中隔アプローチを使用して左心房(1702)などの心内膜腔に導入することができる。アブレーション装置(1700)は、シース(1710)と、シース(1710)の腔部内を摺動可能な複数のカテーテル(1720、1721)とを含むことができる。カテーテル(1720、1721)の各々は、カテーテル(1720、1721)内を摺動可能なそれぞれのガイドワイヤ(1722、1723)を含むことができる。ガイドワイヤ(1722、1723)の遠位部は、電圧パルス波形を送出するように構成された電極を含むことができる。カテーテル(1720、1721)及び対応するガイドワイヤ(1722、1723)のそれぞれは、肺静脈(1704)のそれぞれの小孔の近くに配置されるように、左心房(1702)内に進めることができる。ガイドワイヤ電極(1722、1723)が肺静脈(1704)の小孔と接触すると、電極は、アノード-カソードサブセットで構成できる。例えば、第1のガイドワイヤ(1722)をアノードとして構成できる一方で、第2のガイドワイヤ(1723)をカソードとして構成することができる。この構成では、信号発生器(図示せず)によって生成された電圧パルス波形を、一対の肺静脈(1704)の焼灼及び同時の分離のために送出することができる。追加的または代替的に、電圧パルス波形が、ペーシングされた心拍と同期して電極を使用して組織に送出され、及び/または波形階層を含むことができる。2つの肺静脈(1704)における組織の焼灼の完了後、カテーテル(1720、1721)は、残りの2つの肺静脈(1704)で組織を焼灼するために再配置できる。いくつかの実施形態では、シース(1710)は、肺静脈(1704)に配置される3本または4本のカテーテルを含むことができる。
【0087】
図18は、図5に示すアブレーション装置(500)に対応するアブレーション装置(1800)を用いて心臓の左心房に配置されている組織を焼灼する方法の実施形態の断面図である。左心房(1802)は4つの肺静脈(1804)を有して示されており、アブレーション装置(1800)は組織を順次焼灼して1つ以上の肺静脈(1804)を電気的に分離するために使用してもよい。図18に示すように、アブレーション装置は、経中隔アプローチを使用して左心房(1802)などの心内膜腔に導入することができる。アブレーション装置は、シース(1820)及びシース(1820)の腔部内を摺動可能なカテーテル(1810)を含むことができる。カテーテル(1810)の遠位部(1812)は、図5に関して詳細に説明しているように、花形であってもよい。カテーテル(1810)の遠位部(1812)は、コンパクトな第1の構成で左心房(1802)内に進めることができ、肺静脈(1804)の小孔の近傍に配置できる。次に、カテーテル(1810)の遠位部(1812)を、拡張した第2の形状に変形させて、図18に示すように花形の遠位部を形成することができ、カテーテル(1810)の遠位部(1812)が肺静脈(1804)の小孔の近くに配置されるようにする。電極が肺静脈(1804)の小孔と接触したら、電極は、アノード-カソードサブセットで構成できる。信号発生器(図示せず)によって生成された電圧パルス波形が、ペーシングされた心拍と同期して電極を使用して組織に送出され、及び/または波形階層を含むことができる。肺静脈(1804)における組織の焼灼の完了後、カテーテル(1810)を別の肺静脈(1804)に再配置して、1つ以上の残りの肺静脈(1804)の組織を焼灼することができる。
【0088】
本明細書に記載する方法(例えば、図13図18)のいずれも、リターン電極(例えば、図12A図12Bに示される1本以上のリターン電極(1230))を患者の背中に連結することをさらに含み、電圧パルス波形の印加中に患者から電流を安全に除去するように構成することができる。
【0089】
図19A図20Bは、肺静脈の小孔の周りに接触して配置された電極及びそこから生成される電界の実施形態を示す。図19Aは、肺静脈(1904)の小孔に配置された電極のセット(1910)の実施形態の概略図(1900)である。左心房(1902)は血液プール(1906)を含み得、肺静脈(1904)は血液プール(1908)を含み得る。左心房(1902)及び肺静脈(1904)はそれぞれ約4mmまでの壁厚を有することができる。
【0090】
図19Bは、肺静脈(1904)の内面に沿って放射状に配置された電極のセット(1910)の別の概略図(1900)である。肺静脈(1904)は、血液プール(1908)を含む動脈壁(1905)を含むことができる。隣接する電極(1910)は、所定の距離(1911)だけ離れていてもよい。いくつかの実施形態では、肺静脈(1904)は、約16mmの内径を有することができる。図19A図19Bにおいて、電極(1910)は、約10mmの長さを有し、互いに約4mm離間していてもよい。他の実施形態では、電極(1910)は、本明細書に開示される電極のいずれでもあり得ることを理解されたい。例えば、電極(1910)は、図5の花形の遠位部の電極、及び/または図3に示された電極の略円形の配置を含むことができる。
【0091】
図20A図20Bは、肺静脈(2002)の小孔に配置された電極のセット(2010)によって生成される電界(2020)の実施形態の概略図(2000)である。図20Aは、肺静脈(2002)及び左心房(2004)の外壁の斜視図であるのに対し、図20Bは断面図である。陰影が付された電界(2020)は、隣接する電極(2010)が組織を焼灼するためのエネルギー(例えば、電圧パルス波形)を送出するとき、電界(2020)が閾値を超えている場所を示す。例えば、電界(2020)は、隣接する電極(2010)の間に印加される1500Vの電位差を表す。この印加された電圧の下で、電界(2020)の大きさは、陰影付き体積測定的電界(2020)内の少なくとも500V/cmの閾値を上回り、心組織において不可逆的な焼灼を生起するのに十分であり得る。上で詳細に説明したように、隣接する対の電極(2010)上のパルス波形をシーケンスすることにより、左心房(2004)から肺静脈(2002)を電気的に分離するために肺静脈(2002)の小孔を焼灼することができる。
【0092】
パルス波形
本明細書に開示されるのは、不可逆的電気穿孔におる組織の焼灼を行うためにパルス電界/波形を選択的かつ迅速に適用するためのための方法、システム及び器具である。本明細書で開示されるパルス波形(複数可)は、本明細書に記載する、システム(100)、装置(例えば、200、300、400、500、600、700、800、900、1010、1110、1230、1500、1600、1700、1800、1910、2010)、及び方法(例えば、1300、1400)のいずれにも使用可能である。いくつかの実施形態は、電極のセットを介して組織にエネルギーを送出するため、一連の送出スキームと共に、高電圧のパルス波形を対象としている。いくつかの実施形態では、ピーク電界値を低減及び/または最小化することができると同時に、組織の焼灼が望ましい領域で、十分に大きな電界の強度を維持することができる。これはまた、過度の組織損傷または電気アークの発生の可能性を減少させ、局所的に高い温度上昇をもたらす。いくつかの実施形態では、不可逆的電気穿孔に有用なシステムは、アブレーション装置の選択された複数の電極またはサブセットの電極にパルス電圧波形を印加するように構成できる信号発生器及びプロセッサを含む。いくつかの実施形態では、プロセッサは、入力を制御するように構成され、それによって電極のアノード-カソードサブセットの選択された対を、所定のシーケンスに基づいて順次トリガでき、一実施形態では、一連の送出を、心臓刺激装置及び/またはペーシング装置からトリガできる。いくつかの実施形態では、焼灼パルス波形は、心臓の洞調律の中断を避けるために、心周期の不応期に印加される。これを実施する1つの例示的な方法は、心臓を心臓刺激装置で電気的にペーシングし、心周期の周期性及び予測可能性を確立するためにペーシングを確実に捉え、次いで、焼灼波形を送出するこの周期性のある周期の十分不応期内に、時間窓を規定する。
【0093】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるパルス電圧波形は、組織的に階層構造であり、入れ子の構造を有する。いくつかの実施形態では、パルス波形は、様々な関連する時間スケールで、パルスの階層的な群を含む。さらに、関連する時間スケール及びパルス幅、及びパルス数及び階層的な群は、心臓ペーシングの頻度を含む、1つまたは複数のディオファントスの不等式のセットを満たすように選択できる。
【0094】
本明細書に開示する電気穿孔のエネルギー送出のためのパルス波形は、不可逆的電気穿孔に関連する電界の閾値を低下させることによって、エネルギー送出の安全性、効率及び有効性を向上させることができ、送出される全エネルギーが低減された、より効果的な焼灼上の損傷を生じる。これはひいては、種々の心不整脈の治療的処置を含め、電気穿孔の臨床応用領域を広げることができる。
【0095】
図21は、パルス幅または持続時間に関連付けられたパルス(2100)などの、各パルスに関して、一連の矩形のダブルパルスの形態をとるパルス電圧波形を示す。パルス幅/持続時間は、間のすべての値及び部分的な範囲を含めて、約0.5マイクロ秒、約1マイクロ秒、約5マイクロ秒、約10マイクロ秒、約25マイクロ秒、約50マイクロ秒、約100マイクロ秒、約125マイクロ秒、約140マイクロ秒、約150マイクロ秒であってよい。図21のパルス波形は、すべてのパルスの極性が同じである単相パルスのセットを示している(図21では、ゼロのベースラインから測定して、すべて正である)。不可逆的電気穿孔を適用するためなどのいくつかの実施形態では、各パルス(2100)の高さまたはパルス(2100)の電圧振幅は、間のすべての値及び部分的な範囲を含めて、約400ボルト、約1,000ボルト、約5,000ボルト、約10,000ボルト、約15、000ボルトからの範囲であってよい。図21に示すように、パルス(2100)は、時に第1の時間間隔とも呼ばれる時間間隔(2102)だけ、隣接しているパルスから分離される。第1の時間間隔は、不可逆的電気穿孔を生成するために、間のすべての値及び部分的な範囲を含めて、約10マイクロ秒、約50マイクロ秒、約100マイクロ秒、約200マイクロ秒、約500マイクロ秒、約800マイクロ秒、約1ミリ秒であってもよい。
【0096】
図22は、入れ子のパルスの階層の構造を有するパルス波形を導入している。図22は、パルス(2200)などの一連の単相パルスを示している。それは、mの数がパルス群(2210)(時には第1のパルス群とも呼ばれる)を形成するように適合されている連続パルス間の持続時間の(2202)などの時間間隔t(時に第1の時間間隔とも呼ばれる)だけ分離された、パルス幅/パルス持続時間wを有する。さらに、波形は、連続する群間の持続時間の時間間隔(2212)(時には第2の時間間隔とも呼ばれる)tによって隔てられたmの数のこのようなパルス群(時に第2のパルスのセットとも呼ばれる)を有する。このようなm個のパルス群の集団は、図22の(2220)で示されているように、階層の次のレベルを構成し、これはパケット及び/または第3のパルスのセットと呼ぶことができる。パルス幅及びパルス間の時間間隔tは両方共、間のすべての値及び部分的な範囲を含めて、マイクロ秒から数百マイクロ秒の範囲であることができる。いくつかの実施形態では、時間間隔tは、時間間隔tの少なくとも3倍大きくすることができる。いくつかの実施形態では、比t/tは、間のすべての値及び部分的な範囲を含めて、約3~約300の範囲であり得る。
【0097】
さらに、図23は、入れ子のパルス階層的な波形の構造を詳述する。この図では、一連のm個のパルス(個々のパルスは図示せず)がパルス群(2300)(例えば、第1のパルスのセット)を形成する。ある群と次の群との間の持続時間の群間時間間隔(2310)t(例えば、第2の時間間隔)によって分離された一連のこのようなm個の群は、パケット132(例えば、第2のパルスのセット)を形成する。あるパケットと次のパケットとの間の持続時間の時間間隔(2312)t(例えば、第3の時間間隔)で分離された一連のこのようなm個のパケットは、階層内の次のレベル、図面においてラベル付けされたスーパーパケット(2320)(例えば第3のパルスのセット)を形成する。いくつかの実施形態では、時間間隔tは、時間間隔tの少なくとも約30倍大きくすることができる。いくつかの実施形態では、時間間隔tは、時間間隔tの少なくとも50倍大きくすることができる。いくつかの実施形態では、比率t/tは、間のすべての値及び部分的な範囲を含めて、約30~約800の範囲であり得る。パルス階層における個々の電圧パルスの振幅は、間のすべての値及び部分的な範囲を含めて、500ボルト~7,000ボルトまたはそれより多い範囲内のいずれかにすることができる。
【0098】
図24は、階層構造を有する二相波形シーケンスの例を提供する。図面に示す例では、(2400)のような二相パルスは、パルスの1サイクルを完了するために正の電圧部分及び負の電圧部分を有する。持続時間の隣接するサイクルの間に時間の遅れ(2402)(例えば、第1の時間間隔)tがあり、このようなn回のサイクルがパルス群(2410)(例えば、第1のパルスのセット)を形成する。ある群と次の群との間の持続時間の群間時間間隔(2412)(例えば、第2の時間間隔)tで分離された一連のこのようなn個の群は、パケット(2420)(例えば第2のパルスのセット)を形成する。図面はまた、パケット間の持続時間の時間の遅れ(2432)(例えば、第3の時間間隔)tを伴う第2のパケット(2430)を示す。単相パルスの場合と同様に、より高いレベルの階層構造も形成することができる。各パルスの振幅または二相パルスの電圧振幅は、間のすべての値及び部分的な範囲を含めて、500ボルト~7,000ボルトまたはそれより多い範囲内のいずれかにすることができる。パルス幅/パルス持続時間は、ナノ秒またはサブナノ秒から数十マイクロ秒の範囲内であり得るが、遅れtは、ゼロから数マイクロ秒の範囲内であり得る。群間時間間隔tは、パルス幅の少なくとも10倍大きくすることができる。いくつかの実施形態では、時間間隔tは、時間間隔tの少なくとも約20倍大きくすることができる。いくつかの実施形態では、時間間隔tは、時間間隔tの少なくとも50倍大きくすることができる。
【0099】
本明細書で開示される実施形態は、様々な階層のレベルにおける波形要素/パルスを含む階層的な波形として構造化された波形を含む。図22の(2200)のような個々のパルスは、第1のレベルの階層を含み、関連するパルス持続時間と、連続パルス間の第1の時間間隔とを有する。パルスのセット、または第1のレベルの構造の要素は、図22のパルス群/第2のパルス群(2210)などの第2のレベルの階層を形成する。波形と関連する他のパラメータの中には、第2のパルスのセットの総持続時間(図示せず)、第1のレベルの要素/第1のパルスのセットの総数、及び第2のレベルの構造/第2のパルスのセットを記述する連続する第1のレベルの要素間の第2の時間間隔などのパラメータがある。いくつかの実施形態では、第2のパルスのセットの総持続時間は、間のすべての値及び部分的な範囲を含めて、約20マイクロ秒~約10ミリ秒であり得る。群のセット、第2のパルスのセット、または第2のレベルの構造の要素は、図22の群のパケット/第3のパルスのセット(2220)のような第3の階層のレベルを形成する。他のパラメータの中には、第3のパルスのセット(図示せず)の総持続時間、第2のレベルの要素/第2のパルスのセットの総数、及び第3のレベルの構造/第3のパルスのセットを記述する連続する第2のレベルの要素間の第3の時間間隔がある。いくつかの実施形態では、第3のパルスのセットの総持続時間は、間のすべての値及び部分的な範囲を含めて、約60マイクロ秒~約200ミリ秒であり得る。波形の全体的な反復構造または入れ子構造は、10レベルまたはそれより多い構造などの、より高い複数のレベルに継続することができる。
【0100】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の入れ子構造を備える階層的な波形及び時間間隔の階層は、不可逆的電気穿孔での焼灼用エネルギー送出に有用であり、異なる組織のタイプでの適用に対する良好な程度の制御及び選択性を提供する。様々な階層的な波形を適切なパルス発生器で生成することができる。本明細書の例で明瞭化のために別個の単相波形及び二相波形を特定しているが、波形の階層のいくつかの部分が単相性であるが、他の部分は二相性である組み合わせの波形も生成/実施できることに留意すべきであることが理解されよう。
【0101】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のアブレーションパルス波形は、心臓の洞調律の中断を回避するように、心周期の不応期中に適用される。いくつかの実施形態では、治療方法は、心臓を心臓刺激装置で電気的にペーシングして、心周期の周期性及び予測可能性を確立するためにペーシングを確実に捉え、次いで、1つ以上の焼灼のパルス波形を送出することができる心周期の不応期内に時間窓を規定する。図25は、心房ペーシング及び心室ペーシングの両方が適用される例(例えば、各々右心房及び右心室に位置するペーシングリード線またはカテーテルを用いる)を示す。図25は、横軸に時間を示し、ペーシング信号によって駆動される一連のECG波形(2540、2542)と共に、(2500)及び(2510)などの一連の心室ペーシング信号、及び一連の心房ペーシング信号(2520、2530)を示す。幅の広い矢印で図25に示すように、心房ペーシング信号(2522)及び心室ペーシング信号(2500)にそれぞれ従う心房不応期時間窓(2522)及び心室不応期時間窓(2502)がある。図25に示すように、心房及び心室の不応期時間窓(2522、2502)の両方にある、持続時間Tの共通の不応期時間窓(2550)を、規定することができる。いくつかの実施形態では、電気穿孔焼灼波形(複数可)をこの共通の不応期時間窓(2550)に適用することができる。この不応期時間窓(2522)の開始は、図25に示すように、時間オフセット(2504)だけペーシング信号(2500)からオフセットされる。時間オフセット(2504)は、いくつかの実施形態では、約25ミリ秒よりも小さくすることができる。次の心拍では、同様に規定された共通不応期時間窓(2552)が、焼灼波形(複数可)の適用に利用可能な次の時間窓である。このようにして、焼灼波形(複数可)は、共通の不応期時間窓内に残っている各心拍で、一連の心拍にわたって適用してもよい。一実施形態では、パルス波形階層において上述のようなパルスの各パケットを心拍にわたって印加することができ、それにより所定の電極セットに対して一連の心拍にわたって一連のパケットが印加される。
【0102】
本明細書で使用しているように、数値及び/または範囲と関連して使用される場合、「about(約)」及び/または「approximately(約)」という用語は、一般に、記載された数値及び/または範囲に近い数値及び/または範囲を示す。いくつかの例において、「about(約)」及び「approximately(約)」という用語は、列挙された値の±10%以内を意味し得る。例えば、場合によっては、「約100[単位]」は、100の±10%内(例えば、90から110)を意味し得る。「about(約)」及び「approximate(約)」という用語は、互換的に使用することができる。
【0103】
本明細書に記載のいくつかの実施形態は、コンピュータで実施される多様な動作を実行するための命令またはコンピュータコードを有する非一時的なコンピュータ可読媒体(非一時的なプロセッサ可読媒体とも呼ばれることがある)を備えたコンピュータ記憶製品に関する。コンピュータ可読媒体(またはプロセッサ可読媒体)は、一時的な伝播信号自体(例えば、空間やケーブルなどの伝送媒体上の情報を搬送する伝搬用電磁波)を含まないという意味で非一時的である。媒体及びコンピュータコード(コードまたはアルゴリズムとも呼ばれることがある)は、特定の目的または諸目的のために設計及び構築されたものであってもよい。非一時的なコンピュータ可読媒体の例としては、ハードディスク、フロッピーディスク、磁気テープなどの磁気記憶媒体、コンパクトディスク/デジタルビデオディスク(CD/DVD)、コンパクトディスク-読出し専用メモリ(CD-ROM)、及びホログラフィック装置などの光記憶媒体、光ディスクなどの光磁気記録媒体、搬送波信号処理モジュール、及び特定用途向け集積回路(ASIC)、プログラマブルロジックデバイス(PLD)、読出し専用メモリ(ROM)及びランダムアクセスメモリ(RAM)装置などのプログラムコードを記憶及び実行するように特別に構成されたハードウェア装置を含むが、これらに限定されない。本明細書に記載する他の実施形態は、例えば、本明細書で開示される命令及び/またはコンピュータコードを含むことができるコンピュータプログラム製品に関する。
【0104】
本明細書で説明しているシステム、装置、及び/または方法は、ソフトウェア(ハードウェアで実行される)、ハードウェア、またはそれらの組み合わせによって実行されてもよい。ハードウェアモジュールは、例えば、汎用プロセッサ(またはマイクロプロセッサまたはマイクロコントローラ)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、及び/または特定用途向け集積回路(ASIC)を含むことができる。(ハードウェアで実行される)ソフトウェアモジュールは、C、C++、Java(登録商標)、Ruby、Visual Basic(登録商標)、及び/または他のオブジェクト指向、手続き型、または他のプログラミング言語と開発ツールを含む様々なソフトウェア言語(例えばコンピュータコード)で表現することができる。コンピュータコードの例には、マイクロコードまたはマイクロ命令、コンパイラによって生成されるような機械命令、ウェブサービスを生成するために使用されるコード、及びインタプリタを使用してコンピュータが実行するより高次な命令を含むファイルが含まれるが、これらに限定されない。コンピュータコードの追加の例には、制御信号、暗号化されたコード、及び圧縮コードが含まれるが、これらに限定されない。
【0105】
本明細書における特定の例及び説明は本質的に例示的であり、実施形態は、本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書に教示された材料に基づいて当業者が開発でき、それは添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
図1
図2
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図9A
図9B
図9C
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