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特許7220290樹脂組成物、これを用いた金属積層体及び印刷回路基板、並びに前記金属積層体の製造方法
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  • 特許-樹脂組成物、これを用いた金属積層体及び印刷回路基板、並びに前記金属積層体の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-01
(45)【発行日】2023-02-09
(54)【発明の名称】樹脂組成物、これを用いた金属積層体及び印刷回路基板、並びに前記金属積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 27/12 20060101AFI20230202BHJP
   C08L 25/08 20060101ALI20230202BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20230202BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20230202BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20230202BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20230202BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20230202BHJP
   B32B 15/082 20060101ALI20230202BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
C08L27/12
C08L25/08
C08K3/013
C08K3/36
C08K3/22
B32B27/30 D
B32B27/20 Z
B32B15/082 B
H05K1/03 630A
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021537078
(86)(22)【出願日】2019-09-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-16
(86)【国際出願番号】 KR2019011257
(87)【国際公開番号】W WO2020138642
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-06-24
(31)【優先権主張番号】10-2018-0170678
(32)【優先日】2018-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】504408236
【氏名又は名称】ドゥーサン コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イ、ジンス
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヒョンギュ
(72)【発明者】
【氏名】チョ、ギョンウン
【審査官】佐藤 のぞみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-154043(JP,A)
【文献】国際公開第01/023470(WO,A1)
【文献】特開2017-057915(JP,A)
【文献】特開2013-166859(JP,A)
【文献】特開平06-248144(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 25/00-27/24
C08L 101/00-101/16
C08K 3/00-13/08
B32B 15/00-15/20
B32B 27/00-27/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素系エラストマー及びスチレン系エラストマーからなる群から選択される1種以上のエラストマー;
フッ素樹脂フィラー;及び、
無機フィラー;
を含む、樹脂組成物であって、
当該樹脂組成物100重量%に対して、
1~10重量%のエラストマー(Elastomer);
25~75重量%のフッ素樹脂フィラー;及び、
15~65重量%の無機フィラー;
を含む、樹脂組成物。
【請求項2】
前記エラストマーは、10GHzにおいて0.0005~0.0020の誘電正接(Df)を有する、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記エラストマーは、10GHzにおいて2.0~3.0の誘電率(Dielectric constant、Dk)を有する、請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記エラストマーは、熱分解温度が350℃以上である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記エラストマーは、230℃及び2kgの条件下でのメルトフローレート(Melt Flow Rate、MFR)が、0.1g/10min以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記フッ素樹脂フィラーは、溶融点が300℃以上である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記フッ素樹脂フィラーは、372℃及び2kgの条件下でのメルトフローレート(Melt Flow Rate、MFR)が、50g/10min以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記フッ素樹脂フィラーは、0.01~100μmの平均粒径を有する、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記フッ素樹脂フィラーは、パーフルオロアルコキシアルカン(Perfluoroalkoxy alkanes、PFA)、及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなる群から選択される1種以上を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
前記無機フィラーは、シリカ(Silica)、アルミナ(Alumina)、及びチタニア(Titania)からなる群から選択される1種以上を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
前記無機フィラーは、(a)シリカ(Silica)、及び(b)アルミナ(Alumina)又はチタニア(Titania)を、0.5~12:1の重量比で含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
前記樹脂組成物は、有機溶媒をさらに含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項13】
請求項1~12のうちのいずれか1項に記載の樹脂組成物で形成され、10GHzにおいて0.0005~0.0020の誘電正接(Df)を有する樹脂層;及び、
前記樹脂層の両面上にそれぞれ配置された金属層;
を含む、金属積層体。
【請求項14】
前記樹脂層は、10GHzにおいて2~8の誘電率(Dielectric constant)を有する、請求項13に記載の金属積層体。
【請求項15】
前記樹脂層は、
請求項1~12のうちのいずれか1項に記載の樹脂組成物で形成され、10GHzにおいて0.0005~0.0020の誘電正接(Df)を有する第1の樹脂層;及び、
請求項1~請求項のうちのいずれか1項に記載の樹脂組成物で形成され、10GHzにおいて0.0005~0.0020の誘電正接(Df)を有する第2の樹脂層;
を含み、
前記第1の樹脂層と第2の樹脂層とは、互いに同一又は異なる、請求項13に記載の金属積層体。
【請求項16】
請求項13に記載の金属積層体を含む、印刷回路基板。
【請求項17】
金属基材の一面上に、請求項1~12のうちのいずれか1項に記載の樹脂組成物を塗布し、50~180℃で乾燥し、金属基材の一面上に塗布された樹脂層が形成された単位部材を2つ準備するステップ;及び、
前記2つの単位部材を積層して加圧するが、各単位部材の樹脂層が当接するように積層するステップ;
を含む、金属積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、これを用いた金属積層体及び印刷回路基板、並びに前記金属積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線通信技術の発達によって、単純な音声送受信中心のサービスが、動画放送、テレビ電話、ファイル転送のような多様なマルチメディアの応用サービスに拡大されるにつれて、通信・電子機器の使用周波数帯域が、MHzから、広帯域可能な60GHz、77GHz、又は94GHz帯域のようなGHz帯域へ拡大されつつある。
【0003】
但し、通信・電子機器では、使用周波数帯域が高いほど電気信号の伝送損失が大きくなって発熱や信号減衰、遅延などの問題が発生することがある。このような伝送損失が発生する主な原因としては、伝送回路を形成する導体の直列抵抗によって生成される導体損失と、印刷回路基板の絶縁体を通って流れるリーク電流による誘電損失とがある。このうち、誘電損失は、絶縁層の比誘電率の平方根、誘電正接、及び電気信号の周波数の積に比例する。このため、電気信号の周波数が高いほど誘電損失が大きくなる。従って、高周波から超高周波領域において通信電子機器の伝送損失を低減させるため、誘電率及び誘電正接が低い絶縁材料と、これを用いた印刷回路基板に関する開発が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、優れた接着性及び耐熱性を有すると共に低誘電損失特性を有する樹脂組成物、並びにこれを用いた金属積層体及び印刷回路基板を提供することを目的としている。
【0005】
また、本発明は、前記樹脂組成物を用いて、押出成形工程及び高温焼成工程を行うことなく金属積層体を製造する方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するため、本発明は、フッ素系エラストマー及びスチレン系エラストマーからなる群から選択される1種以上のエラストマー;フッ素樹脂フィラー;及び、無機フィラー;を含む樹脂組成物を提供する。
【0007】
選択的に、前記樹脂組成物は、有機溶媒をさらに含むことができる。
【0008】
また、本発明は、前記樹脂組成物から形成され、10GHzにおいて0.0005~0.0020の誘電正接(Df)を有する樹脂層;及び、前記樹脂層の両面上にそれぞれ配置された金属層を含む金属積層体を提供する。
【0009】
さらに、本発明は、金属基材の一面上に、前記樹脂組成物を塗布し、50~180℃で乾燥し、金属基材の一面上に塗布された樹脂層が形成された単位部材を2つ準備するステップ;及び、前記2つの単位部材を積層して加圧するが、各単位部材の樹脂層が当接するように積層するステップ;を含む金属積層体の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の樹脂組成物は、耐熱性及び加工性に優れ、かつ誘電損失が低いため、高周波から超高周波信号を取り扱う移動通信機器やその基地局装置、サーバ、ルータなどのネットワーク関連電子機器、自動車レーダー装置、大型コンピュータなどの各種の電気・電子・通信機器に使用される印刷回路基板に有用に使用することができる。
【0011】
また、本発明は、前記樹脂組成物を用いることで、高温押出成形及び350℃以上での焼成工程を行うことなく、金属基材上に直接コーティングした後、乾燥するという単純な方式で樹脂層を形成することができるため、金属積層体の製造工程が単純化される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の一例に係る金属積層体を示す断面図である。
【0013】
<符号の説明>
100:金属積層体、110:樹脂層、121:第1の金属層、122:第2の金属層。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について説明する。
【0015】
本発明は、印刷回路基板、特に高周波から超高周波向けの印刷回路基板に有用に使用可能な樹脂組成物を提供する。
【0016】
従来は、低誘電率及び低損失特性を有する印刷回路基板用絶縁層(樹脂層)の物質としてフッ素系樹脂を使用している。しかし、フッ素系樹脂は、約300℃以上の高い溶融点を有する。このため、従来は、フッ素系樹脂を用いて絶縁層を形成するため、約300℃以上の高温押出成形工程及び焼成工程を行い、これによって、製造コストの上昇、成形加工性の低下が招来されていた。
【0017】
それで、本発明では、高周波から超高周波帯域において、誘電正接が低いフッ素系又はスチレン系エラストマーを、無機フィラー及び有機フィラーと混用するが、前記有機フィラーとして、PFA(Perfluoro Alkoxy Alkene)などのようなフッ素含有フィラーを混用することを特徴とする。このように、本発明は、高温押出成形工程及び焼成工程によってフッ素系樹脂で絶縁層を形成するという従来の金属積層体の製造方法とは異なり、エラストマーをバインダー樹脂として使用することで、高温押出成形工程及び高温焼成工程を行うことなく、金属箔上に直接コーティング、乾燥する方式で、エラストマーが無機フィラーとフッ素樹脂フィラーとをバインドすることができるため、金属積層体の製造コストを削減し、また、加工容易性を向上させることができる。
【0018】
また、本発明では、誘電特性が低くかつ加工が容易なエラストマーを基盤として、ここに誘電率が低いフッ素含有フィラーを特定の配合比で調節して適用することで、優れた低誘電率(Dk)及び低誘電損失(Df)特性を発揮することができ、高いガラス転移温度(Tg)と、優れた耐熱性などを同時に提供することができる。
【0019】
<樹脂組成物>
本発明は、印刷回路基板、特に高周波から超高周波帯域において使用可能な印刷回路基板に使用し得る樹脂組成物を提供する。以下、これについて詳述する。
【0020】
本発明に係る樹脂組成物は、フッ素系エラストマー及びスチレン系エラストマーからなる群から選択される1種以上のエラストマー、フッ素樹脂フィラー、及び無機フィラーを含み、選択的に有機溶媒にさらに含むことができる。
【0021】
(a)エラストマー
本発明の樹脂組成物において、エラストマーは、無機フィラー及び有機フィラーを全てバインドし得るバインダー樹脂である。例えば、樹脂組成物は、熱可塑性エラストマーを含むことができる。この場合、熱可塑性エラストマーは、高温でのプレス時に溶融されることで、樹脂層を容易に形成することができる。
【0022】
本発明に係るエラストマーは、フッ素系エラストマー及びスチレン系エラストマーからなる群から選択される1種以上を含む。前記フッ素系エラストマー及びスチレン系エラストマーは、無機フィラー及び有機フィラーを容易にバインドすることができ、また、誘電特性が低い。具体的に、本発明のエラストマーは、10GHzにおいて0.0005~0.0020の誘電正接(Df)を有する。また、本発明のエラストマーは、10GHzにおいて2.0~3.0の誘電率(Dk)を有する。
【0023】
このように低誘電正接及び低誘電率を有する本発明のエラストマーをバインダー樹脂として使用する場合は、高温押出成形工程及び高温焼成工程を行うことなく、金属箔上に樹脂組成物を直接コーティング、乾燥するような方式で、誘電損失が低い樹脂層を容易に形成することができる。
【0024】
本発明のフッ素系エラストマーは、熱可塑性エラストマーの一種であって、少なくとも1つの繰り返し単位中に1以上のフッ素(F)を含有するエラストマーである。このようなフッ素系エラストマーは、10GHzにおいて0.0005~0.0020の誘電正接(Df)及び2.0~3.0の誘電率を有すると共に、低いモジュラス(modulus)を有する。
【0025】
本発明において使用可能なフッ素系エラストマーとしては、例えば、ビニリデンフルオライド(VDF)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)及びテトラフルオロエチレン(TFE)のうちの2種以上を含む共重合体;テトラフルオロエチレン-プロピレン系共重合体;フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン系共重合体;テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル系共重合体などが挙げられるが、これらに限定されない。これらは、単独で使用、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0026】
本発明のフッ素系エラストマー中のフッ素(F)の含有量は、特に限定されないが、当該フッ素系エラストマー1分子当たり約65~80重量%の範囲内である場合、フッ素系エラストマーは、10GHzでの誘電正接が約0.0005~0.0020の範囲であることができる。
【0027】
本発明のスチレン系エラストマーは、熱可塑性エラストマーの一種であって、少なくとも1つの繰り返し単位中に1以上のスチレン基(styrene group)を含有するエラストマーである。このようなスチレン系エラストマーは、10GHzにおいて0.0005~0.0020の誘電正接(Df)、及び2.0~3.0の誘電率を有することができる。
【0028】
本発明において使用可能なスチレン系エラストマーは、スチレンとC~C10の脂肪族不飽和炭化水素との共重合体エラストマーであることができる。具体的に、スチレン系エラストマーとしては、例えば、スチレン-ブタジエン-スチレン二元共重合体(SBS)、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン三元共重合体(SEBS)、スチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレン三元共重合体(SEEPS)、スチレン-イソプレン-スチレン二元共重合体、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン三元共重合体などが挙げられるが、これらに限定されない。これらは、単独使用、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0029】
本発明のスチレン系エラストマー中のスチレン基の含有量は、特に限定されないが、当該スチレン系エラストマー1分子当たり約10~40重量%の範囲内である場合、スチレン系エラストマーは、10GHzでの誘電正接が約0.0005~0.0020の範囲であることができる。
【0030】
本発明のエラストマーは、230℃及び2kgの条件でのメルトフローレート(Mel
t Flow Rate、MFR)が、約0.1g/10min以下である。また、本発明のエラストマー5wt%をトルエンに溶解させた溶液の粘度は、約50~100cpsである。従って、本発明の樹脂組成物は、粘度が約150~500cpsの範囲内に調節され、金属積層体の製造時に加工性を向上させることができる。
【0031】
本発明のエラストマーは、熱分解温度(Td)が約350℃以上(具体的に、約350~1000℃、より具体的に約350~700℃、さらに具体的に約350~500℃)と高い。従って、本発明の樹脂組成物は、高温での熱的安定性に優れた樹脂層を形成することができる。
【0032】
本発明の樹脂組成物において、エラストマーの含有量は、樹脂組成物(但し、有機溶媒を除く)の総量に対して、約1~10重量%の範囲であることが好ましい。エラストマーの含有量が約1重量%未満である場合、フィラーをバインドする効果が低下し、他方、エラストマーの含有量が10重量%を超過する場合、金属層(例えば、銅箔)との接着性が低下し、金属積層体の製造時及び使用時に金属層の剥がれが発生することがある。
【0033】
(b)フッ素樹脂フィラー
本発明の樹脂組成物において、フッ素樹脂フィラーは、フッ素(F)を含有するフッ素系樹脂組成物粒子であって、樹脂層の低誘電率及び低誘電損失特性を具現することができる。
【0034】
具体的に、フッ素樹脂フィラーは、約2.1以下の誘電率(Dk)及び約0.0002以下の誘電正接(Df)を有する。例えば、PTFEは、約2.1のDk及び約0.0002のDfを有し、PFAは、約2.1のDk及び約0.0002のDfを有する。このように、フッ素樹脂フィラーは、低誘電正接・低誘電率を有するため、樹脂層の低誘電率及び低誘電損失特性を具現することができる。
【0035】
さらに、フッ素樹脂フィラーは、溶融点(Tm)が約300℃以上であり、また、フッ素樹脂フィラーは、常温で液状でなく固体状であり、所定の形態を有するパウダー(powder)や線維などのような粒子状フィラーである。例えば、PTFEのTmは、約350℃であり、PFAのTmは、約320℃である。従って、フッ素樹脂フィラーは、高温プレス工程前において、樹脂組成物の乾燥時に粒子形態でエラストマーによりバインドされ、樹脂層に含まれている反面、約350℃以上の高温プレス工程で溶融され、樹脂層の高分子マトリックス(matrix)を形成する。さらに、フッ素樹脂フィラーは、フッ素樹脂分散液とは異なり、分散剤を含有していないため、金属積層体の耐熱性及び接着層を向上させることができる。
【0036】
本発明において使用可能なフッ素樹脂フィラーは、当業界でフッ素含有樹脂で形成される粒子であれば、特に限定されない。前記フッ素樹脂フィラーとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(Perfluoroalkoxy alkane、PFA)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン-クロロトリフルオロエチレン共重合体(TFE/CTFE)、エチレン-クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)などが挙げられるが、これらに限定されない。このなかでPFA及びPTFEは、Dfが0.0002以下と低いため、好ましい。
【0037】
本発明のフッ素樹脂フィラーは、約372℃及び約2kg条件でのメルトフローレート(Melt Flow Rate、MFR)が、50g/10min以下、約1~50g/10minである。
【0038】
このようなフッ素樹脂フィラーは、樹脂組成物中に均一に分散されているほど樹脂組成物の誘電特性を改善させることができ、また、高温押出成形及び高温焼成を行うことなく、単純なコート工程による金属積層体の製造にも好適である。従って、本発明では、フッ素樹脂フィラーの形状、大きさ(平均粒径)、含有量を、それぞれ特定の範囲に調節することが好ましい。
【0039】
具体的に、フッ素樹脂フィラーの形状は、球状、フレーク状、デンドライト(dendrite)、円錐状、ピラミッド状、無定形であることができる。このなかで、球状フッ素樹脂フィラーの使用時は、フィラーの表面積が最小となるため、樹脂組成物の加工特性が向上し、また、樹脂層に等方性を付与することができる。
【0040】
また、フッ素樹脂フィラーは、平均粒径が約0.01~100μmの範囲であることができる。フッ素樹脂フィラーがこのような平均粒径を有する場合、フッ素樹脂フィラーは、樹脂組成物中において凝集が発生することなく均一に分散されるため、印刷回路基板用樹脂層の製作に適している。上述のように、フッ素樹脂フィラーがこのような平均粒径を有する場合、樹脂層のパッキング密度は、約2.1~2.4g/ml程度であることができる。
【0041】
本発明では、形状及び平均粒径が同一である1種のフッ素樹脂フィラーを単独で使用し、又は形状及び/又は平均粒径が異なる2種以上のフッ素樹脂フィラーを混合して使用することができる。
【0042】
本発明の樹脂組成物において、フッ素樹脂フィラーの含有量は、特に限定されない。但し、フッ素樹脂フィラーの含有量が少なすぎると、金属積層体中の金属層(例えば、銅箔)との接着力が低下して金属層の剥離現象が起こり、一方、フッ素樹脂フィラーの含有量が高すぎると、無機フィラーの含有量が相対的に少なくなるため、樹脂層のCTEが低下することがある。従って、フッ素樹脂フィラーの含有量は、当該樹脂組成物(但し、有機溶媒を除く)の総量に対して、約25~75重量%の範囲に調節することが好適である。この場合、本発明の樹脂組成物は、耐熱性及び接着性に優れ、かつ誘電率及び誘電損失が低い樹脂層を形成することができる。
【0043】
(c)無機フィラー
本発明に係る樹脂組成物は、無機フィラーを含む。無機フィラーは、樹脂組成物で形成された樹脂層と他の層(例えば、金属箔)との間の熱膨張係数(CTE)の差を減少させ、最終製品の反り特性、低膨張化、機械的強度(toughness)、低応力化を効果的に向上させることができる。
【0044】
本発明において使用可能な無機フィラーとしては、例えば、天然シリカ(Natural Silica)、フューズドシリカ(Fused Silica)、アモルファスシリカ(Amorphous Silica)、結晶質シリカ(Crystalline Silica)などのようなシリカ;ベーマイト(Boehmite)、アルミナ、タルク(Talc)、ガラス(例えば、球状ガラス)、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、マグネシア、クレー、ケイ酸カルシウム、酸化チタン、酸化アンチモン、ガラス繊維、ホウ酸アルミニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、チタニア(例えば、TiO)、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、滑石(Talc)、雲母(Mica)などが挙げられるが、これらに制限されない。このような無機フィラーは、単独で使用、又は2つ以上を混用することができる。このなかでシリカ、アルミナ、及びチタニアが、低誘電定数を有するため、樹脂層と金属層との間の熱膨張係数の差を低くするとともに、樹脂層の誘電率及び誘電正接を低くすることができる。
【0045】
一例としては、無機フィラーは、シリカ(例えば、SiO)、アルミナ(例えば、Al)、及びチタニア(例えば、TiO)からなる群から選択される1種以上を含むことができる。具体的に、無機フィラーは、(a)シリカ、及び(b)アルミナ又はチタニアを含むことができる。このとき、シリカとアルミナ(又は、酸化チタン)の混合割合によって、樹脂層だけでなく金属積層体の電気的特性が変化し、特に、温度別の誘電特性が変化する。例えば、本発明の樹脂組成物は、無機フィラーが(a)シリカと(b)アルミナ又はチタニアとを、0.5~12:1の重量比で含むことができる。特に、本発明の樹脂組成物は、無機フィラーが(a)シリカと(b)アルミナ又はチタニアとを1~10:1の重量比で含む場合、電気的特性に優れ、かつmmWave領域の高周波での誘電率温度係数(Temperature Coefficient of Dielectric Constant、TCK)が約0ppm/℃に近い樹脂層を形成することができる。
【0046】
このような無機フィラーの大きさ(例えば、平均粒径)、形状、及び含有量は、樹脂層の特性に影響を与える重要なパラメータである。
【0047】
具体的に、無機フィラーは、平均粒径が、約5~20μmであることができる。これは、無機フィラーの分散性において有利である。
【0048】
また、無機フィラーの形状は、特に限定されず、例えば、球状、フレーク状、デンドライト、円錐状、ピラミッド状、無定形であることができる。
【0049】
本発明では、形状及び平均粒径が同一である1種の無機フィラーを単独で使用、又は形状及び/又は平均粒径が異なる2種以上の無機フィラーを混合して使用することができる。
【0050】
本発明の樹脂組成物において、無機フィラーの含有量は、特に制限されず、前記反り特性、機械的物性などを考慮して適宜調節することができる。但し、無機フィラーの含有量が過剰量である場合は、成形性に不利であり、樹脂層の接着力が低下することがある。例えば、樹脂組成物(但し、有機溶媒を除く)の総量に対して、約15~65重量%であることができる。
【0051】
(d)有機溶媒
本発明の樹脂組成物は、有機溶媒をさらに含むことができる。
【0052】
本発明において使用可能な有機溶媒は、前記エラストマーを溶解させ得るものであれば、特に限定されない。このような有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族化合物、メタノール、エタノール、ブタノール、イソブタノールなどのアルコール系化合物、アセトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、N-メチルピロリドンなどのケトン系化合物、エチルアセテート、ブチルアセテート、メチルセロソルブアセテートなどのエステル系化合物などが挙げられるが、これらに限定されない。これらは、単独で使用、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0053】
前記有機溶媒の含有量は、当該技術分野で公知の含有量であることができ、樹脂組成物の総量が100重量%となるように調節する残部であることができる。例えば、樹脂組成物(但し、有機溶媒を除く)の100重量部に対して、約60~100重量部の範囲、具体的に約70~90重量部の範囲である。
【0054】
なお、本発明の樹脂組成物は、前記エラストマー、フッ素樹脂フィラー、無機フィラー、及び有機溶媒の他に、その物性を損なわない範囲内で、必要に応じて、当業界で周知の難燃剤、他の熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂、紫外線吸収剤、抗酸化剤、重合開始剤、染料、顔料、分散剤、増粘剤、レベリング剤、着色剤などのような添加剤をさらに含むことができる。添加剤の含有量は、当業界で周知の範囲で使用可能であり、例えば、樹脂組成物の総量に対して、約0.0001~10重量%である。
【0055】
本発明に係る樹脂組成物の粘度は、組成物中、エラストマー、無機フィラー、フッ素樹脂フィラーの種類や含有量などに応じて調節可能であり、例えば、約150~500cpsである。一例として、樹脂組成物がこのような粘度を有する場合は、ロール・ツー・ロールコーティング(roll-to-roll coating)法により金属箔上に樹脂層を形成することができる。
【0056】
上述のような本発明の樹脂組成物は、金属積層体の製造時に、フィルム化工程(Paste extrusion calendering)と高温焼成工程を行うことなく、金属箔上に直接コーティング、乾燥するような方式で、低誘電率及び低誘電損失を有する樹脂層を含む金属積層体を容易に形成することができる。また、本発明の樹脂組成物は、様々な素材の基板に適用可能であり、例えば、ポリイミド(PI)基板の素材に適用され、軟性金属積層を製造することができる。
【0057】
<金属積層体及びその製造方法>
本発明は、上述のような樹脂組成物を用いた金属積層体を提供する。
【0058】
具体的に、前記金属積層体は、前記樹脂組成物で形成された樹脂層を含む。一例としては、金属積層体は、図1に示されるように、樹脂層110、及び前記樹脂層の両面上にそれぞれ配置された第1及び第2の金属層121、122を含む。このような金属積層体は、約1~100GHzの周波数帯域での誘電率及び誘電正接が低い。従って、本発明の金属積層体を高周波数から超高周波数用印刷回路基板に適用する場合、印刷回路基板の伝送損失を低減することができる。
【0059】
本発明の金属積層体において、樹脂層110は、前記樹脂組成物が硬化された絶縁性支持部材であって、10GHzでの誘電正接(Df)が約0.0005~0.0020程度と低い。
【0060】
一例としては、本発明の金属積層体は、10GHzにおいて、約0.0005~0.0020の誘電正接、及び約2~8、具体的に約2~6の誘電率を有する樹脂層を含む。
【0061】
樹脂層110は、第1及び第2の金属層121、122との接着力が、約0.5~3kgf/cm程度と高い。従って、本発明は、樹脂層と接する金属層表面の粗度とは関係なく、樹脂層と金属層との間の剥離を極力抑制することができる。
【0062】
また、樹脂層は、約0.2~2GPaの弾性係数(Modulus)を有する。これによって、本発明に係る金属積層体の機械的特性が向上される。
【0063】
なお、樹脂層は、約10~50ppm/℃の熱膨張係数(Coefficient of Thermal Expansion、CTE)を有する。従って、本発明の金属積層板は、印刷回路基板の反り特性、低膨張化、機械的強度(toughness)、低応力化を効果的に向上させることができる。
【0064】
また、樹脂層の厚さは、特に限定されず、例えば、約2.5~25mmであることができる。このとき、樹脂層の厚さは、金属層及び金属積層体の厚さを考慮して調節する。例えば、金属層の厚さ(D1)に対する樹脂層の厚さ(D2)の比(D2/D1)が、約8~35であることができる。
【0065】
このような樹脂層110は、単層であることができ、2層であることもできる。例えば、前記樹脂層は、10GHzにおいて約0.0005~0.0020の誘電正接(Df)を有する第1の樹脂層、及び前記第1の樹脂層と同一又は異なり、10GHzにおいて約0.0005~0.0020の誘電正接(Df)を有する第2の樹脂層を含むことができる。このとき、前記第1の樹脂層と第2の樹脂層とは、一体化されている。
【0066】
本発明の金属積層体において、第1の金属層121及び第2の金属層122は、樹脂層110の両面にそれぞれ配置される。このとき、前記第1の金属層121と第2の金属層122とは、互いに同一又は異なっている。
【0067】
本発明において、第1及び第2の金属層121、122としては、金属積層体や印刷回路基板に適用し得る当該分野で周知の金属成分であれば、特に制限なく使用することができる。例えば、各金属層は、同(Cu)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、チタニウム(Ti)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、及び金(Au)からなる群から選択される1種の金属薄膜、又は2種以上の合金薄膜であることができる。好ましくは、第1及び第2の金属層121、122は、電気伝導度に優れ、かつ安価な銅箔(copper foil)であることができる。このとき、銅箔は、当該分野で周知の銅箔を制限なく使用することができ、圧延法及び電解法で製造される全ての銅箔が使用可能である。
【0068】
また、金属層は、樹脂層と接する表面が、所定の表面粗さを有する粗化面であることができる。粗化面の平均粗さ(Rz)は、約0.5~2μmであることができる。この場合、本発明は、高周波から超高周波領域において、優れた伝送特性を示している。
【0069】
前記金属層の厚さは、特に限定されず、最終の金属積層体の厚さと機械的特性を考慮して、約1~50μmの範囲であることができる。
【0070】
なお、上述のような本発明の金属積層板は、当業界で周知の常法に従って製造することができる。但し、本発明は、金属積層板を製造するにあたって、低誘電正接を有するエラストマー、バインダー樹脂、フッ素樹脂フィラー、及び無機フィラーを含む樹脂組成物を使用しているため、樹脂組成物を別の基材にフィルム化することなく金属箔上に直接コーティング、乾燥するような方式で樹脂層を形成することができる。また、本発明は、従来とは異なり、積層加圧工程前において高温焼成工程を行うことなく、組成物の乾燥工程によって樹脂層を形成する。従って、本発明は、製造コストを削減することができ、工程時間を短縮して生産性を向上させることができる。また、本発明は、金属箔上に樹脂組成物を直接塗布して樹脂層を形成しているため、樹脂層を別途形成して金属箔と圧着する場合とは異なり、金属箔と樹脂層との接着特性に優れた金属積層板を製造することができる。
【0071】
一例として、金属積層板の製造方法は、金属基材の一面上に前記樹脂組成物を塗布し、約50~180℃で乾燥して、金属基材の一面上に10GHzにおいて約0.005~0.0020の誘電正接(Df)を有する樹脂層が形成された単位部材を2つ準備する工程、及び前記2つの単位部材を積層加圧するが、各単位部材中の樹脂層が当接するように積層するステップを含む。但し、前記製造方法にのみ限定されず、必要に応じて各工程のステップを変形又は選択的に混用して実施することができる。
【0072】
以下、本発明に係る金属積層板を製造する各ステップについて説明する。
【0073】
(a)2つの単位部材を準備するステップ
上述のように樹脂組成物を金属基材の一面上に塗布し、乾燥して2つの単位部材を準備する(以下、「ステップS100」という)。
【0074】
具体的に、ステップS100では、金属基材の一面上に樹脂組成物を直接塗布(コーティング)するステップ、及び前記塗布された樹脂組成物を乾燥するステップを含む。
【0075】
前記直接塗布(コーティング)する方法は、特に限定されず、例えば、ロール・ツー・ロールコーティング法などがあり、具体的にコンマコーティング(comma coating)法、スロットダイコーティング法、カーテンコーティング法などが挙げられる。
【0076】
本ステップで使用される樹脂組成物については、上記の説明と同様であるため、省略する。
【0077】
なお、金属基材は、当該分野で周知の金属からなる部材であって、特に制限なく使用可能である。例えば、金属基材は、銅(Cu)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、チタニウム(Ti)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、及び金(Au)からなる群から選択される1種の金属薄膜、又は2種以上の合金薄膜であることができる。好ましくは、金属基材は、電気伝導度に優れ、かつ安価な銅箔(copper foil)である。このとき、銅箔は、当該分野で周知の銅箔を制限なく使用することができ、圧延法又は電解法で製造される全ての銅箔が使用可能である。
【0078】
前記樹脂組成物の乾燥ステップは、樹脂組成物中の有機溶媒を乾燥して除去するための工程であって、約50~180℃の温度で約3~30分間行われることで、金属基材上に樹脂層が形成される。このように、本発明は、プレス工程前において樹脂組成物の乾燥を行うが、350℃以上の高温での焼成工程は行わない。
【0079】
本ステップにおって、2つの単位部材を製造する。製造された各単位部材は、互いに同一又は異なり、金属基材、及び前記金属基材の一面に配置された樹脂層を含む。
【0080】
(b)単位部材を積層加圧するステップ
ステップS100で得られた2つの単位部材を積層加圧する(以下、「ステップS200」という)。但し、前記単位部材の積層時に、各単位部材の樹脂層が当接するように積層する。
【0081】
本ステップは、約10~50kgf/cmの圧力で、約1~8時間行われる。このとき、約300~350℃の温度条件下で行うことができる。一例として、前記温度条件の加熱板を備えるプレス装置を用いて、2つの単位部材を積層させた後、約10~50kgf/cmの圧力で、約1~8時間加圧することで、樹脂層同士が互いに圧着されて一体化された金属積層体が得られる。特に、約300~350℃の温度での積層加圧時に、各単位部材における樹脂層中のフッ素樹脂フィラーが溶融されるため、樹脂層同士の層間接着力がさらに高くなって樹脂層が一体化される。
【0082】
<印刷回路基板>
また、本発明は、前記金属積層体を含む印刷回路基板を提供する。
【0083】
一例として、印刷回路基板は、前記金属積層体を含み、前記金属積層体に含まれた金属層(第1の金属層及び/又は第2の金属層)には回路パータンが形成されている。この場合、金属積層体に含まれた樹脂層は、絶縁性支持部材としての役割を果たす。
【0084】
他の一例として、印刷回路基板は、前記金属積層体、及び前記金属積層体上に配置された1つ以上の単位積層体を含み、前記単位積層体は、第2の樹脂層、及び前記第2の樹脂層上に配置された第3の金属層を含む。このとき、第2の樹脂層は、層間絶縁層であって、前記樹脂組成物で形成された樹脂層であるか、又は当業界で周知の樹脂、例えば、ポリイミドなどで形成された樹脂層であることができる。
【0085】
本発明の印刷回路基板は、当業界で周知の常法に従って製造することができる。例えば、前記金属積層体に孔を開口してスルーホールめっきを行った後、めっき膜を含む銅箔にエッチング処理を施して回路を形成することで製造される。
【0086】
上述のような本発明の印刷回路基板は、約1GHz~100GHzの周波数帯域において低い誘電率及び誘電正接を有する金属積層体を含むため、約1GHz~100GHzの周波数帯域での誘電損失が低く、よって、伝送損失が低くなる。従って、本発明の印刷回路基板は、高周波から超高周波信号を取り扱うモバイル通信機器やその基地局装置、サーバ、ルータなどのネットワーク関連電子機器、大型コンピュータ、自動車レーダー機器などの各種の電気・電子・通信機器に有用に適用することができる。
【実施例
【0087】
以下、本発明を実施例を挙げて詳述すると、次の通りである。但し、後述の実施例は、本発明の例示に過ぎないものであり、本発明は、後述の実施例によって限定されない。
【0088】
[実施例1~8及び比較例1~4]樹脂組成物の製造
下記表1に記載の組成及び成分を有する樹脂組成物をそれぞれ製造した。下記表1中、フッ素樹脂、無機フィラー、エラストマーの含有量の単位は、それぞれ重量部であり、樹脂組成物(但し、有機溶媒を除く)の総量を基準としており、また、有機溶媒の含有量の単位は、重量部であり、樹脂組成物(但し、有機溶媒を除く)の総量100重量部を基準としている。
【0089】
【表1】
【0090】
[製造例1]金属積層体の製造
第1、2のコーティングロールを用いて、銅箔(厚さ:18μm)上に、実施例1で製造された樹脂組成物を、64μmの厚さで塗布した後、塗布された樹脂組成物を、140℃で約3分間乾燥し、有機溶媒が蒸発した状態の樹脂層が形成された第1の単位部材を製造した。第1の単位部材の製造方法と同様な方法で第2の単位部材を製造した。次に、前記第1の単位部材の樹脂層と第2の単位部材の樹脂層とが当接するように、前記第1の単位部材上に第2の単位部材を積層した後、320℃の熱板で、30kgの圧力で、4時間プレスして金属積層体を製造した。
【0091】
[製造例2~8]金属積層体の製造
製造例1で使用された実施例1の樹脂組成物の代わりに、表1に記載の実施例2~8の樹脂組成物をそれぞれ使用した以外は、製造例1と同様にして金属積層体をそれぞれ製造した。
【0092】
[比較製造例1~4]金属積層体の製造
製造例1で使用された実施例1の樹脂組成物の代わりに、表1に記載の比較例1~4の樹脂組成物をそれぞれ使用した以外は、製造例1と同様にして金属積層体をそれぞれ製造した。
【0093】
[実験例1]金属積層体の誘電率及び誘電正接
製造例1~8及び比較製造例1~4で製造された各金属積層体中の樹脂層の誘電率及び誘電損失について、後述のように測定を行い、その結果を下記表2、3に示す。
【0094】
IPC TM 650 2.5.5.9の評価規格に準拠して、金属積層体を、エッチング液(塩酸:過酸化水素=1:2の体積比)に含侵して銅箔を除去し、誘電率測定装置(RF Impedance/Material Analyzer、Agilent製)を用いて、10GHzでの誘電率(Dk)及び誘電正接(Df)をそれぞれ測定し、-25~125℃での誘電率(Dk)を測定し、温度による誘電率変化(TCK)を測定した。
【0095】
【表2】
【0096】
【表3】
【符号の説明】
【0097】
<符号の説明>
100:金属積層体、110:樹脂層、121:第1の金属層、122:第2の金属層。
図1