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特許7220299高Q値を有するLTCC誘電体組成物及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-01
(45)【発行日】2023-02-09
(54)【発明の名称】高Q値を有するLTCC誘電体組成物及び装置
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/46 20060101AFI20230202BHJP
   C04B 35/453 20060101ALI20230202BHJP
   C04B 35/14 20060101ALI20230202BHJP
   H01B 3/12 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
C04B35/46
C04B35/453
C04B35/14
H01B3/12 304
H01B3/12 325
H01B3/12 331
H01B3/12 322
H01B3/12 323
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021549778
(86)(22)【出願日】2020-02-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-12
(86)【国際出願番号】 US2020019832
(87)【国際公開番号】W WO2020176584
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2021-10-22
(31)【優先権主張番号】62/811,079
(32)【優先日】2019-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503468695
【氏名又は名称】フエロ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100092901
【弁理士】
【氏名又は名称】岩橋 祐司
(72)【発明者】
【氏名】マーリー,ピーター
【審査官】神▲崎▼ 賢一
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第102617127(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108249902(CN,A)
【文献】特開昭62-128964(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102887702(CN,A)
【文献】特表2008-503103(JP,A)
【文献】特表2018-529608(JP,A)
【文献】特表2018-513085(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/46
C04B 35/453
C04B 35/14
H01B 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) i)40~65wt%TiO
ii)30~60wt%ZnO、
iii)0.1~15wt%LiO、
iv)0~5wt%MnO、及び
v)0~5wt%NiO、を含み
vi)鉛を含まず、
vii)カドミウムを含まない、
80~99.6wt%のか焼ホスト材料、
に加えて、
(b)0.3~8wt%ホウ酸亜鉛、
(c)0.1~4wt%B
(d)0~4wt%SiO
(e)0~4wt%BaCO
(f)0~4wt%CaCO
(g)0~4wt%LiCO
(h)0~4wt%LiF、並びに
(i)0~3wt%CuO、
又は前述のいずれかの酸化物均等物、を含み、
鉛及びカドミウムを含まない、
鉛フリー及びカドミウムフリーの組成物。
【請求項2】
LiFが0.1~4wt%で含まれ、
CuOが0.1~3wt%で含まれる、
請求項1に記載の鉛フリー及びカドミウムフリーの組成物。
【請求項3】
LiFが0.2~3.5wt%で含まれ、
CuOが0.2~2.5wt%で含まれる、
請求項1に記載の鉛フリー及びカドミウムフリーの組成物。
【請求項4】
(a) i)45~75wt%SiO
ii)15~35wt%SrO、及び
iii)10~30wt%CuO、を含み、
iv)鉛を含まず、
v)カドミウムを含まない、
80~99.9wt%のか焼ホスト材料、
に加えて、
(b)0~8wt%ホウ酸亜鉛、
(c)0.1~4wt%B
(d)0~4wt%SiO
(e)0~4wt%CaCO
(f)0~4wt%LiCO
(g)0~4wt%LiF、並びに
(h)0~3wt%CuO、
又は前述のいずれかの酸化物均等物、を含み、
鉛及びカドミウムを含まない、
鉛フリー及びカドミウムフリーの組成物。
【請求項5】
CuOが0.1~3wt%で含まれる、
請求項4に記載の鉛フリー及びカドミウムフリーの組成物。
【請求項6】
が0.2~3.5wt%Bで含まれ、
CuOが0.2~2.5wt%で含まれる、
請求項4に記載の鉛フリー及びカドミウムフリーの組成物。
【請求項7】
前記ホスト材料が80~99.8wt%で含まれ、
ホウ酸亜鉛が0.1~8wt%で含まれる、
請求項4に記載の鉛フリー及びカドミウムフリーの組成物。
【請求項8】
(a)4754wt%TiO
(b)3351wt%ZnO、
(c)0.510wt%LiO、
(d)0.1~wt%B
(e)0~0.3wt%のSiO
(f)0~0.6wt%BaO、
(g)0~0.4wt%CaO、
(h)0.1wt%LiF、及び
(i)0.1wt%CuO、を含み、
鉛を含まず、かつカドミウムを含まない、
鉛フリー及びカドミウムフリーの誘電体材料を焼成時に形成する混合物を含む、鉛フリー及びカドミウムフリーの組成物。
【請求項9】
(a)45~75wt%SiO
(b)15~35wt%SrO、
(c)10~30wt%CuO、
(d)0.1~5wt%B
(e)0~6wt%CaO、
(f)0~8wt%ZnO、
(g)0~3wt%LiO、及び
(h)0~5wt%LiF、を含み、
鉛を含まず、かつカドミウムを含まない、
鉛フリー及びカドミウムフリーの誘電体材料を焼成時に形成する混合物を含む、鉛フリー及びカドミウムフリーの組成物。
【請求項10】
SiOが50~56wt%で含まれ、
SrOが22~24wt%含まれ、
CuOが17~19wt%で含まれ、
が0.4~2.2wt%で含まれ、
CaOが0~0.4wt%で含まれ、
ZnOが0~6.5wt%で含まれ、
LiOが0.2~3wt%で含まれ、
LiFが0~5wt%で含まれる、
請求項に記載の鉛フリー及びカドミウムフリーの組成物。
【請求項11】
(a)20~31wt%TiO
(b)16~25wt%ZnO、
(c)9~15wt%SrO、
(d)22~34wt%SiO
(e)6~12wt%CuO、
(f)2~4wt%LiO、
(g)0.7~2wt%B
(h)0.1~0.5wt%CaO、及び
(i)0.2~1wt%LiF、を含み、
鉛を含まず、かつカドミウムを含まない、
鉛フリー及びカドミウムフリーの誘電体材料を焼成時に形成する混合物を含む、鉛フリー及びカドミウムフリーの組成物。
【請求項12】
焼成後、前記誘電体材料が5GHzよりも高い周波数で測定されたときに少なくとも800のQ値を示す、請求項11に記載の鉛フリー及びカドミウムフリーの組成物。
【請求項13】
焼成後、前記誘電体材料が5~50の誘電率Kを示す、請求項11に記載の鉛フリー及びカドミウムフリーの組成物。
【請求項14】
前記か焼ホスト材料が0.2~5.0ミクロンの範囲の粒子径D50を有する、請求項1に記載の鉛フリー及びカドミウムフリーの組成物。
【請求項15】
請求項1に記載の鉛フリー及びカドミウムフリーの組成物と、
a.60~90wt%Ag+Pd+Pt+Au、
b.1~10wt%の、遷移金属のケイ化物、炭化物、窒化物、及びホウ化物からなる群から選択される添加物、
c.0.5~10wt%の少なくとも1つのガラスフリット、並びに
d.10~40wt%の有機部、
を含む導電性ペーストと、
を焼成前に含む電気又は電子部品。
【請求項16】
前記電気又は電子部品が、高Q共振器、電磁干渉フィルタ、バンドパスフィルタ、ワイヤレスパッケージングシステム、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、
請求項15に記載の電気又は電子部品。
【請求項17】
(a1)請求項1に記載の組成物を基体に適用する工程、又は
(a2)請求項1に記載の組成物を含むテープを基体に適用する工程、又は
(a3)請求項1に記載の組成物の複数の粒子を成形して、モノリシック複合基体を形成する工程、及び
(b)前記組成物を焼結するのに十分な温度で基体を焼成する工程、
を含む電子部品を形成する方法。
【請求項18】
焼成が約800℃~約910℃の温度で行われる、請求項17に記載の方法。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電体組成物(dielectric composition)に関し、より具体的には、GHz周波数で非常に高いQ値(Q factor)を有すると共に、貴金属の金属化を伴う低温同時焼成セラミック(LTCC;low temperature co-fired ceramic)用途において使用可能な、誘電率(dielectric constant)K=5~50を示す亜鉛-リチウム-チタン酸化物及びケイ素-ストロンチウム-銅酸化物系の誘電体組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤレス用途用のLTCCシステムにおいて使用される最先端の材料は、誘電率K=4~50の範囲であると共に、1MHzの測定周波数で約500~1,000のQ値を有する誘電体を使用する。特定の用途及び装置の構造によって、必要な比誘電率及びQ値が決定される。要求の厳しい高周波数用途には、高誘電率、高Q値の材料が必要となる。これは一般に、特定の特性を得るために高KのCaTiOと低K材料とを組み合わせることによって達成される。しかしながら、GHz周波数におけるCaTiOの低いQ値は、一般に、前記セラミックのQ値を低下させる望ましくない効果を有する。さらに、CaTiOの高い焼成温度はLTCC技術においては使用することができない。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、誘電体組成物に関し、より具体的には、GHzの高周波数で高いQ値を有すると共に、貴金属の金属化を伴う低温同時焼成セラミック(LTCC)用途において使用可能な、誘電率K=5~50、例えば約5~約30、を示す亜鉛-リチウム-チタン酸化物及びケイ素-ストロンチウム-銅酸化物系誘電体組成物に関する。Q値=1/Df、ここでDfは誘電正接(dielectric loss tangent)である。Qf値は、通常GHz範囲の周波数における、誘電体の質を表すために使用されるパラメータである。Qfは、Qf=Q×fとして表すことができ、ここでは、測定周波数f(GHz)にその周波数でのQ値を掛け合わせる。高周波数用途向けに、5GHzを超える周波数において1000よりも高い非常に高いQ値を有する高誘電体材料の需要が高まっている。
【0004】
概して、本発明のセラミック材料は、適量のZnO、LiO、及びTiO、又はSiO、SrO、及びCuOを混合し、これらの材料を水性媒体中で約0.2~約5.0ミクロン(micron)の範囲の粒子径D50まで一緒に粉砕する(milling)ことによって作製されるホストを含む。このスラリーを乾燥し、約800~1200℃で約1~5時間か焼して(calcined)、ZnO、LiO、及びTiO、又はSiO、SrO、及びCuOを含むホスト材料(host material)を形成する。次に、得られたホスト材料を機械的に微粉化し(pulverized)、融剤(fluxing agent)と混合し、再度水性媒体中で約0.2~約5.0μmの範囲の粒子径D50まで粉砕する。あるいは、粒子径D50は、約0.5~約1.0ミクロンの範囲にある。粉砕したセラミック粉末を乾燥、微粉化し、細かく分割した粉末を製造する。得られた粉末を円筒形のペレットにプレスし、約775~約925℃の温度で焼成することができる。一実施形態において、ペレットは、約800~約910℃の温度で焼成することができる。焼成が行われる時間は約1~約200分である。
【0005】
本発明の実施形態は、鉛フリー(lead-free)かつカドミウムフリー(cadmium-free)であり、それ単体で、又は他の酸化物と組み合わせて、誘電体材料を形成することができる亜鉛-リチウム-チタン酸化物ホスト材料を焼成時に(焼成により)形成する前駆体材料(precursor material)の混合物を含む組成物である。
【0006】
本発明の実施形態は、鉛フリーかつカドミウムフリーであり、それ単体で、又は他の酸化物と組み合わせて、誘電体材料を形成することができるケイ素-ストロンチウム-銅酸化物ホスト材料を焼成時に(焼成により)形成する前駆体材料の混合物を含む組成物である。
【0007】
好ましい実施形態において、ホスト材料は鉛を含まない。代替的な好ましい実施形態において、ホスト材料はカドミウムを含まない。より好ましい実施形態において、ホスト材料は鉛を含まず、かつカドミウムを含まない。
【0008】
好ましい実施形態において、ホスト材料は、(i)40~65wt%TiO、(ii)30~60wt%ZnO、及び(iii)0.1~15wt%LiOを含む。
【0009】
別の実施形態において、ホスト材料は、(i)40~65wt%TiO、(ii)30~60wt%ZnO、(iii)0.1~15wt%LiO、(iv)0~5wt%MnO、及び(v)0~5wt%NiOを含む。
【0010】
別の好ましい実施形態において、ホスト材料は、(i)45~75wt%SiO、(ii)15~35wt%SrO、及び(iii)10~30wt%CuOを含む。
【0011】
本発明の実施形態は、本明細書のいずれかに開示される2つ以上のホスト又はホストの選択を含むことができる。
【0012】
本発明の誘電体材料(dielectric material)は、括弧内に示された値を超えない量の以下のいずれか又はすべての融剤及びドーパント(dopants)と共に、本明細書に開示される80~99.6wt%の少なくとも1つのホスト材料のいずれかを含むことができる:SiO(4wt%);CaCO(4wt%);B(4wt%);LiCO(4wt%);LiF(4wt%);BaCO(8wt%);ホウ酸亜鉛(8wt%);及びCuO(3wt%)。
【0013】
別の実施形態において、融剤及びドーパントは、0.3~8wt%ホウ酸亜鉛、0.1~4wt%B、0~4wt%SiO、0~4wt%BaCO、0~4wt%CaCO、0~4wt%LiCO、0~4wt%LiF、0~3wt%CuO、又は前述のいずれかの酸化物均等物を含むことができる。
【0014】
さらに別の実施形態において、融剤及びドーパントは、0.3~8wt%ホウ酸亜鉛、0.1~4wt%B、0~4wt%SiO、0~4wt%BaCO、0~4wt%CaCO、0~4wt%LiCO、0.1~4wt%LiF、0.1~3wt%CuO、又は前述のいずれかの酸化物均等物を含むことができる。
【0015】
また別の実施形態において、融剤及びドーパントは、0~8wt%ホウ酸亜鉛、0.1~4wt%B、0~4wt%SiO、0~4wt%BaCO、0~4wt%CaCO、0~4wt%LiCO、0~4wt%LiF、0~3wt%CuO、又は前述のいずれかの酸化物均等物を含むことができる。
【0016】
またさらに別の実施形態において、融剤及びドーパントは、0.1~8wt%ホウ酸亜鉛、0.1~4wt%B、0~4wt%SiO、0~4wt%BaCO、0~4wt%CaCO、0~4wt%LiCO、0~4wt%LiF、0~3wt%CuO、又は前述のいずれかの酸化物均等物を含むことができる。
【0017】
また別の実施形態において、融剤及びドーパントは、0~8wt%ホウ酸亜鉛、0.1~4wt%B、0~4wt%SiO、0~4wt%BaCO、0~4wt%CaCO、0~4wt%LiCO、0~4wt%LiF、0.1~3wt%CuO、又は前述のいずれかの酸化物均等物を含むことができる。
【0018】
本発明の誘電体材料は、いかなる形態の鉛を含ます、いかなる形態のカドミウムを含まない。
【0019】
本発明の実施形態は、(a)35~65wt%TiO、(b)25~55wt%ZnO、(c)0.1~15wt%LiO、(d)0.1~5wt%B、(e)0~4wt%SiO、(f)0~6wt%BaO、(g)0~4wt%CaO、(h)0~4wt%LiF、(i)0~3wt%CuOを含み、鉛を含まず、カドミウムを含まない鉛フリー及びカドミウムフリーの誘電体材料を焼成時に形成する前駆体の混合物を含む鉛フリー及びカドミウムフリーの組成物である。
【0020】
本発明の別の実施形態は、(a)35~65wt%TiO、(b)25~55wt%ZnO、(c)0.1~15wt%LiO、(d)0.1~5wt%B、(e)0~7wt%SiO、(f)0~6wt%BaO、(g)0~6wt%CaO、(h)0~5wt%LiF、(i)0~5wt%CuOを含み、鉛を含まず、カドミウムを含まない鉛フリー及びカドミウムフリーの誘電体材料を焼成時に形成する前駆体の混合物を含む鉛フリー及びカドミウムフリーの組成物である。
【0021】
本発明のさらに別の実施形態は、(a)45~75wt%SiO、(b)15~35wt%SrO、(c)10~30wt%CuO、(d)0.1~5wt%B、(e)0~4wt%CaO、(f)0~4wt%LiO、(g)0~8wt%ZnO、(g)0~4wt%LiFを含み、鉛を含まず、カドミウムを含まない鉛フリー及びカドミウムフリーの誘電体材料を焼成時に形成する前駆体の混合物を含む鉛フリー及びカドミウムフリーの組成物である。
【0022】
本発明のまたさらに別の実施形態は、(a)45~75wt%SiO、(b)15~35wt%SrO、(c)10~30wt%CuO、(d)0.1~5wt%B、(e)0~6wt%CaO、(f)0~3wt%LiO、(g)0~8wt%ZnO、(g)0~5wt%LiFを含み、鉛を含まず、カドミウムを含まない鉛フリー及びカドミウムフリーの誘電体材料を焼成時に形成する前駆体の混合物を含む鉛フリー及びカドミウムフリーの組成物である。
【0023】
本発明の他の実施形態において、鉛フリー及びカドミウムフリーの組成物は、(a)47~54wt%TiO、(b)33~51wt%ZnO、(c)0.5~10wt%LiO、(d)0.91~1.8wt%B、(e)0.04~0.2wt%SiO、(f)0~0.6wt%BaO、(g)0~0.4wt%CaO、(h)0.1~4wt%LiF、(i)0.1~3wt%CuOを含み、鉛を含まず、カドミウムを含まない鉛フリー及びカドミウムフリーの誘電体材料を焼成時に形成する前駆体の混合物を含む。
【0024】
本発明のまた他の実施形態において、鉛フリー及びカドミウムフリーの組成物は、(a)50~56wt%SiO、(b)22~24wt%ZnO、(c)17~19wt%CuO、(d)0.4~2.2wt%B、(e)0~0.4wt%CaO、(f)0~6.5wt%ZnO、(g)0.1~3wt%LiO、(h)0~5wt%LiFを含み、鉛を含まず、カドミウムを含まない鉛フリー及びカドミウムフリーの誘電体材料を焼成時に形成する前駆体の混合物を含む。
【0025】
本発明のまたさらに他の実施形態において、鉛フリー及びカドミウムフリーの組成物は、(a)20~31wt%TiO、(b)16~25wt%ZnO、(c)9~15wt%SrO、(d)22~34wt%SiO、(e)7.6~11.5wt%CuO、(f)2.1~3.2wt%LiO、(g)1~1.1wt%B、(h)0.1~0.3wt%CaO、(i)0.5~0.9wt%LiFを含み、鉛を含まず、カドミウムを含まない鉛フリー及びカドミウムフリーの誘電体材料を焼成時に形成する前駆体の混合物を含む。
【0026】
本発明のいずれかの実施形態について、ゼロで境界付けられた材料範囲は、下端で0.01%又は0.1%で境界付けられた同様の範囲のサポートを提供するとみなされる。
【0027】
ゼロ重量パーセントで境界付けられた各組成範囲について、その範囲は、0.01wt%又は0.1wt%の下限を有する範囲も示すとみなされる。60~90wt%Ag+Pd+Pt+Auなどの教示は、言及された成分のいずれか又はすべてが、規定された範囲で組成物中に存在できることを意味する。
【0028】
別の実施形態において、本発明は、本明細書のいずれかに開示されるいずれかのホスト材料を焼成前に含む、鉛フリー及びカドミウムフリーの誘電体組成物に関する。
【0029】
別の実施形態において、本発明は、本明細書に開示されるいずれかの誘電体ペーストを、導電性ペーストと共に焼成前に含む電気又は電子部品に関し、導電性ペーストは、(a)60~90wt%Ag+Pd+Pt+Au、(b)遷移金属のケイ化物、炭化物、窒化物、及びホウ化物からなる群から選択される1~10wt%の添加物、(c)0.5~10wt%の少なくとも1つのガラスフリット、並びに(d)10~40wt%の有機部(organic portion)を含む。電気又は電子部品は、高Q共振器、バンドパスフィルタ、ワイヤレスパッケージングシステム、及びこれらの組み合わせとすることができる。
【0030】
別の実施形態において、本発明は、本明細書に開示されるいずれかの誘電体ペーストを基体(基板)(substrate)に適用する(塗布する)(applying)工程;及び誘電体材料を焼結するのに十分な温度で基体を焼成する工程を含む、電子部品を形成する方法に関する。
【0031】
別の実施形態において、本発明は、本明細書に開示されるいずれかの誘電体材料の粒子を基体に適用する工程、及び誘電体材料を焼結するのに十分な温度で基体を焼成する工程を含む、電子部品を形成する方法に関する。
【0032】
別の実施形態において、本発明の方法は、
(a1)本明細書に開示されるいずれかの誘電体組成物を基体に適用する工程、又は
(a2)本明細書に開示されるいずれかの誘電体組成物を含むテープを基体に適用する工程、又は
(a3)本明細書に開示されるいずれかの誘電体組成物の複数の粒子を成形して、モノリシック複合基体(monolithic composite substrate)を形成する工程;及び
(b)誘電体材料を焼結するのに十分な温度で基体を焼成する工程;
を含む、電子部品を形成する工程を含む。
【0033】
本明細書の各数値(パーセンテージ、温度等)の前には「約」(about)が付いていると推定されることを理解されたい。本明細書のいずれかの実施形態において、誘電体材料は、異なる相、例えば結晶性及びアモルファス、をmol%(モル%)又はwt%(重量%)のいずれかで表される任意の比率、例えば1:99~99:1(結晶性:アモルファス)、で含むことができる。他の比率には、10:90、20:80、30:70、40:60、50:50、60:40、70:30、80:20、及び90:10、並びにその間のすべての値が含まれる。一実施形態において、誘電体ペーストは、10~30wt%の結晶性誘電体材料及び70~90wt%のアモルファス誘電体材料を含む。
【0034】
本発明の前述の特徴及び他の特徴は、以下においてより十分に説明され、特に特許請求の範囲において指摘され、以下の説明は、本発明の特定の例示的な実施形態を詳細に記載するが、これらは、本発明の原理を使用することができる様々な方法のうちのいくつかだけを表示するにすぎない。
【発明の詳細な説明】
【0035】
LTCC(低温同時焼成セラミック)は、比較的低い焼成温度(1000℃未満)で、Ag、Au、PtもしくはPd、又はこれらの組み合わせ等の低抵抗金属導電体と同時焼成(共焼成)される多層ガラスセラミック基体技術である。その主な組成がガラス及びアルミナ又は他のセラミックフィラーからなることがあるため、「ガラスセラミック」(Glass Ceramics)と呼ばれることもある。一部のLTCC処方物は再結晶ガラスである。本明細書のガラスは、インシツ(in situ)で形成することができるか、又は組成物に添加することができるフリットの形態で提供することができる。状況によっては、ニッケル及びその合金等の卑金属が、理想的には、10-12~10-8気圧の酸素分圧等の非酸化性雰囲気において、使用することができる。「卑金属」とは、金、銀、パラジウム、及び白金以外のいずれかの金属である。合金金属には、Mn、Cr、Co、及びAlが含まれ得る。
【0036】
誘電体材料のスラリーから成型(cast)されたテープが切断され、ビア(via)として知られる孔を形成して層間の電気的接続を可能にする。ビアには導電性ペーストが充填される。次に、回路パターンが、必要に応じて同時焼成抵抗とともに印刷される。印刷基板の複数の層が積層される。スタックが加熱及び加圧され、複数の層が1つに結合される。次に、低温(<1000℃)焼成が行われる。焼成スタックは最終的な寸法に切断され、必要に応じて後焼成処理が完了される。
【0037】
自動車用途に有用な多層構造は、約5つのセラミック層、例えば、3~7のセラミック層又は4~6のセラミック層、を有することができる。RF用途において、構造は10~25のセラミック層を有することができる。配線基板として、5~8のセラミック層を使用することができる。
【0038】
原料の誘電体材料(Raw Dielectric Material)
【0039】
本発明のセラミック材料は、適量のZnO、LiO、及びTiO、又はSiO、SrO、及びCuOを混合し、これらの材料を水性媒体中で約0.2~約5.0ミクロンの範囲の粒子径D50まで一緒に粉砕することによって作製されるホストを含む。このスラリーを乾燥し、約800~1200℃で約1~5時間か焼して、ZnO、LiO、及びTiO、又はSiO、SrO、及びCuOを含むホスト材料を形成する。次に、得られたホスト材料を機械的に微粉化し、融剤と混合し、再度水性媒体中で約0.2~約5.0μmの範囲の粒子径D50まで粉砕する。別の実施形態において、粒子径D50は、約0.5~約1.0ミクロンの範囲である。
【0040】
得られたホスト材料にか焼を施し、一部、ホスト材料中の揮発性不純物を除去して、後のプロセスにおける固相反応を促進することを可能にさせる。高温(約800~1200℃)でのか焼は、粒子間の凝集を引き起こすことがある。粉砕したセラミック粉末を乾燥・微粉化し、細かく分割した粉末を製造する。
【0041】
か焼及び微粉化後、ホスト材料は、融剤と混合することができる。得られた粉末は、円筒形のペレットにプレスされ、約775~約925℃の温度で焼成することができる。一例において、ペレットは、約800~約910℃の温度で焼成することができる。焼成が行われる時間は約1~約200分間である。
【0042】
本発明の実施形態は、鉛フリーかつカドミウムフリーであり、それ単体で、又は他の酸化物と組み合わせて、誘電体材料を形成することができる亜鉛-リチウム-チタン酸化物ホスト材料を焼成時に(焼成により)形成する前駆体材料の混合物を含む組成物である。
【0043】
本発明の実施形態は、鉛フリーかつカドミウムフリーであり、それ単体で、又は他の酸化物と組み合わせて、誘電体材料を形成することができるケイ素-ストロンチウム-銅酸化物ホスト材料を焼成時に(焼成により)形成する前駆体材料の混合物を含む組成物である。
【0044】
好ましい実施形態において、ホスト材料は鉛を含まない。代替的な好ましい実施形態において、ホスト材料はカドミウムを含まない。より好ましい実施形態において、ホスト材料は鉛を含まず、かつカドミウムを含まない。
【0045】
好ましい実施形態において、ホスト材料は、(i)40~65wt%TiO、(ii)30~60wt%ZnO、及び(iii)0.1~15wt%LiOを含む。
【0046】
別の実施形態において、ホスト材料は、(i)40~65wt%TiO、(ii)30~60wt%ZnO、(iii)0.1~15wt%LiO、(iv)0~5wt%MnO、及び(v)0~5wt%NiOを含む。
【0047】
別の好ましい実施形態において、ホスト材料は、(i)45~75wt%SiO、(ii)15~35wt%SrO、及び(iii)10~30wt%CuOを含む。
【0048】
本発明の実施形態は、本明細書のいずれかに開示される2つ以上のホスト又はホストの選択を含むことができる。
【0049】
本発明の誘電体材料は、括弧内に示された値を超えない量の以下の融剤及びドーパントのいずれか又はすべてと共に、80~99.6wt%の、本明細書に開示される少なくとも1つのホスト材料のいずれかを含むことができる:SiO(4wt%);CaCO(4wt%);B(4wt%);LiCO(4wt%);LiF(4wt%);BaCO(8wt%);ホウ酸亜鉛(8wt%);及びCuO(3wt%)。
【0050】
別の実施形態において、融剤及びドーパントは、0.3~8wt%ホウ酸亜鉛、0.1~4wt%B、0~4wt%SiO、0~4wt%BaCO、0~4wt%CaCO、0~4wt%LiCO、0~4wt%LiF、0~3wt%CuO、又は前述のいずれかの酸化物均等物を含むことができる。
【0051】
さらに別の実施形態において、融剤及びドーパントは、0.3~8wt%ホウ酸亜鉛、0.1~4wt%B、0~4wt%SiO、0~4wt%BaCO、0~4wt%CaCO、0~4wt%LiCO、0.1~4wt%LiF、0.1~3wt%CuO、又は前述のいずれかの酸化物均等物を含むことができる。
【0052】
さらに別の実施形態において、融剤及びドーパントは、0.3~8wt%ホウ酸亜鉛、0.1~4wt%B、0~4wt%SiO、0~4wt%BaCO、0~4wt%CaCO、0~4wt%LiCO、0.2~3.5wt%LiF、0.2~2.5wt%CuO、又は前述のいずれかの酸化物均等物を含むことができる。
【0053】
さらに別の実施形態において、融剤及びドーパントは、0~8wt%ホウ酸亜鉛、0.1~4wt%B、0~4wt%SiO、0~4wt%BaCO、0~4wt%CaCO、0~4wt%LiCO、0~4wt%LiF、0~3wt%CuO、又は前述のいずれかの酸化物均等物を含むことができる。
【0054】
また別の実施形態において、融剤及びドーパントは、0~8wt%ホウ酸亜鉛、0.1~4wt%B、0~4wt%SiO、0~4wt%CaCO、0~4wt%LiCO、0~4wt%LiF、0~3wt%CuO、又は前述のいずれかの酸化物均等物を含むことができる。
【0055】
またさらに別の実施形態において、融剤及びドーパントは、0.1~8wt%ホウ酸亜鉛、0.1~4wt%B、0~4wt%SiO、0~4wt%BaCO、0~4wt%CaCO、0~4wt%LiCO、0~4wt%LiF、0~3wt%CuO、又は前述のいずれかの酸化物均等物を含むことができる。
【0056】
さらに別の実施形態において、融剤及びドーパントは、0~8wt%ホウ酸亜鉛、0.1~4wt%B、0~4wt%SiO、0~4wt%BaCO、0~4wt%CaCO、0~4wt%LiCO、0~4wt%LiF、0.1~3wt%CuO、又は前述のいずれかの酸化物均等物を含むことができる。
【0057】
さらに別の実施形態において、融剤及びドーパントは、0~8wt%ホウ酸亜鉛、0.1~4wt%B、0~4wt%SiO、0~4wt%CaCO、0~4wt%LiCO、0~4wt%LiF、0.1~3wt%CuO、又は前述のいずれかの酸化物均等物を含むことができる。
【0058】
また別の実施形態において、融剤及びドーパントは、0~8wt%ホウ酸亜鉛、0.1~4wt%B、0~4wt%SiO、0~4wt%BaCO、0~4wt%CaCO、0~4wt%LiCO、0~4wt%LiF、0.1~3wt%CuO、又は前述のいずれかの酸化物均等物を含むことができる。
【0059】
またさらに別の実施形態において、融剤及びドーパントは、0~8wt%ホウ酸亜鉛、0.2~3.5wt%B、0~4wt%SiO、0~4wt%CaCO、0~4wt%LiCO、0~4wt%LiF、0.2~2.5wt%CuO、又は前述のいずれかの酸化物均等物を含むことができる。
【0060】
本発明の誘電体材料は、いかなる形態の鉛を含ます、いかなる形態のカドミウムを含まない。
【0061】
本発明の別の実施形態は、(a)35~65wt%TiO、(b)25~55wt%ZnO、(c)0.1~15wt%LiO、(d)0.1~5wt%B、(e)0~7wt%SiO、(f)0~6wt%BaO、(g)0~6wt%CaO、(h)0~5wt%LiF、(i)0~5wt%CuOを含み、鉛を含まず、カドミウムを含まない鉛フリー及びカドミウムフリーの誘電体材料を焼成時に形成する前駆体の混合物を含む鉛フリー及びカドミウムフリーの組成物である。
【0062】
本発明のさらに別の実施形態は、(a)45~75wt%SiO、(b)15~35wt%SrO、(c)10~30wt%CuO、(d)0.1~5wt%B、(e)0~4wt%CaO、(f)0~4wt%LiO、(g)0~8wt%ZnO、(g)0~4wt%LiFを含み、鉛を含まず、カドミウムを含まない鉛フリー及びカドミウムフリーの誘電体材料を焼成時に形成する前駆体の混合物を含む鉛フリー及びカドミウムフリーの組成物である。
【0063】
本発明のまたさらに別の実施形態は、(a)45~75wt%SiO、(b)15~35wt%SrO、(c)10~30wt%CuO、(d)0.1~5wt%B、(e)0~6wt%CaO、(f)0~3wt%LiO、(g)0~8wt%ZnO、(g)0~5wt%LiFを含み、鉛を含まず、カドミウムを含まない鉛フリー及びカドミウムフリーの誘電体材料を焼成時に形成する前駆体の混合物を含む鉛フリー及びカドミウムフリーの組成物である。
【0064】
本発明の別の実施形態において、鉛フリー及びカドミウムフリーの組成物は、(a)47~54wt%TiO、(b)33~51wt%ZnO、(c)0.5~10wt%LiO、(d)0.91~1.8wt%B、(e)0.04~0.2wt%SiO、(f)0~0.6wt%BaO、(g)0~0.4wt%CaO、(h)0.1~4wt%LiF、(i)0.1~3wt%CuOを含み、鉛を含まず、カドミウムを含まない鉛フリー及びカドミウムフリーの誘電体材料を焼成時に形成する前駆体の混合物を含む。
【0065】
本発明のまたさらに別の実施形態において、鉛フリー及びカドミウムフリーの組成物は、(a)47~54wt%TiO、(b)33~51wt%ZnO、(c)0.5~10wt%LiO、(d)0.1~3wt%B、(e)0~0.3wt%SiO、(f)0~0.6wt%BaO、(g)0~0.4wt%CaO、(h)0.1~4wt%LiF、(i)0.1~3wt%CuOを含み、鉛を含まず、カドミウムを含まない鉛フリー及びカドミウムフリーの誘電体材料を焼成時に形成する前駆体の混合物を含む。
【0066】
本発明のまた別の実施形態において、鉛フリー及びカドミウムフリーの組成物は、(a)50~56wt%SiO、(b)22~24wt%ZnO、(c)17~19wt%CuO、(d)0.4~2.2wt%B、(e)0~0.4wt%CaO、(f)0~6.5wt%ZnO、(g)0.2~3wt%LiO、(h)0~5wt%LiFを含み、鉛を含まず、カドミウムを含まない鉛フリー及びカドミウムフリーの誘電体材料を焼成時に形成する前駆体の混合物を含む。
【0067】
本発明のまたさらに他の実施形態において、鉛フリー及びカドミウムフリーの組成物は、(a)20~31wt%TiO、(b)16~25wt%ZnO、(c)9~15wt%SrO、(d)22~34wt%SiO、(e)6~12wt%CuO、(f)2~4wt%LiO、(g)0.7~2wt%B、(h)0.1~0.5wt%CaO、(i)0.2~1wt%LiFを含み、鉛を含まず、カドミウムを含まない鉛フリー及びカドミウムフリーの誘電体材料を焼成時に形成する前駆体の混合物を含む。
【0068】
[誘電性ペースト]誘電体層を形成するためのペーストは、本明細書に開示されるように、有機ビヒクル(organic vehicle)を原料の誘電体材料と混合することによって得ることができる。また、上述のように、焼成時にそのような酸化物及び複合酸化物に変換する前駆体化合物(炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩)も有用である。誘電体材料は、これらの酸化物を含む化合物、又はこれらの酸化物の前駆体を選択し、それらを適切な比率で混合することによって得られる。原料の誘電体材料中のこのような化合物の比率は、焼成後に所望の誘電体層組成物が得られるように決定される。(本明細書のいずれかに開示されるように)原料の誘電体材料は、一般に、約0.1~約3ミクロン、より好ましくは約1ミクロン以下の平均粒子径(mean particle size)を有する粉末形態で使用される。
【0069】
[有機ビヒクル]本明細書のペーストは有機部(organic portion)を含む。有機部は、有機溶媒中のバインダ又は水中のバインダである有機ビヒクルであるか、又は有機ビヒクルを含む。本明細書において使用されるバインダの選択は重要ではない;エチルセルロース、ポリビニルブタノール、エチルセルロース、及びヒドロキシプロピルセルロース、並びにこれらの組み合わせ等の一般的なバインダが溶媒と合わせて適当である。有機溶媒も重要ではなく、ブチルカルビトール、アセトン、トルエン、エタノール、ジエチレングリコールブチルエーテル等の一般的な有機溶媒;2,2,4-トリメチルペンタンジオールモノイソブチレート(テキサノール(Texanol)(登録商標));α-テルピネオール;β-テルピネオール;γ-テルピネオール;トリデシルアルコール;ジエチレングリコールエチルエーテル(カルビトール(Carbitol)(登録商標))、ジエチレングリコールブチルエーテル(ブチルカルビトール(Butyl Carbitol)(登録商標))及びプロピレングリコール;並びにこれらの混合物から、特定の適用方法(すなわち、印刷又は被覆(sheeting))に従って選択することができる。テキサノール(登録商標)の商品名で販売されている製品は、テネシー州キングズポート(Kingsport)にあるイーストマンケミカル社(Eastman Chemical Company)から入手することができる;ダウワノール(Dowanol)(登録商標)及びカルビトール(登録商標)の商品名で販売されている製品は、ミシガン州ミッドランド(Midland)にあるダウケミカル社(Dow Chemical Co.)から入手することができる。
【0070】
本発明の誘電体ペーストの有機部に何らかの限定は課されない。一実施形態において、本発明の誘電体ペーストは、約10wt%~約40wt%の有機ビヒクルを含む。別の実施形態においては、約10wt%~約30wt%の有機ビヒクルを含む。多くの場合、ペーストは約1~5wt%のバインダ及び約10~50wt%の有機溶媒を含み、残りは誘電体成分(すなわち、固体部としての誘電体材料)である。一実施形態において、本発明の誘電体ペーストは、約60~約90wt%の、いずれかに開示される固体部、及び本段落及び前の段落に記載の約10wt%~約40wt%の有機部を含む。必要に応じて、本発明のペーストは、分散剤、可塑剤、誘電性化合物、及び絶縁性化合物等の他の添加物を最大約10wt%含むことができる。
【0071】
[フィラー]異なる誘電体組成物のテープ層間の膨張の不整合を最小限に抑えるために、コーディエライト、アルミナ、ジルコン、フューズドシリカ、アルミノケイ酸塩、及びこれらの組み合わせ等のフィラーを、本明細書の1つ又は複数の誘電体ペーストに1~30wt%、好ましくは2~20wt%、より好ましくは2~15wt%の量で添加することができる。
【0072】
[焼成]次に、誘電体スタック(2つ以上の層)が、内部電極層形成ペースト中の導体の種類に従って決定される雰囲気中で焼成される。内部電極層がニッケル及びニッケル合金等の卑金属導体で形成される場合、焼成雰囲気は、約10-12~約10-8atmの酸素分圧を有することができる。約10-12atm未満の分圧での焼成は避けるべきであり、このような低圧では、導体が異常に焼成され、誘電体層との分離が生じることがあるためである。約10-8atmを超える酸素分圧では、内部電極層が酸化されることがある。約10-11~約10-9atmの酸素分圧が最も好ましい。本明細書に開示される誘電体組成物は周囲空気(ambient air)中で焼成することも可能である。しかしながら、還元性雰囲気(H、N、又はH/N)は、誘電体ペーストから金属ビスマスへとBiを還元してしまうことがあり望ましくない。
【0073】
本明細書に開示されるLTCC組成物及び装置の用途には、バンドパスフィルタ、(ハイパス又はローパス)、セルラー用途を含むテレコミュニケーション(telecommunication)用の無線送信機及び受信機、電力増幅器モジュール(PAM)、RFフロントエンドモジュール(FEM)、WiMAX2モジュール、LTE-advancedモジュール、トランスミッションコントロールユニット(TCU)、電子パワーステアリング(EPS)、エンジンマネジメントシステム(EMS)、種々のセンサーモジュール、レーダーモジュール、圧力センサー、カメラモジュール、スモールアウトラインチューナーモジュール、装置及び部品用薄型プロファイルモジュール、並びにICテスターボードが含まれる。バンドパスフィルタには、2つの主要部、1つはコンデンサ、もう1つはインダクタ、が含まれる。低K材料はインダクタの設計には適しているが、十分な静電容量を生成するためにより多くのアクティブ領域を必要とするためコンデンサの設計には適していない。高K材料はその逆の結果となる。本発明者らは、低K(low K)(4~8)/中K(Mid K)(10~100)LTCC材料を同時焼成して単一の部品にすることができ、最適化された性能を有するように低K材料をインダクタ領域の設計に使用することができ、高K材料をコンデンサ領域の設計に使用することができることを発見した。
【実施例
【0074】
以下の実施例は、本発明の好ましい態様を例示するために提供され、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0075】
適量のZnO、LiCO、及びTiO、又はSiO、SrCO、及びCuOを混合し、これらの材料を水性媒体中で約0.2~5.0ミクロンの範囲の粒子径D50まで一緒に粉砕する。このスラリーを乾燥し、約800~1250℃で約1~10時間か焼して、ホスト材料を形成する。次に、か焼後、得られたホスト材料を機械的に微粉化し、本明細書に記載の処方物による融剤及びドーパントと混合し、再度水性媒体中で約0.2~約5.0μmの範囲の粒子径D50まで粉砕する。あるいは、粒子径D50は、約0.5~約1.0ミクロンの範囲である。粉砕粒子を乾燥し、微粉化して、細かく分割した粉末を製造する。次に、この得られた粉末を円筒形のペレットにプレスし、約800~約910℃の温度で焼成する。例えば、ペレットは、約850~900℃の温度で約15~60分間焼成することができる。焼成された(焼結された)ペレットは、表1に挙げる組成を有する。
【0076】
表1 焼成ペレットの組成(重量%)
【0077】
【表1】
【0078】
以下の表は、表1に記載の処方物の特性及び性能データを示す。
【0079】
表2 焼成後の処方物1~10のK、Q及びQfデータ
【0080】
【表2】
【0081】
焼成後の処方物1~10の誘電率(K)は、約5.15~約23.28の範囲であることが分かった。誘電率(K)とQ値は、共振空洞技術(resonant cavity technique)を使用して測定する。焼成後の処方物1~10について測定されたQ値は、約9GHz以上で測定された場合、約873~約2706の範囲である。
【0082】
追加の利点及び変更は、当業者が容易に想到するであろう。したがって、そのより広い態様における本発明は、本明細書に示され、説明される特定の詳細なかつ例示的な例に限定されない。したがって、添付の特許請求の範囲及びそれらの均等物によって規定される全体的な発明の概念の精神又は範囲から逸脱することなく、様々な変更を行うことができる。
【0083】
本発明は、以下の項によってさらに規定される。
【0084】
項1:
(a) i)40~65wt%TiO
ii)30~60wt%ZnO、
iii)0.1~15wt%LiO、
iv)0~5wt%MnO、及び
v)0~5wt%NiO、を含み
vi)鉛を含まず、
vii)カドミウムを含まない、
80~99.6wt%のか焼ホスト材料、
に加えて、
(b)0.3~8wt%ホウ酸亜鉛、
(c)0.1~4wt%B
(d)0~4wt%SiO
(e)0~4wt%BaCO
(f)0~4wt%CaCO
(g)0~4wt%LiCO
(h)0~4wt%LiF及び
(i)0~3wt%CuO、
又は前述のいずれかの酸化物均等物を含み、鉛を含まず、カドミウムを含まない、
鉛フリー及びカドミウムフリーの組成物。
【0085】
項2:
LiFが0.1~4wt%で含まれ、
CuOが0.1~3wt%で含まれる、
項1の鉛フリー及びカドミウムフリーの組成物。
【0086】
項3:
LiFが0.2~3.5wt%で含まれ、
CuOが0.2~2.5wt%で含まれる、
項1の鉛フリー及びカドミウムフリーの組成物。
【0087】
項4:
(a) i)45~75wt%SiO
ii)15~35wt%SrO、及び
iii)10~30wt%CuO、を含み、
iv)鉛を含まず、
v)カドミウムを含まない、
80~99.9wt%のか焼ホスト材料、
に加えて、
(b)0~8wt%ホウ酸亜鉛、
(c)0.1~4wt%B
(d)0~4wt%SiO
(e)0~4wt%CaCO
(f)0~4wt%LiCO
(g)0~4wt%LiF、及び
(h)0~3wt%CuO、
又は前述のいずれかの酸化物均等物を含み、鉛を含まず、カドミウムを含まない、
鉛フリー及びカドミウムフリーの組成物。
【0088】
項5:
CuOが0.1~3wt%で含まれる、
項4の鉛フリー及びカドミウムフリーの組成物。
【0089】
項6:
が0.2~3.5wt%Bで含まれ、
CuOが0.2~2.5wt%で含まれる、
項4の鉛フリー及びカドミウムフリーの組成物。
【0090】
項7:
(a)80~99.8wt%の、項1及び4のいずれかのホスト材料のいずれかの組み合わせ、
に加えて、
(b)0.1~8wt%ホウ酸亜鉛、
(c)0.1~4wt%B
(d)0~4wt%SiO
(e)0~4wt%CaCO
(f)0~4wt%BaCO
(g)0~4wt%LiCO
(h)0~4wt%LiF、及び
(i)0~3wt%CuO、
又は前述のいずれかの酸化物均等物を含み、鉛を含まず、カドミウムを含まない、
鉛フリー及びカドミウムフリーの組成物。
【0091】
項8:
(a)35~65wt%TiO
(b)25~55wt%ZnO、
(c)0.1~15wt%LiO、
(d)0.1~5wt%B
(e)0~7wt%SiO
(f)0~6wt%BaO、
(g)0~6wt%CaO、
(h)0~5wt%LiF、及び
(i)0~5wt%CuO、を含み、
鉛を含まず、かつカドミウムを含まない、
鉛フリー及びカドミウムフリーの誘電体材料を焼成時に形成する前駆体の混合物を含む、鉛フリー及びカドミウムフリーの組成物。
【0092】
項9:
TiOが47~54wt%で含まれ、
ZnOが33~51wt%で含まれ、
LiOが0.5~10wt%で含まれ、
が0.1~3wt%で含まれ、
SiOが0~0.3wt%で含まれ、
BaOが0~0.6wt%で含まれ、
CaOが0~0.4wt%で含まれ、
LiFが0.1~4wt%で含まれ、
CuOが0.1~3wt%で含まれる、
項8の鉛フリー及びカドミウムフリーの組成物。
【0093】
項10:
(a)45~75wt%SiO
(b)15~35wt%SrO、
(c)10~30wt%CuO、
(d)0.1~5wt%B
(e)0~6wt%CaO、
(f)0~8wt%ZnO、
(g)0~3wt%LiO、及び
(h)0~5wt%LiF、を含み、
鉛を含まず、かつカドミウムを含まない、
鉛フリー及びカドミウムフリーの誘電体材料を焼成時に形成する前駆体の混合物を含む、鉛フリー及びカドミウムフリーの組成物。
【0094】
項11:
SiOが50~56wt%で含まれ、
SrOが22~24wt%で含まれ、
CuOが17~19wt%で含まれ、
が0.4~2.2wt%で含まれ、
CaOが0~0.4wt%で含まれ、
ZnOが0~6.5wt%で含まれ、
LiOが0.2~3wt%で含まれ、
LiFが0~5wt%で含まれる、
項10の鉛フリー及びカドミウムフリーの組成物。
【0095】
項12:
(a)20~31wt%TiO
(b)16~25wt%ZnO、
(c)9~15wt%SrO、
(d)22~34wt%SiO
(e)6~12wt%CuO、
(f)2~4wt%LiO、
(g)0.7~2wt%B
(h)0.1~0.5wt%CaO、及び
(i)0.2~1wt%LiF、を含み、
鉛を含まず、かつカドミウムを含まない、
鉛フリー及びカドミウムフリーの誘電体材料を焼成時に形成する前駆体の混合物を含む、鉛フリー及びカドミウムフリーの組成物。
【0096】
項13:
項8~12のいずれかの組み合わせを含む、鉛フリー及びカドミウムフリーの誘電体材料を焼成時に形成する前駆体の混合物を含む、鉛フリー及びカドミウムフリーの組成物。
【0097】
項14:
焼成後、5GHzを超える周波数で測定されたときに誘電体材料が少なくとも800のQ値を示す、項1~11のいずれかの鉛フリー及びカドミウムフリーの組成物。
【0098】
項15:
焼成後、誘電体材料が5~50の誘電率Kを示す、項1~13のいずれかの鉛フリー及びカドミウムフリーの組成物。
【0099】
項16:
か焼ホスト材料が0.2~5.0ミクロンの範囲の粒子径D50を有する、項1、4及び7のいずれかの鉛フリー及びカドミウムフリーの組成物。
【0100】
項17:
項1~16のいずれかの鉛フリー及びカドミウムフリーの組成物と、
a.60~90wt%Ag+Pd+Pt+Au、
b.1~10wt%の、遷移金属のケイ化物、炭化物、窒化物、及びホウ化物からなる群から選択される添加物、
c.0.5~10wt%の少なくとも1つのガラスフリット、並びに
d.10~40wt%の有機部、
を含む導電性ペーストと、
を焼成前に含む、電気又は電子部品。
【0101】
項18:
電気又は電子部品が、高Q共振器、電磁干渉フィルタ、バンドパスフィルタ、ワイヤレスパッケージングシステム、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、
項17の電気又は電子部品。
【0102】
項19:
(a1)項1~13のいずれかの組成物を基体に適用する工程、又は
(a2)項1~13のいずれかの組成物を含むテープを基体に適用する工程、又は
(a3)項1~13のいずれかの組成物の複数の粒子を成形して、モノリシック複合基体を形成する工程、及び
(b)組成物を焼結するのに十分な温度で基体を焼成する工程、
を含む電子部品を形成する方法。
【0103】
項20:
焼成が約800℃~約910℃の温度で行われる、項19の方法。