(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-01
(45)【発行日】2023-02-09
(54)【発明の名称】希土類永久磁石材料、原料組成物、製造方法、応用、モーター
(51)【国際特許分類】
H01F 1/057 20060101AFI20230202BHJP
H01F 41/02 20060101ALI20230202BHJP
C22C 38/00 20060101ALI20230202BHJP
B22F 3/00 20210101ALI20230202BHJP
B22F 3/24 20060101ALI20230202BHJP
B22F 9/04 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
H01F1/057 170
H01F41/02 G
C22C38/00 303D
B22F3/00 F
B22F3/24 K
B22F3/24 B
B22F9/04 C
B22F9/04 E
(21)【出願番号】P 2021552779
(86)(22)【出願日】2020-07-07
(86)【国際出願番号】 CN2020100591
(87)【国際公開番号】W WO2021042864
(87)【国際公開日】2021-03-11
【審査請求日】2021-11-15
(31)【優先権主張番号】201910829486.2
(32)【優先日】2019-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521397223
【氏名又は名称】フージャン チャンティン ゴールデン ドラゴン レア-アース カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100199819
【氏名又は名称】大行 尚哉
(74)【代理人】
【識別番号】100087859
【氏名又は名称】渡辺 秀治
(72)【発明者】
【氏名】廖宗博
(72)【発明者】
【氏名】ルオ イン
(72)【発明者】
【氏名】藍琴
(72)【発明者】
【氏名】黄佳瑩
【審査官】秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-237168(JP,A)
【文献】特開2013-216965(JP,A)
【文献】特表2016-532287(JP,A)
【文献】特開2014-027268(JP,A)
【文献】特開2012-015169(JP,A)
【文献】特許第4103938(JP,B1)
【文献】国際公開第2016/133067(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/020180(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/004994(WO,A1)
【文献】特表2016-509365(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 1/057
H01F 41/02
C22C 38/00
B22F 3/00
B22F 3/24
B22F 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
R-T-B系永久磁石材料であって、質量百分率で下記の成分を含み、
R:28.5~33.0wt.%、
RH:1.5~4.5wt.%、
Cu:0~0.08wt.%、ただし、0wt.%ではなく、
Co:0.5~2.0wt.%、
Ga:0.05~0.30wt.%、
B:0.95~1.05wt.%、
残部:Fe及び不可避的不純物、
ここで、前記Rは希土類元素であり、前記Rには、少なくともNd及びRHが含まれ、前記RHは重希土類元素であり、
前記R-T-B系永久磁石材料は、R
2T
14B結晶粒及びR
2T
14B結晶粒間の粒界相を含み、前記粒界相の組成は、R
x-(B
1-a-b-c-Ga
a-Cu
b-T
c)
yであり、ここで、TはFe及びCoであり、2b<a<3.5b、1/2c<a+b、50at%<x<65at%、35at%<y<50at%であり、at%とは、前記粒界相において各元素が占める原子パーセントを意味する、
ことを特徴とするR-T-B系永久磁石材料。
【請求項2】
前記xは、55~60at%であり、at%とは、前記粒界相においてRが占める原子パーセントを意味し、及び/又は、
前記yは、40~45at%であり、at%とは、前記粒界相において「B、Ga、Cu、Fe及びCo」が占める原子パーセントを意味し、及び/又は、
前記aは、0.23~0.24であり、前記aとは、元素「B、Ga、Cu、Fe及びCo」において前記Gaが占める原子パーセントを意味し、及び/又は、
前記bは、0.1~0.115であり、前記bとは、元素「B、Ga、Cu、Fe及びCo」において前記Cuが占める原子パーセントを意味し、及び/又は、
前記cは、0.64~0.65であり、前記cとは、元素「B、Ga、Cu、Fe及びCo」において前記Fe及びCoが占める原子パーセントを意味し、及び/又は、
前記R
x-(B
1-a-b-c-Ga
a-Cu
b-T
c)
yは、R
55.6-(B
0.01-Ga
0.235-Cu
0.115-T
0.64)
44.4、R
56.9-(B
0.02-Ga
0.23-Cu
0.11-T
0.64)
43.1、R
59-(B
0.02-Ga
0.24-Cu
0.1-T
0.64)
41、R
59.1-(B
0.02-Ga
0.23-Cu
0.11-T
0.64)
40.9、R
56.7-(B
0.02-Ga
0.23-Cu
0.1-T
0.65)
43.3、R
57-(B
0.02-Ga
0.23-Cu
0.1-T
0.65)
43、R
58.6-(B
0.02-Ga
0.23-Cu
0.11-T
0.64)
41.4又はR
59.5-(B
0.023-Ga
0.23-Cu
0.103-T
0.644)
40.5である、
ことを特徴とする請求項1に記載のR-T-B系永久磁石材料。
【請求項3】
前記xは、55.6at%、56.7at%、56.9at%、57at%、58.6at%、59at%、59.1at%又は59.5at%であり、at%とは、前記粒界相においてRが占める原子パーセントを意味し、及び/又は、
前記yは、40.5at%、40.9at%、41at%、41.4at%、43at%、43.1at%、43.3at%又は44.4at%であり、at%とは、前記粒界相において「B、Ga、Cu、Fe及びCo」が占める原子パーセントを意味し、及び/又は、
前記aは、0.23、0.235又は0.24であり、前記aとは、元素「B、Ga、Cu、Fe及びCo」において前記Gaが占める原子パーセントを意味し、及び/又は、
前記bは、0.1、0.103、0.11又は0.115であり、前記bとは、元素「B、Ga、Cu、Fe及びCo」において前記Cuが占める原子パーセントを意味し、及び/又は、
前記cは、0.64、0.644又は0.65であり、前記cとは、元素「B、Ga、Cu、Fe及びCo」において前記Fe及びCoが占める原子パーセントを意味する、
ことを特徴とする請求項2に記載のR-T-B系永久磁石材料。
【請求項4】
前記Rには、Prがさらに含まれ、及び/又は、
前記RHは、Dy及び/又はTbであり、及び/又は、
前記Rの含有量は、28.5~32.0wt.%又は30.5~33.0wt.%であり、及び/又は、
前記Ndの含有量は、24.4~30.5wt.%であり、及び/又は、
前記RHの含有量は、1.5~2.5wt.%又は3.0~4.5wt.%であり、及び/又は、
前記RHにTbが含まれる場合、前記Tbの含有量は、1.5~4.5wt.%であり、及び/又は、
前記RHにDyが含まれる場合、前記Dyの含有量は、0.45~1.0wt.%であり、及び/又は、
前記Cuの含有量は、0.01~0.08wt.%、0.04~0.08wt.%又は0.05~0.08wt.%であり、及び/又は、
前記Coの含有量は、0.78~2.0wt.%であり、及び/又は、
前記Gaの含有量は、0.05又は0.1~0.3wt.%であり、及び/又は、
前記Bの含有量は、0.95~1.04wt.%であり、パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料における質量百分率を意味する、
ことを特徴とする請求項1に記載のR-T-B系永久磁石材料。
【請求項5】
前記RHは、Tbであり、及び/又は、
前記Rの含有量は、28.94wt.%、30.53wt.%、30.66wt.%、31.09wt.%、31.83wt.%、31.92wt.%、32.23wt.%又は32.86wt.%であり、及び/又は、
前記Ndの含有量は、24.4~28.0wt.%又は28.0~30.5wt.%であり、及び/又は、
前記RHの含有量は、1.99wt.%、2.25wt.%、2.3wt.%、2.5wt.%、3.7wt.%、3.98wt.%、4.13wt.%又は4.48wt.%であり、及び/又は、
前記RHにTbが含まれる場合、前記Tbの含有量は、1.99wt.%、2.01wt.%、2.25wt.%、2.3wt.%、2.99wt.%、3.19wt.%、3.61wt.%又は3.98wt.%であり、及び/又は、
前記RHにDyが含まれる場合、前記Dyの含有量は、0.5wt.%、0.52wt.%、0.51wt.%、0.99wt.%又は0.49wt.%であり、及び/又は、
前記Cuの含有量は、0.01wt.%、0.05wt.%、0.06wt.%、0.07wt.%又は0.08wt.%であり、及び/又は、
前記Coの含有量は、1.0~2.0wt.%であり、及び/又は、
前記Gaの含有量は、0.1wt.%、0.2wt.%又は0.3wt.%であり、及び/又は、
前記Bの含有量は、0.95wt.%、0.98wt.%、0.99wt.%又は1.04wt.%である、
ことを特徴とする請求項4に記載のR-T-B系永久磁石材料。
【請求項6】
前記Ndの含有量は、24.46wt.%、26.4wt.%、27.39wt.%、27.94wt.%、28.36wt.%、29.58wt.%、30.24wt.%又は30.36wt.%であり、及び/又は、
前記Coの含有量は、0.79wt.%、0.99wt.%、1wt.%、1.39wt.%、1.58wt.%、1.6wt.%又は2wt.%であり、
パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料における質量百分率を意味する、
ことを特徴とする請求項5に記載のR-T-B系永久磁石材料。
【請求項7】
前記R-T-B系永久磁石材料は、下記の成分を含み:Rが28.5~32.0wt.%、RHが3.0~4.5wt.%、Cuが0~0.08wt.%、ただし0wt.%ではなく、Coが1.0~2.0wt.%、Gaが0.05~0.30wt.%、Bが0.95~1.05wt.%、残部がFe及び不可避的不純物であり、パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料における質量百分率を意味する、
ことを特徴とする請求項4に記載のR-T-B系永久磁石材料。
【請求項8】
前記R-T-B系永久磁石材料は、下記の成分を含み:Rが28.5~32.0wt.%、RHが3.2~4.5wt.%、Cuが0.04~0.08wt.%、Coが1.0~2.0wt.%、Gaが0.10~0.30wt.%、Bが0.95~1.0wt.%、残部がFe及び不可避的不純物であり、パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料における質量百分率を意味する、
ことを特徴とする請求項4に記載のR-T-B系永久磁石材料。
【請求項9】
前記R-T-B系永久磁石材料は、下記の成分を含み:Ndが24.4~28.0wt.%、Tbが3.0~4.0wt.%、Dyが0.5~1.0wt.%、Cuが0.01~0.08wt.%、Coが1.0~2.0wt.%、Gaが0.05~0.30wt.%、Bが0.95~1.05wt.%、残部がFe及び不可避的不純物であり、パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料における質量百分率を意味する、
ことを特徴とする請求項4に記載のR-T-B系永久磁石材料。
【請求項10】
前記R-T-B系永久磁石材料は、下記の成分を含み:Rが30.5~33.0wt.%、RHが1.5~2.5wt.%、Cuが0.04~0.08wt.%、Coが0.78~1.6wt.%、Gaが0.10~0.30wt.%、Bが0.95~1.0wt.%、残部がFe及び不可避的不純物であり、パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料における質量百分率を意味する、
ことを特徴とする請求項4に記載のR-T-B系永久磁石材料。
【請求項11】
前記R-T-B系永久磁石材料は、下記の成分を含み:Ndが28.0~30.5wt.%、Tbが1.5~2.5wt.%、Dyが0~0.5wt.%、Cuが0.01~0.08wt.%、Coが0.78~2.0wt.%、Gaが0.05~0.30wt.%、Bが0.95~1.05wt.%、残部がFe及び不可避的不純物であり、パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料における質量百分率を意味する、
ことを特徴とする請求項4に記載のR-T-B系永久磁石材料。
【請求項12】
R-T-B系永久磁石材料の製造方法であって、以下のステップを含み、
R-T-B系永久磁石材料の原料組成物の溶融液を鋳造、破砕、粉砕、成形、焼結、粒界拡散処理して、前記R-T-B系永久磁石材料を得ており、ここで、前記焼結は、以下のステップに従って順次に行われ、即ち、第1段階焼結、第2段階焼結及び冷却であり、前記第1段階焼結の温度は、≦1040℃であり、前記第2段階焼結は、前記第1段階焼結を基に昇温して焼結し、温度差は、≧5~10℃であり、前記昇温の速度は≧5℃/分であり、前記第2段階焼結の時間は、≦1hであり、前記冷却の速度は、≧7℃/分であり、前記冷却の終点は、≦100℃であり、
前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物は、質量百分率で下記の成分を含み:Rが28.5~32.5wt.%、RHが1.5~4.5wt.%、Cuが0~0.08wt.%、ただし0wt.%ではなく、Coが0.5~2.0wt.%、Gaが0.05~0.30wt.%、Bが0.95~1.05wt.%、残部がFe及び不可避的不純物であり、ここで、前記Rは希土類元素であり、前記Rには、少なくともNd及びRHが含まれ、前記RHは重希土類元素である、
ことを特徴とする請求項1~11のいずれか1項に記載のR-T-B系永久磁石材料の製造方法。
【請求項13】
前記Rには、Prがさらに含まれ、及び/又は、
前記RHは、Dy及び/又はTbであり、及び/又は、
前記Rの含有量は、28.5~31.5wt.%、30.5~32.5wt.%又は30.0~32.5wt.%であり、及び/又は、
前記Ndの含有量は、24.5~30.5wt.%であり、及び/又は、
前記RHの含有量は、1.5~2.0wt.%又は3.0~4.5wt.%であり、及び/又は、
前記RHにTbが含まれる場合、前記Tbの含有量は、1.2~4.5wt.%であり、及び/又は、
前記RHにDyが含まれる場合、前記Dyの含有量は、0~0.5wt.%であり、及び/又は、
前記Cuの含有量は、0.01~0.08wt.%、0.04~0.08wt.%又は0.05~0.08wt.%であり、及び/又は、
前記Coの含有量は、0.8~2.0wt.%であり、及び/又は、
前記Gaの含有量は、0.05又は0.1~0.3wt.%であり、及び/又は、
前記Bの含有量は、0.95~1.0又は1.05wt.%であり、
パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物における質量百分率を意味する、
ことを特徴とする請求項12に記載のR-T-B系永久磁石材料の製造方法。
【請求項14】
前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物は、下記の成分を含み:Rが28.5~31.5wt.%、RHが3.0~4.5wt.%、Cuが0~0.08wt.%、ただし0wt.%ではなく、Coが1.0~2.0wt.%、Gaが0.05~0.30wt.%、Bが0.95~1.05wt.%、残部がFe及び不可避的不純物であり、
パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物における質量百分率を意味する、
ことを特徴とする請求項12に記載のR-T-B系永久磁石材料の製造方法。
【請求項15】
前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物は、下記の成分を含み:Rが28.5~31.5wt.%、RHが3.2~4.5wt.%、Cuが0.04~0.08wt.%、Coが1.0~2.0wt.%、Gaが0.10~0.30wt.%、Bが0.95~1.0wt.%、残部がFe及び不可避的不純物であり、
パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物における質量百分率を意味する、
ことを特徴とする請求項12に記載のR-T-B系永久磁石材料の製造方法。
【請求項16】
前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物は、下記の成分を含み:Ndが24.5~28.0wt.%、Tbが3.0~4.0wt.%、Dyが0~0.5wt.%、Cuが0.01~0.08wt.%、Coが1.0~2.0wt.%、Gaが0.05~0.30wt.%、Bが0.95~1.05wt.%、残部がFe及び不可避的不純物であり、
パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物における質量百分率を意味する、
ことを特徴とする請求項12に記載のR-T-B系永久磁石材料の製造方法。
【請求項17】
前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物は、下記の成分を含み:Rが30.5~32.5wt.%、RHが1.5~2.0wt.%、Cuが0.04~0.08wt.%、Coが0.8~1.6wt.%、Gaが0.10~0.30wt.%、Bが0.95~1.0wt.%、残部がFe及び不可避的不純物であり、
パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物における質量百分率を意味する、
ことを特徴とする請求項12に記載のR-T-B系永久磁石材料の製造方法。
【請求項18】
前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物は、下記の成分を含み:Ndが28.5~30.5wt.%、Tbが1.5~2.0wt.%、Dyが0~0.5wt.%、Cuが0.01~0.08wt.%、Coが0.8~2.0wt.%、Gaが0.05~0.30wt.%、Bが0.95~1.05wt.%、残部がFe及び不可避的不純物であり、
パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物における質量百分率を意味する、
ことを特徴とする請求項12に記載のR-T-B系永久磁石材料の製造方法。
【請求項19】
前記RHは、Tbであり、及び/又は、
前記Rの含有量は、28.5wt.%、30.1wt.%、30.5wt.%、30.7wt.%、31.5wt.%、31.8wt.%又は32.5wt.%であり、及び/又は、
前記Ndの含有量は、24.5~28.0wt.%又は28.0~30.5wt.%であり、及び/又は、
前記RHの含有量は、1.5wt.%、1.8wt.%、2.0wt.%、3.2wt.%、3.5wt.%、3.6wt.%又は4.0wt.%であり、及び/又は、
前記RHにTbが含まれる場合、前記Tbの含有量は、1.5wt.%、1.8wt.%、2wt.%、3wt.%、3.2wt.%、3.6wt.%又は4wt.%であり、及び/又は、
前記RHにDyが含まれる場合、前記Dyの含有量は、0.5wt.%であり、及び/又は、
前記Cuの含有量は、0.01wt.%、0.04wt.%、0.06wt.%又は0.08wt.%であり、及び/又は、
前記Coの含有量は、1.0~2.0wt.%であり、及び/又は、
前記Gaの含有量は、0.1wt.%、0.2wt.%又は0.3wt.%であり、及び/又は、
前記Bの含有量は、0.95wt.%、0.98wt.%又は1.0wt.%であり、
パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物における質量百分率を意味する、
ことを特徴とする請求項13に記載のR-T-B系永久磁石材料の製造方法。
【請求項20】
前記Ndの含有量は、24.5wt.%、26.5wt.%、27.5wt.%、28.0wt.%、28.5wt.%、29.7wt.%、30.3wt.%又は30.5wt.%であり、
前記Coの含有量は、0.8wt.%、1.0wt.%、1.4wt.%、1.6wt.%又は2.0wt.%であり、
パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物における質量百分率を意味する、
ことを特徴とする請求項19に記載のR-T-B系永久磁石材料の製造方法。
【請求項21】
前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物の溶融液を以下の方法で製造し、即ち、高周波真空誘導溶解炉で溶解製錬し、
及び/又は、前記鋳造の工程は、以下のステップに従って行われ、即ち、Arガス雰囲気において、10
2℃/秒~10
4℃/秒の速度で冷却し、
及び/又は、前記破砕の工程は、以下のステップに従って行われ、即ち、水素吸収、脱水素、冷却処理を経り、
及び/又は、前記成形の方法は、磁場成形法またはホットプレス熱間成形法であり、
及び/又は、前記第1段階焼結の前に、さらに予熱の処理を行い、
及び/又は、前記第1段階焼結の温度は、1000~1030℃であり、
及び/又は、前記第1段階焼結の時間は、≧2hであり、
及び/又は、前記第2段階焼結において、前記温度差は、≧5~10℃且つ≦20℃であり、
及び/又は、前記第2段階焼結の時間は、1hであり、
及び/又は、前記焼結の工程では、前記冷却の速度は、10℃/分であり、
及び/又は、前記焼結の工程では、前記冷却の終点は、100℃であり、
及び/又は、前記冷却の前に、ガス圧が0.1MPaに達するようにArガスを導入し、
及び/又は、前記粒界拡散処理は、以下のステップに従って行われ、即ち、前記R-T-B系永久磁石材料の表面に、Dy又はTbを含有する物質を蒸着、塗布、またはスパッタ付着させて、拡散熱処理し、
及び/又は、前記粒界拡散処理の後に、さらに熱処理を行う、
ことを特徴とする請求項12に記載のR-T-B系永久磁石材料の製造方法。
【請求項22】
前記高周波真空誘導溶解炉の真空度は、5×10
-2Paであり、
及び/又は、前記溶解製錬の温度は、1500℃以下であり、
及び/又は、前記水素吸収は、水素ガス圧力0.15MPaの条件下で行い、
及び/又は、前記粉砕は、ジェットミル粉砕であり、前記ジェットミル粉砕の粉砕室圧力は、0.38MPaであり、前記ジェットミル粉砕の時間は、3時間であり、
及び/又は、前記予熱の温度は、300~600℃であり、
及び/又は、前記予熱の時間は、1~2hであり、
及び/又は、前記予熱は、300℃及び600℃の温度でそれぞれ1時間予熱し、
及び/又は、前記第1段階焼結の温度は、1030℃であり、
及び/又は、前記第1段階焼結の時間は、3hであり、
及び/又は、前記第2段階焼結において、前記温度差は、10℃であり、
及び/又は、前記拡散熱処理の温度は、850~980℃であり、前記拡散熱処理の時間は、12~48hであり、
及び/又は、前記熱処理の温度は、500℃であり、前記熱処理の時間は、3hであり、前記熱処理の環境は、9×10
-3Paの真空条件である、
ことを特徴とする請求項21に記載のR-T-B系永久磁石材料の製造方法。
【請求項23】
請求項1~11のいずれか1項に記載のR-T-B系永久磁石材料を含むことを特徴とするモーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、希土類永久磁石材料、原料組成物、製造方法、応用、モーターに関する。
【背景技術】
【0002】
R-T-B系希土類永久磁石材料は、現代工業及び電子技術において、例えば電子計算機、自動化制御システム、電動機及び発電機、核磁気共鳴イメージ計、音響機器、材料縁切り装置、通信機器等の様々な分野で広く利用されている。新たな応用分野の開拓及び応用条件の苛酷化に伴い、高い保磁力を有する製品に対する需要はますます多くなっている。
【0003】
従来、一般的に、R-T-B系希土類永久磁石材料の原料成分に、高融点金属(一般的に、融点が1538℃を超える金属を指す)、例えば、Nb、Zr、Ti、Cr、V、W及びMo等の元素を添加することで、磁石の保磁力(intrinsic coercivity、Hcjと略称する)を向上させる。これらの高融点金属元素を添加することにより、粒界をピン止めし、結晶粒を微細化する作用を果たし、磁石のHcjの向上をさらに実現することができるが、高融点金属元素を添加すると、焼結の工程により多くの要件が課せられ、焼結の難易度が高くなり、工程のコストを増加させ、磁石の残留磁束密度(remanence、Brと略称する)を低下させてしまうおそれがある。
【0004】
低融点金属を直接使用して焼結すると、磁気特性に不利な粒間化合物(結晶粒が異常に成長すること)を生成する可能性があり、焼結の工程の問題に起因して焼結緻密性が悪くなり(焼結不良)、永久磁石材料のBrが低くなるおそれがあるという研究もある。
【0005】
これから分かるように、従来の低融点金属成分では、永久磁石材料の磁石におけるBrとHcjを高いレベルで同時に維持することが困難である。したがって、如何にしてHcjが高く且つBrが高いR-T-B系希土類永久磁石材料を得るかは、本分野において早急に解決しなければならない課題となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする技術的課題は、従来技術におけるR-T-B系希土類永久磁石材料におけるBr及びHcjの同時改善が難しいという欠点を解決し、希土類永久磁石材料、原料組成物、製造方法、応用、モーターを提供することである。本発明におけるR-T-B系永久磁石材料は、性能が優れており、重希土類元素の含有量が3.0~4.5wt.%である条件下で、Br≧12.78kGs、Hcj≧29.55kOeとなり、重希土類元素の含有量が1.5~2.5wt.%である条件下で、Br≧13.06kGs、Hcj≧26.31kOeとなり、Br及びHcjの同時改善を実現することができる。従来の成分と比べて、本発明におけるR-T-B系永久磁石材料の成分には、高融点金属を添加することなく、少量の低融点金属のみを使用し、磁石のHcjを向上させると共に、磁石のBrへの影響を可能な限り低減する。また、本発明におけるR-T-B系永久磁石材料の製造では、低温度焼結を実現し、エネルギー消費を低減し、成分と工程を設計することにより、粒界においてRx-(B1-a-b-c-Gaa-Cub-Tc)y結晶相を形成し、粒界の形態を改良し、連続的な粒界のチャネルを形成し、磁石の性能をさらに向上させる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明には、R-T-B系永久磁石材料が提供され、質量百分率で下記の成分を含み、
R:28.5~33.0wt.%、
RH:>1.5wt.%、
Cu:0~0.08wt.%、ただし、0wt.%ではなく、
Co:0.5~2.0wt.%、
Ga:0.05~0.30wt.%、
B:0.95~1.05wt.%、
残部:Fe及び不可避的不純物、
ここで、前記Rは希土類元素であり、前記Rには、少なくともNd及びRHが含まれ、前記RHは重希土類元素である。
【0008】
本発明において、好ましくは、前記R-T-B系永久磁石材料には、高融点金属元素を含有しない。ここで、前記高融点金属元素とは、一般的に、融点が1538°Cを超える金属元素であり、例えば、Ti、V、Zr、Nb、Cr、W及びMoのうちの1種又は複数種である。
【0009】
本発明において、好ましくは、前記R-T-B系永久磁石材料は、R2T14B結晶粒及びR2T14B結晶粒間の粒界相を含み、前記粒界相の組成は、Rx-(B1-a-b-c-Gaa-Cub-Tc)yであり、ここで、TはFe及びCoであり、2b<a<3.5b、1/2c<a+b、50at%<x<65at%、35at%<y<50at%であり、at%とは、前記粒界相において各元素が占める原子パーセントを意味する。
【0010】
発明者は、研究開発過程において、Rx-(B1-a-b-c-Gaa-Cub-Tc)y粒界相を形成することで、粒界の濡れ性を高め、粒界の形態を改良し、且つ、拡散過程に対し連続的な粒界のチャネルを提供し、Hcjを向上させ、Brが高く且つがHcj高い永久磁石材料を得ることができることを発見した。
【0011】
また、発明者は、Rx-(B1-a-b-c-Gaa-Cub-Tc)y粒界相が比較的均衡的なRとTの組成を有し、粒界におけるNdリッチ相とBリッチ相のいずれとも優れた相互溶解効果を有し、粒界相の凝集を低減し、均一に分布する粒界層を形成し、良好な消磁結合効果を達成し、磁石のHcjをさらに向上させることができることをさらに発見した。
【0012】
ここで、前記粒界相において、前記xは、55~60at%であることが好ましく、例えば、55.6at%、56.7at%、56.9at%、57at%、58.6at%、59at%、59.1at%又は59.5at%であり、at%とは、前記粒界相においてRが占める原子パーセントを意味する。
【0013】
ここで、前記粒界相において、前記yは、40~45at%であることが好ましく、例えば、40.5at%、40.9at%、41at%、41.4at%、43at%、43.1at%、43.3at%又は44.4at%であり、at%とは、前記粒界相において「B、Ga、Cu、Fe及びCo」が占める原子パーセントを意味する。
【0014】
ここで、前記粒界相において、前記aは、0.23~0.24であることが好ましく、例えば、0.23、0.235又は0.24であり、前記aとは、元素「B、Ga、Cu、Fe及びCo」において前記Gaが占める原子パーセントを意味する。
【0015】
ここで、前記粒界相において、前記bは、0.1~0.115であることが好ましく、例えば、0.1、0.103、0.11又は0.115であり、前記bとは、元素「B、Ga、Cu、Fe及びCo」において前記Cuが占める原子パーセントを意味する。
【0016】
ここで、前記粒界相において、前記cは、0.64~0.65であることが好ましく、例えば、0.64、0.644又は0.65であり、前記cとは、元素「B、Ga、Cu、Fe及びCo」において前記Fe及びCoが占める原子パーセントを意味する。
【0017】
ここで、好ましくは、前記Rx-(B1-a-b-c-Gaa-Cub-Tc)yは、R55.6-(B0.01-Ga0.235-Cu0.115-T0.64)44.4、R56.9-(B0.02-Ga0.23-Cu0.11-T0.64)43.1、R59-(B0.02-Ga0.24-Cu0.1-T0.64)41、R59.1-(B0.02-Ga0.23-Cu0.11-T0.64)40.9、R56.7-(B0.02-Ga0.23-Cu0.1-T0.65)43.3、R57-(B0.02-Ga0.23-Cu0.1-T0.65)43、R58.6-(B0.02-Ga0.23-Cu0.11-T0.64)41.4又はR59.5-(B0.023-Ga0.23-Cu0.103-T0.644)40.5である。
【0018】
本発明において、前記Rには、本分野における通常の希土類元素、例えばPrがさらに含まれていてもよい。
【0019】
本発明において、前記RHは、本分野における通常の重希土類元素、例えばDy及び/又はTbであってもよく、Tbであることが好ましい。
【0020】
本発明において、前記Rの含有量は、好ましくは28.5~32.0wt.%又は30.5~33.0wt.%であり、例えば、28.94wt.%、30.53wt.%、30.66wt.%、31.09wt.%、31.83wt.%、31.92wt.%、32.23wt.%又は32.86wt.%であり、パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0021】
本発明において、前記Ndの含有量は、好ましくは24.4~30.5wt.%であり、例えば、24.4~28.0wt.%又は28.0~30.5wt.%であり、さらに例えば、24.46wt.%、26.4wt.%、27.39wt.%、27.94wt.%、28.36wt.%、29.58wt.%、30.24wt.%又は30.36wt.%であり、パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0022】
本発明において、前記RHの含有量は、好ましくは1.5~4.5wt.%であり、より好ましくは1.5~2.5wt.%又は3.0~4.5wt.%であり、例えば、1.99wt.%、2.25wt.%、2.3wt.%、2.5wt.%、3.7wt.%、3.98wt.%、4.13wt.%又は4.48wt.%であり、パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0023】
前記RHにTbが含まれる場合、好ましくは、前記Tbの含有量は、1.5~4.5wt.%であり、例えば、1.99wt.%、2.01wt.%、2.25wt.%、2.3wt.%、2.99wt.%、3.19wt.%、3.61wt.%又は3.98wt.%である。
【0024】
前記RHにDyが含まれる場合、好ましくは、前記Dyの含有量は、0.45~1.0wt.%であり、例えば、0.5wt.%、0.52wt.%、0.51wt.%、0.99wt.%又は0.49wt.%であり、パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0025】
本発明において、前記Cuの含有量は、好ましくは0.01~0.08wt.%、0.04~0.08wt.%又は0.05~0.08wt.%であり、例えば、0.01wt.%、0.05wt.%、0.06wt.%、0.07wt.%又は0.08wt.%であり、パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0026】
本発明において、前記Coの含有量は、好ましくは0.78~2.0wt.%であり、例えば、1.0~2.0wt.%であり、さらに例えば、0.79wt.%、0.99wt.%、1wt.%、1.39wt.%、1.58wt.%、1.6wt.%又は2wt.%であり、パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0027】
本発明において、前記Gaの含有量は、好ましくは0.05又は0.1~0.3wt.%であり、例えば、0.1wt.%、0.2wt.%又は0.3wt.%であり、パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0028】
本発明において、前記Bの含有量は、好ましくは0.95~1.04wt.%であり、例えば、0.95wt.%、0.98wt.%、0.99wt.%又は1.04wt.%であり、パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0029】
本発明において、好ましくは、前記R-T-B系永久磁石材料は、下記の成分を含み:Rが28.5~32.0wt.%、RHが3.0~4.5wt.%、Cuが0~0.08wt.%、ただし0wt.%ではなく、Coが1.0~2.0wt.%、Gaが0.05~0.30wt.%、Bが0.95~1.05wt.%、残部がFe及び不可避的不純物であり、パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0030】
本発明において、好ましくは、前記R-T-B系永久磁石材料は、下記の成分を含み:Rが28.5~32.0wt.%、RHが3.2~4.5wt.%、Cuが0.04~0.08wt.%、Coが1.0~2.0wt.%、Gaが0.10~0.30wt.%、Bが0.95~1.0wt.%、残部がFe及び不可避的不純物であり、パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0031】
本発明において、好ましくは、前記R-T-B系永久磁石材料は、下記の成分を含み:Ndが24.4~28.0wt.%、Tbが3.0~4.0wt.%、Dyが0.5~1.0wt.%、Cuが0.01~0.08wt.%、Coが1.0~2.0wt.%、Gaが0.05~0.30wt.%、Bが0.95~1.05wt.%、残部がFe及び不可避的不純物であり、パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0032】
本発明の一つの好ましい実施形態において、前記R-T-B系永久磁石材料は、下記の成分を含み:Ndが24.46wt.%、Tbが3.98wt.%、Dyが0.50wt.%、Cuが0.07wt.%、Coが2.00wt.%、Gaが0.30wt.%、Bが0.95wt.%、残部がFe及び不可避的不純物であり、パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0033】
本発明の一つの好ましい実施形態において、前記R-T-B系永久磁石材料は、下記の成分を含み:Ndが26.40wt.%、Tbが3.61wt.%、Dyが0.52wt.%、Cuが0.06wt.%、Coが1.58wt.%、Gaが0.20wt.%、Bが0.98wt.%、残部がFe及び不可避的不純物であり、パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0034】
本発明の一つの好ましい実施形態において、前記R-T-B系永久磁石材料は、下記の成分を含み:Ndが27.39wt.%、Tbが3.19wt.%、Dyが0.51wt.%、Cuが0.05wt.%、Coが1.39wt.%、Gaが0.10wt.%、Bが0.99wt.%、残部がFe及び不可避的不純物であり、パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0035】
本発明の一つの好ましい実施形態において、前記R-T-B系永久磁石材料は、下記の成分を含み:Ndが27.94wt.%、Tbが2.99wt.%、Dyが0.99wt.%、Cuが0.01wt.%、Coが1.00wt.%、Gaが0.05wt.%、Bが1.04wt.%、残部がFe及び不可避的不純物であり、パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0036】
本発明において、好ましくは、前記R-T-B系永久磁石材料は、下記の成分を含み:Rが30.5~33.0wt.%、RH>1.5wt.%、Cuが0~0.08wt.%、ただし0wt.%ではなく、Coが0.78~2.0wt.%、Gaが0.05~0.30wt.%、Bが0.95~1.05wt.%、残部がFe及び不可避的不純物であり、パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0037】
本発明において、好ましくは、前記R-T-B系永久磁石材料は、下記の成分を含み:Rが30.5~33.0wt.%、RHが1.5~2.5wt.%、Cuが0.04~0.08wt.%、Coが0.78~1.6wt.%、Gaが0.10~0.30wt.%、Bが0.95~1.0wt.%、残部がFe及び不可避的不純物であり、パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0038】
本発明において、好ましくは、前記R-T-B系永久磁石材料は、下記の成分を含み:Ndが28.0~30.5wt.%、Tbが1.5~2.5wt.%、Dyが0~0.5wt.%、Cuが0.01~0.08wt.%、Coが0.78~2.0wt.%、Gaが0.05~0.30wt.%、Bが0.95~1.05wt.%、残部がFe及び不可避的不純物であり、パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0039】
本発明の一つの好ましい実施形態において、前記R-T-B系永久磁石材料は、下記の成分を含み:Ndが28.36wt.%、Tbが2.30wt.%、Cuが0.08wt.%、Coが2.00wt.%、Gaが0.30wt.%、Bが0.95wt.%、残部がFe及び不可避的不純物であり、パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0040】
本発明の一つの好ましい実施形態において、前記R-T-B系永久磁石材料は、下記の成分を含み:Ndが29.58wt.%、Tbが2.25wt.%、Cuが0.06wt.%、Coが1.60wt.%、Gaが0.20wt.%、Bが0.98wt.%、残部がFe及び不可避的不純物であり、パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0041】
本発明の一つの好ましい実施形態において、前記R-T-B系永久磁石材料は、下記の成分を含み:Ndが30.24wt.%、Tbが1.99wt.%、Cuが0.05wt.%、Coが0.99wt.%、Gaが0.10wt.%、Bが0.99wt.%、残部がFe及び不可避的不純物であり、パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0042】
本発明の一つの好ましい実施形態において、前記R-T-B系永久磁石材料は、下記の成分を含み:Ndが30.36wt.%、Tbが2.01wt.%、Dyが0.49wt.%、Cuが0.01wt.%、Coが0.79wt.%、Gaが0.05wt.%、Bが1.04wt.%、残部がFe及び不可避的不純物であり、パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0043】
本発明には、R-T-B系永久磁石材料がさらに提供され、前記R-T-B系永久磁石材料は、R2T14B結晶粒及びR2T14B結晶粒間の粒界相を含み、前記粒界相の組成は、Rx-(B1-a-b-c-Gaa-Cub-Tc)yであり、ここで、TはFe及びCoであり、2b<a<3.5b、1/2c<a+b、50at%<x<65at%、35at%<y<50at%であり、at%とは、前記粒界相において各元素が占める原子パーセントを意味する。
【0044】
前記Rは、希土類元素であり、前記Rには、少なくともNd及びRHが含まれ、前記RHは、重希土類元素である。
【0045】
ここで、前記x、前記y、前記a、前記b及び前記cはいずれも前述したものである。
【0046】
ここで、好ましくは、前記Rx-(B1-a-b-c-Gaa-Cub-Tc)yは、R55.6-(B0.01-Ga0.235-Cu0.115-T0.64)44.4、R56.9-(B0.02-Ga0.23-Cu0.11-T0.64)43.1、R59-(B0.02-Ga0.24-Cu0.1-T0.64)41、R59.1-(B0.02-Ga0.23-Cu0.11-T0.64)40.9、R56.7-(B0.02-Ga0.23-Cu0.1-T0.65)43.3、R57-(B0.02-Ga0.23-Cu0.1-T0.65)43、R58.6-(B0.02-Ga0.23-Cu0.11-T0.64)41.4又はR59.5-(B0.023-Ga0.23-Cu0.103-T0.644)40.5である。
【0047】
ここで、好ましくは、前記R-T-B系永久磁石材料において、質量百分率で下記の成分を含み、
R:28.5~33.0wt.%、
RH:>1.5wt.%、
Cu:0~0.08wt.%、ただし、0wt.%ではなく、
Co:0.5~2.0wt.%、
Ga:0.05~0.30wt.%、
B:0.95~1.05wt.%、
残部:Fe及び不可避的不純物、
前記Rは希土類元素であり、前記Rには、少なくともNd及びRHが含まれ、前記RHは重希土類元素である。
【0048】
前記R、前記RH、前記Cu、前記Co、前記Ga、前記B及び前記Ndの含有量はいずれも前述したものである。
【0049】
本発明には、R-T-B系永久磁石材料の原料組成物がさらに提供され、質量百分率で下記の成分を含み、
R:28.5~32.5wt.%、
RH:>1.2wt.%、
Cu:0~0.08wt.%、ただし、0wt.%ではなく、
Co:0.5~2.0wt.%、
Ga:0.05~0.30wt.%、
B:0.95~1.05wt.%、
残部:Fe及び不可避的不純物、
ここで、前記Rは希土類元素であり、前記Rには、少なくともNd及びRHが含まれ、前記RHは重希土類元素である。
【0050】
本発明において、前記Rには、本分野における通常の希土類元素、例えばPrがさらに含まれていてもよい。
【0051】
本発明において、前記RHは、本分野における通常の重希土類元素、例えばDy及び/又はTbであってもよく、Tbであることが好ましい。
【0052】
本発明において、前記Rの含有量は、好ましくは28.5~31.5wt.%、30.5~32.5wt.%又は30.0~32.5wt.%であり、例えば、28.5wt.%、30.1wt.%、30.5wt.%、30.7wt.%、31.5wt.%、31.8wt.%又は32.5wt.%であり、パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物における質量百分率を意味する。
【0053】
本発明の永久磁石材料において、Rの含有量が28.5wt.%未満であると、十分な希土類リッチ相を得ることができず、焼結の工程に対する要求が高くなり、焼結が困難になり、永久磁石材料の性能を低下させてしまうおそれがある。Rの含有量が32.5wt.%を超えると、希土類の含有量が高くなるが、より高いBrを達成することが困難になり、希土類資源の無駄を引き起こしてしまうおそれがある。
【0054】
本発明において、前記Ndの含有量は、好ましくは24.5~30.5wt.%であり、例えば、24.5~28.0wt.%或28.0~30.5wt.%であり、さらに例えば、24.5wt.%、26.5wt.%、27.5wt.%、28.0wt.%、28.5wt.%、29.7wt.%、30.3wt.%又は30.5wt.%であり、パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物における質量百分率を意味する。
【0055】
本発明において、前記RHの含有量は、好ましくは1.2~4.5wt.%であり、より好ましくは1.2~2.0wt.%又は3.0~4.5wt.%であり、例えば、1.5wt.%、1.8wt.%、2.0wt.%、3.2wt.%、3.5wt.%、3.6wt.%又は4.0wt.%であり、パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物における質量百分率を意味する。
【0056】
前記RHにTbが含まれる場合、好ましくは、前記Tbの含有量は、1.2~4.5wt.%であり、例えば、1.5wt.%、1.8wt.%、2wt.%、3wt.%、3.2wt.%、3.6wt.%又は4wt.%であり、パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物における質量百分率を意味する。
【0057】
前記RHにDyが含まれる場合、好ましくは、前記Dyの含有量は、0~0.5wt.%であり、例えば、0.5wt.%である。
【0058】
前記RHにTb及びDyが含まれる場合、好ましくは、前記Tbの含有量は、1.2~3.0wt.%であり、前記Dyの含有量は、0~0.5wt.%であり、例えば、Tbが3.0wt.%、Dyが0.5wt.%であり、又は、Tbが1.5wt.%、Dyが0.5wt.%であり、パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物における質量百分率を意味する。
【0059】
本発明において、前記Cuの含有量は、好ましくは0.01~0.08wt.%、0.04~0.08wt.%又は0.05~0.08wt.%であり、例えば、0.01wt.%、0.04wt.%、0.06wt.%又は0.08wt.%であり、パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物における質量百分率を意味する。
【0060】
本発明の永久磁石材料において、Cuが含まないと、Rx-(B1-a-b-c-Gaa-Cub-Tc)y相を形成できず、Hcjが高い永久磁石材料を得ることができない。Cuの含有量が0.08wt.%を超えると、主相の体積分率に影響を及ぼしてしまい、Brが高い永久磁石材料を得ることができない。
【0061】
本発明において、前記Coの含有量は、好ましくは0.8~2.0wt.%であり、例えば、1.0~2.0wt.%であり、さらに例えば、0.8wt.%、1.0wt.%、1.4wt.%、1.6wt.%又は2.0wt.%であり、パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物における質量百分率を意味する。
【0062】
本発明において、前記Gaの含有量は、好ましくは0.05又は0.1~0.3wt.%であり、例えば、0.1wt.%、0.2wt.%又は0.3wt.%であり、パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物における質量百分率を意味する。
【0063】
本発明の永久磁石材料において、Gaの含有量が0.05wt.%未満であると、Rx-(B1-a-b-c-Gaa-Cub-Tc)y粒界相を効果的に形成できず、Hcjが高い永久磁石材料を得ることができない。Gaの含有量が0.3wt.%を超えると、主相の体積分率に影響を及ぼしてしまい、Brが高い永久磁石材料を得ることができない。
【0064】
本発明において、前記Bの含有量は、好ましくは0.95~1.0又は1.05wt.%であり、例えば、0.95wt.%、0.98wt.%又は1.0wt.%であり、パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物における質量百分率を意味する。
【0065】
本発明の永久磁石材料において、Bの含有量が主相の体積分率と密接に関わっており、Rx-(B1-a-b-c-Gaa-Cub-Tc)y粒界相の形成に影響を及ぼすことができる。Bの含有量が0.95wt.%未満であると、R2T17相を生成する可能性があり、主相の体積分率が低下し、Hcjが高く且つBrが高い永久磁石材料を得ることができない。Bの含有量が1.05wt.%を超えると、過剰なBリッチ相を生成し、永久磁石材料の性能を低下させてしまう。
【0066】
本発明において、好ましくは、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物は、下記の成分を含み:Rが28.5~31.5wt.%、RHが3.0~4.5wt.%、Cuが0~0.08wt.%、ただし0wt.%ではなく、Coが1.0~2.0wt.%、Gaが0.05~0.30wt.%、Bが0.95~1.05wt.%、残部がFe及び不可避的不純物であり、パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物における質量百分率を意味する。
【0067】
本発明において、好ましくは、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物は、下記の成分を含み:Rが28.5~31.5wt.%、RHが3.2~4.5wt.%、Cuが0.04~0.08wt.%、Coが1.0~2.0wt.%、Gaが0.10~0.30wt.%、Bが0.95~1.0wt.%、残部がFe及び不可避的不純物であり、パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物における質量百分率を意味する。
【0068】
本発明において、好ましくは、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物は、下記の成分を含み:Ndが24.5~28.0wt.%、Tbが3.0~4.0wt.%、Dyが0~0.5wt.%、Cuが0.01~0.08wt.%、Coが1.0~2.0wt.%、Gaが0.05~0.30wt.%、Bが0.95~1.05wt.%、残部がFe及び不可避的不純物であり、パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物における質量百分率を意味する。
【0069】
本発明の一つの好ましい実施形態において、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物は、下記の成分を含み:Ndが24.5wt.%、Tbが4wt.%、Cuが0.08wt.%、Coが2wt.%、Gaが0.3wt.%、Bが0.95wt.%、残部がFe及び不可避的不純物であり、パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物における質量百分率を意味する。
【0070】
本発明の一つの好ましい実施形態において、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物は、下記の成分を含み:Ndが26.5wt.%、Tbが3.6wt.%、Cuが0.06wt.%、Coが1.6wt.%、Gaが0.2wt.%、Bが0.98wt.%、残部がFe及び不可避的不純物であり、パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物における質量百分率を意味する。
【0071】
本発明の一つの好ましい実施形態において、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物は、下記の成分を含み:Ndが27.5wt.%、Tbが3.2wt.%、Cuが0.04wt.%、Coが1.4wt.%、Gaが0.1wt.%、Bが1wt.%、残部がFe及び不可避的不純物であり、パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物における質量百分率を意味する。
【0072】
本発明の一つの好ましい実施形態において、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物は、下記の成分を含み:Ndが28wt.%、Tbが3wt.%、Dyが0.5wt.%、Cuが0.01wt.%、Coが1wt.%、Gaが0.05wt.%、Bが1.05wt.%、残部がFe及び不可避的不純物であり、パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物における質量百分率を意味する。
【0073】
本発明において、好ましくは、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物は、下記の成分を含み:Rが30.5~32.5wt.%、RH>1.2wt.%、Cuが0~0.08wt.%、ただし0wt.%ではなく、Coが0.8~2.0wt.%、Gaが0.05~0.30wt.%、Bが0.95~1.05wt.%、残部がFe及び不可避的不純物であり、パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物における質量百分率を意味する。
【0074】
本発明において、好ましくは、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物は、下記の成分を含み:Rが30.5~32.5wt.%、RHが1.2~2.0wt.%、Cuが0.04~0.08wt.%、Coが0.8~1.6wt.%、Gaが0.10~0.30wt.%、Bが0.95~1.0wt.%、残部がFe及び不可避的不純物であり、パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物における質量百分率を意味する。
【0075】
本発明において、好ましくは、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物は、下記の成分を含み:Ndが28.5~30.5wt.%、Tbが1.2~2.0wt.%、Dyが0~0.5wt.%、Cuが0.01~0.08wt.%、Coが0.8~2.0wt.%、Gaが0.05~0.30wt.%、Bが0.95~1.05wt.%、残部がFe及び不可避的不純物であり、パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物における質量百分率を意味する。
【0076】
本発明の一つの好ましい実施形態において、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物は、下記の成分を含み:Ndが28.5wt.%、Tbが2.0wt.%、Cuが0.08wt.%、Coが2.0wt.%、Gaが0.3wt.%、Bが0.95wt.%、残部がFe及び不可避的不純物であり、パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物における質量百分率を意味する。
【0077】
本発明の一つの好ましい実施形態において、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物は、下記の成分を含み:Ndが29.7wt.%、Tbが1.8wt.%、Cuが0.06wt.%、Coが1.6wt.%、Gaが0.2wt.%、Bが0.98wt.%、残部がFe及び不可避的不純物であり、パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物における質量百分率を意味する。
【0078】
本発明の一つの好ましい実施形態において、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物は、下記の成分を含み:Ndが30.3wt.%、Tbが1.5wt.%、Cuが0.04wt.%、Coが1wt.%、Gaが0.1wt.%、Bが1.0wt.%、残部がFe及び不可避的不純物であり、パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物における質量百分率を意味する。
【0079】
本発明の一つの好ましい実施形態において、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物は、下記の成分を含み:Ndが30.5wt.%、Tbが1.5wt.%、Dyが0.5wt.%、Cuが0.01wt.%、Coが0.8wt.%、Gaが0.05wt.%、Bが1.05wt.%、残部がFe及び不可避的不純物であり、パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物における質量百分率を意味する。
【0080】
本発明には、R-T-B系永久磁石材料の製造方法がさらに提供され、下記のステップを含み:前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物の溶融液を鋳造、破砕、粉砕、成形、焼結、粒界拡散処理して、前記R-T-B系永久磁石材料を得る。
【0081】
ここで、前記焼結は、以下のステップに従って順次に行い:第1段階焼結、第2段階焼結及び冷却。
【0082】
前記第1段階焼結の温度は、≦1040℃である。
【0083】
前記第2段階焼結は、前記第1段階焼結を基に昇温して焼結し、温度差は、≧5~10℃であり、前記昇温の速度は≧5℃/分であり、前記第2段階焼結の時間は、≦1hである。
【0084】
前記冷却の速度は、≧7℃/分であり、前記冷却の終点は、≦100℃である。
【0085】
本発明において、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物の溶融液を本分野における通常の方法で製造することができ、例えば、高周波真空誘導溶解炉で溶解製錬すればよい。前記溶解炉の真空度は、5×10-2Paであってもよい。前記溶解製錬の温度は、1500℃以下であってもよい。
【0086】
本発明において、前記鋳造の工程は、本分野における通常の鋳造工程であることができ、例えば、Arガス雰囲気(例えば5.5×104PaのArガス雰囲気下)において、102℃/秒~104℃/秒の速度で冷却すればよい。
【0087】
本発明において、前記破砕の工程は、本分野における通常の破砕工程であることができ、例えば、水素吸収、脱水素、冷却処理を経ていればよい。
【0088】
ここで、前記水素吸収は、水素ガス圧力0.15MPaの条件下で行うことができる。
【0089】
ここで、前記脱水素は、真空引きしながら昇温する条件で行うことができる。
【0090】
本発明において、前記粉砕の工程は、本分野における通常の粉砕工程であることができ、例えば、ジェットミル粉砕である。
【0091】
ここで、前記ジェットミル粉砕は、酸化ガス含有量が150ppm以下の窒素ガス雰囲気下で行うことができる。前記酸化ガスは、酸素または水分の含有量を意味する。
【0092】
ここで、前記ジェットミル粉砕の粉砕室圧力は、0.38MPaとすることができる。
【0093】
ここで、前記ジェットミル粉砕の時間は、3時間とすることができる。
【0094】
ここで、前記粉砕を行った後、本分野における通常の方法で潤滑剤を添加することができ、例えば、ステアリン酸亜鉛を添加する。前記潤滑剤の添加量は、混合後の粉末重量の0.10~0.15%、例えば0.12%とすることができる。
【0095】
本発明において、前記成形の工程は、本分野における通常の成形工程であることができ、例えば、磁場成形法またはホットプレス熱間成形法である。
【0096】
本発明において、前記焼結は、真空条件下、例えば5×10-3Paの真空条件下で行うことができる。
【0097】
本発明において、前記第1段階焼結の前に、本分野における通常の方法で予熱することができる。前記予熱の温度は、300~600℃であってもよい。前記予熱の時間は、1~2hとすることができる。前記予熱は、300℃及び600℃の温度でそれぞれ1時間予熱することが好ましい。
【0098】
本発明において、前記第1段階焼結の温度は、1000~1030℃であることが好ましく、例えば、1030℃である。
【0099】
本発明において、前記第1段階焼結の時間は、≧2hであることが好ましく、例えば3hである。
【0100】
本発明において、好ましくは、前記第2段階焼結において、前記温度差は、≧5~10℃且つ≦20℃であり、例えば、10℃である。
【0101】
本発明において、前記第2段階焼結の時間は、1hであることが好ましい。
【0102】
本発明において、前記焼結の工程では、前記冷却の速度は、10℃/分であることが好ましい。
【0103】
本発明において、前記焼結の工程では、前記冷却の終点は、100℃であることが好ましい。
【0104】
発明者は、研究開発過程において、前記第1段階焼結を行う時に、少量の残部Bが粒界に分散的に分布しており、粒界相Rx-(B1-a-b-c-Gaa-Cub-Tc)yの形成を促進することができる。二段階の焼結工程及び急速冷却工程を組み合わせることで、主相の緻密性を向上させるだけでなく、温度の急速な変化により粒界に圧力を提供し、粒界相を均一に広げて分布でき、少量の粒界相で最良な組織形態の効果を達成することを発見した。
【0105】
発明者は、研究開発過程において、前記第1段階焼結の工程のみを使用すると、磁石の緻密性が不十分になり、粒界相の形態が望ましい効果を達成できず、Brが高く且つHcjが高い永久磁石材料を得ることができない。前記第2段階焼結の工程のみを使用すると、結晶粒が異常に成長し、磁石の性能を悪化してしまうおそれがあることをさらに発見した。
【0106】
本発明において、前記冷却の前に、ガス圧が0.1MPaに達するようにArガスを導入することができる。
【0107】
本発明において、前記粒界拡散処理は、本分野における通常の工程で処理を行うことができ、例えば、前記R-T-B系永久磁石材料の表面に、Dy又はTbを含有する物質を蒸着、塗布、またはスパッタ付着させて、拡散熱処理すればよい。
【0108】
ここで、前記Dyを含有する物質は、Dy金属、Dyを含有する化合物(例えば、Dyフッ化物)又はDyを含有する合金であってもよい。
【0109】
ここで、前記Tbを含有する物質は、Tb金属、Tbを含有する化合物(例えば、Tbフッ化物)又はTbを含有する合金であってもよい。
【0110】
ここで、前記拡散熱処理の温度は、850~980℃、例えば850℃であってもよい。
【0111】
ここで、前記拡散熱処理の時間は、12~48h、例えば24hであってもよい。
【0112】
ここで、前記粒界拡散処理の後に、さらに熱処理を行うことができる。前記熱処理の温度は、500℃とすることができる。前記熱処理の時間は、3hとすることができる。前記熱処理の環境は、9×10-3Paの真空条件であることができる。
【0113】
本発明には、前記方法で製造されたR-T-B系永久磁石材料がさらに提供される。
【0114】
本発明には、前記R-T-B系永久磁石材料がモーターにおいて電子部品としての応用がさらに提供される。
【0115】
ここで、前記応用は、モーター回転数3000~7000rpm及び/又はモーター作動温度80~180℃のモーターにおいて電子部品としての応用であることが好ましく、例えば、高回転モーター及び/又は家電製品での電子部品としての応用である。
【0116】
本発明には、上記のようなR-T-B系永久磁石材料を含むモーターがさらに提供される。
【0117】
本分野の常識に適合した上で、上記の各好ましい条件を任意に組み合わせれば、本発明の各好適な実施例を得ることができる。
【0118】
本発明に使用されている試薬及び原料は、いずれも市販されている。
【発明の効果】
【0119】
本発明の積極的な進歩的効果は、以下の点にある。
(1)本発明におけるR-T-B系永久磁石材料は、性能が優れており、永久磁石材料における重希土類元素の含有量が3.0~4.5wt.%である条件下で、Br≧12.78kGs、Hcj≧29.55kOeとなり、永久磁石材料における重希土類元素の含有量が1.5~2.5wt.%である条件下で、Br≧13.06kGs、Hcj≧26.31kOeとなり、Br及びHcjの同時改善を実現することができる。
(2)本発明におけるR-T-B系永久磁石材料の製造では、低温度焼結を実現し、エネルギー消費を低減し、焼結且つ冷却した結果、粒界においてRx-(B1-a-b-c-Gaa-Cub-Tc)y結晶相を形成し、粒界の形態を改良し、連続的な粒界のチャネルを形成し、磁石の性能をさらに向上させる。
(3)本発明の磁石にTbを添加することで、磁石が優れた温度係数を有することを確保することができる。Dyの拡散過程において、一部のTbが主相から粒界に入り、Hcjを向上させると共に、Brの低下を可能な限り回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【
図1】
図1は、実施例2で製造された磁石におけるNd、B、Ga、Co及びCu等の元素が粒界に形成されたR
x-(B
1-a-b-c-Ga
a-Cu
b-T
c)
y粒界相である。
【
図2】
図2は、実施例2で製造された磁石であり、ここで、番号1で付された位置を、粒界相の成分を検出するための分析点として使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0121】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明を実施例の範囲に制限するものではない。以下の実施例において、具体的な条件が明記されない実験方法は、通常の方法及び条件に従って、又は商品仕様書に応じて選択される。以下の表において、wt.%とは、成分の前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物における質量百分率を意味する。「/」は、当該元素が添加されていないことを表す。「Br」は、残留磁束密度であり、「Hcj」は、保磁力である。
【0122】
実施例1
R-T-B系永久磁石材料の製造方法は、以下の通りである。
【0123】
(1)溶解製錬の工程:表1における実施例1に示される成分に従って、調製した原料をアルミナ製の坩堝に入れ、高周波真空誘導溶解炉において5×10-2Paの真空中で1500℃以下の温度で真空溶解製錬する。
【0124】
(2)鋳造の工程:真空溶解製錬した後の溶解炉にArガスを導入し、気圧を5.5万Paにした後に鋳造し、102℃/秒~104℃/秒の冷却速度で急冷合金を得る。
【0125】
(3)水素破砕工程:急冷合金を置く水素破砕用炉を室温で真空引きした後、純度99.9%の水素ガスを水素破砕用炉内に導入して水素ガス圧力を0.15MPaに維持する。水素吸収を十分に行った後、真空引きしながら昇温し、十分に脱水素する。その後、冷却し、水素破砕した粉末を取り出す。
【0126】
(4)ジェットミル工程:水素破砕した粉末を、酸化ガス含有量150ppm以下の窒素ガス雰囲気下及び粉砕室圧力0.38MPaの条件下で3時間のジェットミル粉砕し、微粉を得る。酸化ガスは、酸素又は水分を指す。
【0127】
(5)ジェットミル粉砕した後の粉末にステアリン酸亜鉛を添加し、ステアリン酸亜鉛の添加量を混合後の粉末重量の0.12%として、Vブレンダーで十分に混合する。
【0128】
(6)磁場成形の工程:上記のステアリン酸亜鉛を添加した粉末を、直角配向型の磁場成形機を用いて、1.6Tの配向磁場中及び0.35ton/cm2の成形圧力で、一辺が25mmの立方体に一次成形し、一次成形後、0.2Tの磁場で減磁する。一次成形後の成形体を空気に触れさせないように、それをシールし、その後、二次成形機(静水圧成形機)を用いて、1.3ton/cm2の圧力で二次成形を行う。
【0129】
(7)焼結の工程:各成形体を焼結炉に搬送して焼結し、5×10-3Paの真空下且つ300℃及び600℃の温度でそれぞれ1時間を保持し、その後、1030℃の温度で3時間焼結し、そして、1040℃の温度で1時間焼結してから、Arガスを導入して0.1MPaまでガス圧を到達させた後、10℃/分の冷却速度で100℃まで冷却する。
【0130】
(8)粒界拡散処理の工程:焼結体を直径20mm、厚さ5mmの磁石に加工し、厚さ方向を磁場配向方向とし、表面を清浄化した後、それぞれDy金属を含有する拡散原料を磁石にコーティングし、コーティングした磁石を乾燥し、高純度のArガス雰囲気で、表面にDy元素が付着された磁石を、850℃の温度で24時間拡散熱処理する。処理完了後、室温まで冷却される。
【0131】
(9)熱処理の工程:焼結体を9×10-3Paの真空下且つ500℃の温度で3時間の熱処理を行った後、室温まで冷却して取り出す。
【0132】
表1 R-T-B系永久磁石材料の原料組成物の成分(wt.%)
【0133】
実施例2-8、比較例1-9
表1に示される成分で実施例2-8、比較例1-9に対応するR-T-B系永久磁石材料を製造し、ここで、実施例2-4、比較例1-3、比較例6-9の製造工程は、実施例1と同じである。
【0134】
実施例5-8及び比較例4-5の製造工程は、以下の相違点を除いて、他はいずれも実施例1と同じである。
粒界拡散処理の工程:焼結体を直径20mm、厚さ5mmの磁石に加工し、厚さ方向を磁場配向方向とし、表面を清浄化した後、それぞれTb金属を含有する拡散原料を磁石に全面噴霧してコーティングし、コーティングした磁石を乾燥し、その後、高純度のArガス雰囲気で、表面にTb元素が付着された磁石を、850℃の温度で24時間拡散熱処理する。処理完了後、室温まで冷却された。
【0135】
比較例10-11
実施例2の原料を選んで、表2に示される工程条件で製造し、他の工程条件は実施例2と同じである。
【0136】
【0137】
表2に示されるように、高温一段階焼結又は低温一段階焼結のみにより製造された永久磁石材料には、いずれも要求に適合した粒界相が生成されておらず、粒界におけるBが分散的に分布できず、磁気特性に不利なBリッチ相を形成し、永久磁石材料の性能を低下させてしまう。
【0138】
効果実施例
(1)磁石の粒界構造
実施例及び比較例で製造されたR-T-B系永久磁石材料の磁気特性及び成分を測定し、その磁性体の粒界構造をFE-EPMAで観察した。
【0139】
FE-EPMAによる検出:永久磁石材料の垂直配向面を研磨し、電界放出電子プローブマイクロアナライザー(FE-EPMA)(日本電子株式会社(JEOL)、8530F)で検出した。まず、FE-EPMAで面走査することにより、磁石におけるGa、Cu、T(Fe+Co)、R(Nd+Tb+Dy)及びB等の元素の分布を特定し(
図1に示されている)、その後、FE-EPMAで単一点(シングルポイント)定量分析することにより(例えば、
図2に示される分析点)、キー相(key phase)におけるCu、Ga等の元素の含有量を特定する。試験条件は、加速電圧15kv、プローブビーム50nAである。
【0140】
FE-EPMAによる検出の結果は、以下の表3に示されている。
【0141】
表3
注:「/」は、当該元素が含まれていないことを表す。
【0142】
表3に示されるように、低融点元素の種類の変化及び低融点元素の使用量の変化は、いずれも粒界で形成される結晶相に著しく影響し、低融点元素の種類及び/又は低融点元素の使用量が本願の範囲内にない場合、粒界にて永久磁石材料の性能を向上させることができるRx-(B1-a-b-c-Gaa-Cub-Tc)y結晶相を形成することは困難である。
【0143】
(2)磁気特性の評価:永久磁石について、中国計量院のNIM-10000H型BH大塊希土類永久磁石非破壊測定システムを用いて磁気特性検出を行う。
【0144】
以下の表4は、磁気特性検出の結果を示している。
【0145】
【0146】
表4に示されるように、本発明におけるR-T-B系永久磁石材料は、性能が優れており、重希土類元素の含有量が3.0~4.5wt.%である条件下で、Br≧12.78kGs、Hcj≧29.55kOeとなり、重希土類元素の含有量が1.5~2.5wt.%である条件下で、Br≧13.06kGs、Hcj≧26.31kOeとなり、Br及びHcjの同時改善を実現することができる。
【0147】
表3を組み合わせて分かるように、Rx-(B1-a-b-c-Gaa-Cub-Tc)y粒界相を形成することで、永久磁石材料の性能の向上に有利であり、発明者は、当該結晶相が粒界の濡れ性を高め、粒界の形態を改良し、拡散過程に対し連続的な粒界のチャネルを提供することにより、Hcjを向上させ、さらにBrが高く且つHcjが高い永久磁石材料を得ることを推測した。
【0148】
(3)成分の測定:各成分に対して、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP-OES)を用いて測定した。以下の表5は、成分検出の結果を示している。
【0149】
表5 成分検出の結果(wt.%)
注:「/」は、当該元素が含まれていないことを表す。