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特許7220309安定化ジルコニア焼結体、及び、ジルコニア粉末
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  • 特許-安定化ジルコニア焼結体、及び、ジルコニア粉末 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-01
(45)【発行日】2023-02-09
(54)【発明の名称】安定化ジルコニア焼結体、及び、ジルコニア粉末
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/488 20060101AFI20230202BHJP
   C01G 25/02 20060101ALI20230202BHJP
   C09K 11/67 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
C04B35/488
C01G25/02
C09K11/67
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021574594
(86)(22)【出願日】2021-01-12
(86)【国際出願番号】 JP2021000656
(87)【国際公開番号】W WO2021153211
(87)【国際公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-03-01
(31)【優先権主張番号】P 2020011107
(32)【優先日】2020-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000208662
【氏名又は名称】第一稀元素化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高井 優行
(72)【発明者】
【氏名】金西 啓太
【審査官】手島 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-117618(JP,A)
【文献】特開2014-234455(JP,A)
【文献】国際公開第2019/026809(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/488
C01G 25/02
C09K 11/67
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジルコニウムとチタンとを含む蛍光剤を含有し、
前記蛍光剤は、結晶子径が40nm以上65nm以下であり、
波長250nm以上380nm以下の光を含む光を照射したときに蛍光を示すことを特徴とする安定化ジルコニア焼結体。
【請求項2】
安定化ジルコニアを含み、
前記蛍光剤の含有量が、安定化ジルコニア全体を100質量%としたときに0.01質量%以上5質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の安定化ジルコニア焼結体。
【請求項3】
前記蛍光剤の含有量が、安定化ジルコニア全体を100質量%としたときに0.1質量%以上2質量%以下であることを特徴とする請求項2に記載の安定化ジルコニア焼結体。
【請求項4】
波長250nm以上380nm以下の光を含む光を照射したときに400nm以上600nm未満の波長領域に発光ピークを有する光を発することを特徴とする請求項1~3のいずれか1に記載の安定化ジルコニア焼結体。
【請求項5】
前記蛍光剤は、蛍光剤全体を100質量%としたときに90質量%以上の酸化ジルコニウムと、0.1質量%以上5質量%以下の酸化チタンとを含むことを特徴とする請求項1~4のいずれか1に記載の安定化ジルコニア焼結体。
【請求項6】
相対焼結密度が99.5%以上であることを特徴とする請求項1~のいずれか1に記載の安定化ジルコニア焼結体。
【請求項7】
安定化剤を含み、
前記安定化剤が、Y、Sc、CaO、MgO、Er、及び、Ybからなる群より選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1~のいずれか1に記載の安定化ジルコニア焼結体。
【請求項8】
安定化ジルコニアを含み、
前記安定化剤がYであり、
安定化ジルコニア全体に対するYの含有量が1.8mol%以上7mol%以下であることを特徴とする請求項に記載の安定化ジルコニア焼結体。
【請求項9】
酸化アルミニウムを含み、
前記酸化アルミニウムの含有量が、安定化ジルコニア焼結体全体を100mol%としたときに2mol%以上50mol%未満であることを特徴とする請求項1~のいずれか1に記載の安定化ジルコニア焼結体。
【請求項10】
Fe、V、Er、Mn、Co、Cr、Si、Ti、Zn、及び、Nbからなる群より選ばれる1種以上を含むことを特徴とする請求項1~のいずれかに1に記載の安定化ジルコニア焼結体。
【請求項11】
安定化ジルコニア粒子と、
ジルコニウムとチタンとを含む蛍光剤とを含有し、
前記蛍光剤は、結晶子径が40nm以上65nm以下であり、
前記蛍光剤の含有量が、安定化ジルコニア粒子全体を100質量%としたときに0.01質量%以上5質量%以下であることを特徴とするジルコニア粉末。
【請求項12】
前記蛍光剤の含有量が、前記安定化ジルコニア粒子全体を100質量%としたときに0.1質量%以上2質量%以下であることを特徴とする請求項11に記載のジルコニア粉末。
【請求項13】
前記蛍光剤は、蛍光剤全体を100質量%としたときに90質量%以上の酸化ジルコニウムと、0.1質量%以上5質量%以下の酸化チタンとを含むことを特徴とする請求項11又は12に記載のジルコニア粉末。
【請求項14】
前記蛍光剤は、平均粒子径が1μm以上20μm以下であることを特徴とする請求項1113のいずれか1に記載のジルコニア粉末。
【請求項15】
酸化アルミニウムを含み、
前記酸化アルミニウムの含有量が、ジルコニア粉末全体を100mol%としたときに2mol%以上50mol%未満であることを特徴とする請求項1114のいずれか1に記載のジルコニア粉末。
【請求項16】
安定化剤を含み、
前記安定化剤が、Y、Sc、CaO、MgO、Er、及び、Ybからなる群より選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1115のいずれか1に記載のジルコニア粉末。
【請求項17】
前記安定化剤がYであり、
安定化ジルコニア粒子全体に対するYの含有量が1.8mol%以上7mol%以下であることを特徴とする請求項16に記載のジルコニア粉末。
【請求項18】
Fe、V、Er、Mn、Co、Cr、Si、Ti、Zn、及び、Nbからなる群より選ばれる1種以上を含むことを特徴とする請求項1117のいずれか1に記載のジルコニア粉末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安定化ジルコニア焼結体、及び、ジルコニア粉末に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、蛍光を示すジルコニア焼結体(例えば、特許文献1~3)は、種々の技術分野において利用されている。
【0003】
特許文献1には、YSiO:Ce、YSiO:Tb、(Y,Gd,Eu)BO、Y:Eu、YAG:Ce、ZnGa:Zn、BaMgAl1017:Eu等の蛍光剤を含有する部分安定化ジルコニア焼結体が開示されている。
【0004】
特許文献2には、蛍光剤としてGa、Bi、Ce、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Tmなどの金属元素の酸化物、水酸化物、酢酸塩、硝酸塩を含むジルコニア焼結体や、蛍光剤としてYSiO:Ce、YSiO:Tb、(Y,Gd,Eu)BO、Y:Eu、YAG:Ce、ZnGa:Zn、BaMgAl1017:Euなどを含むジルコニア焼結体が開示されている。
【0005】
特許文献3には、Zr、Hf、Alの酸化物及びこれらの混合物から選択されるセラミック成分と、Y、Mg、Ca、Ceの酸化物及びこれらの混合物から選択される安定化成分と、Fe、Mn、Cr、Ni、Er、Pr、Nd、Tbの酸化物及びこれらの混合物から選択される着色成分と、Biの酸化物及びこれらの混合物から選択される蛍光成分とを含む歯科用ミルブランクを焼結させた歯科用物品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-117618号公報
【文献】国際公開第2019/026809号
【文献】特表2019-515030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方、従来、チタンを含み、且つ、蛍光を示す安定化ジルコニア焼結体は知られていない。
【0008】
本発明の目的は、チタンを含み、且つ、蛍光を示す安定化ジルコニア焼結体を提供することにある。また、本発明の他の目的は、チタンを含み、且つ、蛍光を示す安定化ジルコニア焼結体を得ることが可能なジルコニア粉末を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、ジルコニア焼結体について鋭意研究を行った。その結果、驚くべきことに、ジルコニウムとチタンとを含む蛍光剤を用いれば、チタンを含み、且つ、蛍光を示す安定化ジルコニア焼結体を得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明に係る安定化ジルコニア焼結体は、
ジルコニウムとチタンとを含む蛍光剤を含有し、
波長250nm以上380nm以下の光を含む光を照射したときに蛍光を示すことを特徴とする。
【0011】
従来、ジルコニウムとチタンとを含む蛍光剤にジルコニウムの安定化剤(例えば、Y)を添加すると、蛍光が消光するという問題点があり、チタンを含み、且つ、蛍光特性を有する焼結体を得ることができなかった。
一方、本発明に係る安定化ジルコニア焼結体は、ジルコニウムとチタンとを含む蛍光剤を含有している。前記構成によれば、蛍光剤が、安定化ジルコニア焼結体を構成するジルコニウムと同じ原子(ジルコニウム)を含有しているため、蛍光剤が安定化ジルコニア焼結体中に好適になじみ、焼結体を得るための焼結過程で、ひび割れ等を起こすことを著しく低減することができる。その結果、チタンを含み、且つ、蛍光を示す安定化ジルコニア焼結体を得ることが可能となった。
また、前記構成によれば、ジルコニウムとチタンとを含む蛍光剤を含有しており、波長250nm以上380nm以下の光を含む光を照射したときに蛍光を示す。
このように、本発明によれば、チタンを含み、且つ、蛍光を示す安定化ジルコニア焼結体を提供することができる。本発明により、チタンを含み、且つ、蛍光を示す安定化ジルコニア焼結体を提供することができることは、実施例からも明らかである。
【0012】
前記構成においては、安定化ジルコニアを含み、
前記蛍光剤の含有量が、安定化ジルコニア全体を100質量%としたときに0.01質量%以上5質量%以下であることが好ましい。
【0013】
前記蛍光剤の含有量が0.01質量%以上であると、良好な蛍光が得られる。また、前記蛍光剤の含有量を5質量%より多くしても蛍光特性の大きな向上は得られないことから、前記蛍光剤の含有量は5質量%以下とすることが好ましい。
また、前記蛍光剤の含有量が5質量%以下であると、安定化ジルコニアが大部分を占めることとなり、安定化ジルコニア焼結体の機械的強度等の特性に優れる。
【0014】
前記構成において、前記蛍光剤の含有量が、安定化ジルコニア全体を100質量%としたときに0.1質量%以上2質量%以下であることが好ましい。
【0015】
前記構成においては、波長250nm以上380nm以下の光を含む光を照射したときに400nm以上600nm未満の波長領域に発光ピークを有する光を発することが好ましい。
【0016】
波長250nm以上380nm以下の光を含む光を照射したときに400nm以上600nm未満の波長領域に発光ピークを有する光を発すると、例えば、安定化ジルコニア焼結体の傷や摩耗の検知が容易となる。また、特定波長(波長250nm以上380nm以下の光)の有無を検知することができる。
【0017】
前記構成において、前記蛍光剤は、蛍光剤全体を100質量%としたときに90質量%以上の酸化ジルコニウムと、0.1質量%以上5質量%以下の酸化チタンとを含むことが好ましい。
【0018】
90質量%以上の酸化ジルコニウムと0.1質量%以上5質量%以下の酸化チタンとを含む蛍光剤は、より良好な蛍光を示す。従って、このような組成の蛍光剤を用いることが好ましい。
【0019】
前記構成において、前記蛍光剤は、結晶子径が40nm以上65nm以下であることが好ましい。
【0020】
前記蛍光剤の結晶子径が40nm以上65nm以下であるとより良好な蛍光が得られる。
【0021】
前記構成においては、相対焼結密度が99.5%以上であることが好ましい。
【0022】
前記相対焼結密度が99.5%以上であると、安定化ジルコニア焼結体がより高強度となる。
【0023】
前記構成において、安定化剤を含み、
前記安定化剤が、Y、Sc、CaO、MgO、Er、及び、Ybからなる群より選ばれる1種以上であることが好ましい。
【0024】
前記構成において、安定化ジルコニアを含み、
前記安定化剤がYであり、
安定化ジルコニア全体に対するYの含有量が1.8mol%以上7mol%以下であることが好ましい。
【0025】
の含有量が1.8mol%以上7mol%以下であると、機械的強度により優れる。
【0026】
前記構成においては、酸化アルミニウムを含んでも構わない。前記安定化ジルコニア焼結体が、酸化アルミニウムを含む場合、酸化アルミニウムの含有量は、安定化ジルコニア焼結体全体を100mol%としたときに2mol%以上50mol%未満であることが好ましい。
【0027】
前記安定化ジルコニア焼結体が酸化アルミニウムを上記数値範囲内で含むと、酸化アルミニウム(アルミナ)との複合化により強度等の特性が向上し得る。つまり、前記安定化ジルコニア焼結体が酸化アルミニウムを上記数値範囲内で含むと、酸化アルミニウム(アルミナ)との複合化による高強度化と蛍光特性との両方を兼ね備えることができる。
【0028】
前記構成において、Fe、V、Er、Mn、Co、Cr、Si、Ti、Zn、及び、Nbからなる群より選ばれる1種以上を含むことが好ましい。
【0029】
Fe、V、Er、Mn、Co、Cr、Si、Ti、Zn、及び、Nbからなる群より選ばれる1種以上を含むと、好適に着色することができる。
【0030】
また、本発明に係るジルコニア粉末は、
安定化ジルコニア粒子と、
ジルコニウムとチタンとを含む蛍光剤とを含有し、
前記蛍光剤の含有量が、安定化ジルコニア粒子全体を100質量%としたときに0.01質量%以上5質量%以下であることを特徴とする。
【0031】
前記構成によれば、当該ジルコニア粉末を焼結させることにより、チタンを含み、且つ、蛍光を示す安定化ジルコニア焼結体を得ることができる。
【0032】
前記構成において、前記蛍光剤の含有量は、前記安定化ジルコニア粒子全体を100質量%としたときに0.1質量%以上2質量%以下であることが好ましい。
【0033】
前記構成において、前記蛍光剤は、蛍光剤全体を100質量%としたときに90質量%以上の酸化ジルコニウムと、0.1質量%以上5質量%以下の酸化チタンとを含むことが好ましい。
【0034】
90質量%以上の酸化ジルコニウムと0.1質量%以上5質量%以下の酸化チタンとを含む蛍光剤は、より良好な蛍光を示す。従って、このような組成の蛍光剤を用いることが好ましい。
【0035】
前記構成において、前記蛍光剤は、結晶子径が40nm以上65nm以下であることが好ましい。
【0036】
前記蛍光剤の結晶子径が40nm以上であると、当該ジルコニア粉末を焼結させる際に安定化ジルコニア粒子を構成する安定化剤が蛍光剤に固溶して、蛍光が得られなくなることを防止することができる。その結果、より良好な蛍光が得られる。また、前記蛍光剤の結晶子径が65nm以下であると、得られる安定化ジルコニア焼結体をより高強度とすることができる。前記蛍光剤の結晶子径は、蛍光剤を製造する際の、酸化物の焼成温度を変更することにより制御することができる。
【0037】
前記構成において、前記蛍光剤は、平均粒子径が1μm以上20μm以下であることが好ましい。
【0038】
前記蛍光剤は、平均粒子径が1μm以上であると、当該ジルコニア粉末を焼結させる際に安定化ジルコニア粒子を構成する安定化剤が蛍光剤に固溶して、蛍光が得られなくなることを防止することができる。その結果、より良好な蛍光が得られる。また、前記蛍光剤の平均粒子径が20μm以下であると、当該当該ジルコニア粉末を焼結させることにより得られる安定化ジルコニア焼結体をより高強度とすることができる。前記蛍光剤の平均粒子径は、蛍光剤を製造する際の粉砕時間を変更することにより制御することができる。
【0039】
前記構成において、安定化剤を含み、
前記安定化剤が、Y、Sc、CaO、MgO、Er、及び、Ybからなる群より選ばれる1種以上であることが好ましい。
【0040】
前記構成において、前記安定化剤がYであり、
安定化ジルコニア粒子全体に対するYの含有量が1.8mol%以上7mol%以下であることが好ましい。
【0041】
の含有量が1.8mol%以上7mol%以下であると、当該ジルコニア粉末を焼結させることにより得られる安定化ジルコニア焼結体は、機械的強度により優れる。
【0042】
前記構成においては、酸化アルミニウムを含んでも構わない。前記ジルコニア粉末が、酸化アルミニウムを含む場合、酸化アルミニウムの含有量は、ジルコニア粉末全体を100mol%としたときに2mol%以上50mol%未満であることが好ましい。
【0043】
前記ジルコニア粉末が酸化アルミニウムを上記数値範囲内で含むと、前記ジルコニア粉末を焼結させて得られる安定化ジルコニア焼結体は、酸化アルミニウム(アルミナ)との複合化により強度等の特性が向上し得る。つまり、前記ジルコニア粉末が酸化アルミニウムを上記数値範囲内で含むと、前記ジルコニア粉末を焼結させて得られる安定化ジルコニア焼結体は、酸化アルミニウム(アルミナ)との複合化による高強度化と蛍光特性との両方を兼ね備えることができる。
【0044】
前記構成において、Fe、V、Er、Mn、Co、Cr、Si、Ti、Zn、及び、Nbからなる群より選ばれる1種以上を含むことが好ましい。
【0045】
Fe、V、Er、Mn、Co、Cr、Si、Ti、Zn、及び、Nbからなる群より選ばれる1種以上を含むと、好適に着色することができる。
【発明の効果】
【0046】
本発明によれば、チタンを含み、且つ、蛍光を示す安定化ジルコニア焼結体を提供することができる。また、チタンを含み、且つ、蛍光を示す安定化ジルコニア焼結体を得ることが可能なジルコニア粉末を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】本実施形態に係る安定化ジルコニア焼結体の一例を示すSEM画像である。
図2】実施例1に係る安定化ジルコニア焼結体のSEM画像である。
図3】実施例1-3、及び、比較例1に係る安定化ジルコニア焼結体の蛍光波長と蛍光強度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、本発明の実施形態について説明する。ただし、本発明はこれらの実施形態のみに限定されるものではない。なお、本明細書において、ジルコニア(酸化ジルコニウム)とは一般的なものであり、ハフニアを含めた10質量%以下の不純物金属化合物を含むものである。
【0049】
[安定化ジルコニア焼結体]
本実施形態に係る安定化ジルコニア焼結体は、
ジルコニウムとチタンとを含む蛍光剤を含有し、
波長250nm以上380nm以下の光を含む光を照射したときに蛍光を示す。
【0050】
(蛍光特性)
前記安定化ジルコニア焼結体は、波長250nm以上380nm以下の光を含む光を照射したときに蛍光を示す。前記安定化ジルコニア焼結体は、波長350nm以下の光を含む光を照射したときに蛍光を示すことが好ましく、波長320nm以下の光を含む光を照射したときに蛍光を示すことがより好ましく、300nm以下がさらに好ましい。特に、不可視の光を照射して蛍光させる観点から、波長350nm以下の光を含む光を照射したときに蛍光を示すことが好ましい。また、蛍光剤の蛍光特性の観点から、波長270nm以上330nm以下の光を含む光を照射したときに蛍光を示すことが好ましい。
なお、前記安定化ジルコニア焼結体は、下記で説明する着色元素を含有させない場合は、通常、白色である。
【0051】
前記安定化ジルコニア焼結体は、波長250nm以上380nm以下の光を含む光を照射したときに、好ましくは400nm以上600nm未満の波長領域に、より好ましくは430nm以上550nm未満の波長領域に、さらに好ましくは450nm以上500nm未満の波長領域に発光ピーク(蛍光強度の最も大きい波長)を有する光を発することが好ましい。
波長250nm以上380nm以下の光を含む光を照射したときに400nm以上600nm未満の波長領域に発光ピークを有する光を発すると、例えば、安定化ジルコニア焼結体の傷や摩耗の検知が容易となる。また、特定波長(波長250nm以上380nm以下の光)の有無を検知することができる。
【0052】
(蛍光剤)
本実施形態に係る安定化ジルコニア焼結体は、ジルコニウムとチタンとを含む蛍光剤を含有する。前記安定化ジルコニア焼結体は、安定化ジルコニアを含むことが好ましい。図1は、安定化ジルコニア焼結体の一例を示すSEM画像である。図1において大きい粒径のものが蛍光剤である。図1に示すように、前記蛍光剤は、前記安定化ジルコニア焼結体内に点在することが好ましい。より具体的に、前記蛍光剤は、前記安定化ジルコニア焼結体を構成する安定化ジルコニア(安定化ジルコニア粒子の連結体)に接するように点在することが好ましい。ただし、本発明において、蛍光剤は、安定化ジルコニア焼結体に含有されていればよく、その含有される形態は特に限定されない。
なお、図1は、SEM画像を得るために安定化ジルコニア焼結体に対してサーマルエッチングを施した後のものである。そのため、粒界部分が溶け出しているために、各安定化ジルコニア粒子同士が連結していないように見えている。しかしながら、実際には、得られた安定化ジルコニア焼結体の研磨面を観察すると、各安定化ジルコニア粒子同士の界面は見えず、焼結により連結されている。
また、図1は、蛍光剤と安定化ジルコニアとを画像上で区別できるようにすることを目的として作製した安定化ジルコニア焼結体のSEM画像である。つまり、蛍光剤と安定化ジルコニアとの粒径が同程度である場合には、SEM画像上これらを区別できない。図1の安定化ジルコニア焼結体は、安定化ジルコニア焼結体内における蛍光剤の状態を確認するために作製したものである。従って、蛍光剤の粒径は、図1の粒径に限定されるものではない。参考のため、図2に、実施例1に係る安定化ジルコニア焼結体のSEM画像を示す。図2からは明らかではないが、図1との比較から、実施例1の安定化ジルコニア焼結体において、蛍光剤は、安定化ジルコニア焼結体内に点在しているものと理解できる。
【0053】
前記蛍光剤は、波長380nm以下の光を含む光を照射したときに蛍光を示すことが好ましく、波長350nm以下の光を含む光を照射したときに蛍光を示すことがより好ましく、波長320nm以下の光を含む光を照射したときに蛍光を示すことがさらに好ましく、波長300nm以下の光を含む光を照射したときに蛍光を示すことが特に好ましい。前記蛍光剤は、波長250nm以上の光を含む光を照射したときに蛍光を示すことが好ましく、波長270nmの光を含む光を照射したときに蛍光を示すことがより好ましい。特に、不可視の光を照射して蛍光させる観点から、波長350nm以下の光を含む光を照射したときに蛍光を示すことが好ましい。また、蛍光剤の蛍光特性の観点から、波長270nm以上330nm以下の光を含む光を照射したときに蛍光を示すことが好ましい。
【0054】
前記蛍光剤は、蛍光剤全体を100質量%としたときに90質量%以上の酸化ジルコニウム(ジルコニア)と、0.1質量%以上5質量%以下の酸化チタンとを含むことが好ましい。
前記蛍光剤に含まれる酸化ジルコニウムの含有量は、蛍光剤全体を100質量%としたときに90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましく、98質量%以上が特に好ましく、99.5質量%以上が特別に好ましい。
前記蛍光剤に含まれる酸化チタンの含有量は、蛍光剤全体を100質量%としたときに
0.1質量%以上がより好ましく、0.15質量%以上がさらに好ましく、0.2質量%以上が特に好ましく、0.23質量%以上が特別に好ましい。
前記蛍光剤に含まれる酸化チタンの含有量は、蛍光剤全体を100質量%としたときに
5質量%以下がより好ましく、2質量%以下がさらに好ましく、1質量%以下が特に好ましく、0.5質量%以下が特別に好ましい。
90質量%以上の酸化ジルコニウムと0.1質量%以上5質量%以下の酸化チタンとを含む蛍光剤は、より良好な蛍光を示す。従って、このような組成の蛍光剤を用いることが好ましい。特に、酸化チタンの含有量が上記範囲内であることによって、結晶中の陰イオン格子欠陥(Fセンター)が十分に形成され、しかも濃度消光の影響が少ない。そのため、より蛍光強度に優れる。
【0055】
前記蛍光剤は、ジルコニウム(例えば、酸化ジルコニウム)、チタン(例えば、酸化チタン)以外の他の元素を含んでもよい。前記他の元素としては、リン、セレン、ホウ素、ケイ素等が挙げられる。前記他の元素の含有量は、前記蛍光剤の蛍光特性に大きな影響を与えない程度であることが好ましい。
【0056】
前記蛍光剤の結晶子径は、40nm以上65nm以下であることが好ましい。前記結晶子径は、43nm以上であることがより好ましく、45nm以上であることがさらに好ましく、47nm以上であることが特に好ましく、50nm以上であることが特別に好ましい。前記結晶子径は、62nm以下であることがより好ましく、60nm以下であることがさらに好ましく、57nm以下であることが特に好ましく、55nm以下であることが特別に好ましい。
前記蛍光剤の結晶子径が40nm以上65nm以下であると、より良好な蛍光が得られる。
前結晶子径は、XRD測定における2θが27°~29°のピークの測定結果を次のScherrerの式に当てはめ、算出する。
Dp=(K×λ)/βcosθ
ここで、Dpは蛍光剤の結晶子径、λはX線の波長、θは回折角、Kは形状因子とよばれる定数、βは装置による回折線の広がりを補正した後のピーク幅である。
2θが27°~29°のピークは、酸化ジルコニウムの単斜晶相に由来するピークである。
【0057】
前記蛍光剤の平均粒子径は、1μm以上20μm以下であることが好ましい。前記平均粒子径は、3μm以上であることがより好ましく、5μm以上であることがさらに好ましく、7μm以上であることが特に好ましく、10μm以上であることが特別に好ましい。前記平均粒子径は、17μm以下であることがより好ましく、15μm以下であることがさらに好ましく、12μm以下であることが特に好ましく、10μm以下であることが特別に好ましい。
前記蛍光剤の平均粒子径が1μm以上であると、より良好な蛍光が得られる。また、前記蛍光剤の平均粒子径が20μm以下であると、安定化ジルコニア焼結体をより高強度とすることができる。
【0058】
前記蛍光剤の含有量は、安定化ジルコニア全体を100質量%としたときに0.01質量%以上5質量%以下であることが好ましい。前記蛍光剤の含有量は、安定化ジルコニア全体を100質量%としたときに0.1質量%以上がより好ましく、0.2質量%以上がさらに好ましく、0.25質量%以上が特に好ましく、0.3質量%以上が特別に好ましい。前記蛍光剤の含有量は、安定化ジルコニア全体を100質量%としたときに2質量%以下がより好ましく、1.5質量%以下がさらに好ましく、1.3質量%以下が特に好ましく、1質量%以下が特別に好ましい。
前記蛍光剤の含有量が0.01質量%以上であると、良好な蛍光が得られる。また、前記蛍光剤の含有量を5質量%より多くしても蛍光特性の大きな向上は得られないことから、前記蛍光剤の含有量は5質量%以下とすることが好ましい。
【0059】
(安定化ジルコニア)
上述したように、前記安定化ジルコニア焼結体は、安定化ジルコニアを含むことが好ましい。安定化ジルコニアとは、安定化剤を添加したジルコニアをいい、安定化剤がジルコニアに固溶している。安定化ジルコニアは、室温(25℃)で結晶相が立方晶、正方晶、又は、立方晶と正方晶との混晶であり、昇温、降温による相転移が抑制されている。一方、安定化剤が無添加のジルコニアは、室温では単斜晶系であり、温度を上げていくと、正方晶、立方晶へと結晶構造が相転移する。安定化剤が無添加のジルコニアは、相転移に伴い体積変化するので、焼結体を得ることができない。
【0060】
本実施形態における安定化ジルコニアとしては、完全安定化ジルコニアであってもよく、部分安定化ジルコニアであってもよい。完全安定化ジルコニアとは、結晶相の変態を完全に抑制したものをいう。部分安定化ジルコニアとは、安定化剤の添加量を少なめにする等して、一部において結晶相の変態を可能としたものをいう。本実施形態における安定化ジルコニアは、より高強度であるという観点から、部分安定化ジルコニアが好ましい。
【0061】
前記安定化剤は、Y、Sc、CaO、MgO、Er、及び、Ybからなる群より選ばれる1種以上であることが好ましい。
なお、安定化剤としてCe(セリウム)を含有する化合物を用いると、黄色に着色する等して、蛍光を吸収(特に青色の蛍光を吸収)する。そのため、安定化剤として、Ceを含有する化合物は含まない方が好ましい。
【0062】
前記安定化剤は、なかでもYが好ましく、安定化ジルコニア全体に対するYの含有量が1.8mol%以上7mol%以下であることが好ましい。Yの含有量が1.8mol%以上7mol%以下である場合、部分安定化ジルコニアとなる。Yの含有量が1.8mol%以上7mol%以下であると、機械的強度により優れる。
【0063】
前記安定化ジルコニア焼結体は、焼結助剤として、及び/又は、構造材として、酸化アルミニウムを含んでも構わない。酸化アルミニウムの含有量が比較的少ない場合は、主として焼結助剤として機能し、酸化アルミニウムの含有量が比較的多い場合は、主として構造材として機能し、その間の含有量である場合は、焼結助剤として機能し且つ構造材として機能する。
【0064】
前記安定化ジルコニア焼結体が、構造材として酸化アルミニウムを含む場合、酸化アルミニウムの含有量は、安定化ジルコニア焼結体全体を100mol%としたときに2mol%以上50mol%未満であることが好ましい。
前記安定化ジルコニア焼結体が酸化アルミニウムを上記数値範囲内で含むと、酸化アルミニウム(アルミナ)との複合化により強度等の特性が向上し得る。つまり、前記安定化ジルコニア焼結体が酸化アルミニウムを上記数値範囲内で含むと、酸化アルミニウム(アルミナ)との複合化による高強度化と蛍光特性との両方を兼ね備えることができる。
前記安定化ジルコニア焼結体が、構造材として酸化アルミニウムを含む場合、酸化アルミニウムの含有量は、安定化ジルコニア焼結体全体を100mol%としたときに3mol%以上が好ましく、5mol%以上がより好ましく、10mol%以上がさらに好ましく、15mol%以上が特に好ましく、20mol%以上が特別に好ましく、22mol%以上が格別に好ましい。
前記安定化ジルコニア焼結体が、構造材として酸化アルミニウムを含む場合、酸化アルミニウムの含有量は、安定化ジルコニア焼結体全体を100mol%としたときに40mol%以下が好ましく、35mol%以上がより好ましく、30mol%以下がさらに好ましく、27mol%以下が特に好ましく、25mol%以下が特別に好ましく、24mol%以下が格別に好ましい。
【0065】
前記安定化ジルコニア焼結体が、焼結助剤として酸化アルミニウムを含む場合、酸化アルミニウムの含有量は、安定化ジルコニア焼結体全体を100mol%としたときに0.01mol%以上0.4mol%以下であることが好ましい。
前記安定化ジルコニア焼結体が酸化アルミニウムを上記数値範囲内で含むと、前記安定化ジルコニア焼結体の焼結性が向上し、結晶構造が均一化しやすくなる。
前記安定化ジルコニア焼結体が、焼結助剤として酸化アルミニウムを含む場合、酸化アルミニウムの含有量は、安定化ジルコニア焼結体全体を100mol%としたときに0.01mol%以上が好ましく、0.03mol%以上がより好ましく、0.05mol%以上がさらに好ましく、0.07mol%以上が特に好ましく、0.1mol%以上が特別に好ましく、0.11mol%以上が格別に好ましい。
前記安定化ジルコニア焼結体が、焼結助剤として酸化アルミニウムを含む場合、酸化アルミニウムの含有量は、安定化ジルコニア焼結体全体を100mol%としたときに0.35mol%以下が好ましく、0.3mol%以下がより好ましく、0.25mol%以下がさらに好ましく、0.20mol%以下が特に好ましく、0.17mol%以下が特別に好ましく、0.15mol%以下が格別に好ましい。
【0066】
酸化アルミニウムを焼結助剤として機能させ且つ構造材として機能させる場合、酸化アルミニウムの含有量は、安定化ジルコニア焼結体全体を100mol%としたときに0.45mol%以上が好ましく、0.5mol%以上がより好ましく、0.6mol%以上がさらに好ましく、0.7mol%以上が特に好ましく、0.8mol%以上が特別に好ましく、0.9mol%以上が格別に好ましい。
酸化アルミニウムを焼結助剤として機能させ且つ構造材として機能させる場合、酸化アルミニウムの含有量は、安定化ジルコニア焼結体全体を100mol%としたときに1.9mol%以下が好ましく、1.7mol%以下がより好ましく、1.5mol%以下がさらに好ましく、1.4mol%以下が特に好ましく、1.2mol%以下が特別に好ましく、1.1mol%以下が格別に好ましい。
【0067】
前記安定化ジルコニア焼結体は、酸化アルミニウム以外にも、強度等の特性の向上を目的として、焼結可能なセラミックスや熱硬化性樹脂等を含んでも構わない。
【0068】
(着色元素)
前記安定化ジルコニア焼結体は、Fe、V、Er、Mn、Co、Cr、Si、Ti、Zn、及び、Nbからなる群より選ばれる1種以上を含んでいてもよい。Fe、V、Er、Mn、Co、Cr、Si、Ti、Zn、及び、Nbからなる群より選ばれる1種以上を着色元素として含むと、好適に着色することができる。
【0069】
前記着色元素の形態は特に限定されず、酸化物、塩化物などの形態で添加することができる。前記着色元素を含む着色剤としては、具体的には、例えば、Fe、V、Er、MnO、Co、Cr、SiO、TiO、ZnO、Nb等が挙げられる。
前記着色剤としてFeを含む場合、前記着色剤の含有量は、安定化ジルコニア焼結体全体を100mol%としたときに、0.001mol%以上0.01mol%以下が好ましく、0.0015mol%以上0.005mol%以下がより好ましい。前記着色剤の含有量が0.001mol%以上であると、意図した着色が得やすい。すなわち、色調の調整が容易となる。また、前記着色剤の含有量が0.01mol%以下であると、蛍光を阻害することを抑制することができる。
前記着色剤としてVを含む場合、前記着色剤の含有量は、安定化ジルコニア焼結体全体を100mol%としたときに、0.001mol%以上0.03mol%以下が好ましく、0.0015mol%以上0.02mol%以下がより好ましい。前記着色剤の含有量が0.001mol%以上であると、意図した着色が得やすい。すなわち、色調の調整が容易となる。また、前記着色剤の含有量が0.03mol%以下であると、蛍光を阻害することを抑制することができる。
前記着色剤としてErを含む場合、前記着色剤の含有量は、安定化ジルコニア焼結体全体を100mol%としたときに、0.1mol%以上8mol%以下が好ましく、0.5mol%以上6mol%以下がより好ましく、1mol%以上5mol%以下がさらに好ましく、2mol%以上4mol%以下が特に好ましい。前記着色剤の含有量が0.1mol%以上であると、意図した着色が得やすい。すなわち、色調の調整が容易となる。また、前記着色剤の含有量が8mol%以下であると、強度低下(例えば、3点曲げ強度低下等)を抑制することができる。なお、Erは安定化剤としての効果もあるが、蛍光を示さない。
前記着色剤としてMnOを含む場合、前記着色剤の含有量は、安定化ジルコニア焼結体全体を100mol%としたときに、0.001mol%以上0.05mol%以下が好ましく、0.003mol%以上0.02mol%以下がより好ましい。前記着色剤の含有量が0.001mol%以上であると、意図した着色が得やすい。すなわち、色調の調整が容易となる。また、前記着色剤の含有量が0.05mol%以下であると、蛍光を阻害することを抑制することができる。
前記着色剤としてCrを含む場合、前記着色剤の含有量は、安定化ジルコニア焼結体全体を100mol%としたときに、0.001mol%以上0.04mol%以下が好ましく、0.003mol%以上0.02mol%以下がより好ましい。前記着色剤の含有量が0.001mol%以上であると、意図した着色が得やすい。すなわち、色調の調整が容易となる。また、前記着色剤の含有量が0.04mol%以下であると、蛍光を阻害することを抑制することができる。
前記着色剤としてCoを含む場合、前記着色剤の含有量は、安定化ジルコニア焼結体全体を100mol%としたときに、0.001mol%以上0.03mol%以下が好ましく、0.003mol%以上0.015mol%以下がより好ましい。前記着色剤の含有量が0.001mol%以上であると、意図した着色が得やすい。すなわち、色調の調整が容易となる。また、前記着色剤の含有量が0.03mol%以下であると、蛍光を阻害することを抑制することができる。
前記着色剤としてSiOを含む場合、前記着色剤の含有量は、安定化ジルコニア焼結体全体を100mol%としたときに、0.02mol%以上1.5mol%以下が好ましく、0.05mol%以上1.0mol%以下がより好ましく、0.07mol%以上0.7mol%以下がさらに好ましい。前記着色剤の含有量が0.02mol%以上であると、意図した着色が得やすい。すなわち、色調の調整が容易となる。また、前記着色剤の含有量が1.5mol%以下であると、蛍光を阻害することを抑制することができる。
前記着色剤としてTiOを含む場合、前記着色剤の含有量は、安定化ジルコニア焼結体全体を100mol%としたときに、0.02mol%以上1.5mol%以下が好ましく、0.05mol%以上1.0mol%以下がより好ましく、0.07mol%以上0.7mol%以下がさらに好ましい。前記着色剤の含有量が0.02mol%以上であると、意図した着色が得やすい。すなわち、色調の調整が容易となる。また、前記着色剤の含有量が1.5mol%以下であると、蛍光を阻害することを抑制することができる。
前記着色剤としてZnOを含む場合、前記着色剤の含有量は、安定化ジルコニア焼結体全体を100mol%としたときに、0.02mol%以上1.5mol%以下が好ましく、0.1mol%以上1.2mol%以下がより好ましく、0.15mol%以上1.0mol%以下がさらに好ましい。前記着色剤の含有量が0.02mol%以上であると、意図した着色が得やすい。すなわち、色調の調整が容易となる。また、前記着色剤の含有量が1.5mol%以下であると、蛍光を阻害することを抑制することができる。
前記着色剤としてNbを含む場合、前記着色剤の含有量は、安定化ジルコニア焼結体全体を100mol%としたときに、0.01mol%以上1.0mol%以下が好ましく、0.02mol%以上0.7mol%以下がより好ましく、0.04mol%以上0.5mol%以下がさらに好ましい。前記着色剤の含有量が0.01mol%以上であると、意図した着色が得やすい。すなわち、色調の調整が容易となる。また、前記着色剤の含有量が1.0mol%以下であると、蛍光を阻害することを抑制することができる。
【0070】
前記蛍光剤としては、具体的には、特許第6184174号公報(特開2014-234455号公報)に開示されているものを用いることができる。また、前記蛍光剤は、特許第6184174号公報(特開2014-234455号公報)に開示されている方法で製造することができる。
【0071】
(相対焼結密度)
前記安定化ジルコニア焼結体の相対焼結密度は、99.5%以上であることが好ましく、99.7%以上であることがより好ましく、99.8%以上であることがさらに好ましく、99.82%以上が特に好ましく、99.85%以上が特別に好ましい。前記相対焼結密度が99.5%以上であると、安定化ジルコニア焼結体がより高強度となる。
【0072】
(3点曲げ強度)
前記安定化ジルコニア焼結体の3点曲げ強度は、300MPa以上であることが好ましく、400MPa以上であることがより好ましく、500MPa以上であることがさらに好ましく、600MPa以上が特に好ましい。前記3点曲げ強度は、大きいほど好ましいが、例えば、1800MPa以下、1500MPa以下、1300MPa以下である。
前記安定化ジルコニア焼結体の3点曲げ強度は、実施例に記載の方法により得られた値をいう。
【0073】
以上、本実施形態に係る安定化ジルコニア焼結体によれば、蛍光剤が、安定化ジルコニア焼結体を構成するジルコニウムと同じ原子(ジルコニウム)を含有しているため、蛍光剤が安定化ジルコニア焼結体中に好適になじみ、焼結体を得るための焼結過程で、ひび割れ等を起こすことを著しく低減することができる。その結果、チタンを含み、且つ、蛍光を示す安定化ジルコニア焼結体を得ることが可能となった。
また、本実施形態に係る安定化ジルコニア焼結体は、ジルコニウムとチタンとを含む蛍光剤を含有しており、波長250nm以上380nm以下の光を含む光を照射したときに蛍光を示す。
このように、本実施形態に係る安定化ジルコニア焼結体によれば、チタンを含み、且つ、蛍光を示す安定化ジルコニア焼結体を提供することができる。
本実施形態に係る安定化ジルコニア焼結体は、産業部品、審美性部品、歯科材料として使用することができる。より具体的には、宝飾品、時計用部品、時計の文字盤、人工歯、成型加工用部材、耐摩耗部材、耐薬品部材等に使用することができる。
【0074】
本実施形態に係る安定化ジルコニア焼結体の製造方法としては、特に限定されないが、前記安定化ジルコニア焼結体は、安定化ジルコニア粒子と蛍光剤とを含有するジルコニア粉末を焼結させることにより得ることができる。そこで、以下、ジルコニア粉末について説明する。
【0075】
[ジルコニア粉末]
本実施形態に係るジルコニア粉末は、
安定化ジルコニア粒子と、
ジルコニウムとチタンとを含む蛍光剤とを含有し、
前記蛍光剤の含有量が、安定化ジルコニア粒子全体を100質量%としたときに0.01質量%以上5質量%以下である。
前記ジルコニア粉末は、特に限定されないが、前記安定化ジルコニア粒子と前記蛍光剤とを含む混合物として提供することができる。
【0076】
(蛍光剤)
上述したように、前記蛍光剤は、ジルコニウムとチタンとを含む。前記蛍光剤は、波長380nm以下の光を含む光を照射したときに蛍光を示すことが好ましく、波長350nm以下の光を含む光を照射したときに蛍光を示すことがより好ましく、波長320nm以下の光を含む光を照射したときに蛍光を示すことがさらに好ましく、波長300nm以下の光を含む光を照射したときに蛍光を示すことが特に好ましい。前記蛍光剤は、波長250nm以上の光を含む光を照射したときに蛍光を示すことが好ましく、波長270nmの光を含む光を照射したときに蛍光を示すことがより好ましい。特に、当該ジルコニア粉末を焼結して得られる安定化ジルコニア焼結体に、不可視の光を照射して蛍光させる観点から、波長350nm以下の光を含む光を照射したときに蛍光を示すことが好ましい。また、蛍光剤の蛍光特性の観点から、波長270nm以上330nm以下の光を含む光を照射したときに蛍光を示すことが好ましい。
【0077】
前記蛍光剤は、蛍光剤全体を100質量%としたときに90質量%以上の酸化ジルコニウムと、0.1質量%以上5質量%以下の酸化チタンとを含むことが好ましい。
前記蛍光剤に含まれる酸化ジルコニウムの含有量は、蛍光剤全体を100質量%としたときに90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましく、98質量%以上が特に好ましく、99.5質量%以上が特別に好ましい。
前記蛍光剤に含まれる酸化チタンの含有量は、蛍光剤全体を100質量%としたときに0.1質量%以上がより好ましく、0.15質量%以上がさらに好ましく、0.2質量%以上が特に好ましく、0.23質量%以上が特別に好ましい。
前記蛍光剤に含まれる酸化チタンの含有量は、蛍光剤全体を100質量%としたときに5質量%以下がより好ましく、2質量%以下がさらに好ましく、1質量%以下が特に好ましく、0.5質量%以下が特別に好ましい。
90質量%以上の酸化ジルコニウムと0.1質量%以上5質量%以下の酸化チタンとを含む蛍光剤は、より良好な蛍光を示す。従って、このような組成の蛍光剤を用いることが好ましい。特に、酸化チタンの含有量が上記範囲内であることによって、結晶中の陰イオン格子欠陥(Fセンター)が十分に形成され、しかも濃度消光の影響が少ない。そのため、より蛍光強度に優れる。
【0078】
前記蛍光剤は、ジルコニウム(例えば、酸化ジルコニウム)、チタン(例えば、酸化チタン)以外の他の元素を含んでもよい。前記他の元素としては、リン、セレン、ホウ素、ケイ素等が挙げられる。前記他の元素の含有量は、前記蛍光剤の蛍光特性に大きな影響を与えない程度であることが好ましい。
【0079】
前記蛍光剤の結晶子径は、40nm以上65nm以下であることが好ましい。前記結晶子径は、43nm以上であることがより好ましく、45nm以上であることがさらに好ましく、47nm以上であることが特に好ましく、50nm以上であることが特別に好ましい。前記結晶子径は、62nm以下であることがより好ましく、60nm以下であることがさらに好ましく、57nm以下であることが特に好ましく、55nm以下であることが特別に好ましい。
前記蛍光剤の結晶子径が40nm以上65nm以下であると、より良好な蛍光が得られる。
前結晶子径は、XRD測定における2θが27°~29°のピークの測定結果を次のScherrerの式に当てはめ、算出する。
Dp=(K×λ)/βcosθ
ここで、Dpは蛍光剤の結晶子径、λはX線の波長、θは回折角、Kは形状因子とよばれる定数、βは装置による回折線の広がりを補正した後のピーク幅である。
2θが27°~29°のピークは、酸化ジルコニウムの単斜晶相に由来するピークである。
XRD測定条件の詳細は実施例に記載の通りである。
【0080】
前記蛍光剤の平均粒子径は、1μm以上20μm以下であることが好ましい。前記平均粒子径は、3μm以上であることがより好ましく、5μm以上であることがさらに好ましく、7μm以上であることが特に好ましく、10μm以上であることが特別に好ましい。前記平均粒子径は、17μm以下であることがより好ましく、15μm以下であることがさらに好ましく、12μm以下であることが特に好ましく、10μm以下であることが特別に好ましい。
前記蛍光剤の平均粒子径が1μm以上であると、より良好な蛍光が得られる。また、前記蛍光剤の平均粒子径が20μm以下であると、当該ジルコニア粉末を焼結して得られる安定化ジルコニア焼結体をより高強度とすることができる。
前記蛍光剤の平均粒子径は、レーザー回折式粒子径分布測定装置「SALD-2300」(島津製作所社製)を用いて測定した値である。より詳細には、実施例に記載の方法による。なお、本明細書に記載の平均粒子径は体積基準で測定される値である。
【0081】
前記蛍光剤の含有量は、安定化ジルコニア粒子全体を100質量%としたときに0.01質量%以上5質量%以下であることが好ましい。前記蛍光剤の含有量は、安定化ジルコニア粒子全体を100質量%としたときに0.1質量%以上がより好ましく、0.2質量%以上がさらに好ましく、0.25質量%以上が特に好ましく、0.3質量%以上が特別に好ましい。前記蛍光剤の含有量は、安定化ジルコニア粒子全体を100質量%としたときに2質量%以下がより好ましく、1.5質量%以下がさらに好ましく、1.3質量%以下が特に好ましく、1質量%以下が特別に好ましい。
前記蛍光剤の含有量が0.01質量%以上であると、良好な蛍光が得られる。また、前記蛍光剤の含有量を5質量%より多くしても蛍光特性の大きな向上は得られないことから、前記蛍光剤の含有量は5質量%以下とすることが好ましい。
【0082】
(安定化ジルコニア粒子)
前記安定化ジルコニア粒子は、粒子状の安定化ジルコニアである。前記安定化ジルコニア粒子の平均粒子径は、2μm以下が好ましく、1μm以下がより好ましく、0.6μm以下がさらに好ましく、0.5μm以下が特に好ましく、0.4μm以下が特別に好ましい。前記安定化ジルコニア粒子の平均粒子径は、0.3μm以上が好ましく、0.33μm以上がより好ましく、0.35μm以上がさらに好ましい。前記安定化ジルコニア粒子の平均粒子径が2μm以下であると、高い焼結密度の焼結体を得ることが容易となる。また、前記安定化ジルコニア粒子の平均粒子径が0.3μm以上であると、生産性に優れる。
前記安定化ジルコニア粒子の平均粒子径の測定方法は、蛍光剤の平均粒子径と同様の方法にて測定した値である。
【0083】
前記安定化ジルコニア粒子の比表面積は、5m/g以上が好ましく、6m/g以上がより好ましく、7m/g以上がさらに好ましく、7.5m/g以上が特に好ましく、8m/g以上が特別に好ましい。前記安定化ジルコニア粒子の比表面積は、15m/g以下が好ましく、13m/g以下がより好ましく、11m/g以下がさらに好ましく、10m/g以下が特に好ましく、9m/g以下が特別に好ましい。
前記安定化ジルコニア粒子の比表面積が前記数値範囲内であると、高い焼結密度の焼結体を得やすい。
前記安定化ジルコニア粒子の比表面積は、実施例に記載の方法により得られた値をいう。
【0084】
本実施形態における安定化ジルコニア粒子を構成する安定化ジルコニアとしては、完全安定化ジルコニアであってもよく、部分安定化ジルコニアであってもよい。
【0085】
安定化ジルコニア粒子に含まれる安定化剤は、Y、Sc、CaO、MgO、Er、及び、Ybからなる群より選ばれる1種以上であることが好ましい。
【0086】
前記安定化剤は、なかでもYが好ましく、安定化ジルコニア粒子全体に対するYの含有量が1.8mol%以上7mol%以下であることが好ましい。Yの含有量が1.8mol%以上7mol%以下である場合、安定化ジルコニア粒子は、部分安定化ジルコニアで構成される粒子となる。Yの含有量が1.8mol%以上7mol%以下であると、機械的強度により優れる。
【0087】
前記安定化ジルコニア粒子は、従来公知の方法により製造することができる。前記安定化ジルコニア粒子は、例えば、特許6184174号公報(特開2014-234455号公報))に開示されている方法で製造することができる。
【0088】
前記ジルコニア粉末は、焼結助剤として、及び/又は、構造材として、酸化アルミニウムを含んでも構わない。酸化アルミニウムの含有量が比較的少ない場合は、主として焼結助剤として機能し、酸化アルミニウムの含有量が比較的多い場合は、主として構造材として機能し、その間の含有量である場合は、焼結助剤として機能し且つ構造材として機能する。
【0089】
前記ジルコニア粉末が、構造材として酸化アルミニウムを含む場合、酸化アルミニウムの含有量は、ジルコニア粉末全体を100mol%としたときに2mol%以上50mol%未満であることが好ましい。
前記ジルコニア粉末が酸化アルミニウムを上記数値範囲内で含むと、前記ジルコニア粉末を焼結させて得られる安定化ジルコニア焼結体は、酸化アルミニウム(アルミナ)との複合化により強度等の特性が向上し得る。つまり、酸化アルミニウムの含有量が上記の範囲であると、前記ジルコニア粉末を焼結させて得られる安定化ジルコニア焼結体は、酸化アルミニウム(アルミナ)との複合化による高強度化と蛍光特性との両方を兼ね備えることができる。
前記ジルコニア粉末が、構造材として酸化アルミニウムを含む場合、酸化アルミニウムの含有量は、ジルコニア粉末全体を100mol%としたときに3mol%以上が好ましく、5mol%以上がより好ましく、10mol%以上がさらに好ましく、15mol%以上が特に好ましく、20mol%以上が特別に好ましく、22mol%以上が格別に好ましい。
前記ジルコニア粉末が、構造材として酸化アルミニウムを含む場合、酸化アルミニウムの含有量は、ジルコニア粉末全体を100mol%としたときに40mol%以下が好ましく、35mol%以上がより好ましく、30mol%以下がさらに好ましく、27mol%以下が特に好ましく、25mol%以下が特別に好ましく、24mol%以下が格別に好ましい。
酸化アルミニウムをジルコニア粉末に含有させるには、アルミナ粉末を用いることが好ましい。酸化アルミニウムを含むジルコニア粉末は、アルミナ粉末と、安定化ジルコニア粒子と、蛍光剤とを市販の混合機を用いて混合することにより、得ることができる。必要に応じて、市販の粉砕機を用いてもよい。アルミナ粉末の純度としては、90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上である。アルミナ粉末の粒子径には特に制限はないが、平均粒子径が0.4μm以上30μm以下が好ましい。アルミナ粉末は、焼結時前に安定化ジルコニア粉末と同程度の粒子径を持つことが好ましい。
【0090】
前記ジルコニア粉末が、焼結助剤として酸化アルミニウムを含む場合、酸化アルミニウムの含有量は、ジルコニア粉末全体を100mol%としたときに0.01mol%以上0.4mol%以下であることが好ましい。
前記ジルコニア粉末が酸化アルミニウムを上記数値範囲内で含むと、前記ジルコニア粉末の焼結性が向上し、結晶構造が均一化しやすくなる。
前記ジルコニア粉末が、焼結助剤として酸化アルミニウムを含む場合、酸化アルミニウムの含有量は、ジルコニア粉末全体を100mol%としたときに0.01mol%以上が好ましく、0.03mol%以上がより好ましく、0.05mol%以上がさらに好ましく、0.07mol%以上が特に好ましく、0.1mol%以上が特別に好ましく、0.11mol%以上が格別に好ましい。
前記ジルコニア粉末が、焼結助剤として酸化アルミニウムを含む場合、酸化アルミニウムの含有量は、安定化ジルコニア焼結体全体を100mol%としたときに0.35mol%以下が好ましく、0.3mol%以下がより好ましく、0.25mol%以下がさらに好ましく、0.20mol%以下が特に好ましく、0.17mol%以下が特別に好ましく、0.15mol%以下が格別に好ましい。
【0091】
酸化アルミニウムを焼結助剤として機能させ且つ構造材として機能させる場合、酸化アルミニウムの含有量は、ジルコニア粉末全体を100mol%としたときに0.45mol%以上が好ましく、0.5mol%以上がより好ましく、0.6mol%以上がさらに好ましく、0.7mol%以上が特に好ましく、0.8mol%以上が特別に好ましく、0.9mol%以上が格別に好ましい。
酸化アルミニウムを焼結助剤として機能させ且つ構造材として機能させる場合、酸化アルミニウムの含有量は、ジルコニア粉末全体を100mol%としたときに1.9mol%以下が好ましく、1.7mol%以下がより好ましく、1.5mol%以下がさらに好ましく、1.4mol%以下が特に好ましく、1.2mol%以下が特別に好ましく、1.1mol%以下が格別に好ましい。
【0092】
前記ジルコニア粉末は、酸化アルミニウム以外にも、強度等の特性の向上を目的として、焼結可能なセラミックスや熱硬化性樹脂等を含んでも構わない。
【0093】
(着色元素)
前記ジルコニア粉末は、Fe、V、Er、Mn、Co、Cr、Si、Ti、Zn、及び、Nbからなる群より選ばれる1種以上を含んでいてもよい。Fe、V、Er、Mn、Co、Cr、Si、Ti、Zn、及び、Nbからなる群より選ばれる1種以上を着色元素として含むと、当該当該ジルコニア粉末を焼結させることにより得られる安定化ジルコニア焼結体を好適に着色することができる。
【0094】
前記着色元素の形態は特に限定されず、酸化物、塩化物などの形態で添加することができる。前記着色元素を含む着色剤としては、具体的には、例えば、Fe、V、Er、MnO、Co、Cr、SiO、TiO、ZnO、Nb等が挙げられる。
【0095】
前記蛍光剤としては、具体的には、特許第6184174号公報(特開2014-234455号公報)に開示されているものを用いることができる。また、前記蛍光剤は、特許第6184174号公報(特開2014-234455号公報)に開示されている方法で製造することができる。
【0096】
前記ジルコニア粉末は、前記安定化ジルコニア粒子と前記蛍光剤とを混合することにより得ることができる。混合のより詳細な方法としては、純水等に分散させてスラリー化して湿式混合することが好ましい。湿式混合の後、乾燥し、ふるい等を通して整粒することが好ましい。前記混合は、前記安定化ジルコニア粒子、及び、前記蛍光剤が粉砕されない態様(平均粒径や結晶子径が変化しないような態様)での混合が好ましい。
ただし、前記ジルコニア粉末の製造方法としては、上記に限定されない。
【0097】
以上、本実施形態に係るジルコニア粉末について説明した。
【0098】
[安定化ジルコニア焼結体の製造方法]
以下、安定化ジルコニア焼結体の製造方法の一例について説明する。ただし、本発明の安定化ジルコニア焼結体の製造方法は、以下の例示に限定されない。
【0099】
本実施形態に係る安定化ジルコニア焼結体の製造方法は、
ジルコニア粉末を準備する工程Aと、
前記ジルコニア粉末を焼結させる工程Bとを含む。
【0100】
<工程A>
本実施形態に係る安定化ジルコニア焼結体の製造方法においては、まず、ジルコニア粉末を準備する(工程A)。前記ジルコニア粉末としては、[ジルコニア粉末]の項で説明したものを用いることができる。
【0101】
次に、必要に応じて前記ジルコニア粉末をプレス成型する。プレス成型は特に限定されないが、一軸プレスを用いることができる。プレス圧力としては、例えば、50~500MPaが好ましく、80~200MPaがより好ましい。
【0102】
<工程B>
次に、前記ジルコニア粉末を焼結させる(工程B)。これにより、安定化ジルコニア焼結体が得られる。焼結の際の熱処理温度、及び、時間は特に限定されないが、1400~1550℃程度で1~5時間程度が好ましい。熱処理雰囲気は、大気中又は酸化性雰囲気中が好ましい。
【0103】
以上、本実施形態に係る安定化ジルコニア焼結体の製造方法について説明した。
【実施例
【0104】
以下、本発明に関し実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例における安定化ジルコニア粒子、蛍光剤、及び、安定化ジルコニア焼結体には、不可避不純物として酸化ハフニウムを酸化ジルコニウムに対して1.3~2.5質量%含有(下記式(X)にて算出)している。
<式(X)>
([酸化ハフニウムの質量]/([酸化ジルコニウムの質量]+[酸化ハフニウムの質量]))×100(%)
【0105】
[ジルコニア粉末、及び、安定化ジルコニア焼結体の作製]
(実施例1)
4.0mol%のYを含むイットリア安定化ジルコニア粒子を準備した。
0.25質量%のTiOを含み、平均粒子径が5μmであり、結晶子径が52nmである単斜晶ジルコニアを蛍光剤として準備した。
【0106】
実施例1に係る前記イットリア安定化ジルコニア粒子は、次のようにして製造した。
まず、塩基性硫酸ジルコニウム(酸化ジルコニウムとして100g含有)を水1000g中に分散し、塩基性硫酸ジルコニウムスラリーとした。また、濃度5%の塩化イットリウム溶液をジルコニアに対して4.0mol%となるように計り取った。塩基性硫酸ジルコニウムスラリーを撹拌しながら、計り取った塩化イットリウム溶液を添加した。これにより混合液を得た。
次に、前記混合液に、25重量%水酸化ナトリウム水溶液をpHが13.5となるまで添加して沈殿物を得た。次に、生成した沈殿物を固液分離し、水洗して回収した。次に、回収した固形分を大気中1100℃で2時間焼成し、イットリア安定化ジルコニア粒子を得た。
なお、実施例2-22、比較例1-5に係る安定化ジルコニア粒子についても安定化剤の種類や添加量を変更する等して、実施例1の安定化ジルコニア粒子と同様にして製造した。
【0107】
また、前記蛍光剤(単斜晶ジルコニア)は、次のようにして製造した。
まず、オキシ塩化ジルコニウムを酸化ジルコニウム換算で20gとなるように秤量し、これをイオン交換水に溶解させて500gの溶液とした。
この溶液に、粉末の硫酸ナトリウムを添加し、98℃に昇温することにより塩基性硫酸ジルコニウムのスラリーを得た。このスラリーを固液分離処理し、得られた固形分の塩基性硫酸ジルコニウムをイオン交換水で水洗した。水洗した塩基性硫酸ジルコニウムをイオン交換水に再分散し、不純物を除去した塩基性硫酸ジルコニウムスラリー(塩基性硫酸ジルコニウムの濃度:酸化ジルコニウム換算で10重量%)を得た。
このスラリーに、四塩化チタン溶液を酸化チタン換算で酸化ジルコニウム系粉末全体に対して0.25重量%となるように添加した。次いで、水酸化アンモニウム溶液を添加して、スラリーのpHを9.3に調整した。得られたジルコニウム系水酸化物を固液分離して回収した後、イオン交換水で水洗し、次いで、1400℃で2時間焼成し、実施例1に係る蛍光剤(酸化ジルコニウム系粉末)を得た。
なお、実施例2-22、比較例3-4に係る蛍光剤についても実施例1の蛍光剤と同様にして製造した。
【0108】
準備した前記イットリア安定化ジルコニア粒子300gと準備した前記蛍光剤0.3gとを450gの純水に分散させてスラリー化して湿式混合し、105℃で48時間乾燥後、150μmのふるいを通して整粒した。以上により、実施例1に係るジルコニア粉末を得た。
【0109】
得られたジルコニア粉末を98MPaの圧力で一軸プレス成型し、電気炉にて1450℃で2時間保持し、実施例1に係る安定化ジルコニア焼結体を得た。
【0110】
(実施例2)
蛍光剤の混合量を0.3gから1.5gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例2に係るジルコニア粉末、及び、安定化ジルコニア焼結体を得た。
【0111】
(実施例3)
蛍光剤の混合量を0.3gから3.0gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例3に係るジルコニア粉末、及び、安定化ジルコニア焼結体を得た。
【0112】
(実施例4)
蛍光剤として、0.25質量%のTiOを含み、平均粒子径が1μmであり、結晶子径が52nmである単斜晶ジルコニアを用い、蛍光剤の混合量を0.3gから1.5gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例4に係るジルコニア粉末、及び、安定化ジルコニア焼結体を得た。
【0113】
(実施例5)
蛍光剤として、0.25質量%のTiOを含み、平均粒子径が10μmであり、結晶子径が52nmである単斜晶ジルコニアを用い、蛍光剤の混合量を0.3gから1.5gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例5に係るジルコニア粉末、及び、安定化ジルコニア焼結体を得た。
【0114】
(実施例6)
安定化ジルコニア粒子として、5.6mol%のYを含むイットリア安定化ジルコニア粒子を用い、蛍光剤として、0.25質量%のTiOを含み、平均粒子径が5μmであり、結晶子径が52nmである単斜晶ジルコニアを用い、蛍光剤の混合量を0.3gから1.5gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例6に係るジルコニア粉末、及び、安定化ジルコニア焼結体を得た。
【0115】
(実施例7)
安定化ジルコニア粒子として、7.0mol%のYを含むイットリア安定化ジルコニア粒子を用い、蛍光剤として、0.25質量%のTiOを含み、平均粒子径が10μmであり、結晶子径が52nmである単斜晶ジルコニアを用い、蛍光剤の混合量を0.3gから1.5gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例7に係るジルコニア粉末、及び、安定化ジルコニア焼結体を得た。
【0116】
(実施例8)
安定化ジルコニア粒子として、1.8mol%のYを含むイットリア安定化ジルコニア粒子を用い、蛍光剤として、0.25質量%のTiOを含み、平均粒子径が10μmであり、結晶子径が52nmである単斜晶ジルコニアを用い、蛍光剤の混合量を0.3gから0.9gに変更し、純水に分散させる際に、さらに、Alを0.75g(0.29mol%)添加したこと以外は、実施例1と同様にして実施例8に係るジルコニア粉末、及び、安定化ジルコニア焼結体を得た。
【0117】
(実施例9)
安定化ジルコニア粒子として、3.2mol%のYを含むイットリア安定化ジルコニア粒子を用い、蛍光剤として、0.25質量%のTiOを含み、平均粒子径が10μmであり、結晶子径が52nmである単斜晶ジルコニアを用い、蛍光剤の混合量を0.3gから0.9gに変更し、純水に分散させる際に、さらに、Alを0.3g(0.12mol%)添加したこと以外は、実施例1と同様にして実施例9に係るジルコニア粉末、及び、安定化ジルコニア焼結体を得た。
【0118】
(実施例10)
安定化ジルコニア粒子として、5.6mol%のYを含むイットリア安定化ジルコニア粒子を用い、蛍光剤の混合量を0.3gから1.5gに変更し、純水に分散させる際に、さらに、MnOを0.0105g(0.005mol%)添加したこと以外は、実施例1と同様にして実施例10に係るジルコニア粉末、及び、安定化ジルコニア焼結体を得た。
【0119】
(実施例11)
安定化ジルコニア粒子として、5.6mol%のYを含むイットリア安定化ジルコニア粒子を用い、蛍光剤の混合量を0.3gから1.5gに変更し、純水に分散させる際に、さらに、Vを0.009g(0.002mol%)添加したこと以外は、実施例1と同様にして実施例11に係るジルコニア粉末、及び、安定化ジルコニア焼結体を得た。
【0120】
(実施例12)
安定化ジルコニア粒子として、5.6mol%のYを含むイットリア安定化ジルコニア粒子を用い、蛍光剤の混合量を0.3gから1.5gに変更し、純水に分散させる際に、さらに、Crを0.015g(0.004mol%)添加したこと以外は、実施例1と同様にして実施例12に係るジルコニア粉末、及び、安定化ジルコニア焼結体を得た。
【0121】
(実施例13)
安定化ジルコニア粒子として、5.6mol%のYを含むイットリア安定化ジルコニア粒子を用い、蛍光剤の混合量を0.3gから1.5gに変更し、純水に分散させる際に、さらに、Coを0.015g(0.003mol%)添加したこと以外は、実施例1と同様にして実施例13に係るジルコニア粉末、及び、安定化ジルコニア焼結体を得た。
【0122】
(実施例14)
安定化ジルコニア粒子として、3.1mol%のErを含むエルビア安定化ジルコニア粒子を用い、蛍光剤の混合量を0.3gから1.5gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例11に係るジルコニア粉末、及び、安定化ジルコニア焼結体を得た。なお、前記エルビア安定化ジルコニア粒子は、実施例1のイットリア安定化ジルコニア粒子の製造方法において、塩化イットリウム溶液の代わりに、塩化エルビウム溶液を用いることにより得た。
【0123】
(実施例15)
安定化ジルコニア粒子として、6.0mol%のScを含むスカンジア安定化ジルコニア粒子を用い、蛍光剤として、0.40質量%のTiOを含み、平均粒子径が5μmであり、結晶子径が52nmである単斜晶ジルコニアを用い、蛍光剤の混合量を0.3gから3.0gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例15に係るジルコニア粉末、及び、安定化ジルコニア焼結体を得た。なお、前記スカンジア安定化ジルコニア粒子は、実施例1のイットリア安定化ジルコニア粒子の製造方法において、塩化イットリウム溶液の代わりに、塩化スカンジウム溶液を用いることにより得た。
【0124】
(実施例16)
安定化ジルコニア粒子として、3.0mol%のYと1.0mol%のYbとを含むイットリア及びイッテルビア安定化ジルコニア粒子を用い、蛍光剤の混合量を0.3gから1.5gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例16に係るジルコニア粉末、及び、安定化ジルコニア焼結体を得た。なお、前記イットリア及びイッテルビア安定化ジルコニア粒子は、実施例1のイットリア安定化ジルコニア粒子の製造方法において、塩化イットリウム溶液に加えて塩化イッテルビウム溶液を添加することにより得た。
【0125】
(実施例17)
安定化ジルコニア粒子として、2.0mol%のYを含むイットリア安定化ジルコニア粒子を用い、蛍光剤として、0.40質量%のTiOを含み、平均粒子径が3μmであり、結晶子径が52nmである単斜晶ジルコニアを用い、蛍光剤の混合量を0.3gから0.9gに変更し、純水に分散させる際に、さらに、Feを0.006g(0.002mol%)添加したこと以外は、実施例1と同様にして実施例17に係るジルコニア粉末、及び、安定化ジルコニア焼結体を得た。
【0126】
(実施例18)
安定化ジルコニア粒子として、2.0mol%のYを含むイットリア安定化ジルコニア粒子を用い、蛍光剤として、0.40質量%のTiOを含み、平均粒子径が10μmであり、結晶子径が44nmである単斜晶ジルコニアを用い、蛍光剤の混合量を0.3gから1.5gに変更し、純水に分散させる際に、さらに、Alを75.0g(23.5mol%)添加し、焼結体を得る際の電気炉での保持温度を1500℃にしたこと以外は、実施例1と同様にして実施例18に係るジルコニア粉末、及び、安定化ジルコニア焼結体を得た。
【0127】
(実施例19)
Alの代わりにSiOを0.21mol%添加したこと以外は、実施例9と同様にして実施例19に係るジルコニア粉末、及び、安定化ジルコニア焼結体を得た。
【0128】
(実施例20)
Alの代わりにTiOを0.15mol%添加したこと以外は、実施例9と同様にして実施例20に係るジルコニア粉末、及び、安定化ジルコニア焼結体を得た。
【0129】
(実施例21)
Alの代わりにZnOを0.38mol%添加したこと以外は、実施例9と同様にして実施例21に係るジルコニア粉末、及び、安定化ジルコニア焼結体を得た。
【0130】
(実施例22)
Alの代わりにNbを0.09mol%添加したこと以外は、実施例9と同様にして実施例22に係るジルコニア粉末、及び、安定化ジルコニア焼結体を得た。
【0131】
(比較例1)
実施例1で準備したイットリア安定化ジルコニア粒子を98MPaの圧力で一軸プレス成型し、電気炉にて1450℃で2時間保持し、比較例1に係る安定化ジルコニア焼結体を得た。なお、比較例1の安定化ジルコニア焼結体は、蛍光剤を含有していない。
【0132】
(比較例2)
3.0mol%のYと0.10mol%のTiOとを含むイットリア及びチタニア安定化ジルコニア粒子を98MPaの圧力で一軸プレス成型し、電気炉にて1450℃で2時間保持し、比較例2に係る安定化ジルコニア焼結体を得た。なお、比較例2の安定化ジルコニア焼結体は、蛍光剤を含有していない。
【0133】
(比較例3)
蛍光剤として、0.15質量%のTiOを含み、平均粒子径が2μmであり、結晶子径が36nmである単斜晶ジルコニアを用い、蛍光剤の混合量を0.3gから1.5gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして比較例3に係るジルコニア粉末、及び、安定化ジルコニア焼結体を得た。
【0134】
(比較例4)
安定化ジルコニア粒子として、5.6mol%のYを含むイットリア安定化ジルコニア粒子を用い、蛍光剤として、0.25質量%のTiOを含み、平均粒子径が10μmであり、結晶子径が52nmである単斜晶ジルコニアを用い、蛍光剤の混合量を0.3gから1.5gに変更し、純水に分散させる際に、さらに、Feを0.27g(0.07mol%)添加したこと以外は、実施例1と同様にして比較例4に係るジルコニア粉末、及び、安定化ジルコニア焼結体を得た。
【0135】
(比較例5)
蛍光剤を添加しなかったこと以外は、実施例11と同様にして比較例5に係るジルコニア粉末、及び、安定化ジルコニア焼結体を得た。
【0136】
[蛍光剤の結晶子径の測定]
実施例、比較例で用いた蛍光剤について、X線回折装置(「RINT2500」リガク製)を用い、X線回折スペクトルを得た。測定条件は下記の通りとした。
<測定条件>
測定装置:X線回折装置(リガク製、RINT2500)
線源:CuKα線源
サンプリング間隔:0.02°
スキャン速度:2θ=1.0°/分
発散スリット(DS):1°
発散縦制限スリット:5mm
散乱スリット(SS):1°
受光スリット(RS):0.3mm
モノクロ受光スリット:0.8mm
管電圧:50kV
管電流:300mA
【0137】
その後、得られたピークからScherrerの式を用いて結晶子径を求めた。
【0138】
[蛍光剤の平均粒径の測定]
実施例、比較例で用いた蛍光剤の平均粒子径は、レーザー回折式粒子径分布測定装置「SALD-2300」(島津製作所社製)を用いて測定した。より詳細には、サンプル0.15gと40mlの0.2%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液とを50mlビーカーに投入し、卓上超音波洗浄機「W-113」(本多電子株式会社製)で2分間分散した後、装置(レーザー回折式粒子径分布測定装置(「SALD-2300」島津製作所社製))に投入して測定した。
【0139】
[安定化ジルコニア粒子の平均粒子径の測定]
実施例、比較例で用いた安定化ジルコニア粒子の平均粒子径は、レーザー回折式粒子径分布測定装置「SALD-2300」(島津製作所社製)を用いて測定した。より詳細には、サンプル0.15gと40mlの0.2%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液とを50mlビーカーに投入し、卓上超音波洗浄機「W-113」(本多電子株式会社製)で2分間分散した後、装置(レーザー回折式粒子径分布測定装置(「SALD-2300」島津製作所社製))に投入して測定した。結果を表1に示す。
【0140】
[安定化ジルコニアの比表面積の測定]
実施例、比較例で用いた安定化ジルコニアの比表面積を、比表面積計(「マックソーブ」マウンテック製)を用いてBET法にて測定した。結果を表1に示す。
【0141】
[安定化ジルコニア焼結体の蛍光強度の測定]
実施例、比較例の安定化ジルコニア焼結体について、浜松ホトニクス株式会社製のQuantaurus-QY C11347を用い、波長280nmの光を照射した際の、蛍光強度の最も大きい波長(発光ピークの波長)における蛍光強度を測定した。結果を表1に示す。蛍光強度の測定の詳細な条件は、下記の通りである。なお、実施例1-3、及び、比較例1については、各蛍光波長における蛍光強度を示すグラフを図3に示す。
<測定条件>
量子収率測定のSingle波長モード
検出器設定:露光時間500ms、アベレージング20回、波長範囲195.7~958.3nm、Shutter close
色計測設定:光源色計測、自動モード、演色評価表示項目Ra
ランプ:150W Xeランプ(280nmで励起)
【0142】
また、実施例3の安定化ジルコニア焼結体については、励起波長を260nmから350nmまで変化させて、蛍光波長(発光ピークの波長)と蛍光強度とを測定した。結果を表2に示す。
【0143】
[安定化ジルコニア焼結体の3点曲げ強度の測定]
実施例、比較例の安定化ジルコニア焼結体の3点曲げ強度を、JIS R 1601の3点曲げ強さに準拠して測定した。結果を表1に示す。
【0144】
[安定化ジルコニア焼結体の相対焼結密度の測定]
実施例、比較例の安定化ジルコニア焼結体の相対焼結密度を下記式(1)に従って求めた。
【0145】
前記相対焼結密度は、下記式(1)で表される相対焼結密度のことをいう。
相対焼結密度(%)=(焼結密度/理論焼結密度)×100・・・(1)
ここで、理論焼結密度(ρとする)は,下記式(2-1)によって算出される値である。
ρ0=100/[(Y/3.987)+(100-Y)/ρz]・・・(2-1)
ただし,ρzは,下記式(2-2)によって算出される値である。
ρz=[124.25(100-X)+[安定化剤の分子量]×X]/[150.5(100+X)AC]・・・(2-2)
ここで、前記安定化剤の分子量は、前記安定化剤がYの場合225.81、Erの場合382.52、Ybの場合394.11を用いる。
また、X及びYはそれぞれ、安定化剤濃度(モル%)及びアルミナ濃度(重量%)である。また、A及びCはそれぞれ、下記式(2-3)及び(2-4)によって算出される値である。
A=0.5080+0.06980X/(100+X)・・・(2-3)
C=0.5195-0.06180X/(100+X)・・・(2-4)
式(1)において、理論焼結密度は,粉末の組成によって変動する。例えば、イットリア含有ジルコニアの理論焼結密度は、イットリア含有量が2mol%であれば6.117g/cm、3mol%であれば6.098g/cm、5.5mol%であれば6.051g/cmである(Al=0重量%の場合)。
安定化剤がScの場合、ρzは下記式(3)によって算出される値である。
ρz=-0.0402(Scのモル濃度)+6.1294・・・(3)
また、焼結密度は、アルキメデス法にて計測した。
【0146】
【表1】
【0147】
【表2】
図1
図2
図3