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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-01
(45)【発行日】2023-02-09
(54)【発明の名称】電極および蓄電デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/13 20100101AFI20230202BHJP
   H01M 4/02 20060101ALI20230202BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20230202BHJP
   H01M 4/80 20060101ALI20230202BHJP
   H01M 4/70 20060101ALI20230202BHJP
   H01M 50/531 20210101ALI20230202BHJP
   H01G 11/70 20130101ALI20230202BHJP
   H01G 11/74 20130101ALI20230202BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/02 Z
H01M4/66 A
H01M4/80 C
H01M4/70 A
H01M50/531
H01G11/70
H01G11/74
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022009958
(22)【出願日】2022-01-26
(65)【公開番号】P2022117960
(43)【公開日】2022-08-12
【審査請求日】2022-02-28
(31)【優先権主張番号】P 2021014550
(32)【優先日】2021-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】谷内 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】田名網 潔
(72)【発明者】
【氏名】大田 正弘
(72)【発明者】
【氏名】有賀 稔之
(72)【発明者】
【氏名】田中 俊充
【審査官】福井 晃三
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-059396(JP,A)
【文献】国際公開第2020/115954(WO,A1)
【文献】特表2003-526185(JP,A)
【文献】特表2022-523812(JP,A)
【文献】特開平9-231978(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0313155(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00- 4/62
H01M 4/64- 4/84
H01M 50/50-50/598
H01G 11/00-11/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体と、電極合材と、貫通孔が形成されている金属板状体と、電極タブと、を有し、
前記集電体は、金属多孔質体であり、
前記集電体の空隙に、前記電極合材が充填されており、
前記電極タブは、前記金属板状体から延出している延出部であり、
前記貫通孔に、樹脂が存在しており、
上面視した場合に、前記集電体の内部に、前記金属板状体の前記貫通孔が形成されている領域が配置されている、電極。
【請求項2】
前記貫通孔に、前記樹脂が充填されている金属多孔質体が存在している、請求項1に記載の電極。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電極を有する、蓄電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極および蓄電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高エネルギー密度を有する蓄電デバイスとして、リチウムイオン二次電池が幅広く普及している。リチウムイオン二次電池は、例えば、正極と負極との間にセパレータが存在し、電解液が充填されている構造を有する。また、電解液の代わりに、無機固体電解質を用いた全固体電池も知られている。
【0003】
このようなリチウムイオン二次電池は、用途によって様々な要求があり、例えば、自動車等を用途とする場合には、体積エネルギー密度をさらに向上させる要請がある。これに対しては、電極活物質の充填密度を大きくする方法が挙げられる。
【0004】
電極活物質の充填密度を大きくする方法としては、正極および負極を構成する集電体として、発泡金属を用いることが提案されている(特許文献1および2参照)。発泡金属は、細孔径が均一な網目構造を有し、表面積が大きい。このため、発泡金属の空隙に、電極活物質を含む電極合材を充填することで、電極の単位面積あたりの電極活物質量を増加させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平7-099058号公報
【文献】特開平8-329954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、集電体として、発泡金属を用いる場合、プレス等により、発泡金属の端部を圧縮することで、電極タブを形成するのが一般的である。
【0007】
しかしながら、充放電により、電極合材が体積膨張するため、集電体の電極合材が充填されている部分と、電極タブとの境界に応力が印加されて、亀裂が入り、その結果、リチウムイオン二次電池の出力が低下するという課題がある。特に、SiやSnのような体積膨張が大きい負極活物質を用いる場合に、この課題が顕著である。
【0008】
本発明は、耐久性を向上させることが可能な電極を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、電極において、集電体と、電極合材と、貫通孔が形成されている金属板状体と、電極タブと、を有し、前記集電体は、金属多孔質体であり、前記集電体の空隙に、前記電極合材が充填されており、前記電極タブは、前記金属板状体から延出している延出部であり、前記貫通孔に、樹脂が存在しており、上面視した場合に、前記集電体の内部に、前記金属板状体の前記貫通孔が形成されている領域が配置されている。
【0010】
前記貫通孔に、前記樹脂が充填されている金属多孔質体が存在していてもよい。
【0011】
本発明の他の一態様は、蓄電デバイスにおいて、上記の電極を有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、耐久性を向上させることが可能な電極を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態の電極の一例を示す断面図である。
図2図1の電極に対応する金属板状体および電極タブの一例を示す上面図である。
図3】本実施形態のリチウムイオン二次電池の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
【0015】
<電極>
図1に、本実施形態の電極の一例を示す。図2に、図1の電極に対応する金属板状体および電極タブの一例を示す。
【0016】
電極10は、集電体11と、電極合材と、貫通孔21が形成されている金属板状体12(図2参照)と、電極タブ12Aと、を有する。集電体11は、金属多孔質体であり、集電体11の空隙に、電極合材が充填されている。電極タブ12Aは、金属板状体12から延出している延出部であり、貫通孔21に樹脂13が存在している。電極10は、上面視した場合に、集電体11の内部に、金属板状体12の貫通孔21が形成されている領域が配置されている。
【0017】
電極10は、電極合材が充填されている集電体11と、電極タブ12Aが別の構造体として存在しているため、充放電により、電極合材が体積膨張しても、集電体11と、電極タブ12Aとの境界に亀裂が入らず、その結果、リチウムイオン二次電池の出力安定性が向上する。
【0018】
また、電極10は、金属板状体12に形成されている貫通孔21に樹脂13が存在しているため、電極合材の厚み方向の体積膨張を吸収することができる。
【0019】
なお、電極10においては、金属板状体12の貫通孔21が形成されている領域が集電体11の内部に配置されるように、金属板状体12が設置されているが、金属板状体12の貫通孔21が形成されている領域が集電体11の上部または下部に配置されるように、金属板状体12が設置されていてもよい。
【0020】
電極10は、貫通孔21に、樹脂が充填されている金属多孔質体が存在していてもよい。この場合、金属多孔質体のアンカー効果により、金属板状体12の上側に存在する集電体11と、金属板状体12の下側に存在する集電体11の積層ズレを抑制することができる。
【0021】
なお、樹脂が充填される金属多孔質体は、集電体11を構成する金属多孔質体と同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0022】
[金属多孔質体]
金属多孔質体としては、電極合材または樹脂を空隙に充填することが可能な金属の多孔質体であれば、特に限定されないが、例えば、発泡金属等が挙げられる。
【0023】
発泡金属は、網目構造を有し、表面積が大きい。発泡金属を集電体として用いることにより、発泡金属の空隙に、電極合材を充填することができ、電極の単位面積あたりの電極活物質量を増加させることができ、二次電池の体積エネルギー密度を向上させることができる。また、電極合材の固定化が容易となるため、電極合材の塗工に用いるスラリーを増粘しなくても、電極合材の厚膜を形成することできる。また、スラリーの増粘に必要な結着剤を低減することができる。したがって、金属箔を集電体として用いる場合と比較して、抵抗が低い電極合材の厚膜を形成することができる。このため、電極の単位面積当たりの容量を増加させることができ、その結果、二次電池の高容量化に貢献することができる。
【0024】
金属多孔質体を構成する金属としては、例えば、ニッケル、アルミニウム、ステンレス鋼、チタン、銅、銀等が挙げられる。これらの中では、正極集電体を構成する金属多孔質体としては、発泡アルミニウムが好ましく、負極集電体を構成する金属多孔質体としては、発泡銅や発泡ステンレス鋼が好ましい。
【0025】
[電極合材]
電極合材は、電極活物質を含み、その他の成分をさらに含んでいてもよい。
【0026】
その他の成分としては、例えば、固体電解質、導電助剤、結着剤等が挙げられる。
【0027】
正極合材に含まれる正極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵および放出することが可能であれば、特に限定されないが、例えば、LiCoO、Li(Ni5/10Co2/10Mn3/10)O2、Li(Ni6/10Co2/10Mn2/10)O2、Li(Ni8/10Co1/10Mn1/10)O2、Li(Ni0.8Co0.15Al0.05)O2、Li(Ni1/6Co4/6Mn1/6)O2、Li(Ni1/3Co1/3Mn1/3)O2、LiCoO、LiMn、LiNiO、LiFePO、硫化リチウム、硫黄等が挙げられる。
【0028】
負極合材に含まれる負極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵および放出することが可能であれば、特に限定されないが、例えば、金属リチウム、リチウム合金、金属酸化物、金属硫化物、金属窒化物、Si、SiO、Sn、炭素材料等が挙げられる。
【0029】
炭素材料としては、例えば、人工黒鉛、天然黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボン等が挙げられる。
【0030】
[金属板状体]
金属板状体の性状としては、集電することが可能であれば、特に限定されず、例えば、箔状、メッシュ状、発泡状等が挙げられる。
【0031】
金属板状体を構成する金属としては、例えば、ニッケル、アルミニウム、ステンレス鋼、チタン、銅等が挙げられる。これらの中では、正極用の金属板状体としては、アルミニウムが好ましく、負極用の金属板状体としては、銅が好ましい。
【0032】
金属板状体が金属箔である場合は、金属箔の集電体と接触する領域に、カーボンコートを施したり、摩擦係数が高くなるように面粗度を粗くしたりしてもよい。これにより、金属箔の上側に存在する集電体と、金属箔の下側に存在する集電体の積層ズレを抑制することができる。
【0033】
金属板状体は、集電体よりも、表面積が大きくてもよい。これにより、電極合材が膨張しても、集電することが可能になるため、リチウムイオン二次電池の出力安定性が向上する。
【0034】
金属板状体の厚みは、1μm以上500μm以下であることが好ましく、5μm以上200μm以下であることがさらに好ましい。
【0035】
金属板状体に形成されている貫通孔の断面形状としては、特に限定されず、例えば、円、多角形等が挙げられる。
【0036】
金属板状体の表面積に対する金属板状体の表面における貫通孔の総断面積の比は、1%以上90%以下が好ましく、5%以上50%以下がさらに好ましい。
【0037】
金属板状体に形成されている貫通孔の個数は、1個以上であればよいが、2個以上であることで、θズレを防止することができる。
【0038】
なお、金属板状体に複数個の貫通孔が形成されている場合は、θズレを防止する観点から、金属板状体の表面の対角線上に貫通孔が形成されていることが好ましい。
【0039】
[電極タブ]
電極タブは、金属板状体の端部を圧延することにより、形成してもよい。
【0040】
[樹脂]
金属板状体の貫通孔に存在する樹脂としては、電極合材の厚み方向の体積膨張を吸収することが可能であれば、特に限定されず、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、光硬化性樹脂等が挙げられる。
【0041】
熱硬化性樹脂としては、例えば、ポリイミド系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリウレタン系樹脂等が挙げられる。
【0042】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリメタクリル酸系樹脂、ポリウレタン系樹脂等が挙げられる。
【0043】
光硬化性樹脂としては、例えば、シリコーン系樹脂、ポリメタクリル酸系樹脂、ポリエステル系樹脂等が挙げられる。
【0044】
<電極の製造方法>
本実施形態の電極の製造方法は、特に限定されず、本技術分野における通常の方法を適用することができる。
【0045】
集電体の内部に電極タブの貫通孔が形成されている領域を配置する方法としては、例えば、電極タブの貫通孔に樹脂を配置した後、空隙に電極合材が充填されている金属多孔質体で電極タブの貫通孔が形成されている領域を挟み込み、圧着接着する方法等が挙げられる。
【0046】
集電体の空隙に電極合材を充填する方法としては、特に限定されないが、例えば、プランジャー式ダイコーターを用いて、圧力をかけて電極合材を含むスラリーを集電体の空隙に充填する方法、ディップ方式により、電極合材を含むスラリーを集電体の空隙に含浸させる方法等が挙げられる。
【0047】
集電体の空隙に電極合材を充填する他の方法としては、集電体の電極合材を導入する側の面と、その反対側の面との間に圧力差を生じさせ、圧力差により、集電体の空隙に電極合材を浸透させて充填する方法が挙げられる。この場合、導入される電極合材の性状は、特に限定されず、電極合材の粉体であってもよいし、電極合材を含むスラリー等の液体であってもよい。
【0048】
なお、樹脂の代わりに、空隙に樹脂が充填されている金属多孔質体を、電極タブの貫通孔に配置してもよい。
【0049】
金属多孔質体の空隙に樹脂を充填する方法は、集電体の空隙に電極合材を充填する方法と同様である。
【0050】
集電体の内部に電極タブを設置した後は、本技術分野における通常の方法を適用することができる。例えば、電極タブが内部に設置された集電体をプレスして、電極を得る。このとき、プレスにより、電極合材の密度を調整することができる。
【0051】
<蓄電デバイス>
本実施形態の蓄電デバイスは、本実施形態の電極を有する。
【0052】
蓄電デバイスとしては、例えば、リチウムイオン二次電池等の二次電池、キャパシタ等が挙げられる。
【0053】
リチウムイオン二次電池は、液体の電解質を備える電池であってもよいし、固体またはゲル状の電解質を備える電池であってもよい。また、固体またはゲル状の電解質は、有機系であってもよいし、無機系であってもよい。
【0054】
本実施形態の電極は、正極のみに適用してもよいし、負極のみに適用してもよいし、正極および負極の両方に適用してもよい。
【0055】
なお、本実施形態の電極をリチウムイオン二次電池に適用する場合、負極活物質の体積膨張が大きいことから、本実施形態の電極を負極に適用する場合に、特に有利である。
【0056】
[リチウムイオン二次電池]
本実施形態のリチウムイオン二次電池は、正極と、負極と、正極と負極との間に位置するセパレータまたは固体電解質層と、を備える。本実施形態のリチウムイオン二次電池においては、正極および負極の少なくとも一方が、本実施形態の電極となっている。
【0057】
本実施形態のリチウムイオン二次電池において、本実施形態の電極が適用されない正極または負極は、特に限定されず、リチウムイオン二次電池の正極または負極として機能するものであればよい。
【0058】
本実施形態のリチウムイオン二次電池においては、電極を構成することが可能な材料から2種類の材料を選択し、2種類の材料の充放電電位を比較して、貴な電位を示す材料を正極に、卑な電位を示す材料を負極に適用して、任意の電池を構成することができる。
【0059】
本実施形態のリチウムイオン二次電池がセパレータを備える場合には、セパレータは、正極と負極との間に位置する。
【0060】
セパレータとしては、特に限定されず、リチウムイオン二次電池に適用することが可能な公知のセパレータを用いることができる。
【0061】
図3に、本実施形態のリチウムイオン二次電池の一例を示す。リチウムイオン二次電池30は、電極10を負極に適用した例である。
【0062】
リチウムイオン二次電池30は、電極(負極)10の両面に、セパレータ31を介して、正極32および電極(負極)10が順次形成されており、正極32には、電極タブ33が形成されている。
【0063】
なお、リチウムイオン二次電池30を構成する電極(負極)10および正極32の個数は、特に限定されない。
【0064】
電極タブ33としては、特に限定されず、公知の電極タブを適用することができる。
【0065】
正極32が、集電体としての、金属多孔質体の空隙に、電極合材が充填されている場合は、電極タブ33は、集電体の端部を圧延することにより、形成することができる。
【0066】
本実施形態のリチウムイオン二次電池が固体電解質層を備える場合には、固体電解質層は、正極と負極との間に位置する。
【0067】
固体電解質層に含まれる固体電解質は、特に限定されず、正極と負極との間で、リチウムイオンを伝導することが可能な材料であればよい。
【0068】
固体電解質としては、例えば、酸化物系電解質、硫化物系電解質等が挙げられる。
【符号の説明】
【0069】
10 電極(負極)
11 集電体
12 金属板状体
12A 電極タブ
13 樹脂
21 貫通孔
30 リチウムイオン二次電池
31 セパレータ
32 正極
33 電極タブ
図1
図2
図3