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特許7220324グレーディングのためのシステム、方法、およびプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-01
(45)【発行日】2023-02-09
(54)【発明の名称】グレーディングのためのシステム、方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/10 20200101AFI20230202BHJP
   G06F 30/27 20200101ALI20230202BHJP
   G06N 20/00 20190101ALI20230202BHJP
【FI】
G06F30/10 100
G06F30/27
G06N20/00
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2022158548
(22)【出願日】2022-09-30
【審査請求日】2022-09-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505300841
【氏名又は名称】株式会社ZOZO
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】大垣 真二
【審査官】堀井 啓明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/021349(WO,A1)
【文献】国際公開第2022/024200(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第110584252(CN,A)
【文献】特開2017-166114(JP,A)
【文献】特開平11-286818(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/00-30/398
G06N 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グレーディングのためのシステムであって、前記システムは、
標的衣服を識別する衣服識別情報とサイズ情報とを受信する受信手段と、
前記衣服識別情報と前記サイズ情報とに基づいて、学習済モデルを使用して、前記標的衣服と同種の衣服であって、前記サイズ情報が示すサイズに適合するサイズを有する衣服の型紙データを生成する生成手段であって、前記学習済モデルは、数の衣服の型紙データ間の関係を学習することによって得られたモデルであり、前記複数の衣服は、前記標的衣服と同種の衣服である、生成手段と、
前記生成された型紙データを出力する出力手段と
を備えるシステム。
【請求項2】
前記複数の衣服の型紙データの各々は、複数の座標点によって表現されており、前記学習済モデルは、前記複数の衣服の型紙データの座標点の数を揃えて、前記複数の衣服の型紙データ間の関係を学習している、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記標的衣服および前記複数の衣服は、それらのサイズに応じて個数が変動する部品を備え、前記学習済モデルは、前記複数の衣服の型紙データにおける前記部品の個数を揃えて、前記複数の衣服の型紙データ間の関係を学習している、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記生成手段は、前記サイズ情報が示すサイズに応じて、前記学習済モデルから出力された型紙データから1または複数の前記部品を削除するようにさらに構成されている、請求項に記載のシステム。
【請求項5】
前記部品は、ボタン、ボタンホール、ループ、タック、ダーツ、プリーツのうちの少なくとも1つを含む、請求項に記載のシステム。
【請求項6】
前記生成された型紙データの信頼度を算出する算出手段をさらに備え、
前記出力手段は、前記信頼度が所定の閾値よりも低い場合に、通知を出力するか、前記型紙データを出力しない、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記信頼度が前記所定の閾値よりも低い場合に、前記サイズを有する衣服の型紙データを前記学習済モデルに学習させる学習手段をさらに備える、請求項に記載のシステム。
【請求項8】
前記複数の衣服の型紙データは、縫い代を含まず、
前記生成手段は、前記学習済モデルから出力された型紙データに縫い代を付加するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記型紙データは、パラメトリック曲線を用いて表現される、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
衣服製造システムであって、
請求項1~9のいずれか一項に記載のシステムと、
前記出力された型紙データに基づいて、衣服を製造する手段と
を備える衣服製造システム。
【請求項11】
衣服創造システムであって、前記システムは、
サイズ情報を受信する受信手段と、
前記サイズ情報に基づいて、学習済モデルを使用して、前記サイズ情報が示すサイズに適合するサイズを有する衣服の型紙データを生成する生成手段であって、前記学習済モデルは、数の衣服の型紙データ間の関係を学習することによって得られたモデルであり、前記複数の衣服は、特定の衣服と同種の衣服である、生成手段と
前記生成された型紙データを出力する出力手段と
を備えるシステム。
【請求項12】
グレーディングのための方法であって、前記方法は、
標的衣服を識別する衣服識別情報とサイズ情報とを受信することと、
前記衣服識別情報と前記サイズ情報とに基づいて、学習済モデルを使用して、前記標的衣服と同種の衣服であって、前記サイズ情報が示すサイズに適合するサイズを有する衣服の型紙データを生成することであって、前記学習済モデルは、数の衣服の型紙データ間の関係を学習することによって得られたモデルであり、前記複数の衣服は、前記標的衣服と同種の衣服である、ことと
前記生成された型紙データを出力することと
を含む方法。
【請求項13】
グレーディングのためのプログラムであって、前記プログラムは、プロセッサを備えるコンピュータにおいて実行され、前記プログラムは、
標的衣服を識別する衣服識別情報とサイズ情報とを受信することと、
前記衣服識別情報と前記サイズ情報とに基づいて、学習済モデルを使用して、前記標的衣服と同種の衣服であって、前記サイズ情報が示すサイズに適合するサイズを有する衣服の型紙データを生成することであって、前記学習済モデルは、数の衣服の型紙データ間の関係を学習することによって得られたモデルであり、前記複数の衣服は、前記標的衣服と同種の衣服である、ことと
前記生成された型紙データを出力することと
を含む処理を前記プロセッサに行わせる、プログラム。
【請求項14】
グレーディングのための学習済モデルを生成するためのシステムであって、
複数の衣服の型紙データを受信する受信手段であって、前記複数の衣服の型紙データの各々は、複数の座標点によって表現されている、受信手段と、
前記複数の衣服の型紙データを前処理する前処理手段であって、前記前処理手段は、前記複数の衣服の型紙データの座標点の数を揃えるように、前記複数の衣服の型紙データのうちの少なくとも1つの型紙データに座標点を追加する、前処理手段と、
前記前処理された複数の衣服の型紙データの間の関係を学習する学習手段と
を備える、システム。
【請求項15】
前記複数の衣服は、それらのサイズに応じて個数が変動する部品を備え、
前記前処理手段は、前記複数の衣服の型紙データにおける前記部品の個数を揃えるように、前記複数の衣服の型紙データのうちの少なくとも1つの型紙データに前記部品を追加する、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記前処理された複数の衣服の型紙データは、縫い代を含まない、請求項14に記載のシステム。
【請求項17】
前記複数の衣服の型紙データの各々は、寸法情報を含み、
前記学習手段は、前記前処理された複数の衣服の型紙データの寸法の間の関係も学習する、請求項14に記載のシステム。
【請求項18】
グレーディングのための学習済モデルを生成するための方法であって、
複数の衣服の型紙データを受信することであって、前記複数の衣服の型紙データの各々は、複数の座標点によって表現されている、ことと、
前記複数の衣服の型紙データを前処理することであって、前記前処理手段は、前記複数の衣服の型紙データの座標点の数を揃えるように、前記複数の衣服の型紙データのうちの少なくとも1つの型紙データに座標点を追加する、ことと、
前記前処理された複数の衣服の型紙データの間の関係を学習することと
を含む方法。
【請求項19】
グレーディングのための学習済モデルを生成するためのプログラムであって、前記プログラムは、プロセッサを備えるコンピュータにおいて実行され、前記プログラムは、
複数の衣服の型紙データを受信することであって、前記複数の衣服の型紙データの各々は、複数の座標点によって表現されている、ことと、
前記複数の衣服の型紙データを前処理することであって、前記前処理手段は、前記複数の衣服の型紙データの座標点の数を揃えるように、前記複数の衣服の型紙データのうちの少なくとも1つの型紙データに座標点を追加する、ことと、
前記前処理された複数の衣服の型紙データの間の関係を学習することと
を含む処理を前記プロセッサ部に行わせる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グレーディングのためのシステム、方法、およびプログラムに関する。本発明は、衣服製造システム、衣服創造システム、グレーディングのための学習済モデルを生成するためのシステムならびにそれらに関する方法およびプログラムにも関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プロシージャラルまたはルール・ベースのグレーディング手法が知られている(例えば、特許文献1)。この手法では、ルールに従って、様々な関数を組み合わせることにより目的のサイズの形状を作成する。この手法では、細かい部位の形状や寸法の制御が可能である一方で、手作業では縫い合わせ部分の長さを完全に合わせることが非常に難しく、1つの衣服の型紙を作成するには長い時間がかかり、この手法で実装されたソフトウェアの操作の習得には長い期間を要する。また、人為的なミスによって意図せぬ形状となることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2021-508873号公報
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の発明者は、鋭意研究の結果、新たなグレーディングの手法を発明した。新たなグレーディングの手法では、複数の衣服の型紙データ間の関係を学習することによって得られた学習済モデルを利用して、グレーディングを行う。
【0005】
従って、本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
グレーディングのためのシステムであって、前記システムは、
標的衣服を識別する衣服識別情報とサイズ情報とを受信する受信手段と、
前記衣服識別情報と前記サイズ情報とに基づいて、学習済モデルを使用して、前記標的衣服と同種の衣服であって、前記サイズ情報が示すサイズに適合するサイズを有する衣服の型紙データを生成する生成手段であって、前記学習済モデルは、前記標的衣服と同種の複数の衣服の型紙データ間の関係を学習することによって得られたモデルである、生成手段と、
前記生成された型紙データを出力する出力手段と
を備えるシステム。
(項目2)
前記標的衣服および前記複数の衣服は、それらのサイズに応じて個数が変動する部品を備え、前記学習済モデルは、前記複数の衣服の型紙データにおける前記部品の個数を揃えて、前記複数の衣服の型紙データ間の関係を学習している、上記項目に記載のシステム。
(項目3)
前記生成手段は、前記サイズ情報が示すサイズに応じて、前記学習済モデルから出力された型紙データから1または複数の前記部品を削除するようにさらに構成されている、上記項目のいずれか一項に記載のシステム。
(項目4)
前記部品は、ボタン、ボタンホール、ループ、タック、ダーツ、プリーツのうちの少なくとも1つを含む、上記項目のいずれか一項に記載のシステム。
(項目5)
前記生成された型紙データの信頼度を算出する算出手段をさらに備え、
前記出力手段は、前記信頼度が所定の閾値よりも低い場合に、通知を出力するか、前記型紙データを出力しない、上記項目のいずれか一項に記載のシステム。
(項目6)
前記信頼度が前記所定の閾値よりも低い場合に、前記サイズを有する衣服の型紙データを前記学習済モデルに学習させる学習手段をさらに備える、上記項目のいずれか一項に記載のシステム。
(項目7)
前記複数の衣服の型紙データは、縫い代を含まず、
前記生成手段は、前記学習済モデルから出力された型紙データに縫い代を付加するように構成されている、上記項目のいずれか一項に記載のシステム。
(項目8)
前記型紙データは、パラメトリック曲線を用いて表現される、上記項目のいずれか一項に記載のシステム。
(項目9)
衣服製造システムであって、
項目1~8のいずれか一項に記載のシステムと、
前記出力された型紙データに基づいて、衣服を製造する手段と
を備える衣服製造システム。
(項目10)
衣服創造システムであって、前記システムは、
サイズ情報を受信する受信手段と、
前記サイズ情報に基づいて、学習済モデルを使用して、前記サイズ情報が示すサイズに適合するサイズを有する衣服の型紙データを生成する生成手段であって、前記学習済モデルは、前記標的衣服と同種の複数の衣服の型紙データ間の関係を学習することによって得られたモデルである、生成手段と
前記生成された型紙データを出力する出力手段と
を備えるシステム。
(項目11)
グレーディングのための方法であって、前記方法は、
標的衣服を識別する衣服識別情報とサイズ情報とを受信することと、
前記衣服識別情報と前記サイズ情報とに基づいて、学習済モデルを使用して、前記標的衣服と同種の衣服であって、前記サイズ情報が示すサイズに適合するサイズを有する衣服の型紙データを生成することであって、前記学習済モデルは、前記標的衣服と同種の複数の衣服の型紙データ間の関係を学習することによって得られたモデルである、ことと
前記生成された型紙データを出力することと
を含む方法。
(項目11A)
上記項目のうちの1つまたは複数に記載の特徴を備える、項目11に記載の方法。
(項目12)
グレーディングのためのプログラムであって、前記プログラムは、プロセッサを備えるコンピュータにおいて実行され、前記プログラムは、
標的衣服を識別する衣服識別情報とサイズ情報とを受信することと、
前記衣服識別情報と前記サイズ情報とに基づいて、学習済モデルを使用して、前記標的衣服と同種の衣服であって、前記サイズ情報が示すサイズに適合するサイズを有する衣服の型紙データを生成することであって、前記学習済モデルは、前記標的衣服と同種の複数の衣服の型紙データ間の関係を学習することによって得られたモデルである、ことと
前記生成された型紙データを出力することと
を含む処理を前記プロセッサに行わせる、プログラム。
(項目12A)
上記項目のうちの1つまたは複数に記載の特徴を備える、項目12に記載のプログラム。
(項目12B)
項目12または12Aに記載のプログラムを格納するコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
(項目13)
グレーディングのための学習済モデルを生成するためのシステムであって、
複数の衣服の型紙データを受信する受信手段であって、前記複数の衣服の型紙データの各々は、複数の座標点によって表現されている、受信手段と、
前記複数の衣服の型紙データを前処理する前処理手段であって、前記前処理手段は、前記複数の衣服の型紙データの座標点の数を揃えるように、前記複数の衣服の型紙データのうちの少なくとも1つの型紙データに座標点を追加する、前処理手段と、
前記前処理された複数の衣服の型紙データの間の関係を学習する学習手段と
を備える、システム。
(項目14)
前記複数の衣服は、それらのサイズに応じて個数が変動する部品を備え、
前記前処理手段は、前記複数の衣服の型紙データにおける前記部品の個数を揃えるように、前記複数の衣服の型紙データのうちの少なくとも1つの型紙データに前記部品を追加する、上記項目のいずれか一項に記載のシステム。
(項目15)
前記前処理された複数の衣服の型紙データは、縫い代を含まない、上記項目のいずれか一項に記載のシステム。
(項目16)
前記複数の衣服の型紙データの各々は、寸法情報を含み、
前記学習手段は、前記前処理された複数の衣服の型紙データの寸法の間の関係も学習する、上記項目のいずれか一項に記載のシステム。
(項目17)
グレーディングのための学習済モデルを生成するための方法であって、
複数の衣服の型紙データを受信することであって、前記複数の衣服の型紙データの各々は、複数の座標点によって表現されている、ことと、
前記複数の衣服の型紙データを前処理することであって、前記前処理手段は、前記複数の衣服の型紙データの座標点の数を揃えるように、前記複数の衣服の型紙データのうちの少なくとも1つの型紙データに座標点を追加する、ことと、
前記前処理された複数の衣服の型紙データの間の関係を学習することと
を含む方法。
(項目17A)
上記項目のうちの1つまたは複数に記載の特徴を備える、項目17に記載の方法。
(項目18)
グレーディングのための学習済モデルを生成するためのプログラムであって、前記プログラムは、プロセッサを備えるコンピュータにおいて実行され、前記プログラムは、
複数の衣服の型紙データを受信することであって、前記複数の衣服の型紙データの各々は、複数の座標点によって表現されている、ことと、
前記複数の衣服の型紙データを前処理することであって、前記前処理手段は、前記複数の衣服の型紙データの座標点の数を揃えるように、前記複数の衣服の型紙データのうちの少なくとも1つの型紙データに座標点を追加する、ことと、
前記前処理された複数の衣服の型紙データの間の関係を学習することと
を含む処理を前記プロセッサ部に行わせる、プログラム。
(項目18A)
上記項目のうちの1つまたは複数に記載の特徴を備える、項目18に記載のプログラム。
(項目18B)
項目18または18Aに記載のプログラムを格納するコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、適切な型紙データを簡単に得ることが可能な、グレーディングのためのシステム等を提供することができる。また、本発明によれば、そのようなシステムにおいて利用可能な学習済モデルを生成するためのシステム等も提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1A】ユーザのサイズに合った衣服を提供するサービスのフローの一例を概略的に示す図
図1B】ユーザに所望の型紙データを提供するサービスのフローの一例を示す図
図2】グレーディングのためのシステム100の構成の一例を示す図
図3】グレーディングのためのシステム100の具体的な構成の一例を示す図
図4A】プロセッサ部120の構成の一例を示す図
図4B】プロセッサ部120の代替実施形態であるプロセッサ部120Aの構成の一例を示す図
図4C】学習済モデル生成することが可能なプロセッサ部120Bの構成の一例を示す図
図5A】学習手段128による学習により生成された潜在空間中の多様体を可視化した例を示す図
図5B】ランドマークおよびランドマーク間の座標点(通常の頂点)の情報をそれぞれの対応する拡張頂点に集約することの概念を示す図
図6A】グレーディングのためのシステム100によるグレーディングのための処理の一例(処理600)を示すフローチャート
図6B】グレーディングのためのシステム100によるグレーディングのための処理の別の例(処理610)を示すフローチャート
図7】グレーディングのためのシステム100による学習済モデルを生成するための処理の別の例(処理700)を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0008】
(1.定義)
本明細書において、「標的衣服」とは、グレーディングを行う対象の衣服のことをいう。グレーディングを行うことにより、標的衣服と同種の衣服であって、標的衣服とは異なるサイズを有する衣服の型紙データが得られる。
【0009】
本明細書において「同種の衣服」とは、少なくとも同じ型を有する衣服のことをいい、型は、型番、品番、型式、モデル等によって表される。
【0010】
本明細書において、型紙の「トポロジー」とは、型紙を形作る頂点と線分とによって作られるグラフの構造のことをいう。2つの型紙が同一のトポロジーを有するとは、2つの型紙のそれぞれの形状に同じ数の点が存し、それらの点が同じように線分または曲線で接続されている状態をいう。
【0011】
本明細書において、衣服は、ボタン、ボタンホール、ループ、タック、ダーツ、またはプリーツ等の部品を備えていてもよいし、備えていなくてもよい。衣服がこのような部品を備える場合、この部品の個数は、サイズに応じて変動するものであってもよいし、同種の衣服で同数であってもよい。例えば、より大きなサイズの衣服が、より多くの部品を有し、より小さなサイズの衣服が、より少ない部品を有していてもよい。
【0012】
(2.ユーザのサイズに合った衣服を提供するサービス)
本発明の発明者は、新たなグレーディングの手法を適用したグレーディングのためのシステムを開発した。このグレーディングのためのシステムによれば、ユーザは、グレーディングを行いたい衣服を指定することで、その衣服の多様なサイズの型紙データを得ることができる。例えば、グレーディングを行いたい衣服を指定し、所望のサイズを指定すると、その所望のサイズの衣服を製造可能な型紙データを得ることができる。これは、例えば、パーソナライズされたサイズの衣服をユーザに提供することを可能にする。
【0013】
従来の手作業によるグレーディングでは、適切な型紙データを得ることが困難であった。手作業では、縫い合わせ部分の長さを完全に合わせることが非常に難しいからである。このグレーディングのためのシステムによれば、簡単に、適切な型紙データを得ることができる。ここで、適切な型紙データとは、衣服を製造可能な型紙データのことをいい、衣服を製造可能とは、少なくとも、(1)その衣服を製造するために必要な部品が全て揃っていること、(2)結合される部分(例えば、縫い合わされる部分、接着剤で接合される部分等)の長さが合っている、あるいは、結合される部分の長さのずれが許容範囲内にあること、および(3)結合される部分が結合された場合に正しい服の形状となることをいう。例えば、丸刃または直刃裁断機等による裁断およびミシンによる縫製により製造される衣服の場合、製造可能とは、上記(1)~(3)に加えて、(4)各部品が、小さすぎず、かつ、容易に千切れてしまうような極端に細い場所を含まず、かつ、平面の生地から裁断が可能であること、および、(5)各部品には、型紙の外形線(仕上がり線とも呼ばれる)と、裁断のための線(裁断線と呼ばれる)との間に十分な縫い代があり、他の部品との結合(例えば、手縫いまたはミシン縫い)が可能であることをいう。
【0014】
一例において、グレーディングのためのシステムを利用することで、例えば、ユーザのサイズに合った衣服を提供するサービスを実現することができる。
【0015】
図1Aは、ユーザのサイズに合った衣服を提供するサービスのフローの一例を概略的に示す。図1Aに示される例では、一般消費者であるユーザUが、プロバイダPが提供するECサイトを介して衣服を購入することを例に説明する。
【0016】
ステップS1では、ユーザUが、端末装置(例えば、スマートフォン)を介して、プロバイダPが提供するECサイトにアクセスする。ECサイトでは、衣服が販売されている。ユーザUがECサイトで所望の衣服を見つけると、ユーザUは、サイズを入力し、必要な個人情報等を入力して決済を行う。ここで、ユーザUのサイズは、S、M、L等の標準的なサイズではなく、ユーザUの具体的なサイズであり得る。ユーザUの具体的なサイズは、例えば、身体のサイズ(例えば、身長、体重、胸囲、胴囲、腰囲)、または、衣服のサイズ(例えば、丈(より具体的には、スカート丈、パンツ丈、袖丈、股上、股下、着丈、ゆき等)、幅(より具体的には、肩幅、身幅、胸囲、ウエスト、ヒップ、腿周り、裾周り、膝幅等)、部品の寸法(例えば、ポケット口寸法、ファスナー寸法等))であり得る。衣服のサイズは、好ましくは、ユーザが記憶しやすいまたは体形を想像しやすい寸法であって、服の外形を判断しやすい寸法(例えば、着丈および身幅、パンツ丈もしくはスカート丈およびウエスト等)であり得る。
【0017】
決済が完了すると、購入された衣服がユーザUに提供されることになるが、本例では、購入された衣服の在庫が存在しないことを想定する。すなわち、購入された衣服をユーザUに提供するために、その衣服の製造が必要な場合を想定する。もちろん、在庫が存在する場合には、プロバイダPは、在庫の衣服をユーザUに提供することができる。
【0018】
ステップS2では、プロバイダPから製造業者Mに製造依頼がなされる。このとき、プロバイダPと製造業者Mとは、別の企業であってもよいし、同一の企業(例えば、プロバイダPが営業部門であり、製造業者Mが製造部門である)であってもよい。プロバイダPは、製造すべき衣服の型番と、サイズを示すサイズ情報とを製造業者Mに渡す。これにより、製造業者Mは、型番によって識別される衣服を、サイズ情報によって示されるサイズで製造することになる。
【0019】
製造業者Mが衣服の型紙データを有していれば、製造業者Mは、その型紙データに従って衣服を製造することができる。しかしながら、ユーザUによって入力されるサイズは、S、M、L等の標準的なサイズではなく、ユーザUの具体的なサイズであり得るため、製造業者Mが型紙データを有していないことがある。このとき、製造業者Mは、グレーディングのためのシステム100を利用することで、ユーザUによって入力されたサイズの衣服を製造可能な型紙データを入手することができる。
【0020】
ステップS3では、製造業者Mは、グレーディングのためのシステム100に、型番とサイズ情報とを渡す。グレーディングのためのシステム100は、型番とサイズ情報とに基づいて、型番によって識別される衣服であって、サイズ情報によって示されるサイズを有する衣服の型紙データを生成する。
【0021】
ステップS4では、グレーディングのためのシステム100は、生成された型紙データを製造業者Mに提供する。この型紙データにより、製造業者は、型番によって識別される衣服を、サイズ情報によって示されるサイズで製造することができる。
【0022】
ステップS5では、製造された衣服が、ユーザUに提供される。製造された衣服は、例えば、製造業者Mから直接ユーザUに提供されてもよいし、プロバイダPに提供されて、プロバイダPからユーザUに提供されてもよいし、他の経路を辿ってユーザUに提供されてもよい。
【0023】
このようにして、ユーザUは、所望の衣服であって、かつ、サイズが自身の体形に合った衣服を手に入れることができる。
【0024】
例えば、製造業者Mが丈5通り×幅5通りの計25個もの多数のサイズの型紙を用意していたとしても、ユーザUは、丈および幅を自身の体形に合わせて微調整したい場合があり、25個の型紙データでさえも、ユーザUのリクエストに応えることができないことがある。このとき、システム100は、オンザフライで、ユーザUのサイズに応じた型紙データを作成することができるため、ユーザUのリクエストに応えることができるとともに、多くの型紙データでストレージを圧迫することがない。
【0025】
なお、上述した例では、ユーザUが自身の具体的なサイズを入力することを説明したが、サイズの入力の態様は、これに限定されない。例えば、サイズ測定システム(例えば、ユーザが専用のスーツを着用し、その姿を撮影することにより、身体のサイズを測定することができるシステム(国際公開第2019/189846号等))によって測定されたサイズを入力するようにしてもよい。
【0026】
別の例では、グレーディングのためのシステムを利用することで、例えば、ユーザに所望の型紙データを提供するサービスを実現することもできる。
【0027】
図1Bは、ユーザに所望の型紙データを提供するサービスのフローの一例を示す。図1Bに示される例では、衣服製造業者であるユーザUが、同一のデザインで、様々なサイズの複数の衣服を製造することを例に説明する。ユーザUは、同一のデザインで、様々なサイズを有する複数の衣服を作成するために、それらのサイズに応じた型紙データを必要としている。
【0028】
ステップS11では、ユーザUが、端末装置(例えば、パーソナルコンピュータ)を介して、複数の型紙データをグレーディングのためのシステム100に入力する。ここで、複数の型紙データは、同一のデザインおよび異なるサイズを有する複数の衣服のそれぞれの型紙データである。複数の型紙データは、衣服を製造可能な型紙データである。グレーディングのためのシステム100は、これらの複数の型紙データ間の関係を学習することになる。
【0029】
ステップS12では、ユーザUが、端末装置を介して、サイズ情報をグレーディングのためのシステム100に入力する。すると、グレーディングのためのシステム100は、同一のデザインで、サイズ情報によって示されるサイズを有する衣服の型紙データを生成する。
【0030】
ステップS13では、グレーディングのためのシステム100は、生成された型紙データをユーザUに提供する。この型紙データにより、ユーザUは、同一のデザインで、サイズ情報によって示されるサイズを有する衣服を製造することができる。
【0031】
ユーザUは、ステップS12で入力するサイズを異ならせて、ステップS12およびステップS13を繰り返すことにより、同一のデザインで、様々なサイズを有する複数の衣服の型紙データを得ることができる。これにより、ユーザUは、同一のデザインで、様々なサイズを有する複数の衣服を製造することができる。
【0032】
例えば、ユーザUは、グレーディングのためのシステム100を利用することで、作業コストを低減することができる。例えば、20個の異なるサイズの型紙データを用意したいとき、ユーザUは、例えば、10個の型紙データのみを作成し、ステップS11で、それらの10個の型紙の型紙データをシステム100に入力することで、残りの10個の型紙データをシステム100に生成させることができる。これにより、ユーザUの作業が半減し得る。
【0033】
上述したグレーディングのためのシステム100は、例えば、以下に説明する構成を有し得る。
【0034】
(3.グレーディングのためのシステムの構成)
図2は、グレーディングのためのシステム100の構成の一例を示す。システム100は、データベース部200に接続されている。また、システム100は、少なくとも1つの端末装置300にネットワーク400を介して接続されている。
【0035】
なお、図2では、3つの端末装置300が示されているが、端末装置300の数はこれに限定されない。任意の数の端末装置300が、ネットワーク400を介してシステム100に接続され得る。
【0036】
ネットワーク400は、任意の種類のネットワークであり得る。ネットワーク400は、例えば、インターネットであってもよいし、LANであってもよい。ネットワーク400は、有線ネットワークであってもよいし、無線ネットワークであってもよい。
【0037】
システム100の一例は、ユーザのサイズに合った衣服を提供するサービスを提供するプロバイダに設置されているコンピュータ(例えば、サーバ装置)であるが、これに限定されない。システム100は、例えば、衣服製造業者に設置されているコンピュータ(例えば、端末装置)であってもよい。このとき、システム100は、ネットワーク400に接続されなくてもよい。端末装置は、スマートフォン、タブレット、パーソナルコンピュータ、スマートグラス、スマートウォッチ等の任意のタイプの端末装置であり得る。
【0038】
データベース部200には、パタンナーまたはグレーダーによって作成された型紙データが格納されており、これらは、学習済モデルを生成するために利用されることができる。データベース部200には、システム100によって生成された型紙データ、および/または、システム100によって生成された学習済モデルが格納され得る。
【0039】
図3は、グレーディングのためのシステム100の具体的な構成の一例を示す。
【0040】
システム100は、インターフェース部110と、プロセッサ部120と、メモリ130部とを備える。
【0041】
インターフェース部110は、システム100の外部と情報のやり取りを行う。システム100のプロセッサ部120は、インターフェース部110を介して、システム100の外部から情報を受信することが可能であり、システム100の外部に情報を送信することが可能である。インターフェース部110は、任意の形式で情報のやり取りを行うことができる。
【0042】
インターフェース部110は、例えば、システム100に情報を入力することを可能にする入力部を備える。入力部が、どのような態様でシステム100に情報を入力することを可能にするかは問わない。例えば、入力部がタッチパネルである場合には、ユーザがタッチパネルにタッチすることによって情報を入力するようにしてもよい。あるいは、入力部がマウスである場合には、ユーザがマウスを操作することによって情報を入力するようにしてもよい。あるいは、入力部がキーボードである場合には、ユーザがキーボードのキーを押下することによって情報を入力するようにしてもよい。あるいは、入力部がマイクである場合には、ユーザがマイクに音声を入力することによって情報を入力するようにしてもよい。あるいは、入力部がデータ読み取り装置である場合には、システム100に接続された記憶媒体から情報を読み取ることによって情報を入力するようにしてもよい。あるいは、入力部が受信器である場合、受信器がネットワークを介してシステム100の外部から情報を受信することにより入力してもよい。この場合、ネットワークの種類は問わない。例えば、受信器は、インターネットを介して情報を受信してもよいし、LANを介して情報を受信してもよい。
【0043】
インターフェース部110は、例えば、システム100から情報を出力することを可能にする出力部を備える。出力部が、どのような態様でシステム100から情報を出力することを可能にするかは問わない。例えば、出力部が表示画面である場合、表示画面に情報を出力するようにしてもよい。あるいは、出力部がデータ書き込み装置である場合、システム100に接続された記憶媒体に情報を書き込むことによって情報を出力するようにしてもよい。あるいは、出力部が印刷装置である場合、紙等の媒体に印刷することによって情報を出力するようにしてもよい。あるいは、出力部が送信器である場合、送信器がネットワークを介してシステム100の外部に情報を送信することにより出力してもよい。この場合、ネットワークの種類は問わない。例えば、送信器は、インターネットを介して情報を送信してもよいし、LANを介して情報を送信してもよい。
【0044】
システム100は、例えば、インターフェース部110を介して、データベース部200に情報を送信し、かつ/または、データベース部200から情報を受信することができる。システム100は、例えば、インターフェース部110を介して、端末装置300に情報を送信し、かつ/または、端末装置300から情報を受信することができる。
【0045】
システム100は、例えば、インターフェース部110を介して、標的衣服を識別する衣服識別情報とサイズ情報とを受信することができる。システム100は、例えば、インターフェース部110を介して、複数の衣服の型紙データを受信することができる。
【0046】
システム100は、例えば、インターフェース部110を介して、グレーディングされた型紙データを出力することができる。システム100は、例えば、インターフェース部110を介して、生成された学習済モデルを出力することができる。
【0047】
プロセッサ部120は、システム100の処理を実行し、かつ、システム100全体の動作を制御する。プロセッサ部120は、メモリ部130に格納されているプログラムを読み出し、そのプログラムを実行する。これにより、システム100を所望のステップを実行するシステムとして機能させることが可能である。プロセッサ部120は、単一のプロセッサによって実装されてもよいし、複数のプロセッサによって実装されてもよい。
【0048】
メモリ部130は、システム100の処理を実行するために必要とされるプログラムやそのプログラムの実行に必要とされるデータ等を格納する。メモリ部130は、グレーディングのための処理をプロセッサ部120に行わせるためのプログラム(例えば、後述する図6Aまたは図6Bに示される処理を実現するプログラム)、および/または、グレーディングのための学習済モデルを生成するための処理をプロセッサ部120に行わせるためのプログラム(例えば、後述する図7に示される処理を実現するプログラム)を格納してもよい。ここで、プログラムをどのようにしてメモリ部130に格納するかは問わない。例えば、プログラムは、メモリ部130にプリインストールされていてもよい。あるいは、プログラムは、ネットワークを経由してダウンロードされることによってメモリ部130にインストールされるようにしてもよい。この場合、ネットワークの種類は問わない。メモリ部130は、任意の記憶手段によって実装され得る。
【0049】
データベース部200には、例えば、学習データとしての型紙データが格納され得る。また、データベース部200には、システム100によって生成された型紙データ、および/または、システム100によって生成された学習済モデルが格納され得る。
【0050】
図3に示される例では、データベース部200は、システム100の外部に設けられているが、本発明はこれに限定されない。データベース部200をシステム100の内部に設けることも可能である。このとき、データベース部200は、メモリ部130を実装する記憶手段と同一の記憶手段によって実装されてもよいし、メモリ部130を実装する記憶手段とは別の記憶手段によって実装されてもよい。いずれにせよ、データベース部200は、システム100のための格納部として構成される。データベース部200の構成は、特定のハードウェア構成に限定されない。例えば、データベース部200は、単一のハードウェア部品で構成されてもよいし、複数のハードウェア部品で構成されてもよい。例えば、データベース部200は、システム100の外付けハードディスク装置として構成されてもよいし、ネットワークを介して接続されるクラウド上のストレージとして構成されてもよい。
【0051】
図4Aは、プロセッサ部120の構成の一例を示す。
【0052】
プロセッサ部120は、受信手段121と、生成手段122と、出力手段123とを備える。
【0053】
受信手段121は、標的衣服を識別する衣服識別情報と、サイズ情報とを受信するように構成されている。
【0054】
衣服識別情報は、標的衣服を識別することができる限り、任意の情報であり得る。例えば、衣服識別情報は、衣服の型(例えば、型番、品番、型式、モデル等)を示す情報であり得る。例えば、衣服識別情報は、標的衣服の画像データであってもよいし、標的衣服の型紙データであってもよい。
【0055】
サイズ情報によって示されるサイズは、衣服の装着者(例えば、一般消費者であるユーザ)の身体のサイズであってもよいし、所望の衣服のサイズであってもよいし、所望の衣服を作製するための型紙のサイズであってもよい。従って、サイズ情報は、例えば、身体のサイズ(例えば、身長、体重、胸囲、胴囲、腰囲)、衣服のサイズ(例えば、丈、幅)、または、型紙のサイズを示し得る。
【0056】
生成手段122は、衣服識別情報とサイズ情報とに基づいて、標的衣服と同種の衣服であって、サイズ情報が示すサイズに適合するサイズを有する衣服の型紙データを生成するように構成されている。生成手段122は、学習済モデルを使用して、標的衣服と同種の衣服の型紙データを生成することができる。学習済モデルは、標的衣服と同種の衣服の複数の型紙データ間の関係を学習することによって得られたモデルである。
【0057】
生成手段122は、複数の学習済モデルのうちの1つの学習済モデルを使用することができる。このとき、生成手段122は、複数の学習済モデルのうち、衣服識別情報が示す標的衣服に対応する学習済モデルを選択することができる。複数の学習済モデル中に、標的衣服と同種の衣服の複数の型紙データ間の関係を学習している学習済モデルが存在しない場合、生成手段122は、後述するプロセッサ部120Bによる処理によって、学習済モデルを生成するようにしてもよい。
【0058】
学習に用いられる複数の型紙データの各々は、複数の座標点によって表現されることができる。すなわち、複数の型紙データは、ベクトルデータであり得る。学習済モデルは、複数の座標点を特徴量として学習することになる。一例において、座標点のうちの少なくとも一部は、パラメトリック曲線の制御点であることができる。このとき、型紙データは、パラメトリック曲線(例えば、ベジェ曲線、B-Spline曲線)を用いて表現されることになる。型紙データをパラメトリック曲線で表すことは、データ量を削減することができる点で有利である。例えば、20個の座標点で表された型紙データを3次のベジェ曲線で表した場合、型紙データは、4つの制御点によって表すことができ、データ量は、5分の1に削減され得る。データ量を削減することは、型紙データの学習にかかる時間および型紙データの生成にかかる時間を少なくすることが可能であるとともに、メモリの使用量も削減することが可能である。
【0059】
学習済モデルは、教師なし学習により作成されることができる。学習済モデルは、例えば、GPLVM(Gaussian Process Latent Variable Model)を用いて生成されることができ、あるいは、学習済モデルは、例えば、Auto Encoderを用いて生成されることができ、あるいは、学習済モデルは、学習データ間の関係を学習することが可能な別の手法を用いて生成されることもできる。
【0060】
例えば、GPLVMを用いる場合、学習によって潜在空間中に多様体を形成することができる。
【0061】
図5Aは、GPLVMを用いた学習によって形成された多様体の一例を示す。図5Aにおいて、潜在空間中に×で表された点が、それぞれの学習データを表している。潜在空間中の任意の点は、対応する型紙データを表すことになる。すなわち、潜在空間中の第1の点が、第1のサイズを有する型紙データに対応し、潜在空間中の第2の点が、第2のサイズを有する型紙データに対応することになる。生成手段122は、サイズ情報が示すサイズを有する型紙データを生成するために、潜在空間内でサイズ情報が示すサイズを有する型紙データを探索する。
【0062】
図5Aにおいて、濃淡のグラデーションは、型紙データの信頼度を表している。濃いエリア内の点に対応する型紙データの信頼度が高く、淡いエリア内の点に対応する型紙データの信頼度が低いことを表している。すなわち、中央付近の点に対応する型紙データは、四隅付近の点に対応する型紙データよりも信頼度が高くなっている。ここで、信頼度とは、適切な型紙データであるかどうかを示す指標である。信頼度が低いと、適切な型紙データとは言えず、型紙データから衣服を製造不可能であり得る。
【0063】
学習に用いられる複数の型紙データを製造可能な衣服の型紙データとすることで、生成される多様体は、信頼度の高い型紙データを表す点の集合となり得、生成手段122によって生成される型紙データが、製造可能な衣服の型紙データである可能性が高くなる。
【0064】
一実施形態において、衣服は、サイズに応じて個数が変動する部品を備えることができる。部品は、ボタン、ボタンホール、ループ、タック、ダーツ、プリーツのうちの少なくとも1つを含む。例えば、より大きなサイズの衣服は、より多くの部品を有し、より小さなサイズの衣服は、より少ない部品を有する。このとき、学習に用いられる型紙データは、部品の個数およびそれぞれの位置も表すことになる。学習済モデルは、複数の衣服の型紙データ中の部品の個数および位置も特徴量として学習している。
【0065】
学習に用いられる複数の型紙データの各々で部品の個数が異なる場合、学習に用いられる複数の型紙データの各々で座標点の数も異なることになる。これでは、学習がうまくいかなかったり、学習済モデルから適切な出力を得られなかったりする場合がある。システム100の生成手段122が使用する学習済モデルは、学習に用いられる複数の型紙データの各々で部品の個数を揃えて、複数の衣服の型紙データ間の関係を学習していることが好ましい。学習に用いられる複数の型紙データの各々で部品の個数を揃えることは、例えば、複数の型紙データのうち、最も多い部品を有する型紙データの部品の個数に、他の型紙データの部品の個数を合わせることによって達成される。部品の個数を合わせるためには、例えば、仮想的な部品(ファントムともいう)を生成して型紙データに追加することができる。
【0066】
例えば、複数の型紙データ内でのボタンの個数の最大値が8個であり、ある型紙データに含まれるボタンが6個であったとする。このとき、その型紙データに8-6=2個のファントム(仮想のボタン)を生成する。こうすることで、各型紙データに含まれるボタンの個数を8個に強制的に統一することができ、すべての型紙データのトポロジーを同一にすることができる。ボタン以外のボタンホールやループ等にも同様の処理を行うことで、それぞれの個数を揃えることができる。
【0067】
学習に用いられる複数の型紙データの各々で部品の個数を揃えて学習することで、学習がうまくいく可能性を向上させ、かつ、学習済モデルから適切な出力が得られる可能性も高めることができる。しかしながら、学習済モデルから出力される型紙データは、本来有するべき個数よりも多くの部品を備える場合がある。特に、小さいサイズの型紙データを出力した場合には、本来有するべき個数よりも多くの部品を備え得る。従って、生成手段122は、サイズに応じて、学習済モデルから出力された型紙データから1または複数の部品を削除することで、型紙データが本来有するべき個数の部品を有するようにすることができる。
【0068】
上述したように、学習済モデルは、複数の衣服の型紙データ中の部品の個数も特徴量として学習しているため、学習済モデルから出力される型紙データは、部品の個数の推定値も含むことになる。生成手段122は、型紙データに含まれる部品の個数の推定値の端数を切り上げまたは切り捨てて整数値とし、この整数値は、その型紙データが本来有するべき部品の個数であるとみなされ得る。生成手段122は、この整数値と、学習済モデルから出力された型紙データに含まれる部品の個数とを比較し、学習済モデルから出力された型紙データに含まれる部品の個数がその整数値となるように、学習済モデルから出力された型紙データから1または複数の部品を削除することができる。
【0069】
このようにして、学習がうまくいく可能性を向上させ、かつ、学習済モデルから適切な出力が得られる可能性も高めるとともに、生成手段122によって生成される型紙データの部品の個数も適切なものとすることができ、実用的な型紙データの生成を達成することができる。
【0070】
一実施形態において、学習に用いられる型紙データは、各部位の寸法も含むことができ、学習済モデルは、複数の衣服の型紙データ中の各部位の寸法も特徴量として学習することができる。これにより、学習済モデルから出力される型紙データは、各部位の寸法の推定値も含むことになる。これは、サイズ情報によって示されるサイズを有する型紙データの潜在空間内での探索を容易にし得る。
【0071】
一実施形態において、学習に用いられる型紙データは、縫い代と呼ばれる余白を含まないことが好ましい。縫い代は、滑らかな曲線ではなく、歪な形状を有していることがあり、これは、学習に不具合を生じさせる可能性が高い。さらに、学習済モデルからの出力も不安定になることがある。
【0072】
学習に用いられる型紙データが縫い代を含まないため、学習済モデルから出力された型紙データも縫い代を含まない。従って、生成手段122は、学習済モデルから出力された型紙データに縫い代を付加するようにすることができる。
【0073】
一例において、生成手段122は、学習済モデルから出力された型紙データを画像に変換し、画像処理ベースの手法で符号付き距離関数を求め、型紙の外形線から外側の等距離にある線を特定し、外形線とその線との間の領域を縫い代とすることができる。縫い代の画像をベクトルデータに変換することにより、縫い代が付加された型紙データを得ることができる。
【0074】
例えば、型紙データがダーツ等の鋭角の切り欠き部分を有する場合、そのまま上述の手法を行った場合には、うまくいかないことがある。従って、型紙データにダーツ等の鋭角の切り欠き部分を有する場合、切り欠き部分を削除したうえで、上述の手法を行うとよい。これにより、適切に縫い代を付加することができる。
【0075】
例えば、型紙データが一部に鋭角を有する場合、鋭角の縫い代が型紙の外形線から大きく離れることがある。このとき、型紙の外形線から大きく離れている部分を切り落とすことにより、生地の無駄を避けるようにしてもよい。
【0076】
生成手段122は、例えば、学習済モデルから出力された型紙データに含まれる特定の部品(例えば、ポケット、襟等)を削除して、型紙データを生成することも可能である。これにより、ポケットの有無によるバリエーション、襟の有無によるバリエーション等の種々のバリエーションの衣服を製造するための型紙データを生成することができる。
【0077】
出力手段123は、生成された型紙データを出力するように構成されている。出力手段123は、インターフェース部110を介して、生成された型紙データをシステム100の外部に出力することができる。出力手段123は、例えば、インターフェース部110を介して、生成された型紙データをデータベース部200に出力することができる。出力手段123は、例えば、インターフェース部110を介して、生成された型紙データを端末装置300に出力することができる。
【0078】
出力された型紙データは、任意の用途に利用されることができる。例えば、図1Aを参照して上述したように、製造業者Mに提供され、ユーザUによって購入された衣服を製造するために利用されることができる。例えば、図1Bを参照して上述したように、ユーザUに提供され、多様なサイズを有する衣服を製造するために利用されることができる。
【0079】
図4Bは、プロセッサ部120の代替実施形態であるプロセッサ部120Aの構成の一例を示す。図4Bでは、図4Aを参照して説明した構成要素と同一の構成要素には同一の参照番号を付し。ここでは、詳細な説明を省略する。
【0080】
プロセッサ部120Aは、受信手段121と、生成手段122と、算出手段124と、出力手段123とを備える。
【0081】
生成手段122によって生成された型紙データは、算出手段124に渡される。
【0082】
算出手段124は、生成された型紙データの信頼度を算出するように構成されている。
【0083】
一例において、算出手段124は、生成された型紙データの潜在空間中の位置に基づいて、信頼度を算出することができる。上述したように、型紙データ間の関係を学習することにより、学習によって潜在空間中に多様体を形成することができる。この潜在空間中の任意の点は、対応する型紙データを表し、各型紙データは、潜在空間中の位置に応じた信頼度を有することになる。従って、算出手段124は、生成された型紙データの潜在空間中の位置を特定することで、その位置に対応する信頼度を算出することができる。
【0084】
別の例において、学習済モデルが複数の型紙データの信頼度も学習しているとき、算出手段124は、学習済モデルからの出力に基づいて、信頼度を算出することができる。学習済モデルが複数の型紙データの信頼度も学習することで、学習済モデルは、出力される型紙データの信頼度の推定値も出力することができるからである。
【0085】
算出手段124が信頼度を算出する手段は上述した例の手法に限定されず、算出手段124は、他の手法によっても信頼度を算出することができる。
【0086】
出力手段123は、算出された信頼度に応じて、所与のアクションを実行することができる。
【0087】
一例において、出力手段123は、生成された型紙データの信頼度が所定の閾値よりも低い場合に、生成された型紙データを出力しないようにしてもよい。これにより、信頼度が低い型紙データがユーザに提供されることを未然に防ぐことができる。生成された型紙データを出力しないことは、例えば、後述する例のように、ユーザに通知されるようにしてもよい。
【0088】
別の例において、出力手段123は、生成された型紙データの信頼度が所定の閾値よりも低い場合に、通知を出力することができる。通知は、例えば、生成された型紙データの信頼度が低いことを示す通知であってもよいし、生成された型紙データの信頼度が低いにもかかわらず型紙データを出力することをユーザに確認するための通知であってもよい。あるいは、通知は、生成された型紙データの信頼度が低いことを理由に、型紙データを出力しないことを示す通知であってもよい。この通知により、ユーザまたはシステム100の管理者は、信頼度を向上させるための措置を講じることができる。措置は、例えば、当該型紙データに対応する新たな学習データ作成および学習、または、既存の学習データの修正を含む。例えば、新たな学習データの作成および既存の学習データの修正は、パタンナー、または、グレーダーが行うことになり、作成された新たな学習データおよび修正された既存の学習データは、信頼度が高い型紙データとなり得る。
【0089】
新たな学習データを作成する、または、既存の学習データを修正する実施形態において、プロセッサ部120Aは、学習手段125をさらに備えることができる。
【0090】
学習手段125は、算出手段124によって算出された信頼度が所定の閾値よりも低い場合に、その型紙データに代えて、信頼度の高い型紙データを出力することができるように、対応するサイズを有する衣服の型紙データを学習済モデルに再学習させることができる。
【0091】
具体的には、生成手段122は、第1のサイズを有する型紙データを生成し、算出手段124が、第1のサイズを有する型紙データの信頼度を算出し、算出された信頼度が所定の閾値よりも低い場合、学習手段125は、第1のサイズを有する学習用の型紙データを学習済モデルに学習させることになる。これにより、学習済モデルは、第1のサイズを有する型紙データとして、信頼度の低い型紙データをもはや出力せず、代わりに、再学習された型紙データを出力することになる。このとき、学習済モデルから出力される型紙データの信頼度は、高いはずである。
【0092】
このようにして、信頼度が低いときに、新たな学習データまたは修正された学習データを用いて再学習することを繰り返すことにより、潜在空間中の多様体は、理想のものへ集束していく。このような再学習は、運用フェーズにおいて学習済モデルを精錬することができる点で有利である。
【0093】
図4Cは、学習済モデル生成することが可能なプロセッサ部120Bの構成の一例を示す。
【0094】
プロセッサ部120Bは、受信手段126と、前処理手段127と、学習手段128とを備える。
【0095】
受信手段126は、複数の衣服の型紙データを受信するように構成されている。複数の衣服の型紙データは、学習データである。複数の衣服の型紙データの各々は、複数の座標点によって表現されることができ、ベクトルデータであり得る。一例において、座標点のうちの少なくとも一部は、パラメトリック曲線の制御点であることができる。このとき、型紙データは、パラメトリック曲線(例えば、ベジェ曲線、B-Spline曲線)を用いて表現されることになる。型紙データをパラメトリック曲線で表すことは、データ量を削減することができる点で有利である。例えば、20個の座標点で表された型紙データを3次のベジェ曲線で表した場合、型紙データは、4つの制御点によって表すことができ、データ量は、5分の1に削減され得る。データ量を削減することは、型紙データの学習にかかる時間を少なくすることが可能であるとともに、メモリの使用量も削減することが可能である。
【0096】
受信手段126が受信する複数の衣服の型紙データは、製造可能な衣服の型紙データであることが特に好ましい。製造可能な衣服の型紙データを用いて学習済モデルを生成することにより、学習済モデルから出力される型紙データが、製造可能な衣服の型紙データとなり得るからである。
【0097】
受信手段126が受信する複数の衣服の型紙データは、それぞれが特定の衣服と同種の衣服であって、異なるサイズを有する衣服の型紙データであり得る。これにより、生成される学習済モデルは、特定の衣服と同種の衣服であって、特定のサイズに適合するサイズを有する衣服の型紙データを生成することができるようになり、従って、特定の衣服のグレーディングに利用可能となる。
【0098】
別の例において、受信手段126が受信する複数の衣服の型紙データは、それぞれが特定の衣服と同一のトポロジーを有する衣服であって、異なるサイズおよび/または形状を有する衣服の型紙データであり得、必ずしも特定の衣服と同種の衣服である必要はない。これにより、生成される学習済モデルは、特定の衣服とは異なるサイズおよび/または形状を有する衣服の型紙データを生成することができるようになり、従って、新たな衣服の創造のために利用可能となる。
【0099】
例えば、パンツについて、同一のトポロジーのパンツの複数の型紙データ(例えば、ベルト部分の生地のつき方、ならびに、ポケットおよびタックの入る位置が同じで、ジップも共通する型紙データ)であれば、ベルボトムのように裾が広がっている形状の型紙データや、ウルトラスリムパンツのような形状の型紙データを、同様に扱うことができ、これらの複数の型紙データから生成される学習済モデルは、例えば、ベルボトムとウルトラスリムパンツとの中間の形状を生み出すことができ、また、裾をより広げるようなベルボトムを補外した形状を生み出すこともできる。
【0100】
受信手段126が受信する複数の衣服の型紙データは、各部位の寸法も含むことができる。
【0101】
受信手段126によって受信された複数の型紙データは、前処理手段127に渡される。
【0102】
前処理手段127は、受信手段126によって受信された複数の衣服の型紙データを前処理するように構成されている。
【0103】
前処理は、例えば、学習におけるエラーを低減するため、および/または、学習を効率的に行うことができるようにするために行われる。
【0104】
前処理手段127は、例えば、受信された複数の型紙データにエラーが含まれているかを検査する。前処理手段127は、例えば、外形線内にジグザク形状があるかを検査する。ジグザグ形状は、目視での確認が難しく、型紙データの学習に支障をきたすことがあり、生成された型紙データに基づいた生地の裁断でも問題を引き起こす可能性がある。前処理手段127は、例えば、ボタンとボタンホールとの数が揃っているか、揃っていない場合は、飾りボタンであるかを検査する。エラーが確認された場合、前処理手段127は、エラーが含まれる型紙データの修正が必要であることを報知してもよいし、前処理手段1エラーが含まれる型紙データを自動で修正するようにしてもよい。
【0105】
前処理手段127は、例えば、受信された複数の衣服の型紙データの座標点の数を揃える。前処理手段127は、複数の衣服の型紙データのうちの少なくとも1つの型紙データに座標点を追加して、複数の衣服の型紙データの座標点の数を揃えるようにしてもよい。あるいは、前処理手段127は、複数の衣服の型紙データのそれぞれに、新規に座標点を追加して、型紙データをベクトルデータで表現しなおすことで、複数の衣服の型紙データの座標点の数を揃えるようにしてもよい。複数の衣服の型紙データで一貫した個数の座標点を持つようにすることは、学習を効率的にすることができ、生成された学習済モデルの精度も保証することができる点で好ましい。
【0106】
複数の衣服の型紙データのそれぞれに、新規に座標点を追加して、型紙データをベクトルデータで表現しなおす場合、前処理手段127は、まず、複数の衣服の型紙データのそれぞれにおいて、同じ数のランドマークを生成する。ランドマークは曲率が周辺に比べて大きい場所、および、Tジャンクション等の点に接続している線分の数が2以上の場所等に生成する。また、ボタンおよびボタンホール等の位置もランドマークとみなす。前処理手段127は、異なるサイズの型紙データで一貫した個数のランドマークを生成するために、まず、マスターサイズ(例えばMなどの標準サイズ)では、カーブの折れ曲がり角度が25度といった一定の角度閾値を超えた箇所を、「角」とみなしてランドマークを生成し、生成された個数をL個とする。マスターサイズ以外のサイズでは、カーブの折れ曲がりの各点について折れ曲がり角度を求め、折れ曲がり角度が大きな上位L個の点をランドマークとみなすことができる。ランドマークは、型紙の形状の特徴を捉える特徴点とみなされ得る。ランドマークは、例えば、寸法を測定するときに利用されることができる。
【0107】
ランドマークが作成された後、ランドマークの間に、必要に応じて座標点を追加する。追加される座標点は、例えば、ランドマーク間のカーブの形状を規定する頂点を表し得る。ランドマーク間に追加される座標点は、複数の衣服の型紙データのそれぞれにおいて同じ数である。あるいは、座標点に加えて、または座標点に代えて、パラメトリック曲線の制御点を追加するようにしてもよい。パラメトリック曲線の制御点により、ランドマーク間のカーブがパラメトリック曲線によって表現されることになる。このとき、パラメトリック曲線の次数は、複数の型紙データのそれぞれにおいて同じであることが好ましい。
【0108】
次いで、複数の衣服の型紙データのそれぞれの座標点の情報を対応する拡張頂点に集約する。これにより、1つの拡張頂点が、複数の型紙データのそれぞれにおける対応する座標点の情報を有することになる。例えば、1つの座標点が2次元の情報を有するとき、5サイズ分の情報が集約された拡張頂点は、10次元の情報を有することになる。例えば、複数の型紙データにおける対応するランドマークの情報を対応する1つの拡張頂点に集約し、複数の型紙データにおける対応するランドマーク間の座標点の情報を対応する1つの拡張頂点に集約することができる。複数の型紙データは、相互にトポロジー(座標点の数および座標点間の接続の仕方)が同一であるため、複数の型紙データのうちの1つの型紙データにおける座標点間の接続情報さえ有しておけば、複数の型紙データ全てにおける座標点間の接続情報を有する必要がない。
【0109】
図5Bは、ランドマークおよびランドマーク間の座標点(通常の頂点)の情報をそれぞれの対応する拡張頂点に集約することの概念を示す図である。中空の丸が、ランドマークを表し、中実の丸が、通常の頂点を表している。
【0110】
複数の型紙データにおいて、対応するランドマーク、例えば、左上の角を規定するランドマークは、1つの拡張頂点501に集約され、対応する通常の頂点、例えば、左上の角を規定するランドマークに隣接する頂点は、1つの拡張頂点502に集約される。
【0111】
複数の型紙データは、相互にトポロジーが同一であるため、同じ拡張頂点に集約された座標点は、同じ接続態様を有するものとして扱われることができる。従って、例えば、標準サイズの型紙データにおける座標点間の接続情報さえ有していれば、その接続情報を他のサイズの型紙データにおける座標点の関係に適用することが可能であるため、他のサイズの型紙データおける座標点間の接続情報を有する必要がない。これにより、必要なストレージ量を削減することができる。
【0112】
前処理手段127は、例えば、受信された複数の衣服の型紙データ中の部品を検知する。部品は、ボタン、ボタンホール、ループ、タック、ダーツ、プリーツのうちの少なくとも1つを含む。前処理手段127は、例えば、型紙データ中に含まれる情報から部品を検知するようにしてもよいし、パターンマッチングにより、部品を検知するようにしてもよい。例えば、ボタンには、様々な種類および大きさが存在するため、様々な種類および大きさのボタンに対応できるようにパターンマッチングのためのパターンを用意しておくことが好ましい。
【0113】
前処理手段127は、検知された部品のうち、サイズに応じて個数が変動する部品について、複数の衣服の型紙データのそれぞれにおいて部品の個数を揃えるように、複数の衣服の型紙データのうちの少なくとも1つに仮想的な部品(ファントム)を追加することができる。複数の衣服の型紙データのそれぞれにおいて、サイズに応じて個数が変動し得る部品の個数を揃えることは、学習を効率的にすることができ、生成された学習済モデルの精度も保証することができる点で好ましい。前処理手段127は、例えば、検知された部品の大きさ等を手がかりに、部品をグループに分ける。型紙データ上で、同じサイズでありかつ等間隔に配置されている部品は、サイズによって個数が変わる可能性が高いと考えられる。複数の衣服の型紙データの全てについて部品を検知した後、各部品の個数の最小値と最大値をグループごとに記録し、個数の最小値と最大値とに違いがあった場合は、それらの部品が各型紙内で等間隔に配置されているものであるかを確認し、もしそうであった場合には、それらの部品は、衣服のサイズによって個数が変動する部品であるとみなすことができる。前処理手段127は、例えば、複数の衣服の型紙データのうち、衣服のサイズによって個数が変動する部品であるとみなされた部品を最も多く有する型紙データの部品の個数に、他の型紙データの当該部品の個数を合わせるように、仮想的な部品を生成して型紙データに追加する。
【0114】
例えば、複数の型紙データ内でのボタンの個数の最大値が8個であり、ある型紙データに含まれるボタンが6個であったとする。このとき、その型紙データに8-6=2個のファントム(仮想のボタン)を生成する。こうすることで、各型紙データに含まれるボタンの個数を8個に強制的に統一することができ、すべての型紙データのトポロジーを同一にすることができる。ボタン以外のボタンホールやループ等にも同様の処理を行うことで、それぞれの個数を揃えることができる。
【0115】
前処理手段127は、例えば、受信された複数の型紙データに縫い代が含まれている場合には、縫い代を削除することができる。これにより、前処理された複数の衣服の型紙データは、縫い代を含まなくなる。縫い代は、滑らかな曲線ではなく、歪な形状を有していることがあり、これは、学習に不具合を生じさせる可能性が高いため、縫い代を削除することで、学習がうまくいく可能性を向上させることができる。
【0116】
前処理された型紙データは、学習手段128に渡される。
【0117】
学習手段128は、前処理手段127によって前処理された複数の衣服の型紙データの間の関係を学習するように構成されている。学習手段128は、少なくとも、型紙データに含まれる座標点(例えば、ランドマークの座標点、ランドマーク間の座標点、ランドマーク間のパラメトリック曲線の制御点)を特徴量として学習することができる。好ましくは、学習手段128は、型紙データに含まれる座標点と、型紙データに含まれる部品の個数とを特徴量として学習することができ、複数の衣服の型紙データの座標点の間の関係と共に、複数の衣服の型紙データに含まれる部品の個数の間の関係も学習することになる。より好ましくは、学習手段128は、型紙データに含まれる座標点と、型紙データに含まれる部品の個数および/または各部位の寸法とを特徴量として学習することができ、複数の衣服の型紙データの座標点の間の関係と共に、複数の衣服の型紙データに含まれる部品の個数の間の関係および/または複数の衣服の型紙データの寸法の間の関係も学習することになる。
【0118】
学習手段128は、教師なし学習を行うことができる。学習手段128は、例えば、GPLVM(Gaussian Process Latent Variable Model)を利用することができ、あるいは、Auto Encoderまたは学習データ間の関係を学習することが可能な別の手法を利用することができる。学習手段128は、画像データではなくベクトルデータを学習データに用いるため、輪郭がぼやける、または、シャープな角が丸まってしまう等の画像データに特有の問題を生じない。また、画像データとベクトルデータとの変換/逆変換の処理も不要である。
【0119】
GPLVMを利用する場合、学習手段128による学習により、図5Aに示すような潜在空間中に多様体が形成される。潜在空間中の任意の点は、対応する型紙データを表すことになる。学習に用いられる複数の型紙データを製造可能な衣服の型紙データとすることで、生成される多様体は、製造可能な衣服の型紙データを表す点の集合となり得る。また、学習に用いられる型紙データ中の座標点の数が揃っていることで、生成される多様体中のより多くの点が、製造可能な衣服の型紙データを表す点となり得る。さらに、学習に用いられる型紙データ中の部品の個数が揃っていることで、サイズに応じて個数が変動する部品を有している場合であっても、学習に利用することができ、かつ、生成される多様体中のより多くの点が、製造可能な衣服の型紙データを表す点となり得る。
【0120】
システム100は、プロセッサ部120に代えてプロセッサ部120Aの構成を備えるようにしてもよいし、プロセッサ部120に代えてプロセッサ部120Bの構成を備えるようにしてもよいし、プロセッサ部120の構成に加えてプロセッサ部120Bの構成を備えるようにしてもよいし、プロセッサ部120Aの構成に加えてプロセッサ部120Bの構成を備えるようにしてもよい。プロセッサ部120の構成に加えてプロセッサ部120Bの構成を備える場合、または、プロセッサ部120Aの構成に加えてプロセッサ部120Bの構成を備える場合には、システム100は、これらの構成を実装する単一のプロセッサ部を備えていてもよいし、これらの構成を集合的に実装する複数のプロセッサ部を備えていてもよい。
【0121】
プロセッサ部120Bによって生成された学習済モデルは、プロセッサ部120Aまたはプロセッサ部120Aによって利用されるようにしてもよいし、他のシステムにおいて利用されるようにしてもよい。例えば、特定の衣服と同一のトポロジーを有する衣服であって、異なるサイズおよび/または形状を有する複数の衣服の型紙データを学習することによって生成された学習済モデルをプロセッサ部120またはプロセッサ部120Aが利用するとき、システム100は、新規の衣服を創造可能な衣服創造システムとなり得る。
【0122】
衣服創造システムにおいて、受信手段121は、サイズ情報を受信することができ、生成手段122は、学習済モデルを使用して、サイズ情報が示すサイズに適合するサイズを有する衣服の型紙データを生成し、出力手段123が、生成された型紙データを出力することになる。ここで、生成された型紙データは、特定の衣服と同一のトポロジーを有する衣服であって、サイズ情報が示すサイズに適合するサイズを有する衣服の型紙データとなる。例えば、特定のパンツについて同一のトポロジーを有するパンツの型紙データを学習した学習済モデルを利用することで、同一のトポロジーを有する新規の衣服の型紙データを作成することが可能である。例えば、特定のシャツについて同一のトポロジーを有するシャツの型紙データを学習した学習済モデルを利用することで、同一のトポロジーを有する新規の衣服の型紙データを作成することが可能である。作成される型紙データは、教師なし学習による学習を経た学習済モデルによって作成されるため、この型紙データにより作成される衣服は、デザイナーの発想を超えた新規かつ奇抜な衣服であることが予期される。
【0123】
上述したグレーディングのためのシステム100は、例えば、出力された型紙データに基づいて衣服を製造する手段と共に、衣服製造システムを構成するようにしてもよい。衣服を製造する手段は、型紙データを利用して衣服を製造することができる限り、任意の手段であり得、例えば、衣服製造工場に備えられている機械であり得る。
【0124】
なお、上述したシステム100の各構成要素は、単一のハードウェア部品で構成されていてもよいし、複数のハードウェア部品で構成されていてもよい。複数のハードウェア部品で構成される場合は、各ハードウェア部品が接続される態様は問わない。各ハードウェア部品は、無線で接続されてもよいし、有線で接続されてもよい。本発明のシステム100は、特定のハードウェア構成には限定されない。プロセッサ部120、120A、120Bをデジタル回路ではなくアナログ回路によって構成することも本発明の範囲内である。本発明のシステム100の構成は、その機能を実現できる限りにおいて上述したものに限定されない。
【0125】
(4.グレーディングのためのシステムによる処理)
図6Aは、グレーディングのためのシステム100によるグレーディングのための処理の一例(処理600)を示すフローチャートである。処理600は、システム100のプロセッサ部120またはプロセッサ部120Aにおいて実行されることができる。下記では、プロセッサ部120において処理600が実行されることを説明するが、プロセッサ部120Aにおいても同様に実行されることが理解される。
【0126】
ステップS601では、プロセッサ部120の受信手段121が、標的衣服を識別する衣服識別情報と、サイズ情報とを受信する。衣服識別情報は、標的衣服を識別することができる限り、任意の情報であり得、例えば、衣服識別情報は、衣服の型(例えば、型番、品番、型式、モデル等)を示す情報であり得る。例えば、衣服識別情報は、標的衣服の画像データであってもよいし、標的衣服の型紙データであってもよい。
【0127】
ステップS602では、プロセッサ部120の生成手段122が、ステップS601で受信された衣服識別情報とサイズ情報とに基づいて、標的衣服と同種の衣服であって、サイズ情報が示すサイズに適合するサイズを有する衣服の型紙データを生成する。生成手段122は、学習済モデルを使用して、標的衣服と同種の衣服の型紙データを生成することができる。学習済モデルは、標的衣服と同種の衣服の複数の型紙データ間の関係を学習している。
【0128】
標的衣服が、サイズに応じて個数が変動する部品を備える場合、生成手段122は、サイズ情報によって示されるサイズに応じて、学習済モデルから出力された型紙データから1または複数の部品を削除することができる。これにより、当該サイズの型紙データが本来有するべき個数の部品を有するようにすることができる。
【0129】
学習済モデルから出力された型紙データが縫い代を含まないため、生成手段122は、学習済モデルから出力された型紙データに縫い代を付加することができる。これにより、縫い代を有する、現実に製造可能な衣服の型紙データが生成され得る。
【0130】
ステップS603では、プロセッサ部120の出力手段123が、ステップS602で生成された型紙データを出力する。
【0131】
出力手段123は、インターフェース部110を介して、生成された型紙データをシステム100の外部に出力することができる。出力手段123は、例えば、インターフェース部110を介して、生成された型紙データをデータベース部200に出力することができる。出力手段123は、例えば、インターフェース部110を介して、生成された型紙データを端末装置300に出力することができる。
【0132】
処理600により出力された型紙データは、任意の用途に利用されることができる。例えば、図1Aを参照して上述したように、製造業者Mに提供され、ユーザUによって購入された衣服を製造するために利用されることができる。例えば、図1Bを参照して上述したように、ユーザUに提供され、多様なサイズを有する衣服を製造するために利用されることができる。あるいは、システム100と出力された型紙データに基づいて衣服を製造する手段とを備える衣服製造システムにおいて、衣服を製造するために利用されることができる。
【0133】
図6Bは、グレーディングのためのシステム100によるグレーディングのための処理の別の例(処理610)を示すフローチャートである。処理610は、システム100のプロセッサ部120Aにおいて実行されることができる。
【0134】
ステップS611は、ステップS601と同様のステップであり、ステップS611では、プロセッサ部120Aの受信手段121が、標的衣服を識別する衣服識別情報と、サイズ情報とを受信する。
【0135】
ステップS612は、ステップS602と同様のステップであり、ステップS612では、プロセッサ部120Aの生成手段122が、ステップS611で受信された衣服識別情報とサイズ情報とに基づいて、標的衣服と同種の衣服であって、サイズ情報が示すサイズに適合するサイズを有する衣服の型紙データを生成する。
【0136】
ステップS613では、プロセッサ部120Aの算出手段124が、ステップS612で生成された型紙データの信頼度を算出する。例えば、算出手段124は、生成された型紙データの潜在空間中の位置に基づいて、信頼度を算出することができる。例えば、学習済モデルが複数の型紙データの信頼度も学習しているとき、算出手段124は、学習済モデルからの出力に基づいて、信頼度を算出することができる。
【0137】
ステップS614では、ステップS613で算出された信頼度が、所定の閾値よりも低いかどうかが判定される。所定の閾値は任意の閾値であり得、例えば、製造可能な衣服の型紙データであるか否かを区分する閾値であり得る。すなわち、所定の閾値は、信頼度が所定の閾値以上であれば製造可能なデータであるとみなすことができ、信頼度が所定の閾値よりも低ければ製造可能なデータではないとみなすことができるような閾値であり得る。
【0138】
信頼度が所定の閾値よりも低い場合(Yes)には、ステップS615に進み、信頼度が所定の閾値以上である場合(No)には、ステップS616に進む。
【0139】
ステップS615では、プロセッサ部120Aの出力手段123が、所与のアクションを実行する。一例において、出力手段123は、ステップS613で生成された型紙データを出力しないようにしてもよい。これにより、信頼度が低い型紙データがユーザに提供されることを未然に防ぐことができる。別の例において、出力手段123は、通知を出力することができる。通知は、例えば、生成された型紙データの信頼度が低いことを示す通知であってもよいし、生成された型紙データの信頼度が低いにもかかわらず型紙データを出力することをユーザに確認するための通知であってもよい。あるいは、通知は、生成された型紙データの信頼度が低いことを理由に、型紙データを出力しないことを示す通知であってもよい。これにより、生成された型紙データの信頼度が低いことをユーザまたはシステム100の管理者に伝え、信頼度を向上させるための措置を講じるように促すことができる。措置は、例えば、当該型紙データに対応する新たな学習データ作成および学習、または、既存の学習データの修正を含む。例えば、新たな学習データの作成および既存の学習データの修正は、パタンナー、または、グレーダーが行うことになり、作成された新たな学習データおよび修正された既存の学習データは、信頼度が高い型紙データとなり得る。作成された新たな学習データおよび修正された既存の学習データの学習は、プロセッサ部120Aの学習手段125が行うことになる。
【0140】
ステップS616は、ステップS603と同様のステップであり、プロセッサ部120Aの出力手段123が、ステップS602で生成された型紙データを出力する。
【0141】
処理610により、信頼度が所定の閾値以上の型紙データのみが出力されることを保証することができる。また、信頼度が所定の閾値よりも低い型紙データに対して学習データの作成または修正を促すことにより、より精度の高い学習済モデルの作成を促すこともできる。
【0142】
図7は、グレーディングのためのシステム100による学習済モデルを生成するための処理の別の例(処理700)を示すフローチャートである。処理700は、システム100のプロセッサ部120Bにおいて実行されることができる。
【0143】
ステップS701では、プロセッサ部120Bの受信手段126が、複数の衣服の型紙データを受信する。これらの型紙データは、学習データである。複数の衣服の型紙データの各々は、複数の座標点によって表現されることができる。複数の衣服の型紙データは、製造可能な衣服の型紙データであることが特に好ましい。
【0144】
複数の衣服は、サイズに応じて個数が変動する部品を有することができ、このとき、複数の衣服の型紙データは、サイズに応じて個数が変動する部品の座標点も有することになる。複数の衣服の型紙データは、各部位の寸法を含むこともできる。
【0145】
一例において、複数の衣服の型紙データは、それぞれが特定の衣服と同種の衣服であって、異なるサイズを有する衣服の型紙データであり得る。これにより、処理700により生成される学習済モデルは、特定の衣服と同種の衣服であって、特定のサイズに適合するサイズを有する衣服の型紙データを生成することができるようになり、従って、特定の衣服のグレーディングに利用可能となる。
【0146】
別の例において、複数の衣服の型紙データは、それぞれが特定の衣服と同一のトポロジーを有する衣服であって、異なるサイズおよび/または形状を有する衣服の型紙データであり得る。これにより、処理700により生成される学習済モデルは、特定の衣服とは異なるサイズおよび/または形状を有する衣服の型紙データを生成することができるようになり、従って、新たな衣服の創造のために利用可能となる。
【0147】
ステップS702では、プロセッサ部120Bの前処理手段127が、ステップS702で受信された複数の衣服の型紙データを前処理する。前処理は、例えば、学習におけるエラーを低減するため、および/または、学習を効率的に行うことができるようにするために行われる。
【0148】
前処理は、例えば、複数の衣服の型紙データの外形線内にジグザク形状があるかを検査すること、複数の衣服の型紙データの座標点の数を揃えること、複数の衣服の型紙データ中の部品を検知し、複数の衣服の型紙データのそれぞれにおいて部品の個数を揃えること、複数の衣服の型紙データに含まれている縫い代を削除することのうちの少なくとも1つを含む。好ましくは、前処理は、複数の衣服の型紙データの座標点の数を揃えることを含む。より好ましくは、前処理は、複数の衣服の型紙データ中の部品を検知し、複数の衣服の型紙データのそれぞれにおいて部品の個数を揃えることをさらに含む。座標点の個数および部品の個数を揃えることにより、学習を効率的にすることができ、生成された学習済モデルの精度も保証することができるからである。
【0149】
ステップS703では、プロセッサ部120Bの学習手段128が、ステップS702で前処理された複数の衣服の型紙データの間の関係を学習する。学習手段128は、少なくとも、型紙データに含まれる座標点を特徴量として学習することができる。好ましくは、学習手段128は、型紙データに含まれる座標点と、型紙データに含まれる部品の個数とを特徴量として学習することができ、複数の衣服の型紙データの座標点の間の関係と共に、複数の衣服の型紙データに含まれる部品の個数の間の関係も学習することになる。より好ましくは、学習手段128は、型紙データに含まれる座標点と、型紙データに含まれる部品の個数および/または各部位の寸法とを特徴量として学習することができ、複数の衣服の型紙データの座標点の間の関係と共に、複数の衣服の型紙データに含まれる部品の個数の間の関係および/または複数の衣服の型紙データの寸法の間の関係も学習することになる。
【0150】
学習に用いられる複数の衣服の型紙データを製造可能な衣服の型紙データとすることで、生成される学習済モデルからの出力が、製造可能な衣服の型紙データである可能性が高くなる。また、学習に用いられる型紙データ中の座標点の数が揃っていることで、生成される学習済モデルからの出力が、製造可能な衣服の型紙データである可能性がより高くなる。さらに、学習に用いられる型紙データ中の部品の個数が揃っていることで、サイズに応じて個数が変動する部品を有している場合であっても、学習に利用することができ、かつ、生成される学習済モデルからの出力が、製造可能な衣服の型紙データである可能性がより高くなる。
【0151】
処理700により、特定の衣服のグレーディングに利用可能な学習済モデル、または、新たな衣服の創造のために利用可能な学習済モデルを生成することができる。処理700によって生成された学習済モデルは、処理600および処理610において利用されることができる。
【0152】
図6A図6B図7を参照して上述した例では、特定の順序で処理が行われることを説明したが、各処理の順序は説明されたものに限定されず、論理的に可能な任意の順序で行われ得る。
【0153】
図6A図6B図7を参照して上述した例では、図6に示される各ステップの処理は、プロセッサ部120、120A、または120Bとメモリ部130に記憶されたプログラムとによって実現することが説明されたが、本発明はこれに限定されない。図6A図6B図7に示される各ステップの処理のうちの少なくとも1つは、制御回路などのハードウェア構成によって実現されてもよい。
【0154】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。例えば、一実施形態について記載された特徴は、別の実施形態にも適用可能であることが当然に理解される。
【産業上の利用可能性】
【0155】
本発明は、適切な型紙データを簡単に得ることが可能な、グレーディングのためのシステム等を提供することができる点で有用である。
【符号の説明】
【0156】
U ユーザ
P プロバイダ
M 製造業者
100 システム
110 インターフェース部
120、120A、120B プロセッサ部
130 メモリ部
200 データベース部
300 端末装置
400 ネットワーク
【要約】
【課題】適切な型紙データを簡単に得ることが可能な、グレーディングのためのシステム等を提供すること
【解決手段】本発明は、グレーディングのためのシステムを提供し、前記システムは、標的衣服を識別する衣服識別情報とサイズ情報とを受信する受信手段と、前記衣服識別情報と前記サイズ情報とに基づいて、学習済モデルを使用して、前記標的衣服と同種の衣服であって、前記サイズ情報が示すサイズに適合するサイズを有する衣服の型紙データを生成する生成手段であって、前記学習済モデルは、前記標的衣服と同種の複数の衣服の型紙データ間の関係を学習することによって得られたモデルである、生成手段と、前記生成された型紙データを出力する出力手段とを備える。
【選択図】図1A
図1A
図1B
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6A
図6B
図7