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特許7220325オフセット印刷用洗浄液組成物および洗浄方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-01
(45)【発行日】2023-02-09
(54)【発明の名称】オフセット印刷用洗浄液組成物および洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   B41F 35/00 20060101AFI20230202BHJP
【FI】
B41F35/00 A
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022172926
(22)【出願日】2022-10-28
【審査請求日】2022-10-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000219912
【氏名又は名称】東京インキ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】長幡 大輔
【審査官】中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-037685(JP,A)
【文献】特開2017-094663(JP,A)
【文献】特開2010-138277(JP,A)
【文献】特開平11-106785(JP,A)
【文献】特開平09-194892(JP,A)
【文献】特開平07-173492(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 35/00-35/06
C11D 3/00-3/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エタノールと、下記一般式(1)で表される化合物と、下記一般式(2)または下記一般式(3)で表される化合物のうち少なくとも一つと、を含むことを特徴とするオフセット印刷用洗浄液組成物。
【化1】
(Rは、炭素数1~10の直鎖または分岐鎖アルキル基であり、Rは、炭素数1~10の直鎖または分岐鎖のアルキレン基または、アルキレン基がエーテル結合またはエステル結合で中断されているものであり、nは1~10の整数である。)

【化2】
(RおよびRは、それぞれ独立して水素、炭素数1~10の直鎖または分岐鎖アルキル基、炭素数6~10のアリール基、炭素数1~10の直鎖または分岐鎖アルキルアミノ基、炭素数1~10の直鎖または分岐鎖ヒドロキシアルキル基、炭素数1~10のアルキルベンゼン基またはアミノ基であり、Rは、水素、炭素数1~10の直鎖または分枝鎖アルキル基、炭素数6~10のアリール基、炭素数1~10の直鎖または分枝鎖アルキルアミノ基、アミノ基またはヒドロキシ基であり、Xは、CHまたはNであり、mは、1または2の整数である。)

【化3】
(RおよびRは、それぞれ独立して水素、炭素数1~10の直鎖または分岐鎖アルキル基、炭素数6~18のアリール基、炭素数1~10の直鎖または分岐鎖アルキルアミノ基、炭素数1~10の直鎖または分岐鎖ヒドロキシアルキル基、炭素数1~10のアルキルベンゼン基またはアミノ基であり、RおよびRは、それぞれ独立して水素、炭素数1~10の直鎖または分岐鎖アルキル基、炭素数6~18のアリール基、炭素数1~10の直鎖または分岐鎖アルキルアミノ基、炭素数1~10の直鎖または分岐鎖ヒドロキシアルキル基、炭素数1~10のアルキルベンゼン基またはアミノ基であり、Yは、(C(R1011))であり、aは、0~5の整数であり、R10およびR11は、それぞれ独立して水素、炭素数1~10の直鎖または分岐鎖アルキル基、炭素数6~18のアリール基、炭素数1~10の直鎖または分岐鎖アルキルアミノ基、炭素数1~10の直鎖または分岐鎖ヒドロキシアルキル基、炭素数1~10のアルキルベンゼン基またはアミノ基である。)
【請求項2】
さらに、メタノール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、ノルマルブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec-ブチルアルコールおよびtert-ブチルアルコールのうち少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1に記載のオフセット印刷版用洗浄液組成物。
【請求項3】
前記一般式(1)で表される化合物が、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノ-tert-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノイソブチルエーテル、プロピレングリコールモノ-tert-ブチルエーテル、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノールであることを特徴とする請求項1または2に記載のオフセット印刷版用洗浄液組成物。
【請求項4】
前記一般式(2)で表される化合物が、2-ピロリドン、N-メチル-2- ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、1-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリドン、1-ヒドロキシメチル-2-ピロリドン、5-ヒドロキシメチル-2-ピロリドン、1-(3-アミノプロピル)-2-ピロリドン、2-イミダゾリジノンであることを特徴する請求項1または2に記載のオフセット印刷版用洗浄液組成物。
【請求項5】
前記一般式(2)で表される化合物が、2-ピロリドン、N-メチル-2- ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、1-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリドン、1-ヒドロキシメチル-2-ピロリドン、5-ヒドロキシメチル-2-ピロリドン、1-(3-アミノプロピル)-2-ピロリドン、2-イミダゾリジノンであることを特徴する請求項3に記載のオフセット印刷版用洗浄液組成物。
【請求項6】
前記一般式(3)で表される化合物が、β-ブチロラクトン、γ-ブチロラクトン、γ-カプロラクトン、ε-カプロラクトン、6-ヒドロキシヘプタン酸ラクトン、2-メチル-6-ヒドロキシヘキサン酸ラクトン、4-ヒドロキシ-4-メチルヘキサン酸ラクトンであることを特徴する請求項1または2に記載のオフセット印刷版用洗浄液組成物。
【請求項7】
前記一般式(3)で表される化合物が、β-ブチロラクトン、γ-ブチロラクトン、γ-カプロラクトン、ε-カプロラクトン、6-ヒドロキシヘプタン酸ラクトン、2-メチル-6-ヒドロキシヘキサン酸ラクトン、4-ヒドロキシ-4-メチルヘキサン酸ラクトンであることを特徴する請求項3に記載のオフセット印刷版用洗浄液組成物。
【請求項8】
請求項1または2に記載のオフセット印刷用洗浄剤と、感光残膜汚れおよび/または給水ローラー汚れが生じた被着体とを、接触させることで、感光残膜および/または感光残膜とインキの混合物を前記被着体から分離することを特徴とする洗浄方法。
【請求項9】
請求項3に記載のオフセット印刷用洗浄剤と、感光残膜汚れおよび/または給水ローラー汚れが生じた被着体とを、接触させることで、感光残膜および/または感光残膜とインキの混合物を前記被着体から分離することを特徴とする洗浄方法。
【請求項10】
請求項4に記載のオフセット印刷用洗浄剤と、感光残膜汚れおよび/または給水ローラー汚れが生じた被着体とを、接触させることで、感光残膜および/または感光残膜とインキの混合物を前記被着体から分離することを特徴とする洗浄方法。
【請求項11】
請求項5に記載のオフセット印刷用洗浄剤と、感光残膜汚れおよび/または給水ローラー汚れが生じた被着体とを、接触させることで、感光残膜および/または感光残膜とインキの混合物を前記被着体から分離することを特徴とする洗浄方法。
【請求項12】
請求項6に記載のオフセット印刷用洗浄剤と、感光残膜汚れおよび/または給水ローラー汚れが生じた被着体とを、接触させることで、感光残膜および/または感光残膜とインキの混合物を前記被着体から分離することを特徴とする洗浄方法。
【請求項13】
請求項7に記載のオフセット印刷用洗浄剤と、感光残膜汚れおよび/または給水ローラー汚れが生じた被着体とを、接触させることで、感光残膜および/または感光残膜とインキの混合物を前記被着体から分離することを特徴とする洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オフセット印刷用洗浄液組成物、特に、オフセット印刷用ローラーにおいて使用されるオフセット印刷用洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
オフセット印刷は、用紙を用いて黄・紅・藍・墨の4色のオフセット印刷インキを紙に印刷する印刷方式で、商業印刷物に多く利用されている。オフセット印刷は、水と油性インキが互いに反発する性質を利用して、オフセット印刷版の親油性の画像部をインキ受容部、親水性の非画像部を湿し水受容部として、オフセット印刷版の表面にインキの付着性の差異を生じさせ、画像部のみにオフセット印刷インキを着肉させた後、紙などの被印刷体にオフセット印刷インキを転写して印刷する方法である。
このオフセット印刷版を作製するため、従来、親水性の支持体上に親油性の感光性樹脂層(画像記録層)を設けたオフセット印刷版原版(PS版)が広く用いられている。
通常は、オフセット印刷版原版を、リスフィルムなどの原画を通した露光を行った後、画像部の画像記録層を残存させ、非画像部の画像記録層をアルカリ性現像液または有機溶剤によって溶解して除去することで親水性の支持体の表面を露出させる方法により製版を行って、オフセット印刷版を作製している。
【0003】
上記の従来のオフセット印刷版原版の製版工程においては、露光後、非画像部を画像記録層に応じた現像液などによって溶解除去する工程が必須であるが、このような湿式処理を不要化、または簡易化が課題として挙げられ、さらに、地球環境への配慮から湿式処理に伴って排出される廃液の処分の課題解決の要望が高まってきている。
【0004】
これに対して、現像液などによって溶解除去する工程を除去した製版方法の一つとして、オフセット印刷版原版の非画像部の除去を通常の印刷工程の中で行えるような画像記録層を用い、露光後、印刷機上で非画像部を除去し、オフセット印刷版を作製する、機上現像と呼ばれる方法が提案されている。
機上現像は、例えば、湿し水、インキ溶剤または湿し水と印刷インキとの乳化物に溶解、または分散することが可能な画像記録層を有するオフセット印刷版原版を用いる方法、印刷機の印刷用ローラー類やブランケット胴との接触により、画像記録層の力学的除去を行う方法、湿し水、インキ溶剤などの浸透によって画像記録層の凝集力または画像記録層と支持体との接着力を弱めた後、印刷用ローラー類やブランケット胴との接触により、画像記録層の力学的除去を行う方法が挙げられる。
【0005】
しかし、上記のようなオフセット印刷版原版は、溶解除去工程を不要にするべく画像記録層に特徴を持たせており、画像強度や耐刷性も付与するために、特に重合性化合物を使用した重合反応を用いて形成された層となっているため、このようなオフセット印刷版原版を機上現像する機上現像工程中においては、印刷インキや湿し水によって除去された物質は、紙に転写され系外に排出されるが、すべてが排出するわけではなく、印刷インキおよび湿し水中に拡散する。この拡散した除去物の親油性成分が析出して、湿し水を供給する給水ローラー上にカス(感光残膜)となって付着、また、親油性成分であるので印刷インキとの混合物となり、同ローラー上に付着し、その結果、給水ローラーへの均一な湿し水の供給機能を損ねたり、給水ローラーからカスやインキとの混合物が剥離してインキローラーに堆積したり、印刷物の汚れの原因となったり、また、給水ローラーやインキローラーを洗浄しなければならず、印刷機の停止や洗浄時間を要するといった問題が起きやすいことが分かった。
【0006】
特許文献1には、支持体上に、(A)赤外線吸収剤、(B)重合開始剤、(C)重合性化合物、および(D)酸性基を有するバインダーポリマーを含有する画像記録層を有する平版印刷版原版を、印刷機に装着し、赤外線レーザーで画像様に露光した後、または、赤外線レーザーで画像様に露光した後、印刷機に装着し、該平版印刷版原版に、アルカリ性湿し水と油性インキとを供給して、該平版印刷版原版の赤外線レーザー未露光部分を除去する機上現像方法が開示され、給水ローラー上へのカスの付着を防止できるものが提案されている。
【0007】
しかし、平版印刷版原版の画像記録層に、酸性基を有するバインダーポリマーを導入し、かつ湿し水をアルカリ性とすることによって、バインダーポリマーの湿し水への親和性を高めることで、ローラー上へのカス付着を抑制できるものであるため、実施例においても、酸性(pH5.2)の湿し水では、カスの付着抑制効果がないことが明らかであることに加えて、中性やアルカリ性の湿し水においてはその記載も示唆もない。
【0008】
一方、オフセット印刷方式は、上記した通り、親油性の印刷インキを使用する。通常、オフセット印刷では、印刷版替えやインキの種類を変えることがあり、印刷を中断し、その際に、インキ壺や印刷インキ供給ローラー類に付着したインキを洗浄する必要がある。このとき、インキ用洗浄剤が用いられるが、溶解力の高い有機溶剤を含有すると、人体への毒性が懸念されたり、環境負荷となる場合がある。
【0009】
特許文献2には、アセト酢酸エステルおよびグリコールジエステルからえらばれた少なくとも一種のエステル化合物と、特定の群からえらばれた少なくとも一種の化合物とを含有するインキ用洗浄剤が開示され、低毒性で安全な溶媒系からなり、洗浄能力が高く、操作性の良いものが提案されている。
【0010】
しかし、インキ供給ローラー類やインキ壺といったインキ供給部品用の洗浄剤であって、給水ローラーに使用するものではなく、その記載も示唆もない。まして、機上現像で発生する給水ローラー上の感光残膜について、その記載も示唆もない。
また、仮にこの洗浄液を、給水ローラー上の感光残膜の洗浄用として使用しても、画像記録層を除去した重合性化合物を取り除くことが困難であり、洗浄回数や、洗浄剤使用量が増加するおそれがある。
【0011】
また、オフセット印刷方式の中でも凹版オフセット印刷方式は、線幅200μm以下と小さく、高い微細パターンの形成が容易であり、高い電気伝導性が要求される配線用微細パターンの形成に適合した技術として注目されているが、凹版に充填された印刷インキの一部がブランケットに転写されずに残留するようになったときには、変形することもあり、これにより、微細パターンの再現性が確保しにくいといった問題がある。
上記のような問題があるため、残留する印刷インキを除去するため、凹版を定期的に洗浄する必要があり、この際の洗浄液として、アミン系溶剤を使用したものがあるが、金属に対する腐食性が高く、また確実に除去できないおそれがある。また、フッ素系溶剤を使用したものもあるが、安定性が悪く、凹版を傷めるおそれがあること、およびフッ素含有量が多く、環境への影響が高いという懸念がある。
【0012】
特許文献3には、有機アミン化合物1~25質量% 、芳香族アルコール10~70質量% 、及び有機溶媒20~80質量%を含むオフセット印刷用凹版洗浄液組成物が開示され、凹版に残留する印刷インキの確実な除去が可能で、フッ素系溶剤非含有であるので、凹版を傷めるおそれがなく、また環境への影響も少ないものが提案されている。
【0013】
しかし、凹版オフセット印刷方式であるので、印刷版自体が異なり、オフセット印刷凹版用の洗浄液であることから、機上現像での課題である給水ローラー上への感光残膜の付着については、記載も示唆もない。
また、仮にこの洗浄液を、給水ローラー上の感光残膜の洗浄用として使用しても、画像記録層を除去した重合性化合物を取り除くことが困難であり、洗浄回数や、洗浄剤使用量が増加するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】特開2005-219393号公報
【文献】特開2005-120389号公報
【文献】特開2013-010926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
そこで、本発明は、機上現像で生じる給水ローラー上の感光残膜の除去性に優れると共に、該感光残膜と印刷インキとの混合物に対しての除去性にも優れ、また、拭き取りが容易で、あらゆる湿し水にも適応可能なオフセット印刷用洗浄液組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者は、鋭意検討した結果、エタノールと、下記一般式(1)で表される化合物と、下記一般式(2)または下記一般式(3)で表される化合物のうち少なくとも一つと、を含むことにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0017】
【化1】
(Rは、炭素数1~10の直鎖または分岐鎖アルキル基であり、Rは、炭素数1~10の直鎖または分岐鎖のアルキレン基または、アルキレン基がエーテル結合またはエステル結合で中断されているものであり、nは1~10の整数である。)
【0018】
【化2】
(RおよびRは、それぞれ独立して水素、炭素数1~10の直鎖または分岐鎖アルキル基、炭素数6~10のアリール基、炭素数1~10の直鎖または分岐鎖アルキルアミノ基、炭素数1~10の直鎖または分岐鎖ヒドロキシアルキル基、炭素数1~10のアルキルベンゼン基またはアミノ基であり、Rは、水素、炭素数1~10の直鎖または分枝鎖アルキル基、炭素数6~10のアリール基、炭素数1~10の直鎖または分枝鎖アルキルアミノ基、アミノ基またはヒドロキシ基であり、Xは、CHまたはNであり、mは、1または2の整数である。)
【0019】
【化3】
(RおよびRは、それぞれ独立して水素、炭素数1~10の直鎖または分岐鎖アルキル基、炭素数6~18のアリール基、炭素数1~10の直鎖または分岐鎖アルキルアミノ基、炭素数1~10の直鎖または分岐鎖ヒドロキシアルキル基、炭素数1~10のアルキルベンゼン基またはアミノ基であり、RおよびRは、それぞれ独立して水素、炭素数1~10の直鎖または分岐鎖アルキル基、炭素数6~18のアリール基、炭素数1~10の直鎖または分岐鎖アルキルアミノ基、炭素数1~10の直鎖または分岐鎖ヒドロキシアルキル基、炭素数1~10のアルキルベンゼン基またはアミノ基であり、Yは、(C(R1011))であり、aは、0~5の整数であり、R10およびR11は、それぞれ独立して水素、炭素数1~10の直鎖または分岐鎖アルキル基、炭素数6~18のアリール基、炭素数1~10の直鎖または分岐鎖アルキルアミノ基、炭素数1~10の直鎖または分岐鎖ヒドロキシアルキル基、炭素数1~10のアルキルベンゼン基またはアミノ基である。)
【0020】
本発明によれば、エタノールと、下記一般式(1)で表される化合物と、下記一般式(2)または下記一般式(3)で表される化合物のうち少なくとも一つと、を含むことを特徴とするオフセット印刷版用洗浄液組成物が提供される。
【0021】
【化4】
(Rは、炭素数1~10の直鎖または分岐鎖アルキル基であり、Rは、炭素数1~10の直鎖または分岐鎖のアルキレン基または、アルキレン基がエーテル結合またはエステル結合で中断されているものであり、nは1~10の整数である。)
【0022】
【化5】
(RおよびRは、それぞれ独立して水素、炭素数1~10の直鎖または分岐鎖アルキル基、炭素数6~10のアリール基、炭素数1~10の直鎖または分岐鎖アルキルアミノ基、炭素数1~10の直鎖または分岐鎖ヒドロキシアルキル基、炭素数1~10のアルキルベンゼン基またはアミノ基であり、Rは、水素、炭素数1~10の直鎖または分枝鎖アルキル基、炭素数6~10のアリール基、炭素数1~10の直鎖または分枝鎖アルキルアミノ基、アミノ基またはヒドロキシ基であり、Xは、CHまたはNであり、mは、1または2の整数である。)
【0023】
【化6】
(RおよびRは、それぞれ独立して水素、炭素数1~10の直鎖または分岐鎖アルキル基、炭素数6~18のアリール基、炭素数1~10の直鎖または分岐鎖アルキルアミノ基、炭素数1~10の直鎖または分岐鎖ヒドロキシアルキル基、炭素数1~10のアルキルベンゼン基またはアミノ基であり、RおよびRは、それぞれ独立して水素、炭素数1~10の直鎖または分岐鎖アルキル基、炭素数6~18のアリール基、炭素数1~10の直鎖または分岐鎖アルキルアミノ基、炭素数1~10の直鎖または分岐鎖ヒドロキシアルキル基、炭素数1~10のアルキルベンゼン基またはアミノ基であり、Yは、(C(R1011))であり、aは、0~5の整数であり、R10およびR11は、それぞれ独立して水素、炭素数1~10の直鎖または分岐鎖アルキル基、炭素数6~18のアリール基、炭素数1~10の直鎖または分岐鎖アルキルアミノ基、炭素数1~10の直鎖または分岐鎖ヒドロキシアルキル基、炭素数1~10のアルキルベンゼン基またはアミノ基である。)
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、機上現像で生じる給水ローラー上の感光残膜の除去性に優れると共に、該感光残膜と印刷インキとの混合物に対しての除去性にも優れ、また、拭き取りが容易で、あらゆる湿し水にも適応可能なオフセット印刷用洗浄液組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、本実施形態は、本発明を実施するための一形態に過ぎず、本発明は本実施形態によって限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更実施の形態が可能である。
【0026】
本発明のオフセット印刷用洗浄液組成物(以下、「洗浄液」ともいう)は、エタノールと、一般式(1)で表される化合物と、一般式(2)または一般式(3)で表される化合物のうち少なくとも一つと、を含むことが好ましい。このことで、機上現像で生じる給水ローラー上の感光残膜の除去性に優れるだけでなく、該感光残膜と印刷インキとの混合物が給水ローラー上に付着した場合の除去にも使用可能で、また、拭き取りも容易となり、さらに湿し水のpHに影響せず、使用可能なものとなる。
【0027】
本発明のオフセット印刷用洗浄液組成物は、下記一般式(1)で表される化合物を含むことが好ましい。
【化7】
【0028】
式(1)中、Rは、炭素数1~10の直鎖または分岐鎖アルキル基を表す。
は、炭素数1~10の直鎖または分岐鎖のアルキレン基または、アルキレン基がエーテル結合またはエステル結合で中断されているものを表す。
nは1~10の整数を表す。
【0029】
前記式(1)において、Rは、炭素数1~10の直鎖または分岐鎖アルキル基であることが好ましく、炭素数1~8の直鎖または分岐鎖アルキル基であることがより好ましく、炭素数1~4の直鎖または分岐鎖アルキル基であることがさらに好ましい。炭素数が10を超えると、相溶し難くなり、分離したり、除去性が低下するおそれがある。
【0030】
前記式(1)において、Rは、炭素数1~10の直鎖または分岐鎖のアルキレン基であることが好ましく、炭素数1~8の直鎖または分岐鎖のアルキレン基であることがより好ましく、炭素数1~4の直鎖または分岐鎖のアルキレン基であることがさらに好ましい。また、前記アルキレン基がエーテル結合またはエステル結合で中断されているものであってもよい。炭素数が10を超えると、相溶し難くなり、分離したり、除去性が低下するおそれがある。
【0031】
前記式(1)において、nは1~10の整数であることが好ましく、1~8の整数であることがより好ましく、1~5の整数であることがさらに好ましい。nが10を超えると、相溶し難くなり、分離したり、除去性が低下するおそれがある。
【0032】
前記式(1)におけるRは、炭素数1~10の直鎖または分岐鎖のアルキル基であることが好ましいが、該アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、直鎖または分岐ペンチル基、直鎖または分岐ヘキシル基、直鎖または分岐ヘプチル基、直鎖または分岐オクチル基、直鎖または分岐ノニル基、直鎖または分岐デシル基などが挙げられる。なかでも、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基が特に好ましい。
【0033】
前記式(1)におけるRは、炭素数1~10の直鎖または分岐鎖のアルキレン基であることが好ましいが、該アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、ブチレン基、1,1-ジメチルエチレン基、1,2-ジメチルエチレン基、2,2-ジメチルエチレン基、1-メチルトリメチレン基、2-メチルトリメチレン基、3-メチルトリメチレン基、テトラメチレン基、ペンチレン基、1-エチル-1-メチルエチレン基、1-エチル-2-メチルエチレン基、1,1,2-トリメチルエチレン基、1,2,2-トリメチルエチレン基、1-エチルトリメチレン基、2-エチルトリメチレン基、3-エチルトリメチレン基、1,1-ジメチルトリメチレン基、1,2-ジメチルトリメチレン基、1,3-ジメチルトリメチレン基、2,2-ジメチルトリメチレン基、2,3-ジメチルトリメチレン基、3,3-ジメチルトリメチレン基、1-メチルテトラメチレン基、2-メチルテトラメチレン基、3-メチルテトラメチレン基、4-メチルテトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキシレン基、1-メチル-1-プロピルエチレン基、1-メチル-2-プロピルエチレン基、2-メチル-2-プロピルエチレン基、1,1-ジエチルエチレン基、1,2-ジエチルエチレン基、2,2-ジエチルエチレン基、1-エチル-1,2-ジメチルエチレン基、1-エチル-2,2-ジメチルエチレシ基、2-エチル-1,1-ジメチルエチレン基、2-エチル-1,2-ジメチルエチレン基、1,1,2,2-テトラメチルエチレン基、1-プロピルトリメチレン基、2-プロピルトリメチレン基、3-プロピルトリメチレン基、1-エチル-1-メチルトリメチレン基、1-エチル-2-メチルトリメチレン基、1-エチル-3-メチルトリメチレン基、2-エチル-1-メチルトリメチレン基、2-エチル-2-メチルトリメチレン基、2-エチル-3-メチルトリメチレン基、3-エチル-1-メチルトリメチレン基、3-エチル-2-メチルトリメチレン基、3-エチル-3-メチルトリメチレン基、1,1,2-トリメチルトリメチレン基、1,1,3-トリメチルトリメチレン基、1,2,2-トリメチルトリメチレン基、1,2,3-トリメチルトリメチレン基、1,3,3-トリメチルトリメチレン基、2,2,3-トリメチルトリメチレン基、2,3,3-トリメチルトリメチレン基、1-エチルテトラメチレン基、2-エチルテトラメチレン基、3-エチルテトラメチレン基、4-エチルテトラメチレン基、1,1-ジメチルテトラメチレン基、1,2-ジメチルテトラメチレン基、1,3-ジメチルテトラメチレン基、1,4-ジメチルテトラメチレン基、2,2-ジメチルテトラメチレン基、2,3-ジメチルテトラメチレン基、2,4-ジメチルテトラメチレン基、3,3-ジメチルテトラメチレン基、3,4-ジメチルテトラメチレン基、4,4-ジメチルテトラメチレン基、1,4-ジエチルテトラメチレン基、1-メチルペンタメチレン基、2-メチルペンタメチレン基、3-メチルペンタメチレン基、4-メチルペンタメチレン基、5-メチルペンタメチレン基、2,4-ジメチルヘプタメチレン基、1-メチルヘキサメチレン基、1-メチルヘプタメチレン基、1-メチルオクタメチレン基、1-メチルノナメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基などが挙げられる。なかでも、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、ブチレン基、1,1-ジメチルエチレン基、1,2-ジメチルエチレン基、2,2-ジメチルエチレン基、1-メチルトリメチレン基、2-メチルトリメチレン基、3-メチルトリメチレン基、テトラメチレン基、1-エチル-1-メチルエチレン基、1-エチル-2-メチルエチレン基、1,1,2-トリメチルエチレン基、1,2,2-トリメチルエチレン基、1-エチルトリメチレン基、2-エチルトリメチレン基、3-エチルトリメチレン基、1,1-ジメチルトリメチレン基、1,2-ジメチルトリメチレン基、1,3-ジメチルトリメチレン基、2,2-ジメチルトリメチレン基、2,3-ジメチルトリメチレン基、3,3-ジメチルトリメチレン基が特に好ましい。
【0034】
前記アルキレン基がエーテル結合で中断されているものとしては、例えば、下記一般式(3)または(4)で表される。
-(CH-O-(CH- (3)
-[(CH-O-]-(CH2)- (4)
式(3)または式(4)中、bは、2~5の整数を表し、好ましくは、2~4の整数を表す。
式(4)中、kは、1~5の整数を表し、好ましくは、1~4の整数を表す。
式(4)中、cは、1~3の整数を表し、好ましくは、1~2の整数を表す。
【0035】
前記アルキレン基がエステル結合で中断されているものとしては、例えば、下記一般式(5)で表される。
-[(CH-COO-(CH-]- (5)
式(5)中、dは、2~5の整数を表し、好ましくは、2~4の整数を表す。
式(5)中、jは、1~3の整数を表し、好ましくは、1~2の整数を表す。
【0036】
前記一般式(1)で表される化合物は、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、テトラエチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、テトラエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、トリエチレングリコールモノイソブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノ-tert-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-tert-ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノ-tert-ブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノ-tert-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、テトラプロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、テトラプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノイソブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノイソブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノイソブチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノイソブチルエーテル、プロピレングリコールモノ-tert-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-tert-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノ-tert-ブチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノ-tert-ブチルエーテル、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノールなどであることがより好ましい。
なかでも、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノ-tert-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノイソブチルエーテル、プロピレングリコールモノ-tert-ブチルエーテル、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノールがさらに好ましい。
なお、これらは単独で用いても2種以上で用いてもよい。
【0037】
前記一般式(1)で表される化合物は、洗浄液中に10~94.5質量%含有することが好ましく、30~90質量%がより好ましく、50~80質量%がさらに好ましい。前記一般式(1)で表される化合物の量が10質量%未満では、給水ローラーに付着した感光残膜とインキとの混合物が除去できず、汚れが発生するおそれや拭き取り作業が困難となるおそれがあり、94.5質量%を超えると、給水ローラーに付着した感光残膜が完全に除去できないおそれがある。
【0038】
本発明のオフセット印刷用洗浄液組成物は、下記一般式(2)または下記一般式(3)で表される化合物のうち少なくとも一つを含むことが好ましい。
【化8】
【0039】
【化9】
【0040】
式(2)または式(3)中、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して水素、炭素数1~10の直鎖または分岐鎖アルキル基、炭素数6~18のアリール基、炭素数1~10の直鎖または分岐鎖アルキルアミノ基、炭素数1~10の直鎖または分岐鎖ヒドロキシアルキル基、炭素数1~10のアルキルベンゼン基またはアミノ基を表す。
式(2)中、Rは、それぞれ独立して水素、炭素数1~10の直鎖または分枝鎖アルキル基、炭素数6~10のアリール基、炭素数1~10の直鎖または分枝鎖アルキルアミノ基、アミノ基またはヒドロキシ基を表す。
式(3)中、RおよびRは、それぞれ独立して水素、炭素数1~10の直鎖または分枝鎖アルキル基、炭素数6~10のアリール基、炭素数1~10の直鎖または分枝鎖アルキルアミノ基、アミノ基またはヒドロキシ基を表す。
式(2)中、Xは、CHまたはNを表す。
式(2)中、mは、1または2の整数を表す。
式(3)中、Yは、(C(R1011))を表す。
aは、0~5の整数を表し、好ましくは、0~3の整数を表し、より好ましくは、1を表す。
10およびR11は、それぞれ独立して水素、炭素数1~10の直鎖または分枝鎖アルキル基、炭素数6~10のアリール基、炭素数1~10の直鎖または分枝鎖アルキルアミノ基、アミノ基またはヒドロキシ基を表す。
【0041】
前記式(2)または式(3)において、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して水素、炭素数1~10の直鎖または分岐鎖アルキル基、炭素数6~18のアリール基、炭素数1~10の直鎖または分岐鎖アルキルアミノ基、炭素数1~10の直鎖または分岐鎖ヒドロキシアルキル基、炭素数1~10のアルキルベンゼン基またはアミノ基であることが好ましく、それぞれ独立して水素、炭素数1~8の直鎖または分岐鎖アルキル基、炭素数6~10のアリール基、炭素数1~8の直鎖または分岐鎖アルキルアミノ基、炭素数1~8の直鎖または分岐鎖ヒドロキシアルキル基、炭素数1~8のアルキルベンゼン基またはアミノ基であることがより好ましく、それぞれ独立して水素、炭素数1~4の直鎖または分岐鎖アルキル基、炭素数6~10のアリール基、炭素数1~4の直鎖または分岐鎖アルキルアミノ基、炭素数1~4の直鎖または分岐鎖ヒドロキシアルキル基、炭素数1~4のアルキルベンゼン基またはアミノ基であることがさらに好ましい。炭素数が大きくなると、相溶し難くなり、分離したり、除去性が低下するおそれがある。
【0042】
前記式(2)または式(3)において、R、R、R、R10およびR11は、それぞれ独立して水素、炭素数1~10の直鎖または分枝鎖アルキル基、炭素数6~18のアリール基、炭素数1~10の直鎖または分枝鎖アルキルアミノ基、アミノ基またはヒドロキシ基であることが好ましく、それぞれ独立して水素、炭素数1~8の直鎖または分枝鎖アルキル基、炭素数6~14のアリール基、炭素数1~8の直鎖または分枝鎖アルキルアミノ基、アミノ基またはヒドロキシ基であることがより好ましく、それぞれ独立して水素、炭素数1~4の直鎖または分枝鎖アルキル基、炭素数6~10のアリール基、炭素数1~4の直鎖または分枝鎖アルキルアミノ基、アミノ基またはヒドロキシ基であることがさらに好ましい。炭素数が大きくなると、相溶し難くなり、分離したり、除去性が低下するおそれがある。
【0043】
前記式(2)または式(3)におけるR、R、RおよびRは、炭素数1~10の直鎖または分岐鎖のアルキル基であることが好ましいが、該アルキル基としては、前述のものが挙げられる。なかでも、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基が特に好ましい。炭素数が大きくなると、相溶し難くなり、分離したり、除去性が低下するおそれがある。
【0044】
前記式(2)または式(3)におけるR、R、RおよびRは、炭素数6~18のアリール基であることが好ましいが、該アリール基としては、ベンジル基、フェニル基、フェネチル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、ターフェニリル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニレニル基、インダセニル基、フルオランテニル基、アセフェナントリレニル基、アセアントリレニル基、フェナレニル基、アントラキノリル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基、プレイアデニル基、ペリレニル基、フェノキシフェニル基、アセトキシフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、ベンゾイロキシフェニル基、α-メチルベンジル基、α,α-ジメチルベンジル基、アントリル基、フェナントリル基、インデニル基、アセナフテニル基、フルオレニル基、メチルチオフェニル基、フェニルチオフェニル基、メチルアミノフェニル基、ジメチルアミノフェニル基、アセチルアミノフェニル基、カルボキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、フェノキシカルボニルフェニル基、N-フェニルカルバモイルフェニル基、フルオロフェニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基などが挙げられる。なかでも、フェニル基、フェネチル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基が特に好ましい。炭素数が大きくなると、相溶し難くなり、分離したり、除去性が低下するおそれがある。
【0045】
前記式(2)または式(3)におけるR、R、RおよびRは、炭素数1~10の直鎖または分枝鎖アルキルアミノ基であることが好ましいが、該アルキルアミノ基としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、ブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、tert-ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、ヘプチルアミノ基、オクチルアミノ基、ノニルアミノ基、デシルアミノ基、sec-ブチルアミノ基、イソアミルアミノ基、tert-アミルアミノ基、イソヘキシルアミノ基、tert-ヘキシルアミノ基、イソヘプチルアミノ基、tert-ヘプチルアミノ基、イソオクチルアミノ基、tert-オクチルアミノ基、2-エチルヘキシルアミノ基、イソノニルアミノ基、イソデシルアミノ基、N,N-ジメチルアミノ基、N,N-ジエチルアミノ基、N,N-ジプロピルアミノ基、N,N-ジイソプロピルアミノ基、N,N-ジブチルアミノ基、N,N-ジイソブチルアミノ基、N,N-ジtert-ブチルアミノ基、N-メチル-N-エチルアミノ基などが挙げられる。なかでも、メチルアミノ基、エチルアミノ基、N,N-ジエチルアミノ基が特に好ましい。炭素数が大きくなると、相溶し難くなり、分離したり、除去性が低下するおそれがある。
【0046】
前記式(2)または式(3)におけるR、R、RおよびRは、炭素数1~10の直鎖または分岐鎖ヒドロキシアルキル基であることが好ましいが、該ヒドロキシアルキル基としては、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、3-ヒドロキシプロピル基、2-ヒドロキシプロピル基、4-ヒドロキシブチル基、3-ヒドロキシブチル基、2-ヒドロキシブチル基などが挙げられる。なかでも、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、3-ヒドロキシプロピル基、2-ヒドロキシプロピル基が特に好ましい。炭素数が大きくなると、相溶し難くなり、分離したり、除去性が低下するおそれがある。
【0047】
前記式(2)または式(3)におけるR、R、RおよびRは、炭素数1~10のアルキルベンゼン基であることが好ましいが、該アルキルベンゼン基としては、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、ブチルベンゼン、シメン、エチルアニソールの骨格から誘導されるものが挙げられる。なかでも、エチルベンゼンの骨格から誘導されるものが特に好ましい。炭素数が大きくなると、相溶し難くなり、分離したり、除去性が低下するおそれがある。
【0048】
前記式(2)または式(3)におけるR、R、R、R10およびR11は、炭素数1~10の直鎖または分岐鎖アルキル基であることが好ましいが、該アルキル基としては、前述のものが挙げられる。なかでも、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基が特に好ましい。炭素数が大きくなると、相溶し難くなり、分離したり、除去性が低下するおそれがある。
【0049】
前記式(2)または式(3)におけるR、R、R、R10およびR11は、炭素数6~18のアリール基であることが好ましいが、該アリール基としては、前述のものが挙げられる。なかでも、フェニル基、フェネチル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基が特に好ましい。炭素数が大きくなると、相溶し難くなり、分離したり、除去性が低下するおそれがある。
【0050】
前記式(2)または式(3)におけるR、R、R、R10およびR11は、炭素数1~10の直鎖または分枝鎖アルキルアミノ基であることが好ましいが、該アルキルアミノ基としては、前述のものが挙げられる。なかでも、メチルアミノ基、エチルアミノ基、N,N-ジエチルアミノ基が特に好ましい。炭素数が大きくなると、相溶し難くなり、分離したり、除去性が低下するおそれがある。
【0051】
前記一般式(2)で表される化合物は、2-ピロリドン、N-メチル-2- ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、5-メチル-2-ピロリドン、N-ネオペンチル-2-ピロリドン、N-ジメチルプロピル-2-ピロリドン、1-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリドン、1-ヒドロキシメチル-2-ピロリドン、5-ヒドロキシメチル-2-ピロリドン、1-ヒドロキシメチル-5-メチル-2-ピロリドン、1-ヒドロキシメチル-5-プロピル-2-ピロリドン、1-ヒドロキシメチル-5-イソプロピル-2-ピロリドン、1-ヒドロキシメチル-5-ペンチル-2-ピロリドン、1-(3-ヒドロキシプロピル)-2-ピロリドン、1-(1-ヒドロキシ-3,3-ジメチルブチル)-2-ピロリドン、3α,5α-ジメチル-4β-ヒドロキシ-2-ピロリドン、3,3-ジメチル-5β-(ヒドロキシメチル)-2-ピロリドン、1-(3-アミノプロピル)-2-ピロリドン、2-イミダゾリジノン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、1,3-ジブチル-2-イミダゾリジノン、1,3-ジプロピル-1,3-イミダゾリジン-2-オン、4,5-ジブチル-2-イミダゾリジノン、1,3-ビス(ヒドロキシメチル)-2-イミダゾリジノン、1-(ヒドロキシメチル)-2-イミダゾリジノン、1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリジノン、4,5-ジヒドロキシ-2-イミダゾリジン-2-オン、4,5-ジヒドロキシ-1-(ヒドロキシメチル)-2-イミダゾリジノン、1,3-ジメチル-4,5-ジヒドロキシ-2-イミダゾリノン、1-(2-アミノエチル)-2-イミダゾリジノンなどであることがより好ましい。
なかでも、2-ピロリドン、N-メチル-2- ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、1-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリドン、1-ヒドロキシメチル-2-ピロリドン、5-ヒドロキシメチル-2-ピロリドン、1-(3-アミノプロピル)-2-ピロリドン、2-イミダゾリジノンがさらに好ましい。
なお、これらは単独で用いても2種以上で用いてもよい。
【0052】
前記一般式(3)で表される化合物は、β-プロピオラクトン、β-ブチロラクトン、γ-ブチロラクトン、γ-カプロラクトン、ε-カプロラクトン、β-バレロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン、β-ヘキサノラクトン、γ-ヘキサノラクトン、δ-ヘキサノラクトン、β-ヘプタノラクトン、γ-ヘプタノラクトン、δ-ヘプタノラクトン、ε-ヘプタノラクトン、γ-オクタノラクトン、δ-オクタノラクトン、ε-オクタノラクトン、η-オクタノラクトン、γ-ノナラクトン、δ-ノナラクトン、ε-ノナラクトン、γ-デカラクトン、δ-デカラクトン、ε-デカノラクトン、γ-ウンデカラクトン、δ-ウンデカラクトン、δ-ドデカラクトン、δ-トリデカラクトン、2-メチル-3-ヒドロキシプロパン酸ラクトン、ピバロラクトン、β,β-ジメチル-β-プロピオラクトン、2,3-ジメチル-3-ヒドロキシプロパン酸ラクトン、4-ヒドロキシ-2-メチルブタン酸ラクトン、3-ヒドロキシペンタン酸ラクトン、5-ヒドロキシ-2-メチルペンタン酸ラクトン、2-メチル-4-ヒドロキシペンタン酸ラクトン、3-メチル-5-ヒドロキシペンタン酸ラクトン、5-ヒドロキシ-4-メチルペンタン酸ラクトン、4-ヒドロキシ-2-プロピルペンタン酸γ-ラクトン、5-ヒドロキシ-2-プロピルペンタン酸δ-ラクトン、2-プロピル-3-メチル-5-ヒドロキシペンタン酸ラクトン、2-メチル-4-ヒドロキシヘキサン酸ラクトン、4-メチル-6-ヒドロキシヘキサン酸ラクトン、2-メチル-6-ヒドロキシヘキサン酸ラクトン、4-ヒドロキシ-4-メチルヘキサン酸ラクトン、5-ヒドロキシ-2-エチルヘキサン酸ラクトン、4-tert-ブチル-6-ヒドロキシヘキサン酸ラクトン、5-メチル-5-ヒドロキシヘキサン酸ラクトン、3-ヒドロキシヘプタン酸β-ラクトン、5-ヒドロキシヘプタン酸ラクトン、6-ヒドロキシヘプタン酸ラクトン、7-ヒドロキシヘプタン酸1,7-ラクトン、3-メチル-4-ヒドロキシオクタン酸ラクトン、5-ヒドロキシ-4-メチルオクタン酸ラクトン、γ-(ヒドロキシメチル)-γ-ブチロラクトン、6-メチル-ε-カプロラクトン、6-ヒドロキシヘプタン酸ラクトン、2-アミノ-γ-ブチロラクトン、5-アミノ-5-ヒドロキシペンタン酸ラクトン、2-アミノ-4-ヒドロキシペンタン酸ラクトンであることがより好ましい。
なかでも、β-ブチロラクトン、γ-ブチロラクトン、γ-カプロラクトン、ε-カプロラクトン、6-ヒドロキシヘプタン酸ラクトン、2-メチル-6-ヒドロキシヘキサン酸ラクトン、4-ヒドロキシ-4-メチルヘキサン酸ラクトンがさらに好ましい。
なお、これらは単独で用いても2種以上で用いてもよい。
【0053】
前記一般式(2)または前記一般式(3)で表される化合物のうち少なくとも一つは、洗浄液中に0.5~30質量%含有することが好ましく、1~20質量%がより好ましく、5~15質量%がさらに好ましいい。前記一般式(2)または前記一般式(3)で表される化合物のうち少なくとも一つの量が0.5質量%未満では、給水ローラーに付着した感光残膜とインキとの混合物が除去できず、汚れが発生するおそれや拭き取り作業が困難となるおそれがあり、30質量%を超えると、給水ローラーに付着した感光残膜が完全に除去できないおそれや給水ローラーなどのゴム部を劣化させてしまうおそれがある。
【0054】
本発明のオフセット印刷用洗浄液組成物は、エタノールを含むことが好ましい。前記エタノールの含有量は、オフセット印刷用洗浄液組成物全質量に対して、5~50質量%であることが好ましく、15~70質量%であることがより好ましく、30~60質量%であることがさらに好ましい。5質量%より少ないと、給水ローラーに付着した感光残膜が完全に除去できないおそれがあり、80質量%を超えると、給水ローラーに付着した感光残膜とインキとの混合物が除去できず、汚れが発生するおそれや揮発性が高くなることで、拭き取り作業が困難となるおそれがある。
【0055】
さらに、メタノール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、ノルマルブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec-ブチルアルコールおよびtert-ブチルアルコールのうち少なくとも一つを含むことがより好ましい。なかでも、メタノールがより好ましい。
【0056】
前記メタノール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、ノルマルブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec-ブチルアルコールおよびtert-ブチルアルコールのうち少なくとも一つを含めばよいが、2つ以上を併用してもよい。これらの含有量は、オフセット印刷用洗浄液組成物全質量に対して、0.5~25質量%であることが好ましく、1.5~15質量%であることがより好ましく、3~10質量%であることがさらに好ましい。0.5質量%より少ないと、給水ローラーに付着した感光残膜が完全に除去できないおそれがあり、25質量%を超えると、給水ローラーに付着した感光残膜とインキとの混合物が除去できず、汚れが発生するおそれや揮発性が高くなることで、拭き取り作業が困難となるおそれがある。
【0057】
特に、前記エタノールとメタノールとを併用することがより好ましい。エタノールとメタノールとを併用する場合、エタノールとメタノールとの含有割合は、エタノール/メタノール=99/1~50/50であることが好ましく、98/2~70/30であることがより好ましく、96/4~85/15であることがさらに好ましい。
【0058】
本発明のオフセット印刷用洗浄液組成物は、水を含むことが好ましい。前記水は、特に制限はなく、水道水、井水、蒸留水、イオン交換水、純水などを用いることができる。なかでも、蒸留水、イオン交換水、純水を使用することがより好ましい。
【0059】
前記水の含有量は、前記した各成分の残余であるが、オフセット印刷用洗浄液組成物全質量に対し、0~84.5質量%であることが好ましく、10~80質量%であることがより好ましく、30~70質量%であることがさらに好ましい。
水は、実質含まないことが好ましい。水を含むと、給水ローラーに付着した感光残膜や感光残膜とインキとの混合物が除去できず、汚れが発生するおそれがあるため、できるだけ少ない方が好ましい。
【0060】
本発明のオフセット印刷用洗浄液組成物は、拭き取り性を向上する成分として、非イオン性界面活性剤を含んでもよい。
非イオン性界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、ポリオキシプロピレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシプロピレン脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、グリセリン脂肪酸エステル類などのほか、ポリオキシエチレンとポリオキシプロピレン共重合体をアルキルエーテル化、アルキルフェニルエーテル化、脂肪酸エステル化、ソルビタン脂肪酸エステル化した活性剤などを挙げることができる。これらの中でも、特にポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ジアルキルスルホコハク酸エステル類が好ましく、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルがより好ましい。
なお、これらは単独で用いても2種以上で用いてもよい。
市販品としては、エマルゲンLSシリーズ、MSシリーズ(以上、花王(株)製)などが挙げられる。
オフセット印刷用洗浄液組成物全質量に対し、0~5質量%であることが好ましい。
【0061】
オフセット印刷用洗浄液組成物と、感光残膜汚れおよび/またはローラー汚れが生じた被着体とを、接触させることで、感光残膜および/または感光残膜とインキの混合物を前記被着体から分離することが好ましい。具体的には、従来のオフセット印刷用洗浄液と同じように使用することができ、特に制限はない。例えば、地汚れやインキ着肉不良などの原因となる感光残膜汚れやローラー汚れが発生した被着体を取り外すか、あるいは印刷機に取り付けたまま、本発明のオフセット印刷用洗浄液組成物を接触させることで、前記感光残膜汚れやローラー汚れを前記被着体から分離、すなわち、洗浄することができる。
【0062】
前記感光残膜汚れやローラー汚れが発生した被着体としては、インキ供給ローラー群や給水ローラー群が挙げられる。インキ供給ローラー群は、印刷インキを印刷版面に供給するローラー群で、ツボ元ロール、呼び出しロール、駆動ロール、練りロール、振りロール、インキ着けロールなどと呼ばれるローラー類である。給水ローラー群は、湿し水を印刷版面に供給するローラー群で、水着けロール、水元ローラー、調量ロール、振りロール、ライダーロールなどと呼ばれるローラー類である。これらローラーは、金属ローラーやゴムローラーが組み合わさったもので、本発明のオフセット印刷用洗浄液組成物を使用するにあたり、特に制限はない。
【0063】
前記オフセット印刷用洗浄液組成物と、前記感光残膜汚れやローラー汚れが発生した前記被着体とを、接触させる方法としては、例えば、前記被着体を前記オフセット印刷用洗浄液組成物中に浸漬する方法、前記被着体に対して前記オフセット印刷用洗浄液組成物を噴霧する方法、前記オフセット印刷用洗浄液組成物をウエスなどに浸み込ませて前記被着体を拭き取る方法などが挙げられる。なかでも、前記オフセット印刷用洗浄液組成物をウエスやスポンジなどに十分な量を浸み込ませて前記被着体を拭き取る方法が簡便であるため有用である。余分なオフセット印刷用洗浄液組成物および使用済みのオフセット印刷用洗浄液組成物が残る場合、きれいなスポンジなどを用いて拭き取ることが好ましい。また、インキ供給ローラー群に使用する場合、特に余分なオフセット印刷用洗浄液組成物および使用済みのオフセット印刷用洗浄液組成物が残らないように、適宜印刷インキ用洗浄剤で洗浄することが好ましい。
【0064】
以下、参考形態の例を付記する。
(1)エタノールと、下記一般式(1)で表される化合物と、下記一般式(2)または下記一般式(3)で表される化合物のうち少なくとも一つで表される化合物と、を含むことを特徴とするオフセット印刷版用洗浄液組成物。
【化10】

(Rは、炭素数1~10の直鎖または分岐鎖アルキル基であり、Rは、炭素数1~10の直鎖または分岐鎖のアルキレン基または、アルキレン基がエーテル基またはエステル結合で中断されているものであり、nは1~10の整数である。)
【0065】
【化11】
(RおよびRは、それぞれ独立して水素、炭素数1~10の直鎖または分岐鎖アルキル基、炭素数6~18のアリール基、炭素数1~10の直鎖または分岐鎖アルキルアミノ基、炭素数1~10の直鎖または分岐鎖ヒドロキシアルキル基、炭素数1~10のアルキルベンゼン基またはアミノ基であり、Rは、水素、炭素数1~10の直鎖または分枝鎖アルキル基、炭素数6~10のアリール基、炭素数1~10の直鎖または分枝鎖アルキルアミノ基またはアミノ基であり、Xは、CHまたはNであり、mは、1または2の整数である。)
【0066】
【化12】
(RおよびRは、それぞれ独立して水素、炭素数1~10の直鎖または分岐鎖アルキル基、炭素数6~18のアリール基、炭素数1~10の直鎖または分岐鎖アルキルアミノ基、炭素数1~10の直鎖または分岐鎖ヒドロキシアルキル基、炭素数1~10のアルキルベンゼン基またはアミノ基であり、RおよびRは、それぞれ独立して水素、炭素数1~10の直鎖または分岐鎖アルキル基、炭素数6~18のアリール基、炭素数1~10の直鎖または分岐鎖アルキルアミノ基、炭素数1~10の直鎖または分岐鎖ヒドロキシアルキル基、炭素数1~10のアルキルベンゼン基またはアミノ基であり、Yは、(C(R1011))であり、aは、0~5の整数であり、R10およびR11は、それぞれ独立して水素、炭素数1~10の直鎖または分岐鎖アルキル基、炭素数6~18のアリール基、炭素数1~10の直鎖または分岐鎖アルキルアミノ基、炭素数1~10の直鎖または分岐鎖ヒドロキシアルキル基、炭素数1~10のアルキルベンゼン基またはアミノ基である。)
【0067】
(2)さらに、メタノール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、ノルマルブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec-ブチルアルコールおよびtert-ブチルアルコールのうち少なくとも一つを含むことを特徴とする(1)に記載のオフセット印刷版用洗浄液組成物。
(3)前記一般式(1)で表される化合物が、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノ-tert-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノイソブチルエーテル、プロピレングリコールモノ-tert-ブチルエーテル、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノールであることを特徴とする(1)または(2)に記載のオフセット印刷版用洗浄液組成物。
(4)前記一般式(2)で表される化合物が、2-ピロリドン、N-メチル-2- ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、1-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリドン、1-ヒドロキシメチル-2-ピロリドン、5-ヒドロキシメチル-2-ピロリドン、1-(3-アミノプロピル)-2-ピロリドン、2-イミダゾリジノンであることを特徴する(1)~(3)のいずれかに記載のオフセット印刷版用洗浄液組成物。
(5) 前記一般式(3)で表される化合物が、β-ブチロラクトン、γ-ブチロラクトン、γ-カプロラクトン、ε-カプロラクトン、6-ヒドロキシヘプタン酸ラクトン、2-メチル-6-ヒドロキシヘキサン酸ラクトン、4-ヒドロキシ-4-メチルヘキサン酸ラクトンであることを特徴する請求項1~3のいずれかに記載のオフセット印刷版用洗浄液組成物。
(6)(1)~(5)のいずれかに記載のオフセット印刷用洗浄剤と、感光残膜汚れおよび/またはローラー汚れが生じた被着体とを、接触させることで、感光残膜および/または感光残膜とインキの混合物を前記被着体から分離することを特徴とする洗浄方法。
【実施例
【0068】
以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、例中、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を示す。
【0069】
(実施例1)
エチレングリコールモノ-tert-ブチルエーテルを80g、N-メチル-2- ピロリドンを5g、ネオコールC(日本アルコール販売(株)製)を15gを添加し、攪拌して、実施例1のオフセット印刷機用洗浄液を作製した。
同様に表1~3の配合に従い実施例2~19、比較例1~9のオフセット印刷機用洗浄液を作製した。
【0070】
【表1】
【0071】
【表2】
【0072】
【表3】
【0073】
使用した材料は、次のものである。
ネオコールC:エタノール83.5%、メタノール3.5%、ノルマルプロピルアルコール6.5%、水6.5%を含む混合アルコール、日本アルコール販売(株)製
ネオコールR7:エタノール86.2%、メタノール2.6%、イソプロピルアルコール1.5%、ノルマルプロピルアルコール9.5%、水0.2%を含む混合アルコール、日本アルコール販売(株)製
ネオコールME:エタノール80.4%、メタノール11.8%、水7.8%を含む混合アルコール、日本アルコール販売(株)製
ネオコールCP:エタノール82.5%、イソプロピルアルコール13.6%、水3.9%を含む混合アルコール、日本アルコール販売(株)製
ソルミックスAP7 :エタノール85.597%、イソプロピルアルコール4.9%、ノルマルプロピルアルコール9.5%、水0.03%を含む混合アルコール、日本アルコール販売(株)製
【0074】
オフセット印刷機用洗浄液について、感光残膜除去性、インキ除去性、滑り性(拭き取り性)を評価し、表4に示した。なお、使用湿し水を変更し、中性の湿し水での評価は表5、アルカリ性の湿し水での評価は表6に示した。
【0075】
[機上現像]
使用印刷機:リスロン(小森コーポレーション(株)製)
使用印刷版:SONORA CX2(完全無処理CTPプレート、コダック合同会社製)
使用湿し水:Protech808(酸性エッチ液、2%水希釈、東京インキ(株)製)
印刷回転数:7000枚/時
給水ローラー:給水系ライダーローラー付属
印刷版を印刷シリンダーにセットし、水送り量、インキ送り量を最大、用紙を通さない状態で、上記回転数で印刷機を運転し、強制的に機上現像させ、版面が現像されるまで行なった。印刷版を変え、同様の条件で機上現像を繰り返し行ない、合計5回行なった。
使用湿し水は、中性エッチ液PF-5(中性エッチ液、1%水希釈、東京インキ(株)製)およびアルカリエッチ液DS(アルカリエッチ液、1%水希釈、東京インキ(株)製)に替えて、同様に行なった。
【0076】
<感光残膜除去性>
上記機上現像により、上記ライダーローラーには、感光残膜および感光残膜とインキが混ざった混合物が付着した状態となった印刷機を空回転させ、ライダーローラーに、作製したオフセット印刷機用洗浄液を十分染み込ませたウエス(機械類の汚れをふき取るためのぼろ布の総称)を、押し当てながら、ローラー軸方向に左右に往復移動し、感光残膜が何回の往復移動により除去できたかを目視により観察し、感光残膜の除去具合を評価した。感光残膜の除去具合について、〇:4回以下の往復移動により除去できる、△:5回以上8回以下の往復移動により除去できる(実用上問題ない)、×:9回以上の往復移動でも除去できない、の3段階で評価した。
【0077】
<インキ除去性>
上記感光残膜除去性と同様に、印刷機を空回転させ、ライダーローラーに、作製したオフセット印刷機用洗浄液を十分染み込ませたウエスを、押し当てながら、ローラー軸方向に左右に往復移動し、感光残膜とインキが混ざった混合物が何回の往復移動により除去できたかを目視により観察し、感光残膜とインキが混ざった混合物の除去具合を評価した。感光残膜とインキが混ざった混合物の除去具合について、〇:4回以下の往復移動により除去できる、△:5回以上8回以下の往復移動により除去できる(実用上問題ない)、×:9回以上の往復移動でも除去できない、の3段階で評価した。
【0078】
<滑り性(拭き取り性)>
上記感光残膜除去性およびインキ除去性の評価時に、ライダーローラーに押し当てたウエスのローラー上での滑り具合を評価した。滑り具合が悪い(引っ掛かる)ものは、拭き取りが困難になり、作業性が低下する。〇:滑りが良く、引っ掛かりがない、△:滑りは良いが、わずかに引っ掛かりがある、×:滑りが悪く、引っ掛かりが明らかに分かる、の3段階で評価した。
【0079】
【表4】
【0080】
【表5】
【0081】
【表6】
【0082】
表4~6より、実施例1~19のオフセット印刷機用洗浄液は、感光膜除去性、インキ除去性および滑り性(拭き取り性)が良好であることが明確である。また、湿し水を変更しても、これら評価はすべて良好であることが明確である。比較例1および2の洗浄液は、一般式(2)または一般式(3)で表される化合物を含まない例であるが、感光膜除去性およびインキ除去性ともに劣ることが明らかである。比較例3および4の洗浄液は、一般式(1)で表される化合物を含まない例であるが、滑り性(拭き取り性)が劣り、作業性が著しく低下することが明確である。比較例5および6の洗浄液は、エタノールを含まず、それぞれメタノール、tert-ブチルアルコールを含む例であるが、インキ除去性が劣り、滑り性(拭き取り性)も劣ることが明確である。引用文献2に類似した比較例7の洗浄液は、感光膜除去性、インキ除去性および滑り性(拭き取り性)すべて劣ることが明確である。引用文献3に類似の比較例8および9の洗浄液は、感光膜除去性、インキ除去性および滑り性(拭き取り性)すべて劣ることが明確である。
【要約】
【課題】本発明は、機上現像で生じる給水ローラー上の感光残膜の除去性に優れると共に、該感光残膜と印刷インキとの混合物に対しての除去性にも優れ、また、拭き取りが容易で、あらゆる湿し水にも適応可能なオフセット印刷用洗浄液組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】エタノールと、特定の一般式(1)で表される化合物と、特定の一般式(2)または特定の一般式(3)で表される化合物のうち少なくとも一つと、を含むことを特徴とするオフセット印刷用洗浄液組成物。
【選択図】なし