(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-01
(45)【発行日】2023-02-09
(54)【発明の名称】自動車投光器
(51)【国際特許分類】
F21S 41/50 20180101AFI20230202BHJP
F21V 7/00 20060101ALI20230202BHJP
F21V 7/28 20180101ALI20230202BHJP
F21V 3/10 20180101ALI20230202BHJP
F21V 3/00 20150101ALI20230202BHJP
F21V 3/02 20060101ALI20230202BHJP
F21W 104/00 20180101ALN20230202BHJP
F21W 102/00 20180101ALN20230202BHJP
【FI】
F21S41/50
F21V7/00 350
F21V7/00 320
F21V7/00 570
F21V7/28
F21V3/10 310
F21V3/10 370
F21V3/00 350
F21V3/00 320
F21V3/02 500
F21W104:00
F21W102:00
(21)【出願番号】P 2022514542
(86)(22)【出願日】2020-09-03
(86)【国際出願番号】 EP2020074630
(87)【国際公開番号】W WO2021043917
(87)【国際公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-03-23
(32)【優先日】2019-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】593045569
【氏名又は名称】ツェットカーヴェー グループ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【氏名又は名称】内田 潔人
(72)【発明者】
【氏名】サトラー、ヨヘン
(72)【発明者】
【氏名】ハース、トマス
(72)【発明者】
【氏名】ディーンストビール、ルーカス
【審査官】安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/310610(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2001/055212(US,A1)
【文献】特開平10-294004(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/328564(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/50
F21V 7/00
F21V 7/28
F21V 3/10
F21V 3/00
F21V 3/02
F21W 104/00
F21W 102/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車投光器
であって、前記自動車投光器
は、
- 車両投光器ハウジング(9)と、
- 前記車両投光器ハウジング(9)を閉じる少なくとも部分的に透明なカバーディスク(10)と、
- 前記車両投光器ハウジング(9)内に受容されて前記カバーディスク(10)を通して光を放射するための光源(11)と、
- 前記車両投光器ハウジング(9)内に受容された少なくとも1つの自動車デザイン要素(3)とを含み、少なくとも1つの前記自動車デザイン要素(3)は、少なくとも1つのコーティングされた面部を有する形状安定性の基材(1)を含む構成であり、
前記基材(1)のコーティングされた前記面部は、その表面構造に関して異なる少なくとも2つの部分を有し、即ち粗い表面を有する第1部分(3a)と、滑らかな表面を有する第2部分(3b)とを有し、
前記基材(1)のコーティングされた前記面部のコーティングは、少なくとも、金属的に反射する色付与の第1層(L1)により構成されており、前記第1層(L1)を覆う色付与の第2層(L2)が設けられており、前記第2層(L2)は、少なくとも部分的に光透過性であり、また前記第1層(L1)の表面により反射される光線(LS1)が前記第2層(L2)の表面により反射される光線(LS2)と重なり合うことにより、少なくとも1つの前記自動車デザイン要素(3)上に当たる光が少なくとも部分的に干渉により作用されるように構成されており、
前記第1層(L1)及び前記第2層(L2)は、前記基材(1)の
前記第1部分(3a)及び前記第2部分(3b)の表面構造が
前記第1層(L1)及び前記第2層(L2)にうつるように施工されており、それにより前記第1部分(3a
)の領域内の
前記第1層(L1)及び前記第2層(L2)に入射する光は、前記基材(1)の前記第1部分(3a)の表面構造に対応して散乱され、前記第2部分(3b)の領域内の
前記第1層(L1)及び前記第2層(L2)に入射する光は、前記基材(1)の前記第2部分(3b)の表面構造に対応して反射されること、
を特徴とする自動車投光器。
【請求項2】
前記第1層(L1)及び/又は前記第2層(L2)は、前記基材(1)のコーティング
された前記面部全体に沿って、一定の組成と層厚を有すること、
を特徴とする、請求項1に記載の自動車投光器
。
【請求項3】
前記第1層(L1)は、前記第1層(L1)により少なくとも20nmの層厚を有する光非透過性の層が与えられているように構成されていること、
を特徴とする、請求項1又は2に記載の自動車投光器
。
【請求項4】
前記第1部分(3a)は、前記第2部分(3b)により取り囲まれており、前記第1部分(3a)の粗い表面構造により所定のグラフィックシンボル(SYM)が描かれているように構成されており、前記グラフィックシンボル(SYM)は、前記第2部分(3b)による周囲の反射領域に対し、光学的なコントラストとして見てとれること、
を特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の自動車投光器
。
【請求項5】
少なくとも1つの自動車デザイン要素(3)は、少なくとも部分的に前記光源(11)の光線路内に配設されている放射領域(3’)を有し、前記第1部分(3a)は、完全に前記放射領域(3’)にわたって延在し、従って前記放射領域(3’)に完全に適用され、それにより前記光源(11)から出射して前記放射領域(3’)内に入射する光は、前記放射領域(3’)内で散乱されること、
を特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の自動車投光器
。
【請求項6】
前記放射領域(3’)は、完全に前記光源(11)の光線路内に配設されていること、
を特徴とする、請求項5に記載の自動車投光器
。
【請求項7】
少なくとも1つの前記自動車デザイン要素(3)の前記基材(1)のコーティングされた前記面部は、前記光源(11)の光線路の外側にある周囲光反射領域(3”)を有し、前記第2部分(3b)は、少なくとも部分的に、
又は完全に、前記周囲光反射領域(3”)にわたって延在すること、
を特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の自動車投光器
。
【請求項8】
前記周囲光反射領域(3”)は、取り付けられた状態で見てとれ且つ前記光源(11)の光線路の外側に位置する少なくとも1つの前記自動車デザイン要素(3)の領域全体を含むこと、
を特徴とする、請求項7に記載の自動車投光器
。
【請求項9】
前記第1部分(3a)の粗い表面は、少なくとも2.0μmの平均粗さ値Raを有すること、
を特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の自動車投光器
。
【請求項10】
前記第2部分(3b)の滑らかな表面は、最大で0.25μmの平均粗さ値Raを有すること、
を特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の自動車投光器
。
【請求項11】
前記第2層(L2)は、少なくとも70%の透過率を有すること、
を特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の自動車投光器
。
【請求項12】
前記第2層(L2)上には、保護層(CL)がプラズマ重合を用いて作成されており、前記保護層(CL)は、
ヘキサメチルジシロキサンから成る層であること、
を特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の自動車投光器
。
【請求項13】
前記基材(1)と前記第1層(L1)の間には、プライマ層(BL)が配設されていること、
を特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の自動車投光器
。
【請求項14】
金属性の少なくとも部分的に反射する前記第1層(L1)は、最小層厚と最大層厚の間にある層厚(d1)を有し、前記最小層厚は、1%よりも少ない透過率を保証するために必要な厚さであり、前記最大層厚は、最大で最小層厚の4倍、
或いは最大で最小層厚の3倍又は2倍の層厚を有すること、
を特徴とする、請求項1~13のいずれか一項に記載の自動車投光器
。
【請求項15】
前記第2層(L2)は、物体色がほとんどなく、物体色は、可視光のスペクトルの少なくとも部分的な吸収により認識可能となる色であり、赤、緑、青の色成分の吸収の程度は、同じでなく、前記第2層
(L2)は、前記自動車デザイン要素(3)により反射された光がその色組成において光の少なくとも1つのスペクトル部分の干渉により作用されるように構成されていること、
を特徴とする、請求項1~14のいずれか一項に記載の自動車投光器
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車投光器(例えば自動車前照灯)に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車投光器は、
- 車両投光器ハウジングと、
- 車両投光器ハウジングを閉じる少なくとも部分的に透明なカバーディスク(ないしカバーパネル)と、
- 車両投光器ハウジング内に受容されてカバーディスクを通して光を放射するための光源と、
- 車両投光器ハウジング内に受容された少なくとも1つの自動車デザイン要素とを含み、この際、少なくとも1つの自動車デザイン要素は、少なくとも1つのコーティングされた面部を有する形状安定性の基材を含んでいる。
【0003】
コーティングされた面部は、コンテンツの色描写を可能にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第2011/310610号
【文献】米国特許出願公開第2001/055212号
【文献】特開平10-294004号
【文献】米国特許出願公開第2018/328564号
【非特許文献】
【0005】
【文献】SKOWRONSKI L ET AL: "Characterization of optical and microstructural properties of semitransparent TiO2/Ti/glass interference decorative coatings", APPLIED SURFACE SCIENCE, ELSEVIER, AMSTERDAM, NL, Bd. 388, 1. June 2016 (2016-06-01), pages 731-740, XP029750095, ISSN: 0169-4332, DOI: 10.1016/J.APSUSC.2016.05.159 2. Experimental; page 731 - page 732 table 3
【文献】L. SKOWRONSKI ET AL: "Optical and microstructural properties of decorative Al/Ti/TiO2 interference coatings", APPLIED SURFACE SCIENCE, Bd. 421, 1. November 2017 (2017-11-01), pages 794-801, XP055674443, AMSTERDAM, NL ISSN: 0169-4332, DOI: 10.1016/j.apsusc.2017.03.276 2. Experimental; page 795 table 3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
透明なカバーディスク(ないしパネル)における反射は、基本的に、車両投光器内の色付きのデザイン特徴又はロゴを明確に外方に向けて描写可能とすることを困難にする。しかしカバーディスクの外面部上に反射防止加工されたコーティングを永続的に施工することは、要求される長い寿命と、投光器がさらされる激しく顕著な環境影響とが原因で技術的に困難である。
【0007】
従って、本発明の課題は、車両投光器内に配設されている選択されたコンテンツをできるだけ明確に外方に向けて描写することのできる可能性を創作することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題は、冒頭に記載した形式の自動車投光器において、本発明により以下の特徴により解決される。即ち基材のコーティングされた面部が、その表面構造(表面性状)に関して異なる少なくとも2つの部分を有し、即ち粗い表面(ざらざらした表面)を有する第1部分と、滑らかな表面を有する第2部分とを有し、この際、基材のコーティングされた面部のコーティングは、少なくとも、金属的に反射する色付与の第1層により構成されており、第1層を覆う色付与の第2層が設けられており、この際、第2層は、少なくとも部分的に光透過性であり、また第1層の表面により反射される光線が第2層の表面により反射される光線と重なり合うことにより、少なくとも1つの自動車デザイン要素上に当たる光が少なくとも部分的に干渉により作用(マニピュレート)されるように構成されており、この際、それぞれの層は、基材のそれぞれの部分の表面構造がそれらの層にうつるように施工されており、それにより第1部分の領域内のそれぞれの層に入射する光は、基材の第1部分の表面構造に対応して散乱され、第2部分の領域内のそれぞれの層に入射する光は、基材の第2部分の表面構造に対応して反射される。これらの特徴により、コンテンツないし光学的に重要な表面を、カバーディスクに反射があっても、色的に均質であるがコントラストに富んで構成することを可能にする。
即ち本発明の一視点により、
自動車投光器であって、前記自動車投光器は、
- 車両投光器ハウジングと、
- 前記車両投光器ハウジングを閉じる少なくとも部分的に透明なカバーディスクと、
- 前記車両投光器ハウジング内に受容されて前記カバーディスクを通して光を放射するための光源と、
- 前記車両投光器ハウジング内に受容された少なくとも1つの自動車デザイン要素とを含み、少なくとも1つの前記自動車デザイン要素は、少なくとも1つのコーティングされた面部を有する形状安定性の基材を含む構成であり、
前記基材のコーティングされた前記面部は、その表面構造に関して異なる少なくとも2つの部分を有し、即ち粗い表面を有する第1部分と、滑らかな表面を有する第2部分とを有し、
前記基材のコーティングされた前記面部のコーティングは、少なくとも、金属的に反射する色付与の第1層により構成されており、前記第1層を覆う色付与の第2層(L2)が設けられており、前記第2層は、少なくとも部分的に光透過性であり、また前記第1層の表面により反射される光線が前記第2層の表面により反射される光線と重なり合うことにより、少なくとも1つの前記自動車デザイン要素上に当たる光が少なくとも部分的に干渉により作用されるように構成されており、
前記第1層及び前記第2層は、前記基材の前記第1部分及び前記第2部分の表面構造が前記第1層及び前記第2層にうつるように施工されており、それにより前記第1部分の領域内の前記第1層及び前記第2層に入射する光は、前記基材の前記第1部分の表面構造に対応して散乱され、前記第2部分の領域内の前記第1層及び前記第2層に入射する光は、前記基材の前記第2部分の表面構造に対応して反射されること、
を特徴とする自動車投光器が提供される。
尚、本願の特許請求の範囲に付記された図面参照符号は、専ら本発明の理解の容易化のためのものであり、図示の形態への限定を意図するものではないことを付言する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、発明を実施するための形態について説明する。
本発明において、以下の形態が可能である。
(形態1)
自動車投光器であって、前記自動車投光器は、
- 車両投光器ハウジングと、
- 前記車両投光器ハウジングを閉じる少なくとも部分的に透明なカバーディスクと、
- 前記車両投光器ハウジング内に受容されて前記カバーディスクを通して光を放射するための光源と、
- 前記車両投光器ハウジング内に受容された少なくとも1つの自動車デザイン要素とを含み、少なくとも1つの前記自動車デザイン要素は、少なくとも1つのコーティングされた面部を有する形状安定性の基材を含む構成であり、
前記基材のコーティングされた前記面部は、その表面構造に関して異なる少なくとも2つの部分を有し、即ち粗い表面を有する第1部分と、滑らかな表面を有する第2部分とを有し、
前記基材のコーティングされた前記面部のコーティングは、少なくとも、金属的に反射する色付与の第1層により構成されており、前記第1層を覆う色付与の第2層が設けられており、前記第2層は、少なくとも部分的に光透過性であり、また前記第1層の表面により反射される光線が前記第2層の表面により反射される光線と重なり合うことにより、少なくとも1つの前記自動車デザイン要素上に当たる光が少なくとも部分的に干渉により作用されるように構成されており、
それぞれの層は、前記基材のそれぞれの部分の表面構造がそれらの層にうつるように施工されており、それにより前記第1部分の領域内のそれぞれの層に入射する光は、前記基材の前記第1部分の表面構造に対応して散乱され、前記第2部分の領域内のそれぞれの層に入射する光は、前記基材の前記第2部分の表面構造に対応して反射されること、
を特徴とする自動車投光器。
(形態2)
前記第1層及び/又は前記第2層は、前記基材のコーティングすべき前記面部全体に沿って、一定の組成と層厚を有すること、が好ましい。
(形態3)
前記第1層は、前記第1層により少なくとも20nmの層厚を有する光非透過性の層が与えられているように構成されていること、が好ましい。
(形態4)
前記第1部分は、前記第2部分により取り囲まれており、前記第1部分の粗い表面構造により所定のグラフィックシンボルが描かれているように構成されており、前記グラフィックシンボルは、前記第2部分による周囲の反射領域に対し、光学的なコントラストとして見てとれること、が好ましい。
(形態5)
少なくとも1つの自動車デザイン要素は、少なくとも部分的に前記光源の光線路内に配設されている放射領域を有し、前記第1部分は、完全に前記放射領域にわたって延在し、従って前記放射領域に完全に適用され、それにより前記光源から出射して前記放射領域内に入射する光は、前記放射領域内で散乱されること、が好ましい。
(形態6)
前記放射領域は、完全に前記光源の光線路内に配設されていること、が好ましい。
(形態7)
少なくとも1つの前記自動車デザイン要素の前記基材のコーティングされた前記面部は、前記光源の光線路の外側にある周囲光反射領域を有し、前記第2部分は、少なくとも部分的に、特に完全に、前記周囲光反射領域にわたって延在すること、が好ましい。
(形態8)
前記周囲光反射領域は、取り付けられた状態で見てとれ且つ前記光源の光線路の外側に位置する少なくとも1つの前記自動車デザイン要素の領域全体を含むこと、が好ましい。
(形態9)
前記第1部分の粗い表面は、少なくとも2.0μmの平均粗さ値Raを有すること、が好ましい。
(形態10)
前記第2部分の滑らかな表面は、最大で0.25μmの平均粗さ値Raを有すること、が好ましい。
(形態11)
前記第2層は、少なくとも70%の透過率を有すること、が好ましい。
(形態12)
前記第2層上には、保護層がプラズマ重合を用いて作成されており、前記保護層は、特にヘキサメチルジシロキサンから成る層であること、が好ましい。
(形態13)
前記基材と前記第1層の間には、プライマ層が配設されていること、が好ましい。
(形態14)
金属性の少なくとも部分的に反射する前記第1層は、最小層厚と最大層厚の間にある層厚を有し、前記最小層厚は、1%よりも少ない透過率を保証するために必要な厚さであり、前記最大層厚は、最大で最小層厚の4倍、好ましくは最大で最小層厚の3倍又は2倍の層厚を有すること、が好ましい。
(形態15)
前記第2層は、物体色がほとんどなく、物体色は、可視光のスペクトルの少なくとも部分的な吸収により認識可能となる色であり、赤、緑、青の色成分の吸収の程度は、同じでなく、前記第2層は、前記自動車デザイン要素により反射された光がその色組成において光の少なくとも1つのスペクトル部分の干渉により作用されるように構成されていること、が好ましい。
以下では、例えば射出成形法で製造される遮光要素(カバー要素)の表面特性について、ないし遮光要素のために用いられる基材が射出成形法で製造されるという遮光要素の表面特性について説明され、この際、基材は、例えばプラスチックに関するものとしてよい。例えば射出成形工具の表面における凹凸(非平坦性)により又は他の影響により、各基材の表面は、最小限の凹凸を有する、所謂シボが発生し(シボは例えばVDI規格(ドイツ技術者協会規格)3400でも説明されている)、即ちデザイン設定による表面構造を実現するために意図的に構成することもできる表面の凹凸が発生する。これらのシボの雌型は、レーザ加工/エッチング加工/スタンピング加工のような適切な方法により遮光要素の製造のために使用される射出成形工具に意図的に作り込まれることが可能であり、それに対応し、成形された遮光要素の基材の表面上に反映されて形成される。それに対して代替的に遮光要素の滑らかな基材に後処理プロセスでそのようなシボが直接的に設けられることも可能であり、この際、前記の方法、即ちレーザ加工/エッチング加工/スタンピング加工が同様に適用可能である。
【0010】
それらの凹凸の程度は、技術的な値、即ち所謂平均粗さ値(算術平均粗さ)Raを介して測定可能である。平均粗さ値Raは、中心線に対する表面上の測定点の平均間隔を示している。中心線は、中心線と平行な面内の輪郭曲線のずれの合計が測定区間の長さに対して分配されるように、基準区間内で実際の輪郭曲線と交差している。「平均粗さ値(算術平均粗さ)」との概念は、一般的に知られた技術的概念であり、この技術的概念は、各種文献で幾度も使用され、従って当業者には既知である。
【0011】
本発明において「滑らかな」との表現のもとでは、最大で0.25μmの平均粗さ値を有する表面、即ちRa<=0.25μmである表面として理解される。
【0012】
また「粗い」との表現のもとでは、少なくとも2.0μmの平均粗さ値を有する表面、即ちRa>= 2.0μmである表面として理解される。同様に粗さの最大値を設けることができ、この粗さの最大値は、本目的にとって更に技術的に有利である。最大粗さは、例えば25μmであり、即ちRa<=25μmである。
【0013】
特に、第1層及び/又は第2層は、基材のコーティングすべき面部全体に沿って、一定の組成と層厚を有することができる。つまりそれによりコーティング全体に沿って一様で均質の色印象を放つことができる。
【0014】
更に、第1層は、第1層により少なくとも20nmの層厚を有する光非透過性の層が与えられているように構成されていることができる。「光非透過性」との表現のもとでは、透過率が0.001以下、つまり最大で1000分の1又は0.1%であることとして理解される。特に本発明の意味における「光非透過性の」物体の透過率は、0.01%、0.001%、又はむしろ正に0%であることができる。光非透過性の被覆層は、光吸収性で構成されていることも可能である。
【0015】
特に、第1部分は、第2部分により取り囲まれており、第1部分の粗い表面構造により所定のグラフィックシンボルが描かれているように構成されており、該グラフィックシンボルは、第2部分による周囲の反射領域に対し、光学的なコントラストとして見てとれる(視認可能である)。このようにしてグラフィックシンボルは、特に印象的に且つカバーディスクに反射があっても明確に認識可能に描写されることが可能である。
【0016】
更に、少なくとも1つの自動車デザイン要素は、少なくとも部分的に光源の光線路内に配設されている放射領域を有することができ、この際、第1部分が、完全に放射領域にわたって延在し、従って放射領域に完全に適用され(ないし作用し)、それにより光源から出射し、光学的な屈折要素及び/又は反射要素により任意選択的に作用されて放射領域内に入射する光は、放射領域内で散乱される。従って光源から出射して自動車デザイン要素を介して反射される光による眩惑を回避することができる。特に放射領域は、完全に光源の光線路内に配設されていることができる。
【0017】
更に、少なくとも1つの自動車デザイン要素の基材のコーティングされた面部は、光源の光線路の外側にある周囲光反射領域を有することができ、この際、第2部分が、少なくとも部分的に、特に完全に、周囲光反射領域にわたって延在する。このようにして滑らかな領域を完全に周囲光に対してさらすことができる。このことは、周囲光が通常は眩惑の危険性の原因となることはないため、問題ではない。特に周囲光反射領域は、取り付けられた状態で見てとれ即ち目に見え且つ光源の光線路の外側に位置する少なくとも1つの自動車デザイン要素の領域全体を含むことができる。
【0018】
更に、第1部分の粗い表面は、少なくとも2.0μmの平均粗さ値Raを有することができる。
【0019】
特に、第2部分の滑らかな表面は、最大で0.25μmの平均粗さ値Raを有することができる。
【0020】
更に、第2層は、少なくとも70%の透過率を有することができる。「透過率」(専門文献では基本的にギリシャ語の記号「τ」で示される)との表現のもとでは、通過した光線力に対する媒体上に入射する光線力(つまり媒体の光入射面上に入射する光)の逆比として理解される。測定過程において、光は、平行光線束として媒体の光入射面に対して直角の角度で入射する。「反射率」(専門文献では基本的にギリシャ語の記号「ρ」で示される)との表現のもとでは、反射された光線力に対する媒体上に入射する光線力の逆比として理解される。つまりここではそれぞれの表面に対して直角に入射する光を想定し、この際、記載された値は、少なくとも400nmから800nmまでの波長範囲に対して有効である。
【0021】
特に、第2層上には、保護層がプラズマ重合を用いて作成されていることができ、この際、この保護層は、特にヘキサメチルジシロキサン(Hexamethyldisiloxan)から成る層である。またこの際、好ましくは、保護層は、自動車デザイン要素により反射された400nmから800nmまでの光がその色組成において光の少なくとも1つのスペクトル部分の干渉により作用(マニピュレート)されないように構成されていることが可能である。
【0022】
更に、基材と第1層の間には、プライマ層(下地層)が配設されていることができる。プライマ層は、既述の保護層として使用することのできる材料と同じ材料であってよく、つまり例えばプラズマ重合を用いて作成される層としてよく、この際、この保護層は、特にヘキサメチルジシロキサンから成る層としてよい。
【0023】
特に、金属性の少なくとも部分的に反射する第1層は、最小層厚と最大層厚の間にある層厚を有することができ、この際、最小層厚は、1%よりも少ない透過率を保証するために必要な厚さであり、最大層厚は、最大で最小層厚の4倍の層厚、好ましくは最大で最小層厚の3倍又は2倍の層厚を有する。
【0024】
更に、第2層は、物体色がほとんどなく、即ち物体色から十分に免れており、この際、物体色は、可視光のスペクトルの少なくとも部分的な吸収により認識可能となる色であり、この際、赤、緑、青の色成分の吸収の程度は、同じでなく、更にこの際、第2層は、自動車デザイン要素により反射された光がその色組成において光の少なくとも1つのスペクトル部分の干渉により作用(マニピュレート)されるように構成されている。この際「ほとんどなく」(weitgehend frei)との表現のもとでは、色効果が主として干渉により発生し、材料内のスペクトル部分の吸収によっては発生しない、つまり可視光の周波数スペクトル(400nmから800nmまでの波長)内での可視光に対する吸収率(吸光度)が例えば30%よりも少ない範囲で変動することを意味する。
【0025】
更に本発明は、添付の請求項の1つに基づく自動車投光器を含んだ自動車を含むことができる。
【0026】
更に本発明は、光非透過性の自動車デザイン要素を製造する方法に関することができる。
【0027】
また本発明は、本発明による方法により製造された自動車デザイン要素、並びに、本発明による光非透過性の自動車デザイン要素を含んだ車両投光器、及び本発明による光非透過性の自動車デザイン要素を含んだ自動車に関することができる。
【0028】
特に有色で構成されているべき自動車デザイン要素、ないし光沢のない又は光沢のある面を有するべき自動車デザイン要素は、典型的にはプラスチック部材として構成され、この際、表面の最終的な外観は、通常は、適切な塗料を用いた塗料の塗装により決定される。このようにして有色で光沢のある又は光沢のない車両投光器デザイン要素が製造される。
【0029】
従来どおりに製造された自動車デザイン要素の欠点は、塗料が通常は相当の層厚を有することにあり、その層厚は、被覆特性を有するために、最小値を下回ることはできず、つまり層厚は、この際、典型的には合計で100マイクロメートル以上である。一方では、塗料の塗布には時間を要し、他方では、塗料の必要な層厚によりプラスチック部材の表面構造が覆われ、完全に再現されることはない。また塗料により達成される色印象と色効果も、塗料の組成と塗布の種類とが原因で制限されており、この際、典型的にはコストの理由から、物体固有色だけが基材上に塗布される。物体固有色は、物体上に当たる光の個々の色成分の吸収により色印象が生じる色である。塗料の塗装の特性の最適化は、これまで、塗料の塗装法の変更、並びに塗布すべき塗料の組成の変更により達成されてきた。
【0030】
従って、光非透過性の自動車デザイン要素の製造における課題は、改善された視覚的な外観を有する光非透過性の自動車デザイン要素を製造するための方法を創作することにある。
【0031】
前記課題は、上述の形式の方法において、本発明により以下のステップが設けられていることにより解決される。即ち、
A)少なくとも60℃の温度に対して耐熱性である形状安定性の基材を用意し、該基材を真空チャンバ内に入れるステップ、
B)金属性の少なくとも部分的に反射する色付与(farbgebend)の第1層(例えば可視光の波長範囲内で少なくとも50%の反射率を有する)を、ステップA)により真空チャンバ内にある基材上に、PVDプロセスを用いて施工するステップ、
C)c1)ステップB)による色付与の第1層の施工を、少なくとも20nmの層厚、特に30nmと40nmの間の層厚を有する不透明(ないしオペーク blickdicht)層が達成されるように仕上げるステップ、又は、
c2)第1層を覆う色付与の第2層を施工するステップ、但し第2層は、少なくとも部分的に光透過性であり、また第1層の表面により反射される光線が第2層の表面により反射される光線と重なり合うことにより、自動車デザイン要素上に当たる光が少なくとも部分的に干渉により、特に弱め合う干渉により作用(マニピュレート)されるように構成されている。
【0032】
PVDプロセス(物理蒸着法:Physical Vapor Deposition)を使用することにより、車両投光器デザイン要素のこれまでのコーティング法が完全に放棄されている。先に述べたように、今までは、自動車デザイン要素に対する光学的な設定は、典型的には適切な塗料の塗装の仕上げにより実現されていたが、先に述べた欠点と制限を伴っている。それに対し、PVDプロセスの利用により、極めて僅かな層厚の施工が可能であり、この際、色付与(色彩を与えること)は、物体色によるだけではなく干渉効果によっても達成される。このようにして例えば金属的な印象を与える色印象と色効果を達成することができる。
【0033】
換言すると、本発明は、プラスチック基材の金属的な色コーティングを可能にする。
【0034】
特に、基材上に施工された層全体の全厚は、最大で500nm、好ましくは最大で300nm、有利には少なくとも50nmであることができる。このようにして基材の表面構造は、十分に再現され、コーティングは、色付与に必要な程度に減少される。
【0035】
好ましくは、真空チャンバの圧力は、10-2mBarよりも低く、好ましくは10-3mBarよりも低いことができる。それによりコーティングが、必要な品質で汚染のほとんどない状態で製造されることを保証することができる。
【0036】
特に、第2層は、少なくとも70%の透過率を有することができる。このようにして干渉作用を最適化することができる。層の透過がむしろ僅かであることにより「くすんだ」色を生じさせることもできるであろう。
【0037】
好ましくは、上記ステップC)により施工された層上には、プラズマ重合を用いて保護層を作成することができ、この際、この保護層は、特にヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)から成る層である。また特に、保護層は、自動車デザイン要素により反射された光がその色組成において光の少なくとも1つのスペクトル部分の干渉により作用(マニピュレート)されるように構成されていることができる。この保護層は、この目的のために少なくとも部分的に透明である。更に保護層によりコーティングの耐水蒸気性と機械的耐性が増加される。
【0038】
好ましくは、ステップB)による第1層の施工の前に、好ましくは透明な、プライマ層(下地層)を基材上に作成することができる。プライマ層は、既述の保護層として使用することのできる材料と同じ材料であってよく、例えばプラズマ重合(PECVD)を用いて作成される層としてよく、この際、この保護層は、特にヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)から成る層としてよい。
【0039】
特に、基材は、プラスチックから成ることができ、好ましくは、ポリカーボネート、ポリエステルアミド、ポリエーテルイミド、ABS、エンジニアリング熱可塑性プラスチック又は熱硬化性プラスチックから成る。
【0040】
代替的に、基材は、ガラス又は金属から成ることができる。
【0041】
特に、PVDプロセスは、スパッタリングプロセスとして構成されていることができる。
【0042】
好ましくは、ステップB)とステップC)c1)による第1層の施工と形成は、反応性ガスを用いずにスパッタリングプロセス中に行うことができる。
【0043】
好ましくは、ステップC)c2)による第2層の施工は、スパッタリングにより行われることができ、この際、チタンがスパッタリングターゲットにより提供され、該スパッタリングターゲットは、スパッタリングプロセス内に取り込まれた反応性ガスとしての酸素と反応し、それにより第1層上に二酸化チタン層を形成し、この際、コーティングレート及び/又はコーティング過程の期間の予設定のもと第2層の層厚を予設定することができる。例えばチタン(スパッタリングターゲットから叩き出される)と酸素(反応性ガスとして)の組み合わせにより、多数の(干渉)色(青色、金色、紫色、緑色、黄色)を生成することができ、この際、実際の色は、コーティング厚さに依存する。コーティング構造全体の例示の「レシピ(作り方)」は、以下のとおりとすることができる:
【0044】
金属層の施工を可能にする適切なスパッタリングターゲットを選択し、この際、金属層の金属は、次のリストから選択することができる:チタン、クロム、ケイ素、アルミニウム、特殊鋼(Edelstahl)、銅、ジルコニウム。任意選択的に先ずは基材上に基層(上述のように例えばPECVDを用いたHMDSO)を施工することができる。引き続き、反応性ガスの省略のもと、前記金属のうちの1つ又はそれらの混合物から成る所謂第1層が形成される。それに続き、反応性ガスを使用し、例えば酸素を使用し、第2層が形成される。反応性ガスと金属の化学反応により金属セラミックが生成される。これらの金属セラミックは、多くの場合、純粋な金属とは明らかに異なる特性を有し、例えば、高い硬度、高い耐薬品性、及び干渉を介した色の発生を可能にする明らかに異なる光学特性(例えば透過特性)である。これらの金属セラミックの特性は、僅かな層厚に基づき、バルク材料としての同じ材料の特性と必ずしも同じと見なすことはできない(二酸化チタンは、より厚い厚さではもはや透明ではなく、白い粉末であり白い顔料である)。好ましくは、この際、スパッタリングターゲットは、変化しないままであり、つまり第1層内の出発金属と同じ出発金属を使用することができる。第2層の施工後には、任意選択的に既述の保護層を作成することができる。
【0045】
それに対して代替的に、第2層は、第1層と同じ出発材料から成ることができる。
【0046】
特に、ステップC)c2)による色付与の第2層の施工は、反応性ガスを付加してスパッタリングプロセス中に行われることができる。非反応性スパッタリングプロセスと異なり、反応性スパッタリングプロセスでは、イオン化を引き起こすガス(例えばアルゴン)に加えて更なるガス(又はガス混合物)がスパッタリングチャンバ内に提供されており、この更なるガスは、ターゲットから叩き出された材料と反応し、それにより析出層を変化させる(例えばスパッタリングターゲットから離れ出たチタンは、酸素と二酸化チタンへと反応し、それにより基材ないし第1層上に二酸化チタン層を形成することができる)。このような層は、反応性ガスとの反応に基づく化学変化により、明らかに異なった特性スペクトルを有することができる(例えば金属が突然にセラミックのような特性又はガラスのような特性を得ることになる)。反応性ガスとしては、本来的には、金属と反応し得る全てのガスが考慮対象である。しかし通常は、酸素、窒素、ないし炭素含有ガス(COないしアセチレン又はメタン)又はそれらの混合物が使用される。
【0047】
特に、ステップB)とステップC)における温度は、100℃未満、好ましくは70℃未満、特に好ましくは60℃未満であることができる。このことは、スパッタリングプロセス中のエネルギー入力を適切に制御することにより可能とされる。それにより本発明による方法は、基本的に、より僅かな耐熱性を有する基材にも適用可能である。
【0048】
スパッタリングプロセスに対して代替的に、PVDプロセスは、熱蒸発プロセス(サーマルエバポレーション)として構成されていることができる。他の例示の想定可能なPVDプロセスは、例えば、電子ビーム蒸発、レーザビーム蒸発、アーク蒸発(アークの使用)である。
【0049】
特に、第1層は、アルミニウムを含むことができる。この第1層は、例えば、非反応性スパッタリングプロセスにより作成されることが可能である。アルミニウムは、特に高い反射率を有し、それにより特に良好に第1層としての使用に適している。
【0050】
例として、第1層の作成に適している以下の非反応性スパッタリングプロセスが言及される:アルゴンガスが、真空チャンバ内に入れられる(例えば1x10-4mbarである所望の圧力範囲に至るまで)。ターゲット(陰極)に電圧がかけられる。陽極は、通常はチャンバ壁部ないし装置自体である。電圧によりアルゴンが(Ar+に)イオン化し、陰極(負に帯電されている)に向かって加速される。アルゴンイオンの(機械的な)衝突により衝撃がターゲットの原子に伝えられる。十分にエネルギーがあると、ターゲット原子の一部が解放され、空間内に飛び出す。チャンバ内の圧力が十分に低いと、飛散された原子の飛距離は、これらの原子が基材まで到達することができ且つそこで凝縮するほどに大きい。作成される層のための基本材料は、スパッタリングプロセスにおいてターゲットとして存在する(通常は金属であるが、またセラミックとしてもよい)。
【0051】
好ましくは、金属性の少なくとも部分的に反射する第1層(レイヤ1)は、最小層厚と最大層厚の間にある層厚を有することができ、この際、最小層厚は、10%よりも少ない透過率、特に5%よりも少ない透過率、好ましくは1%よりも少ない透過率を保証するために必要な厚さであり、また最大層厚は、最大で最小層厚の4倍、好ましくは最大で最小層厚の3倍又は2倍の層厚を有する。このようにして基材において層全体に沿って十分な厚さの層を提供することができるが、それでも層の厚さが技術的な目的のために必要とされるよりも明らかに大きいということを回避できる。それにより基材の表面輪郭構成は、良好に維持されたままである。最小層厚は、層のために使用される材料に依存する。つまり最小層厚は、例えばアルミニウムではほぼ35nm(ナノメートル)、チタンではほぼ60nm、銅ではほぼ80nm、そしてジルコニウムではほぼ70nmである。第1層は、任意選択的に物体色を有することができる。また第1層の層厚のために上限を設けることもでき、その上限は、500nmの下(未満)にあり、特に200nmの下(未満)であろう。
【0052】
特に、第2層は、物体色がほとんどなく、即ち物体色から十分に免れており、この際、物体色は、可視光のスペクトルの少なくとも部分的な吸収により認識可能となる色であり、この際、赤、緑、青の色成分の吸収の程度は、同じでなく、更にこの際、第2層は、自動車デザイン要素により反射された光がその色組成において光の少なくとも1つのスペクトル部分の弱め合う干渉により作用(マニピュレート)されるように構成されている。第2層のための層厚としては、材料に依存し、典型的には例えば10nmと2000nmの間の層厚を選択することができる。例えば酸化チタンから成る層が使用されるのであれば(ほぼ2.8の屈折率)、可視光の波長は、真空中の値に対して2.8のファクタで減少され、その際、厚さは、少なくとも個々のスペクトル成分の整数倍の約数が生じ得るように選択される。それにより酸化チタンでは、例えば10nmと500nmの間の層厚を選択することができる。
【0053】
好ましくは、基材のコーティングすべき面部(面の側)は、少なくとも1つの部分で滑らかであり且つ少なくとも1つの他の部分では粗い又は構造化されている表面構造を有することができる。粗い表面は、例えば、金属的にブラシをかけられたように見える面として構成されていることが可能であり、この際、塗料を用いた従来のコーティングとは異なり、本発明によるコーティング構造は、十分に薄く、表面の粗さを実際に変えずにさらに描写(コーティング形成)させることができる。それに対して塗料コーティングでは、コーティングすべき表面が「ぼやけて」しまい、塗料に必要な層厚がより厚いことが原因で、そのような粗い表面又は構造化された表面が覆い隠されてしまう。
【0054】
本発明による前記の方法から生じる全ての装置特徴、並びにその結果として生じる全ての利点は、以下に述べる装置の一部でもあり得る。更に本発明は、本発明による方法により製造された自動車デザイン要素に関し、この際、自動車デザイン要素は、形状安定性の基材を含み、該基材上には、金属的に反射する色付与の第1層が施工されており、この際、この第1層は、少なくとも20nmの層厚を有する不透明層が達成されるように構成されているか、又は第1層を覆う色付与の第2層が設けられており、この際、第2層は、少なくとも部分的に光透過性であり、また第1層の表面により反射される光線が第2層の表面により反射される光線と重なり合うことにより、自動車デザイン要素上に当たる光が少なくとも部分的に干渉により作用(マニピュレート)されるように構成されている。
【0055】
更に本発明は、本発明による光非透過性の自動車デザイン要素を含んだ車両投光器に関することができる。自動車投光器内でそのような自動車デザイン要素を使用することは、自動車デザイン要素がそのようにして効果的に環境影響から十分に保護されているという利点を有する。
【0056】
更に、本発明は、特に遮光要素(カバー要素)の形式の本発明による光非透過性の自動車デザイン要素を含んだ自動車、及び/又は、本発明による車両投光器を含んだ自動車に関することができる。
【0057】
好ましくは、自動車デザイン要素の第1層又は第2層は、当該層が、自動車の内部又は外部にいる人物に対し、自動車の稼働状態において見てとれる(視覚的に認識可能な)ように配設されている。
【0058】
更に、別の表現で換言すれば、以下の特徴を本発明の一部として設けることができる:
- 極めて優れた高真空生成ユニットを備えたマルチチャンバ-PVDコーティングシステム
- 有色層を生成するための、反応性ガスと関連した様々なコーティング材料のスパッタリング
- プラズマエミッションスペクトル分析及び反応性ガス流のリアルタイム制御を用いたプロセス実行の最も正確な制御(マス-フロー-コントローラ)
- 色を生成するための色付与の反応層が続いて形成される金属性の反射層の生成
- 前後に行われるプラズマ処理プロセス
- プロセスパラメータの変更によるフレキシブルな色選択が可能-準備は部分的にのみ(所望の色に依存して)必要である!
【0059】
以下、図面に具体的に示された例示の非限定的な実施形態に基づき、本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【
図1】本発明による一自動車投光器の第1実施形態の概要図を示す図である。
【
図2】本発明による一自動車投光器の第2実施形態の概要図を示す図である。
【
図3】基材上に本発明による方法に従って複数の層を生成させる一スパッタリングプロセスの概要図を示す図である。
【
図5】一プライマ層を含んだ基材の概要図を示す図である。
【
図6】本発明による、プライマ層と、第1層とを含んだ基材の概要図を示す図である。
【
図7】本発明による、プライマ層と、第1層と、第2層とを含んだ基材の概要図を示す図である。
【
図8】本発明による、プライマ層と、第1層と、第2層と、保護層とを含んだ基材の概要図を示す図である。
【実施例】
【0061】
添付の図面では、特に明記しない限り、同じ参照記号は、同じ構成要素を示している。
【0062】
図1は、本発明による自動車投光器8の第1実施形態の概要図を示している。自動車投光器8は、車両投光器ハウジング9と、車両投光器ハウジング9を閉じる少なくとも部分的に透明なカバーディスク10と、車両投光器ハウジング9内に受容されてカバーディスク10を通して光を放射するための光源11と、車両投光器ハウジング9内に受容された少なくとも1つの自動車デザイン要素3とを含んでいる。
【0063】
本実施形態では、2つの光源11と2つの自動車デザイン要素3が設けられている。各自動車デザイン要素3は、少なくとも1つのコーティングされた面部(ないし側 Seite)を有する形状安定性の基材1(
図3から
図8を参照)を含み、この際、基材1のコーティングされた面部は、その表面構造(表面性状)に関して異なる少なくとも2つの部分を有し、即ち粗い表面(ざらざらした表面)を有する第1部分3aと、滑らかな表面を有する第2部分3bとを有する。基材1のコーティングされた面部のコーティングは、少なくとも、金属的に反射する色付与の第1層L1(例えば
図6を参照)により構成されている。更に第1層L1を覆う色付与の第2層L2(
図7と
図8を参照)が設けられており、この際、第2層L2は、少なくとも部分的に光透過性であり、また第1層L1の表面により反射される光線LS1が第2層L2の表面により反射される光線LS2と重なり合うことにより、少なくとも1つの自動車デザイン要素3上に当たる光が少なくとも部分的に干渉により作用(マニピュレート)されるように構成されている。この際、それぞれの層L1、L2は、基材1のそれぞれの部分3a、3bの表面構造がそれらの層L1、L2にうつされるように施工されており、それにより第1部分3aの領域内のそれぞれの層に入射する光は、基材1の第1部分3aの表面構造に対応して散乱され、第2部分3bの領域内のそれぞれの層に入射する光は、基材1の第2部分3bの表面構造に対応して反射される。
【0064】
「表面構造がうつされる(uebertragen)」との表現のもとでは、層が適切に薄く且つ均質に形成されており、それによりコーティングすべき表面がコーティングされていない状態で有する出っ張りと窪み(即ち凹凸)がほとんど1:1の割合でコーティングの表面にうつされる(即ち、転写される)こととして理解される。この際 「ほとんど」との表現は、出っ張り/窪みの振幅がコーティングにより5%未満しか変化されないことを意味する。
【0065】
有利には、第1層L1及び/又は第2層L2は、基材1のコーティングすべき面部全体に沿って、一定の組成と層厚を有することができる。第1層L1は、第1層L1により少なくとも20nmの層厚を有する光非透過性の層が与えられているように構成されていることが可能である。第1部分3aは、第2部分3bにより取り囲まれており、第1部分3aの粗い表面構造により所定のグラフィックシンボルSYMが描かれているように構成されており、該グラフィックシンボルSYMは、第2部分3bによる周囲の反射領域に対し、光学的なコントラストとして見てとれる。グラフィックシンボルは、任意のシンボルとすることできる。
【0066】
両方の自動車デザイン要素3(
図1)のうち下側の自動車デザイン要素3には、放射領域3’が描かれており、放射領域3’は、例示の光線Lから分かるように、少なくとも部分的に光源11の光線路内に配設されている。この際、第1部分3aは、完全に放射領域3’にわたって延在し、従って放射領域3’を完全に含んでいる。このようにして光源11から出射して放射領域3’内に入射する光は、放射領域3’内で複数の方向に散乱される。特に放射領域3’は、完全に光源11の光線路内に配設されており、従って1つの光源11ないし複数の光源11により直接的に照射可能な自動車デザイン要素3の領域全体を含むことができる。このようにして眩惑の危険性を第1部分3aの散乱特性に基づいて完全に排除することができる。
【0067】
更に
図1では、両方の自動車デザイン要素3の基材1のコーティングされた面部(側 Seite)が、それぞれ、光源11の光線路の外側にある周囲光反射領域3”を有することが分かり、この際、第2部分3bは、少なくとも部分的に、特に完全に、周囲光反射領域3”にわたって延在している。特に周囲光反射領域3”は、取り付けられた状態で見てとれ即ち目に見え且つ光源11の光線路の外側に位置する少なくとも1つの自動車デザイン要素3の領域全体を含むことができる。
【0068】
好ましくは、第1部分3aの粗い表面は、少なくとも2.0μmの平均粗さ値Raを有することができる。更に第2部分3bの滑らかな表面は、最大で0.25μmの平均粗さ値Raを有することができる。
【0069】
図2は、本発明による自動車投光器8の第2実施形態の概要図を示しており、この自動車投光器8において、シンボルSymは(
図1のものよりも)比較的大きく形成されている。それぞれのシンボルSymにおいて形成された(内側の)滑らかな部分3bは、外側に位置する粗い部分3aにより取り囲まれている。またそれぞれの滑らかな部分3bの中には粗い部分3aが含まれており、例として本特許出願人のロゴ、即ちZKWグループのロゴが描写されている。
【0070】
図7と
図8を参照のもと、第2層L2は、少なくとも70%の透過率を有することができることを述べておく。第2層L2上には、保護層CLがプラズマ重合を用いて作成されていることが可能であり、この際、この保護層CLは、特にヘキサメチルジシロキサン(Hexamethyldisiloxan)から成る層とすることができる。好ましくは、保護層CLは、自動車デザイン要素により反射された光がその色組成において光の少なくとも1つのスペクトル部分の干渉により作用(ないし操作マニピュレート)されるように構成されている。基材1と第1層L1の間には、プライマ層(下地層)BLが配設されていることができる。
【0071】
好ましくは、金属性の少なくとも部分的に反射する第1層L1は、最小層厚と最大層厚の間にある層厚d1を有し、この際、最小層厚は、1%よりも少ない透過率を保証するために必要な厚さであり、最大層厚は、最大で最小層厚の4倍の層厚、好ましくは最大で最小層厚の3倍又は2倍の層厚を有する。
【0072】
第2層L2は、物体色がほとんどなく、即ち物体色から十分に免れており、この際、物体色は、可視光のスペクトルの少なくとも部分的な吸収により認識可能となる色であり、この際、赤、緑、青の色成分の吸収の程度は、同じでなく、更にこの際、第2層L2は、自動車デザイン要素3により反射された光がその色組成において光の少なくとも1つのスペクトル部分の干渉によって作用(マニピュレート)されるように構成されている。
【0073】
図3は、本発明による方法に従って基材1上に複数の層を生成させるスパッタリングプロセスの概要図を示している。この方法は、光非透過性の自動車デザイン要素3(
図6、
図7、
図8を参照)を製造するのに適しており、以下のステップを含む:
【0074】
A)少なくとも60℃の温度に対して耐熱性である形状安定性の基材1を用意し、該基材1を真空チャンバ2内に入れるステップ、
B)金属性の少なくとも部分的に反射する色付与の第1層L1(
図6、
図7、
図8を参照)を、ステップA)により真空チャンバ2内にある基材1上に、本実施例ではスパッタリングプロセスの形式のPVDプロセスを用いて、施工するステップ、
C)c1)ステップB)による色付与の第1層L1の施工を、少なくとも20nmの層厚を有する不透明(ないしオペーク blickdicht)層が達成されるように仕上げるステップ、又は、
c2)第1層L1を覆う色付与の第2層L2(
図7と
図8を参照)を施工するステップ、但し第2層L2は、少なくとも部分的に光透過性であり、また第1層L1の表面により反射される光線LS1が第2層L2の表面により反射される光線LS2と重なり合うことにより、自動車デザイン要素3上に当たる光が少なくとも部分的に干渉により、特に弱め合う干渉により作用(マニピュレート)されるように構成されている。
【0075】
図3による例では、複数の層を基材1上に作成することのできる異なるバリエーションが示されている。一般的にはアルゴンガス4が真空チャンバ2内に入れられ(例えば1x10
-4mbarである所望の圧力範囲に至るまで)、この際、ターゲット5には、例えばチャンバ壁部6に関して電圧がかけられる。それによりアルゴンが(Ar+に)イオン化し、陰極5(負に帯電されいる)に向かって加速される。アルゴンイオンの(機械的な)衝突により衝撃がターゲットの原子に伝えられ、十分にエネルギーがあると、ターゲット原子の一部が解放され、空間内に飛び出し、チャンバ2内の圧力が十分に低いと、飛散された原子の飛距離は、これらの原子が基材1まで到達することができ且つそこで凝縮するほどに大きい。作成される層のための基本材料は、スパッタリングプロセスにおいてターゲット5として存在する(通常は金属であるが、またセラミックとしてもよい)。ターゲット5として、
図3では、2つの異なる可能性が描かれている。つまりターゲットは、例えばアルミニウムから成るか又はチタンから成ることができるであろう。アルミニウムは、既述の第1層L1の生成のために極めて良好に適している。第1層L1の生成において、反応性ガスの存在は省略される。この場合、アルミニウムは、ターゲット上に純粋な形で(その物質だけで)凝縮している。しかし
図3では同様に代替的なケースが示されており、つまり例えばチタンターゲットが準備されるというケースであり、叩き出されたチタン材料ないしチタン原子は、反応性ガス7と、ここでは酸素と、二酸化チタンへと反応し、基材1上で凝縮する。このようにして先に述べた第2層L2を生成することができる。典型的には先ず第1層L1が非反応性スパッタリングプロセスで作成され、それに続き、反応性ガス7を入れた後に第2層L2が第1層L1上に施工される。
【0076】
図4は、例えばプラスチックの形態の基材1、特にポリカーボネート、ポリエステルアミド、ポリエーテルイミド、ABS、エンジニアリング熱可塑性プラスチック又は熱硬化性プラスチックの形態の基材1の概要図を示している。また代替的に基材1は、ガラス又は金属としてもよいだろう。
【0077】
図5は、プライマ層BL(下地層:ベースレイヤ)を含んだ基材1の概要図を示しており、プライマ層BLは、任意選択的に設けられ、基材1を最適の状態で後続のコーティング過程に対して準備するために用いることができる。
【0078】
図6は、本発明による、プライマ層BLと、既述の第1層L1とを含んだ基材1の概要図を示している。
図7は、本発明による、プライマ層BLと、第1層L1と、第2層L2とを含んだ基材1の概要図を示している。更に
図7は、互いに重ね合わされる前述の光線LS1、LS2を示しており、この際、その重ね合わせにより、自動車デザイン要素3により反射された光の色に作用を及ぼすことができる。色作用は、層材料の選択と層厚d1、d2の選択の双方に依存する。
【0079】
図8は、本発明による、プライマ層BLと、第1層L1と、第2層L2と、保護層CL(被覆層:コートレイヤ)とを含んだ基材1の概要図を示している。保護層CLは、プラズマ重合を用いて作成され、この際、この保護層CLは、特にヘキサメチルジシロキサンから成る層としてよい。この保護層CLは、透明であるが、層厚d3に応じて色付与に著しく関与し、なぜなら、この層により、周囲媒体(例えば空気)に対する境界面において同様に光LS3が反射され、この光LS3が、反射された光線LS1、LS2と重なり合うためである。更に保護層CLを設けることは、保護層CLが空気とは異なる比誘電率を有する限りにおいて、第2層L2の反射特性を変化させ、従って光線LS2の反射特性を変化させる。従って保護層CLは、自動車デザイン要素3により反射された光がその色組成において光の少なくとも1つのスペクトル部分の弱め合う干渉により作用(マニピュレート)されるように構成されていることが可能である。
【0080】
好ましくは、基材1上に施工された層全体の全厚は、最大で500nm、好ましくは最大で300nm、有利には少なくとも50nmであることができる。
【0081】
図6から
図8では、説明した方法により製造された自動車デザイン要素3が示されており、この際、自動車デザイン要素3は、形状安定性の基材1を含み、基材1上には、金属的に反射する色付与の第1層L1が施工されており、この際、第1層L1は、少なくとも20nmの層厚を有する不透明層が達成されるように構成されているか、又は、第1層L1を覆う色付与の第2層L2が設けられているように構成され、この際、第2層L2は、少なくとも部分的に光透過性であり、また第1層L1の表面により反射される光線LS1が第2層L2の表面により反射される光線LS2と重なり合うことにより、自動車デザイン要素3上に当たる光が少なくとも部分的に干渉により作用(マニピュレート)されるように構成されている。
【0082】
この教示内容に鑑み、当業者は、発明的行為なしで、本発明の他の非図示の実施形態に到達することができる。従って本発明は、説示された実施形態に限定されるものではなく、請求項の保護範囲全体により定義されている。また本発明ないし実施形態の個々の視点を取り上げて、互いに組み合わせることもできる。請求項に付記される参照符号は、例示であり、請求項を限定することはなく、請求項のより簡単な理解のためだけに用いられる。
【符号の説明】
【0083】
1 基材
3 自動車デザイン要素
3a 第1部分(粗い表面)
3b 第2部分(滑らかな表面)
3’ 放射領域
3” 周囲光反射領域
8 自動車投光器
9 車両投光器ハウジング
10 カバーディスク
11 光源
SYM グラフィックシンボル
BL プライマ層(下地層)
L1 第1層
L2 第2層
CL 保護層
LS1 光線
LS2 光線
LS3 光線
d1 層厚(第1層)
d2 層厚(第2層)
d3 層厚(保護層)