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  • 特許-回路保護素子 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-02
(45)【発行日】2023-02-10
(54)【発明の名称】回路保護素子
(51)【国際特許分類】
   H01H 85/06 20060101AFI20230203BHJP
   H01H 85/045 20060101ALI20230203BHJP
   H01H 85/143 20060101ALI20230203BHJP
   H01H 85/10 20060101ALI20230203BHJP
【FI】
H01H85/06
H01H85/045 A
H01H85/143
H01H85/10
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018126475
(22)【出願日】2018-07-03
(65)【公開番号】P2020009531
(43)【公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-06-29
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】鷲崎 智幸
(72)【発明者】
【氏名】中村 幸二郎
(72)【発明者】
【氏名】田中 正治
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-243533(JP,A)
【文献】特開2014-096272(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 85/06
H01H 85/045
H01H 85/143
H01H 85/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板と、前記絶縁基板の上面の両端部に設けられた一対の上面電極と、前記一対の上面電極と電気的に接続された溶断部を有するエレメント部と、前記エレメント部を覆う絶縁層とを備え、前記エレメント部は、前記絶縁基板の上面側から比抵抗が小さい銀層、銅層、ニッケル層の順に複数の金属層を積層し、前記ニッケル層を金属層の最上層とするとともに、下側の前記金属層における両端部と垂直方向の両側外側面から上面の全面にわたって上側の前記金属層で覆うようにした回路保護素子。
【請求項2】
前記ニッケル層の表面に形成されたニッケルの酸化物層を覆うように前記絶縁層を配置した請求項1記載の回路保護素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過電流が流れると溶断して各種電子機器を保護する回路保護素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の回路保護素子は、図3に示すように、絶縁基板1と、この絶縁基板1の上面の両端部に設けられた一対の上面電極2と、この一対の上面電極2を橋絡するエレメント部3と、このエレメント部3と前記絶縁基板1との間に形成された下地層4と、絶縁基板1の両端部に形成されかつ前記エレメント部3の上面と接続された端面電極5と、前記エレメント部3を保護する絶縁層6とを備えていた。
【0003】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-273847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の構成においては、エレメント部3に硫化物を生成しやすい銀などの金属を使用した場合、硫化雰囲気中で回路保護素子を使用すると、銀が硫化因子と化学反応を起こして硫化物を形成するため、抵抗値が変動等し、耐硫化特性が悪化するという課題を有していた。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するもので、耐硫化特性を向上させることができる回路保護素子を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様に係る回路保護素子は、絶縁基板と、前記絶縁基板の上面の両端部に設けられた一対の上面電極と、前記一対の上面電極と電気的に接続されたエレメント部と、前記エレメント部を覆う絶縁層とを備え、前記エレメント部は前記絶縁基板の上面側から比抵抗が小さい順に複数の金属層を積層して構成され、下側の前記金属層の全面をその上側の前記金属層で覆うようにした。
【0008】
第2の態様に係る回路保護素子では、第1の態様において、前記金属層は、前記絶縁基板の上面側から、銀層、銅層、ニッケル層の順に構成された。
【0009】
第3の態様に係る回路保護素子では、第2の態様において、前記ニッケル層の表面に形成された酸化物層を覆うように前記絶縁層を配置した。
【発明の効果】
【0010】
以上のように本発明の回路保護素子は、エレメント部において、硫化しにくい比抵抗が大きい金属またはニッケル層をエレメント部の最上層に形成しているため、耐硫化特性を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施の形態における回路保護素子の断面図
図2】同回路保護素子の一部切欠上面図
図3】従来の回路保護素子の断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は本発明の一実施の形態における回路保護素子の断面図、図2は同回路保護素子の主要部の一部切欠上面図を示したもので、この図1図2に示すように、本発明の一実施の形態における回路保護素子は、絶縁基板11と、この絶縁基板11の上面の両端部に設けられた一対の上面電極12と、この一対の上面電極12を橋絡するように形成され、かつ前記一対の上面電極12と電気的に接続されたエレメント部13と、このエレメント部13と前記絶縁基板11との間に設けられた下地層14と、前記下地層14の上面に位置するエレメント部13に形成された溶断部15とを備えている。
【0013】
また、絶縁基板11の両端部にはエレメント部13の一部に重なるように銀系の材料からなる端面電極層16が形成されており、かつこの端面電極層16の表面にはめっき膜(図示せず)が形成される。さらに、端面電極層16から露出したエレメント部13上に、シリコン樹脂からなる絶縁層17が設けられている。なお、図2では、説明を簡単にするために、端面電極層16、絶縁層17を省略している。
【0014】
上記構成において、前記絶縁基板11は、その形状が方形状であり、そしてAlを55%~96%含有するアルミナで構成されている。
【0015】
また、前記一対の上面電極12は、絶縁基板11の上面の両端部に設けられ、かつAg等を印刷することによって形成されている。
【0016】
そしてまた、前記エレメント部13は、絶縁基板11の少なくとも一部を覆うように形成し、下地層14および一対の上面電極12の上面に位置して設けられている。このエレメント部13は、Cr、Cu、Niの順にスパッタ、蒸着などの物理気相成長法を用いて形成された下層(以下、図示せず)と、下層の上面に、銀層13a、銅層13b、ニッケル層13cが順に形成された金属層13dとで構成されている。
【0017】
銀層13aは下層を核として電気めっきを行って形成する。また、銀層13aは一対の上面電極12の全面を覆う。銅層13bは銀層13aの全面を覆い、ニッケル層13cは銅層13bの全面を覆うように、それぞれ電気めっきを行って形成する。ニッケル層13cが耐硫化特性が悪い銀層13a、銅層13bの全面を覆っているため、回路保護素子としての耐硫化特性が向上する。さらに、ニッケル層13cの全面を絶縁層17で覆っている。
【0018】
また、前記エレメント部13の中心部には、レーザによってトリミング溝18が2ヶ所、互いに対向するエレメント部13の側面からエレメント部13の中心方向に向かって形成され、そして、この2つのトリミング溝18で囲まれた領域が、過電流が印加されたときに溶融して断線する溶断部15となっている。
【0019】
なお、トリミング溝18は図2に示すような直線状ではなく、L字状などの他の形状としてもよい。さらに、抵抗値調整用のトリミング溝を別途形成してもよい。
【0020】
そしてまた、前記下地層14は、絶縁基板11の上面の中央部に設けられており、かつこの下地層14は前記一対の上面電極12間に位置するエレメント部13と絶縁基板11との間に設けられている。また、この下地層14は、SiO等からなるガラスを主成分としている。
【0021】
なお、ニッケル層13cを形成した後一定時間放置すれば、その表面にニッケルの酸化膜が形成される。そして、この酸化膜を覆うように絶縁層17を形成すれば、エレメント部13表面が金属(ニッケル層13c)の場合と比べて、エレメント部13と絶縁層17との接着性が向上する。
【0022】
上記した本発明の一実施の形態においては、エレメント部13において硫化しにくい、すなわち比抵抗が大きい金属、特にニッケルを最上層に形成しているため、耐硫化特性を向上させることができるという効果が得られるものである。
【0023】
このとき、最も耐硫化特性が悪い銀層13aを、エレメント部13の最下層としている。そして、エレメント部13として、耐硫化特性が悪い順(すなわち、比抵抗が低い順)、銀層13a、銅層13b、ニッケル層13cの順に積層しているため、確実に耐硫化特性を向上させることができる。
【0024】
また、トリミング溝18をレーザによって形成する際、レーザ吸収率が大きいニッケル層13cをエレメント部13の最上層としているため、レーザのパワーを小さく設定でき、これにより、トリミング溝18形成時のエレメント部13の温度上昇を抑えることができるため、抵抗値が安定し、溶断特性が向上する。
【0025】
さらに、銀層13aと銅層13bとが接しているため、過電流が流れた時に溶融した銀と銅との共晶合金が形成されるが、この合金の融点が788℃と低いことから、この合金化して溶融した銅がニッケル層13cの中に拡散することによって、エレメント部13全体の融点が低下し、これにより、短時間で溶断部15を溶断させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明に係る回路保護素子は、耐硫化特性を向上させることができるという効果を有するものであり、特に過電流が流れると溶断して各種電子機器を保護する回路保護素子等において有用となるものである。
【符号の説明】
【0027】
11 絶縁基板
12 上面電極
13 エレメント部
13a 銀層
13b 銅層
13c ニッケル層
13d 金属層
17 絶縁層
図1
図2
図3