(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-02
(45)【発行日】2023-02-10
(54)【発明の名称】継ぎ目溶接部の侵食-腐食耐性を有する高マンガン鋼パイプおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
B23K 35/30 20060101AFI20230203BHJP
B23K 9/18 20060101ALI20230203BHJP
B23K 9/23 20060101ALI20230203BHJP
【FI】
B23K35/30 320A
B23K9/18 F
B23K9/23 C
(21)【出願番号】P 2018557354
(86)(22)【出願日】2017-05-02
(86)【国際出願番号】 US2017030691
(87)【国際公開番号】W WO2017192623
(87)【国際公開日】2017-11-09
【審査請求日】2019-11-06
(32)【優先日】2016-05-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390023630
【氏名又は名称】エクソンモービル・テクノロジー・アンド・エンジニアリング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ExxonMobil Technology and Engineering Company
(73)【特許権者】
【識別番号】592000691
【氏名又は名称】ポスコホールディングス インコーポレーティッド
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156085
【氏名又は名称】新免 勝利
(74)【代理人】
【識別番号】100138885
【氏名又は名称】福政 充睦
(72)【発明者】
【氏名】ヒョンウ・チン
(72)【発明者】
【氏名】ニン・マー
(72)【発明者】
【氏名】アドナン・オゼクシン
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・ジェイ・ワッソン
(72)【発明者】
【氏名】ダグラス・ピー・フェアチャイルド
(72)【発明者】
【氏名】ハン・イウク
(72)【発明者】
【氏名】イ・サンチョル
(72)【発明者】
【氏名】イ・ボンクン
(72)【発明者】
【氏名】イ・ジョンソプ
【審査官】川村 裕二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/083878(WO,A1)
【文献】特開平04-284989(JP,A)
【文献】特開平04-339591(JP,A)
【文献】特開2003-145286(JP,A)
【文献】特開2003-220492(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0066372(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0105623(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第102218622(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0007534(KR,A)
【文献】特開昭56-059597(JP,A)
【文献】特開2004-136329(JP,A)
【文献】特開2013-220431(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0066192(KR,A)
【文献】カナダ国特許出願公開第02930363(CA,A1)
【文献】特開昭56-026694(JP,A)
【文献】国際公開第2004/110695(WO,A1)
【文献】特開2002-239722(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 35/00-35/40
B23K 9/18
B23K 9/23
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サブマージアーク溶接のためのメタルコアードワイヤであり、
前記メタルコアードワイヤが、コアとともに、鋼シースを含み、
前記コアが、
0.3重量%~1.2重量%の範囲の炭素、
0.1重量%~3.0重量%の範囲のケイ素、
9.0重量%~30重量%の範囲のマンガン、
0.5重量%~8重量%の範囲のクロム、
0.25重量%~6重量%の範囲のニッケル、
6重量%以下の量のモリブデン、
5重量%以下の量のタングステン、
4重量%以下の量の銅、
2重量%以下の量のニオブ、
2重量%以下の量のバナジウム、
2重量%以下の量のチタン、
0.4重量%以下の量の窒素、
1重量%以下の量のホウ素、
0.3重量パーセント以下の硫黄、および
0.03重量パーセント以下のリン、
を含み、
残余は、鉄である
の粉末を含む、メタルコアードワイヤ。
【請求項2】
前記鋼シースが、炭素鋼または高マンガン鋼のいずれかである、請求項
1に記載のメタルコアードワイヤ。
【請求項3】
前記鋼シースが、溶接される長手方向シームを有する、請求項
1または
2に記載のメタルコアードワイヤ。
【請求項4】
前記鋼シースの表面が、銅で被覆されている、請求項
1~
3のいずれか1項に記載のメタルコアードワイヤ。
【請求項5】
高マンガン鋼を溶接する方法であり、
高マンガン鋼の少なくとも1つの片を供給すること、
請求項
1~
4のいずれか1項に記載のメタルコアードワイヤを供給すること、
前記高マンガン鋼の少なくとも1つの片を、スラグおよびアーク安定剤に浸漬すること、および
前記メタルコアードワイヤに電流を印加して、前記高マンガン鋼の少なくとも1つの片に液体合金鋼組成物を生成すること
を含む、方法。
【請求項6】
前記スラグが、
22~24重量%のAl
2O
3、
10~12重量%のSiO
2、
6~8重量%のMnO、
22.5~24.5重量%のCaF
2、
10.5~12.5重量%のMgO、
11.5~13.5重量%のCO
2、
2.5~4.5重量%のCaO、
0.5~2.5重量%のNa
2O、
1.0~3.0重量%のTiO
2、
0.5~1.6重量%のZrO
2、
0.3~1.3重量%のK
2O、
0.2~1.2重量%のFe、
0.2~2.2重量%のMn、
0.1~1.0重量%のSi、または
それらの組合せ
の少なくとも1つを含む、請求項
5に記載の方法。
【請求項7】
前記高マンガン鋼の少なくとも1つの片が、高マンガン鋼の少なくとも2つの片であり、前記メタルコアードワイヤに電流を印加して、前記高マンガン鋼の少なくとも2つの片の間の接合部において、液体鋼組成物を生成させる、請求項
5または
6に記載の方法。
【請求項8】
前記高マンガン鋼の少なくとも2つの片を接合する合金鋼組成物を形成するために、前記液体合金鋼組成物を冷却することをさらに含む、請求項
5~
7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記スラグおよびアーク安定剤が、TiO
2、SiO
2、ZrO
2、Al
2O
3、Na
2O、K
2O、金属フッ化物またはそれらの組合せの少なくとも1つを含む、請求項
5~
8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記金属フッ化物が、CaF
2、NaF
2、MgF
2、BaF
2およびK
2ZrF
6からなる群から選択される、請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
前記印加される電流が、510~650mm/分の溶接速度を達成する530~630Aの範囲内である、請求項
5~
10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記スラグが、
23.1重量%のAl
2O
3、
11.2重量%のSiO
2、
7.1重量%のMnO、
23.4重量%のCaF
2、
11.6重量%のMgO、
12.4重量%のCO
2、
3.5重量%のCaO、
1.3重量%のNa
2O、
2.1重量%のTiO
2、
1.1重量%のZrO
2、
0.8重量%のK
2O、
0.7重量%のFe、
1.2重量%のMn、
0.5重量%のSi、または
それらの組合せ
の少なくとも1つを含む、請求項
5~
11のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年5月2日に出願された米国仮特許出願第62/330,400号の利益および優先権を主張するものであり、この仮特許出願の開示内容は、全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
(分野)
本開示は、改良された(又は向上した(improved))鋼組成物(又はスチール組成物(steel compositions))およびその製造方法、より具体的には、シーム溶接部(又はシームウェルドゾーン(seam weld zone))において強化された(又は向上した(enhanced))侵食-腐食耐性(又はエロージョン-コロージョン耐性(erosion-corrosion resistance))、機械的強度(又はメカニカル強度)および靱性(又はタフネネス)を有する高マンガン(Mn)鋼シーム溶接パイプ(又はハイマンガン(Mn)スチールシームウェルデッドパイプ(high manganese (Mn) steel seam welded pipe))ならびにその製造方法に関する。特に、溶接金属(又はウェルドメタル(weld metal))および熱影響部(又は熱影響ゾーン(heat affected zone))を含む高マンガン鋼シーム溶接部(又はハイマンガンスチールシームウェルドゾーン(high manganese steel seam weld zone))は、オイルサンドスラリー環境(oil sands slurry environment)において、継ぎ目(又はステップアウト(step-out))の侵食耐性(又はエロージョン耐性(erosion resistance))、腐食耐性(又はコロージョン耐性(corrosion resistance))、水素脆化耐性(hydrogen embrittlement resistance)および応力腐食亀裂耐性(又はストレスコロージョンクラッキング耐性(stress corrosion cracking resistance))を示す。
【背景技術】
【0003】
(背景)
以下の明細書において、本開示は、オイルサンド製造に使用される高マンガン鋼スラリーパイプラインに関して記載される。しかしながら、本開示は、限定はされないが、パイプ以外のあらゆる溶接物を含む、十分な強度、靱性、および侵食/磨耗耐性を有する溶接物が望ましい侵食/磨耗耐性高マンガン鋼部品のあらゆる溶接により幅広く適用されることが明らかである。様々な用語が、以下の明細書において定義されている。便宜上、用語集が、特許請求の範囲の直前に提供される。
【0004】
採掘作業(オイルサンド鉱業を含む)における配管系は、液体またはスラリー中の硬い岩と砂粒子との混合物を、処理プラントに輸送し、瓦礫を採掘領域または貯蔵領域に循環させるのに使用される。現行のスラリー水力輸送パイプは、典型的に、炭素鋼(例えば、API 5L第45版X65またはX70グレード鋼)から作製されている。これらのパイプラインは、稼働中に厳しい侵食・腐食損傷を受け、パイプラインの最下部/点(6時の位置)で最も厳しい侵食・腐食磨耗を受ける。パイプラインの耐用寿命を延ばすために、多くの人々は、パイプラインを時々(例えば、3,000時間の稼動毎に)90°回転させる。3回転または12,000時間の稼動の後、パイプラインは取り替えられる。マルテンサイトステンレス鋼(例えば、Duracorr)、硬化肉盛材料(例えば、WC系、Cr3C2系)、およびポリマーライニング材料(例えば、ポリウレタン)からの様々な材料が、オイルサンド採掘作業者によって評価され、使用されている。しかしながら、これまでに考えられたほとんどの工学材料には、比較的低い磨耗/侵食性能(例えば、ポリマーライナー)または高い材料および/または製造コスト(例えば、WC系硬質金属、炭化クロム系硬質金属オーバーレイ)または侵食耐性層(例えば、二金属多層硬化鋼材料)の限られた厚さのいずれかのため、隙間的用途しかない。
【0005】
オイルサンド鉱業においても強化された耐摩耗性鋼に対する必要性がある。このようなオイルサンド鉱床は、1960年代から商業的に回収されており、回収率が、近年増加している。ビチューメン鉱石の採取は、一般に、浅部鉱床(例えば、深さ100m未満)での露天採掘技術によって、またはより深い地下(例えば、約100mまたはそれより深い)に位置する深部鉱床でのその場熱抽出(例えば、蒸気、化学溶剤および/またはそれらの混合物の注入を含む)によって採取されている。浅部オイルサンドの露天採掘では、多くのタイプの重機およびパイプラインが用いられる。まず、オイルサンドは、典型的に、ショベルを用いて掘削され、採掘物をトラック/車両に移送する。車両は、オイルサンド鉱石を鉱石調製施設に輸送し、そこで、採掘された鉱石は、典型的に、粉砕され、熱水と混合される。次に、オイルサンドスラリーは、典型的に、水力輸送パイプラインを通して、第一次分離槽(PSC)にポンプで送られ、そこで、油状ビチューメンが、一般に、砂および水から分離される。ビチューメンが分離された後、残りの砂および水のスラリーが、鉱滓パイプラインを通して、砂を沈殿させるために鉱滓池に輸送される。
【0006】
例えば、アルバータ州北東部にあるカナダのオイルサンド資源は、浅い表土によって覆われた大きなオイルサンド鉱床を含むため、露天採掘が、油状ビチューメン採取の効率的な方法になる。一般に、サンドは、ショベルで採掘され、粒子状物質のオイルサンドが典型的に水性スラリーとして輸送される水力輸送パイプラインなどによって処理プラントに輸送されることが多い。ビチューメン採取後、次に、鉱滓が、典型的に、処理施設からパイプラインによって、固体および水の分離が行われる場所に輸送される。大量のスラリー混合物の水力輸送は、従来の金属パイプラインなどにおいてかなりの金属損失を引き起こし、短い交換周期およびかなりの運転コストをもたらす。
【0007】
したがって、オイルサンドの採掘および鉱石の調製プロセスは、多くの装置/作動領域(例えば、ショベルの歯、ホッパー、粉砕機、コンベヤ、振動篩、スラリーポンプ、パイプラインなど)におけるいくつかの応力および/または衝撃による磨耗の課題を含む。例えば、下流のスラリー輸送および抽出プロセスにおいて、装置、パイプライン(例えば、水力輸送パイプラインおよび鉱滓パイプライン)、ポンプおよび/またはPSCにおいて直面する課題の一部は、装置/材料の、侵食、侵食/腐食、腐食、応力、磨耗および/または摩滅などを含む。これらの装置/材料の侵食/腐食などの問題は、かなりの修理、交換および/または維持コストにつながるだけでなく、生産性の低下にもつながる。
【0008】
記載されるように、スラリー水力輸送および鉱滓パイプライン用の現行の配管構造は、典型的に、低炭素のパイプライングレードの鋼(例えば、API仕様5L第45版X65、X70グレード)から作製されている。一般に、スラリー流れ中で高速移動する固体は、パイプのかなりの金属損失(例えば、内側パイプ壁の金属損失)を引き起こし得る。水性曝気スラリー流れはまた、典型的に、腐食環境を生じることによってパイプの侵食の促進を引き起こす。さらに、スラリー中の粒子状物質(重力の影響下)は、とりわけ、パイプの内側の下半分に沿って損傷を引き起こす。例えば、オイルサンド採掘作業において砂および水のスラリーを運ぶ水力輸送および鉱滓パイプラインは、稼働中に厳しい侵食・腐食損傷を受けるが、パイプラインの最下部/点(例えば、6時の位置)で、典型的に、最も厳しい侵食磨耗を受ける。
【0009】
上述されるように、パイプラインの耐用寿命を延ばすために、定期的にパイプラインを回転させている採掘作業者もいる。上述されるように、様々な材料が、オイルサンド採掘作業者によって評価され、使用されている。しかしながら、このような材料には、典型的に、比較的低い磨耗/侵食性能(例えば、ポリマーライナー)、高い材料/製造コスト(例えば、WC系硬質金属、炭化クロム系硬質金属オーバーレイ材料)、または限られた利用可能な厚さ(例えば、二金属多層硬化鋼材料)のいずれかのため、隙間的用途しかない。しかしながら、パイプの侵食などは、依然として深刻な問題であり、より効率的/経済的な操業/解決を可能にする、代替的なパイプ構造および/または材料が求められている。
【0010】
強化された侵食/磨耗/腐食性能を有する改良された鋼組成物が、採掘作業において運転コストを削減するために開発されている。詳細には、強化された磨耗/侵食/腐食耐性を有する改良された高Mn鋼が、スラリーパイプ(2013EM118-PA)を含むオイルサンド採掘用途のために開発されている。首尾よく実施するために、高Mn鋼スラリーパイプ部分は、高Mn鋼スラリーパイプラインを作製するために、現場で接合されなければならない。オイルサンド採掘プロジェクトのための高Mn鋼スラリーパイプラインを建設するのに使用可能な溶接技術に対する必要性がある。スラリーパイプラインは、円周突合せ溶接(girth butt weld)、フランジ、および機械的結合を含むいくつかの異なるタイプの接合方法を用いて建設される。
【0011】
これまでに開発された高Mn鋼溶接金属は、侵食耐性高Mn鋼スラリーパイプラインを接合するのに十分でない。鋳造ハッドフィールド鋼(鉄道の部品に一般的に使用される)を溶接するのに使用される従来の高Mn鋼消耗品は、最近開発された侵食耐性高Mn鋼スラリーパイプを接合するのに使用されるのに十分な溶接金属強度を提供しない。硬化肉盛用途に使用される高Mn鋼溶接消耗品は、スラリーパイプライン円周溶接に必要とされる溶接金属靱性レベルを一貫して提供することができない。
【0012】
特許文献1には、液化天然ガス(LNG)用の貯蔵容器などの極低温用途のために開発された高Mn鋼が記載されている。溶接金属は、非特許文献1に記載されているものなどの極低温高Mn鋼のために開発された。これらの極低温高Mn鋼溶接金属は、-200℃までの極低温で十分な靱性を提供するが、侵食耐性高Mn鋼スラリーパイプ用途のために十分な溶接金属強度を提供しない。
【0013】
特許文献2には、スラリーパイプを含む、オイルサンド採掘作業において運転コストを削減するために強化された侵食・腐食耐性を有する高マンガン鋼組成物が記載されている。スラリーパイプライン用途では、高マンガン鋼板が、製造され、パイプへと溶接されなければならない。このような高マンガン鋼パイプ、溶接金属およびベース鋼の両方は、非常に侵食性・腐食性である内部のスラリー環境に曝される。したがって、高マンガン鋼ベースパイプの利益を十分に生かすために、シーム溶接の継ぎ目侵食・腐食性能が必要とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】米国特許出願公開第2013/0174941号明細書
【文献】米国特許出願公開第2014/0261918号明細書
【非特許文献】
【0015】
【文献】J.K.Choi,et al,“High Manganese Austenitic Steel for Cryogenic Applications”,Proceedings of the 22nd International ISOPE Conference,Rhodes,Greece 2012
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
したがって、溶接性または使用しやすさに関する過度の懸念なしに、高マンガン鋼ラインパイプ製造中に適用され得る、継ぎ目侵食耐性、耐腐食性、耐水素脆化性、および応力腐食亀裂耐性を示す改良された高マンガン鋼シーム溶接部および熱影響部に対する必要性がある。これらのおよび他の非効率性および改良の機会は、本開示の組成物、物品、および方法によって対処され、および/または克服される。
【課題を解決するための手段】
【0017】
(要旨)
シーム溶接によって、侵食耐性高マンガン鋼スラリーパイプ(又はエロージョン耐性ハイマンガンスチールスラリーパイプ)を製造するために十分な強度、十分な靱性(又はタフネス)および高い侵食/腐食耐性(又はエロージョン/コロージョン耐性)を達成する、新規な溶接金属ならびにそれを製造および使用する方法を提供する。
本開示の実施形態は、その用途に好適な溶接微細構造(又はウェルドミクロストラクチャ(weld microstructures))および機械的特性(又はメカニカルプロパティ(mechanical properties))をもたらす、溶接金属化学(又はウェルドメタルケミストリ(weld metal chemistries))、溶接プロセス(又はウェルディングプロセス(welding processes))および溶接(又はウェルディング)の実施(又はプラクティス(practices))の制御(又はコントロール)を含み、それによって、接合部(又はジョイント(joints))、ひいては溶接構造全体(entire welded structure)の優れた強度(又はストレングス)を提供する。
【0018】
一態様において、本開示によって提供される溶接金属は、
約0.3重量%~約1.2重量%の炭素、
約0.1重量%~約3.0重量%のケイ素、
約9.0重量%~約30重量%のマンガン、
以下の(i)、(ii)または(iii)の少なくとも1つ
(i) 約0.3重量%以下の硫黄、
(ii) 約0.03重量%以下のリン、または
(iii)それらの組合せ
を含み、残余(又は残余物又はバランス(balance))は、鉄である。
この溶接金属は、
約8重量%以下のクロム、
約6重量%以下のニッケル、
約6重量%以下のモリブデン、
約5重量%以下のタングステン、
約4重量%以下の銅、
約2重量%以下のニオブ、
約2重量%以下のバナジウム、
約2重量%以下のチタン、
約0.4重量%以下の窒素、および
約1重量%以下のホウ素
をさらに含み得る。
【0019】
本開示の別の態様は、サブマージアーク溶接(又はサブマージドアークウェルディング(submerged arc welding))のため新規なメタルコアードワイヤ(又はメタルコアのワイヤ(metal cored wire))を提供する。当該ワイヤは、溶接金属の組成物について、上述の合金元素(又は合金エレメント(alloying elements))の粉末(又はパウダー)を含むコアとともに、鋼シース(又はスチールシース(steel sheath))を含む。
【0020】
本開示のさらなる態様は、高マンガン鋼を溶接する方法に関する。溶接金属を適用するための方法は、サブマージアーク溶接を使用する。
溶接金属化学(又はウェルドメタルケミストリ(weld metal chemistry))および溶接パラメータ(又はウェルディングパラメータ(welding parameters))(例えば、入熱(又はヒートインプット(heat input)))は、凝固割れ(又はソリディフィケーションクラッキング(solidification cracking))に対する脆弱性(又は感受率(susceptibility))を確実に減少させ、溶接金属(又はウェルドメタル(weld metal))および熱影響部(HAZ)靱性(又は熱影響ゾーン(HAZ)タフネス(heat affected zone (HAZ) toughness))および強度の著しい低下を防ぐように制御される。
一実施形態において、当該方法は、
高マンガン鋼(又はハイマンガンスチール)の少なくとも1つの片(又はピース)を供給すること(又は工程又はステップ)、
メタルコアードワイヤを供給すること(又は工程又はステップ)、
高マンガン鋼の少なくとも1つの片(又はピース)を、スラグ(slag)およびアーク安定剤(又はアークスタビライザ(arc stabilizer))に浸漬(又はサブマージ)すること(submerging)(又は工程又はステップ)、および
メタルコアードワイヤに電流を印加して、高マンガン鋼の少なくとも1つの片(又はピース)に液体合金鋼組成物(又はリキッドアロイスチール組成物(liquid alloy steel composition))を生成すること(又は工程又はステップ)
を含む。
メタルコアードワイヤは、
約0.3重量%~約1.2重量%の炭素、
約0.1重量%~約3.0重量%のケイ素、
約9.0重量%~約30重量%のマンガン、
以下の(i)、(ii)または(iii)の少なくとも1つ
(i) 約0.3重量%以下の硫黄、
(ii) 約0.03重量%以下のリン、または
(iii)それらの組合せ
を含んでもよく、残余(又は残余物又はバランス(balance))は、鉄である。
【0021】
実施形態の任意の組合せまたは変更が想定される。さらなる有利な工程、本開示の開示されるシステムおよび方法の特徴、機能および用途が、特に、添付の図面と併せて読むと、以下の説明から明らかになるであろう。本開示に挙げられる全ての参考文献は、全体が参照により本明細書に援用される。
【0022】
本開示の例示的な実施形態は、添付の図面を参照してさらに説明される。後述され、図面に示される様々な工程、特徴および工程/特徴の組合せを、異なって配置および構成して、本開示の趣旨および範囲内に依然としてある実施形態をもたらすことができることに留意すべきである。当業者が、開示されるシステム、組立体および方法を作製および使用するのを助けるために、以下の添付の図面が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図2】積層欠陥エネルギーに対する合金元素の予測される影響を示す。
【
図3】異なる炭素含量を有する2つの高Mn鋼シーム溶接の応力-歪み曲線である。
【
図4】ASTM G65回転ゴム車輪試験による溶接金属の耐磨損性。
【
図5】模擬スラリーパイプライン環境下での高Mn鋼シーム溶接における選択的溶接腐食の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(詳細な説明)
本明細書に開示される例示的な実施形態は、有利な鋼組成物、ならびに本開示のシステムおよびその方法/手法を説明するものである。しかしながら、開示される実施形態は、本開示の例示に過ぎず、様々な形態で実施され得ることが理解されるべきである。したがって、例示的な鋼組成物/作製方法および関連する組立および使用の方法/手法に関して本明細書に開示される詳細は、限定するものと解釈されるべきではなく、本開示の有利な鋼組成物の作製および使用方法を当業者に教示するための単なる基礎として解釈されるべきである。図面は必ずしも縮尺どおりであるとは限らず、ある図では、明確にするために部分が誇張されていることがある。
【0025】
本明細書に記載される組成物が、シーム溶接部の優れた侵食・腐食耐性、機械的強度、および靱性を有する高マンガンシーム溶接パイプを提供するという意外かつ予想外の発見に関連する組成物、物品、および方法が、本明細書に記載される。特に、溶接金属および熱影響部を含むシーム溶接部は、例えば、オイルサンドスラリー環境において、継ぎ目侵食耐性、耐腐食性、水素脆化、および応力腐食亀裂耐性を示す。
【0026】
本開示の一態様によれば、溶接金属が提供される。別途特に示されない限り、溶接金属の組成物に関連する本明細書における全てのパーセンテージは、重量%で表される。溶接金属は、約0.3重量%~約1.2重量%の炭素;約0.1重量%~約3.0重量%のケイ素;約9.0重量%~約30重量%のマンガン;以下の少なくとも1つ:約0.3重量%以下の硫黄、約0.03重量%以下のリン、またはその両方を含み;残余は鉄である。本開示の溶接金属は、侵食耐性の高マンガン鋼またはER-HMSと呼ばれ得る。溶接金属組成物の残余は鉄であるが、溶接金属は、他の挙げられていない構成要素、例えば、不純物などを含み得る可能性がある。
【0027】
溶接金属は、約8重量%以下のクロム、約6重量%以下のニッケル、約6重量%以下のモリブデン、約5重量%以下のタングステン、約4重量%以下の銅、約2重量%以下のニオブ、約2重量%以下のバナジウム、約2重量%以下のチタン、約0.4重量%以下の窒素、および約1重量%以下のホウ素をさらに含み得る。
【0028】
本明細書の詳細な説明および特許請求の範囲における全ての数値は、示される値の前の「約」または「およそ」によって修飾され、当業者によって予測され得る実験誤差および変動を考慮に入れる。
【0029】
値の範囲が示されている場合、その範囲の上限および下限の間の、文脈上特に明記されない限り下限の単位の10分の1までの各中間値、およびその指定される範囲内の任意の他の指定される値または中間値は、本開示の範囲内に包含されることが理解される。任意の下限値から任意の上限値までの範囲が考えられる。独立してより狭い範囲に含まれ得る、これらのより狭い範囲の上限および下限も、指定される範囲内の明確に除外される限界値にしたがって、本開示の範囲内に包含される。指定される範囲が、限界値の一方または両方を含む場合、含まれる限界値のいずれかまたは両方を除外した範囲も本開示に含まれる。
【0030】
本明細書に記載されるものと類似または等価の方法および材料を、本開示の実施または試験に使用することもできるが、好ましい方法および材料が、ここで記載される。本明細書に挙げられる全ての刊行物は、これらの刊行物が関連して引用される方法および/または材料を開示および説明するために、参照により本明細書に援用される。
【0031】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される際、単数形(「a」、「an」、および「the」)は、文脈上特に明記されない限り、複数の言及を含むことに留意しなければならない。
【0032】
本明細書および特許請求の範囲において使用される際、「および/または」という語句は、そのように結合される要素の「いずれかまたは両方」、すなわち、ある場合には結合して存在し、他の場合には分離して存在する要素を意味するものと理解されるべきである。「および/または」を用いて列挙される複数の要素は、同じ様式、すなわち、そのように結合される要素の「1つまたは複数」と同様に解釈されるべきである。具体的に特定される要素に関連するかまたは関連しないかにかかわらず、「および/または」節によって具体的に特定される要素以外の他の要素が任意選択的に存在し得る。したがって、非限定的な例として、「Aおよび/またはB」への言及は、「を含む(comprising)」などのオープンエンドの語とともに使用される場合、一実施形態において、Aのみ(任意選択的にB以外の要素を含む);別の実施形態において、Bのみ(任意選択的にA以外の要素を含む);さらに別の実施形態において、AおよびBの両方(任意選択的に他の要素を含む)などを指し得る。
【0033】
本明細書および特許請求の範囲において使用される際、「または」は、上に定義される「および/または」と同じ意味を有するものと理解されるべきである。例えば、リスト中の項目を分離する場合、「または」または「および/または」は、包括的である、すなわち、いくつかの要素または要素のリストの2つ以上も含む少なくとも1つ、および、任意選択的に、列挙されていないさらなる項目を含むものと解釈されるべきである。矛盾することが明らかに示される限定的な用語(only term)、例えば、「(のうち)の1つのみ」または「(のうち)のちょうど1つ」、または、特許請求の範囲において使用される場合、「からなる(consisting of)」は、いくつかの要素または要素のリストのちょうど1つの要素を含むことを指す。一般に、本明細書において使用される際の「または」という用語は、「いずれか」、「(のうち)の1つ」、「(のうち)の1つのみ」、または「(のうち)のちょうど1つ」などの排他性を有する用語が前にある場合、排他的選択肢(すなわち、「一方または他方であるが、両方でない」)を示すものとして解釈されるのみである。
【0034】
特許請求の範囲、ならびに上記の本明細書において、「を含む(comprising)」、「を含む(including)」、「を有する(carrying)」、「を有する(having)」、「を含有する(containing)」、「を含む(involving)」、「を保持する(holding)」、「から構成される(composed of)」などの全ての移行句は、オープンエンドである、すなわち、含むがそれに限定されないことを意味するものと理解されるべきである。限定的な移行句「からなる(consisting of)」および「から本質的になる(consisting essentially of)」はそれぞれ、the 10 United States Patent Office Manual of Patent Examining Procedures,Section 2111.03に記載されるように、クローズドまたはセミクローズドな移行句であるものとする。
【0035】
本明細書および特許請求の範囲において使用される際、1つまたは複数の要素のリストに関する「少なくとも1つ」という語句は、要素のリスト中のいずれか1つまたは複数から選択される少なくとも1つの要素を意味するものと理解されるべきであるが、要素のリスト内に特に列挙されるあらゆる要素の少なくとも1つを必ずしも含むとは限らず、要素のリスト内の要素の任意の組合せを除外しない。この定義はまた、具体的に特定される要素に関連するかまたは関連しないかにかかわらず、「少なくとも1つ」という語句が指す要素のリスト内で具体的に特定される要素以外の要素が任意選択的に存在し得ることを可能にする。したがって、非限定的な例として、「AおよびBの少なくとも1つ」(または、同等に、「AまたはBの少なくとも1つ」、または、同等に「Aおよび/またはBの少なくとも1つ」)は、一実施形態において、任意選択的に2つ以上を含む少なくとも1つの、Bの存在なしのA(任意選択的にB以外の要素を含む);別の実施形態において、任意選択的に2つ以上を含む少なくとも1つの、Aの存在なしのB(任意選択的にA以外の要素を含む);さらに別の実施形態において、任意選択的に2つ以上を含む少なくとも1つのA、および任意選択的に2つ以上を含む少なくとも1つのB(任意選択的に他の要素を含む)などを指し得る。
【0036】
矛盾することが明らかに示されない限り、2つ以上の工程または作業を含む本明細書において権利請求される任意の方法において、方法の工程または作業の順序は、方法の工程または作業が記載される順序に必ずしも限定されないことも理解されるべきである。
【0037】
特に定義されない限り、本明細書において使用される全ての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書における本開示の説明に使用される用語は、特定の実施形態を説明するものに過ぎず、本開示を限定することは意図されていない。
【0038】
定義
CRA:耐腐食性合金は、腐食環境で使用される装置を作製するために良好な耐腐食性を有するように特別に配合された材料を意味し得るが、決してこれに限定されない。耐腐食性合金は、広範囲の過酷な腐食条件のために配合され得る。
【0039】
延性:破壊前にかなりの塑性変形を受ける材料の能力の尺度を意味し得るが、決してこれに限定されず;それは、伸び率(% EL)または面積減少率(% AR)として表され得る。
【0040】
耐腐食性:反応性または腐食環境への曝露によって引き起こされる劣化に対する材料固有の耐性を意味し得るが、決してこれに限定されない。
【0041】
靱性:亀裂発生および伝播に対する耐性を意味し得るが、決してこれに限定されない。
【0042】
応力腐食割れ(SCC):応力ならびに反応性および腐食環境の同時作用に起因する材料の割れを意味し得るが、決してこれに限定されない。
【0043】
硫化物応力割れ(SSC):硫化水素(例えば、H2S)を含有する流体への曝露に起因する材料の割れを意味し得るが、決してこれに限定されない。
【0044】
降伏強度:変形せずに荷重に耐える材料の能力を意味し得るが、決してこれに限定されない。
【0045】
冷却速度:一般に材料の片の中心、または実質的に中心で測定される、材料の片の冷却の速度を意味し得るが、決してこれに限定されない。
【0046】
オーステナイト:面心立方(FCC)原子結晶構造を有する鋼における金属学的相を意味し得るが、決してこれに限定されない。
【0047】
マルテンサイト:限定はされないが、母相(典型的にオーステナイト)および生成物相が特定の配向関係を有する無拡散相変態によって形成され得る鋼における金属学的相を意味し得るが、決してこれに限定されない。
【0048】
ε(イプシロン)-マルテンサイト:オーステナイト相を冷却するかまたは歪みを加えると生じる六方最密充填原子結晶構造を有するマルテンサイトの特定の形態を意味し得るが、決してこれに限定されない。ε-マルテンサイトは、典型的に、オーステナイト相の最密充填(111)面に生じ、形態が変形双晶または積層欠陥クラスターに類似している。
【0049】
α’(アルファプライム)-マルテンサイト:オーステナイト相を冷却するかまたは歪みを加えると生じる体心立方(BCC)または体心正方(BCT)原子結晶構造を有するマルテンサイトの特定の形態を意味し得るが、決してこれに限定されず;α’-マルテンサイトは、典型的に、板状晶として生じる。
【0050】
炭化物:鉄/金属および炭素の化合物を意味し得るが、決してこれに限定されない。
【0051】
溶接物:片の組立体を一緒に溶接することによって形成される単位を意味し得るが、決してこれに限定されない。
【0052】
溶接金属:その形成の際に融合された、溶接物または溶接継ぎ手の部分を意味し得るが、決してこれに限定されない。
【0053】
熱影響部(HAZ):溶接中に溶融されなかったが、微細構造および機械的特性が溶接のための熱によって変化した、ベースメタルの部分を意味し得るが、決してこれに限定されない。
【0054】
選択的溶接腐食(PWC):母材ベースメタルよりむしろ溶接金属および/または隣接する熱影響部(HAZ)が腐食するような、溶接に関連する金属の選択的腐食を意味し得るが、決してこれに限定されない。
【0055】
溶接金属学/微細構造/機械的特性
本開示の新規な侵食耐性高Mn鋼(ER-HMS)溶接物は、シーム溶接によって侵食耐性HMSパイプを接合するのに必要な強度、靱性、および高い侵食・腐食耐性を提供することができる。これらの特性要件を満たすのに必要な微細構造は、溶接金属化学および溶接プロセスパラメータの適切な制御によって達成される。
【0056】
従来の高マンガン鋼消耗品(例えば、鉄道部品に一般的に使用されるハッドフィールド鋼溶接オーバーレイワイヤ)は、最近開発された侵食耐性高マンガン鋼スラリーパイプにおいて好適な溶接金属強度または耐腐食性を提供しない。本開示に記載される高マンガン鋼溶接金属は、スラリーパイプ用途において優れた継ぎ目侵食/腐食性能を提供する。
【0057】
ER-HMS溶接金属は、この用途(例えば、スラリーパイプ)に必要な最小引張強さ特性を達成しなければならない。例えば、溶接金属降伏強度は、侵食耐性HMSベースパイプの降伏強度より大きいか、またはスラリーパイプライン設計によって必要とされる所定の最小降伏強度(SMYS)より大きくてもよい。溶接金属極限引張強さはまた、ベースパイプ本体のための所定の最小極限引張強さ(SMUTS)より大きくてもよい。さらに、溶接金属は、引張伸びのある所定の最小レベルを提供し得る。ER-HMS溶接金属は、硬質マルテンサイト相に変態し、歪みを加えると双晶を形成する、非常に準安定なオーステナイト相を含むように設計されるため、これらの要件のそれぞれを達成することができる。さらに、溶接金属(例えば、モリブデン)における固溶体強化要素は、格子転位運動を妨げることによって、さらなる強化を提供する。これらの強化機構の組合せは、典型的なスラリーパイプラインのシーム溶接のための引張強さ要件を達成する高い強度および加工硬化速度を提供する。例として、試験されるER-HMS溶接金属特性は、
図4に示され、API X70グレードに基づくパイプライン設計のためのシーム溶接要件(SMYSは70ksiである)と比較される。API X70グレード設計は、オイルサンドスラリーパイプライン設計に一般的である。ER-HMS溶接金属化学の調節が、X52、X60、X65、X70、およびX80を含む可能なスラリーパイプライングレードの範囲に必要な溶接金属引張特性を達成するために、本明細書に開示される範囲内で行われ得る。
【0058】
本開示に記載される高マンガン鋼溶接金属は、スラリーパイプ用途に使用されるベースメタル高マンガン鋼と同様の機械的特性および侵食/腐食特性を有する必要があるが、これは、これらの領域における微細構造および応力分布が、接合部の強度、ひいては溶接構造全体の強度に大きな影響を与えるためである。したがって、一実施形態において、本開示のER-HMS溶接金属は、例えば、スラリーパイプ用途に使用されるベースメタル高マンガン鋼と同様の微細構造および同様の歪み誘起変態挙動を有する。
【0059】
一実施形態において、溶接金属は、約0.3重量%~約1.2重量%の炭素;約0.1重量%~約3.0重量%のケイ素;約9.0重量%~約30重量%のマンガン;以下の少なくとも1つ:約0.3重量%以下の硫黄、約0.03重量%以下のリン、またはその両方;約8重量%以下のクロム;約6重量%以下のニッケル;約6重量%以下のモリブデン;約5重量%以下のタングステン;約4重量%以下の銅;約2重量%以下のニオブ;約2重量%以下のバナジウム;約2重量%以下のチタン;約0.4重量%以下の窒素;約1重量%以下のホウ素を含み、組成物の残余は鉄である。特定の実施形態において、炭素は、約0.45~約0.7重量%の範囲であり、ケイ素は、約0.2~約1.5重量%の範囲であり、および/またはマンガンは、約12~約20重量%の範囲である。別の実施形態において、クロムは、約2~約6重量%の範囲であり、ニッケルは、約5重量%以下の量であり、モリブデンは、約0.5~約3重量%の範囲であり、タングステンは、約0.1~約2重量%の範囲であり、銅は、約2重量%以下の量であり、ニオブは、約1重量%以下の量であり、バナジウムは、約1重量%以下の量であり、チタンは、約1重量%以下の量であり、窒素は、約0.01~約0.3重量%の範囲であり、および/またはホウ素は、約0.01~約0.4重量%の範囲である。
【0060】
本開示に記載される高マンガン鋼溶接金属、およびHAZは、例えば、スラリーパイプ用途のために接合されるベースメタル高マンガン鋼と同様の機械的特性および侵食/腐食特性を有する必要がある。したがって、一実施形態において、本開示のER-HMS溶接金属、およびHAZは、ベースメタル高マンガン鋼と同様の微細構造および同様の歪み誘起変態挙動を有する。従来の炭素鋼と異なり、高マンガン鋼の微細構造は、室温で面心立方(fcc)構造を有する準安定オーステナイト相からなる。
【0061】
歪みを加えると、準安定オーステナイト相は、歪み誘起変態によっていくつかの異なる相変態を起こし得る。これらの変態としては、以下のものが挙げられる:オーステナイト相は、具体的な鋼の化学的性質および/または温度に応じて、双晶が母相と整列された微細双晶(fcc)構造、ε-マルテンサイト(六方格子)、およびα’-マルテンサイト(体心正方格子)へと変態する。これらの変態生成物は、高マンガン鋼の特有の特性をもたらす上での鍵である。例えば、微細な微細双晶は、一次オーステナイト結晶粒を効果的に分割し、転位運動に対する強い障害物として働く。これは、結晶粒を効果的に微細化し、高い極限引張強さおよび延性の優れた組合せをもたらす。
【0062】
ベースメタル侵食耐性高マンガン鋼の化学的性質は、良好な侵食および磨耗性能を提供する変態生成物を生成するように特に調整されてきた。ベースメタルは、歪みを加えると硬質α’-マルテンサイトへと変態することが多い非常に準安定なオーステナイト相を含むように製造される。これらの鋼の表面磨耗後、非常に準安定なオーステナイト相の表面層は、α’-マルテンサイトへと変態し得る。この摩擦誘起相変態は、丈夫な非変態準安定オーステナイトの内部の上にマルテンサイトからなる薄い硬質表面層の形成をもたらす。これは、磨耗/侵食用途のための望ましい組合せである。
【0063】
ER-HMS溶接金属において所要の機械的挙動をもたらすために、微細構造は、ベースメタル侵食耐性HMSの微細構造と同様であるべきである。一実施形態において、マンガンレベルは、溶接金属およびベースメタルの両方において同様である。マンガンは、高マンガン鋼の主要な元素であり、それは、冷却および変形中にオーステナイト構造を安定させるのに重要である。さらに、マンガンは、ケイ素と同様に脱酸素化し(deoxidize)、固溶体強化によって溶接金属を強化する。さらに、マンガンは、好適な範囲にあるとき、加工硬化指数を増加させる。例えば、約9重量%以上のマンガンが、主に、溶接金属内のオーステナイト相を安定させるのに必要とされることが分かった。約30重量%超のマンガンが、溶接金属内の溶接金属靱性を低下させることがさらに分かった。したがって、マンガンは、本開示の全溶接金属またはメタルコアードワイヤのコアの約9重量%~約30重量%であり得る。特定の実施形態において、マンガンは、全溶接金属またはメタルコアードワイヤのコアの約12重量%~約20重量%で存在する。ある実施形態において、溶接金属またはメタルコアードワイヤのコアは、約9重量%~約28重量%、約9重量%~約26重量%、約9重量%~約24重量%、約9重量%~約22重量%、約9重量%~約20重量%、約9重量%~約18重量%、約9重量%~約16重量%、約9重量%~約14重量%、約9重量%~約12重量%、約10重量%~約30重量%、約10重量%~約28重量%、約10重量%~約26重量%、約10重量%~約24重量%、約10重量%~約22重量%、約10重量%~約20重量%、約10重量%~約18重量%、約10重量%~約16重量%、約10重量%~約14重量%、約10重量%~約12重量%、約12重量%~約30重量%、約12重量%~約28重量%、約12重量%~約26重量%、約12重量%~約24重量%、約12重量%~約22重量%、約12重量%~約20重量%、約12重量%~約18重量%、約12重量%~約16重量%、約12重量%~約14重量%、約14重量%~約30重量%、約14重量%~約28重量%、約14重量%~約26重量%、約14重量%~約24重量%、約14重量%~約22重量%、約14重量%~約20重量%、約14重量%~約18重量%、約14重量%~約16重量%、約16重量%~約30重量%、約1重量%~約28重量%、約16重量%~約26重量%、約16重量%~約24重量%、約16重量%~約22重量%、約16重量%~約20重量%、約16重量%~約18重量%、約18重量%~約30重量%、約18重量%~約28重量%、約18重量%~約26重量%、約18重量%~約24重量%、約18重量%~約22重量%、約18重量%~約20重量%、約20重量%~約30重量%、約20重量%~約28重量%、約20重量%~約26重量%、約20重量%~約24重量%、約20重量%~約22重量%、約22重量%~約30重量%、約22重量%~約28重量%、約22重量%~約26重量%、約22重量%~約24重量%、約24重量%~約30重量%、約24重量%~約28重量%、約24重量%~約26重量%、約26重量%~約30重量%、約26重量%~約28重量%、または約28重量%~約30重量%の範囲のマンガンを含む。特定の実施形態において、溶接金属またはメタルコアードワイヤのコアは、約9重量%、約10重量%、約11重量%、約12重量%、約13重量%、約14重量%、約15重量%、約16重量%、約17重量%、約18重量%、約19重量%、約20重量%、約21重量%、約22重量%、約23重量%、約24重量%、約25重量%、約26重量%、約27重量%、約28重量%、約29重量%、または約30重量%のマンガンを含む。
【0064】
炭素は、有効なオーステナイト安定剤であり、オーステナイト相への高い溶解度を有する。したがって、炭素合金化を用いて、溶融合金を冷却する際にオーステナイト相を安定させることができる。炭素はまた、適切な量で加えられる場合、固溶体固化によって母相を強化し、アーク安定性および溶接金属の靱性に影響を与える。本開示の溶接材料は、全溶接金属またはメタルコアードワイヤのコアの約0.3重量%~約1.2重量%を占め得る。メタルコアードワイヤ中の炭素が、0.3重量%未満である場合、溶接金属は、十分な強度および侵食耐性を有さず、炭素が、1.2重量%を超える場合、靱性は低下し、溶接金属/シームは、より高い高温割れ傾向を有することが分かった。特定の実施形態において、炭素は、約0.45重量%~約0.7重量%の範囲である。ある実施形態において、溶接金属またはメタルコアードワイヤのコアは、約0.3重量%~約1.0重量%、約0.3重量%~約0.8重量%、約0.3重量%~約0.6重量%、約0.4重量%~約1.2重量%、約0.4重量%~約1.0重量%、約0.4重量%~約0.8重量%、約0.4重量%~約0.6重量%、約0.6重量%~約1.2重量%、約0.6重量%~約1.0重量%、約0.6重量%~約0.8重量%、約0.8重量%~約1.2重量%、約0.8重量%~約1.0重量%、または約1.0重量%~約1.2重量%の範囲の炭素を含む。特定の実施形態において、溶接金属またはメタルコアードワイヤのコアは、約0.3重量%、約0.4重量%、約0.5重量%、約0.6重量%、約0.7重量%、約0.8重量%、約0.9重量%、約1.0重量%、約1.1重量%、または約1.2重量%の炭素を含む。
【0065】
ケイ素の添加は、α’-マルテンサイト変態の維持に加えて、いくらかの固溶体強化を提供する一方、周囲温度で変形させるとε-マルテンサイト形態を促進する。ケイ素はまた、フェライト安定剤および脱酸剤である。ケイ素は、溶接金属またはメタルコアードワイヤのコアの約0.1重量%~約3重量%で存在し得る。ケイ素の含量が、0.1重量%未満である場合、溶接金属は、十分な強度を有さないことが分かった。さらに、溶接金属脱酸の生成物として形成されるSiO2の不足により、スラグ粘度の不均衡が引き起こされ、溶接性能が損なわれる。さらに、ケイ素含量が、3重量%超である場合、靱性は低下する。特定の実施形態において、ケイ素は、約0.2重量%~約1.5重量%の範囲である。ある実施形態において、溶接金属またはメタルコアードワイヤのコアは、約0.1重量%~約2.8重量%、約0.1重量%~約2.6重量%、約0.1重量%~約2.4重量%、約0.1重量%~約2.2重量%、約0.1重量%~約2.0重量%、約0.1重量%~約1.8重量%、約0.1重量%~約1.6重量%、約0.1重量%~約1.4重量%、約0.1重量%~約1.2重量%、約0.1重量%~約1.0重量%、約0.1重量%~約0.8重量%、約0.1重量%~約0.6重量%、約0.1重量%~約0.4重量%、約0.3重量%~約3.0重量%、約0.3重量%~約2.8重量%、約0.3重量%~約2.6重量%、約0.3重量%~約2.4重量%、約0.3重量%~約2.2重量%、約0.3重量%~約2.0重量%、約0.3重量%~約1.8重量%、約0.3重量%~約1.6重量%、約0.3重量%~約1.4重量%、約0.3重量%~約1.2重量%、約0.3重量%~約1.0重量%、約0.3重量%~約0.8重量%、約0.3重量%~約0.6重量%、約0.5重量%~約3.0重量%、約0.5重量%~約2.8重量%、約0.5重量%~約2.6重量%、約0.5重量%~約2.4重量%、約0.5重量%~約2.2重量%、約0.5重量%~約2.0重量%、約0.5重量%~約1.8重量%、約0.5重量%~約1.6重量%、約0.5重量%~約1.4重量%、約0.5重量%~約1.2重量%、約0.5重量%~約1.0重量%、約0.5重量%~約0.8重量%、約0.7重量%~約3.0重量%、約0.7重量%~約2.8重量%、約0.7重量%~約2.6重量%、約0.7重量%~約2.4重量%、約0.7重量%~約2.2重量%、約0.7重量%~約2.0重量%、約0.7重量%~約1.8重量%、約0.7重量%~約1.6重量%、約0.7重量%~約1.4重量%、約0.7重量%~約1.2重量%、約0.7重量%~約1.0重量%、約0.9重量%~約3.0重量%、約0.9重量%~約2.8重量%、約0.9重量%~約2.6重量%、約0.9重量%~約2.4重量%、約0.9重量%~約2.2重量%、約0.9重量%~約2.0重量%、約0.9重量%~約1.8重量%、約0.9重量%~約1.6重量%、約0.9重量%~約1.4重量%、約0.9重量%~約1.2重量%、約1.0重量%~約3.0重量%、約1.0重量%~約2.8重量%、約1.0重量%~約2.6重量%、約1.0重量%~約2.4重量%、約1.0重量%~約2.2重量%、約1.0重量%~約2.0重量%、約1.0重量%~約1.8重量%、約1.0重量%~約1.6重量%、約1.0重量%~約1.4重量%、約1.0重量%~約1.2重量%、約1.2重量%~約3.0重量%、約1.2重量%~約2.8重量%、約1.2重量%~約2.6重量%、約1.2重量%~約2.4重量%、約1.2重量%~約2.2重量%、約1.2重量%~約2.0重量%、約12重量%~約1.8重量%、約1.2重量%~約1.6重量%、約1.2重量%~約1.4重量%、約1.4重量%~約3.0重量%、約1.4重量%~約2.8重量%、約1.4重量%~約2.6重量%、約1.4重量%~約2.4重量%、約1.4重量%~約2.2重量%、約1.4重量%~約2.0重量%、約1.4重量%~約1.8重量%、約1.4重量%~約1.6重量%、約1.6重量%~約3.0重量%、約1.6重量%~約2.8重量%、約1.6重量%~約2.6重量%、約1.6重量%~約2.4重量%、約1.6重量%~約2.2重量%、約1.6重量%~約2.0重量%、約1.6重量%~約1.8重量%、約1.8重量%~約3.0重量%、約1.8重量%~約2.8重量%、約1.8重量%~約2.6重量%、約1.8重量%~約2.4重量%、約1.8重量%~約2.2重量%、約1.8重量%~約2.0重量%、約2.0重量%~約3.0重量%、約2.0重量%~約2.8重量%、約2.0重量%~約2.6重量%、約2.0重量%~約2.4重量%、約2.0重量%~約2.2重量%、約2.2重量%~約3.0重量%、約2.2重量%~約2.8重量%、約2.2重量%~約2.6重量%、約2.2重量%~約2.4重量%、約2.4重量%~約3.0重量%、約2.4重量%~約2.8重量%、約2.6重量%~約2.8重量%、または約2.8重量%~約3.0重量%の範囲のケイ素を含む。特定の実施形態において、溶接金属またはメタルコアードワイヤのコアは、約0.1重量%、約0.2重量%、約0.3重量%、約0.4重量%、約0.5重量%、約0.6重量%、約0.7重量%、約0.8重量%、約0.9重量%、約1.0重量%、約1.1重量%、約1.2重量%、約1.3重量%、約1.4重量%、約1.5重量%、約1.6重量%、約1.7重量%、約1.8重量%、約1.9重量%、約2.0重量%、約2.1重量%、約2.2重量%、約2.3重量%、約2.4重量%、約2.5重量%、約2.6重量%、約2.7重量%、約2.8重量%、約2.9重量%、または約3.0重量%の炭素を含む。
【0066】
特定の実施形態において、溶接金属またはメタルコアードワイヤのコアは、クロム、ニッケル、モリブデン、タングステン、銅、ニオブ、バナジウム、チタン、タンタル、窒素、および/またはホウ素をさらに含み得る。以下にさらに詳細に記載される量は、溶接金属の強度、侵食・腐食耐性、および靱性をさらに強化する。
【0067】
クロムは、フェライト安定剤であり、それは、高マンガン鋼溶接金属に加えられる場合、冷却中にフェライト相の形成を促進し、耐腐食性を高める。クロムは、強力な炭化物形成剤であり、合金レベルおよび/または熱処理温度に応じて、M2CおよびM23C6などの炭化物の析出を促進する。さらに、クロムの添加は、典型的に、耐腐食性強化のために重要である。鉄-マンガン合金系へのクロムの添加により、熱膨張係数が減少される。しかしながら、過剰なクロムの添加は、粗粒粒界炭化物形成および靱性の低下につながり得る。クロムは、溶接金属またはメタルコアードワイヤのコアの約8.0重量%以下の量で存在し得る。特定の実施形態において、クロムは、溶接金属またはメタルコアードワイヤのコアの約2.0重量%~約6.0重量%である。特定の実施形態において、クロムは、約2.0重量%~約6.0重量%の範囲である。ある実施形態において、溶接金属またはメタルコアードワイヤのコアは、約0.0重量%~約8.0重量%、約0.0重量%~約7.5重量%、約0.0重量%~約7.0重量%、約0.0重量%~約6.5重量%、約0.0重量%~約6.0重量%、約0.0重量%~約5.5重量%、約0.0重量%~約5.0重量%、約0.0重量%~約4.5重量%、約0.0重量%~約4.0重量%、約0.0重量%~約3.5重量%、約0.0重量%~約3.0重量%、約0.0重量%~約2.5重量%、約0.0重量%~約2.0重量%、約0.0重量%~約1.5重量%、約0.0重量%~約1.0重量%、約0.5重量%~約8.0重量%、約0.5重量%~約7.5重量%、約0.5重量%~約7.0重量%、約0.5重量%~約6.5重量%、約0.5重量%~約6.0重量%、約0.5重量%~約5.5重量%、約0.5重量%~約5.0重量%、約0.5重量%~約4.5重量%、約0.5重量%~約4.0重量%、約0.5重量%~約3.5重量%、約0.5重量%~約3.0重量%、約0.5重量%~約2.5重量%、約0.5重量%~約2.0重量%、約0.5重量%~約1.5重量%、約0.5重量%~約1.0重量%、約1.0重量%~約8.0重量%、約1.0重量%~約7.5重量%、約1.0重量%~約7.0重量%、約1.0重量%~約6.5重量%、約1.0重量%~約6.0重量%、約1.0重量%~約5.5重量%、約1.0重量%~約5.0重量%、約1.0重量%~約4.5重量%、約1.0重量%~約4.0重量%、約1.0重量%~約3.5重量%、約1.0重量%~約3.0重量%、約1.0重量%~約2.5重量%、約1.0重量%~約2.0重量%、約1.0重量%~約1.5重量%、約1.5重量%~約8.0重量%、約1.5重量%~約7.5重量%、約1.5重量%~約7.0重量%、約1.5重量%~約6.5重量%、約1.5重量%~約6.0重量%、約1.5重量%~約5.5重量%、約1.5重量%~約5.0重量%、約1.5重量%~約4.5重量%、約1.5重量%~約4.0重量%、約1.5重量%~約3.5重量%、約1.5重量%~約3.0重量%、約1.5重量%~約2.5重量%、約1.5重量%~約2.0重量%、約2.0重量%~約8.0重量%、約2.0重量%~約7.5重量%、約2.0重量%~約7.0重量%、約2.0重量%~約6.5重量%、約2.0重量%~約6.0重量%、約2.0重量%~約5.5重量%、約2.0重量%~約5.0重量%、約2.0重量%~約4.5重量%、約2.0重量%~約4.0重量%、約2.0重量%~約3.5重量%、約2.0重量%~約3.0重量%、約2.0重量%~約2.5重量%、約2.5重量%~約8.0重量%、約2.5重量%~約7.5重量%、約2.5重量%~約7.0重量%、約2.5重量%~約6.5重量%、約2.5重量%~約6.0重量%、約2.5重量%~約5.5重量%、約2.5重量%~約5.0重量%、約2.5重量%~約4.5重量%、約2.5重量%~約4.0重量%、約2.5重量%~約3.5重量%、約2.5重量%~約3.0重量%、約3.0重量%~約8.0重量%、約3.0重量%~約7.5重量%、約3.0重量%~約7.0重量%、約3.0重量%~約6.5重量%、約3.0重量%~約6.0重量%、約3.0重量%~約5.5重量%、約3.0重量%~約5.0重量%、約3.0重量%~約4.5重量%、約3.0重量%~約4.0重量%、約3.0重量%~約3.5重量%、約3.5重量%~約8.0重量%、約3.5重量%~約7.5重量%、約3.5重量%~約7.0重量%、約3.5重量%~約6.5重量%、約3.5重量%~約6.0重量%、約3.5重量%~約5.5重量%、約3.5重量%~約5.0重量%、約3.5重量%~約4.5重量%、約3.5重量%~約4.0重量%、約4.0重量%~約8.0重量%、約4.0重量%~約7.5重量%、約4.0重量%~約7.0重量%、約4.0重量%~約6.5重量%、約4.0重量%~約6.0重量%、約4.0重量%~約5.5重量%、約4.0重量%~約5.0重量%、約4.0重量%~約4.5重量%、約4.5重量%~約8.0重量%、約4.5重量%~約7.5重量%、約4.5重量%~約7.0重量%、約4.5重量%~約6.5重量%、約4.5重量%~約6.0重量%、約4.5重量%~約5.5重量%、約4.5重量%~約5.0重量%、約5.0重量%~約8.0重量%、約5.0重量%~約7.5重量%、約5.0重量%~約7.0重量%、約5.0重量%~約6.5重量%、約5.0重量%~約6.0重量%、約5.0重量%~約5.5重量%、約5.5重量%~約8.0重量%、約5.5重量%~約7.5重量%、約5.5重量%~約7.0重量%、約5.5重量%~約6.5重量%、約5.5重量%~約6.0重量%、約6.0重量%~約8.0重量%、約6.0重量%~約7.5重量%、約6.0重量%~約7.0重量%、約6.0重量%~約6.5重量%、約6.5重量%~約8.0重量%、約6.5重量%~約7.5重量%、約6.5重量%~約7.0重量%、約7.0重量%~約8.0重量%、約7.0重量%~約7.5重量%、または約7.5重量%~約8.0重量%の範囲のクロムを含む。特定の実施形態において、溶接金属またはメタルコアードワイヤのコアは、約0.25重量%、約0.5重量%、約0.75重量%、約1.0重量%、約1.25重量%、約1.5重量%、約1.75重量%、約2.0重量%、約2.25重量%、約2.5重量%、約2.75重量%、約3.0重量%、約3.25重量%、約3.5重量%、約3.75重量%、約4.0重量%、約4.5重量%、約4.25重量%、約4.75重量%、約5.0重量%、約5.25重量%、約5.5重量%、約5.75重量%、約6.0重量%、約6.25重量%、約6.5重量%、約6.75重量%、約7.0重量%、約7.25重量%、約7.5重量%、約7.75重量%、または約8.0重量%の炭素を含む。
【0068】
ニッケルの添加は、さらなるオーステナイト安定性を提供することができ、固溶体強化によって溶接金属靱性を改善することができる。ニッケルはまた、溶接金属の耐腐食性および低温靱性を著しく高める。ニッケルは、溶接金属またはメタルコアードワイヤのコアの最大で6重量%で存在し得る。別の実施形態において、ニッケルは、最大で5重量%で存在する。特定の実施形態において、ニッケルは、約0.2重量%~約6重量%または約0.2重量%~約5重量%である。より高いレベルでのニッケルの添加は、強度を低下させ得る。特定の実施形態において、ニッケルは、約0.0重量%~約5.0重量%の範囲である。ある実施形態において、溶接金属またはメタルコアードワイヤのコアは、約0.0重量%~約6.0重量%、約0.0重量%~約5.5重量%、約0.0重量%~約5.0重量%、約0.0重量%~約4.5重量%、約0.0重量%~約4.0重量%、約0.0重量%~約3.5重量%、約0.0重量%~約3.0重量%、約0.0重量%~約2.5重量%、約0.0重量%~約2.0重量%、約0.0重量%~約1.5重量%、約0.0重量%~約1.0重量%、約0.5重量%~約6.0重量%、約0.5重量%~約5.5重量%、約0.5重量%~約5.0重量%、約0.5重量%~約4.5重量%、約0.5重量%~約4.0重量%、約0.5重量%~約3.5重量%、約0.5重量%~約3.0重量%、約0.5重量%~約2.5重量%、約0.5重量%~約2.0重量%、約0.5重量%~約1.5重量%、約0.5重量%~約1.0重量%、約1.0重量%~約6.0重量%、約1.0重量%~約5.5重量%、約1.0重量%~約5.0重量%、約1.0重量%~約4.5重量%、約1.0重量%~約4.0重量%、約1.0重量%~約3.5重量%、約1.0重量%~約3.0重量%、約1.0重量%~約2.5重量%、約1.0重量%~約2.0重量%、約1.0重量%~約1.5重量%、約1.5重量%~約6.0重量%、約1.5重量%~約5.5重量%、約1.5重量%~約5.0重量%、約1.5重量%~約4.5重量%、約1.5重量%~約4.0重量%、約1.5重量%~約3.5重量%、約1.5重量%~約3.0重量%、約1.5重量%~約2.5重量%、約1.5重量%~約2.0重量%、約2.0重量%~約6.0重量%、約2.0重量%~約5.5重量%、約2.0重量%~約5.0重量%、約2.0重量%~約4.5重量%、約2.0重量%~約4.0重量%、約2.0重量%~約3.5重量%、約2.0重量%~約3.0重量%、約2.0重量%~約2.5重量%、約2.5重量%~約6.0重量%、約2.5重量%~約5.5重量%、約2.5重量%~約5.0重量%、約2.5重量%~約4.5重量%、約2.5重量%~約4.0重量%、約2.5重量%~約3.5重量%、約2.5重量%~約3.0重量%、約3.0重量%~約6.0重量%、約3.0重量%~約5.5重量%、約3.0重量%~約5.0重量%、約3.0重量%~約4.5重量%、約3.0重量%~約4.0重量%、約3.0重量%~約3.5重量%、約3.5重量%~約6.0重量%、約3.5重量%~約5.5重量%、約3.5重量%~約5.0重量%、約3.5重量%~約4.5重量%、約3.5重量%~約4.0重量%、約4.0重量%~約6.0重量%、約4.0重量%~約5.5重量%、約4.0重量%~約5.0重量%、約4.0重量%~約4.5重量%、約4.5重量%~約6.0重量%、約4.5重量%~約5.5重量%、約4.5重量%~約5.0重量%、約5.0重量%~約6.0重量%、約5.0重量%~約5.5重量%、または約5.5重量%~約6.0重量%の範囲のニッケルを含む。特定の実施形態において、溶接金属またはメタルコアードワイヤのコアは、約0.25重量%、約0.5重量%、約0.75重量%、約1.0重量%、約1.25重量%、約1.5重量%、約1.75重量%、約2.0重量%、約2.25重量%、約2.5重量%、約2.75重量%、約3.0重量%、約3.25重量%、約3.5重量%、約3.75重量%、約4.0重量%、約4.5重量%、約4.25重量%、約4.75重量%、約5.0重量%、約5.25重量%、約5.5重量%、約5.75重量%、または約6.0重量%のニッケルを含む。
【0069】
モリブデン(Mo)およびタングステン(W)は、フェライト安定剤および安定した炭化物形成剤である。モリブデンおよびタングステンは、かなりの固溶体強化を提供することができ、溶質引き摺りによって凝固セル構造を微細化する。モリブデンは、溶接金属またはメタルコアードワイヤのコアの最大で6重量%で存在し得る。特定の実施形態において、モリブデンは、約0.5重量%~約3.0重量%である。別の実施形態において、モリブデンは、最大で5重量%で存在する。特定の実施形態において、モリブデンは、約0.2重量%~約6重量%または約0.2重量%~約5重量%である。より高いレベルでのモリブデンの添加は、強度を低下させ得る。特定の実施形態において、モリブデンは、約0.0重量%~約5.0重量%の範囲である。ある実施形態において、溶接金属またはメタルコアードワイヤのコアは、約0.0重量%~約5.5重量%、約0.0重量%~約5.0重量%、約0.0重量%~約4.5重量%、約0.0重量%~約4.0重量%、約0.0重量%~約3.5重量%、約0.0重量%~約3.0重量%、約0.0重量%~約2.5重量%、約0.0重量%~約2.0重量%、約0.0重量%~約1.5重量%、約0.0重量%~約1.0重量%、約0.5重量%~約6.0重量%、約0.5重量%~約5.5重量%、約0.5重量%~約5.0重量%、約0.5重量%~約4.5重量%、約0.5重量%~約4.0重量%、約0.5重量%~約3.5重量%、約0.5重量%~約3.0重量%、約0.5重量%~約2.5重量%、約0.5重量%~約2.0重量%、約0.5重量%~約1.5重量%、約0.5重量%~約1.0重量%、約1.0重量%~約6.0重量%、約1.0重量%~約5.5重量%、約1.0重量%~約5.0重量%、約1.0重量%~約4.5重量%、約1.0重量%~約4.0重量%、約1.0重量%~約3.5重量%、約1.0重量%~約3.0重量%、約1.0重量%~約2.5重量%、約1.0重量%~約2.0重量%、約1.0重量%~約1.5重量%、約1.5重量%~約6.0重量%、約1.5重量%~約5.5重量%、約1.5重量%~約5.0重量%、約1.5重量%~約4.5重量%、約1.5重量%~約4.0重量%、約1.5重量%~約3.5重量%、約1.5重量%~約3.0重量%、約1.5重量%~約2.5重量%、約1.5重量%~約2.0重量%、約2.0重量%~約6.0重量%、約2.0重量%~約5.5重量%、約2.0重量%~約5.0重量%、約2.0重量%~約4.5重量%、約2.0重量%~約4.0重量%、約2.0重量%~約3.5重量%、約2.0重量%~約3.0重量%、約2.0重量%~約2.5重量%、約2.5重量%~約6.0重量%、約2.5重量%~約5.5重量%、約2.5重量%~約5.0重量%、約2.5重量%~約4.5重量%、約2.5重量%~約4.0重量%、約2.5重量%~約3.5重量%、約2.5重量%~約3.0重量%、約3.0重量%~約6.0重量%、約3.0重量%~約5.5重量%、約3.0重量%~約5.0重量%、約3.0重量%~約4.5重量%、約3.0重量%~約4.0重量%、約3.0重量%~約3.5重量%、約3.5重量%~約6.0重量%、約3.5重量%~約5.5重量%、約3.5重量%~約5.0重量%、約3.5重量%~約4.5重量%、約3.5重量%~約4.0重量%、約4.0重量%~約6.0重量%、約4.0重量%~約5.5重量%、約4.0重量%~約5.0重量%、約4.0重量%~約4.5重量%、約4.5重量%~約6.0重量%、約4.5重量%~約5.5重量%、約4.5重量%~約5.0重量%、約5.0重量%~約6.0重量%、約5.0重量%~約5.5重量%、または約5.5重量%~約6.0重量%の範囲のモリブデンを含む。特定の実施形態において、溶接金属またはメタルコアードワイヤのコアは、約0.25重量%、約0.5重量%、約0.75重量%、約1.0重量%、約1.25重量%、約1.5重量%、約1.75重量%、約2.0重量%、約2.25重量%、約2.5重量%、約2.75重量%、約3.0重量%、約3.25重量%、約3.5重量%、約3.75重量%、約4.0重量%、約4.5重量%、約4.25重量%、約4.75重量%、約5.0重量%、約5.25重量%、約5.5重量%、約5.75重量%、または約6.0重量%のモリブデンを含む。
【0070】
タングステンは、溶接金属またはメタルコアードワイヤのコアの最大で5重量%で存在し得る。特定の実施形態において、タングステンは、約0.1重量%~約2.0重量%の量で存在する。ある実施形態において、溶接金属またはメタルコアードワイヤのコアは、約0.0重量%~約4.5重量%、約0.0重量%~約4.0重量%、約0.0重量%~約3.5重量%、約0.0重量%~約3.0重量%、約0.0重量%~約2.5重量%、約0.0重量%~約2.0重量%、約0.0重量%~約1.5重量%、約0.0重量%~約1.0重量%、約0.5重量%~約5.0重量%、約0.5重量%~約4.5重量%、約0.5重量%~約4.0重量%、約0.5重量%~約3.5重量%、約0.5重量%~約3.0重量%、約0.5重量%~約2.5重量%、約0.5重量%~約2.0重量%、約0.5重量%~約1.5重量%、約0.5重量%~約1.0重量%、約1.0重量%~約5.0重量%、約1.0重量%~約4.5重量%、約1.0重量%~約4.0重量%、約1.0重量%~約3.5重量%、約1.0重量%~約3.0重量%、約1.0重量%~約2.5重量%、約1.0重量%~約2.0重量%、約1.0重量%~約1.5重量%、約1.5重量%~約5.0重量%、約1.5重量%~約4.5重量%、約1.5重量%~約4.0重量%、約1.5重量%~約3.5重量%、約1.5重量%~約3.0重量%、約1.5重量%~約2.5重量%、約1.5重量%~約2.0重量%、約2.0重量%~約5.0重量%、約2.0重量%~約4.5重量%、約2.0重量%~約4.0重量%、約2.0重量%~約3.5重量%、約2.0重量%~約3.0重量%、約2.0重量%~約2.5重量%、約2.5重量%~約5.0重量%、約2.5重量%~約4.5重量%、約2.5重量%~約4.0重量%、約2.5重量%~約3.5重量%、約2.5重量%~約3.0重量%、約3.0重量%~約5.0重量%、約3.0重量%~約4.5重量%、約3.0重量%~約4.0重量%、約3.0重量%~約3.5重量%、約3.5重量%~約5.0重量%、約3.5重量%~約4.5重量%、約3.5重量%~約4.0重量%、約4.0重量%~約5.0重量%、約4.0重量%~約4.5重量%、約4.5重量%~約6.0重量%、約4.5重量%~約5.5重量%、または約4.5重量%~約5.0重量%の範囲のタングステンを含む。特定の実施形態において、溶接金属またはメタルコアードワイヤのコアは、約0.25重量%、約0.5重量%、約0.75重量%、約1.0重量%、約1.25重量%、約1.5重量%、約1.75重量%、約2.0重量%、約2.25重量%、約2.5重量%、約2.75重量%、約3.0重量%、約3.25重量%、約3.5重量%、約3.75重量%、約4.0重量%、約4.5重量%、約4.25重量%、約4.75重量%、または約5.0重量%のタングステンを含む。
【0071】
銅は、固溶体固化によって溶接金属を強化するオーステナイト安定剤である。一実施形態において、銅は、溶接金属またはメタルコアードワイヤのコアの最大で約4重量%で存在し得る。特定の実施形態において、銅は、約0.0重量%~約2.0重量%の範囲である。ある実施形態において、溶接金属またはメタルコアードワイヤのコアは、約0.0重量%~約4.0重量%、約0.0重量%~約3.5重量%、約0.0重量%~約3.0重量%、約0.0重量%~約2.5重量%、約0.0重量%~約2.0重量%、約0.0重量%~約1.5重量%、約0.0重量%~約1.0重量%、約0.5重量%~約4.0重量%、約0.5重量%~約3.5重量%、約0.5重量%~約3.0重量%、約0.5重量%~約2.5重量%、約0.5重量%~約2.0重量%、約0.5重量%~約1.5重量%、約0.5重量%~約1.0重量%、約1.0重量%~約4.0重量%、約1.0重量%~約3.5重量%、約1.0重量%~約3.0重量%、約1.0重量%~約2.5重量%、約1.0重量%~約2.0重量%、約1.0重量%~約1.5重量%、約1.5重量%~約4.0重量%、約1.5重量%~約3.5重量%、約1.5重量%~約3.0重量%、約1.5重量%~約2.5重量%、約1.5重量%~約2.0重量%、約2.0重量%~約4.0重量%、約2.0重量%~約3.5重量%、約2.0重量%~約3.0重量%、約2.0重量%~約2.5重量%、約2.5重量%~約4.0重量%、約2.5重量%~約3.5重量%、約2.5重量%~約3.0重量%、約3.0重量%~約4.0重量%、約3.0重量%~約3.5重量%、または約3.5重量%~約4.0重量%の範囲の銅を含む。特定の実施形態において、溶接金属またはメタルコアードワイヤのコアは、約0.25重量%、約0.5重量%、約0.75重量%、約1.0重量%、約1.25重量%、約1.5重量%、約1.75重量%、約2.0重量%、約2.25重量%、約2.5重量%、約2.75重量%、約3.0重量%、約3.25重量%、約3.5重量%、約3.75重量%、または約4.0重量%の銅を含む。
【0072】
窒素は、固溶体強化によって溶接金属強度を高める強力なオーステナイト安定剤である。しかしながら、より多い量の窒素は、溶接金属ポロシティおよび靱性の低下を引き起こし得る。好適な窒素の添加は、溶接金属強度を損なわずに(without comprising)、溶接金属における炭素含量および凝固割れ傾向を低下させ得る。窒素の添加はまた、耐腐食性を強化し得る。窒素は、溶接金属またはメタルコアードワイヤのコアの最大で約0.4重量%で存在し得る。過剰な量は、粗い窒化物形成および溶接欠陥(例えば、ポロシティ)につながる。特定の実施形態において、溶接金属またはメタルコアードワイヤのコアは、約0.01重量%~約0.3重量%の窒素を含む。ある実施形態において、溶接金属またはメタルコアードワイヤのコアは、約0.0重量%~約0.4重量%、約0.0重量%~約0.3重量%、約0.0重量%~約0.2重量%、約0.1重量%~約0.4重量%、約0.1重量%~約0.3重量%、約0.1重量%~約0.2重量%、約0.2重量%~約0.4重量%、または約0.2重量%~約0.3重量%の範囲の窒素を含む。特定の実施形態において、溶接金属またはメタルコアードワイヤのコアは、約0.1重量%、約0.2重量%、約0.3重量%、または約0.4重量%の窒素を含む。
【0073】
ニオブ、バナジウム、タンタル、およびチタンは、強力な炭化物/窒化物形成剤であり、溶接物の強度を高めるための有効な元素である。タンタルが、加えられて、固溶体強化剤として働き得る。少量のチタンおよびニオブが、結晶粒微細化および析出硬化のために加えられて、溶接金属を強化し得る。ニオブ、バナジウム、タンタル、およびチタンはそれぞれ、独立して、溶接金属またはメタルコアードワイヤのコアの最大で約2重量%で存在し得る。すなわち、各元素は、最大で約2重量%で存在し得る。特定の実施形態において、ニオブ、バナジウム、タンタル、およびチタンの各々は、それぞれ個別に、かつ独立して、最大で約1.0重量%で存在し得る。ある実施形態において、溶接金属またはメタルコアードワイヤのコアは、約0.0重量%~約2.0重量%、約0.0重量%~約1.8重量%、約0.0重量%~約1.6重量%、約0.0重量%~約1.4重量%、約0.0重量%~約1.2重量%、約0.0重量%~約1.0重量%、約0.0重量%~約0.8重量%、約0.0重量%~約0.6重量%、約0.0重量%~約0.4重量%、約0.0重量%~約0.2重量%、約0.2重量%~約2.0重量%、約0.2重量%~約1.8重量%、約0.2重量%~約1.6重量%、約0.2重量%~約1.4重量%、約0.2重量%~約1.2重量%、約0.2重量%~約1.0重量%、約0.2重量%~約0.8重量%、約0.2重量%~約0.6重量%、約0.2重量%~約0.4重量%、約0.4重量%~約2.0重量%、約0.4重量%~約1.8重量%、約0.4重量%~約1.6重量%、約0.4重量%~約1.4重量%、約0.4重量%~約1.2重量%、約0.4重量%~約1.0重量%、約0.4重量%~約0.8重量%、約0.4重量%~約0.6重量%、約0.6重量%~約2.0重量%、約0.6重量%~約1.8重量%、約0.6重量%~約1.6重量%、約0.6重量%~約1.4重量%、約0.6重量%~約1.2重量%、約0.6重量%~約1.0重量%、約0.6重量%~約0.8重量%、約0.8重量%~約2.0重量%、約0.8重量%~約1.8重量%、約0.8重量%~約1.6重量%、約0.8重量%~約1.4重量%、約0.8重量%~約1.2重量%、約0.8重量%~約1.0重量%、約1.0重量%~約2.0重量%、約1.0重量%~約1.8重量%、約1.0重量%~約1.6重量%、約1.0重量%~約1.4重量%、約1.0重量%~約1.2重量%、約1.2重量%~約2.0重量%、約1.2重量%~約1.8重量%、約1.2重量%~約1.6重量%、約1.2重量%~約1.4重量%、約1.4重量%~約2.0重量%、約1.4重量%~約1.8重量%、約1.4重量%~約1.6重量%、約1.6重量%~約2.0重量%、約1.6重量%~約1.8重量%、または約1.8重量%~約2.0重量%の範囲で、ニオブ、バナジウム、タンタル、および/またはチタンを個別に含む(および独立して選択される)。特定の実施形態において、溶接金属またはメタルコアードワイヤのコアは、約0.1重量%、約0.2重量%、約0.3重量%、約0.4重量%、約0.5重量%、約0.6重量%、約0.7重量%、約0.8重量%、約0.9重量%、約1.0重量%、約1.1重量%、約1.2重量%、約1.3重量%、約1.4重量%、約1.5重量%、約1.6重量%、約1.7重量%、約1.8重量%、約1.9重量%、または約2.0重量%のニオブ、バナジウム、タンタル、および/またはチタンを個別に含む(および独立して選択される)。
【0074】
硫黄およびリンは、不純物であり、意図的に加えられない。これらの元素は、溶接消耗品中のそれらの量を制限することによって制御される。硫黄およびリンの量は、溶接凝固割れを回避するために制御されなければならない。したがって、一実施形態において、硫黄は、溶接金属またはメタルコアードワイヤのコアの約0.3重量%未満である。硫黄は、約0.01重量%未満であり得る。別の実施形態において、リンは、溶接金属またはメタルコアードワイヤのコアの約0.3重量%未満である。リンは、約0.02重量%未満であり得る。特定の実施形態において、リンは、約0.01重量%未満である。
【0075】
ある実施形態において、溶接金属またはメタルコアードワイヤのコアは、約0.0重量%~約1.0重量%の範囲のホウ素を含む。特定の実施形態において、ホウ素は、約0.01重量%~約0.4重量%の範囲である。ある実施形態において、ホウ素は、約0.0重量%~約1.0重量%、約0.0重量%~約0.8重量%、約0.0重量%~約0.6重量%、約0.0重量%~約0.4重量%、約0.0重量%~約0.2重量%、約0.05重量%~約1.0重量%、約0.05重量%~約0.8重量%、約0.05重量%~約0.6重量%、約0.5重量%~約0.4重量%、約0.5重量%~約0.2重量%、約0.1重量%~約1.0重量%、約0.1重量%~約0.8重量%、約0.1重量%~約0.6重量%、約0.1重量%~約0.4重量%、約0.1重量%~約0.2重量%、約0.2重量%~約1.0重量%、約0.2重量%~約0.8重量%、約0.2重量%~約0.6重量%、約0.2重量%~約0.4重量%、約0.4重量%~約1.0重量%、約0.4重量%~約0.8重量%、約0.4重量%~約0.6重量%、約0.6重量%~約1.0重量%、約0.6重量%~約0.8重量%、または約0.8重量%~約1.0重量%の範囲で、溶接金属またはメタルコアードワイヤのコア中に存在する。特定の実施形態において、ホウ素は、約0.01重量%、約0.05重量%、約0.1重量%、約0.2重量%、約0.3重量%、約0.4重量%、約0.5重量%、約0.6重量%、約0.7重量%、約0.8重量%、約0.9重量%、または約1.0重量%で存在する。
【0076】
特定の実施形態において、溶接金属は、主に、炭化物、窒化物、炭窒化物、およびそれらの組合せの微細分散粒子少量相を有するオーステナイト相である。溶接金属の炭素および窒素含量は、冷間変形なしで成膜直後の条件で、約60ksi~約130ksiの範囲の降伏強度レベルの範囲を提供するように選択され得る。特定の実施形態において、冷間変形なしで成膜直後の条件での溶接金属の降伏強度レベルは、約60ksi~約120ksi、約60ksi~約110ksi、約60ksi~約100ksi、約60ksi~約90ksi、約60ksi~約80ksi、約60ksi~約70ksi、約70ksi~約130ksi、約70ksi~約120ksi、約70ksi~約110ksi、約70ksi~約100ksi、約70ksi~約90ksi、約70ksi~約80ksi、約80ksi~約130ksi、約80ksi~約120ksi、約80ksi~約110ksi、約80ksi~約100ksi、約80ksi~約90ksi、約90ksi~約130ksi、約90ksi~約120ksi、約90ksi~約110ksi、約90ksi~約100ksi、約100ksi~約130ksi、約100ksi~約120ksi、約100ksi~約110ksi、約110ksi~約130ksi、約110ksi~約120ksi、または約120ksi~約130ksiの範囲である。特定の実施形態において、冷間変形なしで成膜直後の条件での溶接金属の降伏強度レベルは、約60ksi、約65ksi、約70ksi、約75ksi、約80ski、約85ksi、約90ksi、約95ksi、約100ksi、約105ksi、約110ksi、約115ksi、約120ksi、約125ksi、または約130ksiである。
【0077】
さらに、析出硬化によって強度を強化するために高温炭化物(例えば、TiC)を形成するための、チタン、タングステン、およびタンタルなどの強力な炭化物/窒化物形成剤の合金化の増加は、溶接物の凝固の際の液相における炭素レベルを効果的に低下させ、これは、高温割れ感受性の低下をもたらし、粒界における粗M2CおよびM23C6炭化物析出を遅らせる。一実施形態において、本開示の溶接金属は、主に、オーステナイトである。別の実施形態において、溶接金属は、低レベル(例えば、1体積%未満)の含有物(例えば、FeSおよび/またはMnS)を含む。特定の実施形態において、溶接金属は、低レベルの不純物(例えば、上述されるように硫黄およびリン)を含む。
【0078】
上述される微細構造特徴は、溶接金属化学および溶接パラメータを注意深く組み合わせることによって達成される。特に、積層欠陥エネルギー(SFE)は、合金化学の関数であり、SFEの値は、変形の際に高マンガン鋼において起こる変態誘起塑性(TRIP)および双晶誘起塑性(TWIP)機構のタイプに相当する。高マンガン鋼は、TWIPおよびマルテンサイトTRIP効果のため、速い加工硬化速度を有する。活性化は、合金のSFEの値によって引き起こされ、具体的な活性変形機構が、溶接金属の強度および侵食性能に影響を与える。塑性変形は、主に、低いSFE値(例えば、12mJ/m2未満)でのマルテンサイト変態によって、および中間のSFEでの双晶形成によって実現される。高いSFE(例えば、35mJ/m2超)において、可塑性および歪み硬化は、転位滑りのみによって制御される。これに基づいて、SFE値は、引張強さおよび侵食性能の強力な予測因子と見なされるため、消耗品合金設計における重要なパラメータである。
【0079】
SFEは、合金化学および温度の関数である。固有の積層欠陥は、厚さが2面のε-マルテンサイトエンブリオ(embryo)として表され得る。SFEは、体積エネルギーおよび表面エネルギーの両方の寄与を含む。化学的性質および温度に対するSFEの依存性は、ε-マルテンサイトとオーステナイトとの体積エネルギーの差に主に起因する。相の体積自由エネルギーは、利用可能なデータベースから得ることができる。例えば、
図2は、各元素をFeMn
12C
0.6に加えたときの予測SFEを示す。様々な合金添加の寄与は異なり、炭素が最も強力な効果を有し、マンガンが最も小さい効果を有する。しかしながら、複数の合金元素の相互作用が考慮される場合、化学的性質に対するSFEの依存性は複雑であり、かつ単調でない効果である。
【0080】
変形機構は、溶接金属化学を適切に調整することによって制御され得る。例えば、本開示の実施例は、低い化学的性質(より少ない合金含量)が、変形の際のマルテンサイト相変態および双晶形成を促進する傾向にあることを示す。
【0081】
一実施形態において、溶接金属は、第2相粒子によって強化される。すなわち、一実施形態において、溶接金属は、析出硬化を起こす。例えば、本開示の溶接金属は、炭化物、窒化物、ホウ化物、および/または酸化物を含み得る。析出硬化の第2相粒子は、溶接金属の磨耗/侵食耐性をさらに改善する。第2相粒子が、変形の際の転位移動を阻止し、それによって、合金の強度を高めるものと考えられる。溶接金属中の炭化物の存在が、硬度を高めるが、サイズおよび空間分布が重要である。粗炭化物粒子は、鋼の機械的故障に大きな役割を果たしている。したがって、溶接金属は、微細な均一に分布した炭化物を含み得る。
【0082】
炭化物は、TRIPおよびTWIP効果を同様に強化する。炭化物相中の炭素濃度は、鋼の平均値よりはるかに高い。質量保存によって、炭化物は、その周囲の母相中の炭素を大いに枯渇させる。したがって、TRIPおよびTWIPは、炭素枯渇領域における主な変形機構であり得る。
【0083】
本開示の別の態様において、溶接金属の貴卑性(nobleness)は、ベースメタル、すなわち、溶接が適用される高マンガン鋼の貴卑性と同様である。これは、電解腐食による選択的溶接腐食を最小限に抑える。一実施形態において、ベースメタルおよび溶接金属の貴卑性は同じである。
【0084】
電解腐食は、組成物および微細構造の局所的差異の結果として、溶接物の異なる領域間で発生し得る。溶接金属(WM)および熱影響部(HAZ)が、母材金属(PM)に対して陽極である場合、金属損失の加速が、それらの領域において起こり得る。この形態の腐食の程度は、溶接金属によって悪化され、熱影響部は、母材パイプ材料の広い面積と比べて、狭い表面積を有する。溶接金属の組成物が、腐食環境中のガスまたは液体との境界において原子または分子に対して、母材ベース高Mn鋼より貴であるかまたはより低い反応性であるように、または母材ベース高Mn鋼のものと近くなるように選択される場合、それは、陰極のままであり、その腐食速度を低下させる。実際には、溶接金属の化学組成は、ベース高Mn鋼より貴な電位または同等の電位を溶接金属に提供するように調整され得る。溶接金属における貴合金含量(例えば、Cr)は、この目的ならびにその強度のため、ベースメタルのものより高いレベルでまたはベース高Mn鋼のものと同等のレベルで維持され得る。溶接金属への高いSiの添加は、PWC耐性を達成する上で有害であり得る。
【0085】
溶接性
本開示のさらなる態様は、例えば、高マンガン鋼を溶接するのに使用するためのメタルコアードワイヤに関する。新規なER-HMS溶接金属は、シーム溶接によって侵食耐性HMSスラリーパイプを製造するのに必要な溶接性を提供することができる。この溶接性は、溶接金属化学、溶接プロセスパラメータ、および溶接継ぎ手設計の適切な制御によって達成される。
【0086】
本開示のメタルコアワイヤは、鋼片の幅を曲げることによって、鋼、例えば、炭素鋼または高マンガン鋼のシースを加工する(work)ことによって製造され得る。上述されるような好適な化学的性質の金属粉末が、環状に曲げられた片に充填される。金属粉末が充填されたメタルコアードワイヤが、延伸および成形プロセス中の残留応力を軽減するために、一連の引き抜き型に通して所望の直径へと延伸され、その後アニーリングされ得る。管への金属粉末の均一な充填は、超音波振動を用いることによって達成され得る。次に、曲げられた片は、さらに曲げられて、メタルコアワイヤを形成する管を形成する。
【0087】
この管は、長手方向シームに沿って溶接され得る。溶接されたメタルコアードワイヤは、非溶接メタルコアードワイヤより少ない水分を放出する。非溶接メタルコアードワイヤは、蛇行する傾向があり、それによって、目標とする溶接点へのワイヤの供給を調節するのが難しくなる。別の実施形態において、メタルコアワイヤは、銅コーティングを含む。メタルコアードワイヤが溶接されている場合、銅コーティングは、より容易に適用される。
【0088】
さらに、ワイヤの表面における電解または化学銅コーティングは、先端からワイヤへの電流の均一な導電性を可能にし、したがってアーク安定性を向上させるため、好ましい。
【0089】
ER-HMS消耗品は、侵食耐性HMSベースメタルと同様のマンガン含量を有し、それにより、ベースメタル微細構造-オーステナイトと同様の溶接金属微細構造が生成される。この化学的適合性は、溶接金属/ベースメタルの境界におけるマルテンサイト相の形成を防ぐ。これにより、低温割れ/水素割れなどの潜在的な問題のリスクが取り除かれる。
【0090】
溶接プロセスパラメータ
本開示の別の態様は、高マンガン鋼を溶接する方法である。スラリーパイプライン建設の実用的な生産性で製造される確実なER-HMS溶接の適用は、例えば、サブマージアーク溶接を用いて達成され得る。
【0091】
本開示の高マンガン鋼を溶接する方法は、高マンガン鋼の少なくとも1つの片を供給する工程と;上述されるメタルコアードワイヤを供給する工程と;高マンガン鋼の少なくとも1つの片を、スラグおよびアーク安定剤に浸漬する工程と;メタルコアードワイヤに電流を印加して、高マンガン鋼の少なくとも1つの片上に液体合金鋼組成物を生成する工程とを含む。ある実施形態において、スラグは、約22~24%のAl2O3、約10~12%のSiO2、約6~8%のMnO、約22.5~24.5%のCAF2、約10.5~12.5%のMgO、約11.5~13.5%のCO2、約2.5~4.5%のCaO、約0.5~2.5%のNa2O、約1.0~3.0%のTiO2、約0.5~1.6%のZrO2、約0.3~1.3%のK2O、約0.2~1.2%のFe、約0.2~2.2%のMn、および/または約0.1~1.0%のSiを含む。他の実施形態において、スラグは、約23.1%のAl2O3、約11.2%のSiO2、約7.1%のMnO、約23.4%のCaF2、約11.6%のMgO、約12.4%のCO2、約3.5%のCaO、約1.3%のNa2O、約2.1%のTiO2、約1.1%のZrO2、約0.8%のK2O、約0.7%のFe、約1.2%のMn、約0.5%のSi、またはそれらの組合せ(のうち)の少なくとも1つを含む。
【0092】
特に、腐食/亀裂耐性が重要であるか/望ましい場合、本開示によって記載または包含されるER-HMS溶接金属は、多くのシステム/用途(例えば、油、ガス、および/または石油化学製品設備/システム、例えば、反応器、パイプ、ケーシング、パッカー(packer)、継ぎ手(coupling)、サッカーロッド、シール、ワイヤ、ケーブル、坑底組立体、管類、弁、コンプレッサ、ポンプ、軸受、押出機バレル、成形型用など)において有利に用いられ得る。
【0093】
上述される溶接金属化学、溶接プロセス、および溶接の実施の適切な適用は、HMSスラリーパイプを製造するのに必要な微細構造および機械的特性を有する好適なER-HMS溶接物を製造するであろう。
【0094】
本開示は、以下の実施例に関してさらに説明されるが;本開示の範囲は、実施例によって限定されない。以下の実施例は、改良された高マンガン鋼溶接(例えば、強化された腐食および/または亀裂耐性を有する改良された高Mn溶接組成物)を作製または製造するための改良されたシステムおよび方法を例示する。
【実施例】
【0095】
実施例1
19mm~20.6mmのパイプ壁厚を有する、直径24~30インチの高マンガン鋼パイプを、
図3に示されるように2つの異なるレベルの炭素含量を用いたサブマージアーク溶接によって作製した。シーム溶接を、以下の溶接条件:530~630Aの電流および27~31Vの電圧、510~650mm/分の溶接速度および13~23kJ/cmの入熱で行った。より高い炭素含量を用いたシーム溶接は、より低い炭素含量を有する溶接金属より増加した降伏強さおよび極限引張強さを示す。
【0096】
実施例2
厚さ19mmの高マンガン鋼板を、表1に示されるように多様な溶接金属化学の6種の溶接金属を用いて溶接した。各溶接金属の耐磨損性を、ASTM G65にしたがって回転ゴム車輪試験によって評価した。より高い炭素含量ならびにCr、Mo、およびWの強化された合金を有する溶接金属(SL-1~SL-5)は、
図4に示されるように、より低い炭素含量溶接金属(SL-6)およびAPI X70炭素鋼のものと比較して、改良された耐摩耗性を示す。
【0097】
【0098】
実施例3
19mm~20.6mmのパイプ壁厚を有する、直径24~30インチの高マンガン鋼パイプを、表2に示されるように内径パス(ID pass)と外径パス(OD pass)との間で2つの異なるレベルのクロム合金含量を用いたサブマージアーク溶接によって作製した。シーム溶接パイプからカットしたシーム溶接試験片を、45℃の温度、1500ppmのNaCl、pH=8、および8ppmの溶解酸素のオイルサンドスラリーパイプ環境を模擬した水溶液に浸漬した。
図5に示されるように、外径パスビーズのものより高いCr含量を有する内径パス溶接ビーズは、より少ない腐食規模および選択的溶接腐食に対するより良好な耐性を示す。
【0099】
【0100】
特定の実施形態
一態様によれば、本開示は、溶接組成物(又はウェルディング組成物(welding composition))を提供し、当該溶接組成物は、
0.3重量%~1.2重量%の範囲の炭素、
0.1重量%~3.0重量%の範囲のケイ素(b)、
9.0重量%~30重量%の範囲のマンガン、
8重量%以下の量のクロム、
6重量%以下の量のニッケル、
6重量%以下の量のモリブデン、
5重量%以下の量のタングステン、
4重量%以下の量の銅、
2重量%以下の量のニオブ、
2重量%以下の量のバナジウム、
2重量%以下の量のチタン、
0.4重量%以下の量の窒素、
1重量%以下の量のホウ素、
以下の(i)、(ii)または(iii)の少なくとも1つ
(i)0.3重量%以下の量の硫黄、
(ii)0.03重量%以下の量のリン、または
(iii)それらの組合せ
を含み、
残余(又は残余物又はバランス(balance))は、鉄である。
【0101】
本明細書中に記載される任意の態様または実施形態において、
クロムは、2~6重量%の範囲であり、
ニッケルは、0~5重量%の範囲であり、
モリブデンは、0.5~3重量%の範囲であり、
タングステンは、0.1~2重量%の範囲であり、
銅は、2重量%未満の量であり、
ニオブは、1重量%未満の量であり、
バナジウムは、1重量%未満の量であり、
チタンは、1重量%未満の量であり、
窒素は、0.01~0.3重量%の範囲であり、および/または
ホウ素は、0.01~0.4重量%の範囲である。
【0102】
本明細書中に記載される任意の態様または実施形態において、
炭素は、0.45~0.7重量%の範囲であり、
ケイ素は、0.2~1.5重量%の範囲であり、および/または
マンガンは、12~20重量%の範囲である。
【0103】
さらなる態様によれば、本開示は、サブマージアーク溶接(又はサブマージドアークウェルディング(submerged arc welding))のためのメタルコアードワイヤ(又はメタルコアのワイヤ(metal cored wire))であって、当該メタルコアードワイヤは、以下の粉末(又はパウダー(powders))を含むコア(又は芯又は核(core))とともに、鋼シース(又は鋼鞘又はスチールシース(steel sheath))を含む:
0.3重量%~1.2重量%の範囲の炭素、
0.1重量%~3.0重量%の範囲のケイ素、
9.0重量%~30重量%の範囲のマンガン、
8重量%未満の量のクロム、
6重量%未満の量のニッケル、
6重量%未満の量のモリブデン、
5重量%未満の量のタングステン、
4重量%未満の量の銅、
2重量%未満の量のニオブ、
2重量%未満の量のバナジウム、
2重量%未満の量のチタン、
0.4重量%未満の量の窒素、
1重量%未満の量のホウ素
以下の(i)、(ii)または(iii)の少なくとも1つ
(i) 硫黄は、0.3重量パーセント未満であり、
(ii) リンは、0.03重量パーセント未満であり、または
(iii)それらの組合せ
残余(又は残余物又はバランス(balance))は、鉄である。
【0104】
本明細書中に記載される任意の態様または実施形態において、鋼(又はスチール)は、炭素鋼(又はカーボンスチール)または高マンガン鋼(又はハイマンガンスチール)のいずれかである。
【0105】
本明細書中に記載される任意の態様または実施形態において、鋼シースは、溶接される(又は溶接された)長手方向シーム(又は長手軸方向シーム)(longitudinal seam)を有する。
【0106】
本明細書中に記載される任意の態様または実施形態において、鋼シースの表面は、銅で被覆されている(又は被覆される)。
【0107】
別の態様によれば、本開示は、高マンガン鋼(又はハイマンガンスチール)を溶接(又はウェルディング)する方法を提供し、当該方法は、
高マンガン鋼の少なくとも1つの片(又はピース)を供給すること(又は工程又はステップ)、
本開示のメタルコアードワイヤ(又はメタルコアのワイヤ)を供給すること(又は工程又はステップ)、
高マンガン鋼の少なくとも1つの片(又はピース)を、スラグ(slag)およびアーク安定剤(又はアークスタビライザ(arc stabilizer))に浸漬すること(又は工程又はステップ)、および
メタルコアードワイヤに電流を印加して、高マンガン鋼の少なくとも1つの片(又はピース)に液体合金鋼組成物(又はリキッドアロイスチール組成物(liquid alloy steel composition))を生成すること(又は工程又はステップ)
含む。
【0108】
本明細書中に記載される任意の態様または実施形態において、スラグは、
22~24%のAl2O3、
10~12%のSiO2、
6~8%のMnO、
22.5~24.5%のCAF2、
10.5~12.5%のMgO、
11.5~13.5%のCO2、
2.5~4.5%のCaO、
0.5~2.5%のNa2O、
1.0~3.0%のTiO2、
0.5~1.6%のZrO2、
0.3~1.3%のK2O、
0.2~1.2%のFe、
0.2~2.2%のMn、および/または
0.1~1.0%のSi
を含む。
【0109】
本明細書中に記載される任意の態様または実施形態において、高マンガン鋼(又はハイマンガンスチール)の少なくとも1つの片(又はピース)が、高マンガン鋼の少なくとも2つの片(又はピース)であり、メタルコアードワイヤに電流を印加して、高マンガン鋼の少なくとも2つの片(又はピース)の間の接合部(又はジャンクション(junction))において、液体鋼組成物を生成させる。
【0110】
本明細書中に記載される任意の態様または実施形態において、当該方法は、高マンガン鋼の少なくとも2つの片(又はピース)を接合(又はジョイント(joining))する合金鋼組成物(又はアロイスチール組成物(alloy steel composition))を形成するために、上記液体合金鋼組成物を冷却すること(又は工程又はステップ)をさらに含む。
【0111】
本明細書中に記載される任意の態様または実施形態において、スラグおよびアーク安定剤は、TiO2、SiO2、ZrO2、Al2O3、Na2O、K2O、金属フッ化物またはそれらの組合せの少なくとも1つを含む。
【0112】
本明細書中に記載される任意の態様または実施形態において、金属フッ化物(又はメタルフルオリド(metal fluoride))は、CaF2、NaF2、MgF2、BaF2およびK2ZrF6からなる群から選択される。
【0113】
本明細書中に記載される任意の態様または実施形態において、印加される電流は、510~650mm/分の溶接速度(又はウェルディングスピード(welding speed))を達成する530~630Aの範囲内である。
【0114】
本明細書中に記載される任意の態様または実施形態において、スラグは、
23.1%のAl2O3、
11.2%のSiO2、
7.1%のMnO、
23.4%のCAF2、
11.6%のMgO、
12.4%のCO2、
3.5%のCaO、
1.3%のNa2O、
2.1%のTiO2、
1.1%のZrO2、
0.8%のK2O、
0.7%のFe、
1.2%のMn、および/または
0.5%のSi
を含む。
【0115】
本開示は、主に、油、ガスおよび/または石油化学工業/システム/用途のための部品に使用するための鋼組成物に関して説明されているが、このような説明は、本開示の目的のために用いられているに過ぎず、本開示を限定することは意図されていない。それとは反対に、開示される鋼組成物は、広範囲の用途、システム、操作および/または工業に使用することが可能であることが認識されるべきである。
【0116】
本開示のシステムおよび方法が、その例示的な実施形態を参照して説明されているが、本開示は、このような例示的な実施形態および/または実施に限定されない。むしろ、本明細書における本開示から当業者に容易に明らかであろうが、本開示のシステムおよび方法は、多くの実施および応用を受け入れることができる。本開示は、開示される実施形態のこのような変更、強化および/または変形を明示的に包含する。本開示の範囲から逸脱せずに、上記の構成に多くの変更を加えることができ、本開示の多くの広く異なる実施形態を行うことが可能であるため、図面および本明細書に含まれる全ての事柄は、例示的なものであると解釈されるべきであり、限定的な意味で解釈されるべきではないことが意図される。さらなる変更、変形、および置き換えが、上記の開示において意図される。したがって、添付の特許請求の範囲は、広くかつ本開示の範囲と整合するように解釈されるべきであることが理解される。