(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-02
(45)【発行日】2023-02-10
(54)【発明の名称】アーク検出システム、アーク検出方法、プログラム、及び分電盤
(51)【国際特許分類】
H02B 1/40 20060101AFI20230203BHJP
【FI】
H02B1/40 A
(21)【出願番号】P 2019100777
(22)【出願日】2019-05-29
【審査請求日】2022-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松田 啓史
(72)【発明者】
【氏名】塩川 明実
(72)【発明者】
【氏名】生島 剛
(72)【発明者】
【氏名】松田 瞳
(72)【発明者】
【氏名】澤田 知行
(72)【発明者】
【氏名】水野 洋二
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-186168(JP,A)
【文献】特開2008-220024(JP,A)
【文献】特開2015-211606(JP,A)
【文献】特開2018-207637(JP,A)
【文献】特開2018-088773(JP,A)
【文献】特開2001-045652(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02B 1/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1回路に流れる電流を検出する第1検出部と、
前記第1回路に電気的に接続される第2回路でのアーク故障の有無を検出する第2検出部を有するアーク検知ユニットと通信する通信部と、
前記第1検出部の検出結果と、前記通信部が前記アーク検知ユニットから受信する前記第2検出部の検出結果とに基づいて、前記第1回路と前記第2回路とを含む回路でのアーク故障の有無を検知するアーク検知部と、を備える、
アーク検出システム。
【請求項2】
前記アーク検知部は、前記第1回路及び前記第2回路のうちアーク故障が発生した回路を更に検知する、
請求項1に記載のアーク検出システム。
【請求項3】
前記アーク検知部は、前記アーク検知ユニットの前記第2検出部がアーク故障を検出していない第1状態では、前記第1検出部の検出結果と第1閾値との大小を比較することで前記第1回路でのアーク故障の有無を検知し、
前記アーク検知部は、前記アーク検知ユニットの前記第2検出部がアーク故障を検出した後の第2状態では、前記第1検出部の検出結果と第2閾値との大小を比較することで前記第1回路でのアーク故障の有無を検知しており、
前記第2閾値は、前記第1閾値よりも低い、
請求項1又は2に記載のアーク検出システム。
【請求項4】
前記通信部は、前記アーク検知部の検知結果を前記アーク検知ユニットに送信する、
請求項1~3のいずれか1項に記載のアーク検出システム。
【請求項5】
前記回路でアーク故障が発生していると前記アーク検知部が検知した場合に前記回路を遮断する第1回路用遮断部を更に備える、
請求項1~4のいずれか1項に記載のアーク検出システム。
【請求項6】
前記アーク検知部の検知結果に基づいて前記回路を遮断する第1回路用遮断部を更に備え、
前記アーク検知ユニットは、前記第2検出部が前記第2回路でのアーク故障を検出すると前記第2回路を遮断する第2回路用遮断部を有し、
前記第1回路は、前記第2回路と電源との間に電気的に接続されており、
前記第1回路用遮断部は、
前記アーク検知部が前記第1検出部の検出結果に基づいて前記第1回路でのアーク故障を検出した場合、前記第1回路を遮断し、
前記アーク検知ユニットの前記第2検出部が前記第2回路でのアーク故障を検出し、前記第2回路用遮断部が前記第2回路を遮断している場合、前記第1回路を遮断しない、
請求項
1~4のいずれか1項に記載のアーク検出システム。
【請求項7】
前記第1回路と前記第2回路とは共通の電力配線から分岐しており、
前記アーク検知部が前記第1検出部の検出結果に基づいて前記第1回路でのアーク故障を検出する場合、又は、前記アーク検知ユニットの前記第2検出部が前記第2回路でのアーク故障を検出している場合
、前記第1回路を遮断する
第1回路用遮断部を備える、
請求項
1~4のいずれか1項に記載のアーク検出システム。
【請求項8】
前記通信部は、外部システムから、前記回路でのアーク故障に関連する、電流以外の関連事象の情報を受信し、
前記アーク検知部は、前記通信部が受信する前記関連事象の情報に更に基づいて、アーク故障の有無を検知する、
請求項1~7のいずれか1項に記載のアーク検出システム。
【請求項9】
前記関連事象の情報は、前記回路が存在する環境での温度、臭い、音及び煙の少なくとも1つに関連する環境情報と、前記回路の設置場所で発生する災害に関連する災害情報との少なくとも一方を含む、
請求項8記載のアーク検出システム。
【請求項10】
アーク故障が発生していると前記アーク検知部が検知すると、アーク故障の発生を通知する通知情報を出力する出力部を更に備える、
請求項1~9のいずれか1項に記載のアーク検出システム。
【請求項11】
第1回路に流れる電流を検出する検出処理と、
前記第1回路に電気的に接続される第2回路でのアーク故障の有無を検出するアーク検知ユニットからアーク故障の検出結果を受信する受信処理と、
前記検出処理での検出結果と、前記受信処理で受信するアーク故障の検出結果とに基づいて、前記第1回路と前記第2回路とを含む回路でのアーク故障の有無を検知するアーク検知処理と、を含む、
アーク検出方法。
【請求項12】
請求項11に記載のアーク検出方法を、1以上のプロセッサに実行させるためのプログラム。
【請求項13】
請求項1~10のいずれか1項に記載されたアーク検出システムと、
前記アーク検出システムを収容するキャビネットと、を備える、
分電盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アーク検出システム、アーク検出方法、プログラム、及び分電盤に関する。より詳細には、本開示は、回路で発生するアーク故障を検出するアーク検出システム、アーク検出方法、プログラム、及び分電盤に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、電路(回路)に流れる異常電流を検知する異常電流検出部と、異常電流検出部の検知動作を受けて接点部を遮断動作させる開閉機構部とを備える回路遮断器を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、地震等の災害発生時には、断線や短絡等が発生しやすく、電路に異常電流が流れる可能性が高くなるので、異常電流(アーク故障)を確実に検出することが回路遮断器に要望される。
【0005】
本開示の目的は、アーク故障の発生を確実に検出可能なアーク検出システム、アーク検出方法、プログラム、及び分電盤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様のアーク検出システムは、第1検出部と、通信部と、アーク検知部と、を備える。前記第1検出部は、第1回路に流れる電流を検出する。前記通信部は、第2検出部を有するアーク検知ユニットと通信する。前記第2検出部は、前記第1回路に電気的に接続される第2回路でのアーク故障の有無を検出する。前記アーク検知部は、前記第1検出部の検出結果と、前記通信部が前記アーク検知ユニットから受信する前記第2検出部の検出結果とに基づいて、前記第1回路と前記第2回路とを含む回路でのアーク故障の有無を検知する。
【0007】
本開示の一態様のアーク検出方法は、検出処理と、受信処理と、アーク検知処理と、を含む。前記検出処理では、第1回路に流れる電流を検出する。前記受信処理では、前記第1回路に電気的に接続される第2回路でのアーク故障の有無を検出するアーク検知ユニットからアーク故障の検出結果を受信する。前記アーク検知処理では、前記検出処理での検出結果と、前記受信処理で受信するアーク故障の検出結果とに基づいて、前記第1回路と前記第2回路とを含む回路でのアーク故障の有無を検知する。
【0008】
本開示の一態様のプログラムは、前記アーク検出方法を、1以上のプロセッサに実行させるためのプログラムである。
【0009】
本開示の一態様の分電盤は、前記アーク検出システムと、前記アーク検出システムを収容するキャビネットと、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、アーク故障の発生を確実に検出可能なアーク検出システム、アーク検出方法、プログラム、及び分電盤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係るアーク検出システムが用いられる分電盤の概略構成を示す説明図である。
【
図2】
図2は、同上の分電盤において蓋体及びカバーが外された状態を正面から見た説明図である。
【
図3】
図3Aは、パラレルアークの発生原理の説明図である。
図3Bは、シリーズアークの発生原理の説明図である。
【
図4】
図4Aは、パラレルアークの発生時において配線を流れる電流の波形の一例を示す波形図である。
図4Bは、シリーズアークの発生時において配線を流れる電流の波形の一例を示す波形図である。
【
図5】
図5は、同上のアーク検出システムの動作を説明するフローチャートである。
【
図6】
図6は、変形例1に係るアーク検出システムが用いられる分電盤の一部の配電路を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施形態)
(1)概要
本開示のアーク検出システム100は、
図1に示すように、分電盤1に接続されている回路(第1回路C1及び第2回路C2を少なくとも含む回路C100)で発生するアーク故障を検出するために用いられる。
【0013】
アーク検出システム100は、第1検出部31と、通信部32と、アーク検知部33とを備える。第1検出部31は、第1回路C1に流れる電流を検出する。通信部32は、第2検出部41を有するアーク検知ユニット(本実施形態では例えば分岐ブレーカ4等)と通信する。第2検出部41は、第1回路C1に電気的に接続される第2回路C2でのアーク故障の有無を検出する。アーク検知部33は、第1検出部31の検出結果と、通信部32がアーク検知ユニットから受信する第2検出部41の検出結果とに基づいて、第1回路C1と第2回路C2とを含む回路C100でのアーク故障の有無を検知する。
【0014】
本開示では、第1検出部31、通信部32、及びアーク検知部33の各機能は、分電盤1に収容される主幹ブレーカ3(後述する)が有している。また、第2検出部41はアーク検知ユニットである分岐ブレーカ4に収容されている。
【0015】
本開示において、「回路」は、分電盤1に接続されている回路C100であり、第1回路C1と第2回路C2とを少なくとも含む。第1回路C1は、アーク検出システム100の第1検出部31が検出する対象の電流が流れる回路である。第2回路C2は、第1回路C1に電気的に接続される回路である。以下の実施形態では、第1回路C1が主幹ブレーカ3に電気的に接続される回路であり、第2回路C2が、第1回路C1に分岐ブレーカ4を介して電気的に接続される回路(いわゆる分岐回路)である場合を例に説明を行う。なお、第1回路C1は、主幹ブレーカ3の二次側端子に電気的に接続される分岐ブレーカ4、感震ブレーカ5、連系ブレーカ6、コンセント22、及び電気機器23,24を含み得る。第1回路C1は、連系ブレーカ6の二次側端子に電気的に接続される分散電源21を含み得る。また、第2回路C2は、分岐ブレーカ4の二次側端子に電気的に接続されるコンセント22若しくは電気機器24、又は分岐ブレーカ4の二次側端子に直接、電気的に接続される電気機器23を含み得る。以下では、主幹ブレーカ3、分岐ブレーカ4、感震ブレーカ5、及び連系ブレーカ6を特に区別しない場合、「開閉器2」という。
【0016】
以下の実施形態では、第1回路C1の下流側に複数の第2回路C2が電気的に接続されている。換言すれば、第1回路C1は、第2回路C2と電源20との間に電気的に接続されている。なお、第1回路C1と第2回路C2とは電気的に接続されていればよく、第2回路C2が第1回路C1の下流側に接続されていることは必須ではない。例えば、「(3.1)変形例1」において説明するように、第1回路C1と第2回路C2とは共通の電力配線から分岐した分岐回路でもよい。
【0017】
本開示でいう「アーク故障」は、回路C100に含まれる配線C11における絶縁劣化又は半断線等の配線異常によって発生し得る。本開示でいう「半断線」は、断線しかかっている状態を意味し、具体的には、配線C11がより線であれば、より線を構成する複数本の素線のうちの一部の素線が断線した状態である。アーク故障は、一例として、配線C11が一対の電線で構成される場合に、一対の電線間が短絡することでアーク(いわゆるパラレルアーク)が発生することを含み得る。また、アーク故障は、一例として、配線C11が一対の電線で構成される場合に、一対の電線のうちの一方が半断線することでアーク(いわゆるシリーズアーク)が発生することを含み得る。なお、パラレルアークによって配線C11に流れる電流の大きさは数十~数百A程度であるのに対して、シリーズアークによって配線C11に流れる電流の大きさは10~20A程度である。
【0018】
アーク検知ユニット(例えば分岐ブレーカ4等)は、第1回路C1に電気的に接続される第2回路C2でのアーク故障の有無を検出する第2検出部41を備えている。パラレルアークでは数十~数百A程度の大電流が流れるため、第2検出部41は、第2回路C2に流れる電流の電流値に基づいてパラレルアークの発生を検出できる。また、シリーズアークの発生時には、負荷に供給される電流に対して、シリーズアークに特有の高周波成分が重畳された電流が流れるので、第2検出部41は、第2回路C2に流れる電流の波形又は高周波成分に基づいてシリーズアークの発生を検出できる。したがって、第2検出部41は、第2回路C2に流れる電流の電流値若しくは波形、又は、第2回路C2に流れる電流の高周波成分等に基づいて、第2回路C2でのアーク故障の有無を検出できる。
【0019】
アーク検出システム100のアーク検知部33は、第1検出部31の検出結果と、通信部32がアーク検知ユニットから受信する第2検出部41の検出結果とに基づいて、第1回路C1と第2回路C2とを含む回路でのアーク故障の有無を検知する。つまり、アーク検知部33は、第1回路C1の電流の検出結果だけではなく、アーク検知ユニットの第2検出部41によって検出される第2回路C2でのアーク故障の有無に基づいて、第1回路C1と第2回路C2とを含む回路C100でのアーク故障の有無を検知する。したがって、本実施形態によれば、アーク故障の発生を確実に検出可能なアーク検出システム100を提供することができる。
【0020】
(2)詳細
以下、本実施形態のアーク検出システム100及びアーク検出システム100を備える分電盤1について
図1及び
図2を用いて詳細に説明する。
【0021】
分電盤1の分電盤用キャビネット10(
図2参照)は、例えば、戸建て住宅又は集合住宅の住戸等の施設500に設置されて使用される。なお、分電盤1が設置される施設500は、戸建て住宅又は集合住宅の各住戸に限定されず、非住宅の建物(例えば、工場、商業用ビル、オフィスビル、病院、学校等)に設置されてもよい。
【0022】
以下の説明では、特に断りがない限り、
図2においてX軸方向を左右方向、Z軸方向を上下方向と規定する。また、X軸方向及びZ軸方向とそれぞれ直交する方向を前後方向と規定する。さらに、X軸方向の正の向きを右側、Z軸方向の正の向きを上側と規定する。ただし、これらの方向は一例であり、分電盤用キャビネット10及び分電盤1の使用時の方向を限定する趣旨ではない。また、図面中の各方向を示す矢印は説明のために表記しているに過ぎず、実体を伴わない。
【0023】
(2.1)構成
分電盤1及び分電盤1に収容されているアーク検出システム100の構成について説明する。分電盤1は、
図1及び
図2に示すように、アーク検出システム100と、アーク検出システム100を収容する分電盤用キャビネット10と、を備えている。分電盤用キャビネット10は、
図2に示すように、複数の開閉器2と、監視ユニット7と、電流計測装置8と、バックアップ電源9(
図1参照)と、を収容する。ここで、複数の開閉器2は、主幹ブレーカ3と、複数の分岐ブレーカ4と、感震ブレーカ5と、連系ブレーカ6と、を含んでいる。なお、分電盤用キャビネット10が、監視ユニット7、電流計測装置8、及びバックアップ電源9を収容することは必須ではなく、監視ユニット7、電流計測装置8及びバックアップ電源9の少なくとも一部が分電盤用キャビネット10外にあってもよい。
【0024】
分電盤用キャビネット10は、前面が開口した箱状のボディ11(
図2参照)と、ボディ11の開口を塞ぐカバーと、を備えている。
図2においては、カバーの図示を省略している。分電盤用キャビネット10は、例えば建物の壁110等、建物を構成する部材に取り付けられる。なお、分電盤用キャビネット10は、壁110(
図2参照)に設けられた取付孔に一部又は全体が埋め込まれた状態で取り付けられてもよい。分電盤用キャビネット10は、例えば、平均的な身長の子供では手が届かないような高さ位置であって、平均的な身長の大人であれば操作が可能なような高さ位置に設けられる。
【0025】
また、分電盤用キャビネット10は、分電盤用キャビネット10が壁110に取り付けられた状態でカバーの前面を覆う蓋体を更に備える。蓋体は、閉位置と開位置との間で移動可能な状態でカバーに取り付けられる。閉位置は、カバーの前面を覆う位置である。開位置は、カバーの前面の少なくとも一部を覆わない位置である。なお、蓋体は、ある方向からカバーを見た場合にカバーの前面の一部を覆っていればよく、本実施形態では、閉位置にある蓋体は、カバーを前方から見た場合にカバーの前面の略全体を覆っている。
【0026】
分電盤用キャビネット10の内部には、
図2に示すように、主幹ブレーカ3、複数の分岐ブレーカ4、感震ブレーカ5、連系ブレーカ6、監視ユニット7、及び電流計測装置8が収容されている。主幹ブレーカ3、複数の分岐ブレーカ4、感震ブレーカ5、連系ブレーカ6、監視ユニット7、及び電流計測装置8は、ボディ11に直接又は取付用の部品等を介して取り付けられている。
図2は、分電盤用キャビネット10の内部における主幹ブレーカ3、複数の分岐ブレーカ4、感震ブレーカ5、連系ブレーカ6、監視ユニット7、及び電流計測装置8の配置を示しているが、これらの配置は一例であり、適宜変更が可能である。また、
図2ではバックアップ電源9の図示を省略しているが、バックアップ電源9は分電盤用キャビネット10の内部の適宜の位置に配置されていればよい。
【0027】
主幹ブレーカ3は、分電盤用キャビネット10の内部において、左右方向の中央よりもやや左側の位置に配置されている。なお、分電盤用キャビネット10の内部での主幹ブレーカ3の位置は、例えば中央よりも右側等、他の位置であってもよい。本実施形態では、アーク検出システム100の構成要素は主幹ブレーカ3に含まれているので、以下では、主幹ブレーカ3の説明と併せて、アーク検出システム100について説明する。
【0028】
主幹ブレーカ3は、一次側端子と二次側端子との間に電気的に接続された接点35(
図1参照)を備える。主幹ブレーカ3は、接点35をオン又はオフにするための操作レバーを前面に備えている。また、主幹ブレーカ3は、第1検出部31と、通信部32と、アーク検知部33と、第1回路用遮断部(以下では単に「遮断部」と言う)34とを備えている。ここで、主幹ブレーカ3は、例えば、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、アーク検知部33等の機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されてもよく、電気通信回線を通じて提供されてもよく、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。
【0029】
第1検出部31は、主幹ブレーカ3の二次側端子に接続される第1回路C1に含まれる配線C11に流れる電流を検出する。例えば、第1検出部31は、カレントトランス等の電流センサを用いて、配線C11に流れる電流の電流値を検出する。
【0030】
通信部32は、アーク検知ユニットである分岐ブレーカ4の通信部42(後述する)と通信可能に構成されている。また、通信部32は、監視ユニット7の通信部72(後述する)とも通信可能に構成されている。通信部32は、有線通信又は無線通信の適宜の通信方式により、直接的、又はネットワーク若しくは中継器等を介して間接的に、分岐ブレーカ4及び監視ユニット7との間で信号を授受する。なお、本実施形態では、通信部32と分岐ブレーカ4及び監視ユニット7との間の通信方式は、例えば、920MHz帯の特定小電力無線局(免許を要しない無線局)、Wi-Fi(登録商標)、又はBluetooth(登録商標)等の通信規格に準拠した、電波を媒体とした無線通信である。ここで、主幹ブレーカ3、複数の分岐ブレーカ4、及び、監視ユニット7の各々には固有のアドレスが設定されている。つまり、通信部32は、主幹ブレーカ3、複数の分岐ブレーカ4、及び、監視ユニット7の各々に設定されたアドレス(メモリ等に記憶されたアドレス)を用いて、複数の分岐ブレーカ4及び監視ユニット7と通信を行う。なお、主幹ブレーカ3の通信部32と、複数の分岐ブレーカ4及び監視ユニット7とは、互いに双方向に通信可能である。つまり、複数の分岐ブレーカ4及び監視ユニット7から通信部32への信号の送信と、通信部32から複数の分岐ブレーカ4及び監視ユニット7への信号の送信との両方が可能である。通信部32は、アーク検知部33がアーク故障の発生を検知すると、アーク故障の発生を通知する通知情報を例えば監視ユニット7に送信する。監視ユニット7は、主幹ブレーカ3からアーク故障の発生を通知する通知情報を受信すると、分電盤1のユーザに対してアーク故障の発生を通知する通知動作を行う。すなわち、本実施形態では、通信部32が、アーク故障が発生しているとアーク検知部33が検知すると、アーク故障の発生を通知する通知情報を出力する出力部の機能を有している。なお、出力部である通信部32は、通知情報を監視ユニット7に送信し、監視ユニット7から直接的又は間接的に分電盤1のユーザに通知情報を出力させているが、アーク検出システム100が分電盤1のユーザに対して通知情報を直接的に出力してもよい。本開示でいう「ユーザ」は、分電盤1のユーザであって、例えば分電盤1の設置されている施設500が住宅であれば、ユーザは施設500の住人である。
【0031】
アーク検知部33は、第1検出部31の検出結果と、通信部32が分岐ブレーカ4から受信する第2検出部41の検出結果とに基づいて、第1回路C1と第2回路C2とを含む回路C100でのアーク故障の有無を検知する。アーク検知部33は、アーク短絡保護遮断器(AFCI:Arc Fault Circuit Interrupter)と同様の技術により、第1検出部31の検出結果に基づいて、第1回路C1に含まれる配線C11でアーク故障が発生しているか否かを検知することができる。アーク短絡保護遮断器では、電子回路を使用して、配線C11で発生するアーク故障に特有の電流特性及び電圧特性を認識し、配線C11で発生するアーク故障を検知できる。これと同様の原理により、アーク検知部33は、第1回路C1に含まれる配線C11でアーク故障が発生しているか否かを検知することが可能である。
【0032】
ここで、回路C100に含まれる配線C11で発生し得るアーク故障には、既に述べたように、パラレルアークと、シリーズアークと、の2種類が存在する。以下に、パラレルアーク及びシリーズアークについて、
図3A~
図4Bを参照して簡単に説明する。
図4A及び
図4Bは、横軸を時間、縦軸を電流として、それぞれパラレルアーク及びシリーズアークが生じた場合に配線C11を流れる電流波形の一例を示している。
【0033】
パラレルアークは、例えば
図3Aに示すように、配線C11を構成する一対の電線C10の導体が接触する等して短絡することにより発生し得る。
図3Aにおける点線の矢印I1は、パラレルアークの発生時において配線C11を流れる電流の経路を模式的に表している。パラレルアークの発生時において配線C11を流れる電流の大きさは、例えば、数十〔A〕~数百〔A〕である。パラレルアークは、例えば、施設500にある器物(一例として家具等)の端縁に配線C11が引っ掛かることで被覆C12が損傷したり、ステップル等の金属製の部材で配線C11を挟み込んだりすることで生じ得る。また、パラレルアークは、例えば配線C11に過電流が流れて被覆C12が溶融したり、動物が配線C11をかじって被覆C12が損傷したりすることでも生じ得る。その他、パラレルアークは、配線C11が長期的に紫外線を浴び続けることで被覆C12が絶縁劣化した場合にも生じ得る。
【0034】
図4Aは、パラレルアークの発生時において配線C11を流れる電流の波形の一例を示す。
図4Aに示すように、パラレルアークの発生時においては、配線C11には、断続的にパルス電流が流れる。つまり、パラレルアークの発生時においては、配線C11に流れる電流の波形には、パラレルアークの発生に伴う固有のパターンが含まれる。したがって、アーク検知部33は、第1検出部31が検出した配線C11を流れる電流の検出結果から求めた電流の波形と、上記のパターンとを比較することにより、配線C11にパラレルアークが発生しているか否かを検知することが可能である。
【0035】
シリーズアークは、例えば
図3Bに示すように、配線C11を構成する一対の電線C10のうちの一方が半断線することにより発生し得る。
図3Bにおける点線の矢印I2は、シリーズアークの発生時において配線C11を流れる電流の経路を模式的に表している。シリーズアークの発生時において配線C11を流れる電流の大きさは、数〔A〕~十数〔A〕である。そのため、シリーズアークの発生時において配線C11を流れる電流の大きさは、異常の発生していない正常時において配線C11に接続される負荷(例えば、電気機器23,24)に流れる電流の大きさよりも小さくなることもある。シリーズアークは、例えば配線C11が繰り返し曲げられたり、配線C11が過度な力で引っ張られたりすることで生じ得る。
【0036】
図4Bは、シリーズアークの発生時において配線C11を流れる電流の波形の一例を示す。
図4Bに示すように、シリーズアークの発生時においては、配線C11には、負荷(例えば、電気機器23,24)に供給される電流に対して、シリーズアークに特有の高周波成分が重畳された電流が流れる。つまり、シリーズアークの発生時に配線C11を流れる電流は、
図4Bに例示するようなシリーズアークに特有の高周波成分を含み得る。したがって、アーク検知部33は、例えば第1検出部31が検出した配線C11を流れる電流の検出結果から電流の高周波成分を求め、この高周波成分に基づいて、配線C11にシリーズアークが発生しているか否かを検知することが可能である。
【0037】
また、アーク検知部33は、分岐ブレーカ4から受信する第2検出部41の検出結果に更に基づいて、アーク故障の有無を検知している。アーク検知部33は、第1検出部31の検出結果をもとにアーク故障が発生していないと検知した場合でも、分岐ブレーカ4の第2検出部41がアーク故障の発生を検知すると、第1回路C1及び第2回路C2を含む回路でアーク故障が発生したと検知する。したがって、アーク検知部33は回路C100でのアーク故障の有無を確実に検知することができる。また、アーク検知部33は、第1検出部31の検出結果と、分岐ブレーカ4から受信する第2検出部41の検出結果とに基づいて、アーク故障が発生している回路を特定することができる。換言すると、アーク検知部33は、第1回路C1及び第2回路C2のうちアーク故障が発生した回路を更に検知する。例えば、アーク検知部33は、第1検出部31の検出結果に基づいて第1回路C1でアーク故障が発生していると検知した場合に、いずれかの分岐ブレーカ4の第2検出部41がアーク故障の発生を検知していれば、この分岐ブレーカ4の二次側の第2回路C2でアーク故障が発生していると検知する。また、主幹ブレーカ3と分岐ブレーカ4との間の配線C11でアーク故障が発生した場合、各分岐ブレーカ4の二次側の第2回路C2にアーク故障に伴って発生する高周波成分を含む電流が流れることになる。したがって、アーク検知部33は、第1検出部31の検出結果に基づいて第1回路C1でアーク故障が発生していると検知した場合に、全ての分岐ブレーカ4の第2検出部41がアーク故障の発生を検知すると、主幹ブレーカ3と分岐ブレーカ4との間の配線C11でアーク故障が発生していると検知する。
【0038】
遮断部(第1回路用遮断部)34は、第1回路C1及び第2回路C2を含む回路C100でアーク故障が発生しているとアーク検知部33が検知した場合に回路C100を遮断する。すなわち、遮断部34は、第1回路C1及び第2回路C2を含む回路C100でアーク故障が発生しているとアーク検知部33が検知した場合に、接点35を開極させる。これにより、主幹ブレーカ3は、主幹ブレーカ3の二次側端子に接続された第1回路C1及び第2回路C2を含む回路C100への電力供給を遮断し、回路を保護する。また、遮断部34は、第1検出部31にて過負荷電流等の過電流を検出すると、接点35を開極させる。また、主幹ブレーカ3の第1検出部31は、単相三線式配線における中性線の欠相状態を検出する機能を有する。そして、遮断部34は、第1検出部31が中性線の欠相状態を検出すると、接点35を開極させる。なお、主幹ブレーカ3は、所定の制限値を超える電流が流れると、接点35を開極させるリミッタ機能を備えていてもよい。
【0039】
主幹ブレーカ3の二次側端子には、単相三線式配線における第1電圧極(L1相)の導電バー、第2電圧極(L2相)の導電バー、及び中性極(N相)の導電バーが接続されている。各導電バーは、導電部材により左右方向に長い長尺板状に形成されており、分電盤用キャビネット10の内部において、上下方向の中央であって主幹ブレーカ3の右側の位置に配置されている。
【0040】
複数の分岐ブレーカ4は、各導電バーの上側と下側とに分かれて、それぞれ複数個ずつ左右方向に並ぶように配置されている。本実施形態では、
図2に示すように、各導電バーの上側には、12個の分岐ブレーカ4が左右方向に並ぶように配置されている。また、各導電バーの下側には、11個の分岐ブレーカ4が左右方向に並ぶように配置されている。
【0041】
各分岐ブレーカ4は、一対の一次側端子と、一対の二次側端子と、を備えている。各分岐ブレーカ4は、一次側端子と二次側端子との間に電気的に接続される接点を有している。各分岐ブレーカ4の前面には、各分岐ブレーカ4が内蔵する接点をオン又はオフにするための操作レバーが設けられている。
【0042】
分岐ブレーカ4には、100V用と200V用とがある。100V用の分岐ブレーカ4が備える一対の一次側端子は、第1電圧極の導電バー及び第2電圧極の導電バーのうちの一方と、中性極の導電バーとにそれぞれ電気的に接続される。200V用の分岐ブレーカ4が備える一対の一次側端子は、第1電圧極の導電バーと、第2電圧極の導電バーとにそれぞれ電気的に接続される。また、分岐ブレーカ4の二次側端子には、対応する第2回路C2の配線C11が電気的に接続される。各分岐ブレーカ4の二次側端子に接続された配線C11には、例えば、照明器具又は給湯設備等の電気機器23、コンセント22(
図1参照)又は壁スイッチ等の配線器具が負荷として1つ以上接続される。したがって、分電盤1は、分岐ブレーカ4の二次側端子に配線C11を介して接続された電気機器23、又はコンセント22に接続された電気機器24(例えば空調機器又はテレビ受像機等)等に電力を供給することができる。
【0043】
また、分岐ブレーカ4は、第2検出部41と、通信部42と、第2回路用遮断部(以下では単に「遮断部」と言う)43とを備えている。
【0044】
第2検出部41は、分岐ブレーカ4に接続される第2回路C2でのアーク故障の有無を検出する。第2検出部41は、主幹ブレーカ3のアーク検知部33と同様の方法で、第2回路C2でのアーク故障の有無を検出する。第2検出部41は、例えばカレントトランス等の電流センサを用いて、第2回路C2に流れる電流を検出する。第2検出部41は、第2回路C2に流れる電流の検出結果を基に、第2回路C2に流れる電流の電流値、又は、この電流に含まれる高周波成分から、第2回路C2でのアーク故障の有無を検出する。
【0045】
通信部42は、主幹ブレーカ3の通信部32と通信可能に構成されている。通信部32は、有線通信又は無線通信の適宜の通信方式により、直接的、又はネットワーク若しくは中継器等を介して間接的に、主幹ブレーカ3との間で信号を授受する。通信部42は、主幹ブレーカ3及び複数の分岐ブレーカ4の各々に設定されたアドレスを用いて、主幹ブレーカ3と通信を行う。なお、分岐ブレーカ4の通信部42と、主幹ブレーカ3とは、互いに双方向に通信可能であり、分岐ブレーカ4から通信部32への信号の送信と、通信部32から分岐ブレーカ4への信号の送信との両方が可能である。分岐ブレーカ4では、第2検出部41がアーク故障の発生を検出すると、通信部42がアーク故障の検出結果を主幹ブレーカ3に送信する。
【0046】
遮断部43は、第2検出部41が第2回路C2でのアーク故障の発生を検出すると、分岐ブレーカ4が内蔵する接点を開極させることによって第2回路C2を遮断し、第2回路C2への電力供給を停止させることで第2回路C2を保護する。
【0047】
感震ブレーカ5は、導電バーの下側において、分岐ブレーカ4と左右方向に並ぶように配置されている。感震ブレーカ5は、分電盤用キャビネット10に加わる振動を検出する感震センサ51を有している。感震センサ51が所定の基準値(例えば震度5の地震動)を超える大きさの振動を検出すると、感震ブレーカ5は回路を遮断する遮断動作を行う。感震ブレーカ5は、例えば第1電圧極又は第2電圧極と中性極との間を比較的低抵抗のインピーダンス要素を介して電気的に接続することで疑似的な漏電状態を発生させる。感震ブレーカ5が疑似的な漏電状態を発生させると、主幹ブレーカ3の第1検出部31が、感震ブレーカ5が発生させた疑似的な漏電状態を検出し、遮断部34が接点35を開極させる。これにより、地震等によって分電盤用キャビネット10に基準値を超える大きさの振動が加わると、主幹ブレーカ3の二次側に接続された回路(第1回路C1及び複数の第2回路C2を含む回路C100)への電力供給を遮断することができる。
【0048】
連系ブレーカ6には、施設500に設けられた分散電源21が接続される。連系ブレーカ6は、主幹ブレーカ3の二次側端子に電気的に接続された導電バーと、分散電源21との間に電気的に接続される。連系ブレーカ6の接点がオンになると、分散電源21が系統電源20と連系して負荷に電力を供給することができる。一方、連系ブレーカ6の接点がオフになると、分散電源21が系統電源20から解列される。連系ブレーカ6は、例えば漏電の発生を検出する検出機能を有している。連系ブレーカ6の検出機能が漏電の発生を検出すると、連系ブレーカ6は遮断動作を行い、分散電源21を系統電源20から解列させる。なお、連系ブレーカ6は、短絡電流等の過電流を検出する検出機能を備えていてもよく、連系ブレーカ6の検出機能が過電流を検出すると、連系ブレーカ6が遮断動作を行うように構成されてもよい。
【0049】
電流計測装置8は、複数の分岐ブレーカ4の各々に接続された負荷(電気機器23,24等)に流れる電流(つまり第2回路C2に流れる電流)を計測するように構成されている。電流計測装置8は、例えば、基板と、複数のコイルと、を有している。基板は、左右方向に長い板状である。基板には、複数の孔が形成されている。複数の孔には、導電バーから延びて分岐ブレーカ4の一次側端子に接続される端子がそれぞれ挿入される。コイルは、例えばロゴスキコイルであり、基板の孔の周りに形成されている。本実施形態では、電流計測装置8は、複数の分岐ブレーカ4及び連系ブレーカ6の各々に流れる電流(つまり、複数の第2回路C2の各々に流れる電流)を計測する。ここにおいて、電流計測装置8(電流センサ)は、分電盤1が設置される施設500で使用されるエネルギーを管理するエネルギー管理システム600に用いられるセンサと共用される。
【0050】
バックアップ電源9は、ニッケル水素電池又はリチウムイオン電池等の二次電池であるバッテリ91と、バッテリ91を充電する充電回路とを含む。バックアップ電源9の充電回路は、主幹ブレーカ3の一次側から電力の供給を受けて、バッテリ91を充電する。バックアップ電源9は、系統電源20が停電した場合に、バッテリ91を電源として監視ユニット7等に電力を供給する。したがって、系統電源20が停電した場合でも、監視ユニット7は、バックアップ電源9から電力の供給を受けて動作することができる。系統電源20の正常時には、監視ユニット7は、主幹ブレーカ3の一次側(系統電源20)から電力の供給を受けて動作する。
【0051】
監視ユニット7は、分電盤用キャビネット10の内部において、主幹ブレーカ3の左側に配置されている。監視ユニット7は、主幹ブレーカ3の一次側から電力の供給を受けて動作するので、主幹ブレーカ3が遮断動作を行った場合でも動作が可能である。なお、系統電源20が停電した場合には、監視ユニット7は、バックアップ電源9から電力の供給を受けるので、系統電源20の停電時でも動作が可能である。
【0052】
監視ユニット7は、制御部71と、通信部72と、通知部73と、記憶部74と、ユーザ検知部75とを備えている。
【0053】
監視ユニット7は、例えば、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、制御部71としての機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されてもよく、電気通信回線を通じて提供されてもよく、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。
【0054】
制御部71は、第1取得部711と第2取得部712との機能を備える。
【0055】
第1取得部711は、分電盤1内の主幹ブレーカ3及び分岐ブレーカ4の少なくとも一方に流れる電流の検出結果を取得する。本実施形態の監視ユニット7は、主幹ブレーカ3に流れる電流を計測する主幹電流計測装置、及び電流計測装置8と電気的に接続されている。ここに、主幹電流計測装置は、例えばカレントトランス(CT)からなる電流センサを備えている。監視ユニット7の第1取得部711は、電流計測装置8が計測した複数の分岐ブレーカ4及び連系ブレーカ6の各々に流れる電流値のデータを、電流計測装置8から受け取ることによって、複数の分岐ブレーカ4及び連系ブレーカ6の各々に流れる電流の検出結果を取得する。さらに、監視ユニット7の第1取得部711は、主幹電流計測装置が計測した電流値を主幹電流計測装置から受け取ることによって、主幹ブレーカ3に流れる電流の検出結果を取得する。また、第1取得部711は、電流計測装置8、及び主幹電流計測装置が計測した電流値のそれぞれを電力値(瞬時電力値)に変換することによって電力値を求める機能を有している。また、第1取得部711は、収集した瞬時電力のデータを所定時間に亘って積算した電力量のデータを演算する機能を有している。
【0056】
第2取得部712は、第1回路C1及び第2回路C2を含む回路C100でのアーク故障に関連する関連事象の情報を取得する。アーク故障に関連する、電流以外の関連事象とは、回路C100でアーク故障が発生したことに伴って発生する事象と、アーク故障の予兆として発生する事象との少なくとも一方を含む。アーク故障を発生させる配線異常、又は、アーク故障が発生すると、回路C100に大電流が流れるため、配線C11が発熱する。そして、配線C11の発熱によって配線C11の被覆C12(
図3A参照)の温度又は回路C100が設置された環境の温度が上昇したり、配線C11の被覆C12が加熱されることで異臭又は煙が発生したり、アークの発生に伴い音が発生したりする可能性がある。したがって、関連事象の情報は、アーク故障に伴って発生する事象、又は、アーク故障の予兆として発生する事象である温度、臭い、煙、及び音の少なくとも1つに関連する環境情報を含み得る。また、回路C100の設置場所で、地震、浸水、竜巻、又は火事等の災害が発生した場合には配線C11が引っ張られたり、配線C11の上に重量物が載ったりすることで、配線C11の半断線等が発生しやすくなり、シリーズアーク又はパラレルアーク等のアーク故障が発生しやすくなる。そのため、災害の発生時にはアーク故障の検出漏れを低減することが望ましく、アーク故障に関連する関連事象の情報は、回路C100の設置場所で発生する災害に関連する災害情報を含み得る。すなわち、アーク故障に関連する関連事象の情報は、回路C100が存在する環境での温度、臭い、音及び煙の少なくとも1つに関連する環境情報と、回路C100の設置場所で発生する災害に関連する災害情報との少なくとも一方を含む。
【0057】
具体的には、第2取得部712は、例えば、関連事象の情報として、回路C100の周辺での環境情報を検出するセンサ26から環境情報を取得する。ここにおいて、センサ26は、回路C100に含まれる配線C11の被覆C12の温度を測定する温度センサを含み得る。センサ26は、回路C100に含まれる配線C11の設置場所で、配線C11の発熱によって被覆C12が加熱された際に発生する臭いガスを検出するガスセンサを含み得る。センサ26は、回路C100に含まれる配線C11の設置場所で、配線C11の発熱によって被覆C12が加熱された際に発生する煙を検出する煙センサを含み得る。また、センサ26は、回路C100に含まれる配線C11の設置場所で、アーク(シリーズアーク又はパラレルアーク)が発生することによって生じる音(スパーク音)、又はアーク故障に伴って電気機器24に異常が発生することで生じる音等を検出する音センサを含んでもよい。また、第2取得部712は、災害情報を提供する気象庁、消防庁又は自治体等の災害情報提供サーバ700から、通知部73を介して災害情報を取得する。ここにおいて、災害情報は、地震、台風、洪水、又は竜巻等の自然災害、及び、火災等の人災の少なくとも一方に関する情報である。
【0058】
また、第2取得部712は、コントローラ25から、回路C100に含まれる複数の負荷(電気機器23,24等)のうちコントローラ25が制御可能な制御対象負荷に関連する負荷情報を取得する。コントローラ25は、回路C100が配置された施設500でのエネルギーの使用量を管理するエネルギー管理システム600(例えばHEMS:Home Energy Management System)のコントローラである。コントローラ25は、エネルギー管理システム600に対応する機器(以下、HEMS対応機器ともいう)の制御又は監視を行う。例えば、コントローラ25は、監視ユニット7と通信を行うことによって、複数の分岐ブレーカ4に接続された複数の負荷(電気機器23,24等)の各々での瞬時電力や電力量のデータを取得することができ、HEMS対応機器を制御又は監視することができる。コントローラ25は、分電盤用キャビネット10の外部に配置されている。HEMS対応機器は、例えばスマートメータ、太陽光発電装置、蓄電装置、燃料電池、電気自動車、エアコン、照明器具、給湯装置、冷蔵庫、又はテレビ受像機等を含む。HEMS対応機器のうち、コントローラ25によって制御可能な機器が制御対象負荷となる。なお、HEMS対応機器は、これらの機器に限定されない。
【0059】
本実施形態では、主幹ブレーカ3が遮断動作を行った場合でも、主幹ブレーカ3の一次側から電力が監視ユニット7に供給される。このため、系統電源20が停電していない場合、制御部71の各機能は動作可能である。また、監視ユニット7には、系統電源20の停電時にはバックアップ電源9から電力が供給される。このため、系統電源20が停電している場合でも、制御部71の各機能は動作可能である。
【0060】
通信部72は、施設500に設置された主幹ブレーカ3及びコントローラ25等との間で通信を行う。主幹ブレーカ3は、監視ユニット7と通信を行うことによって、監視ユニット7の第2取得部712が取得したアーク故障に関連する関連事象の情報を取得することができる。また、コントローラ25は、監視ユニット7と通信を行うことによって、複数の分岐ブレーカ4に接続された複数の負荷(電気機器23,24等)の各々での瞬時電力や電力量の各データを取得することができる。また、コントローラ25は、監視ユニット7と通信を行うことによって、HEMS対応機器(制御対象負荷を含む)を制御又は監視することができる。通信部72と主幹ブレーカ3及びコントローラ25との間の通信方式は、例えば、920MHz帯の特定小電力無線局、Wi-Fi、又はBluetooth等の通信規格に準拠した、電波を媒体とした無線通信である。なお、通信部72と主幹ブレーカ3及びコントローラ25との間の通信方式は、有線LAN(Local Area Network)等の通信規格に準拠した有線通信であってもよい。また、通信部72と主幹ブレーカ3及びコントローラ25との間の通信における通信プロトコルは、例えば、Ethernet(登録商標)、ECHONET Lite(登録商標)等である。
【0061】
通知部73は、インターネットのような広域のネットワーク200を介して、管理サーバ300、災害情報提供サーバ700、及び情報端末400と通信する通信機能を有している。ここにおいて、情報端末400は、例えば分電盤1のユーザが携帯する端末であり、例えばスマートフォン又はタブレット型のコンピュータである。なお、情報端末400は、例えばデスクトップ型又はラップトップ型のパーソナルコンピュータ等であってもよい。ここで、回路C100においてアーク故障が発生しているとアーク検知部33が検知すると、通信部32(出力部)は、アーク故障の発生を通知する通知情報を例えば監視ユニット7に出力する。監視ユニット7の通信部72が主幹ブレーカ3から出力された通知情報を受信すると、制御部71は、通知部73からユーザが有する情報端末400に対して通知情報に基づく信号を通知させることによって、アーク故障の発生をユーザに通知する。これにより、分電盤1のユーザは、情報端末400を操作して、例えばメールを閲覧したり、情報端末400にインストールされているアーク検出システム100用のアプリケーションを起動したりすることにより、アーク故障の発生を確認することができる。
【0062】
一例として、通知部73は、主幹ブレーカ3のアーク検知部33にて回路C100に含まれる配線C11でのアーク故障が検知されると、配線C11でのアーク故障に応じて記憶部74から読み出された詳細情報を含む信号を、情報端末400へ送信する。ユーザは、情報端末400を操作して、例えばメールを閲覧したり、情報端末400にインストールされているアーク検出システム100用のアプリケーションを起動したりすることによって、通知部73から通知された内容(詳細情報等)を確認することができる。
【0063】
なお、通知部73は、例えば監視ユニット7に備え付けの表示装置(例えば、液晶ディスプレイ等)、又は監視ユニット7に接続された表示装置に文字列及び/又は画像を表示することにより、アーク故障の発生を示す情報を視覚的に表示してもよい。また、通知部73は、監視ユニット7に備え付けのLED(Light Emitting Diode)等の固体発光素子を点灯させることにより、アーク故障の発生を示す情報を視覚的に表示してもよい。また、通知部73は、例えば監視ユニット7に備え付けのスピーカ、又は監視ユニット7に接続されたスピーカから音声メッセージを出力することにより、アーク故障の発生を示す情報を聴覚的に提示してもよい。
【0064】
ここで、通知部73が通知する詳細情報は、アーク故障の種別を示す種別情報を含み得る。本実施形態では、アーク故障の種別は、少なくともパラレルアーク及びシリーズアークの2つの種別を含んでいる。本実施形態では、主幹ブレーカ3のアーク検知部33は、上述のようにパラレルアークの発生の有無、及びシリーズアークの発生の有無を検知することが可能である。したがって、アーク検知部33がアーク故障の発生を検知した場合に、通信部32が、アーク故障の種別を示す種別情報を含む通知情報を監視ユニット7に出力することによって、通知部73は、通知情報に基づいて、アーク故障がパラレルアークの発生であるのか、又はシリーズアークの発生であるのかを通知することが可能である。
【0065】
また、詳細情報は、回路C100に含まれる第1回路C1及び第2回路C2のうちアーク故障が発生している1以上の回路を示す情報を含み得る。本実施形態では、アーク検知部33は、第1検出部31の検出結果と各分岐ブレーカ4の第2検出部41の検出結果とに基づいて、第1回路C1及び複数の第2回路C2のうち、アーク故障が発生している1以上の回路を更に検知している。したがって、アーク検知部33が、第1回路C1と複数の第2回路C2とを含む回路C100でアーク故障が発生したと検知した場合、通信部32は、アーク故障が発生している回路を示す通知情報を監視ユニット7に送信してもよい。そして、監視ユニット7の通知部73は、主幹ブレーカ3からの通知情報に基づき、アーク故障が発生している回路を示す情報を含めた詳細情報を情報端末400に通知してもよい。これにより、通知部73は、通知情報に基づいて、第1回路C1及び複数の第2回路C2のうちどの回路(言い換えれば、どの場所、又は、どの負荷)でアーク故障が発生したのかを通知することが可能である。例えば、通知部73は、アーク故障が発生している回路の名称、当該回路に接続されている負荷の名称、又は当該回路の場所等を通知すればよく、ユーザは通知された情報をもとにアーク故障が発生している回路を特定することができる。
【0066】
また、詳細情報は、各分岐ブレーカ4の二次側の第2回路C2に含まれる負荷に関する負荷情報を含み得る。例えば、監視ユニット7の制御部71は、例えばディスアグリゲーション技術を適用することによって、電力の大きさの変化から、第2回路C2に含まれる負荷(例えば、電気機器23,24)の種類及び台数等を推定することが可能である。したがって、通知部73は、アーク故障が発生しているとアーク検知部33が検知した第2回路C2に含まれる負荷の種類及び台数等の情報を、負荷情報として通知することが可能である。
【0067】
また、詳細情報は、アーク故障の発生タイミングと継続時間との少なくとも一方に関する時間情報を含み得る。本実施形態では、主幹ブレーカ3のアーク検知部33がアーク故障の発生を検知すると、通信部32がアーク故障の発生を通知する通知情報を監視ユニット7に送信する。また、主幹ブレーカ3のアーク検知部33がアーク故障の発生を検知しなくなると、通信部32が、アーク故障の検知終了を通知する通知情報を監視ユニット7に送信する。したがって、監視ユニット7の制御部71は、例えば内蔵のタイマを用いて計時することにより、アーク故障の発生タイミングと、アーク故障が発生してから終了するまでの継続時間と、を通知部73からユーザの有する情報端末400に通知することができる。
【0068】
また、詳細情報は、アーク検知部33がアーク故障の発生を検知した場合に、ユーザが採るべき行動に関する復旧情報を含んでもよい。つまり、通知部73は、アーク故障に対処するための復旧情報を更に通知してもよい。一例として、通知部73は、回路C100に含まれるいずれかの配線C11でアーク故障が発生した場合、電気工事事業者への連絡先及び電気工事事業者への連絡を促す旨を復旧情報として通知してもよい。ここでいう「連絡先」は、例えば、電話番号、メールアドレス、又は電気工事事業者がホームページを開設している場合にはホームページのURL(Uniform Resource Locator)を含み得る。本実施形態では、記憶部74に復旧情報が記憶されており、アーク故障が発生したとアーク検知部33が検知した後の適宜のタイミングで、通知部73が記憶部74から復旧情報を読み出し、読み出した復旧情報を適宜の手段によりユーザに通知する。
【0069】
ここで、通知部73は、いずれかの開閉器2が遮断動作を行った場合に、遮断動作を行った直後のタイミングで詳細情報を通知してもよいし、ユーザが分電盤1の様子を確認する確認作業を行う際に、詳細情報を通知してもよい。本開示でいう「確認作業を行う際」とは、ユーザが確認作業を行おうとする意思を直接的又は間接的に監視ユニット7が確認した時点を含む。例えば、通知部73は、後述するユーザ検知部75の検知結果に基づいて、詳細情報を通知する。つまり、通知部73は、ユーザ検知部75にてユーザが確認作業を行う起点となる動作を検知すると、詳細情報を通知する。
【0070】
ユーザ検知部75は、いずれかの開閉器2が遮断動作を行った後において、ユーザが確認作業を行う起点となる動作を検知する。一例として、ユーザ検知部75は、監視ユニット7に設けられてユーザの操作を受け付ける入力受付部である。そして、ユーザ検知部75は、入力受付部にてユーザの操作を受け付けると、ユーザが監視ユニット7を操作する動作を、ユーザが確認作業を行う起点となる動作として検知する。
【0071】
また、一例として、ユーザ検知部75は、近接センサ、赤外線センサ、加速度センサ、及び振動センサのうちの1以上のセンサの検知結果を取得する構成であってもよい。上記1以上のセンサは、例えば分電盤1のカバー又は蓋体に取り付けられる。そして、ユーザ検知部75は、上記1以上のセンサの検知結果に基づいて、ユーザが分電盤1のカバー又は蓋体を開く動作を、ユーザが確認作業を行う起点となる動作として検知する。
【0072】
また、一例として、ユーザ検知部75は、人感センサの検知結果を取得する構成であってもよい。人感センサは、赤外線、超音波、及び電磁波のうちのいずれか1つを用いて人の存在を検知するセンサであり、分電盤1に取り付けられる。また、人感センサは、撮像画像から人の存在を検知するイメージセンサであってもよい。そして、ユーザ検知部75は、人感センサの検知結果に基づいて、ユーザが分電盤1に接近する動作を、ユーザが確認作業を行う起点となる動作として検知する。
【0073】
また、ユーザ検知部75は、ユーザが情報端末400を携帯している場合、通知部73を介した監視ユニット7と情報端末400との通信結果に基づいて、ユーザが分電盤1に接近する動作を検知してもよい。また、ユーザ検知部75は、情報端末400の発する電波を通知部73が受信することをもって、ユーザが分電盤1へ接近する動作を検知してもよい。これらの場合、ユーザ検知部75は、情報端末400にインストールされているアーク検出システム100用のアプリケーションが起動している状態でのみ、ユーザが分電盤1に接近する動作を、ユーザが確認作業を行う起点となる動作として検知してもよい。その他、ユーザ検知部75は、上記のアーク検出システム100用のアプリケーションをユーザが起動する動作を、ユーザが確認作業を行う起点となる動作として検知してもよい。
【0074】
記憶部74は、例えば、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)等の電気的に書換え可能な不揮発性メモリ、及びRAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリ等を備える。例えば、記憶部74は、主幹ブレーカ3から出力される通知情報に基づき、主幹ブレーカ3のアーク検知部33にて検知された回路C100に含まれる配線C11でのアーク故障ごとに詳細情報を記憶する。
【0075】
(2.2)動作
以下、本実施形態に係るアーク検出システム100の動作について
図5を参照して説明する。
図5は、アーク検出システム100の動作、つまりアーク検出システム100によるアーク検出方法の一例を示すフローチャートである。
【0076】
アーク検出システム100の各機能を有する主幹ブレーカ3は、例えば、所定のタイミングでアーク故障が発生しているか否かを検出する処理を実行する。
【0077】
主幹ブレーカ3の第1検出部31は、第1回路C1に流れる電流を検出する検出処理を行う(S1)。
【0078】
主幹ブレーカ3のアーク検知部33は、検出処理での検出結果に基づいて、第1回路C1でアーク故障が発生しているか否かを検知する(S2)。
【0079】
また、アーク検知ユニットの機能を有する分岐ブレーカ4では、第2検出部41が、第2回路C2に流れる電流を検出し、電流の検出結果に基づいて第2回路C2でのアーク故障の有無を検出する処理を繰り返し行っている。主幹ブレーカ3の通信部32は、複数の分岐ブレーカ4と通信を行い、複数の分岐ブレーカ4の各々から第2検出部41の検出結果を受信(取得)する受信処理(取得処理)を行う(S3)。
【0080】
アーク検知部33は、ステップS2において第1回路C1でのアーク故障の有無を検知した結果と、複数の分岐ブレーカ4から取得したアーク故障の検出結果とに基づいて、回路C100でアーク故障が発生したか否かを判定する(S4)。
【0081】
ここで、第1回路C1及び複数の第2回路C2のいずれでもアーク故障が発生していない場合(S4:No)、アーク検出システム100である主幹ブレーカ3はアーク故障の検出処理を終了する。
【0082】
一方、第1回路C1及び複数の第2回路C2のいずれかでアーク故障が発生している場合(S4:Yes)、アーク検知部33は、第1回路C1及び複数の第2回路C2を含む回路C100のうちアーク故障が発生した回路を特定する処理を行う(S5)。アーク検知部33は、第1回路C1でアーク故障が発生していると検知した場合に、いずれかの分岐ブレーカ4からアーク故障が発生しているとの検知結果を取得すると、この分岐ブレーカ4の二次側の第2回路C2でアーク故障が発生したと判断する。また、アーク検知部33は、第1回路C1でアーク故障が発生していないと検知した場合でも、いずれかの分岐ブレーカ4からアーク故障が発生しているとの検知結果を取得すると、この分岐ブレーカ4の二次側の第2回路C2でアーク故障が発生したと判断する。また、アーク検知部33は、第1回路C1でアーク故障が発生していると検知した場合に、全ての分岐ブレーカ4からアーク故障が発生しているとの検知結果を取得すると、主幹ブレーカ3と分岐ブレーカ4との間の回路でアーク故障が発生したと判断する。
【0083】
そして、アーク検知部33が、第1回路C1及び第2回路C2のいずれかでアーク故障が発生したことを検知すると、遮断部34が接点35を開極させることによって、主幹ブレーカ3の二次側の回路C100への電力供給を遮断する遮断処理を行う(S6)。なお、アーク故障が発生したことを検知した分岐ブレーカ4では、遮断部43が内蔵の接点を開極させて、当該分岐ブレーカ4の二次側の第2回路C2を遮断させている。
【0084】
また、アーク検知部33が、第1回路C1及び第2回路C2のいずれかでアーク故障が発生したことを検知すると、通信部32が、アーク故障の発生を通知する通知情報を監視ユニット7に送信する出力処理を行う(S7)。監視ユニット7の通信部72が主幹ブレーカ3から出力された通知情報を受信すると、制御部71は、通知部73からネットワーク200を経由してユーザの有する情報端末400に通知情報に基づく情報(詳細情報等)を出力させる。これにより、分電盤1のユーザは、情報端末400に通知された情報を確認することによって、アーク故障の発生を確認することができる。
【0085】
アーク検出システム100の各機能を有する主幹ブレーカ3は、上述した一連の処理S1~S7を繰り返し実行し、第1回路C1及び第2回路C2を含む回路C100でのアーク故障の有無を監視する。なお、
図5のフローチャートはアーク検出システム100の動作の一例に過ぎず、処理を適宜省略又は追加してもよいし、処理の順番が適宜変更されてもよい。
【0086】
以上のように、本実施形態では、アーク検知部33が、第1検出部31が検出した第1回路C1を流れる電流の検出結果と、各分岐ブレーカ4から取得した第2検出部41の検出結果とに基づいて、回路C100でのアーク故障の有無を検知する。つまり、アーク検知部33は、第1回路C1を流れる電流の検出結果だけではなく、アーク検知ユニットの第2検出部41によって検出される第2回路C2でのアーク故障の有無に基づいて、回路C100でのアーク故障の有無を検知する。したがって、本実施形態によれば、アーク故障の発生を確実に検出可能なアーク検出システム100を提供することができる。
【0087】
本実施形態において、アーク検知部33は、ステップS3で取得した検出結果に基づき、いずれかの分岐ブレーカ4でアーク故障が検知されたと判断すると、第1検出部31の検出結果に基づいてアーク故障の有無を判断する閾値を変化させてもよい。すなわち、複数の分岐ブレーカ4の全てでアーク故障が検知されていない第1状態では、アーク検知部33は、第1検出部31の検出結果に基づいてアーク故障の有無を検知する感度を第1感度とする。一方、複数の分岐ブレーカ4のいずれかでアーク故障が検知された第2状態では、アーク検知部33は、第1検出部31の検出結果に基づいてアーク故障の有無を検知する感度を、第1感度よりも高い第2感度とする。いずれかの分岐ブレーカ4でアーク故障が発生したと検知された第2状態では、第1回路C1及び第2回路C2を含む回路C100の劣化が進み、アーク故障が発生しやすい状態になったと想定される。ここにおいて、第2状態では、アーク検知部33が、第1検出部31の検出結果に基づき、第1感度よりも高い第2感度でアーク故障の有無を検知するように構成されていれば、アーク故障の発生を確実に検知できる。例えば、アーク検知部33が第1検出部31の検出結果と閾値との大小を比較することでアーク故障の有無を検知する場合、アーク検知部33は、第2状態での第2閾値を、第1状態での第1閾値よりも低い値に設定すればよい。すなわち、アーク検知部33は、アーク検知ユニット(分岐ブレーカ4)の第2検出部41がアーク故障を検出していない第1状態では、第1検出部31の検出結果と第1閾値との大小を比較することで第1回路C1でのアーク故障の有無を検知する。アーク検知部33は、アーク検知ユニット(分岐ブレーカ4)の第2検出部41がアーク故障を検出した後の第2状態では、第1検出部31の検出結果と第2閾値との大小を比較することで第1回路C1でのアーク故障の有無を検知する。このように、アーク検知部33が、第1状態での第1閾値に比べて、第2状態での第2閾値を下げることで、第2状態での第2感度を第1状態での第1感度よりも高めることができ、第2状態においてアーク故障の発生を確実に検知できる。なお、第1状態での第1閾値は、第2状態での第2閾値よりも高い値に設定されており、第1状態での第1感度は第2状態での第2感度よりも低感度であるので、第1状態においてアーク故障の誤検出が発生する可能性を低減できる。
【0088】
また、本実施形態において、主幹ブレーカ3の通信部32が、外部システム(例えば監視ユニット7及び災害情報提供サーバ700)から、回路C100でのアーク故障に関連する、電流以外の関連事象の情報を受信してもよい。そして、アーク検知部33は、通信部32が受信する関連事象の情報に更に基づいて、アーク故障の有無を検知してもよい。ここで、関連事象の情報は、上述したように環境情報と災害情報との少なくとも一方を含み得る。例えば、アーク検知部33は、通信部32が受信した関連事象の情報に基づき、アーク故障の予兆を検出できず、かつ、災害が発生していないと判断すると、アーク故障の検知感度を第1感度に設定する。また、アーク検知部33は、関連事象の情報に基づき、アーク故障の予兆を検出するか、又は、災害が発生していると判断すると、アーク故障の検知感度を、第1感度よりも高い第2感度に設定する。これにより、アーク検知部33は、アーク故障の予兆が検出されるか、又は、災害が発生している場合には、アーク故障の検知感度を高感度(第2感度)に設定することで、アーク故障の検出漏れを抑制できる。また、アーク検出システム100は、アーク故障の予兆が検出されず、かつ、災害が発生していない場合には、アーク故障の検知感度を低感度(第1感度)に設定することで、アーク故障の誤検出を抑制できる。このように、アーク検知部33は、関連事象の情報に基づいてアーク故障の検知感度を変化させており、関連事象の情報に更に基づいてアーク故障の有無を検知している。
【0089】
また、本実施形態において、アーク検知ユニット(分岐ブレーカ4)の第2検出部41が第2回路C2でのアーク故障を検出し、遮断部43が第2回路C2を遮断している場合、遮断部34は、第1回路C1を遮断しなくてもよい。この場合、主幹ブレーカ3は二次側の回路への電力供給を遮断せず、アーク故障の発生を検知した分岐ブレーカ4のみが内蔵の接点を開極させるので、アーク故障の発生を検知していない分岐ブレーカ4の二次側の第2回路C2には電力供給を継続できる。
【0090】
(3)変形例
上記実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。上記実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。また、アーク検出システム100と同様の機能は、アーク検出方法、コンピュータプログラム、又はプログラムを記録した非一時的な記録媒体等で具現化されてもよい。一態様に係るアーク検出方法は、検出処理と、受信処理と、アーク検知処理とを含む。検出処理では、第1回路C1に流れる電流を検出する。受信処理では、アーク検知ユニットからアーク故障の検出結果を受信する。アーク検知ユニットは、第1回路C1に電気的に接続される第2回路C2でのアーク故障の有無を検出する。アーク検知処理では、検出処理での検出結果と、受信処理で受信するアーク故障の検出結果とに基づいて、第1回路C1と第2回路C2とを含む回路でのアーク故障の有無を検知する。一態様に係る(コンピュータ)プログラムは、前記アーク検出方法を、1以上のプロセッサに実行させるためのプログラムである。
【0091】
以下、上記の実施形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0092】
本開示におけるアーク検出システム100は、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、本開示におけるアーク検出システム100としての機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されてもよく、電気通信回線を通じて提供されてもよく、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。コンピュータシステムのプロセッサは、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む1ないし複数の電子回路で構成される。ここでいうIC又はLSI等の集積回路は、集積の度合いによって呼び方が異なっており、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)、又はULSI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれる集積回路を含む。さらに、LSIの製造後にプログラムされる、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はLSI内部の接合関係の再構成若しくはLSI内部の回路区画の再構成が可能な論理デバイスについても、プロセッサとして採用することができる。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に分散して設けられていてもよい。ここでいうコンピュータシステムは、1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを有するマイクロコントローラを含む。したがって、マイクロコントローラについても、半導体集積回路又は大規模集積回路を含む1ないし複数の電子回路で構成される。
【0093】
また、アーク検出システム100における複数の機能が、1つの筐体内に集約されていることはアーク検出システム100に必須の構成ではなく、アーク検出システム100の構成要素は、複数の筐体に分散して設けられていてもよい。さらに、アーク検出システム100の少なくとも一部の機能(例えば、アーク検知部33の機能)がクラウド(クラウドコンピューティング)等によって実現されてもよい。
【0094】
反対に、上記の実施形態において、複数の筐体に分散されているアーク検出システム100の機能の少なくとも一部が、1つの筐体内に集約されていてもよい。
【0095】
(3.1)変形例1
変形例1のアーク検出システム100Aでは、
図6に示すように、第1回路C1と第2回路C2とが共通の電力配線C3から分岐している。つまり、第1回路C1及び第2回路C2は、共通の電力配線C3から分岐した分岐回路である。したがって、上記の実施形態で説明したアーク検出システム100の各構成(第1検出部31、通信部32、アーク検知部33、及び遮断部34)は、第1回路C1の配線C11が接続されている分岐ブレーカ4Aに備えられている。
【0096】
分岐ブレーカ4Aは、第1検出部31A、通信部32A、アーク検知部33A、及び遮断部34Aを備えており、分岐ブレーカ4Aにアーク検出システム100Aの各機能が収容されている。なお、第1検出部31A、通信部32A、アーク検知部33A、及び遮断部34Aは、それぞれ、アーク検出システム100の第1検出部31、通信部32、アーク検知部33、及び遮断部34と同様の機能を有しているので、その説明は省略する。また、第2回路C2に接続されている分岐ブレーカ4B,4Cは、上記の実施形態で説明した分岐ブレーカ4と共通の構成を有しているので、その説明は省略する。
【0097】
変形例1のアーク検出システム100Aでは、第1検出部31Aは、分岐ブレーカ4Aの二次側端子に接続されている第1回路C1に流れる電流を検出する。
【0098】
通信部32Aは、アーク検知ユニットである分岐ブレーカ4B,4Cの通信部42と通信を行い、分岐ブレーカ4B,4Cから第2検出部42の検出結果を受信する。
【0099】
アーク検知部33Aは、第1検出部31Aの検出結果と、通信部32Aが受信した検出結果とに基づいて、第1回路C1と第2回路C2とを含む回路C100でのアーク故障の有無を検知する。
【0100】
そして、遮断部34Aは、アーク故障が発生したとアーク検知部33Aが検知すると、内蔵の接点を開極させることで、第1回路C1を遮断する。
【0101】
また、変形例1では、アーク検知ユニットである分岐ブレーカ4B,4Cの第2検出部41が第2回路C2でのアーク故障を検出している場合、遮断部34A(第1回路用遮断部)は、内蔵の接点を開極させることで、第1回路C1を遮断する。アーク検出システム100Aは、第1回路C1でアーク故障が発生していない場合でも、第2回路C2でアーク故障が発生した場合は、第1回路C1を遮断する。第2回路C2でアーク故障が発生する場合、配線C11の老朽化等でアーク故障が発生しやすい状況であると推定されるので、遮断部34Aが第1回路C1を遮断することで、安全性を向上させることができる。
【0102】
なお、変形例1において、分岐ブレーカ4B,4Cの第2検出部41が第2回路C2でのアーク故障を検出している場合でも、アーク検知部33Aが第1回路C1でアーク故障が発生していないと検知した場合、遮断部34Aは内蔵の接点を開極させなくてもよい。そして、アーク検知部33Aは、複数の第2回路C2の全てでアーク故障が検出されていない第1状態での第1感度に比べて、複数の第2回路C2のいずれかでアーク故障が検出された第2状態での第2感度を高感度に設定してもよい。これにより、アーク故障が発生しやすいと想定される第2状態において、アーク検知部33Aがアーク故障の発生を確実に検知することができる。
【0103】
(3.2)その他の変形例
上記の実施形態では、アーク検出システム100の各機能が主幹ブレーカ3に備えられ、変形例1では、アーク検出システム100Aの各機能が分岐ブレーカ4Aに備えられているが、アーク検出システムの各機能が監視ユニット7又はコントローラ25等に備えられていてもよい。
【0104】
上記の実施形態では、アーク検知ユニットが分岐ブレーカ4であるが、アーク検知ユニットは分岐ブレーカ4に限定されない。アーク検知ユニットは、第2回路C2でのアーク故障の有無を検知する第2検出部と、アーク検出システム100と通信する通信部とを備えたコンセント22又はコンセント22に接続されたテーブルタップ等でもよい。
【0105】
上記の実施形態において、通信部32が、アーク検知部33の検知結果をアーク検知ユニットである分岐ブレーカ4に送信してもよい。この場合、分岐ブレーカ4は、主幹ブレーカ3のアーク検知部33が第1検出部31の検出結果に基づいてアーク故障の有無を検知した結果を取得することができる。分岐ブレーカ4の第2検出部41は、主幹ブレーカ3のアーク検知部33での検知結果を考慮して、第2回路C2でのアーク故障の有無を検出できるので、第2検出部41でのアーク故障の検出精度が向上するという利点がある。
【0106】
上記の実施形態において、アーク検出システム100,100Aは、アーク検知部33,33Aの検知結果を外部システムに送信してもよい。外部システムは、一例として、クラウド、監視ユニット7、コントローラ25、又は管理サーバ300等である。例えば、アーク検出システム100の各機能を有する主幹ブレーカ3は、通信部32を介して監視ユニット7、コントローラ25、又は管理サーバ300へアーク検知部33の検知結果を送信してもよい。また、主幹ブレーカ3は、通信部32、監視ユニット7及びネットワーク200を介して、クラウドにアーク検知部33の検知結果を送信してもよい。この態様では、外部システムは、例えばアーク検知部33の検知結果をビッグデータとして収集することで、配線C11でのアーク故障の発生の傾向、又はアーク故障に対処するための措置等を研究するのに役立てることが可能である。
【0107】
また、アーク検出システム100,100Aは、インターネット等のネットワーク200を介して管理サーバ300及び情報端末400と通信する通信機能を有していなくてもよい。この態様では、ユーザに対する検知結果の通知は、分電盤1にて行われることになる。
【0108】
また、アーク検出システム100,100Aのアーク検知部33,33A、及び、アーク検知ユニットの第2検出部41は、例えば機械学習された分類器を用いて、回路でアーク故障が発生しているか否かを検知する態様であってもよい。分類器は、回路に流れる電流の検出結果を入力データとして、回路でのアーク故障の有無を出力する。分類器は、アーク検出システム100,100A及びアーク検知ユニットの使用中において、再学習を実行可能であってもよい。
【0109】
分類器は、例えばSVM(Support Vector Machine)等の線形分類器の他、ニューラルネットワークを用いた分類器、又は多層ニューラルネットワークを用いた深層学習(ディープラーニング)により生成される分類器を含み得る。分類器が学習済みのニューラルネットワークを用いた分類器である場合、学習済みのニューラルネットワークは、例えばCNN(Convolutional Neural Network:畳み込みニューラルネットワーク)、又はBNN(Bayesian Neural Network:ベイズニューラルネットワーク)等を含み得る。この場合、アーク検知部33,33A、及び、第2検出部41は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)又はFPGA(Field-Programmable Gate Array)等の集積回路に、学習済みのニューラルネットワークを実装することで実現される。
【0110】
また、電流計測装置8はロゴスキコイルを有する態様に限定されず、例えば、変流器(カレントトランス)、ホール素子、GMR(Giant Magnetic Resistances)素子等の磁気抵抗素子、シャント抵抗等のセンサを有する態様でもよい。
【0111】
また、上記の実施形態では、監視ユニット7の外部にバックアップ電源9が設けられているが、この構成に限らず、監視ユニット7にバックアップ電源9が内蔵されていてもよい。
【0112】
(まとめ)
以上説明したように、第1の態様のアーク検出システム(100,100A)は、第1検出部(31,31A)と、通信部(32,32A)と、アーク検知部(33,33A)と、を備える。第1検出部(31,31A)は、第1回路(C1)に流れる電流を検出する。通信部(32,32A)は、第2検出部(41)を有するアーク検知ユニット(4)と通信する。第2検出部(41)は、第1回路(C1)に電気的に接続される第2回路(C2)でのアーク故障の有無を検出する。アーク検知部(33,33A)は、第1検出部(31,31A)の検出結果と、通信部(32,32A)がアーク検知ユニット(4)から受信する第2検出部(41)の検出結果とに基づいて、第1回路(C1)と第2回路(C2)とを含む回路(C100)でのアーク故障の有無を検知する。
【0113】
この態様によれば、アーク故障の発生を確実に検出可能なアーク検出システム(100,100A)を提供することができる。
【0114】
第2の態様のアーク検出システム(100,100A)では、第1の態様において、アーク検知部(33,33A)は、第1回路(C1)及び第2回路(C2)のうちアーク故障が発生した回路を更に検知する。
【0115】
この態様によれば、アーク故障の発生を確実に検出可能なアーク検出システム(100,100A)を提供することができる。
【0116】
第3の態様のアーク検出システム(100,100A)では、第1又は第2の態様において、アーク検知部(33,33A)は、第1状態では、第1検出部(31,31A)の検出結果と第1閾値との大小を比較することで第1回路(C1)でのアーク故障の有無を検知する。第1状態は、アーク検知ユニット(4)の第2検出部(41)がアーク故障を検出していない状態である。アーク検知部(33,33A)は、第2状態では、第1検出部(31,31A)の検出結果と第2閾値との大小を比較することで第1回路(C1)でのアーク故障の有無を検知する。第2状態は、アーク検知ユニット(4)の第2検出部(41)がアーク故障を検出した後の状態である。第2閾値は、第1閾値よりも低い。
【0117】
この態様によれば、アーク故障の発生を確実に検出可能なアーク検出システム(100,100A)を提供することができる。
【0118】
第4の態様のアーク検出システム(100,100A)では、第1~第3のいずれかの態様において、通信部(32,32A)は、アーク検知部(33,33A)の検知結果をアーク検知ユニット(4)に送信する。
【0119】
この態様によれば、アーク故障の発生を確実に検出可能なアーク検出システム(100,100A)を提供することができる。
【0120】
第5の態様のアーク検出システム(100,100A)は、第1~第4のいずれかの態様において、回路でアーク故障が発生しているとアーク検知部(33,33A)が検知した場合に回路を遮断する第1回路用遮断部(34,34A)を更に備える。
【0121】
この態様によれば、アーク故障の発生を確実に検出可能なアーク検出システム(100,100A)を提供することができる。
【0122】
第6の態様のアーク検出システム(100,100A)では、第5の態様において、アーク検知ユニット(4)は、第2検出部(41)が第2回路(C2)でのアーク故障を検出すると第2回路(C2)を遮断する第2回路用遮断部(43)を有する。第1回路(C1)は、第2回路(C2)と電源(20)との間に電気的に接続されている。アーク検知ユニット(4)の第2検出部(41)が第2回路(C2)でのアーク故障を検出し、第2回路用遮断部(43)が第2回路(C2)を遮断している場合、第1回路用遮断部(34,34A)は、第1回路(C1)を遮断しない。
【0123】
この態様によれば、アーク故障の発生を確実に検出可能なアーク検出システム(100,100A)を提供することができる。
【0124】
第7の態様のアーク検出システム(100,100A)では、第5又は第6の態様において、第1回路(C1)と第2回路(C2)とは共通の電力配線から分岐している。アーク検知ユニット(4)の第2検出部(41)が第2回路(C2)でのアーク故障を検出している場合、第1回路用遮断部(34,34A)は、第1回路(C1)を遮断する。
【0125】
この態様によれば、アーク故障の発生を確実に検出可能なアーク検出システム(100,100A)を提供することができる。
【0126】
第8の態様のアーク検出システム(100,100A)では、第1~第7のいずれかの態様において、通信部(32,32A)は、外部システム(7,700)から、回路でのアーク故障に関連する、電流以外の関連事象の情報を受信する。アーク検知部(33,33A)は、通信部(32,32A)が受信する関連事象の情報に更に基づいて、アーク故障の有無を検知する。
【0127】
この態様によれば、アーク故障の発生を確実に検出可能なアーク検出システム(100,100A)を提供することができる。
【0128】
第9の態様のアーク検出システム(100,100A)では、第8の態様において、関連事象の情報は、環境情報と災害情報との少なくとも一方を含む。環境情報は、回路(C100)が存在する環境での温度、臭い、音及び煙の少なくとも1つに関連する情報である。災害情報は、回路(C100)の設置場所で発生する災害に関連する情報である。
【0129】
この態様によれば、アーク故障の発生を確実に検出可能なアーク検出システム(100,100A)を提供することができる。
【0130】
第10の態様のアーク検出システム(100,100A)では、第1~第9のいずれかの態様において、アーク故障が発生しているとアーク検知部(33,33A)が検知すると、アーク故障の発生を通知する通知情報を出力する出力部(32,32A)を更に備える。
【0131】
この態様によれば、アーク故障の発生を確実に検出可能なアーク検出システム(100,100A)を提供することができる。
【0132】
第11の態様のアーク検出方法は、検出処理と、受信処理と、アーク検知処理と、を含む。検出処理では、第1回路(C1)に流れる電流を検出する。受信処理では、アーク検知ユニット(4)からアーク故障の検出結果を受信する。アーク検知ユニット(4)は、第1回路(C1)に電気的に接続される第2回路(C2)でのアーク故障の有無を検出する。アーク検出処理では、検出処理での検出結果と、受信処理で受信するアーク故障の検出結果とに基づいて、第1回路(C1)と第2回路(C2)とを含む回路(C100)でのアーク故障の有無を検知する。
【0133】
この態様によれば、アーク故障の発生を確実に検出可能なアーク検出方法を提供することができる。
【0134】
第12の態様のプログラムは、第11の態様のアーク検出方法を、1以上のプロセッサに実行させるためのプログラムである。
【0135】
この態様によれば、アーク故障の発生を確実に検出できる。
【0136】
第13の態様の分電盤(1)は、第1~第10のいずれかの態様のアーク検出システム(100,100A)と、アーク検出システム(100,100A)を収容するキャビネット(10)とを備える。
【0137】
この態様によれば、アーク故障の発生を確実に検出可能なアーク検出システム(100,100A)を備えた分電盤(1)を提供することができる。
【0138】
上記態様に限らず、上記実施形態に係るアーク検出システム(100,100A)の種々の構成(変形例を含む)は、アーク検出方法、(コンピュータ)プログラム、又はプログラムを記録した非一時的記録媒体等で具現化可能である。
【0139】
第2~第10の態様に係る構成については、アーク検出システム(100,100A)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【符号の説明】
【0140】
1 分電盤
3 主幹ブレーカ(アーク検知システム)
4 分岐ブレーカ(アーク検知ユニット)
7 監視ユニット(外部システム)
10 キャビネット
20 電源
31,31A 第1検出部
32,32A 通信部(出力部)
33,33A アーク検知部
34,34A 遮断部(第1回路用遮断部)
41 第2検出部
43 遮断部(第2回路用遮断部)
100,100A アーク検出システム
700 災害情報提供サーバ(外部システム)
C1 第1回路
C2 第2回路
C100 回路