(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-02
(45)【発行日】2023-02-10
(54)【発明の名称】導電性組成物及びそれを用いた電子回路部材
(51)【国際特許分類】
C08L 33/20 20060101AFI20230203BHJP
C08K 3/01 20180101ALI20230203BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20230203BHJP
C08G 59/20 20060101ALI20230203BHJP
H01B 1/22 20060101ALI20230203BHJP
C08L 33/14 20060101ALI20230203BHJP
【FI】
C08L33/20
C08K3/01
C08L63/00 C
C08G59/20
H01B1/22 A
C08L33/14
(21)【出願番号】P 2020511086
(86)(22)【出願日】2019-03-29
(86)【国際出願番号】 JP2019013977
(87)【国際公開番号】W WO2019189750
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2021-11-10
(31)【優先権主張番号】P 2018069000
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100162765
【氏名又は名称】宇佐美 綾
(72)【発明者】
【氏名】深尾 朋寛
(72)【発明者】
【氏名】澤田 知昭
(72)【発明者】
【氏名】阿部 孝寿
【審査官】久保田 葵
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-101606(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0162128(US,A1)
【文献】特開2001-135140(JP,A)
【文献】特開2006-335861(JP,A)
【文献】国際公開第2022/030413(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L1/00-101/14
C08K3/00-13/08
C08G59/00-59/72
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともアクリル樹脂と導電性粉末とを含み、
前記アクリル樹脂は、エポキシ基を有する(メタ)アクリレートの重合単位(A)と、イソボルニル基を有する(メタ)アクリレートの重合単位(B)と
、ニトリル基を有する(メタ)アクリレートの重合単位(C)とを含み、
前記重合単位(B)の量は、前記アクリル樹脂100質量部に対して、5.0質量部以上50.0質量部以下であ
り、
前記重合単位(C)の量は、前記アクリル樹脂100質量部に対して、5.0質量部以上30.0質量部以下である、導電性組成物。
【請求項2】
前記重合単位(A)の前記アクリル樹脂全量に対するエポキシ当量が400~10000g/eqの範囲である、請求項1に記載の導電性組成物。
【請求項3】
さらに硬化剤(D)を含有する、請求項1
又は2に記載の導電性組成物。
【請求項4】
さらに硬化促進剤(E)を含有する、請求項1~
3のいずれかに記載の導電性組成物。
【請求項5】
さらに分散剤(F)を含有する、請求項1~
4のいずれかに記載の導電性組成物。
【請求項6】
さらに非導電性粉末(G)を含有する、請求項1~
5のいずれかに記載の導電性組成物。
【請求項7】
前記アクリル樹脂と前記導電性粉末の質量比率が30:70~5:95の範囲である、請求項1~
6のいずれかに記載の導電性組成物。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれかに記載の導電性組成物を用いて構成される
電子回路部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性組成物及びそれを用いた導電性構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロニクス分野、特にセンサ、ディスプレイ、ロボット用人工皮膚などの様々なインターフェースに用いられるデバイスや導電材料に対し、装着性や形状追従性の要求が高まっている。用途に応じて、曲面や凹凸面などに配置したり自由に変形させたりすることが可能な柔軟なデバイスが要求されつつある。
【0003】
そこで、フレキシブル性(伸張性)を有する導電性材料として、導電性金属と伸張性を有する樹脂を組み合わせることが検討されている。
【0004】
例えば、特許文献1では、ブロック共重合体および官能基含有エラストマーのうちから選ばれる少なくともいずれか1種と、連鎖状銀粉を含有する導電性組成物が開示されており、特許文献2でもブロック共重合体と銀粉を含む導電性組成物、特許文献3でも金属粉と樹脂(ゴム)を含む導電性膜が報告されている。また、特許文献4には、架橋性ケイ素基を有する有機ケイ素化合物と、導電性フィラーを含有する導電性組成物が、特許文献5には導電粉とエラストマー基材(シリコーンゴムポリマー)を含む導電性ペーストが、特許文献6には銀粒子と熱可塑性ポリエステル樹脂を有する導電性金属組成物が開示されている。特許文献7には、エポキシ樹脂とその他の重合性モノマー(イソボニル基を有するモノマーを含む)を含む加熱硬化型導電性ペーストも開示されている。
【0005】
しかしながら、上記特許文献1および2記載のようなブロック共重合体等と銀粉を含む導電性組成物は確かに伸張性には優れるものの、ブロック共重合体における低Tgセグメントや、官能基含有エラストマーを構成する脂肪族ウレタンアクリレート等は伸縮時の残留歪みが大きく、伸縮を繰り返し行った場合に抵抗値変化が大きくなるという問題がある。また、抵抗値が大きくなり、配線として実際に使用する際に不具合が生じる。さらに、耐熱性に劣るため、例えば、はんだによる部品実装ができないという問題もある。
【0006】
また、特許文献3記載の導電性膜は伸縮性と導電性を兼ね備えていると考えられるが、この導電性膜においても伸縮を繰り返した際の抵抗値変化は大きくなるという問題がある。
【0007】
特許文献4および特許文献5記載の導電性組成物や導電性ペーストは、その表面自由エネルギーが低いため、基材密着性が得られにくいという難点がある。
【0008】
さらに、特許文献6記載の導電性金属組成物も耐熱性が低く、例えば、はんだによる部品実装ができないという問題がある。
【0009】
また、特許文献7に記載の導電性ペーストのように、単にエポキシ基とイソボルニル基を含むというだけでは、伸縮性と導電性を兼ね備え、且つ伸縮を繰り返した際の抵抗値変化を抑制することは困難であることも本発明者らの知見によってわかってきた。
【0010】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、導電性および伸張性に優れ、かつ、繰り返し伸縮を行っても抵抗値の変動を抑制することができる導電性組成物並びにそれを用いた導電性構造体を提供することを課題とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】国際公開第2017/026420号
【文献】特開2015-178597号公報
【文献】国際公開第2016/114278号
【文献】特開2016-216636号公報
【文献】特許6165002号公報
【文献】特表2015-506061号公報
【文献】特開2016-191043号公報
【発明の概要】
【0012】
本発明者等は、鋭意検討した結果、下記構成の導電性組成物によって上記課題を解消し得ることを見出し、かかる知見に基づいて更に検討を重ねることによって本発明を完成した。
【0013】
すなわち、本発明の一つの局面に関する導電性組成物は、少なくともアクリル樹脂と導電性粉末とを含み、前記アクリル樹脂は、少なくともエポキシ基を有する(メタ)アクリレートの重合単位(A)と、イソボルニル基を有する(メタ)アクリレートの重合単位(B)とを含み、前記重合単位(B)の量が、前記アクリル樹脂100質量部に対して、5.0質量部以上50.0質量部以下であることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、導電性および伸張性に優れ、かつ、繰り返し伸縮を行っても抵抗値の変動を抑制することができる導電性組成物並びにそれを用いた導電性構造体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る実施形態について具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0016】
以下、本実施形態の導電性組成物に含まれる各成分について説明する。なお、本実施形態の導電性組成物は、硬化前(未硬化又は半硬化)の組成物である。すなわち、後述する重合単位(A)におけるエポキシ基が未架橋状態となっている。
【0017】
また、本実施形態の導電性組成物は硬化物にして用いることもでき、ここでいう硬化物とは、導電性組成物に硬化するための十分な熱や光などのエネルギーを与えるプロセスを経て、硬化反応が終了した状態を指す。本実施形態の導電性組成物の硬化物はさらに熱を与えても可塑性を示すことが無い耐熱性に優れた状態で、不溶不融である。
【0018】
(アクリル樹脂)
本実施形態の導電性組成物には、主成分としてアクリル樹脂が含まれる。ここで言うアクリル樹脂とは、アクリロイル基又はメタクリロイル基を1つ以上有する化合物を重合反応させて得られる高分子化合物を指す。本実施形態において、前記アクリル樹脂はバインダーとしての役割を果たし、組成物の硬化物に伸張性を付与する。本実施形態において「伸張性がある」とは、破断するまでの伸長率が5.0%以上であり、好ましくは10%以上、より好ましくは25%以上、さらに好ましくは50%、最も好ましくは100%以上であることをさす。また、25℃室温における引張弾性率が0.5MPa~0.5GPa、好ましくは1MPa~300MPa、より好ましくは5MPa~100MPaである。一方、基材の伸縮性について、特に上限を設ける必要はないが、必要以上に伸張した場合、もとの形状を損なうという観点から、500%を超えないことが好ましい。本実施形態における伸長率は、実施例において破断伸び率[%]で示される。
【0019】
前記アクリル樹脂は、より確実に伸張性を付与するため、ガラス転移温度(Tg)が20℃以下であるアクリル樹脂を含むことが望ましい。また、前記アクリル樹脂は、エポキシ基を有する(メタ)アクリレートの重合単位(A)及びイソボルニル基を有する(メタ)アクリレートの重合単位(B)を含有する。
【0020】
(エポキシ基を有する(メタ)アクリレートの重合単位(A))
本実施形態において、前記アクリル樹脂は、エポキシ基を有する(メタ)アクリレートの重合単位(A)を含有する。この重合単位(A)は本実施形態のアクリル樹脂に架橋点を付与し、硬化可能とする。また、アクリル樹脂がエポキシ基を有することによって、加熱硬化後の硬化物における耐熱性が向上する。
【0021】
重合単位(A)の含有量は、特に限定はされないが、前記アクリル樹脂全量に対するエポキシ当量が400~10000g/eq程度となっていることが好ましい。エポキシ当量がこのような範囲であることにより、耐熱性と適度な弾性率を有する導電性組成物をより確実に得られると考えられる。前記エポキシ当量が400g/eq未満となると、硬化後の弾性率が高くなりすぎて伸張の際に破断するおそれがある。また、前記エポキシ当量が10000g/eqを超えると、硬化後の弾性率が低くなり、抵抗値の安定性が劣化するおそれがある。
【0022】
重合単位(A)を構成する(メタ)アクリレートモノマーの具体例としては、グリシジル(メタ)アクリレート、β-メチルグリシジル(メタ)アクリレート、β-エチルグリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルビニルエーテル、o-ビニルベンジルグリシジルエーテル、m-ビニルベンジルグリシジルエーテル、p-ビニルベンジルグリシジルエーテル、o-イソプロペニルベンジルグリシジルエーテル、m-イソプロペニルベンジルグリシジルエーテル、p-イソプロペニルベンジルグリシジルエーテル等が挙げられる。これらは、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0023】
(イソボルニル基を有する(メタ)アクリレートの重合単位(B))
本実施形態において、前記アクリル樹脂は、さらにイソボルニル基を有する(メタ)アクリレートの重合単位(B)を含有する。イソボニル基を持つこの重合単位(B)成分を含んでいることにより、上述したように、導電性および伸張性に優れ、かつ、繰り返し伸縮を行ったとしても抵抗値が大きく変動することがないため、電気抵抗の安定性に優れた導電性組成物が得られる。より具体的には、上述の組成物に含まれるアクリル樹脂がイソボニル基を持つことで、その構造から立体障害の効果を付与し、伸縮時の残留歪みを軽減することができると考えられる。その結果、繰り返し伸縮を行ったとしても抵抗値が大きく変動することがないため、電気抵抗の安定性に優れた導電性組成物となる。
【0024】
イソボルニル基を有するアクリレートまたは(メタ)アクリレートとしては、特に限定はされないが、例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート等が具体例として挙げられる。
【0025】
本実施形態の導電性組成物は、重合単位(B)成分を、前記アクリル樹脂100質量部に対して、5.0質量部以上50.0質量部以下で含有している。この範囲の含有量であれば、上述した効果を得ることができる。重合単位(B)成分の含有量がこれより下回ると、電気抵抗の変動を十分に抑制できない。また、含有量が上記範囲を超えると、エポキシ基を有する(メタ)アクリレートの重合単位(A)の反応性が低くなり、加熱硬化後の導電性組成物の耐熱性が劣るため好ましくない。また、導電性組成物の粘度が大きくなり、印刷適性という観点でも好ましくない。
【0026】
(ニトリル基を有する(メタ)アクリレートの重合単位(C))
本実施形態において、前記アクリル樹脂はニトリル基を有する(メタ)アクリレートの重合成分(C)をさらに含んでいてもよい。このようにニトリル基を有する(メタ)アクリレートをさらに含むことによって、ニトリル基同士が水素結合するため、組成物が柔らかくなりすぎることを防ぐことができ、また、耐熱性もより向上すると考えられる。
【0027】
ニトリル基を有する(メタ)アクリレートとしては、特に限定はされないが、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が具体例として挙げられる。
【0028】
本実施形態の導電性組成物は、重合単位(C)成分を、前記アクリル樹脂100質量部に対して、5.0質量部以上30.0質量部以下で含有することが好ましい。この範囲の含有量であれば、硬化物における弾性率が適度な範囲となり、抵抗値の安定性もより向上すると考えられる。前記アクリル樹脂は、重合単位(A)、(B)、(C)以外のその他の重合単位を含んでいても良い。
【0029】
具体的には、例えば、下記式(1)で表されるアクリルモノマーなどが挙げられる。
【0030】
【0031】
前記式(1)において、R1は水素またはメチル基であり、R2は水素またはアルキル基である。
【0032】
アクリロイル基又はメタクリロイル基を1つ有する単官能(メタ)アクリル化合物としては、例えば、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシ-2-メチルエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、3-フェノキシ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2ーフェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、4-フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、3-(2-フェニルフェニル)-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、EO変性p-クミルフェノールの(メタ)アクリレート、2-ブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2,4-ジブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2,4,6-トリブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、EO変性フェノキシ(メタ)アクリレート、PO変性フェノキシ(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(メタ)アクリレート、1-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-メチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-エチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、へキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、1-ナフチルメチル(メタ)アクリレート、2-ナフチルメチル(メタ)アクリレート、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、t-オクチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、7-アミノ-3,7-ジメチルオクチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
アクリロイル基又はメタクリロイル基を2つ以上有する多官能(メタ)アクリル化合物としては、例えば、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO,PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-へキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロイルオキシ)イソシアヌレート、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、EO変性2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシ)フェニル)プロパン、PO変性2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシ)フェニル)プロパン、EO,PO変性2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシ)フェニル)プロパン、フェニルエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、o-キシリレンジ(メタ)アクリレート、m-キシリレンジ(メタ)アクリレート、p-キシリレンジ(メタ)アクリレート、等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
本実施形態のアクリル樹脂は、炭素原子間に二重結合や三重結合のような不飽和結合を有しないことが好ましい。すなわち、アクリル樹脂の炭素原子同士は飽和結合(単結合)により結合されていることが好ましい。炭素原子間に不飽和結合を有さないことにより、経時的に酸化されたりすることもなく、より弾性を保つことができると考えられる。
【0035】
本実施形態で使用するアクリル樹脂は、重量平均分子量が5万以上300万以下であることが好ましく、20万以上85万以下であることがより好ましい。重量平均分子量がこの範囲であれば、耐薬品性および成形性により優れる組成物を得ることができると考えられる。
【0036】
本実施形態の導電性組成物中におけるアクリル樹脂の配合割合は、伸張性が得られる範囲であれば特に限定はされないが、例えば、導電性組成物全体に対して、5.0~30.0質量%程度であることが好ましい。
【0037】
さらに、本実施形態の導電性樹脂組成物には、前記アクリル樹脂以外の樹脂が含まれていてもよく、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂等、目的に応じてさらに添加することもできる。
【0038】
(導電性粉末)
本実施形態の導電性組成物は、導電性粉末を含むことによって、導電性を備え、十分に低抵抗の配線材料等としても使用できる。(以下、導電性粉末を導電性フィラーと示す場合もある。)
【0039】
本実施形態における導電性粉末としては、導電性を有する粉末であれば特に限定はなく、銀、金、白金、パラジウム、銅、ニッケル、アルミニウム、マグネシウム、タングステン、コバルト、亜鉛、黄銅、モリブデン、タンタル、ニオブ、鉄、錫、クロム、鉛、チタン、マンガン、ステンレス、ニクロムなどの元素やこれらの元素を含む酸化物、窒化物、炭化物や合金等を用いることができる。また、これらの導電性粉末もしくは高分子材料粉末表面を、導電性を有する上記元素やこれらの元素を含む酸化物、窒化物、炭化物や合金等で一部もしくは全部を被覆したものも用いることができる。中でも、導電性、コストという観点から、銀、銅等を好ましく使用できる。これらは、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0040】
本実施形態における導電性粉末の形状に特に制限はないが、導電性という観点から、扁平形状であることが好ましい。例えば厚みと面内長手方向のアスペクト比が10以上であることが好ましい。アスペクト比が10以上であると、前記導電性粉末の表面積が大きくなり導電性が確保しやすい。前記アスペクト比は1000以下であれば、より良好な導電性及び印刷性が確保できるという観点から、10以上、1000以下であることが好ましく、20以上、500以下であることがより好ましい。このようなアスペクト比を有する導電性フィラーの例としては、タップ法により測定したタップ密度で6.0g/cm3以下である導電性フィラーが挙げられる。さらに、タップ密度が2.0g/cm3以下である場合には更にアスペクト比が大きくなるためより好ましい。
【0041】
実施形態における導電性粉末の粒子径に特に制限はないが、例えばスクリーン印刷時の印刷適性という観点から、レーザー光散乱方によって測定した平均粒径(体積累積50%における粒径;D50)が0.1μm以上、30.0μm以下であることが好ましく、1.0μm以上、10μm以下であることがより好ましい。
【0042】
実施形態における導電性粉末は表面をカップリング処理されていてもよい。あるいは、本実施形態の樹脂組成物にカップリング剤を含有させてもよい。それにより、バインダー樹脂と導電性フィラーの密着性がより向上するという利点がある。樹脂組成物に添加する、あるいは、導電性フィラーをカップリング処理するためのカップリング剤としては、フィラー表面に吸着またはフィラー表面と反応するものであれば特に制限なく用いることができ、具体的には、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミ系カップリング剤等が挙げられる。本実施形態においてカップリング剤を使用する場合、その添加量は、導電性組成物全体に対し、1質量%~20質量%程度とすることが好ましい。
【0043】
本実施形態の導電性組成物中における導電性粉末の配合割合は、導電性が得られる範囲であれば特に限定はされないが、例えば、前記アクリル樹脂との質量比で、アクリル樹脂:導電性粉末の質量比率が30:70~5:95の範囲であることが好ましい。これらの質量比率が前記範囲であれば、抵抗値が大きくなり過ぎず、かつ、組成物の硬化後の伸張性にもより優れると考えられる。より好ましい質量比率は、アクリル樹脂:導電性粉末=25:75~10:90である。
【0044】
実施形態における導電性組成物は、前記導電性粉末以外にも、導電性をより改善する目的で、導電性あるいは半導電性の導電助剤を加えてもよい。このような導電性あるいは半導電性の助剤としては、導電性高分子、イオン液体、カーボンブラック、アセチレンブラック、カーボンナノチューブや帯電防止剤に用いられる無機化合物等を用いることができ、1種類で使用しても2種類以上を同時に用いても構わない。特にカーボンブラックを用いた場合には、本発明に係る樹脂組成物の硬化物の破断伸び率を向上させることができる利点がある。
【0045】
さらに、本実施形態に係る前記導電性組成物は、本発明の効果を損なわない範囲でその他の添加剤、例えば、硬化剤(D)、硬化促進剤(硬化触媒)(E)、分散剤(F)、非導電性粉末(G)等を含有することができる。
【0046】
また、上記以外にも、難燃剤、難燃助剤、レベリング(表面調整)剤、着色剤、芳香剤、可塑剤、pH調整剤、粘性調整剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、滑剤、希釈溶剤(H)等を必要に応じて含有してもよい。
【0047】
(硬化剤(D))
本実施形態で使用できる硬化剤としては、エポキシの硬化剤として働くものであれば、特に制限はない。具体的には、例えば、フェノール樹脂、アミン系化合物、酸無水物、イミダゾール系化合物、スルフィド樹脂、ジシアンジアミド、メルカプト系化合物、オニウム塩、過酸化物などが例として挙げられる。また、光・紫外線硬化剤、熱カチオン硬化剤なども使用できる。これらは、状況に応じて、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、硬化剤(D)の添加量はエポキシ当量に合わせて適宜設定する。
【0048】
(硬化促進剤(E))
本実施形態で使用可能な硬化促進剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、イミダゾール類及びその誘導体、有機リン系化合物、オクタン酸亜鉛等の金属石鹸類、第二級アミン類、第三級アミン類、第四級アンモニウム塩等を用いることができる。これらは、状況に応じて、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
硬化促進剤(E)を使用する場合、その含有量は、前記導電性組成物に含まれる前記アクリル樹脂に対し、0.01~1質量%となるように使用することが好ましい。
【0050】
(分散剤(F))
本実施形態の導電性組成物には、導電性粉末と樹脂の分散安定性を向上させる目的で(F)分散剤をさらに添加することが好ましい。分散剤として効果が認められればどのような分散剤でも特に限定はされないが、例えば、酸基を含む共重合物、顔料親和性ブロック共重合物、リン酸エステル系化合物、ポリエーテルリン酸エステル系化合物、脂肪酸エステル系化合物、アルキレンオキサイド共重合物、変性ポリエーテル重合物、脂肪酸誘導体、ウレタンポリマー等が挙げられる。市販の分散剤としては、ビックケミー社製DISPERBYKシリーズ;日本ルーブリゾール社製SOLSPERSEシリーズ;BASF社製ソカラン、タモール、Efkaシリーズ;エレメンティス社製Nuosperseシリーズ;楠本化成社製ディスパロンシリーズ;共栄社化学社製フローレンシリーズ;味の素ファインテクノ社製アジスパーシリーズ等が挙げられる。これらは、状況に応じて、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。その含有量は、前記導電性組成物に含まれる前記導電性粉末対し、0.01~10質量%となるように使用することが好ましい。
【0051】
(非導電性粉末(G))
本実施形態の組成物には、導電性粉末の分散安定性と適正な印刷を行うためのチキソ性を付与するために非導電性粉末を添加してもよい。それにより、本実施形態においてバラつきの少ない高い印刷品質を有する導電パターンを得ることができる。また、組成物に適度な硬度を付与し、伸張させた後の復元性(戻り)をより良好とすることができる。本実施形態で使用可能な非導電性粉末としては、特に限定されるものではないが、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ペンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素等が挙げられる。これらは、状況に応じて、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。非導電性粉末(G)を添加する場合、その含有量は、前記導電性組成物に含まれる前記アクリル樹脂に対し、0.1~10質量%となるように使用することが好ましい。
【0052】
(希釈溶剤(H))
本組成物は、希釈溶剤を加えてペースト状又はワニス状にして使用できる。即ち本実施形態において印刷時の作業性やポットライフを制御する目的で希釈溶剤を更に用いることが好ましい。希釈用剤としては、例えば、炭化水素系、ケトン系、エステル系、エーテル系、グリコール系、グリコールエステル系、グリコールエーテル系、グライム系などの有機溶剤を用いても良くこれらは1種類でも2種類以上を併用しても良い。
【0053】
炭化水素系溶剤の具体例としては、トルエン、キシレン、ソルベントナフサ、ヘキサン、イソヘキサン、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、デカン、ペンタン、イソペンタン、イソドデカンなどが挙げられる。
【0054】
ケトン系溶剤の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコールなどが挙げられる。
【0055】
エステル系溶剤の具体例としては、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸メトキシブチル、酢酸アミル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、乳酸エチル、乳酸メチル、乳酸ブチルなどが挙げられる。
【0056】
エーテル系溶剤の具体例としては、イソプロピルエーテル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジオキサン、メトキシメチルプロパンなどが挙げられる。
【0057】
グリコール系溶剤の具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トレチレングリコール、プロピレングリコールなどが挙げられる。
【0058】
グリコールエステル系溶剤の具体例としては、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどが挙げられる。
【0059】
グリコールエーテル系溶剤の具体例としては、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、メイルトリグリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、メトキシメチルブタノール、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、ジプロピレングリコールメチルエーテルなどが挙げられる。
【0060】
グライム系溶剤の具体例としては、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジメトキシテトラエチレングリコール、ジプロピレングリコールジメチルエーテルなどが挙げられる。
【0061】
その他の溶剤としては、ジクロロメタン、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、γ―ブチロラクタム、エチルピロリドン、メチルピロリドン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、二塩基酸エステル、エチルエトキシプロピオネ-ト、テトラメチレンスルホン、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、スチレンモノマー、アセトニトリル、アセトニトリル、ジオキソラン、γブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソニル、フタル酸ジブチル、コハク酸ジメチル、コハク酸ジエチルなどが挙げられる。これらは、状況に応じて、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0062】
(導電性組成物の調製方法)
本実施形態の導電性組成物の調製方法については特に限定はなく、例えば、上述した樹脂成分と導電性粉末と、必要に応じて硬化剤や分散剤等と、溶媒とを均一になるように混合・撹拌させて本実施形態の導電性組成物を得ることができる。混合・攪拌の方法については特に限定はなく、自転―公転式ミキサーや3本ロールミル等の高せん断分散装置が好ましく用いられる。さらに真空脱泡を行ってもよい。
【0063】
(用途)
本実施形態の導電性組成物は、硬化物にして繰り返し伸縮させても導電性が失われないだけではなく、変形による抵抗変化が小さいため、本実施形態の導電性組成物の硬化物である成形体は、エレクトロニクス用途に用いたり、様々な用途において各種電子部品の材料として用いることができる。具体的には、例えば、ストレッチャブルな電極、配線回路としてディスプレイ、折り曲げ可能な電子ペーパー、タッチパネル、タッチセンサ、太陽電池等に好適に用いることができる。
【0064】
すなわち、本発明には、導電性組成物を用いて構成されるこれらの導電性構造体も包含される。また、本発明に係る導電性組成物及び導電性構造体は、IoTや、光学分野、電子分野、接着分野、医療分野など様々な技術分野にも適用できるため、産業利用上非常に有利である。
【0065】
(導電パターン等の形成およびそれを用いた電子回路部材)
本実施形態の導電性樹脂組成物を、例えば、フィルムや織物といった基材上に塗布または印刷することによって、導電性樹脂組成物の塗膜を形成し、所望の導電パターンまたは導電膜などを形成することができる。本発明には、そのような導電パターンまたは導電膜を有する電子回路部材も包含される。
【0066】
本実施形態において、導電パターンや導電膜を形成する対象となる基材としては、様々なフィルムや織物などを使用することができる。具体的には、例えば、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンスルホン、ウレタン、シリコンなどの有機系フィルムのほか、プリント配線板に使われるような繊維強化プラスチックや、ポリエステル、レーヨン、アクリル、ウール、木綿、麻、絹、ポリウレタン、ナイロン、キュプラといった繊維による織物であって、導電性樹脂組成物を塗布できるか、または印刷に耐えうるものであれば特に制限なく用いることができる。
【0067】
前記導電パターンや導電膜などは、以下のような工程によって形成することができる。すなわち、まず、本実施形態の樹脂組成物を基材上に塗布または印刷することで塗膜を形成し、乾燥により塗膜に含まれる揮発成分を除去する。その後の加熱や電子線、光照射といった硬化工程により、アクリル樹脂成分と硬化剤を硬化させる工程、並びに、カップリング剤と(C)導電性フィラーとを反応させる工程により、導電性膜または導電性パターンを形成することができる。前記硬化工程や反応工程における各条件は特に限定されず、樹脂、硬化剤、フィラー等の種類や所望の形態によって適宜設定すればよい。
【0068】
本実施形態の導電性組成物を基材上に塗布する工程は、特に限定されないが、例えば、アプリケーター、ワイヤーバー、コンマロール、グラビアロールなどのコーティング法やスクリーン、平板オフセット、フレキソ、インクジェット、スタンピング、ディスペンス、スキージなどを用いた印刷法を用いることができる。
【0069】
以下に、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0070】
まず、本実施例で用いた各種材料は次の通りである。
(アクリル樹脂)
イソボルニルアクリレート、アクリロニトリル、グリシジルメタクリレートおよび下記式(1)で表されるアクリルモノマーからなるアクリル樹脂をエチルカルビトールで溶解・希釈したもの(ナガセケムテックス社製「PMS-14-56」、固形分比率30.0質量%)を用いた。
【0071】
【0072】
前記式(1)において、R1は水素またはメチル基であり、R2は水素またはアルキル基である。
(導電性粉末)
・銀粉(福田金属箔粉工業株式会社製「Ag-XF-301K」)
・カーボンブラック(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製「ECP200L」)
(硬化促進剤)
・イミダゾール系硬化促進剤(四国化成製「2E4MZ」、2エチル4メチルイミダゾール)
(分散剤)
・湿潤分散剤(ビックケミージャパン株式会社製「DISPERBYK-2155」)
・カーボンブラック分散剤(ビックケミージャパン株式会社製「BYK-9076」)
(非導電性粉末)
・微粉末シリカ(日本アエロジル社製、「RX200」)
【0073】
〔樹脂の配合〕
実施例および比較例で使用する樹脂は、表1に示す配合組成(質量部)で、樹脂1~14とした。なお、グリシジルメタクリレートについては、アクリレート全量におけるエポキシ当量が表に示す値となるように添加した(いずれも0.1質量%未満)。
【0074】
【0075】
〔導電性組成物の調製〕
表2に示す配合組成(質量部)を、組成物の固形分がおよそ70質量%になるように溶剤(ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート)に添加して、自転-公転式ミキサー(THINKY社「ARV-310」、2000rpm-3分)で撹拌することによって各成分を均一に混合し、次いで2.6kPaになるように設定し、1分間攪拌することで脱泡を行い、実施例1~16および比較例1~4の導電性組成物を調製した。
【0076】
【0077】
〔評価〕
(体積抵抗値)
上記で得られた各実施例および比較例の導電性樹脂組成物を、PET基材(PET-O2-BU、三井化学東セロ社製)上に、アプリケータ(標準膜厚200μm、TP技研社製)で塗布し、電気オーブンにて100℃10分、及び170℃で60分加熱した。
【0078】
得られた各実施例および比較例のサンプルの膜厚をマイクロメータ(MDC-MXD、ミツトヨ社製)で計測した。抵抗率計(MCP-T370、三菱化学アナリテック製)に膜厚の値を入力し、その表面を4端子法にて体積抵抗率を計測した。5点以上の計測結果の平均値を体積抵抗値として採用した。
【0079】
(弾性率および破断伸び率)
上記で得られた各実施例および比較例の導電性樹脂組成物を、PET基材(PET-O2-BU、三井化学東セロ社製)上に、アプリケータ(標準膜厚200μm、TP技研社製)で塗布し、電気オーブンにて100℃10分、及び170℃で60分加熱した。
【0080】
得られた各実施例および比較例のサンプルの膜厚をマイクロメータ(MDC-MXD、ミツトヨ社製)で計測した。得られた各実施例および比較例のサンプルを、裁断機(SDL-100、ダンベル社製)を用いて試験用形状(SDMK-1000、ダンベル社製)に切断した。その後、PETフィルムから剥離したサンプルを卓上型精密万能試験機(オートグラフAGS-X、島津製作所社製)に取り付けた。移動速度25mm毎秒で引っ張り試験を行い、5%伸長した時の値から弾性率を算出した。3点以上の計測結果の平均値を弾性率の値として採用した。また、フィルムが破断し応力が0になったときの移動量から伸び率を算出し、破断伸び率とした。3点以上の計測結果の平均値を破断伸び率の値として採用した。
【0081】
(伸長時断線耐性)
上記で得られた各実施例および比較例の導電性樹脂組成物をウレタンフィルム(ST-604、BEMIS社製)にスクリーン版を用いて幅1mm、長さ13mmの細線を印刷し、電気オーブンにて100℃10分、及び170℃で60分加熱した。
【0082】
得られた各実施例および比較例のサンプルを高精度自動ステージに80mmの間隔で固定した。サンプルの両端でデジタルマルチメータ(PC720M、三和電機計器社製)を用いて抵抗値を計測しながら0.1mm毎秒で伸長させた。導電性組成物が断線し回路がオープンになったときのステージの移動量から断線時の伸び率を算出し、4段階で評価した。
【0083】
◎・・・100%以上
〇・・・75%以上100%未満
△・・・50%以上75%未満
×・・・50%未満
(20%伸縮時抵抗値安定性)
上記で得られた各実施例および比較例の導電性樹脂組成物をウレタンフィルム(ST-604、BEMIS社製)にスクリーン版を用いて幅1mm、長さ13mmの細線を印刷し、電気オーブンにて100℃10分、及び170℃で60分加熱した。
【0084】
得られた各実施例および比較例のサンプルを高精度自動ステージに80mmの間隔で固定した。サンプルの両端でデジタルマルチメータ(PC720M、三和電機計器社製)を用いて抵抗値を計測しながら、16mmの移動量を6.4mm毎秒で伸縮を1000回繰り返し行った。試験開始前の抵抗値RSと終了直前の抵抗値REとの比RE/RSを算出し、4段階で評価した。
【0085】
◎・・・100未満
〇・・・100以上200未満
△・・・200以上300未満
×・・・300以上
(耐熱性)
上記で得られた各実施例および比較例の導電性樹脂組成物をポリイミドフィルム(ユーピレックスS、宇部興産社製)にスクリーン版を用いて幅1mm、長さ13mmの細線を印刷し、電気オーブンにて100℃10分、及び170℃で60分加熱した。
【0086】
得られた各実施例および比較例のサンプルを搬送キャリア(MagiCarrier)に貼り付け、電気オーブンにて260℃で5分間加熱した。取り出した直後、10gの分銅を細線上に乗せ1分間放置し、取り除いた跡を目視にて評価する。
【0087】
〇・・・異常なし
×・・・跡が残る、剥離するなどの異常あり
以上の評価試験結果を表3にまとめる。
【0088】
【0089】
(結果・考察)
以上の結果より、本発明に係る導電性組成物は、弾性率に優れ、大きく伸張させても破断することがなく、伸張時破断耐性に優れることが示された。そして、伸縮を繰り返した後でも抵抗値が安定していることが確認できた。
【0090】
これに対し、重合単位(B)成分であるイソボルニル基を有する(メタ)アクリレートを含有していない樹脂11や樹脂12を用いた比較例1および2では、伸張時破断耐性も伸縮時の抵抗値安定性にも劣る結果となった。特に、比較例2では引っ張り試験の途中で破断してしまい、弾性率を測定することもできなかった。これは立体障害の効果を付与するイソボルニル基がないため、アクリロニトリルの水素結合性の寄与度が大きくなり、結果として硬く脆い硬化物となったと推測される。一方、重合単位(B)の含有量が多すぎる樹脂13を使用した比較例3でも、十分な伸張時破断耐性も伸縮時の抵抗値安定性も得ることができなかった。これは多くを占めるイソボルニル基によってエポキシ基の反応性が小さくなり、十分な熱硬化反応が行われなかったためを推測される。エポキシ基を有するアクリレートを含んでいない樹脂14を使った比較例4では耐熱性に劣る結果となった。
【0091】
この出願は、2018年3月30日に出願された日本国特許出願特願2018-69000を基礎とするものであり、その内容は、本願に含まれるものである。
【0092】
本発明を表現するために、前述において具体例や図面等を参照しながら実施形態を通して本発明を適切かつ十分に説明したが、当業者であれば前述の実施形態を変更及び/又は改良することは容易になし得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態又は改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態又は当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明は、電子材料やそれを用いた各種デバイスに関する技術分野において、広範な産業上の利用可能性を有する。