(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-02
(45)【発行日】2023-02-10
(54)【発明の名称】熱交換器
(51)【国際特許分類】
F28F 1/32 20060101AFI20230203BHJP
F28D 1/047 20060101ALN20230203BHJP
【FI】
F28F1/32 Y
F28F1/32 F
F28F1/32 S
F28D1/047 B
(21)【出願番号】P 2019084565
(22)【出願日】2019-04-25
【審査請求日】2021-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【氏名又は名称】徳山 英浩
(74)【代理人】
【識別番号】100091524
【氏名又は名称】和田 充夫
(74)【代理人】
【識別番号】100172236
【氏名又は名称】岩木 宣憲
(72)【発明者】
【氏名】高見 文宣
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-213386(JP,A)
【文献】実開昭64-022184(JP,U)
【文献】実開昭53-022148(JP,U)
【文献】特開昭61-101796(JP,A)
【文献】特開2009-250491(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 1/32
F28D 1/047
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重力方向に並んで配置された複数の伝熱フィン群と、前記複数の伝熱フィン群の各々を前記重力方向と交差する貫通方向に貫通し空気と熱交換する媒体が内部を流通する伝熱管とを備え、
前記複数の伝熱フィン群の各々は、前記貫通方向に所定の間隔を空けて配置された複数の伝熱フィンを有し、
前記複数の伝熱フィンの各々が、
前記重力方向に沿って延びる本体部と、
前記本体部の前記重力方向の下縁部に前記重力方向および前記貫通方向に交差する幅方向に並んで配置され、前記本体部に対して傾斜している、前記重力方向の下側に向かって先細り状の複数の突起部とを有し、
前記突起部の先端が、前記重力方向の下側に隣接する伝熱フィン群の前記複数の伝熱フィンのうち、隣接する伝熱フィンの間にそれぞれ位置して
おり、
隣接する前記突起部が、前記本体部に対して相互に異なる側に傾斜している、熱交換器。
【請求項2】
前記突起部の前記先端が、前記重力方向の下側に隣接する前記伝熱フィン群の前記複数の伝熱フィンのうち、前記突起部の前記先端に最も近い隣接する伝熱フィンの前記本体部の間の中央に位置している、請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前突起部の表面に、前記重力方向に延びる溝が設けられている、請求項1
または2に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記突起部を含む前記複数の伝熱フィンの各々の前記重力方向の下縁部が、撥水処理されている、請求項1から
3のいずれか1つに記載の熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
熱交換器を備えた冷熱機器の代表的なものとして冷凍冷蔵庫が挙げられる。一般的な冷凍冷蔵庫は、24時間連続的に通電されており、環境負荷低減あるいは商品力向上のために、省電力化が求められている。
【0003】
冷凍冷蔵庫において、扉の開閉の際に周辺の高温多湿な空気が庫内に流入する。この多湿な空気が庫内を循環し、庫内の空気を冷却している蒸発器を通過する際に凝縮し、蒸発器に付着して、成長する。この現象を着霜といい、蒸発器の表面への着霜が進むと空気の通風抵抗が増え、風量が低下し、規定の冷却性能を維持することが出来なくなる。
【0004】
このため、一般的な冷凍冷蔵庫では、低下した冷却性能を回復するために、定期的に霜を除去するための除霜運転を行っている。一般的な除霜運転としては、蒸発器内あるいはその近傍にヒータを設置し、蒸発器およびその周囲を温め、霜を溶かす方法がある。このような除霜運転中は、冷却運転を停止しているため、除霜運転の時間短縮が必要になる。
【0005】
また一方で、蒸発器に水滴が残った状態で冷却運転に切り替わると、残った水滴を起点に霜が成長しやすくなり、本来の冷却能力で運転することができない。このことから、冷却能力を回復するためには、霜の溶けた除霜水の確実な排出も必要になる。
【0006】
除霜運転の時間短縮を目的とした蒸発器としては、例えば、蒸発器の伝熱フィンに重力方向に複数の溝を設けて、水切り性を向上させたものがある(特許文献1参照)。
図12は、特許文献1の蒸発器を示す図である。
【0007】
図12(a)は、特許文献1のフィンチューブ式の蒸発器全体を示す斜視図である。
図12(b)は、特許文献1の蒸発器に用いられるフィン101の斜視図である。前記蒸発器は、複数の伝熱フィン101と伝熱管102とにより構成されている。各フィン101は、重力方向に直交する水平方向に沿って所定の間隔を空けて配置されており、伝熱管102を挿入するための貫通孔を有している。各フィン101の表面には、接触角160°以上の撥水処理が施されていると共に、上端から下端まで重力方向に沿って直線的に延びる複数の溝103が全面に設けられている。各フィン101の表面に付着した霜は、除霜運転時に、融解して除霜水となる。この除霜水は、各フィン101の表面の接触角160°以上の撥水処理によって超撥水状態となり、重力方向に直線的に設けられた溝103を伝って自重により各フィン101の表面を滑落する。これにより、水切り性を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前記蒸発器の構成では、各フィン101に溝103を設けることで水滴と各フィン101との接触面積が増える。このため、各フィン101の重力方向の下縁部において除霜水が滑落しない場合がある。この場合、各フィン101の重力方向の下縁部に残った除霜水を起点に霜が成長して、通風抵抗が増えることによる冷却運転性能が低下したり、あるいは、除霜間隔が短くなったりして、消費電力が増加するおそれがある。
【0010】
また、前記蒸発器において、蒸発器の冷却能力を向上させるために隣り合うフィン101同士の間隔を狭くすると、各フィン101と水滴との接触面積が大きいことから、除霜水が、隣り合うフィン101とフィン101の間をまたいで留まり、滑落しない場合がある。このような霜の付着を回避するためには、隣接するフィン101の間隔をある程度広げなければならず、前記蒸発器では、隣接するフィン101の間隔を狭くすることにより、熱交換器として冷却時の単位体積当たりの熱交換能力を向上させることが難しい場合がある。
【0011】
本発明は、除霜時の水切り性を向上させつつ、冷却時の熱交換能力を向上させることができる熱交換器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の1つの態様に係る熱交換器は、
重力方向に並んで配置された複数の伝熱フィン群と、前記複数の伝熱フィン群の各々を前記重力方向に交差する貫通方向に貫通し空気と熱交換する媒体が内部を流通する伝熱管とを備え、
前記複数の伝熱フィン群の各々は、前記貫通方向に所定の間隔を空けて積層された複数の伝熱フィンを有し、
前記複数の伝熱フィンの各々が、
前記重力方向に沿って延びる本体部と、
前記本体部の前記重力方向の下縁部に設けられ、前記本体部に対して傾斜していると共に、前記重力方向の下側に向かって先細り状の突起部とを有し、
前記突起部の先端が、前記重力方向の下側に隣接する伝熱フィン群の前記複数の伝熱フィンのうち、隣接する伝熱フィンの間に位置しており、
隣接する前記突起部が、前記本体部に対して相互に異なる側に傾斜している。
【発明の効果】
【0013】
前記態様の熱交換器によれば、各伝熱フィンの重力方向の下縁部に設けられた突起部により、各伝熱フィンの重力方向の下縁部と除霜水との接触面積が減少し、除霜水を容易に滑落させることができる。また、各伝熱フィンの重力方向の下縁部(すなわち、突起部)を本体部に対して傾斜させることにより、冷却時および除霜時に各伝熱フィン群を通過する空気の流れを乱すことができるので、冷却時および除霜時の熱交換効率を向上させることが可能となる。加えて、突起部の先端を重力方向の下側に隣接する伝熱フィン群の複数の伝熱フィンのうちの隣接する伝熱フィンの間に配置することにより、突起部から水滴が滑落する際に、重力方向の下側に隣接する伝熱フィン群の複数の伝熱フィンのうちの隣接する伝熱フィンの間をまたいで留まった水滴をも同時に滑落させることができる。その結果、除霜時の水切り性を向上させつつ、冷却時の熱交換能力を向上させることが可能な熱交換器を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1実施の形態の熱交換器の(a)平面図および(b)側面図。
【
図2】
図1の熱交換器の伝熱フィンの(a)正面図および(b)側面図。
【
図3】
図1の熱交換器の伝熱フィン群の重力方向における位置関係を説明するための図。
【
図4】
図1の熱交換器の伝熱フィンの突起部を示す拡大平面図。
【
図5】
図1の熱交換器の突起部の折り曲げ角度範囲を示すグラフ。
【
図6】本発明の第2実施の形態の熱交換器の伝熱フィンの(a)正面図および(b)側面図。
【
図7】
図6の熱交換器の伝熱フィンの突起部を示す拡大平面図。
【
図8】
図6の熱交換器の突起部の折り曲げ角度範囲を示すグラフ。
【
図9】本発明の第3実施の形態の熱交換器の(a)隣接する一方の伝熱フィンの正面図および(b)隣接する他方の伝熱フィンの正面図。
【
図10】
図9の熱交換器の伝熱フィンの(a)正面図および(b)側面図。
【
図11】
図9の熱交換器の突起部の折り曲げ角度範囲を示すグラフ。
【
図12】(a)特許文献1の蒸発器の斜視図および(b)特許文献1の蒸発器のフィンの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向あるいは位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、「前」、「後」を含む用語)を用いるが、それらの用語の使用は図面を参照した本開示の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本開示の技術的範囲が限定されるものではない。また、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本開示、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。さらに、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは必ずしも合致していない。
【0016】
(第1実施の形態)
図1は、本発明の第1実施の形態における熱交換器の全体図である。
図1(a)は、第1実施の形態の熱交換器の平面図であり、
図1(b)は、第1実施の形態の熱交換器の側面図である。
【0017】
図1は、フィンチューブ式の熱交換器100であり、重力方向に並んで配置された複数の伝熱フィン群10と、各フィン群10を重力方向に交差、例えば、直交する貫通方向に貫通する伝熱管3とを備えている。各伝熱フィン群10は、貫通方向に所定の間隔を空けて配置された複数の伝熱フィン1を有している。伝熱管3は、熱交換する媒体が内部を流通するように構成されている。
【0018】
例えば、熱交換器100を備えた冷凍冷蔵庫では、冷却運転の際、図示しない圧縮機が駆動して伝熱管3内を冷媒が流れる。この冷媒が、伝熱管3内で蒸発することで各伝熱フィン1を介して空気と熱交換が行われ、冷凍冷蔵庫内が冷却される。このとき、図示しない空気循環ファンにより、熱交換器100の重力方向の下側から上側に向かって、すなわち、
図1に示す空気の流れ方向2に向かって空気が流れる。
【0019】
また、除霜運転の際、冷却運転を停止して圧縮機および空気循環ファンを停止させる。そして、熱交換器100の重力方向の下方に配置された除霜用ヒータ4に電力が供給され、熱交換器100及びその周辺を温める。これにより、熱交換器100に付着した霜が溶けて除霜される。このとき、自然対流により、熱交換器100の重力方向の下側から上側に向かって空気が流れる。
【0020】
図2は、本発明の第1実施の形態の熱交換器100の伝熱フィン1を示す正面図および側面図である。
【0021】
図2に示すように、各伝熱フィン1は、一例として、薄板状で、伝熱管3を配置するための複数の貫通孔5を有している。第1実施の形態では、各伝熱フィン1には、重力方向および貫通方向に交差、例えば、直交、する幅方向に間隔を空けて設けられた3つの貫通孔5が設けられている。各貫通孔5は、その重力方向の両端にそれぞれ伝熱管3が配置されるように構成されている。各伝熱フィン1は、重力方向に沿って延びる本体部11と、本体部11の重力方向の下縁部に設けられ、幅方向に並んで配置された複数の突起部12とを有している。各突起部12は、重力方向の下側に向かって先細り状で、本体部11に対して折り曲げ角度7(例えば、30度)で傾斜している。なお、本実施の形態では、各突起部12は、プレス成型時に、本体部11に対して同じ側に傾斜するように折り曲げられて成形されている。
【0022】
図3は、本発明の第1実施の形態の熱交換器100の複数の伝熱フィン群10の重力方向における位置関係を示す拡大平面図である。
図4は、本発明の第1実施の形態の熱交換器100の各伝熱フィン1の突起部12を示す拡大平面図である。
【0023】
図3および
図4に示すように、重力方向の上側の伝熱フィン群10の各伝熱フィン1は、各突起部12の重力方向の下側の端(以下、先端13という。)が、重力方向の下側に隣接する伝熱フィン群10の複数の伝熱フィン1のうち、各突起部12に最も近い隣接する2枚の伝熱フィン1の間に配置されている。重力方向の上側の伝熱フィン群10の各伝熱フィン1の突起部12の先端13は、貫通方向において、重力方向の下側の伝熱フィン群10の突起部12に最も近い伝熱フィン1の本体部11とから、想定される水滴径である1mm以上離れて、すなわち、
図3に示すWが1mm以上になるように配置されているのが好ましい。なお、各伝熱フィン1の各突起部12の先端13は、重力方向の下側の伝熱フィン群10の各突起部12に最も近い隣接する伝熱フィン1の間の中央に位置しているのが、より好ましい。なお、各突起部12は、重力方向の下側に向かって先細り状であればよく、その先端13は、円弧状および三角形状など任意の形状を採用できる。
【0024】
かかる構成の熱交換器100によれば、各伝熱フィン1の重力方向の下縁部の突起部12により、各伝熱フィン1の重力方向の下縁部と除霜水との接触面積が減少し、除霜水を容易に滑落させることができる。また、各伝熱フィン1の重力方向の下縁部を重力方向に対して傾斜させることにより、冷却時および除霜時に各伝熱フィン群10を通過する空気の流れを乱すことができるので、冷却時および除霜時の熱交換効率を向上させることが可能となる。加えて、突起部12の先端13を重力方向の下側に隣接する伝熱フィン群10の複数の伝熱フィン1のうちの隣接する伝熱フィン1の間に配置することにより、突起部12から水滴が滑落する際に、重力方向の下側に隣接する伝熱フィン群10の複数の伝熱フィンのうちの隣接する伝熱フィン1の間をまたいで留まった水滴をも同時に滑落させることができる。その結果、除霜時の水切り性の向上に伴う除霜時間の短縮をさせつつ、冷却時の熱交換能力の向上を両立させることが出来る。可能な熱交換器を実現できる。例えば、第1実施の形態の熱交換器100を備えた冷凍冷蔵庫では、除霜運転時の除霜水の排出効果が向上し、除霜運転時間の短縮による除霜用ヒータ4の電力削減が可能となる。また、消費電力削減及び庫内昇温の抑制により、冷却品質を向上させることができる。加えて、本体部11に対して傾斜した突起部12により、冷却運転時に熱交換器100を流れる空気の流れが乱されて、空気と各伝熱フィン1との熱交換が促進される。すなわち、第1実施の形態の熱交換器100を備えた冷凍冷蔵庫では、冷却運転時の熱交換効率をも向上させることができるので、例えば、熱交換器100自体を小型化して庫内容積を増やすことが可能になる。これにより、商品力を強化することができる。
【0025】
図4は、本発明の第1実施の形態における各伝熱フィン1の突起部12の拡大平面図である。
【0026】
図4に示す様に、各伝熱フィン1の各突起部12は、重力方向の下側に先端13が配置された略三角形状を有している。各突起部12の表面には、重力方向に延びる複数の溝14が形成されている。第1実施の形態では、各溝14は、深さ2μmの微細溝で、各伝熱フィン1を圧延する時に圧延ローラにより形成されている。なお、各伝熱フィン1は、アルミ素材で構成されている。
【0027】
図5は、本発明の第1実施の形態における突起部12の折り曲げ角度7の範囲を示すグラフである。第1実施の形態の伝熱フィン1と同じ表面形状のアルミ素材を用意し、水平に配置した後、このアルミ素材に水滴を置き、アルミ素材を徐々に傾けて、水滴が滑落した角度を求める実験を行った。この実験のサンプル数は、大凡100程度である。
図5のグラフは、この実験の結果得られた水滴が滑落した角度の分布を示している。
【0028】
図5に示すように、各伝熱フィン1の突起部12の折り曲げ角度7が35度以下であれば、95%以上の水滴が滑落する。また、空気との熱交換効率を向上させるためには、折り曲げ角度7は、5度以上必要になる。よって、突起部12を本体部11に対して5度以上でかつ35度以下の折り曲げ角度7の範囲で傾斜させることで、除霜水の排出効果、すなわち、除霜時の水切り性を向上させつつ、熱交換効率すなわち、冷却時の熱交換能力を向上させることが可能になる。
【0029】
なお、本実施の形態において、各伝熱フィン1は、突起部12よりも重力方向の上側で折り曲げる場合に限らず、突起部12の重力方向の中間で、すなわち、
図4に示す一点鎖線Lで折り曲げてもよい。この場合でも同様の効果を得ることができる。
【0030】
突起部12の溝14は、深さ2μmの微細溝に限らず、重力方向に延びる溝であれば、任意の形状および大きさで構成することができる。
【0031】
熱交換器100は、冷凍冷蔵庫に用いられるフィンチューブ式の熱交換器に限らず、他の構成の冷熱機器であっても、フィンチューブ式の熱交換器と同様の構成の熱交換器であれば、水切り性の向上および熱交換能力向上の効果を得ることができる。
【0032】
(第2実施の形態)
図6は、本発明の第2実施の形態の熱交換器100の各伝熱フィン1の正面図および側面図である。第2実施の形態では、第1実施の形態と同じ構成要素については同じ符号を付して説明を省略する。
【0033】
図6(a)は、伝熱フィン1の正面図であり、
図6(b)は、伝熱フィン1の側面図である。
図7は、第2実施の形態の熱交換器100の各伝熱フィン1の突起部12の拡大平面図である。
【0034】
図6に示すように、第2実施の形態の熱交換器100は、各伝熱フィン1の隣接する突起部12が、本体部11に対して相互に異なる側に傾斜している点と、
図7に示すように、各突起部12の溝14が、幅方向に延びている点で、第1実施の形態の熱交換器100と異なっている。
【0035】
例えば、第2実施の形態の熱交換器100を備えた冷凍冷蔵庫では、各伝熱フィン1の隣接する突起部12が本体部11に対して相互に異なる側に傾斜し、各突起部12の溝14が幅方向に延びているので、冷却運転時に熱交換器100を流れる空気の流れが乱されて、空気と各伝熱フィン1との間の熱交換が促進される。すなわち、第2実施の形態の熱交換器100では、冷却時の熱交換効率を向上させることができるので、例えば、冷凍冷蔵庫に適用することで、熱交換器100自体を小型化して、庫内容積を増やすことが可能になる。これにより、商品力を強化することができる。
【0036】
図8は、第2実施の形態における突起部12の折り曲げ角度7の範囲を示すグラフである。第2実施の形態の伝熱フィン1と同じ表面形状のアルミ素材を用意し、水平に配置した後、このアルミ素材に水滴を置き、アルミ素材を徐々に傾けて、水滴が滑落した角度を求める実験を行った。この実験のサンプル数は、大凡100程度である。
図8のグラフは、この実験の結果得られた水滴が滑落した角度の分布を示している。
【0037】
図8に示すように、各伝熱フィン1の突起部12の折り曲げ角度7は、30度以下であれば95%以上の水滴が滑落する。また、空気との熱交換効率を向上させるためには、折り曲げ角度7は、5度以上必要になる。よって、突起部12を本体部11に対して5度以上でかつ30度以下の折り曲げ角度7の範囲で傾斜させることで、除霜水の排出効果を向上させつつ、熱交換効率を向上させることができる。
【0038】
(第3実施の形態)
図9は、本発明の第3実施の形態の熱交換器100の各伝熱フィン1の正面図である。第3実施の形態において、第1実施の形態と同じ構成要素については同じ符号を付して説明を省略する。
【0039】
第3実施の形態の熱交換器100は、
図9(a)に示す隣接する一方の伝熱フィン1と
図9(b)に示す隣接する他方の伝熱フィン1とは、突起部12の位相が180度ずれている点と、伝熱フィン1の表面の一部が撥水処理され、伝熱フィン1の表面の残りの部分が親水処理されている点とで、第1実施の形態の熱交換器100とは異なっている。例えば、第3実施の形態の熱交換器100を備えた冷凍冷蔵庫では、隣接する伝熱フィン1の位相が相互に異なっているので、言い換えると、隣接する伝熱フィン1の突起部12の先端13が、
図9の紙面貫通方向である貫通方向に沿って見たときに、重ならないように配置されているので、除霜運転時に除霜用ヒータ4の熱により発生する重力方向の下側から上側に向かって流れる空気の流れを乱して、霜の溶融を促進することができる。すなわち、第3実施の形態の熱交換器100では、除霜時の除霜効率を向上させることができる。
【0040】
図10は、本発明の第3実施の形態の熱交換器100の各伝熱フィン1の正面図および側面図である。
【0041】
図10に示すように、第3実施の形態の熱交換器100では、各伝熱フィン1の重力方向の下縁部である突起部12が撥水コーティング、すなわち、撥水処理され、各伝熱フィン1の突起部12を除いた部分全体が親水コーティングすなわち、親水処理されている。
【0042】
図11は、本発明の第3実施の形態における突起部12の折り曲げ角度7の範囲を示すグラフである。第3実施の形態の伝熱フィン1と同じ表面形状のアルミ素材を用意し、水平に配置した後、このアルミ素材に水滴を置き、アルミ素材を徐々に傾けて、水滴が滑落した角度を求める実験を行った。この実験のサンプル数は、大凡100程度である。
図11のグラフは、この実験の結果得られた水滴が滑落した角度の分布を示している。
【0043】
図11に示すように、各伝熱フィン1の突起部12の折り曲げ角度7が80度以下であれば、99%の水滴が滑落する。また、空気との熱交換効率を向上させるためには、折り曲げ角度7は5度以上必要になる。よって、突起部12を本体部11に対して5度以上でかつ80度以下の折り曲げ角度7の範囲で傾斜させることで、除霜水の排出効果を向上させつつ、熱交換効率を向上させることが可能になる。
【0044】
第3実施の形態の熱交換器100では、突起部12の位相が異なり先端13の位置がずれている
図9(a)の伝熱フィン1と
図9(b)の伝熱フィン1とが交互に配置されているので、第1実施の形態の熱交換器100にように、突起部12の先端13の位相が同じ伝熱フィン1を用いた場合に比べて、隣り合う伝熱フィン1の突起部12の先端13間の距離を、長く取ることが可能となる。この構成により、除霜水の排出効果を高めつつ、隣り合う伝熱フィン1同士の間隔を狭くして、単位体積当たりの熱交換効率を向上させることができるので、例えば、冷凍冷蔵庫に適用することで、熱交換器100自体を小型化して、庫内容積を増やすことが可能になる。これにより、商品力を強化することができる。伝熱フィン1の突起部12以外の箇所を親水コーティングすることにより、伝熱フィン1に付着した除霜水が水滴状にならずに流れていくので、除霜水の排出効果を高めつつ、単位体積当たりの熱交換効率を向上させるという効果をさらに高めることができる。また、突起部12全体に、撥水コーティングをすることで、折り曲げ角度の範囲を広くすることができるので、熱交換器100の設計自由度が向上する。折り曲げ角度7が30度程度でも、突起部12に撥水処理をしていない場合と比べて、水滴の水切り性を向上させることができる。その結果、除霜時の除霜水の排出効果が向上し除霜時間が短縮されるので、除霜用ヒータ4の電力が削減される結果、消費電力を削減することができる。また、除霜時間が短縮されることにより、庫内の昇温が抑えられるので、冷凍冷蔵庫の冷却品質を向上させることができる。
【0045】
なお、突起部12の表面を撥水コーティングしたが、突起部12の表面に親水コーティングした場合、あるいは、撥水構造を設けた場合でも同様の効果を得ることが出来る。
【0046】
また、隣り合う伝熱フィン1の突起部12の位相のずれは、180度に限らず、貫通方向に沿って見たときに隣り合う伝熱フィン1の突起部12の先端13の位置がずれていれば、同様の効果を得ることが出来る。
【0047】
なお、前記様々な実施の形態または変形例のうちの任意の実施の形態または変形例を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。また、実施の形態同士の組み合わせまたは実施例同士の組み合わせまたは実施の形態と実施例との組み合わせが可能であると共に、異なる実施の形態または実施例の中の特徴同士の組み合わせも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の前記態様の熱交換器は、例えば、家庭用の冷凍冷蔵庫、あるいは、業務用の冷熱機器に適用できる。さらに、自動車、船などの移動体用冷凍冷蔵庫の熱交換器にも適用できる。
【符号の説明】
【0049】
1 伝熱フィン
2 空気の流れ方向
3 伝熱管
4 除霜用ヒータ
5 貫通孔
7 折り曲げ角度
11 本体部
12 突起部