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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-02
(45)【発行日】2023-02-10
(54)【発明の名称】粉体供給装置
(51)【国際特許分類】
   B65G 65/46 20060101AFI20230203BHJP
   B65G 33/18 20060101ALI20230203BHJP
   B65G 65/40 20060101ALI20230203BHJP
【FI】
B65G65/46 B
B65G33/18
B65G65/40 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019093055
(22)【出願日】2019-05-16
(65)【公開番号】P2020186113
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2022-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100183265
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 剣一
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 佳幾
(72)【発明者】
【氏名】宍田 佳謙
(72)【発明者】
【氏名】末次 大輔
(72)【発明者】
【氏名】福田 一人
(72)【発明者】
【氏名】平松 俊哉
(72)【発明者】
【氏名】畑中 基
【審査官】福島 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-011012(JP,A)
【文献】実開昭59-057420(JP,U)
【文献】実開昭54-41446(JP,U)
【文献】特開2004-122698(JP,A)
【文献】特開昭51-47904(JP,A)
【文献】特公昭48-32166(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 65/46
B65G 33/18
B65G 65/40
B28B 3/22
B29C 48/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形体を連続的に生成する加圧成形機構に粉体材料を供給する粉体供給装置であって、
前記粉体材料が供給される導入口と、前記粉体材料が排出される排出口とを有する筐体と、
前記筐体の内部に配置され、回転駆動されることにより軸方向に前記粉体材料を搬送する1つまたは複数のスクリューと、
前記筐体の外部に配置され、前記1つまたは複数のスクリューを回転駆動するモータと、
前記筐体の内部の、前記1つまたは複数のスクリューと前記排出口との間に配置され、前記粉体材料の流れを整流する整流部と、
を備え、
前記整流部は、前記1つまたは複数のスクリューの軸方向、および前記排出口から排出される前記粉体材料の幅方向に垂直な回転軸を有し、前記回転軸を中心として回転可能である
粉体供給装置。
【請求項2】
前記整流部は、前記回転軸から一方の先端までの長さが、前記回転軸から他方の先端までの長さよりも短い
請求項1に記載の粉体供給装置。
【請求項3】
前記複数のスクリューは、
第1スクリューと、
第2スクリューと、
を含み、
前記第1スクリューおよび前記第2スクリューは、軸方向に並列に配置されて同じ方向に回転駆動され、
前記整流部の前記回転軸は、前記第1スクリューおよび前記第2スクリューのそれぞれの軸の延長線の間に配置されている
請求項1または2に記載の粉体供給装置。
【請求項4】
さらに、
前記モータを制御する制御部、
を備え、
前記制御部は、前記第1スクリューおよび前記第2スクリューを同じ回転数で回転駆動するよう前記モータを制御する
請求項3に記載の粉体供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、粉体供給装置に関する。
【0002】
セラミックスまたは金属等の粉体材料を加圧成形した粉末成形体を、その粉末の融点以下の温度で焼結することにより、粉体間に結合を生じさせて焼結体を得ることができる。粉末成形体を製法にはさまざまな方法がある。たとえば、特許文献1に示すように、スクリューフィーダ出口に、フィーダスクリューとともに回転する分散羽根を配置し、出口に滞留した材料を分散羽根で削り出すように排出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-63849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1において、粉体供給装置の幅方向における粉体材料の供給量の均一性については、未だ改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の粉体供給装置は、
成形体を連続的に生成する加圧成形機構に粉体材料を供給する粉体供給装置であって、
前記粉体材料が供給される導入口と、前記粉体材料が排出される排出口とを有する筐体と、
前記筐体の内部に配置され、回転駆動されることにより軸方向に前記粉体材料を搬送する1つまたは複数のスクリューと、
前記筐体の外部に配置され、前記1つまたは複数のスクリューを回転駆動するモータと、
前記筐体の内部の、前記1つまたは複数のスクリューと前記排出口との間に配置され、前記粉体材料の流れを整流する整流部と、
を備え、
前記整流部は、前記1つまたは複数のスクリューの軸方向、および前記排出口から排出される前記粉体材料の幅方向に垂直な回転軸を有し、前記回転軸を中心として回転可能である。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、粉体供給装置の幅方向における粉体材料の供給量の均一性を向上させた粉体供給装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示の粉体供給装置を上から見た模式図である。
図2図1の粉体供給装置のA-A’断面図である。
図3】2本のスクリューが同じ方向に回転する場合の、筐体内部を排出口側から見たときの図である。
図4】筐体内部において整流部付近の粉体材料の密度を示す図である。
図5】筐体内部において整流部付近の粉体材料の密度を示す図である。
図6】筐体内部において整流部付近の粉体材料の密度を示す図である。
図7】実施例1の粉体供給装置の構成を示す図である。
図8図7の粉体供給装置の筐体の内部を排出口側から見たときの図である。
図9】実施例1の粉体供給装置の幅方向における粉体材料の供給量割合の分布を示すグラフである。
図10】実施例2の粉体供給装置の幅方向における粉体材料の供給量割合の分布を示すグラフである。
図11】実施例3の粉体供給装置の幅方向における粉体材料の供給量割合の分布を示すグラフである。
図12】比較例1の粉体供給装置の幅方向における粉体材料の供給量割合の分布を示すグラフである。
図13】比較例2の粉体供給装置の幅方向における粉体材料の供給量割合の分布を示すグラフである。
図14】比較例3の粉体供給装置の幅方向における粉体材料の供給量割合の分布を示すグラフである。
図15】実施例1~3および比較例1~3の粉体材料の供給量割合のレンジを集計した表である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(本開示に至った経緯)
セラミックスや金属の粉体材料を加圧成形した粉末成形体を、その粉末の融点以下の温度で焼結することにより、粉体間に結合が生じて焼結体を得ることができる。これは、窯業製品、セラミックス、粉末冶金、またはサーメット等を製造する主要な方法である。
【0009】
焼結方法として、常圧焼結法、ガス圧焼結法、ホットプレス法、熱間静水圧(HIP)法、通電加圧法、ミリ波法等があり、成形体を加圧状態で加熱することが有効である。ただし、これらの焼結方法は、バッチ処理のため生産性が低いという点で課題がある。そこで、生産性を高める焼結方法として、連続的に処理できるロールタイプによる焼結方法が広く知られている。ロールタイプにおいては、一対のロールの隙間に加圧対象物を挿通することで、加圧処理と、加圧処理後に取り出す工程とを連続して行うことが可能であり、高い生産性を得ることができる。
【0010】
また、焼結処理を施す成形体の製法にもいくつかの方法がある。焼結方法と同様に、生産性を高めるためにバッチ処理ではなく連続処理が求められる。連続処理による成形体の製法には、たとえば、粉体材料を、ホッパーからベルトコンベア上に一様にのせた後、曲面を持つ押し型により、粉体材料を加圧しながらベルトコンベアを動作させることによって、連続的に圧縮成形する方法がある。
【0011】
成形体中に含まれる気体により焼結後に空隙が発生するのを抑制するため、または焼結時の熱や荷重の伝達にかかわる粉体材料同士の接触面積を増加させるため、成形体の密度は高いことが望ましい。しかし、この方法の場合、粉体材料の逃げのために与えられる荷重が小さく、成形体の密度が低くなってしまうという課題がある。
【0012】
また、slip casting法のように、粉体材料に適当な分散剤(たとえば、アルギン酸アンモン)を加えて泥漿を作り、石膏の型に流し込み、泥漿中の水分を石膏型に吸収させて残った成形体を取り出す方法もある。この方法は、金型やプレスを用いないため設備費を抑制することができるが、成形体の密度の低下や、分散剤の残留による成形体の純度の低下が課題となる。
【0013】
密度の高い成形体を連続的に得る方法としては、一対のロールの隙間に粉体材料を押し入れて、連続して圧縮成形する方法が挙げられる。このような方法として、ロールを水平に配置し、このロールの上部にホッパーを配置し、重力を用いてロール間に粉体材料を供給する方法がある。しかし、より成形体の密度を高くするには、重力のみで材料を供給するのでは荷重不足となる場合がある。また、このような配置では、成形体が垂直に排出されるため、成形体の回収に工夫が必要となる。したがって、ロールを上下に配置して、上下のロールの間にスクリューフィーダにより連続して材料を高圧力で供給し、ロールから出てくる成形体をコンベア等で回収する方法が望ましいと考えられる。
【0014】
上述したような用途で用いられるスクリューフィーダには、ロールに対して均一に材料を供給することが求められている。このため、特許文献1に示す方法が考案されている。
【0015】
しかしながら、特許文献1に示す方法では、粉体材料を供給する際、スクリューフィーダの筐体壁との摩擦のため、筐体壁近傍を流れる粉体材料は、筐体壁から離れた中央部を流れる粉体材料に比べて流速が低下する。また、スクリューフィーダ出口に分散羽根を配置すると、ロール間に材料を供給する際の圧力損失が生じることがあり、成形体の密度を低下させる要因となる。このように、特許文献1に示す方法において、単位時間あたりの材料供給量の均一性を向上することは可能であるが、粉体供給装置の幅方向の材料供給量の均一性が考慮されていないため、幅方向の材料供給量の不均一性が課題となっている。また、幅方向の材料供給量の不均一性に起因し、2本以上のスクリューフィーダが使用される場合にスクリューフィーダの回転数が同速にならず、粉体供給装置の幅方向における吐出量のばらつきが発生し、成形体の密度を低減させる要因となる。
【0016】
そこで、本発明者らは、粉体材料供給時の大きな圧力損失を生じさせることなく、粉体供給装置の幅方向の材料供給量の均一性を向上させための粉体供給装置を検討し、以下の構成を考案した。
【0017】
本開示の一態様にかかる粉体供給装置は、
成形体を連続的に生成する加圧成形機構に粉体材料を供給する粉体供給装置であって、
前記粉体材料が供給される導入口と、前記粉体材料が排出される排出口とを有する筐体と、
前記筐体の内部に配置され、回転駆動されることにより軸方向に前記粉体材料を搬送する1つまたは複数のスクリューと、
前記筐体の外部に配置され、前記1つまたは複数のスクリューを回転駆動するモータと、
前記筐体の内部の、前記1つまたは複数のスクリューと前記排出口との間に配置され、前記粉体材料の流れを整流する整流部と、
を備え、
前記整流部は、前記1つまたは複数のスクリューの軸方向、および前記排出口から排出される前記粉体材料の幅方向に垂直な回転軸を有し、前記回転軸を中心として回転可能である。
【0018】
このような構成により、粉体供給装置の幅方向における粉体材料の供給量分布の均一性を向上させることができる。
【0019】
前記整流部は、前記回転軸から一方の先端までの長さが、前記回転軸から他方の先端までの長さよりも短くてもよい。
【0020】
このような構成により、整流部の回転により、筐体内部の幅方向における粉体材料の粗密を均一化することができるため、排出口から排出される粉体材料の幅方向における均一性を向上することができる。また、回転モーメントのバランスをとることができる。
【0021】
前記複数のスクリューは、
第1スクリューと、
第2スクリューと、
を含み、
前記第1スクリューおよび前記第2スクリューは、軸方向に並列に配置されて同じ方向に回転駆動され、
前記整流部の前記回転軸は、前記第1スクリューおよび前記第2スクリューのそれぞれの軸の延長線の間に配置されていてもよい。
【0022】
このような構成により、幅方向における粉体材料の粗密が存在する場合に、整流部により粉体材料の粗密を均一化することができ、粉体供給装置の幅方向における粉体材料の供給量の均一性を向上することができる。
【0023】
さらに、
前記モータを制御する制御部、
を備え、
前記制御部は、前記第1スクリューおよび前記第2スクリューを同じ回転数で回転駆動するよう前記モータを制御してもよい。
【0024】
このような構成により、筐体内部の幅方向における粉体材料の均一性をさらに向上することができる。
【0025】
以下、実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0026】
(実施の形態1)
[全体構成]
図1は、本開示の粉体供給装置を上から見た模式図である。図2は、図1の粉体供給装置のA-A’断面図である。なお、以下の説明において、各図におけるX方向を幅方向、Y方向を鉛直方向、Z方向を材料供給方向と称することもある。
【0027】
粉体供給装置100は、図1および図2に示すように、成形体を連続的に生成する図示されていない加圧成形機構に、矢印2で示す粉体材料2を供給する。粉体供給装置100は、粉体材料2の導入口3と排出口4とを有する筐体1と、第1スクリュー5および第2スクリュー6と、モータ7、8と、整流部9とを備える。第1スクリュー5および第2スクリュー6は、筐体1の内部に配置され、回転駆動されることにより軸方向に粉体材料2を搬送する。すなわち、粉体材料2は、第1スクリュー5および第2スクリュー6によりZ方向に搬送される。なお、本実施の形態においては、2本のスクリュー5、6が配置されているが、スクリューの数はこれに限らない。モータ7、8は筐体1の外部に配置され、第1スクリュー5および第2スクリュー6を回転駆動する。整流部9は、筐体1の内部の、第1スクリュー5および第2スクリュー6の排出口4側の先端5a、6aと、排出口4との間に配置される。粉体供給装置100は、加圧成形機構に隣接して配置される。加圧成形機構は、鉛直方向に並べて配置された2本のロールを有し、2本のロールの間に、粉体供給装置100の排出口4から粉体材料2が供給される。粉体材料2は、排出口4からシート状に排出され、加圧成形機構によって成形体が形成される。このように、粉体供給装置100から供給された粉体材料2は、加圧成形機構によって成形体に形作られる。
【0028】
<導入口>
導入口3は、図2に示すように、筐体1の図示上方に設けられ、粉体材料2を筐体1の内部へ導入する。また、導入口3には、ホッパー3aが設けられており、ホッパー3aの開口部より粉体材料2が投入される。
【0029】
<排出口>
排出口4は、筐体1の加圧成形機構側の端部に設けられる。排出口4から、加圧成形機構の上下のロールの間に、粉体材料2が水平方向に排出される。筐体1は、図2に示すように、排出口4に向かって薄くなるように形成されている。
【0030】
<スクリュー>
第1スクリュー5および第2スクリュー6は、図1に示すように、筐体1の内部に幅方向に並列に配置され、材料供給方向に粉体材料2を搬送する。第1スクリュー5および第2スクリュー6の回転軸はそれぞれ、材料供給方向と平行である。すなわち、第1スクリュー5および第2スクリュー6は、軸方向に並列に配置されている。第1スクリュー5および第2スクリュー6はそれぞれ、スクリューシャフト5b、6bと、スクリューシャフト5b、6bの外周面に形成されたフライト5c、6cとを有する。第1スクリュー5はモータ7により回転駆動され、第2スクリュー6はモータ8により回転駆動される。なお、第1スクリュー5および第2スクリュー6は、同じ方向に回転駆動される。また、モータ7、8の回転数は制御部10によりそれぞれ独立に制御することができる。
【0031】
<整流部>
整流部9は、図1に示すように、筐体1の内部の、第1スクリュー5および第2スクリュー6と排出口4との間に配置され、粉体材料2の流れを整流する。具体的には、第1スクリュー5および第2スクリュー6の排出口4側の先端5a、6aと排出口4との間に配置されているとよい。本実施の形態において、整流部9は、先端90、91に向かって断面積が小さくなるように形成されている。すなわち、整流部9は、先端90、91が尖って形成されている。また、整流部9の先端90、91が丸く形成されていてもよい。整流部9は、板状の部材により形成されており、鉛直方向から見たときにひし形状、幅方向から見たときに矩形状の形状である。なお、整流部9の一方の先端90は第1スクリュー5および第2スクリュー6側、整流部9の他方の先端91は排出口4側に向くよう、整流部9が配置されている。整流部9の先端90、91がこのように形成されていると、粉体材料2の流れが整流部9により滞るのを防止することができる。
【0032】
また、整流部9は、第1スクリュー5および第2スクリュー6の軸方向および排出口4から排出される粉体材料2の幅方向に垂直な回転軸9aを有し、回転軸9aを中心に回転可能である。回転軸9aは、第1スクリュー5および第2スクリュー6のそれぞれの軸の延長線の間に配置されている。本実施の形態では、後述する図7に示すように、第1スクリュー5の軸線24と第2スクリュー6の軸線25との中間に位置する中心線26上に回転軸9aが位置するよう、整流部9が配置されている。本実施の形態においては、回転軸9aから一方の先端90までの長さが、回転軸9aから他方の先端91までの長さよりも短く形成されている。
【0033】
<制御部>
制御部10は、モータ7、8の回転数をそれぞれ独立に制御する。本実施の形態では、第1スクリュー5および第2スクリュー6が同じ回転数で回転駆動するよう、モータ7、8を制御する。
【0034】
図3を参照して、筐体の内部における粉体材料の密度の分布について説明する。図3は、2本のスクリューが同じ方向に回転する場合の、筐体内部を排出口側から見たときの図である。
【0035】
筐体1の内壁11近傍を流れる粉体材料2は、内壁11との摩擦を受けるため、内壁11から離れた位置に比べて流速が低下する。また、重力Gの影響を受けるため、粉体材料2は、筐体1の内部において下層に比べ上層は密度が低い傾向にある。すなわち、図3において、下層の粉体材料2cの密度に比べて、中層の粉体材料2bの密度は小さくなり、上層の粉体材料2aの密度はさらに小さくなる。
【0036】
図3では、排出口4側から見たときに、第1スクリュー5および第2スクリュー6がそれぞれ、矢印50a、60aで示す方向に回転するように配置されている。すなわち、第1スクリュー5および第2スクリュー6は同じ方向に回転するよう配置されている。この場合、破線で囲まれた領域Bは、内壁11の近傍であるため、摩擦によって粉体材料2の流速は小さくなっており、第1スクリュー5によって下層の粉体材料2cが上方に押し上げられるため、粉体材料2の密度が高くなっている。一方、破線で囲まれた領域Cは、内壁11の近傍であるため、摩擦によって粉体材料2の流速は小さくなっており、第2スクリュー6によって上層の粉体材料2aが下方に押し下げられるため、粉体材料2の密度が小さくなっている。したがって、領域Cに比較して領域Bは粉体材料2の供給量が少なくなる。このように、第1スクリュー5および第2スクリュー6が同じ方向に回転する場合、筐体1の内部において粉体材料2の密度が均一にならない。このため、幅方向における粉体材料の供給量のばらつきが生じる。
【0037】
ここで図4図6を参照して、回転可能な整流部により粉体材料の密度が均一化されることについて説明する。図4図6はそれぞれ、筐体内部において整流部付近の粉体材料の密度を示す図である。
【0038】
図4に示すように、整流部9の上流側すなわち図示上方において、上述したように、中心から一方側の粉体材料21aの密度は疎であり、中心から他方側の粉体材料21bの密度は密になっている。整流部9が回転しない場合、整流部9の下流側すなわち図示下方において、中心から一方側の粉体材料22aの密度は疎であり、中心から他方側の粉体材料22bの密度は疎である。すなわち、整流部9が回転しない場合、整流部9の上流側および下流側において、粉体材料2の疎密は同じ分布となっている。
【0039】
図5に示すように、整流部9の上流側に密度差が存在する場合、整流部9の先端90から回転軸9aまでにおいて、整流部9の一方側および他方側、すなわち図5において整流部9の右側および左側で働く圧力が異なる。力の釣り合いを保つために、整流部9に時計回りのモーメントが働き、整流部9の先端90が粉体材料21b側、すなわち密度が密である方向に傾く。このとき、他方の先端91は密度が疎である方向に傾く。図6に示すように、粉体材料21bの一部が、整流部9の図示左方に流れるため、整流部9の下流側において、中心から一方側の粉体材料23a、および中心から他方側の粉体材料23bの密度のばらつきを低減することができる。本実施の形態では、粉体材料23a、23bの密度はほぼ等しくなる。したがって、筐体1の内部に回転可能な整流部9を配置することにより、幅方向において粉体材料の疎密を均一にすることができる。
【0040】
また、整流部9の、回転軸9aから一方の先端90までの長さが、回転軸9aから他方の先端91までの長さよりも短くなっている。すなわち、回転軸9aよりも第1スクリュー5および第2スクリュー6に近い部分の長さが、回転軸9aよりも排出口4に近い部分の長さよりも短くなっている。このような形状の整流部9により、整流部9の回転軸9aから一方の先端90までの部分に、回転軸9aから他方の先端91までの部分よりも大きな力がかかる。このため、回転モーメントのバランスをとることができ、粉体材料の疎密を均一にすることができる。
【0041】
[整流部の配置およびスクリューの回転速度による粉体材料の供給量分布の比較]
ここで、後述する実施例1~3および、比較例1~3における、粉体供給装置100の幅方向における粉体材料の供給量分布を比較して検討する。
【0042】
実施例1~3および比較例1~3では、シリコン酸化物を主原料とする粉体材料を用いるものとする。なお、粉体供給装置100の構成、および粉体材料の構成は、実施例1~3において共通である。
【0043】
<粉体供給装置100の構成>
図7は、実施例1の粉体供給装置の構成を示す図である。図8は、図7の粉体供給装置の筐体の内部を排出口側から見たときの図である。図8に示すように、筐体1の内部の鉛直方向の高さh1が50mmであり、筐体1の内部の幅方向の大きさw1が100mmである。また、図7に示すように、筐体1の内部には、第1スクリュー5および第2スクリュー6が幅方向に並んで配置されている。第1スクリュー5および第2スクリュー6のスクリューシャフト5b、6bの直径φ1が20mmであり、粉体材料を搬送するためのフライト5c、6cのスクリューシャフト5b、6bからの高さh2が10mmである。第1スクリュー5および第2スクリュー6は、図7に示すように、スクリューシャフト5b、6bの軸線24、25の間の距離d1が50mmになるよう配置されている。また、図8に示すように、筐体1の内壁11からフライト5c、6cまでの距離d2が5mm、フライト5c、6c間の距離h3が10mmになるよう配置されている。整流部9は、第1スクリュー5および第2スクリュー6の軸線24、25の中間に位置する中心線26上に回転軸9aが配置されるよう設けられる。さらに、第1スクリュー5および第2スクリュー6の排出口4側の先端5a、6aから、整流部9の一方の先端90までの材料供給方向の距離d3が5mmとなるよう配置される。整流部9は、材料供給方向の長さL1が50mm、鉛直方向の高さは、筐体1の内部の高さh1と等しい50mmである。また、整流部9は、鉛直方向に見たときに、一方の先端90の角度θは30°、他方の先端91の角度θが20°の角度になるよう形成されている。第1スクリュー5および第2スクリュー6の先端から加圧成形機構に設けられた2つのロールの最小ギャップライン27までの距離d4が200mm、2つのロールの半径r1はそれぞれ150mm、2つのロールの最小ギャップの間隔は4mmである。
【0044】
<粉体材料の構成>
粉体材料は、シリコン酸化物を主材料とするものを用いる。また、粉体材料は篩を使用して、0.1mm以上2.0mm未満に分級し、かさ密度は0.8g/ccである。
【0045】
上述の構成の粉体供給装置100および粉体材料により、粉体供給装置100から加圧成形機構に供給される直前の、すなわち排出口4から排出される、粉体供給装置100の幅方向における粉体材料の供給量の分布を測定した。また、粉体供給装置100から加圧成形機構に供給される直前の、すなわち排出口4から排出される、粉体供給装置100の幅方向における加圧成形機構を通過した後の成形体の密度の分布を測定した。なお、粉体供給装置100の幅方向における粉体材料の供給量割合の分布は、全供給量に対する幅方向25mm毎の供給量割合を測定した。また、粉体供給装置100の幅方向における成形体の密度の分布は、幅方向10mm毎に成形体の密度を測定した。
【0046】
<実施例1>
図5および図6に示す粉体供給装置100において、排出口4から供給される粉体材料の量が、1800g/分となるように、モータ7、8の回転数を調整する。すなわち、モータ7、8の回転数はそれぞれ、8rpmに設定されている。
【0047】
<実施例2>
実施例1と同様の粉体供給装置100を使用し、第2スクリュー6の送り速度に対して第1スクリュー5の送り速度を12.5%低下させるよう、モータ7、8の回転数を調整する。すなわち、モータ7の回転数を7rpm、モータ8の回転数を8rpmに設定する。粉体供給装置100のその他の構成は実施例1と同様である。
【0048】
<実施例3>
実施例1と同様の粉体供給装置100を使用し、第1スクリュー5の送り速度に対して第2スクリュー6の送り速度を12.5%低下させるよう、モータ7、8の回転数を調整する。すなわち、モータ7の回転数を8rpm、モータ8の回転数を7rpmに設定する。粉体供給装置100のその他の構成は実施例1と同様である。
【0049】
<比較例1>
実施例1に対して、整流部9を配置しない構成である。粉体供給装置100のその他の構成は実施例1と同様である。
【0050】
<比較例2>
実施例2に対して、整流部9を配置しない構成である。粉体供給装置100のその他の構成は実施例2と同様である。
【0051】
<比較例3>
実施例3に対して、整流部9を配置しない構成である。粉体供給装置100のその他の構成は実施例3と同様である。
【0052】
[実施例1~3および比較例1~3の比較]
図9図15を参照して、実施例1~3および比較例1~3における粉体材料の供給量割合の分布について検討する。図9は、実施例1の粉体供給装置の幅方向における粉体材料の供給量割合の分布を示すグラフである。図10は、実施例2の粉体供給装置の幅方向における粉体材料の供給量割合の分布を示すグラフである。図11は、実施例3の粉体供給装置の幅方向における粉体材料の供給量割合の分布を示すグラフである。図12は、比較例1の粉体供給装置の幅方向における粉体材料の供給量割合の分布を示すグラフである。図13は、比較例2の粉体供給装置の幅方向における粉体材料の供給量割合の分布を示すグラフである。図14は、比較例3の粉体供給装置の幅方向における粉体材料の供給量割合の分布を示すグラフである。図15は、実施例1~3および比較例1~3の粉体材料の供給量割合のレンジを集計した表である。
【0053】
粉体材料の供給量割合の測定方法は、次のとおりである。粉体供給装置100を加圧成形機構から離した状態で、排出口4から排出される粉体材料を受けられる位置に、開口部の幅が25mmである4つの容器を幅方向に隙間なく並べる。この状態で、一定時間粉体材料を排出する。排出された粉体材料はすべて、4つの容器に回収されているので、粉体材料の全排出重量および各容器内に回収された粉体材料の重量を測定することにより、粉体材料の供給量割合の分布を計算している。なお、図9図14において、横軸は中心線26を0としたときの幅方向における位置を表し、各容器の幅方向における中心位置に値をプロットしている。また、縦軸は粉体材料の供給量割合を単位wt%で表している。
【0054】
図9および図12に示すように、実施例1では、比較例1と比べて、幅方向の中心付近では粉体材料の供給量割合が小さくなっており、幅方向の両端付近では大きくなっている。これは、整流部9を配置することにより、幅方向の粉体材料の供給量割合の均一性が向上しているためである。また、図15に示すように、実施例1の方が比較例1よりも供給量割合のレンジが小さい値となっている。供給量割合のレンジからも、実施例1の方が比較例1よりも粉体材料の供給量割合の均一性が向上していることがわかる。なお、粉体材料の供給量割合のレンジとは、実施例1~3および比較例1~3における測定値の最大値と最小値との差である。
【0055】
また、図10および図13に示すように、実施例2では、比較例2と比べて、幅方向の中心付近では粉体材料の供給量割合が小さくなっており、幅方向の両端付近では大きくなっている。同様に、図11および図14に示すように、実施例3では、比較例3と比べて、幅方向の中心付近では粉体材料の供給量割合が小さくなっており、幅方向の両端付近では大きくなっている。このように、整流部9を配置することにより、整流部9が配置されていない場合と比べて、幅方向の粉体材料の供給量割合の均一性が向上している。
【0056】
また、図15に示すように、幅方向における粉体材料の供給量割合のレンジが、実施例2では10.9wt%であり、実施例3では11.5wt%となっている。実施例1~実施例3を比較すると、第1スクリュー5および第2スクリュー6の送り速度が等しい実施例1において、供給量割合のレンジが最も小さい値となっている。したがって、モータ7の回転数とモータ8の回転数とを等速度とすることで、幅方向における粉体材料の供給量の均一性を向上させることができる。
【0057】
[効果]
上述した実施の形態によると、スクリューの排出口側の先端と排出口との間に回転可能な整流部9を設けることにより、粉体供給装置100の幅方向における粉体材料の供給量の均一性を向上させることができる。
【0058】
なお、本実施の形態に示す装置の構成や寸法は一例であり、本実施の形態によって限定されるものではない。たとえば、本実施の形態では、2本のスクリューを用いた粉体供給装置を例に説明をしたが、1本のスクリュー、または3本以上のスクリューを用いた粉体供給装置に整流部を配置しても、同様の効果を得ることができる。
【0059】
このように、本開示の粉体供給装置を用いることにより、粉体供給装置100の幅方向において均一な密度分布を持つ成形体を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本開示の粉体供給装置は、粉体材料を加圧成形した後に、その粉末の融点以下の温度で熱処理した焼結体を必要とする各種工業製品の高性能化に寄与する。特に、絶縁部品や電池材料の高性能化に有効である。
【符号の説明】
【0061】
1 筐体
2 粉体材料
3 導入口
4 排出口
5 第1スクリュー
6 第2スクリュー
7 モータ
8 モータ
9 整流部
9a 回転軸
10 制御部
24 軸線
25 軸線
26 中心線
100 粉体供給装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
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図15