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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-02
(45)【発行日】2023-02-10
(54)【発明の名称】移動棚装置
(51)【国際特許分類】
   B65G 1/10 20060101AFI20230203BHJP
   A47B 53/02 20060101ALI20230203BHJP
【FI】
B65G1/10 G
A47B53/02 502C
A47B53/02 501B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018238437
(22)【出願日】2018-12-20
(65)【公開番号】P2020100455
(43)【公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(73)【特許権者】
【識別番号】000242600
【氏名又は名称】北陽電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】高川 夏生
(72)【発明者】
【氏名】平塚 勝也
(72)【発明者】
【氏名】坂本 大樹
(72)【発明者】
【氏名】青木 健
(72)【発明者】
【氏名】山本 明人
(72)【発明者】
【氏名】笠原 隆弘
【審査官】三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-289526(JP,A)
【文献】特開2002-096907(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 1/10
A47B 53/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平面に沿う第1方向に対向する第1棚と第2棚とを備えると共に、前記第1棚と前記第2棚とが前記第1方向に相対移動可能に設けられ、前記第1棚と前記第2棚とが離間した状態で前記第1棚と前記第2棚との間に棚間通路が形成される移動棚装置であって、
前記棚間通路が形成されている状態において、当該棚間通路に存在する障害物を検出する障害物センサと、
前記第1棚と前記第2棚とが前記第1方向に対向する距離である棚間距離を検出する距離センサと、を備え、
前記障害物センサと前記距離センサとは、光を送信し対象物からの反射光を受信することによって前記対象物を検出する単一アクティブセンサによって構成され、
前記障害物センサによる検出範囲は、前記棚間通路の全領域が前記検出範囲となるように、前記棚間距離に応じて動的に可変設定される、移動棚装置。
【請求項2】
前記第1棚と前記第2棚との一方に前記単一アクティブセンサが取り付けられ、前記第1棚と前記第2棚との他方に反射板が取り付けられ、
前記単一アクティブセンサは、前記棚間通路に存在する物体を前記対象物として当該物体からの前記反射光に基づいて前記障害物を検出すると共に、前記反射板を前記対象物として前記反射板からの前記反射光に基づいて前記棚間距離を検出する、請求項1に記載の移動棚装置。
【請求項3】
前記反射板は、水平面に沿うと共に前記第1方向に直交する第2方向において離間した位置に複数個設けられている、請求項2に記載の移動棚装置。
【請求項4】
水平面に沿う第1方向に対向する第1棚と第2棚とを備えると共に、前記第1棚と前記第2棚とが前記第1方向に相対移動可能に設けられ、前記第1棚と前記第2棚とが離間した状態で前記第1棚と前記第2棚との間に棚間通路が形成される移動棚装置であって、
前記棚間通路が形成されている状態において、当該棚間通路に存在する障害物を検出する障害物センサと、
前記第1棚と前記第2棚とが前記第1方向に対向する距離である棚間距離を検出する距離センサと、を備え、
前記障害物センサと前記距離センサとは、光を送信し対象物からの反射光を受信することによって前記対象物を検出する単一アクティブセンサによって構成され、
前記障害物センサによる検出範囲は、前記棚間距離に応じて動的に可変設定され
前記第1棚と前記第2棚との一方に前記単一アクティブセンサが取り付けられ、前記第1棚と前記第2棚との他方に反射板が取り付けられ、
前記単一アクティブセンサは、前記棚間通路に存在する物体を前記対象物として当該物体からの前記反射光に基づいて前記障害物を検出すると共に、前記反射板を前記対象物として前記反射板からの前記反射光に基づいて前記棚間距離を検出し、
前記反射板は、水平面に沿うと共に前記第1方向に直交する第2方向において離間した位置に複数個設けられている、移動棚装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相対移動可能な第1棚と第2棚とを有する移動棚装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2017-43461号公報には、水平面に沿う第1方向(棚の並び方向)に沿って複数の棚を備え、少なくとも1つの棚が第1方向に沿って移動可能な移動棚装置が開示されている。棚が移動すると、移動する棚に対向する別の棚との間に作業者等が進入可能な棚間通路が形成される。棚間通路が形成されている状態で棚間通路が縮小される方向に棚が移動する際に、棚間通路を挟んで対向する棚と棚との間に作業者等が挟まらないように、移動棚装置には障害物検出装置が備えられている。障害物検出装置の検出範囲は、棚間通路が形成されている状態では、棚間通路の全体に設定されている。そして、移動棚装置は、障害物検出装置により障害物が検出されている状態では、棚間通路が縮小される方向に棚を移動させないように制御している。一方、棚間通路が縮小される方向に棚が移動している状態で棚間通路の全体を障害物の検出範囲とすると、障害物検出装置が棚を障害物として検出してしまう。このため、棚間通路が縮小される方向に棚が移動している状態では、障害物検出装置は、対向する棚の内の一方側の棚の近傍を障害物の検出範囲としている。
【0003】
このように、障害物検出装置の検出範囲が設定されている場合、棚間通路が縮小される方向に棚が移動し始めた後に、作業者等の障害物が棚間通路に進入しても、その進入箇所が検出範囲外である可能性がある。その結果、障害物の検出が遅れ、棚間通路に進入した障害物と棚とが接触するおそれがある。そこで、棚が停止中であるか移動中であるかに関わらず、適切に障害物を検出できることが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-43461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記背景に鑑みて、相対移動可能な複数の棚を備えた移動棚装置において、棚と棚との間に形成された棚間通路に存在する障害物を常時適切に検出することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの好適な態様として、上記に鑑みた、水平面に沿う第1方向に対向する第1棚と第2棚とを備えると共に、前記第1棚と前記第2棚とが前記第1方向に相対移動可能に設けられ、前記第1棚と前記第2棚とが離間した状態で前記第1棚と前記第2棚との間に棚間通路が形成される移動棚装置は、前記棚間通路が形成されている状態において、当該棚間通路に存在する障害物を検出する障害物センサと、前記第1棚と前記第2棚とが前記第1方向に対向する距離である棚間距離を検出する距離センサと、を備え、前記障害物センサと前記距離センサとは、光を送信し対象物からの反射光を受信することによって前記対象物を検出する単一アクティブセンサによって構成され、前記障害物センサによる検出範囲は、前記棚間通路の全領域が前記検出範囲となるように、前記棚間距離に応じて動的に可変設定される。
【0007】
本構成によれば、第1棚と第2棚とが相対移動することによって変化する棚間距離が検出され、棚間通路の全領域が検出範囲となるように、その棚間距離に応じて動的に検出範囲が可変設定される。従って、第1棚と第2棚とが相対移動する前は勿論のこと、第1棚と第2棚とが相対移動を開始した後も、次第に縮小される棚間通路の全領域を検出範囲とすることができる。その結果、第1棚と第2棚とが相対移動する前から、第1棚と第2棚とが相対移動を終えるまでの全期間において、棚間通路に進入する障害物を適切に検出することができる。さらに、障害物センサと距離センサとは単一アクティブセンサによって構成されているので、システム構成も簡素化され、コストも低減できる。このように本構成によれば、相対移動可能な複数の棚を備えた移動棚装置において、棚と棚との間に形成された棚間通路に存在する障害物を常時適切に検出することができる。
【0008】
また、上記に鑑みた移動棚装置は、1つの好適な態様として、水平面に沿う第1方向に対向する第1棚と第2棚とを備えると共に、前記第1棚と前記第2棚とが前記第1方向に相対移動可能に設けられ、前記第1棚と前記第2棚とが離間した状態で前記第1棚と前記第2棚との間に棚間通路が形成される移動棚装置であって、前記棚間通路が形成されている状態において、当該棚間通路に存在する障害物を検出する障害物センサと、前記第1棚と前記第2棚とが前記第1方向に対向する距離である棚間距離を検出する距離センサと、を備え、前記障害物センサと前記距離センサとは、光を送信し対象物からの反射光を受信することによって前記対象物を検出する単一アクティブセンサによって構成され、前記障害物センサによる検出範囲は、前記棚間距離に応じて動的に可変設定され、前記第1棚と前記第2棚との一方に前記単一アクティブセンサが取り付けられ、前記第1棚と前記第2棚との他方に反射板が取り付けられ、前記単一アクティブセンサは、前記棚間通路に存在する物体を前記対象物として当該物体からの前記反射光に基づいて前記障害物を検出すると共に、前記反射板を前記対象物として前記反射板からの前記反射光に基づいて前記棚間距離を検出し、前記反射板は、水平面に沿うと共に前記第1方向に直交する第2方向において離間した位置に複数個設けられている。
【0009】
本構成によれば、第1棚と第2棚とが相対移動することによって変化する棚間距離が検出され、その棚間距離に応じて動的に検出範囲が可変設定される。従って、第1棚と第2棚とが相対移動する前は勿論のこと、第1棚と第2棚とが相対移動を開始した後も、次第に縮小される棚間通路のほぼ全域を検出範囲とすることができる。その結果、第1棚と第2棚とが相対移動する前から、第1棚と第2棚とが相対移動を終えるまでの全期間において、棚間通路に進入する障害物を適切に検出することができる。さらに、障害物センサと距離センサとは単一アクティブセンサによって構成されているので、システム構成も簡素化され、コストも低減できる。
また、本構成によれば第1棚と第2棚との一方に単一アクティブセンサが取り付けられ、第1棚と第2棚との他方に反射板が取り付けられ、単一アクティブセンサが、棚間通路に存在する物体を対象物として当該物体からの反射光に基づいて障害物を検出すると共に、反射板を対象物として反射板からの反射光に基づいて棚間距離を検出する。従って、棚間距離の検出と、棚間距離に応じた検出範囲の設定を適切に行うことができる。
さらに、本構成によれば、反射板が、水平面に沿うと共に第1方向に直交する第2方向において離間した位置に複数個設けられている。反射板が単一であっても、棚間距離を検出することは可能である。しかし、第2方向において離間した位置に複数の反射板が設置されることによって、より精度良く棚間距離を検出することができる。
このように本構成によれば、相対移動可能な複数の棚を備えた移動棚装置において、棚と棚との間に形成された棚間通路に存在する障害物を常時適切に検出することができる。
【0010】
移動棚装置のさらなる特徴と利点は、図面を参照して説明する実施形態についての以下の記載から明確となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】移動棚装置の構成を模式的に示す平面図
図2】移動棚装置の構成を模式的に示す側面図
図3】移動棚装置の構成を模式的に示すブロック図
図4】検出範囲を設定する手順の一例を示す説明図
図5】検出範囲を設定する手順の他の例を示す説明図
図6】反射板を検出する原理を示す説明図
図7】同時に2箇所で棚間通路が形成される例を示す移動棚装置の平面図
図8】対向する移動棚が移動する前の検出範囲の比較例を示す説明図
図9】対向する移動棚の一方が移動する際の検出範囲の比較例を示す説明図
図10】対向する移動棚の他方が移動する際の検出範囲の比較例を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、移動棚装置の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、移動棚装置10の構成を模式的に示す平面図であり、図2は、移動棚装置10の構成を模式的に示す側面図である。図1及び図2に示すように、移動棚装置10は、物品を収納する棚1として、床に固定された固定棚2と、床に敷設されたレール4に案内されて水平面に沿った移動方向M(第1方向)に移動可能な移動棚3とを備えている。固定棚2は、レール4の両端にそれぞれ1つずつ備えられている。レール4の一方の端部の側に第1固定棚21が備えられ、レール4の他方の端部の側に第2固定棚22が備えられている。移動棚3は、第1固定棚21と第2固定棚22との間に、本実施形態では3つ備えられている。移動棚3は、第1固定棚21の側から、第1移動棚31、第2移動棚32、第3移動棚33の順に配置されている。当然ながら、移動棚3は、1つでも良いし、4つ以上備えられていてもよい。また、レール4の両端に固定棚2を備えることなく、レール4の何れか一方側の端部又は両方端部が単なる壁であってもよい。
【0013】
固定棚2は、移動棚3と対向する側、即ち移動方向Mの一方側にのみ、物品を収納する収納部を有している。移動棚3は、移動方向Mに沿って隣接する棚1と対向する双方の側に、物品を収納する収納部を有している。換言すれば、それぞれの移動棚3は、第1固定棚21の方向を向く収納部が形成された第1収納棚3aと、第2固定棚22の方向を向く収納部が形成された第2収納棚3bとを有している。図2に示すように、第1収納棚3aと第2収納棚3bとは台車部6の上に固定されている。つまり、移動棚3は、第1収納棚3aと第2収納棚3bと台車部6とを有して構成されている。台車部6は、図3のブロック図に示すように、モータ12、車輪13を備えており、レール4に沿って移動方向Mに移動可能である。従って、第1収納棚3a及び第2収納棚3bは、台車部6の移動に伴って移動する。
【0014】
上述したように、移動棚3は、レール4に案内されて水平面に沿った移動方向Mに移動可能である。図1及び図2には、第1移動棚31が最も第1固定棚21の側に移動し、第2移動棚32及び第3移動棚33が最も第2固定棚22の側に移動して、第1移動棚31と第2移動棚32との間に棚間通路Eが形成されている形態を例示している。移動方向Mに沿って隣接する棚1同士が最も近接している場合に、移動方向Mに棚1同士が対向する距離は、第1棚間距離D1であり、第1棚間距離D1は、概ね50~100[mm]程度である。また、棚間通路Eが形成されている場合に、移動方向Mに棚1同士が対向する距離は、第2棚間距離D2であり、第2棚間距離D2は、概ね1~数[m]程度である。第2棚間距離D2は、棚間通路Eに、人(作業者)や台車等の作業車(自動運転及び人による操作の双方を含む)が進入可能な長さに設定され、棚間通路Eに位置する作業者や作業車と、収納部との間で物品の受け渡しを行うことができる。
【0015】
図3のブロック図は、移動棚装置10の構成を模式的に示している。それぞれの移動棚3は、台車部6を走行させる車輪13と、車輪13を駆動するモータ12と、車輪13の回転を検出する回転センサ14(ここではエンコーダを例示)と、モータ12を制御して移動棚3を動かし、棚間通路Eを開閉させる開閉制御装置11と、後述する棚間センサ5とを備えている。開閉制御装置11は、回転センサ14の検出結果に基づいてモータ12をフィードバック制御することができる。
【0016】
また、図示は省略するが、それぞれの移動棚3には、それぞれの移動棚3を移動させたり、移動を停止させたりするための操作スイッチや、移動棚3の状態を示す表示部(例えばLED等によるインジケータ)が設けられている。表示部は、移動中、停止中、移動可(停止中)、移動禁止(停止中)等の状態を示すと好適である。
【0017】
移動棚装置10は、さらに、移動棚制御装置20を備えており、それぞれの移動棚3の協調制御を行う。例えば、それぞれの移動棚3に設置された操作スイッチに対する作業者の操作を必要とせず、移動棚制御装置20からの指示に従って、それぞれの移動棚3を移動させることもできる。
【0018】
詳細は後述するが、移動棚装置10は、棚間通路Eに存在する障害物B(図6参照)を検出する障害物センサ(後述する棚間センサ5)を備えている。例えば、棚間通路Eを縮小する方向に移動棚3を移動させる場合、移動開始前に棚間通路Eに障害物Bが存在することが検出されると、開閉制御装置11は移動棚3の移動を禁止する。また、移動棚3が移動を開始した後に、障害物Bが検出された場合には、開閉制御装置11は、当該移動棚3を停止させる。つまり、開閉制御装置11は、棚間通路Eに障害物Bが存在する場合には、棚間通路Eを縮小する方向への移動棚3の移動を制限する。
【0019】
棚間センサ5は、棚1(ここでは移動棚3)に設置されるが、後述するように、移動対象の移動棚3に設置された棚間センサ5によって障害物Bが検出されるとは限らない。このため、開閉制御装置11は、移動棚制御装置20に対して、障害物Bの検出情報を伝達すると好ましい。或いは、棚間センサ5からの障害物Bの検出情報が、直接、移動棚制御装置20に伝達されてもよい。
【0020】
移動対象の移動棚3とは別の棚間センサ5によって障害物Bが検出された場合には、移動棚制御装置20を介して障害物Bが存在することを通知された移動対象の移動棚3の開閉制御装置11が、移動棚3の移動を禁止すると好適である。或いは、移動棚制御装置20が、移動対象の移動棚3に対して移動を禁止する指令を与えてもよい。また、棚間センサ5からの障害物Bの検出情報が、直接、移動棚制御装置20に伝達されている場合には、障害物Bを検出した棚間センサ5が移動対象の移動棚3に設置されているか否かに拘わらず、移動棚制御装置20からの指令に基づいて、移動対象の移動棚3の開閉制御装置11が移動棚3の移動を制限する構成であってもよい。このように、棚間通路Eにおいて障害物Bが検出された場合には、開閉制御装置11及び移動棚制御装置20の一方又は双方により、移動棚3の移動を制限する(移動を禁止する・移動中であれば停止させる)ことができる。
【0021】
図1から図3を参照して説明したように、移動棚装置10は、水平面に沿う移動方向M(第1方向)に対向する第1棚と第2棚とを備えると共に、第1棚と第2棚とが移動方向Mに相対移動可能に設けられ、第1棚と第2棚とが離間した状態で第1棚と第2棚との間に棚間通路Eが形成される。ここで、第1棚及び第2棚は、全ての棚1に対応する。例えば、第1棚を第1固定棚21とし、第2棚を第1移動棚31とすれば、図1及び図2に示すように、第1固定棚21と第1移動棚31との間に棚間通路Eが形成される。また、第1棚を第1移動棚31とし、第2棚を第2移動棚32とすれば、第1移動棚31と第2移動棚32との間に棚間通路Eが形成される。同様に、第2移動棚32と第3移動棚33との間、第3移動棚33と第2固定棚22との間にも、棚間通路Eを形成することができる。また、例えば、図1及び図2に示す形態において、第1棚を第1移動棚31とし、第2棚を第1固定棚21として、第1棚と第2棚とを逆に対応させてもよい。他の例についても同様である。また、棚間通路Eは、同時に2箇所以上に形成されることを妨げるものではない。例えば、図7に例示するように、第1移動棚31と第2移動棚32との間、及び第2移動棚32と第3移動棚33との間の2箇所に棚間通路Eが形成されてもよい。
【0022】
移動棚装置10は、棚間通路Eが形成されている状態において、当該棚間通路Eに存在する障害物B(図6参照)を検出する障害物センサと、第1棚と第2棚とが移動方向Mに対向する距離である棚間距離D(図4等参照)を検出する距離センサとを備えている。後述するように、障害物センサによる検出範囲S(図4図5等参照)は、棚間距離Dに応じて動的に可変設定される。詳細は後述するが、本実施形態では、単一の棚間センサ5によって、障害物センサ及び距離センサが構成されている。このため、棚間距離Dの検出と、棚間距離Dに応じた検出範囲Sの設定を適切に行うことができると共に、システム構成も簡素化され、コストも低減できる。
【0023】
図1及び図2に示すように、棚間センサ5は、移動方向Mに隣接する棚1と棚1との間に1つずつ備えられている。つまり、移動方向Mに隣接する2つの棚1の一方側に、棚間センサ5が備えられている。移動方向Mに隣接する2つの棚1の他方側には、後述する反射板7が備えられている。図1及び図2に示すように、第1移動棚31は、第1固定棚21に対向する側、及び第2移動棚32に対向する側にそれぞれ棚間センサ5を備えている。第1固定棚21は、第1移動棚31に対向する側に反射板7を備え、第2移動棚32は、第1移動棚31に対向する側に反射板7を備えている。
【0024】
第2移動棚32は、第3移動棚33に対向する側に棚間センサ5を備え、上述したように第1移動棚31に対向する側に反射板7を備えている。つまり、第2移動棚32は、移動方向Mにおける一方側に棚間センサ5を備え、他方側に反射板7を備えている。同様に、第3移動棚33は、第2固定棚22に対向する側に棚間センサ5を備え、第2移動棚32に対向する側に反射板7を備えている。つまり、第3移動棚33も、第2移動棚32と同様に、移動方向Mにおける一方側に棚間センサ5を備え、他方側に反射板7を備えている。第2固定棚22は、第1固定棚21と同様に、第3移動棚33に対向する側に反射板7を備えている。第1固定棚21及び第2固定棚22は、反射板7のみを備えている。
【0025】
尚、ここでは、固定棚2が反射板7のみを備え棚間センサ5を備えず、複数の移動棚3の内の1つが、移動方向Mにおける両側に棚間センサ5を備え、他の移動棚3が移動方向Mにおける一方側に棚間センサ5を備え、他方側に反射板7を備える形態を例示している。これは、図3に例示するように、移動棚3には移動棚3を移動させるための開閉制御装置11などの電気回路が備えられており、棚間センサ5を設け易い構造であることによる。しかし、固定棚2が棚間センサ5を備えることを妨げるものではない。例えば、2つの固定棚2の内の一方が棚間センサ5のみを備えて反射板7を備えず、他方が反射板7のみを備え棚間センサ5を備えず、全ての移動棚3が移動方向Mにおける一方側に棚間センサ5を備え、他方側に反射板7を備える形態であってもよい。この場合には、全ての移動棚3の構成が統一され、生産性、メンテナンス性が向上する。
【0026】
上述したように、障害物センサと距離センサとは、同じ棚間センサ5によって構成されている。具体的には、障害物センサと距離センサとは、光を送信し対象物からの反射光を受信することによって対象物を検出する単一アクティブセンサによって構成されている。ここで、光とは、赤外光、可視光、レーザー光等を含む。また、図1及び図2を参照して上述したように、第1棚と第2棚との一方にア単一クティブセンサ(棚間センサ5)が取り付けられ、第1棚と第2棚との他方に反射板7が取り付けられている。単一アクティブセンサ(棚間センサ5)は、棚間通路Eに存在する物体を対象物として当該物体からの反射光に基づいて障害物Bを検出する障害物センサとして機能すると共に、反射板7を対象物として反射板7からの反射光に基づいて棚間距離Dを検出する距離センサとして機能する。
【0027】
1つの態様として、棚間センサ5は、3次元測域センサを用いて構成されると好適である。3次元測域センサは、光(例えばレーザー光)を水平方向及び垂直方向に照射し、走査することによって検出範囲Sにおける対象物の存否の検出や、対象物までの距離を検出する。一般的に、3次元測域センサの水平方向の走査角度と垂直方向の走査角度とは同一ではない。例えば、水平方向の走査角度は180~210[deg]、垂直方向の走査角度は30~45[deg]程度(俯角:5~10[deg]、仰角:20~40[deg]程度)である。作業者の足等を適切に検出するため、棚間センサ5は、図2に示すように下方、例えば床面から概ね200~300[mm]の位置に設置されている。
【0028】
図6は、反射板7を検出する原理を示している。反射板7は、反射板7からの反射光のエネルギーレベル(図6では反射光が光電変換された場合の電圧[V]で例示している)が、障害物Bとなる物体からの反射光のエネルギーレベルよりも高くなるように構成されている。具体的には、想定される障害物Bの中で最も反射光のエネルギーレベルが高い障害物Bのエネルギーレベルよりも高い値を基準値THとして、この基準値THを上回るエネルギーレベルの反射光となるように、反射板7が構成されると好適である。例えば、光に対する反射板7の反射率が、想定される障害物Bよりも高い材質や表面仕上げにより、反射板7が構成されると好適である。また、棚間センサ5と反射板7との位置関係より、反射角(及び入射角)が小さくなるような角度で、反射板7が設置されてもよい。
【0029】
反射板7は、図2に示すように下方、例えば床面から概ね200~300[mm]の位置に設置されている。また、反射板7は、図1に示すように、水平面に沿うと共に移動方向Mに直交する棚幅方向W(第2方向)において離間した位置に複数個(2個)設けられている。ここでは、棚幅方向Wにおいて2個の反射板7が設けられる形態を例示しているが、3個以上の反射板7が設けられることを妨げるものではない。複数の反射板7を備えることによって、図5を参照して後述するように、棚幅方向Wにおいて棚間距離Dが相違した場合においても適切に検出範囲Sを設定することができる。しかし、レール4を備えた移動棚装置10などの場合で、棚幅方向Wにおいて棚間距離Dの相違が少ないような場合には、後述するように、反射板7が1つであってもよい。
【0030】
以下、棚間センサ5が、反射板7を対象物として反射板7からの反射光に基づいて棚間距離Dを検出し、当該棚間距離Dに応じて検出範囲Sを動的に可変設定する手順を説明する。図4に示すように、第1反射板71と第2反射板72とは、棚幅方向Wにおいて離間した位置、ここでは、棚1の棚幅方向Wにおける両端部に設けられている。棚間センサ5は、一方の反射板7、ここでは第1反射板71に対向する位置に設けられている。しかし、この配置に限らず、棚間センサ5は、棚幅方向Wにおける中央位置(例えば第1反射板71及び第2反射板72との棚幅方向Wにおける距離が均等な位置)に設けられていてもよい。棚間センサ5は、光を送信し、第1反射板71及び第2反射板72からの反射光に基づいて、第1反射板71及び第2反射板72の位置、及び、第1反射板71及び第2反射板72までの距離を検出する(棚間距離検出工程)。
【0031】
開閉制御装置11は、棚間センサ5の検出結果に基づいて、仮想直線L(基準位置)を設定する。仮想直線Lは、棚間センサ5が設置されている棚1(移動棚3)に棚間通路Eを挟んで対向する棚1に平行な直線である。仮想直線Lは、仮想直線Lに基づいて設定される検出範囲Sが、反射板7を備える棚1に干渉しないように、当該棚1から予め規定された距離分(10~20[mm]程度)離間した位置(棚間センサ5が設置されている棚1(移動棚3)の側に離間した位置)に設定される(基準位置設定工程)。図4に示すように、開閉制御装置11は、棚間センサ5が設置されている棚1(移動棚3)から仮想直線Lまでの範囲に検出範囲Sを設定する(検出範囲設定工程)。
【0032】
移動棚3が移動すると(図4の場合には、反射板7の方向へ移動すると)、棚間通路Eの棚間距離Dは短くなる。棚間センサ5は一定の周期で繰り返し、棚間距離Dを検出し、開閉制御装置11は、更新される棚間距離Dに応じて繰り返し、仮想直線Lを設定して、繰り返し、検出範囲Sを設定する。つまり、棚間通路Eが縮小する方向に移動棚3が移動する際には、上述した棚間距離検出工程、基準位置設定工程、検出範囲設定工程が順次繰り返し実行され、棚間センサ5(障害物センサ)の検出範囲Sは、棚間距離Dに応じて動的に可変設定される。図4では、棚間センサ5を備えた棚1が移動棚3として移動する形態を例示したが、反射板7を備えた棚1が移動棚3であってもよい。
【0033】
例えば、図1及び図2において、第1移動棚31が第2移動棚32の方向に移動する場合には、移動する第1移動棚31に設置された棚間センサ5の検出範囲Sが動的に可変設定される。つまり、移動する棚1(移動棚3)に設置された棚間センサ5の検出範囲Sが設定される。例えば、第1移動棚31の開閉制御装置11は、モータ12を制御して第1移動棚31を移動させると共に、第1移動棚31に設置された棚間センサ5の検出範囲Sを動的に可変設定する。
【0034】
一方、図1及び図2において、第2移動棚32が第1移動棚31の方向に移動する場合には、移動しない第1移動棚31に設置された棚間センサ5の検出範囲Sが動的に可変設定される。つまり、移動しない棚1(移動棚3)に設置された棚間センサ5の検出範囲Sが設定される。例えば、第1移動棚31の開閉制御装置11は、モータ12を制御せず、或いは停止させて第1移動棚31を停止させると共に、第1移動棚31に設置された棚間センサ5の検出範囲Sを動的に可変設定する。第2移動棚32の開閉制御装置11は、モータ12を制御して第2移動棚32を移動させるが、第2移動棚32に設置された棚間センサ5の検出範囲Sを動的に可変設定しなくてもよい。
【0035】
但し、第2移動棚32が第1移動棚31の方向に移動することによって、第2移動棚32と第3移動棚33との間に棚間通路Eが形成される。従って、第2移動棚32と第3移動棚33との間に棚間通路Eが形成されていくのに伴って、第2移動棚32の開閉制御装置11は、第2移動棚32と第3移動棚33との間の棚間距離Dに応じて、第2移動棚32に設置された棚間センサ5の検出範囲Sを可変設定してもよい。
【0036】
例えば、図7に例示するように、第1移動棚31と第2移動棚32との間、第2移動棚32と第3移動棚33との間の2箇所に棚間通路Eを設けることもできる。この場合の棚間距離Dは、第2棚間距離D2の1/2の第3棚間距離D3である。このような場合において、第2移動棚32の移動に応じて、第1移動棚31に設置された棚間センサ5の検出範囲S、及び第2移動棚32に設置された棚間センサ5の検出範囲Sを同時に動的に可変設定することができる。
【0037】
ところで、図1及び図2に例示したように、移動棚装置10がレール4を有し、移動棚3がレール4に案内されて移動方向Mに移動する場合、棚間通路Eを縮小するように移動する移動棚3は、棚幅方向Wに平行な状態を維持し易い。つまり、棚間通路Eを挟んで対向する2つの棚1(第1棚、第2棚)の間の棚間距離Dは、棚幅方向Wにおける位置に拘わらずほぼ同じ値となる。従って、棚間通路Eの平面視(水平面に直行する方向視)での形状は、ほぼ長方形状となり、検出範囲Sもほぼ長方形状に設定される。従って、例えば反射板7が1つであっても、仮想直線Lを適切に設定することができる。この場合の反射板7は、第1反射板71であっても、第2反射板72であってもよい。
【0038】
一方、図示は省略するが、移動棚装置10がレール4を有さない場合、或いは、レール4のような軌道を有していても当該軌道内における車輪13の棚幅方向Wにおける移動の自由度が高い場合は、棚幅方向Wに平行ではない状態で、棚間通路Eを縮小するように移動棚3が移動する可能性がある。図5は、そのような場合に、棚間センサ5が、反射板7を対象物として反射板7からの反射光に基づいて棚間距離Dを検出し、当該棚間距離Dに応じて検出範囲Sを動的に可変設定する手順を例示している。
【0039】
図4を参照して上述した形態と同様に、棚間センサ5は、光を送信し、第1反射板71及び第2反射板72からの反射光に基づいて、第1反射板71及び第2反射板72の位置、及び、第1反射板71及び第2反射板72までの距離を検出する(棚間距離検出工程)。図4を参照して上述した形態では、棚間通路Eを縮小するように移動する移動棚3が棚幅方向Wに平行な状態を維持し易く、棚間通路Eを挟んで対向する2つの棚1(第1棚、第2棚)の間の棚間距離Dが、棚幅方向Wにおける位置に拘わらずほぼ同じ値となる例を示した。しかし、図5に示す形態では、棚間通路Eを挟んで対向する2つの棚1(第1棚、第2棚)との間の棚間距離Dが、棚幅方向Wにおける位置によって異なっている。具体的には、棚間センサ5が設置された棚1と第1反射板71の側における移動棚3との棚間距離Dと、当該棚1と第2反射板72の側における当該移動棚3との棚間距離Dとが異なっている。
【0040】
開閉制御装置11は、棚間センサ5の検出結果に基づいて、仮想直線L(基準位置)を設定する。上述したように、仮想直線Lは、棚間センサ5が設置されている棚1(移動棚3)に棚間通路Eを挟んで対向する棚1に平行な直線である。そして、仮想直線Lは、反射板7を備える棚1(ここでは移動棚3)から予め規定された距離分(10~20[mm]程度)、棚間センサ5が設置されている棚1の側に設定される(基準位置設定工程)。図4を参照して上述した形態では、棚間通路Eを挟んで対向する2つの棚1(第1棚、第2棚)との間の棚間距離Dは、棚幅方向Wにおける位置に拘わらずほぼ同じ値であったので、仮想直線Lは、棚幅方向Wにほぼ平行な直線として設定された。しかし、図5に示す形態では、棚間通路Eを挟んで対向する2つの棚1(第1棚、第2棚)との間の棚間距離Dが、棚幅方向Wにおける位置によって異なっている。このため、仮想直線Lは、棚幅方向Wに対して傾斜した直線として設定される。
【0041】
開閉制御装置11は、図5に示すように、棚間センサ5が設置されている棚1から仮想直線Lまでの範囲に検出範囲Sを設定する(検出範囲設定工程)。棚間センサ5は一定の周期で繰り返し、棚間距離Dを検出し、開閉制御装置11は、更新される棚間距離Dに応じて繰り返し、仮想直線Lを設定して、繰り返し、検出範囲Sを設定する。つまり、棚間通路Eが縮小する方向に移動棚3が移動する際には、上述した棚間距離検出工程、基準位置設定工程、検出範囲設定工程が順次繰り返し実行され、棚間センサ5(障害物センサ)の検出範囲Sは、棚間距離Dに応じて動的に可変設定される。
【0042】
尚、検出範囲Sは、平面視(水平面に直行する方向視)でほぼ台形状に設定される。この場合、棚間通路Eの平面視での形状も、ほぼ台形状である。従って、開閉制御装置11は、棚間通路Eの全体を検出範囲Sとすることができるように、検出範囲Sを設定することができる。尚、図5においては、反射板7を備えた移動棚3が移動する形態を例示したが、当然ながら棚間センサ5を備えた移動棚3が移動する形態であってもよい。
【0043】
以上説明したように、移動棚装置10は、移動棚3が移動を開始する前に、棚間通路Eの全領域を検出範囲Sとして障害物Bの存否を確認することができる。従って、適切に移動棚3の移動を開始させることができる。また、移動棚3が棚間通路Eを縮小するように移動している場合も、棚間通路Eの全領域が検出範囲Sとなるように、検出範囲Sが動的に可変設定される。従って、移動棚3が移動を開始した後に、作業者等の障害物Bが棚間通路Eに進入した場合でも、適切に当該障害物Bを検出することができる。これにより、移動棚装置10は、障害物Bが棚間通路Eに進入した場合に迅速に移動棚3を停止させることができる。
【0044】
図8図10は、棚間通路Eに設定される検出範囲Sの比較例を示している。図8は、例えば第1移動棚31と第2移動棚32との間に形成される棚間通路Eにおいて、第1移動棚31又は第2移動棚32が移動する前に設定される検出範囲S(第1検出範囲S1)を示している。移動棚装置は、第1移動棚31又は第2移動棚32が移動を開始する前に、棚間通路Eの全領域を第1検出範囲S1とすることで障害物Bの存否を確認することができる。これによって、適切に移動棚3の移動を開始させることができる。この点は、上述した本実施形態と同様である。
【0045】
図9は、第1移動棚31が棚間通路Eを縮小する方向に移動する場合を例示している。従来の多くの移動棚装置では、この場合、移動する第1移動棚31の近傍を検出範囲S(第2検出範囲S2)とすることによって、移動に伴って第2移動棚32が障害物Bとして検出されてしまうことを抑制している。例えば、第2検出範囲S2は、第1棚間距離D1(概ね50~100[mm]程度)に応じて、第1移動棚31から概ね100~300[mm]の範囲に設定される。この場合、第1移動棚31が第2移動棚32に近接するまでは、移動する第1移動棚31の近傍に進入した障害物Bを適切に検出することができる。また、第1移動棚31が第2移動棚32に近づき、第2移動棚32が障害物Bとして検出された場合には、第1移動棚31が停止制御されることとなる。しかし、第1移動棚31が停止するまでの時間を考慮すれば、第1移動棚31は、ほぼ第1棚間距離D1を残して停止することとなる。
【0046】
この場合、棚間通路Eには障害物Bを検出できない領域ができる。第1移動棚31が第2移動棚32に近づき、第2移動棚32が障害物Bとして検出される場合には、第1移動棚31が停止位置に近づいているために、第1移動棚31が定常速度で移動している場合に比べて第1移動棚31は減速されている。しかし、第1移動棚31が定速定常速度で移動している際には、減速されていないために、障害物Bが棚間通路Eに進入してきた場合に、迅速に第1移動棚31が停止できずに障害物Bに接触する可能性がある。上述したように本実施形態では、第1移動棚31が移動している場合も、棚間通路Eの全領域が検出範囲Sとなるので、そのような可能性が低減される。
【0047】
図10は、第2移動棚32が棚間通路Eを縮小する方向に移動する場合を例示している。図9に例示した形態と同様に、第2検出範囲S2は、移動しない棚1である第1移動棚31の近傍に設定されている。つまり、移動する第2移動棚32の近傍には、障害物Bを検出ための検出範囲Sが設定されない状態で、第2移動棚32が移動することになる。このため、棚間通路Eに進入した障害物Bと第2移動棚32とが接触する可能性は、図9に例示した形態よりも高くなる傾向がある。上述したように本実施形態では、第1移動棚31が移動している場合も、棚間通路Eの全領域が検出範囲Sとなるので、そのような可能性が低減される。
【0048】
以上、図1から図7を参照して上述した本実施形態に係る移動棚装置10は、棚1と棚1との間に形成された棚間通路Eに存在する障害物Bを常時適切に検出することができる。
【0049】
〔実施形態の概要〕
以下、上記において説明した移動棚装置の概要について簡単に説明する。
【0050】
1つの好適な態様として、移動棚装置は、水平面に沿う第1方向に対向する第1棚と第2棚とを備えると共に、前記第1棚と前記第2棚とが前記第1方向に相対移動可能に設けられ、前記第1棚と前記第2棚とが離間した状態で前記第1棚と前記第2棚との間に棚間通路が形成される移動棚装置であって、前記棚間通路が形成されている状態において、当該棚間通路に存在する障害物を検出する障害物センサと、前記第1棚と前記第2棚とが前記第1方向に対向する距離である棚間距離を検出する距離センサと、を備え、前記障害物センサと前記距離センサとは、光を送信し対象物からの反射光を受信することによって前記対象物を検出する単一アクティブセンサによって構成され、前記障害物センサによる検出範囲は、前記棚間距離に応じて動的に可変設定される。
【0051】
従来の構成では、多くの場合、第1棚と第2棚とが相対移動する前には、棚間通路のほぼ全域を検出範囲として障害物の存否が判定される。そして、障害物の存在が確認されない場合に、第1棚と第2棚との相対移動が開始される。一方、第1棚と第2棚との相対移動が開始されると、検出範囲に比べて棚間通路の方が狭くなるため、第1棚又は第2棚が障害物として検出されてしまう可能性があり、多くの場合、第1棚又は第2棚が検出されないような範囲に検出範囲が縮小される。このため、棚間通路の中に検出範囲外となる領域が発生することになる。しかし、本構成によれば、第1棚と第2棚とが相対移動することによって変化する棚間距離が検出され、その棚間距離に応じて動的に検出範囲が可変設定される。従って、第1棚と第2棚とが相対移動する前は勿論のこと、第1棚と第2棚とが相対移動を開始した後も、次第に縮小される棚間通路のほぼ全域を検出範囲とすることができる。その結果、第1棚と第2棚とが相対移動する前から、第1棚と第2棚とが相対移動を終えるまでの全期間において、棚間通路に進入する障害物を適切に検出することができる。さらに、障害物センサと距離センサとは単一アクティブセンサによって構成されているので、システム構成も簡素化され、コストも低減できる。このように本構成によれば、相対移動可能な複数の棚を備えた移動棚装置において、棚と棚との間に形成された棚間通路に存在する障害物を常時適切に検出することができる。
【0052】
ここで、前記第1棚と前記第2棚との一方に前記単一アクティブセンサが取り付けられ、前記第1棚と前記第2棚との他方に反射板が取り付けられ、前記単一アクティブセンサは、前記棚間通路に存在する物体を前記対象物として当該物体からの前記反射光に基づいて前記障害物を検出すると共に、前記反射板を前記対象物として前記反射板からの前記反射光に基づいて前記棚間距離を検出すると好適である。
【0053】
この構成によれば、棚間距離の検出と、棚間距離に応じた検出範囲の設定を適切に行うことができる。
【0054】
また、前記反射板は、当該反射板からの前記反射光のエネルギーレベルが、前記障害物となる前記物体からの前記反射光のエネルギーレベルよりも高くなるように構成されていると好適である。
【0055】
棚間通路に障害物が存在した場合に、障害物からの反射光を反射板からの反射光として検出すると、棚間距離を正確に検出することができなくなる。このため、障害物からの反射光のエネルギーレベルと、反射板からの反射光のエネルギーレベルとが区別できることが好ましい。障害物からの反射光のエネルギーレベルは、障害物の種類によって変動幅が大きい。また、反射板からの反射光のエネルギーレベルを低く設定すると、障害物との区別が付きにくくなる可能性が高い。反射板の構成を揃えれば、反射板からの反射光のエネルギーレベルを一定の範囲内にし易く、また、材質や設置方法などによって反射率を高くする構造を採用することで反射板からの反射光のエネルギーレベルを高くすることもできる。従って、本構成によれば、障害物と反射板とを適切に区別して、棚間距離を検出することができる。
【0056】
また、前記反射板は、水平面に沿うと共に前記第1方向に直交する第2方向において離間した位置に複数個設けられていると好適である。
【0057】
反射板が単一であっても、棚間距離を検出することは可能である。しかし、第2方向において離間した位置に複数の反射板が設置されることによって、より精度良く棚間距離を検出することができる。
【符号の説明】
【0058】
1 :棚(第1棚、第2棚)
2 :固定棚(第1棚、第2棚)
3 :移動棚(第1棚、第2棚)
5 :棚間センサ(単一アクティブセンサ)
7 :反射板
10 :移動棚装置
21 :第1固定棚(第1棚、第2棚)
22 :第2固定棚(第1棚、第2棚)
31 :第1移動棚(第1棚、第2棚)
32 :第2移動棚(第1棚、第2棚)
33 :第3移動棚(第1棚、第2棚)
71 :第1反射板(反射板)
72 :第2反射板(反射板)
B :障害物
D :棚間距離
E :棚間通路
M :移動方向(第1方向)
S :検出範囲
W :棚幅方向(第2方向)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10