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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-02
(45)【発行日】2023-02-10
(54)【発明の名称】経皮投与製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/568 20060101AFI20230203BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20230203BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20230203BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20230203BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20230203BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20230203BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20230203BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20230203BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20230203BHJP
   A61P 5/26 20060101ALI20230203BHJP
   A61P 15/10 20060101ALI20230203BHJP
   A61P 15/12 20060101ALI20230203BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20230203BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20230203BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20230203BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20230203BHJP
   A61P 19/10 20060101ALI20230203BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20230203BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20230203BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20230203BHJP
【FI】
A61K31/568
A61K9/70 401
A61K47/32
A61K47/10
A61K47/14
A61K47/38
A61K47/02
A61K47/36
A61K47/42
A61P5/26
A61P15/10
A61P15/12
A61P3/10
A61P3/06
A61P3/04
A61P9/10 101
A61P19/10
A61P21/00
A61P25/28
A61P25/24
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019550366
(86)(22)【出願日】2018-10-29
(86)【国際出願番号】 JP2018040065
(87)【国際公開番号】W WO2019088010
(87)【国際公開日】2019-05-09
【審査請求日】2021-08-31
(31)【優先権主張番号】P 2017209588
(32)【優先日】2017-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000215958
【氏名又は名称】帝國製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100138900
【弁理士】
【氏名又は名称】新田 昌宏
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】川上 智
(72)【発明者】
【氏名】堀川 靖
【審査官】井上 能宏
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第103301093(CN,A)
【文献】特開2011-026227(JP,A)
【文献】特表平09-505278(JP,A)
【文献】特表2002-542277(JP,A)
【文献】特表2004-517965(JP,A)
【文献】DOHI, M. et al.,Enhancing Effects of Myristyl Lactate and Lauryl Lactate on Percutaneous Absorption of Indomethacin,Chem. Pharm. Bull.,1990年,Vol. 38, No. 10,pp. 2877-2879
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
膏体中に、テストステロン;ポリアクリル酸またはその塩;増粘剤;架橋剤;プロピレングリコールを含む可塑剤;および乳酸エステル、を含む経皮投与製剤であって、
膏体重量に対して可塑剤の配合量が45~90重量%であり、かつ、乳酸エステルの配合量が0.1~10重量%である、経皮投与製剤
【請求項2】
ポリアクリル酸またはその塩がポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、およびポリアクリル酸部分中和物から選択される1種または2種以上であり;
増粘剤がカルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デンプン、およびゼラチンから選択される1種または2種以上であり;
架橋剤がジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、および合成ヒドロタルサイトから選択される1種または2種以上であり;かつ、
乳酸エステルが乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル、乳酸ペンチル、乳酸ヘキシル、乳酸へプチル、乳酸オクチル、乳酸ノニル、乳酸デシル、乳酸ウンデシル、乳酸ラウリル、乳酸トリデシル、乳酸ミリスチル、乳酸ペンタデシル、乳酸セチル、乳酸ヘプタデシル、および乳酸オクタデシルから選択される1種または2種以上である、請求項1に記載の経皮投与製剤。
【請求項3】
ポリアクリル酸またはその塩がポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、およびポリアクリル酸部分中和物から選択される1種または2種以上であり;
増粘剤がカルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、およびヒドロキシメチルセルロースから選択される1種または2種以上であり;
架橋剤がジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、および合成ヒドロタルサイトから選択される1種または2種以上であり;かつ、
乳酸エステルが乳酸ラウリル、乳酸ミリスチル、および乳酸セチルから選択される1種または2種以上である、請求項1または2に記載の経皮投与製剤。
【請求項4】
可塑剤がエタノール、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、ポリプロピレングリコール、D-ソルビトール、およびポリエチレングリコール400から選択される1種または2種以上をさらに含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の経皮投与製剤。
【請求項5】
可塑剤がエタノール、グリセリン、およびD-ソルビトールから選択される1種または2種以上をさらに含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の経皮投与製剤。
【請求項6】
可塑剤がプロピレングリコールとエタノールの組み合わせである、請求項1~5のいずれか1項に記載の経皮投与製剤。
【請求項7】
ポリアクリル酸またはその塩がポリアクリル酸であり;
増粘剤がヒドロキシエチルセルロースであり;
架橋剤がメタケイ酸アルミン酸マグネシウムであり;
可塑剤がプロピレングリコールであり;かつ、
乳酸エステルが乳酸ラウリル、乳酸ミリスチル、および乳酸セチルから選択される1種または2種以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の経皮投与製剤。
【請求項8】
ポリアクリル酸またはその塩がポリアクリル酸であり;
増粘剤がヒドロキシエチルセルロースであり;
架橋剤がメタケイ酸アルミン酸マグネシウムであり;
可塑剤がプロピレングリコールとエタノールの組み合わせであり;かつ、
乳酸エステルが乳酸ラウリル、乳酸ミリスチル、および乳酸セチルから選択される1種または2種以上である、請求項1~6のいずれか1項に記載の経皮投与製剤。
【請求項9】
膏体重量に対してテストステロンの配合量が0.01~10重量%であり、ポリアクリル酸またはその塩の配合量が1~20重量%であり、増粘剤の配合量が0.5~10重量%であり、かつ、架橋剤の配合量が0.02~5重量%であ、請求項1~8のいずれか1項に記載の経皮投与製剤。
【請求項10】
膏体重量に対してテストステロンの配合量が0.2~4重量%であり、ポリアクリル酸またはその塩の配合量が3~15重量%であり、増粘剤の配合量が1~5重量%であり、架橋剤の配合量が0.05~4重量%であり、可塑剤の配合量が67~90重量%であり、かつ、乳酸エステルの配合量が0.5~5重量%である、請求項1~9のいずれか1項に記載の経皮投与製剤。
【請求項11】
テストステロンの濃度低下による疾患または症状の予防または治療のための、請求項1~10のいずれか1項に記載の経皮投与製剤。
【請求項12】
テストステロンの濃度低下による疾患または症状が、性機能低下、男性更年期障害、メタボリックシンドローム、糖尿病、インスリン抵抗性、肥満、動脈硬化、骨粗鬆症、筋力低下、認知機能低下、記憶障害、および抑うつから選択される1種または2種以上の疾患または症状である、請求項11に記載の経皮投与製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はテストステロンの皮膚透過性に優れ、かつ製剤物性に優れたテストステロンを含有する経皮投与製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
テストステロンは、精巣において産生される男性ホルモン(アンドロゲン)である。アンドロゲンは、多くの重要な生理的働きを担っており、筋、骨、中枢神経系、前立腺、骨髄、および性機能等に影響を及ぼす。先天的または後天的なテストステロンの不足による性機能低下に加え、加齢に伴うテストステロンの濃度低下による疾患または症状、例えば男性更年期障害、メタボリックシンドローム、糖尿病、インスリン抵抗性、肥満、動脈硬化、骨粗鬆症、筋力低下、認知機能低下、記憶障害、および抑うつ等の治療として、注射剤やゲル剤およびリザーバー型製剤により、テストステロンの補充療法がおこなわれている。しかしながら、注射剤は、頻繁な通院が必要であることに加えて、生理的な血中濃度の維持が困難であり、ゲル剤の場合は、正確に投与することの困難性、および皮膚に投与した薬剤の他者への二次曝露等の課題が残されている。
【0003】
その点、貼付剤、特にマトリックス型の経皮投与製剤の場合には、薬物を安定的に一定量投与でき、かつ、貼付と剥離という簡単な作業のみで所望の薬物の投与、および投与の中断または中止が可能であるため、他者への汚染の可能性は殆どない。テストステロンを配合したマトリックス型経皮投与製剤については、従来よりアクリル系粘着剤等の基剤を用いた貼付剤が検討されてきている〔特許文献1および特許文献2〕。しかしながらアクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤あるいはシリコン系粘着剤等の感圧性接着剤は、製剤からの薬物放出性が低いため、薬物の放出性を高めようとすると製剤中に薬物の溶解剤、および薬物の吸収促進剤を多量に配合する必要があり、その結果、製剤物性が悪化するという問題があった。
【0004】
一方、貼付剤の技術分野ではポリアクリル酸等の水溶性高分子を主基剤とし、種々の薬物を配合した非水性の貼付剤が検討されてきている〔特許文献3〕。これらの水溶性高分子等の基剤(以下、非水性基剤と称する場合がある。)を使用した貼付剤の場合、多価アルコール等の親水性溶媒を比較的多量に配合できるため、親水性溶媒に比較的溶解性の高い薬物を配合するには適していると考えられる。しかし、これらの非水性基剤に経皮吸収促進剤を配合しようとすると、一般に吸収促進剤は油性溶媒であるものが多いため、溶媒自体が製剤から分離し、油性溶媒が製剤から染み出し、これにより粘着力の低下等、製剤の物性を損なうという問題がある。また製剤からの油性溶媒の染み出しを抑制するために製剤中に界面活性剤を配合すると、その影響により皮膚刺激等の好ましくない影響が出る。例えば、乳酸エステルがテストステロンの吸収促進剤として優れていることが知られている〔特許文献4〕。しかしながら、乳酸エステルを配合すると、保存中に製剤から乳酸エステルが染み出し、このため、使用時、剥離ライナーを剥がすと剥離ライナー全体に液状成分が付着し、製剤物性が低下するという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2002-542277号公報
【文献】特表2004-517965号公報
【文献】特開2011-26227号公報
【文献】特表平9-505278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術の課題に鑑みてなされたものであり、その目的はテストステロンの高い経皮吸収性と、優れた製剤物性を兼ね備えた経皮投与製剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、ポリアクリル酸またはその塩、増粘剤、および架橋剤を主基剤とし、可塑剤としてプロピレングリコール、および吸収促進剤として乳酸エステルを含有してなる膏体基剤にテストステロンを配合した場合に、製剤物性を損なうことなく、テストステロンの経皮吸収性が優れた経皮投与製剤を提供することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下に関する。
1.経皮投与製剤
[1]
膏体中に、テストステロン;ポリアクリル酸またはその塩;増粘剤;架橋剤;プロピレングリコールを含む可塑剤;および乳酸エステル、を含む経皮投与製剤。
[1-1]
ポリアクリル酸またはその塩がポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、およびポリアクリル酸部分中和物から選択される1種または2種以上である、[1]に記載の経皮投与製剤。
[1-2]
増粘剤がカルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デンプン、およびゼラチンから選択される1種または2種以上、好ましくはカルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、およびヒドロキシメチルセルロースから選択される1種または2種以上である、[1]または[1-1]に記載の経皮投与製剤。
[1-3]
架橋剤がジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、および合成ヒドロタルサイトから選択される1種または2種以上、好ましくはジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、および合成ヒドロタルサイトから選択される1種または2種以上である、[1]~[1-2]のいずれか1つに記載の経皮投与製剤。
[1-4]
乳酸エステルが乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル、乳酸ペンチル、乳酸ヘキシル、乳酸へプチル、乳酸オクチル、乳酸ノニル、乳酸デシル、乳酸ウンデシル、乳酸ラウリル、乳酸トリデシル、乳酸ミリスチル、乳酸ペンタデシル、乳酸セチル、乳酸ヘプタデシル、および乳酸オクタデシルから選択される1種または2種以上、好ましくは乳酸ラウリル、乳酸ミリスチル、および乳酸セチルから選択される1種または2種以上である、[1]~[1-3]のいずれか1つに記載の経皮投与製剤。
[2]
ポリアクリル酸またはその塩がポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、およびポリアクリル酸部分中和物から選択される1種または2種以上であり;
増粘剤がカルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デンプン、およびゼラチンから選択される1種または2種以上であり;
架橋剤がジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、および合成ヒドロタルサイトから選択される1種または2種以上であり;かつ、
乳酸エステルが乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル、乳酸ペンチル、乳酸ヘキシル、乳酸へプチル、乳酸オクチル、乳酸ノニル、乳酸デシル、乳酸ウンデシル、乳酸ラウリル、乳酸トリデシル、乳酸ミリスチル、乳酸ペンタデシル、乳酸セチル、乳酸ヘプタデシル、および乳酸オクタデシルから選択される1種または2種以上である、[1]に記載の経皮投与製剤。
[3]
ポリアクリル酸またはその塩がポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、およびポリアクリル酸部分中和物から選択される1種または2種以上であり;
増粘剤がカルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、およびヒドロキシメチルセルロースから選択される1種または2種以上であり;
架橋剤がジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、および合成ヒドロタルサイトから選択される1種または2種以上であり;かつ、
乳酸エステルが乳酸ラウリル、乳酸ミリスチル、および乳酸セチルから選択される1種または2種以上である、[1]または[2]に記載の経皮投与製剤。
[4]
可塑剤がエタノール、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、ポリプロピレングリコール、D-ソルビトール、およびポリエチレングリコール400から選択される1種または2種以上をさらに含む、[1]~[3]のいずれか1つに記載の経皮投与製剤。
[5]
可塑剤がエタノール、グリセリン、およびD-ソルビトールから選択される1種または2種以上をさらに含む、[1]~[4]のいずれか1つに記載の経皮投与製剤。
[6]
可塑剤がプロピレングリコールとエタノールの組み合わせである、[1]~[5]のいずれか1つに記載の経皮投与製剤。
[7]
ポリアクリル酸またはその塩がポリアクリル酸であり;
増粘剤がヒドロキシエチルセルロースであり;
架橋剤がメタケイ酸アルミン酸マグネシウムであり;
可塑剤がプロピレングリコールであり;かつ、
乳酸エステルが乳酸ラウリル、乳酸ミリスチル、および乳酸セチルから選択される1種または2種以上である、[1]~[3]のいずれか1つに記載の経皮投与製剤。
[8]
ポリアクリル酸またはその塩がポリアクリル酸であり;
増粘剤がヒドロキシエチルセルロースであり;
架橋剤がメタケイ酸アルミン酸マグネシウムであり;
可塑剤がプロピレングリコールとエタノールの組み合わせであり;かつ、
乳酸エステルが乳酸ラウリル、乳酸ミリスチル、および乳酸セチルから選択される1種または2種以上である、[1]~[6]のいずれか1つに記載の経皮投与製剤。
[9]
膏体重量に対してテストステロンの配合量が0.01~10重量%であり、ポリアクリル酸またはその塩の配合量が1~20重量%であり、増粘剤の配合量が0.5~10重量%であり、架橋剤の配合量が0.02~5重量%であり、可塑剤の配合量が45~90重量%であり、かつ、乳酸エステルの配合量が0.1~10重量%である、[1]~[8]のいずれか1つに記載の経皮投与製剤。
[10]
膏体重量に対してテストステロンの配合量が0.2~4重量%であり、ポリアクリル酸またはその塩の配合量が3~15重量%であり、増粘剤の配合量が1~5重量%であり、架橋剤の配合量が0.05~4重量%であり、可塑剤の配合量が67~90重量%であり、かつ、乳酸エステルの配合量が0.5~5重量%である、[1]~[9]のいずれか1つに記載の経皮投与製剤。
[11]
膏体重量に対してテストステロンの配合量が0.5~2重量%であり、ポリアクリル酸またはその塩の配合量が5~10重量%であり、増粘剤の配合量が1~3重量%であり、架橋剤の配合量が1~4重量%であり、可塑剤の配合量が77~90重量%であり、かつ、乳酸エステルの配合量が1~4重量%である、[1]~[10]のいずれか1つに記載の経皮投与製剤。
【0009】
また、本発明は以下に関する。
[12]
膏体が界面活性剤;乳酸エステル以外の吸収促進剤;防腐剤;抗酸化剤;清涼化剤;ケイ素化合物;無機充填剤;着香剤;および着色剤から選択される1種または2種以上の成分をさらに含む、[1]~[11]のいずれか1つに記載の経皮投与製剤。
[13]
膏体がテストステロン;ポリアクリル酸またはその塩;増粘剤;架橋剤;プロピレングリコールを含む可塑剤;および乳酸エステルからなる、[1]~[11]のいずれか1つに記載の経皮投与製剤。
[14]
膏体が感圧性接着剤を含まない、[1]~[13]のいずれか1つに記載の経皮投与製剤。
【0010】
また、本発明は以下に関する。
2.経皮投与製剤の用途
[15]
テストステロンの濃度低下による疾患または症状の予防または治療のための、[1]~[14]のいずれか1つに記載の経皮投与製剤。
[16]
テストステロンの濃度低下による疾患または症状が、性機能低下、男性更年期障害、メタボリックシンドローム、糖尿病、インスリン抵抗性、肥満、動脈硬化、骨粗鬆症、筋力低下、認知機能低下、記憶障害、および抑うつから選択される1種または2種以上の疾患または症状である、[15]に記載の経皮投与製剤。
[17]
テストステロンの濃度低下による疾患または症状の予防または治療のための医薬の製造における、[1]~[14]のいずれか1つに記載の経皮投与製剤の使用。
[18]
テストステロンの濃度低下による疾患または症状が、性機能低下、男性更年期障害、メタボリックシンドローム、糖尿病、インスリン抵抗性、肥満、動脈硬化、骨粗鬆症、筋力低下、認知機能低下、記憶障害、および抑うつから選択される1種または2種以上の疾患または症状である、[17]に記載の使用。
[19]
[1]~[14]のいずれか1つに記載の経皮投与製剤を投与することを含む、テストステロンの濃度低下による疾患または症状の予防または治療方法。
[20]
テストステロンの濃度低下による疾患または症状が、性機能低下、男性更年期障害、メタボリックシンドローム、糖尿病、インスリン抵抗性、肥満、動脈硬化、骨粗鬆症、筋力低下、認知機能低下、記憶障害、および抑うつから選択される1種または2種以上の疾患または症状である、[19]に記載の予防または治療方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明において、テストステロン、ポリアクリル酸またはその塩、増粘剤、架橋剤、プロピレングリコールを含む可塑剤、および乳酸エステルを含有した経皮投与製剤とすることにより、テストステロンの皮膚透過性に優れ、かつ製剤の物性に優れたテストステロン含有経皮投与製剤を提供することが可能となった。本発明の経皮投与製剤により、テストステロンの濃度低下による疾患または症状を効率的に予防または治療することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書において、「含有する」または「含む」は、「配合する」と互換的に用いられてもよい。また、本明細書において、「含有量」と「配合量」は互換的に用いられてもよい。
【0013】
本発明の経皮投与製剤では、膏体中にテストステロン、ポリアクリル酸またはその塩、増粘剤、架橋剤、プロピレングリコールを含む可塑剤、および乳酸エステルを含む。膏体は通常、膏体基剤と薬物としてのテストステロンを含有するペースト状の組成物である。本発明の経皮投与製剤では、ポリアクリル酸またはその塩、増粘剤、および架橋剤を混合したものを主基剤と称し、さらにプロピレングリコールを含む可塑剤、および吸収促進剤としての乳酸エステルを配合したものを膏体基剤と称する。
【0014】
本発明の経皮投与製剤におけるテストステロンの配合量は、治療効果のある濃度であれば特に限定されるものではないが、膏体重量に対して通常0.01~10重量%、好ましくは0.2~4重量%、より好ましくは0.5~2重量%の範囲である。テストステロンの配合量が0.01重量%未満であると、十分な薬物の経皮吸収性が得られず、他方、10重量%を超えると、製剤中に溶解しない薬物が結晶化し、主薬放出性の低下および製剤物性の低下を引き起こす。
【0015】
本発明の経皮投与製剤におけるポリアクリル酸またはその塩は、架橋剤により架橋体を形成することにより、膏体の粘着力を高める。ポリアクリル酸またはその塩としては、例えばポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、およびポリアクリル酸部分中和物等が挙げられ、それらの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明では、ポリアクリル酸が好ましい。
【0016】
本発明の経皮投与製剤におけるポリアクリル酸またはその塩の配合量は、膏体重量に対して通常1~20重量%、好ましくは3~15重量%、より好ましくは5~10重量%の範囲である。配合量が1重量%未満では十分な三次元の網目構造が形成されず、ゲルが軟弱なものとなり好ましくない。また、配合量が20重量%を超えると、膏体層が固くなりすぎ粘着力の低下が起こり好ましくない。
【0017】
本発明の経皮投与製剤における増粘剤は、膏体の保形性を調整する働きがある。増粘剤としては、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、およびヒドロキシメチルセルロース等のセルロース誘導体;ポリビニルアルコール、およびポリビニルピロリドン等の合成水溶性高分子;デンプン;ならびにゼラチン等が挙げられ、それらの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明では、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、およびヒドロキシメチルセルロースから選択される1種または2種以上のセルロース誘導体が好ましく、ヒドロキシエチルセルロースがより好ましい。
【0018】
本発明の経皮投与製剤における増粘剤の配合量は、膏体重量に対して通常0.5~10重量%、好ましくは1~5重量%、より好ましくは1~3重量%の範囲である。増粘剤の配合量が0.5重量%未満であると、膏体物性が低下し、製造時の保形性の低下が起こり好ましいものではない。また、配合量が10重量%を超える場合には、ゲル基剤の粘度が上昇し、製造時における作業性が悪くなり、好ましいものではない。
【0019】
本発明の経皮投与製剤における架橋剤は、ポリアクリル酸またはその塩の架橋体を形成させ、膏体の保形性を維持する働きがあり、難溶性多価金属塩から選ばれる。架橋剤としては、例えばジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、および合成ヒドロタルサイト等が挙げられ、それらの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明では、ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、および合成ヒドロタルサイトから選択される1種または2種以上が好ましく、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムがより好ましい。
【0020】
本発明の経皮投与製剤における架橋剤の配合量は、膏体重量に対して通常0.02~5重量%、好ましくは0.05~4重量%、より好ましくは1~4重量%の範囲である。架橋剤の配合量が0.02重量%未満であると、架橋体形成が不十分であり、膏体の保形性が悪化する。一方、架橋剤の配合量が5重量%を超えると架橋体形成が多くなり製剤の粘着性が悪化する。
【0021】
本発明の経皮投与製剤における乳酸エステルは、テストステロンの皮膚への浸透を促進する経皮吸収促進剤として作用する。乳酸エステルとしては、例えば乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル、乳酸ペンチル、乳酸ヘキシル、乳酸へプチル、乳酸オクチル、乳酸ノニル、乳酸デシル、乳酸ウンデシル、乳酸ラウリル、乳酸トリデシル、乳酸ミリスチル、乳酸ペンタデシル、乳酸セチル、乳酸ヘプタデシル、および乳酸オクタデシル等が挙げられ、それらの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明では、乳酸ラウリル、乳酸ミリスチル、および乳酸セチルから選択される1種または2種以上が好ましく、乳酸ラウリルがより好ましい。
【0022】
本発明の経皮投与製剤における乳酸エステルの配合量は、膏体重量に対して通常0.1~10重量%、好ましくは0.5~5重量%、より好ましくは1~4重量%の範囲である。乳酸エステルの配合量が0.1重量%未満であると、薬物の吸収が低下し、配合量が10重量%を超える場合には、製剤物性が悪化し、好ましくない。
【0023】
本発明の経皮投与製剤は、可塑剤としてプロピレングリコールを含む。プロピレングリコールは、可塑剤としての作用の他、基剤成分の溶解剤としても作用する。また他の可塑剤と比較してプロピレングリコールは乳酸エステルとの相溶性が高く、乳酸エステルが製剤から分離、滲出するのを抑制する作用に優れている。
【0024】
本発明においては、プロピレングリコールを他の可塑剤と組み合わせて配合することができる。他の可塑剤としては、例えばエタノール、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、ポリプロピレングリコール、D-ソルビトール、およびポリエチレングリコール400等を挙げることができ、それらの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。エタノール、グリセリン、およびD-ソルビトールから選択される1種または2種以上が好ましく、エタノールがより好ましい。
【0025】
本発明の経皮投与製剤におけるプロピレングリコールを含む可塑剤の配合量は、膏体重量に対して通常45~90重量%、好ましくは67~90重量%、より好ましくは77~90重量%の範囲である。可塑剤の配合量が45重量%未満であると、膏体の保形性が不十分となり、また乳酸エステルの膏体からの滲出を抑制できず、粘着物性が悪化する。また可塑剤を90重量%を超えて配合しても、膏体の粘着性、保形性が不十分となり好ましくない。
【0026】
その他、本発明の経皮投与製剤には、通常の外用剤等に一般的に配合される各種成分を配合してもよい。そのような成分としては、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等の界面活性剤;ミリスチン酸イソプロピル等の乳酸エステル以外の吸収促進剤;パラオキシ安息香酸エステル等の防腐剤;ジブチルヒドロキシトルエン等の抗酸化剤;L-メントール等の清涼化剤;軽質無水ケイ酸等のケイ素化合物;酸化亜鉛等の無機充填剤;ハッカ油等の着香剤;ならびに黄色三二酸化鉄等の着色剤等を挙げることができ、これらを適宜適量配合することができる。
【0027】
1つの実施態様では、本発明の経皮投与製剤の膏体は界面活性剤;乳酸エステル以外の吸収促進剤;防腐剤;抗酸化剤;清涼化剤;ケイ素化合物;無機充填剤;着香剤;および着色剤から選択される1種または2種以上の成分をさらに含んでいてもよい。
別の実施態様では、本発明の経皮投与製剤の膏体はテストステロン;ポリアクリル酸またはその塩;増粘剤;架橋剤;プロピレングリコールを含む可塑剤;および乳酸エステルからなる。
【0028】
1つの実施態様では、本発明の経皮投与製剤の膏体は感圧性接着剤を含まない。そのような感圧性接着剤としては、例えばアクリル系粘着剤(例えばDuro-Tak 87-4098等のアクリレート共重合体等)、ゴム系粘着剤(例えばスチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体等)、およびシリコン系粘着剤(例えばダウ・コーニング社製のBIO-PSA 7-4302、BIO-PSA 7-4101、BIO-PSA 7-4102、およびBIO-PSA 7-4202等)を挙げることができる。
【0029】
本発明の経皮投与製剤は、テストステロンの濃度低下による疾患または症状の予防または治療に有用である。そのような疾患または症状としては、例えば性機能低下、男性更年期障害、メタボリックシンドローム、糖尿病、インスリン抵抗性、肥満、動脈硬化、骨粗鬆症、筋力低下、認知機能低下、記憶障害、および抑うつから選択される1種または2種以上の疾患または症状等が挙げられる。本発明の経皮投与製剤は、好ましくは性機能低下または男性更年期障害の予防または治療に用いられる。
【0030】
本発明の経皮投与製剤では、膏体は支持体と剥離ライナーの間に展延または塗布される。本発明の経皮投与製剤において使用される支持体は、貼付後の製剤の剥離を抑制する点から、身体の動きに追従する柔軟性に富む薄いものが望ましい。例えば各種の不織布、織布、フィルム、およびシート等であれば特に制限はなく、具体的にはレーヨン、ポリエステル、ポリオレフィン、およびウレタン等の繊維を織布または不織布としたもの、あるいはポリマーフィルム、発泡体シート、およびこれらの積層フィルム等が使用される。
【0031】
膏体の表面を被覆する剥離ライナーとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、およびこれらをシリコンで離型処理したもの等が挙げられる。
【0032】
また本発明の経皮投与製剤は、粘着力が高いため、カバーシート等の接着補助手段は基本的に必要としないが、長期間に亘りヒトに適用する際には、皮膚への良好な接着性を維持するために、補助的にカバーシートを使用してもよい。カバーシートは製剤の支持体側に設けられ、その材質としては不織布、布、ネット、ニット、ガーゼ、およびフィルム等が挙げられる。それらの中でも固着部位での蒸れやかぶれを起こさないよう、ある程度通気性のあるものが好ましい。具体的なカバーシートの素材としては、ポリエステル(繊維)、ポリエチレン(繊維)、ポリプロピレン(繊維)、レーヨン、キュプラ、および麻等が挙げられる。また、カバーシートの粘着層に用いられる粘着剤としては、アクリル酸アルキルエステル等のアクリル系粘着剤、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体等のゴム系粘着剤、およびシリコン系粘着剤等が例示できる。
【0033】
本発明のテストステロン含有経皮投与製剤を調製するには、例えば以下の方法によって製造することができる。まず、ポリアクリル酸またはその塩とヒドロキシエチルセルロース等の増粘剤をプロピレングリコール等の可塑剤に加熱溶解する。冷却後、得られた液と、テストステロンおよび乳酸エステルを溶解し、架橋剤を分散させた可塑剤を撹拌混合し、膏体溶液(以下、非水性膏体と称す。)を得る。この非水性膏体を支持体上に塗布した後、さらに剥離ライナーを被覆し、所望の大きさに裁断して本発明の経皮投与製剤を得る。本発明の経皮投与製剤の場合、膏体の塗布量は50~1000g/mである。
【0034】
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の数値は特に断らない限り「重量%」である。
【実施例
【0035】
実施例1~3
ポリアクリル酸およびヒドロキシエチルセルロースをプロピレングリコールに加えて加熱溶解した。冷却後、テストステロンおよび乳酸エステルを溶解し、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムを分散させたエタノールを加えて、撹拌混合し、非水性膏体を得た。この非水性膏体を支持体上に700g/mの塗布量にて均一に塗布した後、さらに剥離ライナーを被覆し、所望の大きさに裁断して各実施例の経皮投与製剤を得た。
【0036】
実施例4
テストステロンおよび乳酸エステルを溶解し、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムを分散させる溶媒をプロピレングリコールに変更した以外は、実施例1~3の製法に従い経皮投与製剤を得た。
なお、各実施例の製剤組成は表1に示す通りである。
【0037】
【表1】
【0038】
比較例1
乳酸ラウリルを加えない以外は、実施例1と同様に作製した。
【0039】
比較例2および3
ポリアクリル酸およびヒドロキシエチルセルロースを加熱溶解する溶媒をグリセリンまたはソルビトールに変更した以外は、実施例1の製法に従い経皮投与製剤を得た。
なお、比較例1~3の製剤組成は表2に示す。
【0040】
【表2】
【0041】
比較例4および5
テストステロンをジメチルスルホキシドに溶解させ主薬溶液を調製した。この主薬溶液とアクリル系粘着剤(Duro-Tak 87-4098)を均一になるまで撹拌混合することによって得られた粘着剤溶液を、剥離ライナー上に伸展して溶媒を乾燥除去させ、厚さ100μmの粘着剤層を形成後、支持体を貼り合わせることによりテープ剤を得た。なお、比較例4および5の製剤組成は表3に示すとおりである。
【0042】
【表3】
【0043】
[試験例]
試験例1:製造後の製剤の物性確認(膏体表面からの液状成分の染み出しの有無の確認)
製造後3日目における各実施例および各比較例の剥離ライナーを剥離し、剥離後のフィルムに付着していた液状成分の量を目視確認することにより、膏体物性を評価することで製剤物性を評価した。その結果を前記表1~表3に示す。なお、本試験の評価基準は以下の通りである。
〔物性評価基準〕
○:剥離ライナーには液状成分は付着していなかった。
△:ごく微量の液状成分が剥離ライナーに付着していた。
×:剥離ライナーのほぼ全面に液状成分が付着していた。
【0044】
試験例2:インビトロヘアレスラット皮膚透過性試験
本発明の経皮投与製剤におけるテストステロンの経皮吸収性を検討するため、各実施例、ならびに比較例1、2、4および5の製剤について、ヘアレスラットにおけるインビトロ皮膚透過性試験を行った。雄性ヘアレスラット(HWY系、7週齢)の腹部摘出皮膚をフランツ型拡散セルにセットし、円形(φ28mm)に裁断した各試験製剤を貼付した。レセプター側には40%ポリエチレングリコールを溶解したリン酸緩衝生理食塩水を満たし、ウォータージャケットには、37℃の温水を還流した。経時的にレセプター液をサンプリングし、皮膚を透過したテストステロン量を液体クロマトグラフ法により測定し、その結果より、試験開始24時間後の累積透過量を算出した。その結果を、表4に示す。
【0045】
【表4】
【0046】
〔考察〕
上記の各試験結果より、各実施例の経皮投与製剤はテストステロンの経皮吸収性と製剤物性ともに優れた製剤であることが判明した。一方、乳酸エステルが含有されていない比較例1、ならびにアクリル系粘着剤を主基剤とした比較例4および比較例5は実施例の製剤と比較してテストステロンの経皮吸収性が大きく劣っていた。また、プロピレングリコールを配合していない比較例2および比較例3の製剤は、膏体表面からの液状成分の染み出しが見られ、製剤物性の低下が顕著であった。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明により、薬物放出性が優れ、かつ製剤の物性が極めて良好なテストステロン含有経皮投与製剤を提供することができる。本発明の経皮投与製剤は、例えばテストステロンの濃度低下による疾患または症状の予防または治療等に極めて有用である。