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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-02
(45)【発行日】2023-02-10
(54)【発明の名称】液晶組成物及び液晶素子
(51)【国際特許分類】
   C09K 19/54 20060101AFI20230203BHJP
   C09K 19/40 20060101ALI20230203BHJP
   C09K 19/42 20060101ALI20230203BHJP
   G02F 1/1334 20060101ALI20230203BHJP
【FI】
C09K19/54 Z
C09K19/40
C09K19/42
G02F1/1334
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022564049
(86)(22)【出願日】2022-03-18
(86)【国際出願番号】 JP2022012887
【審査請求日】2022-10-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504429644
【氏名又は名称】九州ナノテック光学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114627
【弁理士】
【氏名又は名称】有吉 修一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100182501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100175271
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 宣圭
(74)【代理人】
【識別番号】100190975
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 聡子
(72)【発明者】
【氏名】馬場 潤一
【審査官】長部 喜幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-164784(JP,A)
【文献】特開平10-330754(JP,A)
【文献】国際公開第2019/124345(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/221236(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/021838(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/013003(WO,A1)
【文献】特開2007-092000(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 19/00
G02F 1/1334
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合可能な有機化合物と、液晶化合物とを含む液晶組成物であって、
前記液晶化合物の、固体相-ネマチック相転移温度またはスメクチック相-ネマチック相転移温度が0℃以下であり、かつ、
0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物の含有量は、前記液晶組成物の全量基準で10~60質量%であり、
0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物は、
2~4官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマー、2~4官能脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー、2~4官能脂肪族ウレタンアクリレートポリマー、2~4官能チオールモノマー、2~4官能チオールオリゴマー、2~4官能チオールポリマー、単官能リン酸アク(メタク)リレートモノマー、単官能リン酸アク(メタク)リレートオリゴマー及び単官能リン酸アク(メタク)リレートポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1つと、
2~4官能脂肪族オリゴマーアクリレートモノマー、2~4官能脂肪族オリゴマーアクリレートオリゴマー、2~4官能脂肪族オリゴマーアクリレートポリマー、2~4官能ポリエステルアクリレートモノマー、2~4官能ポリエステルアクリレートオリゴマー、2~4官能ポリエステルアクリレートポリマー、1~6官能アク(メタク)リレートエステルモノマー、1~6官能アク(メタク)リレートエステルオリゴマー及び1~6官能アク(メタク)リレートエステルポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1つである
液晶組成物。
【請求項2】
単官能アク(メタク)リレートエステルモノマーもしくは単官能アク(メタク)リレートエステルオリゴマーもしくは単官能アク(メタク)リレートエステルポリマーの含有量は、前記液晶組成物の全量基準で10~40質量%であり、
2官能アク(メタク)リレートエステルモノマー、2官能アク(メタク)リレートエステルオリゴマー、2官能アク(メタク)リレートエステルポリマー、2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマー、2官能脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー、2官能脂肪族ウレタンアクリレートポリマー、2官能脂肪族オリゴマーアクリレートモノマー、2官能脂肪族オリゴマーアクリレートオリゴマー、2官能脂肪族オリゴマーアクリレートポリマー、2官能ポリエステルアクリレートモノマー、2官能ポリエステルアクリレートオリゴマー及び2官能ポリエステルアクリレートポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1つの有機化合物の含有量は、前記液晶組成物の全量基準で1~30質量%であり、
2~4官能チオールモノマーもしくは2~4官能チオールオリゴマーもしくは2~4官能チオールポリマーの含有量は、前記液晶組成物の全量基準で1~10質量%であり、
単官能リン酸アク(メタク)リレートモノマーもしくは単官能リン酸アク(メタク)リレートオリゴマーもしくは単官能リン酸アク(メタク)リレートポリマーの含有量は、前記液晶組成物の全量基準で0.1~3質量%であり、
3~4官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマー、3~4官能脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー、3~4官能脂肪族ウレタンアクリレートポリマー、3~4官能ポリエステルアクリレートモノマー、3~4官能ポリエステルアクリレートオリゴマー、3~4官能ポリエステルアクリレートポリマー、3~6官能アク(メタク)リレートエステルモノマー、3~6官能アク(メタク)リレートエステルオリゴマー、及び3~6官能アク(メタク)リレートエステルポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1つの有機化合物の含有量は、前記液晶組成物の全量基準で1~20質量%である
請求項1に記載の液晶組成物。
【請求項3】
前記液晶化合物の含有量は、前記液晶組成物の全量基準で40~80質量%である
請求項1に記載の液晶組成物。
【請求項4】
0℃を超えるガラス転移温度を有する前記有機化合物の含有量は、前記液晶組成物の全量基準で1~40質量%である
請求項1に記載の液晶組成物。
【請求項5】
重合可能な有機化合物と、液晶化合物とを含む液晶組成物であって、
前記液晶化合物の、固体相-ネマチック相転移温度またはスメクチック相-ネマチック相転移温度が0℃以下であり、かつ、
0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物の含有量は、前記液晶組成物の全量基準で10質量%以上であり、
0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物は、
2~4官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマー、2~4官能脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー、2~4官能脂肪族ウレタンアクリレートポリマー、2~4官能チオールモノマー、2~4官能チオールオリゴマー、2~4官能チオールポリマー、単官能リン酸アク(メタク)リレートモノマー、単官能リン酸アク(メタク)リレートオリゴマー及び単官能リン酸アク(メタク)リレートポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1つと、
2~4官能脂肪族オリゴマーアクリレートモノマー、2~4官能脂肪族オリゴマーアクリレートオリゴマー、2~4官能脂肪族オリゴマーアクリレートポリマー、2~4官能ポリエステルアクリレートモノマー、2~4官能ポリエステルアクリレートオリゴマー、2~4官能ポリエステルアクリレートポリマー、1~6官能アク(メタク)リレートエステルモノマー、1~6官能アク(メタク)リレートエステルオリゴマー及び1~6官能アク(メタク)リレートエステルポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1つである
液晶組成物。
【請求項6】
面状の第1の基材と、
該第1の基材の一方の面側に配置されていると共に導電性を有する第1の導電膜と、
該第1の導電膜の、前記第1の基材とは反対側に配置されていると共に液晶組成物を有する液晶層と、
該液晶層の、前記第1の導電膜とは反対側に配置されていると共に導電性を有する第2の導電膜と、
該第2の導電膜の、前記液晶層とは反対側に配置された面状の第2の基材とを備え、
前記液晶組成物は、重合可能な有機化合物と、液晶化合物とを含み、
前記液晶化合物の、固体相-ネマチック相転移温度またはスメクチック相-ネマチック相転移温度が0℃以下であり、かつ、
0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物の含有量は、前記液晶組成物の全量基準で10~60質量%であり、
0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物は、
2~4官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマー、2~4官能脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー、2~4官能脂肪族ウレタンアクリレートポリマー、2~4官能チオールモノマー、2~4官能チオールオリゴマー、2~4官能チオールポリマー、単官能リン酸アク(メタク)リレートモノマー、単官能リン酸アク(メタク)リレートオリゴマー及び単官能リン酸アク(メタク)リレートポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1つと、
2~4官能脂肪族オリゴマーアクリレートモノマー、2~4官能脂肪族オリゴマーアクリレートオリゴマー、2~4官能脂肪族オリゴマーアクリレートポリマー、2~4官能ポリエステルアクリレートモノマー、2~4官能ポリエステルアクリレートオリゴマー、2~4官能ポリエステルアクリレートポリマー、1~6官能アク(メタク)リレートエステルモノマー、1~6官能アク(メタク)リレートエステルオリゴマー及び1~6官能アク(メタク)リレートエステルポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1つである
液晶素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶組成物及び液晶素子に関する。詳しくは、例えば液晶ディスプレイに使用される液晶組成物、及び本発明の液晶組成物が使用された液晶素子に係るものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置すなわち液晶ディスプレイは、スマートフォン、タブレット端末、ノートパソコン、デジタルカメラ、スマートウェッチ、自動車のカーナビゲーション機器の操作パネルなど、様々な電子機器に使用されている。
【0003】
しかし、液晶ディスプレイは、暑過ぎる環境や寒過ぎる環境において円滑に機能し難くなる。
液晶化合物が最も円滑に機能する温度は5℃~約50℃である。そして、液晶ディスプレイの温度が下がれば下がるほど表示に必要な反応時間が遅くなり、画質が劣化して不鮮明になる。
具体的には液晶ディスプレイの温度が4℃を下回ると液晶ディスプレイに不具合が生じる。
【0004】
例えば、雪山など大気の温度が0℃を大きく下回る極寒の場所における遭難者の捜索などのためドローンが活用されており、ドローンの操作のためにノートパソコンが使用されている。このノートパソコンの液晶ディスプレイが極寒の環境下で冷やされ、液晶ディスプレイの温度が4℃を下回って不具合が生じてしまうと、捜索者の捜索が難航してしまうという問題が生じる。
【0005】
そこで、液晶ディスプレイが冷却されて低温になっても駆動できるようにするために、様々な技術が提案されている。
例えば特許文献1には、液晶表示装置の表示パネル上にITO(Indium Tin Oxide)膜を用いた透明ヒータを設け、温度が低いときにヒータを稼働させることにより、表示パネルの表面温度の最適化を図る技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2005-122190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、液晶表示装置の表示パネルにITO膜を用いたヒータを設ける方法では、ヒータを形成するためにITO膜を加工しなければならず、その結果、ITO膜の加工という工程が増えてしまう。
また、より均一な表示を得るためには、ITO膜の面内を流れる電流にムラが生じないよう、ITO膜への電流供給に際して、このITO膜の抵抗分布を考慮する必要性が生じる。
【0008】
そのため、ヒータなどの部材を設けることなく、0℃以下の場合においても駆動できる液晶素子や、0℃以下の場合においても液晶素子を駆動させることができる液晶組成物が求められていた。
【0009】
本発明は、以上の点に鑑みて創案されたものであり、0℃以下においても液晶素子を駆動させることができる液晶組成物、及び0℃以下においても駆動できる液晶素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明の液晶組成物は、重合可能な有機化合物と、液晶化合物とを含む液晶組成物であって、前記液晶化合物の、固体相-ネマチック相転移温度またはスメクチック相-ネマチック相転移温度が0℃以下であり、かつ、0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物の含有量は、前記液晶組成物の全量基準で10~60質量%である。
【0011】
ここで、液晶化合物の、固体相-ネマチック相転移温度またはスメクチック相-ネマチック相転移温度が0℃以下であることによって、0℃以下という低温環境においても重合後の液晶組成物が柔軟性を保つことができ、液晶駆動を阻害しない。
【0012】
また、0℃以下のガラス転移温度を有する重合可能な有機化合物の含有量が10質量%以上であることによって、重合したこの有機化合物のガラス転移温度も0℃以下に下がった状態とすることができ、0℃以下という低温環境においても、液晶組成物が柔軟性を保つことができる。
【0013】
また、0℃以下のガラス転移温度を有する重合可能な有機化合物の含有量が60質量%以下であることによって、液晶組成物の散乱性を維持し易いと共に電場応答性を阻害しないようにし易い。
【0014】
また、本発明の液晶組成物において、有機化合物は、単官能モノマー、単官能オリゴマー、単官能ポリマー、2官能モノマー、2官能オリゴマー、2官能ポリマー、多官能モノマー、多官能オリゴマー、及び多官能ポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1つであり、前記多官能モノマーもしくは前記多官能オリゴマーもしくは前記多官能ポリマーの含有量は、液晶組成物の全量基準で1~20質量%である構成とすることができる。
【0015】
この場合、多官能すなわち3官能以上のモノマーもしくはオリゴマーもしくはポリマーの含有量が液晶組成物の全量基準で1~20質量%であることによって、高分子ネットワークを構築し易くなり、また、液晶組成物のガラス転移温度の上昇を抑えることができると共に電場に対する液晶組成物の応答性の低下を抑えることができる。
【0016】
また、本発明の液晶組成物において、有機化合物は、2~4官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマー、2~4官能脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー、2~4官能脂肪族ウレタンアクリレートポリマー、2~4官能脂肪族オリゴマーアクリレートモノマー、2~4官能脂肪族オリゴマーアクリレートオリゴマー、2~4官能脂肪族オリゴマーアクリレートポリマー、2~4官能ポリエステルアクリレートモノマー、2~4官能ポリエステルアクリレートオリゴマー、2~4官能ポリエステルアクリレートポリマー、1~6官能アク(メタク)リレートエステルモノマー、1~6官能アク(メタク)リレートエステルオリゴマー、1~6官能アク(メタク)リレートエステルポリマー、2~4官能チオールモノマー、2~4官能チオールオリゴマー、2~4官能チオールポリマー、単官能リン酸アク(メタク)リレートモノマー、単官能リン酸アク(メタク)リレートオリゴマー及び単官能リン酸アク(メタク)リレートポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1つであり、多官能モノマーもしくは多官能オリゴマーもしくは多官能ポリマーの含有量は、前記液晶組成物の全量基準で1~20質量%である構成とすることができる。
【0017】
この場合、2官能脂肪族ウレタンアクリレート(モノマー、オリゴマーもしくはポリマー)、2官能脂肪族オリゴマーアクリレート(モノマー、オリゴマーもしくはポリマー)、2官能ポリエステルアクリレート(モノマー、オリゴマーもしくはポリマー)、または2官能アク(メタク)リレートエステル(モノマー、オリゴマーもしくはポリマー)によって、液晶組成物の密着性が向上し、また、未硬化成分が発生し難くなる。
【0018】
また、3~4官能脂肪族ウレタンアクリレート(モノマー、オリゴマーもしくはポリマー)、3~4官能ポリエステルアクリレート(モノマー、オリゴマーもしくはポリマー)、または3~6官能アク(メタク)リレートエステル(モノマー、オリゴマーもしくはポリマー)によって、液晶組成物において架橋構造を形成し易くなる。
【0019】
また、単官能アク(メタク)リレートエステル(モノマー、オリゴマーもしくはポリマー)は、2官能以上のモノマーを含む多くの液晶組成物において液晶化合物との相性が良いので、液晶化合物と有機化合物の比率調整に使用できる。
【0020】
また、2~4官能チオール(モノマー、オリゴマーもしくはポリマー)によって、液晶組成物に低収縮性と深硬化性(硬化性の向上)を付与でき、また、液晶組成物にさらなる柔軟性を付与できる。
【0021】
また、単官能リン酸アク(メタク)リレート(モノマー、オリゴマーもしくはポリマー)、によって、液晶組成物の表面が改質され、基材界面との密着性を向上できる。
【0022】
また、3官能以上のウレタンアクリレート(モノマー、オリゴマーもしくはポリマー)、1~6官能アク(メタク)リレートエステル(モノマー、オリゴマーもしくはポリマー)、または3官能以上のチオール(モノマー、オリゴマーもしくはポリマー)によって、高分子ネットワークが密で複雑な構造となり、高分子ネットワークに沿って液晶化合物がランダムに配向するため、散乱性能が向上する。
【0023】
また、多官能すなわち3官能以上のモノマーもしくはオリゴマーもしくはポリマーの含有量が液晶組成物の全量基準で1~20質量%である場合、高分子ネットワークを構築し易くなり、また、液晶組成物のガラス転移温度の上昇を抑えることができると共に電場に対する液晶組成物の応答性の低下を抑えることができる。
【0024】
また、本発明の液晶組成物において、単官能アク(メタク)リレートエステルモノマーもしくは単官能アク(メタク)リレートエステルオリゴマーもしくは単官能アク(メタク)リレートエステルポリマーの含有量は、前記液晶組成物の全量基準で10~40質量%であり、2官能アク(メタク)リレートエステルモノマー、2官能アク(メタク)リレートエステルオリゴマー、2官能アク(メタク)リレートエステルポリマー、2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマー、2官能脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー、2官能脂肪族ウレタンアクリレートポリマー、2官能脂肪族オリゴマーアクリレートモノマー、2官能脂肪族オリゴマーアクリレートオリゴマー、2官能脂肪族オリゴマーアクリレートポリマー、2官能ポリエステルアクリレートモノマー、2官能ポリエステルアクリレートオリゴマー及び2官能ポリエステルアクリレートポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1つの有機化合物の含有量は、前記液晶組成物の全量基準で1~30質量%であり、
2~4官能チオールモノマーもしくは2~4官能チオールオリゴマーもしくは2~4官能チオールポリマーの含有量は、前記液晶組成物の全量基準で1~10質量%であり、単官能リン酸アク(メタク)リレートモノマーもしくは単官能リン酸アク(メタク)リレートオリゴマーもしくは単官能リン酸アク(メタク)リレートポリマーの含有量は、前記液晶組成物の全量基準で0.1~3質量%であり、3~4官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマー、3~4官能脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー、3~4官能脂肪族ウレタンアクリレートポリマー、3~4官能ポリエステルアクリレートモノマー、3~4官能ポリエステルアクリレートオリゴマー、3~4官能ポリエステルアクリレートポリマー、3~6官能アク(メタク)リレートエステルモノマー、3~6官能アク(メタク)リレートエステルオリゴマー、及び3~6官能アク(メタク)リレートエステルポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1つの有機化合物の含有量は、前記液晶組成物の全量基準で1~20質量%である構成とすることができる。
【0025】
単官能アク(メタク)リレートエステル(モノマー、オリゴマーもしくはポリマー)の含有量が液晶組成物の全量基準で10~40質量%である場合、液晶化合物との相溶性が良いので液晶化合物の含有量を適正な値に維持できると共に、液晶組成物の内部での化学結合の強さを維持して、剥離強度の強さを維持し易くなる。
【0026】
また、2官能アク(メタク)リレートエステル(モノマー、オリゴマーもしくはポリマー)、2官能脂肪族ウレタンアクリレート(モノマー、オリゴマーもしくはポリマー)、2官能脂肪族オリゴマーアクリレート(モノマー、オリゴマーもしくはポリマー)、2官能ポリエステルアクリレート(モノマー、オリゴマーもしくはポリマー)からなる群から選ばれる少なくとも1つの有機化合物の含有量が液晶組成物の全量基準で1~30質量%である場合、材料と材料との反応が途切れ難くなり、また、未硬化成分が発生し難くなる。
【0027】
また、2~4官能チオール(モノマー、オリゴマーもしくはポリマー)の含有量が液晶組成物の全量基準で1~10質量%である場合、均一な結晶ドメイン構造の形成を進めて、液晶組成物の遮蔽性と透明性を向上させ易いと共に未硬化成分を残し難くなる。
【0028】
また、単官能リン酸アク(メタク)リレート(モノマー、オリゴマーもしくはポリマー)、の含有量が液晶組成物の全量基準で0.1~3質量%である場合、液晶組成物の通電時における電流値増大を抑えながら基材界面との密着性を向上できる。
【0029】
また、3~4官能脂肪族ウレタンアクリレート(モノマー、オリゴマーもしくはポリマー)、3~4官能ポリエステルアクリレート(モノマー、オリゴマーもしくはポリマー)、及び3~6官能アク(メタク)リレートエステル(モノマー、オリゴマーもしくはポリマー)から選ばれる少なくとも1つの有機化合物の含有量が液晶組成物の全量基準で1~20質量%である場合、液晶組成物において架橋構造を形成し易いと共に、液晶組成物の高電圧駆動を抑制し、また、液晶組成物の遮蔽性と透明性の低下を抑制できる。
【0030】
また、本発明の液晶組成物において、液晶化合物の含有量は、前記液晶組成物の全量基準で40~80質量%である構成とすることができる。
【0031】
この場合、液晶組成物の高い散乱性を維持し易いと共に電場応答性を維持し易く、さらに液晶組成物の加工性も維持し易い。
【0032】
また、本発明の液晶組成物において、0℃を超えるガラス転移温度を有する有機化合物の含有量は、液晶組成物の全量基準で1~40質量%である構成とすることができる。
【0033】
この場合、液晶組成物の重合体に剛直性を付与し、液晶組成物の重合体の微細な網目構造を維持し易くなる。
【0034】
また、上記の目的を達成するために、本発明の液晶組成物は、重合可能な有機化合物と、液晶化合物とを含む液晶組成物であって、前記液晶化合物の、固体相-ネマチック相転移温度またはスメクチック相-ネマチック相転移温度が0℃以下であり、かつ、0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物の含有量は、前記液晶組成物の全量基準で10質量%以上である。
【0035】
ここで、液晶化合物の、固体相-ネマチック相転移温度またはスメクチック相-ネマチック相転移温度が0℃以下であることによって、0℃以下という低温環境においても重合後の液晶組成物が柔軟性を保つことができ、液晶駆動を阻害しない。
【0036】
また、0℃以下のガラス転移温度を有する重合可能な有機化合物の含有量が10質量%以上であることによって、重合したこの有機化合物のガラス転移温度も0℃以下に下がった状態とすることができ、0℃以下という低温環境においても、液晶組成物が柔軟性を保つことができる。
【0037】
また、上記の目的を達成するために、本発明の液晶素子は、面状の第1の基材と、該第1の基材の一方の面側に配置されていると共に導電性を有する第1の導電膜と、該第1の導電膜の、前記第1の基材とは反対側に配置されていると共に液晶組成物を有する液晶層と、該液晶層の、前記第1の導電膜とは反対側に配置されていると共に導電性を有する第2の導電膜と、該第2の導電膜の、前記液晶層とは反対側に配置された面状の第2の基材とを備え、前記液晶組成物は、重合可能な有機化合物と、液晶化合物とを含み、前記液晶化合物の、固体相-ネマチック相転移温度またはスメクチック相-ネマチック相転移温度が0℃以下であり、かつ、0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物の含有量は、前記液晶組成物の全量基準で10~60質量%である。
【0038】
ここで、液晶化合物の、固体相-ネマチック相転移温度またはスメクチック相-ネマチック相転移温度が0℃以下であることによって、0℃以下という低温環境においても重合後の液晶組成物が柔軟性を保つことができ、液晶駆動を阻害しない。
【0039】
また、0℃以下のガラス転移温度を有する重合可能な有機化合物の含有量が10質量%以上であることによって、重合したこの有機化合物のガラス転移温度も0℃以下に下がった状態とすることができ、0℃以下という低温環境においても、液晶組成物が柔軟性を保つことができる。
【0040】
また、0℃以下のガラス転移温度を有する重合可能な有機化合物の含有量が60質量%以下であることによって、液晶組成物の散乱性を維持し易いと共に電場応答性を阻害しないようにし易い。
【発明の効果】
【0041】
本発明に係る液晶組成物は、0℃以下においても液晶素子を駆動させることができる。
本発明に係る液晶素子は、0℃以下においても駆動できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】本発明を適用した液晶素子の一例を示す概略断面図である。
図2】液晶素子の駆動応答性を測定するための機器の一例を示す概略図である。
図3】本発明を適用した実施例1の液晶素子の各印加電圧におけるヘイズ値を示す概略グラフ図である。
図4A】本発明を適用した実施例1の液晶素子の25℃における駆動応答性を示す概略グラフ図である。
図4B】本発明を適用した実施例1の液晶素子の-10℃における駆動応答性を示す概略グラフ図である。
図4C】本発明を適用した実施例1の液晶素子の-20℃における駆動応答性を示す概略グラフ図である。
図4D】本発明を適用した実施例1の液晶素子の-30℃における駆動応答性を示す概略グラフ図である。
図4E】本発明を適用した実施例1の液晶素子の-35℃における駆動応答性を示す概略グラフ図である。
図4F】本発明を適用した実施例1の液晶素子の-40℃における駆動応答性を示す概略グラフ図である。
図5A】本発明を適用した実施例2の液晶素子の-5℃における駆動応答性を示す概略グラフ図である。
図5B】本発明を適用した実施例2の液晶素子の-10℃における駆動応答性を示す概略グラフ図である。
図6】本発明を適用した実施例3の液晶素子の-50℃における駆動応答性を示す概略グラフ図である。
図7】本発明を適用した実施例4の液晶素子の-25℃における駆動応答性を示す概略グラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明の液晶組成物は、重合可能な有機化合物と、液晶化合物とを含む。
ここで、本発明の液晶組成物は、0℃以下のガラス転移温度を有する重合可能な有機化合物を所定の量ほど含む。
すなわち、0℃以下のガラス転移温度を有する重合可能な有機化合物の含有量は、液晶組成物の全量基準で10~60質量%であり、好ましくは20~60質量%である。
【0044】
また、本発明の液晶組成物は、0℃を超えるガラス転移温度を有する重合可能な有機化合物を所定の量ほど含むことができる。
すなわち、0℃を超えるガラス転移温度を有する重合可能な有機化合物の含有量は、具体的には例えば、液晶組成物の全量基準で1~40質量%であり、好ましくは10~30質量%である。
【0045】
このように、本発明の液晶組成物が含む重合可能な有機化合物は、0℃以下のガラス転移温度を有するものと、0℃を超えるガラス転移温度を有するものである。
【0046】
また、本発明の液晶組成物が含むこのような有機化合物は、具体的には例えば、単官能モノマー、単官能オリゴマー、単官能ポリマー、2官能モノマー、2官能オリゴマー、2官能ポリマー、多官能モノマー、多官能オリゴマー、及び多官能ポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1つである。
【0047】
また、本発明の液晶組成物が含む有機化合物は、さらに具体的には例えば、2~4官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマー、2~4官能脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー、2~4官能脂肪族ウレタンアクリレートポリマー、2~4官能脂肪族オリゴマーアクリレートモノマー、2~4官能脂肪族オリゴマーアクリレートオリゴマー、2~4官能脂肪族オリゴマーアクリレートポリマー、2~4官能ポリエステルアクリレートモノマー、2~4官能ポリエステルアクリレートオリゴマー、2~4官能ポリエステルアクリレートポリマー、1~6官能アク(メタク)リレートエステルモノマー、1~6官能アク(メタク)リレートエステルオリゴマー、1~6官能アク(メタク)リレートエステルポリマー、2~4官能チオールモノマー、2~4官能チオールオリゴマー、2~4官能チオールポリマー、単官能リン酸アク(メタク)リレートモノマー、単官能リン酸アク(メタク)リレートオリゴマー及び単官能リン酸アク(メタク)リレートポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1つである。
【0048】
また、多官能モノマーもしくは多官能オリゴマーもしくは多官能ポリマーの含有量は、具体的には例えば、本発明の液晶組成物の全量基準で1~20質量%であり、1~10質量%であることが好ましく、1~5質量%であることが最も好ましい。
【0049】
また、単官能アク(メタク)リレートエステルモノマーもしくは単官能アク(メタク)リレートエステルオリゴマーもしくは単官能アク(メタク)リレートエステルポリマーの含有量は、具体的には例えば、本発明の液晶組成物の全量基準で10~40質量%であり、20~40質量%であることが好ましく、20~30質量%であることが最も好ましい。
【0050】
また、2官能アク(メタク)リレートエステルモノマー、2官能アク(メタク)リレートエステルオリゴマー、2官能アク(メタク)リレートエステルポリマー、2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマー、2官能脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー、2官能脂肪族ウレタンアクリレートポリマー、2官能脂肪族オリゴマーアクリレートモノマー、2官能脂肪族オリゴマーアクリレートオリゴマー、2官能脂肪族オリゴマーアクリレートポリマー、2官能ポリエステルアクリレートモノマー、2官能ポリエステルアクリレートオリゴマー及び2官能ポリエステルアクリレートポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1つの有機化合物の含有量は、具体的には例えば、本発明の液晶組成物の全量基準で1~30質量%であり、1~20質量%であることが好ましく、10~15質量%であることが最も好ましい。
【0051】
また、2~4官能チオールモノマーもしくは2~4官能チオールオリゴマーもしくは2~4官能チオールポリマーの含有量は、具体的には例えば、本発明の液晶組成物の全量基準で1~10質量%であり、1~5質量%であることがさらに好ましく、1~3質量%であることが最も好ましい。
【0052】
また、単官能リン酸アク(メタク)リレートモノマーもしくは単官能リン酸アク(メタク)リレートオリゴマーもしくは単官能リン酸アク(メタク)リレートポリマーの含有量は、具体的には例えば、本発明の液晶組成物の全量基準で0.1~3質量%である。
【0053】
また、3~4官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマー、3~4官能脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー、3~4官能脂肪族ウレタンアクリレートポリマー、3~4官能ポリエステルアクリレートモノマー、3~4官能ポリエステルアクリレートオリゴマー、3~4官能ポリエステルアクリレートポリマー、3~6官能アク(メタク)リレートエステルモノマー、3~6官能アク(メタク)リレートエステルオリゴマー、及び3~6官能アク(メタク)リレートエステルポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1つの有機化合物の含有量は、具体的には例えば、本発明の液晶組成物の全量基準で1~20質量%であり、1~10質量%であることが好ましく、1~3質量%であることが最も好ましい。
【0054】
また、本発明の液晶組成物中には、紫外線によって、重合可能な有機化合物の重合を開始させることができる重合開始剤を導入することが好ましい。
ここで、重合開始剤の含有量は、具体的には例えば、本発明の液晶組成物の全量基準で0.1~10質量%であり、0.5~5.0質量%であることが好ましく、0.5~3.0質量%であることが最も好ましい。
【0055】
このような重合開始剤としては、例えば、tert-ブチルペルオキシ-iso-ブタレート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(ベンゾイルジオキシ)へキサン、1,4-ビス[α-(tert-ブチルジオキシ)-iso-プロポキシ]ベンゼン、ジ-tert-ブチルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(tert-ブチルジオキシ)へキセンヒドロペルオキシド、α-(iso-プロピルフェニル)-iso-プロピルヒドロペルオキシド、2,5-ジメチルへキサン、tert-ブチルヒドロペルオキシド、1,1-ビス(tert-ブチルジオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロへキサン、ブチル-4,4-ビス(tert-ブチルジオキシ)バレレート、シクロへキサノンペルオキシド、2,2',5,5'-テトラ(tert-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3',4,4'-テトラ(tert-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3',4,4'-テトラ(tert-アミルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3',4,4'-テトラ(tert-ヘキシルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3'-ビス(tert-ブチルペルオキシカルボニル)-4,4'-ジカルボキシベンゾフェノン、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、ジ-tert-ブチルジペルオキシイソフタレートなどの有機過酸化物、9,10-アントラキノン、1-クロロアントラキノン、2-クロロアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2-ベンズアントラキノンなどのキノン類、ベンゾインメチル、ベンゾインエチルエーテル、α-メチルベンゾイン、α-フェニルベンゾインなどのベンゾイン誘導体などが挙げられる。
【0056】
また、本発明の液晶組成物が含む液晶化合物は、ゲストホスト液晶化合物、ネマチック液晶化合物、スメクチック液晶化合物、またはコレステリック液晶化合物から選ばれる少なくとも1つである。
【0057】
また、本発明の液晶組成物が含む液晶化合物のネマチック相-等方性液体相転移温度(Tni)は、具体的には例えば40℃~150℃であり、80℃~150℃が好ましく、130℃が最適である。
【0058】
また、本発明の液晶組成物が含む液晶化合物の、固体相-ネマチック相転移温度(Tcn)またはスメクチック相-ネマチック相転移温度(Tsn)は、0℃以下である。
また、固体相-ネマチック相転移温度またはスメクチック相-ネマチック相転移温度は、具体的には例えば、0℃~-50℃であり、-10℃~-50℃が好ましく、-20℃~-40℃が最も好ましい。
【0059】
また、本発明の液晶組成物が含む液晶化合物の屈折率異方性(Δn)は、具体的には例えば、0.01~0.50であり、0.1~0.4が好ましく、0.1~0.3が最も好ましい。
【0060】
また、本発明の液晶組成物が含む液晶化合物の誘電率異方性(Δε)は、具体的には例えば1~25であり、5~20が好ましく、5~10が最も好ましい。
【0061】
また、液晶化合物の含有量は、具体的には例えば、本発明の液晶組成物の全量基準で40~80質量%である。
【0062】
本発明の液晶組成物において、0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物の含有量は、必ずしも本発明の液晶組成物の全量基準で60質量%以下でなくてもよい。
しかし、このような構成であれば、液晶組成物の散乱性を維持し易いと共に電場応答性を阻害しないようにし易いので好ましい。
【0063】
本発明の液晶組成物において、多官能モノマーもしくは多官能オリゴマーもしくは多官能ポリマーの含有量は、必ずしも液晶組成物の全量基準で1~20質量%でなくてもよい。
しかし、このような構成であれば、高分子ネットワークを構築し易くなり、また、液晶組成物のガラス転移温度の上昇を抑えることができると共に電場に対する液晶組成物の応答性の低下を抑えることができるので好ましい。
【0064】
また、本発明の液晶組成物において、有機化合物は必ずしも、2~4官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマー、2~4官能脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー、2~4官能脂肪族ウレタンアクリレートポリマー、2~4官能脂肪族オリゴマーアクリレートモノマー、2~4官能脂肪族オリゴマーアクリレートオリゴマー、2~4官能脂肪族オリゴマーアクリレートポリマー、2~4官能ポリエステルアクリレートモノマー、2~4官能ポリエステルアクリレートオリゴマー、2~4官能ポリエステルアクリレートポリマー、1~6官能アク(メタク)リレートエステルモノマー、1~6官能アク(メタク)リレートエステルオリゴマー、1~6官能アク(メタク)リレートエステルポリマー、2~4官能チオールモノマー、2~4官能チオールオリゴマー、2~4官能チオールポリマー、単官能リン酸アク(メタク)リレートモノマー、単官能リン酸アク(メタク)リレートオリゴマー及び単官能リン酸アク(メタク)リレートポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1つでなくてもよい。
【0065】
しかし、このような構成であれば、液晶組成物の密着性が向上し、また、未硬化成分が発生し難くなるので好ましい。
また、このような構成であれば、液晶組成物において架橋構造を形成し易くなるので好ましい。
さらに、このような構成であれば、液晶組成物に低収縮性と深硬化性(硬化性の向上)を付与でき、また、液晶組成物にさらなる柔軟性を付与できるので好ましい。
また、このような構成であれば、液晶組成物の表面が改質され、基材界面との密着性を向上できるので好ましい。
また、このような構成であれば、高分子ネットワークが密で複雑な構造となり、高分子ネットワークに沿って液晶化合物がランダムに配向するため、散乱性能が向上するので好ましい。
【0066】
また、本発明の液晶組成物において、単官能アク(メタク)リレートエステルモノマーもしくは単官能アク(メタク)リレートエステルオリゴマーもしくは単官能アク(メタク)リレートエステルポリマーの含有量は、必ずしも本発明の液晶組成物の全量基準で10~40質量%でなくてもよい。
【0067】
しかし、このような構成であれば、液晶化合物との相溶性が良いので液晶化合物の含有量を適正な値に維持できると共に、液晶組成物の内部での化学結合の強さを維持して、剥離強度の強さを維持し易くなるので好ましい。
【0068】
また、本発明の液晶組成物において、2官能アク(メタク)リレートエステルモノマー、2官能アク(メタク)リレートエステルオリゴマー、2官能アク(メタク)リレートエステルポリマー、2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマー、2官能脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー、2官能脂肪族ウレタンアクリレートポリマー、2官能脂肪族オリゴマーアクリレートモノマー、2官能脂肪族オリゴマーアクリレートオリゴマー、2官能脂肪族オリゴマーアクリレートポリマー、2官能ポリエステルアクリレートモノマー、2官能ポリエステルアクリレートオリゴマー及び2官能ポリエステルアクリレートポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1つの有機化合物の含有量は、必ずしも本発明の液晶組成物の全量基準で1~30質量%でなくてもよい。
【0069】
しかし、このような構成であれば、材料と材料との反応が途切れ難くなり、また、未硬化成分が発生し難くなるので好ましい。
【0070】
また、本発明の液晶組成物において、2~4官能チオールモノマーもしくは2~4官能チオールオリゴマーもしくは2~4官能チオールポリマーの含有量は、必ずしも本発明の液晶組成物の全量基準で1~10質量%でなくてもよい。
【0071】
しかし、このような構成であれば、均一な結晶ドメイン構造の形成を進めて、液晶組成物の遮蔽性と透明性を向上させ易いと共に未硬化成分を残し難くなるので好ましい。
【0072】
また、本発明の液晶組成物において、単官能リン酸アク(メタク)リレートモノマーもしくは単官能リン酸アク(メタク)リレートオリゴマーもしくは単官能リン酸アク(メタク)リレートポリマーの含有量は、必ずしも本発明の液晶組成物の全量基準で0.1~3質量%でなくてもよい。
【0073】
しかし、このような構成であれば、液晶組成物の通電時における電流値増大を抑えながら基材界面との密着性を向上できるので好ましい。
【0074】
また、本発明の液晶組成物において、3~4官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマー、3~4官能脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー、3~4官能脂肪族ウレタンアクリレートポリマー、3~4官能ポリエステルアクリレートモノマー、3~4官能ポリエステルアクリレートオリゴマー、3~4官能ポリエステルアクリレートポリマー、3~6官能アク(メタク)リレートエステルモノマー、3~6官能アク(メタク)リレートエステルオリゴマー、及び3~6官能アク(メタク)リレートエステルポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1つの有機化合物の含有量は、必ずしも本発明の液晶組成物の全量基準で1~20質量%でなくてもよい。
【0075】
しかし、このような構成であれば、液晶組成物において架橋構造を形成し易いと共に、液晶組成物の高電圧駆動を抑制し、また、液晶組成物の遮蔽性と透明性の低下を抑制できるので好ましい。
【0076】
また、本発明の液晶組成物において、液晶化合物の含有量は、必ずしも本発明の液晶組成物の全量基準で40~80質量%でなくてもよい。
しかし、このような構成であれば、液晶組成物の高い散乱性を維持し易いと共に電場応答性を維持し易く、さらに液晶組成物の加工性も維持し易いので好ましい。
【0077】
また、本発明の液晶組成物において、0℃を超えるガラス転移温度を有する有機化合物の含有量は、必ずしも本発明の液晶組成物の全量基準で1~40質量%でなくてもよい。
すなわち、本発明の液晶組成物は、必ずしも0℃を超えるガラス転移温度を有する有機化合物を含んでいなくてもよい。
【0078】
しかし、このような構成であれば、液晶組成物の重合体に剛直性を付与し、液晶組成物の重合体の微細な網目構造を維持し易くなるので好ましい。
【0079】
次に、本発明の液晶素子について説明する。
図1は、本発明を適用した液晶素子の一例を示す概略断面図である。
【0080】
図1に示す本発明の液晶素子1は、面状である薄膜状の第1の透明樹脂フィルム基材2を備える。
【0081】
また、本発明の液晶素子1は、第1の透明導電膜4を備える。
ここで、第1の透明導電膜4は、第1の透明樹脂フィルム基材2の一方の面側に配置されており、導電性を有する。
【0082】
また、本発明の液晶素子1は、液晶層6を備える。
ここで、液晶層6は、第1の透明導電膜4の、第1の透明樹脂フィルム基材2とは反対側に配置されており、本発明の液晶組成物を有する。
【0083】
また、本発明の液晶素子1は、第2の透明導電膜5を備える。
ここで、第2の透明導電膜5は、液晶層6の、第1の透明導電膜4とは反対側に配置されており、導電性を有する。
また、本発明の液晶素子1は、面状である薄膜状の第2の透明樹脂フィルム基材3を備える。
ここで、第2の透明樹脂フィルム基材3は、第2の透明導電膜5の、液晶層6とは反対側に配置されている。
【0084】
すなわち、第1の透明導電膜4は、第1の透明樹脂フィルム基材2の一方の面を覆っており、第2の透明導電膜5は、第2の透明樹脂フィルム基材3の一方の面を覆っている。
また、液晶層6は、このような第1の透明導電膜4と第2の透明導電膜5とに接している。
【0085】
このように本発明の液晶素子1は、図1に示すように、第1の透明導電膜4が設けられた第1の透明樹脂フィルム基材2と、第2の透明導電膜5が設けられた第2の透明樹脂フィルム基材3とによって、液晶層6が挟まれて構成された積層体である。
【0086】
第1の透明樹脂フィルム基材2及び第2の透明樹脂フィルム基材3はそれぞれ、通常の液晶素子の基材に使用される材料で構成されている。
このような材料として、具体的に例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリサルホン、シクロオレフィンポリマー、またはトリアセチルセルロースなどからなる高分子フィルムが挙げられる。
【0087】
また、第1の透明樹脂フィルム基材2は第1の基材の一例であり、第2の透明樹脂フィルム基材3は第2の基材の一例である。
また、第1の基材及び第2の基材は必ずしも樹脂フィルムで構成されていなくてもよく、例えば、ガラス基材で構成されることもできる。
【0088】
また、第1の透明導電膜4及び第2の透明導電膜5はそれぞれ、通常の液晶素子の導電膜に使用される材料で構成されている。
このような材料として、具体的に例えば、酸化インジウムスズ(ITO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、酸化スズ、酸化亜鉛、カーボンナノチューブが挙げられる。
【0089】
また、第1の透明導電膜及び第2の透明導電膜はそれぞれ、第1の導電膜及び第2の導電膜の一例である。
【0090】
また、本発明の液晶素子1に電圧を印加するために、図1に示すように、本発明の液晶素子1には、導線7が電気的に接続されている。
すなわち、本発明の液晶素子1の端部において、液晶層6の一部を除去して第1の透明導電膜4の一部と第2の透明導電膜5の一部とを露出させる。そして、第1の透明導電膜4の露出した部分と第2の透明導電膜5の露出した部分とに、2本の導線7それぞれの一端を電気的に接続する。
なお、導線7の他端は、図示されていない電源に接続されている。
【0091】
[実施例1]
液晶化合物と、重合可能な有機化合物と、重合開始剤とを使用して、本発明の液晶組成物を調製した。次に、調製された本発明の液晶組成物を使用して図1に示す本発明の液晶素子1を作製した。
そして、作製された本発明の液晶素子1について、図2に示す各種機器を用いて駆動応答性を測定した。
すなわち、図2は、液晶素子の駆動応答性を測定するための機器の一例を示す概略図である。
【0092】
図2に示すように、本発明の液晶素子1の駆動応答性の測定のため、レーザー光を放出可能なレーザー発振器20と、レーザー光を透過可能な観察窓31が設けられた顕微鏡用温調ステージ30と、観察窓31を透過したレーザー光を受光可能な受光機33と、受光機33が受光したレーザー光の強度を測定可能なオシロスコープ40とを使用した。
【0093】
ここで、顕微鏡用温調ステージ30内には、本発明の液晶素子1を載置可能なサンプル台32が設けられている。
また、サンプル台32の内部には、サンプル台32を冷却するための冷媒を導入可能な流路が形成されていたり、サンプル台32を加熱するためのヒータが内蔵されていたりする。なお、このような流路及びヒータの図示を省略する。
このような構成によって、サンプル台32を介して間接的に、サンプル台32に載置された本発明の液晶素子1を冷却したり加熱したりできる。
【0094】
また、図示していないが、顕微鏡用温調ステージ30内に電極ターミナルがあり、導線を通して本発明の液晶素子1に電圧を印加できる。
また、サンプル台32は、レーザー光を透過できる材料で構成されている。
また、図2に示すように、受光機33は、顕微鏡用温調ステージ30内であると共に、サンプル台32の、本発明の液晶素子1が載置される面とは反対側に配置されている。
【0095】
また、本発明の液晶素子1に電圧が印加されていない場合、本発明の液晶素子1はレーザー光を透過させない、すなわち遮蔽し、本発明の液晶素子1に電圧が印加された場合、本発明の液晶素子1はレーザー光を透過させる。
本発明の液晶素子1に電圧が印加されていない状態を「OFF」とし、本発明の液晶素子1に電圧が印加された状態を「ON」とする。
【0096】
従って、受光機33は、観察窓31と、本発明の液晶素子1と、サンプル台32とを透過したレーザー光を受光できる。
【0097】
液晶化合物としてネマチック液晶化合物を使用した。
使用されたネマチック液晶化合物の物性値を表1に示す。
また、重合開始剤として、α-フェニルベンゾインを使用した。
【0098】
【表1】
【0099】
表1から明らかなように、実施例1で使用されたネマチック液晶化合物の固体相-ネマチック相転移温度(Tcn)は-50℃であり、0℃以下であった。
また、使用された複数の有機化合物の名称と物性値を表2に示す。
【0100】
【表2】
【0101】
表2において、「Tg」はガラス転移温度を示す。
また、表2において、「等方比率」は、有機化合物それぞれを、表1に示すネマチック液晶化合物に添加して重合したときに、得られる液晶組成物が等方性を示すときの有機化合物それぞれの含有量を示し、単位は、液晶組成物の全量を基準とした質量%である。
【0102】
また、液晶組成物の全量を基準とした、ネマチック液晶化合物の含有量と、有機化合物それぞれの含有量と、有機化合物それぞれの重合を開始させる重合開始剤の含有量とを表3に示す。
【0103】
また、FOXの式に基づいて算出された駆動限界点すなわち重合後の高分子ネットワークのガラス転移温度も表3に示す。
【0104】
【表3】
【0105】
FOXの式は、共重合体のガラス転移温度を算出する場合に使用される式として知られている。
表3において、「添加比率」の単位は、液晶組成物の全量を基準とした質量%である。
表3から明らかなように、得られた本発明の液晶組成物における0℃以下のガラス転移温度を有する有機化合物の含有量は、本発明の液晶組成物の全量基準で32.1質量%であった。
また、得られた本発明の液晶組成物における0℃を超えるガラス転移温度を有する有機化合物の含有量は、本発明の液晶組成物の全量基準で13.8質量%であった。
【0106】
また、得られた本発明の液晶組成物を使用して、図1に示す本発明の液晶素子1を作製した。
すなわち、薄膜状の第1の透明樹脂フィルム基材2の一方の面の全面に、酸化インジウムスズ(ITO)からなる第1の透明導電膜4を成膜した。
また、薄膜状の第2の透明樹脂フィルム基材3の一方の面の全面にも、酸化インジウムスズ(ITO)からなる第2の透明導電膜5を成膜した。
【0107】
さらに、第1の透明樹脂フィルム基材2の第1の透明導電膜4に、得られた液晶組成物と、カラムスペーサ形成用樹脂とを塗布した。
そして、塗布された液晶組成物とカラムスペーサ形成用樹脂とに紫外線を照射し、液晶組成物に含まれる有機化合物を硬化及び重合させて液晶層6を得た。
また、このとき、カラムスペーサ形成用樹脂も紫外線によって硬化させ、高さ20μmのカラムスペーサを形成した。カラムスペーサの図示を省略する。
【0108】
ここで、紫外線の照射は、365nmをピークに持つ紫外線露光装置を用いて行なった。
このときの紫外線露光量は1,500mJ/cmであった。
【0109】
そして、第2の透明導電膜5が形成された第2の透明樹脂フィルム基材3を、第2の透明導電膜5が液晶層6と接するようにして積層した。
また、液晶層6の一方の端部を取り除いて、第1の透明導電膜4の一部と第2の透明導電膜5の一部を露出させた。
そして、露出した第1の透明導電膜4の一部と第2の透明導電膜5の一部に導線7の一端を電気的に接続した。ここで、導線7の他端は電源に接続されている。
【0110】
<ヘイズ値の測定>
実施例1において作製された本発明の液晶素子1について、HAZEメーター(日本電色工業株式会社製、製品名:NDH-7000SPII)を用いて、「ヘイズ値」と「全光線透過率」と「拡散透過率」と「平行線透過率」を測定した。
すなわち、0Vから60Vまで5Vずつ印加電圧を上げて、各印加電圧における、「ヘイズ値」と「全光線透過率」と「拡散透過率」と「平行線透過率」を測定した。測定結果を表4に示す。
本明細書において「ヘイズ値」とは、全透過光に対する拡散光の割合を示しており、曇り具合や拡散度合いを表す。
【0111】
また、各印加電圧と測定されたヘイズ値との関係を図3に示す。
すなわち、図3は、本発明を適用した実施例1の液晶素子の各印加電圧におけるヘイズ値を示す概略グラフ図である。図3の縦軸はヘイズ値(%)を示し、図3の横軸は印加電圧(V)を示す。
【0112】
【表4】
【0113】
<駆動応答性の測定>
実施例1において作製された本発明の液晶素子1の温度が25℃、-10℃、-20℃、-30℃、-35℃、-40℃及び-45℃における、本発明の液晶素子1の駆動応答性を、図2に示す各種機器を用いて測定した。
【0114】
具体的には以下のようにして、本発明の液晶素子1の駆動応答性を測定した。
顕微鏡用温調ステージ30内部のサンプル台32に本発明の液晶素子1を載置し、サンプル台32を介して本発明の液晶素子1を冷却した。
そして、サンプル台32を介して本発明の液晶素子1を冷却し、本発明の液晶素子1の温度を-10℃、-20℃、-30℃、-35℃、-40℃及び-45℃と成した。
なお、本発明の液晶素子1の温度を25℃と成す場合は、サンプル台32を介して本発明の液晶素子1を加熱も冷却もしないか、或いは加熱する。
【0115】
また、冷却されて温度が-10℃、-20℃、-30℃、-35℃、-40℃及び-45℃と成った本発明の液晶素子1に、レーザー発振器20から放出されたレーザー光を当てた。
このときレーザー光は、顕微鏡用温調ステージ30に設けられた観察窓31を透過して、本発明の液晶素子1に当てられる。
【0116】
また、各温度の本発明の液晶素子1にレーザー光を当てながら100Vの電圧を300秒間印加した後、電圧印加を止めた。
また、本発明の液晶素子1とサンプル台32を透過して受光機33が受光したレーザー光の強度を、オシロスコープ40で測定した。
結果を図4A図4Fに示す。
【0117】
また、電圧が印加された状態である「ON」状態の本発明の液晶素子1はレーザー光を透過し、電圧が印加されていない状態である「OFF」状態の本発明の液晶素子1はレーザー光を遮蔽する機構を利用して、各温度における「OFF」状態から「ON」状態になるまでの時間(OFF→ON)、並びに各温度における「ON」状態から「OFF」状態になるまでの時間(ON→OFF)を測定した。
結果を表5に示す。
【0118】
すなわち、図4Aは、本発明を適用した実施例1の液晶素子の25℃における駆動応答性を示す概略グラフ図である。
また、図4Bは、本発明を適用した実施例1の液晶素子の-10℃における駆動応答性を示す概略グラフ図である。
さらに、図4Cは、本発明を適用した実施例1の液晶素子の-20℃における駆動応答性を示す概略グラフ図である。
また、図4Dは、本発明を適用した実施例1の液晶素子の-30℃における駆動応答性を示す概略グラフ図である。
また、図4Eは、本発明を適用した実施例1の液晶素子の-35℃における駆動応答性を示す概略グラフ図である。
また、図4Fは、本発明を適用した実施例1の液晶素子の-40℃における駆動応答性を示す概略グラフ図である。
【0119】
図4A図4Fそれぞれの縦軸はレーザー光透過強度を示し、図4A図4Fそれぞれの横軸は時間(秒)を示す。
【0120】
【表5】
【0121】
表4から明らかなように、本発明の液晶素子すなわち本発明の液晶組成物を使用して作製された液晶素子は、電圧が印加されていない状態においてヘイズ値99.2%であり、また、60Vの電圧が印加された状態においてヘイズ値2.8%であった。
このような結果から、本発明の液晶素子が、高い遮蔽性と高い透明性を有することを確認した。
【0122】
また、表5から明らかなように、本発明の液晶素子、すなわち本発明の液晶組成物を使用して作製された液晶素子について、0℃以下すなわち-10℃~-30℃における「OFF→ON」応答時間及び「ON→OFF」応答時間は、どちらも0.1秒以下であり、駆動応答できることを確認した。
【0123】
また、本発明の液晶素子について、-35℃~-40℃における「ON→OFF」応答時間は1秒以上かかったものの、駆動応答できることを確認した。また、-35℃~-40℃における「OFF→ON」応答時間は0.1秒以下であった。
また、-45℃において、本発明の液晶素子は駆動しないことを確認した。
【0124】
また、液晶の状態変化は、シャープに変化するのではなく、ある温度域から徐々にカーブを描いて変化することから、実施例1において調製された液晶組成物の、表3に示すFOX式による駆動限界点-42℃という予測温度と、本発明の液晶素子が駆動しない温度として確認された-45℃との間に相似性があることが確認された。
【0125】
[実施例2]
液晶化合物と、重合可能な有機化合物と、重合開始剤とを使用して、本発明の液晶組成物を調製した。次に、調製された本発明の液晶組成物を使用して図1に示す本発明の液晶素子1を作製した。
そして、作製された本発明の液晶素子1について、図2に示す各種機器を用いて駆動応答性を測定した。
【0126】
また、液晶化合物として、実施例1と同じ液晶化合物を使用した。すなわち、表1に示す物性値を有するネマチック液晶化合物を使用した。
また、重合開始剤として、α-フェニルベンゾインを使用した。
また、使用された複数の有機化合物の名称と物性値を表6に示す。
【0127】
【表6】
【0128】
表6において、「Tg」はガラス転移温度を示す。
また、表6において、「等方比率」は、有機化合物それぞれを、表1に示すネマチック液晶化合物に添加して重合したときに、得られる液晶組成物が等方性を示すときの有機化合物それぞれの含有量を示し、単位は、液晶組成物の全量を基準とした質量%である。
【0129】
また、液晶組成物の全量を基準とした、ネマチック液晶化合物の含有量と、有機化合物それぞれの含有量と、有機化合物それぞれの重合を開始させる重合開始剤の含有量とを表7に示す。
【0130】
また、FOXの式に基づいて算出された駆動限界点すなわち重合後の高分子ネットワークのガラス転移温度も表7に示す。
【0131】
【表7】
【0132】
表7において、「添加比率」の単位は、液晶組成物の全量を基準とした質量%である。
表7から明らかなように、得られた本発明の液晶組成物における0℃以下のガラス転移温度を有する有機化合物の含有量は、本発明の液晶組成物の全量基準で14.8質量%であった。
また、得られた本発明の液晶組成物における0℃を超えるガラス転移温度を有する有機化合物の含有量は、本発明の液晶組成物の全量基準で34.7質量%であった。
【0133】
また、得られた本発明の液晶組成物を使用して、図1に示す本発明の液晶素子1を作製した。
【0134】
<ヘイズ値の測定>
実施例2において作製された本発明の液晶素子1について、実施例1と同様に、「ヘイズ値」と「全光線透過率」と「拡散透過率」と「平行線透過率」を測定した。
測定結果を表8に示す。
【0135】
また、本発明を適用した実施例2の液晶素子の各印加電圧におけるヘイズ値を示す概略グラフ図については、図3の概略グラフ図が示す系列と概ね同じ系列を示すので省略する。
【0136】
【表8】
【0137】
<駆動応答性の測定>
実施例2において作製された本発明の液晶素子1の温度が25℃、20℃、10℃、0℃、-5℃、-10℃及び-15℃における、本発明の液晶素子1の駆動応答性を、図2に示す各種機器を用いて実施例1と同様に測定した。
結果を表9に示す。
【0138】
また、各温度の本発明の液晶素子1にレーザー光を当てながら100Vの電圧を300秒間印加した後、電圧印加を止めた。
また、本発明の液晶素子1とサンプル台32を透過して受光機33が受光したレーザー光の強度を、オシロスコープ40で測定した。
結果を図5A及び図5Bに示す。
【0139】
すなわち、図5Aは、本発明を適用した実施例2の液晶素子の-5℃における駆動応答性を示す概略グラフ図である。
また、図5Bは、本発明を適用した実施例2の液晶素子の-10℃における駆動応答性を示す概略グラフ図である。
ここで、本発明を適用した実施例2の液晶素子の、25℃、20℃、10℃及び0℃における駆動応答性を示す概略グラフ図については、図4Aが示す系列と概ね同じ系列を示すので省略する。
【0140】
図5A及び図5Bそれぞれの縦軸はレーザー光透過強度を示し、図5A及び図5Bそれぞれの横軸は時間(秒)を示す。
【0141】
【表9】
【0142】
表8から明らかなように、本発明の液晶素子すなわち本発明の液晶組成物を使用して作製された液晶素子は、電圧が印加されていない状態においてヘイズ値99.3%であり、また、60Vの電圧が印加された状態においてヘイズ値3.2%であった。
このような結果から、本発明の液晶素子が、高い遮蔽性と高い透明性を有することを確認した。
【0143】
また、表9から明らかなように、本発明の液晶素子すなわち本発明の液晶組成物を使用して作製された液晶素子について、0℃以下すなわち0℃における「OFF→ON」応答時間及び「ON→OFF」応答時間は、どちらも0.2秒以下であり、駆動応答できることを確認した。
【0144】
また、本発明の液晶素子について、-5℃と-10℃における「ON→OFF」応答時間は1秒以上であったものの、駆動応答できることを確認した。また、-5℃と-10℃における「OFF→ON」応答時間は0.2秒以下であった。
また、-15℃において、本発明の液晶素子は駆動しないことを確認した。
【0145】
また、実施例2において調製された液晶組成物の、表7に示すFOX式による駆動限界点-13℃という予測温度と、本発明の液晶素子が駆動しない温度として確認された-15℃との間に相似性があることが確認された。
【0146】
[実施例3]
液晶化合物と、重合可能な有機化合物と、重合開始剤とを使用して、本発明の液晶組成物を調製した。次に、調製された本発明の液晶組成物を使用して図1に示す本発明の液晶素子1を作製した。
そして、作製された本発明の液晶素子1について、図2に示す各種機器を用いて駆動応答性を測定した。
【0147】
また、液晶化合物として、実施例1と同じ液晶化合物を使用した。すなわち、表1に示す物性値を有するネマチック液晶化合物を使用した。
また、重合開始剤として、α-フェニルベンゾインを使用した。
また、使用された複数の有機化合物の名称と物性値を表10に示す。
【0148】
【表10】
【0149】
表10において、「Tg」はガラス転移温度を示す。
また、表10において、「等方比率」は、有機化合物それぞれを、表1に示すネマチック液晶化合物に添加して重合したときに、得られる液晶組成物が等方性を示すときの有機化合物それぞれの含有量を示し、単位は、液晶組成物の全量を基準とした質量%である。
【0150】
また、液晶組成物の全量を基準とした、ネマチック液晶化合物の含有量と、有機化合物それぞれの含有量と、有機化合物それぞれの重合を開始させる重合開始剤の含有量とを表11に示す。
【0151】
また、FOXの式に基づいて算出された駆動限界点すなわち重合後の高分子ネットワークのガラス転移温度も表11に示す。
【0152】
【表11】
【0153】
表11において、「添加比率」の単位は、液晶組成物の全量を基準とした質量%である。
表11から明らかなように、得られた本発明の液晶組成物における0℃以下のガラス転移温度を有する有機化合物の含有量は、本発明の液晶組成物の全量基準で29.0質量%であった。
また、得られた本発明の液晶組成物における0℃を超えるガラス転移温度を有する有機化合物の含有量は、本発明の液晶組成物の全量基準で3.9質量%であった。
【0154】
また、得られた本発明の液晶組成物を使用して、図1に示す本発明の液晶素子1を作製した。
【0155】
<ヘイズ値の測定>
実施例3において作製された本発明の液晶素子1について、実施例1と同様に、「ヘイズ値」と「全光線透過率」と「拡散透過率」と「平行線透過率」を測定した。
測定結果を表12に示す。
【0156】
また、本発明を適用した実施例3の液晶素子の各印加電圧におけるヘイズ値を示す概略グラフ図については、図3の概略グラフ図が示す系列と概ね同じ系列を示すので省略する。
【0157】
【表12】
【0158】
<駆動応答性の測定>
実施例3において作製された本発明の液晶素子1の温度が25℃、-10℃、-20℃、-30℃、-35℃、-40℃、-50℃及び-55℃における、本発明の液晶素子1の駆動応答性を、図2に示す各種機器を用いて実施例1と同様に測定した。
結果を表13に示す。
【0159】
また、各温度の本発明の液晶素子1にレーザー光を当てながら100Vの電圧を300秒間印加した後、電圧印加を止めた。
また、本発明の液晶素子1とサンプル台32を透過して受光機33が受光したレーザー光の強度を、オシロスコープ40で測定した。
結果を図6に示す。
【0160】
すなわち、図6は、本発明を適用した実施例3の液晶素子の-50℃における駆動応答性を示す概略グラフ図である。
ここで、本発明を適用した実施例3の液晶素子の、25℃、-10℃、-20℃、-30℃、-35℃、及び-40℃における駆動応答性を示す概略グラフ図については、図4A図4Fの概略グラフ図が示す系列と概ね同じ系列を示すので省略する。
【0161】
図6の縦軸はレーザー光透過強度を示し、図6の横軸は時間(秒)を示す。
【0162】
【表13】
【0163】
表12から明らかなように、本発明の液晶素子すなわち本発明の液晶組成物を使用して作製された液晶素子は、電圧が印加されていない状態においてヘイズ値99.0%であり、また、60Vの電圧が印加された状態においてヘイズ値6.0%であった。
このような結果から、本発明の液晶素子が、高い遮蔽性と高い透明性を有することを確認した。
【0164】
また、表13から明らかなように、本発明の液晶素子すなわち本発明の液晶組成物を使用して作製された液晶素子について、0℃以下すなわち-10℃~-40℃における「OFF→ON」応答時間及び「ON→OFF」応答時間は、どちらも0.1秒以下であり、駆動応答できることを確認した。
【0165】
また、本発明の液晶素子について、-50℃における「OFF→ON」応答時間及び「ON→OFF」応答時間はどちらも0.1秒より長かったものの、駆動応答できることを確認した。
また、-55℃において、本発明の液晶素子は駆動しないことを確認した。
【0166】
また、実施例3において調製された液晶組成物の、表11に示すFOX式による駆動限界点-52℃という予測温度と、本発明の液晶素子が駆動しない温度として確認された-55℃との間に相似性があることが確認された。
【0167】
[実施例4]
液晶化合物と、重合可能な有機化合物と、重合開始剤とを使用して、本発明の液晶組成物を調製した。次に、調製された本発明の液晶組成物を使用して図1に示す本発明の液晶素子1を作製した。
そして、作製された本発明の液晶素子1について、図2に示す各種機器を用いて駆動応答性を測定した。
【0168】
また、液晶化合物としてスメクチック液晶化合物を使用した。
使用されたスメクチック液晶化合物の物性値を表14に示す。
また、重合開始剤として、α-フェニルベンゾインを使用した。
【0169】
【表14】
【0170】
表14から明らかなように、実施例4で使用されたスメクチック液晶化合物のスメクチック相-ネマチック相転移温度(Tsn)は-20℃であり、0℃以下であった。
また、使用された複数の有機化合物の名称と物性値を表15に示す。
【0171】
【表15】
【0172】
表15において、「Tg」はガラス転移温度を示す。
また、表15において、「等方比率」は、有機化合物それぞれを、表14に示すスメクチック液晶化合物に添加して重合したときに、得られた液晶組成物が等方性を示すときの有機化合物それぞれの含有量を示し、単位は、液晶組成物の全量を基準とした質量%である。
【0173】
また、液晶組成物の全量を基準とした、スメクチック液晶化合物の含有量と、有機化合物それぞれの含有量と、有機化合物それぞれの重合を開始させる重合開始剤の含有量とを表16に示す。
【0174】
【表16】
【0175】
表16において、「添加比率」の単位は、液晶組成物の全量を基準とした質量%である。
表16から明らかなように、得られた本発明の液晶組成物における0℃以下のガラス転移温度を有する有機化合物の含有量は、本発明の液晶組成物の全量基準で27.2質量%であった。
また、得られた本発明の液晶組成物における0℃を超えるガラス転移温度を有する有機化合物の含有量は、本発明の液晶組成物の全量基準で14.4質量%であった。
【0176】
また、得られた本発明の液晶組成物を使用して、図1に示す本発明の液晶素子1を作製した。
【0177】
<ヘイズ値の測定>
実施例4において作製された本発明の液晶素子1について、実施例1と同様に、「ヘイズ値」と「全光線透過率」と「拡散透過率」と「平行線透過率」を測定した。
測定結果を表17に示す。
【0178】
また、本発明を適用した実施例4の液晶素子の各印加電圧におけるヘイズ値を示す概略グラフ図については、図3の概略グラフ図が示す系列と概ね同じ系列を示すので省略する。
【0179】
【表17】
【0180】
<駆動応答性の測定>
実施例4において作製された本発明の液晶素子1の温度が25℃、-10℃、-15℃、-20℃、-25℃及び-30℃における、本発明の液晶素子1の駆動応答性を、図2に示す各種機器を用いて実施例1と同様に測定した。
結果を表18に示す。
【0181】
また、各温度の本発明の液晶素子1にレーザー光を当てながら100Vの電圧を300秒間印加した後、電圧印加を止めた。
また、本発明の液晶素子1とサンプル台32を透過して受光機33が受光したレーザー光の強度を、オシロスコープ40で測定した。
結果を図7に示す。
【0182】
すなわち、図7は、本発明を適用した実施例4の液晶素子の-25℃における駆動応答性を示す概略グラフ図である。
ここで、本発明を適用した実施例4の液晶素子の、25℃、-10℃、-15℃、及び-20℃における駆動応答性を示す概略グラフ図については、図4A図4Cの概略グラフ図が示す系列と概ね同じ系列を示すので省略する。
【0183】
図7の縦軸はレーザー光透過強度を示し、図7の横軸は時間(秒)を示す。
【0184】
【表18】
【0185】
表17から明らかなように、本発明の液晶素子すなわち本発明の液晶組成物を使用して作製された液晶素子は、電圧が印加されていない状態においてヘイズ値99.3%であり、また、60Vの電圧が印加された状態においてヘイズ値3.3%であった。
このような結果から、本発明の液晶素子が、高い遮蔽性と高い透明性を有することを確認した。
【0186】
また、表18から明らかなように、本発明の液晶素子すなわち本発明の液晶組成物を使用して作製された液晶素子について、0℃以下すなわち-10℃~-20℃における「OFF→ON」応答時間及び「ON→OFF」応答時間は、どちらも0.1秒以下であり、駆動応答できることを確認した。
【0187】
また、本発明の液晶素子について、-25℃における「ON→OFF」応答時間は15秒以上であったものの、駆動応答できることを確認した。また、-25℃における「OFF→ON」応答時間は0.1秒以下であり、駆動応答できることを確認した。
また、-30℃において、本発明の液晶素子は駆動しないことを確認した。
【0188】
また、実施例4において調製された液晶組成物の、表16に示すFOX式による駆動限界点-27.4℃という予測温度と、本発明の液晶素子が駆動しない温度として確認された-30℃との間に相似性があることが確認された。
【0189】
[比較例1]
液晶化合物と、重合可能な有機化合物と、重合開始剤とを使用して、液晶組成物を調製した。次に、調製された液晶組成物を使用して図1に示す本発明の液晶素子と同じ構造の液晶素子を作製した。
そして、作製された液晶素子について、図2に示す各種機器を用いて駆動応答性を測定した。
【0190】
また、液晶化合物としてネマチック液晶化合物を使用した。
使用されたネマチック液晶化合物の物性値を表19に示す。
また、重合開始剤として、α-フェニルベンゾインを使用した。
【0191】
【表19】
【0192】
表19から明らかなように、比較例1で使用されたネマチック液晶化合物の固体相-ネマチック相転移温度(Tcn)は3℃であり、0℃を超えていた。
また、使用された複数の有機化合物の名称と物性値を表20に示す。
【0193】
【表20】
【0194】
表20において、「Tg」はガラス転移温度を示す。
また、表20において、「等方比率」は、有機化合物それぞれを、表19に示すネマチック液晶化合物に添加して重合したときに、得られる液晶組成物が等方性を示すときの有機化合物それぞれの含有量を示し、単位は、液晶組成物の全量を基準とした質量%である。
【0195】
また、液晶組成物の全量を基準とした、ネマチック液晶化合物の含有量と、有機化合物それぞれの含有量と、有機化合物それぞれの重合を開始させる重合開始剤の含有量とを表21に示す。
【0196】
【表21】
【0197】
表21において、「添加比率」の単位は、液晶組成物の全量を基準とした質量%である。
表21から明らかなように、得られた液晶組成物における0℃以下のガラス転移温度を有する有機化合物の含有量は、液晶組成物の全量基準で25質量%であった。
また、得られた液晶組成物における0℃を超えるガラス転移温度を有する有機化合物の含有量は、液晶組成物の全量基準で17.4質量%であった。
【0198】
また、得られた液晶組成物を使用して、図1に示す本発明の液晶素子と同じ構造の液晶素子を作製した。
なお、このときの紫外線露光量は1,750mJ/cmであった。
【0199】
<ヘイズ値の測定>
比較例1において作製された液晶素子について、実施例1と同様に、「ヘイズ値」と「全光線透過率」と「拡散透過率」と「平行線透過率」を測定した。
測定結果を表22に示す。
【0200】
【表22】
【0201】
<駆動応答性の測定>
比較例1において作製された液晶素子の温度が25℃、20℃、15℃、10℃、5℃及び0℃における、液晶素子の駆動応答性を、図2に示す各種機器を用いて実施例1と同様に測定した。
結果を表23に示す。
【0202】
【表23】
【0203】
表22から明らかなように、比較例1の液晶組成物を使用して作製された液晶素子は、電圧が印加されていない状態においてヘイズ値99.0%であり、また、60Vの電圧が印加された状態においてヘイズ値5.5%であった。
【0204】
また、表23から明らかなように、比較例1の液晶組成物を使用して作製された液晶素子について、5℃における「ON→OFF」応答時間が45秒以上であった。
そして、0℃において、比較例1の液晶組成物を使用して作製された液晶素子は駆動しないことを確認した。
【0205】
また、比較例1において調製された液晶組成物の、表21に示すFOX式による駆動限界点-14.6℃という予測温度と、実際に駆動しなかった温度(0℃)とが大きく相違した。
比較例1において使用されたネマチック液晶化合物の固体相-ネマチック相転移温度(Tcn)が3℃であったことから、比較例1の液晶組成物に関しては液晶化合物の物性値が優先されることが確認された。
【0206】
以上のように、本発明の液晶素子は、本発明の液晶組成物を有する液晶層を備えているので、0℃以下においても駆動できる。
【0207】
すなわち、本発明の液晶組成物において、液晶化合物の、固体相-ネマチック相転移温度またはスメクチック相-ネマチック相転移温度が0℃以下であるので、0℃以下という低温環境においても重合後の液晶組成物が柔軟性を保つことができ、液晶駆動を阻害しない。
【0208】
また、本発明の液晶組成物において、0℃以下のガラス転移温度を有する重合可能な有機化合物の含有量が10質量%以上であるので、重合したこの有機化合物のガラス転移温度も0℃以下に下がった状態とすることができ、0℃以下という低温環境においても、液晶組成物が柔軟性を保つことができる。
【0209】
従って、本発明の液晶組成物は、0℃以下においても液晶素子を駆動させることができ、また、このような本発明の液晶組成物を有する液晶層を備える本発明の液晶素子は、0℃以下においても駆動できる。
【符号の説明】
【0210】
1 液晶素子
2 第1の透明樹脂フィルム基材
3 第2の透明樹脂フィルム基材
4 第1の透明導電膜
5 第2の透明導電膜
6 液晶層
7 導線
20 レーザー発振器
30 顕微鏡用温調ステージ
31 観察窓
32 サンプル台
33 受光機
40 オシロスコープ
【要約】
液晶組成物は、重合可能な有機化合物と、液晶化合物とを含む。液晶化合物の、固体相-ネマチック相転移温度またはスメクチック相-ネマチック相転移温度は0℃以下である。0℃以下のガラス転移温度を有する重合可能な有機化合物の含有量は、液晶組成物の全量基準で10~60質量%である。液晶素子は液晶層を備え、液相層は、このような液晶組成物を有する。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図5A
図5B
図6
図7