(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-02
(45)【発行日】2023-02-10
(54)【発明の名称】絶縁型電圧測定装置
(51)【国際特許分類】
G01R 15/06 20060101AFI20230203BHJP
G01R 19/00 20060101ALI20230203BHJP
【FI】
G01R15/06 Z
G01R19/00 L
G01R19/00 A
(21)【出願番号】P 2019041378
(22)【出願日】2019-03-07
【審査請求日】2022-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000141060
【氏名又は名称】株式会社関電工
(73)【特許権者】
【識別番号】500285727
【氏名又は名称】三和電気計器株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】597019609
【氏名又は名称】株式会社 シーディエヌ
(74)【代理人】
【識別番号】100100516
【氏名又は名称】三谷 惠
(72)【発明者】
【氏名】大浦 洋治
(72)【発明者】
【氏名】塙 曜二
(72)【発明者】
【氏名】関根 隆好
(72)【発明者】
【氏名】澤田 真克
(72)【発明者】
【氏名】野田 龍三
(72)【発明者】
【氏名】松尾 和顕
【審査官】島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-163394(JP,A)
【文献】特開2014-232053(JP,A)
【文献】特開2019-174129(JP,A)
【文献】特許第5615463(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 15/06
G01R 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧測定対象物の外面に配置され前記電圧測定対象物の近隣に存在する近隣電線の導体による電圧ノイズ成分を含んだ前記電圧測定対象物の導体の測定対象電圧成分を電流で検出する検出プローブと、
前記近隣電線の導体の近傍に配置され前記測定対象電圧成分を含んだ前記電圧ノイズ成分を電流として検出する電圧ノイズ検出電極と、
前記検出プローブで検出された電流をシールド線を介して入力し電圧に変換するとともに前記電圧ノイズ検出電極で検出された電流をシールド線を介して入力し電圧に変換する電流入力演算部と、
前記電流入力演算部で電圧に変換された前記導体測定対象電圧成分と前記電圧ノイズ成分とが混在した検出電圧から前記電圧ノイズ成分を除去し前記電圧測定対象物の導体の測定電圧を得る補正電圧演算部とを備えたことを特徴とする絶縁型電圧測定装置。
【請求項2】
電圧測定対象物の外面に配置され前記電圧測定対象物の近隣に存在する近隣電線の導体による電圧ノイズ成分を含んだ前記電圧測定対象物の導体の測定対象電圧成分を電流で検出する検出プローブと、
前記検出プローブで検出された電流を取り出すシールド線をさらにシールドした2重シールド線とし前記2重シールド線の外側シールド部から前記シールド線のシールド部の端部を前記検出プローブ側に露出させて形成され前記測定対象電圧成分を含んだ前記電圧ノイズ成分を電流として検出する電圧ノイズ一括検出部と、
前記検出プローブで検出された電流を前記シールド線の芯線から電流電圧変換回路に入力し電圧に変換するとともに前記電圧ノイズ一括検出部で検出された電流を接地状態とみなせる前記シールド線のシールド部を介して電流電圧変換回路に入力し前記電圧ノイズ一括検出部で検出された電流を電圧に変換する電流入力演算部と、
前記電流入力演算部で電圧に変換された前記導体測定対象電圧成分と前記電圧ノイズ成分とが混在した検出電圧から前記電圧ノイズ成分を除去し前記電圧測定対象物の導体の測定電圧を得る補正電圧演算部とを備えたことを特徴とする絶縁型電圧測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧測定対象物体に印加された電圧を測定する絶縁型電圧測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電圧測定対象物体に印加された電圧を測定するものとして、絶縁被覆した電線の導体に印加された電圧を導体に非接触で測定する非接触電圧検出装置がある(例えば、特許文献1参照)。これは、絶縁部材中に電線側の第1電極と電圧検出用の第2電極とを有し、第1電極の一部に第2電極を間隔を保って配置し、電線の絶縁被覆の外面に密着させて巻き付け可能な可撓性を有した検出プローブを有したものである。
【0003】
この検出プローブは、第1電極と第2電極との間で形成する補助コンデンサ部分の静電容量Caを電線の導体と第1電極間の静電容量Csに比べて十分小さく形成し、検出プローブの補助コンデンサ部分に検出用コンデンサ及び電圧検出回路を接続し、電線の導体に印加される交流電圧Vを測定するものである。
【0004】
つまり、電圧検出回路の入力電圧VinはVin≒(Ca/Cin)・V(Cinは検出用コンデンサの静電容量、Vは被測定電圧)となるので、被測定電圧(電線導体の交流電圧)Vは、補助コンデンサ部分の静電容量Caと検出用コンデンサの静電容量Cinとの比で表されることから、電線の導体と第1電極間の静電容量Csの影響を受けるとことなく、電線導体の交流電圧の電圧測定を高精度で行うことができるものである。
【0005】
また、本出願人は、特願2018-569076号(以下先の出願という)として、検出プローブの電極の浮遊静電容量の影響を抑制し、測定対象電線の種別が異なっても導体の交流電圧の電圧測定を高精度で行うことができる絶縁型電圧測定装置を開発し特許出願している。この絶縁型電圧測定装置は、電圧測定対象物の外面に近接して配置される導体側電極と、導体側電極より面積が小さく導体側電極と間隔を保って対面して配置される出力側電極と、導体側電極と出力側電極との間に設けられ絶縁抵抗が大きく誘電率が小さい誘電体とを有した検出プローブを設け、I/V変換回路(電流電圧変換回路)で構成された電圧検出部により、出力側電極の電流を入力し出力側電極の電流に比例した出力電圧Voutを得るようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1のものや先の出願のものでは、電圧測定対象物として絶縁被覆された電線の導体の電圧を静電容量を通じて測定するものであるので、近隣に別の導体があると、電圧測定対象の導体と検出プローブの測定電極との間に生じる静電容量を通じて近隣の別の導体の電圧成分が電圧ノイズ成分として混入して誤差となり、高精度な導体の電圧測定を行うことができない。
【0008】
また、電圧測定対象の導体が絶縁された電線のような場合には、電線の種類により導体の径や導体の絶縁被覆の厚みが変わるので、測定対象電線の種別が異なる場合は、電圧測定対象の導体と測定電極との間の静電容量が変化してしまう。このため、電圧測定対象の電線の種別が異なる場合の対策が必要となる。
【0009】
図8は、特許文献1の絶縁型電圧測定装置の説明図である。
図8(a)はその概略構成図、
図8(b)は
図8(a)の等価回路、
図8(c)は第1電極の浮遊静電容量Cs1及び第2電極15の浮遊静電容量Ca1を考慮した等価回路である。
図8に示すように、電圧の測定対象電線11の導体12(以下、測定対象導体12という)に印加される交流電圧を測定するにあたって、測定対象電線11の絶縁被覆の外面に検出プローブ13を取り付ける。検出プローブ13は、絶縁被覆の外面に密着させて巻き付け可能な可撓性を有する絶縁部材中に、測定対象電線11側の大面積の第1電極14と、この第1電極14の一部に対向させる電圧検出用の小面積の第2電極15とを有している。そして、第2電極15の後段に大容量の検出用コンデンサCinを接続し検出用コンデンサCinの電圧を電圧検出回路16で測定することにより測定対象導体12に印加される交流電圧を測定する。
【0010】
図8(b)に示すように、電線の導体と第1電極14との間の静電容量Csと、第1電極14と第2電極15との間で形成する補助コンデンサ部分の静電容量Caとの合成静電容量Cpが検出用コンデンサCinに直列接続されている。検出用コンデンサCinは測定対象電線11の浮遊容量分が無視できるほど大きな検出用コンデンサであり、
図8(c)に示すように、第1電極14の浮遊静電容量Cs1及び第2電極15の浮遊静電容量Ca1が存在していても、これら浮遊容量分Cs1、Ca1の影響を受けないようにしている。
【0011】
つまり、低静電容量である第2電極15からの電流を大容量の検出用コンデンサCinの電圧Vinに変換し、ケーブルの浮遊容量分が無視できるようにしている。このことから、低静電容量である第2電極15からの電流は非常に小さく大容量コンデンサCinの容量は大きいので、電圧検出回路の入力電圧Vinは非常に微小になってしまい、ノイズの影響を受けやすい。
【0012】
そこで、出願人は先の出願の絶縁型電圧測定装置を開発した。
図9は先の出願の絶縁型電圧測定装置の説明図である。
図9において、絶縁被膜26で被膜された測定対象導体12には交流電源17から試験用電圧V1が印加されており、この交流電源17から印加された交流電圧V1が測定対象導体12の電圧となる。その測定対象導体12の電圧を測定するにあたり、測定対象電線11の絶縁被膜26の外面に検出プローブ13を取り付ける。検出プローブ13は、測定対象電線11の絶縁被膜26の外面に接触して配置される導体側電極18と、導体側電極18より面積が小さく導体側電極18と間隔を保って対面して配置される出力側電極19と、導体側電極18と出力側電極19との間に誘電体20とを有している。
【0013】
測定対象導体12と出力側電極19との間には測定対象導体12の絶縁被膜26と誘電体20によって静電容量C12が生じる。この静電容量C12により測定対象導体の電圧V1は電流I1を生じ、この電流I1は電圧検出部21に入力される。電圧検出部21はインピーダンスが小さいI/V変換回路で形成される。また、出力側電極19の直近から電圧検出部21のオペアンプ22のマイナス入力端子までシールド線25を配置し、出力側電極19からの電圧検出部21までの配線の静電容量の影響を軽減している。
【0014】
出力側電極19からの電流I1はシールド線25の芯線を通って電圧検出部21のオペアンプ22のマイナス端子に入力され、電圧検出部21の出力電圧Voutは、Vout=-I1・Zとなる。オペアンプ22のプラス端子は接地(GND)されており、オペアンプ22は、マイナス端子をプラス端子と同電位になるように動作するからである。これにより、出力側電極19からの電流I1に比例した出力電圧Voutを得る。測定対象導体12の電圧V1と測定結果の出力電圧Voutとは特定の比例係数を持った比例関係となるため、測定結果の出力電圧Voutから測定対象導体12の電圧V1を求めることができる。
【0015】
図10は、絶縁被膜26で被膜された測定対象導体12の近隣に絶縁被膜26xで被膜された第1近隣電線28xの導体29x(以下、第1近隣導体29xという)がある場合の
図9に示した絶縁型電圧測定装置の説明図である。
図10では、絶縁被膜26で被膜された測定対象導体12及び絶縁被膜26xで被膜された第1近隣導体29xは上側から見た状態を示している。
【0016】
絶縁被膜26xで被膜された第1近隣導体29xには交流電源17xから試験用電圧Vxが印加されており、この交流電源17xから印加された交流電圧Vxが第1近隣導体29xの電圧となる。
【0017】
測定対象導体12の近隣に第1近隣導体29xがあると、第1近隣導体29xと検出プローブ13の出力側電極19との間には静電容量Cx1が生じる。第1近隣導体29xの電圧Vxは、第1近隣導体29xと出力側電極19との間の静電容量Cx1により電流Ixを生じる。このため、シールド線25の芯線には、測定対象導体12からの電流I1に加えて近隣導体29からの電流Ixが混在した電流(I1 +Ix)が流れることになり、電圧検出部21に電流(I1 +Ix)が入力される。従って、測定結果の出力電圧Voutには近隣導体29からの電流Ix分の誤差が生じる。
【0018】
つまり、先の出願の絶縁型電圧測定装置は、測定対象導体12の近隣に別の第1近隣導体29xが存在しない場合には有効であるが、測定対象導体12の近隣に第1近隣導体29xがあると、測定結果の出力電圧Voutには第1近隣導体29xからの電流Ix分の誤差が生じる。
【0019】
電路は往路と復路の導体があることで電気エネルギーを伝達するので、測定対象導体の近隣には、戻りの導体が存在することが常である。また、測定対象導体12が電力関係の場合は3相も多く、電路の配線は3本になることも多い。また測定を行うことの多い配電盤には、単相及び三相の各種の配線が混在している。
【0020】
このように、特許文献1のものや先の出願のものでは、近隣に測定対象導体とは別の導体があると、測定対象導体と測定電極である検出プローブの出力側電極との間に生じる静電容量を通じて、近隣の別の導体の電圧成分が混入して測定結果の出力電圧Voutの誤差となり、高精度な導体の電圧測定を行うことができない。
【0021】
本発明の目的は、電圧の測定対象導体の近隣に別の導体が配置された状態でも測定対象導体の電圧を高精度で測定できる絶縁型電圧測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
請求項1の発明に係る絶縁型電圧測定装置は、電圧測定対象物の外面に配置され前記電圧測定対象物の近隣に存在する近隣電線の導体による電圧ノイズ成分を含んだ前記電圧測定対象物の導体の測定対象電圧成分を電流で検出する検出プローブと、前記近隣電線の導体の近傍に配置され前記測定対象電圧成分を含んだ前記電圧ノイズ成分を電流として検出する電圧ノイズ検出電極と、前記検出プローブで検出された電流をシールド線を介して入力し電圧に変換するとともに前記電圧ノイズ検出電極で検出された電流をシールド線を介して入力し電圧に変換する電流入力演算部と、前記電流入力演算部で電圧に変換された前記導体測定対象電圧成分と前記電圧ノイズ成分とが混在した検出電圧から前記電圧ノイズ成分を除去し前記電圧測定対象物の導体の測定電圧を得る補正電圧演算部とを備えたことを特徴とする。
【0023】
請求項2の発明に係る絶縁型電圧測定装置は、電圧測定対象物の外面に配置され前記電圧測定対象物の近隣に存在する近隣電線の導体による電圧ノイズ成分を含んだ前記電圧測定対象物の導体の測定対象電圧成分を電流で検出する検出プローブと、前記検出プローブで検出された電流を取り出すシールド線をさらにシールドした2重シールド線とし前記2重シールド線の外側シールド部から前記シールド線のシールド部の端部を前記検出プローブ側に露出させて形成され前記測定対象電圧成分を含んだ前記電圧ノイズ成分を電流として検出する電圧ノイズ一括検出部と、前記検出プローブで検出された電流を前記シールド線の芯線から電流電圧変換回路に入力し電圧に変換するとともに前記電圧ノイズ一括検出部で検出された電流を接地状態とみなせる前記シールド線のシールド部を介して電流電圧変換回路に入力し前記電圧ノイズ一括検出部で検出された電流を電圧に変換する電流入力演算部と、前記電流入力演算部で電圧に変換された前記導体測定対象電圧成分と前記電圧ノイズ成分とが混在した検出電圧から前記電圧ノイズ成分を除去し前記電圧測定対象物の導体の測定電圧を得る補正電圧演算部とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
請求項1の発明によれば、電圧測定対象物の外面に配置された検出プローブにより電圧測定対象物の近隣に存在する近隣電線の導体による電圧ノイズ成分を含んだ電圧測定対象物の導体の測定対象電圧成分を電流で検出し、近隣電線の導体の近傍に設けた電圧ノイズ検出電極により測定対象電圧成分を含んだ電圧ノイズ成分を電流で検出し、検出プローブで検出された電流及び電圧ノイズ検出電極で検出された電流を電流入力演算部で電圧に変換し、補正電圧演算部は電流入力演算部で電圧に変換された導体測定対象電圧成分と電圧ノイズ成分とが混在した検出電圧から電圧ノイズ成分を除去し電圧測定対象物の導体の測定電圧を得るので、測定対象導体の近隣に別の導体が配置された状態でも測定対象導体の電圧を高精度で測定できる。
【0025】
請求項2の発明によれば、検出プローブで検出された電流を取り出すシールド線をさらにシールドした2重シールド線とし、2重シールド線の外側シールド部からシールド線のシールド部の端部を検出プローブ側に露出させて形成された電圧ノイズ一括検出部により測定対象電圧成分を含んだ電圧ノイズ成分を電流で検出する。従って、検出プローブや電圧ノイズ一括検出部で検出した電流に対しシールド線や2重シールド線の静電容量や引き回しによる静電容量変化に関係なく電流入力演算部に入力できる。
【0026】
電圧ノイズ一括検出部は、シールド線のシールド部の端部を検出プローブ側に露出させて周回構造に形成しているので、電圧測定対象物の近隣に存在するすべての近隣電線の導体による電圧ノイズ成分を検出できる。電流入力演算部は、電圧ノイズ一括検出部で検出された電流を接地状態とみなせるシールド線のシールド部を介して電流電圧変換回路に入力するので、シールド線が接地された場合と同様となる。そして、補正電圧演算部は電流入力演算部で電圧に変換された導体測定対象電圧成分と電圧ノイズ成分とが混在した検出電圧から電圧ノイズ成分を除去し電圧測定対象物の導体の測定電圧を得るので、電圧の測定対象導体の近隣に別の導体が配置された状態でも測定対象導体の電圧を高精度で測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の第1実施形態に係わる絶縁型電圧測定装置の一例を示す構成図。
【
図2】
図1に示した絶縁型電圧検出装置の等価回路の回路図。
【
図3】本発明の第1実施形態に係わる絶縁型電圧測定装置の他の一例を示す構成図。
【
図4】本発明の第1実施形態に係わる絶縁型電圧測定装置の別の他の一例を示す構成図。
【
図5】本発明の第2実施形態に係わる絶縁型電圧測定装置の一例を示す構成図。
【
図6】
図5に示した絶縁型電圧検出装置の等価回路の回路図。
【
図7】本発明の第2実施形態に係わる絶縁型電圧測定装置の他の一例を示す構成図。
【
図10】測定対象電線の導体の近隣に近隣電線の導体がある場合の
図9に示した絶縁型電圧測定装置の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を説明する。
図1は本発明の第1実施形態に係わる絶縁型電圧測定装置の一例を示す構成図である。
図1では、測定対象導体12の近隣に2つの近隣導体29、すなわち、第1近隣導体29x、第2近隣導体29yが存在する場合を示している。電力関係の場合は3相が多いので、3相のうちの1つを測定対象導体12としその測定対象導体12の両サイドに第1近隣導体29xと第2近隣導体29yとが位置する場合を示す。
【0029】
絶縁被膜26で被膜された測定対象導体12には交流電源17から試験用電圧V1が印加されており、この交流電源17から印加された交流電圧V1が測定対象導体12の電圧となる。一方、絶縁被膜26xで被膜された第1近隣導体29xには交流電源17xから試験用電圧Vxが印加されており、この交流電源17xから印加された交流電圧Vxが第1近隣導体29xの電圧となる。同様に、絶縁被膜26yで被膜された第2近隣導体29yには交流電源17yから試験用電圧Vyが印加されており、この交流電源17yから印加された交流電圧Vyが第2近隣導体29yの電圧となる。
【0030】
測定対象導体12の電圧を測定するにあたり、測定対象電線11の絶縁被膜26の外面に検出プローブ13を配置する。検出プローブ13は、測定対象電線11の絶縁被膜26の外面に接触して配置される誘電体20Aと出力側電極19とを有している。
【0031】
測定対象導体12と出力側電極19との間には測定対象導体12の絶縁被膜26と誘電体20Aによって静電容量Cmが生じる。この静電容量Cmにより測定対象導体12の電圧V1は電流I1を生じる。電流I1は測定対象導体12からの測定対象電圧成分の電流である。また、第1近隣導体29xと検出プローブ13の出力側電極19との間には静電容量Cx1が生じる。第1近隣導体29xの電圧Vxは、第1近隣導体29xと出力側電極19との間の静電容量Cx1により電流Ixを生じる。電流Ixは第1近隣導体29xからの電圧ノイズ成分の電流である。同様に、第2近隣導体29yと検出プローブ13の出力側電極19との間には静電容量Cy1が生じる。第2近隣導体29yの電圧Vyは、第1近隣導体29xと出力側電極19との間の静電容量Cy1により電流Iyを生じる。電流Iyは第2近隣導体29yからの電圧ノイズ成分の電流である。
【0032】
このため、シールド線25の芯線には、測定対象導体12からの電流I1に加えて第1近隣導体29xからの電流Ixと第2近隣導体29yからの電流Iyとが混在した電流Im(=I1 +Ix+Iy)が流れることになり、電流入力演算部30の電圧検出部21に電流Imが入力される。すなわち、電流Imには、測定対象導体12の測定対象電圧成分の電流I1に加え、測定対象導体12の近隣に存在する第1近隣導体29xによる電圧ノイズ成分の電流Ix及び第2近隣導体29yによる電圧ノイズ成分の電流Iyが含まれている。この電流Imはシールド線25の芯線を通って電流入力演算部30の電圧検出部21のオペアンプ22のマイナス端子に入力され、電圧検出部21の出力電圧Voutmは、Voutm=-Im・Zとなる。これにより、電流入力演算部30の電圧検出部21は電流Imに比例した検出電圧Voutmを得る。この測定対象導体12の検出電圧Voutmには、測定対象導体12からの電流I1分の測定対象電圧成分に加え、近隣導体29からの電流(Ix+Iy)分の電圧ノイズ成分が含まれている。
【0033】
次に、2つの第1近隣電線28x、第2近隣電線28yの近傍には、電圧ノイズ検出電極27が設けられる。
図1では、2個の電圧ノイズ検出電極27x、27yを設けた場合を示しており、2個の電圧ノイズ検出電極27x、27yは検出プローブ13の誘電体20Aに取り付けた場合を示しているが、誘電体20Aに代えて別の誘電体を設け、その別の誘電体にそれぞれ電圧ノイズ検出電極27x、27yを設けるようにしてもよい。その場合、電圧ノイズ検出電極27x、27yを取り付けた別の誘電体は、検出プローブ13に一体的に取り付けられた構造とすることが望ましい。これは、検出プローブ13を測定対象電線11に配置したときに、電圧ノイズ検出電極27xが第1近隣電線28xの第1近隣導体29xの電圧を検出できる箇所に位置し、電圧ノイズ検出電極27yが第2近隣電線28yの第2近隣導体29yの電圧を検出できる箇所に位置するようにするためである。
【0034】
ここで、測定対象導体12の出力側電極19は、測定対象導体12にできるだけ近く配置し、第1近隣導体29x、第2近隣導体29yの電圧Vx、Vyを検出する電圧ノイズ検出電極27x、27yは、測定対象導体12から離れた位置に配置する。
【0035】
電圧ノイズ検出電極27xは、第1近隣導体29xとの間の静電容量Cx2に流れる電流Ix2と測定対象導体12との間の静電容量Cx3に流れる電流Ix3との合計電流Ix1(=Ix2+Ix3)を検出し、電圧ノイズ検出電極27xの検出電流Ix1(=Ix2+Ix3)として電流入力演算部30の電圧検出部21xに入力する。電流Ix2は第1近隣導体29xからの電圧ノイズ成分であり、電流Ix3は測定対象導体12からの測定対象電圧成分の電流である。すなわち、電流Ix1には、第1近隣導体29xによる電圧ノイズ成分の電流Ix2に加え、測定対象導体12からの測定対象電圧成分の電流Ix3が含まれている。この電流Ix1はシールド線25の芯線を通って電流入力演算部30の電圧検出部21xのオペアンプ22xのマイナス端子に入力され、電圧検出部21xの出力電圧Voutxは、Voutx=-Ix1・Zとなる。これにより、電流入力演算部30の電圧検出部21xは電流Ix1(=Ix2+Ix3)に比例した検出電圧Voutxを得る。
【0036】
この電圧ノイズ検出電極27xの検出電圧Voutxは、第1近隣導体29xとの間の静電容量Cx2に流れる電流Ix2(電圧ノイズ成分の電流)と測定対象導体12との間の静電容量Cx3に流れる電流Ix3(測定対象電圧成分の電流)とによる測定対象電圧成分と電圧ノイズ成分との混合電圧である。
【0037】
同様に、電圧ノイズ検出電極27yは、第2近隣導体29yとの間の静電容量Cy2に流れる電流Iy2と測定対象導体12との間の静電容量Cy3に流れる電流Iy3との合計電流Iy1(=Iy2+Iy3)を検出し、電圧ノイズ検出電極27yの検出電流Iy1(=Iy2+Iy3)として電流入力演算部30の電圧検出部21yに入力する。電流Iy2は第2近隣導体29yからの電圧ノイズ成分であり、電流Iy3は測定対象導体12からの測定対象電圧成分の電流である。すなわち、電流Iy1には、第2近隣導体29yによる電圧ノイズ成分の電流Iy2に加え、測定対象導体12からの測定対象電圧成分の電流Iy3が含まれている。電流Ix1及び電流Iy1はシールド線25の芯線を通って電流入力演算部30の電圧検出部21yのオペアンプ22yのマイナス端子に入力され、電圧検出部21yの出力電圧Voutyは、Vouty=-Iy1・Zとなる。これにより、電流入力演算部30の電圧検出部21yは電流Iy1(=Iy2+Iy3)に比例した検出電圧Voutyを得る。
【0038】
この電圧ノイズ検出電極27yの検出電圧Voutyは、第2近隣導体29yとの間の静電容量Cy2に流れる電流Iy2(電圧ノイズ成分の電流)と測定対象導体12との間の静電容量Cy3に流れる電流Iy3(測定対象電圧成分の電流)とによる測定対象電圧成分と電圧ノイズ成分との混合電圧である。
【0039】
電流入力演算部30の電圧検出部21の検出電圧Voutm、電流入力演算部30の電圧検出部21xの検出電圧Voutx、及び電流入力演算部30の電圧検出部21yの検出電圧Voutyは、補正電圧演算部31に入力される。補正電圧演算部31では、測定対象導体12の検出電圧Voutmから近隣導体29からの電流(Ix+Iy)分の電圧ノイズ成分、電圧ノイズ検出電極27xの検出電圧Voutxから近隣導体29xからの電流Ix2分の電圧ノイズ成分、電圧ノイズ検出電極27yの検出電圧Voutyから近隣導体29yからの電流Iy2分の電圧ノイズ成分を除去した測定対象導体12の測定電圧を出力電圧Voutとして出力する。すなわち、補正電圧演算部31では、例えば下記(1)に示す演算式で測定対象電圧V1の測定電圧値を求め出力電圧Voutとして出力する。
【0040】
Vout= K1×(Voutm-(K2×Voutx + K3×Vouty)) … (1)
(1)式において、K1は出力電圧Voutと測定対象導体12の電圧(測定対象電圧)V1の対応を100Vrms時に1Vと成るような対応を取るための係数である。K2はVoutxに含まれる電圧ノイズ成分がVoutmに含まれる電圧ノイズ成分と同レベルに成るような係数であり、K3はVoutyに含まれる電圧ノイズ成分がVoutmに含まれる電圧ノイズ成分と同レベルに成るような係数である。これにより、近隣電圧Vx 、Vyによる電圧ノイズ成分を除くことができ、測定対象電圧V1の値を精度よく得ることができる。
【0041】
前述したように、測定対象導体12の出力側電極19は、測定対象導体12にできるだけ近く配置し、第1近隣導体29x、第2近隣導体29yの電圧Vx、Vyを検出する電圧ノイズ検出電極27x、27yは、測定対象導体12から離れた位置に配置しているので、下記の(2a)式、(2b)式、(2c)式が成り立つ。
【0042】
Cm>Cx1,Cy1 …(2a)
Cm>Cx2,Cy2 …(2b)
Cm>Cy3,Cx3 …(2c)
ただし、
Cm:測定対象導体12と出力側電極19との間の静電容量
Cx1:第1近隣導体29xと出力側電極19との間の静電容量
Cy1:第2近隣導体29yと出力側電極19との間の静電容量
Cx2:第1近隣導体29xと電圧ノイズ検出電極27xとの間の静電容量
Cy2:第2近隣導体29yと電圧ノイズ検出電極27yとの間の静電容量
Cx3:測定対象導体12と電圧ノイズ検出電極27xとの間の静電容量
Cy3:測定対象導体12と電圧ノイズ検出電極27yとの間の静電容量。
【0043】
図2は
図1に示した絶縁型電圧検出装置の等価回路の回路図である。測定対象導体12の出力側電極19には測定対象導体12との間の静電容量Cm以外に 第1近隣導体29xとの間の静電容量Cx1と第2近隣導体29yとの間の静電容量Cy1とが生じている。このため、近隣電圧 Vx、Vyの成分による電流Ix、Iyが測定対象導体12の電圧V1の成分による電流I1に混入してしまう。また、測定対象導体12の電圧V1の成分と近隣電圧Vxの成分による電流Ix1が発生し、同様に、測定対象導体12の電圧V1の成分と近隣電圧Vyの成分による電流Iy1が発生する。
【0044】
図2中の電流I1は測定対象導体の電圧V1により静電容量Cmに流れる電流(出力側電極19からの電流)であり、測定対象電圧成分の電流である。電流Ixは第1近隣導体29xの電圧Vxにより静電容量Cx1に流れる電流であり、電圧ノイズ成分の電流である。電流Iyは第2近隣導体29yの電圧Vyにより静電容量Cy1に流れる電流であり、電圧ノイズ成分の電流である。電流Ix1は第1近隣導体29xの電圧Vxにより静電容量Cx2に流れる電流(電圧ノイズ成分の電流)と測定対象導体の電圧V1により静電容量Cx3に流れる電流(測定対象電圧成分の電流)との合計電流である。電流Iy1は第2近隣導体29yの電圧Vyにより静電容量Cy2に流れる電流(電圧ノイズ成分の電流)と測定対象導体の電圧V1により静電容量Cy3に流れる電流(測定対象電圧成分の電流)との合計電流である。
【0045】
前述の(2a)~(2c)式に示すように、測定対象導体12の出力側電極19との間の静電容量Cmは、他の静電容量Cx1、Cy1、Cx2、Cy2、Cy3,Cx3より大きいので、出力側電極19からの電流I1は、電流Ix1、電流Iy1よりも測定対象電圧V1の成分を多く含む。
【0046】
また、検出対象導体12、第1近隣導体29x、第2近隣導体29yと、検出プローブ13(出力側電極19)、電圧ノイズ検出電極27x、27yとの位置関係から、下記の(3a)、(3b)式が成り立つ。
【0047】
Cx2> Cx1 …(3a)
Cy2 >Cy1 …(3b)
従って、電圧ノイズ検出電極27xからの電流Ix1には、近隣電圧Vxの成分を多く含むことになる。電圧ノイズ検出電極27yからの電流Iy1には、近隣電圧Vyの成分を多く含むことになる。
【0048】
また、電圧ノイズ検出電極27xには測定対象導体12との間に静電容量Cx3が生じるが、静電容量Cx3は測定対象導体12と出力側電極19との間の静電容量Cmより小さいため、電圧ノイズ検出電極27xから流れる電流Ix1には、測定対象電圧V1の成分は出力側電極19からの電流I1より小さくなる。同様に、電圧ノイズ検出電極27yには測定対象導体12との間に静電容量Cy3が生じるが、測定対象導体12と出力側電極19との間の静電容量Cmより小さいため、電圧ノイズ検出電極27yから流れる電流Iy1には、測定対象電圧V1の成分は出力側電極19からの電流I1より小さくなる。
【0049】
そして、前述したように、電流入力演算部30では、出力側電極19からの電流I1に比例した検出電圧Voutm、電圧ノイズ検出電極27xから流れる電流Ix1に比例した検出電圧Voutx、及び電圧ノイズ検出電極27yから流れる電流Iy1に比例した検出電圧Voutyを求め、補正電圧演算部31に出力する。
【0050】
補正電圧演算部31では、測定対象導体12の検出電圧Voutmから近隣導体29からの電流(Ix+Iy)分の電圧ノイズ成分、電圧ノイズ検出電極27xの検出電圧Voutxから近隣導体29xからの電流Ix2分の電圧ノイズ成分、電圧ノイズ検出電極27yの検出電圧Voutyから近隣導体29yからの電流Iy2分の電圧ノイズ成分を除去した測定対象導体12の測定電圧を出力電圧Voutとして出力する。
【0051】
第1実施形態によれば、電圧測定対象物11の近隣に存在する近隣電線28x、28yに対し電圧ノイズ検出電極27x、27yを設け、近隣導体29x、29yの電圧が測定対象導体12の検出電圧に影響を与える電圧ノイズ成分を検出する。そして、電流入力演算部30は検出プローブ13で検出された測定対象導体12の検出電圧Voutmと、電圧ノイズ検出電極27x、27yで検出された検出電圧Voutx、Voutyとを求め、これら検出電圧Voutm、Voutx、Voutyから近隣電圧Vx 、Vyによる電圧ノイズ成分を除去した測定対象導体12の測定電圧を出力電圧Voutとして得るので、測定対象導体12の近隣に近隣導体29x、29yが配置された状態でも測定対象導体12の電圧を高精度で測定できる。
【0052】
なお、電極の配置位置や電圧ノイズ検出電極27、出力側電極19の面積によっては(3a)式、(3b)式 が成り立たない場合もあり得るが、その場合でも(2a)式が成り立つ構造であれば、電流Imには測定対象電圧V1の成分が多く含まれているので、電圧ノイズ検出電流 Iy1、Ix1をVouty、Voutxに変換するI/V変換係数K2、K3を変更するか、補正電圧演算部での(1)式の演算式のK2、K3を調整することにより、測定対象電圧V1の成分出力である検出電圧Voutを得ることができる。
【0053】
以上の説明では、2つの近隣導体29x、29yの場合について説明したが、n個の近隣導体29に対してm個の電圧ノイズ検出電極27を設けた場合も同様に適用できる。m個のそれぞれの電圧ノイズ検出電極27は、測定対象導体12の測定対象電圧成分及びn個のすべての近隣導体29による電圧ノイズを検出することになるが、最も近い近隣導体29による電圧ノイズを主に検出することになる。
【0054】
また、以上の説明では、検出プローブ13は測定対象電線11の絶縁被膜26の外面に接触して配置される誘電体20Aと出力側電極19とを有したものを示したが、
図3に示すように、誘電体20Aの測定対象電線11側に導体側電極18を設けるようにしてもよい。これにより、導体側電極18は測定対象電線11の絶縁被膜26の外面に接触して配置される。導体側電極18は出力側電極19より大きく、導体側電極18と出力側電極19との間に誘電体20Aが位置するように形成される。導体側電極18を設けることにより、測定対象電線11の電線径(絶縁被覆の厚みの径)や導体の径の影響を受けにくくすることができる。その他の構成は、
図1に示した絶縁型電圧測定装置と同一であるので、同一要素には同一符号を付し重複する説明は省略する。
【0055】
また、以上の説明では、
図1及び
図3に示すように、測定対象電線11の絶縁被膜26の外面に検出プローブ13の誘電体20Aを接触して、検出プローブ13を測定対象電線11に配置するようにしたが、
図1に示し一例に対し、
図4に示すように示すように、測定対象電線11の絶縁被膜26の外面に検出プローブ13や誘電体20Aが接触しないように間隔を保って配置することも可能である。
図4では誘電体20Aに出力側電極19を埋め込んで設けた場合を示している。なお、
図3に示した他の一例に対しても、同様に測定対象電線11の絶縁被膜26の外面に検出プローブ13や誘電体20Aが接触しないように間隔を保って配置することが可能である。
【0056】
次に、本発明の第2実施形態を説明する。
図5は本発明の第2実施形態に係わる絶縁型電圧測定装置の一例を示す構成図である。この第2実施形態は、
図1に示した第1実施形態に対し、検出プローブ13の出力側電極19からの電流を取り出すシールド線25をさらにシールドした2重シールド線32とし、2重シールド線32の外側シールド部から検出プローブ13側に露出したシールド線25のシールド部(2重シールド線32の内側シールド部)の端部を電圧ノイズ一括検出部33としたものである。電圧ノイズ一括検出部33は、複数の近接導体29のそれぞれの電圧ノイズ成分を一括して検出でき、測定対象電線11と近接電線28との位置関係が一定でなくても汎用的に近隣電線28の影響低減を行うことができるようにしたものである。
図1と同一要素には、同一符号を付し重複する説明は省略する。
【0057】
図5において、2重シールド線32は2重のシールド構造になっており、2重シールド線32の外側シールド部から露出したシールド線25のシールド部の端部を電圧ノイズ一括検出部33としている。電圧ノイズ一括検出部33は2重シールド線32の外側シールドから露出したシールド線25のシールド部の端部であるので、その構造は周回構造となり断面は円形となる。従って、近隣導体29x、29yがいずれの位置関係にあっても近隣導体29からの電界を捉えられるので、近隣導体19の電圧が測定対象導体12の検出電圧に影響を与える電圧ノイズ成分を検出できる。
【0058】
また、電圧ノイズ一括検出部33は、測定対象導体12の電圧V1を検出する出力側電極19に対しては垂直方向に位置することになるので、電圧ノイズ一括検出部33の測定対象導体12に対しての静電容量Cxyは小さくなる。それでいて、電圧ノイズ一括検出部33は出力側電極19に対して距離的には近いので、近隣導体29が出力側電極19に与える電界成分に対しては同等の成分を検出することができる。つまり、近隣導体19の電圧が測定対象導体12の検出電圧に影響を与える電圧ノイズ成分を高精度で検出できる。
【0059】
測定対象導体12と出力側電極19との間には測定対象導体12の絶縁被膜26と誘電体20によって静電容量Cmが生じる。この静電容量Cmにより測定対象導体12の電圧V1は電流I1を生じる。電流I1は測定対象導体12からの測定対象電圧成分の電流である。また、第1近隣導体29xと検出プローブ13の出力側電極19との間には静電容量Cx1が生じる。第1近隣導体29xの電圧Vxはこの静電容量Cx1により電流Ixを生じる。電流Ixは第1近隣導体29xからの電圧ノイズ成分の電流である。同様に、第2近隣導体29yと検出プローブ13の出力側電極19との間には静電容量Cy1が生じる。第2近隣導体29yの電圧Vyはこの静電容量Cy1により電流Iyを生じる。電流Iyは第2近隣導体29yからの電圧ノイズ成分の電流である。
【0060】
このため、シールド線25の芯線には、測定対象導体12からの電流I1に加えて第1近隣導体29xからの電流Ixと第2近隣導体29yからの電流Iyとが混在した電流Im(=I1 +Ix+Iy)が流れることになり、電流入力演算部30の電圧検出部21mに電流Imが入力される。すなわち、電流Imには、測定対象導体12の測定対象電圧成分の電流I1に加え、測定対象導体12の近隣に存在する第1近隣導体29xによる電圧ノイズ成分の電流Ix及び第2近隣導体29yによる電圧ノイズ成分の電流Iyが含まれている。この電流Imはシールド線25の芯線を通って電流入力演算部30の電圧検出部21mのオペアンプ22のマイナス端子に入力され、電圧検出部21mの出力電圧Vo1は、Vo1=-Im・Zとなる。これにより、電流入力演算部30の電圧検出部21mは電流Im(=I1 +Ix+Iy)に比例した検出電圧Vo1を得る。この測定対象導体12の検出電圧Vo1には測定対象導体12からの電流I1分の測定対象電圧成分に加え、近隣導体29からの電流(Ix+Iy)分の電圧ノイズ成分を含んでいる。
【0061】
次に、電圧ノイズ一括検出部33には測定対象導体12の電圧V1が加わっているため、電圧ノイズ一括検出部33と測定対象導体12との間の静電容量Cxyを通して電流Ixyが生じる。電流Ixyは測定対象導体12からの測定対象電圧成分の電流である。また、電圧ノイズ一括検出部33には第1近隣導体29xの電圧Vxの電圧が加わっているため、電圧ノイズ一括検出部33と第1近隣導体29xとの間の静電容量Cx2を通して電流Ix1が生じる。電流Ix1は第1近隣導体29xからの電圧ノイズ成分の電流である。同様に、電圧ノイズ一括検出部33には第2近隣導体29yの電圧Vyの電圧が加わっているため、電圧ノイズ一括検出部33と第2近隣導体29yとの間の静電容量Cy2を通して電流Iy1が生じる。電流Iy1は第2近隣導体29yからの電圧ノイズ成分の電流である。
【0062】
このため、シールド線25のシールド部には電流Ik(=Ixy+Ix1+Iy1)が流れ、電流入力演算部30の電圧検出部21kに入力される。すなわち、電流Ikには第1近隣導体29xによる電圧ノイズ成分の電流Ix1及び第2近隣導体29yによる電圧ノイズ成分の電流Iy1に加え、測定対象導体12からの測定対象電圧成分の電流Ixyが含まれている。この電流Ikはシールド線25のシールド部を通って電流入力演算部30の電圧検出部21kのオペアンプ22kのマイナス端子に入力され、電圧検出部21の出力電圧Vo2は、Vo2=-Ik・Zとなる。これにより、電流入力演算部30の電圧検出部21kは電流Ik(=Ixy+Ix1+Iy1)に比例した検出電圧Vo2を得る。この測定対象導体12の検出電圧Vo2には、測定対象導体12からの電流(Ixy)分の電圧ノイズ成分と近隣導体29からの電流(Ix1+Iy1)分の電圧ノイズ成分とが混在している。
【0063】
電流入力演算部30の電圧検出部21の検出電圧Vo1、電流入力演算部30の電圧検出部21kの検出電圧Vo2は補正電圧演算部31に入力される。補正電圧演算部31では、測定対象導体12の検出電圧Vo1から近隣導体29からの電流(Ix+Iy)分の電圧ノイズ成分、近隣導体29(第1近隣導体29x、第2近隣導体29y)の検出電圧Vo2から近隣導体29からの電流(Ix1+Iy1)分の電圧ノイズ成分を除去した測定対象導体12の測定電圧を出力電圧Voutとして出力する。すなわち、補正電圧演算部31では、例えば下記(4)に示す演算式で測定対象電圧V1の測定電圧値を求め出力電圧Voutとして出力する。
【0064】
Vout= K11×(Vo1-(K12×Vo2)) … (4)
(4)式において、K11は出力電圧Voutと測定対象導体12の電圧(測定対象電圧)V1の対応を100Vrms時に1Vと成るような対応を取るための係数である。K12はV02に含まれる電圧ノイズ成分がV01に含まれる電圧ノイズ成分と同レベルに成るような係数である。これにより、近隣電圧Vx 、Vyによる電圧ノイズ成分を除くことができ、測定対象電圧V1の値を精度よく得ることができる。
【0065】
図6は
図5に示した絶縁型電圧検出装置の等価回路である。検出プローブ13の出力側電極19には静電容量Cmを通して測定対象導体12の電圧V1が加わっているため電流I1が生じる。電流I1は測定対象電圧成分の電流である。また、検出プローブ13の出力側電極19には、静電容量Cx1、Cy1を通して第1近隣導体29x、第2近隣導体29yの電圧Vx、Vyの電圧が加わっているため電流Ix、Iyが生じる。電流Ixは第1近隣導体29xによる電圧ノイズ成分の電流であり、電流Iyは第2近隣導体29yによる電圧ノイズ成分の電流である。従って、シールド線25の芯線には電流Im(=I1+Ix+Iy)が流れる。電流Imには、測定対象導体の電圧V1による電流I1(測定対象電圧成分の電流)と第1近隣導体29x、第2近隣導体29yの電圧Vx、Vyによる電流Ix、Iy(電圧ノイズ成分の電流)との成分が混在している。
【0066】
一方、電圧ノイズ一括検出部33には静電容量Cxyを通して測定対象導体12の電圧V1が加わっているため電流Ixyが生じる。電流Ixyは測定対象導体12からの測定対象電圧成分の電流である。また、電圧ノイズ一括検出部33には、静電容量Cx2、Cy2を通して、第1近隣導体29x、第2近隣導体29yの電圧Vx、Vyの電圧が加わっているため電流Ix1、Iy1が生じる。電流Ix1は第1近隣導体29xからの電圧ノイズ成分であり、電流Iy1は第2近隣導体29yからの電圧ノイズ成分の電流である。従って、シールド線25のシールド部には電流Ik(=Ixy+Ix1+Iy1)が流れる。電流Ikには、測定対象導体の電圧V1による電流Ixy(測定対象電圧成分の電流)と第1近隣導体29x、第2近隣導体29yの電圧Vx、Vyによる電流Ix1、Iy1との成分(電圧ノイズ成分の電流)が混在している。
【0067】
そこで、(4)式において、シールド線25の芯線に流れる電流Imに含まれる近隣電圧Vx、Vyの電圧ノイズ成分と同レベルに成るような係数K12をシールド線25のシールド部に流れる電流Ikに乗算する。なお、係数K11は、前述したように、出力電圧Voutと測定対象導体12の電圧(測定対象電圧)V1の対応を100Vrms時に1Vと成るような対応を取るための係数である。これにより、出力電圧Voutは測定対象電圧V1のみに対応するようになる。
【0068】
ここで、
図5において、電圧ノイズ一括検出部33を構成するシールド線25のシールド部は大地(GND)には接続されていないが、電流入力演算部30の電圧検出部21kのオペアンプ22kのマイナス入力端子に接続されて、電圧検出部21kはI/V変換回路を構成している。I/V変換回路のマイナス入力端子はオペアンプ22kのGND電位と同じになるので、出力側電極19から見たシールド線25の電気的関係は
図9に示したシールド線25(シールド部が接地されたシールド線25)と同じになる。
【0069】
このため、出力側電極19からの電流Imは、シールド線25や2重シールド線32の静電容量や引き回しによる静電容量変化に関係なく電流Imとして電流入力演算部30の電圧検出部21mに入力される。さらに、前述したように、電圧ノイズ一括検出部33が周回構造となっていることで、
図1に示した第1実施形態のように複数の電圧ノイズ検出電極27を必要としない。またシールド線25の電圧ノイズ一括検出部33以外は2重シールド線32の外側シールド部によりGNDで覆われているため2重シールド線32を引き回している部分の外部電界の影響は受けない。
【0070】
また、以上の説明では、検出プローブ13は測定対象電線11の絶縁被膜26の外面に接触して配置される誘電体20Aと出力側電極19とを有したものを示したが、
図7に示すように、誘電体20Aの測定対象電線11側に導体側電極18を設けるようにしてもよい。これにより、導体側電極18は測定対象電線11の絶縁被膜26の外面に接触して配置される。導体側電極18は出力側電極19より大きく、導体側電極18と出力側電極19との間に誘電体20Aが位置するように形成される。導体側電極18を設けることにより、測定対象電線11の電線径(絶縁被覆の厚みの径)や導体の径の影響を受けにくくすることができる。その他の構成は、
図5に示した絶縁型電圧測定装置と同一であるので、同一要素には同一符号を付し重複する説明は省略する
このように、第2実施形態によれば、検出プローブ13の出力側電極19からの電流を取り出すシールド線25をさらにシールドした2重シールド線32とし、2重シールド線32の外側シールドから検出プローブ13側に露出したシールド線25のシールド部の端部を電圧ノイズ一括検出部33としたので、検出プローブ13の出力側電極19は
図9の出力側電極19の構造と同様のままで、近隣導体29が無い場合だけでなく、複数の電線や大小径の電線がある現場でも使用可能な絶縁型電圧測定装置を実現できる。また、測定対象電線11と近接電線29との位置関係が一定ではない場合であっても、使用可能な絶縁型電圧測定装置を実現できる。
【0071】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0072】
11…測定対象電線、12…測定対象導体、13…検出プローブ、14…第1電極、15…第2電極、16…電圧検出回路、17…交流電源、18…導体側電極、19…出力側電極、20、20A…誘電体、21…電圧検出部、22…オペアンプ、23…検出プローブ保持部、24…凹部、25…シールド線、26…絶縁被覆、27…電圧ノイズ検出電極、28…近隣電線、29…近接導体、30…電流入力演算部、31…補正電圧演算部、32…2重シールド線、33…電圧ノイズ一括検出部