(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-02
(45)【発行日】2023-02-10
(54)【発明の名称】空気調和機の洗浄装置及び洗浄方法
(51)【国際特許分類】
B08B 1/00 20060101AFI20230203BHJP
【FI】
B08B1/00
(21)【出願番号】P 2018047851
(22)【出願日】2018-03-15
【審査請求日】2019-12-09
【審判番号】
【審判請求日】2022-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 禎司
(72)【発明者】
【氏名】野田 清治
(72)【発明者】
【氏名】門井 隆治
(72)【発明者】
【氏名】谷口 勝也
【合議体】
【審判長】窪田 治彦
【審判官】関口 哲生
【審判官】山崎 孔徳
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-65526(JP,A)
【文献】特開2011-140002(JP,A)
【文献】特開平11-225919(JP,A)
【文献】特開2005-351504(JP,A)
【文献】特開2002-357398(JP,A)
【文献】特許第6279133(JP,B1)
【文献】特開2005-87680(JP,A)
【文献】登録実用新案第3013388(JP,U)
【文献】特開平11-348051(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0060824(US,A1)
【文献】中国実用新案公告第208333248(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B1/00
B08B3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気調和機の内部を洗浄する洗浄装置であって、
前記空気調和機の外部から内部へ挿入されるブラシ部と、
直線状に延びる部分を有する非折曲性の保持部と、
前記保持部の直線状の部分の延びる方向と交差する方向に前記ブラシ部の先端を向けて、前記ブラシ部と前記保持部とを連結する連結部と、
前記空気調和機の前記外部から前記内部へ挿入される前記ブラシ部を振動させる振動部と
を備え、
前記連結部は、
前記ブラシ部の先端が、前記延びる方向において前記連結部よりも前記保持部の直線状の部分の側に位置するよう、湾曲形状を有し、
前記振動部は、
前記連結部に配置されている空気調和機の洗浄装置。
【請求項2】
前記振動部は、
振動を発振する発振部と、
前記発振部に電源を供給する電源部と、
前記発振部と前記電源部とを電気接続する電気配線とを有する
請求項1に記載の空気調和機の洗浄装置。
【請求項3】
前記ブラシ部は、芯材と、前記芯材から突出するブラシとを有し、
前記ブラシは、前記振動部と接するようにして前記芯材から突出している
請求項1または請求項2に記載の空気調和機の洗浄装置。
【請求項4】
吸引チューブと、前記吸引チューブの端部に吸引力を生じさせる吸引部とを有する回収装置を備えた
請求項1~請求項
3のいずれか一項に記載の空気調和機の洗浄装置。
【請求項5】
給水チューブと、前記給水チューブに水を送る給水部とを有する給水装置を備えた
請求項1~請求項
4のいずれか一項に記載の空気調和機の洗浄装置。
【請求項6】
前記空気調和機の外部から内部へ挿入される撮影装置を有し、前記撮影装置を介して前記空気調和機の外部から内部を観察する観察装置を備えた
請求項1~請求項
5のいずれか一項に記載の空気調和機の洗浄装置。
【請求項7】
空気調和機の内部を、洗浄装置を用いて前記空気調和機の外部から洗浄する洗浄方法であって、
前記洗浄装置は、
ブラシ部と、
直線状に延びる非折曲性の保持部と、
前記保持部の延びる方向と交差する方向に前記ブラシ部の先端を向けて、前記ブラシ部と前記保持部とを連結する連結部と、
前記ブラシ部を振動させる振動部と
を備え、
前記連結部は、
前記ブラシ部の先端が、前記延びる方向において前記連結部よりも前記保持部の直線状の部分の側に位置するよう、湾曲形状を有し、
前記振動部は、
前記連結部に配置され、
前記洗浄方法は、
前記ブラシ部を前記空気調和機の外部から内部へ挿入する工程と、
前記空気調和機の内部へ挿入された前記ブラシ部を振動させる工程と
を含み、
前記ブラシ部を振動させる工程は、前記振動部に動力を供給する工程を含む
空気調和機の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、空気調和機の内部を洗浄する洗浄装置及び洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和機の室内側装置の筐体には、空気中に含まれる塵又は埃などが内部部品に取り込まれないようにエアーフィルターが備わっている。微細な塵又は埃などの汚れがエアーフィルターを通り抜けた場合、その塵又は埃などの汚れは、筐体に設けられたドレンパンの内部に堆積してしまう。堆積した汚れは、ドレンパン内の流路又はドレンポンプの閉塞、若しくは異臭などの原因になるため、メンテナンス業者による定期的なドレンパンの洗浄が必要である。
【0003】
ドレンパンの汚れを洗浄する作業は、一般的に、室内側装置の筐体からドレンパンを取り外して行われる。このようなドレンパンの取り外しによる作業負荷増大を考慮し、特許文献1は、室内側装置の筐体から取り外すことなくドレンパンを洗浄するような装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実用新案登録第3204563号公報(第5頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は、駆動ポンプの一端を接続したフレキシブルな給水ホースの先端に伸縮自在な伸縮パイプを着脱自在に取り付け、この伸縮パイプの先端に給水ノズルを設けた装置を開示している。特許文献1の装置は、給水ノズルからの水流を用いてドレンパンに固着した汚れを除去する。しかし、特許文献1の装置は、ドレンパンから跳ね返った水しぶきが室内側装置の外に飛散して、漏水の原因になる虞がある。また、漏水を抑制するために水流を弱めてドレンパンに供給した場合、ドレンパンに付着した汚れを十分に除去できない虞がある。
【0006】
本発明は、上記のような課題を背景としてなされたものであり、空気調和機の内部にあるドレンパンなどの洗浄対象を空気調和機から取り外さずとも、空気調和機の内部の洗浄対象に付着した汚れを洗浄する装置及び方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の空気調和機の洗浄装置は、空気調和機の内部を洗浄する洗浄装置であって、前記空気調和機の外部から内部へ挿入されるブラシ部と、直線状に延びる部分を有する非折曲性の保持部と、前記保持部の直線状の部分の延びる方向と交差する方向に前記ブラシ部の先端を向けて、前記ブラシ部と前記保持部とを連結する連結部と、前記空気調和機の前記外部から前記内部へ挿入される前記ブラシ部を振動させる振動部とを備え、前記連結部は、前記ブラシ部の先端が、前記延びる方向において前記連結部よりも前記保持部の直線状の部分の側に位置するよう、湾曲形状を有し、前記振動部は、前記連結部に配置されているものである。
【0008】
本発明の空気調和機の洗浄方法は、空気調和機の内部を、洗浄装置を用いて前記空気調和機の外部から洗浄する洗浄方法であって、前記洗浄装置は、ブラシ部と、直線状に延びる非折曲性の保持部と、前記保持部の延びる方向と交差する方向に前記ブラシ部の先端を向けて、前記ブラシ部と前記保持部とを連結する連結部と、前記ブラシ部を振動させる振動部とを備え、前記連結部は、前記ブラシ部の先端が、前記延びる方向において前記連結部よりも前記保持部の直線状の部分の側に位置するよう、湾曲形状を有し、前記振動部は、前記連結部に配置され、前記洗浄方法は、前記ブラシ部を前記空気調和機の外部から内部へ挿入する工程と、前記空気調和機の内部へ挿入された前記ブラシ部を振動させる工程とを含み、前記ブラシ部を振動させる工程は、前記振動部に動力を供給する工程を含むものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、作業者は、保持部を把持した状態でブラシ部を空気調和機の外部から内部へと挿入し、保持部を動かすことによってブラシ部で空気調和機の内部の洗浄対象を洗浄することができる。このため、漏水を抑制しつつ、空気調和機から例えばドレンパンなどの洗浄対象を取り外すことなく、空気調和機の内部の洗浄対象を洗浄できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1に係る洗浄装置100の使用状態を説明する図である。
【
図2】実施の形態1に係る洗浄装置100の構成を説明する図である。
【
図3】実施の形態1に係るブラシ部11の構成例を説明する図である。
【
図4】実施の形態1に係る保持部10、ブラシ部11及び連結部12の構成例を示す図である。
【
図5】実施の形態1に係る振動部13の構成例を説明する図である。
【
図6】実施の形態2に係る洗浄装置100Aの構成及び使用状態を説明する図である。
【
図7】実施の形態3に係る洗浄装置100Bの構成及び使用状態を説明する図である。
【
図8】実施の形態4に係る洗浄装置100Cの構成及び使用状態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る空気調和機の洗浄装置及び洗浄方法を、いわゆる天井カセット形の空気調和機の室内側装置のドレンパンの洗浄に適用した実施の形態を、図面を参照して説明する。本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、本発明は、以下の各実施の形態に示す構成のうち、組合せ可能な構成のあらゆる組合せを含むものである。また、実施の形態に示す、洗浄装置及び洗浄方法の洗浄対象であるドレンパン及び空気調和機の構成は、本発明を限定するものではない。また、以下の説明において、理解を容易にするために方向を表す用語(例えば「上」、「下」、「右」、「左」、「前」、「後」など)を適宜用いるが、これらは説明のためのものであって、本発明を限定するものではない。また、各図において、同一の符号を付したものは、同一の又はこれに相当するものであり、これは明細書の全文において共通している。なお、各図面では、各構成部材の相対的な寸法関係又は形状などが実際のものとは異なる場合がある。
【0012】
実施の形態1.
(システム構成)
図1は、実施の形態1に係る洗浄装置100の使用状態を説明する図である。
図1では、洗浄装置100の洗浄対象である空気調和機の室内側装置のドレンパン1を併せて図示している。
図1に例示したドレンパン1は、天井に埋め込まれて使用される天井カセット形の室内側装置の、設置状態における下側に設置される。ドレンパン1の上側には、熱交換器、送風機及びこれらを収容する筐体が配置されることになる。筐体とドレンパン1とで、室内側装置の外郭を構成する。
図1は、設置状態のドレンパン1を斜め上から見た図である。室内側装置の筐体が天井に設置されている状態では、
図1に示されたドレンパン1の上面は、室内側装置の内部にあって室内には露出していない状態となる。
【0013】
ドレンパン1は、吹出口2と、ドレンパン溝3と、ドレン口4とを有する。吹出口2は、ドレンパン1を上下に貫通する開口である。本実施の形態では、概ね矩形状のドレンパン1の四辺のそれぞれに吹出口2が設けられており、四方向に空気が吹き出される。ドレンパン溝3は、ドレンパン1の内面、すなわちドレンパン1の設置状態における上面に形成された溝で構成されている。本実施の形態のドレンパン溝3は、吹出口2よりもドレンパン1の内周側に、概ねドレンパン1の外形に沿った形状で設けられている。ドレン口4は、ドレンパン溝3に形成された上下に貫通する穴であり、ドレン水をドレンパン1の外部へ排出するためのものである。ドレン口4には、蓋が取り付けられる。
【0014】
洗浄装置100は、ドレンパン1の外部から、ドレンパン1の内部にあるドレンパン溝3を洗浄するための装置である。
図1に示すように、洗浄装置100の一部が、ドレンパン1の下側から吹出口2を介してドレンパン1の内部にあるドレンパン溝3に挿入され、この挿入された部分によってドレンパン溝3が洗浄される。
【0015】
(洗浄装置の構成)
図2は、実施の形態1に係る洗浄装置100の構成を説明する図である。洗浄装置100は、ドレンパン1の外部から内部へ挿入されるブラシ部11と、直線状に延びる部分を有する保持部10と、ブラシ部11と保持部10とを連結する連結部12とを備える。本実施の形態では、さらに好ましい態様として、洗浄装置100は、振動部13と、持ち手部14とを備える。
【0016】
保持部10は、直線状に延びる部分を有し、ブラシ部11と連結部12とを支持する。保持部10は、洗浄装置100が使用される際に、吹出口2からブラシ部11をドレンパン1の内部に挿入させる機能を備える。保持部10は、柄として機能できるように少なくとも一部に直線状の部分を有する。ここでいう直線状の部分とは、保持部10の中心軸が直線状になっている部分をいい、例えば保持部10の表面に凹凸が形成されていてもよいし、保持部10の一部の太さが異なっていてもよい。また、
図2の例では、保持部10はその全体が直線状であるが、一部に湾曲状、又は屈曲状の部分を含んでいてもよい。
図2のように保持部10の全体を直線状に構成することで、ブラシ部11及び連結部12を強固に支持でき、また、ブラシ部11を振動させるときに、振動源からの振動の減衰を抑制することができる。さらに好ましくは、保持部10は伸縮自在とする。保持部10を伸縮自在とすることで、空気調和機のドレンパン1の高さ位置に応じて、ブラシ部11の位置を調整することができる。
【0017】
保持部10の材料としては、特に限定されないが、金属、具体的にはステンレス材、鋼材、ステンレス鋼材、銅材、鉄材などを用いることができる。また保持部10の他の材料として、合成樹脂、具体的にはポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル樹脂、ABS樹脂などを用いることもできる。好ましくは、他の材料よりも強度があり振動の減衰を極力抑制できる金属製のワイヤー状のスレンレス鋼材がよい。
【0018】
持ち手部14は、作業者に片手もしくは両手で把持された状態で、ブラシ部11、連結部12、保持部10を支持する機能を備える。持ち手部14の形状は、作業者が片手もしくは両手で持ちやすければ特に限定しないが、好ましくは片手で握れる大きさの円筒状がよい。持ち手部14の材料は、作業者が片手もしくは両手で持った状態で、ブラシ部11、連結部12及び保持部10を支持する強度を備えていれば特に限定しないが、好ましくは作業者が持ちやすく軽量である木がよい。
【0019】
ブラシ部11は、ドレンパン溝3に付着した汚れを剥離させるための部材である。
図3は、実施の形態1に係るブラシ部11の構成例を説明する図である。
図3に示すようにブラシ部11は、芯材111と、芯材111から突出し洗浄対象の表面を擦るブラシ112とを有する。
【0020】
ブラシ部11の全体的な形状としては、直線状、湾曲状、又は屈曲状などを採用することができる。ブラシ部11の好ましい形状は直線状であり、このようにすることで振動源からの振動の減衰を抑制することができる。また、ドレンパン溝3などの洗浄対象が比較的広い面と狭い面を有している場合でもその双方を洗浄できるように、ブラシ部11の形状及び大きさを決めるとよい。
【0021】
図3に例示する芯材111は、直線状の棒である。芯材111に対するブラシ112の突出方向は、芯材111の延びる方向に対して垂直方向、斜め方向、平行方向などとすることができる。ブラシ112の突出方向はこれらに限定されず、ブラシ112を洗浄対象に接地させることができるようにすればよい。好ましくは、芯材111の延びる方向に対して垂直方向にブラシ112を突出させるのがよく、このようにすることで洗浄対象であるドレンパン溝3の表面にブラシ112をより接地させやすい。
【0022】
芯材111の周方向に対してブラシ112を設ける範囲は、芯材111の周方向の一部あるいは全部とすることができる。好ましくは、芯材111の周方向の全体からブラシ112を突出させるのがよく、このようにすることでブラシ112を洗浄対象の広い面に接地させることができる。
【0023】
芯材111の軸方向に対してブラシ112が設けられる範囲は、特に限定されないが、芯材111のより長い範囲にブラシ112を設けるとよい。このようにすることで、一度に洗浄対象を洗浄できる範囲を広くすることができる。さらに好ましくは、ブラシ部11の全体を観察した状態におけるブラシ部11の長手方向の先端部11aから、振動部13接するあるいは実質的に振動部13との間に隙間が生じないような位置まで、ブラシ112を設けるとよい。このようにすることで、ブラシ112が緩衝材となり、振動部13によって生じた振動によって芯材111あるいは連結部12がドレンパン1に接触して、接触した部分が互いに損傷を受けるのを抑制することができる。
【0024】
ブラシ112の材料は、金属、具体的には真鍮線、ステンレス線、鋼線、鉄線などとすることができるほか、合成樹脂、具体的にはポリプロピレン線、ナイロン線などとすることもできるし、天然繊維、具体的には豚毛、馬毛、山羊毛などとすることもできる。ブラシ112の材料は、乾燥あるいは湿潤した汚れを剥離させることができれば特に限定されないが、洗浄対象であるドレンパン溝3の表面を傷つけずに汚れを剥離させ安価で丈夫な樹脂製のポリプロピレン線、又はナイロン線が好ましい。
【0025】
芯材111の形状は、直線状、湾曲状、屈曲状などとすることができるが、好ましくは直線状が良い。芯材111を直線状とすることで、振動源からの振動をブラシ112に伝搬しやすい。芯材111の材料は、金属、具体的にはステンレス材、鋼材、ステンレス鋼材、銅材、鉄材などとすることができるほか、合成樹脂、具体的にはポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル樹脂、ABS樹脂などとすることもできる。芯材111の材料は、ブラシ112を固定できれば特に限定されないが、好ましくは強度があり振動の減衰を抑制できるステンレス鋼材のワイヤーがよい。
【0026】
連結部12は、一端がブラシ部11に接続され、他端が保持部10に接続されており、ブラシ部11と保持部10とを連結する。より具体的には、連結部12は、保持部10の直線状の部分の延びる方向と交差する方向にブラシ部11の先端部11aを向けて、保持部10とブラシ部11とを連結する。また、本実施の形態の連結部12は、振動部13から生じる振動を、ブラシ部11へ伝搬する機能も有する。連結部12は、保持部10の延びる方向に交差する方向にブラシ部11の先端部11aを向けてブラシ部11と保持部10とを連結でき、また、ドレンパン1の内部に挿入されたブラシ部11を洗浄対象に接地させることのできる形状である。連結部12は、その少なくとも一部に、保持部10の直線状の部分と交わる方向に延びる部分を有する。連結部12の全体形状は、湾曲状あるいは屈曲状とすることができるが、好ましくは振動源からの振動の減衰を抑制できる湾曲状がよい。連結部12が屈曲状の部分を含んでいる場合、曲がった箇所で振動源からの振動の一部が跳ね返って振動を減衰させるため、屈曲状の部分は少ないほうがよい。
【0027】
連結部12の材料は、金属、具体的にはステンレス材、鋼材、ステンレス鋼材、銅材、鉄材などとすることができるほか、合成樹脂、具体的にはポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル樹脂、ABS樹脂などとすることもできる。好ましくは、他の材料よりも強度があり振動の減衰を抑制できる金属製のワイヤー状のスレンレス鋼材がよい。
【0028】
ここで、保持部10及びブラシ部11の向きの具体例を説明する。
図4は、実施の形態1に係る保持部10、ブラシ部11及び連結部12の構成例を示す図である。
図4に示す一点鎖線Xは、保持部10の直線状に延びる方向に平行な線である。
図4に示す一点鎖線Yは、ブラシ部11の先端部11aの向く方向に平行な線である。なお、ブラシ部11の先端部11aの向く方向とは、先端部11aとその反対側の端部である基端部11bとを結ぶ方向をいう。連結部12は、一点鎖線Xと一点鎖線Yとが交差するようにして、保持部10とブラシ部11とを連結する。
【0029】
図4に例示した4種類のブラシ部11は、ブラシ部11を構成する芯材111及びブラシ112の形状は互いに異なるが、いずれもその先端部11aが保持部10の延びる方向と交差する方向に向くようにして、連結部12に固定されている。
【0030】
振動部13は、ブラシ部11を振動させる機能を有する。
図5は、実施の形態1に係る振動部13の構成例を説明する図である。振動部13は、振動を発振する発振部131と、発振部131に電源を供給する電源部132と、発振部131と電源部132とを電気接続する電気配線133とを有する。
【0031】
振動部13の発振部131は、振動を発振できる機器、例えば圧電素子、セラミック振動子、水晶振動子、振動モーターなどで構成される。好ましくは、発振部131は、乾電池又は100~110Vコンセントからの電力供給で動作し、1000~20000rpmの回転数を有する小型で軽量の振動モーターである。発振部131を小型にすることで、ブラシ部11とともに吹出口2を介してドレンパン1の内部に挿入することができる。一般的にドレンパン1の吹出口2の幅は10cm以内であるため、発振部131はこの吹出口2の幅の範囲内の大きさとするのがよい。
【0032】
発振部131のオンとオフとを切り替えるON/OFFスイッチの位置は、特に限定されないが、持ち手部14、又は保持部10の持ち手部14に近い手の届く範囲がよい。このようにすることで、洗浄装置100を使用する作業者の操作の利便性を向上させることができる。
【0033】
電源部132は、発振部131に動力を供給する機器である。具体的には、電源部132は例えば、発振部131と電気配線133で接続されて、乾電池又は100~110Vコンセントから電力供給できるのが好ましい。
【0034】
振動部13の発振部131の設置位置は、発振部131からの振動をブラシ部11へ伝搬できれば、洗浄装置100のどの位置であってもよい。たとえば、保持部10に発振部131を設けてもよい。好ましい態様としては、ブラシ部11と隣接しており振動の減衰を抑制できる連結部12に、発振部131を設けるのがよい。さらに好ましくは、振動部13の発振部131の位置は、ブラシ部11に極力近い連結部12であって、洗浄装置100の使用状態においてドレンパン1に接触しにくい位置がよい。また、ブラシ部11の芯材111あるいは連結部12を筒状部材で構成し、この筒状部材の中に発振部131を設置してもよい。また、ドレンパン1及びドレンパン溝3の形状は、空気調和機の機種によって異なるため、振動部13の発振部131の固定位置を変更できるような治具を介して、振動部13を洗浄装置100の連結部12などに取り付けるのがよい。この治具は、例えば連結部12に対して発振部131を脱着可能な結束紐と固定具とで構成することができる。
【0035】
保持部10、連結部12及びブラシ部11の芯材111を、個別の部材で構成し、接続部材を介して互いに脱着できるようにしてもよい。このようにすることで、例えば長さ又は形状の異なる保持部10、連結部12及びブラシ部11を組み合わせて、ドレンパン1の設置位置及び形状に応じた態様の洗浄装置100を構成することができる。あるいは、保持部10、連結部12及びブラシ部11の芯材111を、一繋がりの部材で構成してもよい。このようにすることで、振動源からの振動の減衰を抑制することができる。
【0036】
(洗浄装置を用いた洗浄方法)
次に、洗浄装置100を用いたドレンパン1の内部の洗浄方法を説明する。本実施の形態の洗浄方法は、ドレンパン1の外側、すなわちドレンパン1が設置された状態においてはドレンパン1の下側から、洗浄装置100のブラシ部11を、吹出口2からドレンパン1の内部に挿入する工程を有する。ブラシ部11をドレンパン1の内部に挿入すると、
図1に示す状態になる。作業者は、把持した持ち手部14を操作して、ブラシ部11を、洗浄対象であるドレンパン溝3の表面に接地させる。また本実施の形態の洗浄方法は、ドレンパン1の内部に挿入されたブラシ部11を振動させる工程を含む。作業者が保持部10を振ってブラシ部11を振動させてもよいし、振動部13を動作させてブラシ部11を振動させてもよい。すなわち、ブラシ部11の振動源は、作業者であってもよいし振動部13であってもよい。
【0037】
ブラシ部11を振動させると、ドレンパン溝3の表面をブラシ部11が擦り、ドレンパン溝3に付着した汚れを剥離させることができる。
【0038】
このように本実施の形態によれば、ドレンパン1を空気調和機の室内側装置から取り外すことなく、室内側装置の内部にあるドレンパン溝3の汚れを洗浄することができる。このため、ドレンパン1を室内側装置から取り外す作業工程が不要となり、洗浄の作業時間を短縮できる。また、特許文献1のように水圧を利用して汚れを剥離させる態様と比較して、漏水の可能性も低減できる。
【0039】
また、本実施の形態では、振動部13を、ブラシ部11と保持部10とを連結する連結部12に設置した。このため、振動部13が生じさせた振動がブラシ部11に伝わるまでの振動の減衰を抑制でき、高い洗浄力を維持することができる。
【0040】
(実施例1)
次に、
図1、2に例示した洗浄装置100の実施例1を説明する。実施例1における洗浄装置100の構成要素の詳細を以下に記す。ブラシ部11のブラシ112はナイロン製で、芯材111はステンレス鋼材で構成されたねじりワイヤーである。ブラシ112は芯材111の全体を円筒状に覆っており、ブラシ部11のブラシ112部分の外径はφ10mmである。また、ブラシ112は、連結部12に取り付けられた振動部13の発振部131の直前の位置、すなわち発振部131に実質的に接触する位置まで設けられている。
【0041】
連結部12は、ステンレス鋼材のねじりワイヤーを芯材とし、この芯材をU字に湾曲させた。保持部10の形状は直線状であり、ステンレス鋼材のねじりワイヤーを芯材とした。持ち手部14は、外径φ30mm、長さ100mmの円筒状の木製であり、その中心部に保持部10の芯材を固定した。また、ブラシ部11、連結部12、保持部10の各芯材を一連の部材とした。
【0042】
振動部13の発振部131は、直流電圧12V、回転数5000rpmで動作する偏心型振動モーターである。湾曲した連結部12の最上部に、振動部13の発振部131を固定した。振動部13の電源に用いた乾電池式バッテリー及び発振部131のON/OFFスイッチは、保持部10と持ち手部14との結合部に固定した。
【0043】
次に、実施例1に係る洗浄装置100の動作及び作用を説明する。洗浄装置100のブラシ部11と、振動部13が固定された連結部12とを、天井カセット形四方向吹き出し業務用エアコンの室内側装置にある吹出口2の一つに挿入した。ブラシ部11のブラシ112がドレンパン溝3に接地したことを確認後、発振部131のON/OFFスイッチをONにして、吹出口2が形成されたドレンパン1の一辺に沿って2分間持ち手部14を動かした。その後、他の吹出口2が形成されたドレンパン1の三辺に沿ったドレンパン溝3も同様に処理した。
【0044】
その結果、ドレンパン溝3が一体に形成されたドレンパン1を室内側装置から取り外さずに、ドレンパン溝3に付着した汚れを剥離させることができた。また、振動部13を連結部12の最上部に固定することで、ドレンパン1の内部のドレンパン溝3以外の部位に振動部13が接触することなく、かつ振動部13からの振動の減衰を抑制できたため、ドレンパン溝3に固着した汚れも剥離させることができた。
【0045】
上述したような実施例1を含め本実施の形態に係る洗浄装置100は、ブラシ部11をドレンパン1の吹出口2から挿入してドレンパン1内部を洗浄する機能を有する。このため、ドレンパン1を取り外さずにドレンパン1に付着した汚れを剥離できる。したがって、ドレンパン溝3を取り外す作業工程が不要となり、洗浄の作業時間を短縮できる。また、振動部13をブラシ部11と保持部10との間を連結する湾曲状の連結部12に設置したため、振動の減衰を抑制して高い洗浄力を維持できる。またブラシ部11のブラシ112が、連結部12の芯材の一部を被覆して振動部13と接触する位置まで設けられていて、振動部13が連結部12の最上部に固定されている。このため、ブラシ部11の芯材111及び連結部12の芯材とドレンパン1内のドレンパン溝3以外の部材との接触を防ぎ各部材の損傷を防止できる。
【0046】
実施の形態2.
本実施の形態の洗浄装置100Aは、実施の形態1で示した構成に加えて、回収装置15を備える。ここで、本実施の形態以降では、説明の都合上、保持部10、ブラシ部11、連結部12、振動部13及び持ち手部14を、振動ブラシ装置20と総称する。本実施の形態では実施の形態1との相違点を中心に説明する。
【0047】
図6は、実施の形態2に係る洗浄装置100Aの構成及び使用状態を説明する図である。洗浄装置100Aは、振動ブラシ装置20に加え、ドレンパン1の内部のドレンパン溝3の上の汚れを回収するための装置である回収装置15を備える。回収装置15は、吸引チューブ151と、吸引チューブ151の先端に吸引力を生じさせる吸引部152とを有する。なお、振動ブラシ装置20は、実施の形態1で説明したとおりの構成である。
【0048】
吸引チューブ151は、ドレンパン1内に挿入されたときにドレンパン溝3の表面に接触できるように、その先端部分が湾曲あるいは屈曲している。好ましくは、吸引チューブ151は、作業者が曲げることができ、かつ作業者が再度変形させるまで曲げられた状態を保持できる材料で構成される。吸引チューブ151は、可撓性を有する細かな節が連なる、ステンレス鋼などの金属あるいはポリイミド樹脂などの合成樹脂で構成することができる。
【0049】
吸引部152は、吸引チューブ151に接続され吸引チューブ151の先端に吸引力を生じさせる吸引ポンプを有する。本実施の形態の吸引部152はさらに、吸引した物体を溜める容器を有する。吸引ポンプは、乾燥あるいは湿潤した汚れを吸引できるものである。好ましくは、吸引ポンプは、乾電池又は100V電源で動作し、乾湿両用の小型で軽量な家庭用又は業務用の吸引力を有する。吸引部152の容器は、少なくとも1つのドレンパン溝3からの汚れを収納できる容積があり、吸引ポンプと脱着でき、また、内部に溜めた物体を廃棄するための開口を有している。好ましくは、持ち運びに便利なように、容積10L以下で軽重量な樹脂、具体的にはポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル樹脂、ABS樹脂などの材料で、吸引部152の容器が構成される。
【0050】
吸引チューブ151の一端から吸引された汚れは、吸引チューブ151の他端が接続された吸引部152の吸引ポンプを介して容器内に収容される。吸引チューブ151の一端は、ドレンパン1の吹出口2から挿入されてドレンパン溝3に接地するため、吸引チューブ151の一端の近傍は湾曲又は屈曲しているのが好ましい。あるいは、直線状の吸引チューブ151でもよい。この場合には、蓋が開けられたドレン口4に、ドレン口4の径に合う継手を用いて、吸引チューブ151を接続する。
【0051】
本実施の形態では、好ましい態様として、振動ブラシ装置20の保持部10と吸引チューブ151とを固定する固定治具16を備えている。固定治具16によって固定された吸引チューブ151及び保持部10は、作業者によって一体として操作され、吸引チューブ151とブラシ部11とが同時に吹出口2からドレンパン1の内部へと挿入される。吸引チューブ151とブラシ部11とを一緒にドレンパン1の内部に挿入することができるので、作業性を向上させることができる。なお、固定治具16を設けなくてもよい。その場合には、吸引チューブ151とブラシ部11とが別々に吹出口2からドレンパン1の内部へと挿入される。
【0052】
吸引部152の吸引ポンプのオンとオフとを切り替えるON/OFFスイッチの位置は、特に限定されないが、例えば吸引部152のいずれかの部位とすることができる。好ましくは、振動部13の発振部131のON/OFFスイッチと隣接した位置に吸引ポンプのON/OFFスイッチを設ける。このようにすることで、振動ブラシ装置20と回収装置15の両方を作業するときの操作性を高めることができる。あるいは、発振部131と吸引ポンプとで同じON/OFFスイッチを用いてもよい。このようにすることで、振動ブラシ装置20と回収装置15とを連動させることができ、作業性を高めることができる。
【0053】
このように本実施の形態によれば、実施の形態1で示した作用効果に加え、ドレンパン1を室内側装置から取り外すことなく、ドレンパン1の内部にあるドレンパン溝3の汚れを回収することもできる。このため、ドレンパン1を室内側装置から取り外す作業工程が不要となり、洗浄の作業時間を短縮できる。
【0054】
(実施例2)
次に、
図6に例示した洗浄装置100Aの実施例2を説明する。実施例2の振動ブラシ装置20を構成する要素は、実施例1と同じである。
【0055】
回収装置15の吸引チューブ151には、内径φ12mmのポリプロピレン樹脂製のフレキシブルホースを用い、固定冶具で振動ブラシ装置20の保持部10に固定した。またフレキシブルホースの一端は、U字形状にした。
【0056】
吸引部152の吸引ポンプには、乾湿両用で動作電力約200Wのものを用いた。吸引ポンプのON/OFFスイッチは、振動ブラシ装置20の振動部13のON/OFFスイッチと連動させた。吸引部152の容器には、容積5Lのポリ容器を用いた。
【0057】
次に、実施例2に係る洗浄装置100Aの動作及び作用を説明する。洗浄装置100Aの振動ブラシ装置20のブラシ部11と、回収装置15の吸引チューブ151の一端とを、天井カセット形四方向吹き出し業務用エアコンの室内側装置にある吹出口2の一つに挿入した。振動ブラシ装置20のブラシ部11と、吸引チューブ151の一端とがドレンパン溝3に接地したことを確認後、発振部131及び吸引部152の吸引ポンプのON/OFFスイッチをONにした。続けて、吹出口2が形成されたドレンパン1の一辺に沿って2分間持ち手部14を動かした。その後、他の吹出口2が形成されたドレンパン1の三辺に沿ったドレンパン溝3も同様に処理した。
【0058】
その結果、ドレンパン溝3が一体に形成されたドレンパン1を室内側装置から取り外さずに、ドレンパン溝3に付着した汚れを剥離させ、剥離させた汚れを吸引部152で回収することができた。
【0059】
上述したような実施例2を含め本実施の形態に係る洗浄装置100Aは、振動ブラシ装置20の一部をドレンパン1の吹出口2から挿入してドレンパン1の内部を洗浄する機能を有する。また、洗浄装置100Aは、回収装置15の一部をドレンパン1の吹出口2から挿入して、振動ブラシ装置20で剥離させた汚れを回収する機能を有する。このため、洗浄対象であるドレンパン1を室内側装置から取り外さずに、ドレンパン溝3に付着した汚れを剥離させることができるとともに、剥離させた汚れを回収することができる。したがって、ドレンパン1を取り外す作業工程が不要となり、洗浄の作業時間を短縮できる。
【0060】
実施の形態3.
本実施の形態の洗浄装置100Bは、実施の形態2で示した構成に加えて、給水装置17を備える。本実施の形態では実施の形態2との相違点を中心に説明する。
【0061】
図7は、実施の形態3に係る洗浄装置100Bの構成及び使用状態を説明する図である。洗浄装置100Bは、振動ブラシ装置20及び回収装置15に加え、ドレンパン1の内部に水を供給するための装置である給水装置17を備える。給水装置17は、給水チューブ171と、給水チューブ171に水を送出する給水部172とを有する。なお、振動ブラシ装置20は実施の形態1で説明したとおりの構成であり、回収装置15は実施の形態2で説明したとおりの構成である。
【0062】
給水チューブ171は、水をドレンパン1内のドレンパン溝3に搬送するための流路を内部に有する管である。好ましくは、給水チューブ171は、作業者が曲げることができ、かつ作業者が再度変形させるまで曲げられた状態を保持できる材料で構成される。給水チューブ171は、可撓性を有する細かな節が連なる、ステンレス鋼などの金属あるいはポリイミド樹脂などの合成樹脂で構成することができる。
【0063】
給水チューブ171の一端は、ドレンパン1内に挿入されたときにドレンパン溝3の表面に接触できるように、湾曲あるいは屈曲している。好ましくは、給水チューブ171の一端側の先端に、給水チューブ171の内径を変更できるノズルを備える。このようなノズルを備えることで、給水チューブ171から供給される水の圧力を異ならせることができるため、高圧水を供給したり噴霧化した水を供給したりといったことが可能になる。
【0064】
給水部172は、水を送出するポンプを有する。本実施の形態の給水部172はさらに、水を溜める容器を有する。容器に溜められた水をポンプで送出することで、給水部172から給水チューブ171に水が供給される。容器に溜められる水は特に限定されないが、メンテナンス作業時に入手しやすい水道水が好ましい。給水部172のポンプは、100V電源又は乾電池で動作する小型で軽量のものが好ましい。ポンプの水供給流量は、供給した水がドレンパン溝3から飛散しないように、0L/minより多く10L/min以下が好ましい。給水部172の容器は、少なくとも1つのドレンパン溝3の汚れを剥離もしくはドレン口4に集めることのできる水を収容できる容積があり、ポンプと脱着できる。好ましくは、持ち運びに便利なように、容積10L以下で軽重量のポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル樹脂、ABS樹脂などの合成樹脂で、給水部172の容器が構成される。
【0065】
給水チューブ171の他端は、給水部172のタンクに接続されている。給水部172のタンク内の水は、ポンプによって給水チューブ171の他端から給水チューブ171内に入り、給水チューブ171の一端からドレンパン溝3に供給される。
【0066】
本実施の形態では、好ましい態様として、振動ブラシ装置20の保持部10と給水チューブ171とを固定する固定治具16を備えている。固定治具16によって固定された給水チューブ171及び保持部10は、作業者によって一体として操作され、給水チューブ171とブラシ部11とが同時に吹出口2からドレンパン1の内部へと挿入される。給水チューブ171とブラシ部11とを一緒にドレンパン1の内部に挿入することができるので、作業性を向上させることができる。なお、固定治具16を設けなくてもよい。その場合には、給水チューブ171とブラシ部11とが別々に吹出口2からドレンパン1の内部へと挿入される。
【0067】
給水部172のポンプのオンとオフとを切り替えるON/OFFスイッチの位置は、特に限定されないが、例えば給水部172のいずれかの部位とすることができる。好ましくは、振動部13の発振部131のON/OFFスイッチと隣接した位置にポンプのON/OFFスイッチを設ける。このようにすることで、振動ブラシ装置20と給水装置17の両方を作業するときの操作性を高めることができる。あるいは、発振部131とポンプとで同じON/OFFスイッチを用いてもよい。このようにすることで、振動ブラシ装置20と給水装置17とを連動させることができ、作業性を高めることができる。
【0068】
図7に例示した洗浄装置100Bの使用状態においては、回収装置15の吸引チューブ151は、ドレンパン溝3のドレン口4の周辺に設置されている。このようにすることで、ドレンパン溝3の上を流れてドレン口4に集まった汚れ及び水を吸引することができる。このような態様のほか、回収装置15の吸引チューブ151を、振動ブラシ装置20の一部あるいは給水チューブ171に固定してもよい。
【0069】
このように本実施の形態によれば、実施の形態2で示した作用効果に加え、ドレンパン1を室内側装置から取り外すことなく、ドレンパン1の内部にあるドレンパン溝3の汚れを水を用いて剥離させることができる。また、同じくドレンパン1を取り外すことなく、剥離した汚れをドレン口4などの特定の箇所に集めることができる。また、回収装置15の吸引チューブ151の一端をドレン口4の近傍に接地させて汚れ及び水を吸引することで、ドレンパン溝3の洗浄によって生じた水及び汚れを回収することができる。このため、ドレンパン1を室内側装置から取り外す作業工程が不要となり、洗浄の作業時間を短縮できる。
【0070】
(実施例3)
次に、
図7に例示した洗浄装置100Bの実施例3を説明する。実施例3の振動ブラシ装置20を構成する要素は、実施例1と同じである。実施例3の回収装置15を構成する要素は、実施例2と同じである。
【0071】
給水装置17の給水チューブ171には、内径φ6mmのアルミチューブを用い、固定冶具で振動ブラシ装置20の保持部10に固定した。またアルミチューブの一端をU字形状とし、その先端には水噴射が可能な口径可変ノズルを設置した。
【0072】
給水部172のポンプは、乾電池を電力源とし、水流量200mL/minで水を供給する。給水部172のポンプのON/OFFスイッチは、振動ブラシ装置20の振動部13のON/OFFスイッチ及び吸引部152の吸引ポンプのON/OFFスイッチと連動させた。給水部172の容器には、容積5Lのポリ容器を用いた。供給水として水道水をポリ容器に5L入れた。
【0073】
次に、実施例3に係る洗浄装置100Bの動作及び作用を説明する。洗浄装置100Bの振動ブラシ装置20のブラシ部11と、給水装置17の給水チューブ171の一端とを、天井カセット形四方向吹き出し業務用エアコンの室内側装置にある吹出口2の一つに挿入した。また、回収装置15の吸引チューブ151の一端を、ドレン口4に近い吹出口2に挿入し、吸引チューブ151の一端をドレン口4の上に設置した。振動ブラシ装置20のブラシ部11と、給水チューブ171の一端とがドレンパン溝3に接地したこと、及び吸引チューブ151の一端がドレン口4の上に設置されたことを確認後した。続けて、発振部131及び給水部172のポンプのON/OFFスイッチをONにして、吹出口2が形成されたドレンパン1の一辺に沿って2分間持ち手部14を動かした。その後、吸引チューブ151の一端をドレン口4の上に設置した状態のまま、振動ブラシ装置20と給水装置17を用いて、他の吹出口2が形成されたドレンパン1の三辺に沿ったドレンパン溝3も同様に処理した。
【0074】
その結果、ドレンパン溝3が一体に形成されたドレンパン1を室内側装置から取り外さずに、ドレンパン溝3に付着した汚れを剥離させ、剥離させた汚れをドレン口4に集め、また集めた汚れを回収装置15で回収することができた。
【0075】
上述したような実施例3を含め本実施の形態に係る洗浄装置100Bは、振動ブラシ装置20の一部をドレンパン1の吹出口2から挿入してドレンパン1の内部を洗浄する機能を有する。また、洗浄装置100Bは、給水装置17の一部をドレンパン1の吹出口2から挿入して、水を供給する機能を有する。また、洗浄装置100Bは、回収装置15の一部をドレンパン1の吹出口2から挿入して、振動ブラシ装置20で剥離させた汚れ及び水を回収する機能を有する。このため、洗浄対象であるドレンパン1を室内側装置から取り外さずに、ドレンパン溝3に付着した汚れを剥離させ、剥離させた汚れを特定の箇所に集め、集めた汚れを回収することができる。したがって、ドレンパン1を取り外す作業工程が不要となり、洗浄の作業時間を短縮できる。
【0076】
実施の形態4.
本実施の形態の洗浄装置100Cは、実施の形態3で示した構成に加えて、観察装置18を備える。本実施の形態では実施の形態3との相違点を中心に説明する。
【0077】
図8は、実施の形態4に係る洗浄装置100Cの構成及び使用状態を説明する図である。洗浄装置100Cは、振動ブラシ装置20、回収装置15及び給水装置17に加え、作業者が室内側装置の内部を外部から観察するための装置である観察装置18を備える。観察装置18は、撮影装置であるカメラ181と、カメラ181で撮影した映像を映し出すモニタ182とを備える。なお、振動ブラシ装置20は実施の形態1で説明したとおりの構成であり、回収装置15は実施の形態2で説明したとおりの構成であり、給水装置17は実施の形態3で説明したとおりの構成である。
【0078】
本実施の形態のカメラ181は、全体として細長い形状の支持体の一端に、撮影素子が取り付けられて構成されている。カメラ181は、水に濡れても作動できるように防水機能を備えているのが好ましい。また、カメラ181は、その一端において光を照射できる機能を備えているのが好ましい。さらに、カメラ181の撮像素子を支持する支持体は、作業者が曲げることができ、かつ作業者が再度変形させるまで曲げられた状態を保持できる材料のホースで構成されるのが好ましい。撮像素子が内蔵されたカメラ181の先端はドレンパン1の吹出口2に挿入されるため、小型かつ軽量であるとよい。好ましくは、カメラ181の先端の外径は、φ10mm以下である。カメラ181の支持体の内部には、撮影素子が出力する映像信号を送る信号線が内蔵されており、この信号線は支持体の他端とともにモニタ182に接続されている。
【0079】
モニタ182は、カメラ181から出力される映像信号をリアルタイムに画像として映し出す装置である。モニタ182は、小型かつ軽量であり、また乾電池で動作できるのが好ましい。例えば、モニタ182は、2インチから4インチの液晶モニタである。
【0080】
本実施の形態では、好ましい態様として、振動ブラシ装置20の保持部10と給水チューブ171とカメラ181とを固定する固定治具16を備えている。固定治具16によって固定された給水チューブ171、保持部10及びカメラ181は、作業者によって一体として操作され、給水チューブ171とブラシ部11とカメラ181とが同時に吹出口2からドレンパン1の内部へと挿入される。給水チューブ171とブラシ部11とカメラ181とを一緒にドレンパン1の内部に挿入することができるので、作業性を向上させることができる。なお、固定治具16を設けなくてもよい。その場合には、給水チューブ171とブラシ部11とが別々に吹出口2からドレンパン1の内部へと挿入される。あるいは、カメラ181を、固定治具16を用いて、振動ブラシ装置20の保持部10、回収装置15の吸引チューブ151、給水装置17の給水チューブ171のいずれか一つと固定してもよい。
【0081】
観察装置18の動作のオンとオフとを切り替えるON/OFFスイッチの位置は、特に限定されないが、例えばモニタ182のいずれかの部位とすることができる。好ましくは、振動部13の発振部131のON/OFFスイッチと隣接した位置に観察装置18のON/OFFスイッチを設ける。このようにすることで、振動ブラシ装置20と観察装置18の両方を作業するときの操作性を高めることができる。あるいは、発振部131と観察装置18とで同じON/OFFスイッチを用いてもよい。このようにすることで、振動ブラシ装置20と観察装置18とを連動させることができ、作業性を高めることができる。また、観察装置18のON/OFFスイッチを、回収装置15又は給水装置17のON/OFFスイッチの近傍に設ける、あるいはこれらのON/OFFスイッチと同じものを用いることもできる。
【0082】
このように本実施の形態によれば、実施の形態3で示した作用効果に加え、ドレンパン1を室内側装置から取り外すことなく、ドレンパン1の内部にあるドレンパン溝3の汚れを外部から観察することができる。作業者は汚れの残存具合を観察しながらドレンパン1を洗浄することができるため、洗浄作業の無駄や不足を抑制できる。
【0083】
(実施例4)
次に、
図8に例示した洗浄装置100Cの実施例4を説明する。実施例4の振動ブラシ装置20を構成する要素は、実施例1と同じである。実施例4の回収装置15を構成する要素は、実施例2と同じである。実施例4の給水装置17を構成する要素は、実施例3と同じである。
【0084】
観察装置18のカメラ181には、カメラ口径φ8mmの市販品を用いた。モニタ182は、市販品の3.5インチの液晶モニタを用いた。カメラ181は、固定治具16を用いて振動ブラシ装置20の保持部10及び給水装置17の給水チューブ171に固定した。カメラ181の撮像装置を支持する支持体の先端は、U字形状とした。観察装置18のON/OFFスイッチは、振動部13のON/OFFスイッチとは独立して操作できるスイッチとした。
【0085】
次に、実施例4に係る洗浄装置100Cの動作及び作用を説明する。洗浄装置100Cの振動ブラシ装置20のブラシ部11と、給水装置17の給水チューブ171の一端と、カメラ181とを、天井カセット形四方向吹き出し業務用エアコンの室内側装置にある吹出口2の一つに挿入した。また、回収装置15の吸引チューブ151の一端を、ドレン口4に近い吹出口2に挿入し、吸引チューブ151の一端をドレン口4の上に設置した。
【0086】
そして、観察装置18のON/OFFスイッチをONにして、ドレンパン溝3の一辺にある汚れの状況を観察した。その後、振動ブラシ装置20のブラシ部11と、給水チューブ171の一端とがドレンパン溝3に接地したこと、及び吸引チューブ151の一端がドレン口4の上に設置されたことを確認後した。続けて、発振部131と給水部172のポンプとを連動させるON/OFFスイッチをONにして、吹出口2が形成されたドレンパン1の一辺に沿って2分間持ち手部14を動かした。この際、観察装置18で観察された特に汚れが多い箇所に対し、ブラシ部11を当てるようにした。その後、吸引チューブ151の一端をドレン口4の上に設置した状態のまま、振動ブラシ装置20と給水装置17を用いて、他の吹出口2が形成されたドレンパン1の三辺に沿ったドレンパン溝3も同様に処理した。
【0087】
その結果、ドレンパン溝3が一体に形成されたドレンパン1を室内側装置から取り外さずに、ドレンパン溝3に付着した汚れを剥離させ、剥離させた汚れをドレン口4に集め、また集めた汚れを回収装置15で回収することができた。さらに、ドレンパン1を室内側装置から取り外さずに、洗浄後のドレンパン溝3の状態を、観察装置18を用いて確認することができた。
【0088】
上述したような実施例4を含め本実施の形態に係る洗浄装置100Cは、振動ブラシ装置20の一部をドレンパン1の吹出口2から挿入してドレンパン1の内部を洗浄する機能を有する。また、洗浄装置100Cは、給水装置17の一部をドレンパン1の吹出口2から挿入して、水を供給する機能を有する。また、洗浄装置100Cは、回収装置15の一部をドレンパン1の吹出口2から挿入して、振動ブラシ装置20で剥離させた汚れ及び水を回収する機能を有する。また、洗浄装置100Cは、観察装置18の一部をドレンパン1の吹出口2から挿入して、室内側装置の内側にあるドレンパン溝3の状態を外側から観察する機能を有する。このため、洗浄対象であるドレンパン1を室内側装置から取り外さずに、ドレンパン溝3に付着した汚れを外部から観察することができる。そして、観察した結果に基づいて、ドレンパン溝3に付着した汚れを剥離させ、剥離させた汚れを特定の箇所に集め、集めた汚れを回収することができる。したがって、ドレンパン1を取り外す作業工程が不要となり、洗浄の作業時間を短縮できる。
【0089】
本発明は、以上のように説明し且つ記述した特定の詳細、及び代表的な実施の形態に限定されるものではない。当業者によって容易に導き出すことのできる変形例、及び効果も本発明に含まれる。したがって、特許請求の範囲、及びその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神又は範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0090】
1 ドレンパン、2 吹出口、3 ドレンパン溝、4 ドレン口、10 保持部、11 ブラシ部、11a 先端部、11b 基端部、12 連結部、13 振動部、14 持ち手部、15 回収装置、16 固定治具、17 給水装置、18 観察装置、20 振動ブラシ装置、100 洗浄装置、100A 洗浄装置、100B 洗浄装置、100C 洗浄装置、111 芯材、112 ブラシ、131 発振部、132 電源部、133 電気配線、151 吸引チューブ、152 吸引部、171 給水チューブ、172 給水部、181 カメラ、182 モニタ。