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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-02
(45)【発行日】2023-02-10
(54)【発明の名称】金属印刷インキ
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/105 20140101AFI20230203BHJP
   B41M 1/28 20060101ALI20230203BHJP
【FI】
C09D11/105
B41M1/28
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018109464
(22)【出願日】2018-06-07
(65)【公開番号】P2019210414
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2021-04-22
(73)【特許権者】
【識別番号】310000244
【氏名又は名称】DICグラフィックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(72)【発明者】
【氏名】川上 将勝
(72)【発明者】
【氏名】藤原 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】小島 隆
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-269382(JP,A)
【文献】特開2015-083637(JP,A)
【文献】特開2018-058956(JP,A)
【文献】特開2002-226756(JP,A)
【文献】特開平02-235921(JP,A)
【文献】特開昭57-014665(JP,A)
【文献】特開2015-83637(JP,A)
【文献】特開2011-26404(JP,A)
【文献】特開平5-163453(JP,A)
【文献】特開平2-24315(JP,A)
【文献】特開平3-259964(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00- 13/00
B41M 1/00- 3/18
B41M 7/00- 9/04
B05D 1/00- 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料と、重量平均分子量が40000以上150000以下であり、数平均分子量が4000以上7000以下であり、分子量分布が9以上32以下であるアルキッド樹脂を含む樹脂と、溶剤とを含み、前記顔料の含有量が10質量%以上60質量%以下であり、前記樹脂の含有量が5質量%以上70質量%以下であり、前記樹脂に占める前記アルキッド樹脂の含有量が50質量%以上であり、前記溶剤の含有量が5質量%以上60質量%以下であることを特徴とする金属印刷インキ。
【請求項2】
前記アルキッド樹脂が、多塩基酸と多価アルコールとの縮合物を骨格とし、前記多価アルコールが備える水酸基の平均官能基数が3.5以上4.5以下であることを特徴とする請求項1に記載の金属印刷インキ。
【請求項3】
前記アルキッド樹脂が、多塩基酸と多価アルコールとの縮合物を骨格とし、脂肪酸で変性した樹脂であって、前記脂肪酸の95モル%以上が、炭素原子数が8以上18以下の飽和脂肪酸であることを特徴とする請求項1または2に記載の金属印刷インキ。
【請求項4】
前記アルキッド樹脂が、多塩基酸と多価アルコールとの縮合物を骨格とし、脂肪酸で変性した樹脂であって、前記脂肪酸のうち、カプリン酸の割合が40質量%以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の金属印刷インキ。
【請求項5】
前記アルキッド樹脂が多塩基酸と多価アルコールとの縮合物を骨格とし、脂肪酸で変性した樹脂であって、前記脂肪酸のうち、ラウリン酸の割合が8質量%以上25質量%以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の金属印刷インキ。
【請求項6】
前記アルキッド樹脂の油長が30以上70以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の金属印刷インキ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属基材、特に金属缶外面の印刷に好適な金属印刷インキに関する。
【背景技術】
【0002】
金属缶、金属容器は、食品や飲料等を充填する包装容器として広く一般に利用されている。この金属缶の外面側には、内容物やそのイメージ、あるいはその出所をデザインで表示しまた商品価値を高める目的で、各種の印刷が施されている。
【0003】
金属缶には、大別して、缶胴部に側面継ぎ目(サイドシーム)のある3ピース缶と、缶胴部に継ぎ目のない2ピース缶とが存在する。3ピース缶では成形前の素材(ブランク)に印刷を行うことができるのに対し、2ピース缶では絞り成形あるいは絞り・しごき成形時に素材の塑性流動による変形が生じるため、成形後の缶体の胴部に印刷を行う方式が主流である。成形後の缶体胴部に印刷する方法としては、水なし平版や樹脂凸版等の刷版からブランケットにインキを介して缶体胴部にインキを転写する方法が採られている(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-129966号公報
【文献】特開2002-103775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このうち、刷版として凸版を用いるいわゆる凸版ドライオフセット方式では、刷版からブランケットにインキを転写する際に画線や網点が太りやすい。画線や網点が太ると文字や画像に潰れが生じたり、ブランケットに各色のインキを転写していく際に混色が生じたりするおそれがある。
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであって、金属基材、特に金属缶外面の印刷に好適に用いることができ、凸版ドライオフセット方式で印刷する場合であっても画線や網点の太りが抑制される金属印刷インキを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、顔料と、重量平均分子量が10000以上150000以下であり、数平均分子量が2000以上7000以下であり、分子量分布が2以上100以下であるアルキッド樹脂を含む樹脂と、溶剤と、を含むことを特徴とする金属印刷インキに関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の金属印刷インキによれば、凸版ドライオフセット方式で印刷する場合であっても画線や網点の太りを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の金属印刷インキは、顔料と、重量平均分子量が10000以上150000以下であり、数平均分子量が2000以上7000以下であり、分子量分布が2以上100以下であるアルキッド樹脂を含む樹脂と、溶剤とを含む。以下、本発明の金属印刷インキの各成分について詳細に説明する。
【0009】
本発明の金属印刷インキに使用される樹脂は、重量平均分子量(Mw)が10000以上150000以下であり、数平均分子量(Mn)が2000以上7000以下であり、分子量分布(Mw/Mn)が2以上100以下であるアルキッド樹脂を含む。本明細書においてアルキッド樹脂とは、多塩基酸と多価アルコールとの縮合物を骨格とし、脂肪酸或いはそれらの水素添加物、油あるいはそれらの水素化物、1価の酸、1価のアルコール等で変性した樹脂である。エポキシ樹脂やアクリル樹脂で変性してもよく、変性に用いる成分は通常アルキッド樹脂の合成に使用できる原料が使用でき特に制限はない。
【0010】
アルキッド樹脂の合成に用いられる多塩基酸としては、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、テトラクロロ無水フタル酸、テトラブロモ無水フタル酸等の芳香族2塩基酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、無水ヘット酸等の脂環族2塩基酸、マロン酸、エチルマロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、ジメチルコハク酸、無水コハク酸、アルケニル無水コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水ハイミック酸等の脂肪族2塩基酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水メチルシクロヘキシルヘキセントリカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸等の多塩基酸等が挙げられ、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0011】
多価アルコールとしては、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、オクタンジオール、ブチルエチルプロパンジオール、ビスフェノールA、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールF、グリセリン、ジグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、トリスヒドロキシメチルアミノメタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等が挙げられ1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0012】
油、脂肪酸も特に制限はなく、通常アルキッド樹脂の合成に使用される油、脂肪酸が使用可能である。アマニ油、キリ油、サフラワー油、大豆油、トール油、ヌカ油、パーム油、ヒマシ油、脱水ヒマシ油、ヒマワリ油、ヤシ油(ココナッツ油)、これら油の脂肪酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、マーガリン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸、リシノール酸、エレオステアリン酸等が挙げられ1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0013】
1価の酸としては、特に限定されないが、安息香酸、p-ターシャリーブチル安息香酸、ロジン酸、水素添加ロジン酸等が挙げられ1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
1価のアルコールとしてはオクチルアルコール、デカノール、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、グリコールエステル類、フェニルグリコール等のグリコールエーテル類、ロジンアルコール、水添ロジンアルコール等が挙げられ1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0014】
アルキッド樹脂を、1価あるいは2価以上のエポキシ基を有する化合物でエポキシエステルを形成し変性することもできる。アクリル酸エステル、スチレン等のビニル化合物を、アルキッド樹脂の不飽和二重結合にラジカル重合開始剤を用いてグラフト重合させてもよい。
【0015】
本発明の金属印刷インキに用いられるアルキッド樹脂は、重量平均分子量(Mw)が10000以上150000以下であり、数平均分子量(Mn)が2000以上7000以下であり、分子量分布(Mw/Mn)が2以上100以下である。本明細書において重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)は、下記条件のゲルパーミュレーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される値である。このようなアルキッド樹脂を用いることにより、画線や網点の太りを抑制することができる。
【0016】
測定装置 ;東ソー株式会社製 HLC-8320GPC
カラム ;東ソー株式会社製 TSKgel 4000HXL、TSKgel 3000HXL、TSKgel 2000HXL、TSKgel 1000HXL
検出器 ;RI(示差屈折計)
データ処理;東ソー株式会社製 マルチステーションGPC-8020modelII
測定条件 ;カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン
流速 0.35ml/分
標準 ;単分散ポリスチレン
試料 ;樹脂固形分換算で0.2質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(100μl)
【0017】
本発明の金属印刷インキに用いられるアルキッド樹脂の重量平均分子量(Mw)は20000以上であることがより好ましく、100000以下であることがより好ましい。数平均分子量(Mn)は3000以上であることがより好ましく、また5000以下であることがより好ましい。分子量分布(Mw/Mn)は5以上であることがより好ましく、また50以下であることがより好ましい。これにより、より確実に画線や網点の太りを抑制することができる。
【0018】
また、ミスティングの抑制、高速印刷適性により優れた金属印刷インキとしたい場合には、重量平均分子量(Mw)が40000以上150000以下、数平均分子量(Mn)が4000以上7000以下、分子量分布(Mw/Mn)が9以上100以下のアルキッド樹脂を用いることが好ましい。機上安定性により優れた金属印刷インキとしたい場合には、重量平均分子量(Mw)が10000以上90000以下、より好ましくは100000以上53000以下、数平均分子量(Mn)が2000以上5000以下、分子量分布(Mw/Mn)が2以上12以下のアルキッド樹脂を用いることが好ましい。必要な適性により適宜調整すればよい。
【0019】
重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)は、例えば、反応に用いる多塩基酸と多価アルコールのモル比や反応時間、触媒、反応温度等により調整することができる。
分子量分布(Mw/Mn)は、例えば、アルキッド樹脂の骨格の合成に用いる多塩基酸または多価アルコールとして3官能以上の多塩基酸または多価アルコールを用いることで所望の範囲に調整することができる。あるいは、アルキッド樹脂の骨格を合成する際の多塩基酸と多価アルコールとの反応方法によっても分子量分布(Mw/Mn)を調整することができ、例えば2官能モノマーと3官能以上のモノマーとを原料とする縮合物をアルキッド樹脂の骨格とする場合、2官能モノマーと3官能モノマーとを同時に反応させる場合と2官能モノマーを反応させた後に3官能モノマーを反応させる場合とでは分子量分布が異なる。このような手法を用いて分子量分布を調整することもできる。多塩基酸と多価アルコールの縮合物に改質剤を加えて加熱溶融するなどしてもよい。
【0020】
本発明に好ましく用いられるアルキッド樹脂の一態様として、多塩基酸と多価アルコールとの縮合物を骨格とし、脂肪酸或いはそれらの水素添加物、油あるいはそれらの水素化物、1価の酸、1価のアルコール等で変性した樹脂であって、多価アルコールが備える水酸基の平均官能基数が3.5以上4.5以下であるアルキッド樹脂が挙げられる。多塩基酸と、このような多価アルコールとの反応生成物を骨格とすることで、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分子量分布(Mw/Mn)が所望の範囲内にあるアルキッド樹脂を効率よく得ることができる。このような多価アルコールとしては、例えばネオペンチルグリコールや1,6-ヘキサンジオールのような2官能のアルコールと、ジペンタエリスリトールのような6官能のアルコールとを、水酸基の平均官能基数が3.5以上4.5以下となるよう調整した組成物を用いてもよいし、トリメチロールエタンやトリメチロールプロパンのような3官能のアルコールとジペンタエリスリトールのような6官能のアルコールとを、水酸基の平均官能基数が3.5以上4.5以下となるよう調整した組成物を用いてもよい。ペンタエリスリトールのような4官能のアルコールのみを用いてもよい。
【0021】
本発明に好ましく用いられるアルキッド樹脂の一態様として、多塩基酸と多価アルコールとの縮合物を骨格とし、脂肪酸で変性した樹脂であって、変性に用いる脂肪酸が、炭素原子数が8以上18以下の脂肪酸を含むことが好ましい。また、変性に用いる脂肪酸が不飽和結合を含まないものであることが好ましい。さらに、変性に用いる脂肪酸の95モル%以上が、炭素原子数が8以上18以下の飽和脂肪酸であることが好ましい。このようなアルキッド樹脂を用いることにより、ミスティングが抑制され、機上安定性に優れた金属印刷インキとすることができる。
【0022】
本発明に好ましく用いられるアルキッド樹脂の一態様として、多塩基酸と多価アルコールとの縮合物を骨格とし、脂肪酸で変性した樹脂であって、変性に用いる脂肪酸のうち、カプリン酸の割合が40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましい。また、カプリン酸の割合は変性に用いる脂肪酸のうち100質量%であってもよい。80質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましい。このようなアルキッド樹脂を用いることにより、ミスティングが抑制され、機上安定性、高速印刷適性に優れた金属印刷インキとすることができる。
【0023】
本発明に好ましく用いられるアルキッド樹脂の一態様として、多塩基酸と多価アルコールとの縮合物を骨格とし、脂肪酸で変性した樹脂であって、変性に用いる脂肪酸のうち、ラウリン酸の割合が8質量%以上であることが好ましく、13質量%以上であることがより好ましい。また、ラウリン酸の割合は変性に用いる脂肪酸のうち30質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましい。このようなアルキッド樹脂を用いることにより、ミスティングが抑制され、機上安定性、高速印刷適性に優れた金属印刷インキとすることができる。
【0024】
本発明に好ましく用いられるアルキッド樹脂の一態様として、多塩基酸と多価アルコールとの縮合物を骨格とし、脂肪酸で変性した樹脂であって、油長は30以上70以下であることが好ましい。なお、本明細書においてアルキッド樹脂の油長とは、脂肪酸がグリセリンと反応してトリグリセライドを形成したと考えたときに、そのトリグリセライドがアルキッド樹脂中にしめる質量百分率をいう。
【0025】
本発明に用いられるアルキッド樹脂の酸価は0.1mgKOH/g以上25mgKOH/g以下であることが好ましい。水酸基価は70mgKOH/g以上200mgKOH/g以下に調整されていることが好ましい。
【0026】
このようなアルキッド樹脂に加えて、通常金属印刷インキに用いられる他の樹脂を併用することも可能であり、上述のアルキッド樹脂以外のアルキッド樹脂、石油樹脂、エポキシ樹脂、ケトン樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、アミノ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、オイルフリーポリエステル樹脂、ロジンフェノール樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0027】
本発明の金属印刷インキにおける樹脂の含有量は、金属印刷に適したインキタックバリューに調整できればよく特に制限はないが、金属印刷インキの全量の5質量%以上70質量%以下が好ましく、30質量%以上70質量%以下がより好ましい。
また、上述のアルキッド樹脂に加えて他の樹脂を併用する場合には、金属印刷インキに添加される樹脂に占める上述のアルキッド樹脂の含有量が50質量%以上であることが好ましい。
【0028】
本発明に用いられる溶剤としては通常金属印刷インキに用いられている公知のものを使用することができる。例えば沸点範囲が230℃~400℃程度の脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素やアルキルベンゼンなどの芳香族炭化水素、高級アルコールが挙げられ、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明の金属印刷インキにおける溶剤の含有量は、金属印刷に適したインキタックバリューに調整できれはよく特に制限はないが、一例として金属印刷インキの全量の5質量%以上60質量%以下である。
【0029】
本発明の金属印刷インキに用いられる無機顔料、有機顔料としては、内容物にもよるが、耐熱性、耐光性、耐レトルト性を備えるものであれば、従来金属印刷インキに使用されているようなものを特に制限なく使用することができ、無機顔料としては酸化チタンやシリカ、カーボンブラック等が挙げられる。有機顔料としてはフタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、キノフタロン系顔料等が挙げられる。
これらの顔料の含有量は種類や目的により適宜調整されるが、金属印刷インキの全量の10質量%以上60質量%以下とすることが好ましい。
【0030】
本発明の金属印刷インキには、必要に応じて顔料分散剤、酸触媒、ワックス、補助溶剤等を用いることができる。補助溶剤としては、印刷適性、オーバープリントワニスの塗装性に応じて、任意の溶剤を1種または2種以上を組み合わせて用いることができ、グリコール系、グリコールエーテル系、グリコールエステル系、高級アルコール系溶剤等が挙げられる。
【0031】
本発明の金属印刷インキは、ロールミルを用いて、常法により調整することができる。
【0032】
本発明の金属印刷インキにより印刷層を形成する方法としては特に限定されない。本発明の金属印刷インキを用いれば、樹脂凸版を使用したドライオフセット方式で印刷した場合であっても画線や網点の太りを抑制することができるがこれに限定されず、水無し平版を使用したドライオフセット方式、通常の水を使用した平版オフセット方式等によっても印刷することができる。インキの膜厚は任意であるが、例えば0.3μm以上3μm以下の範囲で調整すればよい。
【0033】
本発明の金属印刷インキを用いて形成される印刷層は、下地金属基材の全面に形成されてもよいし、一部のみに形成されていてもよい。本発明の金属印刷インキが印刷されない領域は、本発明の金属印刷インキ以外の金属印刷インキによって印刷層が形成されていてもよいし、下地金属基材や下地金属基材と印刷層との間に塗布される他の塗料により形成された層が露出していてもよい。
【0034】
金属基材の印刷に使用される下地金属基材としては、金属を円筒形の缶型に成型した2ピース缶や、未塗装あるいは塗装された成型前の金属板が用いられ特に制限はない。下地金属は、アルミニウム、鉄等が例示でき、化成処理、メッキ処理、サイズ塗料やホワイトコーティング等が塗装されていても、PETフィルム等がラミネート処理されていても構わない。
【0035】
本発明の金属印刷インキは、金属印刷インキによる印刷層上にオーバープリント用ワニスをウェットオンウェット方式で塗装した後、180℃~280℃で5秒~90秒程度焼き付けて加熱硬化させる。オーバープリント用ワニスは、通常金属印刷に用いられるような、加熱によって硬化する任意の水性型または溶剤型のオーバープリント用ワニスが使用でき特に制限はない。オーバープリント用ワニスの塗装は例えばコーター方式で行うことができる。
【実施例
【0036】
以下、実施例と比較例により本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。配合組成その他の数値は特記しない限り質量基準である。
【0037】
(アルキッド樹脂の合成)
炭素原子数が8以上18以下の飽和脂肪酸の組成物、イソフタル酸、平均官能基数を4官能に調整した多価アルコールの組成物を用い、定法にてアルキッド樹脂1~11を合成した。合成した樹脂の油長、酸価、水酸基価、重量平均分子量Mw)、数平均分子量(Mn)、分子量分布(Mw/Mn)を表1、2にまとめた。
【0038】
なお表1、2における油長は計算値である。
酸価については試料5.0g(固形分換算)を精秤し、中性溶剤30mLを加えて溶解させ、0.1mol水酸化カリウム溶液(メタノール性)を用いて滴定した。指示薬にはフェノールフタレインを用いた。測定結果は、試料1gを中和するために要した水酸化カリウムの量に換算し、単位はmgKOH/gとした。
【0039】
水酸基価については試料4.0g(固形分換算)を精秤し、無水酢酸/ピリジン(容量比1/19)からなるアセチル化剤25mLを加え、密閉して100℃で1時間加熱した。アセチル化後、イオン交換水10mLとテトラヒドロフラン100mLを加え、0.5mol水酸化カリウム溶液(アルコール性)を用いて滴定した。指示薬にはフェノールフタレインを用いた。測定結果は、試料1gをアセチル化させたときに生じる酢酸を中和するために要した水酸化カリウムの量に換算し、単位はmgKOH/gとした。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
(金属印刷インキの調整)
顔料、アルキッド樹脂、溶剤、助剤を用い、表3、4に示す配合でタックバリューが5.5になるよう調整し、実施例、比較例の金属印刷インキを得た。なお、金属印刷インキの調整に用いた顔料は、フタロシアニン系顔料(DIC株式会社製「FASTGEN Blue FA5375」)、溶剤はアルキルベンゼン(日本石油株式会社製「アルケンL」)である。
【0043】
(評価)
実施例1~9、比較例1、比較例2の金属印刷インキを次のようにして評価し、結果を表3、4にまとめた。
【0044】
(印刷適性)
25℃±2℃に管理された部屋で、JIS K5701-1の4.1に記載のスプレッドメーターによる方法で60秒後の広がり直径にあたるD値(mm)を測定した。D値が大きくなるにつれて画線や網点の太りが大きくなり、またD値が小さすぎると着肉性が低下するため、31以上40以下を合格とした。
【0045】
(ミスティング)
調整した金属印刷インキ2.64ccをRIテスター(株式会社明製作所製)にとり、55℃±2℃の環境下、1600rpmの回転速度で5分間回転させた。RIテスターから5cmの位置に、RIテスターの回転軸と平行になるように予め設置しておいた10cm四方の板に、5分間で付着した金属印刷インキの量(mg)を計測した。実際の印刷条件よりも過酷な環境下で測定しているため、実施例、比較例のインキいずれも十分実用に耐え得るが、100mg以下であることが好ましく、70mg以下であることがより好ましい。
【0046】
(機上安定性)
RIテスターを用いて4分割ロール上に0.1ccの金属印刷インキを引き延ばした後、インキをブランケットに転写させた。その後インキの補充は行わずに25±2℃で一定時間ごとに一定の角度でブランケットを回転させてアルミニウム板(肉厚50~100μmの2ピース缶を開いたもの)に印刷を行い、インキが転移しなくなるまでの時間を調べ4段階で評価した。
◎:20分以降もインキが転移する
〇:15分以上20分未満でインキが転移しなくなる
△:10分以上15分未満でインキが転移しなくなる
×:10分未満でインキが転移しなくなる
【0047】
(高速印刷適性)
金属印刷インキ組成物を高速印刷適性試験機((株)エスエムテー製PM901PT)を使用してウェットでのインキ被膜の厚さが2μmとなるように均一に試験用ゴムロールに写し、次いでアルミニウム板(肉厚50~100μmの2ピース缶を開いたもの)に9m/sの印刷速度で転写した。印刷された2ピース缶について、インキの転写性およびインキ被膜の表面平滑性が良好であるものを◎、インキの転移量が少なく、インキ被膜の表面平滑性が著しく劣るなど実用域にないものを×とし、4段階で相対評価した。
【0048】
【表3】
【0049】
【表4】
【0050】
表3、4から明らかなように、本発明の金属印刷インキは金属印刷インキとして優れた適性を示した。