(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-02
(45)【発行日】2023-02-10
(54)【発明の名称】特装車の配線構造
(51)【国際特許分類】
F02D 29/02 20060101AFI20230203BHJP
F02D 29/04 20060101ALI20230203BHJP
F02D 29/00 20060101ALI20230203BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20230203BHJP
【FI】
F02D29/02 J
F02D29/04 E
F02D29/00 B
B60R16/02 621J
(21)【出願番号】P 2018122468
(22)【出願日】2018-06-27
【審査請求日】2021-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000163095
【氏名又は名称】極東開発工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】秋山 優二
(72)【発明者】
【氏名】尾原 歩希
【審査官】池田 匡利
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-075564(JP,A)
【文献】特開2002-054471(JP,A)
【文献】特開平11-337564(JP,A)
【文献】特開平09-098635(JP,A)
【文献】特開2006-160132(JP,A)
【文献】特開2010-229855(JP,A)
【文献】特開2007-234556(JP,A)
【文献】特開2007-253742(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 29/02
F02D 29/04
F02D 29/00
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用駆動源を備えるシャシに、前記走行用駆動源の駆動力を受けて作動する作業装置及び前記走行用駆動源の駆動を制御するコントローラを搭載した特装車において、
前記走行用駆動源から延びる駆動源側配線と、該駆動源側配線の延出端に備える第1コネクタに接続される第2コネクタを一端に備え、かつ、他端に前記コントローラに備える第4コネクタに接続される第3コネクタを備えるコントローラ側配線とを備え、
前記コントローラには、シャシメーカ毎に異なる複数の前記走行用駆動源の仕様に関する情報が記憶されており、前記第4コネクタは、前記複数の情報にそれぞれアクセスできる複数の被選択回
路を備え、前記第3コネクタは、前記第4コネクタとの接続により前記複数の被選択回路のうちの一つの被選択回路に電気的に接続する選択回路を備え、
前記各被選択回路は、シャシメーカ毎に異なる前記走行用駆動源の仕様を設定する回路と、前記走行用駆動源の駆動力により前記作業装置を作動させて作業を行う時の該作業装置の出力値を設定する作業回路とを備え、前記第3コネクタを前記第4コネクタに接続することにより前記特装車に搭載される
前記走行用駆動源の
仕様を設定する回路及び
前記作業装置の
出力値を設定する作業回路を接続することを特徴とする特装車の配線構造。
【請求項2】
前記第1コネクタが、シャシメーカ毎に形状が異なっており、前記第2コネクタの形状を、シャシメーカ毎に異なる前記第1コネクタの形状に応じた形状にしたことを特徴とする請求項1に記載の特装車の配線構造。
【請求項3】
前記走行用駆動源がエンジンであり、前記走行用駆動源の仕様を設定する回路が、エンジンのアイドリング回転数を設定するアイドリング回路であることを特徴とする請求項1又は2に記載の特装車の配線構造。
【請求項4】
前記走行用駆動源がバッテリにより駆動される電動モータである請求項1又は2に記載の特装車の配線構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行用駆動源を備えるシャシに、前記走行用駆動源の駆動力を受けて作動する作業装置及び前記走行用駆動源の駆動を制御するコントローラを搭載した特装車の配線構造に関する。
【背景技術】
【0002】
走行用駆動源(例えばエンジン)が搭載されたシャシをシャシメーカから調達し、そのシャシに走行用駆動源の駆動力を受けて作動する作業装置(例えばコンプレッサ)及び走行用駆動源の駆動を制御するコントローラを架装メーカで取り付けて依頼者(顧客)へ出荷することになる。ところで、前記シャシメーカは、多数存在し、シャシメーカ毎にエンジンの仕様に関する情報、例えばエンジンの電圧値に対するアイドリング回転数や最小エンジン回転数又は最大エンジン回転数が異なっている場合が多い。そのため、シャシメーカ毎に異なるエンジンの仕様に関する情報をコントローラの記憶部に記憶し、記憶部に記憶されている多数の情報の中から搭載しているエンジンの仕様に関する情報を、コントローラ内に設けているディップスイッチを選択操作することによって選択し、その選択された情報により走行用駆動源の駆動制御を行う(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、コントローラをエンジン側に接続し、前述のようにコントローラ内に設けているディップスイッチを選択操作することによって、コントローラの記憶部に記憶されている多数の情報の中から、エンジンの仕様に関する情報を選択し、その選択された情報によりエンジンを駆動制御する。しかしながら、ディップスイッチの選択操作を間違えてしまう恐れがあり、改善の余地があった。
【0005】
そこで本発明は、搭載している走行用駆動源の仕様に関する情報をコントローラに間違えることなく記憶させることができる特装車の配線構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の特装車の配線構造は、走行用駆動源を備えるシャシに、前記走行用駆動源の駆動力を受けて作動する作業装置及び前記走行用駆動源の駆動を制御するコントローラを搭載した特装車において、前記走行用駆動源から延びる駆動源側配線と、該駆動源側配線の延出端に備える第1コネクタに接続される第2コネクタを一端に備え、かつ、他端に前記コントローラに備える第4コネクタに接続される第3コネクタを備えるコントローラ側配線とを備え、前記コントローラには、シャシメーカ毎に異なる複数の前記走行用駆動源の仕様に関する情報が記憶されており、前記第4コネクタは、前記複数の情報にそれぞれアクセスできる複数の被選択回路を備え、前記第3コネクタは、前記第4コネクタとの接続により前記複数の被選択回路のうちの一つの被選択回路に電気的に接続する選択回路を備えていることを特徴としている。
【0007】
上記構成によれば、第4コネクタと第3コネクタとを接続するだけで、複数の被選択回路の中から一つの被選択回路に電気的に接続されるので、シャシに搭載されている走行用駆動源の仕様に関する情報を間違えることなく選択することができる。
【0008】
また、本発明の特装車の配線構造は、前記第1コネクタが、シャシメーカ毎に形状が異なっており、前記第2コネクタの形状を、シャシメーカ毎に異なる前記第1コネクタの形状に応じた形状にしてもよい。
【0009】
上記のように、第2コネクタの形状を、シャシメーカ毎に異なる前記第1コネクタの形状に応じた形状にすることによって、第2コネクタの形状を見るだけでシャシメーカ毎のコントローラ側配線を見分けることができる。
【0010】
また、本発明の特装車の配線構造は、前記走行用駆動源がエンジンであり、前記各被選択回路は、シャシメーカ毎に異なるエンジンのアイドリング回転数を設定するアイドリング回路と、前記エンジンの駆動力により前記作業装置を作動させて作業を行う時の該作業装置の出力値を設定する作業回路とを備え、前記第3コネクタを前記第4コネクタに接続することにより前記車両に搭載されるエンジンのアイドリング回路及び作業装置の作業回路を接続してもよい。
【0011】
上記構成によれば、第3コネクタを前記第4コネクタに接続することにより特装車に搭載されるエンジンのアイドリング回路及び作業装置の作業回路を接続して、特装車に搭載されるエンジンのアイドリング回転数及び作業装置の出力値を一挙に設定することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、第4コネクタと第3コネクタとを接続するだけで、複数の被選択回路の中から一つの被選択回路に電気的に接続されるので、シャシに搭載している走行用駆動源の仕様に関する情報をコントローラに間違えることなく記憶させることができる車両の配線構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】(a)~(d)は4種類の第3コネクタと1種類の第4コネクタの内部の構成を示す図である。
【
図3】(a)~(d)は
図2(a)~(d)で示したそれぞれの第3コネクタの幅方向に併設されている別のコネクタ部分を示す内部の構成を示し、これら第3コネクタの別のコネクタ部分に接続可能な
図2(a)~(d)で示したそれぞれの第4コネクタの幅方向に併設されている別のコネクタ部分を示す内部の構成を示す図である。
【
図4】粉粒体運搬車に取り付けられるメータパネルの正面図である。
【
図5】同メータパネルのメータ画面を示す正面図である。
【
図6】同メータパネルの設定画面を示す正面図である。
【
図7】作業装置の出力の下限値及び上限値を設定する過程を示すフローチャートである。
【
図8】作業装置の出力の下限値及び上限値を設定する時に使用するスイッチとエンジンとコンプレッサとの関係を示すブロック図である。
【
図9】別の形態の第3コネクタと第4コネクタの内部の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態に係る特装車の配線構造について、特装車の一例である粉粒体運搬車を例に挙げて説明する。図示していないが、粉粒体運搬車は、走行用駆動源としてのエンジンが搭載されたシャシをシャシメーカから調達し、そのシャシにエンジンの駆動力を受けて作動する作業装置及びコントローラを架装メーカで取り付けて依頼者(顧客)へ出荷する。なお、シャシメーカ毎にエンジンの仕様(例えば後述のエンジンの電圧値(駆動値)に対するアイドリング回転数や最小エンジン回転数又は最大エンジン回転数)が異なっている。前記シャシメーカ毎に設定されているエンジンの仕様が、特装車に搭載されるコントローラに備えている記憶手段に記憶されている。なお、シャシメーカは、作業装置を除くエンジンが搭載されたシャシを製造するメーカであり、エンジンが搭載されたシャシに作業装置を取り付けて組み立てた特装車を依頼者(顧客)に出荷するメーカを架装メーカという。
【0015】
作業装置は、粉粒体を収容するタンクに導入用の配管を通して加圧エアを導入するコンプレッサから構成されている。このコンプレッサからの加圧エアによってタンク内の粉粒体が流動し、排出用の配管を通して外部へ排出できるように構成されている。コンプレッサには、コンプレッサの回転数(出力値)を検出する回転数検出手段としての回転数センサが設けられている。コンプレッサには、コンプレッサの回転数(出力値)を検出して出力値の実測値を測定する測定手段としての回転数センサが設けられている。作業装置とは、駆動源から直接機械的な運動を受けるものである。例えば、本実施形態では、コンプレッサがエンジンの回転運動を受けている。
【0016】
特装車の配線構造は、
図1に示すように、エンジン1の回転数を一定に保つための電子ガバナ2から延びる駆動源側配線(駆動源側ケーブル)3と、駆動源側配線3の延出端に備える第1コネクタ4に接続される第2コネクタ5を一端に備え、かつ、他端にコントローラ8に備える第4コネクタ7に接続される第3コネクタ6を備えるコントローラ側配線(コントローラ側ケーブル)9とを備えている。第2コネクタ5と第3コネクタ6と2つのコネクタ5,6を接続するコントローラ側配線(コントローラ側ケーブル)9とで後述する設定用ハーネス(選択手段)を構成している。ここでは、設定用ハーネスを4種類備えている。第1コネクタ4の形状は、シャシメーカ毎に異なる形状になっており、第2コネクタ5の形状を、シャシメーカ毎に異なる第1コネクタ4の形状に応じた形状にしている。このように構成することによって、第2コネクタ5の形状を見るだけでシャシメーカ毎のコントローラ側配線9を見分けることができる。第4コネクタ7は、シャシメーカ毎に共通の形状になっている。これはコントローラ8を共通化できるためである。シャシメーカ毎の第1コネクタ4を共通の第4コネクタ7に接続するための配線(変換配線)が必要となる。そこで、本願発明では、この変換配線を構成する第3コネクタ6に後述する選択回路11を設けている。そのため、変換配線とは別に選択回路を備える専用の配線が不要になる。第1コネクタ4及び第2コネクタ5のうちの一方が雌型に構成され、この雌型に差し込み可能に他方が雄型に構成される。また、第3コネクタ6及び第4コネクタ7も同様に、一方が雌型に構成され、この雌型に差し込み可能に他方が雄型に構成される。
【0017】
コントローラ8の記憶手段33には、シャシメーカ毎に異なる複数の走行用駆動源(ここではエンジン)の仕様に関する情報が記憶されている。情報としては、シャシメーカ毎のエンジンのアイドリング回転数、及び、エンジン1の最低回転数及び最高回転数であるが、これらに限定されない。
【0018】
図2及び
図3に示すように、前記第4コネクタ7には、複数の情報のうちの1つの情報にアクセスするための複数の被選択回路10を備え、前記第3コネクタ6は、第4コネクタ7との接続により複数の被選択回路10のうちの一つの被選択回路10に電気的に接続する選択回路11を備えている。したがって、第4コネクタ7と第3コネクタ6とを接続するだけで、複数の被選択回路10の中から一つの被選択回路10に電気的に接続されるので、例えば故障したコントローラを取り外して、新たなコントローラに交換する作業時において、特装車に搭載されている走行用駆動源(エンジン)の仕様に関する情報を間違えることなく選択することができる。
【0019】
各被選択回路10は、シャシメーカ毎に異なるエンジンのアイドリング回転数を設定するアイドリング回路12と、エンジンの駆動力により作業装置(コンプレッサ)を作動させて作業を行う時のコンプレッサの回転数を設定する作業回路13とを更に備えている。そして、第3コネクタ6を第4コネクタ7に接続することにより特装車に搭載されるエンジンのアイドリング回路12及びコンプレッサの作業回路13を同時に接続する。このように第3コネクタ6を第4コネクタ7に接続することにより、特装車に搭載されるエンジンのアイドリング回路12及びコンプレッサの作業回路13を接続して、特装車に搭載されるエンジンのアイドリング回転数及びコンプレッサの回転数を同時に設定することができる。
【0020】
この実施形態では、コントローラ8、つまり後述する制御部30の記憶手段33(
図8参照)に、4社のシャシメーカA,B,C,Dそれぞれのエンジンのアイドリング回転数及びコンプレッサの回転数(最少エンジン回転数又は最大エンジン回転数で回転される回転数)が記憶されている。この記憶しているとは、プログラムとしてのソフト的に記憶するものや、回路としてのハード的に記憶するものの両方を含む。第3コネクタ6は、4種類の第3コネクタ6a,6b,6c,6dから構成され、第1番目の第3コネクタ6aは、A社のシャシメーカのアイドリング回路12を選択するための第1選択回路14と、A社に組み合わされるコンプレッサメーカのコンプレッサの回転数の上限値及び下限値を読み出すための作業回路13を選択するための第2選択回路18とを備えている。また、第2番目の第3コネクタ6bは、B社のシャシメーカのアイドリング回路12を選択するための第1選択回路15と、B社に組み合わされるコンプレッサメーカのコンプレッサの回転数の上限値及び下限値を読み出すための作業回路13を選択するための第2選択回路19とを備えている。また、第3番目の第3コネクタ6cは、C社のシャシメーカのアイドリング回路12を選択するための第1選択回路16と、C社に組み合わされるコンプレッサメーカのコンプレッサの回転数の上限値及び下限値を読み出すための作業回路13を選択するための第2選択回路20とを備えている。また、第4番目の第3コネクタ6dは、D社のシャシメーカのアイドリング回路12を選択するための第1選択回路17と、D社に組み合わされるコンプレッサメーカのコンプレッサの回転数の上限値及び下限値を読み出すための作業回路13を選択するための第2選択回路21とを備えている。
【0021】
具体的には、
図2(a)~(d)に、第4コネクタ7のアイドリング回路12と第3コネクタ6の4種類の第1選択回路14,15,16,17とを示している。第4コネクタ7は、シャシメーカ4社のA~Dの抵抗値の異なる抵抗を備え、後述するメインスイッチ26が走行モードに切替えられている時に各シャシメーカの抵抗に導通して、各シャシメーカのエンジンのアイドリング回転数を読み出すとともに電圧値を電子ガバナ2に出力するようになっている。つまり、異なる抵抗値により電圧値が異なり、その異なる電圧値に応じて各シャシメーカのアイドリング回転数を読み出すようにしている。
図2(a)では、抵抗Aに接続されることによりシャシメーカA社のエンジンのアイドリング回転数を読み出す。
図2(b)では、抵抗Bに接続されることによりシャシメーカB社の場合のエンジンのアイドリング回転数を読み出す。
図2(c)では、抵抗Cに接続されることによりシャシメーカC社のエンジンのアイドリング回転数を読み出す。
図2(d)では、抵抗Dに接続されることによりシャシメーカD社のエンジンのアイドリング回転数を読み出す。
【0022】
図3(a)~(d)に、第4コネクタ7の作業回路13と第3コネクタ6の4種類の第2選択回路18,19,20,21とを示している。なお、第2選択回路21は、回路が無い状態になっている。第4コネクタ7には、GND22,23と、GND22,23につなぐと出力値0となり、GND22,23につながないと出力値1となるSET1及びSET2とを備えている。各第3コネクタ6を第4コネクタ7に接続することにより、各シャシメーカのエンジンの上限値(最大エンジン回転数)と下限値(最小エンジン回転数)とを(後述するプリセット指令値という)読み出すようになっている。
図3(a)では、SET1と下側のGND23とを接続することにより出力値が「0」「1」となり、シャシメーカA社のエンジンの上限値と下限値とを読み出す。
図3(b)では、SET2と下側のGND23とを接続することにより出力値が「1」「0」となり、シャシメーカB社のエンジンの上限値と下限値とを読み出す。
図3(c)では、SET1と下側のGND23及びSET2と上側のGND22とを接続することにより出力値が「0」「0」となり、シャシメーカC社のエンジンの上限値と下限値とを読み出す。
図3(d)では、第3コネクタ6に回路が無い状態であり、第4コネクタ7に接続しない非接続状態にすることにより出力値が「1」「1」となり、シャシメーカD社のエンジンの上限値と下限値とを読み出す。なお、各シャシメーカA~Dのエンジンの上限値と下限値は、エンジンの出力で回転されるコンプレッサの上限値と下限値に相当する。
【0023】
また、粉粒体運搬車には、
図4に示すメータパネル24が取り付けられている。このメータパネル24は、タンク内の粉粒体を排出する際やコンプレッサ25(
図5参照)の回転数の上限値及び下限値のうちの少なくとも一方を設定する際に使用する。具体的には、メータパネル24の右端部に上から順に、メインスイッチ26、コンプレッサ25の回転数調整スイッチ27、画面切替スイッチ28を備えるとともに、左右中央部に表示部としての液晶のメータ画面29を備えている。
【0024】
メインスイッチ26は、トグルスイッチからなり、操作レバーを一回だけ上側又は下側に倒すことにより、ON又はOFF状態に切り替わり、その切替状態を維持するオルタネイト動作型に構成されている。ここでは、操作レバーを上側に倒すと、コンプレッサ25を用いる作業時(ON状態)に切替えられ、次の操作(下側への操作)が行われるまでその状態を維持する。また、操作レバーを下側に倒すと、特装車を走行させる走行時(OFF状態)に切替えられ、次の操作(上側への操作)が行われるまでその状態を維持する。
【0025】
回転数調整スイッチ27は、コンプレッサ25の作動時にコンプレッサ25の出力値である回転数を可変するための出力値調整手段を構成している。回転数調整スイッチ27は、具体的には、トグルスイッチからなり、非操作時に、
図4に示す水平姿勢となるニュートラル位置に戻るように付勢されており、操作時に、操作レバーを上側又は下側に倒している時だけ、ON状態となるモーメンタリ動作型に構成されている。ここでは、操作レバーを上側に倒すと、コンプレッサ25の回転数を上げる。また、操作レバーを下側に倒すと、コンプレッサ25の回転数を下げる。なお、コンプレッサ25の回転数を連続して変更したい場合には、操作レバーを上側又は下側に倒した状態を保持しなければならない。この回転数調整スイッチ27は、コンプレッサ25の最低回転数(下限値)及び最高回転数(上限値)を微調整するときの微調整手段としての微調整スイッチとしても機能する。
【0026】
画面切替スイッチ28は、トグルスイッチからなり、非操作時に、
図4に示す水平姿勢となるニュートラル位置に戻るように付勢されており、操作時に、操作レバーを上側又は下側に倒している時だけ、ON状態となるモーメンタリ動作型に構成されている。ここでは、操作レバーを上側に倒すと、画面の切替えを行い、例えば
図5に示すメータ画面29に切り替わる。また、操作レバーを下側に倒し、その倒した状態を所定時間(数秒)維持する(長押しする)と、トリップメータ(走行距離計)の値をリセットすることができる。この画面切替スイッチ28は、前記回転数調整スイッチ27で合わせたコンプレッサ25の最低回転数及び最高回転数を決定するための決定手段としての決定記憶スイッチとしても機能する。
【0027】
図5に示すメータ画面29は、エンジン1(
図5参照)からの動力により作動されるコンプレッサ25の回転数(
図5では850rpm)が表示されるとともに、タンク内の圧力計の計測値(
図5では0.150MPa)及び配管内の圧力計の測定値(
図5では0.175MPa)が表示されている。なお、図示していないが、作動情報画面にも切替えられるようになっており、作動情報画面には、コンプレッサの通算稼働時間、本日のコンプレッサの稼働時間、コンプレッサの温度、エラー表示及びエラー履歴などが表示される。
【0028】
また、
図8に示すように、回転数調整スイッチ27及び画面切替スイッチ28からの操作信号が制御部30に入力されるとともに、エンジン1とコンプレッサ25とを接続状態にする又は遮断状態にすることができる動力取出装置(PTO)31、動力取出装置31を接続状態と遮断状態とに切替える切替スイッチ32が前記制御部30に接続されている。
【0029】
制御部30は、コントローラ8と記憶手段33とを備えている。記憶手段33には、エンジン回転数の上限値の電圧値と下限値の電圧値がプリセット指令値としてシャシメーカ毎に複数記憶され、また、本実施形態では、コンプレッサ25の回転数は、コンプレッサメーカ毎の上限と下限の差が少ないため、1つの回転数をプリセット指令値として記憶されている。また、記憶手段には、コンプレッサ25を作動させる作業時において、前記回転数調整スイッチ27を上側又は下側に操作した時の上がり幅又は下がり幅であるゲインも記憶手段に記憶されている。なお、ゲインもコンプレッサメーカ毎に差が無いので、1つのゲインを記憶している。そして、前記コントローラ8に4種類の設定用ハーネスのうちの1つの設定用ハーネスの第3コネクタ6a又は6b又は6c又は6dを差し込むことによって、設定モードに切替えるとともに、どのシャシメーカのエンジンであるかを特定し、特定したエンジンの最低回転数を発生させる電圧値及びそれに対応する(エンジンの回転力により回転される)コンプレッサ25の回転数を読み出す。読み出した電圧値及びコンプレッサ25の回転数を後述する設定画面に表示する。
【0030】
粉粒体運搬車を組み立てる場合に必要となる設定、つまりコンプレッサ25の最低回転数(出力値の下限値)及び最高回転数(出力値の上限値)を設定する過程を
図6及び
図7に基づいて説明する。
【0031】
まず、コントローラ11を粉粒体運搬車に架装する(ステップS1)。次に、設定用ハーネスの第3コネクタ6をコントローラ8の第4コネクタ7に差し込むことで設定モードに切替える(ステップS2)。次に、エンジン1を始動させるとともに切替えスイッチ32をON操作して動力取出装置(PTO)31をON(接続状態)にし、メインスイッチ26を上側に倒して「作業時」に切替える(ステップS3)。このとき、切替えスイッチ32のON信号により動力取出装置(PTO)31が電気的に接続された状態であると判断し、前記エンジン回転数の上限値の電圧値と下限値の電圧値及びそれぞれの電圧値で作動するコンプレッサ25の回転数を読み出す(前記設定用ハーネスで選択手段を構成している)。これによりメータ画面29が
図6に示す設定画面に切り替わる。
図6の上段に、最低回転設定時のコンプレッサ25の回転数700rpm及び最高回転設定時のコンプレッサ25の回転数900rpmが表示されている。続いて、設定用ハーネスをコントローラ8に差し込むことで読み出された最低回転数に対応するエンジン1の駆動電圧値(プリセット指令値の2.20V)でエンジン1を駆動する(ステップS4)。この駆動により、現在のエンジン1の駆動電圧値と測定手段で実測したコンプレッサ25の回転数を表示する(ステップS5)。このとき、エンジン1やコンプレッサ25の個体差により、予め記憶されている最低回転数(プリセット指令値)とは異なる表示となる。
図6の上段では、電圧値が2.20Vで回転数が760rpmとなっており、最低回転数を760rpmから700rpmにするように、回転数調整スイッチ27を下側に倒して調整する(
図6の中段参照)。調整した後、画面切替スイッチ28を下側へ長押しして最低回転数(正規の下限値)を設定する(ステップS6)。この設定した最低回転数(正規の下限値)を下限値として記憶手段33に保存する(ステップS7)。保存後は、回転数調整スイッチ27を上側に倒すことにより、回転数が最高回転数の900rpm(この時の電圧値は2.50V)に上昇させる(
図6の下段参照)。最高回転数が900rpmになると、画面切替スイッチ28を下側へ長押しして最高回転数を設定する(ステップS8)。この設定した最高回転数(正規の上限値)を上限値として記憶手段33に保存する(ステップS9)。保存後は、差し込んだ設定用ハーネスをコントローラ8から抜くことで作業モードに切替える(ステップS10)。切替え後は、コンプレッサ25の作動確認を行って(ステップS11)、作動が正常であると確認されると、設定作業を終了する。ここでは、最低回転数を750rpmから700rpmに一致させるようにしたが、700rpmに近付けるように最低回転数を調整してもよい。
【0032】
なお、シャシメーカ毎に最低回転数及び最高回転数を設定することができない禁止領域(最低領域及び最高領域の2つの領域)をそれぞれ設定することによって、エンジン7がエラーとなることを回避できるようにしている。
【0033】
本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではない。例えば、本発明の特装車としては、粉粒体運搬車に限らない。作業装置を作動させる時に可変できる構成であってもよいし、可変でなく一定でもよい。ここで、エンジンで駆動される作業装置としては、作業装置で運動させた流体で積荷にエネルギーを加え、積荷を車内に積み込む又は車外に排出するものがある。なお、作業装置で運動させる流体が積荷そのものであるものも含む。本実施形態の粉粒体運搬車は、作業装置であるコンプレッサにより圧縮した空気(流体)で、粉粒体(積荷)に圧力を加え、積荷を排出している。作業装置で運動させる積荷そのものである例としては、タンクローリーがある。この場合、作業装置であるポンプで流体である石油(積荷)に圧力を加え、石油を積み込む又は排出している。また、エンジンで駆動する作業装置としては、作業装置で運動させた流体を機械的な運動に変換するアクチュエータを有するものがある。このアクチュエータで搭載している機械を動かすか、アクチュエータで動かされる機械により積荷を積み下ろす2種類のものがある。例えば、作動時にコンクリートの吐出量を調整するコンクリートポンプを備えるコンクリートポンプ車がある。このコンクリートポンプは、油圧ポンプと油圧シリンダとを有し、油圧ポンプ(作業装置)で圧力を加えた作動油(流体)で油圧シリンダ(アクチュエータ)を動かす。その油圧シリンダによりブーム(機械)を動かすか、別の油圧シリンダ(アクチュエータ)を動かしてコンクリートを排出する。なお、作動油に圧力を加えるものを油圧ポンプと言い、積荷に圧力を加えるものを積み降ろしポンプと言うことがある。油圧ポンプを備える特装車は、油圧ポンプの油圧により油圧アクチュエータを作動させる。油圧ポンプの吐出油量が作業装置の出力値に相当する。積み降ろしポンプを備える特装車として、本実施形態の粉粒体運搬車も含まれる。また、他の例として、作業装置で電力を作る塵芥車がある。塵芥車の作業装置が発電機である。塵芥車は、発電機からの電力をモータに供給し、モータにより油圧ポンプを駆動し、油圧ポンプで圧力を加えた作動油で油圧アクチュエータを駆動し、油圧アクチュエータにより積込装置を駆動してゴミを積み込む。
【0034】
また、上記実施形態では、メインスイッチ26、回転数調整スイッチ27、画面切替スイッチ28を全てトグルスイッチで構成したが、一部又は全部のスイッチを押しボタン式やスライド式に構成してもよい。また、回転数調整スイッチ27は回転操作式のボリュームから構成してもよい。
【0035】
また、上記実施形態では、切替スイッチ32のON信号により動力取出装置(PTO)31が電気的に接続された状態であると判断し、プリセット指令値を読み出してエンジン1を駆動したが、エンジン1とコンプレッサ25とが電気的に接続されていることを検出する検出手段と、検出手段からの検出信号に基づいてエンジン1の駆動電圧値を読み出してコンプレッサ25を作動させるように構成されていてもよい。前記検出手段としては、コンプレッサ25が回転しているかどうかを検出する回転センサやコンプレッサ25が回転した時の音を検出する音センサから構成してもよい。このように、検出手段からの検出信号に基づいてエンジン(走行用駆動源)の駆動電圧値(駆動値)を読み出してコンプレッサ(作業装置)が作動されるので、エンジン(走行用駆動源)とコンプレッサ(作業装置)とが電気的に接続されていない状態で、実測値の微調整が行われることがない。
【0036】
また、上記実施形態では、走行用駆動源としてエンジン1を例に挙げたが、バッテリにより動く電動モータであってもよい。
【0037】
また、上記実施形態では、プリセット指令値を決めるSET1、SET2を備える被選択回路10と、第2選択回路19~21とを設け、読み出したプリセット指令値を微調整できるように構成したが、
図9に示すように、第4コネクタ7に抵抗値が異なる抵抗A,B,C,Dのみを備える被選択回路10を備え、これら複数の抵抗A,B,C,Dのうちの特定の抵抗を選択する第1選択回路14を第3コネクタ6に備えることによって、シャシメーカA社~D社のうちのどのシャシメーカに接続されているかのみを検出して(
図9ではシャシメーカA社)、記憶されているA社のシャシメーカの情報を読み出すだけの構成にしてもよい。図示していないが、B社、C社、D社をそれぞれ選択できる第3コネクタ6を構成することによって、B社、C社、D社のシャシメーカの情報を読み出すことができる。
【0038】
また、上記実施形態では、第2コネクタ5の形状を、シャシメーカ毎に異なる第1コネクタ4の形状に応じた形状にしたが、第1コネクタ4を同一の形状にし、第2コネクタ5も第1コネクタ4に応じた同一形状にしてもよい。
【0039】
また、上記実施形態では、被選択回路10が、アイドリング回路12と、作業回路13とを備えた場合を説明したが、いずれか一方の回路のみを備えて実施してもよい。
【符号の説明】
【0040】
1…エンジン、2…電子ガバナ、3…駆動源側配線、4…第1コネクタ、5…第2コネクタ、6…第3コネクタ、7…第4コネクタ、8…コントローラ、9…コントローラ側配線、10…被選択回路、11…選択回路、12…アイドリング回路、13…作業回路、14,15,16,17…第1選択回路、18,19,20,21…第2選択回路、22,23…GND、24…メータパネル、25…コンプレッサ、26…メインスイッチ、27…回転数調整スイッチ(出力値調整手段、微調整手段)、28…画面切替スイッチ(決定手段、決定記憶スイッチ)、29…メータ画面、30…制御部、31…動力取出装置、32…切替スイッチ、33…記憶手段