(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-02
(45)【発行日】2023-02-10
(54)【発明の名称】鉄道車両用空気圧縮システム
(51)【国際特許分類】
B60L 1/00 20060101AFI20230203BHJP
B60L 13/00 20060101ALI20230203BHJP
B60L 5/22 20060101ALI20230203BHJP
B61C 3/02 20060101ALI20230203BHJP
B61C 7/02 20060101ALI20230203BHJP
B61C 17/06 20060101ALI20230203BHJP
B61K 7/08 20060101ALI20230203BHJP
【FI】
B60L1/00 B
B60L13/00 D
B60L5/22 B
B61C3/02
B61C7/02
B61C17/06
B61K7/08
(21)【出願番号】P 2018243451
(22)【出願日】2018-12-26
【審査請求日】2021-11-26
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】黒光 将
(72)【発明者】
【氏名】久我 崇
(72)【発明者】
【氏名】川畑 慶太
(72)【発明者】
【氏名】田中 源平
【審査官】井古田 裕昭
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-528749(JP,A)
【文献】特表2018-526284(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00
B60L 13/00
B60L 5/22
B61C 3/02
B61C 7/02
B61C 17/06
B61K 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機と、
パンタグラフ昇降用に圧縮空気を溜める第1タンクと、
ブレーキ作動用に圧縮空気を溜める第2タンクと、
架線とは別に電力を供給可能な車載電源と、
架線電力を利用できないときは、前記車載電源の電力を用いて前記圧縮機で生成した圧縮空気を前記第1タンクに溜め、前記架線電力を利用できるときは、前記架線電力を用いて前記圧縮機で生成した圧縮空気を前記第2タンクに溜めるように前記圧縮機を制御する制御部と
、
前記第1タンクと前記第2タンクとを繋ぐタンク通路を遮断可能な第1弁と、
を備え
、
前記第1弁は、前記車載電源の電力を用いて前記圧縮機で生成した圧縮空気を第1タンクに溜める際には前記タンク通路を遮断し、前記架線電力を用いて前記圧縮機で生成した圧縮空気を第2タンクに溜める際には前記タンク通路を遮断せず、前記圧縮機で生成した圧縮空気が前記第1タンク及び前記タンク通路を通過して前記第2タンクに供給される、
鉄道車両用空気圧縮システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記車載電源の電力を用いて前記圧縮機で生成された圧縮空気は前記第2タンクに供給しないよう前記圧縮機を制御する請求項1に記載の鉄道車両用空気圧縮システム。
【請求項3】
前記第1弁は、所定の第1圧力以上で開く制圧弁であり、
前記制御部は、前記車載電源の電力を用いて前記圧縮機で生成した圧縮空気を第1タンクに溜める際には、第1タンクの圧力が前記第1圧力よりも低くなるように前記圧縮機を制御し、
前記架線電力を用いて前記圧縮機で生成した圧縮空気を第2タンクに溜める際には、第
1タンクの圧力が前記第1圧力よりも高くなるように前記圧縮機を制御する請求項
1に記載の鉄道車両用空気圧縮システム。
【請求項4】
前記第2タンクから前記第1タンクに圧縮空気を供給する第2弁を有する請求項1から
3のいずれかに記載の鉄道車両用空気圧縮システム。
【請求項5】
前記第2弁は、前記第1タンクから前記第2タンクへの逆流を防止可能な逆止弁である請求項
4に記載の鉄道車両用空気圧縮システム。
【請求項6】
前記圧縮機は、前記車載電源の電力を用いるときは、前記架線電力を用いるときよりも低い電圧で駆動される請求項1から
5のいずれかに記載の鉄道車両用空気圧縮システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両用空気圧縮システムに関する。
【背景技術】
【0002】
空気圧縮機と空気槽とを備えた鉄道用の電動車両が知られている。例えば、特許文献1には、圧縮空気を生成する空気圧縮機と、空気圧縮機から導入された圧縮空気を一旦貯留する空気槽と、を備え、空気槽からの圧縮空気によって制動装置など車両の各部機構を動作させる鉄道用の電動車両が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、架線からパンタグラフを介して供給される電力により駆動される鉄道車両の空気圧縮システムについて以下の認識を得た。
パンタグラフを備える鉄道車両は、通常走行時には、パンタグラフを上昇させて架線電力を受電し、この架線電力を使用して車両駆動用のモータを駆動するとともに空気圧縮システムを駆動して圧縮空気を供給する。このような鉄道車両には、空気圧縮システムの圧縮空気を用いてパンタグラフを昇降させるものがある。
【0005】
このような鉄道車両は、車庫に入庫して待機するときには、パンタグラフを降ろして架線電力を使用できない状態になることがある。この状態では、パンタグラフを再び上昇させるとき、架線電力で動作する圧縮機は使用できないので、バッテリの電力で動作する別の圧縮機を設けてこの圧縮機からの圧縮空気によりパンタグラフを昇降させることが考えられる。
【0006】
しかし、バッテリで動作する別の圧縮機を設けると、空気圧縮システムが大型化して車両の下部空間への収納が難しくなるという問題がある。
これらから、本発明者は、空気圧縮システムには、架線電力を使用できない状態でもパンタグラフ昇降用の圧縮空気を供給可能な鉄道車両用空気圧縮システムを小型化する観点から、改善の余地があることを認識した。
【0007】
本発明は、こうした課題に鑑みてなされたものであり、架線電力を使用できない状態でもパンタグラフ昇降用の圧縮空気を供給可能な鉄道車両用空気圧縮システムを小型化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の鉄道車両用空気圧縮システムは、圧縮機と、パンタグラフ昇降用に圧縮空気を溜める第1タンクと、ブレーキ作動用に圧縮空気を溜める第2タンクと、架線とは別に電力を供給可能な車載電源と、架線電力を利用できないときは、車載電源の電力を用いて圧縮機で生成した圧縮空気を第1タンクに溜め、架線電力を利用できるときは、架線電力を用いて圧縮機で生成した圧縮空気を第2タンクに溜めるように圧縮機を制御する制御部とを備える。
【0009】
この態様によると、1つの圧縮機で生成された圧縮空気を第1タンクと第2タンクとに溜めることができる。
【0010】
なお、以上の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を方法、装置、プログラム、プログラムを記録した一時的なまたは一時的でない記憶媒体、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、架線電力を使用できない状態でもパンタグラフ昇降用の圧縮空気を供給可能な鉄道車両用空気圧縮システムを小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態に係る空気圧縮システムを搭載した車両を概略的に示す側面図である。
【
図2】
図1の空気圧縮システムの構成を概略的に示すブロック図である。
【
図3】
図1の空気圧縮システムの第1タンクの周辺を示す構成図である。
【
図4】第2実施形態に係る空気圧縮システムの第1タンクの周辺を示す構成図である。
【
図5】第3実施形態に係る空気圧縮システムの第1タンクの周辺を示す構成図である。
【
図6】第4実施形態に係る空気圧縮システムの第1タンクの周辺を示す構成図である。
【
図7】第5実施形態に係る空気圧縮システムの第1タンクの周辺を示す構成図である。
【
図8】第6実施形態に係る空気圧縮システムの第1タンクの周辺を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を好適な実施形態をもとに各図面を参照しながら説明する。実施形態および変形例では、同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
また、第1、第2などの序数を含む用語は多様な構成要素を説明するために用いられるが、この用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ用いられ、この用語によって構成要素が限定されるものではない。
【0014】
[第1実施形態]
図1~
図3を参照して、本発明の第1実施形態に係る鉄道車両用空気圧縮システム100の構成について説明する。
図1は、第1実施形態に係る空気圧縮システム100を搭載した車両1を概略的に示す側面図である。
【0015】
本実施形態の車両1は、鉄道車両であって、主に車体80と、パンタグラフ82と、昇降装置86と、変換装置88と、走行制御装置90と、走行モータ92と、車輪94と、ブレーキ駆動装置96と、扉開閉装置98と、空気圧縮システム100とを備える。パンタグラフ82は、上昇した状態では架線84に接触し、架線から電力(以下、「架線電力」という。)を受電し、変換装置88に供給する。パンタグラフ82は、下降した状態では架線84に接触せず、架線電力を受電しない。
【0016】
昇降装置86は、空気圧縮システム100から供給される第1圧縮空気Ap1に基づいてパンタグラフ82を昇降する。変換装置88は、パンタグラフ82を介して受電した架線電力を所定の電圧に変換して、走行モータ92や空気圧縮システム100など車両の各部に供給する。走行制御装置90は、変換装置88からの電力に基づいて走行モータ92の駆動とその制御を行う。車輪94は、走行モータ92の回転に基づいて回転し、車両1を走行させる。ブレーキ駆動装置96と扉開閉装置98は、空気圧縮システム100から供給される第2圧縮空気Ap2に基づいて、ブレーキ(不図示)を作動させ、車両の扉(不図示)の開閉動作を行う。車体80は、その下部空間に空気圧縮システム100およびその他の関連機器を搭載する。
【0017】
空気圧縮システム100を説明する。
図2は、空気圧縮システム100の構成を概略的に示すブロック図である。本実施形態の空気圧縮システム100は、圧縮機10と、車載電源40と、充電制御部42と、圧縮装置制御部16と、第1タンク20と、第2タンク30と、通路制御部50とを含む。
【0018】
圧縮機10は、空気を圧縮して圧縮空気を供給する。本実施形態の圧縮機10は、圧縮装置制御部16から供給される電力に基づいて回転するモータ(不図示)を含み、当該モータの駆動力によって圧縮空気を供給する電動エアコンプレッサである。
【0019】
車載電源40は、架線84とは別に電力(以下、「車載電源電力」という)を供給可能な電源要素である。本実施形態の車載電源40は、繰り返し充電可能な蓄電池である。充電制御部42は、架線電力に基づき車載電源40の充電を制御する。
【0020】
圧縮装置制御部16は、架線電力と、車載電源電力とに基づいて圧縮機10に駆動電力を供給する制御要素である。圧縮装置制御部16は、架線電力が使用できない場合には第1モードに入り、架線電力が使用できる場合には第2モードに入る。圧縮装置制御部16は、第1モードでは車載電源電力を圧縮機10に供給し、第2モードでは架線電力を圧縮機10に供給する。圧縮装置制御部16は、例えばCPU(Central Processing Unit)などの電子装置を含んで構成できる。
【0021】
本実施形態では、圧縮機10は、車載電源40の電力を用いるときは、架線電力を用いるときよりも低い電圧で駆動される。一例として、車載電源40の電力を用いる第1モードでは、圧縮機10は100vで駆動され、架線電力を用いる第2モードでは、圧縮機10は400vで駆動される。
【0022】
第1タンク20は、パンタグラフ昇降用に圧縮機10から供給される圧縮空気を溜めるエアタンクである。第1タンク20に溜められた圧縮空気は、第1出力通路Ps1を介して第1圧縮空気Ap1として昇降装置86に供給される。昇降装置86は、供給された第1圧縮空気Ap1に基づいてパンタグラフ82を昇降する。第1タンク20の容量は、第2タンク30の容量より小さくてもよい。
【0023】
第2タンク30は、ブレーキ作動用に圧縮機10から供給される圧縮空気を溜めるエアタンクである。第2タンク30に溜められた圧縮空気は、第2出力通路Ps2を介してブレーキ駆動装置96に第2圧縮空気Ap2として供給される。ブレーキ駆動装置96は、供給された第2圧縮空気Ap2に基づいてブレーキの作動や解除を行う。本実施形態では、第2圧縮空気Ap2は、扉開閉装置98にも供給される。扉開閉装置98は、供給された第2圧縮空気Ap2に基づいて扉の開閉動作を行う。
【0024】
通路制御部50は、圧縮機10と、第1タンク20と、第2タンク30との間における圧縮空気の流路を制御する。通路制御部50は、圧縮機10が車載電源電力と架線電力のいずれで動作しているかを判定して、その判定結果に応じて圧縮空気の流路を制御する。この判定は、通路制御部50によって独自に行われてもよいが、この例では、圧縮装置制御部16のモード判定の結果を利用している。具体的には、通路制御部50は、第1モードと第2モードとで圧縮空気の流路を切換える。通路制御部50は、第1モードでは圧縮機10で生成した圧縮空気Apoを第1タンク20に供給するように流路を制御する。この場合、圧縮空気Apoは第1タンク20に溜められる。また、通路制御部50は、第2モードでは圧縮空気Apoを第2タンク30に供給するように流路を制御する。この場合、圧縮空気Apoは第2タンク30に溜められる。
【0025】
図3を参照して、本実施形態の空気圧縮システム100の圧縮機10、第1、第2タンク20、30および通路制御部50を説明する。
図3は、本実施形態の空気圧縮システム100の圧縮機10と、第1、第2タンク20、30の周辺を示す構成図である。この図は、主に圧縮空気の流路を示しており、説明上重要でない部材の一部を省略している。
図3に示すように、本実施形態は、圧縮機側逆止弁12と、除湿装置14と、第1タンク通路24と、第2タンク通路34と、第1調圧部22と、第2調圧部32と、制圧弁52とを有する。なお、以下の説明で圧縮空気を供給する側を「上流」、「上流側」といい、圧縮空気の供給を受ける側を「下流」、「下流側」ということがある。
【0026】
第1タンク20は、2つの通路接続用ポートP1、S1と、1つの出力用ポートQ1と、を有する。出力用ポートQ1は、第1出力通路Ps1に接続され、第1圧縮空気Ap1を昇降装置86に供給する。
【0027】
第2タンク30は、1つの通路接続用ポートP2と、1つの出力用ポートQ2と、を有する。出力用ポートQ2は、第2出力通路Ps2に接続され、第2圧縮空気Ap2をブレーキ駆動装置96および扉開閉装置98に供給する。
【0028】
圧縮機側逆止弁12は、下流側への空気の流れを許容し、上流側への空気の流れを遮断する。この例では、圧縮機側逆止弁12は、第1、第2タンク20、30から圧縮機10への空気の流れを遮断する。除湿装置14は、圧縮機10から供給される圧縮空気を除湿する。この例では、圧縮機側逆止弁12は、除湿装置14内に設けられている。
【0029】
第1、第2調圧部22、32は、圧縮装置制御部16に含まれ、タンク内圧力を調整するために圧縮機10の動作を制御する。第1調圧部22は、第1モードで動作して第2モードでは動作せず、第2調圧部32は、第2モードで動作して第1モードでは動作しない。
【0030】
第1モードにおいて、第1調圧部22は、第1タンク20内の第1圧力を検知し、その第1検知圧力に応じて圧縮機10の作動/非作動を制御する。第1調圧部22は、第1検知圧力が予め設定された第1下限圧力Pjより低い場合に圧縮機10を作動させ、第1タンク20内の圧力を高める。また、第1調圧部22は、第1検知圧力が予め設定された第1上限圧力Pk以上の場合に圧縮機10を停止させる。この結果、第1モードでは、第1タンク20内の圧力は第1下限圧力Pjから第1上限圧力Pkの間に維持される。なお、第1下限圧力Pjは第1上限圧力Pkより低く設定される。
【0031】
第2モードにおいて、第2調圧部32は、第2タンク30内の第2圧力を検知し、その第2検知圧力に応じて圧縮機10の作動/非作動を制御する。第2調圧部32は、第2検知圧力が予め設定された第2下限圧力Pmより低い場合に圧縮機10を作動させ、第2タンク30内の圧力を高める。また、第2調圧部32は、第2検知圧力が予め設定された第2上圧力Pn以上の場合に圧縮機10を停止させる。この結果、第2モードでは、第2タンク30内の圧力は第2下限圧力Pmから第2上限圧力Pnの間に維持される。なお、第2下限圧力Pmはから第2上限圧力Pnより低く設定される。
【0032】
第1タンク通路24は、圧縮機側逆止弁12と、除湿装置14と、を介して圧縮機10から送出される圧縮空気Apoを第1タンク20に供給する通路である。本実施形態の第1タンク通路24は、除湿装置14の出口と第1タンク20のポートP1とを繋ぎ、圧縮空気Apoを第1タンク20内に導く。
【0033】
第2タンク通路34は、圧縮機側逆止弁12と、除湿装置14と、を介して圧縮機10から送出される圧縮空気Apoを第2タンク30に供給する通路である。本実施形態の第2タンク通路34は、第1タンク20のポートS1と第2タンク30のポートP2とを繋ぎ、第1タンク20を通過した圧縮空気Apoを第2タンク30内に導く。第2タンク通路34には第1弁として制圧弁52が設けられる。本実施形態の制圧弁52は、圧縮機10で生成した圧縮空気を第1タンク20に供給する通路を遮断しないように設けられる。
【0034】
制圧弁52は、上流側の圧力が所定の第1制御圧力Pv1以上の場合には開いて下流側に圧縮空気を流し、上流側の圧力が第1制御圧力Pv1より低い場合には閉じて空気の流れを遮断する。本実施形態の制圧弁52は、第2タンク30が圧縮空気の供給を受入れる通路に設けられ、圧縮空気Apoの第2タンク30への供給を制御する。制圧弁52は、圧縮空気Apoの圧力が第1制御圧力Pv1より低い場合には閉じて、圧縮空気Apoの第2タンク30への流れ込みを遮断し、圧縮空気Apoの圧力が第1制御圧力Pv1以上の場合には開いて、圧縮空気Apoの第2タンク30への流れ込みを許容する。
【0035】
本実施形態では、第1制御圧力Pv1は第1上限圧力Pkより高く設定されている。つまり、第1モードにおいて第1調圧部22が動作している間は、圧縮空気Apoの圧力は第1制御圧力Pv1を超えないので、制圧弁52は閉じた状態を維持し、圧縮空気Apoは第2タンク30には流入しない。
【0036】
本実施形態では、第1制御圧力Pv1は、第2下限圧力Pmより高く第2上限圧力Pnより低く設定されている。つまり、第2モードにおいて第2調圧部32が動作している間は、圧縮空気Apoの圧力が第1制御圧力Pv1を超えると、制圧弁52が開いて、圧縮空気Apoは第2タンク30に流入する。圧縮空気Apoの圧力が第1制御圧力Pv1より低くなると、制圧弁52は閉じて圧縮空気Apoの流入はとまり、再び圧縮空気Apoの圧力が第1制御圧力Pv1を超えると圧縮空気Apoは第2タンク30に流入する。
【0037】
本実施形態の動作を説明する。
(1)第1モード動作(架線電力を使用できない場合)
パンタグラフ82が降下している状態では、架線電力を使用できないので、圧縮装置制御部16は、第1モードに入り、第1調圧部22を作動させ、圧縮機10に車載電源40からの車載電源電力を供給する。このとき、圧縮機10は、第1タンク通路24を通じて圧縮空気Apoを第1タンク20に供給する。供給された圧縮空気Apoは第1タンク20に溜められる。
【0038】
第1モードでは、第1調圧部22によって、第1タンク20内の圧力は、第1下限圧力Pjと第1上限圧力Pkとの間に維持される。第1制御圧力Pv1は、第1上限圧力Pkより高いので、制圧弁52は閉状態を維持する。したがって、制圧弁52により、第1タンク20内の圧力が、制圧弁52の第1制御圧力Pv1より低いときは、圧縮空気Apoは第1タンク20から第2タンク30へは流入しない。第1モードでは、第1タンク20から送出される第1圧縮空気Ap1により昇降装置86が作動してパンタグラフ82を昇降することができる。
【0039】
(2)第2モード動作(架線電力を使用できる場合)
パンタグラフ82が上昇して架線84に接触している状態では、架線電力を使用できるので、圧縮装置制御部16は、第2モードに入り、第2調圧部32を作動させ、圧縮機10に架線電力を供給する。このとき、圧縮空気Apoは第1上限圧力Pkを超えて第1タンク20に溜められる。
【0040】
圧縮空気Apoの圧力が第1制御圧力Pv1以上になると制圧弁52が開き、第1タンク20から圧縮空気Apoが第2タンク30に送出され、圧縮空気Apoは第2タンク30に溜められる。第2モードでは、第1タンク20から送出される第1圧縮空気Ap1により昇降装置86が作動してパンタグラフ82を昇降させることができる。また、第2タンク30から送出される第2圧縮空気Ap2により、ブレーキ駆動装置96および扉開閉装置98を作動させることができる
【0041】
(3)遮断モード動作(遮断器などの保護回路が働いた場合)
架線84からの異常電流により保護回路(例えば、真空遮断器)が働いたとき、パンタグラフは降下して架線電力が使用できない状態になる。この状態では、架線電力を使用できないので、圧縮装置制御部16は、第1モードに切換えて車載電源電力により圧縮機10を作動させ、第1タンク20からの圧縮空気Ap1によりパンタグラフを昇降させる。この場合、空気圧縮システム100は、第1モードと同様に動作する。
【0042】
このように構成された本実施形態の空気圧縮システム100の作用・効果を説明する。
【0043】
本実施形態の空気圧縮システム100は、圧縮機10と、パンタグラフ昇降用に圧縮空気を溜める第1タンク20と、ブレーキ作動用に圧縮空気を溜める第2タンク30と、架線84とは別に電力を供給可能な車載電源40と、架線電力を利用できないときは、車載電源40の電力を用いて圧縮機10で生成した圧縮空気を第1タンク20に溜め、架線電力を利用できるときは、架線電力を用いて圧縮機10で生成した圧縮空気を第2タンク30に溜めるように圧縮機10を制御する制御部とを備える。
【0044】
この構成によれば、1つの圧縮機10で第1タンク20および第2タンク30に圧縮空気を溜めることができる。この結果、別の圧縮機を備える場合と比べて空気圧縮システムを小型化できる。
【0045】
上述の装置では、車載電源40の電力を用いて圧縮機10で生成された圧縮空気は第2タンク30に供給しなくてもよい。この場合、圧縮空気が第2タンク30に流れないので、効率的に第1タンク20に圧縮空気を溜められる。この結果、車載電源40の容量を小さくできる。
【0046】
上述の装置は、第2タンク30に圧縮空気を供給する通路を遮断可能な制圧弁52を有してもよい。この場合、第1モードで制圧弁52を遮断することにより、車載電源40の電力を用いて生成された圧縮空気が第2タンク30に供給されるのを防止できる。
【0047】
上述の制圧弁52は、圧縮機10で生成した圧縮空気を第1タンク20に供給する通路を遮断しないように設けられてもよい。この場合、何らかの理由により制圧弁52が開かない場合であっても、第1タンク20には圧縮空気が供給されるので、パンタグラフ82を上昇させて架線84から受電できる。
【0048】
上述の制圧弁52は、所定の第1圧力以上で開く制圧弁であり、車載電源40の電力を用いて圧縮機10で生成した圧縮空気の圧力は第1圧力よりも低く制御され、架線電力を用いて圧縮機10で生成した圧縮空気の圧力は第1圧力よりも高く制御されてもよい。この場合、圧力の高低に応じて自律的に開閉状態が切り替る制圧弁52に用いるので、別途の制御を不要にできる。
【0049】
上述の装置では、圧縮機10は、車載電源40の電力を用いるときは、架線電力を用いるときよりも低い電圧で駆動されてもよい。この場合、低い電圧で圧縮機10を駆動できるため、車載電源40を小型化できる。
【0050】
以下、
図4~
図8を参照して、本発明の第2~第8実施形態に係る空気圧縮システム100の構成を説明する。第2~第6実施形態の図面および説明では、第1実施形態と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付する。第1実施形態と重複する説明を適宜省略し、第1実施形態と相違する構成について重点的に説明する。
【0051】
[第2実施形態]
図4は、第2実施形態の空気圧縮システム100の圧縮機10と第1、第2タンク20、30の周辺を示す構成図であり、
図3に対応する。
図3に示すように、本実施形態は、第2弁として逆止弁54を備える点で第1実施形態と相違し、他の構成は同様である。したがって、逆止弁54を重点的に説明する。
【0052】
何らかの理由により、第1タンク20の圧縮空気が不足してパンタグラフ82を昇降できないことが考えられる。この場合に、第2タンク30から第1タンク20に圧縮空気を供給できることが望ましい。そこで、本実施形態は、第2タンク30から第1タンク20に圧縮空気を供給する逆止弁54を有する。この構成により、本実施形態は、第1タンク20の圧縮空気が不足したときには、第2タンク30から第1タンク20に圧縮空気を供給できるので、パンタグラフを上昇させて架線電力を受電できる。
【0053】
逆止弁54は、第2タンク30から第1タンク20に圧縮空気を供給可能なものであれば制限はない。本実施形態の逆止弁54は、第2タンク30から第1タンク20側への空気の流れを許容し、第1タンク20から第2タンク30への逆流を防止可能な弁機構である。
図4に示すように、逆止弁54は、第2タンク通路34において制圧弁52と並列に設けられる。逆止弁54は、第1タンク20のポートS1と第2タンク30のポートP2とを繋ぐ別の通路に設けられてもよい。この構成により、本実施形態は、逆止弁の自律的な動作により、逆流を防止できるので別途の制御を不要にできる。
【0054】
本実施形態の動作を説明する。
(1)第1モード動作(架線電力を使用できない場合)
本実施形態は、第1実施形態と同様に動作する。制圧弁52と逆止弁54とにより、第1タンク20内の圧力が、制圧弁52の第1制御圧力Pv1より低いときは、圧縮空気Apoは第1タンク20から第2タンク30へは流入しない。また、第1タンク20の圧縮空気が不足したときには、逆止弁54を介して第2タンク30から第1タンク20に圧縮空気が供給される。
(2)第2モード動作(架線電力を使用できる場合)
本実施形態は、第1実施形態と同様に動作する。
(3)遮断モード動作(遮断器などの保護回路が働いた場合)
本実施形態は、第1実施形態と同様に動作する。
【0055】
本実施形態は、第1実施形態と同様の作用・効果を奏する。
【0056】
[第3実施形態]
図5は、第3実施形態の空気圧縮システム100の圧縮機10と第1、第2タンク20、30の周辺を示す構成図であり、
図3に対応する。
図5に示すように、本実施形態は、第1弁として制圧弁52に代えて電磁弁56を備える点で第1実施形態と相違し、他の構成は同様である。したがって、電磁弁56を重点的に説明する。
【0057】
電磁弁56は、通電により弁の開閉が制御される電気的駆動弁であり、第2タンク通路34に設けられる。本実施形態の電磁弁56は、非通電時に開き、通電時に閉じるノーマルオープンタイプである。電磁弁56は、第1モードでは閉じ、第2モードでは開くように圧縮装置制御部16によって制御される。
【0058】
本実施形態の動作を説明する。
(1)第1モード動作(架線電力を使用できない場合)
第1モードでは、電磁弁56は閉じられ、圧縮空気Apoは第1タンク20から第2タンク30へは流入しない。したがって、本実施形態は、第1実施形態と同様に動作する。
(2)第2モード動作(架線電力を使用できる場合)
第2モードでは、電磁弁56は開かれ、第1タンク20から第2タンク30へ圧縮空気Apoが送出されて、第1実施形態と同様に動作する。
(3)遮断モード動作(遮断器などの保護回路が働いた場合)
遮断モードでは、電磁弁56は閉じられ、第1実施形態と同様に動作する。
【0059】
本実施形態は、第1実施形態と同様の作用・効果を奏する。
【0060】
[第4実施形態]
図6は、第4実施形態の空気圧縮システム100の圧縮機10と第1、第2タンク20、30の周辺を示す構成図であり、
図3に対応する。
図6に示すように、本実施形態は、第2弁として逆止弁54を備える点で第3実施形態と相違し、他の構成は同様である。したがって、逆止弁54を重点的に説明する。逆止弁54は、第2タンク通路34において電磁弁56と並列に設けられる。電磁弁56の動作は第3実施形態と同様であり、逆止弁54の動作は第2実施形態と同様である。
【0061】
本実施形態の動作を説明する。
(1)第1モード動作(架線電力を使用できない場合)
第1モードでは、電磁弁56および逆止弁54は閉じられ、圧縮空気Apoは第1タンク20から第2タンク30へは流入しない。したがって、本実施形態は、第1実施形態と同様に動作する。
(2)第2モード動作(架線電力を使用できる場合)
第2モードでは、電磁弁56は開かれ、第1タンク20から第2タンク30へ圧縮空気Apoが送出されて、第1実施形態と同様に動作する。
(3)遮断モード動作(遮断器などの保護回路が働いた場合)
遮断モードでは、電磁弁56は閉じられ、第1実施形態と同様に動作する。
【0062】
本実施形態は、第1実施形態および第2実施形態と同様の作用・効果を奏する。
【0063】
[第5実施形態]
図7は、第5実施形態の空気圧縮システム100の圧縮機10と第1、第2タンク20、30の周辺を示す構成図であり、
図3に対応する。
図7に示すように、本実施形態は、圧縮機10からの圧縮空気Apoを第1タンク20と第2タンク30とに切換えて供給する2方向電磁弁60を備え、第1タンク20と第2タンク30とが非接続にされる点で第1実施形態と相違し、他の構成は同様である。したがって、2方向電磁弁60の動作を重点的に説明する。
【0064】
2方向電磁弁60は、入口ポートP3と、2つの出口ポートP4、P5とを有する電磁弁であり、圧縮装置制御部16によって制御される。入口ポートP3は除湿装置14の出口に接続される。出口ポートP4は第1タンク20のポートP1に接続される。出口ポートP5は第2タンク30のポートP2に接続される。
【0065】
本実施形態の動作を説明する。
(1)第1モード動作(架線電力を使用できない場合)
第1モードでは、2方向電磁弁60は、入口ポートP3と出口ポートP4とを連通し、入口ポートP3と出口ポートP5とは非連通に制御される。この結果、圧縮機10からの圧縮空気Apoは第1タンク20に送出される。このとき、圧縮空気Apoは第2タンク30へは流入しない。したがって、第1モードでは、本実施形態は、第1実施形態と同様に動作する。つまり、2方向電磁弁60は、第2タンク30に圧縮空気Apoを供給する通路を遮断可能な第1弁を例示する。
【0066】
(2)第2モード動作(架線電力を使用できる場合)
第2モードでは入口ポートP3と出口ポートP5とを連通し、入口ポートP3と出口ポートP4とは非連通に制御される。この結果、圧縮機10からの圧縮空気Apoは第2タンク30に送出される。したがって、第2モードでは、本実施形態は、第1実施形態と同様に動作する。
(3)遮断モード動作(遮断器などの保護回路が働いた場合)
遮断モードでは、2方向電磁弁60は、入口ポートP3と出口ポートP4とを連通し、入口ポートP3と出口ポートP5とは非連通に制御され、第1実施形態と同様に動作する。
【0067】
本実施形態は、第1実施形態と同様の作用・効果を奏する。
【0068】
[第6実施形態]
図8は、第6実施形態の空気圧縮システム100の圧縮機10と第1、第2タンク20、30の周辺を示す構成図であり、
図3に対応する。
図8に示すように、本実施形態の空気圧縮システム100は、逆止弁54を備える点で第5実施形態と相違し、他の構成は同様である。したがって、逆止弁54を重点的に説明する。逆止弁54は、第1タンク20のポートS1と第2タンク30のポートS2との間を繋ぐ通路に設けられる。本実施形態の逆止弁54は、第2タンク30から第1タンク20側への空気の流れを許容し、第1タンク20から第2タンク30への逆流を防止する。逆止弁54は、第2タンク30から第1タンク20に圧縮空気を供給する。
【0069】
本実施形態の動作を説明する。
(1)第1モード動作(架線電力を使用できない場合)
第1モードでは、本実施形態は、第5実施形態と同様に動作する。また、第1タンク20の圧縮空気が不足したときには、逆止弁54を介して第2タンク30から第1タンク20に圧縮空気が供給される。
(2)第2モード動作(架線電力を使用できる場合)
第2モードでは、本実施形態は、第5実施形態と同様に動作する。
(3)遮断モード動作(遮断器などの保護回路が働いた場合)
遮断モードでは、本実施形態は、第5実施形態と同様に動作する。
【0070】
本実施形態は、第1実施形態および第2実施形態と同様の作用・効果を奏する。
【0071】
[第7実施形態]
本発明の第7実施形態を説明する。第7実施形態の説明では、第1実施形態と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付する。第1実施形態と重複する説明を適宜省略し、第1実施形態と相違する構成について重点的に説明する。
【0072】
本発明の第7実施形態は、鉄道車両用空気圧縮システムの制御方法である。この方法は、架線電力を使用できるときは、圧縮空気を供給する圧縮機10に使う電力を架線84から賄い、架線電力を使用できないときは、圧縮機10に使う電力を車載電源40から賄う。
【0073】
第7実施形態によれば、1つの圧縮機10を架線84または車載電源40からの電力によって駆動し、圧縮空気を供給できるから、パンタグラフ82が降下した状態でも、圧縮機10からの圧縮空気によりパンタグラフ82を上昇させることができる。1つの圧縮機10で実現できるので鉄道車両用空気圧縮システムを小型化できる。
【0074】
以上、本発明の実施形態の例について詳細に説明した。上述した実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたっての具体例を示したものにすぎない。実施形態の内容は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、請求の範囲に規定された発明の思想を逸脱しない範囲において、構成要素の変更、追加、削除などの多くの設計変更が可能である。上述の実施形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「実施形態の」「実施形態では」等との表記を付して説明しているが、そのような表記のない内容に設計変更が許容されないわけではない。
【0075】
[変形例]
以下、変形例について説明する。変形例の図面および説明では、実施形態と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付する。実施形態と重複する説明を適宜省略し、第1実施形態と相違する構成について重点的に説明する。
【0076】
第1実施形態の説明では、車載電源40が蓄電池である例を示したが、本発明はこれに限定されない。車載電源40は、圧縮機10を駆動可能な電力を供給可能なものであればよく、例えば各種発電機、乾電池、燃料電池など種々の原理に基づく電源であってもよい。
【0077】
第1実施形態の説明では、圧縮機10は、第1モードと第2モードとで異なる電圧で駆動される例を示したが、圧縮機10を駆動する電圧は、第1モードと第2モードとで同じてあってもよい。
【0078】
第1実施形態の説明では、第2圧縮空気Ap2がブレーキ駆動装置96と扉開閉装置98とに供給される例を示したが、第2圧縮空気Ap2は、ブレーキや扉以外の車両の各部の機構を動作させるため用いられてもよい。
【0079】
第4実施形態の説明では、電磁弁56がノーマルオープンタイプである例を示したが、電磁弁56は、非通電時に閉じ、通電時に開くノーマルクローズタイプであってもよい。
【0080】
上述の変形例は、実施形態と同様の作用・効果を奏する。
【0081】
上述した実施形態と変形例の任意の組み合わせもまた本発明の実施形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施形態は、組み合わされる実施形態および変形例それぞれの効果をあわせもつ。
【符号の説明】
【0082】
1・・車両、 10・・圧縮機、 16・・圧縮装置制御部、 20・・第1タンク、 22・・第1調圧部、 24・・第1タンク通路、 30・・第2タンク、 32・・第2調圧部、 34・・第2タンク通路、 40・・車載電源、 42・・充電制御部、 50・・通路制御部、 52・・制圧弁、 54・・逆止弁、 56・・電磁弁、 60・・2方向電磁弁、 80・・車体、 82・・パンタグラフ、 84・・架線、 86・・昇降装置、 100・・空気圧縮システム。