(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-02
(45)【発行日】2023-02-10
(54)【発明の名称】弾性脚部を有する、蠕動ポンプ用のホースカートリッジ
(51)【国際特許分類】
F04B 43/12 20060101AFI20230203BHJP
F04C 5/00 20060101ALI20230203BHJP
【FI】
F04B43/12 A
F04C5/00 341N
F04C5/00 341C
(21)【出願番号】P 2018563829
(86)(22)【出願日】2017-07-27
(86)【国際出願番号】 DE2017000226
(87)【国際公開番号】W WO2018019320
(87)【国際公開日】2018-02-01
【審査請求日】2020-06-08
(31)【優先権主張番号】102016009174.6
(32)【優先日】2016-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】511072910
【氏名又は名称】ダブリュー.オー.エム.ワールド オブ メディシン ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ゲルバート,ニールス
【審査官】落合 弘之
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-057526(JP,A)
【文献】特開2007-224909(JP,A)
【文献】特表2013-541666(JP,A)
【文献】実開平02-072380(JP,U)
【文献】特表平07-501868(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0057856(US,A1)
【文献】特開平05-168709(JP,A)
【文献】特開平09-060593(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 5/00
F04B 43/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローラホイールポンプに使用するための、U字状構造を有するホースカセットであって、
ベース面および2つの脚部を有し、
前記脚部が、可撓性材料で作られており、2つの前記脚部はフィルムヒンジによって、前記ベース面に接続されており、前記ベース面に設けられた掛止要素の箇所で前記脚部はスナップ嵌めされており、
前記脚部の端部に、固定要素が1つずつ動かぬように固定されており、
前記脚部の一方に沿って延伸する少なくとも1つの入口ホースが、第1の固定要素と接続
可能であり、
前記脚部の他方に沿って延伸する少なくとも1つの出口ホースが、第2の固定要素と接続
可能であり、
少なくとも1つのポンプホースセグメントが、
一端が前記第1の固定要素と接続可能であり、他端が第2の固定要素と接続可能であり、前記ポンプホースセグメントが前記第1の固定要素及び前記第2の固定要素に接続された場合、前記ホースカセットが前記ローラホイールポンプに挿入されていない状態では、
前記ポンプホースセグメントは少なくとも120度の角度に及ぶ円弧に沿って前記固定要素間に延
びるようになる、ホースカセットにおいて、
前記脚部が、前記ローラホイールポンプへの前記ホースカセットの挿入中に前記固定要素間の距離を可逆的に変更できるように、前記ベース面のみで互いに接続され、
曲げによって可逆的に変形可能であり、
挿入中は、前記固定要素間の距離は、ローラホイールの直径よりも大きく、作動位置では、前記固定要素間の距離が前記ローラホイールの直径よりも小さくなるように、前記脚部は可逆的に変形可能であることを特徴とする、ホースカセット。
【請求項2】
前記ホースカセットが、PVC、SBC、PA
、PLA、ABS、MABS、PP、PS、PTFE、PET、PE、または
これら材料の混合物などの熱可塑性材料で作られていることを特徴とする、請求項1に記載のホースカセット。
【請求項3】
前記脚部が、曲げによって、
a)可逆的に拡開される、
b)可逆的に互いに押圧される、または
c)前記ローラホイールの平面外に可逆的に変形される
のいずれかであることを特徴とする、請求項1に記載のホースカセット。
【請求項4】
圧送される液体のパラメータを測定するための1つ以上のセンサを有することを特徴とする、請求項1に記載のホースカセット。
【請求項5】
温度、電気抵抗、導電率、O
2含有量、CO
2含有量、塩含有量、および/または
気泡を測定するための1つ以上のセンサを有することを特徴とする、請求項4に記載のホースカセット。
【請求項6】
少なくとも1つの固定要素が、圧力測定用の可撓性膜を含むことを特徴とする、請求項1に記載のホースカセット。
【請求項7】
前記ホースカセット内または前記ホースカセット上
に、情報が
記憶されたデータ媒体
が設けられていることを特徴とする、請求項1に記載のホースカセット。
【請求項8】
ローラホイールポンプに使用するための、U字状構造を有するホースカセットであり、
ベース面および2つの脚部を有し、
前記脚部が、可撓性材料で作られており、
前記脚部の端部に、固定要素が1つずつ動かぬように固定されており、
前記脚部の一方に沿って延伸する少なくとも1つの入口ホースが、第1の固定要素と接続
可能であり、
前記脚部の他方に沿って延伸する少なくとも1つの出口ホースが、第2の固定要素と接続
可能であり、
少なくとも1つのポンプホースセグメントが、
一端が第1の固定要素と接続可能であり、他端が第2の固定要素と接続可能であり、前記ポンプホースセグメントが前記第1の固定要素及び前記第2の固定要素に接続された場合、前記ホースカセットが前記ローラホイールポンプに挿入されていない状態で、
前記ポンプホースセグメントは少なくとも120度の角度に及ぶ円弧に沿って前記固定要素間に延び
るようになり、
前記脚部が、前記ローラホイールポンプへの前記ホースカセットの挿入中に前記固定要素間の距離を可逆的に拡大できるように、前記ベース面のみで互いに接続され、
曲げによ
って可逆的に変形可能である、ホースカセットを製造する方法であって、
a)少なくとも2つのフィルムヒンジおよび複数の掛止要素を有する実質的に平坦な射出成型部品を可撓性材料で作るステップと、
b)前記フィルムヒンジの箇所で射出成型部品を折り曲げるステップと、
c)前記ベース面に設けられた前記掛止要素の箇所で前記脚部をスナップ嵌めするステップと、
d)2つの固定要素を取り付けるステップと、
を含み、
前記固定要素の箇所に前記入口ホース及び前記出口ホースを嵌める
ことができる、方法。
【請求項9】
前記
可撓性材料が、PVC、SBC、PA
、PLA、ABS、MABS、PP、PS、PTFE、PET、PE、または
これら材料の混合物である、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蠕動ポンプ用のホースカセットの改良に関する。ホースカセットは、液体輸送用ホースセグメントがローラホイールをより良好に取り囲めることにより圧送能力が向上するように、U字状であるとともに可撓性材料で作られる。驚くことに、そのように構成されたカセットを先行技術のカセットよりも容易かつ経済的に作ることができる。
【背景技術】
【0002】
医用工学において、蠕動ホースポンプが、特に低侵襲性外科手術で、吸引およびすすぎポンプとして頻繁に用いられる。そのようなポンプは、関節鏡検査、腹腔鏡検査、泌尿器科、および子宮鏡検査で頻繁に使用される。そのような用途では勿論、生体適合性および無菌性を確保することが特に重要である。さらに、日常操作に適していることも重要である:特にセットアップ時間、すなわち、医療スタッフが使用前に液体ポンプの準備に要する時間が非常に重要である。
【0003】
そのような蠕動ポンプの取り扱いを簡単にするために、事前準備されたホースカセットの使用が確立されている。そのようなホースカセットは、例えば、欧州特許出願公開第1108891号明細書、米国特許第9,289,110号明細書、または欧州特許出願公開第1820967号明細書に記載されている。欧州特許出願公開第1820967号明細書は、例えば、2つの前面固定要素と、2つの固定要素間に延びるポンプホースセグメントとを伴うカセットハウジングを有するホースカセットであって、ポンプへのカセットの挿入によって、ポンプホースセグメントがローラホイールに跨る、ホースカセットを記載している。カセットは、全てのホース接続部を既に含んでいる。カセットは、ホースポンプの開口に簡単に摺動されることができ、よって、すぐに使用可能な状態にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】欧州特許出願公開第1108891号明細書
【文献】米国特許第9,289,110号明細書
【文献】欧州特許出願公開第1820967号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
異なる医療目的のために、そのようなポンプの圧送能力をさらに向上できることが望ましいことがある。ホースカセットが使い捨てユニットとして用いられるので、製造コストの削減が望ましいことがある。
【0006】
驚くことに、以下に記載した改良型のホースカセットにより、圧送能力の向上を実現できること、および記載したホースカセットをより低コストで製造できることが判明した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、本発明の主題は、U字状構造を有するホースカセットであって、
ベース面および2つの脚部を有し、
脚部が、丈夫な可撓性材料、好ましくは熱可塑性材料で作られており、
脚部のベース面の端部に、固定要素が1つずつ動かぬように固定されており、
少なくとも1つのポンプホースセグメントが、ホースカセットがポンプに挿入されていない状態で、少なくとも120度の角度に及ぶ円弧に沿って固定要素間に延びており、
1つの固定要素がさらに、少なくとも1つのホースを入口として含み、第2の固定要素がさらに、少なくとも1つのホースを出口として含み、脚部が、ローラホイールポンプへのホースカセットの挿入中に固定要素間の距離を可逆的に変更できるように、ベース面のみで互いに接続され、拡張によって可逆的に変形可能である、ホースカセットである。
【0008】
好適な実施形態が、従属請求項の主題である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】本発明のホースカセットのローラホイール周りへ取付時の脚部の動きを示す図である。
【
図3】上側が本発明における作動位置でのホースの遮断状況を示す図であり、下側が先行技術における作動位置でのホースの遮断状況を示す図である。
【
図5】本発明のホースカセットの一実施形態を示す斜視図である。
【
図6】ホースカセットの脚部が屈曲変形する状態を示す図である。
【
図7】a)はカセット脚部を拡開する必要がない代替的なホースカセットの実施形態を示す図であり、b)は脚部の端部の意図的に変形可能なヒンジ状エリアを有するホースカセットを示す図であり、c)はカセット内のローラホイールの偏心位置に対して、変形可能な脚部を1つだけ有するホースカセットを示す図である。
【
図8】1つの部材で成型されたホースカセットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明によるカセットの特色は、先行技術のカセットと比べて、2つの脚部が、ベース面のみで互いに接続されていることである(
図1)。このようにして、脚部を拡開することにより、互いに引き離すことができる。この拡開の可能性により、ポンプへのカセットフレームの挿入、特に:ローラホイール周りへの取付が容易になる。先行技術のホースカセットにおいて、脚部の端部(例えば、欧州特許出願公開第1820967号明細書によるホースカセットの固定要素)は、ローラホイールの直径よりも長い離間距離を互いに有する必要がある(欧州特許出願公開第1820967号明細書の
図4を参照)。本発明によるホースカセットにおいて、脚部は、挿入中に拡張でき、カセットの作動位置で元の距離に戻る(
図2)。結果として、脚部の端部での2つの固定要素の距離が、作動位置でローラホイールの直径よりも短くなり得ることが実現される。2つの固定要素の相互距離は通常、40%よりも大きく、好ましくは80%よりも大きく増加する。
【0011】
判明したように、作動位置(ローラホイールの直径よりも短い固定要素の離間距離)でのそのような構造は、圧送能力にとって有利である:本発明によるローラホイールポンプにおいて、図示した作動位置では、液体流がローラホイールの動きに抵抗できないように、ホースが3箇所(すなわち3つのローラホイール)で遮断される(
図3下)。先行技術の構造において、ホースの最大1箇所が完全に遮断される(
図3上)。結果として、本発明によるカセットは、より高い圧送能力、特に、(例えば、液体の詰まりの場合の)逆圧に対するより高い抵抗を有する。同時に、逆圧に起因する液体の戻り流による交差汚染のリスクが最小化される。
【0012】
基本的にU字状ホースカセットフレームのみから成る、本発明によるホースカセットの場合、例えば欧州特許出願公開第1820967号明細書に図示されるような従来のカセットの場合よりも少ない材料が必要とされる。本発明によるホースカセットフレームは、ベース面および2つの脚部のみから成る。カセットは、丈夫な可撓性材料、好ましくは、PVC、SBC、PA、PLA、ABS、MABS、PP、PS、PTFE、PET、PE、または上記材料の混合物などの熱可塑性材料で作られる。脚部が変形可能(例えば、拡張可能)であることが不可欠であり、このことは、材料の選択および正確な形成によって確保される。
【0013】
U字状カセットの端部に設けられた固定要素は典型的に、対応する接続部材によるホースの接続を可能にする中空体として構成される。各固定要素には、例えば、入口ホースまたは出口ホースがそれぞれ設けられる。固定要素間には、ポンプホースセグメントが位置する。典型的に、入口ホースおよび出口ホースは、ポンプホースセグメントの材料とは異なる材料で作られる。例えば、ポンプホースセグメントは、可撓性の高いシリコーンから成ってもよい一方、入口ホースおよび出口ホースは、比較的低コストのPVCで作られてもよい。
【0014】
さらに、後述するセンサまたは膜が固定要素の一部であってもよい。そのような固定要素は、例えば欧州特許出願公開第1820967号明細書に記載されており、同文献の全体が参照により本明細書に組み込まれる。最も簡単な場合、固定要素は、固定要素を有する脚部の端部間にポンプホースセグメントが形成されるように、1つのホースのみを固定する。このようにして、固定要素は、カセットの作動位置におけるポンプホース要素の緊張と、液体流の流れ方向の必要な反転とに備える。
【0015】
ローラホイール直径8cmのローラホイールポンプでの作動の場合、固定要素の内側距離は、例えば5~8cmでもよい。脚部を拡張することにより、それらをローラホイール周りに案内することができる。拡張の代わりに、脚部はまた、
図6に示すように、ローラホイールの平面外への屈曲によって変形されてもよい。この場合、脚部は、対応する変形可能性を有する必要がある。
【0016】
固定要素間に延びるポンプホースセグメントは、円弧に沿って延び、少なくとも120度、好ましくは少なくとも150度、特に好ましくは約180度の角度に及ぶ。特殊な場合、例えば、ポンプの対応する案内要素により、作動位置で固定要素が互いに押圧されるときに、角度はまた180度を越えてもよい。
【0017】
カセットの単純化された形状はまた、驚くことに、特に簡単な製造を可能にする:
【0018】
カセット全体は、平坦な射出成型部品として単一の作業で製造することができる。射出成型部品は、U字状を得るために破断せずに折り曲げられるように、材料がフィルムヒンジとして構成される少なくとも2つの箇所を含む(「折り曲げ式カセット」、
図4を参照)。さらに、射出成型部品は、互いに向けて折り曲げられたカセットの部品をスナップ嵌めして使用可能状態にすることを可能にする掛止具を含む。該当する場合、安定性を高めるために、折り曲げ箇所の領域で追加の接着または溶着作業を行うことができる。好ましくは、製造された射出成型部品は、ホース用の対応する穴および凹みならびに案内ウェブを既に含んでいる。必要であれば、対応する成型要素(例えば、リブ)によって剛性を高めることができる。
【0019】
製造中、固定要素は、射出成型または3D印刷によって適合することができる。代わりに、固定要素は、別個の作業で製造されて、脚部の端部に嵌められる。代わりに、折り曲げ式カセットは勿論、3D印刷によって製造することができる。
【0020】
また代わりに、カセットは勿論、1つの部材(
図8を参照)または複数の部材として従来の方法で成型または印刷することができる。
【0021】
カセットのベース部分にある1つ以上の穴を通じて、入口ホースを導入して固定要素に接続することができる。同じことは、出口ホースにも当てはまる。
【0022】
カセットの特定の実施形態において、固定要素の少なくとも1つの前面が、(例えば、シリコーン、TPE、またはPVCで作られた)可撓性膜を含む。挿入されたカセットにより、可撓性膜は、対応する力/移動量変換器と相互作用し、よって圧力測定を可能にすることができる。
【0023】
ホースカセットの特定の実施形態において、ホース脚部は、複数回使用できないように、意図的に破断できるエリアを備えてもよい。
【0024】
本発明の特定の実施形態において、カセットは、ポンプによって読み取り可能な情報を含む。これは、例えば、使用目的、能力、または使用期限についての情報である。対応するデータは、例えば、バーコード形式などでデータ媒体に記憶してもよく、例えば、RFIDチップまたは別の既知の方法によって、記憶してもよい。記憶の形式に応じて、電波または光によって情報の読み取りが行われる。
【0025】
本発明の特定の実施形態において、カセットは、複数回の使用を防止するためにコードを備える。このコードは、電子的に記憶することができるが、色または形状の手段によって実装することもできる。
【0026】
本発明によるカセットの改良はまた、複数のホースラインを同時に圧送できるように、平行な複数のホースセグメントを含んでもよい。そのようにして、ポンプおよび本発明によるカセットにより、例えば、体腔への入口および体腔からの出口を同時に実現することができる。
【0027】
ホースカセット、特に固定要素はまた、さらなるセンサを備えてもよい。例えば、圧送される液体の温度測定が、対応する温度センサによって行われてもよい。電気抵抗または導電率の測定により、液体の種類および液体中の溶存物質の含有量(例えば、塩またはソルビトール/マンニトール)を測定することができる。さらに、対応する警告を可能にするように、気泡を測定する可能性がある。酸素(O2)もしくは二酸化炭素(CO2)の含有量および/または他のパラメータの測定が、対応するセンサによって可能である。センサは、できるだけポンプの一部であることが好ましい。よって、例えば、温度測定は、ホースカセットがIR透過性視界窓を含むならば、ポンプ内の赤外センサによって行うことができる。抵抗または導電率を測定する場合、カセットは、対応する接続部を有する2つの電極を含んでもよい。ポンプの対応する接点により、電気パラメータを測定することができる。
【0028】
本発明によるホースカセットは、液体(水、脂肪、血液など)を吸引するためにも、体腔、例えば、内視鏡検査の範囲をすすぐためにも使用することができる。圧送能力および逆圧抵抗が従来のローラホイールポンプよりも高まることにより、外科的処置の状況における体腔の拡幅が向上する。本発明によるホースカセットはまた、創傷治療における傷の洗浄に使用することができる。さらに、カセットは、(例えば、透析、血液加熱または酸素富化の最中の)血液循環の状況で使用することができる。
【0029】
ホースカセットの作動に必要とされるローラホイールポンプは実質的に、欧州特許出願公開第1820967号明細書に記載されるように設計してもよい。ポンプは、例えば、そのハウジング内に、カセットと相補的なカセットシャフトを備える。ここでは、カセットを挿入するときに、まず脚部を所要に拡張させ、次いで拡張していない状態に戻らせる案内要素、特に案内レールが役に立つ。掛止要素により、カセットを作動位置に支持することが容易になる。勿論、センサ要素(例えば、圧力センサ)は、作動位置で固定要素が位置する箇所に配置される必要がある。ハウジングのカセット用の挿入開口は、カセットを挿入するときの間違いを防止するために、規定の形状を有してもよい。
【0030】
本発明による基本的な考えはまた、代替的な実施形態によって実現することができる。
【0031】
図7aは、例えば、ローラホイールを最適な方法で取り囲むために、カセット脚部を拡開する必要がない代替的な実施形態を示している。
図7aによる実施形態において、脚部は、脚部の端部を内側に変形できるように関節状部分を含む。ポンプホースセグメントの緊張により、固定要素を有する脚部の端部は、内側に変形し、ローラホイールの必要な包囲に備える。
【0032】
図7bは、脚部の端部の意図的に変形可能なヒンジ状エリアを有する同様の設計を示している。
【0033】
図7cに模式的に示すように、いくつかの状況において、例えば、(作動位置にある)カセット内のローラホイールの偏心位置に対して、変形可能な脚部を1つだけ有することができる。
【0034】
これらの実施形態において、2つの固定要素の相互距離は通常、30%よりも大きく、好ましくは60%よりも大きく、特に80%よりも大きく減少する。
【0035】
例:本発明によるカセットの一実施形態が、例えば
図5に示される。
【0036】
外形寸法146×86×30mmを有し、熱可塑性材料SBC(Styrolux 656c、弾性係数=1,800MPA、破断伸び20%)から成り、壁厚1.5mmを有する折り曲げられたカセット。非組付け状態において、ポンプセグメントの端部間の平均距離は、A1=50mmである。ポンプセグメントは、ショアA硬さ50、長さ=160mm、外径=11mmおよび内径=8mmを有するシリコーンホースである。カセット端部の離間距離はA3=32mmである。
【0037】
カセットがポンプに挿入されるときに、直径60mmおよび厚さ24mmを有するローラホイールを乗り越える必要がある。材料の弾性およびカセットの特定の形状寸法により、カセット寸法A3の87%よりも大きな拡張が可能になる。ローラホイールの後方において、弾性変形したカセットは、その元の形状(A3=32mm、A1=50mm)に戻る。
【0038】
高いポンプ能力を発揮し、ローラホイールとポンプセグメントとの間の自己密封効果を確保するために、ポンプセグメントは、十分に緊張される必要があり、ポンプセグメントの端部は、ローラホイール直径よりも短い距離を有する必要がある。このために、カセットはさらに、直径60mmのローラホイールの軸線が箇所P1になるまで、距離A2に沿ってローラホイールに対して摺動される。緊張された端部位置において、カセットとローラホイール軸線との距離は、A2=47.5mmである。よって、ポンプセグメントは、その長さの約25%膨張する。さらに、カセットの端部は、寸法A3=32mmを固定するために支持される。それにより、ポンプセグメントの端部の平均距離A1=50mmが、恒常的にローラホイール直径60mmよりも小さく保たれる(ここでは約17%小さい)。