(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-02
(45)【発行日】2023-02-10
(54)【発明の名称】格闘ゲーム装置
(51)【国際特許分類】
A63H 13/06 20060101AFI20230203BHJP
A63F 9/00 20060101ALI20230203BHJP
【FI】
A63H13/06
A63F9/00 505F
(21)【出願番号】P 2019033168
(22)【出願日】2019-02-26
【審査請求日】2021-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003584
【氏名又は名称】株式会社タカラトミー
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】市川 隆司
(72)【発明者】
【氏名】大金 美奈子
【審査官】前地 純一郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/067474(WO,A1)
【文献】特開平08-224362(JP,A)
【文献】特公平07-036842(JP,B2)
【文献】実開平01-119687(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63H 1/00-37/00
A63F 9/00- 9/20
A63F 9/26-11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パンチ動作をする左右の手を有する人形と、中央処理装置と、前記中央処理装置で制御され
前記人形の左右の手を駆動させるためのアクチュエータと、を備えた格闘ゲーム装置であって、
対戦する前記人形が複数同時に装着可能に構成され、内部に前記中央処理装置及び前記アクチュエータが設けられたゲーム盤を備え、前記ゲーム盤には、装着される複数の人形の
左右の手に対応して設けられ赤外線を発する赤外線発信部と、
前記人形の左右位置でプレイヤの
左右の手で反射した赤外線を受信
可能な赤外線受信部とが設けられ、
前記人形は装着場所でパンチ動作をするように構成され、
前記中央処理装置は、前記赤外線受信部が受信した赤外線に基づいて
プレイヤの左右の手のいずれが動作したかを検出し、前記アクチュエータを制御
して検出されたプレイヤの左右の手に対応した人形の左右の手をパンチ動作させ、ボクシングゲームを行わせるようにしたことを特徴とする格闘ゲーム装置。
【請求項2】
前記赤外線発信部は、前記ゲーム盤に装着される複数の人形の
左右の手に対応した個数設けられ、前記赤外線発信部のそれぞれからは他の前記赤外線発信部からの赤外線と識別し得るID付きの赤外線が発信され、前記赤外線受信部は1つ設けられ、前記中央処理装置は、前記赤外線受信部が受信した赤外線の前記IDに基づいて前記アクチュエータを制御することを特徴とする請求項1に記載の格闘ゲーム装置。
【請求項3】
少なくとも1つの前記人形の
左右の手が前記中央処理装置の制御によって駆動され得るモードを有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の格闘ゲーム装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は格闘ゲーム装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、攻撃動作を実行可能な人形自体に物体センサを設け、物体センサの出力に基づいて、人形を動作させる玩具が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、2体の人形が対峙され、各プレイヤが手元のゲーム盤に連結された操作子を操作して人形に格闘をさせる玩具が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】WO2016/067474号公報
【文献】特公平7-36842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前者のように、上記玩具を格闘ゲームに使用する場合には、人形が複数体必要となるが、上記玩具では人形自体に物体センサを設けているため、人形自体の構造が複雑で、値段も高い。したがって、複数体の人形を用いて遊ぶ格闘ゲームには適さないという問題があった。
また、後者のように操作子を用いる場合には、操作子とゲーム盤との連結構造が必要となり、その分複雑となり、また、プレイヤが自由に手を動かせないという問題があった、
本発明は、かかる問題点に鑑みなされたもので、主に、人形自体の構造が簡素且つ廉価である格闘ゲーム装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の手段は、
パンチ動作をする左右の手を有する人形と、中央処理装置と、前記中央処理装置で制御され前記人形の左右の手を駆動させるためのアクチュエータと、を備えた格闘ゲーム装置であって、
対戦する前記人形が複数同時に装着可能に構成され、内部に前記中央処理装置及び前記アクチュエータが設けられたゲーム盤を備え、前記ゲーム盤には、装着される複数の人形の左右の手に対応して設けられ赤外線を発する赤外線発信部と、前記人形の左右位置でプレイヤの左右の手で反射した赤外線を受信可能な赤外線受信部とが設けられ、前記人形は装着場所でパンチ動作をするように構成され、
前記中央処理装置は、前記赤外線受信部が受信した赤外線に基づいてプレイヤの左右の手のいずれが動作したかを検出し、前記アクチュエータを制御して検出したプレイヤの左右の手に対応した人形の左右の手をパンチ動作させ、ボクシングゲームを行わせるようにしたことを特徴とする。
【0006】
第2の手段は、第1の手段であって、前記赤外線発信部は、前記ゲーム盤に装着される複数の人形の左右の手に対応した個数設けられ、前記赤外線発信部のそれぞれからは他の前記赤外線発信部からの赤外線と識別し得るID付きの赤外線が発信され、前記赤外線受信部は1つ設けられ、前記中央処理装置は、前記赤外線受信部が受信した赤外線の前記IDに基づいて前記アクチュエータを制御することを特徴とする。
【0008】
第3の手段は、第1の手段又は第2の手段であって、少なくとも1つの前記人形の左右の手が前記中央処理装置の制御によって駆動され得るモードを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
第1の手段によれば、プレイヤの動作に連動して人形がパンチ動作するので、面白みのある格闘ゲーム装置が実現できる。この場合、ゲーム盤側に中央処理装置その他で構成されるコンピュータや電源及びアクチュエータが搭載されるので、人形自体の構造が簡素化され、廉価な人形とすることができる。
【0010】
第2の手段によれば、複数の赤外線発信部から発信される赤外線は互いに識別可能となっており、1つの赤外線受信部で受信するように構成されているため、装置構成も簡素で済む。
【0012】
第3の手段によれば、プレイヤ同士が自身の動作を通じてコンピュータの制御下で自身の人形を動作させて当該人形に攻撃(パンチ)を繰り出させるモードと、プレイヤの動作を介さずコンピュータの制御下で少なくとも1体の人形を動作させて当該人形に攻撃(パンチ)を繰り出させるモードとを有するので、一人でも格闘ゲーム(ボクシングゲーム)を楽しむことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態の格闘ゲーム装置の外観を示した斜視図である。
【
図2】ゲーム盤内の駆動装置を示した斜視図である。
【
図4】人形内の手動作機構の一部を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(構成の概略)
図1は、実施形態の格闘ゲーム装置100の外観を示した斜視図である。
この格闘ゲーム装置100は、ゲーム盤10の上に着脱可能にセットされた台座付きの2体の人形20,20を備えている。この格闘ゲーム装置100の遊び方には2つのモードがある。
第1モードは二人プレイモードで、2人のプレイヤが自身の動作を通じてコンピュータの制御下で自身の人形20を動作させて当該人形20に攻撃を繰り出させるものである。この第1のモードでは、2体の人形20の後ろに各プレイヤが位置し、プレイヤが自身の人形20の左右位置で左右のパンチを繰り出すと、当該人形20も対応する左右の手でパンチを繰り出す。そして、人形20のパンチが相手方の人形20の顔面に上手くヒットすると、ヒットされた側の人形20は台座ごと後ろに倒れる。これによって第1のモードの格闘ゲームは終了する。
第2モードは一人プレイモードであり、1体の人形20はプレイヤが動かし、他の人形20はプレイヤの動作を介さずコンピュータの制御下で自動的に動作させて当該人形20に攻撃を繰り出させるものである。例えば、
図1で左側の人形20の後ろにプレイヤが位置し、第1モードの時と同じにプレイヤ自身の動作を通じてコンピュータの制御下で自身の人形20を動作させて当該人形20に攻撃を繰り出させる。一方、右側の人形20は、ゲーム盤10内に組み込まれたコンピュータによって自動的に人形20に攻撃を繰り出させる。人形20のパンチが相手方の人形20の顔面に上手くヒットすると、ヒットされた側の人形20は台座ごと後ろに倒れ、第2のモードの格闘ゲームは終了する。
【0015】
(細部の構成)
1.ゲーム盤10の外観
ゲーム盤10の表面には人形載置部11が2つ所定の間隔で設けられている。この2つの人形載置部11,11にそれぞれ一体ずつ人形20を載置すると、2体の人形20,20は互いに所定の間合いで向き合う。
【0016】
ゲーム盤10の上面には、左右方向の中央前側にはスライド式の操作子12が設けられている。この操作子12は3ポジションを取る。操作子12が左右方向中央にあるときには電源がオフとなる。また、操作子12が左に操作されると、電源がオンになると共に第1モードが選択される。一方、操作子12が右に操作されると、電源がオンになると共に第2モードが選択される。
また、ゲーム盤10の上面には、左右方向且つ前後方向の中央に赤外線受信部13が1つ設けられている。また、ゲーム盤10の左右方向の中央後側には音出力部14の放音孔14aが設けられている。
さらに、ゲーム盤10の上面には、人形20の左右の各脚部の近くに1つずつ赤外線発信部15a~15dが設けられている。
【0017】
ゲーム盤10の下面側には、図示しないが格闘ゲーム装置100の電源となる電池を収容する電池ボックスが設けられている。
【0018】
2.ゲーム盤10内の駆動装置30
図2はゲーム盤10の内部の駆動装置30を示している。
ゲーム盤10の内部には、駆動装置30として、動力源としてのモータ31と、モータ動力を人形20に伝達する動力伝達機構32とが各人形20に対して1つずつ設けられている。
【0019】
モータ31としては正逆転モータが使用されている。各モータ31には動力伝達機構32が連結されている。
すなわち、モータ31の出力軸の動力は、歯車32a、歯車32b及び歯車32cを介して歯車32dに伝達される。このうち歯車32dは、歯車32cを太陽歯車とする遊星歯車となっている。そして、遊星歯車である歯車32dは、モータ31の回転方向に応じた方向に、太陽歯車である歯車32cの回りを自転しながら公転する。これによって歯車32dは二重歯車320e及び二重歯車321eのうちの一方の歯車に噛合して、噛合した二重歯車320e及び二重歯車321eが回転する。
二重歯車320eが回転した場合、その動力は、歯車320f、クラッチ320gを介して回転体320hに伝達される。回転体320hには偏心ピン320iが付設され、偏心ピン320iには昇降部材320jが係合している。これにより、回転体320hが回転すると、昇降部材320jが昇降する。この昇降体320jは後述の左手用の手動作機構40に連結される。
一方、二重歯車321eが回転した場合、その動力は、歯車321f、クラッチ321gを介して回転体321hに伝達される。回転体321hには偏心ピン321iが付設され、偏心ピン321iには昇降部材321jが係合している。これにより、回転体321hが回転すると、昇降部材321jが昇降する。この昇降体321jは後述の右手用の手動作機構40に連結される。
【0020】
3.人形20内の手動作機構40
図4は人形20内の手動作機構40の一部を示している。
手動作機構40は、人形20がゲーム盤10に載置されたときに、動力伝達機構32に連結される。この手動作機構40は各手に対応して設けられている。
手動作機構40は押上げ部材41aを備えている。押上げ部材41aは人形20の足裏から肩近くまで延在し、下端部は対応する昇降部材320j,321jに係合され、上端部は人形20の肩関節の隣に位置している。人形20の上腕部21は、胴体22に回動可能に支持された肩軸23に固定され、肩軸23の回動に伴って人形20の前後方向に動作可能に構成されている。肩軸23には偏心軸24が付設され、偏心軸24は上記押上げ部材41aの上端が接している。或いは、偏心軸24は上記押上げ部材41aの上端部は長孔を介して係合している。その結果、押上げ部材41aが上下動すると、肩軸23が回動して上腕部21が人形20の前後方向に動作する。
図5に示すように、人形20の上腕部21には腕軸25を介して下腕部26が支持されている。そして、下腕部26は、上腕部21を1つのリンクとする4節リンク機構を介して腕軸25を中心に回動する。これにより、上腕部21が前方に向けて回動すると、下腕部26は前方に投げ出され、上腕部21が後方に向けて回動すると、下腕部26は後方に引き戻される。
【0021】
4.制御構成
図6は格闘ゲーム装置100の制御構成を示している。
格闘ゲーム装置100は制御構成として、中央処理装50、主記憶装置51、補助記憶装置52を備えている。
また、格闘ゲーム装置100は、入力装置として、電源/モードスイッチ53と、赤外線受信部13と、人形検出部54とを備えている。このうち、人形検出部54はゲーム盤10に設けられ、各人形20に対応して1つずつ設けられている。
また、格闘ゲーム装置100は、入力装置として、音出力部14と、4つの赤外線発信部15a~15dを備えている。赤外線発信部15a~15dからは中央処理装置50の制御下で周波数が異なる赤外線が発信される。
【0022】
中央処理装置50は制御装置50aと演算装置50bとを備えている。
補助記憶装置52にはゲーム進行プログラムや、プログラムが格納され、中央処理装置50は、ゲーム進行プログラムや各種データを適宜に読み出して制御及び演算を実行する。主記憶装置51はワークエリアとなる部分であり、必要に応じてゲーム進行プログラムやデータを一時的に記憶する。
【0023】
5.処理フロー
図7は中央処理装置50で実行される処理フローが示されている。
操作子12が操作されると、その下の電源/モードスイッチ53から操作検出信号が中央処理装置50に送られ、中央処理装置50はゲームを開始する。
まず、中央処理装置50は音出力部14を制御してゲームの開始のゴングを音出力部14から出力させる(ステップS1)。なお、アナウンスを出力してもよい。また、ゲーム中には効果音(パンチ音や歓声等)を出力してもよい。
その後、中央処理装置50は4つの赤外線発信部15a~15dから赤外線を発信させる(ステップS2)。赤外線の発信はゲーム中継続的に行われる。
【0024】
そして、中央処理装置50は、赤外線受信部13を通じて赤外線の受信の有無を継続的に監視し、赤外線(プレイヤの手で反射した赤外線等)を受信した場合、つまり、ステップS3の判定結果が肯定的(YES)であれば、中央処理装置50は受信した赤外線の周波数を解析し(ステップS4)、それがどこの赤外線発信器15a~15dから発信されたものかを特定し、それに応じて攻撃部を特定する(ステップ5)次に、中央処理装置50は、特定された攻撃部に対応した信号を対応するモータ31に出力し、モータ31を正転又は逆転させる。
なお、ステップ3の判定結果が否定的(NO)であれば、ステップ3に戻り、赤外線受信部13を通じて赤外線の受信の有無を監視する。
【0025】
その後、中央処理装置50は、人形20の状態を人形検出部54を通じて検出し、人形20がゲーム盤10上に存在しているか否かを判定し、人形20がゲーム盤10上に存在している場合(ステップS7:YES)、ステップS3に戻りその後の処理を実行する。
ステップ7の判定結果が否定的(NO)であれば、ゲーム終了のゴングの音を出力し(ステップS8)、ゲームを終了する。
なお、第2モードの時には、コンピュータが複数の攻撃パターンの中から1つを選択し、それに従って人形20を動作させる。
【0026】
(変形)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
例えば、上記実施形態では、ボクシングゲームとしたが、相撲その他の手や足を使用する格闘ゲーム一般に適用できる。
【0027】
また、上記実施形態では、赤外線発信部15から発信された赤外線の指向範囲内にプレイやの身体の一部が入ったかどうかだけを検出したが、その出入の速さを検出し、人形にその速さに応じた動作をさせるようにしてもよい。例えば、早いパンチを出すなどである。
【0028】
さらに、二人プレイモードのときのコンピュータ側の制御として相手方のプレイヤの動きに応じた動きをさせてもよい。例えば、相手方のパンチを避けるなどである。
【0029】
また、上記実施形態では、赤外線受信部13を1つだけ設けたが、赤外線受信部13を赤外線発信部15に対応する数だけ設けるようにしてもよい。この場合には、赤外線発信部15から発信される赤外線は同じ周波数であってもよい。
【0030】
また、上記実施形態では、アクチュエータとしてモータを設けたが、モータに限定されないことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0031】
10 ゲーム盤
13 赤外線受信部
15 赤外線発信部
20 人形
30 駆動装置
31 モータ
32 動力伝達機構
40 中央処理装置
41a 部材
50 中央処理装置
100 格闘ゲーム装置