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  • 特許-イチイ由来のプロモーター及びその用途 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-02
(45)【発行日】2023-02-10
(54)【発明の名称】イチイ由来のプロモーター及びその用途
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/11 20060101AFI20230203BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230203BHJP
   C12N 15/82 20060101ALI20230203BHJP
   A01H 1/00 20060101ALN20230203BHJP
【FI】
C12N15/11 Z ZNA
C12N5/10
C12N15/82 122Z
A01H1/00 A
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019053639
(22)【出願日】2019-03-20
(65)【公開番号】P2020150880
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2021-12-13
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 日本薬学会 第139年会PROGRAM、ファルマシア 55巻2号付録、平成31年2月1日発行、 公益社団法人 日本薬学会、第128頁
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 多葉田 誉ほか、日本薬学会年会要旨集第139年会、平成31年2月1日公開、22PO-am065、ウェブサイト <http://nenkai.pharm.or.jp/139/pc/ipdfview.asp?i=2972>
(73)【特許権者】
【識別番号】501123547
【氏名又は名称】北海道三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【復代理人】
【識別番号】100114465
【弁理士】
【氏名又は名称】北野 健
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】矢崎 一史
(72)【発明者】
【氏名】草野 博彰
(72)【発明者】
【氏名】南 洋
(72)【発明者】
【氏名】多葉田 誉
【審査官】福間 信子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0376640(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0007298(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0101478(US,A1)
【文献】国際公開第2010/122849(WO,A1)
【文献】特表2014-513982(JP,A)
【文献】特開2004-065096(JP,A)
【文献】CURIE C. et al.,Modular organization and developmental activity of an Arabidopsis thaliana EF-1 alpha gene promoter, 1993, Mol Gen Genet, vol. 238, p. 428-436
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)~()からなる群から選択される1種のDNAからなるプロモーター
(a)配列番号1から選択されるプロモーター活性を有する塩基配列からなるDNA、
(b)配列番号2で表される塩基配列を含み、前記プロモーター活性を有するDNA、
(c)前記(a)及び前記(b)から選択された1つのDNAが有する塩基配列と少なくとも90%以上の同一性を有する塩基配列からなり、前記プロモーター活性を有するDNA
(d)前記(a)及び前記(b)から選択された1つのDNAが有する塩基配列において、前記プロモーター活性を有する範囲内で1又は2~25個の塩基が欠失、置換又は付加された塩基配列からなるDNA。
【請求項2】
植物用である、請求項1に記載のプロモーター。
【請求項3】
前記植物が、Taxus属、Nicotiana属またはArabidopsis属に属する植物である、請求項2に記載のプロモーター。
【請求項4】
植物がTaxus属に属する植物である、請求項3に記載のプロモーター。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のプロモーターを含む発現ベクター。
【請求項6】
前記プロモーターと、該プロモーターの下流に機能的に連結された発現用遺伝子と、を含む、請求項5に記載の発現ベクター。
【請求項7】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のプロモーターと、プロモーターの下流に機能的に連結された発現用の遺伝子とを含むDNA断片。
【請求項8】
請求項6に記載の発現ベクター、又は請求項7に記載のDNA断片を含む形質転換体。
【請求項9】
前記発現ベクター、又は前記DNA断片による形質転換宿主が植物である、請求項8に記載の形質転換体。
【請求項10】
宿主のゲノム内に存在する請求項1乃至4のいずれか1項に記載のプロモーターの下流に挿入され該プロモーターと機能的に結合する発現用の遺伝子を有する形質転換体。
【請求項11】
前記宿主が植物である、請求項10に記載の形質転換体。
【請求項12】
前記植物がTaxus属、Nicotiana属またはArabidopsis属に属する植物である、請求項9または11に記載の形質転換体。
【請求項13】
植物がTaxus属に属する植物である、請求項12に記載の形質転換体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物細胞での目的遺伝子の発現用として有用なプロモーター、該プロモーターを有する発現ベクター及びDNA断片、またこれらのいずれかを含む形質転換体に関する。
【背景技術】
【0002】
抗がん剤を含む各種の生理活性物質を生産する有用植物として、イチイ科イチイ属植物、ナス科タバコ属植物、アブラナ科シロイヌナズナ属植物などが知られている。
イチイ科イチイ属植物、例えばタイヘイヨウイチイ(Taxus brevifolia NUTT)には、卵巣癌、乳癌、肺癌などの治療薬として使用されるタキサン系抗がん剤であるパクリタキセルが含まれている。現在、抗がん剤の活性成分としてのタキサン化合物の製造は、イチイ属植物のプランテーション、或いはイチイ属植物細胞培養法を用いて原料化合物が生産され、この原料化合物を前駆物質としてタキサン化合物を得る方法により行われている。しかしながら、イチイ属植物は地上20cmの高さに成長するのに10年以上かかる生長の遅い植物である。また、イチイ属植物の細胞培養での増殖速度は3~4週間で5~10倍と極めて遅い。従って、上記のタキサン化合物の製造方法は工業的生産には不十分であり、大量の原料化合物を得ることは困難である場合がある。
そこで、生産性の向上に寄与する遺伝子の導入を検討する上で、イチイ内で恒常的に高発現する遺伝子のプロモーターが求められている。
特許文献1には、強力なプロモーターを用いて生育にかかわる遺伝子の発現量を変化させることで、野生型と比べると生育が増大しているイチイを含むトランスジェニック植物を作製する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2010-511405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで本発明は、イチイ属などの植物、あるいはイチイ属などの植物の培養細胞を宿主として、所望の遺伝子の発現に有用なプロモーター、及び該プロモーターを有する発現ベクター及びDNA断片、並びにこれらのいずれかを含む形質転換体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前述目的を達成するため本発明者らが鋭意検討した結果、イチイ内で高発現する伸長因子1α遺伝子(Elongation factor 1α遺伝子、以下「EF1α遺伝子」という)を発見し、該遺伝子上流5.1kbに新規なプロモーターを含む領域を見出し、本発明を完成するに至った。
本発明にかかるプロモーターは、下記(a)~(e)からなる群から選択される1種のDNAからなることを特徴とする。
(a)配列番号1から選択されるプロモーター活性を有する塩基配列からなるDNA、
(b)配列番号2~5から選択される1つ乃至3つの塩基配列からなり、前記プロモーターとしての活性を有するDNA。
(c)前記(a)及び前記(b)から選択された1つのDNAが有する塩基配列と少なくとも70%の同一性を有する塩基配列からなり、前記プロモーターとしての活性を有するDNA、
(d)前記(a)及び前記(b)から選択された1つのDNAが有する塩基配列において、前記プロモーターとしての活性を維持する範囲内で1又は複数個の塩基が欠失、置換又は付加された塩基配列からなるDNA、
(e)前記(a)~(d)からなる群から選択された1つのDNAが有する塩基配列に相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つ前記プロモーターとしての活性を有するDNA。
本発明にかかる発現ベクターは、上記のプロモーターを含むことを特徴とする。この発現ベクターは、プロモーターと、プロモーターの下流に機能的に連結された発現用遺伝子と、を含むことができる。
本発明にかかるDNA断片は、上記のプロモーターと、プロモーターの下流に機能的に連結された発現用の遺伝子とを含むことを特徴とする。
本発明にかかる形質転換体の一形態は、上記の発現ベクター、又はDNA断片を含むことを特徴とする。
本発明にかかる形質転換体の他の形態は、宿主のゲノム内に存在する上記のプロモーターの下流に挿入されてプロモーターと機能的に結合した発現用の遺伝子を有することを特徴とする。
上記の形質転換体には、宿主としての植物または植物細胞を形質転換した植物形質転換体が含まれる。
本発明にかかるプロモーターは更に以下の発明に用いることができる。
(1)上記(a)~(e)からなる群から選択される1種のDNAの、宿主内での発現用遺伝子の発現用のプロモーターとしての使用または使用方法。
(2)上記(a)~(e)からなる群から選択される1種のDNAからなるプロモーターと、該プロモーターに機能的に連結した発現用遺伝子とを有する発現ユニットを、宿主中に形成する工程を有する、宿主の形質転換方法。
(3)宿主の形質転換による目的生産物の生産方法であって、該宿主に上記(a)~(e)からなる群から選択される1種のDNAからなるプロモーターと、該プロモーターに機能的に連結した前記目的生産物をコードする発現用遺伝子とを有する発現ユニットにより該宿主を形質転換して形質転換体を形成する工程、該形質転換体において前記プロモーター活性を利用して前記発現用遺伝子を発現させて前記目的生産物を生産する工程、とを有する目的生産物の生産方法。
上記の各発明において、発現用遺伝子として、配列番号1からなるDNAによって得られるプロモーター活性にかかる本来のEF1α遺伝子と異なる異種遺伝子を用いることができる。
また、宿主内での発現ユニットの形成は、前記プロモーターと前記発現用遺伝子を有する発現ベクターまたはDNA断片の宿主へ導入する方法、並びに、宿主の染色体が有する上記のプロモーターの下流に組み換えにより発現用遺伝子を機能的に導入して結合する方法、宿主の染色体の有する発現用遺伝子の上流に上記プロモーターを組み換えにより機能的に導入して結合する方法、から選択された少なくとも一つの方法を用いることができる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、イチイ属などの植物、あるいはイチイ属などの植物の培養細胞を宿主とした所望の遺伝子の発現に有用なプロモーター、及び該プロモーターを有する発現ベクター及びDNA断片、並びにこれらのいずれかを含む形質転換体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】cDNA配列解析により測定された各遺伝子の発現量をプロットした図である。
図2】プラスミドを導入したイチイ培養細胞を蛍光顕微鏡で観察した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に本発明を詳細に説明する。
イチイ(Taxus cuspidata)とヨーロッパイチイ(Taxus baccata)の交配種であるメディアイチイ(Taxus x media)のEF1α遺伝子は、その上流に恒常的にEF1α遺伝子の発現を行なっているプロモーター領域を有する。本発明者らは、このプロモーター領域が、イチイなどの植物あるいは植物培養細胞における目的遺伝子の発現量の向上に有用なプロモーター活性を有するとの新たな知見を得た。
本発明に係るプロモーターは、EF1α遺伝子の上流に存在するプロモーター活性を有する領域に由来するDNAからなる。このプロモーターにより、その下流に配置する発現用遺伝子を、植物や植物細胞において恒常的に発現させることができる。
すなわち、本発明に係るプロモーターは、下記(a)~(e)からなる群から選択される1種のDNAからなることを特徴とする。
(a)配列番号1から選択されるプロモーター活性を有する塩基配列からなるDNA、
(b)配列番号2~5から選択される1つ乃至3つの塩基配列からなり、前記プロモーターとしての活性を有するDNA。
(c)前記(a)及び前記(b)から選択された1つのDNAが有する塩基配列と少なくとも70%の同一性を有する塩基配列からなり、前記プロモーターとしての活性を有するDNA、
(d)前記(a)及び前記(b)から選択された1つのDNAが有する塩基配列において、前記プロモーターとしての活性を維持する範囲内で1又は複数個の塩基が欠失、置換又は付加された塩基配列からなるDNA、
(e)前記(a)~(d)からなる群から選択された1つのDNAが有する塩基配列に相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つ前記プロモーターとしての活性を有するDNA。
EF1α遺伝子の上流の5.1kbからなる領域の塩基配列を配列番号1に示す。
各配列番号の塩基配列は、5’末端から3’末端に向かって記載されており、メディアイチイ染色体においてEF1α遺伝子は、配列番号1の塩基配列の3’末端側に位置する。
上記(a)のDNAは、配列番号1から選択されるプロモーター活性を有する塩基配列からなる。
配列番号1は、EF1α遺伝子の5.1kbのプロモーターを含む領域の全塩基配列(ヌクレオチド配列ともいう)である。
なお、塩基配列またはヌクレオチド配列を以下単に「配列」という。
この配列番号1は、配列番号2:プロモーター領域、配列番号3:5’非翻訳領域1、配列番号4:イントロン、配列番号5:5’非翻訳領域2からなる。
上記(a)に含まれるDNAは、配列番号1から選択されるプロモーター活性を有する塩基配列からなる。このDNAには、配列番号1からなるDNA、並びに、配列番号1から選択した部分配列からなり、プロモーター活性を有するDNAが含まれる。なお、この部分配列は、配列番号1の1つの部分配列、または2つ以上の部分配列の組合せから構成することができる。
配列番号1の部分配列からなるDNAとしては、上記(b)に含まれるDNAを挙げることができる。上記(b)に含まれるDNAは、目的とするプロモーター活性が得られるように配列番号2~5から選択した1つの配列、あるいは2つまたは3つの組合せからなる配列からなる。
上記(b)に含まれる好ましいDNAとしては、配列番号2、3及び5を5’から3’方向に連結した配列、すなわち配列番号1からイントロンとしての配列番号4を除いた2.4kbの領域からなるDNAを挙げることができる。
【0009】
本発明に係るプロモーターを構成するDNAは、上記(a)及び(b)で規定するDNAに限定されず、上記(c)~(e)で規定するDNAを本発明に係るプロモーターの構成に用いることができる。
上記(c)で規定するDNAは、目的とするプロモーター活性が得られる範囲内で、上記(a)及び(b)で規定するDNAの有する配列と、少なくとも70%(但し、100%未満)の同一性(一致度や相同性ともいう)を有する配列からなるDNAである。
この配列の同一性の下限については、80%以上が好ましく、90%以上が好ましく、95%以上がより好ましい。
なお、同一性の値は、周知の相同性検索プログラムを用いて、基準となる配列と、比較対象配列の2つの配列をアライメントした際に、比較対象配列の、基準となる配列に対して一致した塩基の割合として算出される値である。この同一性の値の算定方法において、上記(a)及び(b)のDNAの配列が基準となる配列であり、上記(c)のDNAの配列が比較対象配列である。
【0010】
上記(d)で規定するDNAは、目的とするプロモーター活性が得られる範囲内で、上記(a)及び(b)で規定するDNAの有する配列の1又は複数個の塩基が置換、欠失、付加又は挿入された配列からなるDNAである。
上記(d)で規定するDNAにおける置換、欠失、付加又は挿入される複数個の塩基(ヌクレオチド)とは、例えば2~200個、好ましくは2~100個、より好ましくは2~50個、最も好ましくは2~25個の塩基数を意味する。前記(a)及び前記(b)から選択された1つのプロモーター活性を有するDNAの塩基配列を基準として、プロモーター活性が得られるように、これらの範囲の塩基数での置換、欠失、付加又は挿入を行なってもよい。
また、複数塩基の置換、欠失、付加又は挿入は、上記(c)で述べた同一性が、プロモーター活性が得られる範囲内で、70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上となるように行なっても良い。この場合も、前記(a)及び前記(b)から選択された1つのプロモーター活性を有するDNAの塩基配列を基準として、プロモーター活性が得られるように、これらの範囲での置換、欠失、付加又は挿入を行なってもよい。
上記(e)で規定するDNAは、上記(a)~(d)のDNAの有する配列に対して相補的な配列をからなるDNAに対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ所望のプロモーター活性を有するDNAである。
ここで、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするとは、60℃で2×SSC洗浄条件下で結合を維持することを意味する。ハイブリダイゼーションは、J. Sambrook et al. Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory (1989)に記載されている方法等、従来公知の方法で行うことができる。
なお、プロモーター活性は適当な宿主を用いたレポーターアッセイにより検証することができる。適当な宿主としては、イチイ属植物、タバコ属植物、シロイヌナズナ属植物等の植物細胞を挙げることができる。特に、イチイ属植物の細胞を使用することが好ましい。レポーターアッセイに使用するレポーター遺伝子は目的とするレポーター機能を有するものであれば限定されない。レポーター遺伝子としては、例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子、ルシフェラーゼ(LUC)遺伝子やβ-グルクロニダーゼ(GUS)遺伝子等を使用することができる。これらレポーター遺伝子を用いたアッセイは、公知のプロトコルに従って、あるいは公知のプロトコルを当業者における自明の範囲で適宜改変して行なうことができる。
本発明に係るプロモーターはその用途に応じて一本鎖DNAの形態で、あるいはプロモーター活性を有する配列からなる一本鎖DNAとその相補鎖からなる二本鎖DNAの形態で用いることがきる。
【0011】
本発明に係るプロモーターを利用することによって、転写活性に優れた発現領域を有するDNA断片等の核酸構築物を提供することができる。なお、核酸構築物には前述プロモーターの他に、当該プロモーターの転写活性を向上させるようなシスエレメントを含んでいても良い。この核酸構築物は、両末端に制限酵素認識配列を有するように構築することもできる。
本発明に係るプロモーターは、発現ベクターのプロモーター領域として用いることができる。
発現ベクターは、発現用の遺伝子を有する形態でも、発現用の遺伝子を有していない形態(発現用の遺伝子の挿入用サイトを有する)でもよい。
本発明に係るプロモーターを所望の発現用の遺伝子の発現を可能とする発現ベクターに組み込み、プロモーターの下流に発現用の遺伝子を機能的に結合することで、当該遺伝子の発現を転写レベルで向上させることができる発現ベクターを提供できる。
【0012】
発現ベクターのプロモーター以外の部分は、目的とする発現用の遺伝子の発現のための構成とすればよい。この発現ベクターのプロモーター以外の構成は、目的とする発現用の遺伝子の発現が可能であれば特に限定されず、利用する発現系に応じて適宜選択することができる。
発現ベクターは、宿主の細胞内の染色体(ゲノム)に導入する形態や染色体外に独立して保持する形態のいずれであっても良い。宿主の細胞内の染色体(ゲノム)に導入する形態では、宿主のゲノムが有する本発明にかかるプロモーターの下流に発現用の遺伝子を挿入して、プロモーターに機能的に結合する方法や、本発明に係るプロモーターと、プロモーターと機能的に結合した発現用の遺伝子のセットを宿主のゲノム中に組み換えにより導入する方法が利用できる。
なお、プロモーターの下流とは、プロモーターの配列における5’から3’方向における下流側をいう。
発現ベクターは、プロモーター以外の部分として、ターミネーター、エンハンサー、選択マーカー、複製開始点、マルチプルクローニングサイト等の少なくとも1つを構成ユニットとして備えることができる。これらの構成ユニットとしては、公知の材料から選択して用いることができる。
発現ベクターも、一本鎖DNAの形態として、あるいは二本鎖DNAの形態として提供することができる。
また、発現ベクターと同様に、本発明に係るプロモーターを用いて宿主における目的とする遺伝子の発現のためのDNA断片を作製することができる。このDNA断片の構成は、上記の発現ベクターと同様とすることができる。
ここで選択マーカーとは、発現ベクターの導入の目印として導入する遺伝子であり、通常蛍光タンパク質及び薬剤耐性遺伝子が使用される。本発明においてもこれら選択マーカー遺伝子を使用して発現ベクターを構築しても良く、該選択マーカーを用いて細胞を選抜、また薬剤で選択圧をかけ導入細胞のみを獲得することができる。
【0013】
本発明に係るプロモーター、それを有する発現ベクター及びDNA断片を作用させる宿主は、目的とする作用が得られるものであれば限定されない。
宿主に、上述した発現ベクターまたはDNA断片を導入して形質転換することで、目的とする遺伝子を発現する形質転換体を得ることができる。
形質転換体の形成方法の一形態として、発現ユニットを用いて宿主を形質転換する方法を挙げることができる。この発現ユニットは、本発明にかかるプロモーターと、このプロモーターと機能的に結合した発現用遺伝子とを有する。
発現ユニットを有する宿主の形質転換体の形成には、宿主中に発現ユニットを形成して宿主を形質転換する方法を用いることができる。宿主中での発現ユニットの形成には、宿主外で調製した発現ユニットを宿主に導入する方法、並びに、宿主の染色体中に発現ユニットを形成する方法の少なくとも一方を用いることができる。宿主の染色体中に発現ユニットを形成する方法には、宿主の染色体中に本発明にかかるプロモーター及び発現用の遺伝子の一方または両方を組み換えにより導入する方法を用いることができる。
発現ユニットは、上述した発現ベクターまたはDNA断片の形態として用いることができる。
【0014】
発現用遺伝子としては、宿主での生産を目的とするタンパク質をコードする遺伝子を用いることができる。このタンパク質としては、宿主での目的生産物の合成系に関与する酵素を挙げることができる。
宿主の形質転換は従来公知の形質転換法が使用できる。形質転換法としては、アグロバクテリウム法、パーティクルボンバードメント法、エレクトロポレーション法、プロトプラスト法、PEG法、ウィスカー法等が挙げられる。形質転換法は、発現ベクター及びDNA断片が細胞に導入されればよく、これらの形質転換法の限りではない。
宿主に使用できる植物及び植物細胞としては特に限定されないが、Taxus baccata、Taxus cuspidata、 Taxus x media等のTaxus属、Nicotiana tabacum等のNicotiana属、Arabidopsis thaliana等のArabidopsis属に属する植物及びその細胞(例えば培養細胞)を挙げることが出来る。
本発明にかかるプロモーターに機能的に連結する発現用の目的遺伝子としては、形質転換用の宿主において本発明にかかるプロモーターの作用によって発現可能であるものであればよい。
Taxus属の植物、あるいはTaxus属の培養細胞等の植物細胞を宿主として用い、パクリタキセルの生産性向上を目的とする場合には、Taxadiene synthase (TXS)、taxadiene5α hydroxylase (T5α H)、taxadiene 5α-ol O-acetyltransferase (TDAT)、taxan 10β -hydroxylase(T10β H)、taxadiene 13α-hydroxylase (Tα H)、taxan 2α-O-benzoyltransferase (DBBT)、10-deacetylbaccatin III -10-O-acetyltransferase (DBAT)、phenylalanine aminomutase (PAM)、Baccatin III:3-amino, 3 phenylpropanoyltransferase (BAPT)、3’-N-debenzoyl-2-dexytaxol-N-benzoyltransferase (DBTNBT)等から選択されたパクリタキセルの合成に関与する酵素を形質転換体で生産するための遺伝子を挙げることができる。
【実施例
【0015】
以下に実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は後述の実施例に限定されるものではない。なお、特に説明がない限り「%」は質量基準である。
〔実施例1〕
1. イチイ培養細胞からのtotal RNA抽出
イチイ培養細胞として、T. x mediaの種子胚より10-5 M NAA及び3% スクロースを含むWP寒天培地を用いてカルスを取得し、該培地より寒天を除いたWP培地にて培養継代を繰り返し安定した増殖を繰り返すTxN16-1株を得た。TxN16-1株をWP培地に対し8.0 gFW移植し、100μM ジャスモン酸メチルを添加し、25℃、暗所下で14日間培養した。また、ジャスモン酸メチル未添加条件でも同じ株を同時に培養した。培養後、培養細胞を液体窒素で凍結、乳鉢で粉砕し、0.1 gを1.5 mlチューブに移した。ここに1 mlのCATB溶液(2% 臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、0.1 M Tris-HCl (pH 9.5)、20 mM EDTA、20 mM EDTA、1.4 M NaCl、1% β-mercaptoethanol)を添加し、65℃、10分間インキュベートした。等量のクロロフォルム/イソアミルアルコールを添加し、撹拌後15,000 rpm、10分間遠心分離した。遠心分離後水相を回収し、1/4量の10 M 塩化リチウム溶液を添加、-20℃、2時間静置した後、15,000 rpm、10分間遠心分離した。遠心分離後上清を除去し、500 μlのTE緩衝液を添加した後、15,000 rpm、10分間遠心分離し上清を回収した。上清に対しフェノール、フェノール/クロロフォルム処理を行い、遠心分離後水相を回収し1/4量の10 M 塩化リチウム溶液を添加、-20℃、2時間静置した後、15,000 rpm、10分間遠心分離した。上清を除去し沈殿を70%エタノールで洗浄、適量の滅菌水に溶解しtotal RNA抽出溶液を得た。
【0016】
2. cDNA配列解析(de novo RNA-seq)
抽出したtotal RNA(ジャスモン酸メチル添加細胞抽出RNA:TxN16-1 MJ、ジャスモン酸メチル未添加細胞抽出RNA:TxN16-1 cont.)をもとに、次世代シーケンサーを用いて網羅的な遺伝子配列の取得と発現定量解析を行った。シーケンスライブラリーの作製及びシーケンス解析はタカラバイオ株式会社に委託し実施した。
2.1 シーケンスライブラリーの作製
TruSeq Stranded mRNA Sample Prep Kit(イルミナ社)、Agilent XT-Auto System(アジレント・テクノロジー社)を用いてシーケンスライブラリーを作製した。得られたtotal RNAより、PolyA+ RNA を単離した。次にPolyA+ RNA を断片化し、このRNA 断片を鋳型として逆転写反応により一本鎖cDNA を合成した。この一本鎖cDNA を鋳型として、dUTP を取り込ませた二本鎖cDNAを合成した。得られた二本鎖cDNA の両末端を平滑化・リン酸化処理した後、3′-dA 突出処理を行い、Index付きアダプターを連結した。アダプターを連結した二本鎖cDNA を鋳型とし、dUTP を持つ鎖を選択的に増幅しないポリメラーゼによりPCR 増幅を行い、シーケンスライブラリーとした。
シーケンスライブラリー作製条件は表1の通り実施した。
【0017】
【表1】
【0018】
2.2 シーケンス解析
解析の条件、クラスター形成及びシーケンス解析に使用した機器、各作業に使用したマニュアル名、バージョン番号を表2~4に示す。
【0019】
【表2】

【表3】
【0020】
【表4】
【0021】
2.3 シーケンス解析結果
シーケンス解析結果を表5に示す。
【0022】
【表5】
【0023】
2.4 データ解析
2.4.1 解析の概要
取得したシーケンスデータからアダプター配列とクオリティ値の低い塩基のトリム処理後、Trinityソフトウェアによるアセンブルを行った。その後、得られたコンティグ配列をリファレンスにし、サンプルごとにRSEMソフトウェアを用いて遺伝子発現量を求めた。また、コンティグ配列のアノテーションとして、NCBIのntデータベースによるblastn検索や、ORFの予測、アミノ酸配列のUniPortKBデータベースによるblastp検索、及びGene Ontologyのアサインを行った。
2.4.2 リード配列の前処理
リード配列の前処理として、アダプター配列及びクオリティ値の低い塩基のトリム処理を行った。アダプター配列の認識と除去には、cutadaptソフトウェア(v1.3)を用いた。リード配列の3、末端側に対して、アダプター配列とオーバーラップ長が12塩基以上で一致した場合に、その領域をトリム処理した。アダプター配列の処理後のリード配列に対して、リード配列の3 '末端側の低クオリティ塩基のトリミングをsickleソフトウェア(v 1.200)を用いて行った。処理は、10塩基長のwindowをリード配列の3'末端側に設定し、その平均値が30を下回っている場合に低クオリティ領域とみなし、windowを5 '末端側にスライドさせつつ、最終的に平均値が30を上回ったところで、その位置から3'末端側をトリムするという方法で行った。トリム後に残った塩基が40base以下であった場合、そのリードを解析から除いた。これによって、ペアエンドであるR1側とR2側のどちらかが解析から除かれた場合、残った片方のリードも解析から除いた。
【0024】
2.4.3 Trinityによるアセンブル
アダプター配列と低クオリティ塩基を除去した全サンプルのリード配列を混合しTrinityソフトウェア(v2.0.6)を用いてアセンブルを行った。全リード配列からk-merの断片配列を作成し、その配列と出現数の辞書化を行い(k=25)、次に辞書から複雑性の低い(low-complexity)k-mer配列及び、出現数が1のk-mer配列を削除した。作成した辞書において最も出現数が多いk-mer配列をseed配列とし、k-1 merのoverlap条件でこのseed配列に一致するものを、出現数が多い順に探索した。探索はseed配列の両方向に対して行い、両端を伸張するように連結させコンティグを作成した。一度選択されたk-mer配列は辞書から削除した。これらの作業を全てのk-mer配列が辞書から削除されるまで繰り返し行った。
上記で得られたコンティグをクラスタリングし、de Bruijnグラフを構築した。クラスタリングの条件は、互いのコンティグがk-1 mer以上で完全一致するものであり、リード配列をコンティグにマッピングし、2つのコンティグを繋げる配列が一定条件で存在する場合も同一のグループとした。得られたde Bruijnグラフから、alternatively spliced isoformsを含むtranscriptsを再構築した。
2.4.4 RSEMによる遺伝子発現解析
Trinityによって得られた配列をリファレンスにし、サンプルごとにRSEMソフトウェア(v1.2.19)を用いて遺伝子発現量(FPKM)を求めた。解析のパラメータはいずれもデフォルト値を用いた。
【0025】
2.4.5 コンティグ配列のアノテーション
Trinityによって得られたコンティグ配列に対して、blast +ソフトウェアを用いてNCBIのntデータベースとの相同性検索を行った。(blast +バージョン2.2、28データベースnt(ftp://ftp.ncbi.nim.nih.gov/blast/db/)から2016/11/23に取得、blast検索条件はblast program: blastn、E-value:le-3以下、最大Hit数:20まで)。
またTrinityによって得られたコンティグ配列に対して、TransDecoderソフトウェア(r2014-07-04)を用いてORF推定を行った。TransDecoderによって得られたアミノ酸配列に対して、blast +ソフトウェアを用いてUniProtのUniProtKBデータベースとの相同性検索を行った。(blast +バージョン 2.2.28、データベース UniProtKB (ftp://ftp. uniprot.org/pub/databases/uniprot/current release/knowledgebase/comple te/からuniprot_sprot_fasta.gzを2016/11/30に取得)、blast検索条件はblast program: blastp、E-value:1e-6以下、最大Hit数:5まで)。
アミノ酸配列とUniProtKBデータベースとの相同性検索で一致したUniProt IDに基づいてGene Ontology Termをアサインした。UniProt IDとGene 0ntologyとの結びつけにはBlast2G0ソフトウェア(v2.5)を用いた。
2.5解析結果
解析の結果を表6に示す。
【0026】
【表6】
【0027】
3. 高発現遺伝子の解析
データ解析より得られた遺伝子発現量の値より、コンティグ配列を並べ替え図式化し(図1)、横軸は無処理区、縦軸はジャスモン酸メチル処理区での遺伝子発現量を示す。両処理区で高い発現を示したコンティグをピックアップしたところ、図1の矢印で示したコンティグ番号に付されたアノテーション情報を参照し、EF1α遺伝子をコードするコンティグを発見した。(配列番号6)
【0028】
・配列番号6
ATGGGAAAAG AAAAGGTTCA TATCAACATT GTTGTTATTG GCCATGTTGA CTCTGGAAAG
TCAACTACTA CTGGGCATCT GATTTATAAG TTGGGTGGTA TTGACAAGCG TGTGATTGAG
CGTTTTGAGA AGGAAGCTGC TGAAATGAAC AAAAGGTCAT TCAAGTATGC TTGGGTGCTT
GATAAGCTAA AGGCTGAGCG TGAACGTGGT ATTACCATTG ATATTGCACT ATGGAAGTTT
GAGACCACTA GATACTACTG CACTGTCATT GATGCTCCAG GACATCGTGA TTTCATTAAG
AACATGATTA CAGGAACTTC TCAGGCTGAT TGTGCAGTGC TGATCATTGA TTCAACGACT
GGAGGTTTTG AGGCTGGTAT TTCCAAAGAC GGTCAGACCC GAGAGCATGC TCTTCTAGCA
TTTACACTGG GAGTGAAGCA AATGATTTGC TGCTGTAACA AGATGGATGC TACTACCCCA
AAATACTCAA AGGCTCGGTA TGAAGAAATT GTCAAGGAAG TGTCTTCTTA TTTGAAGAAG
GTTGGATACA ATCCAGACAA GATCCCTTTT GTGCCAATCT CTGGTTTTGA GGGCGATAAC
ATGATTGAGA GATCAAGCAA CCTTGATTGG TACAAGGGTC CAACACTGTT GGATGCCCTT
GACCAGGTTT CAGAGCCCAA ACGTCCATCA GACAAGCCAC TCAGGTTGCC ACTTCAGGAT
GTTTACAAGA TTGGTGGTAT TGGAACTGTA CCTGTGGGGC GAGTTGAGAC TGGAGTGATT
AAGCCAGGTA TGGTTGTAAC CTTTGGTCCA TCTGGGTTGA CAACTGAAGT TAAGTCTGTT
GAAATGCATC ATGAAGCTTT GTTAGAGGCA TTGCCTGGTG ACAATGTCGG ATTCAATGTC
AAGAATGTTG CTGTGAAAGA TCTCAAGCGA GGGTATGTAG CCTCTGATTC AAAGAATGAC
CCAGCGAAGG AGGCTGCAAA CTTCACTGCC CAGGTCATCA TCATGAACCA TCCAGGACAA
ATTGGAAATG GTTATGCACC TGTGCTGGAT TGCCACACAT GCCACATTGC TGTTAAGTTT
GCTGAGATCT TGACTAAGGT TGACAGACGA TCTGGTAAGG AACTTGAGAA GGAACCAAAG
TTCATTAAGA ATGGGGATGC TGCATTTGTC AAGATGATTC CAACCAAGCC CATGGTTGTG
GAAACATTCT CGGAGTACCC TCCATTGGGT CGTTTTGCTG TGAGGGATAT GCGTCAGACT
GTTGCTGTTG GAGTCATCAA GGCTGTTGAG AAGAAGGAAC CTTCTGGTGC TAAGGTTACC
AAGGCTGCTG CTAAGAAGAA GTGA
【0029】
4. EF1αプロモーター配列の決定
4.1 ゲノムDNAの抽出
TxN16-1株の培養細胞を液体窒素で凍結し、乳鉢で破砕した。破砕した細胞3.0 g を50 mlチューブに移し、2×CTAB溶液(2% CTAB、100mM Tris-HCl(pH 8.0)、1.4M NaCl、20mM EDTA)を6 ml添加、さらに1×CTAB溶液を3 ml添加し70℃でインキュベートしつつ、固まりが無くなるまで混合した。その後、こうして得られた混合物を、55℃、40 rpm、40分間往復振とうし、等量のクロロフォルム/イソアミルアルコールを加え、撹拌後2,800 rpm、20分間遠心分離した。遠心分離後上層を回収した。残りの下層に1×CTAB溶液を3 ml添加し10分間振とうした後、2,800 rpm、20分間遠心分離し、先に取得した上層に加え混合液を得た。この混合液に、10% CTAB溶液(10% CTAB、0.7M NaCl)を1/10量加え、70℃、1分間静置した後、等量のクロロフォルム/イソアミルアルコールを加えた。こうして得られた混合液を撹拌後、2,800 rpm、20分間遠心分離した。遠心分離後上層を回収し、CTAB沈殿buffer(1% CTAB、50mM Tris-HCl (pH 8.0)、10mM EDTA)を等量添加し混合し、さらに同Bufferを5ml添加し混合し、5,000 rpm、5分間遠心分離した。遠心分離後上清を除去し、沈殿に対し3 mlのNaCl-TE(1M NaCl、10mM Tris-HCl (pH8.0)、1mM EDTA)を加え55℃で溶解しエタノール沈殿後TE緩衝液に溶解しゲノムDNA溶液を得た。
【0030】
4.2 インバースPCRによるプロモーター配列の決定
EF1α遺伝子をコードするコンティグの塩基配列(配列番号6)について制限酵素サイトを調べたところ、制限酵素Sph Iサイトを有していた。上述にて獲得したゲノムDNAに対しSph Iで定法に従い処理し、フェノール/クロロフォルム処理、エタノール沈殿で精製した後T4 DNAリガーゼを用いて連結反応を行った。これを鋳型とし配列番号7、配列番号8のプライマーを用いてインバースPCRを実施した。この増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行ったところ非特異的増幅産物が確認されたため、インバースPCR増幅産物を鋳型とし、より内側のアニーリング位置となるようプライマーを設計(配列番号9、配列番号10)しnested PCRを実施したところ単一の増幅産物が得られた。この増幅産物がEF1α遺伝子の上流に位置する配列を含むかを判定するため、プライマー(配列番号11、配列番号12)をそれぞれ設計し、これらを用いてゲノムDNAを鋳型としてPCRを実施したところ単一の増幅産物が認められた。この増幅産物を鋳型とし、配列番号13~17のプライマーを設計、使用し定法に従い 3130xl Genetic Analyzer (Life Technologies社)を用いてシーケンス解析を実施した。また開始コドンより上流の領域にイントロンが含まれるかを明らかにするため、配列番号18、配列番号19のプライマーを使用してゲノムDNAから5'UTR部分をコードする領域を増幅し、同様にシーケンス解析を実施した。これらの結果、配列番号1に示す配列の解読に成功し、この配列にはプロモーター領域(配列番号2)、約0.3 kbの5'非翻訳領域(5'非翻訳領域1:配列番号3及び5'非翻訳領域2:配列番号5)と約2.4 kbのイントロン(配列番号4)が含まれることが明らかとなった。
解読された配列番号1~5の配列及び各プライマーの配列を以下に示す。
【0031】
・配列番号1
GCATGCATCA ACAAACATTA GAGATTAGTA TTTCAAAAAA ATTGCTGGAT CTAAAATTAT
ATCCATTCAA GAATGGTTTC CGTCTCTGAT TGGATATCAT AGATTAAATT ATGATGGAGC
TTCAAAATAA TAAAAACCAG GTATATTTGT CACAAAAATC GCCCATCATA GACGCAACAG
ACAAAACATG AAAGCTTTAA TCAACCATAT ATTATCAATC AAGATCTACA GAAAAACCAA
AACACAAAAT GATACACAGT GAAAGCTCTC GGTACTAGAT GACGAGAAAA CACCCACAGA
GCAAGGCAGA AAATATGATC AAGCTTTGAA TCTTTATTTC CACATTGCAG AGAAGGCTCC
AAAAATAGGT GTATGCCGCT TTTGGTGGCC CGCACACAGT ATTATTTAGT AAAAAGCGAA
AGAATAGTTC AGTATGTGTT GACCACGTGG CTCCGTGAAC TTTGTAAGGT TATTGACATT
ACTACTTATA ACACATCTTG GTAGGGAGTA CTTGTTTCGC CATCCATGTG GGATTAAAAT
TAATGATAAT ATCTTGGTGT GTTAGTTTAC ATTCAAAAAG GAAGCAACTT GATAACACAC
ATCATCCTAC GAGGATTTAA CTTACAGTTA CATATAATCT ACGTATTCAT CCAAGGTATA
ATGTCATCGG CCAATGAGCA GTATGATATT TATTAATGGT GGTTTGATAT TCATCTACTC
AAGGGATACT TTCATTATTG TCAAATGTAC ACATTTCTAC CACACTTCTA ATAATTAAGA
TGATGATAAA TCAATTTCTC TCATACGAAA ACACCATAAA ACAATTATAT TTTGCTTCTT
GCCCATTCTC ACTTTTCCTT TTTATGATCC TTGTTTCATG GATTACATAA TGCGAGGTGC
ATTAGAGACC TGACACTCGA CAACTATTTT GTTTCTAGAC CATTCTAACT TTTTTCCTTC
ATTTTCCAGG GCTTTTATAA TGTGAAGTGC ATTGGAGACC TTACTCTTGA AGAATATATT
TCGTTAGGAT TTCAAGCTGA TGGCCTAGAG GTGAGCTTTT TTGAGATTTT TCTAGATGGG
TTGGGGTTTG GTAGTGCGAC ATTCTGATGA TTGTTAGTCT CTCTGTCTTT CTTTTATTCA
ATATTCTCAT TTTCAAAGCT CTTTTTTTTT CACAGTGGTG ATGCAATCAT TTTTAATGGT
AATTGATTGT TCTGACCAAA ACCATCTTGG TTAAAGTACT CTTGGGTGTT TGTAATTGGG
AAACATTTCT TACTTTTCTT TCGCTGACTA CACCTAGGTC ATCCATGGGG TATAACTATC
TACCCCACGG GTCTATGTTA TTGTATTTTT CTTTTGATTC AAAATGTTAA CCTTACAACA
TCTATGGTTA CATTGTGCCA ATTTTTGGCA TTTTTCTCAA TTACGAGTTG ATGAACTTAA
ACTAACGTGT TTGGATTTTC AAGGTTGCAT TTATAATTTT GGAAAAACTC TACAACGAAG
TTAGAAGAGT GATGGAAAAC GCTGATCCCT AGCCTAGAAC AACACATATC TCTCATCCAA
TGGTCGATAC TCCCTTTGAG GCCAATCTTC ACCGTATGTT GGTAAGGATA TTCACAAAAT
GAGGTTATTG AATACACCTT GGGAACATTT AAATGCCAAA ATAGGAGATC TAGTATATAA
AAGCCAAGTG TTCGAATAAA TGACGAAACG TGATGTATTT TTGGTAAATA TCATAATTAC
AACTTAAAGA AAACATGGTC ATCTTCAAGA GCCAGTGTGA TTGTTCTATC AAATGAAACA
AACAGATATT CACCATGATT AGATCACTTT TGCGAACATA CTCATAGAAA TAAGAACTTT
GCAATAACGT ATGAACATTT GTCAAGGCAT AATAGGTAGT GGCAACTCAC TACATTGTTC
TCTCCTTCCC ATCACACAAA CATCAAACAT TTTAAGATAA CATACATTTC ATCGCAAAGT
ACAACTCCAA CAAACTAAAA ATTACTATAC GGTAAGGGCG GAAATTGCAA CCCATGTGCA
ATTGCTTGAA TTTTTTTTAT TTTTTTTTGG GAAGGTTCCT TCTTTCACAA AAGGTCACAA
GATTCTTTCT CGGAGATTAC CCACAGACAA TCTCACCGTT CGATATAAAA TTCGACGGTG
CGAAATAGAA ACAAATCATA ACCGTTGAAT GGTACATCGG ACGGCGAGGA AAATACCCTA
ATGCGCGAGG AAGGGTTTAG AGGCAAAGAG GCATATATGT TGGTTTGAAA GCATTTGTTA
GGTCTCTATT TTTGAGTATT CGTTTCTCCT TCATTTTTCT GTTCCGCCGC ACCGAGGATA
ACCTTCTTCG ATCTGCCAGG CGCTTCTGCA ACAAGGTGCT CTTTCTCATC CTAATCATCT
TCTTTGCTTA TTTATCTCCT GTCTTTCGGA AGAAAAAATG CTTATTTTCA ATTGCTGTCT
GTGCTGTTGA TGTATTTGCC TATGGATTGT CGAAGATCTG AGGAGATCTT GTCTTTATGC
TTTTTTTGTG TGATGGCGCA CGGTTATGGT GTTTGTTTTG AAGGATTGCA AGGTTATGGT
GTTTGTTTTG AAGGATTCCA AGGTTCGATG TCAAGTGTTT TATCGGGGGT GTTAGAGTTA
ATTCTATAGA ACATTAGCCG ATCTATCTGT GCAGTCGTCC TCTATTTCAG TTGTGTTTTA
GATCTGGCTG TCTATTTCAA TATCGTGTTC GTTTACCGCT TGTCGTTTTT GGCGTGAGTA
TTTTTTTTGC TTTTTTCCGT TTCTCGGATA AACTCCATAG ATCTGTTGGT TTCAGTTCGA
CGGATTGGTT GTTTATTTGT TCTTGGTTGT ATTCCACTTG GTCTCGAAAA GGCCGATCTT
TTGCAGGGTT TATCTGCTTA TACACATTGT CCTGTGTTTT TCGATTACAA CGTGATTTTA
TTCCCGCAAA AGTTTCCGTC AGAGCTTACA TTATTTTTTT CGTTTCTCAG TACCTTACTT
TTCGTGTATT TAGATGCACT GAATTTGTGT CATAACGTGT ATGAATCTTA AAAGTTCTAT
AAGCTGCATA TGGTTGCAAT GTTAAAAATT ACCAGAATCC TCACTCTTTA ATTTTAACGT
CTTATACACT GTTGTTCTAT TGCACTACAT GAGAATTTGT TCTTGCAATA ATTTCCACCC
GATTTCTCTG AAAGTTTCTT CTCGATAGGC AATTAAAGTG AATATATATA CACACACACA
CACACACACA CTGTTGCACT GAATTTGTGC CATTTTCTGT ATATTAGGAA TTTTATAAAC
TGCATACGGT CGCTAGGTAA AATCTTCCGC GAACTATTCA GTTTTATTTT TTAGCATATG
GAAATATTCT TTTCAGAAGA ATTTTTGACT GTAAGATAAT ATTTATATTT TCCCATGTAC
AGTTATAACC TTGTAGTTCT TTTGTTGCTT ATACCGTTTT ACCTGAACTT GCCCCCTTAA
ATATGAACTA TTATATTGAT ATTAAGTGCC CATTTTTGCT GATATCTTGA AGCCTTATAA
TATAATCAAT TTTTGATGTA TAGGAATTGT GTGGTCTAGC AAAAGGGGGA CTATAATGAG
AGATTTCTAT TCTAGTTTTA TTTTGTAGAT GGTACACTCA ATTTTTTGTT GCAACTCTAC
ATAATATAAT CCTTTGCTTA ACGTGTGGAG GAGTGACCCA AGCAATTCTA ATTAGCCCCA
CAGCTGCATA GGGATTGAAG GGATTCTTTT GACAAAATGT TACCTGCAGA TTAGTTCAGG
TCAAAATTTT ACTTTTATTT TGAAATCTAC TTCTTTATAA TTCCTATAAT TTAGAAGCCA
TCCATTTTTT ACAAACTTTA GCACCACTTA CCTGCAAAAA GTCTCCTCAA ATTTAGTTGG
ACACAAGTTG GTTGTTTGCC CCCTGCATGG GATCACAAGT AGCACGTGTT TTATATCCGG
ACTGAATTCT CTAGGCTCAT TGTATTACTG GTTGTTAAAT AACCTATACT TCTTAATCTT
TATCTCTGAA GTTAAATAGC GTATGAATTT TTATATTTGA AGTCCAGTCA GAAACGTTTA
ATAATTTAAC TGTGATTATA GAGTTTCATG TATTGCTTCA ATGATCTAAA TATTCCATAA
TAGTATATAT CTACTGTTAT TAATTGGCCA GCCATTTTTG TATGTTTAAT AATTTAAGTG
TGATTATAGA GTTTCATGTA TTGCTTCAAT GATCCAAATA TTCTTTAATA GTATATATCT
ATCGTTATCA ATTGGCCATC CATTTTTTAC AAACAACAGG ACCACTTGCC TGCAAAAAGT
CTCCTCAAAT TTAGTTGGAC ACAAATTAGT TGTTTGCCCT CTCCACAAGT AGCCCGTGTT
TTATATCCGG ACTGAATCTT CTAGGCTCAT TGTACTAGTG GTTGTTAAAT AACCTTTACC
TTTGAATCTT TATCTTTGAA GTAAAATAAC CTATACTTAT GAATATTTAA GTTTGAAGTC
CAGTCAGAAA TGTTAATAAT TAACTGATTA TAGAGTTTCA TGTATGCTTC AATGATCTAA
ATATTCAAAG CAATTGATAA TGGTAGATGT ATAATGGCAA AAGCAATTGA TAACGGCAGA
TATATACTAT AGGAATTTCT TGTTTCATGT CAAAGTGGTT TGGGTTGGGC TTTGAATTTT
TACACGATAA TAACTTTGAT GGGCATCTAT ATAGATTTTA GTGCTGTTTT TTATGTTCAT
CTGGTTGTTT AACATTTATG CTAAAATATG TATTATAATG TGCCCTAATA CTTTGGTCTG
TTCATACTGC AGTTTTTAAT CTCAAGCAAC CATG
【0032】
・配列番号2
GCATGCATCA ACAAACATTA GAGATTAGTA TTTCAAAAAA ATTGCTGGAT CTAAAATTAT
ATCCATTCAA GAATGGTTTC CGTCTCTGAT TGGATATCAT AGATTAAATT ATGATGGAGC
TTCAAAATAA TAAAAACCAG GTATATTTGT CACAAAAATC GCCCATCATA GACGCAACAG
ACAAAACATG AAAGCTTTAA TCAACCATAT ATTATCAATC AAGATCTACA GAAAAACCAA
AACACAAAAT GATACACAGT GAAAGCTCTC GGTACTAGAT GACGAGAAAA CACCCACAGA
GCAAGGCAGA AAATATGATC AAGCTTTGAA TCTTTATTTC CACATTGCAG AGAAGGCTCC
AAAAATAGGT GTATGCCGCT TTTGGTGGCC CGCACACAGT ATTATTTAGT AAAAAGCGAA
AGAATAGTTC AGTATGTGTT GACCACGTGG CTCCGTGAAC TTTGTAAGGT TATTGACATT
ACTACTTATA ACACATCTTG GTAGGGAGTA CTTGTTTCGC CATCCATGTG GGATTAAAAT
TAATGATAAT ATCTTGGTGT GTTAGTTTAC ATTCAAAAAG GAAGCAACTT GATAACACAC
ATCATCCTAC GAGGATTTAA CTTACAGTTA CATATAATCT ACGTATTCAT CCAAGGTATA
ATGTCATCGG CCAATGAGCA GTATGATATT TATTAATGGT GGTTTGATAT TCATCTACTC
AAGGGATACT TTCATTATTG TCAAATGTAC ACATTTCTAC CACACTTCTA ATAATTAAGA
TGATGATAAA TCAATTTCTC TCATACGAAA ACACCATAAA ACAATTATAT TTTGCTTCTT
GCCCATTCTC ACTTTTCCTT TTTATGATCC TTGTTTCATG GATTACATAA TGCGAGGTGC
ATTAGAGACC TGACACTCGA CAACTATTTT GTTTCTAGAC CATTCTAACT TTTTTCCTTC
ATTTTCCAGG GCTTTTATAA TGTGAAGTGC ATTGGAGACC TTACTCTTGA AGAATATATT
TCGTTAGGAT TTCAAGCTGA TGGCCTAGAG GTGAGCTTTT TTGAGATTTT TCTAGATGGG
TTGGGGTTTG GTAGTGCGAC ATTCTGATGA TTGTTAGTCT CTCTGTCTTT CTTTTATTCA
ATATTCTCAT TTTCAAAGCT CTTTTTTTTT CACAGTGGTG ATGCAATCAT TTTTAATGGT
AATTGATTGT TCTGACCAAA ACCATCTTGG TTAAAGTACT CTTGGGTGTT TGTAATTGGG
AAACATTTCT TACTTTTCTT TCGCTGACTA CACCTAGGTC ATCCATGGGG TATAACTATC
TACCCCACGG GTCTATGTTA TTGTATTTTT CTTTTGATTC AAAATGTTAA CCTTACAACA
TCTATGGTTA CATTGTGCCA ATTTTTGGCA TTTTTCTCAA TTACGAGTTG ATGAACTTAA
ACTAACGTGT TTGGATTTTC AAGGTTGCAT TTATAATTTT GGAAAAACTC TACAACGAAG
TTAGAAGAGT GATGGAAAAC GCTGATCCCT AGCCTAGAAC AACACATATC TCTCATCCAA
TGGTCGATAC TCCCTTTGAG GCCAATCTTC ACCGTATGTT GGTAAGGATA TTCACAAAAT
GAGGTTATTG AATACACCTT GGGAACATTT AAATGCCAAA ATAGGAGATC TAGTATATAA
AAGCCAAGTG TTCGAATAAA TGACGAAACG TGATGTATTT TTGGTAAATA TCATAATTAC
AACTTAAAGA AAACATGGTC ATCTTCAAGA GCCAGTGTGA TTGTTCTATC AAATGAAACA
AACAGATATT CACCATGATT AGATCACTTT TGCGAACATA CTCATAGAAA TAAGAACTTT
GCAATAACGT ATGAACATTT GTCAAGGCAT AATAGGTAGT GGCAACTCAC TACATTGTTC
TCTCCTTCCC ATCACACAAA CATCAAACAT TTTAAGATAA CATACATTTC ATCGCAAAGT
ACAACTCCAA CAAACTAAAA ATTACTATAC GGTAAGGGCG GAAATTGCAA CCCATGTGCA
ATTGCTTGAA TTTTTTTTAT TTTTTTTTGG GAA
【0033】
・配列番号3
GGTTCCTTCT TTCACAAAAG GTCACAAGAT TCTTTCTCGG AGATTACCCA CAGACAATCT
CACCGTTCGA TATAAAATTC GACGGTGCGA AATAGAAACA AATCATAACC GTTGAATGGT
ACATCGGACG GCGAGGAAAA TACCCTAATG CGCGAGGAAG GGTTTAGAGG CAAAGAGGCA
TATATGTTGG TTTGAAAGCA TTTGTTAGGT CTCTATTTTT GAGTATTCGT TTCTCCTTCA
TTTTTCTGTT CCGCCGCACC GAGGATAACC TTCTTCGATC TGCCAGGCGC TTCTGCAACA
AG
【0034】
・配列番号4
GTGCTCTTTC TCATCCTAAT CATCTTCTTT GCTTATTTAT CTCCTGTCTT TCGGAAGAAA
AAATGCTTAT TTTCAATTGC TGTCTGTGCT GTTGATGTAT TTGCCTATGG ATTGTCGAAG
ATCTGAGGAG ATCTTGTCTT TATGCTTTTT TTGTGTGATG GCGCACGGTT ATGGTGTTTG
TTTTGAAGGA TTGCAAGGTT ATGGTGTTTG TTTTGAAGGA TTCCAAGGTT CGATGTCAAG
TGTTTTATCG GGGGTGTTAG AGTTAATTCT ATAGAACATT AGCCGATCTA TCTGTGCAGT
CGTCCTCTAT TTCAGTTGTG TTTTAGATCT GGCTGTCTAT TTCAATATCG TGTTCGTTTA
CCGCTTGTCG TTTTTGGCGT GAGTATTTTT TTTGCTTTTT TCCGTTTCTC GGATAAACTC
CATAGATCTG TTGGTTTCAG TTCGACGGAT TGGTTGTTTA TTTGTTCTTG GTTGTATTCC
ACTTGGTCTC GAAAAGGCCG ATCTTTTGCA GGGTTTATCT GCTTATACAC ATTGTCCTGT
GTTTTTCGAT TACAACGTGA TTTTATTCCC GCAAAAGTTT CCGTCAGAGC TTACATTATT
TTTTTCGTTT CTCAGTACCT TACTTTTCGT GTATTTAGAT GCACTGAATT TGTGTCATAA
CGTGTATGAA TCTTAAAAGT TCTATAAGCT GCATATGGTT GCAATGTTAA AAATTACCAG
AATCCTCACT CTTTAATTTT AACGTCTTAT ACACTGTTGT TCTATTGCAC TACATGAGAA
TTTGTTCTTG CAATAATTTC CACCCGATTT CTCTGAAAGT TTCTTCTCGA TAGGCAATTA
AAGTGAATAT ATATACACAC ACACACACAC ACACACTGTT GCACTGAATT TGTGCCATTT
TCTGTATATT AGGAATTTTA TAAACTGCAT ACGGTCGCTA GGTAAAATCT TCCGCGAACT
ATTCAGTTTT ATTTTTTAGC ATATGGAAAT ATTCTTTTCA GAAGAATTTT TGACTGTAAG
ATAATATTTA TATTTTCCCA TGTACAGTTA TAACCTTGTA GTTCTTTTGT TGCTTATACC
GTTTTACCTG AACTTGCCCC CTTAAATATG AACTATTATA TTGATATTAA GTGCCCATTT
TTGCTGATAT CTTGAAGCCT TATAATATAA TCAATTTTTG ATGTATAGGA ATTGTGTGGT
CTAGCAAAAG GGGGACTATA ATGAGAGATT TCTATTCTAG TTTTATTTTG TAGATGGTAC
ACTCAATTTT TTGTTGCAAC TCTACATAAT ATAATCCTTT GCTTAACGTG TGGAGGAGTG
ACCCAAGCAA TTCTAATTAG CCCCACAGCT GCATAGGGAT TGAAGGGATT CTTTTGACAA
AATGTTACCT GCAGATTAGT TCAGGTCAAA ATTTTACTTT TATTTTGAAA TCTACTTCTT
TATAATTCCT ATAATTTAGA AGCCATCCAT TTTTTACAAA CTTTAGCACC ACTTACCTGC
AAAAAGTCTC CTCAAATTTA GTTGGACACA AGTTGGTTGT TTGCCCCCTG CATGGGATCA
CAAGTAGCAC GTGTTTTATA TCCGGACTGA ATTCTCTAGG CTCATTGTAT TACTGGTTGT
TAAATAACCT ATACTTCTTA ATCTTTATCT CTGAAGTTAA ATAGCGTATG AATTTTTATA
TTTGAAGTCC AGTCAGAAAC GTTTAATAAT TTAACTGTGA TTATAGAGTT TCATGTATTG
CTTCAATGAT CTAAATATTC CATAATAGTA TATATCTACT GTTATTAATT GGCCAGCCAT
TTTTGTATGT TTAATAATTT AAGTGTGATT ATAGAGTTTC ATGTATTGCT TCAATGATCC
AAATATTCTT TAATAGTATA TATCTATCGT TATCAATTGG CCATCCATTT TTTACAAACA
ACAGGACCAC TTGCCTGCAA AAAGTCTCCT CAAATTTAGT TGGACACAAA TTAGTTGTTT
GCCCTCTCCA CAAGTAGCCC GTGTTTTATA TCCGGACTGA ATCTTCTAGG CTCATTGTAC
TAGTGGTTGT TAAATAACCT TTACCTTTGA ATCTTTATCT TTGAAGTAAA ATAACCTATA
CTTATGAATA TTTAAGTTTG AAGTCCAGTC AGAAATGTTA ATAATTAACT GATTATAGAG
TTTCATGTAT GCTTCAATGA TCTAAATATT CAAAGCAATT GATAATGGTA GATGTATAAT
GGCAAAAGCA ATTGATAACG GCAGATATAT ACTATAGGAA TTTCTTGTTT CATGTCAAAG
TGGTTTGGGT TGGGCTTTGA ATTTTTACAC GATAATAACT TTGATGGGCA TCTATATAGA
TTTTAGTGCT GTTTTTTATG TTCATCTGGT TGTTTAACAT TTATGCTAAA ATATGTATTA
TAATGTGCCC TAATACTTTG GTCTGTTCAT ACTGCAG
・配列番号5
TTTTTAATCT CAAGCAACC
【0035】
・配列番号7
CACCTCGAGA GATTGTCTGT GGGTAATCT
・配列番号8
CCCGGATCCT CTCAGGCTGA TTGTGCAGT
・配列番号9
CACCTCGAGC CGAGAAAGAA TCTTGTGAC
・配列番号10
CCCGGATCCA GAACATGATT ACAGGAACT
・配列番号11
GCTCTCGGTA CTAGATGACG AGA
・配列番号12
GAGCCTAGGA TGGACAGGAG CAC
・配列番号13
TTAGCCGATC TATCTGTGCA
・配列番号14
AACTAATTTG TGTCCAACTA
・配列番号15
CACATCATCC TACGAGGATT
・配列番号16
CTCTTCTAAC TTCGTTGTAG
・配列番号17
GCACTGAATT TGTGCCATT
・配列番号18
CACCTCGAGT GACTTTCCAG AGTCAACAT
・配列番号19
AGATTACCCA CAGACAATCT
【0036】
5. プロモーター活性の解析
5.1 プラスミドの構築
得られた配列がプロモーター活性を有するか検証するため、ベクターに組み込み植物に導入することでプロモーター活性の解析を行った。活性はpGWB506ベクターのカリフラワーモザイクウィルス35Sプロモーターを配列番号1の配列と差換えることで検証を行った。Hind III、Xba IにてpGWB506ベクターを処理しカリフラワーモザイクウィルス35Sプロモーターを除去した後、Apa Iサイトを有する配列番号20、配列番号21のオリゴDNAをアニーリングさせたものとライゲーションしプラスミドpGWB506-EF1a-delCaMVを構築した。
・配列番号20
AGCTTGTGG GCCCAAT
・配列番号21
CTAGATTGGG CCCACA
まず、配列番号22、配列番号23のプライマーとイチイゲノムDNAを鋳型としてPCRにて増幅し、増幅産物に対しApa I、Nhe Iで処理、またApa I、Xba IにてプラスミドpGWB506-EF1a-delCaMVを処理したものを定法に従いライゲーションを行いプラスミドpGWB506-EF1a-Fを構築した。加え、配列番号22、配列番号24のプライマーとイチイゲノムDNAを鋳型として増幅、Apa I、Xba IにてプラスミドpGWB506-EF1a-delCaMV処理したものをライゲーションし、pGWB506-EF1aFからイントロン(配列番号4)を除去したプラスミドpGWB506-EF1a-delI、さらに、配列番号22、配列番号25を用いて同様に増幅、ライゲーションし、イントロン(配列番号4)と5’非翻訳領域1(配列番号3)を除去したプラスミドpGWB506-EF1a-delUIを構築し活性の解析に用いた。また構築したプラスミドは共に導入配列の下流にGFP遺伝子が配置してあり、プロモーター活性の指標とした。
・配列番号22
GATGGGCCCT AGCATGCATC AACAAACATT
・配列番号23
GGGGCTAGCG GTTGCTTGAG ATTAA
・配列番号24
GGGGCTAGCG GTTGCTTGAG ATTAAAAACT TGTTGCAGA
・配列番号25
GTGACCTTTT GTGAAAGAAG CTAGCTTCCC AA
【0037】
5.2 パーティクルボンバードメント法による導入、観察
構築したプラスミドをPDS-1000/He(Bio-Rad社)を用いて定法に従い継代12日目のイチイ培養細胞へ導入した。金粒子(0.6 μm)0.6 mgをチューブに入れ300 μlの70%エタノールを加えボルテックスミキサーで撹拌、遠心分離し金粒子を沈降させた。上清を除去しエタノール100 μlを加え、同様に撹拌、遠心分離し上清を除去した。ここに10μgとなるようプラスミドDNA、2.5 M CaCl2溶液50 μl、0.1 Mスペルミジン20μl、エタノール100 μlを撹拌しながら添加し、遠心分離後上清を除去した。ここにエタノール60 μlを加えプラスミド調製液とした。マイクロキャリアの中心にプラスミド調製液12μlを添加し、室温で乾燥するまで静置、イチイ培養細胞1gをWP寒天培地の中央付近に敷き詰めPDS-1000/Heに共にセットし、定法に従い1100 PSIの圧力で打ち込んだ。導入後25℃で24時間静置し、蛍光顕微鏡で導入細胞を観察した。結果、pGWB506-EF1a-F、pGWB506-EF1a-delI及びpGWB506-EF1a-delUIが導入された細胞は共にGFP蛍光が観察された(図2)。
pGWB506-EF1a-F導入細胞(図2(a))と比較し、pGWB506-EF1a-delUI導入細胞(図2(b))は蛍光が弱く、5’非翻訳領域はプロモーター活性を高めることが明らかとなった。またイントロンを除去したpGWB506-EF1a-delI導入細胞(図2(c))は蛍光強度がより強く、対象区として導入したpGWB506(カリフラワーモザイクウィルス35Sプロモーター)導入細胞(図2(d))と同等の蛍光が観察され、イントロンを除いたプロモーターが高い活性に寄与することが明らかとなった。
図1
図2
【配列表】
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