(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-02
(45)【発行日】2023-02-10
(54)【発明の名称】管理システム及び管理方法
(51)【国際特許分類】
B29C 64/386 20170101AFI20230203BHJP
B33Y 50/00 20150101ALI20230203BHJP
【FI】
B29C64/386
B33Y50/00
(21)【出願番号】P 2019078143
(22)【出願日】2019-04-16
【審査請求日】2022-04-04
(73)【特許権者】
【識別番号】315017775
【氏名又は名称】日本電産マシンツール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100138689
【氏名又は名称】梶原 慶
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(73)【特許権者】
【識別番号】514227988
【氏名又は名称】技術研究組合次世代3D積層造形技術総合開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 善仁
(72)【発明者】
【氏名】二井谷 春彦
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-340925(JP,A)
【文献】特開2017-027267(JP,A)
【文献】特開2018-001586(JP,A)
【文献】特表2012-510390(JP,A)
【文献】特開2018-016042(JP,A)
【文献】国際公開第2018/110838(WO,A1)
【文献】特開2018-089836(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00 - 64/40
B33Y 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ビームを照射して材料を供給することにより積層体を造形する三次元積層装置の前記材料を管理する管理システムであって、
前記積層体の形状データを取得する形状データ取得部と、
前記形状データに基づき、前記三次元積層装置で前記積層体を造形するための造形条件である設定造形条件を設定する造形条件設定部と、
前記設定造形条件に基づき、前記設定造形条件で前記積層体を造形する造形シミュレーションを実行する造形シミュレーション実行部と、
前記造形シミュレーションの実行結果に基づき、前記三次元積層装置で前記積層体を造形するために必要な前記材料の量である必要材料量を取得する必要材料量取得部と、
前記必要材料量に基づく情報を外部に出力する出力制御部と、
を有する、
管理システム。
【請求項2】
前記積層体は、溶融した前記材料が固化することで造形される、請求項1に記載の管理システム。
【請求項3】
前記造形シミュレーション実行部は、前記造形シミュレーションとして、前記材料を噴射して前記光ビームを照射するデポジション方式で前記積層体を造形するシミュレーションを実行する、請求項2に記載の管理システム。
【請求項4】
前記造形条件設定部は、前記設定造形条件として、少なくとも、前記材料の供給速度と、前記光ビームの出力と、前記積層体が造形される基台部に対する、前記材料を噴射して前記光ビームを照射する積層ヘッドの送り速度と、を設定する、請求項3に記載の管理システム。
【請求項5】
前記必要材料量取得部は、前記材料の噴射を開始するタイミングから前記積層体の造形を開始するタイミングまでの間に噴射される前記材料の量と、前記材料を噴射して前記光ビームを照射する積層ヘッドへの、前記材料の供給を停止するタイミングより後に、前記積層ヘッドから噴射される前記材料の量と、前記材料を噴射しているが前記光ビームを照射していない期間における前記材料の量とを、前記必要材料量に含める、請求項3又は請求項4に記載の管理システム。
【請求項6】
前記造形条件設定部は、前記三次元積層装置が前記設定造形条件で前記積層体を造形した際の、前記積層体の品質データに基づき、前記設定造形条件を更新する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の管理システム。
【請求項7】
前記形状データ取得部、前記造形条件設定部、前記造形シミュレーション実行部、前記必要材料量取得部、及び前記出力制御部は、製造管理システムに設けられ、
前記出力制御部は、前記必要材料量に基づき、前記製造管理システムとは異なる材料管理システムに、前記材料を発注する、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の管理システム。
【請求項8】
前記材料を管理する材料管理システムから、前記積層体の造形に用いた前記材料の特性を示す材料データを取得し、前記三次元積層装置が造形した前記積層体の品質データを取得するデータ取得部と、
前記材料データと前記品質データとを照合し、前記積層体の造形に用いた前記材料が適切なものであるかを判断する照合部と、をさらに有する、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の管理システム。
【請求項9】
光ビームを照射して材料を供給することにより積層体を造形する三次元積層装置の前記材料を管理する管理方法であって、
形状データ取得部が、前記積層体の形状データを取得する形状データ取得ステップと、
造形条件設定部が、前記形状データに基づき、前記三次元積層装置で前記積層体を造形するための造形条件である設定造形条件を設定する造形条件設定ステップと、
造形シミュレーション実行部が、前記形状データと前記設定造形条件とに基づき、前記設定造形条件で前記積層体を造形する造形シミュレーションを実行する造形シミュレーション実行ステップと、
必要材料量取得部が、前記造形シミュレーションの実行結果に基づき、前記三次元積層装置で前記積層体を造形するために必要な前記材料の量である必要材料量を算出する必要材料量算出ステップと、
出力制御部が、前記必要材料量に基づく情報を外部に出力する出力ステップと、
を有する、
管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元積層装置に用いる材料の管理システム及び管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、積層体を造形する三次元積層装置が実用化されている。三次元積層装置は、粉末などを材料として積層体を造形するため、造形に必要な量の材料を準備する必要がある。通常、造形に必要な材料量は、例えば、製造する積層体の体積から見積もられる。また、例えば特許文献1には、3Dプリンタで使用する粉末材料の在庫残量に基づき、粉末の発注を行う旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、三次元積層装置の運用においては、その造形プロセス上、投入する材料の全てが積層体になることはあり得ない。すなわち、三次元積層装置の運用においては、造形プロセス中に使用はするが積層体の完成品を構成しない材料も必要となる。従って、造形する積層体の体積だけでは、造形に必要な材料量を正確に見積もることができないおそれがある。例えば、作業者が積層体の完成品に含まれない材料量を推定して見積もることもできるが、熟練でない作業者が見積もりを誤る場合や、複雑な工程で造形される積層体などであれば、見積もり自体が困難となる場合もある。また、特許文献1のように在庫の残量を管理しても、これから造形する積層体の材料の必要量を正確に見積もることができない。従って、造形に必要な材料量を正確に見積もることが求められる。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するものであり、三次元積層装置で造形する際に必要な材料量を正確に見積もることができる管理システム及び管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係る管理システムは、光ビームを照射して材料を供給することにより積層体を造形する三次元積層装置の前記材料を管理する管理システムであって、前記積層体の形状データを取得する形状データ取得部と前記形状データに基づき、前記三次元積層装置で前記積層体を造形するための造形条件を設定する造形条件設定部と、前記設定造形条件に基づき、前記設定造形条件で前記積層体を造形する造形シミュレーションを実行する造形シミュレーション実行部と、前記造形シミュレーションの実行結果に基づき、前記三次元積層装置で前記積層体を造形するために必要な前記材料の量である必要材料量を取得する必要材料量取得部と、前記必要材料量に基づく情報を外部に出力する出力制御部と、を有する。
【0007】
この管理システムは、歩留りも考慮して必要材料量を算出することが可能となり、三次元積層装置で造形する際に必要な材料量を正確に見積もることができる。
【0008】
前記積層体は、溶融した前記材料が固化することで造形される。管理システムは、積層体の完成品を構成しないが投入される材料の量、すなわち歩留りも考慮して必要な粉末の量を算出することが可能となり、三次元積層装置で造形する際に必要な材料の量を正確に見積もることができる。取得する形状データは、目標とする積層体の理想形状、もしくは造形した積層体を接触式、もしくは非接触式の計測装置で測定した実際の形状、もしくは実際の積層造形中に光ビームで溶融したプールの寸法を計測した結果から得られる推定形状が考えられる。
【0009】
前記造形シミュレーション実行部は、前記造形シミュレーションとして、前記材料を噴射して前記光ビームを照射するデポジション方式で前記積層体を造形するシミュレーションを実行する。管理システムは、造形シミュレーションを実行することで、積層体の完成品を構成しないが使用される材料の量を精度良く見積もることが可能となり、必要材料量を正確に見積もることができる。
【0010】
前記造形条件設定部は、前記設定造形条件として、前記材料の材質と、前記材料の粒度分布と、前記材料の供給速度と、前記材料が噴射される際の収束径と、前記光ビームの出力と、前記光ビームの波長と、前記光ビームの強度分布(ビームプロファイル)と、前記光ビームの基台部における集光径と、前記積層体が造形される基台部に対する、前記材料を噴射して前記光ビームを照射する積層ヘッドの送り速度と、前記材料を噴射するノズルの種類と、を設定する。ノズルの種類は、単一もしくは複数の円形、もしくは異形の噴出ポートからなるノズルから選択ができる。設定造形条件をこのように設定することで、精度良く歩留りを算出して、必要な材料量を正確に見積もることができる。
【0011】
前記必要材料量取得部は、前記材料の噴射を開始するタイミングから前記積層体の造形を開始するタイミングまでの間に噴射される前記材料の量と、前記材料を噴射して前記光ビームを照射する積層ヘッドへの、前記材料の供給を停止するタイミングより後に、前記積層ヘッドから噴射される前記材料の量とを、前記必要材料量に含める。必要材料量にこれらの量も含めることで、精度良く歩留りを算出して、必要な材料量を正確に見積もることができる。
【0012】
前記造形条件設定部は、前記三次元積層装置が前記設定造形条件で前記積層体を造形した際の、前記積層体の品質データに基づき、前記設定造形条件を更新する。管理システムは、実際の製造結果に基づき設定造形条件を更新することで、設定造形条件を適切に設定することができる。
【0013】
前記形状データ取得部、前記造形条件設定部、前記造形シミュレーション実行部、前記必要材料量取得部、及び前記出力制御部は、製造管理システムに設けられ、前記出力制御部は、前記必要材料量に基づき、前記製造管理システムとは異なる材料管理システムに、前記材料を発注する。この管理システムは、このように製造管理システムから材料管理システムに材料を発注するシステムを構築することで、物流を適切に行うことができる。
【0014】
前記材料を管理する材料管理システムから、前記積層体の造形に用いた前記材料の特性を示す材料データを取得し、前記三次元積層装置が造形した前記積層体の品質データを取得するデータ取得部と、前記材料データと前記品質データとを照合し、前記積層体の造形に用いた前記材料が適切なものであるかを判断する照合部と、をさらに有する。この管理システムは、材料データと品質データとを照合することで、材料を適切に管理することができる。本システムでは、材料データを取得し、前記三次元積層装置が造形した前記積層体の品質データを取得するデータ取得部と、前記材料データと前記品質データとを照合した結果、複数の材料を混合した材料である場合はそれぞれの材料の含有比率を変更、調整することもできる。
【0015】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係る管理方法は、光ビームを照射して材料を供給することにより積層体を造形する三次元積層装置の前記材料を管理する管理方法であって、形状データ取得部が、前記積層体の形状データを取得する形状データ取得ステップと、造形条件設定部が、前記形状データに基づき、前記三次元積層装置で前記積層体を造形するための造形条件である設定造形条件を設定する造形条件設定ステップと、造形シミュレーション実行部が、前記形状データと前記設定造形条件とに基づき、前記設定造形条件で前記積層体を造形する造形シミュレーションを実行する造形シミュレーション実行ステップと、必要材料量取得部が、前記造形シミュレーションの実行結果に基づき、前記三次元積層装置で前記積層体を造形するために必要な前記材料の量である必要材料量を算出する必要材料量算出ステップと、出力制御部が、前記必要材料量に基づく情報を外部に出力する出力ステップと、を有する。この管理方法によると、歩留りも考慮して必要材料量を算出することが可能となり、三次元積層装置で造形する際に必要な材料量を適切に見積もることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、三次元積層装置で造形する際に必要な材料量を正確に見積もることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本実施形態の管理システムの模式的なブロック図である。
【
図2】
図2は、本実施形態の三次元積層装置の模式図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係る積層ヘッドの模式図である。
【
図4】
図4は、本実施形態に係る三次元積層装置の制御装置の模式的なブロック図である。
【
図5】
図5は、製造管理システムの模式的なブロック図である。
【
図6】
図6は、製造管理システムの処理を説明するフローチャートである。
【
図7】
図7は、材料管理システムの模式的なブロック図である。
【
図8】
図8は、プロセス管理システムの模式的なブロック図である。
【
図9】
図9は、プロセス管理システムの処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。
【0019】
(管理システムの全体構成)
図1は、本実施形態の管理システムの模式的なブロック図である。
図1に示すように、管理システム1は、製造管理システム10と、三次元積層装置12と、材料管理システム14と、プロセス管理システム16とを有する。製造管理システム10は、三次元積層装置12の造形条件などを管理するシステムである。製造管理システム10は、設定造形条件Da1と、必要材料量Da2と、発注データDa3とを設定して、自身が有する記憶部に記憶する。設定造形条件Da1は、三次元積層装置12が積層体の造形を行うための条件であり、必要材料量Da2は、三次元積層装置12が単位数の積層体を造形するために必要な材料の量であり、発注データDa3とは、三次元積層装置12による積層体の造形に用いる材料の発注に関する情報であるが、詳しくは後述する。
【0020】
三次元積層装置12は、製造管理システム10から設定造形条件Da1を取得して、設定造形条件Da1で積層体の造形を行う。三次元積層装置12は、プロセスデータDb1と品質データDb2とを取得して、自身が有する記憶部に記憶する。プロセスデータDb1は、積層体を造形している際の各種データであり、品質データDb2は、製造した積層体の品質を示すデータであるが、詳しくは後述する。
【0021】
材料管理システム14は、三次元積層装置12による積層体の造形に用いる材料を管理するシステムである。材料管理システム14は、製造管理システム10から発注データDa3を取得して、発注データDa3に基づき、配送する材料の準備処理を行う。また、材料管理システム14は、配送する材料の特性を示すデータである材料データDcを取得して、自身が有する記憶部に記憶する。
【0022】
プロセス管理システム16は、三次元積層装置12による積層体の造形プロセスなどに関するデータを蓄積するシステムである。プロセス管理システム16は、三次元積層装置12からプロセスデータDb1を取得して、プロセスデータDb1を記憶する。また、プロセス管理システム16は、材料管理システム14から材料データDcを取得し、三次元積層装置12から品質データDb2を取得して、材料データDcと品質データDb2との照合を行う。プロセス管理システム16は、プロセスデータDb1や、材料データDcと品質データDb2との照合結果などを、プロセスモニタリングデータDdとして記憶する。
【0023】
製造管理システム10と、三次元積層装置12と、材料管理システム14と、プロセス管理システム16とは、本実施形態では、それぞれ別のシステム(装置)である。また、製造管理システム10と、三次元積層装置12と、材料管理システム14と、プロセス管理システム16とを管理する主体(例えば個人や組織や会社など)は、互いに異なる。本実施形態では、製造管理システム10は、三次元積層装置12を開発、製造、販売などをした主体(装置メーカー)に管理され、三次元積層装置12は、積層体を製造する主体(製造メーカー)に管理され、材料管理システム14は、材料を販売する主体に管理され、プロセス管理システム16は、プロセスモニタリングデータを管理する主体(材料メーカー)に管理される。ただし、例えば、製造管理システム10と三次元積層装置12と材料管理システム14とプロセス管理システム16との少なくとも2つは、同じ主体に管理されてもよい。また、製造管理システム10と、三次元積層装置12と、材料管理システム14と、プロセス管理システム16との少なくとも2つは、一体のシステム(装置)であってもよい。
【0024】
(三次元積層装置)
最初に、三次元積層装置12について説明する。
図2は、本実施形態の三次元積層装置の模式図である。ここで、本実施形態では、水平面内の一方向を方向X、水平面内において方向Xと直交する方向を方向Y、方向X及び方向Yのそれぞれと直交する方向、すなわち鉛直方向を、方向Zとする。また、方向Yに沿う方向のうち一方の方向を、方向Y1とし、方向Yに沿う方向のうち他方の方向、すなわち方向Y1の反対方向を、方向Y2とする。本実施形態においては、三次元積層装置12の方向Y2側が、三次元積層装置12の正面側であり、三次元積層装置12の方向Y1側が、三次元積層装置12の背面側である。三次元積層装置12の正面側とは、例えば、作業者が積層体を造形するために三次元積層装置12を操作する側である。また、方向Zに沿う方向のうち一方の方向を、方向Z1とし、方向Zに沿う方向のうち他方の方向、すなわち方向Z1の反対方向を、方向Z2とする。本実施形態では、方向Z1が鉛直方向上方に向かう方向であり、方向Z2が鉛直方向下方に向かう方向である。
図2は、本実施形態に係る三次元積層装置12を方向Yから見た模式図である。なお、本実施形態に係る三次元積層装置12は、粉末Pを材料として、粉末Pに光ビームLを照射して粉末Pを溶融及び固化させることで、積層体を造形する。ただし、三次元積層装置12は、材料として粉末Pを用いることに限られず、例えば、ワイヤー状の材料(例えばワイヤ状の金属材料)や、液体(例えば液相の金属バインダ)などを材料としてもよい。以降においては、用いる材料を粉末Pとして記載しているが、粉末Pを、粉末P以外の材料に置き換えてもよい。
【0025】
図2に示すように、三次元積層装置12は、三次元積層室R内に、台部20と、基台移動部22と、基台部24と、台部26と、積層ヘッド28と、ヘッド移動部30と、管32A、32Bと、機械加工部33と、プロセス検出部34とを備える。また、三次元積層装置12は、光源部36と、粉末供給部37と、制御装置38とを備える。本実施形態では、光源部36と、粉末供給部37と、制御装置38とは、三次元積層室Rの外部に設けられる。
【0026】
三次元積層装置12は、基台部24に、三次元形状物である積層体Aを造形する装置である。基台部24は、積層体Aが造形される土台となる部材である。本実施形態の基台部24は、板状の部材である。なお、基台部24は、これに限定されない。基台部24は、積層体Aとは別体として積層体Aの土台となる部材であるが、積層体Aと結合されて積層体Aの一部となる部材であってもよい。
【0027】
台部20は、基台移動部22や基台部24などを支持する台である。基台移動部22は、台部20上に設けられ、基台部24を支持する。基台移動部22は、制御装置38の制御により、基台部24を移動させる機構である。基台移動部22は、第1移動部22Aと、第2移動部22Bと、回転部22Cとを有する。第1移動部22Aは、水平方向に沿った(鉛直方向に直交する)第1方向に基台部24を移動させる機構である。本実施形態では、第1移動部22Aは、基台部24を方向Yに沿って移動させる。さらに言えば、本実施形態においては、第1移動部22A上に、第2移動部22B、回転部22C、及び基台部24が配置され、第1移動部22Aは、第2移動部22B、回転部22C、及び基台部24を、方向Yに沿って移動させる。
【0028】
第2移動部22Bは、水平方向に沿った(鉛直方向に直交する)第2方向に基台部24を移動させる機構であり、第2方向は、第1方向に直交する方向である。本実施形態では、第2移動部22Bは、基台部24を方向Xに沿って移動させる。さらに言えば、本実施形態においては、第2移動部22B上に、回転部22C及び基台部24が配置され、第2移動部22Bは、回転部22C及び基台部24を方向Xに沿って移動させる。なお、本実施形態では、第1移動部22Aと第2移動部22Bは、上部に載せた基台部24を移動させるスライダであるが、スライダ以外の機構であってもよい。
【0029】
回転部22Cは、基台部24が配置される回転テーブルである。回転部22Cは、少なくとも1つの回転軸を中心として回転することで、上部に配置されている基台部24を回転させる。本実施形態では、回転部22Cは、互いに直交する3つの回転軸を回転中心として基台部24を回転させる。
【0030】
このように、基台移動部22は、第1移動部22Aと第2移動部22Bとにより、基台部24を方向X及び方向Yに沿って移動させる。さらに、基台移動部22は、回転部22Cにより、基台部24を3つの回転軸を回転中心として回転させる。すなわち、基台移動部22は、基台部24を、2つの軸に沿って移動させ3つの回転軸を中心に回転させる、5軸の移動機構である。ただし、基台移動部22は、5軸の移動機構に限られず、例えば、基台部24を方向X及び方向Yに沿って移動させる2軸の移動機構であってもよい。
【0031】
台部26は、三次元積層室R内に設けられる台座であり、本実施形態ではヘッド移動部30が設けられている。
【0032】
積層ヘッド28は、基台部24の方向Z1側、すなわち基台部24の鉛直方向上方側に設けられる。積層ヘッド28は、光ビーム照射口42Bから、基台部24に向けて光ビームLを照射し、粉末噴射口44Bから、基台部24に向けて粉末Pを噴射することで、基台部24上で積層体を形成する。すなわち、本実施形態に係る三次元積層装置12は、積層ヘッド28を備えるデポジション方式の三次元積層装置である。
【0033】
図3は、本実施形態に係る積層ヘッドの模式図である。
図3に示すように、積層ヘッド28は、内管42と外管44とを有する。外管44は、管状の部材であり、先端、すなわち方向Z2に向かって径が小さくなっている。内管42も、管状の部材であり、先端、すなわち方向Z2に向かって径が小さくなっている。内管42は、外管44の内部に挿入されているため、内管42と外管44とで、二重管を構成している。積層ヘッド28は、内管42の内周面側の空間が、光ビームLが通過するビーム経路42Aとなる。また、積層ヘッド28は、内管42の外周面と外管44の内周面との間の空間が、粉末Pが通過する粉末流路44Aとなる。すなわち、粉末流路44Aは、ビーム経路42Aの周囲を囲う形状の流路となる。本実施形態では、粉末流路44Aは、ビーム経路42Aの外周に同心円状に配置される。
【0034】
積層ヘッド28は、方向Z2側の端部40Aに、光ビーム照射口42Bが開口している。また、積層ヘッド28は、方向Z1側の端部40B、すなわち端部40Aとは反対側の端部に、ファイバー接続口48が設けられる。ファイバー接続口48は、端部40Bに設けられた開口である。光ビーム照射口42Bとファイバー接続口48とは、ビーム経路42Aを介して連通している。すなわち、光ビーム照射口42Bは、ビーム経路42Aの方向Z2側の開口であり、ファイバー接続口48は、ビーム経路42Aの方向Z1側の開口である。また、積層ヘッド28は、ビーム経路42Aの光ビーム照射口42Bとファイバー接続口48との間の位置に、光学素子46が設けられる。光学素子46は、例えば、光ビームLをコリメートするコリメートレンズと、コリメートした光ビームLを集光する集光レンズと、を備える。ただし、光学素子46の構成はこれに限られず任意である。
【0035】
ファイバー接続口48には、ファイバーである管32Aが接続される。管32Aは、光ビームLの光源となる光源部36に接続されるファイバーであり、端部がファイバー接続口48に接続される。管32Aは、光源部36からの光ビームLが入射され、入射した光ビームLをファイバー接続口48に接続される端部まで導き、端部から積層ヘッド28のビーム経路42A内に光ビームLを出射する。ビーム経路42A内に出射された光ビームLは、ビーム経路42A内を方向Z2に向けて進行し、光学素子46を通って、光ビーム照射口42Bから積層ヘッド28の外部に出射される。光ビーム照射口42Bから出射された光ビームLは、方向Z2に向けて進み、基台部24に向けて照射される。
【0036】
また、積層ヘッド28は、方向Z2側の端部40Aに、粉末噴射口44Bが開口している。粉末噴射口44Bは、光ビーム照射口42Bを囲うように開口する。また、積層ヘッド28は、方向Z1側の端部40Bに、管接続口49が設けられる。管接続口49は、端部40Bに設けられた開口である。粉末噴射口44Bと管接続口49とは、粉末流路44Aを介して連通している。すなわち、粉末噴射口44Bは、粉末流路44Aの方向Z2側の開口であり、管接続口49は、粉末流路44Aの方向Z1側の開口である。
【0037】
管接続口49には、管32Bが接続される。管32Bは、粉末Pが貯留されるタンクである粉末供給部37に接続される管であり、端部が管接続口49に接続される。管32Bは、粉末供給部37からの粉末Pを管接続口49に接続される端部まで導き、端部から積層ヘッド28の粉末流路44A内に粉末Pを供給する。粉末流路44A内に供給された粉末Pは、粉末流路44A内を方向Z2に向けて流れ、粉末噴射口44Bから積層ヘッド28の外部に噴射される。粉末噴射口44Bから噴射された粉末Pは、方向Z2に向けて進み、基台部24に向けて噴射される。
【0038】
ここで、光ビームLは、所定の収束径をもって基台部24に向かって照射される。
図3の例では、光ビームLは、基台部24上の基材Mに、収束径、すなわち光ビームの収束位置が重なるように、照射される。基材Mは、積層体の母材となる部材であるが、三次元積層装置12によって造形されている最中の積層体であってもよい。基材Mは、光ビームLによって溶融され、基材Mが溶融した溶融プールを形成する。また、粉末Pは、所定の収束径をもって、基台部24に向かって噴射される。粉末Pは、溶融プールに向けて、すなわち収束位置が溶融プールと重なるように噴射される。従って、粉末噴射口44Bから噴射された粉末Pは、溶融プール内で溶融される。そして、基台部24は、積層ヘッド28に対して移動するため、光ビームLが照射される位置が変化する。従って、光ビームLが照射されて溶融プールを形成していた箇所は、光ビームLが照射されなくなることで冷却されて固化して、ビードBを形成する。このビードBを三次元状に積層することで、積層体Aが造形される。
【0039】
なお、本実施形態における光ビームLは、レーザ光であるが、レーザ光に限られず、例えば電子ビームなどであってもよい。また、本実施形態における粉末Pは、金属粉末であるが、粉末であれば、金属粉末に限られない。また、上述のように、粉末P以外を材料に用いてもよい。
【0040】
なお、
図2及び
図3の例では、光ビームLを伝送する管32Aと、粉末Pを供給する管32Bとが、積層ヘッド28に接続されているが、それ以外の管が積層ヘッド28に接続されていてもよい。例えば、積層ヘッド28に気体を供給する管や、積層ヘッド28に冷却水を供給する管などが、積層ヘッド28に接続されていてもよい。なお、積層ヘッド28に接続される管により供給される気体としては、粉末流路44Aに供給されて粉末Pを流すためのエアや、粉末P及び光ビームLが供給される箇所の外周を覆うように供給される不活性ガスなどが挙げられる。
【0041】
図2に戻り、ヘッド移動部30は、積層ヘッド28を方向Zに沿って移動させる。本実施形態では、ヘッド移動部30は、台部26に取付けられている。ヘッド移動部30は、積層ヘッド28を、方向Zに沿って移動させる。本実施形態では、ヘッド移動部30は、積層ヘッド28を移動させるスライダであるが、スライダ以外の機構であってもよい。また、ヘッド移動部30は、台部26に取付けられることに限られず、取付け位置は任意である。
【0042】
機械加工部33は、積層体Aを機械加工する。
図2に示すように、機械加工部33は、基台部24の方向Z2に設けられており、例えば先端の工具が積層体Aに接触することで、積層体Aに対し、切削などの機械加工を行う。
【0043】
プロセス検出部34は、積層体Aを造形している際のプロセスデータDb1を検出するセンサである。本実施形態では、プロセス検出部34は、溶融プールなど、造形中の積層体Aを観察するセンサである。
【0044】
図4は、本実施形態に係る三次元積層装置の制御装置の模式的なブロック図である。制御装置38は、三次元積層装置12を制御する装置、ここではコンピュータである。
図4は、本実施形態に係る制御装置のブロック図である。
図4に示すように、制御装置38は、入力部50と、出力部52と、記憶部54と、通信部56と、制御部58とを有する。入力部50は、ユーザの操作を受け付ける入力装置である。出力部52は、制御部58の制御内容などを表示する表示装置である。記憶部54は、制御部58の演算内容やプログラムの情報などを記憶するメモリであり、例えば、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)のような主記憶装置と、HDD(Hard Disk Drive)などの外部記憶装置とのうち、少なくとも1つ含む。記憶部54は、制御部58が取得したプロセスデータDb1と品質データDb2とを記憶する。通信部56は、外部の装置と通信する機構、すなわち通信インターフェイスである。通信部56は、例えばWi-Fi(登録商標)モジュールやアンテナなどである。制御部58は、演算装置、すなわちCPU(Central Processing Unit)である。
【0045】
制御部58は、造形制御部60と、プロセスデータ取得部62と、品質データ取得部64とを有する。造形制御部60と、プロセスデータ取得部62と、品質データ取得部64とは、制御部58が記憶部54に記憶されたソフトウェア(プログラム)を読み出すことで実現されて、後述する処理を実行する。なお、制御装置38は、制御部58による後述の処理を実行する1つの装置であるが、後述の処理を複数の装置で受け持つものであってもよい。言い換えれば、制御装置38は、複数の装置で構成されていてもよい。
【0046】
造形制御部60は、積層体Aの造形を制御する。造形制御部60は、これから造形する積層体Aの造形条件である設定造形条件Da1を、製造管理システム10から取得する。造形条件は、積層体Aを造形するための三次元積層装置12の動作条件、すなわちレシピである。設定造形条件は、製造管理システム10によって設定されるものであるが、詳細は後述する。造形制御部60は、設定造形条件Da1に基づき、基台移動部22を制御して基台部24を移動させ、積層ヘッド28などを制御して積層ヘッド28から光ビームLを照射させつつ粉末Pを噴射させて、積層体Aを造形する。さらに言えば、造形制御部60は、基台部24を移動させながら、積層ヘッド28から光ビームLを照射させて粉末Pを噴射させることにより、ビードBを造形する。造形制御部60は、1つのビードBの造形が終わったら、次のビードBを造形することを続ける。例えば、造形制御部60は、同一面上に、1つ又は複数のビードBを造形することで、造形体を造形する。そして、造形制御部60は、造形体の上にさらに造形体を造形することで、造形体同士を積層して、積層体Aを造形する。すなわち、積層体Aは、造形体を積層したものであるといえる。また、造形制御部60は、設定造形条件Da1に基づき、積層体Aを機械加工する。また、造形制御部60は、ヘッド移動部30を制御して積層ヘッド28を方向Zに移動させたり、光源部36を制御して光ビームLの出力を制御したり、粉末供給部37を制御して粉末Pの種類や流量などを制御したり、キャリアガスや冷却水の供給を制御したりするなど、積層体Aの造形のための各種制御を実行する。
【0047】
プロセスデータ取得部62は、三次元積層装置12のプロセスデータDb1を取得する。プロセスデータDb1とは、積層体Aの造形中における、三次元積層装置12及び積層体Aの状態を示すデータである。プロセスデータDb1は、例えば、光ビームLの出力、送り速度、粉末Pの供給量、溶融プールの温度分布、機械座標などである。送り速度とは、基台部24に対する積層ヘッド28の相対速度を指し、本実施形態では、積層ヘッド28が粉末Pを噴射して光ビームLを照射させている際の、基台部24の積層ヘッド28に対する移動速度を指す。また、粉末Pの供給量とは、積層ヘッド28から噴射される粉末Pの噴射量であり、溶融プールの温度分布とは、積層体Aを造形時に生成される溶融プールの温度分布である。また、機械座標は、積層ヘッド28が粉末Pや光ビームLを供給している位置(粉末P、光ビームLの収束位置)の座標である。プロセスデータ取得部62は、積層体Aの造形中にプロセス検出部34などのセンサに検出されたデータを、プロセスデータDb1として取得する。例えば、溶融プールの温度分布は、プロセス検出部34が撮像した溶融プールの画像に基づき算出される。ただし、プロセスデータDb1は、センサに検出されることに限られず、例えば、造形制御部60が積層体Aの造形時に設定した値(例えば光ビームの出力など)を、プロセスデータ取得部62が取得してもよい。
【0048】
品質データ取得部64は、三次元積層装置12によって製造された積層体Aの品質を示す品質データDb2を取得する。本実施形態では、品質データDb2は、造形途中の積層体Aではなく、造形が完了した積層体Aの品質を示すデータであることが好ましい。例えば、三次元積層装置12とは別の装置が積層体Aの品質を検査して、品質データ取得部64は、その検査結果を、積層体Aの品質データDb2として取得する。ただし、三次元積層装置12が積層体Aの品質を検査してもよい。品質データDb2としては、例えば、積層体Aの強度、積層体Aの表面粗さ、積層体Aの密度などが挙げられる。
【0049】
プロセスデータ取得部62が取得したプロセスデータDb1と、品質データ取得部64が取得した品質データDb2とは、制御装置38の記憶部54に記憶される。また、プロセスデータ取得部62と品質データ取得部64とは、プロセスデータDb1と品質データDb2とを、通信部56を介してプロセス管理システム16に送信する。
【0050】
(製造管理システム)
次に、製造管理システム10について説明する。
図5は、製造管理システムの模式的なブロック図である。製造管理システム10は、三次元積層装置12が積層体Aを造形するための造形条件などを管理する装置、ここではコンピュータである。
図5に示すように、製造管理システム10は、入力部70と、出力部72と、記憶部74と、通信部76と、制御部78とを有する。入力部70は、ユーザの操作を受け付ける入力装置である。出力部72は、制御部78の制御内容などを表示する表示装置である。記憶部74は、制御部78の演算内容やプログラムの情報などを記憶するメモリであり、例えば、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)のような主記憶装置と、HDD(Hard Disk Drive)などの外部記憶装置とのうち、少なくとも1つ含む。記憶部74は、制御部78が取得した設定造形条件Da1と必要材料量Da2と発注データDa3とを記憶する。通信部76は、外部の装置と通信する機構、すなわち通信インターフェイスである。通信部76は、例えばWi-Fi(登録商標)モジュールやアンテナなどである。制御部78は、演算装置、すなわちCPU(Central Processing Unit)である。
【0051】
制御部78は、形状データ取得部80と、造形条件設定部82と、造形シミュレーション実行部84と、必要材料量取得部86と発注データ生成部87と、出力制御部88とを有する。形状データ取得部80と、造形条件設定部82と、造形シミュレーション実行部84と、必要材料量取得部86と発注データ生成部87と、出力制御部88は、制御部78が記憶部74に記憶されたソフトウェア(プログラム)を読み出すことで実現されて、後述する処理を実行する。なお、製造管理システム10は、制御部78による後述の処理を実行する1つの装置であるが、後述の処理を複数の装置で受け持つものであってもよい。言い換えれば、製造管理システム10は、複数の装置で構成されていてもよい。
【0052】
形状データ取得部80は、三次元積層装置12がこれから造形する積層体Aの形状データを取得する。形状データとは、製造しようとする積層体Aの形状を示すデータであり、例えば三次元CADモデルのデータなどである。形状データ取得部80は、通信部76を介して外部装置から形状データを取得してもよいし、記憶部74に記憶されている形状データを読み出してもよい。形状データ取得部80が取得する形状データとしては、目標とする積層体の理想形状、もしくは造形した積層体を接触式、もしくは非接触式の計測装置で測定した実際の形状、もしくは実際の積層造形中に光ビームで溶融した溶融プールの寸法を計測した結果から得られる推定形状などが考えられる。
【0053】
造形条件設定部82は、形状データに基づき、三次元積層装置12による積層体Aの造形条件、すなわち設定造形条件Da1を設定する。造形条件設定部82は、積層体Aが形状データで示された形状となるように、積層体Aを造形するための造形条件を設定して、その造形条件を、設定造形条件Da1とする。すなわち、造形条件設定部82は、CAM(Computer Aided Manufacturing)によって造形条件を設定するものである。造形条件設定部82は、設定造形条件Da1として、粉末P(材料)の材質、粉末P(材料)の粒度分布、粉末P(材料)の供給速度、粉末P(材料)の基台部24における収束径、光ビームLの出力、光ビームLの波長、光ビームLの強度分布(ビームプロファイル)、光ビームLの基台部24における集光径(収束径)、光ビームLと粉末P(材料)との収束位置、積層パス、機械加工パス、送り速度、粉末Pのキャリアガスの流量、粉末P(材料)を噴射するノズルの種類などを設定する。造形条件設定部82は、設定造形条件Da1として、以上挙げた全てを設定してよいし、以上挙げた少なくとも1つを設定してもよい。例えば、造形条件設定部82は、設定造形条件Da1として、少なくとも、材料(粉末P)の供給速度と、光ビームLの出力と、積層ヘッド28の送り速度と、を設定してよい。積層パスとは、ビードBをどのような方向に沿って形成し、ビードBをどのように積層するかなどの、ビードBの経路を指す。すなわち、積層パスとは、積層ヘッド28が粉末Pを噴射して光ビームLを照射させている際の、基台部24の積層ヘッド28に対する移動経路を指す。機械加工パスとは、積層体Aをどのように機械加工するかの経路を指し、機械加工部33で積層体Aを機械加工している際の、基台部24の機械加工部33に対する移動経路を指す。また、積層パス及び機械加工パスは、どの部分からどのようにビードBを形成したり機械加工を行ったりするかの順番も含む。また、収束位置とは、光ビームL及び粉末Pが収束する位置である。粉末Pを噴射するノズルとは、積層ヘッド28の粉末Pが噴射される粉末噴射口44Bを構成するノズルである。ノズルの種類は、単一もしくは複数の円形、もしくは異形の噴出ポートからなるノズルなどから、選択ができる。
【0054】
なお、造形条件設定部82は、1つの積層体Aに対し複数種類の粉末Pの材質を設定してよい。この場合、造形条件設定部82は、積層パス毎に粉末Pの材質を設定する(例えば、造形体の3層目までは1つ目の材質とし、4層目以降は2つ目の材料など)。このようにすることで、積層体Aを、箇所に応じて材質が異なる傾斜材料とすることができる。なお、粉末Pの材質は、造形条件設定部82が形状データに基づき設定することに限られず、どのような積層体Aを製造するかの要求などに応じて設定されてもよい。
【0055】
また、造形条件設定部82は、設定造形条件Da1として、積層ヘッド28が粉末Pの噴射を開始するタイミングから、積層体Aの造形(ビードBの生成)を開始するタイミングまでの間の、第1ラグ時間を設定してもよい。三次元積層装置12は、粉末Pの噴射を開始したタイミングでは、粉末Pの噴射量が安定しない場合がある。従って、造形条件設定部82は、粉末Pの噴射を開始するタイミングから、第1ラグ時間をだけ経過した後に、すなわち噴射量が安定した後に、積層体Aの造形(ビードBの生成)を開始するように、設定造形条件Da1を設定する。また、造形条件設定部82は、設定造形条件Da1として、粉末Pの材質を変更して噴射させるタイミングから、材質を変更した粉末Pを用いて積層体Aの造形(ビードBの生成)を開始するタイミングまでの間の、第2ラグ時間を設定してもよい。造形の途中で粉末Pの材質を変更した場合、材質変更直後においては、変更前の粉末と変更後の材料とが混ざるおそれがある。従って、造形条件設定部82は、材質を変更した粉末Pの噴射を開始するタイミングから、第2ラグ時間をだけ経過した後に、変更後の材質の粉末Pを用いた積層体Aの造形(ビードBの生成)を開始するように、設定造形条件Da1を設定する。また、造形条件設定部82は、設定造形条件Da1として、粉末Pを安定的に噴射しているが光ビームLを照射していない時間を、第3ラグ時間として設定してもよい。三次元積層装置12は、粉末Pの噴射から所定時間が経過して粉末Pの噴射が安定している時間帯でも、光ビームLを照射せずに積層体の造形をしない場合がある。例えば、直線パスで往復しながら積層する場合、積層高さを均一にするため(送りの加減速による速度変化の影響を無くすため)、光ビームLの照射を一旦止め、意図的にオーバランさせてから反転動作するという方法を取る場合がある。この際、粉末吐出安定までの時間のロスを避けるため、粉末Pの噴射を続ける場合がある。造形条件設定部82は、このような場合を第3ラグ時間として設定する。造形条件設定部82は、粉末Pの噴射中に光ビームLの照射を停止したタイミングから、第3ラグ時間をだけ経過した後に、光ビームLの照射を再開して積層体Aの造形(ビードBの生成)を再開するように、設定造形条件Da1を設定する。
【0056】
造形条件設定部82は、以上のように設定した設定造形条件Da1を、通信部76を介して三次元積層装置12の制御装置38に送信する。造形条件設定部82は、設定造形条件Da1に、制御装置38が読み込めるコードを付加して、制御装置38に送信する。なお、三次元積層装置12は、この設定造形条件Da1で積層体Aの造形を実施し、その積層体Aの品質データDb2を取得する場合がある。この場合、造形条件設定部82は、三次元積層装置12から品質データDb2を取得し、その品質データDb2に基づき、設定造形条件Da1を設定し直してもよい。すなわち、造形条件設定部82は、三次元積層装置12が実際に造形した場合のデータをフィードバックデータとして、設定造形条件Da1を更新してもよい。
【0057】
造形シミュレーション実行部84は、設定造形条件Da1に基づき、設定造形条件Da1で積層体Aを造形する造形シミュレーションを実行する。すなわち、造形シミュレーション実行部84は、設定造形条件Da1を用いて、三次元積層装置12により積層体Aを造形するシミュレーションを実行して、形状データに示された形状となる仮想の積層体Aを造形する。言い換えれば、造形シミュレーション実行部84は、三次元積層装置12により積層体Aを造形するシミュレーションモデルを読み出し、そのシミュレーションモデルに、設定造形条件Da1をインプットデータとして入力して、造形シミュレーションを実行する。そして、造形シミュレーション実行部84は、造形シミュレーションのアウトプットデータとして、形状データに示された形状となる仮想の積層体Aを生成する。さらに、造形シミュレーション実行部84は、アウトプットデータとして、設定造形条件Da1で積層体Aを造形する場合に必要な材料の量を算出する。ここでの材料とは、積層ヘッド28が噴射する粉末Pを指し、設定造形条件Da1で積層体Aを造形する場合に必要な材料の量とは、積層ヘッド28に供給する粉末Pの量を指す。ただし、ここでの材料は、粉末Pに限られず、例えば液体などであってもよく、必要な材料の量は、積層体Aを造形する場合に必要な液体の量であってもよい。アウトプットデータとしては、積層体Aを造形するのに必要な製造時間を含んでいてもよい。なお、三次元積層装置12は、粉末Pを噴射して光ビームLを照射するデポジション方式である。従って、造形シミュレーション実行部84が実行する造形シミュレーションも、デポジション方式で積層体Aを造形するシミュレーションである。
【0058】
必要材料量取得部86は、造形シミュレーション実行部84による造形シミュレーションの実行結果に基づき、三次元積層装置12で積層体Aを造形するために必要な必要材料量を取得する。上述のように、造形シミュレーション実行部84は、設定造形条件Da1をインプットデータとして造形シミュレーションを行った場合に、設定造形条件Da1で積層体Aを造形する場合に必要な材料の量を、アウトプットデータとしている。必要材料量取得部86は、造形シミュレーション実行部84が算出した、設定造形条件Da1で積層体Aを造形する場合に必要な材料の量、ここでは粉末Pの量を、必要材料量として取得する。三次元積層装置12においては、その造形プロセスの都合上、積層ヘッド28に供給される粉末Pの全てを、積層体Aを構成するものとして用いることはできない。すなわち、積層ヘッド28に供給される粉末Pの一部は、実際には積層体Aを構成する材料とはならない。造形シミュレーション実行部84は、造形シミュレーションにより、積層体Aを構成するものとして用いられる粉末Pの量と、三次元積層装置12に投入されるが積層体Aを構成しない粉末Pの量とを合計した、粉末Pの投入量を、必要材料量として算出する。
【0059】
造形シミュレーション実行部84が算出する積層体Aを構成するものとして用いられない粉末Pは、シミュレーションにおいて積層ヘッド28に供給されたが、積層体Aを構成しない粉末Pを指す。積層体Aを構成するものとして用いられない粉末Pは、例えば、基台部24に噴射されたが、溶融せずに積層体Aを形成しなかった粉末が含まれる。また、積層体Aを構成するものとして用いられない粉末Pは、粉末Pの噴射を開始するタイミングから積層体Aの造形を開始するタイミングまでの間(第1ラグ時間)に噴射される粉末Pが含まれる。また、積層体Aを構成するものとして用いられない粉末Pは、粉末Pの材質を変更して噴射させるタイミングから、材質を変更した粉末Pを用いて積層体Aの造形を開始するタイミングまでの間(第2ラグ時間)に噴射される粉末Pが含まれる。また、積層体Aを構成するものとして用いられない粉末Pは、粉末Pの噴射中に光ビームLの照射を停止したタイミングから光ビームLの照射を再開するタイミングまでの間(第3ラグ時間)に噴射される粉末Pが含まれる。また、積層体Aを構成するものとして用いられない粉末Pは、積層ヘッド28への粉末Pの供給を停止するタイミングより後に、積層ヘッド28から噴射される粉末Pが含まれる。積層ヘッド28は、粉末供給部37からの粉末Pの供給が停止した後も、内部に粉末Pが残留するため、これが噴射される場合がある。積層ヘッド28への粉末Pの供給を停止するタイミングより後に積層ヘッド28から噴射される粉末Pとは、この内部に残留した粉末Pを指す。
【0060】
発注データ生成部87は、必要材料量取得部86が取得した必要材料量Da2に基づき、材料(ここでは粉末P)を発注するための発注データDa3を生成する。発注データ生成部87は、三次元積層装置12を管理する主体が保有している粉末Pの在庫の情報、すなわち造形に用いる粉末Pの保有量を、取得する。発注データ生成部87は、三次元積層装置12またはその管理主体から粉末Pの在庫の情報を取得してよい。発注データ生成部87は、粉末Pの在庫の情報と、必要材料量取得部86が取得した必要材料量Da2とを比較して、粉末Pを発注する必要があるか判断し、必要があると判断した場合に、発注データDa3を生成する。発注データDa3は、発注する粉末Pの量と、発注する粉末Pの特性とを含む。粉末Pの特性とは、粉末Pの材質や、粉末Pの粒径や、粉末Pの真球度などである。発注データ生成部87は、例えば、積層体Aの製造計画や製造時間に関する情報を取得し、その製造計画や製造時間と必要材料量と粉末Pの在庫の情報とに基づき、発注する粉末Pの量を算出してよい。
【0061】
出力制御部88は、必要材料量に基づく情報を、外部に出力する。本実施形態では、出力制御部88は、必要材料量に基づく情報として、発注データDa3を、通信部76を介して材料管理システム14に送信する。出力制御部88は、発注データDa3を材料管理システム14に送信することで、粉末Pを発注する。出力制御部88は、必要材料量に基づき、材料管理システム14に、材料(ここでは粉末P)を発注するといえる。
【0062】
製造管理システム10は、以上の構成となっている。次に、製造管理システム10による処理工程について説明する。
図6は、製造管理システムの処理を説明するフローチャートである。
図6に示すように、製造管理システム10は、造形条件設定部82により、設定造形条件Da1を設定し、(ステップS
20)、造形シミュレーション実行部84により、設定造形条件Da1で造形シミュレーションを実行する(ステップS
22)。造形シミュレーション実行部84は、造形シミュレーションを実行して、設定造形条件Da1で積層体Aを造形する場合の必要材料量Da2、ここでは設定造形条件Da1で積層体Aを造形する場合に必要な粉末Pの量を、算出する。製造管理システム10は、必要材料量取得部86により、造形シミュレーション実行部84が算出した必要材料量Da2を取得し(ステップS24)、発注データ生成部87により、必要材料量Da2に基づき、材料の発注、ここでは粉末Pの発注が必要かを判断する(ステップS26)。粉末Pの発注が必要である場合(ステップS26;Yes)、製造管理システム10は、発注データ生成部87により、粉末Pの発注量を示す発注データDa3を生成し、出力制御部88により、発注データDa3を材料管理システム14に送信することで、粉末Pを発注する(ステップS28)。粉末Pの発注が必要でない場合は、粉末Pを発注せず、本処理を終了する。
【0063】
ここで、三次元積層装置12は、粉末P等の材料を用いて積層体Aの造形を行う。従って、三次元積層装置12で積層体Aを造形する場合には、粉末P等の材料の必要量を把握して、必要量の材料を在庫として保持しておくことが求められる。しかし、三次元積層装置12においては、その造形プロセス上、使用する粉末Pの全てを積層体Aに用いることはできない。従って、製造する積層体Aの形状データだけでは、造形に必要な材料量を正確に見積もることができないおそれがある。それに対し、本実施形態に係る製造管理システム10は、積層体Aを造形するための設定造形条件を設定し、その設定造形条件下で造形シミュレーションを実行することで、必要材料量を算出している。造形シミュレーションは、設定造形条件下での積層体Aの造形を再現するシミュレーションであるため、製造管理システム10は、積層体Aとして用いられる粉末Pの量に加え、積層体Aとして用いられないが使用される粉末Pの量も算出することができる。従って、積層体Aとして用いられないが使用される粉末Pの量、すなわち歩留りも考慮して必要材料量を算出することが可能となり、造形に必要な材料量を正確に見積もることが可能となる。特に、デポジション方式の三次元積層装置や、金属粉末を用いた三次元積層装置は、ベッド方式の三次元積層装置や、樹脂粉末などを用いた三次元積層装置に比べ、積層体Aとして用いられないが使用される粉末Pの量が多くなったり、積層体Aの形状や造形条件に応じて、積層体Aとして用いられないが使用される粉末Pの量の変動が大きくなったりする傾向にある。従って、デポジション方式の三次元積層装置や、金属粉末を用いた三次元積層装置を用いる場合、必要材料量を見積もることが特に困難となる。そのような場合でも、製造管理システム10は、造形シミュレーションを実行することで、積層体Aとして用いられないが使用される粉末Pの量を正確に見積もることが可能となり、必要材料量を適切に見積もることができる。また、三次元積層装置は、適切に積層体Aを造形できる造形条件のレンジが小さく、また、造形条件の種類が多い。従って、例えば、必要材料量を見積もるために三次元積層装置12で実際に積層体Aを造形するには、造形条件の設定のための負荷が大きくなる。それに対し、本実施形態においては、製造管理システム10によって造形条件を設定し、その造形条件でシミュレーションを実施している。従って、必要材料量を見積もるための負荷が大きくなることも抑制できる。
【0064】
(材料管理システム)
次に、材料管理システム14について説明する。
図7は、材料管理システムの模式的なブロック図である。材料管理システム14は、三次元積層装置12が積層体Aを造形するための材料を管理する装置、ここではコンピュータである。
図7に示すように、材料管理システム14は、入力部90と、出力部92と、記憶部94と、通信部96と、制御部98とを有する。入力部90は、ユーザの操作を受け付ける入力装置である。出力部92は、制御部98の制御内容などを表示する表示装置である。記憶部94は、制御部98の演算内容やプログラムの情報などを記憶するメモリであり、例えば、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)のような主記憶装置と、HDD(Hard Disk Drive)などの外部記憶装置とのうち、少なくとも1つ含む。記憶部94は、制御部98が取得した材料データDcを記憶する。通信部96は、外部の装置と通信する機構、すなわち通信インターフェイスである。通信部96は、例えばWi-Fi(登録商標)モジュールやアンテナなどである。制御部98は、演算装置、すなわちCPU(Central Processing Unit)である。
【0065】
制御部98は、受注管理部100と材料データ取得部102とを有する。受注管理部100と材料データ取得部102とは、制御部98が記憶部94に記憶されたソフトウェア(プログラム)を読み出すことで実現されて、後述する処理を実行する。なお、材料管理システム14は、制御部98による後述の処理を実行する1つの装置であるが、後述の処理を複数の装置で受け持つものであってもよい。言い換えれば、材料管理システム14は、複数の装置で構成されていてもよい。
【0066】
受注管理部100は、製造管理システム10からの発注データDa3に基づき、材料、ここでは粉末Pの受注を管理する。受注管理部100は、製造管理システム10から送信された発注データDa3を取得し、発注データDa3に示された内容に基づき、粉末Pを準備し、準備した粉末Pを三次元積層装置12の管理主体に発送する処理を実行する。すなわち、受注管理部100は、発注データDa3に示された特性の粉末Pを、発注データDa3に示された量だけ準備する処理と、三次元積層装置12の管理主体に発送する処理とを実行する。また、受注管理部100は、三次元積層装置12の管理主体に関する情報、粉末Pの受注日、受注量、発送日、単価、納期などの情報を管理してもよい。
【0067】
材料データ取得部102は、三次元積層装置12の管理主体に発送する粉末Pのデータを、材料データDcとして取得する。材料データ取得部102は、取得した材料データDcを、プロセス管理システム16に送信する。材料データDcは、三次元積層装置12の管理主体に発送する粉末Pの特性を示すデータである。材料データDcとしては、例えば、粉末Pの材質、粉末Pの粒径、粉末Pの真球度などである。粉末Pの材質としては、粉末Pの材料組成、すなわち成分比率などが挙げられる。材料データ取得部102は、発送する粉末Pの特性の測定結果を、材料データDcとして取得する。また、材料データDcとして、粉末Pの製造国、製造工場、製造ライン、製造年月日、製造バッチ番号、製造ロット番号などに関する情報を含めてもよい。
【0068】
(プロセス管理システム)
次に、プロセス管理システム16について説明する。プロセス管理システム16は、三次元積層装置12による積層体Aの造形プロセスなどに関するプロセスモニタリングデータDdを蓄積するシステムである。
図8は、プロセス管理システムの模式的なブロック図である。
図8に示すように、プロセス管理システム16は、入力部110と、出力部112と、記憶部114と、通信部116と、制御部118とを有する。入力部110は、ユーザの操作を受け付ける入力装置である。出力部112は、制御部118の制御内容などを表示する表示装置である。記憶部114は、制御部118の演算内容やプログラムの情報などを記憶するメモリであり、例えば、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)のような主記憶装置と、HDD(Hard Disk Drive)などの外部記憶装置とのうち、少なくとも1つ含む。記憶部114は、制御部118が取得したプロセスモニタリングデータDdを記憶する。通信部116は、外部の装置と通信する機構、すなわち通信インターフェイスである。通信部116は、例えばWi-Fi(登録商標)モジュールやアンテナなどである。制御部118は、演算装置、すなわちCPU(Central Processing Unit)である。
【0069】
制御部118は、データ取得部120と照合部122とを有する。データ取得部120と照合部122とは、制御部118が記憶部114に記憶されたソフトウェア(プログラム)を読み出すことで実現されて、後述する処理を実行する。なお、プロセス管理システム16は、制御部118による後述の処理を実行する1つの装置であるが、後述の処理を複数の装置で受け持つものであってもよい。言い換えれば、プロセス管理システム16は、複数の装置で構成されていてもよい。
【0070】
データ取得部120は、三次元積層装置12から、プロセスデータDb1と品質データDb2とを取得する。また、データ取得部120は、材料管理システム14から、材料データDcを取得する。データ取得部120は、取得したプロセスデータDb1と品質データDb2と材料データDcとを、プロセスモニタリングデータDdとして記憶部114に記憶させる。
【0071】
照合部122は、品質データDb2と材料データDcとの照合を行う。照合部122は、品質データDb2と材料データDcとを照合して、積層体Aの造形に用いた粉末Pが適切なものであるかを判断し、その判断結果をプロセスモニタリングデータDdとして記憶部114に記憶させる。ここで、材料データDcは、三次元積層装置12の管理主体に配送した粉末Pの特性データであり、品質データDb2は、三次元積層装置12が造形した積層体Aの品質データである。すなわち、品質データDb2は、材料データDcに示された特性を有する粉末Pを用いて造形された積層体Aの品質を示すデータである。従って、材料データDcと品質データDb2とは、互いに関連したデータであるといえる。照合部122は、品質データDb2と材料データDcとを照合して、材料データDcと品質データDb2とを紐付けて、粉末Pが適切なものかを判断する。例えば、照合部122は、品質データDb2における品質が所定値より低い場合に、その品質データDb2に紐付いた材料データDcの粉末Pを、適切なものでないと判断する。また、照合部122は、品質データDb2における品質が所定値以上の場合に、その品質データDb2に紐付いた材料データDcの粉末Pを、適切なものであると判断する。照合部122は、粉末Pが適切なものかの判断結果を、プロセスモニタリングデータDdとして記憶部114に記憶させる。
【0072】
また、照合部122は、品質データDb2と材料データDcとを照合して、材料データDcで示された粉末Pの特性と、品質データDb2で示された積層体Aの品質とを紐付ける。そして、照合部122は、粉末Pの特性ごとに、すなわち粉末Pの材質や、粉末Pの粒径や、粉末Pの真球度ごとに、積層体Aの品質の度合いを紐付ける。そして、照合部122は、その紐付けたデータを、プロセスモニタリングデータDdとして記憶部114に記憶させる。このように品質データDb2と材料データDcとを照合したデータをプロセスモニタリングデータDdとすることで、粉末Pの特性が積層体Aの品質に与える影響を認識することができ、それを製造管理システム10や材料管理システム14などに伝えることで、粉末Pの品質を適切に管理して、積層体Aの品質を向上させることができる。すなわち、照合部122が、積層体Aの造形に用いられる粉末Pの品質と、当該粉末Pにより造形された積層体Aの品質とを照合し両者の紐付けを行うことにより材料のトレーサビリティを確保し、品質の安定化を図ることができる。
【0073】
プロセス管理システム16は、以上の構成となっている。次に、プロセス管理システム16による処理工程について説明する。
図9は、プロセス管理システムの処理を説明するフローチャートである。
図9に示すように、プロセス管理システム16は、データ取得部120により、品質データDb2と材料データDcとを取得し(ステップS30)、照合部122により、品質データDb2と材料データDcとを照合して(ステップS32)、粉末Pが適切なものかを判断する(ステップS34)。プロセス管理システム16は、粉末Pが適切なものかの判断結果を、プロセスモニタリングデータDdとして記憶部114に記憶させる(ステップS36)。
【0074】
以上説明したように、本実施形態に係る管理システム1は、光ビームLを照射して材料を供給することにより積層体Aを造形する三次元積層装置12の材料を管理するシステムである。管理システム1は、形状データ取得部80と、造形条件設定部82と、造形シミュレーション実行部84と、必要材料量取得部86と、出力制御部88とを有する。形状データ取得部80は、積層体Aの形状データを取得する。造形条件設定部82は、形状データに基づき、三次元積層装置12で積層体Aを造形するための設定造形条件Da1を設定する。造形シミュレーション実行部84は、設定造形条件Da1に基づき、設定造形条件Da1で積層体Aを造形する造形シミュレーションを実行する。必要材料量取得部86は、造形シミュレーションの実行結果に基づき、三次元積層装置12で積層体Aを造形するための必要材料量を算出する。出力制御部88は、必要材料量に基づく情報を外部に出力する。
【0075】
管理システム1は、積層体Aを造形するための条件である設定造形条件を設定し、その設定造形条件下で造形シミュレーションを実行することで、必要材料量を算出している。従って、管理システム1は、積層体Aの完成品を構成する材料量に加え、積層体Aの完成品を構成しないが使用される材料量も算出することができる。従って、管理システム1は、歩留りも考慮して必要材料量を算出することが可能となり、三次元積層装置12で造形する際に必要な材料量を正確に見積もることができる。
【0076】
また、積層体Aは、溶融した材料が固化することで造形される。管理システム1は、積層体Aとして用いられないが使用される材料の量、すなわち歩留りも考慮して必要な粉末Pの量を算出することが可能となり、三次元積層装置12で造形する際に必要な材料の量を正確に見積もることができる。
【0077】
また、造形シミュレーション実行部84は、造形シミュレーションとして、材料を噴射して光ビームLを照射するデポジション方式で積層体Aを造形するシミュレーションを実行する。デポジション方式の三次元積層装置は、積層体Aの完成品を構成しないが使用される材料の量が多くなったり、積層体Aの形状や造形条件に応じて、積層体Aの完成品を構成しないが使用される材料の量の変動が大きくなったりする傾向にあり、必要材料量を見積もることが特に困難となる。そのような場合でも、管理システム1は、造形シミュレーションを実行することで、積層体Aの完成品を構成しないが使用される材料の量を精度良く見積もることが可能となり、必要材料量を正確に見積もることができる。
【0078】
また、造形条件設定部82は、設定造形条件Da1として、少なくとも、材料の供給速度と、光ビームLの出力と、積層ヘッド28の送り速度と、を設定する。設定造形条件Da1をこのように設定することで、設定造形条件Da1を用いて造形シミュレーションを行った場合に、積層体Aの完成品を構成しないが使用される材料の量、すなわち歩留りを精度良く算出して、必要な材料量を正確に見積もることができる。
【0079】
また、必要材料量取得部86は、材料の噴射を開始するタイミングから積層体Aの造形を開始するタイミングまでの間(第1ラグ時間)に噴射される材料の量と、積層ヘッド28への材料の供給を停止するタイミングより後に積層ヘッド28から噴射される粉末Pの量と、材料を噴射しているが光ビームLを照射していない期間(第3ラグ時間)における材料の量とを、必要材料量に含める。必要材料量にこれらの量も含めることで、積層体Aの完成品を構成しないが使用される粉末Pの量、すなわち歩留りを精度良く算出して、必要な材料量を正確に見積もることができる。
【0080】
また、造形条件設定部82は、三次元積層装置12が設定造形条件Da1で積層体Aを造形した際の、積層体Aの品質データDb2に基づき、設定造形条件Da1を更新する。管理システム1は、実際の製造結果に基づき設定造形条件Da1を更新することで、設定造形条件Da1を適切に設定することができる。
【0081】
また、形状データ取得部80、造形条件設定部82、造形シミュレーション実行部84、必要材料量取得部86、及び出力制御部88は、製造管理システム10に設けられる。そして、出力制御部88は、必要材料量に基づき、製造管理システム10とは異なるシステムである材料管理システム14に、材料を発注する。この管理システム1は、このように製造管理システム10から材料管理システム14に材料を発注するシステムを構築することで、物流を適切に行うことができる。
【0082】
また、管理システム1は、データ取得部120と、照合部122とを有する。データ取得部120は、材料管理システム14から、積層体Aの造形に用いた材料の特性を示す材料データDcを取得し、三次元積層装置12が造形した積層体Aの品質データDb2を取得する。照合部122は、材料データDcと品質データDb2とを照合し、積層体Aの造形に用いた材料が適切なものであるかを判断する。この管理システム1は、材料データDcと品質データDb2とを照合することで、材料を適切に管理することができる。また、管理システム1では、材料データDcと品質データDb2とを照合した結果、複数の材料を混合した材料である場合は、それぞれの材料の含有比率を変更、調整することもできる。
【0083】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態の内容により実施形態が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0084】
1 管理システム
10 製造管理システム
12 三次元積層装置
14 材料管理システム
16 プロセス管理システム
80 形状データ取得部
82 造形条件設定部
84 造形シミュレーション実行部
86 必要材料量取得部
87 発注データ生成部
88 出力制御部
A 積層体
Da1 設定造形条件
Da2 必要材料量
Da3 発注データ
Db1 プロセスデータ
Db2 品質データ
Dc 材料データ
Dd プロセスモニタリングデータ