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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-02
(45)【発行日】2023-02-10
(54)【発明の名称】クラッチ
(51)【国際特許分類】
   F16D 27/118 20060101AFI20230203BHJP
   F16H 27/04 20060101ALI20230203BHJP
【FI】
F16D27/118
F16H27/04 Z
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019139571
(22)【出願日】2019-07-30
(65)【公開番号】P2021021461
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2021-04-23
(73)【特許権者】
【識別番号】510118846
【氏名又は名称】シンフォニアマイクロテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】久保 勉
【審査官】日下部 由泰
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第4232772(US,A)
【文献】中国特許出願公開第102583075(CN,A)
【文献】特開2017-211057(JP,A)
【文献】特開2007-64343(JP,A)
【文献】特開2006-266399(JP,A)
【文献】特開平8-169576(JP,A)
【文献】特開平8-160831(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 27/118
F16H 19/00-37/16,49/00
F16D 41/067,41/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源からの駆動回転力が入力される回転可能な入力部と、
前記入力部と同軸上に回転する回転可能な出力部と、
前記入力部及び前記出力部と同軸上を軸方向に移動するプランジャーと、
前記プランジャーと同軸上に配置され該プランジャーを作動させるコイルと、を備え、
前記プランジャーは、係合部を備え、
前記入力部は、前記プランジャーの係合部が係合して該入力部の回転を阻止する被係合部を備え、
前記プランジャーの非作動時に前記係合部が前記被係合部に係合するように該プランジャーを移動付勢するための付勢手段を備え、
前記プランジャーを作動させることにより前記係合を解除することで前記駆動源からの駆動回転力が前記入力部から前記出力部へ伝達されるように構成され、
前記駆動源が駆動ギアからなり、前記入力部は、同軸上に回転可能で、かつ、前記駆動ギアと噛み合って回転状態となる有歯部及び該有歯部から離脱して該駆動ギアと噛み合わず停止状態となる欠歯部を有する2枚の欠歯ギアを備え、一方の第1欠歯ギアが、前記出力部に連結されるギアであり、他方の第2欠歯ギアが、前記プランジャーの係合部が係合する前記被係合部を備え、前記プランジャーの作動時に前記第2欠歯ギアを所定量回転させて前記駆動ギアに該第2欠歯ギアの有歯部を噛合わせるためのバネを備え、前記第2欠歯ギアを所定量回転させることにより前記第1欠歯ギアに備える被係合部に係合して該第1欠歯ギアを回転させるギア係合部を該第2欠歯ギアに備えていることを特徴とするクラッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動源からの駆動回転力を入力部から出力部へ断続的に伝達するためのクラッチに関する。
【背景技術】
【0002】
上記クラッチとしては、引用文献1の摩擦式のクラッチや引用文献2のバネの付勢力を用いた電磁バネクラッチが知られている。
【0003】
引用文献1では、コイルに電力を供給することによって、アーマチュアがリング体の弾性力に抗してロータに吸着されてアーマチュアがロータに当接する。これにより、ロータがアーマチュアと共回りしてクラッチが入の状態になる。この構成では、ロータとアーマチュアとが適切に当接するように両者に形成された当接面の研磨加工、研磨後の洗浄工程、当接面の平滑性を高めるためのトルクアップ工程等の加工工程が多く必要であり、コスト面において不利になるという不都合がある。また、ロータ及びアーマチュアを鋼板で構成しているため、錆びが発生するという問題があり、早期改善が望まれている。
【0004】
引用文献2も、引用文献1と同様に、コイルに電力を供給すると、バネの付勢力に抗してアーマチュアがロータの方向に移動することによって、アーマチュアがロータに当接する。これにより、ロータがアーマチュアと共回りしてクラッチが入の状態になる。この構成は、引用文献1と同様であるため、引用文献1と同様の不都合が発生する。
【0005】
上記2つの構成とは別の構成のクラッチが提案されている。このクラッチは、ソレノイドとソレノイドとは別の場所に取り付けたクラッチ部とを連動させたクラッチ機構から構成されている(引用文献3参照)。この場合、別の場所に2部品を取り付けるため、取り付けスペースが大きくなることや、取り付け工程数が多くなるだけでなく、ソレノイドとクラッチ部の取り付け時に隙間調整等の調整箇所が必要になり、コスト面において不利になるという不都合があり、改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2000-346094号公報
【文献】特開平7-208497号公報
【文献】特開2019-44931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、錆びの発生がなく、しかもコスト面及び取り付けスペースにおいて有利となるクラッチを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のクラッチは、駆動源からの駆動回転力が入力される回転可能な入力部と、前記入力部と同軸上に回転する回転可能な出力部と、前記入力部及び前記出力部と同軸上を軸方向に移動するプランジャーと、前記プランジャーと同軸上に配置され該プランジャーを作動させるコイルと、を備え、前記プランジャーは、係合部を備え、前記入力部は、前記プランジャーの係合部が係合して該入力部の回転を阻止する被係合部を備え、前記プランジャーの非作動時に前記係合部が前記被係合部に係合するように該プランジャーを移動付勢するための付勢手段を備え、前記プランジャーを作動させることにより前記係合を解除することで前記駆動源からの駆動回転力が前記入力部から前記出力部へ伝達されるように構成されていることを特徴としている。
【0009】
本発明によれば、コイルに通電しない時には、プランジャーが非作動状態となり、付勢手段によりプランジャーの係合部が入力部の被係合部に係合する。この係合により入力部の回転が阻止され、駆動源からの駆動回転力が入力部から出力部へ伝達されない。コイルに通電した時には、プランジャーが作動状態となり、付勢手段による付勢力に抗してプランジャーが被係合部から離れる側へ移動して前記係合が解除される。この係合解除により駆動源からの駆動回転力が入力部から出力部へ伝達される。また、出力部が入力部と同軸上に設けられ、プランジャーが入力部及び出力部と同軸上を軸方向に移動するように設けられ、コイルがプランジャーと同軸上に配置されているので、取り付けスペースを小さく抑えることができる。また、構成部品を同軸上に組み付けるので、構成部品同士の隙間調整等の調整箇所も不要になる。また、動力伝達を係合及び係合解除で行うので、当接面が不要となる。このため、当接面の研磨加工、研磨後の洗浄工程、トルクアップ工程等の加工工程が全く不要になるだけでなく、当接面に錆が発生することもない。
【0010】
また、本発明のクラッチは、前記駆動源が駆動ギアからなり、前記入力部は、同軸上に回転可能で、かつ、前記駆動ギアと噛み合って回転状態となる有歯部及び該有歯部から離脱して該駆動ギアと噛み合わず停止状態となる欠歯部を有する2枚の欠歯ギアを備え、一方の第1欠歯ギアが、前記出力部に連結されるギアであり、他方の第2欠歯ギアが、前記プランジャーの係合部が係合する前記被係合部を備え、前記プランジャーの作動時に前記第2欠歯ギアを所定量回転させて前記駆動ギアに該第2欠歯ギアの有歯部を噛合わせるためのバネを備え、前記第2欠歯ギアを所定量回転させることにより前記第1欠歯ギアに備える被係合部に係合して該第1欠歯ギアを回転させるギア係合部を該第2欠歯ギアに備えていてもよい。
【0011】
上記構成によれば、第2欠歯ギアの被係合部とプランジャーの係合部とが係合している状態では、第2欠歯ギアの回転が阻止される。これにより2枚の欠歯ギアの欠歯部に駆動ギアが一致した状態が保たれるため、駆動源からの駆動回転力が第2欠歯ギアを介して第1欠歯ギアに伝達されないため、出力部へ伝達されない。プランジャーの作動時には、第2欠歯ギアの被係合部からプランジャーの係合部が係合解除されることによって、バネが第2欠歯ギアを回転させて、第2欠歯ギアの有歯部を駆動ギアに噛合わせることができる。この噛み合いにより第2欠歯ギアが所定量回転すると、第1欠歯ギアに備える被係合部に第2欠歯ギアに備えるギア係合部が係合する。この係合により第2欠歯ギアの回転に伴って第1欠歯ギアが回転して第1欠歯ギアの有歯部を駆動ギアに噛合わせて、第1欠歯ギアの回転が出力部に伝達される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、構成部品を同軸上に配置し、動力伝達を係合により行う構成とすることによって、錆びの発生がなく、しかもコスト面及び取り付けスペースにおいて有利となるクラッチを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施形態を示すクラッチの斜視図である。
図2】同クラッチの斜視図であり、第1欠歯ギアを所定回転させて第2欠歯ギアを回転させる直前の状態を示している。
図3】同クラッチの縦断側面図である。
図4】同クラッチの分解斜視図である。
図5】(a)は第1欠歯ギアの背面図、(b)は第2欠歯ギアの正面図である。
図6】(a)は第2欠歯ギアの背面図、(b)はプランジャーの正面図である。
図7】本発明の第2実施形態を示すクラッチの斜視図である。
図8】同クラッチの縦断側面図である。
図9】同クラッチの分解斜視図である。
図10】同クラッチを構成する入力ギアを取り外した状態の斜視図である。
図11】同クラッチを構成する入力ギア及び入力リングを取り外した状態の斜視図である。
図12図11のクラッチ部を縦に切断した断面図である。
図13】同クラッチを構成するプランジャーの係合部とピンガイドの被係合部とが係合している状態を示す斜視図である。
図14】同クラッチを構成するピンガイドを回転させるためのバネの取付部を示す斜視図である。
図15】ロックピンがフリー状態になっている同クラッチの縦断面図である。
図16図15からピンガイドが回転してロックピンが入力リングと出力シャフトとを一体回転させる状態に切り替わった同クラッチの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明につき、一実施形態を取り上げて、図面とともに以下説明を行う。
【0015】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態のクラッチ1は、図1図4に示すように、駆動源である駆動ギア2からの駆動回転力が入力される回転可能な入力部3と、入力部3と同軸上に回転する回転可能な出力部4と、入力部3及び出力部4と同軸上を軸方向に移動するプランジャー5と、プランジャー5と同軸上に配置されプランジャー5を作動させるコイル6と、プランジャー5の非作動時に後述する係合部53Bが後述する被係合部32c(図6(a)参照)に係合するようにプランジャー5を移動付勢するための付勢手段7と、を備え、プランジャー5を作動させることにより前記係合を解除することで駆動ギア2からの駆動回転力が入力部3から出力部4へ伝達されるように構成されている。このクラッチ1は、例えば、複写機の給紙機構等に適用される。
【0016】
入力部3は、図1及び図4に示すように、同軸上に回転可能で、かつ、駆動ギア2と噛み合って回転状態となる有歯部,32A(歯部が連続形成されている部分)及び有歯部31A,32Aから離脱して駆動ギア2と噛み合わず停止状態となる欠歯部31B,32B(歯部が形成されていない部分)を有する2枚の欠歯ギア31,32から構成されている。そして、2枚の欠歯ギア31,32は、同一の外径寸法を有している。また、2枚の欠歯ギア31,32の欠歯部31B,32Bに駆動ギア2が一致した状態(入り込んだ状態)において、駆動ギア2からの駆動回転力が伝達されないように構成されている(図1参照)。また、2枚の欠歯ギア31,32の有歯部31A,32Aが形成されている範囲及び欠歯部31B,32Bが形成されている範囲は、いずれも同一範囲に構成されている。
【0017】
出力部4は、角筒状の部材からなり、出力部4の一端部が欠歯ギア31,32のうちの一方の第1欠歯ギア31に一体回転可能に連結されており、第1欠歯ギア31が回転することにより、第1欠歯ギア31の有歯部31Aが駆動ギア2に噛み合うことで出力部4が回転するように構成されている。図6(a),(b)に示すように、他方の第2欠歯ギア32が、被係合部としての凸部32cを備え、この凸部32cがプランジャー5に備えた後述の係合部53Bに周方向で当接して係合することで第2欠歯ギア32の回転が阻止される。また、プランジャー5の作動時に前記係合が解除されることで自由状態になった第2欠歯ギア32を所定量回転させて駆動ギア2に第2欠歯ギア32の有歯部32Aを噛合わせるためのねじりコイルバネ8を備えている。このねじりコイルバネ8により第2欠歯ギア32を所定量回転させたときに、第1欠歯ギア31に備える被係合部311に周方向で当接して係合することで第1欠歯ギア31を回転させるギア係合部321を第2欠歯ギア32に備えている(図5(a),(b)参照)。ねじりコイルバネ8は、一端が第1欠歯ギア31に取り付けられ、他端が第2欠歯ギア32に取り付けられている。
【0018】
図5(a),(b)に示すように、第1欠歯ギア31の被係合部311は、周方向に等間隔を置いて軸方向に突出する4つの略扇型の第1突起部311A,311B,311C,311Dから構成されている。これに対して第2欠歯ギア32のギア係合部321は、径方向で対向するように周方向の2箇所に軸方向に突出する2つの略矩形状の第2突出部321A,321Bから構成されている。前記周方向で隣り合う第1突起部311A,311B、311B,311C、311C,311D、311D,311A間に発生する4つのスペースS1,S2,S3,S4のうちの径方向で対向する2つのスペースS1,S3に第2突起部321A,321Bを配置する。つまり、第2欠歯ギア32の回転により、第1突起部311Aに第2突起部321Aが周方向で当接し、かつ、第1突起部311Cに第2突起部321Bが周方向で当接するように、第2突起部321A,321Bを配置する。そして、第2欠歯ギア32を、ねじりコイルバネ8により所定量回転させることにより、第2欠歯ギア32の第2突出部321A,321Bが第1突起部311B,311Dに周方向で係合(当接)し(図5(a)に2点鎖線参照)、さらに第2欠歯ギア32が回転することで、第2欠歯ギア32の回転力を受けて第1欠歯ギア31が供回りするように構成されている。なお、第2欠歯ギア32の第2突出部321A,321Bが第1突起部311B,311Dに係合(当接)するタイミングは、2枚の欠歯ギア31,32の欠歯部31B,32Bの形成範囲等に応じて変更することになる。
【0019】
図3及び図4に示すように、第1欠歯ギア31は、外周面に有歯部31Aと欠歯部31Bとが形成されたギア部の径方向中心部に出力部4に外嵌するように形成された円筒部31aと、円筒部31aの第2欠歯ギア32端からプランジャー5側へ延びる軸構成部材31bと、を備えている。軸構成部材31bの第1欠歯ギア31から離間する軸方向先端部には、後述するフィールド11のカバー部11Bが先端側から抜けてしまうことを阻止するべく周方向の4か所に係止部31Hが形成されている。周方向で隣り合う係止部31H,31H間には、軸方向に沿うようにUの字状の切欠き31Kが形成されており、外力を加えることで4つの係止部31Hを径方向内側に弾性変形させてプランジャー5、後述するフィールド11のカバー部11Bを軸構成部材31bに外装することができるようにしている。
【0020】
第2欠歯ギア32は、外周面に有歯部32Aと欠歯部32Bとが形成されたギア部の径方向中心部に第1欠歯ギア31の円筒部31aに外嵌されて回転可能に支持するボス部32aと、を備えている。このように第1欠歯ギア31の円筒部31aに第2欠歯ギア32のボス部32aを径方向で重ね合わせることによって、軸方向でのコンパクト化を図っている。また、ボス部32aの周方向2箇所に、軸方向に突出する一対の係止爪32b,32b(図1図4参照)を備えている。これら係止爪32b,32bを、第1欠歯ギア31に形成の円弧状の長孔31L,31Lに挿通させて第1欠歯ギア31の一側面に係止させることで、第1欠歯ギア31に対する軸方向での第2欠歯ギア32の位置決めを行うことができる。
【0021】
プランジャー5は、円筒状の本体部51と、本体部51の一端(第2欠歯ギア32側端)に一体形成されるフランジ部52と、を備え、フランジ部52の第2欠歯ギア32側の端面52Aに突出部53を備えている。この突出部53は、中心部に円環状の第1突出部53Aと、第1突出部53Aの周方向1箇所に径方向外側に扇形状に延びる第2突出部53Bと、を備え、この第2突出部53Bが、第2欠歯ギア32のプランジャー5側の端面32Cに形成された円弧状の凸部32cに周方向で当接して係合する係合部を構成している。この第2突出部53Bが凸部32cに係合(当接)することによって、第2欠歯ギア32の回転が阻止され、駆動ギア2からの駆動回転力が第2欠歯ギア32、第1欠歯ギア31を通して出力部4へ伝達されないように構成されている。前記凸部32cは、第2欠歯ギア32の回転方向下流側ほど突出量が小さくなるテーパー面を形成している。このテーパー面を形成しているのは、プランジャー5を作動させて前記係合を解除した後、直ちにプランジャー5を被作動状態にした時に、第2突出部53Bが凸部32cに乗り上げた状態となり、この状態から第2突出部53Bが凸部32cのテーパー面に案内されて第2欠歯ギア32のプランジャー5側の端面32Cに段差の少ない状態で着地することで、第2突出部53Bが端面32Cに着地した時に大きな当接音がしないようにしている。
【0022】
また、プランジャー5の非作動時に係合部である第2突出部52Bが被係合部である凸部32cに係合するようにプランジャー5を移動付勢するための付勢手段7として渦巻きバネを用いている。この付勢手段(渦巻きバネ)7は、図3に示すように、プランジャー5のフランジ部52とボビン10との間に配置されている。したがって、プランジャー5を作動させることにより付勢手段7による付勢力に抗して前記係合を解除することで駆動ギア2の駆動回転力が、第2欠歯ギア32、第1欠歯ギア31を通して出力部4へ伝達されるように構成されている。前記渦巻きバネを用いることによって、プランジャー5を作動させて渦巻きバネを短縮状態にした時に線材1本分の太さになるので、コイルバネのように線材が重なるものに比べて軸方向のスペースを小さくすることができ、クラッチの軸方向の寸法を短くでき、好ましいが、コイルバネであってもよい。
【0023】
コイル6は、径方向外側が開放されたボビン10に巻回されており、コイル6が巻かれたボビン10をフィールド(ケーシング)11で覆っている。フィールド11は、軸方向一端が開口され、ボビン10を収容するためのフィールド本体11Aと、フィールド本体11Aの開口を閉じるカバー部11Bと、を備えている。ボビン10は、プランジャー5の径方向外側に配置されている。図3図4に示す12は、端子カバーである。
【0024】
このように構成されたクラッチ1の動作について説明する。プランジャー5の非作動時では、付勢手段7の反発力により第2欠歯ギア32の被係合部32cとプランジャー5の係合部53Bとが周方向で当接して係合する。この状態では、第2欠歯ギア32の回転が阻止されるため、2枚の欠歯ギア31,32の欠歯部31B,32Bに駆動ギア2が一致した状態が保たれる(図1参照)。したがって、駆動ギア2が空回りするだけで、駆動ギア2からの駆動回転力が、第2欠歯ギア32を介して第1欠歯ギア31に伝達されないため、出力部4へ伝達されない。図示していない制御部からの信号によりコイル6に電力を供給すると、プランジャー5が磁力による吸引力を受けて図3の状態からコイル6側に移動してプランジャー5の係合部53Bが第2欠歯ギア32の被係合部32cから係合解除する。これによりフリーになった第2欠歯ギア32がねじりコイルバネ8のねじり力により所定量回転する。これにより図2に示すように第2欠歯ギア32の有歯部32Aが駆動ギア2に噛み合うことで第2欠歯ギア32が駆動ギア2の回転力を受けて供回りする。第2欠歯ギア32の有歯部32Aが駆動ギア2に噛み合うと同時に、第1欠歯ギア31の被係合部311に第2欠歯ギア32のギア係合部321が周方向で当接して係合することで、第2欠歯ギア32から少し遅れて第1欠歯ギア31の回転が開始する。図2は、第1欠歯ギア31の被係合部311に第2欠歯ギア32のギア係合部321が周方向で当接(係合)して第2欠歯ギア32が回転する直前の状態を示している。プランジャー5を作動させて係合を解除した後は、直ちに非作動状態に戻すことになる。第1欠歯ギア31が一回転すると、第1欠歯ギア31の欠歯部31Bが駆動ギア2に一致する位置となると同時にプランジャー5の係合部53Bが第2欠歯ギア32の被係合部32cに周方向で当接して係合することで第2欠歯ギア32の欠歯部32Bに駆動ギア2が一致した状態が保たれる。続いて、遅れて第2欠歯ギア32が一回転すると、第2欠歯ギア32の欠歯部32Bが駆動ギア2に一致する位置となり、第2欠歯ギア32の回転が停止する。図示していない制御部からの信号が出力される度に、前記した動作を繰り返す。
【0025】
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態のクラッチ13は、図7図9に示すように、駆動源である駆動ギア2からの駆動回転力が入力される回転可能な入力部14と、入力部14と同軸上に回転する回転可能な出力部15と、入力部14及び出力部15と同軸上を軸方向に移動するプランジャー16と、プランジャー16と同軸上に配置されプランジャー16を作動させるコイル17と、プランジャー16の非作動時に後述する係合部16Aが後述する被係合部22Aに係合するようにプランジャー16を移動付勢するための付勢手段18と、を備え、プランジャー16を作動させることにより係合を解除することで駆動ギア2からの駆動回転力が入力部14から出力部15へ伝達されるように構成されている。
【0026】
入力部14は、駆動ギア2に常時噛み合って駆動回転される入力ギア14Aと、入力ギア14Aに内嵌される円環状の入力リング14Bと、を備えている。図15に示すように、入力ギア14Aの内周面の周方向複数個所(図では3か所)に内側に突出する突出部14aを備え、これら突出部14aに係合する凹部14bが突出部14aに対応するように入力リング14Bの外周面に備えている。したがって、入力ギア14Aが回転すると、入力リング14Bが一体回転するように構成されている。なお、入力ギア14Aは、プランジャー16側へ延びてプランジャー16の一部を覆うカバー部14Kを備えている。このカバー部14Kを備えることにより、プランジャー16の一部を覆うためのカバー部材を用意する必要がない。
【0027】
入力部14と出力部15との間には、入力部14からの駆動回転力を出力部15に伝達する状態と伝達しない状態とに切り替える断続部を備えている。断続部は、図8図9図11図12及び図15に示すように、複数(ここでは3つであるが、1つ又は2つ又は4つ以上の任意の個数)の円柱状のロックピン19と、これらロックピン19を保持するピンガイド20と、ピンガイド20に備える被係合部22Aと、プランジャー16に設けられ被係合部22Aに係合する係合部16Aと、プランジャー16の非作動時にプランジャー16の係合部16Aをピンガイド20の被係合部22Aに係合するようにプランジャー16を移動付勢する前記付勢手段18と、プランジャー16を作動させてプランジャー16の係合部16Aとピンガイド20の被係合部22Aとの係合が解除された時にピンガイド20を所定量回転させるための捩じりコイルバネからなるピンガイドバネ21と、を備えている。ピンガイドバネ21は、一端がピンガイド20に取り付けられ、他端が出力部15に取り付けられている。
【0028】
出力部15は、軸方向一端側から他端側に長い筒状に構成され、軸方向一端から、入力ギア14Aを回転自在に支持するために形成された支持部15A、入力部14からの駆動回転力を伝達可能な断面形状が6角形状の動力伝達部15B、プランジャー16、後述するフィールド25のカバー部25Bが嵌合支持する円筒状の軸方向に長い軸構成部材15C、を軸方向他端に向かって一体形成している。支持部15Aは、軸方向一端に周方向に間隔を置いて3か所のそれぞれに入力ギア14Aが抜けないように入力ギア14Aを係止保持する係止爪15aを備えるとともに、軸方向他端に入力ギア14Aの他端側への移動を阻止するためのフランジ部15Fを備えている。軸構成部材15Cの軸方向他端には、後述するフィールド25のカバー部25Bが他端側から抜けてしまうことを阻止するべく周方向の4か所に係止部15Kが形成されている(図13図14参照)。周方向で隣り合う係止部15K,15K間には、軸方向に沿うようにUの字状の切欠き15Uが形成されており、4つの係止部15Kを径方向内側に弾性変形させてプランジャー16、後述するフィールド25のカバー部25Bを軸構成部材15Cに装着することができるようにしている。
【0029】
ピンガイド20は、プランジャー16の係合部16Aに軸方向で係合するようにプランジャー16側に突出する被係合部22Aを備えた円環状のピンガイド本体22と、ピンガイド本体22の周方向に間隔を開けて軸方向に突出する円弧状の複数(図では9つ)の突起部23と、を備えている、これら突起部23は、径方向の厚みが厚い第1突起部23Aと、厚みの薄い第2突起部23Bと、を備えている。第1突起部23Aは、周方向の3か所に周方向で隣り合うように2つずつ配置され、2つの第1突起部23A,23Aの対向面のそれぞれにロックピン19を保持する円弧面23aが形成されている。被係合部22Aは、ピンガイド本体22の外周縁の一箇所に備えた円弧状の突起から構成されている。
【0030】
コイル17は、径方向外側が開放されたボビン24に巻回されており、コイル17が巻かれたボビン24をフィールド(ケーシング)25で覆っている。フィールド25は、軸方向一端が開口され、ボビン24を収容するためのフィールド本体25Aと、フィールド本体25Aの開口を閉じるカバー部25Bと、を備えている。ボビン24は、プランジャー16の径方向外側に配置されている。図8図9に示す26は、端子カバーである。
【0031】
プランジャー16は、図6(b)と同様に、円筒状の本体部16aと、本体部16aの一端(入力ギア14A側端)に一体形成されるフランジ部16bと、を備えている。フランジ部16bのピンガイド20側の端面16Hに突出部を備えている。この突出部は、中心部に円環状の第1突出部27Aと、第1突出部27Aの周方向1箇所に径方向外側に扇形状に延びる第2突出部27Bと、を備え、この第2突出部27Bが、ピンガイド20の被係合部22Aに係合する係合部16A(図10図14参照)を構成している。この第2突出部27Bが被係合部22Aに係合することによって、ピンガイド20の回転が阻止されて、駆動ギア2からの駆動回転力が出力部15へ伝達されないように構成されている。
【0032】
付勢手段18は、プランジャー16のフランジ部16bとボビン24との間に配置された渦巻きバネから構成されている。このように渦巻きバネを用いることによって、プランジャー16を作動させて渦巻きバネを短縮状態にした時に線材1本分の太さになるので、コイルバネのように線材が重なるものに比べて軸方向のスペースを小さくすることができ、クラッチの軸方向の寸法を短くでき、好ましいが、コイルバネであってもよい。
【0033】
このように構成されたクラッチ13の動作について説明する。プランジャー16の非作動時では、付勢手段18の反発力によりプランジャー16の係合部16Aとピンガイド20の被係合部22Aとが係合し(図13参照)、ピンガイド20の回転が阻止される。この状態では、入力ギア14Aと入力リング14Bが空回りするだけで、駆動ギア2からの駆動回転力が、入力リング14B、ピンガイド20を介して出力部15に伝達されない。図示していない制御部からの信号によりコイル17に電力が供給されると、プランジャー16が磁力による吸引力を受けて図8の状態からコイル側に移動してプランジャー16の係合部16Aがピンガイド20の被係合部22Aから係合解除される。これによりフリーになったピンガイド20が図15の位置からねじりコイルバネ21により図16の位置になるまで所定量回転(図15では反時計回りに所定量回転)する。すると、3つのロックピン19が6角形状の動力伝達部15Bの周方向で隣り合う角部間の中央部の最も隙間の大きな位置から隙間が小さくなる角部に向かって移動する。この移動により3つのロックピン19が動力伝達部15Bと入力リング14Bとの間に挟まれた状態となり、入力ギア14Aの駆動回転力がロックピン19を介して動力伝達部15Bに伝達される。これにより、出力部15が入力ギア14Aと一緒に回転する。プランジャー16は、作動させて係合を解除した後は、非作動状態に戻すことになる。そして、入力ギア14Aが一回転すると、プランジャー16の係合部16Aがピンガイド20の被係合部22Aに係合して、ピンガイド20の回転が阻止されると同時に3つのロックピン19が6角形状の動力伝達部15Bの周方向で隣り合う角部間の中央部の最も大きな隙間に位置する。これにより、入力ギア14Aの駆動回転力がロックピン19を介して動力伝達部15Bに伝達されない状態が保たれる。図示していない制御部からの信号が出力される度に、前記した動作を繰り返す。尚、図15においてピンガイド20をねじりコイルバネ21により反時計回りに回転させるように構成したが、ねじりコイルバネ21の付勢方向を反対方向になるように構成することによって、図15において時計回りに所定量回転させるようにしてもよい。
【0034】
以上、2つの実施形態のクラッチ1,13は、出力部4,15が入力部3,14と同軸上に設けられ、プランジャー5,16が入力部3,14及び出力部4,15と同軸上を軸方向に移動するように設けられ、コイル6がプランジャー5,16と同軸上に配置されているので、取り付けスペースを小さく抑えることができる。また、構成部品を同軸上に組み付けるので、構成部品同士の隙間調整等の調整箇所も不要になる。また、動力伝達を係合及び係合解除で行うので、当接面が不要となる。このため、当接面の研磨加工、研磨後の洗浄工程、トルクアップ工程等の加工工程が全く不要になるだけでなく、当接面に錆が発生することもない。
【0035】
以上、本発明につき2つの実施形態を取り上げて説明してきたが、本発明は、前記2つの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0036】
1…クラッチ、2…駆動ギア、3…入力部、4…出力部、5…プランジャー、6…コイル、7…付勢手段、8…ねじりコイルバネ、10…ボビン、11…フィールド(ケーシング)、11A…フィールド本体、11B…カバー部、12…端子カバー、13…クラッチ、14…入力部、14A…入力ギア、14B…入力リング、14K…カバー部、14a…突出部、14b…凹部、15…出力部、15A…支持部、15B…動力伝達部、15C…軸構成部材、15F…フランジ部、15K…係止部、15U…切欠き、15a…係止爪、16…プランジャー、16A…係合部、16H…端面、16a…本体部、16b…フランジ部、17…コイル、18…付勢手段、19…ロックピン、20…ピンガイド、21…ピンガイドバネ(ねじりコイルバネ)、22…ピンガイド本体、22A…被係合部、23…突起部、23a…円弧面、24…ボビン、25…フィールド(ケーシング)、25A…フィールド本体、25B…カバー部、31,32…欠歯ギア、31A,32A…有歯部、31B,32B…欠歯部、31H…係止部、31L…長孔、31K…切欠き、31a…円筒部、31b…軸構成部材、32C…端面、32a…ボス部、32b…係止爪、32c…凸部(被係合部)、51…本体部、52…フランジ部、52A…端面、52B…係合部、53…突出部、53A…第1突出部、53B…第2突出部、311…被係合部、321…ギア係合部、S1,S2,S3,S4…スペース
図1
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図8
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図10
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図12
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図16