(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-02
(45)【発行日】2023-02-10
(54)【発明の名称】トレプロスチニルプロドラッグ
(51)【国際特許分類】
A61K 31/27 20060101AFI20230203BHJP
A61K 31/198 20060101ALI20230203BHJP
A61K 31/192 20060101ALI20230203BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20230203BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20230203BHJP
A61P 9/04 20060101ALI20230203BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20230203BHJP
A61P 9/14 20060101ALI20230203BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230203BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20230203BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20230203BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20230203BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230203BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20230203BHJP
C07C 271/34 20060101ALI20230203BHJP
C07C 271/12 20060101ALI20230203BHJP
C07C 235/20 20060101ALI20230203BHJP
C07C 59/72 20060101ALI20230203BHJP
【FI】
A61K31/27
A61K31/198
A61K31/192
A61P11/00
A61P9/12
A61P9/04
A61P9/00
A61P9/14
A61P17/00
A61P13/12
A61P17/02
A61P9/10
A61P43/00 105
A61P11/06
A61P43/00 123
C07C271/34 CSP
C07C271/12
C07C235/20 C
C07C59/72
(21)【出願番号】P 2019516117
(86)(22)【出願日】2017-09-26
(86)【国際出願番号】 US2017053503
(87)【国際公開番号】W WO2018058124
(87)【国際公開日】2018-03-29
【審査請求日】2020-09-17
(32)【優先日】2016-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】511266520
【氏名又は名称】ユナイテッド セラピューティクス コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100139310
【氏名又は名称】吉光 真紀
(72)【発明者】
【氏名】ファレス,ケン
(72)【発明者】
【氏名】バトラ,ヒテシュ
(72)【発明者】
【氏名】グオ,リアン
(72)【発明者】
【氏名】シルバーシュタイン,アダム,マーク
【審査官】松本 淳
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/152160(WO,A1)
【文献】特表2007-501281(JP,A)
【文献】国際公開第2016/081658(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/010538(WO,A1)
【文献】米国特許第09394227(US,B1)
【文献】特表2016-510323(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
A61P 1/00-43/00
C07C 1/00-409/44
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式:
【化6】
【化7】
のうちの1つを有する化合物、または前記化合物の薬学的に許容される塩の有効量を含む、患者における疾患または状態を処置するための医薬組成物。
【請求項2】
下記式:
【化8】
【化9】
のうちの1つを有する、化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項3】
(A)請求項2に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩、および(B)薬学的に許容される担体、を含む医薬組成物。
【請求項4】
経口医薬組成物である、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
皮下医薬組成物である、請求項3に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2016年9月26日に出願された米国仮出願第62/399,737号明細書の優先権を主張し、その全体を参照により本明細書に組み込む。
【0002】
本出願は、一般に、プロスタサイクリン、およびさらに特にトレプロスチニルのプロドラッグ、ならびにこうしたプロドラッグを作製および使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
肺高血圧症は、とりわけ心不全に至ることがある肺脈管構造における増圧によって特徴付けられる進行性かつ重篤な疾患である。
【0004】
肺高血圧症(PH)は、以前には、原発性(特発性)または続発性として分類されてきた。世界保健機関(WHO)は、肺高血圧症を5つのグループに分類している:
グループ1:肺動脈高血圧症(PAH);
グループ1’:肺静脈閉塞性疾患(PVOD)および/または肺毛細血管腫症(PCH)
グループ2:左心疾患を有するPH;
グループ3:肺疾患および/または低酸素血症を有するPH;
グループ4:慢性の血栓性および/または塞栓性疾患によるPH;ならびに
グループ5:種々の条件;不明確な多因子機序(例えば、サルコイドーシス、ヒスチオサイトーシスX、リンパ管腫症、および肺血管の圧縮)。
【0005】
現在では、グループ1(PAH)を含めて、ある特定の型の肺高血圧症のための多数の承認された製品がある。それらの製品としては、Remodulin(登録商標)トレプロスチニル注射など、活性成分としてトレプロスチニルを含有する製品が挙げられる。しかしながら、トレプロスチニルは、皮下投与された場合、部位疼痛を時々伴う。したがって、部位疼痛を引き起こさずにトレプロスチニルを投与する必要が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態は、疾患または状態を患うとともにトレプロスチニルまたはその薬学的に許容される塩の皮下投与で部位疼痛を経験したことがある患者を選択すること、およびトレプロスチニルのプロドラッグの有効量を患者に皮下投与することを含む、疾患または状態を処置する方法であり、ここで、疾患または状態は、肺高血圧症、うっ血性心不全、末梢血管疾患、レイノー現象、強皮症、腎機能不全、末梢ニューロパチー、指潰瘍、間欠性跛行、虚血肢疾患、末梢性虚血性病変、肺線維症および喘息からなる群から選択される1つまたは複数の疾患または状態である。
【0007】
別の実施形態は、肺高血圧症を患う患者にトレプロスチニルのプロドラッグの有効量を皮下投与することを含む、肺高血圧症を処置する方法である。
【0008】
なお別の実施形態は、化合物またはその薬学的に許容される塩であり、ここで化合物は、下記式:
【0009】
【0010】
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】シクロペンチル環カルバメートプロドラッグIの合成を例示するスキームである。
【
図2】側鎖カルバメートプロドラッグIIの合成を例示するスキームである。
【
図3】シクロペンチル環カーボネートプロドラッグIIIの合成を例示するスキームである。
【
図4】側鎖カーボネートプロドラッグIVの合成を例示するスキームである。
【
図5】アセテートアミドプロドラッグVIIの合成を例示するスキームである。
【
図6】鍵となる出発材料の合成を例示するスキームである。
【
図7】選択されたプロドラッグの化学式を表示する図である。
【
図8】時間の関数としてRemodulinおよびトレプロスチニルのプロドラッグの血漿濃度を表示するプロットである。静脈内および皮下のRemodulin(図においてそれぞれ「IV」および「SQ」として示されている)について示されているデータ点は、皮下投与されたトレプロスチニルが、静脈内投与されたトレプロスチニルと生物学的に同等であることを示すため、肺高血圧症を患う患者に関与する臨床試験から得られた。「上限」および「下限」と印されているプロットは、皮下Remodulinについて生物学的同等性の範囲を反映している。トレプロスチニルのプロドラッグ(「プロドラッグ」として示されている)についてのプロットは、皮下投与されたRemodulinのプロットに近似する1つの可能なデータ点セットを表し、プロドラッグはインビボでトレプロスチニル遊離酸に変換されており、血漿中の遊離酸トレプロスチニルの量がプロットされている。
【
図9】以下のうちの1つを投与された試験ラットにおける部位疼痛による引っ込め時間を報告する図である:a)生理食塩水、b)クエン酸緩衝液、塩化ナトリウムおよびm-クレゾールを含有していたがトレプロスチニルを含有していなかった(Remodulin)プラセボ製剤;c)1μg/mLのトレプロスチニル濃度を有する第1のRemodulin製剤、ここで製剤は、トレプロスチニル、クエン酸緩衝液、塩化ナトリウムおよびm-クレゾールを含有していた;d)100μg/mLのトレプロスチニル濃度を有する第2のRemodulin製剤、ここで製剤は、トレプロスチニル、クエン酸緩衝液、塩化ナトリウムおよびm-クレゾールを含有しており、縦バーは、t=0分、15分および90分での製剤の投与に続く熱刺激に対する応答において、どれほど迅速に試験ラットがそれの足を引っ込めたかを示している。
【
図10A】選択されたプロドラッグを示す図である。
【
図10B】選択されたプロドラッグを示す図である。
【
図10C】選択されたプロドラッグを示す図である。
【
図10D】選択されたプロドラッグを示す図である。
【
図11】ACE Excel 2 C18カラムを使用して、トレプロスチニルおよび8つの選択されたプロドラッグのクロマトグラフィーオーバーレイを示す図である。特異性研究の結果は、トレプロスチニルが、共溶出するプロドラッグXIVを除く全てのプロドラッグからよく分離されることを示している。
【
図12】Waters BEH C18カラムを使用して、トレプロスチニルおよび8つの選択されたプロドラッグのクロマトグラフィーオーバーレイを示す図である。
【
図13】ACE Excel 2 C18-ARカラム(C18-フェニル相)を使用して、トレプロスチニルおよび8つの選択されたプロドラッグのクロマトグラフィーオーバーレイを示す図である。
【
図14】Waters CSHフェニルヘキシルカラムを使用して、トレプロスチニルおよび8つの選択されたプロドラッグのクロマトグラフィーオーバーレイを示す図である。
【
図15】選択されたプロドラッグについての半減期値を要約する図である。
【
図16】実施例9および11において使用された足底内モデルの誘発および処置の模式図示である。熱的試験は、Von Frey試験後(最大10分までの差異)直ちに行った。
【
図17】サイクル1のVon Frey応答試験についての結果(g)を表示する図である。より低い力は、より大きい感受性を示す。ベースライン、15分および90分の試験点の各々について、カラムは以下を左から右に表す:生理食塩水(群1)、PBS(群2)、トレプロスチニル100μg/ml(群3)、プロドラッグI 100μg/ml(群4)、プロドラッグII 100μg/ml(群5)、プロドラッグVII 100μg/ml(群6)、プロドラッグVIII 100μg/ml(群7)。
【
図18】サイクル2のVon Frey応答試験についての結果(g)を表示する図である。より低い力は、より大きい感受性を示す。ベースライン、15分および90分の試験時点の各々について、カラムは以下を左から右に表す:生理食塩水(群8)、PBS(群9)、トレプロスチニル1μg/ml(群10)、プロドラッグI 1μg/ml(群11)、プロドラッグII 1μg/ml(群12)、プロドラッグVII 1μg/ml(群13)、プロドラッグVIII 1μg/ml(群14)。
【
図19】サイクル1の熱的応答試験についての結果(秒)を表示する図である。より低い/より速い時間は、より大きい感受性を示す。ベースライン、15分および90分の試験時点の各々について、カラムは以下を左から右に表す:生理食塩水(群1)、PBS(群2)、トレプロスチニル100μg/ml(群3)、プロドラッグI 100μg/ml(群4)、プロドラッグII 100μg/ml(群5)、プロドラッグVII 100μg/ml(群6)、プロドラッグVIII 100μg/ml(群7)。
【
図20】サイクル2の熱的応答試験についての結果(秒)を表示する図である。より低い/より速い時間は、より大きい感受性を示す。ベースライン、15分および90分の試験時点の各々について、カラムは以下を左から右に表す:生理食塩水(群8)、PBS(群9)、トレプロスチニル1μg/ml(群10)、プロドラッグI 1μg/ml(群11)、プロドラッグII 1μg/ml(群12)、プロドラッグVII 1μg/ml(群13)、プロドラッグVIII 1μg/ml(群14)。
【
図21】サイクル1の平均臨床スコア(点)を表示する図である。増加された/より高いスコアは、有害事象のより多くの観察を示す。15分および90分の試験時点の各々について、データは以下を左から右に表示する:生理食塩水(群1)、PBS(群2)、トレプロスチニル100μg/ml(群3)、プロドラッグI 100μg/ml(群4)、プロドラッグII 100μg/ml(群5)、プロドラッグVII 100μg/ml(群6)、プロドラッグVIII 100μg/ml(群7)。15分時点について、非ゼロ観察は、以下左から右の通りである:トレプロスチニル100μg/ml(群3)、プロドラッグI 100μg/ml(群4)、プロドラッグII 100μg/ml(群5)、プロドラッグVII 100μg/ml(群6)、プロドラッグVIII 100μg/ml(群7)。90分時点について、非ゼロ観察は、以下左から右の通りである:トレプロスチニル100μg/ml(群3)、プロドラッグI 100μg/ml(群4)、プロドラッグII 100μg/ml(群5)、プロドラッグVII 100μg/ml(群6)。
【
図22】サイクル2の平均臨床スコア(点)を表示する図である。増加された/より高いスコアは、有害事象のより多くの観察を示す。15分および90分の試験時点の各々について、データは以下を左から右に表示する:生理食塩水(群8)、PBS(群9)、トレプロスチニル1μg/ml(群10)、プロドラッグI 1μg/ml(群11)、プロドラッグII 1μg/ml(群12)、プロドラッグVII 1μg/ml(群13)、プロドラッグVIII 1μg/ml(群14)。15分および90分の試験時点の各々について、非ゼロ観察のみがトレプロスチニル1μg/mlに対応する(群10)。
【
図23】実施例10において使用された足底内モデルの誘発および処置の模式図示である。
【
図24】Von Frey応答試験についての結果(g)を表示する図である。より低い力は、より大きい感受性を示す。ベースライン、15分および90分の試験点の各々について、カラムは以下を左から右に表す:リン酸緩衝液(群1)、トレプロスチニル100μg/ml(群2)、トレプロスチニル1μg/ml(群3)、プロドラッグVII 100μg/ml(群4)、プロドラッグVII 1μg/ml(群5)、プロドラッグXV 100μg/ml(群6)、プロドラッグXV 1μg/ml(群7)。
【
図25】熱的応答試験についての結果(秒)を表示する図である。より低い/より速い時間は、より大きい感受性を示す。ベースライン、15分および90分の試験点の各々について、カラムは以下を左から右に表す:リン酸緩衝液(群1)、トレプロスチニル100μg/ml(群2)、トレプロスチニル1μg/ml(群3)、プロドラッグVII 100μg/ml(群4)、プロドラッグVII 1μg/ml(群5)、プロドラッグXV 100μg/ml(群6)、プロドラッグXV 1μg/ml(群7)。
【
図26】サイクル1の平均臨床スコア(点)を表示する図である。増加された/より高いスコアは、有害事象のより多くの観察を示す。15分および90分の試験時点の各々について、データは以下を左から右に表示する:リン酸緩衝液(群1)、トレプロスチニル100μg/ml(群2)、トレプロスチニル1μg/ml(群3)、プロドラッグVII 100μg/ml(群4)、プロドラッグVII 1μg/ml(群5)、プロドラッグXV 100μg/ml(群6)、プロドラッグXV 1μg/ml(群7)。ゼロスコアは、15分点および90分点の各々についてリン酸緩衝液に対して観察された。したがって、左の非ゼロカラムから1番目は、トレプロスチニル100μg/ml(群2)を表す。
【
図27】サイクル1のVon Frey応答試験についての結果(g)を表示する図である。より低い力は、より大きい感受性を示す。ベースライン、15分および90分の試験点の各々について、カラムは以下を左から右に表す:リン酸緩衝液(群1)、トレプロスチニル100μg/ml(群2)、プロドラッグVII 100μg/ml(群3)、プロドラッグIII 100μg/ml(群4)、プロドラッグIV 100μg/ml(群5)、プロドラッグXIV 100μg/ml(群6)。
【
図28】サイクル2のVon Frey応答試験についての結果(g)を表示する図である。より低い力は、より大きい感受性を示す。ベースライン、15分および90分の試験時点の各々について、カラムは以下を左から右に表す:リン酸緩衝液(群7)、トレプロスチニル1μg/ml(群8)、プロドラッグVII 1μg/ml(群9)、プロドラッグIII 1μg/ml(群10)、プロドラッグIV 1μg/ml(群11)、プロドラッグXIV 1μg/ml(群12)。
【
図29】サイクル1の熱的応答試験についての結果(秒)を表示する図である。より低い/より速い時間は、より大きい感受性を示す。ベースライン、15分および90分の試験時点の各々について、カラムは以下を左から右に表す:リン酸緩衝液(群1)、トレプロスチニル100μg/ml(群2)、プロドラッグVII 100μg/ml(群3)、プロドラッグIII 100μg/ml(群4)、プロドラッグIV 100μg/ml(群5)、プロドラッグXIV 100μg/ml(群6)。
【
図30】サイクル2の熱的応答試験についての結果(秒)を表示する図である。より低い/より速い時間は、より大きい感受性を示す。ベースライン、15分および90分の試験時点の各々について、カラムは以下を左から右に表す:リン酸緩衝液(群7)、トレプロスチニル1μg/ml(群8)、プロドラッグVII 1μg/ml(群9)、プロドラッグIII 1μg/ml(群10)、プロドラッグIV 1μg/ml(群11)、プロドラッグXIV 1μg/ml(群12)。
【
図31】サイクル1の平均臨床スコア(点)を表示する図である。増加された/より高いスコアは、有害事象のより多くの観察を示す。15分および90分の試験時点の各々について、データは以下を左から右に表示する:リン酸緩衝液(群1)、トレプロスチニル100μg/ml(群2)、プロドラッグVII 100μg/ml(群3)、プロドラッグIII 100μg/ml(群4)、プロドラッグIV 100μg/ml(群5)、プロドラッグXIV 100μg/ml(群6)。ゼロスコアは、15分点および90分点の各々についてリン酸緩衝液で観察された。したがって、左の非ゼロカラムから1番目は、トレプロスチニル100μg/ml(群2)を表す。
【
図32】サイクル2の平均臨床スコア(点)を表示する図である。増加された/より高いスコアは、有害事象のより多くの観察を示す。15分および90分の試験時点の各々について、データは以下を左から右に表示する:リン酸緩衝液(群7)、トレプロスチニル1μg/ml(群8)、プロドラッグVII 1μg/ml(群9)、プロドラッグIII 1μg/ml(群10)、プロドラッグIV 1μg/ml(群11)、プロドラッグXIV 1μg/ml(群12)。ゼロスコアは、15分点および90分点の各々についてリン酸緩衝液で観察された。したがって、左の非ゼロカラムから1番目は、トレプロスチニル1μg/ml(群8)を表す。
【
図33】心拍数についてラジオテレメトリーデータの要約を表示する図である。データは平均±SEMとして表示されている。
【
図34】収縮期血圧についてラジオテレメトリーデータの要約を表示する図である。データは平均±SEMとして表示されている。
【
図35】拡張期血圧についてラジオテレメトリーデータの要約を表示する図である。データは平均±SEMとして表示されている。
【
図36】平均動脈圧についてラジオテレメトリーデータの要約を表示する図である。データは平均±SEMとして表示されている。
【
図37】脈圧についてラジオテレメトリーデータの要約を表示する図である。データは平均±SEMとして表示されている。
【
図38】体温についてラジオテレメトリーデータの要約を表示する図である。データは平均±SEMとして表示されている。
【
図39】プロドラッグVIIIの合成のためのスキームを模式的に図示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
別段に特定されていない限り、「a」または「an」は、1つまたは複数を指す。
【0013】
Remodulin(登録商標)(注射または静脈内トレプロスチニル)、Tyvaso(登録商標)(吸入トレプロスチニル)およびOrenitram(登録商標)(トレプロスチニルの経口固体剤形)の活性成分であるトレプロスチニルが米国特許第4,306,075号明細書に記載された。トレプロスチニルおよび他のプロスタサイクリン誘導体を作製する方法は、例えば、Moriarty, et al., J. Org. Chem. 2004, 69, 1890-1902, Drug of the Future, 2001, 26(4), 364-374、米国特許第6,441,245号明細書、同第6,528,688号明細書、同第6,700,025号明細書、同第6,809,223号明細書、同第6,756,117号明細書、同第8,461,393号明細書、同第8,481,782号明細書;同第8,242,305号明細書、同第8,497,393号明細書、同第8,940,930号明細書、同第9,029,607号明細書、同第9,156,786号明細書および同第9,388,154号明細書、同第9,346,738号明細書;米国公開特許出願第2012-0197041号明細書、同第2013-0331593号明細書、同第2014-0024856号明細書、同第2015-0299091号明細書、同第2015-0376106号明細書、同第2016-0107973号明細書、同第2015-0315114号明細書、同第2016-0152548号明細書および同第2016-0175319号明細書;PCT公報番号国際公開第2016/0055819号パンフレットおよび同国際公開第2016/081658号パンフレットに記載されている。
【0014】
トレプロスチニルの様々な使用および/または様々な形態は、例えば、米国特許第5,153,222号明細書、同第5,234,953号明細書、同第6,521,212号明細書、同第6,756,033号明細書、同第6,803,386号明細書、同第7,199,157号明細書、同第6,054,486号明細書、同第7,417,070号明細書、同第7,384,978号明細書、同第7,879,909号明細書、同第8,563,614号明細書、同第8,252,839号明細書、同第8,536,363号明細書、同第8,410,169号明細書、同第8,232,316号明細書、同第8,609,728号明細書、同第8,350,079号明細書、同第8,349,892号明細書、同第7,999,007号明細書、同第8,658,694号明細書、同第8,653,137号明細書、同第9,029,607号明細書、同第8,765,813号明細書、同第9,050,311号明細書、同第9,199,908号明細書、同第9,278,901号明細書、同第8,747,897号明細書、同第9,358,240号明細書、同第9,339,507号明細書、同第9,255,064号明細書、同第9,278,902号明細書、および同第9,278,903号明細書、米国公開特許出願第2009-0036465号明細書、同第2008-0200449号明細書、同第2008-0280986号明細書、同第2009-0124697号明細書、同第2014-0275616号明細書、同第2014-0275262号明細書、同第2013-0184295号明細書、同第2014-0323567号明細書、同第2016-0030371号明細書、同第2016-0051505号明細書、同第2016-0030355号明細書、同第2016-0143868号明細書、同第2015-0328232号明細書、同第2015-0148414号明細書、同第2016-0045470号明細書および同第2016-0129087号明細書、ならびにPCT公報番号国際公開第00/57701号パンフレット、同国際公開第20160105538号パンフレットおよび同国際公開第2016038532号パンフレットに開示されている。
【0015】
トレプロスチニルは、以下の化学式:
【0016】
【0017】
本発明者らは、皮下投与など注射によってトレプロスチニルのある特定のプロドラッグを投与することが、トレプロスチニルまたはトレプロスチニルの塩、例えばトレプロスチニルナトリウムを同じ投与経路を介して同じ濃度で投与することと比較して、より少ないまたは全くない疼痛に至り得ることを発見した。
【0018】
一実施形態は、トレプロスチニルのプロドラッグの有効量を患者に投与することによって処置することができる疾患または状態を処置する方法であり得る。状態は肺高血圧症であってよく、患者はヒトであってよい。投与は、皮下注射などの注射によって起こり得る。一部の実施形態において、プロドラッグは、適切なポンプを使用することなどによって、患者に実質的に連続して投与することができる。
【0019】
別の実施形態は、疾患または状態を患うとともにトレプロスチニルまたはトレプロスチニルの塩、例えばトレプロスチニルナトリウムを投与することで部位疼痛を経験したことがある患者の選択、およびトレプロスチニルのプロドラッグの有効量を患者に投与することを含む、トレプロスチニルによって処置することができる疾患または状態を処置する方法であり得る。状態は肺高血圧症であってよく、患者はヒトであってよい。投与は、皮下注射などの注射によって起こり得る。一部の実施形態において、プロドラッグは、適切なポンプを使用することなどによって、患者に実質的に連続して投与することができる。
【0020】
トレプロスチニルによって処置することができる疾患/状態としては、以下に限定されないが、肺動脈高血圧症(PAH)および慢性血栓塞栓性肺高血圧症を含めた肺高血圧症;うっ血性心不全などの心不全;末梢血管疾患、レイノー現象、レイノー病、バージャー病、強皮症、腎機能不全、間欠性跛行、虚血肢疾患、末梢性虚血性病変などの虚血性疾患;糖尿病性ニューロパチーを含めた末梢ニューロパチー;四肢病変および/または潰瘍、例えば、末梢血管疾患、レイノー現象、レイノー病、バージャー病、強皮症、間欠性跛行、虚血肢疾患などの虚血性疾患によっておよび/または糖尿病性ニューロパチーなどの末梢ニューロパチーによって引き起こされ得るまたは引き起こされ得ない足部潰瘍および/または指潰瘍(手指および/またはつま先の両方);肺線維症、嚢胞性線維症;喘息;肺、肝臓、脳、膵臓、腎臓、前立腺、乳房、結腸および頭頸部のがんからなる群から選択されるがんであり得るがんが挙げられる。
【0021】
一部の実施形態において、トレプロスチニルまたはトレプロスチニルの塩を投与することと比較した場合、トレプロスチニルプロドラッグを投与することに伴うほとんどないまたは全くない疼痛は、多数の利益を有する。例えば、トレプロスチニルに伴う疼痛を忍容できない患者は、プロドラッグを受けることによってトレプロスチニル処置の利益を得ることができ得る。視覚的アナログスコア(VASスコア)は、皮下注入などの注入の持続期間全体にわたって患者から連続して収集することができる。VASスコアは次いで、疼痛曲線下面積(AUC)を算出するために時間の関数としてプロットすることができる。トレプロスチニルまたはトレプロスチニルの塩、例えばトレプロスチニルナトリウムを投与することと比較して、トレプロスチニルプロドラッグを投与することによって達成することができるほとんどないまたは全くない疼痛は、トレプロスチニルまたはトレプロスチニルの塩、例えばトレプロスチニルナトリウムと比較して、トレプロスチニルプロドラッグについてのより低い疼痛AUCを意味し得る。VASスコア方法は、ただの疼痛強度のみでない定量化を可能にすることができ、というのはそれが、強度の積分ならびに時間をかけて強度の変化をモニタリングすることも可能にすることができるからである。VASスコア方法は、例えばLydick E, et al. Quality of Life Research. 1995; 4:41-45;およびVan Wijk AJ et al. Eur J Pain. 2013; 17:394-401に開示されている。
【0022】
「有効量」という用語は、疾患または状態を処置するのに必要であり得るトレプロスチニルプロドラッグの量を意味し得る。一部の実施形態において、トレプロスチニルプロドラッグの有効量は、同じ疾患または状態を処置するためのトレプロスチニルの有効量と同じまたは同様であり得る。一部の実施形態において、トレプロスチニルプロドラッグの有効量は、同じ疾患または状態を処置するためのトレプロスチニルの有効量と異なることがある。当業者は、例えば、関連の疾患または状態、疾患または状態を処置、寛解または予防することが公知であるトレプロスチニルの量、およびプロドラッグがインビボでトレプロスチニルに変換する速度に基づき、トレプロスチニルプロドラッグの「有効量」を決定することができる。
【0023】
一部の実施形態において、プロドラッグは、米国特許第7,384,978号明細書、同第7,417,070号明細書、同第7,544,713号明細書、同第8,252,839号明細書、同第8,410,169号明細書、同第8,536,363号明細書、同第9,050,311号明細書、同第9,199,908号明細書、同第9,278,901号明細書、同第9,422,223号明細書および同第9,624,156号明細書に開示されているプロドラッグであってよく、これらを全体で参照により本明細書に組み込む。
【0024】
一部の実施形態において、プロドラッグは、米国特許第9,371,264号明細書、同第9,394,227号明細書、同第9,505,737号明細書および同第9,643,911号明細書に開示されているプロドラッグであってよく、これらを全体で参照により本明細書に組み込む。
【0025】
一部の実施形態において、プロドラッグは、下記で考察されているプロドラッグのうちの1つであり得る。
【0026】
例えば、一部の実施形態において、プロドラッグは、以下の式:
【0027】
【化3】
(式中、Xは、OR
9またはNR
1R
6であり;R
9は、HまたはC
1~C
4アルキル(末端のヒドロキシル基またはカルボキシ基で任意選択により置換されていてよい)であり;R
1はHまたはC
1~C
4アルキルであり、R
6は、
【0028】
【化4】
であるか、またはR
1およびR
6は、NR
1R
6がアミノ酸のアミドのような基であり;R
7は、HまたはC
1~C
4アルキルであり、これは末端のヒドロキシ基またはカルボキシ基で置換されていてよく;R
8は、HまたはC
1~C
4アルキルであり;R
2およびR
3の各々は、H、C
1~4アルキル、
【0029】
【化5】
、ホスフェート、およびOR
2またはOR
3がアミノ酸のエステルを形成する基から独立して選択され;Yは、OR
4またはNR
4R
5であり、R
4およびR
5の各々は、HおよびC
1~4アルキルから独立して選択され;ただし、R
9、R
2およびR
3の全てがHであることはない)
を有する化合物または化合物の薬学的に許容される塩であり得る。
【0030】
一部の実施形態において、プロドラッグは、以下の式:
【0031】
【化6】
(式中、Xは、OHまたはNR
1R
6であり、R
1は、HまたはC
1~C
4アルキルであり、R
6は、
【0032】
【化7】
であるか、またはR
1およびR
6は、NR
1R
6がアミノ酸のアミドのような基であり;R
7は、HまたはC
1~C
4アルキル(末端のヒドロキシ基またはカルボキシ基で置換されていてよい)であり、R
8は、HまたはC
1~C
4アルキルであり、R
2およびR
3の各々は、H、C
1~4アルキル、または
【0033】
【化8】
から独立して選択され、式中、Yは、OR
4またはNR
4R
5であり、R
4およびR
5の各々は、HおよびC
1~4アルキルから独立して選択され;ただし、XがOHである場合、R
2およびR
3の両方がHであることはない)
を有する化合物または化合物の薬学的に許容される塩であり得る。
【0034】
一部の実施形態において、プロドラッグは、以下の式:
【0035】
【0036】
【化10】
であってよく、式中R
1は、Hまたはアルキル、例えばC
1~C
4アルキルであり;
R
2およびR
3の各々は、H、C
1~4アルキル、
【0037】
【化11】
から独立して選択することができ、式中、YはOR
4またはNR
4R
5であってよく、R
4およびR
5の各々は、HおよびC
1~4アルキルから独立して選択され、ただし、XがOHである場合、R
2およびR
3の両方がHであることはない)
の化合物またはその薬学的に許容される塩である。
【0038】
C1~4アルキルの例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチルまたはt-ブチルを挙げることができる。
【0039】
末端のヒドロキシル基で置換されているC1~4アルキルの例としては、ヒドロキシメチル;ヒドロキシルエチル;ヒドロキシプロピル;4-ヒドロキシブチル;2-メチル-3-ヒドロキシプロピルを挙げることができる。
【0040】
末端のカルボキシ基で置換されているC1~4アルキルの例としては、カルボキシメチル、カルボキシエチル、カルボキシプロピル、4-カルボキシブチル、2-メチル-3-カルボキシプロピルを挙げることができる。
【0041】
一部の実施形態において、XはOHであってよい。こうした場合において、ある特定の実施形態において、R2およびR3の各々は、C1~4アルキルから各々独立して選択することができる。R2およびR3は、同じまたは異なっていてよい。一部の場合において、R2およびR3は同じであってよい。例えば、R2およびR3の両方はエチルであってよい。なお、一部の他の場合において、R2およびR3は異なっていてよい。例えば、R2はメチルであってよく、R3はエチルであってよく、または逆もまた同じである。
【0042】
一部の実施形態において、XがOHである場合、R2およびR3の各々は、Hおよび
【0043】
【化12】
から独立して選択することができる。一部の場合において、R
2およびR
3の一方は、
【0044】
【化13】
であってよいが、他方はHである。なお、一部の他の場合において、R
2およびR
3の両方は、同じまたは異なるが、
【0045】
【化14】
として表すことができる。一部の実施形態において、YはOR
4であってよい。こうした場合において、R
4は、HまたはC
1~4アルキル、例えばメチルであってよい。一部の場合において、YはNR
4R
5であってよい。こうした場合において、R
4およびR
5の各々は、HおよびC
1~4アルキル、例えばメチルから独立して選択することができる。一部の実施形態において、R
4およびR
5は同じであってよい。例えば、一部の実施形態において、R
4およびR
5の両方はHであってよいか、またはR
4およびR
5の両方はメチルであってよい。なお、一部の実施形態において、R
4およびR
5は異なっていてよい。例えば、R
4およびR
5の一方はHであってよいが、他方はメチルであってよい。
【0046】
一部の実施形態において、XがOHである場合、少なくとも1つのR2およびR3はホスフェートであってよい。ある特定の場合において、R2およびR3の両方はホスフェートであってよい。ある特定の他の場合において、R2およびR3の一方はホスフェートであってよく、他方はHであってよい。
【0047】
一部の実施形態において、XがOHである場合、R2またはR3のうちの少なくとも1つは、OR2(またはOR3)がアミノ酸のエステルを形成する基であってよい。ある特定の実施形態において、R2またはR3の一方は、OR2(またはOR3)がアミノ酸のエステルを形成する基であってよいが、他方はHであってよい。例えば、OR2はアミノ酸のエステルを形成することができるが、R3はHであり;またはOR3はアミノ酸のエステルを形成することができるが、R2はHである。ある特定の実施形態において、R2およびR3は、OR2およびOR3が各々アミノ酸のエステルを形成するようなものであってよい。ある特定の場合において、OR2およびOR3は、同じアミノ酸のエステルを形成することができる。なお、ある特定の場合において、OR2は、第1のアミノ酸のエステルを形成することができるが、OR3は、第1のアミノ酸と異なる第2のアミノ酸のエステルを形成することができる。
【0048】
アミノ酸は、D-異性体アミノ酸またはL-異性体アミノ酸であってよい。ある特定の実施形態において、アミノ酸は自然発生アミノ酸であってよい。なお、一部の実施形態において、アミノ酸は人工的アミノ酸であってよい。アミノ酸の例としては、以下に限定されないが、カルバミン酸、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、セリン、スレオニン、アスパラギン、グルタミン、チロシン、システイン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、アスパラギン酸、グルタミン酸が挙げられる。OR2(OR3)がアミノ酸のエステルを形成する場合、R2(R3)は、
【0049】
【化15】
(R
4およびR
5は、上記で定義されている通りである)または
【0050】
【化16】
(式中、R
10は、アミノ酸側鎖からなる群から選択され、R
11およびR
12は、Hであってよい)
を有することができる。アミノ酸がプロリンである実施形態において、R
11はR
10と一緒に、ピロリジン環構造を形成するが、R
12はHである。R
10は、例えば、天然アミノ酸側鎖のうちの1つ、例えば-CH
3(アラニン)、--(CH
2)
3HCNH
2NH(アルギニン)、--CH
2CONH
2(アスパラギン)、--CH
2COOH(アスパラギン酸)、--CH
3SH(システイン)、--(CH
2)
2CONH
2(グルタミン)、--(CH
2)
2COOH(グルタミン酸)、--H(グリシン)、--CHCH
3CH
2CH
3(イソロイシン)、--CH
2CH(CH
3)
2(ロイシン)、--(CH
2)
4NH
2(リジン)、--(CH
2)
2SCH
3(メチオニン)、--CH
2Ph(フェニルアラニン)、--CH
2OH(セリン)、--CHOHCH
3(スレオニン)、--CH(CH
3)
2(バリン)、
【0051】
【化17】
-(CH
2)
3NHCONH
2(シトルリン)または-(CH
2)
3NH
2(オルニチン)であってよい。Phはフェニル基を指す。
【0052】
一部の実施形態において、R2およびR3の各々はHである。こうした場合において、ある特定の実施形態において、XはNR1R6であってよい。R1は、HまたはC1~C4アルキルであってよい。R6は、
【0053】
【化18】
であってよい。R
7は、HまたはC
1~C
4アルキル(末端のヒドロキシ基またはカルボキシ基で任意選択により置換されていてよい)であってよく、R
8は、HまたはC
1~C
4アルキルであってよい。ある特定の実施形態において、R
1およびR
6は、NR
1R
6がアミノ酸のアミドを形成することができるようなものである。
【0054】
ある特定の実施形態において、R1はHであってよい。こうした場合において、一部の実施形態において、R6は、
【0055】
【化19】
(式中、R
7は、HまたはC
1~C
4アルキル(末端のヒドロキシ基またはカルボキシ基で任意選択により置換されていてよい)であってよい)
であってよい。
【0056】
ある特定の実施形態において、R1はHであってよく、R6は、
【0057】
【化20】
(式中、R
8は、HまたはC
1~C
4アルキル、例えばメチルまたはエチルであってよい)
であってよい。
【0058】
ある特定の実施形態において、R2およびR3は各々Hであり、NR1R6は、上記で考察されているアミノ酸であってよいアミノ酸のアミドを形成することができる。NR1R6は、例えば、
【0059】
【化21】
である。ある特定の場合において、R
1はHであってよく、R
10は、上記で定義されている通りであってよい。プロリンがアミノ酸である場合において、R
1およびR
10は、一体となってピロリジン環構造を形成することができる。
【0060】
ある特定の場合において、R2およびR3が各々Hである場合、XはOR9であってよく、R9はC1~C4アルキル(末端のヒドロキシル基またはカルボキシ基で任意選択により置換されていてよい)であってよい。R9が、末端のカルボキシ基で置換されているC1~C4アルキルである場合、R9は、カルボキシメチル、カルボキシエチル、カルボキシプロピル、4-カルボキシブチル、2-メチル-3-カルボキシプロピルであってよい。
【0061】
一部の実施形態において、プロドラッグは、下記式:
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
【化22-4】
のうちの1つを有する化合物であり得る。
【0066】
これらのプロドラッグは、トレプロスチニルまたはその塩の投与と比較した部位疼痛の低減に加えてまたは代替として、トレプロスチニルと比較した1つまたは複数の利点を有することができる。例えば、これらのプロドラッグの一部は、少なくとも一部の患者集団において、改善された安定性またはより大きな耐性を有することができる。
【0067】
これらのプロドラッグの少なくとも一部は、150分未満または120分未満または90分未満または60分未満または50分未満または45分未満または40分未満または30分未満または20分未満または15分未満または12分未満または約10分のヒト血漿中半減期を有することができる。
【0068】
ある特定の実施形態において、トレプロスチニルのプロドラッグは、少なくとも1mg/mLまたは少なくとも2mg/mLまたは少なくとも3mg/mLまたは少なくとも4mg/mLまたは少なくとも5mg/mLまたは少なくとも6mg/mLの平衡水溶解度を有することができる。ある特定の実施形態において、トレプロスチニルのプロドラッグは、3mg/mLから40mg/mL、もしくは3mg/mLから35mg/mL、もしくは5mg/mLから15mg/mL、またはこれらの範囲内の任意の値もしくはサブ範囲の平衡水溶解度を有することができる。プロドラッグの溶解度は、pHが溶解度測定において使用されるビヒクル中で増加されるならば、および/または1種もしくは複数の塩がビヒクルから除去されるならば、より大きいことがある。
【0069】
Remodulin(登録商標)は皮下投与についてFDAによって承認されているが、一部の患者はこうした投与の結果として部位疼痛を経験する。本発明は任意の特別な理論に拘束されないが、この部位疼痛は、m-クレゾールなどの不活性成分に対立するものとしてトレプロスチニルそれ自体、または任意の不活性成分との組合せにおけるトレプロスチニルの存在の結果であり得る。
図9は、ラット足疼痛モデルを使用して試験ラットによる部位疼痛に起因するt=0分、15分および90分での引っ込め時間を報告しており、ここでラットは、以下のうちの1つを投与された:a)生理食塩水、b)クエン酸緩衝液、塩化ナトリウムおよびm-クレゾールを含有していたがトレプロスチニルを含有していなかったプラセボ製剤(
図9において「Remodulinプラセボ」として示されている);c)トレプロスチニル、クエン酸緩衝液、塩化ナトリウムおよびm-クレゾールを含有する、1μg/mLのトレプロスチニル濃度を有するRemodulin製剤(
図9において「トレプロスチニル1μg/mL」として示されている);およびd)トレプロスチニル、クエン酸緩衝液、塩化ナトリウムおよびm-クレゾールを含有する、100μg/mLのトレプロスチニル濃度を有するRemodulin製剤(
図9において「トレプロスチニル100μg/mL」として示されている)。
図9における縦バーは、どのくらい迅速に試験ラットが、t=0分、15分および90分で、製剤の投与に続く熱刺激に対する応答でそれらの足を引っ込めたかを示す。データは、試験ラットが、トレプロスチニルを含有した製剤の場合において、熱刺激に対してより感受性であったとともにより迅速にそれらの足を引っ込めたが、他方で、Remodulinプラセボ(Remodulinの不活性成分を含有していたがトレプロスチニルを含有していなかった)は、それらの感受性を増加させなかったことを示している。
【0070】
本発明は、それの動作理論によって制限されないが、皮下投与中の部位疼痛は、注射の部位でのIP、DPまたはEP受容体のうちの1つまたは複数に結合するトレプロスチニルによるものであり得る。トレプロスチニルは、分子上の3個のヒドロキシル基に対応する3つの官能性位置でこれらの受容体に結合することがあり、例えば、Tsai and Wu, Eicosanoids, 2(3): 131-43 (1989)を参照されたい。したがって、トレプロスチニルのヒドロキシル基に結合している1個もしくは複数の基、またはこれらの受容体への結合を低減する他の修飾を有するトレプロスチニルのプロドラッグは、投与の部位で局所的に受容体に対して、トレプロスチニルよりも少ない親和性を有することができる。
【0071】
「トレプロスチニルのプロドラッグ」(文脈に依存して「トレプロスチニルプロドラッグ」または単に「プロドラッグ」とも称される)という成句は、本明細書で使用される場合、投与に続いてインビボでトレプロスチニルに全体的または部分的に変換するトレプロスチニルの任意の誘導体を指す。トレプロスチニルのプロドラッグは、トレプロスチニルと比較した場合、注射の部位で局所的にIP、DPまたはEP受容体のうちの1つまたは複数に対して、低減された親和性を有することができる。一部の実施形態において、「トレプロスチニルのプロドラッグ」は、トレプロスチニルと比較した場合、IP、DPまたはEP受容体のうちの1つまたは複数に対して、低減された親和性を有するように修飾されたトレプロスチニル構造の、1個または複数のヒドロキシル基を有するトレプロスチニル誘導体であり得るが、皮下投与および後続の血液中への拡散に続いて活性トレプロスチニルにインビボで変換され得る。一部の実施形態において、トレプロスチニルのプロドラッグは、血流などにおいて、皮下腔の外側のトレプロスチニルにインビボで完全にまたは実質的に変換される。好ましいプロドラッグは、上記の式Iの化合物を含む。トレプロスチニルの他の好ましいプロドラッグは、トレプロスチニルのアミド、カーボネートまたはカルバメートのエステルを含む。一部の実施形態において、トレプロスチニルのプロドラッグは、投与に続いてインビボでトレプロスチニルへの50%超、75%、85%、90%、95%または98%の変換を有する。一部の実施形態において、この変換は、投与に続く15分、30分、45分、1時間、2時間または3時間で行われる。トレプロスチニルのプロドラッグは、こうしたプロドラッグの薬学的に許容される塩を含む。
【0072】
好ましくは、トレプロスチニルのプロドラッグは、例えば溶液中で自発的にトレプロスチニルに加水分解しないことによって貯蔵中、投与前または初期注射中、および注射の部位で安定である。好ましくは、本発明のプロドラッグ製剤は、トレプロスチニルがないか、または遊離酸形態のトレプロスチニルが実質的にない。一部の実施形態において、トレプロスチニルのプロドラッグの10%未満、5%、2%、1%または0.1%が、定義されている貯蔵期間中にトレプロスチニルに変換する。一部の実施形態において、その定義されている貯蔵期間は、1カ月、2カ月、3カ月、6カ月または12カ月であり得る。
【0073】
皮下投与される場合のトレプロスチニルのプロドラッグは、好ましくは、Remodulinの皮下投与と生物学的に同等である。一実施形態において、投与されたプロドラッグは、皮下RemodulinについてのCmaxおよびAUCの80~125%の間であるトレプロスチニルの血漿濃度を提供する。例えば、http://www.fda.gov/downloads/Drugs/GuidanceComplianceRegulatoryInformation/Guidances/UCM377465.pdfを参照されたい。別の実施形態において、Cmax値およびAUC値は、皮下RemodulinのCmaxレベルおよびAUCレベルの95%から105%の間である。Remodulinは、好ましくは、1.25ng/kg/分で皮下に注入されるが、この初期用量が副作用により耐えられ得ないならば、FDA承認ラベルは、注入速度を0.625ng/kg/分に低減することを規定している。
【0074】
図8は、トレプロスチニルの血漿濃度を時間の関数として表示している。
図8における下限および上限は、皮下投与Remodulinについての血漿濃度の75%および125%にそれぞれ対応しており、これは、本発明のプロドラッグで標的化するための生物学的に同等な血漿濃度の1つの好ましい範囲を表す。
図8は、トレプロスチニルの1つの可能な皮下投与プロドラッグ製剤についてのプロットを示しており、これは、下限から上限の間でフィットし、そのため、ある特定の時間期間にわたって測定されたトレプロスチニルの血漿濃度の点から、皮下投与Remodulinと生物学的に同等である。
【0075】
開示されているトレプロスチニルプロドラッグ、例えばアミド、カルバメートおよびカーボネートのプロドラッグは、殊に、皮下投与を含めて非経口投与するための、一般のエステルプロドラッグを超える1つまたは複数の利点を有することができる。例えば、開示されているトレプロスチニルプロドラッグ、例えばアミド、カルバメートおよびカーボネートのプロドラッグは、一般のエステルプロドラッグよりも安定であり得、一般のエステルプロドラッグは加水分解する傾向を有することがあり、それによって、所望されない場合、例えば溶液中でまたは注射部位でトレプロスチニルに早期に変換する。
【0076】
「薬学的に許容される塩」は、無機塩基、有機塩基、無機酸、有機酸、または塩基性もしくは酸性のアミノ酸との塩を含む。無機塩基の塩は、ナトリウムまたはカリウムなどのアルカリ金属の塩;カルシウムおよびマグネシウムまたはアルミニウムなどのアルカリ土類金属の塩;ならびにアンモニアの塩であってよい。有機塩基の塩は、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、エタノールアミン、ジエタノールアミンおよびトリエタノールアミンであってよい。無機酸の塩は、例えば、塩酸の塩、ヒドロホウ酸の塩、硝酸の塩、硫酸の塩、またはリン酸の塩であってよい。有機酸の塩は、例えば、以下の酸:ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、フマル酸、シュウ酸、乳酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、およびp-トルエンスルホン酸のうちの1つの塩であってよい。塩基性アミノ酸の塩は、例えば、アルギニン、リジンまたはオルニチンの塩であってよい。酸性アミノ酸の塩は、例えば、アスパラギン酸またはグルタミン酸の塩であってよい。
【0077】
「肺高血圧症」は、肺高血圧症の全ての形態、WHOグループ1~5を指す。PAHとも称される肺動脈高血圧症は、WHOグループ1肺高血圧症を指す。PAHは、新生児の特発性、遺伝性、薬物または毒素誘発性および遷延性の肺高血圧症(PPHN)を含む。
【0078】
本発明のトレプロスチニルプロドラッグは、薬学的に許容される担体、賦形剤、結合剤または希釈液などを含むこともできる医薬組成物の形態で提供することができる。こうした医薬組成物は、とりわけ、顆粒化プロセス、混合プロセス、溶解プロセス、カプセル化プロセス、凍結乾燥プロセス、乳化プロセスまたはゲル状化プロセスなど、当技術分野において公知である方法によって製造することができる。組成物は、例えば、顆粒剤、粉末剤、錠剤、カプセル剤、シロップ剤、坐剤、注射剤、乳剤、エリキシル剤、懸濁液剤および溶液剤の形態であってよい。組成物は、経口投与、経粘膜的投与、直腸投与、経皮または皮下の投与、ならびにくも膜下腔内、静脈内、筋肉内、腹腔内、鼻腔内、眼球内または脳室内の注射のためなど、多数の異なる投与経路のために製剤化することができる。トレプロスチニルプロドラッグは、注射としてまたは徐放性製剤としてを含めて、例えば全身的投与よりはむしろ局所的投与における上記経路のいずれかによって、投与することができる。
【0079】
一実施形態において、医薬組成物は、トレプロスチニルのプロドラッグおよび担体、例えば滅菌水を含むことができる。一部の実施形態において、トレプロスチニルのプロドラッグは皮下投与のために製剤化され、こうした製剤は、m-クレゾールまたは別の保存剤を含むことがあるまたはない。
【0080】
経口投与、頬側投与および舌下投与のため、散剤、懸濁液剤、顆粒剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、ゲルキャップ剤およびカプレット剤が固体剤形として許容され得る。これらは、例えば、1つもしくは複数のトレプロスチニルプロドラッグまたはその薬学的に許容される塩を、少なくとも1種の添加剤または賦形剤、例えばデンプンまたは他の添加剤と混合することによって調製することができる。適当な添加剤または賦形剤は、スクロース、ラクトース、セルロース糖、マンニトール、マルチトール、デキストラン、ソルビトール、デンプン、寒天、アルギネート、キチン、キトサン、ペクチン、トラガカントガム、アラビアガム、ゼラチン、コラーゲン、カゼイン、アルブミン、合成もしくは半合成のポリマーもしくはグリセリド、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル-セルロース、および/またはポリビニルピロリドンであり得る。任意選択により、経口剤形は、投与を補助するための他の成分、例えば不活性希釈液、または滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウム、または保存剤、例えばパラベンもしくはソルビン酸、または酸化防止剤、例えばアスコルビン酸、トコフェロールもしくはシステイン、崩壊剤、結合剤、増粘剤、緩衝液、甘味剤、香味剤、または香剤を含有することができる。追加として、染料または顔料が、識別のために添加され得る。錠剤は、当技術分野において公知である適当なコーティング材料でさらに処理することができる。
【0081】
経口投与のための液体剤形は、水などの不活性希釈液を含有することができる薬学的に許容される乳剤、シロップ剤、エリキシル剤、懸濁液剤、スラリー剤および溶液剤の形態であってよい。医薬製剤は、以下に限定されないが、油、水、アルコールおよびこれらの組合せなどの滅菌液体を使用して、液体懸濁液または溶液として調製することができる。薬学的に適当な界面活性剤、懸濁化剤、乳化剤は、経口または非経口投与のために添加することができる。
【0082】
上で注記されている通り、懸濁液は油を含むことができる。こうした油としては、以下に限定されないが、落花生油、ゴマ油、綿実油、コーン油およびオリーブ油が挙げられる。懸濁液調製物は、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、脂肪酸グリセリドおよびアセチル化脂肪酸グリセリドなど脂肪酸のエステルも含有することができる。懸濁液製剤は、以下に限定されないが、エタノール、イソプロピルアルコール、ヘキサデシルアルコール、グリセロールおよびプロピレングリコールなどのアルコールを含むことができる。エーテル、例えば、以下に限定されないが、ポリ(エチレングリコール)、石油炭化水素、例えば鉱物油およびワセリン;ならびに水も、懸濁液製剤中に使用することができる。
【0083】
注射可能な剤形は一般に、適当な分散化剤または湿潤剤および懸濁化剤を使用して調製することができる水性懸濁液剤または油懸濁液剤を含む。注射可能な形態は、溶媒または希釈液を用いて調製される溶液相または懸濁液の形態であってよい。許容される溶媒またはビヒクルは、滅菌水、リンゲル液または等張性生理食塩水溶液を含む。代替として、滅菌油が溶媒または懸濁化剤として用いられ得る。好ましくは、油または脂肪酸は、天然油または合成油、脂肪酸、モノ、ジまたはトリグリセリドを含めて、不揮発性である。
【0084】
注射のため、医薬製剤は、上に記載されている通りの適切な溶液を用いる再構成に適当な粉末であってよい。これらの例としては、以下に限定されないが、フリーズ乾燥、回転乾燥またはスプレー乾燥させた粉末、非晶質粉末、顆粒、沈殿物または粒子状物が挙げられる。注射のため、製剤は、任意選択により、安定剤、pH調節剤、界面活性剤、生物学的利用能調節剤およびこれらの組合せを含有することができる。化合物は、注射による、例えばボーラス注射または持続注入による非経口投与のために製剤化することができる。注射のための単位剤形は、アンプル中または多用量容器中にあってよい。
【0085】
上に記載されているそれらの代表的剤形の他に、薬学的に許容される賦形剤および担体は当業者に一般に知られており、したがって本発明に含まれる。こうした賦形剤および担体は、例えば、"Remingtons Pharmaceutical Sciences" Mack Pub. Co., New Jersey (1991)に記載されており、これを参照により本明細書に組み込む。
【0086】
トレプロスチニルプロドラッグは、トレプロスチニルプロドラッグまたはその薬学的に許容される塩の滅菌水性調製物を含むことができる非経口投与に適当な製剤中に製剤化することができ、調製物は、意図されるレシピエントの血液と等張であり得る。これらの調製物は皮下注射の手段によって投与することができるが、投与は静脈内でまたは筋肉内もしくは皮内注射の手段によって達成することもできる。こうした調製物は、好都合には、化合物を水またはグリシンもしくはクエン酸緩衝液と添加混合すること、ならびに結果として得られた溶液を滅菌および血液と等張にすることによって調製することができる。本発明による注射可能な製剤は、プロドラッグ中のトレプロスチニルの重量に基づき0.1%w/vから5%w/vを含有することができ、0.1ml/分/kgの速度で投与することができる。代替として、本発明は、プロドラッグ中のトレプロスチニルの重量に基づき0.625ng/kg/分から50ng/kg/分の速度で投与することができる。代替として、本発明は、プロドラッグ中のトレプロスチニルの重量に基づき10ng/kg/分から15ng/kg/分の速度で投与することができる。
【0087】
一部の実施形態において、静脈内注入または皮下注入(連続的皮下注入を含める)などの非経口投与のための製剤中のトレプロスチニルプロドラッグの濃度は、0.0005mg/mLから30mg/mL、もしくは0.0007mg/mLから50mg/mL、もしくは0.001mg/mLから15mg/mL、またはこれらの範囲内の任意の値もしくはサブ範囲であってよい。例証的な濃度としては、0.1mg/mL、1mg/mL、2.5mg/mL、5mg/mLまたは10mg/mLを挙げることができる。
【0088】
一部の実施形態において、静脈内注入または皮下注入(連続的皮下注入を含める)などの非経口投与のためのトレプロスチニルプロドラッグの製剤は、プロドラッグを緩衝液などのビヒクルと添加混合することによって調製することができる。ある特定の実施形態において、ビヒクルは、リン酸塩含有ビヒクル、すなわち、例えば二塩基性リン酸ナトリウムもしくは二塩基性リン酸カリウムなどの二塩基性リン酸塩、または三塩基性リン酸ナトリウムもしくはリン酸カリウムなどの三塩基性リン酸塩であってよい少なくとも1種のリン酸塩であってよい。ある特定の実施形態において、ビヒクルは、例えば塩化ナトリウムまたは塩化カリウムであってよい塩化物塩などのハロゲン塩も含有することができる。塩化ナトリウムなどのハロゲン塩は、ビヒクルの張度を調整するために使用することができる。ある特定の実施形態において、リン酸塩およびハロゲン塩は同じカチオンを有することが好ましくあり得る。例えば、リン酸塩が、三塩基性リン酸ナトリウムなどのリン酸ナトリウムまたは三塩基性リン酸ナトリウムである場合、ハロゲン塩は、塩化ナトリウムなどのナトリウムハロゲン塩であり得る。同様に、リン酸塩が三塩基性リン酸カリウムなどのリン酸カリウムまたは三塩基性リン酸カリウムである場合、ハロゲン塩は、塩化カリウムなどのカリウムハロゲン塩であり得る。ビヒクル中の溶媒は、水を含有することができる。ある特定の実施形態において、水は、ビヒクル中で唯一の溶媒であってよい。なお、ある特定の実施形態において、ビヒクルは、水に加えて1種または複数の追加の溶媒を含有することができる。一部の実施形態において、追加の溶媒は、m-クレゾールなどの保存剤であってよい。
【0089】
好ましくは、ビヒクルは、ヒトなどの患者の血液と等張である。等張という用語は、ビヒクルのモル浸透圧濃度およびイオン濃度が、ヒトなどの患者のものと一致することを意味し得る。ビヒクルの非限定的な例としては、リン酸水素二ナトリウム、塩化ナトリウム、ならびに一部の製剤において、塩化カリウムおよびリン酸二水素カリウムを含有する水ベースの塩溶液であるリン酸緩衝生理食塩水が挙げられる。他の例としては、125mMの塩化ナトリウムとともに20mMの二塩基性リン酸ナトリウムを含有するビヒクル、ならびに15mMの三塩基性リン酸ナトリウム、125mMの塩化ナトリウムおよび0.3%w/wのm-クレゾールを含有するビヒクルを挙げることができる。
【0090】
ある特定の実施形態において、トレプロスチニルプロドラッグは皮下投与することができる。一部の実施形態において、皮下投与は、連続的皮下注入、例えば、好ましくは携帯可能または移植可能である注入ポンプによる連続的皮下注入であってよい。
【0091】
一部の実施形態において、トレプロスチニルプロドラッグは、プロドラッグ中のトレプロスチニルの重量に基づき0.1ng/kg/分から100ng/kg/分、もしくは0.2ng/kg/分から70ng/kg/分、もしくは0.3ng/kg/分から50ng/kg/分、もしくは0.6ng/kg/分から10ng/kg/分、またはこれらの範囲内の任意の値もしくはサブ範囲の速度(用量)で皮下投与することができる。一部の実施形態において、注入は、初速度(用量)で開始することができ、これは後に、初速度(用量)に対する患者の応答に基づき増加または減少することができる。例えば、初速度(用量)は1.25ng/kg/分であってよく、これは、患者の耐性に依存して1週当たり1.25ng/kg/分、または1週当たり2.5ng/kg/分の増分で増加することができる。患者が、例えば軽度から中程度の肝機能不全および/または頭痛であり得る例えば副作用により初速度(用量)に耐えられないならば、初速度(用量)は、0.625ng/kg/分に低減することができる。患者が、より低い速度(用量)に対する耐性を発達させた後、速度(用量)が増加され得る。
【0092】
トレプロスチニルプロドラッグは、トレプロスチニルが有用であることが公知である同じ目的のうちの1つまたは複数で使用することができる。例えば、トレプロスチニルプロドラッグは、肺動脈高血圧症および慢性血栓塞栓性肺高血圧症を含めた肺高血圧症など、トレプロスチニルで処置することができる疾患または障害を処置するため、ヒトなどの対象に投与するために使用することができる。肺高血圧症を処置することなどの治療目的で、トレプロスチニルプロドラッグは、肺高血圧症などトレプロスチニルで処置することができる疾患または障害の1つまたは複数の症状を寛解させるのに十分であるトレプロスチニルプロドラッグの量であり得る治療有効量で、ヒトなどの対象に投与することができる。
【0093】
トレプロスチニルプロドラッグは、細胞保護において、細胞増殖を低減すること、血管拡張を促進することおよび/または血小板凝集を阻害することを含めて、治療的に使用することができる。一部の実施形態において、トレプロスチニルプロドラッグは、肺高血圧症、心不全(うっ血性心不全を含める)または末梢血管疾患などの血管疾患の処置において使用することができる。トレプロスチニルプロドラッグは、血管拡張効果を有することができることで、それらは、例えば、ループス、強皮症または混合性結合組織病などの結合組織病の1つまたは複数の形態に起因し得る肺高血圧症を処置するために使用することができる。
【0094】
トレプロスチニルプロドラッグは、がん、凝固障害および炎症性疾患においても使用することができる。がん細胞の転移を阻害するためのトレプロスチニルの使用は、米国特許出願公開第2003-0108512号明細書および米国特許第6,803,386号明細書に開示されており、これら両方を全体で本明細書に組み込む。
【0095】
トレプロスチニルプロドラッグは、
図1~
図6に例示されている方法に従って、および下記の実施例において実証されている通りに調製することができる。
【0096】
スキーム2は、アセテートアミドプロドラッグVIIの合成を例示している。この合成は、NH2CH2COOBnと反応させるトレプロスチニルで開始することで、以下の式:
【0097】
【化23】
の保護アセタトアミド化合物を形成することができる。一部の実施形態において、C
1~C
4アルキル、例えばメチルまたはエチルなどのアルキルは、ベンジルの代わりに使用することができる。こうした場合において、R
4がアルキルであるNH2CH2COOR
4が使用されて、NH2CH2COOBnの代わりに保護アセタトアミド化合物を形成しながらトレプロスチニルを反応させることができる。
【0098】
保護アセタトアミド化合物は次いで、アセタトアミドプロドラッグVIIに移入させることができる。Bnの場合において、こうした反応は、Pd/CおよびH2を使用することを伴うことがある。メチルまたはエチルなどのアルキルの場合において、保護アセタトアミド化合物は、NaOHまたはKOHなどの塩基と反応させることで、アセタトアミドプロドラッグVIIに移入させることができる。
【0099】
【0100】
【化24】
(式中、P
1は、ヒドロキシル保護基、例えば2-テトラヒドロピラニル(THP)、またはシリル保護基、例えばtert-ブチルジメチルシリルエーテル(TBDMS/TBS)、トリメチルシリル(TMS) トリエチルシリル(TES)、tert-ブチルジフェニルシリル(TBDPS)、トリイソプロピルシリル(TIPS)であってよい)
の出発化合物の合成を例示している。この化合物は、いくつかのトレプロスチニルプロドラッグを合成するための重要な出発化合物として使用することができる。
図6におけるプロセスは、その全体が本明細書に組み込まれる米国特許第8,940,930号明細書のスキーム2の最初の5つの反応に対応する。
図6に開示されているプロセスの他に、出発化合物は、例えば、米国特許第6,756,117号明細書および同第6,809,223号明細書に開示されている方法を使用して合成することもできる。出発化合物の合成は、以下の式:
【0101】
【化25】
(式中、P
0は、ベンジルまたは置換ベンジルなどのヒドロキシル保護基である)
の化合物で開始することができる。置換ベンジル基は、--NO
2、--CN、ハロゲン(例えば、--F、--Cl、--Brまたは--I)、(C1~C3)アルキル、ハロ(C1~C3)アルキル、(C1~C3)アルコキシおよびハロ(C1~C3)アルコキシからなる群から独立して選択することができる1個または複数の置換基で1つまたは複数のメタ位、オルト位またはパラ位にて任意選択により置換されていてよい。この化合物
【0102】
【0103】
【化27】
と、(+)-N-メチルエフェドリン、Zn(OTf
2)/Et
3Nの存在下で、または(1S,2S)-3-(ターシャリーブチルジメチルシリルオキシ)-2-N,N-ジメチルアミノ-L-(パラ-ニトロフェニル)-プロパン-1-オールを使用して反応させることで、以下の式
【0104】
【化28】
の化合物を形成することができる。この化合物は次いで、米国特許第6,940,930号明細書に開示されている反応を使用して、鍵となる出発化合物に移入させることができる。
【0105】
以下の式
【0106】
【化29】
の出発化合物は、トレプロスチニルのシクロペンチル環プロドラッグ、すなわち、XがOHであるとともにR
3がHである化合物、またはトレプロスチニルの側鎖プロドラッグ、すなわち、XがOHであるとともにR
2がHである化合物を合成するために使用することができる。シクロペンチル環プロドラッグの合成は
図1および
図3に例示されており、一方、側鎖プロドラッグの合成は、
図2および
図4に示されている。
【0107】
シクロペンチル環プロドラッグを合成するため、以下の式
【0108】
【0109】
【化31】
(式中、P
0は、ヒドロキシル保護基、例えばベンジル、置換ベンジル、またはアルキル、例えばメチルおよびエチルを含めたC
1~C
4アルキルである)
の二重保護化合物に変換することができる。例えば、以下の式
【0110】
【0111】
【0112】
【化34】
を形成することができる。二重保護化合物
【0113】
【0114】
【0115】
【化37】
であってよく、式中、YはOR
4またはNR
4R
5であり、R
4およびR
5の各々は、HおよびC
1~4アルキルから独立して選択されるか、またはYは、Cl、BrまたはOCCl
3である)
の二重保護プロドラッグ化合物に変換することができる。これは、二重保護化合物を
【0116】
【化38】
(式中、Zは、Cl、BrまたはOCCl
3である)
と反応させることによって達成することができる。例えば、R
2が
【0117】
【0118】
【化40】
と反応させることで、それぞれの二重保護プロドラッグ化合物を形成することができる。R
2が
【0119】
【0120】
【化42】
またはCl
3CO-C(=O)-OCCl
3/HN(CH
3)-CH
3のミックスと反応させることで、それぞれの二重保護プロドラッグ化合物を形成することができる。
【0121】
P
0およびP
1保護基の各々は次いでHと置き換えられることで、カルボキシ基のヒドロキシルおよび側鎖のヒドロキシルを脱保護することができる。
図1に例示されているものなど、一部の実施形態において、カルボキシ基のヒドロキシルおよび側鎖のヒドロキシルの脱保護(P
0およびP
1の各々の置き換え)は、単一の反応において行うことができる。なお、一部の他の実施形態において、カルボキシ基のヒドロキシルおよび側鎖のヒドロキシルの脱保護は、2つの別々の反応において行うことができる。一部の場合において、
図3に例示されている通り、側鎖のヒドロキシル基が最初に脱保護され、その後、カルボキシ基のヒドロキシルの脱保護が続くことができる。なお一部の他の場合において、カルボキシ基のヒドロキシル基が最初に脱保護され、その後、側鎖のヒドロキシルの脱保護が続くことができる。側鎖のヒドロキシルの脱保護は、MgBr
2などのルイス酸、硫酸銅などの銅の塩、アンバーリストなどの酸性樹脂、HClおよびH
2SO
4などの鉱酸の存在下で行うことができる。ヒドロキシル保護基の脱保護は、"Green’s protecting groups in organic synthesis" ISBN 978-0-471-69754-1, 4th edition, 2007, page 62; John Wiley and Sons)に開示されている。カルボキシ基のヒドロキシルの脱保護は、例えば、パラジウム炭素触媒、酸化白金および水素ガスのうちの1つまたは複数の存在下で行うことができる。
【0122】
側鎖プロドラッグを合成するため、出発化合物
【0123】
【0124】
【化44】
(式中、P’
0およびP
2は、同じまたは異なるヒドロキシル保護基であってよく、これは、例えば、tert-ブチルジメチルシリルエーテル(TBDMS/TBS)、トリメチルシリル(TMS)トリエチルシリル(TES)、tert-ブチルジフェニルシリル(TBDPS)、トリイソプロピルシリル(TIPS)などのシリル保護基であってよい)
の三重保護トリオール化合物に変換することができる。一部の実施形態において、同じであるべきP’
0およびP
2を有することが好ましくあり得る。例えば、
図2および
図4において、鍵となる中間体化合物はTBDMSClと反応させることで、P’
0およびP
2の両方がTBDMSである三重保護トリオール化合物を形成する。
【0125】
三重保護トリオール化合物は次いで、共役環のヒドロキシルを脱保護することによって、以下の式
【0126】
【化45】
の二重保護トリオール化合物に変換することができる。こうした変換は、LiOAcまたはLiOHなどのLi含有化合物の存在下で行うことができる。
【0127】
二重保護トリオール化合物は次いで、以下の式
【0128】
【化46】
(式中、P
0は、ベンジルまたは置換ベンジルなどのヒドロキシル保護基である)
の三重保護カルボキシ酸化合物に変換することができる。二重保護トリオール化合物は、
【0129】
【化47】
と反応させることによって、三重保護カルボキシ酸化合物に変換することができる。
【0130】
三重保護カルボキシ酸化合物は次いで、側鎖のヒドロキシル基を脱保護することによって、以下の式:
【0131】
【化48】
の二重保護カルボキシ酸化合物に変換することができる。側鎖のヒドロキシルの脱保護は、MgBr
2などのルイス酸、硫酸銅などの銅の塩、アンバーリストなどの酸性樹脂、HClおよびH
2SO
4などの鉱酸の存在下で行うことができる。ヒドロキシル保護基の脱保護は、"Green's protecting groups in organic synthesis" ISBN 978-0-471-69754-1, 4th edition, 2007, page 62; John Wiley and Sons)に開示されている。
【0132】
二重保護カルボキシ酸化合物は次いで、以下の式:
【0133】
【0134】
【化50】
であってよく、式中、YはOR
4またはNR
4R
5であり、R
4およびR
5の各々はHおよびC
1~4アルキルから独立して選択されるか、またはYは、Cl、BrまたはOCCl
3である)
の二重保護プロドラッグ化合物に変換することができる。これは、二重保護カルボキシ酸化合物を
【0135】
【化51】
(式中、Zは、Cl、BrまたはOCCl
3である)
と反応させることによって達成することができる。例えば、R
3が
【0136】
【化52】
である場合、二重保護カルボキシ酸化合物は、
【0137】
【化53】
と反応させることで、それぞれの二重保護プロドラッグ化合物を形成することができる。R
3が
【0138】
【0139】
【化55】
またはCl
3CO-C(=O)-OCCl
3/HN(CH
3)-CH
3のミックスと反応させることで、それぞれの二重保護プロドラッグ化合物を形成することができる。
【0140】
二重保護プロドラッグ化合物は、シクロペンチル環のヒドロキシルおよびカルボキシ基のヒドロキシルを脱保護することによって、側鎖プロドラッグ
【0141】
【化56】
に変換することができる。シクロペンチル環のヒドロキシルおよびカルボキシ基のヒドロキシルの脱保護は、単一の反応または2つの別々の反応において行うことができる。後者の場合において、シクロペンチル環のヒドロキシルの脱保護は、カルボキシ基のヒドロキシルの脱保護に続くまたは先行することができる。
図2および
図4において、シクロペンチル環のヒドロキシルの脱保護およびカルボキシ基のヒドロキシルの脱保護は、後者が前者に続く2つの別々の反応として行われる。カルボキシ基のヒドロキシルの脱保護は、パラジウム炭素、酸化白金および水素ガスのうちの1つまたは複数の存在下で行うことができる。シクロペンチル環のヒドロキシルの脱保護は、テトラ-n-ブチルアンモニウムフルオリド(TBAFおよびn-Bu
4NF)または鉱酸、例えばHClまたはH
2SO
4の存在下で行うことができる。
【0142】
プロドラッグJ、K、LまたはMなどのトレプロスチニルアミノ酸アミドプロドラッグは、アミノ酸である保護アミノ酸とトレプロスチニルを反応させることによって調製することができ、それのカルボキシ基における水素は、ベンジルなどのヒドロキシル保護基と置き換えられる。こうした反応の結果として、保護アミノ酸アミドプロドラッグが形成され得る。ヒドロキシル保護基は次いで、保護アミノ酸アミドプロドラッグから除去されることで、プロドラッグJ、K、LまたはMなどのトレプロスチニルアミノ酸アミドプロドラッグを形成することができる。
【0143】
本明細書に記載されている実施形態は、以下の実施例によってさらに例示されているが、これらに決して限定されない。
【実施例】
【0144】
[実施例1]
トレプロスチニルカルバメートプロドラッグの合成
【0145】
【化57】
スキーム1:トレプロスチニルカルバメートプロドラッグの合成
トレプロスチニルモノ-TESベンジルエステル(2aおよび2b)の合成:
【0146】
【化58】
ジクロロメタン(DCM)(200mL)中のトレプロスチニルベンジルエステル(1)(100g、20.80mmol)の溶液に、イミダゾール(1.41g、20.80mmol)および4-ジメチルアミノピリジン(0.25g、2.08mmol)を添加した。この混合物に、撹拌しながら、クロロトリエチルシラン(3.5mL、20.80mmol)をアルゴン雰囲気下でシリンジを使用して添加した。1時間後、反応はTLCに基づき完了していることが見出された(注1)。反応物を水(150mL)でクエンチし、有機層を分離し、ブライン(100mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、真空中で蒸発させることで、粗生成物を得た。粗材料をカラムクロマトグラフィーによって、移動相として酢酸エチル:ヘキサン(0~11%)を使用して精製することで、54.04%の収率でモノ保護化合物2a(RD-UT-1160-185-I、6.68g)および3.88%の収率で2b(RD-UT-1160-185-III、0.48g)の両方を得た。純粋な生成物を
1H NMRによって特徴付けた。
注1:移動相として20%のEtOAc:ヘキサンを使用して反応の進行をモニタリングするため、シリカゲルTLCを使用した。
【0147】
側鎖カルバメートトレプロスチニルプロドラッグ(5a)の合成のための実験
TES側鎖カルバメートベンジルエステル(3a)の合成:
【0148】
【化59】
15mLのトルエン中のトレプロスチニルモノ-TESベンジルエステル(2a)(0.5g、0.841mmol)の溶液に、ピリジン(0.14mL、1.682mmol)を添加し、アルゴン下にて撹拌した。これに、トルエン(12mL)中のトリホスゲン(0.37g、1.261mmol)の氷冷溶液を滴下により0.5時間の期間をかけて添加した。さらに0.5時間撹拌した後、反応はTLCに基づき完了していることが見出された(注1)。滴下漏斗にジメチルアミン溶液(THF中2.0M)(6.0mL)を投入し、反応混合物に0.5時間の期間をかけて添加した。さらに1時間撹拌した後、反応はTLCに基づき完了していることが見出された(注1)。反応物を水(20mL)でクエンチした。有機層を分離し、水層をMTBE(2×20mL)で抽出した。合わせた有機層をブライン(20mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、真空中で蒸発させることで、粗生成物を得た。これをカラムクロマトグラフィーによって、移動相として酢酸エチル:ヘキサン(0%から12%)を使用して精製することで、純粋なTES側鎖カルバメートベンジルエステル(3a)(RD-UT-1160-188、0.32g)および不純な生成物(RD-UT-1160-188-Fr-22-23、0.20g)を93.4%の総収率で得た。純粋な生成物を
1H NMRによって特徴付けた。
注1:移動相として30%のEtOAc:ヘキサンを使用して反応の進行をモニタリングするため、シリカゲルTLCを使用した。
【0149】
側鎖カルバメートベンジルエステル(4a)の合成:
【0150】
【化60】
THF(20mL)および水(4mL)中のTES側鎖カルバメートベンジルエステル(3a)(0.295g、0.443mmol)の溶液に、2NのHCl水溶液(0.22mL、0.443mmol)を添加した。これを周囲温度で1時間撹拌し、この時TLCが反応の完了を示した(注1)。この反応混合物を酢酸エチル(2×40mL)で抽出し、合わせた有機層を水(20mL)、ブライン(20mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、真空中で蒸発させることで、粗材料を得た。これをカラムクロマトグラフィーによって、移動相として酢酸エチル:ヘキサン(0%から40%)を使用して精製することで、純粋な側鎖カルバメートベンジルエステル(4a)(RD-UT-1160-194、0.26g)を106.5%(残留の溶媒とともに)の収率で得た。純粋な生成物を
1H NMRおよび
13C NMRによって特徴付けた。
注1:移動相として60%のEtOAc:ヘキサンを使用して反応の進行をモニタリングするため、シリカゲルTLCを使用した。
【0151】
側鎖カルバメートトレプロスチニルプロドラッグ(5a)の合成:
【0152】
【化61】
酢酸エチル(15mL)中の側鎖カルバメートベンジルエステル(4a)(0.25g、0.443mmol)の溶液に、炭素上のパラジウム(25mg)を添加し、真空を使用して反応系を脱気し、バルーン圧力下で水素ガスと置き換えた。これを6時間室温で撹拌し、反応はTLCに基づき完了していることが見出された(注1)。反応混合物をセライトに通して濾過し、濾液を真空中で蒸発させることで、側鎖カルバメートトレプロスチニルプロドラッグ(5a)(0.18g)(RD-UT-1160-198)を86.1%の収率および98.62%の化学純度(HPLC)で得た。生成物を
1H NMR、
13C NMR、IRおよびLC-MSによって特徴付けた。
注1:移動相として60%のEtOAc:ヘキサンを使用して反応の進行をモニタリングするため、シリカゲルTLCを使用した。
【0153】
シクロペンチルカルバメートトレプロスチニルプロドラッグ(5b)の合成のための実験
TESシクロペンチルカルバメートベンジルエステル(3b)の合成:
【0154】
【化62】
トルエン(15mL)中のトレプロスチニルモノ-TESベンジルエステル(2b)(0.45g、0.757mmol)の溶液に、ピリジン(0.12mL、1.513mmol)を添加し、アルゴン下にて撹拌した。これに、トルエン(15mL)中のトリホスゲン(0.33g、1.135mmol)の氷冷溶液を滴下により1時間の期間をかけて添加した。さらに1時間撹拌した後、反応はTLCに基づき完了していることが見出された(注1)。滴下漏斗にジメチルアミン溶液(THF中2.0M)(6.0mL)を投入し、反応混合物に0.5時間の期間をかけて添加した。さらに1時間撹拌した後、反応はTLCに基づき完了していることが見出された(注1)。反応物を水(20mL)でクエンチした。有機層を分離し、水層をMTBE(2×20mL)で抽出した。合わせた有機層をブライン(20mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、真空中で蒸発させることで、粗生成物を得た。これをカラムクロマトグラフィーによって、移動相として酢酸エチル:ヘキサン(0%から14%)を使用して精製することで、純粋なTESシクロペンチルカルバメートベンジルエステル(3b)(RD-UT-1160-195、0.44g)を87.5%の収率で得た。純粋な生成物を
1H NMRによって特徴付けた。
注1:移動相として30%のEtOAc:ヘキサンを使用して反応の進行をモニタリングするため、シリカゲルTLCを使用した。
【0155】
シクロペンチルカルバメートベンジルエステル(4b)の合成:
【0156】
【化63】
THF(12mL)および水(3mL)中のTESシクロペンチルカルバメートベンジルエステル(3b)(0.42g、0.631mmol)の溶液に、2NのHCl水溶液(0.31mL、0.631mmol)を添加した。これを周囲温度で1時間撹拌し、この時TLCが反応の完了を示した(注1)。この反応混合物を酢酸エチル(2×30mL)で抽出し、合わせた有機層をブライン(20mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、真空中で蒸発させることで、粗材料を得た。これをカラムクロマトグラフィーによって、移動相として酢酸エチル:ヘキサン(0%から40%)を使用して2回精製することで、純粋なシクロペンチルカルバメートベンジルエステル(4b)(RD-UT-1160-205、0.32g)を93.4%の収率で得た。純粋な生成物を
1H NMR、
13C NMRによって特徴付けた。
注1:移動相として60%のEtOAc:ヘキサンを使用して反応の進行をモニタリングするため、シリカゲルTLCを使用した。
【0157】
シクロペンチルカルバメートトレプロスチニルプロドラッグ(5b)の合成:
【0158】
【化64】
15mLの酢酸エチル中のシクロペンチルカルバメートベンジルエステル(4b)(0.31g、0.562mmol)の溶液に、炭素上のパラジウム(30mg)を添加し、真空を使用して反応系を脱気し、バルーン圧力下で水素ガスと置き換えた。これを6時間室温で撹拌し、反応はTLCに基づき完了していることが見出された(注1)。反応混合物をセライトに通して濾過し、真空中で蒸発させることで、シクロペンチルカルバメートトレプロスチニルプロドラッグ(5b)(0.24g)(RD-UT-1160-198)を92.6%の収率および99.39%の化学純度(HPLC)で得た。生成物を
1H NMR、
13C NMR、IRおよびLC-MSによって特徴付けた。
注1:移動相として60%のEtOAc:ヘキサンを使用して反応の進行をモニタリングするため、シリカゲルTLCを使用した。
【0159】
[実施例2]
トレプロスチニルグリコールアミドプロドラッグ(プロドラッグVII)の合成
【0160】
【化65】
考察:
グリコールアミドプロドラッグの合成のための2つの方法(スキーム2)を探索した:第1、トレプロスチニル(UT-15)およびグリシンメチルエステルの反応を介することで、アミド中間体アミドIを得て、その後、NaOH加水分解が続く;第2、UT-15とグリシンベンジルエステルp-トルエンスルホネートとの反応を介することで、アミド中間体アミドIIを形成し、その後、水素化が続く。第1の経路は、加水分解ステップのための強い塩基性条件を伴い、エステル結合およびアミド結合の両方の加水分解を引き起こし、UT-15の形成に至った。第2の経路は、アミドIIの脱ベンジル化のための非塩基性水素化分解を伴い、任意のアミド結合切断なくクリーンな所望の生成物を提供し、UT-15の形成に至らなかった。最終的に、第2の経路を使用することで、トレプロスチニルのグリコールアミドプロドラッグ(プロドラッグVII)を作製した。
【0161】
【0162】
スキーム2:グリコールアミドプロドラッグの合成
ステップ1:アミドIIの合成
【0163】
【化67】
磁気撹拌子が備えられている50mlの丸底フラスコに、無水DCM(20ml)中のUT-15(0.5g、1.28mmol)の溶液をアルゴン下にて投入した。この溶液に、Bop-Cl(0.49g、1.92mmol)、続いてグリシンベンジルエステルp-トルエンスルホネート(0.43g、1.28mmol)を室温でアルゴン下にて添加した。反応混合物を20分間撹拌し、次いで、トリエチルアミン(0.39g、3.84mmol)を添加した。反応が完了するまで、反応混合物を終夜撹拌した。反応の進行をtlcによってチェックした。反応物を0.1NのHCl(10ml)でクエンチし、DCM層を分離し、10%のNaHCO
3(10ml)、水(10ml)およびブライン(10ml)で洗浄し、無水Na
2SO
4上で乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮することで、粗生成物(0.9g、RD-UT-1161-101)を得た。粗生成物をシリカゲル上で、ヘキサン中30~60%のEtOAcのグラジエント溶媒を使用して精製することで、純粋な生成物(アミドII)(0.396g、RD-UT-1161-101B)を得た。化合物を
1H NMRによって特徴付けた。
【0164】
ステップ2:グリコールアミドプロドラッグ(プロドラッグVII)の合成
【0165】
【化68】
磁気撹拌子が備えられている50mlの丸底フラスコに、エタノール(30.0ml)中のアミドII(250mg、0.465mmol)の溶液を投入した。反応混合物をアルゴンで3回脱気し、次いで5%のPd-C(75mg)を添加し、アルゴンをH
2と3回置き換えた。バルーンを使用して、反応混合物をH
2で加圧し、室温で放置した。反応混合物を1時間撹拌し、反応の進行をtlc(EtOAc)によってチェックした。反応混合物をセライトパッドに通過させ、セライトパッドをエタノール(50ml)で洗浄した。合わせたエタノール溶液を真空下で濃縮することで、生成物グリコールアミド(191mg、RD-UT-1161-121)を白色の泡として得た。化合物を
1H NMR、
13C NMR、IRおよびMSによって特徴付けた。HPLC純度は98.77%であり、遊離UT-15は観察されなかった。
【0166】
[実施例3]
トレプロスチニルのプロドラッグ:トレプロスチニルの側鎖およびシクロペンチルメチルカーボネートの合成
【0167】
【化69】
トレプロスチニルの側鎖メチルカーボネートプロドラッグ(左)およびトレプロスチニルのシクロペンチルメチルカーボネート(右)は、上記に表示されている。
【0168】
【0169】
スキーム3.トレプロスチニルの側鎖メチルカーボネート(6)の合成
【0170】
【0171】
スキーム4.トレプロスチニルのシクロペンチルメチルカーボネート(9)の合成
実験:
モノ-TES保護トレプロスチニルベンジルエステル(2および3)の合成
【0172】
【化72】
無水ジクロロメタン(100mL)中のトレプロスチニルベンジルエステル(1)(5.06g、10.53mmol)の溶液に、イミダゾール(0.72g、10.57mmol)および4-(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)(0.13g、1.06mmol)を室温で添加した。この透明な溶液に、滴下により、無水ジクロロメタン(30mL)中のクロロトリエチルシラン(1.59g、1.77mL、10.55mmol)の溶液を、1時間の期間をかけて室温でアルゴン下にて添加した。添加の完了後、反応混合物を4.5時間撹拌し、tlc(EtOAc/ヘキサン、1:4)によってチェックした。反応混合物を水(50mL)でクエンチし、ジクロロメタン層を分離した。ジクロロメタン層を水(1×50mL)、ブライン(1×20mL)で洗浄し、乾燥させ(Na
2SO
4)、濾過し、真空中で濃縮することで、薄黄色粘稠液体(6.95g)(ロット番号D-1166-160)が得られた。粗生成物をシリカゲル(265g)カラム上で、ヘキサン中の酢酸エチル(2~20%)を使用してクロマトグラフィーにかけることで、ジ-TES保護トレプロスチニルベンジルエステル(1.59g、ロット番号D-1166-160-A)、シクロペンチル-TES保護トレプロスチニルベンジルエステル(2)(2.95g、ロット番号D-1166-160-B)および側鎖-TES保護トレプロスチニルベンジルエステル(3)(0.55g、ロット番号D-1166-160-D)が得られた。モノ-TES保護化合物(2および3)の両方をスペクトルデータ(IR、
1H NMRおよびMS)によって特徴付けた。
【0173】
シクロペンチル-TES側鎖メチルカーボネートトレプロスチニルベンジルエステル(4)の合成
【0174】
【化73】
無水ピリジン(4.0mL)中のシクロペンチル-TES保護トレプロスチニルベンジルエステル(2)(0.84g、1.41mmol)の溶液に、無水ジクロロメタン(4.0mL)中のクロロギ酸メチル(1.33g、1.09mL、14.1mmol)の溶液を、0℃から5℃で5分の期間をかけてアルゴン下にて滴下添加した。添加の完了後、反応混合物を0℃から室温で終夜撹拌した。20時間後、反応混合物をtlc(EtOAc/ヘキサン、1:4)によってチェックしたところ、反応は完了していた。混合物を水(20mL)で処理し、次いでジクロロメタン(3×25mL)で抽出した。合わせたジクロロメタン抽出物を水(1×20mL)、ブライン(1x10mL)で洗浄し、乾燥させ(Na
2SO
4)、濾過し、真空中で濃縮することで、粗生成物が薄ピンク色の粘稠液体(0.88g)(ロット番号D-1166-189)として得られた。粗生成物をシリカゲル(35g)カラム上で、ヘキサン中の酢酸エチル(2~10%)を使用してクロマトグラフィーにかけることで、シクロペンチル-TES側鎖メチルカーボネートトレプロスチニルベンジルエステル(4)が淡黄色の粘稠液体(0.69g)(ロット番号D-1166-189-B)として得られた。純粋な化合物をスペクトルデータ(IR、
1H NMR、
13C NMRおよびMS)によって、および純度(94.58%、AUC)をHPLCによって特徴付けた。
【0175】
側鎖メチルカーボネートトレプロスチニルベンジルエステル(5)の合成
【0176】
【化74】
テトラヒドロフラン(10mL)および水(2mL)の混合物(THF:H
2Oの比=5:1)中のシクロペンチル-TES側鎖メチルカーボネートトレプロスチニルベンジルエステル(4)(0.307g、0.470mmol)の溶液に、1Nの塩酸(0.71mL、0.71mmol)を室温で添加した。反応混合物を室温で30分間撹拌し、tlc(EtOAc/ヘキサン、3:7)によってチェックした。反応は完了しており、混合物を飽和重炭酸ナトリウム(1mL)でpH7~8に中和し、次いで水(10mL)で希釈した。混合物をMTBE(3×15mL)で抽出した。合わせたMTBE抽出物を水(2×10mL)、ブライン(1×10mL)で洗浄し、乾燥させ(Na
2SO
4)、濾過し、真空中で濃縮することで、透明な粘稠液体(0.37g)(ロット番号D-1166-203)が得られた。他の反応からの粗生成物(0.031g)(ロット番号D-1166-201)を、このロットと、精製のために合わせた。合わせた粗生成物をシリカゲル(16g)カラム上で、ヘキサン中の酢酸エチル(5~30%)を使用してクロマトグラフィーにかけることで、側鎖メチルカーボネートトレプロスチニルベンジルエステル(5)が透明な粘稠液体(0.252g)(ロット番号D-1166-203-B)として得られた。純粋な化合物をスペクトルデータ(IR、
1H NMR、
13C NMRおよびMS)によって、および純度(99.83%、AUC)をHPLCによって特徴付けた。
【0177】
トレプロスチニルの側鎖メチルカーボネート(6)の合成
【0178】
【化75】
酢酸エチル(10mL)中の側鎖メチルカーボネートトレプロスチニルベンジルエステル(5)(0.23g、0.427mmol)の溶液に、炭素上のパラジウム(5wt%、50%湿った)(0.12g)を添加した。混合物を撹拌し、ハウスバキューム下で脱気し、水素(バルーン中に充填された)によって置き換えた。プロセスを3回反復した。混合物を室温で水素の雰囲気下で2時間撹拌し、tlc(EtOAc/ヘキサン、3:7およびEtOAc、100%)によってチェックした。反応は完了していた。反応混合物をセライト(1.0g)で処理し、次いでWhatmanフィルター50番付きの使い捨てポリエチレンフリットにおいてセライトのパッド(2.0g)に通して濾過し、固体を酢酸エチル(3×10mL)で洗浄した。合わせた酢酸エチル濾液を真空中で蒸発させることで、トレプロスチニルの側鎖メチルカーボネート(6)が灰白色の泡沫状固体(0.188g)(ロット番号D-1166-206)として得られた。化合物を完全にスペクトルデータ(IR、
1H NMR、
13C NMRおよびMS)によって、および純度(99.64%、AUC)をHPLCによって特徴付けた。
【0179】
側鎖-TESシクロペンチルメチルカーボネートトレプロスチニルベンジルエステル(7)の合成
【0180】
【化76】
無水ピリジン(2.0mL)中の側鎖-TES保護トレプロスチニルベンジルエステル(3)(0.28g、0.47mmol)の溶液に、滴下により、無水ジクロロメタン(2.0mL)中のクロロギ酸メチル(0.44g、0.36mL、4.66mmol)の溶液を、0℃から5℃で5分の期間をかけてアルゴン下にて添加した。添加の完了後、反応混合物を0℃から室温で終夜撹拌した。17時間後、反応混合物をtlc(EtOAc/ヘキサン、1:4)によってチェックしたところ、反応は完了していた。混合物を水(10mL)およびMTBE(15mL)で処理した。有機層を分離し、水(2×15mL)、5%のクエン酸(2×10mL)、水(1×10mL)、ブライン(1×5mL)で洗浄し、乾燥させ(Na
2SO
4)、濾過し、真空中で濃縮することで、側鎖-TESシクロペンチルメチルカーボネートトレプロスチニルベンジルエステル(7)が淡黄色の粘稠液体(0.285g)(ロット番号D-1166-187)として得られた。化合物をスペクトルデータ(IR、
1H NMR、
13C NMRおよびMS)によっておよび純度(74.27%、AUC)をHPLCによって特徴付けた。
【0181】
シクロペンチルメチルカーボネートトレプロスチニルベンジルエステル(8)の合成
【0182】
【化77】
テトラヒドロフラン(10mL)および水(2mL)の混合物(THF:H
2Oの比=5:1)中の側鎖-TESシクロペンチルメチルカーボネートトレプロスチニルベンジルエステル(7)(0.27g、0.413mmol)の溶液に、1Nの塩酸(0.62mL、0.62mmol)を室温で添加した。反応混合物を室温で20分間撹拌し、tlc(EtOAc/ヘキサン、1:4および3:7)によってチェックした。反応は完了しており、混合物を飽和重炭酸ナトリウム(1mL)でpH7~8に中和し、次いで水(10mL)で希釈した。混合物をMTBE(3×15mL)で抽出した。合わせたMTBE抽出物を水(2×10mL)、ブライン(1x10mL)で洗浄し、乾燥させ(Na
2SO
4)、濾過し、真空中で濃縮することで、透明な粘稠液体(0.24g)(ロット番号D-1174-001)が得られた。粗生成物をシリカゲル(18g)カラム上で、ヘキサン中の酢酸エチル(5~30%)を使用してクロマトグラフィーにかけることで、シクロペンチルメチルカーボネートトレプロスチニルベンジルエステル(8)が透明な粘稠液体/白色の半固体(0.19g)(ロット番号D-1174-001-B)として得られた。純粋な化合物をスペクトルデータ(IR、
1H NMR、
13C NMRおよびMS)によって、および純度(98.45%、AUC)をHPLCによって特徴付けた。
【0183】
トレプロスチニルのシクロペンチルメチルカーボネート(9)の合成
【0184】
【化78】
酢酸エチル(10mL)中のシクロペンチルメチルカーボネートトレプロスチニルベンジルエステル(8)(0.16g、0.297mmol)の溶液に、炭素上のパラジウム(5wt%、50%湿った)(0.08g)を添加した。混合物を撹拌し、ハウスバキューム下で脱気し、水素(バルーン中に充填された)によって置き換えた。プロセスを3回反復した。混合物を室温で水素の雰囲気下で2時間撹拌し、tlc(EtOAc/ヘキサン、3:7およびEtOAc、100%)によってチェックした。反応は完了していた。反応混合物をセライト(1.0g)で処理し、次いでWhatmanフィルター50番付きの使い捨てポリエチレンフリットにおいてセライトのパッド(2.0g)に通して濾過し、固体を酢酸エチル(3×10mL)で洗浄した。合わせた酢酸エチル濾液を真空中で蒸発させることで、トレプロスチニルのシクロペンチルメチルカーボネート(9)が白色の粘稠液体/半固体(0.138g)(ロット番号D-1174-004)として得られた。化合物を完全にスペクトルデータ(IR、
1H NMR、
13C NMRおよびMS)によって、および純度(98.97%、AUC)をHPLCによって特徴付けた。
【0185】
[実施例4]
トレプロスチニルおよびそれのプロドラッグのインビトロ受容体活性
プロドラッグI、II、III、IV、VIIおよびIX(構造については、
図7および
図39を参照されたい)ならびにトレプロスチニルを、3つのGタンパク質共役型受容体(GPCR)、すなわちDP1、EP2およびIPについて、サイクリンアデノシン一リン酸(cAMP)アッセイを使用して試験した。
【0186】
材料。細胞および対照アゴニスト:研究において使用された細胞および対照アゴニストは、表1に要約されている。
【0187】
【0188】
化合物は粉末形態で提供された。化合物をDMSO中にて10mMの濃度で再構成した。
【0189】
環状AMPアッセイキット:HTRF cAMP HiRange Kit(CisBio、Cat番号62AM6PEC)。
【0190】
機器:FlexStation III(Molecular Devices)。
【0191】
方法
環状AMP(cAMP)アッセイ:CisBioのHTRF cAMP HiRange Kitを使用して、製造者のプロトコールに従って、cAMPアッセイを行った。アゴニストモードにおけるGs経路アッセイのため、細胞を化合物で384ウェルプレート中にて20分間37℃でインキュベートした。溶解緩衝液におけるD2標識化cAMPおよびクリプテート標識化抗cAMP抗体を逐次添加することによって、反応を停止させた。プレートを次いで、室温で60分間インキュベートした後に、FlexStation III(Molecular Devices)上にて、314nmで励起とともに、620nmおよび668nmで蛍光発光を読み取った。
【0192】
データ分析
環状AMP(cAMP)アッセイ:環状AMPアッセイ結果は、「比668/620×10,000」(668nmおよび620nm×10,000での蛍光の比)として示される。グラフにおけるデータは、平均±SDで表されている。GraphPad Prismバージョン4、5または6(Graphpad Prism)を使用して、可変勾配を可能にするS字形の用量応答曲線と、用量依存性応答をフィットさせた。
【0193】
結果
全ての化合物および対照アゴニストは、DP1、EP2およびIP1受容体発現細胞において用量応答活性を呈した。用量依存性応答から決定されたEC50(最大半量応答を与える薬物濃度)値は、表2に表示されている。
【0194】
【0195】
表2におけるデータは、研究されたプロドラッグの各々が、DP1、EP2およびIP1に対してトレプロスチニルよりも有意に強力でなかったことを実証している。本発明はそれの操作の理論によって限定されないが、トレプロスチニルの皮下投与中に観察された部位疼痛は、皮下組織におけるIP受容体、DP受容体およびEP受容体のうちの1つまたは複数に影響するトレプロスチニルによるものであり得る。研究されたプロドラッグは、IP受容体、DP受容体およびEP受容体の各々に対してトレプロスチニルよりも強力でないので、これらのプロドラッグは、皮下投与された場合、部位疼痛をより少なく引き起こし得る。
【0196】
[実施例5]
ヒトGタンパク質共役型受容体に対するプロドラッグXVの評価
プロドラッグXV(構造については、
図10を参照されたい)ならびにトレプロスチニルを、3つのGタンパク質共役型受容体(GPCR)、すなわちDP1、EP2およびIPについて、環状アデノシン一リン酸(cAMP)アッセイを使用して試験した。
【0197】
材料。細胞および対照アゴニスト:研究において使用された細胞および対照アゴニストは、表1に要約されている。
【0198】
提供された化合物は、粉末形態の2種の化合物であった。化合物をDMSO中にて10mMの濃度で再構成した。
【0199】
環状AMPアッセイキット:Multiscreen(商標)TR-FRET cAMP 1.0 No Wash Assay Kit(Multispan、Inc.、Cat番号MSCM01-25)およびHTRF cAMP HiRange Kit(CisBio、Cat番号62AM6PEC)。機器:FlexStation III(Molecular Devices)。
【0200】
方法
環状AMP(cAMP)アッセイ:Multiscreen(商標)TR-FRET cAMP 1.0 No Wash Assay KitまたはHTRF cAMP HiRange Kitを使用して、製造者のプロトコールに従って、cAMPアッセイを行った。アゴニストモード試験のため、細胞をカスタマー化合物で5分間室温でプレインキュベートした後にフォルスコリンを添加し、プレートを次いで37℃で20分間インキュベートした。溶解緩衝液におけるtrFluor(商標)Eu標識化cAMPおよびtrFluor(商標)650標識化抗cAMP抗体またはD2標識化cAMPおよびクリプテート標識化抗cAMP抗体を逐次添加することによって、反応を停止させた。プレートを次いで室温で60分間インキュベートした後に、FlexStation III(Molecular Devices)上にて、314nmで励起とともに、620nmおよび665nmまたは668nmで蛍光発光を読み取った。
【0201】
データ分析:
環状AMP(cAMP)アッセイ:環状AMPアッセイ結果は、「比665/620×10,000」(665nmおよび620nm×10,000での蛍光の比)または「比668/620×10,000」(668nmおよび620nm×10,000での蛍光の比)として示される。グラフにおけるデータを平均±SDとして表した。GraphPad Prismバージョン4、5または6(Graphpad Prism)を使用して、可変勾配を可能にするS字形の用量応答曲線と、用量依存性応答をフィットさせた。
【0202】
結果および考察
全ての3つのGPCRに関する対照アゴニストは、予想EC50b(最大半量応答を与える薬物濃度)値で受容体発現細胞において用量依存性刺激を示した。全ての化合物および対照アゴニストは、DP1、EP2およびIP1受容体発現細胞において用量応答活性を呈した。用量依存性応答から決定されたEC50値は、表3に表示されている。
【0203】
【0204】
結論
表3におけるデータは、プロドラッグXVが、DP1、EP2およびIP1に対してトレプロスチニルよりも有意に強力でなかったことを実証している。本発明はそれの操作の理論によって限定されないが、トレプロスチニルの皮下投与中に観察された部位疼痛は、皮下組織におけるIP受容体、DP受容体およびEP受容体のうちの1つまたは複数に影響するトレプロスチニルによるものであり得る。プロドラッグXVは、IP受容体、DP受容体およびEP受容体の各々に対してトレプロスチニルよりも強力でないので、それは、皮下投与された場合、部位疼痛をより少なく引き起こし得る。
【0205】
[実施例6]
ヒトGタンパク質共役型受容体に対するプロドラッグXIVの評価
トレプロスチニルプロドラッグXIV(構造については、
図10を参照されたい)ならびにトレプロスチニルを、3つのGタンパク質共役型受容体(GPCR)、すなわちDP1、EP2およびIPについて、サイクリンアデノシン一リン酸(cAMP)アッセイを使用して試験した。
【0206】
材料。細胞および対照アゴニスト:研究において使用された細胞および対照アゴニストは、表1に要約されている。
【0207】
提供された化合物は、粉末形態の2種の化合物であった。化合物をDMSO中にて10mMの濃度で再構成した。
【0208】
環状AMPアッセイキット:Multiscreen(商標)TR-FRET cAMP 1.0 No Wash Assay Kit(Multispan、Inc.、Cat番号MSCM01-25)およびHTRF cAMP HiRange Kit(CisBio、Cat番号62AM6PEC)。機器:FlexStation III(Molecular Devices)。
【0209】
方法
環状AMP(cAMP)アッセイ:Multiscreen(商標)TR-FRET cAMP 1.0 No Wash Assay KitまたはHTRF cAMP HiRange Kitを使用して、製造者のプロトコールに従って、cAMPアッセイを行った。アゴニストモード試験のため、細胞をカスタマー化合物で5分間室温でプレインキュベートした後にフォルスコリンを添加し、プレートを次いで37℃で20分間インキュベートした。溶解緩衝液におけるtrFluor(商標)Eu標識化cAMPおよびtrFluor(商標)650標識化抗cAMP抗体またはD2標識化cAMPおよびクリプテート標識化抗cAMP抗体を逐次添加することによって、反応を停止させた。プレートを次いで室温で60分間インキュベートした後に、FlexStation III(Molecular Devices)上にて、314nmで励起とともに、620nmおよび665nmまたは668nmで蛍光発光を読み取った。
【0210】
データ分析:
環状AMP(cAMP)アッセイ:環状AMPアッセイ結果は、「比665/620×10,000」(665nmおよび620nm×10,000での蛍光の比)または「比668/620×10,000」(668nmおよび620nm×10,000での蛍光の比)として示される。グラフにおけるデータを平均±SDで表した。GraphPad Prismバージョン4、5または6(Graphpad Prism)を使用して、可変勾配を可能にするS字形の用量応答曲線と、用量依存性応答をフィットさせた。
【0211】
結果および考察
全ての3つのGPCRに関する対照アゴニストは、予想EC50(最大半量応答を与える薬物濃度)値で受容体発現細胞において用量依存性刺激を示した。全ての化合物および対照アゴニストは、DP1、EP2およびIP1受容体発現細胞において用量応答活性を呈した。用量依存性応答から決定されたEC50値は、表4に表示されている。
【0212】
【0213】
結論
表4におけるデータは、プロドラッグXIVが、DP1、EP2およびIP1に対してトレプロスチニルよりも有意に強力でなかったことを実証している。本発明はそれの操作の理論によって限定されないが、トレプロスチニルの皮下投与中に観察された部位疼痛は、皮下組織におけるIP受容体、DP受容体およびEP受容体のうちの1つまたは複数に影響するトレプロスチニルによるものであり得る。プロドラッグXIVは、IP受容体、DP受容体およびEP受容体の各々に対してトレプロスチニルよりも強力でないので、それは、皮下投与された場合、部位疼痛をより少なく引き起こし得る。
【0214】
[実施例7]
選択されたビヒクルにおけるトレプロスチニルの8つのプロドラッグについてのHPLC分析方法の開発ならびに平衡溶解度および溶液安定性の決定
【0215】
1.目的および要約
この研究の目的は、トレプロスチニルの複数のプロドラッグの分析に適当な分析方法を開発すること、および選択されたビヒクル(125mMの塩化ナトリウムとともに20mMの二塩基性リン酸ナトリウム)における8つのプロドラッグの平衡溶解度および溶液安定性を決定することであった。
【0216】
プロドラッグIII、IV、VIII、X、XI、XII、XIIIおよびXIVを含めて、トレプロスチニルの8つのプロドラッグを、この研究のために使用した。プロドラッグVIIのために前に開発された分析方法を、特異性を改善するための方法パラメータの微修正後に、他のプロドラッグのために利用した。適切な特異性を達成してすぐに、平衡溶解度研究を各プロドラッグについて行った。溶解度研究を複数の時点にわたって評価することで、選択されたビヒクルにおけるプロドラッグの溶液安定性を判定した。
【0217】
2.実験
2.1装置
フォトダイオードアレイ検出器(PDA)が備えられているWaters UPLC H-Classシステム上で、全ての研究を行った。評価された全てのカラムは、2.1×100mm、1.7μmであった。
【0218】
2.2方法条件の開発
2.2.1プロドラッグVII方法条件の評価
トレプロスチニルプロドラッグVIIのための前に開発された分析方法は、プロドラッグIII、IV、VIII、X、XI、XII、XIIIおよびXIVのクロマトグラフィー特異性のための条件を開発するための出発点であった。プロドラッグVII方法条件は、表5に提供されている。
【0219】
【0220】
特異性研究の目標は、トレプロスチニルから各プロドラッグを分割する単一のクロマトグラフィー条件を達成することである。各プロドラッグを個々に調製し、次いで、10%の公称トレプロスチニルで別々にスパイクすることで、特異性を評価した。プロドラッグVII分析方法によって分析されたプロドラッグおよびトレプロスチニルのクロマトグラフィーオーバーレイは、
図11に提供されている。
【0221】
プロドラッグVII方法を使用する特異性研究の結果は、トレプロスチニルが、共溶出するプロドラッグXIVを除く全てのプロドラッグからよく分離されることを示している。
【0222】
3つの追加のカラムをスクリーニングすることで、プロドラッグVII方法条件を使用してプロドラッグの特異性を評価した。Waters BEH C18カラム上のトレプロスチニルおよび8つのプロドラッグのクロマトグラフィーオーバーレイは、
図12に提供されている。ACE C18-ARカラム上のトレプロスチニルおよび8つのプロドラッグのクロマトグラフィーオーバーレイは、
図13に提供されている。Waters CSHフェニルヘキシルカラム上のトレプロスチニルおよび8つのプロドラッグのクロマトグラフィーオーバーレイは、
図14に提供されている。
【0223】
カラムスクリーニングの結果は、プロドラッグXIVを含めた全てのプロドラッグが、ACE Excel 2 C18-ARカラム上(Rs=2.8、結果ID2949)またはWaters CSHフェニルヘキシルカラム(Rs=2.9、結果ID3028)上のいずれかでトレプロスチニルから適切に分割され得ることを示した。分割はカラム間で本質的に同等であったが、CSHフェニルヘキシルカラムを平衡溶解度および溶液安定性の研究のために選択した。
【0224】
3.平衡溶解度および溶液安定性
3.1.研究デザイン
125mMの塩化ナトリウムとともに20mMの二塩基性リン酸ナトリウムを含有するビヒクル中に、各プロドラッグを溶解した。4mLの透明なガラスバイアル中へ15~30mgのプロドラッグを秤量し、適切な体積のビヒクル(0.5~1.0mL)中に溶解させて、公称飽和濃度の30mg/mLを達成することによって、プロドラッグを飽和濃度で調製した。溶液を23時間、回転ミキサー上で混合した。プロドラッグXIVを除く全ての溶液は、混合した後に固体を呈した。結果として生じた上澄み溶液を、15000RPMで15分間の遠心分離によって未溶解プロドラッグから単離した。上澄みを透明なガラスバイアルに移し、周囲温度で貯蔵した。溶解度および溶液安定性を評価するため、15μLの上澄みをマイクロバイアルに移すこと、ならびに210uLの希釈液(25:75のアセトニトリル:20mMのリン酸ナトリウムpH6.2)および100μLのアセトニトリルを添加することによって、上澄みを21.7倍に希釈した。結果として生じた試料をトレプロスチニルについてアッセイすることで、プロドラッグ濃度を決定した。各試験間隔(0時間、24時間、72時間)で、上澄みをプロドラッグ濃度および面積%による純度についてアッセイした。
【0225】
3.2.研究結果
3つの安定性試験間隔にわたる平衡溶解度研究の結果は、表6に要約されている。プロドラッグについての溶液安定性の結果は、表7および表8に要約されている。
【0226】
【0227】
【0228】
【0229】
3.3.考察
トレプロスチニルの8つのプロドラッグについての平衡溶解度研究は、選択されたビヒクルにおける化合物にわたる広範囲の溶解度を示している。プロドラッグXIIIは最少の溶解性(およそ3.5mg/mL)であり、プロドラッグNは最大の溶解性(およそ30mg/mL)であった。プロドラッグは、プロドラッグ純度および残留トレプロスチニルの両方の変化がほとんどないから全くなく、ビヒクルにおいて最大72時間まで安定であると実証された。プロドラッグXIVは、評価された全てのプロドラッグにわたってビヒクルにおける最も大きいトレプロスチニル形成を示したが、しかしながら、このプロドラッグについては72時間かけて、0.15%のみ形成された。
【0230】
4.結論
UPLC-UVによるトレプロスチニルの8つのプロドラッグの評価にため、分析方法を開発した。プロドラッグVII方法条件を方法最適化微修正のための出発点として使用することで、カラム化学を変化させた(ACE Excel 2 C18の代わりにWaters CSHフェニルヘキシル)。トレプロスチニルから適切に各プロドラッグを分割するために、変化を必要とした。平衡溶解度研究は、8種の化合物にわたって、選択されたビヒクルにおけるプロドラッグについて広範囲の溶解度を示した。8つのプロドラッグのうち6つは、6~13mg/mLの間のビヒクルにおける溶解度を有していた一方で、1つの低溶解度プロドラッグが観察され(プロドラッグM、およそ3.5mg/mL)、1つの高溶解度プロドラッグが観察された(プロドラッグN、およそ30mg/mL)。示された全てのプロドラッグは、トレプロスチニルの最小形成および面積%純度の軽微な変化に基づき、ビヒクルにおいて最大72時間まで安定であった。
【0231】
[実施例8]
目的および要約
この研究の目的は、ヒト、ビーグル犬およびスプラーグドーリーラットの肝臓ミクロソームにおける9つのプロドラッグ(III、IV、VII、VIII、X、XI、XII、XIIIおよびXIV)ならびにカニクイザル肝臓ミクロソームにおける4つのプロドラッグ(III、IV、VIIおよびXIV)のインビトロ代謝安定性を決定することであった。別の目標は、時間経過にわたる親化合物(トレプロスチニル)の放出を研究することであった。
【0232】
試験品を肝臓ミクロソームでNADPHの存在下および非存在下でインキュベートした。選択された時点で、インキュベーション反応物のアリコートを除去し、クエンチし、液体クロマトグラフィータンデム質量分光分析法(LC-MS/MS)を使用して分析した。プロドラッグ濃度およびトレプロスチニル濃度の両方を決定し、プロドラッグの半減期を算出した。
【0233】
プロドラッグの半減期は
図15に作表されている。試験持続期間(120分)の3倍よりも長い半減期は、「>360」として報告されている。
【0234】
材料
SigmaFAST(商標)プロテアーゼ阻害剤カクテル錠(Sigma-Aldrich P/N:S8830);HPLC水(Fisher);アセトニトリル、HPLCグレード、(Fisher);ギ酸、Optima LCMSグレード、(Fisher P/N:A117);ジメチルスルホキシド(Fisher P/N D159-4);ヒト肝臓ミクロソーム、性別混合、50のプール(XenoTech P/N:H0610);イヌ肝臓ミクロソーム、ビーグル、雄、8のプール(XenoTech P/N:D1000);ラット肝臓ミクロソーム、スプラーグドーリー、雄、500のプール(XenoTech P/N:R1000);サル肝臓ミクロソーム、カニクイザル、雄、12のプール(XenoTech P/N:P2000;ロット番号1110090);マトリックス管、1.4ml(Fisher P/N 50823825);マトリックス管ラック(Fisher P/N 50823921);マトリックス管のためのセプラシールキャップ(Fisher P/N NC9995413)
【0235】
装置
AB SCIEX API 4000(商標)LC-MS/MSシステム;Agilent 1100二成分HPLCポンプ、モデルG1312A;冷スタックが備えられているLeap HTS PALオートサンプラー;Ascentis Express(登録商標)フェニルヘキシル 2.7μmカラム、100mm×3mm(Sigma-Aldrich P/N:53345-U);Ascentis Express(登録商標)フェニル-ヘキシル 2.7μmガードカートリッジ、5mm×3mm(Sigma-Aldrich P/N:53526-U);Ascentis Express(登録商標)ガードカートリッジホルダー、(Sigma-Aldrich P/N:53500-U);Aquasil C18 Dash HTSカラム、5μm、20×2.1mm(Thermo P/N:77505-022150);Beckman Allegra 25R遠心分離機(P/N 36934);Raininピペット:0.2~2μL、2~20μL、10~100μL、20~200μL、および100~1000μL;リピータ(Eppendorf);Raininマルチチャネルピペット:1~20μL、20~200μL、および100~1000μL
【0236】
インキュベーション
プロドラッグIII、IV、VII、VIII、X、XI、XII、XIIIおよびXIVの投薬用溶液を20mMの二塩基性リン酸カリウム中で作製した。プロドラッグの濃度は5mMであった。
【0237】
肝臓ミクロソーム(Xenotech)を以下の構成物を有する緩衝液中に0.5mg/mLの最終タンパク質(酵素)濃度に希釈した:100mMのリン酸カリウム(pH7.4)、5mMの塩化マグネシウム(MgCl2)、および1mMのβ-ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド2’-ホスフェート(NADPH)。ミクロソーム溶液をガラス管にアリコートし、37℃で約3分間インキュベートした。各化合物のアリコートを、予備加温されたミクロソーム溶液に50倍で希釈し、混合することで、反応を開始した。インキュベーション溶液中のプロドラッグの最終濃度は100μMであった。
【0238】
第1のアッセイにおいて、全ての9つのプロドラッグ(III、IV、VII、IX、X、XI、XII、XIIIおよびXIV)を、ヒト、ビーグル犬およびスプラーグドーリーラットの肝臓ミクロソームにおいて試験した。第2のアッセイにおいて、4つのプロドラッグ(III、IV、VIIおよびXIV)を、カニクイザル肝臓ミクロソームにおいて試験した。
【0239】
試験化合物に加えて、3つの品質対照化合物(7-エトキシクマリン、プロプラノロールおよびベラパミル)を含むことで、ミクロソームが活性であることを確実にした。品質対照化合物ストック溶液を25%のメタノール中にて25μMで作製したが、最終インキュベーション溶液中の濃度は500nMであった。
【0240】
陰性対照も含まれており;これらの反応物は、NADPHを除く上記にリストされている構成成分の全てを含有していた。
【0241】
全ての試験をデュプリケートで行った。全てのレプリケートを別々の反応バイアルにおいて試験した。
【0242】
0分、15分、30分、60分および120分の時点は、上に記載されている+NADPH条件で評価したが、0分および120分の時点は、-NADPH条件で評価した。特定されている時点で、各反応物の100μLアリコートを反応物から除去し、深い96ウェルプレートにおける200μLの氷冷アセトニトリルに添加した。このステップは、LC/MS/MS分析のための調製において、反応物をクエンチすることおよびタンパク質を沈殿させることの両方を行った。時間経過が完了した時、プレートを密閉し、混合し、4500gおよび4℃で15分間遠心分離した。結果として得られた上澄み200μlを、分析までマトリックス管中にて-80℃で凍結した。
【0243】
生化学分析用調製手順
試験品
溶液調製。プロドラッグIII、IV、VII、IX、X、XI、XII、XIIIおよびXIV、ならびにトレプロスチニルの一次ストック溶液を90%のDMSO中で作製した。9つのプロドラッグストック溶液を合わせ、9-イン-1標準スパイクイン溶液および9-イン-1 QCスパイクイン溶液に系列希釈した。他方で、トレプロスチニルストック溶液をトレプロスチニル標準スパイクイン溶液およびQCスパイクイン溶液に系列希釈した。調製後、全ての溶液を4℃で貯蔵した。化合物がクロストークしないことを確実にするために、希釈QC(QC-dilu)を個々の化合物について試験した。プロドラッグおよびトレプロスチニルの個々の一次ストック溶液をQC-diluのためのスパイクイン溶液として使用した。
【0244】
ブランクマトリックス。肝臓ミクロソーム溶液(100mMのリン酸カリウム緩衝液pH7.4、5mMのMgCl2、0.5mg/mlの酵素、1mMのNADPH)を調製すること、続いて、沸騰水浴における5分間の熱不活性化によって、ブランクマトリックスを調製した。不明な試料を異なる種について別々に分析した。ブランクマトリックスの調製において使用された肝臓ミクロソームの種は、不明な試料と同じであり、例えば、ヒト試料のみの分析のためのブランクマトリックスを調製するために、ヒト肝臓ミクロソームを使用した。
【0245】
ブランク抽出物。2体積のアセトニトリルおよび1体積のブランクマトリックスを合わせることによって、ブランク抽出物を調製した。混合物を次いで4000gで遠心分離し、上澄みを採取した。
【0246】
標準的、QCおよび未希釈の不明な試料。タンパク質沈殿手順を使用して、試料を抽出した。5μlの標準的またはQC(QC-diluを含める)スパイクイン溶液を、深ウェルプレートにおいて95μlのブランクマトリックスにスパイクし、続いて、200μlのアセトニトリルを添加した。未希釈の不明な試料(室温で解凍され、よく混合された)を深ウェルプレートに添加し、続いて、200μlのアセトニトリルを添加した。標準的/QCおよび未希釈の試料プレートを次いで密閉し、混合し、5500gおよび4℃で15分間遠心分離した。100μlの上澄み(QC-diluを除外する)を100μlの内部標準作業溶液(ISWS、水中20ng/mlのd4-トレプロスチニル)と、最終マイクロタイタープレート上で合わせた。
【0247】
希釈QC追加ステップ。タンパク質沈殿および遠心分離後、10μlの上澄みを、90μlのブランク抽出物(10×希釈)が負荷された中間列に添加し、ピペットで混合し、次いで10μlの希釈試料を、90μlのブランク抽出物(別の10×希釈)が負荷された最終マイクロタイタープレート上の列に添加した。100μlのISWSを添加した。
【0248】
希釈された不明な試料。10μlの不明な試料を、90μlのブランク抽出物(10×希釈)が負荷された中間プレートに添加し、ピペットで混合し、次いで、10μlの希釈試料を、90μlのブランク抽出物(別の10×希釈)が負荷された最終マイクロタイタープレートに添加した。100μlのISWSを添加した。
【0249】
ダブルブランク。100μlのブランク抽出物を100μlの水と合わせた。
【0250】
全てのプレートを密閉し、混合し、5500gおよび4℃で5分間遠心分離し、LC-MS/MSの準備をした。
【0251】
品質対照化合物
不明な試料。全ての品質対照化合物試料を室温で解凍し、よく混合した。60μlの試料を、120μlの水および40μlのISWS(メタノール中50ng/mlのラベタロール)が負荷されたマイクロタイタープレートに添加した。
【0252】
ダブルブランク。60μlのブランク抽出物(試験品実行からのブランク抽出物を使用した)を、120μlの水および40μlのメタノールと合わせた。別々のダブルブランクを各種について作製した。
【0253】
プレートを密閉し、混合し、5000gおよび10℃で10分間遠心分離し、LC-MS/MSの準備をした。
【0254】
LC-MS/MS
LC-MS/MSシステムは、Leap HTS PALオートサンプラー、Agilent 1100シリーズ液体クロマトグラフィーポンプ、および三連四重極モードで操作されるSciex API4000質量分析計からなっていた。Ascentis Express(登録商標)フェニルヘキシルlカラム(2.7μm、100mm×3mm)またはAquasil C18 Dash HTSカラム(5μm、20×2.1mm)を、40℃で、移動相Aとして0.1%のギ酸および移動相Bとして無希釈アセトニトリルとともに使用した。
【0255】
質量分析計(MS)を負または正のTurbo IonSpray(商標)モードにて、多重反応モニタリング(MRM)で操作した。MSパラメータも付属書2に示されている。
【0256】
定量化
試験品
不明な試料中のプロドラッグおよびトレプロスチニルを定量化するため、全ての不明な試料を、別々のバッチにおいて9-イン-1プロドラッグおよびトレプロスチニルの較正曲線を用いて実行した。
【0257】
自動積分アルゴリズムを使用することで、クロマトグラフィーピークを積分した。積分が実行内の全ての標準、品質対照および試料について一貫していることを確実にするのに必要とされる場合のみ、積分を調整した。
【0258】
ピーク面積比を算出した(内部標準ピーク面積によって割られた分析物ピーク面積)。公称濃度と対比したピーク面積比の最小二乗フィッティングプロットを発生させることによって、標準曲線を創出した。最小二乗フィットの結果から、試料濃度を算出した。算出された試料濃度がLLOQ(定量化の下限)よりも低い場合、「BQL」(定量限界未満)が報告されている。
【0259】
許容基準:逆算精度は、全ての標準の少なくとも75%について、公称濃度の±20%内であるべきである。全ての品質対照試料の少なくとも3分の2の精度は、公称濃度の±20%内であるべきであり、各レベルで少なくとも50%は上記基準を満たさなければならない。最終曲線の相関係数は、≧0.99でなければならない。
【0260】
1/(x2)加重された二次回帰または線形回帰を使用した。逆算精度について許容基準を満たさない較正標準を除去した。
【0261】
代表的な試料の濃度を概算するため、試験注射を作製し、これを使用することで、希釈または未希釈試料がホルマールバッチに含まれるかどうかを決定した。未希釈試料または希釈試料のいずれかの算出濃度は、試験範囲内でなければならず;そうでなければ、LLOQ(定量化の下限)よりも低い濃度を有する試料をBQL(定量限界未満)として報告し、一方、ULOQ(定量化の上限)よりも高い濃度を有する試料を、より高い希釈係数で再試験した。
【0262】
品質対照化合物
時間ゼロでのピーク面積比を100%に設定し、残りの時点で残っているパーセントを算出した。時間と対比した、残っているパーセントのプロットを最終的に使用することで、各化合物についてt1/2値を算出した。
【0263】
動態分析
速度定数(k):k=-β
ここでβは、時間と対比して濃度の半対数プロットをフィットさせることから得られる勾配である。品質対照化合物について、濃度が利用可能でない場合、%の残りが代わりに使用される。
半減期(t1/2):
【0264】
【0265】
結果
試験品
プロドラッグの半減期は、表9に作表されている。
【0266】
品質対照化合物
品質対照化合物の半減期は、表9に作表されている。
【0267】
【0268】
品質対照化合物は、履歴データに匹敵するt1/2値を有しており、これらの試験において使用されたミクロソームが活性であることを示した。
【0269】
考察
より早期の水溶液安定性研究によると、全てのプロドラッグは、飽和濃度(3~30mg/ml)で、125mMのNaClとともに20mMの二塩基性リン酸ナトリウムにおいて安定である。その上、方法開発作業において、最も不安定なプロドラッグIII、IVおよびXIVは、1μMの低い濃度で、200mMのリン酸カリウム緩衝液(pH7.4)において安定であることも観察された。これらは、この研究におけるプロドラッグの代謝が化学的不安定性または水溶液不安定性によるものでないことを示唆している。
【0270】
一部の場合において、半減期は、NADPHの有無にかかわらず同様であることが観察された。これは、エステラーゼおよびアミダーゼなど一部のNADPH非依存性酵素が、プロドラッグの代謝に主に関与し得ることを示している。他の場合において、NADPHを用いる半減期が、NADPHを用いない半減期よりもずっと短かった場合、反応は、シトクロムP450酵素によって媒介(または一部媒介)された可能性が高い。
【0271】
結論
プロドラッグの安定性は種依存性であり、IV、IIIおよびXIVは全ての種にわたって最も安定でない。
【0272】
[実施例9]
ラット足底内注射モデルにおけるトレプロスチニルプロドラッグの評価
【0273】
1.要約:
合成プロスタサイクリン類似体のトレプロスチニルは、Remodulinの医薬活性成分である。トレプロスチニルの皮下投与は、注射の部位での疼痛を伴い、この研究の目的は、トレプロスチニルの代替プロドラッグを評価することで、ラット足疼痛モデルにおける疼痛応答を判定することであった。
【0274】
雄スプラーグドーリーラット(n=112)を8匹/群の14群に割り当てた。研究を2回のサイクルにおいて連日1サイクル当たり7群で実行した。各サイクルを、対照として働く生理食塩水群、PBS群、およびその上トレプロスチニルで、100μg/mLまたは1μg/mLの用量にて構成した。加えて、全てPBS中で製剤化された試験項目トレプロスチニル環カルバメート(プロドラッグI)、トレプロスチニル側鎖カルバメート(プロドラッグII)、トレプロスチニルアミド(プロドラッグVII)およびトレプロスチニルメチルエーテル(プロドラッグVIII)を、2つの用量(100μg/mLまたは1μg/mL、1サイクル当たり1つの用量)で試験した。
【0275】
動物に0.1mLの試験材料を肉球(足底内注射)への皮下注射によって時間ゼロで投与した。動物を引き続いて、機械的(von Freyフィラメント)および熱的刺激に対するそれらの応答について、注射の15分後および90分後に評価した。von Frey試験を、各動物について数分以内に直ちに続く熱的試験の前に行った。加えて、注射に対する動物の反応の臨床観察のスコア化を行った。
図16は、研究デザインをスキーム的に例示している。
【0276】
1.1 von Frey試験を使用する機械的疼痛感受性の測定(
図17および
図18):
動物の引っ込め力閾値を測定するvon Frey試験を使用して、機械的疼痛感受性を試験した。加えられた力が低いほど、刺激に対する感受性がより大きいことを表す。von Frey試験を試験項目注射の15分後および90分後に行った。
【0277】
1μg/mLまたは100μg/mLの用量にてトレプロスチニルで処置された動物は、注射後15分および90分で、低減された引っ込め力閾値(より高い感受性)を有していた。この増加された感受性は、PBS処置群よりも統計的に有意に大きかった(p<0.05)。
【0278】
両用量にてトレプロスチニル側鎖カルバメート(プロドラッグII)またはトレプロスチニルメチルエーテル(プロドラッグVIII)で処置された動物は、注射後の両時点でPBS処置群と比較した場合、統計的に有意な差異を示さなかった。
【0279】
1μg/mLの用量にてトレプロスチニル環カルバメート(プロドラッグI)で処置された動物は、注射後の両時点でPBS処置群と比較した場合、統計的に有意な差異を示さなかった。100μg/mLのトレプロスチニル環カルバメート(プロドラッグI)で処置された動物は、注射後15分でPBS処置群と比較した場合、統計的に有意な差異を示さなかったが;しかしながら、注射後90分でPBS処置群と比較した場合、感受性の統計的に有意な増加が観察された。
【0280】
1μg/mLの用量にてトレプロスチニルアミド(プロドラッグVII)で処置された動物は、注射後の両時点でPBS群と比較した場合、統計的に有意な差異を示さなかった。100μg/mLの用量にてトレプロスチニルアミド(プロドラッグVII)で処置された動物は、注射後の両時点でPBS処置群と比較した場合、感受性の統計的に有意な増加を有していた。
【0281】
1.2熱痛感受性の測定(
図19および
図20):
熱痛刺激に対する動物の感受性を、von Frey試験に続いて直ちに判定した。熱源からの右注射脚の引っ込めまでの時間を測定し、応答の時間が低い(速い)ほど、刺激に対する感受性がより大きいことを表す。試験を試験項目注射の15分後および90分後に行った。
【0282】
1μg/mLまたは100μg/mLの用量にてトレプロスチニルで処置された動物は、投与後15分でPBS処置群と比較した場合、統計的に有意により速い足引っ込め時間(増加された感受性)を有していた(p<0.05)。
【0283】
両用量にて全てのプロドラッグで処置された動物は、PBS群と比較した場合、熱的刺激に対する応答において統計的に有意な差異を示さなかった。しかしながら、100μg/mLの用量にてプロドラッグトレプロスチニルアミド(プロドラッグVII)で、または両用量にてプロドラッグトレプロスチニルメチルエーテル(プロドラッグVIII)で処置された動物は、両時点でPBS群と比較して、応答の時間の低減に向かう傾向を示したが、統計的有意性はなかった。
【0284】
1.3臨床観察のスコア(
図21および
図22):
発赤、腫脹および足配置を判定することによって、臨床観察のスコアを割り当てた。
【0285】
1μg/mLまたは100μg/mLの用量にてトレプロスチニルを用いる処置は、PBS処置群と比較した場合、注射後15分および90分での臨床スコアの統計的に有意な増加という結果になった(p<0.05)。
【0286】
1μg/mLの用量にて全てのプロドラッグを用いる処置は、両時点で、PBS群と同様の、臨床スコアを示さなかった。100μg/mLの用量にてプロドラッグのトレプロスチニル側鎖カルバメート(プロドラッグII)またはトレプロスチニルメチルエーテル(プロドラッグVIII)で処置された動物は、両時点でPBS群と統計的に有意に異なってはいなかった。100μg/mLの用量にてプロドラッグトレプロスチニル環カルバメート(プロドラッグI)で処置された動物は、注射後90分でPBS群と比較した場合、臨床スコアの統計的に有意な増加を示した。100μg/mLの用量にてプロドラッグトレプロスチニルアミド(プロドラッグVII)で処置された動物は、注射後の両時点でPBS群と比較した場合、臨床スコアの統計的に有意な増加を示した。
【0287】
2.結論:
この研究の条件下で得られるとともに生存中データに限られる所見を考慮すると、トレプロスチニルの代替プロドラッグの投与は、トレプロスチニルの同様の用量と比較した場合、疼痛応答の低減を示したが、一部の差異は、個々のプロドラッグおよび異なる試験の間で認められなかった。
【0288】
例えば、トレプロスチニル側鎖カルバメート(プロドラッグII)またはトレプロスチニルメチルエーテル(プロドラッグVIII)は、両用量にておよび両時点で、一般に、トレプロスチニルの同様の用量と比較した場合、機械的刺激に対する動物の感受性の統計的に有意な低減および臨床スコアの低減と関連した。
【0289】
他方、プロドラッグのトレプロスチニル環カルバメート(プロドラッグI)およびトレプロスチニルアミド(プロドラッグVII)は一般に、トレプロスチニルの同様の用量と比較した場合、注射後の両時点で1μg/mLの用量についてのみ、機械的刺激に対する動物の感受性の低減および臨床スコアの低減と関連した。
【0290】
加えて、全てのプロドラッグは、トレプロスチニルの同様の用量と比較した場合、両用量にておよび注射後の両時点で、熱的刺激に対する感受性の低減を示した。
【0291】
[実施例10]
ラット足底内注射モデルにおけるトレプロスチニルプロドラッグの評価
1.要約:
【0292】
合成プロスタサイクリン類似体のトレプロスチニルは、Remodulinの医薬活性成分である。トレプロスチニルの皮下投与は、注射の部位での疼痛を伴い、この研究の目的は、トレプロスチニルの代替プロドラッグを評価することで、ラット足疼痛モデルにおける疼痛応答を判定することであった。
【0293】
雄スプラーグドーリーラット(n=56)を、1群当たり8匹の動物の7群に割り当てた。動物を、100μg/mLまたは1μg/mLの用量にてトレプロスチニルで、または両用量にて試験項目プロドラッグVIIおよびプロドラッグXVで処置した。各群を、対照として働いたリン酸緩衝液(pH=7.4で50mMの塩化ナトリウムを用いる50mMのリン酸緩衝液)処置群と比較した(群1)。
【0294】
動物に0.1mLの試験材料を肉球(足底内注射)への皮下注射によって時間ゼロで投与した。次いで、動物を引き続いて、機械的(von Freyフィラメント)および熱的刺激に対するそれらの応答について、注射の15分後および90分後に評価した。von Frey試験を、各動物について数分以内に直ちに続く熱的試験の前に行った。加えて、注射に対する動物の反応の臨床観察のスコア化を行った。研究デザインは、
図23においてスキーム的に例示されている。
【0295】
1.1 von Frey試験を使用する機械的疼痛感受性の測定(
図24):
動物の引っ込め力閾値を測定するvon Frey試験を使用して、機械的疼痛感受性を試験した。加えられた力が低いほど、刺激に対する感受性がより大きいことを表す。von Frey試験を試験項目注射の15分後および90分後に行った。
【0296】
1μg/mLまたは100μg/mLの用量にてトレプロスチニルで処置された動物は、注射後15分および90分で、低減された引っ込め力閾値(より高い感受性)を有していた。この増加された感受性は、リン酸緩衝液群よりも統計的に有意に大きかった(それぞれ、p<0.001およびp<0.0001)。
【0297】
1μg/mLまたは100μg/mLの用量にてプロドラッグVIIまたはプロドラッグXVで処置された動物も、注射後15分および90分で、低減された引っ込め力閾値(より高い感受性)を示した。この増加された感受性は、リン酸緩衝液群よりも統計的に有意に大きかった(p<0.001またはp<0.0001)。引っ込め力閾値の差異は、トレプロスチニル処置群と比較した場合、試験項目処置群において見出されなかった。
【0298】
1.2熱痛感受性の測定(
図25):
熱痛刺激に対する動物の感受性を、von Frey試験に続いて直ちに判定した。熱源からの右注射脚の引っ込めまでの時間を測定し、応答の時間が低い(速い)ほど、刺激に対する感受性がより大きいことを表す。試験を試験項目注射の15分後および90分後に行った。
【0299】
1μg/mLまたは100μg/mLの用量にてトレプロスチニルで処置された動物は、投与の15分後に、リン酸緩衝液処置群と比較した場合、統計的に有意により速い足引っ込め時間(増加された感受性)を有していた(p<0.0001)。試験項目注射の90分後に、より高い用量のトレプロスチニル(100μg/mL;群2)で処置された動物のみが、ビヒクル(リン酸緩衝液)群と比較して、熱刺激に対して統計的に有意に増加された感受性を示した;p<0.05。
【0300】
100μg/mLの用量にてプロドラッグVIIで、または両用量(1μg/mLまたは100μg/mL)にてプロドラッグXVで処置された動物は、投与の15分後に、リン酸緩衝液処置群と比較した場合、統計的に有意により速い足引っ込め時間(増加された感受性)を有していた(p<0.01またはp<0.001またはp<0.0001)。
【0301】
興味深いことに、1μg/mLの用量にてプロドラッグVIIで処置された動物(群5)は、投与の15分後に、ベースラインと同様の応答時間を有していた。
【0302】
1.3臨床観察のスコア(
図26):
発赤、腫脹および足配置を判定することによって、臨床観察のスコアを割り当てた。
【0303】
1μg/mLの用量にてプロドラッグVIIで処置した群5における動物を除いて、全ての処置動物は、リン酸緩衝液処置群と比較した場合、注射の15分後に、臨床スコアの統計的に有意な増加を示した(p<0.0001)。90分時点で、両用量にてトレプロスチニルで処置された動物およびより高い用量(100μg/mL)にて両試験項目で処置された動物のみが、同じ効果を示した(p<0.0001)。
【0304】
2.結論:
この研究の条件下で得られるとともに生存中データに限られる所見を考慮すると、トレプロスチニルの代替プロドラッグの投与は、トレプロスチニルの同様の用量と比較した場合、疼痛応答を低減することに有意な効果を示さなかった。しかしながら、1μg/mLの用量にて試験項目プロドラッグVIIを用いる処置は、投与後の両時点で、熱的刺激に対する感受性の低減およびより低い値の臨床スコアという結果になったことを記述する価値がある。
【0305】
[実施例11]
ラット足底内注射モデルにおけるトレプロスチニルプロドラッグの評価
研究デザインは、
図16においてスキーム的に例示されている。
図27および
図28は、それぞれサイクル1および2のVon Frey応答試験についての結果を表示している。
図29および
図30は、それぞれサイクル1および2の熱的応答試験についての結果を表示している。
図31および
図32は、それぞれサイクル1および2についての平均臨床スコアを表示している。
【0306】
[実施例12]
プロドラッグVIIおよびトレプロスチニル:スプラーグドーリーラットへの皮下注射に続く心血管判定
【0307】
1.目的
この研究の目的は、ラジオテレメトリー伝達物質が装着された意識のあるCrl:CD(SD)ラットにおける皮下注射に続き、心拍数、血圧(収縮期、拡張期および平均)および体温に対するプロドラッグVIIまたはトレプロスチニル(プロスタサイクリン類似体)の潜在的な急性効果を判定することであった。
【0308】
2.方法論
ビヒクル(リン酸緩衝生理食塩水[PBS]1X)中のトレプロスチニルまたはビヒクル(125mMの塩化ナトリウムを用いる20mMのリン酸緩衝液)中のプロドラッグVIIを、皮下注射を介する単回用量として、4匹の雄スプラーグドーリーラット/群の9群(群1から群9まで)に、用量漸増デザイン(増減手順)に従って投与した。研究デザインは、表10に示されている。
【0309】
【0310】
心拍数、動脈血圧(収縮期、拡張期および平均動脈圧)、脈圧および体温を、トレプロスチニルまたはプロドラッグVIIの投与前に少なくとも2時間連続して、および投薬後少なくとも24時間連続して収集した。投薬の前およそ6時間で、投薬の完了時に、および投薬後およそ4時間で、臨床観察を行った。
【0311】
3.結果
3.1.臨床観察
0.1mg/kgおよび0.3mg/kgのトレプロスチニルの投与に続いて、紅潮した四肢の臨床観察が、一部の動物において投薬後およそ4時間で認められた。紅潮した体および/または四肢、立毛、機能低下、赤くなった前肢および/または後肢、泌尿生殖器部域および腹側体幹上の湿った黄色の物質、ならびに鼻の周辺の乾燥した赤色の物質の臨床観察が、一部の動物において、3mg/kg、10mg/kgまたは30mg/kgのプロドラッグVIIの投与に続いておよそ4時間で認められた。
【0312】
3.2.血行動態データ
3.2.1.心拍数(
図33)
トレプロスチニルおよびプロドラッグVIIの投与に続いて、より高い心拍数が観察された。
【0313】
変化の規模は一般にトレプロスチニル群(≧0.030mg/kg)について同様であったが、変化の持続期間は、増加する用量とともに増加した。心拍数の変化は、投薬後およそ5時間までに解消されると考えられた。
【0314】
それぞれ1mg/kgおよび3mg/kg;ならびに10mg/kgおよび30mg/kgのプロドラッグVIIの投与に続いて、より高い心拍数の同様の規模が観察され、わずかに高い心拍数が10mg/kgおよび30mg/kgで認められた。心拍数の変化は、トレプロスチニル群との比較において、より長く持続し、全ての群における回復(用量前のベースラインと比較して)が、投薬後およそ19時間から20時間で観察された。
【0315】
トレプロスチニルまたはプロドラッグVIIの投与に続く心拍数の増加は、全身血圧の低減に対する応答の代償的増加であると考えられた。
【0316】
3.2.2.収縮期血圧(
図34)
≦0.030mg/kgのトレプロスチニルの投与に続いて、収縮期血圧の有意義な変化は観察されなかったが、0.03mg/kgのトレプロスチニルの投与に続いて、わずかにより低い収縮期血圧が観察された。0.1mg/kgおよび0.3mg/kgのトレプロスチニルの投与に続いて早くも10分時点で、有意により低い収縮期血圧が観察され、30分および20分で最下点があり、それぞれ投薬後90分および120分の間ずっと持続した。
【0317】
0.1mg/kgのプロドラッグVIIの投与に続いて、収縮期血圧の有意義な変化は観察されなかった。3mg/kgのプロドラッグVIIの投与に続いて、わずかにより低い収縮期血圧が観察され、50分で最下点があった。10mg/kgおよび30mg/kgの投与に続いて早くも20分時点で、有意により低い収縮期血圧が認められ、40分で最下点があり、低血圧は、それぞれおよそ4時間および6時間の間ずっと持続した。
【0318】
3.2.3.拡張期血圧(
図35)
拡張期血圧の変化は、観察された収縮期血圧の変化を大きく反映した。
【0319】
≦0.030mg/kgのトレプロスチニルの投与に続いて、拡張期血圧の有意義な変化は観察されなかったが、0.03mg/kgのトレプロスチニルの投与に続いて、わずかにより低い拡張期血圧が観察された。0.1mg/kgおよび0.3mg/kgのトレプロスチニルの投与に続いて、早くも10分時点で、有意により低い拡張期血圧が観察され、30分および20分で最下点があり、それぞれ投薬後90分および180分の間ずっと持続した。
【0320】
0.1mg/kgのプロドラッグVIIの投与に続いて、拡張期血圧の有意義な変化は観察されなかった。3mg/kgのプロドラッグVIIの投与に続いて、わずかにより低い拡張期血圧が観察され、50分で最下点があり、80分の間ずっと持続した。10mg/kgおよび30mg/kgの投与に続いて早くも20分時点で、有意により低い拡張期血圧が認められ、40分で最下点があり、低血圧は、それぞれおよそ4時間および7時間から8時間の間ずっと持続した。
【0321】
3.2.4.平均動脈圧(
図36)
観察された平均動脈圧の傾向は、観察された収縮期および拡張期血圧の変化の規模および持続期間を反映した。
図36は、プロドラッグVIIについての効力におけるおよそ100倍の減少、ならびに初期および最大の血管拡張効果に対する時間における10~20分の遅延を例示しており、これは、トレプロスチニルへのプロドラッグVII変換が、それの血管拡張特性を支配することを示唆し得る。加えて、およそ2~6時間(トレプロスチニルに関する1~2時間と比較して)にわたるプロドラッグVIIの昇圧応答の持続は、トレプロスチニルの薬力学濃度への変換の維持を示唆している。
【0322】
≦0.030mg/kgのトレプロスチニルの投与に続いて、平均血圧の有意義な変化は観察されなかったが、0.03mg/kgのトレプロスチニルの投与に続いて、わずかにより低い平均血圧が観察され、30分で最下点があった。0.1mg/kgおよび0.3mg/kgのトレプロスチニルの投与に続いて、早くも10分時点で、有意により低い平均血圧が観察され、30分および20分で最下点があり、それぞれ投薬後90分および180分の間ずっと持続した。
【0323】
0.1mg/kgのプロドラッグVIIの投与に続いて、平均血圧の有意義な変化は観察されなかった。3mg/kgのプロドラッグVIIの投与に続いて、わずかにより低い平均血圧が観察され、50分で最下点があった。10mg/kgおよび30mg/kgの投与に続いて、有意により低い平均血圧が認められ、40分で最下点があり、低血圧は、それぞれおよそ4時間および7時間から8時間の間ずっと持続した。
【0324】
3.2.5.脈圧(
図37)
脈圧の変化は可変であり、応答の一貫した方向および規模が欠如しており、用量応答関係がさらに欠如していた。
【0325】
0.3mg/kgのトレプロスチニルの投与に続いて、投薬後20分から40分まで、わずかにより低い脈圧が観察された。調査された任意の他の用量レベルでのトレプロスチニルの投与に続いて、観察された他の一貫した傾向はなかった。
【0326】
10mg/kgのプロドラッグVIIの投与に続いて、わずかにより高い脈圧が認められた。プロドラッグVIIの任意の他の用量に続いて、他の一貫した傾向は観察されなかった。
【0327】
脈圧は、収縮期および拡張期の血圧の関数である。収縮期および拡張期についての変化の規模および方向は同様であったので、全体的な正味変化(収縮期と拡張期の間の差異)が大きく変わることはなかった。
【0328】
3.2.6.体温(
図38)
0.000125mg/kgまたは0.00125mg/kgのトレプロスチニルの投与に続いて、体温の有意な変化は観察されなかった。0.1mg/kgのトレプロスチニルに続いて、わずかにより低い体温が観察された。この変化は、投薬後およそ3時間の間ずっと持続した。0.1mg/kgおよび0.3mg/kgのトレプロスチニルの投与に続いて、有意に低くなった体温が観察された。これらの変化は、それぞれ投薬後およそ3時間および4時間までに解消されると考えられた。
【0329】
1mg/kgのプロドラッグVIIの投与に続いて、体温の有意な変化は観察されなかった。3mg/kg、10mg/kgおよび30mg/kgの投与に続いて、有意により低い体温が観察された。低体温応答は、それぞれ3mg/kgおよび10mg/kgの投与に続いて、4時間および11時間から12時間の間ずっと持続した。体温は、30mg/kgのプロドラッグVIIの投与に続いて24時間以内に回復しなかった。
【0330】
体温の変化は、血圧の変化の二次的なものであった。体温減少は、血管拡張に直接関連していた。
【0331】
4.結論
トレプロスチニルの投与は、より高い心拍数(全ての用量)、および有意により低い収縮期、拡張期、平均動脈血圧(≧0.1mg/kg)、および体温(≧0.030mg/kg)という結果になった。プロドラッグVIIの投与は、より高い心拍数(全ての用量)、および有意により低い収縮期、拡張期、平均動脈血圧、および体温(≧3mg/kg)という結果になった。
【0332】
[実施例13]
トレプロスチニル(プロドラッグIX)のジメチルエーテルの合成:
考察:
トレプロスチニル(1)のジメチルエーテルの合成は、室温でTHF中のNaHおよびヨウ化メチルを使用するO-メチル化によって達成した。この方法は、プロドラッグIXを得るために研究された他の反応条件と比較した場合、短い反応時間および単純な後処理を伴った。
【0333】
【0334】
実験手順:
50mlの丸底フラスコに水素化ナトリウム(0.61g、15.36mmol、鉱物油中60%)を投入し、これをヘキサン(2×20ml)で洗浄することで、鉱物油を除去した。この固体NaHに、無水THF(10ml)を添加し、周囲温度でアルゴン下にて撹拌した。この懸濁液に、THF(5.0ml)中のトレプロスチニル(1)(0.5g、1.26mmol)を滴下により添加し、その後、ヨウ化メチル(3.0ml)が続いた。反応混合物を5時間撹拌し、反応の進行をTLC(DCM/メタノール、9:1)によってモニタリングした。反応物を飽和NH4Cl水溶液(1.0ml)でクエンチし、水(10.0ml)で希釈した。pHを2NのHClで1~2に調整した。有機層を分離し、水層をEtOAc(3×20ml)で抽出した。抽出物を合わせ、Na2SO4上で乾燥させた。溶媒を真空中で除去することで、粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィーによって、グラジエント溶媒(DCM中0~10%のメタノール)を使用して精製することで、トレプロスチニルの生成物ジメチルエーテル(プロドラッグIX)(230mg)が得られた。
【0335】
[実施例14]
トレプロスチニルモノメチルカルバメート(プロドラッグVIII)の合成:
モノ-TESトレプロスチニルベンジルエステル(1)から、トレプロスチニルモノメチルカルバメート(プロドラッグVIII)(5)を合成した。モノ-TESトレプロスチニルベンジルエステル(1)をp-ニトロフェニルクロロホルメートで処理することで、p-ニトロフェニルのカーボネート(2)を発生させた。カーボネート(2)は、単離することなくテトラヒドロフラン中のメチルアミンで処理することで、TESトレプロスチニルベンジルモノメチルカルバメート(3)が良好な収率で得られた。水性テトラヒドロフラン中の塩酸を用いる化合物(3)の脱シリル化は、トレプロスチニルベンジルエステルモノメチルカルバメート(4)を与えた。水素の雰囲気下で炭素上のパラジウムを用いる純粋なカルバメート(4)の脱ベンジル化は、トレプロスチニルモノメチルカルバメート(プロドラッグVIII)(5)を与えた。
【0336】
トレプロスチニルモノメチルカルバメート(プロドラッグVIII)(5)の合成
【0337】
【化80】
実験:
TES-トレプロスチニルベンジルエステルモノメチルカルバメート(3)の合成:
【0338】
【化81】
無水テトラヒドロフラン(12mL)中のモノ-TES-トレプロスチニルベンジルエステル(1)(1.11g、1.87mmol)の溶液に、ピリジン(0.44g、0.45mL、5.56mmol)を室温でアルゴン下にて添加した。透明な溶液を0℃に冷却し(氷/水浴)、次いで、アルゴン下にて5℃未満の温度を保持しながら5分の期間をかけて無水テトラヒドロフラン(4mL)中の4-ニトロフェニルクロロホルメート(0.56g、2.78mmol)の溶液を滴下により添加した。添加の完了後、反応混合物(白濁)を0℃から室温で2時間撹拌した。2時間後、反応混合物をtlc(EtOAc/ヘキサン、1:4)によってチェックしたところ、反応は完了していた。反応混合物を0℃に冷却し、次いで、3分の期間をかけてテトラヒドロフラン(2.0M)(3.8mL、7.60mmol)中のメチルアミンの溶液を添加した。反応混合物を0℃で1時間撹拌し、tlc(EtOAc/ヘキサン、1:4)によってチェックした。反応は完了していた。混合物を濾過し、黄色の固体をMTBE(2×20mL)で洗浄した。濾液を真空中で濃縮することで、薄黄色の粘稠液体(1.70g)が得られた。5~15%のEtOAc/ヘキサンを使用するシリカゲル(31g)カラム上の粗生成物のクロマトグラフィーは、純粋なTES-トレプロスチニルベンジルエステルモノメチルカルバメート(3)(1.17g)を与えた。
【0339】
トレプロスチニルベンジルエステルモノメチルカルバメート(4)の合成
【0340】
【化82】
テトラヒドロフラン(20mL)および水(4mL)の混合物中のTES-トレプロスチニルベンジルエステルモノメチルカルバメート(3)(1.10g、1.69mmol)の溶液に、塩酸溶液(2N)(0.85mL、1.70mmol)を室温でアルゴン下にて添加した。反応混合物を室温で2時間撹拌し、tlc(EtOAc/ヘキサン、1:1)によってチェックした。反応は完了していた。反応混合物をトリエチルアミン(0.25mL)で中和し、次いで、全ての有機揮発分を蒸発させ、残留物をEtOAc(25mL)中に溶解し、水(2×20mL)、ブライン(1×10mL)で洗浄し、乾燥させ(Na
2SO
4)、濾過し、真空中で濃縮することで、透明な粘稠液体(1.07g)が得られた。粗生成物を、5~70%のEtOAc/ヘキサンを使用するシリカゲル(30g)カラム上でクロマトグラフィーにかけることで、純粋なトレプロスチニルベンジルエステルモノメチルカルバメート(4)が無色の粘稠液体(0.90g)として得られた。
【0341】
トレプロスチニルモノメチルカルバメート(5)の合成
【0342】
【化83】
酢酸エチル(13mL)中のトレプロスチニルベンジルエステルモノメチルカルバメート(4)(0.84g、1.56mmol)の溶液に、炭素上のパラジウム(5wt%、50%の水)(0.15g)を添加した。混合物を撹拌し、ハウスバキューム下で脱気し、水素(バルーン中に充填された)によって置き換えた。プロセスを3回反復した。混合物を室温で水素の雰囲気下で16時間撹拌し、tlc(EtOAc/ヘキサン、1:1)によってチェックした。反応は完了していた。反応混合物を、使い捨てのポリエチレンフィルター漏斗におけるセライト(1.0g)のパッドに通して濾過し、固体を酢酸エチル(3×10mL)で洗浄した。濾液を真空中で30℃(水浴温度)で濃縮することで、トレプロスチニルモノメチルカルバメート(プロドラッグVIII)(5)がオフホワイト泡沫状固体(0.71g)として得られた。
【0343】
[実施例15]
トレプロスチニルアミノ酸アミドプロドラッグの合成:
考察:
様々なアミノ酸を用いてカップリング剤を使用して、トレプロスチニルをアミド化にかけることで、下記のスキームに示されている通り、トレプロスチニルアミドをプロドラッグとして形成した。
【0344】
トレプロスチニルアラニンアミド(プロドラッグX)の合成:
【0345】
【化84】
ステップ1:
ジクロロメタン(30mL)中のトレプロスチニル(1)(1.0g、2.561mmol)およびL-アラニンベンジルエステルp-トルエンスルホネート塩(0.9g、2.561mmol)の懸濁液に、トリエチルアミン(0.89mL、6.401mmol)を添加した。この混合物に、1-エチル-3-(3’-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDCI)(0.59g、3.073mmol)および1-ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物(0.42g、3.073mmol)を添加した。反応混合物を周囲温度でアルゴン下にて2.5時間撹拌した。TLC(溶離液:酢酸エチル)に基づき、反応は完了していることが見出された。反応混合物を水(30mL)でクエンチし、有機層を分離し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、真空中で蒸発させることで、粗生成物を得た。ヘキサン中の0~70%の酢酸エチルを使用するシリカゲルカラムクロマトグラフィーを使用して、粗生成物を精製することで、純粋なトレプロスチニルアラニンアミドベンジルエステル(2)(1.34g、97.8%の収率)を得た。
【0346】
ステップ2:
酢酸エチル中のトレプロスチニルアラニンアミドベンジルエステル(2)(1.3g)の溶液に、炭素上の5%パラジウム(50%w/wの水)(130mg)を添加した。真空を使用して、これを3回脱気し、水素ガスと置き換え、水素雰囲気下で1.5時間撹拌した。TLC(溶離液:酢酸エチル)に基づき、反応は完了していることが見出された。反応混合物をセライトに通して濾過することで、炭素上のパラジウムを除去した。濾液を真空中で蒸発させることで、トレプロスチニルアラニンアミドプロドラッグ(プロドラッグX)(1.03g、91.7%の収率)を得た。
【0347】
トレプロスチニルバリンアミド(プロドラッグXI)の合成:
【0348】
【化85】
ステップ1:
ジクロロメタン(30mL)中のトレプロスチニル(1)(1.0g、2.561mmol)およびL-バリンベンジルエステルp-トルエンスルホネート塩(0.97g、2.561mmol)の懸濁液に、トリエチルアミン(0.89mL、6.401mmol)を添加した。この混合物に、1-エチル-3-(3’-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDCI)(0.59g、3.073mmol)および1-ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物(0.42g、3.073mmol)を添加した。反応混合物を周囲温度でアルゴン下にて2時間撹拌した。TLC(溶離液:酢酸エチル)に基づき、反応は完了していることが見出された。反応混合物を水(30mL)でクエンチし、15分間撹拌した。有機層を分離し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、真空中で蒸発させることで、粗生成物を得た。ヘキサン中の0~50%の酢酸エチルを使用するシリカゲルカラムクロマトグラフィーを使用して、粗生成物を精製することで、純粋なトレプロスチニルバリンアミドベンジルエステル(2)(1.3g、90.3%の収率)を得た。
【0349】
ステップ2:
酢酸エチル(15mL)中のトレプロスチニルバリンアミドベンジルエステル(2)(1.3g)の溶液に、炭素上の5%パラジウム(50%w/wの水)(130mg)を添加した。真空を使用して、これを3回脱気し、水素ガスと置き換え、水素雰囲気下で2時間撹拌した。TLC(溶離液:酢酸エチル)に基づき、反応は完了していることが見出された。反応混合物をセライトに通して濾過することで、炭素上のパラジウムを除去した。濾液を真空中で蒸発させることで、トレプロスチニルバリンアミドプロドラッグ(プロドラッグXI)(1.1g、残留の溶媒とともに97.1%の収率)を得た。
【0350】
トレプロスチニルアスパラギン酸アミド(プロドラッグXII)の合成:
【0351】
【化86】
ステップ1:
ジクロロメタン(30mL)中のトレプロスチニル(1)(1.0g、2.561mmol)およびL-アスパラギン酸ジベンジルエステルp-トルエンスルホネート塩(1.24g、2.561mmol)の懸濁液に、トリエチルアミン(0.89mL、6.401mmol)を添加した。この混合物に、1-エチル-3-(3’-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDCI)(0.59g、3.073mmol)および1-ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物(0.42g、3.073mmol)を添加した。反応混合物を周囲温度でアルゴン下にて2時間撹拌した。TLC(溶離液:酢酸エチル)に基づき、反応は完了していることが見出された。反応混合物を水(30mL)でクエンチし、15分間撹拌した。有機層を分離し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、真空中で蒸発させることで、粗生成物を得た。移動相として0~50%の酢酸エチルおよびヘキサンを使用するシリカゲルカラムクロマトグラフィーを使用して、粗生成物を精製することで、純粋なトレプロスチニルアスパラギン酸アミドベンジルエステル(2)(1.63g、97.6%の収率)を得た。
【0352】
ステップ2:
酢酸エチル(20mL)中のトレプロスチニルアスパラギン酸アミドベンジルエステル(2)(0.57g)の溶液に、炭素上の5%パラジウム(50%w/wの水)(57mg)を添加した。真空を使用して、これを3回脱気し、水素ガスと置き換え、水素雰囲気下で5時間撹拌した。TLC(溶離液:酢酸エチル)に基づき、反応は完了していることが見出された。反応混合物をセライトに通して濾過することで、炭素上のパラジウムを除去した。濾液を真空中で蒸発させることで、トレプロスチニルアスパラギン酸アミドプロドラッグ(プロドラッグXII)(0.4g、90.9%の収率)を得た。
【0353】
トレプロスチニルセリンアミド(プロドラッグXIII)の合成:
【0354】
【化87】
ステップ1:
ジクロロメタン(30mL)中のトレプロスチニル(1)(1.0g、2.561mmol)およびL-セリンベンジルエステルベンゼンスルホネート塩(0.9g、2.561mmol)の懸濁液に、トリエチルアミン(0.89mL、6.401mmol)を添加した。この混合物に、1-エチル-3-(3’-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDCI)(0.59g、3.073mmol)および1-ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物(0.42g、3.073mmol)を添加した。反応混合物を周囲温度でアルゴン下にて2時間撹拌した。TLC(溶離液:酢酸エチル)に基づき、反応は完了していることが見出された。反応混合物を水(30mL)でクエンチし、15分間撹拌した。有機層を分離し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、真空中で蒸発させることで、粗生成物を得た。移動相として0~100%の酢酸エチルおよびヘキサンを使用するシリカゲルカラムクロマトグラフィーを使用して、これを精製することで、純粋なトレプロスチニルセリンアミドベンジルエステル(2)(0.62g、49.3%の収率)を得た。
【0355】
ステップ2:
酢酸エチル(120mL)中のトレプロスチニルセリンアミドベンジルエステル(2)(0.57g)の溶液に、炭素上の5%パラジウム(50%w/wの水)(57mg)を添加した。真空を使用して、これを3回脱気し、水素ガスと置き換え、水素雰囲気下で2時間撹拌した。TLC(溶離液:酢酸エチル)に基づき、反応は完了していることが見出された。化合物が反応後に溶液から析出した。炭素上のパラジウムから生成物を可溶化および単離するため、イソプロピルアルコール(30mL)を添加した。反応混合物を次いでセライトに通して濾過することで、炭素上のパラジウムを除去した。濾液を真空中で蒸発させることで、トレプロスチニルセリンアミドプロドラッグ(プロドラッグXIII)(0.54g、100%の収率)を得た。
【0356】
[実施例16]
トレプロスチニルメタンスルホンアミド(プロドラッグXIV)の合成
ベンズインデントリオール(1)から、トレプロスチニルメタンスルホンアミド(プロドラッグXIV)(7)を合成した。トリオール(1)から、トレプロスチニルベンジルエステル(2)を調製した。エステル(2)をtert-ブチルジメチルトリフルオロメタンスルホンアミド(TBDMSOTf)でシリル化することで、ジ-TBDMSトレプロスチニルベンジルエステル(3)が得られた。水素の雰囲気で炭素上の5%パラジウムを用いる酢酸エチル中の化合物(3)の脱ベンジル化は、ジ-TBDMSトレプロスチニル(4)を提供した。CDIを用いる酸(4)の活性化、続いて、DBUの存在下でのメタンスルホンアミドとの反応は、ジ-TBDMSトレプロスチニルメタンスルホンアミド(6)を与え、シリカゲルカラムによって精製した。メタノール中の塩化水素を使用するスルホンアミド(6)からのTBDMSの脱保護は、所望のトレプロスチニルメタンスルホンアミド(プロドラッグXIV)(7)を与えた。
【0357】
トレプロスチニルメタンスルホンアミド(プロドラッグXIV)の合成
【0358】
【化88】
実験:
トレプロスチニルベンジルエステル(2)の合成
【0359】
【化89】
アセトン(3.0L)中のベンズインデントリオール(1)(240.0g、0.72mol)の溶液に、粉末化炭酸カリウム(199.5g、1.44mol)およびブロモベンジルアセテート(190.2g、0.83mol)を室温でアルゴン下にて添加した。反応混合物を室温で撹拌し、反応の進行をtlcによってモニタリングした。72時間後、反応は完了していた。反応混合物を濾過し、濾液を真空中で蒸発させることで、トレプロスチニルベンジルエステル(2)(346.0g、99%)がオフホワイトの固体として得られた。
【0360】
ジ-TBDMSトレプロスチニルベンジルエステル(3)の合成
【0361】
【化90】
無水ジクロロメタン(150mL)中のトレプロスチニルベンジルエステル(2)(15.26g、31.75mmol)の溶液に、2,6-ルチジン(13.61g、14.75mL、127.01mmol)を室温で添加した。透明な溶液を0℃に冷却し(氷/水浴)、次いで、アルゴン下にて5℃未満の温度を保持しながら20分の期間をかけて無水ジクロロメタン(30mL)中のtert-ブチルジメチルトリフルオロメタンスルホネート(TBDMSOTf)(20.98g、18.23mL、79.37mmol)の溶液を滴下により添加した。添加の完了後、反応混合物を0~5℃で2時間撹拌した。2時間後、反応混合物をtlc(EtOAc/ヘキサン、1:4)によってチェックしたところ、反応は完了していた。混合物をヘキサン(360mL、使用されたジクロロメタンの体積の2倍)で処理し、10分間室温で撹拌した。混合物をシリカゲル(230~400メッシュ)(293g)カラムに通過させ、化合物をヘキサン(2~6%)中の酢酸エチルで溶出することで、純粋なジ-TBDMSトレプロスチニルベンジルエステル(3)(21.7g、96.4%)が得られた。
【0362】
ジ-TBDMSトレプロスチニル(4)の合成
【0363】
【化91】
酢酸エチル(320mL)中のジ-TBDMSトレプロスチニルベンジルエステル(3)(21.6g、30.46mmol)の溶液に、炭素上のパラジウム(5wt%、50%の水)(2.16g)を添加した。混合物を撹拌し、ハウスバキューム下で脱気し、水素(バルーン中に充填された)によって置き換えた。プロセスを3回反復した。混合物を室温で水素の雰囲気下で2時間撹拌し、tlc(EtOAc/ヘキサン、1:4、およびEtOAc、100%)によってチェックした。反応は完了していた。反応混合物をセライト(7.0g)で処理し、次いで使い捨てのポリエチレンフィルター漏斗においてシリカゲル(22g)のパッドに通して濾過し、固体を酢酸エチル(3×50mL)で洗浄した。濾液は一部の炭素粒子を含有しており、そのため、濾液をセライト(10.0g)のパッドに通して再び濾過することで、透明な濾液を得た。透明な濾液をシリカゲル(30g)カラムに通過させ、シリカゲルを酢酸エチル(2×70mL)で洗浄した。濾液は透明であり、濾液を真空中で30℃(水浴温度)で濃縮することで、ジ-TBDMSトレプロスチニル(4)が無色の粘稠液体(18.6g、98.7%)として得られた。
【0364】
ジ-TBDMSトレプロスチニルメタンスルホンアミド(6)の合成
【0365】
【化92】
無水テトラヒドロフラン(190mL)中のジ-TBDMSトレプロスチニル(4)(18.5g、29.88mmol)の溶液に、1,1’-カルボニルジイミダゾール(CDI)(7.27g、44.83mmol)を一度に室温でアルゴン下にて添加した。透明な反応混合物を室温で30分間、および次いで75℃(油浴温)で30分間撹拌した。反応混合物を室温に冷却した。ジ-TBDMSトレプロスチニル(5)のこのインサイチュ発生CDI中間体に、メタンスルホンアミド(8.53g、89.68mmol)を一度に添加し透明な溶液を得るまで室温で10分間撹拌した。この透明な溶液に、無水テトラヒドロフラン(40mL)中の1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)(22.74g、149.37mmol)の溶液をアルゴン下にて添加した。添加の完了後、反応混合物を室温で撹拌し、tlc(EtOAc、100%、およびMeOH/CH
2Cl
2、1:9)によってモニタリングした。2時間後、反応は完了していた。混合物を水(200mL)でクエンチし、次いで、EtOAc(1×200mL)、(2×100mL)で抽出した。合わせたEtOAc抽出物を水(3×100mL)、ブライン(1×30mL)で洗浄し、乾燥させ(Na
2SO
4)、濾過し、真空中で濃縮することで、オフホワイトの泡沫状固体(21.44g)が得られた。粗生成物を、CH
2Cl
2および1~30%のMeOH/CH
2Cl
2を使用するシリカゲル(230~400メッシュ)(296g)上でクロマトグラフィーにかけることで、ジ-TBDMSトレプロスチニルメタンスルホンアミド(6)が白色の泡沫状固体(15.4g、74.0%)として得られた。
【0366】
トレプロスチニルメタンスルホンアミド(7)の合成
【0367】
【化93】
無水メタノール(135mL)中のジ-TBDMSトレプロスチニルメタンスルホンアミド(6)(13.4g、19.25mmol)の溶液を0℃から5℃に(氷/水浴)冷却した。この冷たい溶液に、無水メタノール(135mL)中のメタノール(1.25M)(38.5mL、48.13mmol)中の塩化水素の溶液を、3分の期間をかけてアルゴン下にて添加した。反応混合物を0℃から5℃で(氷/水浴)30分間撹拌し、tlc(MeOH/CH
2Cl
2、1:9)によってチェックした。アルゴンをゆっくり反応混合物の中に5分間0℃から5℃で吹き込むことで、過剰の塩化水素を除去した。次いで、反応混合物を真空中で25℃(水浴温度)で蒸発させて有機揮発分を除去することで、粗製のスルホンアミド生成物(7)が淡黄色の泡沫状固体(11.03g)として得られた。この化合物を他の粗生成物(0.80g)と合わせることで、11.83gの総重量が得られた。合わせた粗生成物を、25~100%のEtOAc/ヘキサンおよび1~20%のMeOH/EtOAcを使用するシリカゲル(175g)カラム上でクロマトグラフィーにかけることで、純粋なトレプロスチニルメタンスルホンアミド(7)がオフホワイトの泡沫状固体(6.28g)として得られた。
【0368】
[実施例17]
様々なプロドラッグに必要とされる出発材料:トレプロスチニルモノ-TESベンジルエステル(2a)の合成:
【0369】
【化94】
アセトン(200mL)中のトレプロスチニルベンジルエステル(1)(100g、20.80mmol)の溶液に、イミダゾール(1.41g、20.80mmol)および4-ジメチルアミノピリジン(0.25g、2.08mmol)を添加した。この混合物に、撹拌しながら、クロロトリエチルシラン(3.5mL、20.80mmol)を、アルゴン雰囲気下でシリンジを使用して添加した。1時間後、反応はTLC(溶離液:20%の酢酸エチル/ヘキサン)に基づき完了していることが見出された。反応物を水(150mL)でクエンチし、有機層を分離し、ブライン(100mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、真空中で蒸発させることで、粗生成物を得た。粗材料をカラムクロマトグラフィーによって、移動相として酢酸エチル:ヘキサン(0~11%)を使用して精製することで、54.04%の収率でモノ-保護化合物2a(6.68g)および3.88%の収率で2b(0.48g)の両方を得た。
【0370】
[実施例18]
プロドラッグI、II、IIIおよびXVの単回投与に続く雄スプラーグドーリーラットにおける、親に対する代謝物の平均比は、表11に表示されている。
【0371】
【0372】
追加の実施形態
1.以下の式:
【0373】
【0374】
【化96】
であり、式中、R
1は、HまたはC
1~C
4アルキルであり;
R
2およびR
3の各々は、H、C
1~4アルキル、または
【0375】
【化97】
から独立して選択され、式中、YはOR
4またはNR
4R
5であり、R
4およびR
5の各々は、HおよびC
1~4アルキルから独立して選択され;ただし、XがOHである場合、R
2およびR
3の両方がHであることはない)
を有する化合物または化合物の薬学的に許容される塩。
2.XがOHである、実施形態1の化合物。
3.R
2およびR
3の各々が、C
1~4アルキルから独立して選択される、請求項2の実施形態。
4.R
2およびR
3の各々がメチルである、実施形態2の化合物。
5.R
2およびR
3の各々が、H、および
【0376】
【化98】
から独立して選択される、実施形態2の化合物。
6.R
2およびR
3の一方が
【0377】
【化99】
であり、R
2およびR
3の他方がHである、実施形態5の化合物。
7.YがOR
4である、実施形態6の化合物。
8.R
4がメチルまたはHである、実施形態7の化合物。
9.YがNR
4R
5である、実施形態6の化合物。
10.R
4およびR
5の各々が、Hまたはメチルから独立して選択される、実施形態9の化合物。
11.R
4およびR
5の両方がHまたはメチルである、実施形態9の化合物。
12.(A)実施形態1~11のいずれか1つの化合物および(B)薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
13.経口医薬組成物である、実施形態12の医薬組成物。
14.皮下医薬組成物である、実施形態12の医薬組成物。
15.実施形態1~11のいずれか1つの化合物の有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む、肺高血圧症を処置する方法。
16.投与することが経口的に行われる、実施形態15の方法。
17.対象がヒトである、実施形態15の方法。
18.投与することが注射によって行われる、実施形態15の方法。
19.投与することが皮下に行われる、実施形態18の方法。
20.前記投与することが連続的に皮下投与することである、実施形態19の方法。
21.前記投与することが、トレプロスチニルを投与することと比較して、注射の部位で全くないまたはほとんどない疼痛という結果になる、実施形態18の方法。
22.肺高血圧症を患う患者にトレプロスチニルのプロドラッグの有効量を皮下投与することを含む、肺高血圧症を処置する方法。
23.トレプロスチニルまたはその薬学的に許容される塩の皮下投与で部位疼痛を経験したことがある患者を選択すること、および肺高血圧症を患う患者にトレプロスチニルのプロドラッグの有効量を皮下投与することを含む、肺高血圧症を処置する方法。
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【0378】
前述は、特別な好ましい実施形態を指すが、本発明はそのように限定されないことが理解されるであろう。様々な修飾が開示されている実施形態に行われ得ること、およびこうした修飾は本発明の範疇内であると意図されることが当業者に想起されよう。
【0379】
この明細書において引用されている公報、特許出願および特許の全ては、参照により全体で本明細書に組み込まれる。