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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-02
(45)【発行日】2023-02-10
(54)【発明の名称】オゾンを用いた多糖類の分解方法
(51)【国際特許分類】
   C08B 37/00 20060101AFI20230203BHJP
   C08B 37/08 20060101ALI20230203BHJP
   C08B 37/04 20060101ALN20230203BHJP
【FI】
C08B37/00 P
C08B37/08 Z
C08B37/00 Q
C08B37/08 A
C08B37/04
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2019556408
(86)(22)【出願日】2017-12-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-03-12
(86)【国際出願番号】 CN2017118897
(87)【国際公開番号】W WO2018121581
(87)【国際公開日】2018-07-05
【審査請求日】2020-10-29
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2016/113881
(32)【優先日】2016-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521539731
【氏名又は名称】グリーン、バレー、(シャンハイ)、ファーマスーティカルズ、カンパニー、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】GREEN VALLEY (SHANGHAI) PHARMACEUTICALS CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】シャオ、チョンピン
(72)【発明者】
【氏名】チャン、チェンチン
(72)【発明者】
【氏名】ゲン、メイユ
(72)【発明者】
【氏名】ディン、ジャン
【審査官】高森 ひとみ
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第101240040(CN,A)
【文献】特開2016-108474(JP,A)
【文献】特表2001-519817(JP,A)
【文献】特開2012-167273(JP,A)
【文献】WANG, Y. et al.,Ozonolytic depolymerization of polysaccharides in aqueous solution,Carbohydrate Research,1999年,Vol.319,pp.141-147
【文献】TANG C. et al.,Preparation of chito-oligosaccharide by ozone degradation,Science and Technology of Food Industry,2012年,Vol.33, No.10,pp.250-252, 256
【文献】LOU Guang-qing et al.,Degradation of Konjac Glucomannan with OzoneDegradation of Konjac Glucomannan with Ozone,食品科学,2009年,Vol.30, No.20,pp.203-206
【文献】KABAL’NOVA, N. N. et al.,Oxidative Destruction of Chitosan Under the Effect of Ozone and Hydrogen Peroxide,Journal of Applied Polymer Science,2001年,Vol.81, No.4,pp.875-881
【文献】Masuko, S. et al.,Ozonolysis of the double bond of the unsaturated uronate residue in low-molecular-weight heparin and K5 heparosan,Carbohydr Res.,2011年,Vol.346, No.13,pp.1962-1966,DOI:10.1016/j.carres.2011.06.004
【文献】SONG, J. et al.,A comparative study of pre-ozonation and in-situ ozonation on mitigatin of ceramic UF membrane fouling caused by alginate,Journal of Membrane Science,2017年,Vol.538,pp.50-57,DOI:10.1016/j.memsci.2017.05.059
【文献】第5版 実験化学講座29 -バイオテクノロジーの基本技術-,p.94,丸善株式会社,2006年07月25日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08B 37/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多糖類の糖鎖を酸化分解反応に供するように、多糖類の水溶液をオゾンと接触させることを特徴とする、水溶性多糖類の制御可能な分解方法であって、前記多糖類が硫酸化ポリグルロン酸であり、前記酸化分解反応が加圧反応器中で行われ、ここで、反応器の圧力が0.1~1.0MPaである、方法。
【請求項2】
オゾンの消費量を制御して、標的分子量を有する分解された多糖類またはオリゴ糖類を製造する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
オゾンの流速および導入時間を制御することにより、オゾン消費量の制御を行う、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
多糖類が、1~40%水溶液に含まれる、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
多糖類が、4~30%水溶液に含まれる、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
多糖類が、8~25%水溶液に含まれる、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
分解反応の時間が4時間を超えない、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
分解反応の時間が3時間を超えない、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
反応を20~60℃の温度で行う、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
反応を20~50℃の温度で行う、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
多糖類の溶解を促進するために、多糖類水溶液の調製中にpHを3~10に調整することをさらに含んでなる、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
オゾン消費量が、多糖類固体に対して10~500mg/gの多糖類である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
酸化分解反応を触媒の存在下または非存在下で行う、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
酸化分解反応を触媒の存在下で2時間以内に行う、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
触媒が、塩基、金属イオン、過酸化水素、紫外線および活性炭の1以上である、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
塩基が、水酸化ナトリウムもしくは水酸化カリウム、炭酸ナトリウムもしくは炭酸カリウム、またはリン酸ナトリウムもしくはリン酸カリウムである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
金属イオンが、鉄イオン、ニッケルイオン、コバルトイオン、またはマンガンイオンであり得る、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
反応停止後、エタノールを10~90%の体積濃度(V/V)で加えて沈殿させる、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
反応停止後、限外濾過膜を用いて濃縮を行い、ここで、選択される限外濾過膜は、1~100KDaの範囲の分子量カットオフを有する、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品、医薬および化学工業の分野における多糖類の分解、特に、低分子量の多糖類、オリゴース(oligoses)またはオリゴ糖類を生成するためのオゾンの存在下での多糖類の酸化分解に関する。本発明の方法は、天然抽出多糖類ならびに硫酸化多糖類、リン酸化多糖類、ホルミル化多糖類またはアセチル化多糖類を含む化学修飾多糖類の両方に適用可能である。
【0002】
発明の背景
タンパク質、核酸および脂質と同様に、多糖類は、生物体を構成する基本物質である。多糖類は、植物細胞壁および微生物細胞壁ならびに動物の背甲の構造物質うちの1つであり、例えば、植物細胞壁におけるセルロース、藻類細胞壁における藻類多糖類、および微生物細胞壁におけるN-アセチルアミノデキストランが挙げられる。多数の活性多糖類が動物細胞および体液中に存在しており、最も一般的なものはグリコサミノグリカンである。これらの多糖類は、形状が直鎖状、分岐状または網状であり得るグリコシド結合により結合された単糖類分子から形成されるポリマーである。多糖類はしばしば、in vivoにおいてアミノ酸、脂質などと関連しており、糖タンパク質および糖脂質を形成し、種々の生体機能を発揮する。
【0003】
天然抽出多糖類は、食品、医薬、および日常的な化学工業において広く使用されており、例えば、食品におけるデンプン、医療製品におけるシイタケ多糖類および霊芝多糖類、抗凝固薬ヘパリン、ゼリーおよび練り歯磨きにおける増粘剤アルギン酸ナトリウムなどが挙げられる。天然抽出多糖類は、それらの物理化学的特性を変化させるために化学修飾することができる。例えば、酸性アルギン酸は、硫酸化時に酸性条件で大幅に改善した水溶性を有し、かつ、酢酸によるアセチル化アルギン酸の形成時に低い水溶性および大幅に増加した粘度を有する。化学修飾により、多糖類の薬理活性も変化する。例えば、ポリグルロン酸は硫酸化されて、抗腫瘍活性を有する硫酸化ポリグルロン酸を形成する。さらに、多糖類の分解は、慣用の多糖類修飾戦略でもある。すなわち、高分子量を有する多糖類が、低分子量を有する多糖類またはオリゴ糖類に分解され、それにより、多糖類の粘度が低下するか、または、in vivoにおけるその薬理活性が向上する。前者の例はオリゴキトサンであり、後者の例は低分子量ヘパリンである。
【0004】
最も慣用の多糖類分解方法は、酸分解である。すなわち、加熱条件下で、グリコシド結合を酸性水中で加水分解し、糖鎖を切断する。酸加水分解の方法は、総ての多糖類に好適なわけではない。例えば、ヘパリンの構造は、水中での直接酸分解の場合は容易に破壊され得る硫酸塩を含有するため、ヘパリンから低分子量ヘパリンを調製する製造方法においては、酸加水分解を使用することはできない。低分子量ヘパリンを調製する既存の製造方法は、亜硝酸法、β脱離法および過酸化水素分解法を含む。さらに、ヘパリナーゼ、過ヨウ素酸および次亜塩素酸によるヘパリンの分解が報告されている。
【0005】
オゾンは、有機物を除去するための有機物の完全酸化分解のための強力な酸化剤として使用され得る。例えば、オゾンは、下水処理に広く使用され、芳香環化合物および不飽和二重結合オレフィン化合物を現有する下水の処理に特に好適である(例えば、CN1182047CおよびCN1135117Cを参照)。さらに、オゾンは、食品、医療機器、医薬品および環境の消毒および滅菌にも使用される。オゾンの下水処理能力ならびに滅菌効果および消毒効果を向上させるために、当業界で使用されるオゾン酸化方法は、例えば、CN104310534B、CN1275883C、CN102151567B、CN102897895B、CN104192981Bなどに記載のとおり、触媒の存在下で行われる。しかしながら、多糖類の制御可能な分解におけるオゾンの使用は、報告されていない。
【0006】
上記のように、最も一般的な多糖類分解方法は、酸分解である。この方法は、多大な酸消費量を必要とする。反応過程は、反応を促進するために高温および高圧をしばしば必要とする。反応完了後、中和のために大量の塩基を加える必要がある。製造過程中、大量の塩が生成されるため、下水処理が比較的困難となる。酸分解は、ヘパリンなどの酸感受性の多糖類には好適ではない。既存の方法では、酵素性分解方法は、強力な特異性を有するが、反応効率が低く、コストが高いため、大規模工業生産には好適ではない。過酸化水素分解方法に関しては、過酸化水素は、高濃度で不安定であり、貯蔵条件の高い要求が提唱される。過剰な塩基またはチオ硫酸ナトリウムを加えることにより、過剰な過酸化水素を除去する必要がある。過ヨウ素酸または次亜塩素酸の分解方法は、相当なハロゲン元素汚染を生じさせる。亜硝酸法およびβ脱離法は、特異的な構造を有する多糖類に対してのみ好適であり、適用範囲が狭く、相当な環境汚染および高い製造コストをもたらす。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、オゾンによる多糖類の分解に基づいた、低分子量の多糖類またはオリゴ糖類を製造する製造方法を提供し、よって、多糖類を分解するための既存の製造技術システムを上回る重要な新規方法を提供する。この方法は、酸または塩基の使用量を大幅に減少させる。反応過程は、制御可能かつ効率が高く、高い水溶性を有する硫酸化多糖類の分解に特に好適であり、それにより、硫酸塩の損失が回避される。
【0008】
本発明の1つの側面は、多糖類の糖鎖を酸化分解反応に供するように、多糖類の水溶液をオゾンと接触させることを特徴とする、水溶性多糖類の制御可能な分解方法に関する。本発明者らは、反応条件およびオゾン生成の流束を制御することにより、多糖類の酸化反応を効率的かつ制御可能に行うことができ、所望の範囲の分子量を有する分解された多糖類またはオリゴ糖類ですら高収率で得ることができることを見出した。本発明は、1~100KDaの範囲にある分子量を有する分解された多糖類を得るのに特に好適である。
【0009】
本発明は、以下の利点を提供する。1)オゾンを用いた多糖類を分解する新規方法は、酸分解で必要とされる高温および高圧の反応条件を必要とすることなく、穏やかな反応条件を有する。2)新規方法は、酸性およびアルカリ性両方の条件下での反応を可能とし、酸性条件下で不溶性である多糖類は、アルカリ性条件下で溶解された後、反応することができる。3)新規方法は、糖構造における酸または塩基感受性基に影響を及ぼさず、これらの重要な官能基を最大限まで保持し、これは、生物活性のある低分子量の炭水化物薬剤の調製にとって特に重要である。4)オゾン源は容易に入手可能であり、単純操作しか関与しない工業生産における工業グレードのオゾン発生器により調製することができる。5)オゾンは、自動的に酸素に分解され、環境中に一過性に存在するのみであり、生成物中には残存しない。未反応のオゾンは、環境汚染を生じさせることなく、排気ガス回収装置により処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、多糖類の分解率に対する触媒の効果を示すグラフである。
図2図2は、多糖類のオゾン分解生成物の神経細胞に対する保護効果を示す。
【0011】
発明の詳細な説明
本発明の種々の側面を以下に詳細に説明する。しかしながら、本発明は、これらの特定の実施形態に限定されない。当業者ならば、以下の実質的な開示を踏まえ、本発明に多少の改変および調整を行うことができ、このような改変も、本発明の範囲に包含される。
【0012】
本発明は、酸化剤としてのオゾンを用いた、多糖類の酸化方法に関する。本発明に使用され得る多糖類は、植物、伝統中国薬用材料、動物または微生物から抽出された天然由来の多糖類、およびその化学修飾生成物を含み、その例としては、限定されるものではないが、以下のものが挙げられる。
1)ヤマブシタケ多糖類、マツホド多糖類、シロキクラゲ多糖類、シイタケ多糖類、霊芝多糖類、ナガバクコ多糖類、ゲンゲ属多糖類、アルギン、ポリマンヌロン酸、およびポリグルロン酸などの植物および伝統中国薬用材料から抽出された多糖類;
2)ヘパリン、ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ヒアルロン酸、およびキトサンなどの動物多糖類;
3)キサンタンガムなどの微生物から抽出された多糖類;ならびに
4)硫酸化多糖類、リン酸化多糖類、ホルミル化多糖類およびアセチル化多糖類を含む、上記の1)、2)および3)に記載の多糖類の化学修飾生成物。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態では、多糖類の原料は、ヤマブシタケ多糖類、マツホド多糖類、シロキクラゲ多糖類、シイタケ多糖類、霊芝多糖類、ナガバクコ多糖類、ゲンゲ属多糖類などの伝統中国薬用材料から抽出される。
【0014】
本発明の他の実施形態では、多糖類の原料は、アルギン、ヘパリン、ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ヒアルロン酸、キトサン、キサンタンガムなど、市販されている。
【0015】
本発明のさらに他の実施形態では、部分分解を受けている多糖類は、公知の抽出技術により得ることができ、例えば、ポリマンヌロン酸(PM)、ポリグルロン酸(PG)、硫酸化ポリマンヌロン酸(S-PM)、および硫酸化ポリグルロン酸(S-PG)が挙げられる。
【0016】
特に断りのない限り、本発明は、以下の工程により、伝統中国薬用材料から多糖類を抽出する。1)薬用材料を乾燥させた後、粉砕する。薬用材料粉末5.0Kgを蒸留水50Lに12時間浸漬する。2)液体を8時間加熱還流し、冷却し、濾布で濾過する。3)エタノール(95%)100Lを濾液に加えて沈殿させ、12時間静置する。上清を除去し、沈殿を遠心分離により回収し、減圧下で真空乾燥させ、粉砕し、秤量して多糖類生成物を得る。例示的抽出により得た多糖類の重量を例1~7に示す。
【0017】
ポリマンヌロン酸(PM)およびポリグルロン酸(PG)の調製方法は、以下のように簡潔に記載することができる。ポリマンヌロン酸(PM)およびポリグルロン酸(PG)は、アルギン酸ナトリウム分子においてそれぞれポリマンヌロン酸断片およびポリグルロン酸断片である。それらは、アルギン酸ナトリウムを分解することにより調製することができ、次いで、酸沈殿による分画を行い、それぞれポリマンヌロン酸(PM)およびポリグルロン酸(PG)を得る。例示的抽出方法は、特許CN100467492Cに示す。例示的抽出方法は、例9に示す。
【0018】
硫酸化ポリマンヌロン酸(S-PM)および硫酸化ポリグルロン酸(S-PG)の調製方法は、以下のように簡潔に記載することができる。上記で得られたポリマンヌロン酸(PM)およびポリグルロン酸(PG)粉末を、別々にピリジンに分散させ、スルホン化剤としてのクロロスルホン酸と反応させる。反応完了後、それらを精製し、乾燥させ、それぞれ硫酸化ポリマンヌロン酸(S-PM)および硫酸化ポリグルロン酸(S-PG)を得る。例示的抽出方法は、特許CN1213071Cに示す。例示的抽出方法は、例12および例13にも示す。
【0019】
多糖類の酸化反応を行うために、多糖類を最初に水に溶かし、場合により、加熱して溶解を促進させる。pHを所望の範囲に調整し、溶液を加熱し、撹拌する。オゾン発生器の電源を入れ、生成されたオゾンを反応器に導入し、好ましくは、撹拌を伴う。反応中、不完全に反応したオゾンを、排気ガス回収装置により処理することができる。反応完了後、オゾンの導入を停止する。反応溶液を室温まで冷却した後、引き続き、精製、濃縮および乾燥工程を行う。
【0020】
オゾンによる多糖類の酸化は、糖環のC-C結合またはグリコシド結合に作用する。
【0021】
本発明の出願人は、オゾンは多糖類の末端に対する開環作用も有し、これは、多糖類の末端を酸化して、1以上のCH-OH構造単位の損失を引き起こし得ることも見出した。多糖類の末端構造のこのような修飾は、分解された多糖類の生物活性を向上させることができる。
【0022】
酸化反応に用いる多糖類の濃度は、水中で通常は1~40%、好ましくは4~30%、より好ましくは8~25%である。多糖類の濃度は、高すぎてはならない。濃度が高すぎると、反応系の粘度が大きくなりすぎる場合があり、これは、酸化剤の分散に対して伝導性ではない。その上、多糖類の濃度は、低くすぎてはならない。そうではない場合、酸化反応の効率が損なわれる。出願人は、多糖類溶液の濃度が1~20%であり、かつ、粘度が1~10mPa・sである場合に、酸化反応を円滑に行うことができることを見出した。本明細書に記載の粘度は、ウベローデ粘度計または回転粘度計により測定される(例えば、中国薬局方における粘度測定方法を参照)。
【0023】
オゾンは、オゾン発生器により供給され得る。当業界で慣用のオゾン発生器は、高圧放電を通じて酸素を処理することにより、オゾンを提供する。オゾンの生成量は、ガス流速およびガス生成時間を考慮に入れ、オゾン濃度計を用いて出口のオゾン濃度を測定することにより、決定することができる。本発明において、オゾン発生器のオゾン生成速度は、オゾン発生器の操作電力および酸素ボンベの出口ガス流速を調整することにより、1g/hr~10g/hrの間に制御される。加圧反応のために、酸素ボンベは、オゾンの調製に必要な酸素に加えて、圧力を提供することができる。本発明における反応系の圧力は、0.1MPa~1.0MPaの範囲である。常温および常圧では、約1gの純オゾンガスを1Lの水に溶かすことができる。圧力が増加するにつれ、オゾンの溶解度が増加し、それにより、溶液中のオゾン濃度が増加し、その結果、オゾンと反応基質との間の衝突確率が増加し、反応が促進される。常温および常圧では、溶液中のオゾン濃度は、中華人民共和国国家標準GB/T5750.11-2006「飲料水の標準試験法」に明示されているヨウ素滴定法により測定することができる。本発明におけるオゾン消費量は、多糖類固体に対して多糖類10~500mg/gである。不完全に反応したオゾンは、水酸化ナトリウムおよびチオ硫酸ナトリウムを含んでなる排気ガス回収装置に順次導入する。本発明のいくつかの実施形態では、反応完了前に、オゾン濃度を4時間以下、好ましくは、3時間以下維持する。
【0024】
酸化反応中、加熱およびpHの両方が、多糖類の溶解度および反応速度に影響を及ぼし得る。ほとんどの多糖類は、冷水中よりも熱水中において高い溶解度を有し、温度を上げると、反応を促進させることができる。一般に、反応中、温度は約20~60℃、好ましくは20~50℃に維持される。酸性条件下で難溶性である一部の弱酸性カルボキシル含有多糖類に関しては、pHをアルカリ性に調整することができる。反応のpHは通常、3~10に維持される。アルギン酸ナトリウム、ポリグルロン酸、ポリマンヌロン酸などのカルボキシル含有多糖類に関しては、pHは、7~11の間、好ましくは8~10の間、より好ましくは8~9に調整することができる。
【0025】
好ましい実施形態では、本発明の方法は、高圧下で行われる。本発明者らは、高い反応圧力下および連続撹拌下では、オゾン消費量が、多糖類固体に対して多糖類10~500mg/gに制御される場合、80%超、さらには90%超または95%以上の全収率を達成することができ、分解生成物の分子量分布は均一であることを見出した。好ましくは、反応は約4時間で完了することができ、これは、酸分解法および過酸化水素分解法の両方ではほとんど達成され得ない。いずれの理論にも縛られることなく、出願人は、本発明の方法は、強力な酸化作用を有する酸化剤を用いることにより、ならびに、反応圧力および反応時間ならびに溶液の濃度、酸化剤の量などを制御することにより、非常に高い多糖類の収率を達成できると考える。生成物は、均一な分布および重要な産業上の利用価値を有する。この方法は、製造コストおよび環境汚染を低減させることができる。
【0026】
さらに重要なことに、本発明の方法により調製されたオリゴ糖類は、ヒトまたは動物体および正常細胞に対して低い毒性または無毒性を示し、大量寛容を示す生物活性生成物に調製することができる。例えば、本発明の方法による例17において、マンヌロン二酸(mannuronic diacid)オリゴ糖生成物が得られ、これは、神経細胞を保護する重要な生物活性を示し、毒性は検出され得ない。
【0027】
さらに好ましい実施形態では、本発明の方法を用いることにより、酸化反応器の圧力0.1~1.0MPaおよび多糖類水溶液の濃度8~25%という条件下で、生物活性のある分解された多糖類を高収率で得ることができる。オゾン消費量は、多糖類固体に対して多糖類100~300mg/gに制御される。特に、本発明の方法は、アルギン酸ナトリウム、ポリグルロン酸、ポリマンヌロン酸などのカルボキシル含有多糖類の分解に好適である。限定されるものではないが、ヤマブシタケ、マツホド、シロキクラゲ、シイタケ、霊芝、ナガバクコ、ゲンゲ属などを含む天然の薬用材料から抽出される多糖類に関しては、本発明は、それらを約20~100kDa、より好ましくは20~80kDaの分子量に分解するのに特に好適である。比較的低い分子量を有する多糖類に関しては、それらは、約0.5~20kDaの分子量を有する分解生成物に分解され得る。さらに、多糖類の起源を問わず、本発明の制御可能な分解方法は、生成物の均一な分解を達成することができ、操作方法は頑強である。
【0028】
反応中、多糖類の分解度を継続的にモニタリングし、多糖類の分子量が所望の範囲より低い場合、オゾンの導入を停止する。溶液を室温まで冷却した後、引き続き、処理を行う。具体的には、1)溶液を直接濃縮し、乾燥させ、固体生成物を得る;または、2)エタノールの最終体積濃度が10%~90%の間に達するように、特定の容量の95%エタノールを加える。溶液を静置して沈殿を得、必要に応じて、それを冷蔵庫内で4℃まで冷却し、沈殿をより完全にさせ、次いで、分離して目的生成物を得ることができる。さらに、必要に応じて、反応後の溶液を、限外濾過膜濃縮装置に投入し、所望の分子量カットオフ範囲を有する限外濾過膜を用いた濾過により濃縮することができる。膜濃縮方法は、分子量が低すぎる未分解の多糖類またはオリゴ糖断片を除去することができ、それにより、あまり大きくない分子量および分布を有する多糖類分解生成物が得られる。
【0029】
本発明の方法は、穏やかな反応条件を使用する。ヘパリン、ヘパラン硫酸、硫酸化ポリグルロン酸などの酸および塩基に対して抵抗性ではない多糖類に関しては、反応を中性に近い条件および室温条件下で行うことができ、それにより、硫酸塩の損失に起因する生物活性の減少が避けられる。オゾンフリーラジカルの生成速度は、塩基、金属イオン、過酸化水素、紫外線照射などによって促進することができ、それにより、多糖類の分解反応が促進される。反応開始時または反応を一定時間行った後に、触媒を加えてもよい。好ましい実施形態では、酸化反応が完全変換の約50~80%に達した際に、触媒を加えるが、これにより、多糖類の分解率および分解度を増加させることができ、かつ、均一なサイズ分布を有する(約1~8kDa、好ましくは2~6kDa、より好ましくは2.5~5kDaの分子量を有する)オリゴマーオリゴ糖類を得ることができる。
【0030】
例示的実施形態では、本発明の方法は、以下の工程を含んでなる。
【0031】
(1)多糖類溶液の調製:多糖類粉末を秤量し、1~20%の濃度まで水中で調合する。一部の多糖類は、加熱して溶解を促進する必要があるか、または、多糖類を完全に溶解できるように、水酸化ナトリウムを加えることにより、アルカリ性pHに調整する必要がある。溶液を加熱および撹拌し、温度およびpHを調整する。
【0032】
(2)オゾンの導入および酸化分解反応過程:多糖類溶液を調製したら、オゾン発生器の電源を入れ、オゾン濃度が約10%となるように、酸素ボンベのガス出口のガス流速およびオゾン発生器の放電出力を調整する。この濃度で放電することにより、最高効率でオゾンが生成される。酸素流速を1L/min~10L/minの範囲に調整し、対応する放電出力は10W~100Wの間である。オゾン発生器が安定してオゾンを供給した後、溶液を連続的および速やかに撹拌しながら、オゾンを底部の多糖類溶液に導入する。密閉した反応器の上部に細孔を作製し、排気ガスを排気ガス処理装置に導く。
【0033】
(3)多糖類分解生成物の処理:分解反応が事前に設定した時点まで進行したら、オゾンの導入を停止し、加熱装置を除去し、撹拌を継続する。室温まで冷却した後、1)多糖類分解生成物を濃縮装置に直接移し、濃縮後に真空でオーブン乾燥させる;あるいは、2)エタノールの終濃度が10%~90%の間になるように、特定の容量の95%エタノールを加えた後、アルコール沈殿し、静置し、沈殿を得、遠心分離し、減圧下乾燥を行う;あるいは、3)分解生成物を0.22μm限外濾過膜で濾過し、濃縮のために限外濾過膜装置に移し、ロータリーエバポレーターでさらに濃縮し、減圧下で乾燥させる。
【0034】
本発明で用いる分析および測定方法
分子量の測定
多糖類の分子量は一般に、GPCゲル結合示差屈折率検出器(RID)および/または多角度光散乱(MALLS)により測定する。本発明の例では、GPC-RI-MALLS、すなわち、示差屈折率検出器および多角度光散乱計と組み合わせたGPCゲルクロマトグラフィーを使用して、種々の多糖類の分子量を測定する(関連技術の詳細については、中国特許CN101261203Bを参照)。特定の手順を以下に記載する。
【0035】
乾燥多糖類サンプル100mgを正確に量り、濃度1mg/mLに達するまで水に溶かし、0.22μm濾過膜に通して試験サンプル溶液を得る。分子量をゲル排除クロマトグラフィーにより測定する。試験条件は、以下のとおりである。
クロマトグラフィーカラム:TSK3000
移動相:0.1mol/L NaCl
注入量:10μL
流速:1mL/min
検出器:示差屈折率検出器、および18角度光散乱計
【0036】
検出結果およびデータ処理:クロマトグラムは、機器固有のクロマトグラム処理ソフトウエア(ASTRA)により処理し、サンプルの分子量は、Zimmの外挿法により算出する。
【0037】
多糖類の分解率に対する触媒の効果
オゾンによる多糖類の分解率に対する触媒の効果を調べるために、分解時間による多糖類の分子量の変化もモニタリングし、触媒の存在下で異なる時点で採取したサンプルの分子量を検出し、分解効果を、触媒を加えない時に認められたものと比較する。本発明において、オゾン酸化反応を触媒するために、以下の触媒または反応条件を使用する。塩基(水酸化物)、金属イオン、過酸化水素、活性炭および紫外線、ここで、金属イオンは、鉄イオンおよびその可溶性塩、ニッケルイオンおよびその可溶性塩、コバルトイオンおよびその可溶性塩、ならびにマンガンイオン(二酸化マンガン)を含む。例示的操作は、例16および図1に示す。
【0038】
硫酸塩含量の測定
硫酸化多糖類中の硫酸塩の含量は、以下のようにイオンクロマトグラフィーにより測定する。
【0039】
硫酸塩標準溶液を用いて、濃度1、5、10、25、50、および100ppmの一連の標準溶液を調製し、標準曲線をプロットする。硫酸ポリグルロン酸多糖類のナトリウム塩10mgを、正確に2回量る。1つのアリコートを5mLメスフラスコに入れ、溶解し、好適な量の脱イオン水で標線まで満たし、よく振り混ぜ、遊離硫酸塩測定用の試験液を得る。別のアリコートを2mLアンプルに入れ、2mol/Lトリフルオロ酢酸溶液1mLを正確に加え、加熱密封し、120℃で3時間加水分解する。0.2mLを正確に量り、90℃にて窒素で風乾させる。残渣を水1mLに溶かし、高速で遠心分離する。上清0.25mLを5mLメスフラスコに正確に量り、水で標線まで満たし、よく振り混ぜ、総硫酸塩測定用の試験液を得る。標準溶液および試験液を、分析のためのイオンクロマトグラフに別々に注入する。
【0040】
クロマトグラフィー条件:
クロマトグラフィーカラム:Metrosep A Supp 5-150/4.0カラム;カラム温度:30℃;移動相:3.2mmol/L NaCO-1mmol/L NaHCO溶液;阻害剤:0.5% HSO溶液;流速:0.7mL/min;注入量:10μL。
【0041】
結果の計算:計算は、以下の計算式に従って、乾燥生成物に基づいて行う:
【数1】
【0042】
本発明の利点を、以下の限定されない例においてさらに示す。しかしながら、例で使用される特定の材料およびその量、ならびに他の試験条件は、本発明を限定するものと解釈してはならない。特に断りのない限り、部およびパーセンテージは両方とも、本発明において質量によって表される。
【実施例
【0043】
以下の例において、植物および伝統中国薬用材料から抽出された多糖類の重量、分解収率、ならびに分解前後の分子量などのデータは、表1に記載する。多糖類抽出方法は、伝統中国薬用材料1部を水10部に加熱還流下で抽出すること、ならびに得られた多糖類を乾燥および秤量することを含んでなる。多糖類の分解は、オゾン条件下で行い、分解前後の分子量は、GPC-RI-MALLS法により測定する。分解前後の残存する多糖類の分子量および収率などのデータは、表2に記載する。
【0044】
例1:
工程(1):ヤマブシタケ多糖類の抽出。薬用材料を乾燥および粉砕した後、凝縮水回収装置を備えた100L反応器に5kgを量り、水50Lに12時間浸漬し、撹拌し、加熱した。温度が100℃まで上昇した時に、時間測定を開始した。抽出8時間時に、加熱を停止した。冷却水で50℃未満まで冷却したら、抽出物を排出し、濾布で濾過した。エタノール(95%)100Lを加えることにより、濾液を沈殿させ、12時間静置した。上清を除去し、沈殿を遠心分離により回収し、減圧下で真空乾燥させ、粉砕し、秤量して多糖類生成物560gを得た。
【0045】
工程(2):ヤマブシタケ多糖類の分解。上記で得た多糖類粉末400gを秤量し、水4Lと混合し、加熱して溶解を促進させた。それを約4時間静置した。温度を30℃まで戻すように調整した際、反応系の圧力が0.8MPaに維持されるまで、酸素ボンベの出口圧力を調整した。オゾン発生器の電源を入れ、出力を調整し、オゾン質量濃度を測定し、0.5g/Lであった。オゾンを底部の反応溶液に導入し、溶液を速やかに撹拌して、溶液をオゾンと十分に反応させた。反応装置の上部にある減圧弁を介して、排気ガスを排気ガス処理装置に導いた。排気ガス処理装置は、直列の6M NaOH溶液および1Mチオ硫酸ナトリウム溶液から構成される。オゾンを1時間連続供給した後、導入を停止し、撹拌を30分間継続した。
【0046】
工程(3):ヤマブシタケ多糖類の分解生成物の処理:残存するオゾンを吸収させた後、反応装置を解体した。分解多糖類溶液を除去し、ロータリーエバポレーターに移して減圧下濃縮し、真空でオーブン乾燥させた。乾燥後、これを粉砕し、秤量して、多糖類分解生成物355.2gを得た。
【0047】
工程(4):分解前後のヤマブシタケ多糖類の分子量の測定:分解前後のサンプルの分子量を、上記のように測定した。Zimmの外挿法により算出したサンプルの分子量は、以下のとおりであった。ヤマブシタケ多糖類の分子量は、分解前650KDa、分解後60KDaであった。ヤマブシタケ多糖類およびその分解生成物の重量、分子量、および収率などのデータは、表1に記載する。
【0048】
例2:
工程(1):マツホド粉末5.0Kgを秤量し、例1と同じ方法により抽出し、多糖類粉末610gを得た。
【0049】
工程(2)における圧力は0.9MPaに設定し、その他のパラメーターは、例1と同じとした。
【0050】
工程(3)および(4)は、例1と同じであった。分解されたマツホド多糖類365.2gを、分解後に得た。分解前後の分子量は、それぞれ740KDaおよび77KDaと測定された。結果を表1に示す。
【0051】
例3:
工程(1):シロキクラゲ粉末5.0Kgを秤量し、例1と同じ方法により抽出し、多糖類粉末720gを得た。
【0052】
工程(2):圧力は0.2MPaに設定し、分解時間は3時間とし、その他のパラメーターは、例1と同じとした。
【0053】
工程(3):反応後のサンプル処理がエタノール沈殿法であったことが、例1と異なる点であった。具体的には、95%エタノール2容量を濾液に加え、撹拌して沈殿を均一にし、冷蔵庫内に4℃で一晩置いた。その後、上清を吸引し、下層を遠心分離し、沈殿を回収し、オーブンで乾燥させ、粉砕し、293.2gに秤量した。
【0054】
工程(4)は、例1と同じであった。分解前後の分子量は、それぞれ530KDaおよび46KDaと測定された。結果を表1に示す。
【0055】
例4:
シイタケ多糖類の抽出、分解反応、生成物処理および分子量測定は、例3と同じであった。結果を表1に示す。
【0056】
例5:
工程(1):霊芝多糖類の抽出工程は、例3および4と同じであった。
【0057】
工程(2):圧力は常圧、すなわち0.1MPaに設定し、分解時間は4時間とし、その他のパラメーターは、例3および4と同じとした。
【0058】
工程(3):反応後のサンプル処理が、限外濾過膜を介した濃縮であったことが、例3および4と異なる点であった。具体的には、反応溶液を0.22μm濾過膜で濾過した後、20KDaの分子量カットオフを有する限外濾過膜で濾過し、保持液を回収した。回収した液体を、ロータリーエバポレーターで濃縮し、真空で乾燥させ、274.0gを得た。
【0059】
工程(4)は、例3および4と同じであった。分解前後の分子量を、それぞれ測定した。多糖類の分子量は、分解前1,000KDa超、分解後22KDaであった。結果を表1に示す。
【0060】
例6:
ナガバクコ多糖類の抽出、分解反応、生成物処理および分子量測定は、例5と同じであった。結果を表1に示す。
【0061】
例7:
工程(1):ゲンゲ属多糖類の抽出工程は、例5および6と同じであった。
【0062】
工程(2):分解時間が3.5時間であったことが、例5および6と異なる点であった。
【0063】
工程(3):反応後のサンプル処理が、限外濾過膜を介した濃縮であったことが、例5および6と異なる点であった。具体的には、反応溶液を0.22μm濾過膜で濾過した後、100KDaの分子量カットオフを有する限外濾過膜で濾過し、保持液を回収した。回収した液体を、ロータリーエバポレーターで濃縮し、真空で乾燥させ、293.2gを得た。
【0064】
工程(4)は、例5および6と同じであった。分子量は、分解前710KDa、分解後75KDaと測定された。結果を表1に示す。
【0065】
【表1】
【0066】
例8:
以下の8種類の多糖類に関する分解方法および処理方法は、以下のとおりであった。アルギン、ヘパリン、ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ヒアルロン酸、キトサンおよびキサンタンガム400gをそれぞれ秤量し、水10Lに溶解させたまたはその中で膨張させた。オゾン酸化分解反応の圧力は0.3MPaに設定し、残りの工程は、例5および6の工程(2)と同じであった。
【0067】
反応後、サンプルを以下のように処理した。分解された反応溶液を、0.22μm限外濾過膜で濾過した後、それを膜濃縮装置に移した。膜濃縮工程は、以下のとおりであった。1)それを最初に100KDa限外濾過膜で濃縮し、サンプル容量が最初の容量の3分の1になるまで濃縮した。次に、濃縮を停止し、透過物を回収した。2)透過物を、2KDaの分子量カットオフを有する膜でさらに濃縮した。それが最初の容量の3分の1まで濃縮されたら、水3部を加え、最初の容量の3分の1まで液体を再度濃縮した。次に、保持液を回収した。3)保持液を、ロータリーエバポレーターで濃縮し、真空でオーブン乾燥させ、粉砕し、秤量した。
【0068】
分解前後の上記8種類の多糖類の分子量の測定方法は、例1~7と同じであった。アルギン、ヘパリン、ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ヒアルロン酸、キトサンおよびキサンタンガムの分子量、分解収率および分解後の分子量を、表2に示す。
【0069】
例9:
ポリマンヌロン酸(PM)およびポリグルロン酸(PG)の調製方法は、以下のとおりであった。水20Lをアルギン酸ナトリウム2Kgに加え、加熱して、完全に膨張させた。希HClを加え、pHを約4に調整した。反応を100℃で8時間行った後、加熱を停止し、NaOH溶液を加えることにより、pHを調整した。不溶物質を遠心分離により除去し、希HClを加えることによりpHを2.85に調整し、沈殿Aを遠心分離により回収した。HClを加えることにより、上清をpH1.0に連続的に調整し、沈殿Bを遠心分離により回収した。上記の沈殿Aおよび沈殿Bを、それぞれ減圧下で乾燥させ、粉砕し、秤量した。ポリグルロン酸800gを沈殿Aから得、ポリマンヌロン酸600gを沈殿Bから得た。
【0070】
例10:
工程(1):ポリマンヌロン酸(PM)の分解方法は、以下のとおりであった。ポリマンヌロン酸粉末400gを秤量し、20%の濃度まで水に溶かした。この溶液をpH5.0に調整し、50℃まで加熱し、オゾンで帯電させた。オゾン酸化分解装置は、例1~8と同じであった。反応系の圧力を0.5MPaに設定し、反応が完了するまで、オゾンを流速10g/hrで計2時間導入した。
【0071】
工程(2):分解生成物の処理:分解された反応溶液を、0.22μm限外濾過膜で濾過した後、それを膜濃縮装置に移した。膜濃縮工程は、以下のとおりであった。1)それを最初に50KDa限外濾過膜で濃縮し、サンプル容量が最初の容量の3分の1になるまで濃縮した。次に、濃縮を停止し、透過物を回収した。2)透過物を、2KDaの分子量カットオフを有する膜でさらに濃縮した。それが最初の容量の3分の1まで濃縮されたら、水3部を加え、最初の容量の3分の1まで液体を再度濃縮した。次に、保持液を回収した。3)保持液を、ロータリーエバポレーターで濃縮し、真空でオーブン乾燥させ、粉砕し、秤量した。
【0072】
工程(3):分解前後の分子量は、例1~8と同じ方法で測定した。試験結果を表2に記載する。
【0073】
例11:
工程(1):ポリグルロン酸(PG)の分解方法:ポリグルロン酸粉末400gを秤量し、水とよく混合し、NaOHに溶かした。これを測定した結果、pH9.0であり、25%の濃度まで調合した。これを70℃まで加熱し、オゾンを導入した。オゾン酸化分解装置および設定は、例10と同じであった。反応が完了するまで、オゾンを流速10g/hrで計2時間導入した。
【0074】
工程(2):分解生成物は、例10と同じ方法で処理した。
【0075】
工程(3):分解前後の分子量は、例10と同じ方法で測定した。試験結果を表2に記載する。
【0076】
例12:
硫酸化ポリマンヌロン酸(S-PM)の調製方法は、以下のとおりであった。ポリマンヌロン酸200gを秤量し、ピリジン2Lを加えた。混合物を撹拌し、均質な懸濁液を得た。懸濁液を約0℃まで濃縮し、予冷クロロスルホン酸-ピリジン溶液(クロロスルホン酸300gを含有する)500mLをゆっくり加えた。添加完了後、反応が完了するまで撹拌を3時間継続した。混合物を一定時間静置した後、溶媒を濾別し、固体を95%エタノール5Lで洗浄し、残渣ピリジン溶媒を除去した。エタノールを濾別した後、水5Lを加えて固形物を溶解し、NaOHを加えてpHを約12に調整し、結合ピリジンを完全に揮発させた。エタノール5Lを加えることにより沈殿を得、遠心分離し、オーブン乾燥させ、粉砕し、秤量し、固体粉末230gを得た。分子量は、5KDaと測定された。
【0077】
例13:
硫酸化ポリグルロン酸(S-PG)は、例12と同じ方法で調製した。分子量が8KDaの固体粉末240gを得た。
【0078】
例14:
硫酸化ポリマンヌロン酸(S-PM)の分解方法は、以下のとおりであった。ポリマンヌロン酸粉末200gを秤量し、30%の濃度まで水に溶かした。この溶液をpH7.0に調整し、50℃まで加熱し、オゾンで帯電させた。オゾン酸化分解装置および設定は、例10と同じであった。反応が完了するまで、オゾンを流速10g/hrで計3時間導入した。
【0079】
分解生成物処理および分子量測定は、例10と同じであった。分解前後の硫酸塩含量は、両方とも40%であった。測定方法に関しては、上記に開示した「硫酸塩含量の測定」で用いた方法を参照のこと。その他の試験結果を表2に記載する。
【0080】
例15:
硫酸化ポリグルロン酸(S-PG)の分解方法、分解生成物処理および分子量測定は、例14と同じであった。分解前後の硫酸塩含量は、両方とも38%であった。その他の試験結果を表2に記載する。
【0081】
【表2】
【0082】
例16:
本例は、アルギンのオゾン酸化分解をモデルとして用いて、アルギンの分解率に対する触媒の効果を比較し、調べた。方法は、以下のとおりであった。
【0083】
工程(1):1部あたり200gの等質量のアルギン9部を秤量し、それぞれ水20Lに溶かし、加熱して溶解を促進させた。溶解後、温度が40℃で安定化した際に、触媒を導入した。最初の部を除き、反応溶液の残りの8部の触媒条件は、1mM FeCl、1mM NiSO、1mM CoCl、1mM MnO、10mM H、20W高性能紫外線ランプにより提供される光照射、活性炭微粉末10g、およびNaOH 5gであった。
【0084】
工程(2):反応条件および反応中のサンプリング。オゾンの流速は、例1と同じであった。圧力は、常圧、すなわち0.1MPaに設定した。オゾンを導入することにより反応を開始し、10分毎にサンプリングを行い、分子量を測定した。
【0085】
工程(3):分子量測定:反応の出発材料であるアルギンの分子量は、0分における分子量であった。他の時点で採取したサンプル溶液を、10KDaの分子量カットオフを有する透析バッグ中で12時間透析し、塩、金属イオンおよび反応した小分子断片を除去した。透析後のサンプルを0.22μm濾過膜で濾過し、試験サンプルを得た。測定方法は、例1と同じであった。図1は、上記の反応条件下での多糖類の分子量の経時的変化を示すグラフである。図1から分かるように、選択された触媒は、多糖類の分解を有意に促進することができる。
【0086】
例17:
工程1):マンヌロン二酸(mannuronic diacid)オリゴ糖生成物の調製
ポリマンヌロン酸(PM)を、例9に記載のとおりに調製した。特定の操作を以下に簡単に記載する。アルギン酸ナトリウム5Kgを約10%の溶液に調合し、希塩酸を加えることにより、pHを約3.0に調整した。この溶液を80℃まで加熱し、撹拌した。これを10時間反応させた後、加熱を停止した。室温まで冷却した後、NaOHを加えることによりpHを9.0に調整し、希塩酸を加えることにより、さらに2.85に調整した。この溶液を5000rpmで10分間遠心分離した。上清を回収し、HClを加えることにより、pH1.0に調整した。遠心分離後、沈殿を回収し、ロータリーエバポレーターで濃縮し、真空乾燥して、Mセグメント中間体1,500gを得た。Mセグメント中間体500gを秤量し、蒸留水に溶かして、5Lの容量の溶液を調製した。溶液をNaOHでpH6.5に調整し、水浴中で加熱して、反応温度を75℃に制御した。酸素ボンベの出口圧力を調整し、系の圧力が0.1MPaに安定した際、オゾンを質量濃度流速8g/hrで反応溶液に導入するように、ガス出口のガス流速およびオゾン発生器の出力を調整した。反応の4時間後、オゾンの導入を停止し、好適な量の水を加えて、溶液の濃度を約10%に調整した。2,000Daの分子量カットオフを有する限外濾過膜で溶液を濾過し、保持液を回収した。回収した液体を、ロータリーエバポレーターで濃縮し、真空下で乾燥させ、マンヌロン二酸(mannuronic diacid)生成物A 350gを得た。
【0087】
工程2)薬理活性の評価
1.Aβ誘導性神経細胞傷害に対する生成物Aの保護効果
試験は、「細胞生存率評価用モデル」に従って行い、試験手順は以下のとおりであった。SH-SY5Y細胞(神経芽腫細胞)を96ウェルプレートに播種した(3,000個/ウェル)。24時間後、培地を除去し、投与群に対して、薬剤(10mg/mL)10μL/ウェルを加え、0.5時間前処理した(無血清培養培地に処方;1用量あたり3回)。次に、凝集したAβ1-42(Aβ1-42は、PBS溶液中で1mg/mlに調合し、インキュベーターにて4℃で24時間インキュベートし、終濃度2μMの凝集状態を作り出した)を加え、48時間インキュベートした。細胞生存率は、CCK8により検出した。
【0088】
結果は、2μM Aβ1-42によるSH-SY5Y細胞の48時間処理は、有意な細胞損傷を誘発し得、細胞生存率を減少させたが、25、50および100μg/mL生成物Aは、Aβにより誘導された細胞生存率の減少を有意に阻害し得たことを示した(図2参照)。上記の結果は、生成物Aは、低濃度(25μg/mL)、中濃度(50μg/mL)、および高濃度(100μg/mL)でAβの毒性作用から神経細胞を保護し得ることを示す。
図1
図2