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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-02
(45)【発行日】2023-02-10
(54)【発明の名称】コーティング装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 37/02 20060101AFI20230203BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20230203BHJP
【FI】
B01J37/02 301D
B01D53/94 300
B01D53/94 ZAB
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019568012
(86)(22)【出願日】2018-07-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-27
(86)【国際出願番号】 EP2018068187
(87)【国際公開番号】W WO2019008076
(87)【国際公開日】2019-01-10
【審査請求日】2021-06-25
(31)【優先権主張番号】17180017.0
(32)【優先日】2017-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501399500
【氏名又は名称】ユミコア・アクチエンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Umicore AG & Co.KG
【住所又は居所原語表記】Rodenbacher Chaussee 4,D-63457 Hanau,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフガング・ハッセルマン
(72)【発明者】
【氏名】ステファーヌ・マソン
【審査官】佐藤 慶明
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-076415(JP,A)
【文献】特表2011-529788(JP,A)
【文献】特表2002-506720(JP,A)
【文献】特開昭58-074117(JP,A)
【文献】国際公開第2010/114132(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0021345(US,A1)
【文献】国際公開第00/022972(WO,A1)
【文献】実開昭52-131235(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
B05B 1/00 - 3/18
B05B 7/00 - 9/08
B05C 5/00 - 21/00
B05D 1/00 - 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気ガス浄化触媒の製造のための、基材のコーティング装置であって、前記排気ガス浄化触媒は、円筒状支持体であり、各々が2つの端面、円周面、軸方向長さLおよび第1の端面から第2の端面まで通過する多数のチャネルを有しており、前記支持体を液体コーティングスラリーと接触させるために、
前記装置は、
前記支持体を垂直に逆転自在に保持するための保持ユニットと、
前記支持体の上端面に前記液体コーティングスラリーを供給するための投入ユニットと、
前記支持体に対して圧力差を適用して、前記液体コーティングスラリーを前記支持体に導入するためのユニットと、
を備え、
前記投入ユニットは、ディフューザを可撓性膜の形態で備え、前記ディフューザを通って、前記液体コーティングスラリーが、前記液体コーティングスラリーに圧力が適用されるとき、前記支持体の前記上端面の領域に適用され、
前記可撓性膜は、前記液体コーティングスラリーに圧力が適用されるとき、開放される又は広がる孔を有すること、
を特徴とする、装置。
【請求項2】
前記支持体を投入ユニットに供給し、投入ユニットからコーティングされた支持体を取り出すための、回転式ターンテーブルを備えること、
を特徴とする、
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記装置内で前記支持体を上下逆さまに回転させる、手段を備えること、
を特徴とする、
請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記保持ユニットは、回転式ターンテーブルデバイスに配置されていること、
を特徴とする、
請求項1又は2に記載の装置。
【請求項5】
吸引ユニットは、第1のコーティングスラリーを支持体の前記上端面に第1の工程にて適用し、その後、前記コーティングスラリーを、前記チャネルを通して吸引し、場合によっては前記支持体の壁に吸引し、続いて前記支持体の底部から第2のコーティングスラリーを適用することができるように、適合されること、
を特徴とする、
請求項1~4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記投入ユニットは、前記液体コーティングスラリーが前記支持体の前記上端面の領域の一部又は全てに適用されることを可能にする、シャッターユニットを備えること、
を特徴とする、
請求項1~5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
気ガス浄化触媒の製造のための、基材をコーティングするためのプロセスであって、前記排気ガス浄化触媒は、円筒状支持体であり、各々が2つの端面、円周面、軸方向長さLおよび前記第1の端面から前記第2の端面まで通過する多数のチャネルを有しており、液体コーティングスラリーによる、請求項1~6のいずれか一項に記載の装置を使用する、プロセス。
【請求項8】
第1のコーティング工程を実行することと、
前記支持体を前記装置内で上下逆さまに回転させることと、
第2のコーティング工程を実行することと、
を含む、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
前記支持体は、セラミック又は金属製ハニカム型フロースルーモノリス又はウォールフローフィルタであること、
を特徴とする、
請求項7又は8に記載のプロセス。
【請求項10】
前記液体コーティングスラリーは、20℃で0.01~10Pasの粘度を有すること、
を特徴とする、
請求項7~9のいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気触媒の製造に使用することができる装置及び対応するプロセスに関する。特に、本装置は、ハニカムモノリスのような基材に液体コーティングスラリーを供給するプロセスに使用される。
【背景技術】
【0002】
自動車の排気低減は、特に東アジア諸国で、自動車の数が甚だ多くなっているため、非常に重要である。世界中でのいくつかの空気浄化の取組みでは、自動車による空気の汚染をそれぞれ低レベルに保つべく試行している。車両の内燃機関から生じる有害汚染物質の低減のための技術を適用するために、この点に関する、より厳格な規制が、自動車製造業者及び供給業者に課されている。技術の1つの領域は、フロースルー型又はウォールフロー型のいずれかのいわゆるハニカムモノリス上、又はその内部における排気汚染物質の触媒的燃焼に関するものである。
【0003】
通常、このようなモノリス本体は、例えば金属又はコーディエライトから作製されており、駆動条件下で排気中の有害汚染物質を触媒的に分解する活性のある層によってコーティングされている必要がある。酸化的又は還元的な排気環境下での汚染物質の主反応に関して、触媒活性層を化学的に改質することによって、大きな向上が達成されてきた。第2の取組みは、特定のコーティング策を適用して、手元の材料で可能な限り高い活性を得るというものである。したがって、いくつかの特許出願では、上記のモノリシック担体をコーティングするための標準的なプロセス及びデバイス/用具に既に対処している。例えば、以下の選択の特許公報は、それぞれ、コーティング装置、コーティング方法、又はコーティングステーションなどの特殊ユニットのような、このようなプロセスの態様を強調点としている(国際公開第9947260(A1)号;米国特許第4550034号;同第4039482号;国際公開第9748500(A1)号;米国特許第6478874(B1)号;米国特許出願公開第20020178707(A1)号;独国特許第19781838(T1)号;国際公開第2011080525(A1)号;米国特許第4191126号;同第6627257(B1)号;同第6548105(B2)号;米国特許出願公開第20080107806(A1)号;米国特許第6149973号;同第6753294(B1)号)。
【0004】
原則として、コーティング技術は、2つの大まかな分類に割けることができる。第1の分類は、垂直方向に配向された基材(すなわち、支持体又はモノリス担体)まで下方から、液体コーティングスラリーを供する、コーティング策に関する。第2の分類のコーティング技術は、垂直方向に配向された基材の頂部までの、液体コーティングスラリーの適用について検討するものである。国際公開第9947260(A1)号では、トップダウンコーティング技術が開示されており、それによると、モノリシック支持コーティング装置は、所定量の液体成分の投入手段であって、その量が、意図された支持体内に実質的に完全に保持されるような量である投入手段と、上記の量の液体成分を受容するために支持体の頂部に位置可能である液体成分収容手段と、収容手段から支持体の少なくとも一部分に液体成分を抜くことができる圧力手段と、を備える。この方法を実施する更なる技術は、米国特許第9144796(B1)号、国際公開第2015145122(A2)号、欧州特許第1900442(A1)号又は同第2415522(A1)号に見出すことができる。
【0005】
特に、欧州特許第1900442(A1)号及び同第2415522(A1)号は、基材モノリスの上端部に均等な液体ウォッシュコートスラリーを適用するという課題に関する。このことは重要であり、その理由は、液体スラリー(ウォッシュコート)の不均等な分布が、吸引工程後に、このような基材のチャネル内のウォッシュコートの不均等な分布につながるためである。この課題は、これらの特許出願にて、基材モノリスを回転させることによって、又は特別なノズル技術を適用することによって、解決されると言われている。
【0006】
本発明はまた、液体コーティングスラリーが基材の上端面の領域にわたって均等に分布するように、液体コーティングスラリーをモノリス基材の上端面上で計量し、その後、対応する基材のチャネル間に圧力差を適用することによって、吸引及び/又は基材に加圧するという課題にも関している。関連する装置及びプロセスは、経済的及び/又は環境保護の観点から、先行技術に照らして有利であるべきである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様では、請求項1~6に記載の装置が提供される。請求項7~10は、対応するプロセスに関するものであり、本発明の第2の態様を特定する。
【0008】
本発明の第1の態様によれば、特に自動車車両の排気ガス浄化触媒の製造のための、基材のコーティング装置であって、基材は、円筒状支持体であり、各々が2つの端面、円周面、及び軸方向長さLを有し、第1の端面から第2の端面まで多数のチャネルが横に走っており、支持体を液体コーティングスラリーと接触させるために、この装置は、
支持体を垂直に逆転自在に保持するための保持ユニットと、
支持体の上端面に液体コーティングスラリーを供給するための投入ユニットと、
支持体に対して圧力差を適用するためのユニット、すなわち、真空及び/又は圧力を支持体の少なくとも1つの端面に適用することによるユニットと、を備えるものであり、投入ユニットは、可撓性膜、好ましくは有孔膜の形態でディフューザを備え、このディフューザを通って液体コーティングスラリーが支持体の上端面の領域に適用され、好ましくは液体コーティングスラリーに圧力を適用するときのみに適用される、コーティング装置が提供される。これを行うことによって、スラリーは、支持体の上端部の対応する領域に均一で均等に適用される。特別のディフューザを可撓性膜の形態で使用することにより、驚くべきことに、液体コーティングスラリーを、基材モノリス/支持体の少なくとも上端面の領域に適用することが可能であり、このようにして、このスラリーを適用した直後に、液体コーティング媒体は、更なる方策を適用することなく、その対応する領域の上に均等に分散される。次の工程では、圧力差を適用するためのユニット、すなわち吸引ユニット及び/又は圧力ユニットは、支持体の上端面に適用された液体コーティング媒体を、チャネル内に、並びに少なくとも多孔質及び/又はセラミック支持体に関して場合によりコーティングされる基材の壁内に、直ちに吸い込む、及び/又は押し込むことができる。
【0009】
本装置は、特に、支持体をコーティング装置まで給送する部分と、この装置から支持体を取り出すことに関連する部分と、を有する全コーティングステーションの一部であるように適合される。これは、いくつかの方法で行うことができる。例えば、基材は、コンベアベルト上でコーティング装置に直線的に供給することができ、同様にこのようなベルト上で直線的にコーティング装置から取り出すことができる。このようなコーティングステーションは、例えば、米国特許第4208454号及び同第3959520号に開示されている。通常、後で、コーティングされた基材を乾燥させ、特別なトンネル炉にて焼成する(中国特許第201420301913.2、米国特許第8476559号)。
【0010】
他方、支持体をコーティング装置まで、及びそれから離して移動させるための回転式ターンテーブルを有する、いわゆる回転式割出しターンテーブルは公知である(欧州特許第2321048(B1)号及びその中の引用文献)。好ましい要領では、本発明の装置は、コーティングステーションの一部であるように適合され、支持体を上記の装置に供給し、上記の装置から支持体を取り出すための、回転式ターンテーブルを備える。
【0011】
更に好ましい要領では、本発明のコーティング装置は、コーティングステーションの一部であるように適合され、装置は、支持体をこの装置内で上下逆さまに回転させる手段を更に備える。これを行うための手段は、欧州特許第2321048(B1)号及びその中の引用文献から公知である。本発明に適用可能なコーティング装置内で支持体を反転させるためのこのような手段が開示されている更なる文献は、ここで見出すことができる(国際公開第2011080525号;独国特許第102009009579(B4)号;特開2006021128号;米国特許出願公開第20070128354(A1)号)。
【0012】
保持ユニットは、液体コーティングスラリーを適用する前に、支持体をコーティングステーションに固定するための、当業者に公知の任意の保持ユニットであってもよい。通常、これらは、その内側に膨張可能な蛇腹(米国特許第4609563号)を有するコーティングステーションに堅く固定されている円形又は楕円形の用具であり、後者は支持体が保持ユニット内に導入された後に、膨張することによって垂直位置にクランプされ、それに対しほぼ気密の接続を形成する。これらの保持ユニットは、上記参照文献に既に頻繁に記載されている。好ましい要領では、この保持ユニットは、欧州特許第2321048(B1)号及びその中の引用文献に示されるように、回転式ターンテーブルデバイスに配置される。ここで、コーティングされる支持体は、手動で、又はロボットアームなどの自動手段を介して、ターンテーブル及び保持ユニットまで給送される。
【0013】
本発明の更なる好ましい特徴は、上記記載された保持ユニットの下方に設置される吸引ユニットの存在である。保持ユニットが支持体を保持ユニット内に、例えば、保持ユニットの内側で対応する蛇腹を膨張させることによって、クランプした後、基材の上端面にコーティングスラリーを適用する。続いて、吸引ユニットでは、支持体の下端部に真空を生じさせることができ、それにより、上端面に、適用されたコーティングスラリーを、チャネルを通して、場合によっては対応する基材の壁に吸引することができる。このような吸引ユニットは、上記で参照した先行技術に既に記載されている。好ましい実施形態では、吸引ユニットは、コーティングステーションの一部であるコーティングチャンバを備え、例えば、米国特許第8794178(B2)号に記載されているとおりであるが例外点としてここでは、コーティングスラリーが、支持体の上端面に適用される。しかし、有利な要領で、第1のコーティングスラリーを、本発明による支持体の上端面に第1の工程にて適用し、続いてコーティングスラリーを、チャネルを通して、場合によっては基材の壁に吸引し、続いて、例えば国際公開第2015140630(A1)号に示されるように、支持体の底部から第2のコーティングスラリーを適用することができ、逆も同じであることもまた、本発明に包含される。このようにして、2つのコーティングを、移動させることなく、又は更に反転させることなく、1つの同じ支持体に適用することができる。第1及び第2のコーティングスラリーは、同じであっても異なっていてもよい。したがって、本プロセスにより、ゾーンコーティングされたモノリス、又は二層若しくは三層コーティングをもたらすことができる。
【0014】
本発明では、液体コーティングスラリーが、コーティングされる支持体の上端面に適用されることを、必要とする。スラリーは、支持体の全上端面に(欧州特許第2415522(A1)号又は欧州特許第1900442(A1)号のように)供しても、その一部のみに供してもよい。支持体の上端面の部分領域のみをコーティングすることについて可能とするために、特定の技術が先行技術において確立されており、例えば、国際公開第9947260(A1)号に開示されている。後者は、基材モノリスの上端面の特定の領域をコーティング対象から除外するために、シャッター、アイリス、又はギロチン技術といったものを使用する。同じ技術を適用することもまた、本発明において好ましい場合がある。好ましい要領では、投入ユニットは、シャッターユニットを備え、液体コーティングスラリーを支持体の上端面の領域の一部又は全てに適用することが可能になる。
【0015】
本発明では、コーティングされる支持体の上端面に液体コーティングスラリーを投入するための、特別なデバイスを使用する。投入ユニットは、ディフューザを可撓性膜の形態で含み、このディフューザを通って、液体コーティングスラリーが、支持体の上端面に、又は少なくともその上端面の領域に供される。膜は、有利には、重力以外の力が膜上にあるコーティングスラリーに作用するとき、開放された又は広がった孔による、有孔可撓性材料から作製することができる。したがって、膜は特定の可撓性を有する必要がある。述べたように、可撓性が必要とされるが、これは、重力のみが加えられている間はウォッシュコートが通過することに対して好ましくは実質的に閉鎖される必要があるが、ウォッシュコートに特定の更なる圧力が加えられて膜を通して押し込まれたときにウォッシュコートに対して開放する必要がある、という事実による。非常に好ましい要領の例として、10mmの孔を有する支持プレート上の、50ShA(ショアA)のショア硬度を有する膜は、膜の孔の直径が、膜上にあるウォッシュコートスラリーに対して>0~6バール、好ましくは2~5バール、最も好ましくは3~4バールの圧力を適用することによって、少なくとも1.2、より好ましくは少なくとも1.4、最も好ましくは少なくとも約1.5~1.7倍で増大する(例えば0.1mmから1.6mmまで)、可撓性を有する。
【0016】
更に、有利には、膜は、好ましくは、ウォッシュコートの流れを考慮して、好ましくは膜を下方から支持する、剛性の非可撓性プレート又はグリッドである、支持体によって安定化される。膜及びその支持体により、複合体を形成することができる。この支持体は、例えば、膜によりウォッシュコートを基材の頂部まで供給することが可能になる位置に、開口部、例えば貫通孔を有する(図1)。支持プレート又はグリッドは、好ましくは、硬質プラスチック、セラミック、又はステンレス鋼材料から作製され、十分な高剛性を有する。プレートの剛性は、操作中に適用される圧力下で、プレートが最大1mmだけ変形するようなものである。薄くなるほど、プレートは良くなる。したがって、ここで好ましくは、鋼が、支持プレートとして使用される。有利な要領では、プレート又はグリッドは、圧力下で膜の開口部よりも大きい貫通孔を有する。理想的には、支持プレート又はグリッドは、ウォッシュコートの支持体への適用中にウォッシュコートと接触しない。
【0017】
図1によれば、支持プレートは、可撓性膜の下にある。膜は、図1[B(5:1)]に示されるように、孔をほとんど有しない。圧力が膜の頂部に乗っているウォッシュコートに適用されるとき、例えば、わずかな貫通孔/開口部のみが、ビットをより開放し、ウォッシュコートを通過させる。
【0018】
図2では、膜を通る流れは、2つの異なる可撓性の状態、及び膜の支持体の3つの異なる開口部について計算される。この配置、すなわち、有孔支持プレートの頂部にあるゴム膜(すなわち、図1)では、膜の頂部に配置された物質に適用される更なる圧力に応じて、膜を開閉することができることについて、知ることができる。
【0019】
図3では、異なるウォッシュコートを再現試験するために、3つの異なる液体について、0.001~10Pas(ハチミツの10Pas、グリセリンの1.422Pas、及び水の1mPas)の粘度で、計算を行った。図3に示される一例は、1.422Pasの粘度を有するグリセリンである。この範囲の粘度により、自動車用触媒の通常のウォッシュコート中に存在する粘度をかなり良く再現している。コーティング懸濁液及び溶液の粘度は、0.001Pasから最高100Pasまで変化し、典型的な値は0.01~10Pasの範囲である。ここでまた、特定の開口直径を有する膜は、圧力がないとウォッシュコートに対して実質的に閉鎖され、ウォッシュコートに圧力が適用されると開放されることを、知ることができる。液体コーティング媒体は、多くの場合、35%~52%の固形分含有量を有する。液体コーティング媒体が1~10Pasの粘度を有する場合、可撓性膜の最適な開口範囲は、1~2mmとすることができ、0.01~1Pasの粘度については、0.5~1mmの開口範囲を有することが好ましい。(粘度は、出願日時点でのDIN EN ISO3104:1999-12により測定される)。
【0020】
有利には、膜は、可撓性有機材料、例えば、いくつかの種類の天然又は人工エラストマー(https://en.wikipedia.org/wiki/Elastomer)から作製される。当業者によって考慮される材料は、天然若しくは合成ゴム、ポリエチレンプロピレンジエン、又はウォッシュコートの化学的性質と両立する他の可撓性材料からなる群から選択されるものである。膜は、最も好ましくはゴム様材料から作製される。好ましくは、膜は、圧力の影響下でウォッシュコートを流して通すための、貫通孔又は開口部を有する。
【0021】
膜を構築するために使用する材料、及び使用するウォッシュコートの粘度に応じて、孔は、一定の直径を有するものである必要がある。開口部は、本発明の規定の下で当業者であれば決定することができる。実際には、孔は、有利には、0.01~3mm、より好ましくは0.05~2mm、最も好ましくは0.1~1mmの最小直径を有する。加えて、孔の形状も重要なものである場合がある。好ましい実施形態では、膜の孔は、入口側、すなわち、ウォッシュコート供出ユニットに向かう側にて、出口側、すなわち基材に向かう側に対して、より広い直径を有する。より好ましくは、孔の入口側は、孔のウォッシュコート出口側での直径の2~5倍のサイズ、最も好ましくは3~4倍のサイズを有する。
【0022】
膜の厚さは、当業者の知見によって選択される。それはまた、膜を構築するために使用する材料の可撓性にも依存する。好ましくは、膜の厚さは、2~15mm、より好ましくは2~10mm、最も好ましくは2~5mmである。例示的な図1から知り得るように、開口部の出口側直径は、特定の長さの膜の断面よりも大きい。好ましくは、膜開口部のこの領域は、膜厚の1/6~1/2、より好ましくは1/5~1/3、最も好ましくは1/4~1/3にわたって伸びている。
【0023】
開口部の数及びそれらの分布は、当業者であれば決定することができる。異なって寸法決定及び形状決定した孔を可撓性膜内に有すると、有利なものになる場合がある。例えば、より少ないウォッシュコートが基材の周辺部に供出され、より多くのウォッシュコートが中央部にて適用される場合、例えば、膜の周辺部と比較して中央部にてより多くの又はより広い孔又は開口部が作り出されることによって、このプロファイルを満たすように適合された膜を使用することができる。このことは、ウォッシュコートを、膜孔を通して流すために、下にある支持プレート又はグリッドもまた、穿孔に関して同様のパターンを示す必要があることにより、明らかにしておくべきことである(図1)。この支持体の開口部は、膜の開口部よりもはるかに広い。好ましい実施形態では、支持体の開口部は、膜を通って流れるウォッシュコートに接触しないよう十分に広い。他方、剛性支持体はまた、膜自体に一体化されてもよい。例えば、当業者の知見内の硬質プラスチック若しくは金属又はいくつかの他の非可撓性若しくはより低可撓性材料の、剛性グリッド若しくはプレート、例えばセラミックのものは、可撓性膜材料によって包囲されてもよく、次いで、貫通孔又は開口部が、この複合デバイスの可撓性部分を通って作り出され、一種のディフューザとして作用する。このように、当業者は、デバイスを設置する際に、膜のみを取り扱い、膜に支持プレートを個別に加えて取り扱いしない必要がある。有利には、このように、両方の開口部が互いに一致してあることがもはやなく、ひいてはウォッシュコートの流れを遮断する程度にまで、膜が支持プレート全体にわたって移り回る恐れはない。
【0024】
更なる態様では、本発明は、特に自動車車両用の、排気ガス浄化触媒の製造のための、基材をコーティングするためのプロセスであって、基材は、円筒状支持体であり、各々が2つの端面、円周面、及び軸方向長さLを有し、第1の端面から第2の端面まで多数のチャネルが横に走っている、本発明による装置を使用する、液体コーティングスラリーによるプロセスに関する。
【0025】
最初に、コーティングされる基材をロボット又は手動により保持ユニットに供給し、保持ユニットを好ましくは回転式割出しターンテーブルに取り付け(欧州特許第2321048(B1)号及びその中の引用文献)、基材を垂直に位置決めし、保持ユニットの保持手段内に固定する。次の工程では、液体コーティングスラリーを、本発明による基材モノリスの少なくとも上端面の領域に適用する。ディフューザとして作用する可撓性膜を通して、液体コーティングスラリーをコーティングすることにより、欧州特許第2415522(A1)号におけるシャワーヘッドのように、コーティングスラリーを、基材のこの対応する領域にわたって、より均等に分布する。続いて、このように適用されたコーティングスラリーを、チャネル内に、又は場合によってはモノリスの壁に均等に吸引、又は押し込むことができる。
【0026】
本発明による好ましいプロセスでは、第1のコーティング工程にて上述のようにコーティングされている基材モノリスを、その後、回転させ、同様の第2のコーティング工程に供する。したがって、第1のコーティング工程後に基材を、例えばロボットアーム、旋回デバイスなどのようないくつかの自動手段によって、回転させることにより、第2のコーティングを頂部から反対側の端部まで適用することができ、それにより1つのコーティングプロセス内にて、基材上のコーティングのゾーン分けされた配置、及び/又は1つの同じ基材上の部分的又は完全な(すなわち、被覆された全長Lの)二重層をもたらすことができる。コーティング層を、同じ材料で作製しても、異なる材料で作製してもよい。
【0027】
別の非常に好ましい実施形態では、コーティングプロセスは、第1の液体コーティングスラリーを本発明による基材の上端面上に適用することが可能で、更にまた、第2の液体コーティングスラリーを、なお保持ユニットに固定されている基材の下端面に適用することも可能な、コーティング装置を用いて実行する。このプロセスでは、有利には本発明の概念に関連して、例えば、国際公開第2015140630(A1)号の装置の技術を使用する。したがって、本発明のコーティング装置はまた、ウォッシュコートで垂直にコーティングされる触媒支持体を逆転自在に保持及び固定するための第1の手段と、ウォッシュコートのモノリスへの流入を下方から制御する第2の手段とを備え、この第2の手段をこの第1の手段に取り付けることにより、コーティングプロセス中に、この第2の手段がウォッシュコートと、ウォッシュコートがモノリスに達する前に接触する。上記の第2の手段は、使用時にウォッシュコートに向かう入口側と支持体に向かう出口側とを有する孔、及びウォッシュコートが流れて通るための、入口側から出口側までの連通をもたらすチャネル、を含むプレートの形態を有し、このチャネルの少なくとも一部が、ウォッシュコート入口側でチャネル内の点よりも広くなっている軸に沿う非対称なチャネル幅を有し、この非対称な孔は、ウォッシュコート出口側でチャネル内の点よりも広くなっており、孔の出口及び入口よりも狭い領域は、少なくとも、入口側よりも出口に近い位置に位置調整された孔の一部のためのものである。
【0028】
本発明のプロセスの更に好ましい態様では、本発明のコーティング装置は、収容容器とレベリングユニットとを備え、レベリングユニットは、支持体に対して圧力差を適用するためのユニットが、ウォッシュコートを支持体に導入するのに活性になる前に、収容容器に適用されるウォッシュコートの表面を均一化することができる。ここで、基材に導入する前に、第1のウォッシュコートスラリーは、基材本体の端面と流体連通するように適合された収容容器まで給送される。ウォッシュコートが基材本体の上端面を通して導入される場合、収容容器は、基材の上端部に取り外し可能に取り付け可能な環状壁であってもよい。収容容器内に受容されると、基材に導入される前に、第1の触媒スラリーは、好ましくは、第1の触媒スラリー及び/又は収容容器(国際公開第07007370(A1)号)内で全体として振動を誘発することによるなどの剪断力の適用(例えば、機械による振動、超音波又超低周波音エネルギーの適用、空気の流れ、機械的平坦化、遠心力などの使用)によって、分布して一律にレベリングされる。収容容器内の触媒スラリーのレベリングにより、ウォッシュコートの均等な表面、ひいては基材のチャネル壁に沿った触媒スラリーの均等な分布が更に促進され、支持体上に一律の触媒層が形成される。レベリングは、好ましくは非接触測定による剪断力が収容容器内のウォッシュコートに影響を及ぼす様式で、例えば、特定の送風ノズルによってもたらされる、例えば超音波若しくは超低周波音又は単純な空気の流れにより、有効になる。
【0029】
驚くべきことに、幾つかの液体コーティングスラリーで基材をコーティングすることが、その部分を回転又は動き回らせることなく、可能である。これを行うことによって、基材モノリスを、同じ又は異なるコーティングスラリーで端面の同じ又は異なる側からコーティングして、基材モノリス上のコーティングに関して最小限の時間及び幅にて、上述のようにゾーン分け又は層状化した構想を実現し、コーティングプロセスの複雑性を少なくすることができる。
【0030】
本発明によって使用するコーティング装置は、例えば、国際公開第2011098450(A1)号又は同第2010114132(A1)号に記載されているように設計することができる。第1のウォッシュコートは、所定の条件下で支持体に導入され、モノリス担体の全長までであるが好ましくは100%未満、より好ましくは、約85%以上97%未満の長さ、更により好ましくは、約90%以上約95%以下の長さである長さのチャネルに沿って、湿潤状態の第1のウォッシュコート層が形成され、ただし100%未満の任意の長さが、適用に基づいて望ましい場合がある。担体の全長の100%未満を対象とすることによりまた、担体の反対側の端面を通るウォッシュコートスラリーの意図しない漏出を軽減することと、粒径及び組成の変動という問題(例えば、勾配の形成)を抑制することと、それによって、適用されたウォッシュコート層の一律な適用を促進することと、をはじめとする更なる利点がもたらされる。
【0031】
好ましくは、モノリス担体を回転させるとき、これを、ロボットアームなどのような当業者に公知の手段で、又は更に手動で行うことができる。ここでまた、第2のウォッシュコートは、所定の条件下でスラリーとして導入され、モノリス担体の全長までであるが好ましくは100%未満、より好ましくは、約85%以上97%未満の長さ、更により好ましくは、約90%以上約95%以下の長さであるチャネルに沿って、第1のウォッシュコートの上に少なくとも部分的に湿潤状態の第2のウォッシュコート層が形成されてもよく、ただし100%未満の任意の長さが、適用に基づいて望ましい場合がある。担体の全長の100%未満を対象とすることによりまた、基材の反対側の端面を通るウォッシュコートスラリーの意図しない漏出を軽減することと、粒径及び組成の変動という問題(例えば、勾配の形成)を抑制することと、それによって、適用された触媒層の一律な適用を促進することと、をはじめとする更なる利点がもたらされる。
【0032】
2つ以上のウォッシュコートスラリーを、下にあるウォッシュコートを更に乾燥させることなく互いにコーティングするという観点から、下にあるウォッシュコートのいくらかの固化又は硬化を起こし、別個の上にあるウォッシュコート層を得ることが必要である。例えば、支持体の下方又は頂部から、支持体のチャネルを通って搬送される、対応する酸性若しくは塩基性のガスの流れ又は液体の流れを使用することが可能である。酸性若しくは塩基性のガスの流れ又は液体の流れをウォッシュコートと反応させると、後者はその後、同じ又は異なる第2のウォッシュコートによってオーバーコーティングする準備ができているというのに必要な程度まで硬化及び固化し、その間には乾燥せず、これは、支持体の熱及び空気流処理(すなわち通常の乾燥プロセス)によって、適用されたウォッシュコートから液体成分を除去するために、支持体は保持ユニットから取り外されないことを意味する。
【0033】
コーティングされたウォッシュコートをモノリス担体上で本発明の手順によって固化させるために、適用されたウォッシュコートは、液体又はガスの酸若しくは塩基による処理の際に擬塑性になる能力を有する必要がある。また、金属酸化物懸濁液のpH処理における挙動に関する理論的考察(Tombacz et al.,Progr.Colloid Polym.Sci(1995),98 160-168;Zhou et al.,Chemical Engineering Science(2001),56,2901-2920)もなされているが、このようなモノリス担体上にコーティングされたウォッシュコートスラリーが、いくつかの成分の複雑な混合物であるという事実により、いくつかの微調整(固体/液体比、温度、添加剤など)が、実際にこの擬塑性挙動を示すウォッシュコートの製作のために必要な場合がある。ただし、これは、実施例及び添付の図面に示されるように、当業者であれば予備試験で確認することができる。
【0034】
ウォッシュコートがそのチャネル壁上又はそのチャネル壁内にコーティングされた後に、モノリス担体に供出される、酸性の液体流又は酸性のガス流は、実現可能性、費用、及び安全性の考慮に基づいて、当業者であれば選択することができる。好ましい実施形態では、それから、液体流又はガス流の酸性成分は、C~Cの分枝状又は非分枝状で飽和又は不飽和の有機酸、及びHNO、HCl、HSO、HPOなどの無機酸の群から選択される。有機酸の群内では、ギ酸、酢酸、又はプロピオン酸が、好ましくは水溶液として、又はエアロゾルとして、又はスチームの形式で、特に有利である。
【0035】
ウォッシュコートがそのチャネル壁上又はそのチャネル壁内にコーティングされた後に、モノリス担体に供出される、塩基性の液体流又は塩基性のガス流は、実現可能性、費用、及び安全性の考慮に基づいて、当業者であれば選択することができる。好ましい実施形態では、液体流又はガス流の塩基性成分は、アンモニア、CO、上述のようなC~Cの分枝状又は非分枝状で飽和又は不飽和の有機酸のアルカリ塩の群から選択される。
【0036】
したがって、上記の酸性又は塩基性成分は、液体媒体又はガス流の形態でモノリス担体の壁上又は壁内で、ウォッシュコートに適用される。ガス流について語るとき、これは、純粋なガスであっても、エアロゾルであっても、スチームの形式の流れであってもよい。当業者であれば、このような流れを生成する方法を知っている(https://en.wikipedia.org/wiki/Aerosol;http://en.wikipedia.org/wiki/Steam)。液体媒体は、最も好ましくは、成分の水溶液である。その濃度は、重要ではない。液体媒体中の成分は、しかし、必要な効果をもたらすのに十分である必要がある。
【0037】
加えて、モノリス担体に供給されるウォッシュコートに特定の化合物を添加することにより、酸性又は塩基性処理時の擬塑性挙動の効果を増進することができる。したがって、ウォッシュコートの擬塑性挙動を強めるために、国際公開第2016023808(A)号、米国特許第9144796(B1)号、及びその中の引用文献に記載されているような化合物(レオロジー変性剤)を採用することができる。更に、以下の化合物のリストにより、ウォッシュコートを、このような擬塑性挙動の影響をより更に受けやすいものにすることができる。擬塑性挙動を設定するためのレオロジー助剤は、長らく知られている。有用なレオロジー変性剤の概説は、D.Brown及びM.Rosenの出版物(The Rheology Modifier Handbook Author:David B.Brown and Meyer R.Rosen ISBN0-8155-1441-7 Published:1999)に見出すことができる。
【0038】
更に、以下の化合物のリストにより、ウォッシュコートを、より擬塑性にすることができる。好適なレオロジー変性剤を提供することができる第1の組の化合物は、直鎖又は分枝鎖多官能化有機分子であり、鎖内に2個以上の炭素原子を有し、最大約12個の炭素原子を有する(Cnでは、式中、2≦n≦12)。炭素骨格は、飽和であっても、シス又はトランス配置のいずれかの不飽和であってもよい。有機分子は、以下のリスト:カルボキシル、ヒドロキシル、又はカルボニルからの、少なくとも1つのカルボン酸部位、及び少なくとも1つの更なる官能性部位で官能化されてもよい。官能性部位の数は、2~nの範囲であってもよい。好ましくは、シュウ酸、酒石酸などのようなジカルボン酸の構造を有するものである。
【0039】
好適なレオロジー変性剤を提供することができる第2の組の化合物は、塩基性四級アミンの塩に基づく。ここで、1つ以上の四級アミン基が、Cn[式中、1≦n≦5]の長さを有する4つの炭素鎖に結合している。このカチオンは、以下のアニオン:ヒドロキシド、フルオライド、クロライド、ブロマイド、ヨーダイド、炭酸イオン、硫酸イオン、亜硫酸イオン、シュウ酸イオン、マレイン酸イオン、リン酸イオン、アルミン酸イオン、ケイ酸イオン、ホウ酸イオン、又は他の好適な有機若しくは無機対イオンのうちの1つを使用して、塩として平衡化されるが、アニオンはこれらに限定されない。
【0040】
好適なレオロジー変性剤を提供することができる第3の組の化合物としては、以下のリスト:水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、及び水酸化バリウムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
好適なレオロジー変性剤を提供することができる第4の組の化合物としては、原子番号57(La)から71(Lu)までの、並びにSc、Y、Ti、Zr、及びHfを含む、希土類元素の、硝酸塩、炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩をはじめとする、遷移又は希土類元素の単塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
様々な触媒スラリーのレオロジー特性は、それぞれの触媒スラリーのウォッシュコートに上述の化合物の任意の適切な組み合わせを提供することによって調整することができ、組み合わせとしては、共通する組での化合物の組み合わせ(例えば、第2の組からの2つ以上の化合物)及び異なる組からの化合物の組み合わせ(例えば、第1の組からの1つの化合物及び第3の組からの2つの化合物)が挙げられる。
【0043】
レオロジー変性剤は、0.01重量%~最大10重量%、好ましくは約0.1重量%~7.5重量%、より好ましくは約0.1重量%~約5重量%の濃度で添加される。別個の触媒スラリーの所定の初期粘度、及びそれぞれの初期粘度の差は、異なるレオロジー変性剤(又はこれらの組み合わせ)を選択することによって、及び/又は1つ以上のレオロジー変性剤の各触媒スラリーに対する重量パーセントを調整することによって、調整することができる。
【0044】
好ましくは、本発明によってコーティングされた担体は、フロースルー型又はウォールフロー型のモノリスである。本発明に使用することができる好適な基材は、流路がそれを通る流体の流れに対し開放されるように、基材の入口面又は出口面から基材を貫通する微細で互いに平行なガス流路を有するタイプのモノリシック基材であり、これらはハニカム型フロースルー基材と称される。流路は、流体入口から流体出口まで本質的に直線の経路であり、流路を通って流れるガスが触媒材料と接触するように、触媒材料がウォッシュコートとして上部又は内部にコーティングされた壁によって画定される。モノリシック基材の流路は、薄壁のチャネルであり、台形、長方形、正方形、正弦波形、六角形、楕円形、円形などの任意の好適な断面形状及びサイズであってもよい。このような構造は、断面積の1平方インチ当たり約400~900以上のガス入口開口部(即ちセル)を含んでよい(62~140セル/cm)。壁厚、すなわち、基材のチャネルを互いに分離する壁の厚さは通常、約0.005cm~約0.25cmである。
【0045】
使用することができる好適な基材は、流路がそれを通る流体の流れに対し開放されるように、基材の入口面又は出口面から基材を貫通する微細で互いに平行なガス流路を有するタイプのモノリシック基材/支持体であり、これらはハニカム型フロースルー基材と称される。流路は、流体入口から流体出口まで本質的に直線の経路であり、流路を通って流れるガスが触媒材料と接触するように、触媒材料がウォッシュコートとして上部又は内部にコーティングされた壁によって画定される。モノリシック基材の流路は、薄壁のチャネルであり、台形、長方形、正方形、正弦波形、六角形、楕円形、円形などの任意の好適な横断面形状及びサイズであってもよい。このような構造は、断面積の1平方インチ当たり約400~900以上のガス入口開口部(すなわちセル)を含んでよい(62~140セル/cm)。壁厚、すなわち、基材のチャネルを互いに分離する壁の厚さは通常、約0.005cm~約0.25cmである。
【0046】
本発明によってコーティングされる基材はまた、好ましくは、ハニカム型ウォールフローフィルタであってもよい。コーティング組成物を担持するために有用なウォールフロー基材は、複数の微細な、基材の長手方向軸線に沿って伸びる実質的に互いに平行なガス流路を有する。典型的には、各流路は、基材本体の一端において遮断され、代替流路では両端面において遮断される。本発明のプロセスに使用される特定のウォールフロー基材としては、流体の流れが背圧の過剰な上昇又は物品に対する圧力低下を引き起こすことなく通過する、多孔質薄壁ハニカム(モノリス/支持体)が挙げられる。通常、清浄なウォールフロー物品が存在すると、0.036psi~10psiの背圧が生じる。
【0047】
上述の基材は、好ましくは、金属又はセラミック様のモノリスであり、後者は、任意の好適な耐火性材料、例えば、コーディエライト、コーディエライト-アルミナ、窒化ケイ素、ジルコンムライト、スポジュメン、アルミナ-シリカマグネシア、ジルコンシリケート、シリマナイト、マグネシウムシリケート、ジルコン、ペタライト、アルミナ、アルミノシリケートなどから作製される。本プロセスによる自動車車両用の排気ガス触媒の製造に好適なフロースルーモノリスを鑑みると、それらは、好ましくは、コーティングの前に、20%より大きい、概ね20%~55%、特に22%~50%の多孔率を有すること[出願日時点でのDIN66133によって測定して]。平均孔径は、少なくとも1μm、例えば、1.5μm~15μm、好ましくは、3μmより大きく、特に、5μm~9μm、又は10μm~15μmであること[出願日時点でのDIN66134によって測定して]が好ましい。自動車車両用の排気ガス触媒に好適な、初期に5μm~15μmの平均孔径及び25%~40%の多孔率を有する、仕上げた基材が特に特に有利である。本プロセスによる自動車車両用の排気ガスフィルタの製造に好適なウォールフローフィルタを鑑みると、それらは、好ましくは、40%より大きい、概ね40%~75%、特に45%~70%の多孔率を有すること[出願日時点でのDIN66133によって測定して]が好ましい。平均孔径は、少なくとも7μm、例えば、7μm~34μm、好ましくは、10μmより大きく、特に、10μm~20μm、又は21μm~33μmである[出願日時点でのDIN66134によって測定して]。自動車車両用の排気ガスフィルタに好適な、初期に10μm~33μmの平均孔径及び50%~65%の多孔率を有する、仕上げた基材が特に有利である。
【0048】
上述の多孔率及び平均孔径を有する基材がウォッシュコートでコーティングされると、十分なレベルのコーティング組成物が基材の孔上及び/又は孔内に担持され、優れた汚染物質の変換効率、及びフィルタの観点では煤煙の焼き払いを実現することができる。これらの基材は、十分な排気流特性を保持することがなお可能であり、すなわち、触媒の担持にもかかわらず許容可能な背圧を保持することが可能である。
【0049】
「コーティング」という表現は、有害排気汚染物質に対する触媒的活性材料及び/又は吸蔵成分を、上述のウォールフローフィルタ又はフロースルーモノリスと同じ要領にて構成されていてもよい実質的に不活性な基材上に適用すること、という意味に理解される。コーティングは実際の触媒機能を発揮し、通常、高度に分散した形態で、温度の安定した表面積の広い金属酸化物(以下を参照されたい)上に堆積する吸蔵材料及び/又は触媒活性金属を含有する。コーティングは、通常、吸蔵材料及び/又は触媒活性成分の液体コーティング媒体、ウォッシュコートとも称されるものの、不活性基材の壁への適用により行われる。液体コーティング媒体の適用後、支持体を乾燥させ、必要に応じて高温で焼成する。コーティングは、1つの層で構成されても、又は、基材に上下に重なるように(多層形態で)適用された複数の層、及び/若しくは互いにずらして(ゾーンで)適用された複数の層から構成されてもよい。
【0050】
液体コーティング媒体/スラリーは、例えば、吸蔵材料及び/又は触媒活性材料若しくはその前駆体、及び/又は無機酸化物、例えば、CHA、LEVのようなゼオライト、若しくは同様の8員環ゼオライト、又は、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、又はそれらの組み合わせのような耐火性酸化物を含有する、自動車車両用の排気ガス触媒(フロースルーモノリス又はフィルタ)の懸濁液又は分散液(「ウォッシュコート」)であり、耐熱性酸化物に、例えば、ケイ素又はランタンを添加することが可能である。ゼオライトは、Fe及び/又はCuのような金属カチオンで交換することができる。バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、銅、亜鉛、ニッケル、若しくは、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジウム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウムなどの希土類金属、又はそれらの組み合わせの酸化物は、触媒活性成分として使用することができる。白金、パラジウム、金、ロジウム、イリジウム、オスミウム、ルテニウム、及びそれらの組み合わせなどの貴金属も、触媒活性成分として使用することができる。これらの金属はまた、互いに若しくは他の金属とともに合金として、又は酸化物として存在することもできる。これらの金属はまた、上記の貴金属の硝酸塩、亜硫酸塩、若しくはオルガニル、及びそれらの混合物などの、前駆体としても存在することができ、特に、硝酸パラジウム、亜硫酸パラジウム、硝酸プラチナ、亜硫酸プラチナ、又はPt(NH(NOを、液体コーティング媒体中で使用することができる。約400℃~約700℃で焼成することにより、触媒活性成分を前駆体から得ることができる。自動車排気ガス触媒の製造用の基材をコーティングするために、最初に、無機酸化物の懸濁液又は分散液をコーティングに使用することができ、その後、後続のコーティング工程において、1種以上の触媒活性成分を含有する懸濁液又は分散液を適用することができる。ただし、液体コーティング媒体が、これらの成分の両方を含有することも可能である。
【0051】
ここで記載されているプロセスの考慮では、初期の装置の好ましい実施形態が準用され、逆もまた同じである。更なる好ましい態様では、本発明は、本発明による装置を備える、コーティングステーションに関する。また、ここで開示されるプロセス及び/又は装置の好ましい実施形態は、コーティングステーションに対して準用される。これは、特に、上述のプロセス及び/又は装置、例えば回転式ターンテーブル、担持及びアンロードのためのロボットアーム、又は保持ユニット内の基材の回転のようなものに関して論じたより機械的な態様についての場合、並びに基材の回転なしで基材モノリスを両端側からコーティングする場合である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1】それぞれ例示的な開口部を有する、プレートによって支持された膜を示す。
図2】支持ステンレス鋼プレートの開口部の1mmの開口部で直径が異なっていく開口部と、異なる可撓性とを有する膜、及び1.49Pasの粘度を有する媒体についての計算結果である。
図3】異なる開口部を有する膜、及び1.49Pasの粘度を有する媒体についての計算結果である。
図4】計算用のモデルである。
図5】計算用に適用される流れの線である。
【0053】
[実施例]
有限要素解析の説明
1.演算パラメータ
演算を、2D軸対称に導く。本発明者らは、ムーニーリブリン超弾性挙動を低くして使用している。
ゴム特性を、ショアA70及びショアA50のゴムコンパウンドとする。
グリッド材料を、非変形性とみなす。
摩耗率を、0.5とする。
【0054】
2.初期条件
演算のために、本発明者らは、以下の負荷を適用した。
噴霧デバイス内側での圧力適用。図4を参照されたい。
演算を、グリッド上の3つの異なる孔径について行う。
【0055】
【数1】
【0056】
3.演算説明(流れ/圧力)
3.1演算仮説
演算のために、図5を通る流れの線に適用される、ベルヌーイの定理を使用する。
S1は進入部分であり、S2は出口部分である。
損失電荷係数は、以下による。
【0057】
【数2】
【0058】
等式については、以下の仮説を認める。
電荷の定常損失なし。
層流(Re<2000)。
【0059】
【数3】
【0060】
v=円筒管内での最大流体速度
μ=ポワズ単位での流体絶対粘度
R=メートル単位での管半径
Δρ=パスカル単位での、管内で観測された圧力差
ρ=比重[kg/m
【0061】
念のため、ベルヌーイの式
【0062】
【数4】
【0063】
α=フローの種類を表す係数
(α=1は乱流、α=2は層流)
1m=管内(部分S1)での平均流体速度
2m=管内(部分S2)での平均流体速度
Z=メートル単位での、考慮される点の高さ
g=加速度9.81ms-2
∧=電荷の定常損失の係数
L=メートル単位での、同様の部分の管長さ
D=メートル単位での、管直径
K=単発的な電荷の損失の係数
Q=v
Q=流れ/s
V=平均速度
S=考慮される管部分
【0064】
以下の関係式により、本発明者らがエクセルファイルを増強することで、選択された流体の流れ/圧力曲線を描くことが可能になる。
【0065】
【数5】
【0066】
【表1】
図1
図2
図3
図4
図5