(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-02
(45)【発行日】2023-02-10
(54)【発明の名称】液体シリコーンゴム組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 83/07 20060101AFI20230203BHJP
C08L 83/05 20060101ALI20230203BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20230203BHJP
C08L 101/12 20060101ALI20230203BHJP
D06M 15/643 20060101ALI20230203BHJP
C09D 11/102 20140101ALI20230203BHJP
C09D 183/04 20060101ALI20230203BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20230203BHJP
【FI】
C08L83/07
C08L83/05
C08K3/36
C08L101/12
D06M15/643
C09D11/102
C09D183/04
C09D7/61
(21)【出願番号】P 2020500695
(86)(22)【出願日】2018-07-12
(86)【国際出願番号】 US2018041725
(87)【国際公開番号】W WO2019014403
(87)【国際公開日】2019-01-17
【審査請求日】2021-06-28
(31)【優先権主張番号】201741024634
(32)【優先日】2017-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】プカン、フーメン
(72)【発明者】
【氏名】サワント、パラグ
(72)【発明者】
【氏名】シンデ、タシャー
(72)【発明者】
【氏名】ナイル、パドマダス
(72)【発明者】
【氏名】ピレー、ショーム
【審査官】吉田 早希
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-097202(JP,A)
【文献】特開2006-111782(JP,A)
【文献】特開平07-150047(JP,A)
【文献】特開平07-003161(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0264133(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00 - 13/08
C08L 1/00 - 101/14
C08G 77/00 - 77/62
C09D 1/00 - 10/00
C09D 101/00 - 201/10
C09D 11/00 - 13/00
D06M 13/00 - 15/715
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体シリコーンゴム組成物であって、
(i)液体シリコーンゴムベースと、
(ii)前記組成物の3~8重量%の、前記液体シリコーンゴムベースの補強充填剤とは異なる疎水性シリカエアロゲルと、
(iii)前記組成物の3~8重量%の、エラストマー粉末と、
(iv)揮発性溶剤と、を含み、
前記液体シリコーンゴムベース(i)が、少なくとも1つの液体アルケニル含有ポリジオルガノシロキサン(A)と、少なくとも1つのオルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)と、少なくとも1つの補強充填剤(C)と、少なくとも1つのヒドロシリル化触媒(D)と、を含み、
前記疎水性シリカエアロゲル(ii)の吸水量は、粒子100gあたり10g未満であり、
疎水性シリカエアロゲル(ii):エラストマー粉末(iii)の重量比が、0.8:1~2:1である、液体シリコーンゴム組成物。
【請求項2】
前記疎水性シリカエアロゲル(ii)が、BET法を使用して500~1200m
2/gの範囲の表面積を有する、請求項
1に記載の液体シリコーンゴム組成物。
【請求項3】
前記疎水性シリカエアロゲル(ii)が、レーザ光散乱によって測定される際に5~1000μmの範囲の粒度を有する、請求項1
または2に記載の液体シリコーンゴム組成物。
【請求項4】
前記エラストマー粉末(iii)が、レーザ回折式粒度分布分析器によって測定される際に0.1~1000μmの範囲の粒度を有する、請求項1~
3のいずれかに記載の液体シリコーンゴム組成物。
【請求項5】
疎水性シリカエアロゲル(ii)とエラストマー粉末(iii)との重量比が0.80~1.5:1の範囲である、請求項1~
4のいずれかに記載の液体シリコーンゴム組成物。
【請求項6】
前記揮発性溶剤(iv)が、シリコーン系揮発性溶剤および炭化水素系揮発性溶剤、ならびにこれらの混合物から選択される、請求項1~
5のいずれかに記載の液体シリコーンゴム組成物。
【請求項7】
前記シリコーンゴムベースが、シリコーンテキスタイル捺染インクである、請求項1~
6のいずれかに記載の液体シリコーンゴム組成物。
【請求項8】
周囲温度で成分(i)~(iv)を混合することを含む、請求項1~
7のいずれかに記載の液体シリコーンゴム組成物を調製するための方法。
【請求項9】
テキスタイルをコーティングするための方法であって、液体シリコーンゴム組成物で前記テキスタイルをコーティングすることと、前記組成物を硬化させてコーティングを形成することと、を含み、前記液体シリコーンゴム組成物が、
(i)液体シリコーンゴムベースと、
(ii)前記組成物の3~8重量%の、前記液体シリコーンゴムベースの補強充填剤とは異なる疎水性シリカエアロゲルと、
(iii)前記組成物の3~8重量%の、エラストマー粉末と、
(iv)揮発性溶剤と、を含むことを特徴とし、
前記液体シリコーンゴムベース(i)が、少なくとも1つの液体アルケニル含有ポリジオルガノシロキサン(A)と、少なくとも1つのオルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)と、少なくとも1つの補強充填剤(C)と、少なくとも1つのヒドロシリル化触媒(D)と、を含み、
前記疎水性シリカエアロゲル(ii)の吸水量は、粒子100gあたり10g未満であり、
疎水性シリカエアロゲル(ii):エラストマー粉末(iii)の重量比が、0.8:1~2:1である、方法。
【請求項10】
前記組成物が、スクリーン捺染によって適用される、請求項
9に記載のテキスタイルをコーティングする方法。
【請求項11】
請求項1~
7のいずれか一項に記載の硬化組成物でコーティングされたテキスタイル。
【請求項12】
請求項1~
7のいずれか一項に記載の液体シリコーンゴム組成物から硬化した物品。
【請求項13】
請求項1~
7のいずれか一項に記載の液体硬化性シリコーンゴム組成物から硬化したシリコーンエラストマーを基材上に含む複合部品。
【請求項14】
テキスタイルをコーティングするための請求項1~
7のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項15】
テキスタイル材料上にコーティングをスクリーン捺染するための、請求項1~
7のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体シリコーンゴム(LSR)組成物、ならびにそれにより作製された物品およびコーティングした物品に関する。組成物を提供するプロセス、および基材上にコーティングまたは捺染するプロセスも開示する。
【0002】
硬化前に液体の形態であり、硬化後にエラストマー製品の形態である、液体シリコーンゴム(「LSR」)組成物は、シリコーン産業において周知である。LSRには多くの用途がある。LSRは、得られる処理されたテキスタイルの柔らかい手触りと洗濯耐久性のため、テキスタイル捺染用途において魅力的に使用されてきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、テキスタイルを処理するために使用される現在利用可能なLSRは、テキスタイルに粘着性および不満足な塗膜外観を与える傾向がある。場合によっては、艶消しまたは光沢のある外観を得ることが望ましい。セルロース繊維のようないくつかのテキスタイルはまた、フィブリル化の影響を受け、コーティングされたテキスタイルに望ましくない磨耗した外観を与える傾向がある。
【0004】
本発明は、
(i)液体シリコーンゴムベースと、
(ii)前記組成物の3~8重量%の、前記液体シリコーンゴムベースの補強充填剤とは異なる疎水性シリカエアロゲルと、
(iii)前記組成物の3~8重量%の、エラストマー粉末と、
(iv)揮発性溶剤と、を含み、
疎水性シリカエアロゲル(ii):エラストマー粉末(iii)の重量比が0.8:1~2:1である、液体シリコーンゴム組成物、を提供する。
【0005】
本発明はさらに、前記組成物を調製する方法、および前記組成物を使用してテキスタイルにコーティングするまたは捺染する方法に関する。
【0006】
最後に、液体シリコーンゴム(LSR)組成物における疎水性シリカエアロゲルとエラストマー粉末との組み合わせの使用が開示されている。場合によっては、液体シリコーンゴム(LSR)組成物はテキスタイルコーティングに有用である。
【0007】
本発明の組成物は、低粘着性とともに、満足のいく感覚および触覚および伸びを有すると同時に、艶消しの外観を有する物品またはコーティングを可能にする。さらに、比較LSRコーティングとは対照的に、本コーティングは、フィブリル化を回避しながらセルロース繊維のコーティングを可能にする。
【0008】
本発明の範囲において、フィブリル化は、典型的には視覚的に評価され、オレンジピール効果としても知られる望ましくない摩耗した視覚効果をもたらす繊維劣化として理解される。
【0009】
(i)液体シリコーンゴムベース(硬化性シリコーンゴム配合物)
誤解を避けるため、また本開示では以降、液体シリコーンゴムベース(i)という用語は、本明細書に記載の液体シリコーンゴム組成物を作製するために上記の成分(ii)、(iii)および(iv)と混合される硬化性シリコーンゴム配合物を記載するために使用される。上記で定義した液体シリコーンゴムベースには、異なる組成が存在する。典型的には、本発明に有用な液体シリコーンゴムベースは、少なくとも1つの液体アルケニル含有ポリジオルガノシロキサン(A)と、少なくとも1つのオルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)と、少なくとも1つの補強充填剤と(C)と、少なくとも1つのヒドロシリル化触媒(D)と、任意に追加成分と、を含む、上記で定義された、追加の硬化性液体シリコーンゴムベースである。
【0010】
A)液体アルケニル含有ポリジオルガノシロキサン
成分(A)は、各分子に少なくとも2個のケイ素結合アルケニルラジカルを含む液体ポリジオルガノシロキサンである。成分(A)中の好適なアルケニルラジカルは、典型的には2~10個の炭素原子、好ましくはビニル、イソプロペニル、アリル、および5-ヘキセニルを含む。成分(A)は、通常、アルケニルラジカル以外のケイ素結合有機基をさらに含む。そのようなケイ素結合有機基は、典型的には、1~10個の炭素原子を含む一価の飽和炭化水素基、およびハロゲン原子など、非置換または本発明の組成物の硬化を妨げない基で置換された6~12個の炭素原子を含む一価の芳香族炭化水素基から選択される。ケイ素結合有機基の好ましい種は、例えば、メチル、エチル、およびプロピルなどのアルキル基、3,3,3-トリフルオロプロピルなどのハロゲン化アルキル基;およびフェニルなどのアリール基である。
【0011】
成分(A)の分子構造は通常線形であるが、分子内に3価のシロキサン単位が存在するため、いくつかの分岐が生じ得る。本発明のLSR組成物を硬化させることにより調製されたエラストマーにおいて有用なレベルの物理的特性を達成するために、成分(A)の分子量は、ASTM D1084方法Bのカップ/スピンドル法に依拠し、粘度範囲に適切なスピンドルを使用して、25℃で少なくとも0.1Paの粘度を達成するのに十分であるべきである。成分(A)の分子量の上限は特に制限されず、典型的には本発明のLSR組成物の加工性によってのみ制限される。
【0012】
成分(A)の例は、2つの末端にアルケニルラジカルを含むポリジオルガノシロキサンであり、一般式(I)で表される:
R’R”R”’SiO-(R”R”’SiO)m-SiOR”’R”R’(I)
式(I)において、各R’は、典型的にはビニル、アリル、および5-ヘキセニルなどの2~10個の炭素原子を含むアルケニルラジカルである。
【0013】
R”はエチレン性不飽和を含まず、各R”は同じまたは異なっていてもよく、通常1~10個の炭素原子を含む一価飽和炭化水素ラジカル、および通常6~12個の炭素原子を含む一価芳香族炭化水素ラジカルから個別に選択される。R”は、非置換であっても、ハロゲン原子などの本発明の組成物の硬化を妨げない1つ以上の基で置換されていてもよい。R”’は、R’またはR”である。mは、成分(A)がASTM D1084方法Bのカップ/スピンドル法に依拠し、粘度範囲に適切なスピンドルを使用して、25℃で少なくとも0.1Pa.s、通常25℃で0.1~300Pa.sの粘度を有するのに好適な重合度を表す。
【0014】
典型的には、式(I)による化合物に含まれるすべてのR”およびR”’基は、メチル基である。代替的に、式(I)による化合物中の少なくとも1つのR”および/またはR”’基はメチルであり、他はフェニルまたは3,3,3-トリフルオロプロピルである。この優先性は、ポリジオルガノシロキサン(成分(A))を調製するために典型的に使用される反応物の入手可能性、およびそのようなポリジオルガノシロキサンを含む組成物から調製される硬化エラストマーの望ましい特性に基づく。
【0015】
末端基のみにエチレン性不飽和炭化水素ラジカルを含む成分(A)の典型的な例には、ジメチルビニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン、ジメチルビニルシロキシ末端ポリメチル-3,3,3-トリフルオロプロピルシロキサン、ジメチルビニルシロキシ末端ジメチルシロキサン-3,3,3-トリフルオロプロピルメチルシロキシンコポリマー、およびジメチルビニルシロキシ末端ジメチルシロキサン/メチルフェニルシロキサンコポリマーが含まれるが、これらに限定されない。
【0016】
一般に、成分(A)は、ASTM D1084方法Bのカップ/スピンドル法に依拠し、粘度範囲に適切なスピンドルを使用して、25℃で少なくとも0.1Pa.s、典型的には0.1~300Pa.s、より典型的には25℃で0.1~100Pa.s、の粘度を有する。
【0017】
(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン
成分(B)はオルガノハイドロジェンポリシロキサンであり、以下に記載される成分(E)の触媒活性下で、成分(B)中のケイ素結合水素原子と、成分(A)中のアルケニル基との付加反応による、成分(A)を硬化するための架橋剤として機能する。成分(B)は通常3つ以上のケイ素結合水素原子を含むため、この成分の水素原子は成分(A)のアルケニルラジカルと十分に反応してそれとネットワーク構造を形成し、それによって組成物を硬化できる。
【0018】
成分(B)の分子配置は特に制限されず、直鎖、分岐を含む直鎖、または環状であり得る。この成分の分子量は特に制限されないが、成分(A)との良好な混和性を得るため、粘度は典型的には、ASTM D1084方法Bのカップ/スピンドル法に依拠し、粘度範囲に適切なスピンドルを使用して、25℃で0.001~50Pa.sである。
【0019】
成分(B)は、通常、成分(B)のケイ素結合水素原子の総数と成分(A)のすべてのアルケニル基の総数とのモル比が0.5:1~20:1である量で添加される。この比が0.5:1未満の場合、十分に硬化した組成物は得られない。比が20:1を超える場合、加熱すると硬化組成物の硬度が増加する傾向がある。
【0020】
成分(B)の例には、
(i)トリメチルシロキシ末端メチルハイドロジェンポリシロキサン、
(ii)トリメチルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン-メチルハイドロジェンシロキサン、
(iii)ジメチルハイドジェンシロキシ末端ジメチルシロキサン-メチルハイドロジェンシロキサンコポリマー、
(iv)ジメチルシロキサン-メチル水素シロキサン環状コポリマー、
(v)(CH3)2HSiO1/2単位とSiO4/2単位とで構成されるコポリマー、および
(vi)(CH3)3SiO1/2単位、(CH3)2HSiO1/2単位、およびSiO4/2単位で構成されるコポリマーが含まれるが、これらに限定されない。
【0021】
(C)補強充填剤
本発明のLSR組成物を使用して調製できるいくつかのタイプの硬化エラストマーを特徴付ける高レベルの物理的特性を達成するために、微粉シリカなどの補強充填剤を含めることが望ましい場合がある。硬化性組成物の処理中に「クレーピング」または「クレープ硬化」と呼ばれる現象を防止するために、シリカおよび他の補強充填剤をしばしば1つ以上の既知の充填剤処理剤で処理する。
【0022】
シリカの微粉化形態が好ましい補強充填剤である。コロイド状シリカは、表面積が比較的大きく、通常は少なくとも50m2/gであるため、特に好ましい。BET法に従って測定された100~400m2/g、代替的に(BET法を使用する)100~300m2/gの表面積を有する充填剤が典型的に使用される。コロイド状シリカは、沈降シリカまたはヒュームドシリカの形で提供できる。両方のタイプのシリカが市販されている。
【0023】
本発明のLSR組成物に使用される微粉シリカまたは他の補強充填剤の量は、少なくとも部分的に、硬化エラストマーに所望される物理的性質により決定される。本発明のLSR組成物は、通常、ポリジオルガノシロキサン(成分(A))の重量に基づいて、5~50重量部、典型的には10~30重量部の補強充填剤(例えばシリカ)を含み、成分Aの100部ごとに典型的には5~50部、より典型的には10~30部含む。
【0024】
充填剤が本来的に親水性の場合(未処理シリカ充填剤など)、通常は処理剤で処理される。このことは、組成物への導入前またはインサイチュ(すなわち、本発明のLSR組成物の他の成分の少なくとも一部の存在下で充填剤が完全に処理され均質材料に均一に分散するまで、これらの成分を一緒にブレンドすることによって)であってもよい。通常、未処理の充填剤は、成分(A)の存在下、インサイチュで処理剤により処理される。
【0025】
典型的には、充填剤は、例えば、脂肪酸またはステアリン酸などの脂肪酸エステルを使用して、またはオルガノシラン、ポリジオルガノシロキサン、またはオルガノシラザンヘキサアルキルジシラザンまたは短鎖シロキサンジオールを使用して表面処理して充填剤を疎水性にし、このため、取り扱いが容易で、他の成分との均質な混合物が得られる。充填剤の表面処理により、充填剤は、シリコーンポリマーにより容易に湿潤させる。これらの表面改質充填剤は、凝集せず、シリコーンポリマーに均一に組み込むことができる。これにより、未硬化組成物の室温での機械的特性が改善される。
【0026】
典型的には、充填剤処理剤は、処理中のオルガノシロキサン組成物のクレーピングを防止するために適用可能な当技術分野で開示されている任意の低分子量有機ケイ素化合物であり得る。
【0027】
処理剤は、各分子中に平均2~20個のジオルガノシロキサン繰り返し単位を含む液体ヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサン、ヘキサオルガノジシロキサン、ヘキサオルガノジシラザンなどが例示されるが、これらに限定されない。ヘキサオルガノジシラザンは、充填剤を処理するために使用される条件下で加水分解して、ヒドロキシル基を有する有機ケイ素化合物を形成することを意図している。典型的には、処理剤中に存在するケイ素結合炭化水素ラジカルの少なくとも一部は、成分(A)および(B)に存在する炭化水素ラジカルの大部分と同一である。少量の水を、加工助剤としてシリカ処理剤と一緒に加えることができる。
【0028】
処理剤は、シリカまたは他の充填剤粒子の表面に存在するケイ素結合ヒドロキシル基と反応して、これらの粒子間の相互作用を減らすことにより機能すると考えられている。
【0029】
充填剤は、配合する前に処理剤で処理されてもよく、処理された充填剤は市販されている。
【0030】
(D)ヒドロシリル化触媒
本発明のLSR組成物の硬化は、白金金属(白金、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジウムおよびパラジウム)の1つまたはそのような金属の1つ以上の化合物であるヒドロシリル化触媒である成分(D)によって触媒される。ヒドロシリル化反応におけるこれらの触媒の活性レベルが高いため、白金および白金化合物が好ましい。
【0031】
好ましい硬化触媒の例には、白金黒、さまざまな固体支持体上の白金、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、塩化白金酸とオレフィンなどの液体エチレン性不飽和化合物との、およびエチレン性不飽和ケイ素結合炭化水素ラジカルを含むオルガノシロキサンとの、錯体が含まれるが、これらに限定されない。塩化白金酸とエチレン性不飽和炭化水素ラジカルを含むオルガノシロキサンとの錯体は、US3,419,593に記載されている。
【0032】
本発明のLSR組成物中の成分(D)の濃度は、成分(A)および(B)の総合重量に基づいて、百万部あたり0.1~500重量部の白金族金属(ppm)の白金族金属濃度に相当する。
【0033】
前述の成分(A)、(B)、および(D)の混合物は、周囲温度で硬化し始め得る。
【0034】
本発明のLSR組成物のより長い作業時間またはポットライフを得るために、触媒の活性を遅延または抑制するために好適な抑制剤を使用することができる。例えば、US3,989,887号に記載されているようなアルケニル置換シロキサンを使用することができる。環状メチルビニルシロキサンが好ましい。
【0035】
白金触媒の既知の抑制剤の別の種類には、US3,445,420に開示されているアセチレン化合物が含まれる。2-メチル-3-ブチン-2-オールなどのアセチレン系アルコールは、25℃で白金含有触媒の活性を抑制する好ましい種類の抑制剤である。これらの抑制剤を含む組成物は、通常、実用的な速度で硬化するために70℃以上の温度で加熱する必要がある。
【0036】
場合によっては、金属1モルあたり抑制剤1モル程度の低い抑制剤濃度で十分な保存安定性と硬化速度が得られる。他の例では、金属1モルあたり最大500モルの抑制剤の、抑制剤濃度が必要である。所定の組成物における特定の抑制剤の最適濃度は、日常的な実験により容易に決定される。
【0037】
追加の任意成分
シリコーンゴム組成物の意図する用途に応じて、追加の任意成分が液体シリコーンゴムベース組成物に存在してもよい。そのような任意成分の例には、導電性充填剤、熱伝導性充填剤、非導電性充填剤、ポットライフ延長剤、難燃剤、潤滑剤、非補強充填剤、顔料着色剤、接着促進剤、連鎖延長剤、シリコーンポリエーテル、およびこれらの混合物が含まれる。
【0038】
添加剤のさらなる例には、離型剤、希釈剤、溶剤、紫外線安定剤、殺菌剤、湿潤剤、熱安定剤、圧縮永久歪み添加剤、可塑剤、およびこれらの混合物が含まれる。
【0039】
導電性充填剤の例には、金属粒子、金属酸化物粒子、金属被覆金属粒子(銀めっきニッケルなど)、金属被覆非金属コア粒子(銀被覆タルク、雲母、石英など)、およびこれらの組み合わせが含まれる。金属粒子は、粉末、フレークまたはフィラメント、およびこれらの混合物または誘導体の形態であり得る。
【0040】
熱伝導性充填剤の例には、窒化ホウ素、アルミナ、金属酸化物(酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化アルミニウムなど)、グラファイト、ダイヤモンド、およびこれらの混合物または誘導体が含まれる。
【0041】
非導電性充填剤の例には、石英粉末、珪藻土、タルク、粘土、アルミナ、雲母、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、中空ガラス、ガラス繊維、中空樹脂およびメッキ粉末、ならびにこれらの混合物または誘導体が含まれる。
【0042】
トリアゾールなどのポットライフ延長剤を使用してもよいが、本発明の範囲では必要とはみなされない。したがって、液体硬化性シリコーンゴム組成物は、ポットライフ延長剤を含まなくてもよい。
【0043】
難燃剤の例には、アルミニウム三水和物、塩素化パラフィン、ヘキサブロモシクロドデカン、リン酸トリフェニル、ジメチルメチルホスホン酸、リン酸トリス(2,3-ジブロモプロピル)(臭素化トリス)、およびこれらの混合物または誘導体が含まれる。
【0044】
潤滑剤の例には、テトラフルオロエチレン、樹脂粉末、グラファイト、フッ素化グラファイト、タルク、窒化ホウ素、フッ素油、シリコーン油、二硫化モリブデン、およびこれらの混合物または誘導体が含まれる。
【0045】
さらなる添加剤には、トリメチルシリルまたはOH末端シロキサンなどのシリコーン流体が含まれる。このようなトリメチルシロキシまたはOH末端ポリジメチルシロキサンは、通常、ASTM D1084方法Bのカップ/スピンドル法に依拠し、粘度範囲に適切なスピンドルを使用して、25℃で<150mPa.sの粘度を有する。存在する場合、そのようなシリコーン流体は、組成物の総重量に基づいて、0.1~5重量%(重量%)の範囲の量で液体硬化性シリコーンゴム組成物中に存在し得る。
【0046】
非補強充填剤の例には、石英、アルミナ、雲母、炭酸カルシウムが含まれる。
【0047】
顔料の例には、カーボンブラック、二酸化チタン、酸化クロム、バナジン酸ビスマス、酸化鉄、およびこれらの混合物が含まれる。
【0048】
テキスタイルコーティング用の着色剤の例には、顔料、建染染料、反応染料、酸性染料、クロム染料、分散染料、カチオン染料、およびこれらの混合物が含まれる。
【0049】
接着促進剤の例には、メタクリル基またはアクリル基を含むアルコキシシラン、例えば、メタクリルオキシメチル-トリメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピル-チルメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピル-メチルジメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピル-ジメチルメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピル-トリエトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピル-メチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシイソブチルトリメトキシシラン、または同様のメタクリロキシ置換アルコキシシラン、3-アクリルオキシプロピル-トリメトキシシラン、3-アクリルオキシプロピル-メチルジメトキシシラン、3-アクリルオキシプロピル-ジメチル-メトキシシラン、3-アクリルオキシプロピル-トリエトキシシラン、または同様のアクリルオキシ置換アルキル含有アルコキシシラン、ジルコニウムキレート化合物、例えば、ジルコニウム(IV)テトラアセチルアセトネート、ジルコニウム(IV)ヘキサフルオロアセチルアセトネート、ジルコニウム(IV)トリフルオロアセチルアセトネート、テトラキス(エチルトリフルオロアセチルアセトネート)ジルコニウム、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-ヘプタンチオネート)ジルコニウム、ジルコニウム(IV)ジブトキシビス(エチルアセトネート)、ジイソプロポキシビス(2,2,6,6-テトラメチル-ヘプタンチオネート)ジルコニウム、またはβ-ジケトンを有する同様のジルコニウム錯体(そのアルキル置換型およびフルオロ置換型を含む)、エポキシ含有アルコキシシラン、例えば3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、4-グリシドキシブチルトリメトキシシラン、5,6-エポキシヘキシルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、または2-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシランが含まれる。
【0050】
連鎖延長剤の例には、ジシロキサンまたは末端位置に2つのケイ素結合水素原子を含む低分子量ポリオルガノシロキサンが含まれる。連鎖延長剤は通常、成分(A)のアルケニルラジカルと反応し、それにより成分(A)の2つ以上の分子を一緒に結合させ、その有効分子量と潜在的な架橋部位間の距離を増加させる。
【0051】
ジシロキサンは通常、一般式(HRa
2Si)2Oで表される。連鎖延長剤がポリオルガノシロキサンである場合、それは一般式HRa
2SiO1/2の末端単位と式Rb
2SiOの非末端単位を有する。これらの式において、RaおよびRbは、エチレン性不飽和を含まない非置換または置換一価炭化水素ラジカルを個別に表し、これらは1~10個の炭素原子を含むアルキル基、1~10個の炭素原子を含む置換アルキル基、例えばクロロメチルおよび3,3,3-トリフルオロプロピル、3~10個の炭素原子を含むシクロアルキル基、6~10個の炭素原子を含むアリール、7~10個の炭素原子を含むアルカリール基、例えばトリルおよびキシリル、および7~10個の炭素原子を含むアラルキル基、例えばベンジル、を含むがこれらに限定されない。
【0052】
連鎖延長剤のさらなる例には、テトラメチルジハイドロジェンジシロキサンまたはジメチルハイドロジェン末端ポリジメチルシロキサンが含まれる。
【0053】
連鎖延長剤は、成分(A)の重量に基づいて1~10重量部、典型的には100部の成分Aあたり1~10部の量で添加することができる。
【0054】
本組成物での使用に好適な連鎖延長剤は、ASTM D1084方法Bのカップ/スピンドル法に依拠し、粘度範囲に適切なスピンドルを使用して、25℃で約0.001~1Pa.s、典型的には25℃で約0.001~0.1Pa.sの粘度を有する。
【0055】
本発明の好ましい実施形態では、顔料および染料は、それらが25:75~70:30の比で低粘度(成分(A))のポリジオルガノシロキサンに分散した顔料マスタバッチの形態で使用される。
【0056】
シリコーンポリエーテルの例には、下記一般式(II)で表されるポリジオルガノシロキサン-ポリエーテルコポリマーが含まれる:
XwR1
3-wSiO(R2R3SiO)d(R4XSiO)d’SiR1
3-wXw(II)
(上記、Xは-R5-(OC2H4)y(OA)zEである)
式中、R1、R2、R3、およびR4は、典型的には1~10個の炭素原子を含む一価飽和炭化水素ラジカル、および典型的には6~12個の炭素原子を含む一価芳香族炭化水素ラジカルから独立して選択され、Eは同一または異なり、ヒドロキシ、典型的には1~6個の炭素原子を含むアルコキシ、およびカルボキシルから選択され、Aは典型的には1~6個の炭素原子を含むアルキレンであり、R5は、典型的には2~6個の炭素原子を含むアルキレンラジカルを示し、wは0、1、または2の整数であり、d’がゼロの場合は1または2でなければならず、dは0~200の整数であり、d’は0~15の整数であり、ここでdおよびd’は、成分(D)が1分子あたり5~50モル%のポリエーテルを含むように、互いに対する量で存在し、yとzは独立して0~30の整数あり、yとzの合計は2~50の範囲にある。
【0057】
R1、R2、R3、およびR4は、典型的にはメチルである。R5は、典型的にはプロピレンまたはイソブチレンである。Eは典型的には、ヒドロキシル、メトキシ、またはアセトキシである。Aは典型的には、プロピレン、イソプロピレン、またはブチレンである。
【0058】
一般式(II)のポリジオルガノシロキサン-ポリエーテルコポリマーは、5~50モルパーセントのポリエーテル単位を有し得る。
【0059】
一般式(II)で表されるこのようなポリジオルガノシロキサン-ポリエーテルコポリマーは、上記に定義される液体シリコーンゴムベースがテキスタイルコーティングまたはテキスタイル捺染を意図している場合、成分(A)、(B)、および(C)の総合重量の100重量部ごとに0.05~4.5重量部の量で存在できる。
【0060】
上記で定義した液体シリコーンゴムベースは、液体シリコーン組成物中に55~90重量%、代替的に60~90重量%の量で存在する。
【0061】
(ii)補強充填剤とは異なる疎水性シリカエアロゲル
疎水性シリカエアロゲルとは、疎水性表面被覆、特定の表面積および特定の多孔性を可能にするプロセスから得られる疎水性シリカ材料を指す。
【0062】
疎水性シリカエアロゲルは、いずれの場合もBET法により決定される、500~1500m2/g、代替的に500~1200m2/g、代替的に600~800m2/gの範囲の表面積によって特徴付けられる。
【0063】
シリカ表面のトリアルキルシリル化された疎水性被覆の質により、永久的な疎水性と、広範囲のpHにわたる加水分解および水による攻撃に対する安定性と、が可能になる。このような疎水性シリカエアロゲルの吸水量は、粒子100gあたり10g未満である。
【0064】
疎水性シリカエアロゲルはさらに、80%以上、代替的に90%以上の多孔度によって特徴付けられ得る。この例では、多孔度のすべての値は、供給元の製品データシートから取得された。
【0065】
疎水性シリカエアロゲルは、レーザ光散乱(例えば、ASTMD4464-15による)によって測定される際に5~1000μm、代替的に5~100μm、代替的に5~25μmの範囲の平均粒度を有していてもよい。
【0066】
疎水性シリカエアロゲルを製造するための少なくとも1つの方法が知られおり、a)リオゲル(lyogel)が提供され、b)工程(a)で提供されたリオゲルを有機溶剤で洗浄し、c)工程(b)で得られたゲルの表面をシリル化し、d)工程(c)で得られたシリル化表面ゲルを乾燥させる。この方法は、式(I)R3Si-O-SiR3のジシロキサンが工程(c)のシリル化剤として使用されることを特徴とし、式中、ラジカルRは、個々に、同じまたは異なり、水素原子、または非反応性の有機直鎖、分岐、環状、飽和もしくは不飽和、芳香族もしくはヘテロ芳香族ラジカルを意味する。
【0067】
疎水性シリカエアロゲルの例は、トリメチルシリル化エアロゲルである。
【0068】
疎水性シリカエアロゲルは、少なくとも表面積のパラメータに関して上記で議論した補強充填剤(C)とは異なり、補強充填剤(C)はBET法を使用して100~400m2/gの表面積を有するが、疎水性シリカエアロゲルは、BET法を使用して500~1200m2/gの表面積により特徴付けられる。
【0069】
疎水性シリカエアロゲルは、液体シリコーンゴム組成物中に3~8重量%、代替的に3~7重量%、代替的に3~6重量%、代替的に3~5重量%の量で存在する。
【0070】
(iii)エラストマー粉末
エラストマー粉末は、粉末形態の架橋シリコーンエラストマーである。
【0071】
エラストマー粉末は、(A)少なくとも2つの分子内低分子量アルケニル基を含むオルガノポリシロキサンと、(B)少なくとも2つの分子内ケイ素結合水素原子を含むオルガノポリシロキサンと、C)白金化合物触媒と、を含む組成物の付加反応硬化によって得ることができる。
【0072】
エラストマー粉末は、少なくとも2つの分子内低分子量アルケニル基を含むオルガノポリシロキサン(A)に、および少なくとも2つの分子内ケイ素結合水素原子を含むオルガノポリシロキサン(B)に、存在する官能基に応じて、エポキシ官能基、ポリエーテル官能基、アミノ基などの官能基を含むことができる。
【0073】
エラストマー粉末は、シリカ粒子、二酸化チタン粒子、アミノ酸との混合物で提供されてもよい。前記混合粒子は、前記エラストマー粉末を提供する付加反応硬化の前、最中または後にエラストマー粉末に添加されてもよい。
【0074】
エラストマー粉末は、0.1~3000μm、代替的に0.1~1000μm、代替的に0.5~300μm、代替的に0.5~100μm、代替的に0.5~60μmの範囲の平均粒度を有していてもよい。エラストマー粉末(硬化シリコーンゴム粒子)の平均粒度は、(株)堀場製作所のモデルLA-500レーザ回折型粒度分布分析器を使用して決定した。メジアン径、すなわち累積分布の50%に相当する粒度が、平均粒度として使用された。
【0075】
エラストマー粉末は、液体シリコーンゴム組成物中に3~8重量%、代替的に3~7重量%、代替的に3~6重量%の量で存在する。
【0076】
疎水性シリカエアロゲル(ii)とエラストマー粉末(iii)との重量比は、0.80:1~2:1、代替的に0.80:1~1.5:1、代替的に0.8:1~1.2:1の範囲である。
【0077】
少なくとも1つの揮発性溶剤(iv)は、本液体シリコーンゴム組成物を調製するための加工助剤として使用されてもよい。本発明において有用な揮発性溶剤には、シリコーン系揮発性溶剤および炭化水素系揮発性溶剤、ならびにこれらの混合物が含まれる。
【0078】
シリコーン系揮発性溶剤の例には、ASTM D1084方法Bのカップ/スピンドル法に依拠し、粘度範囲に適切なスピンドルを使用して、室温で6cSt以下の粘度を有し、2~7個のケイ素原子を有するシリコーン流体が含まれ、これらのシリコーンは、1~10個の炭素原子のアルキルまたはアルコキシ基で任意に置換されている。このような流体の特定の例には、オクタメチルテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、ヘプタメチルオクチルトリシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、ドデカメチルペンタシロキサン、ASTM D1084方法Bのカップ/スピンドル法を使用し、粘度範囲に適切なスピンドルを使用して測定した0.5~5mPa.sの粘度を有するポリジメチルシロキサン、オクチルトリメチコン、ヘキシルトリメチコン、ジシルキソアン、トリシロキサン、およびこれらの混合物が含まれる。
【0079】
本発明の範囲において、「炭化水素系」という用語は、主に炭素原子および水素原子、ならびに任意にエステル、エーテル、フルオロ、カルボン酸および/またはアルコール基を含む任意の油を意味すると理解される。
【0080】
炭化水素系揮発性溶剤の例には、8~16個の炭素原子を有する揮発性炭化水素油およびこれらの混合物、特にC8~C16のイソアルカン(イソパラフィンとしても知られる)などの分岐C8~C16のアルカン、イソドデカン、イソデカン、イソヘキサデカン、ネオペンタン酸イソヘキシルもしくはイソデシルなどのC8~C16の分岐エステル、およびこれらの混合物が含まれる。
【0081】
炭化水素系揮発性溶剤のさらなる例には、トルエン、ペンタン、ベンゼン、ヘキサン、1,4-ジオキサン、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、アセトン、(イソ)プロピルアルコール、エタノール、メタノール、およびこれらの混合物が含まれる。
【0082】
溶剤は、液体シリコーンゴム組成物中に5~40重量%、代替的に、5~30重量%、代替的に、10~30重量%の量で存在する。
【0083】
揮発性溶剤(iv)は、前記組成物が硬化すると液体シリコーンゴム組成物から放出される。
【0084】
したがって、本発明は、液体シリコーンゴム組成物であって、100重量%に等しい全液体シリコーンゴム組成物に基づいて、
(i)55~90重量%の量の上記定義の液体シリコーンゴムベースと、
(ii)3~8重量%の量の前記液体シリコーンゴムベースの補強充填剤とは異なる疎水性シリカエアロゲルと、
(iii)3~8重量%の量のエラストマー粉末と、
(iv)5~40重量%の量の揮発性溶剤と、
を含む、液体シリコーンゴム組成物を提供する。
【0085】
疎水性シリカエアロゲル(ii)とエラストマー粉末(iii)の重量比は、0.80:1~2:1、代替的に0.80:1~1.5:1、代替的に0.8:1~1.2:1の範囲である。
【0086】
本発明の組成物は、周囲温度ですべての成分を併せることにより調製することができる。この目的のために、先行技術に記載されている任意の混合技術およびデバイスを使用することができる。使用される特定のデバイスは、成分の粘度と最終硬化性コーティング組成物によって決定される。好適なミキサには、パドル型ミキサおよびニーダ型ミキサが含まれるが、これらに限定されない。混合中の成分の冷却は、組成物の早期硬化を避けるために望ましい場合もある。
【0087】
成分を混合する順序は、本発明では重要ではない。典型的には、上記で定義された液体シリコーンゴムベースは、少なくとも1つの部分、代替的に2つの部分で構成される。疎水性シリカエアロゲルは、別の容器で加工助剤としての揮発性溶剤と組み合わせ、エラストマー粉末を液体シリコーンゴムベースに添加する前、同時、または後に、上記で定義した液体シリコーンゴムベースと組み合わせてもよい。すなわち、上記で定義された液体シリコーンゴムベースは、疎水性シリカエアロゲルまたはエラストマー粉末のいずれかと順番に、または同時に組み合わせることができる。
【0088】
場合によっては、調製は順次行われ得、疎水性シリカエアロゲルを1つの別の容器内で揮発性溶剤を有する最初の混合物に提供し、液体シリコーンゴム組成物を提供し、その後両方の組成物を混合し、最後にエラストマー粉末を加える。
【0089】
組成物の粘度は、ASTM D1084方法Bのカップ/スピンドル法に依拠し、粘度範囲に適切なスピンドルを使用して、10~10,000Pa.s、代替的に10~5,000Pa.s、代替的に100~2000Pa.sの範囲である。
【0090】
本発明の液体シリコーンゴム組成物は、代替的に、射出成形、封入成形、プレス成形、ディスペンサ成形、押出成形、トランスファ成形、プレス加硫、遠心注型(centrifugal casting)、カレンダ加工、ビーズ塗布またはブロー成形によってさらに加工されてもよい。
【0091】
液体硬化性シリコーンゴム組成物の硬化は、利用される液体シリコーンゴムの種類によって必要に応じて行われ得る。典型的な硬化温度は、80~200℃、代替的に100~170℃の範囲である。
【0092】
硬化は、例えば、金型内で行われ、成形されたシリコーン製品を形成することができる。組成物は、例えば、射出成形して物品を形成することができ、または組成物は、物品の周囲または基材上に射出成形することによりオーバーモールドすることができる。
【0093】
一実施形態では、本発明は、液体硬化性シリコーンゴム組成物から硬化した物品に関する。そのような物品には、スポーツ製品、ダイビングマスク、人工呼吸器ベローズ、バルーンカテーテル、ゴム製乳首、おしゃぶり、薄壁膜、スイッチカバー、スパークプラグコネクタ、医療用品およびデバイス、電気絶縁体、単線シール、プラグコネクタシール、チューブおよびバルブ、コネクタシールおよびスパークプラグブーツなどの自動車部品、コピー機のロールおよび電子レンジのパッキンなどの電気および電子部品、ならびに高い耐熱性、耐寒性、安全性、電気絶縁性、耐候性などを考慮して、哺乳瓶のニップルおよびダイビングギアなどの他の製品、の製造に使用できるものが含まれる。
【0094】
液体硬化性シリコーンゴム組成物は、製造業者のサイズ仕様に従って、チューブ、ストリップ、ソリッドコードまたはカスタムプロファイルなどのシリコーンエラストマー製品に硬化させることができる。
【0095】
本発明の液体硬化性シリコーンゴム組成物の硬化から得られる硬化シリコーンエラストマーは、基材への機械的または化学的結合が生じる複合部品を提供し得る。
【0096】
一実施形態では、本発明は、基材上の液体硬化性シリコーンゴム組成物から硬化したシリコーンエラストマーを含む複合部品に関する。
【0097】
基材は、剛性または柔軟性であってもよい。基材の例には、プラスチック基材、熱可塑性基材、金属基材、セルロース基材、およびテキスタイル基材が含まれる。
【0098】
プラスチック基材および熱可塑性基材(有機樹脂)の例には、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン、ポリフェニレン/スチレンブレンド、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリウレタン、スチレン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル、ポリアクリルアミド、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ナイロン、ポリアミド、ポリイミド、フルオロポリマー、および液晶樹脂、非樹脂含有ポリエーテルイミドが含まれる。
【0099】
金属基材の例には、銅、アルクラッドアルミニウム、陽極酸化アルミニウム、亜鉛めっき鋼、冷間圧延鋼、鋳造アルミニウム、および鋳造マグネシウムから選択される金属基材が含まれる。
【0100】
セルロース基材の例には、紙、厚紙、木材が含まれる。
【0101】
そのような複合部品には、プラスチック基材または熱可塑性基材とシリコーンエラストマーのいずれかが一体部品として使用される構造が含まれる。
【0102】
そのような複合部品の例は、自動車用途、医療用途、消費者および産業用途、電子用途を含むがこれらに限定されないさまざまな産業で見出すことができる。自動車用途では、これには、シリコンシールまたはガスケット付きのハウジング、プラグおよびコネクタ、さまざまなセンサのコンポーネント、膜、ダイアフラム、気候通気コンポーネント(climate venting component)などが含まれていてよい。医療用途では、複合部品は、マスク、ゴーグル、チューブおよびバルブカテーテル、オストミー用装具、呼吸器具、栄養補給器具(feeding appliances)、コンタクトレンズ、補聴器、装具、人工器官などのデバイスで使用できる。消費者および産業用途では、複合部品はシャワーヘッド、ベーカリー用品、スパチュラ、家電、靴、ゴーグル、スポーツおよびレジャー用品、ダイビングマスク、フェイスマスク、おしゃぶりおよび他のベビー用品、栄養補給付属品、白物および他のキッチン用品のシールおよび表面などに見ることができる。電子用途には、携帯電話のカバーシール、携帯電話の付属品、精密電子機器、電気スイッチとスイッチカバー、時計とリストバンド、ウェアラブル電子デバイスなどが含まれ得る。
【0103】
液体硬化性シリコーンゴム組成物は、ローリング、スプレッディング、スプレーなどの任意の好適な手段によって基材の表面に適用され、必要に応じて硬化されてもよい。
【0104】
液体硬化性シリコーンゴム組成物がエアバッグコーティングに使用される場合、組成物は、ローラー塗布、カーテンコーティング、スプレーコーティング、ナイフコーティングまたはカレンダリングを含む任意のコーティング技術によって適用されてもよい。
【0105】
特定の例では、液体シリコーンゴム組成物は、テキスタイルコーティングまたはテキスタイル捺染が意図されている。そのような場合、液体シリコーンゴムベースは、典型的にはシリコーンテキスタイル捺染インクである。
【0106】
したがって、本発明はまた、テキスタイルをコーティングするための方法であって、液体シリコーンゴム組成物でテキスタイルをコーティングすることと、組成物を硬化させてコーティングを形成することと、を含み、液体シリコーンゴム組成物が、
(i)液体シリコーンゴムベースと、
(ii)組成物の3~8重量%の、液体シリコーンゴムベースの補強充填剤とは異なる疎水性シリカエアロゲルと、
(iii)組成物の3~8重量%の、エラストマー粉末と、
(iv)揮発性溶剤と、を含み、
疎水性シリカエアロゲル(ii):エラストマー粉末(iii)の重量比は0.8:1~2:1である、ことを特徴とする、方法も含む。
【0107】
上記組成物において、シリコーンゴムベースは、少なくとも1つの液体アルケニル含有ポリジオルガノシロキサン(A)と、少なくとも1つのオルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)と、少なくとも1つの補強充填剤(C)と、少なくとも1つのヒドロシリル化触媒(D)と、任意に、上記の各場合における追加の成分と、を含む。
【0108】
分析結果に束縛されることを望まないが、加工助剤として最初に使用された揮発性溶剤は、テキスタイル基材上の組成物の硬化時に組成物から放出されることが予想される。
【0109】
本発明の液体シリコーンゴム組成物でコーティングされるテキスタイル基材の例には、天然および/または合成繊維が含まれる。テキスタイルは、天然および/または合成繊維に基づく織布または不織布材料であり得る。テキスタイルは、皮革などの基材であってもよい。
【0110】
合成繊維の例には、ナイロン(ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46など)もしくは他のポリアミド繊維、ポリエステル繊維(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなど)、ポリアクリロニトリル繊維、アラミド繊維、ポリエーテルイミド繊維、ポリスルホン系繊維、炭素繊維、レーヨン繊維、ポリエチレン繊維、またはこれらの混合物が含まれる。
【0111】
天然繊維の例には、綿、麻、レーヨン、ビスコース、ジュートなどのセルロース繊維、羊毛、絹、皮革が含まれる。
【0112】
本発明のLSR組成物は、80~200℃、代替的に100~170℃の温度で加熱することにより硬化させることができる。硬化時間は3秒~10分、代替的に3秒~5分である。損傷が少ないなど、さらに優れた特性を有するテキスタイルを得るには、本発明のLSR組成物を上記温度で少なくとも3秒間硬化させ、室温まで冷却した後に加熱を繰り返すことが望ましい。
【0113】
テキスタイル上のコーティングは、テキスタイルをコーティングするのに有用な任意の既知の技術によって行われ得る。テキスタイル捺染方法の例には、直接捺染法と熱転写法が含まれる。直接捺染法の例には、ブロック捺染、ローラー捺染、スクリーン捺染、ブロッチ捺染、エアブラシ捺染、静電捺染、デジタル捺染が含まれる。
【0114】
直接スクリーン捺染は、さまざまな基材に画像を作成またはインプリントするための特に好適な既知の技術またはプロセスである。基材は、例えば、典型的にはTシャツなどの衣類のようなテキスタイルおよび布帛を含んでもよい。
【0115】
テキスタイル基材または他の基材上にシリコーンインクベース組成物を提供するための直接捺染プロセスの例は、少なくとも以下の工程:
(i)本明細書で定義される組成物を提供することと、
(ii)工程(i)の組成物をテキスタイル基材または他の基材に直接捺染して、組成物と基材とを結合させることと、
(iii)組成物を硬化させて、硬化エラストマー直接捺染組成物を含むテキスタイルの衣服または物品を形成することと、を含む。
【0116】
直接捺染プロセスの例は、直接自動スクリーン捺染プロセスである直接スクリーン捺染プロセスである。
【0117】
積層された熱転写製品の1つ以上のコーティングから基材、代替的にテキスタイル基材に画像を転写するための熱転写捺染プロセスの例は、少なくとも次の工程:
(i)本明細書で定義される組成物を提供することと、
(ii)工程(i)の組成物を基材と組み合わせることと、
(iii)組成物の1つ以上のコーティングから基材上に画像を転写することと、を含む。
【0118】
通常、本発明の液体シリコーンゴム組成物の布帛コーティング層は単一層を含む。ただし、必要に応じて、布帛上に任意の数の層を形成できる。そのような追加の層は、感触を改善するため、材料の耐摩耗性を改善するため、またはコーティングされた製品の強度を改善するために適用される。[追加の]コーティング層は、プラスチックフィルム、織布、不織布、または任意の他の弾性コーティング材料からの層によって例示され得る。
【0119】
本発明は、前記液体シリコーンゴム組成物を前記テキスタイル上で硬化させることから得られるコーティングを有するコーティングされたテキスタイルを提供する。
【0120】
テキスタイルをコーティングするための本発明の液体シリコーンゴム組成物の使用も提供される。
【0121】
別の実施形態では、本発明の液体シリコーンゴム組成物を使用して、テキスタイル材料上にコーティングをスクリーン捺染することが提供される。
【0122】
テキスタイルをコーティングするための液体シリコーンゴム組成物における疎水性シリカエアロゲル(ii)とエラストマー粉末(iii)の組み合わせの使用が開示される。場合によっては、液体シリコーンゴム組成物中の疎水性シリカエアロゲル(ii)とエラストマー粉末(iii)との比は、0.8:1~2:1の範囲である。
【0123】
シリコーンエラストマー物品または複合部品に艶消し(mattifying)効果を付与する方法が提供され、物品または複合部品が疎水性シリカエアロゲル(ii)とエラストマー粉末(iii)との組み合わせを含む、液体シリコーンゴム組成物を硬化させることから得られる。
【実施例】
【0124】
光沢試験方法:本発明で提供されるコーティング組成物および比較組成物をテキスタイル布帛に塗布し、放置して硬化させ、厚さ0.05mmのコーティングを得た(典型的には組成物の3層を塗布した)。それぞれの場合において、使用される基材にかかわりなく光沢値が同じであると特に明記しない限り、比較のために、代替的な基材として3つの異なるタイプの布帛、すなわち綿、ライクラ、およびポリエステルを使用した。得られたコーティングは、BYK micro-TRI-Gloss光沢計を使用して、60°の角度で光沢を測定した。
【0125】
現在市販されている素材の光沢は、0.8(角度60°)である。
【0126】
手触りの評価は、10人のパネリストによって、現在の市販のコーティングからの標準サンプルと比較して実行される。10人のパネリストが1サンプルに対して比較サンプルよりも改善された感触を確認すると、満足のいく手触りとみなされる。
【0127】
変色は、目視検査により評価された。
【0128】
表1に開示されている液体シリコーンゴムベースを以下の実施例で使用した。すべての粘度は、特に明記しない限り、ASTM D1084方法Bのカップ/スピンドル法に依拠し、粘度範囲に適切なスピンドルを使用して、25℃で測定した。
【表1】
【0129】
実施例
6並びに参照例1~
5及び7
各実施例および比較例は、成分を混合し、得られた組成物を綿、ライクラ、およびポリエステル布帛基材表面に塗布することにより調製された。試料は、140℃の温度で2分間硬化させ、得られた硬化エラストマー生成物を、光沢、手触りおよび変色について分析した。表2に開示されている実施例
6並びに参照例1~
5及び7は、エアロゲルとエラストマー粉末の組み合わせを併用して使用した場合のマットの進化を示している。さらに、より低い光沢を有する実施例は、機能について所望されるような、良好な感触を維持する。
【表1】
【0130】
実施例6および参照例7は、変色が認められず、柔らかい感触および<0.5の光沢を有するという点で、すべての要件を首尾よく満たすことがわかった。これらの例のうち、粘度が低いことを考えると、実施例6が好ましかった。実際、参照例7の組成物には、当初意図されていたよりも追加の溶剤(iv)が追加されたが、それでも実際のインクとして使用するには粘度が高すぎるとみなされた。参照例4および5もかなり良好な結果が得られたが、残念ながら、それらの光沢値は、好ましいものよりわずかに高かった。
【0131】
比較例1~5
比較例1~5を表3に開示する。
【0132】
比較例1は、疎水性シリカエアロゲルおよびエラストマー粉末を含まない液体シリコーンゴム組成物を表す。光沢は、1の値では満足できない。
【0133】
比較例2~4はまた、疎水性シリカエアロゲルもエラストマー粉末も含まない、200~240mm2/gの表面積(BET法)を有する追加の疎水性充填剤との比較を提供する。疎水性シリカの量が増えると、光沢は低下するが、色の変色が認められたが、これはテキスタイルコーティングの分野では受け入れられない。さらに、比較例4の粘度は、捺染インク用途での使用には高すぎ、かつ変色を示した。
【0134】
比較例5は、Akzo Nobelの既知の艶消し成分Expancel(登録商標)DET 40、すなわち、加熱すると膨張するガスを封入した熱可塑性シェルからなる乾燥微小球を特徴とする。光沢は、商業的に許容される0.7のレベルまで低下するが、手触りは、満足のいくものではない。さらに、かさ密度が非常に低いため、組成物を混合するのは容易ではない。
【表3】
【0135】
参照例8および比較例6
表4に開示されている参照例8および比較例6は、テキスタイルコーティング用に承認された代替的な液体シリコーンゴム組成物2に基づいている。
【0136】
参照例8は、両方とも比較例6にはない疎水性シリカエアロゲルとエラストマー粉末の組み合わせ存在を利用し、0.4でより低い光沢を有する。しかしながら、硬化時に、
参照例8のエラストマー生成物が、それが適用されるそれぞれの基材に十分に接着しないことがわかった。
液体シリコーンゴムベース2は、Dow Silicones Corporationの市販の硬化性LSRである、Dowsil(登録商標)LCF9800 Textile Printing Inkであった。
【表2】
【0137】
比較例7~8
表5に開示されている比較例7および8は、満足するレベルの光沢を達成するための疎水性シリカエアロゲルとエラストマー粉末との組み合わせ存在の要件を示している。疎水性シリカエアロゲルを単独で使用すると、光沢は、0.7の値までしか低下しない。エラストマー粉末を単独で使用すると、光沢は、1.7に増加した。
【0138】
したがって、疎水性シリカエアロゲルの艶消し効果を打ち消すのではなく、疎水性シリカエアロゲルにエラストマー粉末を追加すると光沢がさらに低下することは驚くべきことである。
【表5】
【0139】
表2における実施例6の優れた結果を考慮して、この組成物の物理的特性をさらに分析して、捺染インクとしての使用への好適性を示した。結果は、これが好適な材料であり、捺染インクとして使用するのに十分に良好な物理的特性を有することを示した。
【表6】
【0140】
これらの結果は、エアロゲルとエラストマー粉末を組み合わせて使用すると、光沢が0.5未満に低下したが、硬化エラストマーシリコーンゴム材料の標準的な物理的特性に実質的に悪影響を与えなかったことを示している。
【0141】
同様に、光沢値は、これらの材料が塗布された基材の影響を受けないことと、それぞれの場合、以下の表7に見られるように、光沢値は0.4であることがわかった。
【表7】
【0142】
洗濯堅牢度
上記の異なる布帛基材へのエラストマー製品の付着性の尺度として、上記実施例6の組成物から作製された硬化エラストマーから生じるエラストマー生成物が付着した布帛の試料を洗濯し、AATCC試験法61-2003試験番号、1Aに従って分析した。試料を25回洗濯し、各洗濯に続いて、試料を洗濯中の布帛基材からのエラストマーの損失(洗い落とし)について評価した。以下の表8は、洗い落としが観察されなかったことを示している。
【表8】
【0143】
上記実施例6の配合物から作製されたインクから作られたコーティングのさらなる利点は、硬化後の繊維劣化(フィブリル化)の目に見える兆候がなかったこと、すなわち見かけの摩耗外観が利用された基材に観察されなかったことである。