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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-02
(45)【発行日】2023-02-10
(54)【発明の名称】射出成形可能シリコーン組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/07 20060101AFI20230203BHJP
   C08L 83/05 20060101ALI20230203BHJP
   C08K 5/05 20060101ALI20230203BHJP
   B29C 45/00 20060101ALI20230203BHJP
【FI】
C08L83/07
C08L83/05
C08K5/05
B29C45/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020508598
(86)(22)【出願日】2018-08-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-05
(86)【国際出願番号】 US2018045341
(87)【国際公開番号】W WO2019040265
(87)【国際公開日】2019-02-28
【審査請求日】2021-07-26
(31)【優先権主張番号】62/549,661
(32)【優先日】2017-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】カミングス、マイケル
(72)【発明者】
【氏名】デント、スタントン
(72)【発明者】
【氏名】マクドナルド、ジョエル
(72)【発明者】
【氏名】スタインブレカー、ジャコブ
(72)【発明者】
【氏名】ストロング、マイケル
(72)【発明者】
【氏名】タフト、ブラッドレー
(72)【発明者】
【氏名】ホワイトレー、クリントン
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/093283(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/098884(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 83/00-83/16
C08K 5/05
B29C 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形可能シリコーン組成物であって、
A)平均式(I)を有するシリコーン樹脂
(I)[R SiO1/2[RSiO2/2[SiO4/2
[式中、各R、R、及びRは、独立して、1~10個の炭素原子を有するヒドロカルビル、1~10個の炭素原子を有するヒドロカルビルオキシ、又はヒドロキシルであり、R又はRのうちの少なくとも1つは、アルケニルであり、下付き文字a、b、及びcは、各々が>0であり、かつa+b+c=1である]と、
B)A)及びB)の重量に基づいて、0~90%(重量/重量)の平均式(II)を有するシリコーン樹脂
(II)[R SiO1/2[SiO4/2
[式中、各Rは、独立して、1~10個の炭素原子を有するヒドロカルビル、1~10個の炭素原子を有するヒドロカルビルオキシ、又はヒドロキシルであり、Rのうちの少なくとも1つは、アルケニルであり、下付き文字d及びeは、各々が>0であり、かつd+e=1である]と、
C)平均式(III)を有するシロキサンポリマー
(III)[R SiO1/2[RSiO2/2
[式中、各R5~7は、独立して、1~10個の炭素原子を有するヒドロカルビル、又はヒドロキシルであり、R5~7のうちの少なくとも1つは、アルケニルであり、下付き文字f及びgは、各々が>0であり、かつf+g=1である]と、
D)1分子当たり少なくとも2つのケイ素結合水素原子を有するシリコーン架橋剤と、
E)ヒドロシリル化触媒と、を含み、
ケイ素結合水素原子と炭素-炭素二重結合との比は、1.2~2.2であり、
前記シリコーン架橋剤が、式(IV)に従う
(IV)[HR SiO 1/2 [R SiO2/2[R10SiO3/2[SiO4/2
[式中、各Rは、独立して、ヒドロカルビル又は水素であり、各Rは、独立して、1~10個の炭素原子を有するヒドロカルビルであり、各R10は、独立して、ヒドロカルビルオキシ又はヒドロキシルであり、下付き文字は、h+i+j+k=1、h>0、k>0、i≧0、j≧0である]、射出成形可能シリコーン組成物。
【請求項2】
抑制剤を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記抑制剤が、4~10個の炭素原子を有する分枝状不飽和アルコールである、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
各Rが、独立して、メチル又はヒドロキシルであり、各Rが、独立して、ビニル又はメチルであり、各Rが、メチルであり、各Rが、独立して、ビニル又はヒドロキシルであり、各Rが、独立して、ビニル、メチル、又はヒドロキシルであり、ケイ素結合(silicon-boned)水素原子と炭素-炭素二重結合との比は、1.5~2.2である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項5】
が、2つのメチル基及び水素を表し、下付き文字は、j=0及びi=0である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記ヒドロシリル化触媒が、白金の化合物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
射出成形可能シリコーン組成物の作製方法であって、前記方法は、
A)平均式(I)を有するシリコーン樹脂
(I)[R SiO1/2[RSiO2/2[SiO4/2
[式中、各R、R、及びRは、独立して、1~10個の炭素原子を有するヒドロカルビル、1~10個の炭素原子を有するヒドロカルビルオキシ、又はヒドロキシルであり、R又はRのうちの少なくとも1つは、アルケニルであり、下付き文字a、b、及びcは、各々が>0であり、かつa+b+c=1である]と、
B)A)及びB)の重量に基づいて、0~90%(重量/重量)の平均式(II)を有するシリコーン樹脂
(II)[R SiO1/2[SiO4/2
[式中、各Rは、独立して、1~10個の炭素原子を有するヒドロカルビル、1~10個の炭素原子を有するヒドロカルビルオキシ、又はヒドロキシルであり、Rのうちの少なくとも1つは、アルケニルであり、下付き文字d及びeは、各々が>0であり、かつd+e=1である]と、
C)平均式(II)を有するシロキサンポリマー
(II)[R SiO1/2[RSiO2/2
[式中、各R5~7は、独立して、1~10個の炭素原子を有するヒドロカルビル、又はヒドロキシルであり、R5~7のうちの少なくとも1つは、アルケニルであり、下付き文字f及びgは、各々が>0であり、かつf+g=1である]と、
D)1分子当たり少なくとも2つのケイ素結合水素原子を有するシリコーン架橋剤と、
E)ヒドロシリル化触媒と、を組み合わせて、
前記射出成形可能組成物を形成することを含み、
前記シリコーン架橋剤が、式(IV)に従う
(IV)[HR SiO 1/2 [R SiO2/2[R10SiO3/2[SiO4/2
[式中、各Rは、独立して、ヒドロカルビル又は水素であり、各Rは、独立して、1~10個の炭素原子を有するヒドロカルビルであり、各R10は、独立して、ヒドロカルビルオキシ又はヒドロキシルであり、下付き文字は、h+i+j+k=1、h>0、k>0、i≧0、j≧0である]、方法。
【請求項8】
組成物の射出成型方法であって、前記方法は、
A)平均式(I)を有するシリコーン樹脂
(I)[R SiO1/2[RSiO2/2[SiO4/2
[式中、各R、R、及びRは、独立して、1~10個の炭素原子を有するヒドロカルビル、1~10個の炭素原子を有するヒドロカルビルオキシ、又はヒドロキシルであり、R又はRのうちの少なくとも1つは、アルケニルであり、下付き文字a、b、及びcは、各々が>0であり、かつa+b+c=1である]と、
B)A)及びB)の重量に基づいて、0~90%(重量/重量)の平均式(II)を有するシリコーン樹脂
(II)[R SiO1/2[SiO4/2
[式中、各Rは、独立して、1~10個の炭素原子を有するヒドロカルビル、1~10個の炭素原子を有するヒドロカルビルオキシ、又はヒドロキシルであり、Rのうちの少なくとも1つは、アルケニルであり、下付き文字d及びeは、各々が>0であり、かつd+e=1である]と、
C)平均式(III)を有するシロキサンポリマー
(III)[R SiO1/2[RSiO2/2
[式中、各R5~7は、独立して、1~10個の炭素原子を有するヒドロカルビル、又はヒドロキシルであり、R5~7のうちの少なくとも1つは、アルケニルであり、下付き文字f及びgは、各々が>0であり、かつf+g=1である]と、
D)1分子当たり少なくとも2つのケイ素結合水素原子を有するシリコーン架橋剤と、
E)ヒドロシリル化触媒と、を含む、射出成形可能シリコーン組成物を、
金型に射出することと、前記射出された成形可能組成物を、前記射出された成形可能組成物を硬化させるのに十分な条件に供することと、を含み、
前記シリコーン架橋剤が、式(IV)に従う
(IV)[HR SiO 1/2 [R SiO2/2[R10SiO3/2[SiO4/2
[式中、各Rは、独立して、ヒドロカルビル又は水素であり、各Rは、独立して、1~10個の炭素原子を有するヒドロカルビルであり、各R10は、独立して、ヒドロカルビルオキシ又はヒドロキシルであり、下付き文字は、h+i+j+k=1、h>0、k>0、i≧0、j≧0である]、方法。
【請求項9】
射出成形物品であって、
A)平均式(I)を有するシリコーン樹脂
(I)[R SiO1/2[RSiO2/2[SiO4/2
[式中、各R、R、及びRは、独立して、1~10個の炭素原子を有するヒドロカルビル、1~10個の炭素原子を有するヒドロカルビルオキシ、又はヒドロキシルであり、R又はRのうちの少なくとも1つは、アルケニルであり、下付き文字a、b、及びcは、各々が>0であり、かつa+b+c=1である]と、
B)A)及びB)の重量に基づいて、0~90%(重量/重量)の平均式(II)を有するシリコーン樹脂
(II)[R SiO1/2[SiO4/2
[式中、各Rは、独立して、1~10個の炭素原子を有するヒドロカルビル、1~10個の炭素原子を有するヒドロカルビルオキシ、又はヒドロキシルであり、Rのうちの少なくとも1つは、アルケニルであり、下付き文字d及びeは、各々が>0であり、かつd+e=1である]と、
C)平均式(II)を有するシロキサンポリマー
(II)[R SiO1/2[RSiO2/2
[式中、各R5~7は、独立して、1~10個の炭素原子を有するヒドロカルビル、又はヒドロキシルであり、R5~7のうちの少なくとも1つは、アルケニルであり、下付き文字f及びgは、各々が>0であり、かつf+g=1である]と、
D)1分子当たり少なくとも2つのケイ素結合水素原子を有するシリコーン架橋剤と、
E)ヒドロシリル化触媒と、を含む、射出成形可能シリコーン組成物を射出成形することによって製造された物品を含み、
前記シリコーン架橋剤が、式(IV)に従う
(IV)[HR SiO 1/2 [R SiO2/2[R10SiO3/2[SiO4/2
[式中、各Rは、独立して、ヒドロカルビル又は水素であり、各Rは、独立して、1~10個の炭素原子を有するヒドロカルビルであり、各R10は、独立して、ヒドロカルビルオキシ又はヒドロキシルであり、下付き文字は、h+i+j+k=1、h>0、k>0、i≧0、j≧0である]、射出成形物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
なし
【0002】
本発明は一般に、アルケニル基を有するオルガノシロキサン樹脂及びポリマーと、ケイ素結合水素を有するシリコーン架橋剤と、ヒドロシリル化触媒と、を含み、ケイ素結合水素原子と炭素-炭素二重結合との比が、1.2~2.2である、射出成形可能組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
射出成形で作製された物品の開発は継続されている。新しい物品を設計するとき、当該新規設計によって提示される新しい課題に対応するように、新しい金型、材料、及び成形プロセスを開発しなければならない。新しい物品設計のために開発された材料としては、射出硬化性シリコーンが挙げられる。シリコーンは、良好な物理的特性を有する物品を製造するために開発されており、材料は、天候、酸化、及び紫外線照射に対して安定性が優れているという利点を有する。
【0004】
設計者は、用途要件を満たすために、より複雑な物品設計を行っている。これらの複雑な設計により、既知の射出硬化性シリコーン組成物における欠陥が明らかになった。新たに複雑に設計された物品は、充填されなければならない多くのキャビティを有する複雑な金型を必要とする。既知の射出硬化性シリコーンは、硬化の開始前にこれらのキャビティを完全に充填する際に、適切なキャビティ充填が妨げられ、かつ成形物品に不備が生じるという問題を有し得る。成形物品における不備は、成形物品のいくつかの用途において重大な問題をもたらす。例えば、自動車用成形ヘッドライトレンズなどの光学用途における不備により、光透過の著しい歪みが生じる場合がある。
【0005】
射出硬化性シリコーン組成物の硬化特性を変更する既知の方法は、硬化を遅延させて粘度及び弾性率が大幅に増加する前に複雑な金型のキャビティを適切に充填するために使用すると失敗する。例えば、抑制剤を添加すること又は触媒負荷を低減することにより、例えば、抑制剤の蒸発又は反応のために同じ温度でより長い時間保持するため、生産サイクル時間が増加する。したがって、射出成形可能シリコーン組成物の硬化誘導時間を変更することにより、射出成形で複雑な金型を使用して複雑な物品を製造することを可能にする、新しい射出成形可能シリコーン組成物が必要とされている。更に、組成物のシリコーン成分の割合を変更して、金型設計の複雑性を変えるように調整することによって、組成物の硬化誘導時間を変更可能とする必要がある。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、射出成形可能組成物であって、
A)平均式(I)を有するシリコーン樹脂
(I)[R SiO1/2[RSiO2/2[SiO4/2
[式中、各R、R、及びRは、独立して、1~10個の炭素原子を有するヒドロカルビル、1~10個の炭素原子を有するヒドロカルビルオキシ、又はヒドロキシルであり、R又はRのうちの少なくとも1つは、アルケニルであり、下付き文字a、b、及びcは、各々が>0であり、かつa+b+c=1である]と、
B)A)及びB)の重量に基づいて、0~90%(重量/重量)の平均式(II)を有するシリコーン樹脂
(II)[R SiO1/2[SiO4/2
[式中、各Rは、独立して、1~10個の炭素原子を有するヒドロカルビル、1~10個の炭素原子を有するヒドロカルビルオキシ、又はヒドロキシルであり、Rのうちの少なくとも1つは、アルケニルであり、下付き文字d及びeは、各々が>0であり、かつd+e=1である]と、
C)平均式(III)を有するシロキサンポリマー
(III)[R SiO1/2[RSiO2/2
[式中、各R5~7は、独立して、1~10個の炭素原子を有するヒドロカルビル、又はヒドロキシルであり、R5~7のうちの少なくとも1つは、アルケニルであり、下付き文字f及びgは、各々が>0であり、かつf+g=1である]と、
D)1分子当たり少なくとも2つのケイ素結合水素原子を有するシリコーン架橋剤と、
E)ヒドロシリル化触媒と、を含み、
ケイ素結合水素原子と炭素-炭素二重結合との比は、1.2~2.2である、射出成形可能組成物に関する。
【0007】
本発明は、更に、射出成形可能シリコーン組成物の成分を組み合わせることを含む、射出成形可能シリコーン組成物の作製方法、射出成形可能シリコーン組成物を射出成形することを含む、射出成形シリコーン物品の形成方法、及び射出成形可能シリコーン組成物を成形することによって調製された射出成形物品に関する。
【0008】
本発明の組成物は、遅延された硬化誘導時間を有し、射出成形プロセスにおける複雑な金型の金型キャビティのより効率的な充填を可能にする一方で、また遅延誘導期間後に迅速に硬化を完了し、これにより、組み合わされた効果により、射出成形可能シリコーン組成物から調製された物品において、良好な成形サイクル時間及びより小さい歪み及び/又は不備を可能にする。
【発明を実施するための形態】
【0009】
射出成形可能組成物であって、
A)平均式(I)を有するシリコーン樹脂
(I)[R SiO1/2[RSiO2/2[SiO4/2
[式中、各R、R、及びRは、独立して、1~10個の炭素原子を有するヒドロカルビル、1~10個の炭素原子を有するヒドロカルビルオキシ、又はヒドロキシルであり、R又はRのうちの少なくとも1つは、アルケニルであり、下付き文字a、b、及びcは、各々が>0であり、かつa+b+c=1である]と、
B)A)及びB)の重量に基づいて、0~90%(重量/重量)の平均式(II)を有するシリコーン樹脂
(II)[R SiO1/2[SiO4/2
[式中、各Rは、独立して、1~10個の炭素原子を有するヒドロカルビル、1~10個の炭素原子を有するヒドロカルビルオキシ、又はヒドロキシルであり、Rのうちの少なくとも1つは、アルケニルであり、下付き文字d及びeは、各々が>0であり、かつd+e=1である]と、
C)平均式(III)を有するシロキサンポリマー
(III)[R SiO1/2[RSiO2/2
[式中、各R5~7は、独立して、1~10個の炭素原子を有するヒドロカルビル、又はヒドロキシルであり、R5~7のうちの少なくとも1つは、アルケニルであり、下付き文字f及びgは、各々が>0であり、かつf+g=1である]と、
D)1分子当たり少なくとも2つのケイ素結合水素原子を有するシリコーン架橋剤と、
E)ヒドロシリル化触媒と、を含み、
ケイ素結合水素原子と炭素-炭素二重結合との比は、1.2~2.2である、射出成形可能組成物。
【0010】
シリコーン樹脂A)は、平均式(I)
(I)[R SiO1/2[RSiO2/2[SiO4/2
[式中、各R、R、及びRは、独立して、1~10個の炭素原子を有するヒドロカルビル、1~10個の炭素原子を有するヒドロカルビルオキシ、又はヒドロキシルであり、R又はRのうちの少なくとも1つは、アルケニルであり、下付き文字a、b、及びcは、各々が>0であり、かつa+b+c=1である]を有する。
【0011】
1~3で表されるヒドロカルビル基は、典型的には、1~10個、あるいは1~6個の炭素原子、あるいは1~4個の炭素原子、あるいは1個の炭素原子を有する。非環式のヒドロカルビル基は少なくとも3個の炭素原子を含有し、分枝状構造であっても非分枝状構造であってもよい。R1~3で表されるヒドロカルビル基の例としては、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、1-メチルエチル基、ブチル基、1-メチルプロピル基、2-メチルプロピル基、1,1-ジメチルエチル基、ペンチル基、1-メチルブチル基、1-エチルプロピル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、1,2-ジメチルプロピル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、及びデシル基など);シクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びメチルシクロヘキシル基など);アリール基(フェニル基及びナフチル基など);アルカリール基(トリル基及びキシリル基など);アラルキル基(ベンジル基及びフェネチル基など);アルケニル基(ビニル基、アリル基及びプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、及びオクテニル基など);アリールアルケニル基(スチリル基及びシンナミル基など)、並びにアルキニル基(エチニル基及びプロピニル基など)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0012】
1~3で表されるヒドロカルビルオキシ基は、式-Oalk[式中、Oは酸素であり、alkは、1~10個の炭素原子、あるいは1~6個の炭素原子、あるいは1~4個の炭素原子を有するアルキルである]を有する。alkで表されるアルキル基の例としては、R1~3について上記で例示されるものが挙げられるが、これらに限定されない。R1~3で表されるヒドロカルビルオキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、及びブトキシ基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0013】
(A)中のR又はRのうちの少なくとも1つ、あるいは少なくとも2つは、アルケニル、あるいはC1~6アルケニル、あるいはC1~4アルケニル、あるいはエテニル、プロペニル、又はブテニルである。
【0014】
シリコーン樹脂(A)は、炭素-炭素二重結合を有し、あるいはビニル含有割合が約0.10重量%~約4.5重量%、シラノール基のOH含有割合が約0.2重量%~約2.0重量%であり、数平均分子量が約2,000g/モル~約25,000g/モルである。1つの実施形態において、(A)に含まれる、ビニル含有割合は約0.5重量%~約4.0重量%、シラノール基のOH含有割合は約0.4重量%~約1.8重量%であり、質量平均分子量は約2,000g/モル~約22,000g/モルである。更に他の実施例では、(A)に含まれる、ビニル含有割合は約0.5重量%~約3.5重量%、シラノール基によるOH含有割合は約0.6重量%~約1.5重量%であり、質量平均分子量は、約3,000g/モル~約22,000g/モルである。当業者であれば、ビニル含有割合、OH含有割合、及び質量平均分子量の判定方法を知っているであろう。
【0015】
シリコーン樹脂の式(I)において、下付き文字a、b、c、及びdは、樹脂中の各単位の平均数を表す。下付き文字a、b、及びcは、各々が>0であり、かつa+b+c=1である。下付き文字aは、0.001~0.9、あるいは0.001~0.5の値を有する。下付き文字bは、0.001~0.9、あるいは0.01~0.50、あるいは0.28~0.37の値を有する。下付き文字cは、0.1~0.9、あるいは0.2~0.85、あるいは0.5~0.75の値を有する。
【0016】
射出成形可能シリコーン組成物中における(A)の含有割合は、(A)及び(B)の重量に基づいて、(A)の約10質量%~約100質量%の範囲、又はより具体的には(A)の約50質量%~約99質量%の量、又は更により具体的には(A)の約75質量%~約95質量%の量である。
【0017】
シリコーン樹脂(B)は、平均式(II)を有するシリコーン樹脂
(II)[R SiO1/2[SiO4/2
[式中、各Rは、独立して、1~10個の炭素原子を有するヒドロカルビル、1~10個の炭素原子を有するヒドロカルビルオキシ、又はヒドロキシルであり、Rのうちの少なくとも1つは、アルケニルであり、下付き文字d及びeは、各々が>0であり、かつd+e=1である]を含む。
【0018】
で表されるヒドロカルビル基及びヒドロカルビルオキシ基は、(A)について上述したとおりである。(B)中のRで表される基のうちの少なくとも1つ、あるいは少なくとも2つは、アルケニル、あるいはC1~6アルケニル、あるいはエテニル、プロペニル、又はブテニル、あるいはエテニル又はプロペニル、あるいはエテニルである。
【0019】
当業者であれば、シリコーン樹脂の作製方法を知っているであろう。
【0020】
シリコーン樹脂(B)の式(II)において、下付き文字d及びeは、樹脂中の各単位の平均数を表す。下付き文字d及びeは、各々が>0であり、かつd+e=1である。下付き文字dは、0より大きい値、あるいは0.1~0.9、あるいは0.1~0.5の値を有する。下付き文字eは、0より大きい値、あるいは0.1~0.9、あるいは0.1~0.50の値を有する。
【0021】
シリコーン樹脂(B)が有する、ビニル含有割合は約0.10重量%~約4.5重量%、シラノール基によるOH含有割合は約0.2重量%~約2.0重量%であり、数平均分子量は約2,000g/モル~約25,000g/モルである。より具体的には、(B)に含まれる、ビニル含有割合は約0.5重量%~約4.0重量%、シラノール基のOH含有割合は約0.4重量%~約1.8重量%であり、質量平均分子量は約2,000g/モル~約22,000g/モルである。更により具体的には、(B)に含まれる、ビニル含有割合は約0.5重量%~約3.5重量%、シラノール基によるOH含有割合は約0.6重量%~約1.5重量%であり、質量平均分子量は約3,000g/モル~約22,000g/モルである。当業者であれば、ビニル含有割合、OH含有割合、及び質量平均分子量を求める方法を知っているであろう。
【0022】
射出成形可能シリコーン組成物中における(B)の含有割合は、(A)及び(B)の重量に基づいて、(B)の約0質量%~約90質量%の範囲、又はより具体的には(A)の約1質量%~約50質量%の量、又は更により具体的には約5質量%~約25質量%の量である。
【0023】
当業者であれば、シリコーン樹脂(B)の作製方法を知っているであろう。
【0024】
シロキサンポリマー(C)は、平均式(III)
(III)[R SiO1/2[RSiO2/2
[式中、各R5~7は、独立して、1~10個の炭素原子を有するヒドロカルビル、又はヒドロキシルであり、R5~7のうちの少なくとも1つ、あるいは少なくとも2つは、アルケニルであり、下付き文字f及びgは、各々が>0であり、かつf+g=1である]を有する。
【0025】
5~7で表されるヒドロカルビル基は、式(I)中のR1~3について定義されたとおりである。R5~7のうちの少なくとも1つは、アルケニル、あるいはC1~10アルケニル、あるいはC1~6アルケニル、あるいはエテニル、プロペニル、又はブテニル、あるいはエテニルである。シロキサンポリマー(B)上のこのアルケニルの位置としては、分子鎖上の、末端位置及び/又は側鎖(すなわち、末端位置でない)位置、あるいは末端位置、あるいは側鎖位置が挙げられ得るが、これらに特に限定されない。
【0026】
1つの例の実施形態において、(C)は、各分子中に平均で少なくとも2つのアルケニル基を有する、アルケニル官能性ジアルキルポリシロキサンである。別の例の実施形態において、(C)はジオルガノポリシロキサンであり、それには、分子鎖の両末端がジメチルビニルシロキシ基によって末端封止されたジメチルポリシロキサン、分子鎖の両末端がジメチルビニルシロキシ基によって末端封止されたジメチルシロキサン-メチルビニルシロキサンコポリマー、分子鎖の両末端がトリメチルシロキシ基によって末端封止されたメチルビニルポリシロキサン、分子鎖の両末端がトリメチルシロキシ基によって末端封止されたジメチルシロキサン-メチルビニルシロキサンコポリマー、又はこれらのいずれか2つ以上の組み合わせを挙げ得るが、これらに特に限定されない。
【0027】
1つの例の実施形態において、25℃での(C)の粘度は、約100ミリパスカル秒(mPa・秒)~約2,000,000mPa・秒、あるいは約1,000mPa・秒~約500,000mPa・秒である。(C)が2つ以上のアルケニル官能性ポリオルガノシロキサンの混合物であり、高粘度及び低粘度のアルケニル官能性ポリオルガノシロキサンを含み得る場合、この混合物の25℃での粘度は、約1,000mPa・秒~約200,000mPa・秒である。粘度は、シリコーンが粘度別で販売されているシリコーン産業において周知のパラメータである。したがって、当業者であれば、シリコーン材料の粘度を求める方法を知っているであろう。
【0028】
射出成形可能シリコーン組成物中における(C)の含有割合は、(A)、(B)、(C)、及び(D)の重量に基づいて、(C)の約30質量%~約80質量%の範囲、又はより具体的には(C)の約40質量%~約70質量%の量、又は更により具体的には約45質量%~約60質量%の量である。
【0029】
当業者であれば、シロキサンポリマー(C)の作製方法を知っているであろう。(C)の要件を満たす多くのポリマーが市販されている。本明細書で使用するとき、シロキサンポリマー及びポリシロキサンは同義である。
【0030】
本発明の硬化性シリコーン組成物は、1分子当たり少なくとも2つのケイ素結合水素原子を有するシリコーン架橋剤(D)を更に含む。シリコーン架橋剤(D)は、オルガノハイドロジェンオリゴシロキサン、オルガノハイドロジェンポリシロキサン、ポリオルガノハイドロジェンシロキサン、又はこれらのいずれか2つ以上の組み合わせが挙げられるが、これらに特に限定されない。
【0031】
1つの例の実施形態において、(D)は、以下のパラメータ[シリコンハイドライド(SiH)の含有割合、分子構造及び組成(例えば、M(RSiO1/2)、D(RSiO2/2)、T(RSiO3/2)、Q(SiO4/2)単位及びこれらの比;ペンダント官能基、分子構成、ポリマーの側鎖の分枝)、粘度、平均分子量及び分子量分布、シロキサン単位の数、並びに2種以上の異なるシロキサン単位の配列]のうちの少なくとも1つが異なるいずれか2つ以上のポリオルガノハイドロジェンシロキサンの組み合わせである。
【0032】
別の例の実施形態において、(D)は、1分子当たりの平均で少なくとも2つのケイ素結合水素原子を有するSiH官能性オルガノシロキサン架橋剤であり、(D)は、単一のポリオルガノハイドロジェンシロキサン、又は以下の[構造、粘度、平均分子量、シロキサン単位の数、及び配列]のうちの少なくとも1つが異なる2つ以上のポリオルガノハイドロジェンシロキサンの組み合わせから選択される。SiH官能性は、オルガノシロキサン中にケイ素結合水素原子を有することを意味する。
【0033】
1つの例の実施形態において、(D)は、各分子中に平均して少なくとも3つのケイ素結合水素原子を有するオルガノポリシロキサンであり、ケイ素結合水素以外のケイ素結合基は、C1~10アルキルであり、成分(A)、(B)、及び(C)の組み合わせ中の1モルの総アルケニル当たり、(D)中のケイ素結合水素が約0.4モル~約4.0モルとなる量である。この実施形態において、(D)は、(D-1)ケイ素結合水素が少なくとも約0.7質量%であり、並びにSiO4/2単位及びHR SiO1/2単位[式中、Rは、C1~10アルキルである。]を、1モルのSiO4/2単位当たりHR SiO1/2単位が約1.5モル~約3.8モルの範囲である比で含む、成分(D)の約5質量%~約100質量%(約5質量%~約95質量%)のオルガノポリシロキサン、並びに(D-2)ケイ素結合水素が少なくとも約0.1質量%であり、ケイ素結合水素以外のケイ素結合基が、C1~10アルキルである、成分(D)の0質量%~50質量%の直鎖オルガノポリシロキサン、を含むオルガノポリシロキサンである。
【0034】
射出成形可能シリコーン組成物中における(D)の含有割合は、(A)、(B)、(C)、及び(D)の重量に基づいて、(C)の約1質量%~約20質量%の範囲、又はより具体的には(C)の約1質量%~約15質量%の量、又は更により具体的には約2質量%~約15質量%の量である。
【0035】
当業者は、(D)のようなシリコーン架橋剤をよく知っており、本発明の架橋性化合物の作製方法を知っているであろう。記載された架橋剤(D)の多くは市販されている。
【0036】
前述のとおり、本発明の硬化性シリコーン組成物は、触媒量のヒドロシリル化触媒を更に含み、透明性の高い硬化シリコーン材料(E)が得られる。1つの例の実施形態において、(E)を、組成物の硬化を促進するのに十分な量で加える。(E)は、当該技術分野において公知であり市販のヒドロシリル化触媒を含んでいてもよい。好適なヒドロシリル化触媒としては、白金、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、オスミウム若しくはイリジウム金属をはじめとする白金族金属、又はこれらの有機金属化合物、及びこれらのいずれか2つ以上の組み合わせが挙げられるが、これらに特に限定されない。更なる実施形態において、(E)はヒドロシリル化触媒であり、それには、白金黒、白金化合物[塩化白金酸、塩化白金酸六水和物、塩化白金酸と一価アルコールとの反応生成物、白金ビス(エチルアセトアセテート)、白金ビス(アセチルアセトネート)、白金ジクロライドなど]、及び白金化合物のオレフィン若しくは低分子量オルガノポリシロキサンとの錯体、又はマトリックス若しくはコアシェル型構造内にマイクロカプセル化された白金化合物が挙げられる。
【0037】
1つの例の実施形態において、(E)はヒドロシリル化触媒溶液であり、それには、1,3-ジエテニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンの白金との錯体をはじめとする、白金の低分子量オルガノポリシロキサンとの錯体が挙げられる。これらの錯体は、樹脂マトリックス中にマイクロカプセル化されていてもよい。代替例の実施形態において、触媒としては、1,3-ジエテニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンの白金との錯体が挙げられる。
【0038】
(E)に好適なヒドロシリル化触媒の例は、例えば、米国特許第3,159,601号、同第3,220,972号、同第3,296,291号、同第3,419,593号、同第3,516,946号、同第3,814,730号、同第3,989,668号、同第4,784,879号、同第5,036,117号及び同第5,175,325号、並びに欧州特許第0347895(B)号に記載されている。マイクロカプセル化されたヒドロシリル化触媒及びその調製方法は、米国特許第4,766,176号及び同第5,017,654号に例示されている。別の実施形態において、白金触媒は、ビニル官能性オルガノポリシロキサンが約100ppm~約100,000ppmの濃度の溶液として準備され、それにより、最終の処方において希釈された際、総濃度は、約0.1ppm~約100ppmである。
【0039】
射出成形可能シリコーン組成物中の(E)の含有割合は、(A)、(B)、(C)、及び(D)の重量に基づいて、ヒドロシリル化触媒有効量、あるいは約0.01ppm~5質量%、あるいは約1ppm~1質量%、あるいは1ppm~100ppmの範囲である。
【0040】
1つの実施形態において、射出成形可能シリコーン組成物は、ヒドロシリル化に対する抑制剤(F)を含む。例えば、(F)は、硬化性シリコーン組成物の硬化速度を調整するための、反応抑制剤である。1つの実施形態において、(F)としては、アルキンアルコール[2-メチル-3-ブチン-2-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、1-エチニル-1-シクロヘキサノール、フェニルブチノール、又はこれらのいずれか2つ以上の組み合わせなど]、エンイン化合物[例えば、3-メチル-3-ペンタセン-1-イン又は3,5-ジメチル-3-ヘキセン-1-インなど]、並びに例えば、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラヘキセニルシクロテトラシロキサン、又はベンゾトリアゾールが挙げられるが、これらに特に限定されない。硬化性シリコーン組成物中におけるこの反応遅延剤の含有割合は特に限定されず、この含有割合は、成型方法及び硬化条件の関数として適宜選択されたものでよい。1つの実施形態において、(F)の存在量は、硬化性シリコーン組成物の総重量に基づいて、約10百万分率(ppm)~約10,000百万分率(ppm)、より具体的には約100ppm~約5,000ppmである。
【0041】
任意選択的に、射出成形可能シリコーン組成物は、1つ以上の追加の成分(G)を更に含んでいてもよい。追加の成分(G)又は成分の組み合わせとしては、例えば、ヒドロシリル化反応抑制剤、成型離型剤、充填剤、接着促進剤、熱安定剤、難燃剤、反応性希釈剤、酸化防止剤、又はこれらのいずれか2つ以上の組み合わせを挙げ得る。
【0042】
射出成形可能なシリコーン組成物中のケイ素結合水素と炭素-炭素二重結合との比は、(D)からのケイ素結合水素結合、並びに(A)、(B)、及び(C)からの炭素-炭素二重結合に基づいて、0.5~4、あるいは1~3、あるいは1.2~2.5、あるいは1.3~2.0、あるいは1.4~1.9である。
【0043】
1つの実施形態において、射出成形可能シリコーン組成物の誘導時間は、特定の範囲内で(A)、(B)、及び(C)の比を調節することによって調整可能であるか、又は変更可能である。
【0044】
特定の実施形態において、方法は、射出成形可能シリコーン組成物を加熱することで、硬化製品を形成すること、を更に含む。加熱する工程は、例えば、射出成型法、トランスファー成型法、一体成型法、押出成型法、オーバー成型法(overmolding)、圧縮成型法、及び流し込み成型法を更に含んでいてもよく、硬化製品は、成型物品、一体成型物品、又は押出成型物品であり、それには、レンズ、光導体、光透過性の接着層、又は他の光学要素が挙げられる。
【0045】
本明細書に記載のとおりの射出成形可能シリコーン組成物を使用し、射出成形可能シリコーン組成物を形作ること、及び射出成形可能シリコーン組成物を硬化させて、例えば、光学機器に使用するための硬化製品を形成することを含む方法により、光学機器構成要素を製造することができる。射出成形可能シリコーン組成物を形作ることを、射出成型法、トランスファー成型法、一体成型法、押出成型法、オーバー成型法、圧縮成型法、又は流し込み成型法により行い、成型物品、一体成型物品、分注物品、注封物品(dispensed)、又は押出成型物品を製造することができる。射出成形可能シリコーン組成物を形作る方法は、製造される光学機器の大きさ及び/又は形状、並びに選択された組成物をはじめとする、様々な因子に応じたものとなる。
【0046】
1つの実施形態において、硬化射出成形可能シリコーン組成物を、電子機器用途又は光学機器用途に使用することができる。電子機器又は光学機器は、例えば、電荷結合素子、発光ダイオード、光導体、光学カメラ、フォトカプラ、又は導波路であってよい。別の実施形態において、硬化射出成形可能シリコーン組成物を光学機器に使用し、光が取り出される光学機器の表面を、均等に照射する一助とすることができる。
【0047】
1つの実施形態において、透明性の高い硬化シリコーン製品は、射出成形可能シリコーン組成物を硬化させることによって形成される。別の実施形態において、透明性の高い硬化シリコーン製品は、成型物品、一体成型物品、又は押出成型物品である。更なる別の実施形態において、透明性の高い硬化シリコーン製品は、硬化シリコーン層による単一の物品を形成する基材を含む。
【0048】
別の実施形態において、射出成形可能シリコーン組成物を、いずれかの生産方法によって光学部品に適用することができ、その光学部品としては、レンズ、反射器、シート、フィルム、バー、及びチュービングが挙げられるが、これらに特に限定されない。射出成形可能シリコーン組成物を、電子機器、ディスプレイ、ソフトリソグラフィ、並びに医療機器及びヘルスケア機器用に使用することができる。1つの実施形態において、射出成形可能シリコーン組成物を光の拡散体として、又は拡散効果を得るために使用できる。
【0049】
本発明は、射出成形プロセスで使用される金型の必要性及び複雑性に基づいて誘導時間を調整することを可能にする。誘導時間は、所望のパラメータ内で誘導時間を増加又は減少させることによって調整されて、サイクル時間を維持しながら、粘度及び弾性率が増加してキャビティ充填を妨害する前に全ての金型キャビティを充填できるようにする。
【実施例
【0050】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を例証するために挙げられている。以下の実施例中に開示される技術は、発明者らにより見出された技術が本発明の実施に際して良好に機能するものであり、それにより本発明の実施における好ましい様式を構成するものとみなすことができると、当業者には理解される。しかし、本開示を考慮すると、開示される特定の実施形態において多くの変更を行うことができ、それでもなお本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく同様又は類似の結果を得ることができると、当業者には理解される。全ての百分率は、別途注記のない限り、重量%単位である。
【表1】
表1.実施例で使用される略語の一覧
【0051】
試験手順
硬化レオロジーを、150℃で3分間、ASTM D5289に従って測定した。以下のデータを得た。
TS1(秒):1dNmを達成するために必要な時間
トルク@30秒:30秒でのトルク(dNm)
ピーク速度(トルク/分):3分間の試験時間内の最高達成速度(dNm/秒)。
【0052】
成分(A)~(C)、及び硬化遅延剤としての反応抑制剤について、以下の実施例に用いる材料の性質及び表記は、以下に示すとおりである。
【0053】
成分A
a-1:以下の平均単位式によって示されるオルガノポリシロキサン
(MeSiO1/20.42(ViMeSiO2/20.05(SiO4/20.53、約4,500の数平均分子量(Mn)、約1.6質量%のビニル基含有割合。
【0054】
成分B
b-1:以下の平均単位式によって示されるオルガノポリシロキサン
(MeSiO1/20.40(ViMeSiO1/20.05(SiO4/20.55、約5,200の数平均分子量(Mn)、約1.9質量%のビニル基含有割合。
【0055】
成分C
c-1:分子鎖の両末端がジメチルビニルシロキシ基によって末端封止されたジメチルポリシロキサン、約2,000mPa・秒の粘度。×
c-2:分子鎖の両末端がジメチルビニルシロキシ基によって末端封止されたジメチルポリシロキサン、約5,000mPa・秒の粘度。×
c-3:分子鎖の両末端がジメチルビニルシロキシ基によって末端封止されたジメチルポリシロキサン、40,000mPa・秒の粘度。×
【0056】
成分D
d-1:平均単位式(HMeSiO1/2(SiO4/2によって示されるオルガノポリシロキサン、23mm/秒の動粘度、約0.96質量%のケイ素結合水素原子含有割合。
【0057】
成分E
e-1白金触媒:白金の1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体の、1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン溶液。白金金属含有割合は、約5200ppm。
【0058】
成分F:硬化遅延剤としての反応抑制剤
f-1:3,5-ジメチル-1-オクチン-3-オール。
【0059】
実施例1~5;比較例1~3
実施例及び比較例の配合物は、以下の手順で調製した。アルケニル官能性ポリジメチルシロキサンC並びに溶媒和アルケニル官能性シリコーン樹脂A及び/又はBを予めブレンドした後、減圧及び高温下で溶媒をストリッピングし、樹脂/ポリマーブレンドから全ての溶媒を除去した。アルケニル官能性ポリジメチルシロキサンC、アルケニル官能性シリコーン樹脂A及び/又はBブレンド、ヒドロシリル化触媒E、水素官能性架橋剤D、並びにヒドロシリル化抑制剤Fを、通常の容器に加え、遊星型ミキサ(Hauschild SpeedMixer DAZ150FVZ)上にて、3,540回転/分(rpm)で25秒間、混合した。
【0060】
試験手順の項で上述したように配合物を試験した。結果は、本発明による組成物の遅延インダクタンス時間を示す。配合物及び結果を、表2に列挙する。
【表2】
表2.実施例及び比較例の配合物並びに試験結果。