(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-02
(45)【発行日】2023-02-10
(54)【発明の名称】集積化ピペット装置
(51)【国際特許分類】
G01N 35/10 20060101AFI20230203BHJP
G01N 1/00 20060101ALI20230203BHJP
B01L 3/02 20060101ALI20230203BHJP
【FI】
G01N35/10 C
G01N1/00 101K
B01L3/02 D
(21)【出願番号】P 2020509049
(86)(22)【出願日】2018-04-06
(86)【国際出願番号】 IB2018052422
(87)【国際公開番号】W WO2019193404
(87)【国際公開日】2019-10-10
【審査請求日】2021-04-02
(73)【特許権者】
【識別番号】520050358
【氏名又は名称】マッスル ラブ カナダ インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】MUSCLE LAB CANADA INC.
【住所又は居所原語表記】30 West Beaver Creek Road, Unit 110(2F), Richmond Hill, Ontario L4B3K1, CANADA
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100159905
【氏名又は名称】宮垣 丈晴
(72)【発明者】
【氏名】玉井博文
(72)【発明者】
【氏名】チャオジュン ジョ
【審査官】奥野 尭也
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-182664(JP,A)
【文献】特開昭59-147268(JP,A)
【文献】特開平07-260545(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0019878(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00-37/00
G01N 1/00- 1/44
B01L 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体処理システム100用ピペットモジュール10であって、前記液体処理システム100は液体処理システムz軸フレーム120、少なくとも一つの液体処理システムz軸フレーム120に対する所定の容器開口端位置106(R
1)を有する容器開口端104を持つ容器102、および前記少なくとも一つの容器102における、液面レベル112(R
2)が未知の液体表面110を有する液体108を含み、前記ピペットモジュール10は、
前記液体処理システムz軸フレーム120に取り付けられるピペットモジュールフレーム12と、
前記ピペットモジュールフレーム12に取り付けられ、かつピペットモジュールモーター16によって前記ピペットモジュールフレーム12に対して移動することが可能であるピペットモジュール直進運動フレーム14と、
中に移動可能に設けられているピストン22を有するピペットモジュールシリンダー20、
前記ピペットモジュールシリンダー20に流体
的に接続しており、末端がチップ26に連結しているチューブ24、および
前記シリンダー20、前記チューブ24および前記チップ26に流体
的に接続している圧力センサー28を含有する
空気式吸引部材18と、
前記ピペットモジュールモーター16および前記圧力センサー28に電気
的に接続しているピペットモジュールコントローラー30とを含み、
前記ピペットモジュールシリンダー20、前記チューブ24および前記チップ26は前記ピペットモジュール直進運動フレーム14に取り付けられ、かつそれとともに移動可能で、
前記ピストン22はピストン棒22(32)を介して前記ピペットモジュールフレーム12に固定されており、かつ
前記ピペットモジュールコントローラー30は液面検出操作モードを有し、当該液面検出操作モードは圧力フィードバック制御アルゴリズムを起動させることができ、当該圧力フィードバック制御アルゴリズムは前記圧力センサー28によって検出された前記チップ26中における圧力の変化から前記チップ26が前記液体表面110に接触したことが示されるまで、前記ピペットモジュールモーター16によってz軸に沿って直進運動するように前記ピペットモジュール直進運動フレーム14を移動させる、
ことを特徴とするピペットモジュール10。
【請求項2】
前記圧力フィードバック制御アルゴリズムは、以下の比率、積分、微分(PID)フィードバック制御ルールをコーディングし、
【数1】
ここで、u(t)はチップ速度で、単位はmm/secで、
u
0(t)は前記チップ速度の初期値で、
K
P、K
IおよびK
Dは前記制御ルールの比率、積分、微分係数の非負定数で、
そして、e(t)は制御誤差で、目的圧力値から測定圧力値を引いたものに相当する、
請求項1記載のピペットモジュール10。
【請求項3】
前記ピペットモジュール直進運動フレーム14はリニアスライダー36を介して前記ピペットモジュールフレーム12に取り付けられ、かつネジ38を介して操作可能に前記ピペットモジュールモーター16に連結している、請求項1記載のピペットモジュール10。
【請求項4】
さらに前記ピペットモジュールフレーム12に取り付けられることによってそれとともに移動するチップ外し器34を有し、前記チップ外し器34はチップ外し器ギャップ42で隔てられた対となる第一と第二の平行チップ外し棒40を含み、前記チップ外し器ギャップ42は前記チューブ24の外径を超え、かつ前記チップ26の外径よりも小さく、ここで、前記チップ外し器ギャップ42は前記チューブ24を前記対となるチップ外し棒40の間でz軸に沿って直進運動するように運動させ、かつ前記チップ26がそこを通過することを防止し、そして前記チップ26が前記対となるチップ外し棒40に接触すると、前記ピペットモジュール直進運動フレーム14のさらなるz軸直進運動によって前記チップ26と前記チューブ24が分離される、請求項1記載のピペットモジュール10。
【請求項5】
さらに、前記ピペットモジュール直進運動フレーム14に取り付けられ、かつ別のピペットモジュール直進運動フレームモーター46によって前記ピペットモジュール直進運動フレーム14に対して移動する、別のピペットモジュール直進運動フレーム44、および
前記別のピペットモジュールシリンダー直進運動フレームモーター46、前記圧力センサー28および前記ピペットモジュールコントローラー30に電気
的に接続している別のピペットモジュールコントローラー54を含み、
前記
空気式吸引部材18は、さらに
前記ピペットモジュールシリンダー20のピペットモジュールシリンダーの体積よりも大きい別のピペットモジュールシリンダー体積を有し、前記ピペットモジュール直進運動フレーム14とともに移動可能で、かつ前記ピペットモジュールシリンダー20、前記チューブ24、前記チップ26および前記圧力センサー28に流体
的に接続している、別のピペットモジュールシリンダー48、および
移動可能に前記別のピペットモジュールシリンダー48の中に設けられている、別のピペットシリンダーピストン棒52を介して前記別のピペットモジュールシリンダー直進運動フレーム44に固定されている、別のシリンダーピストン50を含有し、
前記液体処理システム100は、ピペットモジュールマウント114、液体処理システムz軸モーター116および液体処理システムコントローラー118を有し、
そして、前記液体処理システムコントローラー118は吸引操作モードを有し、当該吸引操作モードでは、前記液体処理システムz軸モーター116によって上部方向にz軸に沿って直進運動するように前記
ピペットモジュールマウント114を移動させ、一方、前記ピペットモジュールコントローラー30は同時に前記ピペットモジュールモーター16によって下部方向にz軸に沿って直進運動するように前記ピペットモジュール直進運動フレーム14を移動させ、かつ前記液体108が前記チップ26に吸い込まれている間、前記チップ26が前記液体表面110と接触したままにし、前記別のピペットモジュールコントローラー54は前記別のピペットモジュールシリンダー直進運動フレームモーター46によって前記ピペットモジュール直進運動フレーム14の下部方向へのz軸直進運動と協調して上部方向にz軸に沿って直進運動するように前記別のピペットモジュールシリンダー直進運動フレーム44を移動させる、
請求項1に記載のピペットモジュール10。
【請求項6】
少なくとも一つの容器102から液体108を吸引するための液体処理システム100であって、当該容器102は容器開口端104を持ち、前記容器開口端104は前記液体処理システムに対して所定の容器開口端位置106(R
1)を有し、前記少なくとも一つの容器102における前記液体は液体表面110を有し、前記液体処理システム100は、
液体処理システムz軸フレーム120と、
前記液体処理システムz軸フレーム120に取り付けられ、液体処理システムz軸モーター116によって前記液体処理システムz軸フレーム120に対してz軸に沿って直進運動するように移動することができる
ピペットモジュールマウント114と、
前記
ピペットモジュールマウント114に取り付けられ、かつそれとともに移動可能である、少なくとも一つの請求項1に記載のピペットモジュール10と、
前記ピペットモジュールコントローラー30および前記液体処理システムz軸モーター116に電気
的に接続している、液体処理システムコントローラー118とを含み、
前記液体処理システムコントローラー118は容器索引操作モードを有し、当該容器索引操作モードが起動すると、前記チップ26が前記容器開口端104と同じレベルに到達するまで、前記液体処理システムz軸モーター116によって下部方向にz軸に沿って直進運動するように前記
ピペットモジュールマウント114が移動するようになる、
ことを特徴とする液体処理システム100。
【請求項7】
前記ピペットモジュールコントローラー30は、前記容器索引操作モード終了後、液面検出操作モードを起動させる、請求項6に記載の液体処理システム100。
【請求項8】
前記液体処理システムコントローラー118は吸引操作モードを有し、当該吸引操作モードが起動すると、前記液体処理システムz軸モーター116によって上部方向にz軸に沿って直進運動するように前記
ピペットモジュールマウント114が移動し、一方、前記ピペットモジュールコントローラー30は同時に前記ピペットモジュールモーター16によって下部方向にz軸に沿って直進運動するように前記ピペットモジュール直進運動フレーム14を移動させることで、前記液体108が前記チップ26に吸い込まれている間、前記チップ26が前記液体表面110と接触したままになる、請求項6に記載の液体処理システム100。
【請求項9】
前記液体処理システムコントローラー118は吸引操作モードを有し、
前記ピペットモジュールコントローラー30は、前記容器索引操作モード終了後、前記液面検出操作モードを起動させ、そして前記液体処理システムコントローラー118は、前記液面検出操作モード終了後、前記吸引操作モードを起動させる、請求項6に記載の液体処理システム100。
【請求項10】
前記液体処理システムコントローラー118は
液体排出操作モードを有し、当該液体排出操作モードが起動すると、前記液体処理システムz軸モーター116によって下部方向にz軸に沿って直進運動するように前記
ピペットモジュールマウント114が移動し、一方、前記ピペットモジュールコントローラー30は同時に前記ピペットモジュールモーター16によって上部方向にz軸に沿って直進運動するように前記ピペットモジュール直進運動フレーム14を移動させることで、前記チップ26から前記チップ26における液体108が排出される、請求項6に記載の液体処理システム100。
【請求項11】
前記液体処理システムコントローラー118は吸引操作モードを有し、
前記ピペットモジュールコントローラー30は、前記吸引操作モード終了後、前記液体排出操作モードを起動させる、請求項10に記載の液体処理システム100。
【請求項12】
前記液体処理システムコントローラー118は液体排出操作モードおよび吸引操作モードを有し、
前記少なくとも一つの容器102は二つまたはそれ以上の容器102で、
前記少なくとも一つのピペットモジュール10は二つまたはそれ以上のピペットモジュール10で、
前記容器索引操作モードが起動すると、前記少なくとも二つのピペットモジュールの少なくとも一つのピペットモジュールの前記チップ26が相応する容器102の前記容器開口端104と同じレベルに到達するまで、前記液体処理システムz軸モーター116によって下部方向にz軸に沿って直進運動するようにピペットモジュールマウント114が移動し、
前記容器索引操作モード終了後、前記少なくとも二つのピペットモジュールの各ピペットモジュールの前記液面検出操作モードが起動し、独立に相応する容器102における前記液体の液体表面を検出し、
前記少なくとも二つのピペットモジュールの各ピペットモジュールの前記液面検出操作モード終了後、前記吸引操作モードが起動し、前記液体処理システムz軸モーター116によって上部方向にz軸に沿って直進運動するように前記ピペットモジュールマウント114を移動させ、一方、前記少なくとも二つのピペットモジュールの各ピペットモジュールの前記ピペットモジュールコントローラー30は同時に前記少なくとも二つのピペットモジュールの各ピペットモジュールの前記ピペットモジュールモーター16によって下部方向にz軸に沿って直進運動するように前記少なくとも二つのピペットモジュールの各ピペットモジュールの前記ピペットモジュール直進運動フレーム14を移動させることで、前記液体が前記少なくとも二つのピペットモジュールの各ピペットモジュールの前記チップ26に吸い込まれている間、前記少なくとも二つのピペットモジュールの各ピペットモジュールの前記チップ26が相応する容器102の液体表面110と接触したままになり、
そして、前記液体排出操作モードが起動すると、前記液体処理システムz軸モーター116によって下部方向にz軸に沿って直進運動するように前記ピペットモジュールマウント114を移動させ、一方、前記少なくとも二つのピペットモジュールの各ピペットモジュールの前記ピペットモジュールコントローラー30は同時に前記少なくとも二つのピペットモジュールの各ピペットモジュールの前記ピペットモジュールモーター16によって上部方向にz軸に沿って直進運動するように前記少なくとも二つのピペットモジュールの各ピペットモジュールの前記ピペットモジュール直進運動フレーム14を移動させることで、前記少なくとも二つのピペットモジュールの各ピペットモジュールの前記チップ26から前記少なくとも二つのピペットモジュールの各ピペットモジュールの前記チップ26の中における液体108を排出する、
請求項6に記載の液体処理システム100。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも一つの容器から液体を吸引し、吸引された液体をもう一つの容器に分配するための液体処理システムに関する。 より具体的に、ピペットモジュールをコア部品として有する液体処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、一般的な液体処理システムは、複数のピペットモジュールおよび関連するプロセッサーによって制御され、モーターによって駆動される機械的サブ部材を含む。前記機械的サブ部材はピペット支持フレームを含み、当該ピペット支持フレームは1つまたは複数のピペットチップが吸引される液体を収納する容器に対して上昇および降下するようにz軸に沿って移動する。 これらの互いに関連する機械的装置によって、液体処理システムの構造が非常に複雑になっている。ピペットモジュールは液面レベルの検出および液体の吸引と分配(その間に液面レベルが変わる)のためにz軸に沿って移動することが必要である。 ピペットモジュールの質量が通常大きく、そして製作公差によって運動部品の間にバックラッシュ(backlash)が存在するため、縦方向における運動によって機械的にかなり大きい応力が生じる。
【0003】
米国特許No.6,641,454 B1(Colinら、以下「Colin」と記載される)は、検体ホルダーに含まれる生物液体を吸引するための装置および方法に関する。より具体的に、Colinはシリンダー本体を有するピペットであって、当該シリンダー本体はピストンを含み、当該ピストンの運動によって吸引される液体の吸引と排出が行われるものを公開した。使用時、ピペットに連結した機械的機構によってピペットの自由端のチップが生物液体の表面に近づくため、ピストンの運動によって当該チップから連続的に一定の空気流が排出される。チップが液面に近づくことによって、チップ中における空気過圧が所定の閾値を超えると、チップが液面と同じレベルになって接触し、チップからの空気流が停止し、チップの移動も停止し、液体の吸引が始まる。 Colinの装置および方法の固有の望ましくない特徴は、液面を検出するための入口と出口の空気流の移動がピペットチップの移動速度と関連しないとされていることである。
【0004】
米国特許No.4,794,085(Jessopら、以下「Jessop」と記載される)は、検体容器に収納された液体を吸引した後、吸引された液体を分配するための装置および方法に関する。より具体的に、Jessopは液体分配装置用吸引制御システムであって、検体容器から吸引される液体を受け入れるプローブおよび当該プローブとともに移動するピストンチャンバーを含むものを公開した。プローブおよびピストンチャンバーと流体的に接続した圧力配管がピストンのピストンチャンバーにおける運動に応じてプローブに大気圧に対して局所的に真空または圧力を与える。吸引制御システムはプローブで検出される圧力の変化に応答してプローブの運動を駆動するモーターおよびピストンの運動を駆動する別のモーターの作動を調節する。プローブ中における空気の圧力降下が所定の閾値を超えたことが確認されるまで、空気吸引の増量およびプローブの移動を繰り返すことによって、プローブの空気と液体の界面に対する貫通の検出を実現させ、その時点でプローブが液体に到達したと見なされる。Jessopの装置および方法の固有の望ましくない特徴は、吸引の増量およびプローブの移動を繰り返すことによって液面への到達を検出するのに必要な稼働時間は液体の吸引と分配の速度を制限する可能性があることである。
そのため、上記理由から、本分野では、複数のピペットモジュールおよび関連するプロセッサーによって制御され、モーターによって駆動される機械的サブ部材を含む液体処理システムの精確な制御が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許No.6,641,454 B1
【文献】米国特許No.4,794,085
【発明の概要】
【0006】
簡潔に言うと、本発明の好適な実施形態は、液体処理システム用ピペットモジュールであって、前記液体処理システムは液体処理システムz軸フレーム、少なくとも一つの液体処理システムz軸フレームに対する所定の容器開口端位置を有する容器開口端を持つ容器、および少なくとも一つの容器における、液体の表面を有し、液面レベルが未知の液体を含むピペットモジュールに関する。ピペットモジュールは液体処理システムz軸フレームに取り付けられるピペットモジュールフレームを有する。ピペットモジュール直進運動フレームがピペットモジュールフレームに取り付けられ、かつピペットモジュールモーターによってピペットモジュールフレームに対して移動することが可能である。空気式吸引部材はピペットモジュールシリンダーを含み、当該ピペットモジュールシリンダーの中に移動可能にピストンが設けられている。チューブがピペットモジュールシリンダーに流体的に接続している。チューブの末端にチップが連結している。圧力センサーがシリンダー、チューブおよびチップに流体的に接続している。ピペットモジュールコントローラーがピペットモジュールモーターおよび圧力センサーに電気的に接続している。ピペットモジュールシリンダー、チューブおよびチップはピペットモジュール直進運動フレームに取り付けられ、かつ自由に移動可能である。ピストンがピストン棒を介してピペットモジュールフレームに固定されている。ピペットモジュールコントローラーは液面検出操作モードを有し、当該液面検出操作モードは圧力フィードバック制御アルゴリズムを実現させることができ、当該アルゴリズムは圧力センサーによって検出されたチップ中における圧力の変化からチップが液体の表面に接触したことが示されるまで、ピペットモジュールモーターによってz軸に沿って直進運動するようにピペットモジュール直進運動フレームを移動させる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図面と合わせて読むと、前記発明の概述および以下の本発明の好適な実施形態の詳細がより理解される。本発明を説明するため、図面で現在好適な実施形態が示された。 しかしながら、もちろん、本発明は示された精確な配置および機構に限定されない。
【0008】
図面は以下の通りである。
【
図1】本発明によるピペットモジュールの第一の好適な実施形態の側面図である。
【
図2】本発明による
図1のピペットモジュールを含む液体処理システムの側面図である。
【
図3】チップ外し器を示した、
図1のピペットモジュールの部分拡大側面図である。
【
図4】本発明による二つのシリンダーを有するピペットモジュールを含む液体処理システムの側面図である。
【
図5】本発明による複数の単シリンダーピペットモジュールを含む液体処理システムの左側の立体透視図である。
【
図6】本発明による複数の二シリンダーピペットモジュールを含む液体処理システムの左側の立体透視図である。
【
図7】本発明による
図1のピペットモジュールを含む圧力フィードバック制御システムの概略図である。
【
図8.1】容器中における水の液面を検出している間のピペットチップの内部の圧力および関連する制御誤差の代表的なグラフである。
【
図8.2】
図8.1のグラフに関連するピペットモジュールモーターの速度および位置の代表的なグラフである。
【
図8.3】
図8.1および
図8.2のグラフの一部で、ピペットチップが液面を貫通した後のモーターの位置および関連する制御誤差を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、参考となる本発明の実施形態の詳細を説明するが、その例示が図面に示されている。 本明細書の本発明の記述で使用される用語は、特定の実施形態を説明するためのものだけで、本発明を限定する意味はない。
【0010】
前後文で別途に明示されない限り、本発明の明細書および添付された請求の範囲で用いられるように、単一の形態の「一」、「一つ」および「当該」は複数の形態も含む。 本明細書で用いられるように、用語「および/または」とは一つまたは複数の関連する例示項目の任意のあらゆる可能な組み合わせを含むことである。本明細書で使用される場合、用語「含む」および/または「含有する」とは前記特徴、整数、工程、操作、要素および/または部材が存在することであるが、一つまたは複数のほかの特徴、整数、工程、操作、要素、部材および/またはこれらの組み合わせが存在または増加することも含む。
【0011】
用語「右」、「左」、「下部」および「上部」は図面における参考となる方法を表す。用語「内部方向」および「外部方向」とはそれぞれ針安全シールドおよびその所定の部分の幾何中心に向かう方向およびそれから離れる方向である。当該用語は上記用語、その派生用語および類似する意味の用語を含む。
【0012】
本明細書において、用語「第一」、「第二」などで各要素を記載するが、これらの要素はこれらの用語によって限定されない。これらの用語は一つの要素を別の要素と区別するためのものだけである。たとえば、本発明の範囲を逸脱しない限り、第一のシリンダーは第二のシリンダーとも呼べ、そして同様に、第二のシリンダーは第一のシリンダーとも呼べる。
【0013】
本明細書で用いられるように、用語「・・・と」は「・・・場合」または「・・・ば」または「・・・ことが確認されたら」または「・・・ことが検出されたら」を表すと理解されてもよいが、前後文にもよる。同様に、用語「・・・ことが確認されると」または「[記載された条件もしくは事象]が検出されると」は「・・・ことが確認されれば」または「・・・ことが確認されたら」または「[記載された条件もしくは事象]が検出されれば」または「[記載された条件もしくは事象]が検出されたら」を表すと理解されてもよいが、具体的に前後文にもよる。
【0014】
以下、本発明による集積化ピペット装置の各実施形態について説明する。
【0015】
詳しくは図面を参照するが、ここで、同様の図面表記は常に同様の要素を表し、
図1および
図2では、本発明によるピペットモジュールの第一の好適な実施形態が示され、通常、10で表記され、そして以下、「ピペットモジュール10」と呼ばれる。ピペットモジュール10は液体処理システムz軸フレーム120および少なくとも一つの容器102を含む液体処理システム100に使用され、当該容器102は容器開口端104を持ち、容器開口端104は液体処理システムz軸フレーム120に対する所定の容器開口端位置106(R
1)を有する。少なくとも一つの容器102における液体108は、容器開口端位置に対して未知の液面レベル(R
2)にある液体表面110を有する。
【0016】
ピペットモジュール10は液体処理システムz軸フレーム120に取り付けられるピペットモジュールフレーム12を有する。ピペットモジュール直進運動フレーム14がピペットモジュールフレーム12に取り付けられ、かつピペットモジュールモーター16によってピペットモジュールフレーム12に対して移動することが可能である。
【0017】
また、ピペットモジュール10は空気式吸引部材18を有し、当該空気式吸引部材はピペットモジュールシリンダー20を含み、当該ピペットモジュールシリンダー20の中に移動可能にピストン22が設けられている。チューブ24がピペットモジュールシリンダー20に流体的に接続している。チューブ24の末端にチップ26が連結している。圧力センサー28が設けられ、かつ当該圧力センサー28はシリンダー20、チューブ24およびチップ26に流体的に接続している。ピペットモジュールシリンダー20、チューブ24、チップ26および圧力センサー28はいずれもピペットモジュール直進運動フレーム14に取り付けられ、かつ自由に移動可能である。ピストン22がピストン棒32を介してピペットモジュールフレーム12に固定されている。
【0018】
また、ピペットモジュール10は、ピペットモジュールモーター16および圧力センサー28に電気的に接続しているピペットモジュールコントローラー30を有する。ピペットモジュールコントローラー30は液面検出操作モードを有し、当該液面検出操作モードは圧力フィードバック制御アルゴリズムを実現させることができ、圧力センサー28によって検出されたチップ26中における圧力の変化からチップ26が液体表面110に接触したことが示されるまで、ピペットモジュールモーター16によってz軸に沿って直進運動するようにピペットモジュール直進運動フレーム14を移動させるが、後記でさらに説明する。
【0019】
一部の実施形態において、ピペットモジュール直進運動フレーム14はリニアスライダー36を介してピペットモジュールフレーム12に取り付けられ、かつピペットモジュールネジ38を介して操作可能にピペットモジュールモーター16に連結していてもよい。
【0020】
図3を参照すると、一部の実施形態において、ピペットモジュール10はピペットモジュールフレーム12に取り付けられたチップ外し器34を有してもよい。チップ外し器34は好ましくはチップ外し器ギャップ42で隔てられた対となる第一と第二の平行チップ外し棒40を含み、当該チップ外し器ギャップ42はチューブ24の外径を超え、かつチップ26の外径よりも小さい。チップ外し器ギャップ42はチューブ24を前記対となる棒40の間でz軸に沿って直進運動するように運動させ、そしてチップ26がそこを通過することを防止する。チップ26が前記対となる棒40に接触すると、ピペットモジュール直進運動フレーム14のさらなるz軸直進運動によってチップ26とチューブ24が分離される。
【0021】
図4を参照すると、一部の実施形態において、ピペットモジュール10はピペットモジュール直進運動フレーム14に取り付けられた別のピペットモジュール直進運動フレーム44を有してもよい。取り付けられたピペットモジュール直進運動フレーム44は別のピペットモジュールモーター46によってピペットモジュール直進運動フレーム14に対して移動することが可能である。ピペットモジュール10が別のピペットモジュール直進運動フレーム44を有すると、
空気式吸引部材18はさらに体積がピペットモジュールシリンダー20よりも大きい、別のピペットモジュールシリンダー48を含む。別のピペットモジュールシリンダー48はピペットモジュール直進運動フレーム14とともに移動可能で、ピペットモジュールシリンダー20、チューブ24、チップ26および圧力センサー28に流体
的に接続している。別のピペットシリンダーピストン50が移動可能に別のピペットモジュールシリンダー48の中に設けられている。別のシリンダーピストン50は別のピペットシリンダーピストン棒52を介して別のピペットモジュールシリンダー直進運動フレーム44に固定されている。別のピペットモジュールコントローラー54が別のピペットモジュールシリンダー直進運動フレームモーター46、圧力センサー28およびピペットモジュールコントローラー30に電気
的に接続している。
【0022】
図2を参照すると、液体処理システム100の好適な実施形態において、ピペットモジュールマウント114が液体処理システムz軸フレーム120に取り付けられている。
ピペットモジュールマウント114は液体処理システムz軸モーター116によって液体処理システムz軸フレーム120に対してz軸に沿って直進運動するように移動することができる。少なくとも一つのピペットモジュール10が
ピペットモジュールマウント114に取り付けられ、かつそれとともに移動可能である。液体処理システムコントローラー118がピペットモジュールコントローラー30および液体処理システムz軸モーター116に電気
的に接続している。
【0023】
液体処理システムコントローラー118は複数の操作モードで操作可能で、その一つは容器索引操作モード(container indexing mode of operation)で、このモードでは、チップ26が容器開口端104と同じレベルに到達するまで、液体処理システムz軸モーター116によって下部方向にz軸に沿って直進運動するようにピペットモジュールマウント114を移動させることができる。
【0024】
液体処理システムコントローラー118のもう一つの操作モードは吸引操作モードで、当該吸引操作モードでは、液体処理システムz軸モーター116によって上部方向にz軸に沿って直進運動するようにピペットモジュールマウント114を移動させ、一方、ピペットモジュールコントローラー30は同時にピペットモジュールモーター16によって下部方向にz軸に沿って直進運動するようにピペットモジュール直進運動フレーム14を移動させることで、前記液体が前記チップ26に吸い込まれている間、チップ26が液体表面110と接触したままにすることができる。
【0025】
液体処理システムコントローラー118のもう一つの操作モードは液体排出操作モードで、当該液体排出操作モードでは、液体処理システムz軸モーター116によって下部方向にz軸に沿って直進運動するようにピペットモジュールマウント114を移動させ、一方、ピペットモジュールコントローラー30は同時にピペットモジュールモーター16によって上部方向にz軸に沿って直進運動するようにピペットモジュール直進運動フレーム14を移動させることで、チップ26からチップ26の中における液体108を排出することができる。
【0026】
液体処理システム100の一部の実施形態において、二つまたはそれ以上の容器102を提供し、そして少なくとも二つのピペットモジュール10を提供する。ピペットモジュールは単シリンダーでもよく(
図5を参照する)、二シリンダーでもよく(
図6を参照する)、そして
ピペットモジュールマウント114に取り付けられている。容器索引操作モードでは、少なくとも二つのピペットモジュールの少なくとも一つのピペットモジュールのチップ26が相応する容器102の容器開口端104と同じレベルに到達するまで、液体処理システムz軸モーター116によって下部方向にz軸に沿って直進運動するようにピペットモジュールマウント114を移動させることができる。
【0027】
容器索引操作モード終了後、少なくとも二つのピペットモジュールの各ピペットモジュールの液面検出操作モードで、独立に相応する容器102における液体108の液体表面110を検出することができる。
【0028】
少なくとも二つのピペットモジュールの各ピペットモジュールの液面検出操作モード終了後、吸引操作モードが起動し、液体処理システムz軸モーター116によって上部方向にz軸に沿って直進運動するようにピペットモジュールマウント114を移動させ、一方、少なくとも二つのピペットモジュールの各ピペットモジュールのピペットモジュールコントローラー30は同時に少なくとも二つのピペットモジュールの各ピペットモジュールのピペットモジュールモーター16によって下部方向にz軸に沿って直進運動するように少なくとも二つのピペットモジュールの各ピペットモジュールのピペットモジュール直進運動フレーム14を移動させることで、液体が少なくとも二つのピペットモジュールの各ピペットモジュールのチップ26に吸い込まれている間、少なくとも二つのピペットモジュールの各ピペットモジュールのチップ26が相応する容器102の液体表面110と接触したままにする。
【0029】
液体排出操作モードが起動すると、液体処理システムz軸モーター116によって下部方向にz軸に沿って直進運動するようにピペットモジュールマウント114を移動させ、一方、少なくとも二つのピペットモジュールの各ピペットモジュールのピペットモジュールコントローラー30は同時に少なくとも二つのピペットモジュールの各ピペットモジュールのピペットモジュールモーター16によって上部方向にz軸に沿って直進運動するように少なくとも二つのピペットモジュールの各ピペットモジュールのピペットモジュール直進運動フレーム14を移動させることで、少なくとも二つのピペットモジュールの各ピペットモジュールのチップ26から少なくとも二つのピペットモジュールの各ピペットモジュールのチップ26の中における液体108を排出する。
【0030】
操作において、液体処理システムのz軸の原点はピペットモジュールマウント114が最高位置にあり、かつピペットモジュール直進運動フレーム14も最高位置にある時の位置と定義されている。最初の工程では、液体処理システムコントローラー118は容器索引操作モードを起動させ、ここで、ピペットモジュールチップ26が容器開口端104と同じレベルに到達するまで、液体処理システムz軸モーター116によって下部方向にz軸に沿って直進運動するようにピペットモジュールマウント114が移動する。
【0031】
次の工程では、液体処理システムコントローラー118はピペットモジュールコントローラー30によって圧力フィードバック制御アルゴリズムを稼働させるようにするが、当該圧力フィードバック制御アルゴリズムは、以下の比率、積分、微分(PID)フィードバック制御ルールをコーディングする。
【0032】
【0033】
ここで、u(t)はチップ速度で、単位はmm/secで、
u0(t)はチップ速度の初期値で、
KP、KIおよびKDは前記制御ルールの比率、積分、微分係数の非負定数で、通常、KP= 1、KI = 0.005、KD= 1で、
そして、e(t)は制御誤差で、目的圧力値から測定圧力値を引いたものに相当する。
【0034】
前記制御ルールの目的圧力点は大気圧P0とされている。 チップ26の内部の圧力降下が検出されたら、前記制御ルールの目的圧力点をより高い値、たとえばP0+Cとするが、ここで、室温における水に対して、Cは通常250 Paである。 より高い圧力によって液体がチップ26から排出される。チップの内部の圧力PがP0+Cになった時点で、ピペットモジュールチップ26の末端の位置は液体表面110の位置になっている。
【0035】
圧力フィードバック制御システムの概略図は
図7に示す。ピペットモジュールピストン22は移動可能にピペットモジュールシリンダー20の中に設けられ、かつピストン棒32はピペットモジュールフレーム12に固定されている。ピペットモジュールモーター16は容器102における液体表面110へ向かってチップ26およびシリンダー20を下部方向に駆動する。容器102における液面レベル112は未知で、検出する必要がある。鎖線は圧力制御システムのデータフローを表す。ピペットモジュールモーター16は開ループまたは閉ループ制御されるモーターでもよい。簡潔になるように、モーター16に使用される制御システムが示されていないが、当該モーターは速度コマンドを受けて作動する。圧力コントローラーは好ましくは上記のPIDコントローラーで、かつピペットモジュールチップ26の内部の圧力を所定の目的値のままにする。
【0036】
圧力フィードバック制御システムを含むハードウェアは、典型的な圧力センサーとして、RMS = 0.0075 hPa、感度 = 4096 LSB / hPa、24ビット解像度という特徴を有することが好ましいが、これに限定されない。モーターは約50000パルス/回転である。モーターが1周回転すると、シリンダー20が40 mm移動する。シリンダーの体積は1 mLで、ストロークは60 mmである。シリンダーの内径は4.6 mmで、制御回路のサンプリング時間は10 msである。初期コントローラー値U0 = 8 mm/secに対し、気流速度は約133 μL/secである。
【0037】
容器102における水の未知の液体表面110を検出するための上記制御ルールの操作特性は
図8.1-8.3に示すように、ピペットモジュールチップ26は最初に液体表面の上方から約20 mm離れたところに位置し、液体表面の位置が未知でピペットモジュールチップ26が8mm/secの速度で降下する。より具体的に、チップの内部の圧力および制御誤差は
図8.1に示す。モーターの速度およびモーターの位置は
図8.2に示す。
【0038】
モーターの速度は圧力フィードバックコントローラーの出力で、モーターの位置はピペットモジュールモーター16の出力で、ピペットモジュールモーター16はピペットモジュールシリンダー20およびピペットモジュールチップ26を駆動する。1500 ms後、ピペットモジュールモーター16の位置は液体表面110の位置を反映する。ピペットモジュールチップ26が液体表面110に接触すると、液体がピペットモジュールチップ26に吸い込まれるように制御誤差が十分に大きくなる。ピペットモジュールチップ26と水の間の表面張力は約300 Paである。
図8.2におけるモーターの速度および位置のグラフでは、ピペットモジュールモーター16は1200 ms後下部方向の運動から上部方向の運動に変わる。
【0039】
ピペットモジュールチップ26が液体表面110に接触すると、ピペットモジュールチップ26が上部方向に移動するようになる。
図8.3を参照すると、1080 msから3000 msまでの時間間隔内で
図8.1の制御誤差および
図8.2のモーターの位置が示され、ピペットモジュールチップ26が液体表面に接触すると、ピペットモジュールチップ26が上部方向に約0.6 mm移動する。制御誤差は700 Paに変わり、チップの圧力は450 Paに低下する。圧力降下は約400 Paである。液体がピペットモジュールチップ26に吸い込まれるように圧力降下が十分に大きくなる。制御誤差の減少は圧力目的値をP0+Cとしたため、ピペットモジュールチップの圧力が増加することを示す。チップの内部における液体がピペットモジュールチップの圧力の増加につれて排出され、そしてピペットモジュールチップの圧力が圧力目的値P0+Cに達した時点で完全排出される。
【0040】
特定の実施形態を参照して本発明の前記詳細を公開した。しかしながら、本公開内容は徹底的に例示するか、本発明を公開された精確な形態に限定するためのものではない。当業者には、その幅広い発明の構想を逸脱しなければ、上記実施形態を変更することができることがわかる。そのため、本公開は添付された請求の範囲によって限定される本発明の主旨および範囲内の変更をカバーするためのものである。